説明

アミンの製造方法

【課題】安価で調製が容易で且つ生成物との分離が容易な触媒を用いて、アルコールと第1級又は第2級アミンから一段階で第2級又は第3級アミンを製造する方法を提供する。
【解決手段】アルミナ担持銀触媒及び酸の存在下、下記式(1)
1OH (1)
(式中、R1は式中に示される酸素原子との結合部位に炭素原子を有する有機基を示す)で表されるアルコールと、下記式(2)
23NH (2)
(式中、R2、R3は、同一又は異なって、水素原子、又は式中に示される窒素原子との結合部位に炭素原子を有する有機基を示す。但し、R2及びR3のうち少なくとも一方は式中に示される炭素原子との結合部位に炭素原子を有する有機基である。R2、R3は、互いに結合して、隣接する窒素原子とともに環を形成していてもよい)で表されるアミンとを反応させて、下記式(3)
23NR1 (3)
で表されるアミンを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナ担持銀触媒(Ag/Al23)を用い、アルコールによりアミンをN−アルキル化して、より置換数の多いアミンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミンは、基礎化学品、医薬品等の精密化学品、又はその中間原料等として重要な化合物である。従来、第2級又は第3級アミンの製造法として、第1級又は第2級アミンにハロゲン化アルキルを反応させる方法が知られている。しかしながら、この方法は、有害な副生成物を生じるとともに、原子効率が低いため、経済性、環境調和性の観点から好ましい方法とは言い難い。
【0003】
これに対して、アルコールをアルキル化剤として用いれば、副生成物は水であり、廃棄物の発生は大幅に抑制できる。しかし、アルコールは反応性に乏しいため、一段階で反応させることは困難であった。最近、ラネーニッケルを用いて、第1級アミンをアルコールによりアルキル化する方法が提案されている(非特許文献1)。しかし、この方法は、促進剤としてラネーニッケルを触媒量より多く用いる必要がある。また、ルテニウム触媒を用いてアミンをアルコールによりアルキル化する方法も提案されている(非特許文献2)。しかし、この方法では、高価な白金族金属を用いるため、工業的方法としては不利である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Chem. Commun., 2009, 404-406
【非特許文献2】J. Catal., 2009, 263, 205-208
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、安価で調製が容易で且つ生成物との分離が容易な不均一系触媒を用いて、アルコールとアミンから一段階で第2級又は第3級アミンを工業的に効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、アルミナ担持銀クラスターを触媒として用い、酸の存在下、アルコールと第1級又は第2級アミンとを反応させると、一段で、しかも高い収率で対応する第2級又は第3級アミンが生成することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、アルミナ担持銀触媒及び酸の存在下、下記式(1)
1OH (1)
(式中、R1は式中に示される酸素原子との結合部位に炭素原子を有する有機基を示す。但し、前記炭素原子は芳香環を構成しない)
で表されるアルコールと、下記式(2)
23NH (2)
(式中、R2、R3は、同一又は異なって、水素原子、又は式中に示される窒素原子との結合部位に炭素原子を有する有機基を示す。但し、R2及びR3のうち少なくとも一方は式中に示される炭素原子との結合部位に炭素原子を有する有機基である。R2、R3は、互いに結合して、隣接する窒素原子とともに環を形成していてもよい)
で表される第1級又は第2級アミンとを反応させて、下記式(3)
23NR1 (3)
(式中、R2、R3は前記に同じ。R1は式中に示される窒素原子との結合部位に炭素原子を有する有機基を示す。但し、前記炭素原子は芳香環を構成しない)
で表される第2級又は第3級アミンを得ることを特徴とするアミンの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アルミナ担持銀触媒という比較的安価で且つ調製容易な不均一系触媒を用いて、アルコールとアミンから一段階で対応するより置換数の多いアミンを収率よく製造することができる。また、嵩高いアルコール(sec−アルコール等)を用いても反応が速やかに進行し、嵩高い置換基を有するアミンをも効率よく製造できる。また、この方法は、ハロゲン化アルキルを用いる方法と比較して、多量の有害廃棄物が生じないという利点がある。さらに、触媒が不均一系触媒であるため、反応終了後、遠心分離、濾過等の簡易な分離手段により触媒を分離回収できる。また、分離回収した触媒は再利用が可能である。このように、本発明は、エネルギー、資源、環境、適用範囲等の各観点から、従来法に比べて遙かに有利なプロセスであり、本反応の触媒系はグリーンケミストリーの原則に適う環境調和型の新規触媒系といえる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明では、アルミナ担持銀触媒及び酸の存在下、前記式(1)で表されるアルコールと、前記式(2)で表される第1級又は第2級アミンとを反応させて、前記式(3)で表される第2級又は第3級アミンを生成させる。
【0010】
アルミナ担持銀触媒は公知の方法により調製できる。例えば、粉末状等のアルミナに銀化合物の水溶液を含浸させ、空気中、400〜800℃(好ましくは500〜700℃)程度の温度で焼成し、次いで水素気流下、例えば100〜400℃(好ましくは150〜300℃)程度の温度で還元することにより得ることができる。アルミナとしては、特に限定されず、α−アルミナ、γ−アルミナを使用できるが、特にγ−アルミナが好ましい。銀化合物としては、特に限定されず、硝酸銀、塩化銀、硫酸銀、酢酸銀、炭酸銀などを使用できるが、なかでも触媒調製の容易さから硝酸銀が好ましい。
【0011】
アルミナ担持銀触媒における、銀の担持量は、アルミナに対して、例えば0.2〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。担持されている銀の平均粒径は、例えば0.5〜30nm、好ましくは0.7〜3.5nmの範囲である。
【0012】
アルミナ担持銀触媒の使用量は、式(1)で表されるアルコールに対して、銀として、例えば0.1〜20モル%、好ましくは0.5〜12モル%、さらに好ましくは1.5〜8モル%である。
【0013】
酸としては、ルイス酸、プロトン酸のいずれであってもよいが、ルイス酸がより好ましい。ルイス酸としては、特に限定されず、例えば、塩化イットリウム、塩化ランタン、塩化セリウム、塩化サマリウム、塩化イッテルビウム等の周期表3族元素のハロゲン化物又はスルホン酸塩などの周期表3族元素化合物;塩化チタン、塩化ジルコニウム等の周期表4族元素のハロゲン化物又はスルホン酸塩などの周期表4族元素化合物;塩化鉄、臭化鉄、硫酸鉄、トリフルオロメタンスルホン酸鉄等の鉄のハロゲン化物又はスルホン酸塩等の鉄化合物;塩化コバルト等のコバルト化合物、塩化ニッケル等のニッケル化合物、塩化銅等の銅化合物、塩化亜鉛等の亜鉛化合物、塩化アルミニウム等のアルミニウム化合物、塩化ガリウム等のガリウム化合物、塩化インジウム等のインジウム化合物、塩化スズ等のスズ化合物、塩化アンチモン等のアンチモン化合物、塩化ビスマス等のビスマス化合物などが挙げられる。これらの中でも、塩化鉄等の鉄化合物(特に、塩化第二鉄等の3価の鉄化合物)、塩化アルミニウム等のアルミニウム化合物(特に3価のアルミニウム化合物)、塩化スズ等のスズ化合物(特に4価のスズ化合物)などが特に好ましい。また、ルイス酸としては、前記元素のハロゲン化物やトリフルオロメタンスルホン酸塩などのスルホン酸塩が好ましい。
【0014】
酸の使用量は、式(1)で表されるアルコールに対して、例えば1〜80モル%、好ましくは2〜30モル%、さらに好ましくは2.5〜10モル%である。
【0015】
式(1)で表されるアルコールにおいて、R1は式中に示される窒素原子との結合部位に炭素原子を有する有機基を示す。但し、前記炭素原子は芳香環を構成しない。このような有機基としては、本反応を阻害しないような有機基(例えば、本方法における反応条件下で非反応性の有機基)であればよく、例えば、炭化水素基及び/又は複素環式基を含有する基が挙げられる。有機基の炭素数は、例えば1〜25、好ましくは1〜15程度である。
【0016】
前記炭化水素基及び複素環式基には、置換基を有する炭化水素基及び複素環式基も含まれる。前記炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、これらが2以上結合した基、これらが芳香族炭化水素基と結合した基などが含まれる。
【0017】
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10)程度のアルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10)程度のアルケニル基;エチニル、プロピニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10)程度のアルキニル基などが挙げられる。
【0018】
脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロへキセニル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル、アダマンチル、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基などの橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0019】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)などが含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基には、アラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など)などが含まれる。
【0020】
好ましい炭化水素基には、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-15シクロアルキル基、C3-15シクロアルキル−C1-4アルキル基、C7-14アラルキル基等が含まれる。
【0021】
上記炭化水素基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基(炭化水素基置換カルバモイル基等)、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基(炭化水素基置換アミノ基等)、スルホ基、複素環式基などを有していてもよい。前記ヒドロキシル基やカルボキシル基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。また、脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基の環には芳香族性又は非芳香属性の複素環が縮合していてもよい。
【0022】
前記R1における有機基の例としての複素環式基を構成する複素環には、非芳香族性複素環、あるいは芳香族性複素環が結合した非芳香族性複素環が含まれる。このような非芳香族性複素環、芳香族性複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、オキシラン環などの3員環、オキセタン環などの4員環、フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、γ−ブチロラクトン環などの5員環、4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリン環などの6員環、ベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン環などの縮合環、3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン環、3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン環などの橋かけ環)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、チアジアゾール環などの5員環、4−オキソ−4H−チオピラン環などの6員環、ベンゾチオフェン環などの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール環などの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン環などの6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリン環などの縮合環など)などが挙げられる。上記複素環式基には、前記炭化水素基が有していてもよい置換基のほか、アルキル基(例えば、メチル、エチル基などのC1-4アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)などの置換基を有していてもよい。また、複素環を構成する窒素原子は保護基で保護されていてもよい。
【0023】
前記R1における有機基としては、1又は2以上の炭化水素基及び/又は複素環式基と、1又は2以上の連結基とで構成されていてもよい。連結基としては、例えば、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、エステル結合(−COO−)、アミド結合(−CONH−)、カルボニル基(−CO−)、これらが2以上結合した基などが挙げられる。
【0024】
1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、アリル基等の脂肪族炭化水素基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基、シクロへキシルメチル基等の脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基などが好ましい。
【0025】
式(1)で表されるアルコールは、第1級アルコール、第2級アルコール、第3級アルコールのいずれであってもよい。また、前記アルコールは、1価アルコールのほか、2価アルコールや3価アルコール等の多価アルコールであってもよい。式(1)で表されるアルコールの炭素数は、例えば2〜26、好ましくは2〜16程度である
【0026】
式(1)で表されるアルコールの代表的な例として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、t−アミルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、1−デカノール、1−ドデカノール等の脂肪族アルコール;シクロペンタンメタノール、シクロヘキサンメタノール、アダマンタンメタノール等の脂環式アルコール;ベンジルアルコール、4−フルオロベンジルアルコール、4−クロロベンジルアルコール、4−メチルベンジルアルコール、4−メトキシベンジルアルコール、2−フェネチルアルコール、1−フェネチルアルコール、ベンズヒドロール、トリチルアルコール、3−フェニル−1−プロパノール等の芳香族アルコール;3−ピリジンメタノール、2−フランメタノール等の複素環アルコール;エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等の2価アルコールなどが挙げられる。
【0027】
式(2)で表される第1級又は第2級アミンにおいて、R2、R3における、式中に示される窒素原子との結合部位に炭素原子を有する有機基としては、前記R1における有機基と同様のもののほか、芳香族炭化水素基(前記置換基を有していてもよい)、芳香族性複素環式基が挙げられる。この場合の有機基の炭素数も、例えば1〜25、好ましくは1〜15程度である。
【0028】
2、R3は、互いに結合して、隣接する窒素原子とともに環を形成していてもよい。このような環としては、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環などの5〜12員環が挙げられる。環は、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。
【0029】
2、R3としては、水素原子(但し、R2、R3は同時に水素原子であることはない);メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アリル基等の脂肪族炭化水素基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基、4−メチルフェニル基、ベンジル基等の脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基、シクロへキシルメチル基等の脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基などが好ましい。R2、R3は、互いに結合して、隣接する窒素原子とともに環を形成するのも好ましい。
【0030】
式(2)で表される第1級又は第2級アミンの炭素数は、例えば1〜40、好ましくは1〜20程度である。
【0031】
式(2)で表される第1級又は第2級アミンの代表的な例として、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、1−アダマンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、p−フルオロアニリン、1−ナフチルアミン等の第1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N−メチルアニリン等の鎖状の第2級アミン;ピロリジン、ピペリジン、モルホリン等の環状の第2級アミンなどが挙げられる。
【0032】
式(2)で表される第1級又は第2級アミンの使用量は、式(1)で表されるアルコール1モルに対して、例えば0.5〜10モル、好ましくは1〜5モル、さらに好ましくは1.2〜3モル程度である。
【0033】
反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。溶媒としては、反応に不活性な溶媒であればよく、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン;これらの混合溶媒などが挙げられる。これらのなかでも、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素が好ましい。
【0034】
反応温度は、例えば、50〜200℃、好ましくは80〜180℃、さらに好ましくは130〜170℃程度である。
【0035】
反応により、N−アルキル化反応が進行して、対応する式(3)で表される第2級又は第3級アミンが生成する。
【0036】
反応終了後、反応混合液を遠心分離、濾過等に付すことにより、アルミナ担持銀触媒を分離回収できる。回収した触媒はそのまま再利用してもよいが、例えば、回収した触媒を水等で洗浄した後、空気中で焼成し(約600℃)、次いで水素で還元(約150℃)することにより再生処理を施した後、反応系で再利用することもできる。
【0037】
反応生成物は、濾過、濃縮、抽出、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の手段により精製し、目的のアミンを単離することができる。
【0038】
本発明の方法では、触媒のターンオーバー数(銀基準)が大きい。このため、第2級又は第3級アミンを工業的に効率よく製造することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0040】
なお、担体に担持された銀の平均粒子径は、広域X線吸収微細構造(EXAFS)あるいは粉末X線回折により求めることができる。EXAFSによる算出方法においては、AgのK殻のX線吸収微細構造(X-ray absorption fine structure:XAFS)をSPring−8、BL−01B1にて室温で測定し、そこからEXAFSのAg−Ag配位数を得、A. Jentys, Phys. Chem. Chem. Phys., 1999, vol. 1, p. 4059 中の計算式より粒径を見積もることにより求めることができる。下記の調製例における銀の平均粒子径はEXAFSによる算出方法により求めた値である。
【0041】
調製例1(アルミナ担持銀触媒の調製)
γ−アルミナ(Sasol製アルミナ「Catapal B」を600℃にて3時間焼成することにより得られたもの)を0.5Mの硝酸銀水溶液に浸漬した。その後、減圧下80℃で蒸発乾固させ、得られた固体を600℃で1時間焼成した。次いで、水素気流下、300℃で10分間処理することにより、アルミナ担持銀触媒(銀の担持量:アルミナに対して1重量%、銀の平均粒子径:0.73nm)(「Ag/Al23−1」)を得た。
硝酸銀水溶液の使用量を変化させた以外は上記と同様の操作を行い、銀の担持量が3重量%、5重量%のアルミナ担持銀触媒[それぞれ、「Ag/Al23−3」(銀の平均粒子径:0.78nm)、「Ag/Al23−5」(銀の平均粒子径:0.84nm)を得た。
【0042】
調製例2(アルミナ担持ロジウム触媒の調製)
γ−アルミナ(Sasol製アルミナ「Catapal B」を600℃にて3時間焼成することにより得られたもの)を0.2Mの硝酸ロジウム水溶液に浸漬した。その後、減圧下80℃で蒸発乾固させ、得られた固体を600℃で1時間焼成した。次いで、水素気流下、300℃で10分間処理することにより、アルミナ担持ロジウム触媒(ロジウムの担持量:アルミナに対して1重量%)(「Rh/Al23−1」)を得た。
【0043】
調製例3(アルミナ担持白金触媒の調製)
γ−アルミナ(Sasol製アルミナ「Catapal B」を600℃にて3時間焼成することにより得られたもの)を0.2Mの硝酸白金水溶液に浸漬した。その後、減圧下80℃で蒸発乾固させ、得られた固体を600℃で1時間焼成した。次いで、水素気流下、300℃で10分間処理することにより、アルミナ担持白金触媒(白金の担持量:アルミナに対して1重量%)(「Pt/Al23−1」)を得た。
【0044】
調製例4(アルミナ担持ルテニウム触媒の調製)
γ−アルミナ(Sasol製アルミナ「Catapal B」を600℃にて3時間焼成することにより得られたもの)を0.2Mの塩化ルテニウム水溶液に浸漬した。その後、減圧下80℃で蒸発乾固させ、得られた固体を600℃で1時間焼成した。次いで、水素気流下、300℃で10分間処理することにより、アルミナ担持ルテニウム触媒(ルテニウムの担持量:アルミナに対して1重量%)(「Ru/Al23−1」)を得た。
【0045】
調製例5(アルミナ担持パラジウム触媒の調製)
γ−アルミナ(Sasol製アルミナ「Catapal B」を600℃にて3時間焼成することにより得られたもの)を0.2Mの硝酸パラジウム水溶液に浸漬した。その後、減圧下80℃で蒸発乾固させ、得られた固体を600℃で1時間焼成した。次いで、水素気流下、300℃で10分間処理することにより、アルミナ担持パラジウム触媒(パラジウムの担持量:アルミナに対して1重量%)(「Pd/Al23−1」)を得た。
【0046】
調製例6(アルミナ担持金触媒の調製)
濃度10mMの塩化金(III)酸水溶液を約70℃に保持しながら、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH7に調節した後、γ−アルミナ(Sasol製アルミナ「Catapal B」を600℃にて3時間焼成することにより得られたもの)を添加し、約70℃に保持しながら、1時間撹拌した。その後、静置して上澄み液を除去し、残留物にイオン交換水300mLを加えて、室温で5分間撹拌した後、上澄み液を除去するという洗浄操作を3回繰り返した。残留物を濾過し、100℃で12時間乾燥させ、300℃で2時間、空気中で焼成することにより、アルミナ担持金触媒(金の担持量:アルミナに対して1重量%)(「Au/Al23−1」)を得た。
【0047】
調製例7(アルミナ担持銅触媒の調製)
γ−アルミナ(Sasol製アルミナ「Catapal B」を600℃にて3時間焼成することにより得られたもの)を0.2Mの硝酸銅水溶液に浸漬した。その後、減圧下80℃で蒸発乾固させ、得られた固体を600℃で1時間焼成した。次いで、水素気流下、300℃で10分間処理することにより、アルミナ担持銅触媒(銅の担持量:アルミナに対して8重量%)(「Cu/Al23−8」)を得た。
【0048】
調製例8(シリカ担持銀触媒の調製)
シリカ(富士シリシア製「Q−15」)を0.5Mの硝酸銀水溶液に浸漬した。その後、減圧下80℃で蒸発乾固させ、得られた固体を600℃で1時間焼成した。次いで、水素気流下、300℃で10分間処理することにより、シリカ担持銀触媒(銀の担持量:シリカに対して5重量%)(「Ag/SiO2−5」)を得た。
【0049】
調製例9(ジルコニア担持銀触媒の調製)
ジルコニウムオキシ硝酸塩・2水和物を蒸留水中にて水酸化アンモニウム水溶液(1.0mol/L)を加えることによって生じる沈殿を蒸留水で3回洗浄し、さらに100℃で乾燥することによりジルコニアを得た。このジルコニアを0.5Mの硝酸銀水溶液に浸漬した。その後、減圧下80℃で蒸発乾固させ、得られた固体を600℃で1時間焼成した。次いで、水素気流下、300℃で10分間処理することにより、ジルコニア担持銀触媒(銀の担持量:ジルコニアに対して5重量%)(「Ag/ZrO2−5」)を得た。
【0050】
調製例10(セリア担持銀触媒の調製)
セリア(触媒学会が提供する参照触媒「JRC−CEO−1」)を0.5Mの硝酸銀水溶液に浸漬した。その後、減圧下80℃で蒸発乾固させ、得られた固体を600℃で1時間焼成した。次いで、水素気流下、300℃で10分間処理することにより、セリア担持銀触媒(銀の担持量:セリアに対して5重量%)(「Ag/CeO2−5」)を得た。
【0051】
調製例11(マグネシア担持銀触媒の調製)
マグネシア(触媒学会が提供する参照触媒「JRC−MGO−1」)を0.5Mの硝酸銀水溶液に浸漬した。その後、減圧下80℃で蒸発乾固させ、得られた固体を600℃で1時間焼成した。次いで、水素気流下、300℃で10分間処理することにより、マグネシア担持銀触媒(銀の担持量:マグネシアに対して5重量%)(「Ag/MgO−5」)を得た。
【0052】
実施例1
ベンジルアルコール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Ag/Al23−1(調製例1)0.1g、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(0.05mmol)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で24時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリンが67%の収率で生成していた。ベンジルアルコールの転化率は100%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが1%の収率で副生していた。
【0053】
実施例2
ベンジルアルコール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Ag/Al23−3(調製例1)0.1g、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(0.05mmol)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で24時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリンが72%の収率で生成していた。ベンジルアルコールの転化率は100%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが1%の収率で副生していた。
【0054】
実施例3
ベンジルアルコール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Ag/Al23−5(調製例1)0.1g(Ag:4モル%対ベンジルアルコール)、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(0.05mmol)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で24時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリンが94%の収率で生成していた。ベンジルアルコールの転化率は100%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが1%の収率で副生していた。
【0055】
比較例1
ベンジルアルコール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Au/Al23−1(調製例6)0.1g、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(0.05mmol)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で24時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリンが29%の収率で生成していた。ベンジルアルコールの転化率は99%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが12%の収率で副生していた。
【0056】
比較例2
ベンジルアルコール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Pt/Al23−1(調製例3)0.1g、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(0.05mmol)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で24時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリンが1%の収率で生成していた。ベンジルアルコールの転化率は100%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが24%の収率で副生していた。
【0057】
比較例3
ベンジルアルコール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Rh/Al23−1(調製例2)0.1g、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(0.05mmol)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で24時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリンが55%の収率で生成していた。ベンジルアルコールの転化率は100%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが6%の収率で副生していた。
【0058】
比較例4
ベンジルアルコール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Ru/Al23−1(調製例4)0.1g、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(0.05mmol)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で24時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリンが9%の収率で生成していた。ベンジルアルコールの転化率は71%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが28%の収率で副生していた。
【0059】
比較例5
ベンジルアルコール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Pd/Al23−1(調製例5)0.1g、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(0.05mmol)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で24時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリンが3%の収率で生成していた。ベンジルアルコールの転化率は99%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが17%の収率で副生していた。
【0060】
比較例6
ベンジルアルコール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Cu/Al23−8(調製例7)0.1g、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(0.05mmol)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で24時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリンが2%の収率で生成していた。ベンジルアルコールの転化率は61%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが28%の収率で副生していた。
【0061】
比較例7
ベンジルアルコール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Ag/SiO2−5(調製例8)0.1g、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(0.05mmol)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で24時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリンが6%の収率で生成していた。ベンジルアルコールの転化率は71%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが6%の収率で副生していた。
【0062】
比較例8
ベンジルアルコール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Ag/ZrO2−5(調製例9)0.1g、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(0.05mmol)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で24時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリンが4%の収率で生成していた。ベンジルアルコールの転化率は60%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが15%の収率で副生していた。
【0063】
比較例9
ベンジルアルコール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Ag/CeO2−5(調製例10)0.1g、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(0.05mmol)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で24時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリンが2%の収率で生成していた。ベンジルアルコールの転化率は50%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが19%の収率で副生していた。
【0064】
比較例10
ベンジルアルコール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Ag/MgO−5(調製例11)0.1g、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(0.05mmol)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で24時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリン生成していなかった。ベンジルアルコールの転化率は35%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが11%の収率で副生していた。
【0065】
実施例4
塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(0.05mmol)の代わりに、塩化ランタン(LaCl3・7H2O)(0.05mmol)を用いた以外は、実施例3と同様の操作を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリンが67%の収率で生成していた。ベンジルアルコールの転化率は100%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが9%の収率で副生していた。
【0066】
実施例5
塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(0.05mmol)の代わりに、塩化イットリウム(YCl3・6H2O)(0.05mmol)を用いた以外は、実施例3と同様の操作を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリンが74%の収率で生成していた。ベンジルアルコールの転化率は100%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが1%の収率で副生していた。
【0067】
実施例6
塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(0.05mmol)の代わりに、塩化イッテルビウム(YbCl3・6H2O)(0.05mmol)を用いた以外は、実施例3と同様の操作を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリンが73%の収率で生成していた。ベンジルアルコールの転化率は100%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが1%の収率で副生していた。
【0068】
実施例7
塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(0.05mmol)の代わりに、塩化アルミニウム(AlCl3・6H2O)(0.05mmol)を用いた以外は、実施例3と同様の操作を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリンが91%の収率で生成していた。ベンジルアルコールの転化率は100%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが1%の収率で副生していた。
【0069】
実施例8
塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(0.05mmol)の代わりに、塩化スズ(SnCl4・5H2O)(0.05mmol)を用いた以外は、実施例3と同様の操作を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリンが92%の収率で生成していた。ベンジルアルコールの転化率は100%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが3%の収率で副生していた。
【0070】
実施例9
アニリンの使用量を1.0mmolとした以外は、実施例3と同様の操作を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリンが37%の収率で生成していた。ベンジルアルコールの転化率は100%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが46%の収率で副生していた。
【0071】
実施例10
アニリンの使用量を3.0mmolとした以外は、実施例3と同様の操作を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリンが52%の収率で生成していた。ベンジルアルコールの転化率は100%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが36%の収率で副生していた。
【0072】
比較例11
塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(0.05mmol)を添加しなかったこと以外は、実施例3と同様の操作を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルアニリンが16%の収率で生成していた。ベンジルアルコールの転化率は100%であった。なお、N−ベンジリデンアニリンが63%の収率で副生していた。
【0073】
実施例11
ベンジルアルコール(1.0mmol)、o−クロロアニリン(2.0mmol)、Ag/Al23−5(調製例1)0.1g(Ag:4モル%対アルコール)、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(5モル%対アルコール)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で18時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジル−o−クロロアニリンが93%の収率で生成していた。
【0074】
実施例12
ベンジルアルコール(1.0mmol)、m−トルイジン(2.0mmol)、Ag/Al23−5(調製例1)0.1g(Ag:4モル%対アルコール)、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(5モル%対アルコール)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で6時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジル−m−トルイジンが78%の収率で生成していた。なお、N−ベンジリデン−m−トルイジンが1%の収率で副生していた。
【0075】
実施例13
ベンジルアルコール(1.0mmol)、4−フルオロアニリン(2.0mmol)、Ag/Al23−5(調製例1)0.1g(Ag:4モル%対アルコール)、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(5モル%対アルコール)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で6時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジル−4−フルオロアニリンが90%の収率で生成していた。なお、N−ベンジリデン−4−フルオロアニリンが4%の収率で副生していた。
【0076】
実施例14
ベンジルアルコール(1.0mmol)、N−メチルアニリン(2.0mmol)、Ag/Al23−5(調製例1)0.1g(Ag:4モル%対アルコール)、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(5モル%対アルコール)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で24時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジル−N−メチルアニリンが80%の収率で生成していた。
【0077】
実施例15
ベンジルアルコール(1.0mmol)、ジベンジルアミン(2.0mmol)、Ag/Al23−5(調製例1)0.1g(Ag:4モル%対アルコール)、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(5モル%対アルコール)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で20時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、トリベンジルアミンが59%の収率で生成していた。
【0078】
実施例16
4−フルオロベンジルアルコール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Ag/Al23−5(調製例1)0.1g(Ag:4モル%対アルコール)、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(5モル%対アルコール)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で4時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−4−フルオロベンジルアニリンが32%の収率で生成していた。なお、N−4−フルオロベンジリデンアニリンが12%の収率で副生していた。
【0079】
実施例17
4−メチルベンジルアルコール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Ag/Al23−5(調製例1)0.1g(Ag:4モル%対アルコール)、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(5モル%対アルコール)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で4時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−4−メチルベンジルアニリンが68%の収率で生成していた。なお、N−4−メチルベンジリデンアニリンが20%の収率で副生していた。
【0080】
実施例18
4−メトキシベンジルアルコール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Ag/Al23−5(調製例1)0.1g(Ag:4モル%対アルコール)、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(5モル%対アルコール)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で15時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−4−メトキシベンジルアニリンが76%の収率で生成していた。なお、イミンは副生していなかった。
【0081】
実施例19
3−ピリジンメタノール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Ag/Al23−5(調製例1)0.1g(Ag:4モル%対アルコール)、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(5モル%対アルコール)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で72時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−3−ピリジルメチルアニリンが16%の収率で生成していた。なお、イミンは副生していなかった。
【0082】
実施例20
2−フランメタノール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Ag/Al23−5(調製例1)0.1g(Ag:4モル%対アルコール)、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(5モル%対アルコール)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で72時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−2−フリルメチルアニリンが33%の収率で生成していた。なお、イミンは副生していなかった。
【0083】
実施例21
1−フェネチルアルコール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Ag/Al23−5(調製例1)0.1g(Ag:4モル%対アルコール)、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(5モル%対アルコール)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で8時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−1−フェニルエチルアニリンが62%の収率で生成していた。なお、対応するイミンが1%の収率で副生していた。
【0084】
実施例22
ベンズヒドロール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Ag/Al23−5(調製例1)0.1g(Ag:4モル%対アルコール)、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(5モル%対アルコール)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で24時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−1−フェニルエチルアニリンが70%の収率で生成していた。なお、対応するイミンが9%の収率で副生していた。
【0085】
実施例23
ベンジルアルコール(1.0mmol)、m−クロロアニリン(2.0mmol)、Ag/Al23−5(調製例1)0.1g(Ag:4モル%対アルコール)、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(5モル%対アルコール)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で24時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジル−m−クロロアニリンが85%の収率で生成していた。なお、イミンは副生していなかった。
【0086】
実施例24
4−t−ブチルベンジルアルコール(1.0mmol)、アニリン(2.0mmol)、Ag/Al23−5(調製例1)0.1g(Ag:4モル%対アルコール)、塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)(5モル%対アルコール)及びo−キシレン2mLの混合物を、窒素雰囲気下、150℃で4時間撹拌した。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−4−t−ブチルベンジルアニリンが81%の収率で生成していた。なお、N−4−t−ブチルベンジリデンアニリンが2%の収率で副生していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ担持銀触媒及び酸の存在下、下記式(1)
1OH (1)
(式中、R1は式中に示される酸素原子との結合部位に炭素原子を有する有機基を示す。但し、前記炭素原子は芳香環を構成しない)
で表されるアルコールと、下記式(2)
23NH (2)
(式中、R2、R3は、同一又は異なって、水素原子、又は式中に示される窒素原子との結合部位に炭素原子を有する有機基を示す。但し、R2及びR3のうち少なくとも一方は式中に示される炭素原子との結合部位に炭素原子を有する有機基である。R2、R3は、互いに結合して、隣接する窒素原子とともに環を形成していてもよい)
で表される第1級又は第2級アミンとを反応させて、下記式(3)
23NR1 (3)
(式中、R2、R3は前記に同じ。R1は式中に示される窒素原子との結合部位に炭素原子を有する有機基を示す。但し、前記炭素原子は芳香環を構成しない)
で表される第2級又は第3級アミンを得ることを特徴とするアミンの製造方法。

【公開番号】特開2011−51935(P2011−51935A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202630(P2009−202630)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年3月18日 インターネットアドレス「http://www.shokubai.org/meeting/topics.html」に発表
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】