説明

アミン化合物およびそれを用いた両親媒性化合物の製造法

【課題】標的特異的な薬物キャリア微粒子作成のために、標的特異的なリガンド構造を有する両親媒性化合物への誘導化が容易に出来るアミン化合物およびそれを用いた両親媒性化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】下記の一般式(I)のアミン化合物と一般式(III)のカルボン酸とを縮合させることにより、一般式(IV)の標的特異性リガンド構造を有する両親媒性化合物の製造法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内の特定の臓器、組織又は部位に薬物を送達させるための標的特異的なリガンド構造を有する両親媒性化合物の製造における合成中間体であるアミン化合物、およびそれを合成中間体とする両親媒性化合物の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物に標的特異性を付与する手法として、作用部位の臓器や組織の細胞表面物質(レセプター)に高い親和性を示すリガンドで薬剤等を直接修飾したり、リガンドで修飾した粒子製剤に薬剤等を担持する手法が期待されており、いろいろな目的で検討されている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
このような手法の代表的なものとして、フォスファチジルエタノールアミン部分を有するリン脂質に標的特異的なリガンドを付与し、リポソームなどの脂質微粒子に用いることが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1では、蛋白質およびポリアルキレングリコールを併含するリポソームを作製するために、ポリアルキレングリコールの一端にマレイミド基を有し、かつ他端にフォスファチジルエタノールアミン部分を有するリン脂質誘導体をリポソームの構成成分として用いることが提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、核酸医薬を標的特異的に細胞内送達するための製剤として、葉酸−ポリエチレングリコール−ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミンにより修飾されたナノ粒子が提案されている。
【0006】
しかしながら、標的特異的なリガンドを修飾した両親媒性化合物の原料として、このようなフォスファチジルエタノールアミン部分を有するリン脂質は、天然由来、合成由来のいずれにしても原料が高価であり、精製・合成に多段階のプロセスを必要とする。さらに、工程中の収率も低いため実用的であるとはいえない。また、フォスファチジルエタノールアミン部分を有する標的特異的なリガンド修飾リン脂質化合物は、リポソームや脂質ナノ粒子(リピッドナノスフェア)などのリン脂質系ナノ粒子の修飾には好適であるが、構造変換が困難なため、生分解性ポリマーなどの高分子系微粒子に修飾するための誘導化が難しい。
【0007】
また、このようなリン脂質由来の両親媒性化合物に比べ合成・構造変換が容易にできる脂質化合物が見出され、その脂質化合物から形成したナノサイズの微粒子が標的特異的な薬物の送達に効果的であることが報告されている(特許文献3参照)。特許文献3に記載されている化合物は、疎水基、分子同士の凝集性を高めるために水素結合性基を配置し、さらに適度の柔軟性を有する鎖状親水性基およびリガンド構造を導入した化合物である。これら化合物は、疎水基と水素結合性基の結合体に鎖状親水性基を結合したリガンドを反応させて製造されている。しかしながら、この製造法では、目的化合物や中間体の単離収率が悪く、収率に再現性もないため、大量合成が出来ず、コスト的に不利であった。また、多様なリガンド構造を有する多種の化合物の製造には、鎖状親水性基を結合したリガンドをその都度合成する必要があるため、誘導化も困難であった。
【特許文献1】特開平6−220070号公報
【特許文献2】特開2006−111591号公報
【特許文献3】国際公開第2006/028129号パンフレット
【非特許文献1】エフ・マルクッシー(F. Marcucci)ら、外1名、ドラッグ・ディスカバリー・トゥデー(Drug Discovery Today)、2004年、第9巻、p.219−228
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、従来、標的特異的なリガンド構造を有する両親媒性化合物は、合成コストが高く、誘導化も困難だった。
【0009】
本発明の目的は、安価な原料を用いて大量合成が可能であり、標的特異的なリガンド構造を有する両親媒性化合物の製造が容易な合成中間体、およびこの合成中間体を用いた両親媒性化合物の効率的な製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、分子構造の適切な位置に水素結合性基を配置して分子同士の凝集性を高めつつ、適度の柔軟性を有する鎖状親水性基を導入した特定構造のアミン化合物を合成中間体として用いれば、収率良く様々な種類の置換基を導入した両親媒性化合物への誘導化が可能となり、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は上記目的を達成するために、主として下記の構成を有する。
【0012】
すなわち、本発明は、下記の一般式(I)
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、mは2〜80の整数を表し、XはNR、O、またはSを表し、RおよびRは独立して8〜18のアルキル基、炭素数8〜18のアルケニル基、炭素数4〜18のシクロアルキルアルキル基または炭素数8〜18のアラルキル基を表し、Rは水素または一般式(II)
【0015】
【化2】

【0016】
で表される置換基を表し、ここで、Zは、NR、O、またはSを表し、Rは水素またはメチル基を表し、Rは炭素数8〜18のアルキル基、炭素数8〜18のアルケニル基、炭素数4〜18のシクロアルキルアルキル基または炭素数8〜18のアラルキル基を表し、nは0〜4の整数を表わす。)で示されるアミン化合物を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、一般式(I)
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、m、X、RおよびRは請求項1記載の定義と同じである。)
で示されるアミン化合物と、標的特異性リガンド構造を含む化学基Rを有する一般式(III)
【0020】
【化4】

【0021】
で表されるカルボン酸又は該カルボン酸誘導体とを反応させることを特徴とする、一般式(IV)
【0022】
【化5】

【0023】
(式中、m、X、R、RおよびRは前記定義と同じである。)で示される標的特異性リガンド構造を有する両親媒性化合物の製造法を提供するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明のアミン化合物を合成中間体として用いる標的特異的なリガンド構造を有する両親媒性化合物の製造法は、従来の製造法に比べ、容易で、低コストで、大量合成が可能なものである。従って、本発明により、優れた標的特異性を発現する両親媒性化合物を効率よく提供することが出来るようになる。また、本発明によれば、薬物送達の目的(標的部位)に応じて、標的特異性リガンド構造を含む化学基Rを適宜変更したカルボン酸又はその誘導体を用いることにより、本発明のアミン化合物を共通の合成中間体として、目的とする標的特異性リガンド構造を有する種々の両親媒性化合物を容易に製造することが可能になる。
【0025】
本発明によって提供される標的特異性リガンド構造を有する両親媒性化合物は、生分解性ポリマーなど広範囲な材料の微粒子、また標的特異的なリガンド構造を有するDDS用微粒子や薬物送達用のキャリアーとして利用できることから、有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明のアミン化合物は、一般式(I)で表される。
一般式(I)において、nは、2〜80の整数であり、好ましくは2〜40の整数であり、さらに好ましくは2〜8の整数である。
【0028】
Xは、NR、O、またはSであり、好ましくはNRまたはOである。
【0029】
およびRは、独立して炭素数8〜18のアルキル基、炭素数8〜18のアルケニル基、炭素数4〜18のシクロアルキルアルキル基または炭素数8〜18のアラルキル基である。RとRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
炭素数8〜18のアルキル基としては、直鎖状または分枝状のオクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシルが挙げられ、好ましくは直鎖状または分枝状のドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、オクタデシルである。
【0031】
炭素数8〜18のアルケニル基としては、好ましくは二重結合を1〜3個、より好ましくは二重結合を1個含む直鎖状または分枝状の炭素数8〜18のアルケニルが挙げられる。二重結合を1個含む直鎖状または分枝状アルケニルとしては、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニルが挙げられ、これらのなかでも3−オクテニル、5−ノネニル、7−テトラデセニル、9−オクタデセニルがさらに好ましい。
【0032】
炭素数4〜18のシクロアルキルアルキル基としては、例えば、シクロプロピルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルヘキシル、シクロヘキシルデシルなどが挙げられ、好ましくはシクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチルである。
【0033】
炭素数8〜18のアラルキル基としては、炭素数6〜14のアリールと炭素数2〜4のアルキル基とからなるアラルキルが好ましく、炭素数8〜18のフェニルアルキルまたはナフチルアルキルがより好ましい。具体的には、フェネチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、(1−ナフチル)メチル、2−(1−ナフチル)エチル、2−(2−ナフチル)エチルがさらに好ましい。
【0034】
は、水素または一般式(II)で表される置換基である。XがNRである場合は、Rは水素であることが好ましい。XがOである場合は、Rは一般式(II)で表される置換基であることが好ましい。
【0035】
一般式(II)において、Zは、NR、O、またはSであり、好ましくはNRまたはOである。
【0036】
は水素またはメチル基である。
【0037】
は炭素数8〜18のアルキル基、炭素数8〜18のアルケニル基、炭素数4〜18のシクロアルキルアルキル基または炭素数8〜18のアラルキル基である。
【0038】
炭素数8〜18のアルキル基としては、直鎖状または分枝状のオクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシルが挙げられ、好ましくは直鎖状または分枝状のドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、オクタデシルである。
【0039】
炭素数8〜18のアルケニル基としては、好ましくは二重結合を1〜3個、より好ましくは二重結合を1個含む直鎖状または分枝状の炭素数8〜18のアルケニルが挙げられる。二重結合を1個含む直鎖状または分枝状アルケニルとしては、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニルが挙げられ、これらのなかでも3−オクテニル、5−ノネニル、7−テトラデセニル、9−オクタデセニルがさらに好ましい。
【0040】
炭素数4〜18のシクロアルキルアルキル基としては、例えば、シクロプロピルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルヘキシル、シクロヘキシルデシルなどが挙げられ、好ましくはシクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチルである。
【0041】
炭素数8〜18のアラルキル基としては、炭素数6〜14のアリールと炭素数2〜4のアルキル基とからなるアラルキルが好ましく、炭素数8〜18のフェニルアルキルまたはナフチルアルキルがより好ましい。具体的には、フェネチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、(1−ナフチル)メチル、2−(1−ナフチル)エチル、2−(2−ナフチル)エチルがさらに好ましい。
【0042】
以下に、本発明の一般式(I)で表されるアミン化合物の製造法の例をスキーム1に示す。(式中、各記号は、前記定義と同じ)
【0043】
【化6】

【0044】
コハク酸誘導体(VI)に対して、ジアミン誘導体(IX)を縮合させる工程1は、適当な脱水剤または官能基の活性化剤を用いる方法によって実施することが出来る。
【0045】
工程1の縮合反応に関与するアミノ基、カルボキシル基は公知の方法で活性化しておいてもよく、縮合反応の際にカルボキシル基の活性化を行っても良い。活性化する方法としては、例えば、(i) 原料のカルボン酸を対応する活性エステル〔置換フェノール類(例えば、ペンタクロロフェノ−ル、2,4,5-トリクロロフェノール、2,4-ジニトロフェノ-ル、p-ニトロフェノールなど)、N-置換イミド類(例えば、N−ハイドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、N−ハイドロキシスクシンイミド、N−ハイドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾールなど)などとのエステル〕、カルボン酸無水物、アジド、酸クロライド、混合酸無水物などの反応性誘導体に変換してこれを用いる方法、(ii) 2,2’−ジピリジルジスルフィド+ホスフィン(向山法)、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド+アディティブ(N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド(HOBt)、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド(HONB)など)、ウッドワード試薬K、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェイト(BOP)等を活性化剤として用いる方法などが挙げられる。
【0046】
縮合反応は、通常反応を阻害しない溶媒中で行うことができる。このような溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、エタノール、メタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、酢酸エチルなどのエステル類、N−メチルピロリドン、N−メチルモルホリン、水などである。反応温度は、好ましくは−30℃〜50℃、さらに好ましくは0℃〜40℃である。好ましい反応条件の組み合わせとしては、縮合剤としてDCCやBOPを用い、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、クロロホルムを用い、反応温度は20℃〜35℃で実施することができる。反応時間は、例えば、10分〜24時間である。
【0047】
化合物(VII)の精製は、カラムクロマトグラフィー法など一般的な精製方法により行うことができる。
【0048】
工程2は、Boc基(tert−ブトキシカルボニル基)を取り除く工程であり、適当な酸を作用させる方法によって実施することが出来る。
【0049】
酸としては、有機酸、無機酸のどちらを用いても良く、有機酸としてはトリフルオロ酢酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸などが好ましく、無機酸としては塩化水素酸、フッ化水素酸などが好ましい。とくに好ましくは、トリフルオロ酢酸、またはフッ化水素酸である。
【0050】
溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、エタノール、メタノールなどのアルコール類などが用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
反応温度は、好ましくは−10℃〜50℃、さらに好ましくは0℃〜40℃である。反応時間は、例えば、10分〜24時間である。
【0052】
化合物(I)の精製は、カラムクロマトグラフィー法など一般的な精製方法により行うことができる。
【0053】
工程3は、コハク酸誘導体(VI)のコハク酸部位を環化し、コハク酸イミド誘導体(VIII)に変換する工程である。
【0054】
コハク酸イミド誘導体の製造方法としては、上記のコハク酸誘導体に無水酢酸を作用させてイミド環を構築させるのが好ましい。無水酢酸が反応溶媒としても用いられる。反応温度は、好ましくは30℃〜100℃、さらに好ましくは70℃〜90℃である。反応時間は、例えば、1時間〜12時間である。
【0055】
工程4は、コハク酸イミド誘導体(VIII)のイミド環にジアミン(X)を反応させる工程である。反応溶媒には、コハク酸イミド誘導体とジアミンの両者を溶解する溶媒が使用でき、例えばクロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)が好ましく用いられる。反応を速く行わせるためには、コハク酸イミド誘導体とジアミンのみを混合させるだけの無溶媒系で行うのが特に好ましい。反応温度は、好ましくは30℃〜100℃、さらに好ましくは70℃〜80℃である。反応時間は、例えば、2時間〜24時間である。
【0056】
コハク酸イミド誘導体に(VIII)ジアミン(X)を反応させてアミン化合物(I)を製造する方法は、上記脱水剤や官能基の活性化剤を用いた縮合反応に比べ反応剤を取り除く手間を省け、精製が簡便である。また、本反応は無溶媒系で行うことができることから、コスト的にも環境的にも有用である。
【0057】
コハク酸誘導体(VI)のうち、Rが水素である化合物(XI)は、下記に示すスキーム2の工程によって製造できる(式中、各記号は、前記定義と同じ)。
【0058】
【化7】

【0059】
工程5は、グリシン誘導体(XII)を原料として用い、RXHと縮合する工程である。この工程は、スキーム1に示した化合物(I)製造工程の工程1と同様の製造条件で実施できる。
【0060】
工程6は、Boc基を脱保護する工程であって、スキーム1に示した化合物(I)製造工程の工程2と同様の製造条件で実施できる。
【0061】
工程7は、化合物(XIV)を無水コハク酸と縮合させる工程である。クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの溶媒中、無水コハク酸(好ましくは2当量)と、ジイソプロピルエチルアミン(好ましくは4当量)を添加して反応させることによって実施できる。反応温度は、特に限定されないが、通常、室温〜40℃程度であり、反応時間は、1〜6時間である。
【0062】
コハク酸誘導体(VI)のうち、Rが一般式(II)で表される置換基であり、XとZがOである化合物(XV)は、下記に示すスキーム3の工程によって製造できる(式中、各記号は、前記定義と同じ)。
【0063】
【化8】

【0064】
工程8は、グルタミン酸(XVI)を、トルエン溶媒中、1.4当量のp−トルエンスルホン酸の存在下、アルコールROH(好ましくは2.6当量)を共沸条件化で反応させることによって実施できる。反応温度は、通常、120〜140℃であり、反応時間は2〜8時間である。
【0065】
工程9は、化合物(XVII)を無水コハク酸と縮合させる工程である。化合物(XI)製造工程の工程7と同様に実施できる。
【0066】
コハク酸誘導体(VI)において、Rが一般式(II)で表される置換基であり、XがNRであり、ZがNRである化合物(XVIII)は、下記に示すスキーム4の工程によって製造できる。(式中、各記号は、前記定義と同じ)
【0067】
【化9】

【0068】
工程10は、化合物(XIX)をアミンRNHR及びアミンRNHRとそれぞれ縮合させる工程である。各アミンとの縮合反応は、スキーム1に示した化合物(I)製造工程の工程1と同様の製造条件で実施できる。アミンRNHRとアミンRNHRが同一の場合は、1回の縮合反応で実施可能である。アミンRNHRとアミンRNHRが異なる場合は、化合物(XIX)の2つのカルボキシル基の一方を適当な保護基で保護し、他方のフリーのカルボキシル基と一方のアミンとの縮合反応を行い、保護基を脱保護した後、他方のアミンとの縮合反応を行うことで実施できる。
【0069】
工程11は、Boc基を脱保護する工程であって、スキーム1に示した化合物(I)製造工程の工程2と同様の製造条件で実施できる。
【0070】
工程12は、化合物(XXI)を無水コハク酸と縮合させる工程であって、スキーム2に示した化合物(XI)製造工程の工程7と同様の製造条件で実施できる。
【0071】
本発明の一般式(I)で示されるアミン化合物は、標的特異性リガンド構造を含む化学基Rを有するカルボン酸誘導体(III)又はその誘導体を結合することにより、標的特異性リガンド構造を有する両親媒性化合物(IV)に変換することが出来る。合成中間体としてアミン化合物(I)を用いることにより、従来の両親媒性化合物(IV)の製造法に比べ、低コストで、両親媒性化合物(IV)が容易に製造可能になる。また、本変換によれば、薬物送達の目的(標的部位)に応じて、標的特異性リガンド構造を含む化学基Rを適宜変更したカルボン酸誘導体を用いることで、目的とする標的特異性リガンド構造を有する種々の両親媒性化合物の製造が可能となる。
【0072】
本発明における前記両親媒性化合物(IV)は、下記に示すスキーム5の工程によって製造できる。(式中、各記号は、前記定義と同じ。)
【0073】
【化10】

【0074】
工程13は、は、標的特異性リガンド構造を含む化学基Rを有するカルボン酸R−COOH(III)又はその誘導体をアミン化合物(I)と縮合させる工程である。
【0075】
アミン化合物(I)に、標的特異性リガンド構造を含む化学基Rを有するカルボン酸(III)又はカルボン酸誘導体を縮合させる方法のうち、カルボン酸(III)を直接縮合させる方法としては、ペプチド合成に使用できる適当な縮合剤またはカルボキシル基を活性化エステルを経由して縮合させる活性化剤を用いる方法が好ましい。具体的には、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ウッドワード試薬K、カルボニルジイミダゾール(CDI)、2,2’−ジピリジルジスルフィド+ホスフィン、DCC/N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド(HONB)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC;水溶性カルボジイミド)、シアノリン酸ジエチル(DEPC)、1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミドを用いる方法等を好ましく用いることができる。
【0076】
アミン化合物(I)に、カルボン酸(III)の誘導体を縮合させる方法としては、カルボン酸(III)の反応性誘導体を用いることが好ましい。、カルボン酸(III)の誘導体としては、例えば酸ハライド(例えば、酸クロライド、酸ブロマイド等)、酸アジド、酸無水物、混合酸無水物(例えば、(i) モノC1−6アルキル炭酸混合酸無水物(例えば、遊離酸とモノメチル炭酸、モノエチル炭酸、モノイソプロピル炭酸、モノイソブチル炭酸、モノtert−ブチル炭酸、モノベンジル炭酸、モノ(p−ニトロベンジル)炭酸、モノアリル炭酸などとの混合酸無水物)、(ii) C1−6脂肪族カルボン酸混合酸無水物(例えば、遊離酸と酢酸、トリクロロ酢酸、シアノ酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、アセト酢酸などとの混合酸無水物)、(iii) C7−12芳香族カルボン酸混合酸無水物(例えば、遊離酸と安息香酸、p−トルイル酸、p−クロロ安息香酸などとの混合酸無水物)、(iv) 有機スルホン酸混合酸無水物(例えば、遊離酸とメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの混合酸無水物)等)、活性アミド、活性エステル(例えば、ジエトキシリン酸エステル、ジフェノキシリン酸エステル、p−ニトロフェニルエステル、2,4−ジニトロフェニルエステル等)、活性チオエステル(例えば、2−ピリジルチオールエステル、2−ベンゾチアゾリルチオールエステル等)などを用いることができる。
【0077】
アミン化合物(I)とカルボン酸(III)又はカルボン酸誘導体との縮合反応は、使用する縮合剤、活性化剤、カルボン酸誘導体に応じた適切な溶媒中で行うことができる。溶媒としては、例えば無水または含水のN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリルあるいはこれらの適宜の混合物があげられる。反応温度は、通常、−20℃〜50℃、好ましくは−10℃ 〜30℃である。好ましい反応条件の組み合わせとして、DCC、カルボニルジイミダゾール、DCC/HONB、WSC、シアノリン酸ジエチル(DEPC)を使用する場合は、溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、クロロホルムを用い、反応温度は20℃〜35℃である。反応時間は1〜100時間、好ましくは2〜40時間である。
【0078】
このようにして得られる両親媒性化合物(IV)は、公知の分離精製手段、例えば濃縮、減圧濃縮、溶媒抽出、晶出、再結晶、転溶、クロマトグラフィーなどにより単離精製することができる。
【0079】
本発明において、標的特異性リガンドとは、標的部位、すなわち標的とする生体内の特定の臓器、組織又は部位に薬物を送達させることを目的として、該標的部位に存在する該薬物の受容体に対して特異的な結合または親和性を発現するリガンドである。
【0080】
標的特異性リガンド構造を含む化学基Rを有するカルボン酸(III)は、標的特異性リガンドに対して特異的な結合または親和性を有する構造、すなわち標的特異性リガンド構造を含むカルボン酸である。カルボン酸(III)R−COOHとしては、
(a) アルドン酸(『アルドン酸』;但し、該アルドン酸自体が標的特異性リガンド構造となる)、
(b) 標的特異性リガンド構造となる単糖が結合したアルドン酸(『単糖アルドン酸』)、
(c) 標的特異性リガンド構造を含むオリゴ糖または多糖が連結したアルドン酸(『オリゴ糖アルドン酸』または『多糖アルドン酸』)、
(d) アミノ酸(『モノアミノ酸』;但し、該アミノ酸自体が標的特異性リガンド構造となる)、
(e) 標的特異性リガンド構造となるアミノ酸が結合したアミノ酸(『ジペプチド』)、
(f) 標的特異性リガンド構造を含むオリゴペプチドまたはポリペプチドが結合したアミノ酸(『オリゴペプチド』または『ポリペプチド』)、
等が好ましいものとして挙げることができる。これら(a)〜(f)のカルボン酸(III)R−COOHは、R中の官能基が適宜化学修飾されたカルボン酸であってもよい。なお、以下、本明細書において『』書きにて表記する用語は、本段(a)〜(f)にて定義する意を表す。
【0081】
本発明において得られる標的特異性リガンド構造を有する両親媒性化合物(IV)を用いた薬物キャリアー等が効果的な標的特異性を示すためには、標的特異性リガンド構造を含む化学基Rを有するカルボン酸(III)又はその誘導体において、標的特異性リガンド構造が化学基Rの末端にあることが好ましい。化学基Rが複数の分岐鎖構造を有している糖鎖である場合は、各分岐鎖の全てまたは一部の末端に、標的特異性リガンド構造が存在していることが好ましい。
【0082】
両親媒性化合物(IV)における化学基Rに含まれる標的特異性リガンド構造は、薬物送達の目的にあわせて、生体内の標的部位を特異的に認識する構造を適宜選択することができる。標的特異性リガンド構造を構成するものとしては、上記のようにアミノ酸、オリゴペプチド、ポリペプチド、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖のほか、所望の抗体、受容体もしくは酵素の構造またはその一部の構造を用いることができる。具体的には、多糖としては、デキストラン、プルラン、マンナン、ヘパリン、低分子量ヘパリン、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、シンデカンなど、またはこれらの誘導体を好ましく用いることができる。
【0083】
例えば、肝臓あるいは肝実質細胞を標的とする場合は、特異性リガンド構造としては、ガラクトース、ガラクトサミン、N−アセチルガラクトサミン、マンノース等の単糖が好ましい。従って、カルボン酸(III)R−COOHとしては、ガラクトース、ガラクトサミン、N−アセチルガラクトサミン又はマンノースを有する『単糖アルドン酸』、『オリゴ糖アルドン酸』、『多糖アルドン酸』が好ましく用いられる。また、生体内の代謝機構を考慮すると、『オリゴ糖アルドン酸』、『多糖アルドン酸』の場合は、これらのガラクトース、ガラクトサミン、N−アセチルガラクトサミン又はマンノースが糖鎖の末端に結合していることが好ましい。『オリゴ糖アルドン酸』、『多糖アルドン酸』の場合、糖鎖は分岐していてもよく、各分岐鎖の全てまたは一部の末端に、これらガラクトース、ガラクトサミン、N−アセチルガラクトサミンまたはマンノースが存在している糖鎖が好ましい。
【0084】
また、マクロファージに対する特異性リガンド構造としては、マンノース、フコースまたはガラクトサミンが好ましく、この場合のカルボン酸(III)R−COOHとしては、末端にマンノース、フコースもしくはガラクトサミンを有する『オリゴ糖アルドン酸』または『多糖アルドン酸』が好ましく用いられる。
【0085】
本発明において、標的特異性リガンド構造が、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖である一般式(IV)の両親媒性化合物を製造する場合には、これらの標的特異性リガンド構造を末端に有するカルボン酸(III)として、該標的特異性リガンド構造を末端に有する『アルドン酸』、『単糖アルドン酸』、『オリゴ糖アルドン酸』もしくは『多糖アルドン酸』またはこれらの誘導体を用いることが好ましい。具体的には、標的特異性リガンド構造がガラクトース、マンノースであれば、カルボン酸(III)又はその誘導体としてはガラクトースを末端に有するラクトビオン酸またはその誘導体、マンノースを末端に有するマンノオリゴ糖のアルドン酸またはその誘導体が好ましい。また、カルボン酸以外にアミノ基と反応可能な官能基が存在している場合には、アミノ化合物との反応を回避するため、常用の保護基によりアミノ基と反応可能な官能基が保護されている化合物を用いても良い。
【0086】
また、本発明において、標的特異性リガンド構造が、アミノ酸、オリゴペプチド、ポリペプチド、抗体、抗体の一部、受容体、酵素などのペプチド、蛋白質である一般式(IV)の両親媒性化合物を製造する場合には、標的特異性リガンド構造自体となる『モノアミノ酸』、末端にこれらの標的特異性リガンド構造を部分配列として有するペプチドであって、C末端がアミノ基と反応可能なカルボキシル基を有する『ジペプチド』、『オリゴペプチド』もしくは『ポリペプチド』又はこれらの誘導体をカルボン酸(III)又はその誘導体として用いることが望ましい。また、前記ペプチド中に、C末端以外にアミノ基と反応可能な官能基が存在している場合には、アミノ化合物との反応を回避するため、常用の保護基によりアミノ基と反応可能な官能基が保護されている化合物を用いても良い。
【0087】
本発明の製造方法によって得られる標的特異性リガンド構造を有する両親媒性化合物(IV)は、単独でもしくはリン脂質や生分解性ポリマーなどの粒子形成材料と複合することで、表面に標的特異性リガンド構造が密に呈示されたリポソームや高分子微粒子とすることができる。そして、これらリポソームや高分子微粒子は、標的特異性を有する薬物キャリアーとして用いることができる。さらに、このリポソームや高分子微粒子の中に薬剤や造影性物質を内包することができる。
【実施例】
【0088】
以下に実施例を示すが、本発明はこれら実施例により限定されるものでない。
【0089】
[参考例1]コハク酸イミド誘導体(1)の合成
【0090】
【化11】

【0091】
3−((didodecylcarbamoyl)methylcarbamoyl)propanoic acid(2.04g,20mmol)(本化合物は、引用した特許文献3記載の方法によって製造できる。)を無水酢酸(200mL)に溶解し、80oCで4時間撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製し、コハク酸イミド誘導体(1)(1.54g,78%)を微黄色オイル状の液体として得た。
【0092】
H−NMR(400MHz,CDCl):δ4.29(s,2H),3.34−3.19(m,4H),2.84−2.76(m,4H),2.72−2.59(m,2H),2.57−2.45(m,2H),1.37−1.15(m,36H),0.93−0.82(m,6H).。
【0093】
[実施例1]アミン化合物(2)の合成
【0094】
【化12】

【0095】
コハク酸イミド誘導体(1)(739mg,1.5mmol)と1,8−diamino−3,6−dioxaoctane(865mg,4.5mmol)(本化合物は、ハン・リングリン(Han Yinglin)ら、外3名、シンセティク・コミュニケーション(SYNTHETIC COMMUNICATIONS)、1991年、第21巻、p.79−84に記載の方法によって製造することができる。)を混合し、80 oCで12時間撹拌した。反応溶液をそのままアミンシリカゲルの中圧カラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチルのみ → クロロホルム:メタノール=20:1)で精製し、粗アミン化合物(2)(1.05g,102%)をアモルファス状の白色固体として得た。
【0096】
H−NMR(400MHz,CDCl):δ4.05(s,2H),3.70−3.60(m,8H),3.60−3.52(m,4H),3.39−3.24(m,8H),2.86(br s,1H),2.60−2.47(m,4H),1.68−1.50(m,4H)1.40−1.22(m,36H),0.90(t,J=7.2Hz,6H).。
【0097】
[実施例2]化合物(3)の合成
【0098】
【化13】

【0099】
粗アミン化合物(2)(1.05g,1.5mmol)およびラクトビオン酸(806mg,2.25mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(15mL)にジシクロヘキシルカルボジイミド(619mg,3.0mmol)を加え、室温で6時間撹拌した。反応の進行が遅かったため、再度室温にてラクトビオン酸(806mg,2.25mmol)とジシクロヘキシルカルボジイミド(619mg,3.0mmol)を加え、室温で14時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルの中圧カラムクロマトグラフィー(溶出液;クロロホルム:メタノール=4:1〜2:1)で精製し、化合物(3)(585mg,2steps38%)をアモルファス状の白色固体として得た。
【0100】
IR(KBr):3411,2923,1648,1543,1466,1376,1256,1082cm−1.;
H−NMR(400MHz,CDOD):δ4.49(d,J=7.6Hz,1H),4.36(d,J=2.8Hz,1H),4.23(dd,J=3.6 and 2.8Hz,1H),4.05(s,2H),3.95−3.91(m,1H),3.90−3.85(m,1H),3.84−3.75(m,4H),3.73−3.40(m,19H),3.40−3.25(m,5H),2.62−2.48(m,4H),1.68−1.50(m,4H)1.42−1.21(m,38H),0.91(t,J=6.8Hz,6H).。
【0101】
[実施例3]アミン化合物(6)の合成
4−1.化合物(4)の合成
【0102】
【化14】

【0103】
1,8−diamino−3,6−dioxaoctane(1.54g、8.0mmol)のクロロホルム:メタノール(10:1) 溶液(44mL)にBocO(1.57g,7.2mmol)を加え4時間半撹拌した。反応液を減圧濃縮し、得られた残渣を、アミンシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル:メタノール=20:1)で精製した。モノアミン(4)(0.92g,35%)を無色オイル状液体として得た。
【0104】
H−NMR(400MHz,CDCl):δ5.30(s,1H),3.64(m,8H),3.53(m,4H),3.32(m,2H),2.87(t,J=5.2Hz,2H),1.45(s,9H).。
【0105】
4−2.化合物(5)の合成
【0106】
【化15】

【0107】
モノアミン(4)(3.01g,10.3mmol)、3−((S)−1,3−di((dodecyloxy)carbonyl)propylcarbamoyl)propanoic acid(6.61g,11.3mmol)(本化合物は、引用した特許文献3記載の方法によって製造できる。)、ジイソプロピルエチルアミン(3.99g,30.9mmol)のN, N−ジメチルホルムアミド溶液(20mL)にBOP試薬(6.83g,15.4mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。反応溶媒を減圧留去し、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、続いて飽和食塩水で洗浄後,無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣を中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチルおよび、メタノール)で精製し、化合物(5)(5.78g、65%)を白色固体として得た。
【0108】
H−NMR(400MHz,CDCl):δ6.80(s,1H),6.67(s,1H),5.25(s,1H),4.57(m,1H),4.11(t,J=6.8Hz,2H),4.07(t,J=6.8Hz,2H),3.64(m,8H),3.58(m,4H),3.45(m,2H),3.32(m,2H),2.53(m,4H),2.38(m,2H),2.17(m,1H),1.99(m,1H),1.60(m,4H),1.44(s,9H),1.26(m,36H),0.88(t,J=6.4Hz,6H).。
【0109】
4−3.アミン化合物(6)の合成
【0110】
【化16】

【0111】
化合物(5)(5.78g,6.74mmol)をジクロロメタン(70mL)に溶解し、ここにトリフルオロ酢酸(15.4g,135mmol)を加え、室温で5時間撹拌した。反応溶液に酢酸エチル(100mL)を加え、1M水酸化ナトリウム水溶液(計200mL)で洗浄した。有機層をさらに飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、アミン化合物(6)(4.30g,84%)を白色固体として得た。
【0112】
H−NMR(400MHz,CDCl):δ7.49(s,1H),6.88(d,J=7.2Hz,1H),4.55(m,1H),4.11(t,J=7.2Hz,2H),4.05(t,J=7.2Hz,2H),3.63(m,8H),3.55(m,4H),3.44(m,2H),2.90(t,J=4.8Hz,2H),2.55(m,4H),2.37(m,2H),2.19(m,1H),1.99(m,1H),1.63(m,4H),1.26(m,36H),0.88(t,J=6.8Hz,6H).。
【0113】
[実施例4]化合物(7)の合成
【0114】
【化17】

【0115】
アミン化合物(6)(4.94g,6.52mmol)およびラクトビオン酸(2.80g,7.82mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(60mL)にジシクロヘキシルカルボジイミド(2.02g,9.77mmol)を加え、室温で7時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;クロロホルム:メタノール=4:1) で精製し、化合物(7)(4.50g,63%)をアモルファス状の白色固体として得た。
【0116】
H−NMR(400MHz,CDOD):δ4.48(d,J=7.2Hz,1H),4.42(m,1H),4.35(d,J=2.4Hz,1H),4.22(dd,J=4.0 and 2.4Hz,1H),4.16−4.04(m,4H),3.92(m,1H),3.87(m,1H),3.84−3.75(m,4H),3.70−3.40(m,18H),3.36(t,J=5.2Hz,3H),2.60−2.47(m,4H),2.42(t,J=7.6Hz,2H),2.15(m,1H),1.94(m,1H),1.63(m,4H),1.40−1.20(m,36H),0.90(t,J=7.2Hz,6H).。
【0117】
[比較例1]化合物(3)の合成
1−1.化合物(8)の合成
【0118】
【化18】

【0119】
室温において、ラクトビオン酸(7.17g、20.0mmol)をメタノール(100mL)に溶解し、ここにモレキュラ−シ−ブス3Åを加え、共沸条件にて12時間加熱還流した。内温を室温に冷却後、反応溶液に1,8−diamino−3,6−dioxaoctane(4.23g,22.0mmol)を滴下し、室温で3時間攪拌した。反応溶液の溶媒を減圧下留去後、得られた残渣をオクタデシルシリカゲルカラムクロマトグラフィ− (溶出液;メタノール:蒸留水=1:2)で精製し、化合物(8)(8.9g,83%)をアモルファス状の白色固体として得た。
【0120】
H−NMR(400MHz,CDCl):δ4.47(d,J=7.6Hz,1H),4.35(t,J=2.4Hz,1H),4.21(m,1H),3.91(m,1H),3,86(m,1H),3.80(m,4H),3.70−3.60(m,10H)3.60−3.40(m,11H),3.34(s,2H).。
【0121】
1−2.化合物(3)の合成
【0122】
【化19】

【0123】
化合物(8)(0.40g,1.0mmol)および、コハク酸誘導体(0.56g,1.1mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(10.0mL)に溶解後、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.39g,3.0mmol)とBOP試薬(0.66g,1.5mmol)を 加えて室温で6時間攪拌した。反応終了後、溶媒を減圧下留去し、残渣をそのままシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(クロロホルム/メタノール=4/1)で3回精製し、化合物(3)(112mg,12%yield)を得た。
【0124】
本合成法は反応スケールを大きくすると収率が低下し、再現性もなかった。また、生成物を精製するのに最低3回のカラム工程を必要とした。
【0125】
[比較例2]化合物(7)の合成
【0126】
【化20】

【0127】
化合物(8)(0.40g,1.0mmol)および、グルタミン酸誘導体(0.64g,1.1mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(10.0mL)に溶解後、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.39g,3.0mmol)とBOP試薬(0.66g,1.5mmol)を 加えて室温で6時間攪拌した。反応終了後、溶媒を減圧下留去し、残渣をそのままシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(クロロホルム/メタノール=4/1)で3回精製し、化合物(7)(253mg,23%yield)を得た。
【0128】
本合成法は反応スケールを大きくすると収率が低下し、再現性もなかった。また、生成物を精製するのに最低3回のカラム工程を必要とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、mは2〜80の整数を表し、XはNR、OまたはSを表し、RおよびRは独立して炭素数8〜18のアルキル基、炭素数8〜18のアルケニル基、炭素数4〜18のシクロアルキルアルキル基または炭素数8〜18のアラルキル基を表し、Rは水素または一般式(II)
【化2】

で表される置換基を表し、ここで、Zは、NR、OまたはSを表し、Rは水素またはメチル基を表し、Rは炭素数8〜18のアルキル基、炭素数8〜18のアルケニル基、炭素数4〜18のシクロアルキルアルキル基または炭素数8〜18のアラルキル基を表し、nは0〜4の整数を表わす。)で示されるアミン化合物。
【請求項2】
一般式(I)において、mは2〜40の整数であり、XはNRまたはOであり、RおよびRは独立して炭素数8〜18のアルキル基であり、Rは水素または一般式(II)で表される置換基であり、ZはOであり、Rは炭素数8〜12のアルキル基であり、nは0または1である、請求項1記載のアミン化合物。
【請求項3】
一般式(I)において、mは2〜8の整数であり、XはNRであり、RおよびRは独立して炭素数12〜18のアルキル基であり、Rは水素である、請求項2記載のアミン化合物。
【請求項4】
一般式(I)において、mは2〜8の整数であり、XはOであり、Rは炭素数12〜18のアルキル基であり、Rは一般式(II)で表される置換基であり、Rは炭素数12〜18のアルキル基であり、nは1である、請求項2記載のアミン化合物。
【請求項5】
一般式(I)
【化3】

(式中、m、X、RおよびRは請求項1記載の定義と同じである。)
で示されるアミン化合物と、標的特異性リガンド構造を含む化学基Rを有する一般式(III)
【化4】

で表されるカルボン酸又は該カルボン酸誘導体とを反応させることを特徴とする、一般式(IV)
【化5】

(式中、m、X、R、RおよびRは前記定義と同じである。)で示される標的特異性リガンド構造を有する両親媒性化合物の製造法。
【請求項6】
一般式(III)で表されるカルボン酸が、オリゴ糖アルドン酸または化学修飾されたオリゴ糖アルドン酸である請求項5記載の両親媒性化合物の製造法。

【公開番号】特開2008−179558(P2008−179558A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13769(P2007−13769)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】