説明

アモルファスおよび微晶質部分を有するスパッタリングターゲット

【課題】本発明の課題は、スパッタリングターゲットの寿命の間、スパッタリング材料の不変的に均質な層の製造を確実にするスパッタリングターゲットを提供することである。
【解決手段】この課題は、インジウム、亜鉛およびガリウムの少なくとも1つの三元系混合酸化物を含有する、インジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物の混合物を有するスパッタリングターゲットであって、インジウム、亜鉛およびガリウムの三元系混合酸化物の割合が、混合物の総質量に対して少なくとも50質量パーセントであり、且つ、アモルファス相の割合が、混合物の総質量に対して少なくとも20質量パーセントである、スパッタリングターゲットによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インジウム、ガリウムおよび亜鉛の酸化物の混合物を有するスパッタリングターゲットに関し、且つ、かかるスパッタリングターゲットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)は、エレクトロニクス産業において長く不可欠であり、且つ、アクティブマトリックスディスプレイは特に非常に人気がある。制御のために、かかるアクティブマトリックスディスプレイは、薄膜トランジスタ(TFT)のマトリックスを含み、その製造のためには、アクティブ半導体の薄層を製造する必要がある。この場合、半導体材料としてはアモルファスシリコンが通常使用される。しかしながら、アモルファスシリコンの層は、比較的低い電荷キャリア移動度を特徴とする。
【0003】
この理由のために、改善された半導体材料が常に探索されている。特に、酸化物半導体の群からの材料は、アモルファスシリコンの非常に有望な代替であることが判明している。特に、インジウム、ガリウムおよび亜鉛の混合酸化物は、アモルファスシリコンに比べて多くの点で改善された特性を示す。例えば、インジウム−ガリウム−亜鉛酸化物層は、10〜50Vs/m2の非常に高い電荷キャリア移動度を有し、従って、現在TFT−LCDディスプレイ中で使用されているアモルファスシリコン層よりも数桁良好である。さらには、インジウム−ガリウム−亜鉛酸化物は、トランジスタ内で使用するために適した電荷キャリア濃度を有する。高い透明度と共に、それらの良好な半導体特性は、それらの材料に多くの魅力的な見込みのある用途をもたらす。例えば、インジウム−ガリウム−亜鉛酸化物を、高いスイッチング周波数を有するLCDディスプレイ用の薄膜トランジスタを製造するために、または発光技術として電流駆動が必要な有機発光ダイオード(OLED)のために、使用できる。さらには、インジウム−ガリウム−亜鉛酸化物の使用により、有効な画素表面の拡大が可能になり、なぜなら、製造されたトランジスタが透明だからである。
【0004】
薄膜トランジスタの製造のために必要とされるアクティブ半導体層は通常、スパッタ堆積(スパッタリング)によって施与される。スパッタリングにおいては、原子または化合物が固体、スパッタリングターゲットから、高エネルギーイオン(通常は希ガスイオン)の衝突によって引き離され、そして気相中に広がる。気相中の原子または分子は、最終的には凝結によって、スパッタリングターゲット付近に位置する基板上に堆積され、そこで層を形成する。
【0005】
スパッタリングにおいて、スパッタリング材料の層が均質に堆積されないという問題がしばしば生じる。この問題は、スパッタリング材料としてインジウム−ガリウム−亜鉛混合酸化物を含有するスパッタリングターゲットを用いる場合でも観察される。従って、それらの材料のスパッタリングの間に、小さな構造、いわゆる「ノジュール」がしばしば形成し、それが堆積層の均質性を損なう。
【0006】
この問題を解決するために、EP2096188号はインジウム、ガリウムおよび亜鉛の酸化物、並びに化合物ZnGa24およびInGaZnO4を含有するスパッタリングターゲットの使用を提案している。それらのスパッタリングターゲットを製造するために、インジウム酸化物、ガリウム酸化物および亜鉛酸化物の特別な粉末を混合し、粉砕して原料の粉末を形成し、成形し、そして最後に焼結する。それらのスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリング材料の堆積層の均質性を実際に著しく高めることができる。
【0007】
しかしながら、このスパッタリング材料の第一の層が均質に堆積できるにもかかわらず、この均質性は衝突の持続につれて連続的に低下し、従ってスパッタリングターゲットの消耗が増加することが観察された。従って、不変の層特性を保証することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP2096188号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の課題は、スパッタリングターゲットの寿命の間、不変の均質性を有するスパッタリング材料の層の製造を保証するスパッタリングターゲットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、インジウム、亜鉛およびガリウムの少なくとも1つの三元系混合酸化物を含有する、インジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物の混合物を有するスパッタリングターゲットであって、インジウム、亜鉛およびガリウムの三元系混合酸化物の割合が、混合物の総質量に対して少なくとも50質量パーセントであり、且つ、アモルファス相の割合が、混合物の総質量に対して少なくとも20質量パーセントである、スパッタリングターゲットによって解決される。
【0011】
さらには、本発明はこのスパッタリングターゲットの製造方法であって、
(i) 15〜300μmの範囲の平均粒径を有する粒子の混合物を準備し、ここで該混合物はインジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物を含み、且つ、インジウム、亜鉛およびガリウムの二元系混合酸化物および三元系混合酸化物の群から選択される少なくとも1つの混合酸化物を含む、
(ii) 該粒子を、10ms以下の時間内で1500℃〜2300℃の範囲の温度に加熱する、
(iii) 該混合物を、10ms以下の時間の間に300℃以下の温度に冷却する
製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、スパッタリングターゲットが高い割合の三元系インジウム−ガリウム−亜鉛混合酸化物を含有し、同時に高い割合のアモルファス相を有する場合、インジウム−ガリウム−亜鉛混合酸化物のスパッタリングの間に、不変の均質性を有する層が製造され得るという、意外な発見に基づいている。インジウム−ガリウム−亜鉛混合酸化物が結晶部分も含有している場合、意外にも、スパッタリング特性の改善に有利であることが判明し、ここで、この結晶部分は10〜30nmの範囲の平均結晶サイズを有し、従って微晶質相を形成している。
【0013】
意外にも、インジウム、亜鉛およびガリウムの二元系および/または三元系混合酸化物を含む混合物が急峻な温度勾配で1500〜2300℃の範囲の温度に加熱され、引き続き急峻な温度勾配で冷却される場合、これらの特性を有するスパッタリングターゲットを容易に得ることができることが判明した。インジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物のそれらの混合物の急速加熱および急速冷却において、高い割合の三元系インジウム−ガリウム−亜鉛混合酸化物を有する熱力学的不平衡が形成され、且つ保存され得ることが発見された。意外にも、ここで、高い割合の三元系インジウム−ガリウム−亜鉛混合酸化物を有する混合物が得られるだけでなく、この混合物は追加的に高い割合のアモルファス相も含有した。
【0014】
本発明によれば、この方法でスパッタリングターゲットが提供される。
【0015】
このスパッタリングターゲットは、インジウム、亜鉛およびガリウム酸化物の混合物を有する。該スパッタリングターゲットはこの混合物からなることができる。他方で、この混合物を支持体上に配置することもできる。該支持体は、例えば高級鋼製であってよい。スパッタ堆積の間、この支持体は通常、カソードとしてはたらく。好ましい実施態様によれば、このカソードは平面状カソードであるか、または管状カソードである。特に好ましい実施態様によれば、カソードは管状カソードである。随意に、支持体および該混合物の他に、スパッタリングターゲットはさらなる成分、特に例えば支持体と混合物との間に配置され得る追加的な層を有することができる。
【0016】
「インジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物の混合物」は、インジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物を有する組成物であって、それらの酸化物が原則的に、インジウム、亜鉛およびガリウムの単独酸化物、二元系混合酸化物、または三元系混合酸化物として存在できる組成物として理解されるべきである。用語「インジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物の混合物」は、異なる組成を有するインジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物の存在を必ずしも前提条件とするわけではなく、むしろ、例えばインジウム、亜鉛およびガリウムの三元系混合酸化物のみからなる組成物も含む。ここで、この三元系混合酸化物は、同じ尺度で、インジウムの酸化物、亜鉛の酸化物およびガリウムの酸化物であり、従って、それらの酸化物の混合物を表す。
【0017】
従って、原則的に、用語「インジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物の混合物」は、例えば三元系混合酸化物としてのインジウム−ガリウム−亜鉛混合酸化物からなる組成物、インジウム酸化物、亜鉛酸化物およびガリウム酸化物を単独酸化物として含有する組成物、亜鉛酸化物を単独酸化物として、且つインジウム−ガリウム混合酸化物を二元系混合酸化物として含有する組成物、またはインジウム−ガリウム混合酸化物およびインジウム−亜鉛混合酸化物を二元系混合酸化物として含有する組成物を含む。
【0018】
本発明によれば、該混合物は、インジウム、亜鉛およびガリウムを有する少なくとも1つの三元系混合酸化物を含有する。
【0019】
好ましい実施態様によれば、混合酸化物は混晶として理解される。この混晶は、その成分の1つとして酸素を有する。
【0020】
本願において、三元系混合酸化物は、インジウム、ガリウムおよび亜鉛を有する混合酸化物として理解されるべきである。好ましくは、該混合物は、インジウム、ガリウムおよび亜鉛の含有率において異なる複数の三元系混合酸化物を含有する。好ましい実施態様によれば、該混合物は少なくともInGaZnO4を混合酸化物として含有する。
【0021】
インジウム、亜鉛およびガリウムを有する三元系混合酸化物の割合は、該混合物の総質量に対して、少なくとも50質量パーセント、好ましくは少なくとも60質量パーセント、より好ましくは少なくとも70質量パーセント、さらにより好ましくは少なくとも80質量パーセント、特に好ましくは少なくとも85質量パーセント、最も特に好ましくは少なくとも90質量パーセント、および特に少なくとも95質量パーセントである。
【0022】
インジウム、亜鉛およびガリウムを有する三元系混合酸化物の割合は、該混合物の総質量に対して、好ましくは20〜100質量パーセントの範囲、従って例えば25〜99質量パーセントの範囲、35〜98質量パーセントの範囲、40〜97質量パーセントの範囲、または45〜95質量パーセントの範囲である。
【0023】
好ましい実施態様によれば、InGaZnO4の割合は、該混合物の総質量に対して、20〜95質量パーセントの範囲、例えば20〜90質量パーセントの範囲、または25〜80質量パーセントの範囲である。
【0024】
少なくとも1つの三元系混合酸化物の他に、該混合物は少なくとも1つの二元系混合酸化物または単独酸化物も含有できる。
【0025】
二元系混合酸化物は、インジウムおよび亜鉛を有する酸化物、インジウムおよびガリウムを有する酸化物、および亜鉛およびガリウムを有する酸化物として理解されるべきである。好ましい実施態様によれば、該混合物は少なくともInGaO3を二元系酸化物として含有する。
【0026】
本発明によれば、単独酸化物は、インジウム酸化物、ガリウム酸化物および亜鉛酸化物として理解されるべきである。例えば、該混合物はIn23、インジウム酸化物を単独酸化物として含有できる。
【0027】
好ましくは、該混合物は、該混合物の総質量に対して、30質量パーセント未満、より好ましくは20質量パーセント未満、さらにより好ましくは10質量パーセント未満、および特に好ましくは5質量パーセント未満の、単独酸化物および二元系酸化物からなる群から選択される酸化物を含む。
【0028】
特に好ましい実施態様によれば、単独酸化物の三元系混合酸化物に対する比は、0〜1の範囲、さらにより好ましくは0.02〜0.2の範囲である。
【0029】
インジウム、亜鉛およびガリウムの単独酸化物、二元系混合酸化物または三元系混合酸化物を、当業者に公知の手段で、定性的に同定でき、インジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物の混合物中のそれらの割合を当業者に公知の手段で定量的に測定できる。例えば、このために、教科書「Fundamentals of Powder Diffraction and Structural Characterization of Materials」 (V.PecharskyおよびP.Zavalij、第二版、Springer Verlag 2009、ISBN 978−0−387−09578−3)内に記載される手段で行うことができ、前記文献において、個々の相の定性的および定量的測定のための方法は13.3章、「Phase Identification and Quant. Analysis」377〜399ページ内に記載されている。
【0030】
本発明によれば、該混合物はアモルファス相も有する。
【0031】
アモルファス相は、原子が規則構造を形成しておらず、むしろ不規則なパターンを形成し、且つ、短距離秩序のみを有するが、長距離秩序は有さない相として理解される。
【0032】
好ましい実施態様によれば、アモルファス相は、X線アモルファス(roentgen−amorphous)相として理解される。X線アモルファス相は、はっきりとした干渉を生じず、むしろ、小さなX線回折角で干渉を散乱するだけの相である。
【0033】
アモルファス相の割合は、該混合物の総質量に対して、少なくとも20質量パーセント、より好ましくは少なくとも21質量パーセント、さらにより好ましくは少なくとも22質量パーセント、特に好ましくは少なくとも23質量パーセント、および最も特に好ましくは少なくとも24質量パーセントである。
【0034】
アモルファス相の割合は、該混合物の総質量に対して、好ましくは20〜100質量パーセントの範囲、従って例えば21〜99質量パーセントの範囲、22〜95質量パーセントの範囲、23〜95質量パーセントの範囲、または24〜90質量パーセントの範囲である。
【0035】
特に好ましい実施態様によれば、アモルファス相の割合は、三元系混合酸化物の総質量に対して、少なくとも20質量パーセント、より好ましくは少なくとも21質量パーセント、さらにより好ましくは少なくとも22質量パーセント、特に好ましくは少なくとも23質量パーセント、および最も特に好ましくは少なくとも24質量パーセントである。
【0036】
さらに特に好ましい実施態様によれば、アモルファス相の割合は、三元系混合酸化物の総質量に対して、20〜100質量パーセントの範囲、例えば21〜99質量パーセントの範囲、22〜95質量パーセントの範囲、23〜95質量パーセントの範囲、または24〜90質量パーセントの範囲である。
【0037】
アモルファス相を、当業者に公知の手段で、定性的に同定でき、且つ、混合物中でのその割合を定量的に測定できる。例えば、このために、リートベルト法による解析法を使用でき、詳細は「Powder Diffraction, Theory and Practice」 (R. Dinnebierand S. Billinge, RSC Publishing, ed. Royal Soc. Chemistry, London, 2008, ISBN 978−0−85404−231−9)内、例えばMadsenおよびScarlettによる第11章内 (「Quantitative Phase Analysis」)、328ページ以降に記載されている。
【0038】
アモルファス相の他に、インジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物の混合物は、結晶相も有することがある。
【0039】
それらの結晶相は好ましくは微晶質相である。従って、該混合物は好ましくは追加的に、インジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物の微晶質相を含有する。
【0040】
微晶質相は、10〜30nmの範囲、好ましくは12〜28nmの範囲の平均結晶サイズを有する結晶を有する相として理解されるべきである。
【0041】
好ましい実施態様によれば、微晶質相の割合は、該混合物の総質量に対して、0〜80質量パーセントの範囲、従って例えば1〜79質量パーセントの範囲、5〜78質量パーセントの範囲、または10〜76質量パーセントの範囲である。
【0042】
特に好ましい実施態様によれば、該混合物は、30nmより大きい結晶サイズを有する結晶を有する、わずかな割合の結晶相のみを含有する。好ましくは、かかる結晶相の割合は、該混合物の総質量に対して、最大24質量パーセント、より好ましくは最大22質量パーセント、さらにより好ましくは最大20質量パーセント、特に好ましくは最大18質量パーセント、最も特に好ましくは最大16質量パーセント、および特に最大15質量パーセントである。
【0043】
さらに特に好ましい実施態様によれば、結晶相のアモルファス相に対する質量比は、0〜15の範囲、従って例えば0.5〜15の範囲、1〜10の範囲、2〜8の範囲または3〜6の範囲である。
【0044】
他の特に好ましい実施態様によれば、微晶質相のアモルファス相に対する質量比は、0〜15の範囲、従って例えば0.5〜15の範囲、1〜10の範囲、2〜8の範囲または3〜6の範囲である。
【0045】
微結晶サイズの測定および微晶質相または結晶相の割合の測定を、当業者に公知の手段で行うことができる。例えば、このために、リートベルト法による解析法を使用でき、詳細は「Powder Diffraction, Theory and Practice」 (R. Dinnebierand S. Billinge, RSC Publishing, ed. Royal Soc. Chemistry, London, 2008, ISBN 978−0−85404−231−9)内、例えばScardiによる第13章内 (「Lattice Defects and Domain Size Effects」)、376ページ以降に記載されている。
【0046】
混合物中のインジウム、亜鉛およびガリウムの割合に特定の限定はない。しかしながら、好ましくは混合物中でのインジウム:亜鉛:ガリウムの比は0.8〜2.2:0.8〜2.2:1原子%である。第一の特に好ましい実施態様によれば、インジウム:亜鉛:ガリウムは、混合物中に0.8〜1.2:0.8〜1.2:1原子%の比で存在する。第二の特に好ましい実施態様によれば、インジウム:亜鉛:ガリウムは、混合物中に1.8〜2.2:1.8〜2.2:1原子%の比で存在する。
【0047】
本発明によるスパッタリングターゲットを、特定の粒子混合物を、短い時間間隔内で加熱し、引き続きそれを短い時間間隔内で冷却することによって得ることができる。
【0048】
このために、まず、15〜300μmの範囲の平均粒径を有する粒子の混合物を準備し、ここで、該混合物はインジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物を含む。本発明によれば、この混合物は、インジウム、亜鉛およびガリウムの二元系混合酸化物および三元系混合酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの混合酸化物を含む。
【0049】
意外にも、高い割合の三元系混合酸化物と高い割合のアモルファス相とを有する混合物が、このために二元系混合酸化物、三元系混合酸化物または二元系と三元系との混合酸化物を既に含有する粒子混合物が使用される場合にのみ、上述の方法によって得られることが判明した。
【0050】
従って、該製造方法のために使用されるこの粒子混合物は好ましくは
(i) インジウム、亜鉛およびガリウムの少なくとも2つの二元系混合酸化物の混合物、
(ii) インジウム、亜鉛およびガリウムの少なくとも1つの三元系混合酸化物、
(iii) インジウム、亜鉛およびガリウムの少なくとも1つの単独酸化物と、少なくとも1つのかかる二元系混合酸化物との混合物、
(iv) 少なくとも1つのかかる単独酸化物と、少なくとも1つのかかる三元系混合酸化物との混合物、
(v) 少なくとも1つのかかる二元系混合酸化物と、少なくとも1つのかかる三元系混合酸化物との混合物、または
(vi) 少なくとも2つの混合物(i)から(v)の組み合わせ
を含む。
【0051】
好ましい実施態様によれば、粒子混合物の個々の粒子は既に上記で指定されたインジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物を含有する。この実施態様によれば、粒子混合物は、同一の組成を有する粒子の均質な混合物であってよい。
【0052】
さらに好ましい実施態様によれば、粒子混合物は、種々の組成を有する粒子の均質な混合物である。
【0053】
特に好ましい実施態様によれば、インジウム、亜鉛およびガリウムの二元系混合酸化物および三元系混合酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの混合酸化物の割合は、粒子混合物の総質量に対して、少なくとも5質量パーセント、より好ましくは少なくとも10質量パーセント、さらにより好ましくは少なくとも15質量パーセント、特に好ましくは少なくとも20質量パーセント、最も特に好ましくは少なくとも30質量パーセント、および特に少なくとも40質量パーセントである。
【0054】
この混合物の粒子は、好ましくは、20〜250μmの範囲、さらにより好ましくは30〜200μmの範囲の平均粒径を有する。
【0055】
「平均粒径」は好ましくは、粒子の少なくとも90%が呈する粒径として理解されるべきである。
【0056】
しかしながら、少なくとも99%、およびさらにより好ましくは100%の粒子がこの粒径を呈することが好ましい。
【0057】
第一の実施態様によれば、この粒子混合物を、凝集法を使用して懸濁液から直接的に得ることができる。
【0058】
このためにまず、少なくともインジウムの酸化物、亜鉛の酸化物、およびガリウムの酸化物を含有する懸濁液を準備する。
【0059】
従って、本発明の範疇で、「少なくともインジウムの酸化物、亜鉛の酸化物およびガリウムの酸化物を含有する懸濁液」は、それらの元素の二元系および/または三元系混合酸化物を含有する懸濁液を含んでいるとして理解される。例えば、当該の場合、インジウムおよび亜鉛の二元系混合酸化物はインジウムの酸化物、および亜鉛の酸化物と同様にみなされる。
【0060】
特に好ましい実施態様によれば、この懸濁液はIn23、Ga23、およびZnOを含有する。
【0061】
懸濁液を製造するために、懸濁液中に含有されるインジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物の粉末を、好ましくは分散媒中に導入する。分散媒として、好ましくは水が使用される。
【0062】
懸濁液を製造するために使用される粉末中に含有される一次粒子は、好ましくは0.1〜10μmの範囲、より好ましくは0.1〜3μmの範囲の平均粒径を有する。
【0063】
好ましい実施態様によれば、In23の一次粒子の平均粒径は、0.5〜5μmの範囲、より好ましくは0.5〜3μmの範囲である。
【0064】
Ga23の一次粒子の平均粒径は、好ましくは0.5〜5μmの範囲、より好ましくは0.5〜3μmの範囲である。
【0065】
ZnOの一次粒子の平均粒径は、好ましくは0.2〜4μmの範囲、より好ましくは0.5〜2μmの範囲である。
【0066】
特に好ましい実施態様によれば、この懸濁液は、懸濁液中に含有される固体材料の質量に対して、39〜51質量パーセントのIn23、14〜46質量パーセントのGa23、および13〜35質量パーセントのZnOを含有する。
【0067】
最も特に好ましい実施態様によれば、この懸濁液は、懸濁液中に含有される固体材料の質量に対して、44〜51質量パーセントのIn23、14〜26質量パーセントのGa23、および29〜35質量パーセントのZnOを含有する。
【0068】
インジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物、並びに分散媒の他に、該懸濁液はさらなる成分、特に結合剤、分散剤および/または解膠剤を含有できる。例えばポリ酢酸ビニルを結合剤として使用できる。
【0069】
懸濁液中の固体材料の割合は、該懸濁液の総質量に対して、好ましくは40〜90質量パーセント、より好ましくは50〜80質量パーセントである。
【0070】
インジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物粉末、並びに随意のさらなる成分を分散媒中に導入した後、好ましくは、粉末のさらなる微粉砕を確実にする処理工程を実施する。このために、例えば懸濁液を高エネルギーミル中での処理に供することができる。
【0071】
次の工程において、懸濁液中に含有される酸化物が凝集され得る。この工程は、微細酸化物粒子の間の凝集力を作り出すために役立ち、それによってその加工性が改善される。このために、当該技術分野で公知の凝集法を使用してよい。例えば、懸濁液中に含有される酸化物を、噴霧凝集または流動床凝集に供することができる。選択的に、凝集を実現するために、酸化物を沈殿させるか、または分散媒および随意のさらなる成分を、例えば回転蒸発器内で蒸発させることによって凝集させることができる。
【0072】
好ましくは、凝集条件は、凝集物が、平均粒径15〜300μmを有して、より好ましくは平均粒径30〜200μmを有して形成されるように選択される。
【0073】
さらには、凝集法が実施された後に、凝集物を微粉砕して、凝集物の粒径を相応して減少させることが可能である。
【0074】
それに引き続き、または選択的に、該凝集物を選別して、15〜300μmの範囲の平均粒径を有する粒子を得ることができる。該選別を、スクリーニングまたはふるい分けを通じた通常の方法で行うことができる。
【0075】
特に好ましい実施態様によれば、次の随意の工程において、得られた凝集物を予備焼結することができる。
【0076】
予備焼結は、ここでは、熱処理として理解されるべきである。この熱処理は、凝集物中に含有される原子間の拡散過程を加速させるために使用される。好ましくは、予備焼結を、インジウム、亜鉛およびガリウムの単独酸化物の少なくとも一部が、相応する二元系または三元系混合酸化物へと変換されることを可能にする条件下で行う。この予備焼結を、インジウム、亜鉛およびガリウムの単独酸化物、並びに相応する二元系または三元系混合酸化物の間で熱力学的平衡が生じるまで行うことができる。さらには、予備焼結の間、質量に対する凝集物の表面は、予備焼結前に存在する凝集物と比較して、全体的に減少される。
【0077】
意外にも、予備焼結が最終的に製造されるスパッタリングターゲットの品質における有利な効果を有することが判明した。以下に記載される通り、インジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物の混合物のスパッタリングターゲットを、本発明によれば、高速加熱および次の高速冷却によって得ることができる。単独酸化物の高い分圧のために、通常、ここで単独酸化物の減損が起き、それが単独酸化物、二元系混合酸化物および三元系混合酸化物の間の熱平衡に影響することがあり、従ってスパッタリングターゲットの酸化物混合物の品質を低下させる。予備焼結によって、単独酸化物が少なくとも既に部分的に相応する二元系混合酸化物および三元系混合酸化物へと変換され、それがより高い分圧を有し、従って上述の現象が著しく抑制され得る。これは、最終的に得られる酸化物混合物のスパッタリングターゲット中に、より高い割合の三元系混合酸化物およびより高い割合のアモルファスおよび微晶質相が見られるという、意外な結果を有する。
【0078】
予備焼結は、好ましくは800〜1600℃の範囲の温度で、より好ましくは1000〜1500℃の範囲の温度で行われる。
【0079】
予備焼結の間の焼結時間は、好ましくは1〜5時間、より好ましくは1〜3時間である。
【0080】
予備焼結は好ましくは、空気雰囲気または酸素雰囲気中で行われる。
【0081】
予備焼結された凝集物を引き続き、随意に微粉砕して、予備焼結された凝集物の粒径を相応して減少させる。
【0082】
それに引き続き、または選択的に、予備焼結された凝集物を選別して、15〜300μmの範囲の平均粒径を有する粒子を得る。ここでもまた、該選別を、スクリーニングまたはふるい分けによる通常の方法で行うことができる。
【0083】
第二の実施態様によれば、粒子の混合物を、相応する固体材料の微粉砕によって製造する。
【0084】
このために、まず、インジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物の混合物を含有する固体材料を準備する。この混合物は、インジウム、亜鉛およびガリウムの二元系混合酸化物および三元系混合酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの混合酸化物を含む。
【0085】
インジウム、亜鉛およびガリウムの二元系混合酸化物および三元系混合酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化物の割合が、固体材料の総質量に対して、少なくとも5質量パーセント、より好ましくは少なくとも10質量パーセント、さらにより好ましくは少なくとも15質量パーセント、特に好ましくは少なくとも20質量パーセント、最も特に好ましくは少なくとも30質量パーセント、および特に少なくとも40質量パーセントであることが有利であることがある。
【0086】
この固体材料は例えば再生材料であってよい。
【0087】
例えば、少なくともインジウムの酸化物、亜鉛の酸化物およびガリウムの酸化物を含有する懸濁液をまず準備し、次に凝集させて、この固体材料を得ることができる。これに関連して、上記の説明が参照される。
【0088】
次の工程において、得られた凝集物を好ましくは圧縮する。これを、例えば25〜30MPaの範囲の圧縮圧力で行うことができる。
【0089】
引き続き、圧縮された凝集物を、好ましくは上述の条件下で予備焼結して、インジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物の混合物を含有する固体材料を得ることができ、ここで、該固体材料は、インジウム、亜鉛およびガリウムの二元系混合酸化物および三元系混合酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの混合酸化物を含む。
【0090】
固体材料を引き続き、微粉砕できる。微粉砕を、例えば、公知の手段で固体材料を粉砕することによって行うことができる。
【0091】
引き続き、微粉砕された固体材料を最終的に、好ましくは選別して、15〜300μmの範囲の平均粒径を有する粒子を得る。該選別を、スクリーニングまたはふるい分けによる通常の方法で行うことができる。
【0092】
次の工程において、混合物の粒子を加熱する。
【0093】
加熱の間、粒子を好ましくは焼結する。
【0094】
好ましくは焼結を、インジウム、亜鉛およびガリウムの単独酸化物、および相応する二元系混合酸化物および三元系混合酸化物の間の熱力学的平衡の生成を可能にするが、しかし三元系混合酸化物の形成が少なくとも既に可能になっている条件下で行う。
【0095】
好ましい実施態様によれば、ここで、インジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物を製造し、その際、インジウム、亜鉛およびガリウムを有する三元系混合酸化物の割合は、該混合物の総質量に対して少なくとも50質量パーセントである。
【0096】
特に好ましい実施態様によれば、加熱された混合物は、インジウム、亜鉛およびガリウムの単独酸化物、二元系混合酸化物または三元系混合酸化物に関して、特に三元系混合酸化物の割合に関して、スパッタリングターゲットの最終的に得られた混合物と同一の組成を有する。
【0097】
この目的のために、粒子を1500〜2300℃の範囲の温度に、好ましくは1600〜2300℃の範囲の温度に、さらにより好ましくは1650〜2200℃の範囲の温度に加熱する。
【0098】
この加熱を、10ms以下の時間の間、行う。好ましくは、該加熱を、0ms〜10msの時間、より好ましくは10μs〜9msの時間、さらにより好ましくは1msから8msの時間の間、行う。
【0099】
好ましい実施態様によれば、加熱のために、粒子を3000〜20,000℃の範囲、より好ましくは10,000〜15,000℃の範囲の温度を有するホットゾーン内に導入する。このホットゾーン内で、粒子を目標温度に加熱し、この温度で上記で示された時間の間、そこに滞留させる。
【0100】
加熱に続いてすぐに、混合物を冷却する。
【0101】
該冷却を、上記で指定された1500℃〜2300℃の範囲の温度から、300℃以下の温度まで、10ms以下の時間内で行う。
【0102】
好ましくは、該冷却を、0ms〜10msの時間の間、より好ましくは10μs〜9msの時間の間、さらにより好ましくは1msから8msの時間の間、行う。
【0103】
該冷却を、好ましくは支持体上で行う。好ましい実施態様によれば、この支持体はカソード、特に管状カソードである。
【0104】
ここで、該支持体を好ましくは別途冷却して、必要とされる温度の300℃以下への混合物の冷却が、10ms以下の時間内で行われ得ることを確実にする。
【0105】
それらの条件下での加熱および冷却が、インジウム、亜鉛およびガリウムの単独酸化物、二元系混合酸化物および三元系混合酸化物の間の、三元系混合酸化物へとシフトされた熱力学的不平衡を生じさせる。
【0106】
意外にも、それらの条件下での加熱および冷却によって、インジウム、亜鉛およびガリウムの単独酸化物、二元系混合酸化物および三元系混合酸化物の間の、三元系混合酸化物へとシフトされた熱力学的不平衡が生じ、且つ保存できることが判明した。この混合物の相組成は、上記で指定された温度へのゆっくりとした加熱によって得られた混合物の相組成、または上記で指定された温度へと、同等の温度勾配を用いて迅速に加熱するが、しかし引き続きゆっくりと冷却することによって得られた混合物の相組成とは著しく異なる。実際に、かかる混合物は、三元系混合酸化物も有している。しかしながら、それらは、インジウム、亜鉛およびガリウムの単独酸化物および二元系混合酸化物の、単独酸化物および二元系混合酸化物へと著しくシフトした熱力学的平衡にある。
【0107】
さらには、上述の方法を使用して製造された混合物が、意外にも、インジウム、亜鉛およびガリウム酸化物の混合物のゆっくりとした加熱または冷却によって製造された混合物と比較して高い割合のアモルファス相を有していることが判明した。
【0108】
好ましい実施態様によれば、粒子の加熱および混合物の冷却を、溶射法において実現する。
【0109】
ここで使用できる溶射法は、例えばフレーム溶射(例えばアセチレン−酸素火炎を使用)、高速フレーム溶射、爆発溶射、およびプラズマ溶射を含む。
【0110】
特に好ましい実施態様によれば、粒子の加熱および混合物の急冷を、プラズマ溶射法において実現する。
【0111】
ここで、粒子の加熱を好ましくはプラズマトーチを使用して遂行する。
【0112】
通常、プラズマトーチ内で、単数または複数のアノードおよびカソードを狭い間隔で分離する。直流電圧を使用して、1つまたはそれより多くのアークを、アノードとカソードとの間に生成する。プラズマトーチを通じて、ガスまたはガス混合物が流れ、それは単数または複数のアークを通じて導かれ、従ってイオン化される。この方法で、正に帯電されたイオンおよび電子で作られた、高く加熱された導電性ガス(プラズマ流として知られる)が生成される。該粒子を、通常、このプラズマ流内に導入、例えば注入する。
【0113】
従って、本発明による粒子の加熱は、好ましくはこのプラズマ流内で行われる。
【0114】
このプラズマ流は、それと一緒に好ましくは粒子の混合物を運び、且つ、加熱された混合物を、施与されるべき支持体へと輸送する。このプラズマ溶射法を、例えば通常の雰囲気中、真空中、または不活性雰囲気下、特に保護ガス、例えばアルゴンの存在中で行うことができる。
【実施例】
【0115】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図されており、限定として理解されるべきではない。
【0116】
実施例1:
インジウム酸化物(In23)、ガリウム酸化物(Ga23)および亜鉛酸化物(ZnO)を含有する粉末混合物が準備され、ここで、インジウム対ガリウム対亜鉛の、金属成分に対する比は2:2:1(原子%)であった。この粉末混合物を水中に分散させ、ここで、固体の割合は60質量パーセントであった。引き続き、得られた懸濁液に、結合剤(PVA)を添加した。この方法で得られたスラリーを噴霧凝集した。生じる凝集物を圧縮して、インジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物の混合物を含有する固体材料を得た。この固体材料を、空気中、1600℃の温度で予備焼結した。インパクトミル内で、予備焼結された固体材料を微粉砕し、且つ、スクリーニングによって分別した。該方法の残部のために、45〜125μmの平均粒径を有するフラクションを選択した。
【0117】
二元系または三元系混合酸化物を含有し、且つ45〜125μmの平均粒径を有する、インジウム、亜鉛およびガリウムの粒子のこの混合物を、その後、プラズマ溶射法に供した。ここで、プラズマトーチの輸送能力は、プラズマ出力70kWの際に100g/分であり、該プラズマトーチを、一定の行程速度で、回転しているステンレス鋼の管の上を多様に移動させ、それによって加熱された混合物を積層堆積した。
【0118】
この方法で製造されたスパッタリングターゲットは、インジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物の混合物を有した。三元系混合酸化物の割合は、混合物の総質量に対して50質量パーセントより高かった。三元系混合酸化物の他に、より低い割合の二元系混合酸化物InGaO3、および単独酸化物InO3も存在した。アモルファス相の割合は、混合物の総質量に対して24質量パーセントであった。さらに、該混合物は、結晶サイズ10〜30nmを有する微晶質相も含有した。
【0119】
該スパッタリングターゲットを、引き続き、スパッタ堆積のために使用した。スパッタリング材料から、混合物の完全なエロージョンに至るまで、連続的に均質な相を堆積できたことが判明した。堆積層は、不均質性を示さず、特にノジュールを示さなかった。
【0120】
比較例1:
実施例1の手順に従うが、しかしその際、粒子混合物を数時間の間、焼結させ、引き続き、ゆっくりと冷却した。
【0121】
得られた混合物の相組成は、本発明の実施例による混合物の相組成とは著しく異なった。特に、アモルファス相の割合が3質量パーセントのみであった。
【0122】
この方法で得られたスパッタリングターゲットを、スパッタ堆積のために使用した。初めに、スパッタリング材料から均質な層を堆積することが可能であることが判明した。しかしながら、スパッタリング材料のエロージョンが増加した際、堆積層はしばしば不均質性、特にノジュールを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジウム、亜鉛およびガリウムの少なくとも1つの三元系混合酸化物を含有するインジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物の混合物を有するスパッタリングターゲットであって、インジウム、亜鉛およびガリウムの三元系混合酸化物の割合が、混合物の総質量に対して少なくとも50質量パーセントであり、且つ、アモルファス相の割合が、混合物の総質量に対して少なくとも20質量パーセントであることを特徴とする、スパッタリングターゲット。
【請求項2】
混合物中でのインジウム:亜鉛:ガリウムの比が、0.8〜2.2:0.8〜2.2:1原子パーセントの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項3】
混合物が、支持体上に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項4】
支持体が、管状カソードであることを特徴とする、請求項3に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項5】
請求項1に記載のスパッタリングターゲットの製造方法であって、
(i) 15〜300μmの範囲の平均粒径を有する粒子の混合物を準備し、ここで、該混合物はインジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物を含み、且つ、インジウム、亜鉛およびガリウムの二元系混合酸化物および三元系混合酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの混合酸化物を含む、
(ii) 該粒子を、10ms以下の時間内で1500℃〜2300℃の範囲の温度に加熱する、且つ
(iii) 該混合物を、10ms以下の時間の間に300℃以下の温度に冷却する、
製造方法。
【請求項6】
工程(i)による粒子の混合物が、
(i1’) 少なくとも、インジウムの酸化物、亜鉛の酸化物およびガリウムの酸化物を含有する懸濁液を準備すること、
(i2’) 該懸濁液中に含有される酸化物を凝集させること、および
(i3’) 凝集物を選別すること、
によって製造されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
凝集酸化物を予備焼結させ、且つその予備焼結された凝集物を選別することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(i)による粒子の混合物が、
(i1’’) インジウム、亜鉛およびガリウムの酸化物の混合物を含有する固体材料を準備すること、ここで、該固体材料は、インジウム、亜鉛およびガリウムの二元系混合酸化物および三元系混合酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの混合酸化物を含む、
(i2’’) 固体材料を微粉砕すること、および
(i3’’) 微粉砕された固体材料を選別すること
によって製造されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
工程(ii)における加熱を、プラズマトーチを使用して行うことを特徴とする、請求項5から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(iii)における冷却を、支持体上で行うことを特徴とする、請求項5から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
支持体が、管状カソードであることを特徴とする、請求項10に記載の方法。

【公開番号】特開2012−82520(P2012−82520A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−222871(P2011−222871)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(511222294)ヘレーウス マテリアルズ テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (7)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Materials Technology GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Heraeusstrasse 12−14, D−63450 Hanau, Germany
【Fターム(参考)】