説明

アライメントマーク,アライメント方法,電子部材および電子モジュール

【課題】電子部材上の狭ピッチ化,微細化された配線,電極などの位置合わせを簡単かつ高精度で行うことができるアライメントマーク,電子部材等を提供する。
【解決手段】第1アライメントマーク1は、幅が一方向に増大する線1L,1L,…,1Lを含むラインパターン1Lを有している。第2アライメントマーク2は、幅が一方向に増大する間隙2S,2S,…,2Sを含むスペースパターン2Sを有している。第2アライメントマーク2のスペースパターン2Sは、第1アライメントマーク1のラインパターン1Lの反転パターンとなっている。位置合わせを必要とする2つの電子部材に、第1,第2アライメントマーク1,2をそれぞれ形成しておくことで、両者の重なりから生じるモアレ縞模様を観察して、目視でも正確かつ簡単に位置合わせを行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部材同士の位置合わせに用いられるアライメントマーク,このアライメントマークを用いたアライメント方法,電子部材および電子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特に携帯電話等の小型軽量電気機器には、フィルム状配線体、いわゆるフレキシブル配線板が配置されることが多い。フレキシブル配線板は、携帯電話などの開閉機構や回転機構を有する機器中の電気的接続を行うために、極めて便利なものであることから、近年使用頻度が高まっている。
【0003】
ところで、フレキシブル配線板を、硬質プリント配線板や電子デバイスに接続する場合、配線や電極の接続のための位置合わせが必要となる。一般的には、十字パターンや正方形パターンを有するアライメントマークが用いられている。
【0004】
たとえば、特許文献1の図1には、矩形パターンのアライメントマーク7,8を用いて、フレキシブル配線板6を、液晶パネル1に接続する方法が開示されている。
特許文献2の段落[0023]には、有機ELパネルとフレキシブル配線板との接続のために、正方形のアライメントマークを用いることが記載されている。
特許文献3の図1には、円の中心部分にドット状のアライメントマーク11を設けたフレキシブル配線板が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−177183号公報
【特許文献2】特開2002−169482号公報
【特許文献3】特開2002−94199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、電子機器の小型化,高集積化に伴い、配線や電極の挟ピッチ化が求められており、従来のアライメントマークを用いた位置合わせでは、挟ピッチ化に対応したアライメント精度を確保するのが困難となっている。特に、位置合わせを目視で行おうとすると、従来のアライメントマークを用いた場合、高精度が得られない上に、位置合わせ作業も手間のかかるものとなる。
【0007】
本発明の目的は、位置合わせ作業が簡単で高精度を確保しうるアライメントマーク、このアライメントマークを用いたアライメント方法、アライメントマークを備えた電子機器等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアライメントマークは、幅が異なる少なくとも2つの線を含む複数の線からなるラインパターン、または幅が異なる少なくとも2つの間隙を含む複数の間隙からなるスペースパターンのいずれか一方を有している。
スペースパターンの例としては、両端がべた状の膜の間に,複数の間隙を形成する線が形成されている場合がある。
【0009】
これにより、このアライメントマークの反転パターンを有する相補的アライメントマークを用いて、2つの部材の位置合わせを高精度で行うことが可能になる。すなわち、アライメントマークが上記ラインパターンである場合は、相補的アライメントマークは当該ラインパターンの反転パターンとなるスペースパターンを有していればよい。一方、アライメントマークが上記スペースパターンである場合は、相補的アライメントマークは当該スペースパターンの反転パターンとなるラインパターンを有していればよい。
2つのアライメントマークを重ねると、モアレ縞模様が観察されるので、モアレ縞模様から位置合わせ状態がわかる。たとえば、アライメントマークが上記ラインパターンである場合は、相補的アライメントマークのスペースパターンの各間隙に、アライメントマークのラインパターンの各線が一致したとき、全体の隙間がなくなり、光量が極値となる。「極値」とは、一般的には最小値を意味するが、反射率の高い材料でラインパターンを形成した場合には、このときに光量が最大値となることもある。
たとえば、アライメントマークが上記ラインパターンである場合、ラインパターンの少なくとも2つの線の幅を相異ならせることにより、相補的アライメントマークのスペースパターンの各間隙に、アライメントマークのラインパターンの各線が一致する地点は、1つしか存在せず、かつ、位置合わせが不正確なときと正確な位置合わせができたときの上記光量の相違が大きくなる。アライメントマークが上記スペースパターンである場合も、同様である。この作用を利用して、位置合わせが簡単かつ高精度で行われる。
【0010】
ラインパターンの各線の幅またはスペースパターンの各間隙の幅が、一方向に向かって順次拡大していることにより、位置合わせが不十分なときには、ほぼ一定幅の白色部を有するモアレ縞模様が現れる。したがって、位置合わせがほぼ完了してはいるものの,なお不十分な状態を簡単に検知することができるので、位置合わせ精度がさらに向上する。
特に、上記ラインパターンの各線の間に存在する各間隙の幅、または上記スペースパターンの各間隙の間に存在する各線の幅も、同方向に向かって順次拡大していることがより好ましい。
【0011】
本発明の電子部材は、導電層が形成された基板の位置合わせ面上に、上記アライメントマークを設けたものであり、これにより、他の電子部材との位置合わせを簡単かつ高精度で行いうる電子部材が得られる。
特に、フレキシブルプリント配線板として機能する電子部材は、多種の電子部品や電子機器に広く用いることができ、有用性が高い。
【0012】
本発明の電子モジュールは、上記アライメントマークを有する第1の電子部材と、実質的にその反転パターンとなる相補的アライメントマークを有する第2の電子部材とを接続したものである。第1または第2の電子モジュールの少なくとも一方の基板は、アライメント用観測光を透過する材料によって構成されている。
【0013】
これにより、第1の電子部材のアライメントマークのスペースパターンに、第2の電子部材の相補的アライメントマークのラインパターンを合わせて、上から見るとほぼ全体がほとんどラインパターンで占められるので、2つのアライメントマーク全体から得られる光量が極値となる位置が、一意的に定まる。これを利用して、各電子部材の位置合わせが可能となる。たとえば、各電子部材が配線板の場合には、各配線板上の配線や電極が狭ピッチ化された場合でも、各ラインパターンの線の幅や、各スペースパターンの間隙の幅を微細化することで、高い位置合わせ精度により、微細化された配線や電極の電気的接続を確実に行うことができる。
ここで、「実質的な反転パターン」とは、たとえば、アライメントマークのスペースターンの各間隙と、相補的アライメントマークのラインパターンの各線との幅に多少の相違があり、アライメントマークと相補的アライメントマークとを完全に位置合わせした状態で、多少の隙間があったり、逆にアライメントマークと相補的アライメントマークとの各線同士が多少オーバーラップしてもよいことを意味する。このような場合でも、許容誤差内で光量が極値になる領域があるので、位置合わせができるからである。
【0014】
各電子部材は、少なくとも2箇所にアライメントマークおよび相補的アライメントマークをそれぞれ備えていることにより、平面上での傾きのない位置合わせが可能となる。
また、各電子部材が、互いに交差する方向に延びる線および間隙を有する,1対のアライメントマークおよび1対の相補的アライメントマークをそれぞれ備えていることにより、平面座標上で特定される1つの位置に、位置合わせが可能になる。
また、各電子部材の各基板の各位置合わせ面が互いに接していることで、位置合わせ精度が特に向上する。、
【0015】
本発明のアライメント方法は、第1の電子部材の基板上に、第2の電子部材の基板を、アライメントマークと相補的アライメントマークとが重なるように設置して、アライメントマークおよび相補的アライメントマークとから受ける光量が実質的に極値となる位置まで、第1および第2の電子部材を相対的に移動させる方法である。
【0016】
これにより、上述のように、簡単かつ高精度の位置合わせが行われる。ここで、「実質的に極値」とは、測定誤差を含めた許容誤差の範囲内で、極値に近い範囲であればよい意味である。
【0017】
特に、各電子部材を相対的に移動させながら、光量の増減を検出し、光量の変化に基づいて、第1および第2の電子部材の相対的移動量を決定することにより、人手ではなく、自動的な位置合わせが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のアライメントマーク,アライメント方法,電子部材および電子モジュールによると、電子部材上の狭ピッチ化,微細化された配線,電極などの位置合わせを簡単かつ高精度で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(実施の形態1)
図1(a),(b)は、順に、第1アライメントマーク1および第2アライメントマーク2(相補的アライメントマーク)の形状を示す平面図である。
図1(a)に示すように、第1アライメントマーク1は、ラインパターン1Lとスペースパターン1Sとが交互に混在するライン$スペースパターンを有している。ラインパターン1Lは,幅が最小の右端部から左方に向かって増大するように配置された線1L,1L,…,1Lを有している。スペースパターン1Sは、幅が最小の右端部から左方に向かって増大する間隙1S,1S,…,1Sを有している。
【0020】
図1(b)に示すように、第2アライメントマーク2は、ラインパターン2Lとスペースパターン2Sとが交互に混在するライン$スペースパターンを有している。ラインパターン2Lは,幅が最小の右端部から左方に向かって増大する線2L,2L,…,2L10を有している。スペースパターン2Sは、幅が最小の右端部から左方に向かって増大する間隙2S,2S,…,2Sを有している。
【0021】
図1(a),(b)には、第1アライメントマーク1および第2アライメントマーク2の各線およびスペースの寸法例(単位mm)が記載されている。
そして、第2アライメントマーク2の右端の間隙2Sの幅0.01(単位:mm、以下同じ)は、第1アライメントマーク1の右端の線1Lの幅0.01に等しく、第2アライメントマーク2の右端から2番目の間隙2Sの幅0.02は、第1アライメントマーク1の右端から2番目の線1Lの幅0.02に等しく、第2アライメントマーク2の右端から3番目の間隙2Sの幅=0.03は、第1アライメントマーク1の右端から3番目の線1Lの幅0.03に等しく、第2アライメントマーク2の右端から4番目の間隙2Sの幅0.04は、第1アライメントマーク1の右端から4番目の線1Lの幅0.04に等しく、以下、第2アライメントマーク2の右端からk番目の間隙2Sの幅は、第1アライメントマーク1の右端からk番目の線1Lの幅に等しい。つまり、第2アライメントマーク2のスペースパターン2Sは、第1アライメントマーク1のラインパターン1Lの反転パターンとなっている。
【0022】
一方、第2アライメントマーク2の右端から2番目の線2Lの幅0.02は、第1アライメントマーク1の右端の間隙1Sの幅0.02に等しく、第2アライメントマーク2の右端から3番目の線2Lの幅0.03は、第1アライメントマーク1の右端から2番目の間隙1Sの幅0.03に等しく、第2アライメントマーク2の右端から4番目の線2Lの幅0.04は、第1アライメントマーク1の右端から3番目の間隙1Lの幅0.04に等しく、第2アライメントマーク2の右端から5番目の線2Lの幅0.05は、第1アライメントマーク1の右端から4番目の間隙1Sの幅0.05に等しく、以下、第2アライメントマーク2の右端からk番目の線2Lの幅は、第1アライメントマーク1の右端から(k−1)番目の間隙1Sk−1の幅に等しい。この例では、第2アライメントマーク2のラインパターン2Sのうち右端の線2Lを除くパターンは、第1アライメントマーク1のスペースパターン1Lの反転パターンとなっている。
【0023】
以上のことから、第2アライメントマーク2の間隙2S,2S,2S,…,2Sを、第1アライメントマーク1の各線1L,1L,1L,…,1Lに、それぞれ重ねると、重ね合わされた全体像が線で占められることになる。つまり、第2アライメントマーク2は、第1アライメントマーク1の実質的な反転パターンを有しており、第1アライメントマーク1に対する相補的アライメントマークとなっている。
【0024】
図2(a)〜(c)は、第1アライメントマーク1の上に,第2アライメントマーク2を重ねたときに順次位置合わせが進んでいく状態を示す図である。図2(a)に示す状態では、モアレ縞模様の白色部が多く、位置合わせがほとんどできていない状態である。図2(b)に示す状態では、モアレ縞模様の白色部が極めて細くなり、ほとんど位置合わせが完了しているが、まだ、白色部があるということは位置合わせが不十分であることを意味している。そして、図2(c)に示すように、全体がほぼ黒色部で占められたときに、真に位置合わせが完了したことになる。
【0025】
ここで、第1アライメントマーク1のラインパターン1Lのうち少なくとも2本の線の幅が相異なっていれば、反転パターンを有する相補的な第2アライメントマーク2と重ねたときに、位置合わせできる位置が必ず1つだけ存在する。
したがって、一意的に、位置合わせを行うためには、第1アライメントマーク1は、少なくとも2本の線を有していればよく、そのうち少なくとも2本の線の幅が異なっていればよい。したがって、相補的アライメントマークである第2アライメントマーク2は、第1アライメントマーク1のラインパターン1Lの反転パターンとなる少なくとも2本の間隙を有していればよい。
なお、第1アライメントマーク1がスペースパターンであってもよい。スペースパターンの例としては、両端がべた状の膜の間に,複数の間隙を形成する線が形成されている場合がある。その場合には、相補的アライメントマークは、上記複数の間隙に合致する複数の線を含むラインパターンであればよい。
【0026】
本発明によると、ラインパターン1Lを有する第1アライメントマーク1と、ラインパターン1Lの反転パターンであるスペースパターン2Sを有する第2アライメントマーク2(相補的アライメントマーク)とを、2つの部材に交替的に形成しておくことにより、2つのアライメントマークを重ねて生じるモアレ縞模様の白色部をなくすか、最小にすれば、2つの部材の位置合わせを目視によっても簡単かつ高精度で行うことができる。
【0027】
なお、第2アライメントマーク2のスペースパターンに第1アライメントマーク1のラインパターンが嵌ればよいので、第2アライメントマーク2のラインパターン2Lの両端部は、もっと広幅の線(べた状)でもよい。
ただし、図1(b)に示すように、第2アライメントマーク2のラインパターン2Lの右端の線2Lの幅を隣接する線2Lの幅よりも小さくし、左端の線2L10の幅を隣接する線2Lの幅よりも大きくしてことにより、各アライメントマーク1,2を重ねたときのモアレ縞模様の幅がより拡大するので、位置合わせの検知精度が向上する。
【0028】
また、本実施の形態では、第1アライメントマーク1において、右端の線1Lの幅0.01mmに対して、右端から2番目の線1Lの幅0.02mmで、右端から3番目の線1Lの幅が0.03で,4番目の線1Lの幅が0.04で,5番目の線1Lの幅が0.05で、6番目の線1Lの幅が0.06で、7番目の線1Lの幅が0.07で、8番目の線1Lの幅が0.08で、9番目の線1Lの幅が0.09である。つまり、各線の幅は、左方に向かって、順次0.01mmずつ幅が広くなっている。
【0029】
このように、第1アライメントマーク1のラインパターン1Lの各線の幅、ひいては、第2アライメントマークのスペースパターン2Sの各間隙の幅が、一方向に順次拡大(又は縮小)していることにより、図2(b)に示すように、白色部の幅が全体に亘ってほぼ均一なモアレ縞模様が得られる。これにより、位置合わせが進んだ状態でありながら、なお完全ではない状態を簡単に検知することができるので、位置合わせ精度が特に向上する。
その場合、第1アライメントマーク1のスペースパターン1Sの各間隙、および第2アライメントマーク2のラインパターン1Lの各線の幅は一定であってもよいが、第1アライメントマーク1のスペースパターン1Sの各間隙、および第2アライメントマーク2のラインパターン1Lの各線の幅がも一方向に向かって拡大(又は縮小)していることにより、モアレ縞模様の白色部の変化が大きくなるので、さらに検知精度が向上する。
【0030】
具体的には、本実施形態の第1,第2アライメントマーク1,2を用いた場合、0.002mm〜0.05mm程度のアライメント精度が得られる。したがって、ピッチ0.2mm以下の微細ピッチを有する導電層同士の位置合わせにも適応しうるアライメントマークが得られる。
【0031】
(実施の形態2)
図3は、第1アライメントマークおよび第2アライメントマークを用いて、電子部材同士の位置合わせを行う前、および位置合わせ後の形状を示す平面図である。図4は、第1アライメントマークおよび第2アライメントマークを用いて、電子部材同士の位置合わせを行なったときの形状を示す平面図である。図4においては、オーバーラップしている部分を見やすくするために、すべての部材を実線で表示している。
【0032】
図3(a)に示すように、第1電子部材10は、基板14の位置合わせ面(おもて面)上に、多数の配線11と、各配線11の先端に位置する電極12と、電極12形成領域の両側に位置する第1横方向アライメントマーク15a,15bおよび第1縦方向アライメントマーク16a,16bとを、印刷により形成して構成されている。
【0033】
また、第2電子部材20は、基板24の位置合わせ面(裏面)上に、多数の配線21と、各配線21の先端に位置する電極22と、電極22形成領域の両側に位置する第2横方向アライメントマーク25a,25bおよび第2縦方向アライメントマーク26a,26bとを、印刷により形成して構成されている。
【0034】
ここで、第1横方向アライメントマーク15a,15bおよび第1縦方向アライメントマーク16a,16bが、図1に示す第1アライメントマーク1のパターンを有している場合は、第2横方向アライメントマーク25a,25bおよび第2縦方向アライメントマーク26a,26bは、図1に示す第2アライメントマーク2(相補的アライメントマーク)のパターンを有していればよい。一方、第1横方向アライメントマーク15a,15bおよび第1縦方向アライメントマーク16a,16bが、図1に示す第2アライメントマーク2(相補的アライメントマーク)のパターンを有している場合は、第2横方向アライメントマーク25a,25bおよび第2縦方向アライメントマーク26a,26bは、図1に示す第1アライメントマーク1のパターンを有していればよい。つまり、アライメントマークと相補的アライメントマークとは、いずれの電子部材に形成されていてもよい。
【0035】
第1電子部材10,第2電子部材20としては、フレキシブル配線板,硬質プリント配線板等のプリント配線板や、液晶パネル,有機ELパネル等の表示パネルや、各種電子デバイスなどがある。
【0036】
そして、図4に示すように、第1横方向アライメントマーク15a,15bの上に第2横方向アライメントマーク25a,25bを重ね、第1縦方向アライメントマーク16a,16bの上に第2縦方向アライメントマーク26a,26bを重ねて、図2(c)に示す状態になるまで、第1電子部材10と第2電子部材20との相対的位置を調節する。具体的には、第1電子部材10を固定している場合には、第2電子部材20を移動させればよく、第2電子部材20を停止させる場合には、第1電子部材10を移動させればよい。つまり、第1および第2電子部材1,2を相対的に移動させればよい。
これにより、第1電子部材10の電極12の上に第2電子部材20の電極22が正確に載置され、各種方法によって電気的に接続される。
【0037】
両者の本発明のアライメントマークおよび相補的アライメントマークを用いた位置決めを行なって、電極等を接続する方法としては、異方導電性接着剤,異方導電性フィルム,バンプなどを用いた接続の他、周知の接続構造による接続方法を用いることができる。
【0038】
本実施の形態によると、アライメントマークおよび相補的アライメントマークを第1,第2電子部材10,20に形成しておくことにより、目視でも、上述のような精度の高い位置合わせを簡単かつ高精度で行うことができる。
【0039】
なお、たとえば、アライメントマークのスペースターンの各間隙と、相補的アライメントマークのラインパターンの各線との幅に多少の相違があり、アライメントマークと相補的アライメントマークとを完全に位置合わせした状態で、多少の隙間があったり、逆にアライメントマークと相補的アライメントマークとの各線同士が多少オーバーラップしてもよいことを意味する。このような場合でも、許容誤差内で光量が極値になる領域があるので、位置合わせができるからである。
【0040】
すなわち、各第2アライメントマーク16a,16bは、各第1アライメントマーク15a,15bの正確な反転パターンでなくてもよく、「実質的な反転パターン」であればよいことを意味する。
【0041】
本実施の形態では、第1横方向アライメントマーク15a,15bおよび第2横方向アライメントマーク25a,25bという各1対のアライメントマークおよび相補的アライメントマークを設けたので、2つのアライメントマークおよび相補的アライメントマークから得られるモアレ縞模様から、総合的にもっともよく位置合わせされている状態を検知することで、各アライメントマーク間の平面状での傾きを小さくすることができる。したがって、たとえば各配線同士(又は電極同士)の位置合わせを行う場合には、各配線同士がほぼ平行になるように位置合わせをすることができる。
【0042】
また、互いに交差する方向に延びる線および間隙を有する,横方向アライメントマーク15a,15b,25a,25bと、縦方向アライメントマーク16a,16b,26a,26bとを設けたので、平面座標上で特定される1つの位置に、各配線同士(又は電極同士)の位置合わせを高精度で行うことができる。本実施の形態では、直交座標系における縦座標と横座標とで、位置合わせが行われることになるが、電子部材の形状がアライメントマークの取付位置の事情などに応じて、各アライメントマーク同士,相補的アライメント同士がそれぞれ直角以外の角度で交差していてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、第1横方向アライメントマーク15a,15bおよび第1縦方向アライメントマーク16a,16bが形成されている,第1電子部材10の基板14の位置合わせ面(おもて面)と、多数の配線11と、各配線11の先端に位置する電極12と、電極12形成領域の両側に位置する第1横方向アライメントマーク15a,15bおよび第1縦方向アライメントマーク16a,16bと、第2横方向アライメントマーク25a,25bおよび第2縦方向アライメントマーク26a,26bが形成されている第2電子部材20の24の位置合わせ面(裏面)とが、互いに接しているので、各アライメントマークを重ねたときに生じるモアレ縞模様が、上側の基板の厚みの分だけずれることがなく、高精度な位置合わせが可能となる。
【0044】
(実施の形態3)
図5は、実施の形態3における携帯電話機として機能する電子機器に内蔵される電子モジュールを示す斜視図である。
本実施の形態の電子機器に内蔵される電子モジュールは、LED90を搭載した携帯電話機の画面を表示するメインディスプレイ61と、電子機器内の主要な制御を受け持つ第1サブPCB62およびメインPCB63と、携帯電話機の副次的な情報を表示するサブディスプレイ64と、第2サブPCB65と、インカメラ91を制御するためのインカメラ制御用PCB66と、付属回路用PCB67とを、各種配線板や極細同軸線などの接続部材(電子部材)で接続した一体化モジュールである。
上記第1サブPCB62およびメインPCB63には、内蔵メモリ,ベースバンドLSI,電源制御IC,音源IC,RF受信LSI,RF送信LSI,パワーアンプ,スイッチIC等が振り分けられて配置されている。
また、一体化モジュールには含まれていないが、アウトカメラ93およびアウトカメラ93を制御するための制御回路94も、電子機器内に配置されている。
【0045】
第1サブPCB62とメインPCB63とは、極細同軸線83(電子部材)により接続されており、極細同軸線83と第1サブPCB62との接続には、コネクタ73が設けられている。コネクタ73は周知の構造であって、たとえば、極細同軸線83とメインPCB63との接続部において分解して示すように、グランドバーや極細同軸線の中心導体を固定する絶縁体枠を含む極細同軸線ハーネス77aと、基板側の同軸線接続部77bとによって構成されている。これらの極細同軸線83,コネクタ73,極細同軸線ハーネス77a,同軸線接続部77bなどの構造は、汎用されている構造であってよい。このとき、極細同軸線ハーネス77aと同軸線接続部77bとの位置合わせに、本発明のアライメントマークおよび相補的アライメントマークを用いることができる。
【0046】
また、メインディスプレイ61と、第1サブPCB62とは、2つのFPC81a、81bによって電気接続されている。2つのFPC81a,81bは、メインディスプレイ61においては、液晶パネル側とLED90側とに分けられるが、第1サブPCB62上では、共通のコネクタ71に接続されている。その際、メインディスプレイ61と、2つのFPC81a、81bとの接続時における電極同士の位置合わせ、および、第1サブPCB62と2つのFPC81a、81bとの接続時における電極同士の位置合わせに、本発明のアライメントマークおよび相補的アライメントマークを用いることができる。
【0047】
また、第1サブPCB62とサブディスプレイ64とは、FPC82により、コネクタ72を介して接続されている。第1サブPCB62とインカメラ制御用PCB66とは、FPC84により、コネクタ74を介して接続されている。第1サブPCB62と付属回路用PCB67とは、FPC85により、コネクタ75,76を介して接続されている。メインPCB63とアンテナ65とは、FPC86により、コネクタ78を介して接続されている。
【0048】
以上のように、本実施の形態のアライメントマークおよび相補的アライメントマークを、各種電子部材に設けて、電子部材同士を接続することにより、挟ピッチ化,高密度実装化された配線や電極を有する一体化モジュールを容易に組み立てることができる。つまり、小型化・高密度実装化された電子モジュールおよび電子機器を実現することができる。特に、電子機器として携帯電話機に用いることにより、小型化・高密度実装化を図ることができる。
電子機器としては、携帯電話機の他、デジタルカメラ,ビデオカメラ等のカメラ、ポータブルオーディオプレーヤ、ポータブルDVDプレーヤ、ポータブルノートパソコンなどがある。
【0049】
本発明の電子部材として利用できる配線板としては、フレキシブルプリント配線板(FPC)や極細同軸線に限定されるものではなく、硬質プリント配線板(PCB)などであってもよい。また、電子部材は、液晶パネル,有機ELパネルや、半導体デバイスなどの各種デバイスであってもよい。
【0050】
(実施の形態4)
上記各実施の形態では、アライメントマークと相補的アライメントマークとを重ね合わせたモアレ縞模様の目視による観測によって、位置合わせを行う例について説明したが、本実施の形態では、アライメントマークと相補的アライメントマークとを重ね合わせたモアレ縞模様の光量をセンサにより測定し、その信号を用いて位置合わせを自動的に行う方法について説明する。
【0051】
図6は、自動位置合わせシステム40の構成を示す図である。本実施の形態では、実施の形態1に係る第1,第2アライメントマーク1,2を備えた第1,第2電子部材10,20間の接続の際の位置合わせを例にとって説明する。
同図に示すように、自動位置合わせシステム40は、光量Sopを検出するカメラ41と、カメラ41からの光量Sopの信号を受けて、演算を行うCPU42と、メモリ43と、第1電子部材10が載置される基台45と、CPU42からの送り量Sfdの信号に応じて第2電子部材20を送る送り装置44とを備えている。そして、第1電子部材10上の第1アライメントマーク1と、透明基板を有する第2電子部材20上の第2アライメントマーク2とを接触させて、カメラ41によりモアレ縞模様から受ける光量Sopに応じて、送り装置44により、第2電子部材20が図中横方向に走査される。
【0052】
図7(a),(b)は、順に、第2アライメントマーク2の送り量Sfdに対する光量Sopの変化を示す図およびその一部の拡大図である。図7(a),(b)は、各アライメントマーク1,2が図1の設計寸法通りに正確に形成されていると仮定したときのシミュレーション値であり、光量Sopは、実測値ではなく、モアレ縞模様の光透過面積として計算されている。実際のアライメントマーク1,2には誤差があるので、実測値はこのパターンからずれたものとなる。
【0053】
第2アライメントマーク2が位置合わせされるまで、モアレ縞模様は図2(a)〜(c)に示す変化を示すが、このときモアレ縞模様からの光量Sop(光透過面積)は、図7(a),(b)に示すように、増大、減少を繰り返して、全体として波状の変化パターンを生じる。つまり、第2アライメントマーク2のスペースパターン2Sの各間隙と、第1アライメントマーク1のラインパターン1Lの各線とが重なる位置では光量Sopは小さくなり、第2アライメントマーク2のスペースパターン2Sの各間隙と、第1アライメントマーク1のラインパターン1Lの各線とがずれる位置では光量Sopは大きくなる。そして、第2電部材20を送っていくと、モアレ縞模様の光量Sopの増減を繰り返して、谷の位置は次第に下がっていき、正確な位置合わせが完了する地点Xで、光量Sopが急激に低減して0になるはずである。
【0054】
一方、送り量SfdがXを超えると、光量Sopが急激に増大した後減少して、地点Yで再び上昇に転ずる。このとき、地点Yにおける光量Sopの極小値が、地点Xにおける光量Sopの極小値よりも大きいときに、送り量Xで位置合わせが完了していることがわかる。そこで、第2電子部材20を元の方向に戻して、送り量Xの位置で位置合わせを完了させる。
ただし、地点Xで光量Sopが0または0に非常に近づく場合には、地点Xを超えて、光量Sopが上昇に転じたときに、位置合わせが完了した地点Xを行き過ぎたと判断して、地点Xに戻ればよい。
【0055】
以上の制御を行うことにより、人手ではなく、自動的に電子部材の位置合わせを行うことが可能となる。なお、実施の形態2のように、縦方向アライメントマークと横方向アライメントマークを用いる場合は、電子部材の送りをX−Yステージで行うことができる。
【0056】
なお、実際には、製造上いろいろな誤差が生じるので、図7の破線に示すように、地点Xで光量Sopが0にならないことがあり得る。このような現象は、第1アライメントマーク1のラインパターン1lの各線の幅よりも,第2アライメントマーク2のスペースパターン2Sの幅が大きいときや、各アライメントマーク1,2のパターンが平行ではないときに生じる。しかし、その場合でも、減少していた極値が増大に転ずる地点Yを検知することで、正確な位置合わせが可能になる。
【0057】
一方、図7の点線に示すように、地点Xの前後で光量Sopがある範囲の間0になることがあり得る。その場合にも、0になる領域の中点位置で位置合わせが完了すると判断する、などの信号処理を施すことにより、正確な位置合わせが可能となる。
【0058】
(その他の実施形態)
上記実施の形態4では、第2電子部材2が透明基板を有するものとして、可視光線を検知するカメラ41で、第1,第2アライメントマーク1,2によって生じるモアレ縞模様の光量を検出したが、可視光線以外にも、たとえば観測光として赤外線を用いた検出も可能である。たとえば、実施の形態4における第2電子部材20の基板が、観測光である赤外線を透過するシリコン基板であって、各アライメントマーク1,2が赤外線を透過しない材料で形成されている場合がある。したがって、アライメントマークをサブミクロンオーダーの微細パターンにすれば、本発明のアライメントマークおよび相補的アライメントマークを、半導体デバイスと実装基板との位置合わせなどにも応用することができる。
【0059】
なお、本発明のアライメントマークは、電子部材同士の位置あわせだけでなく、微小要素を含む機械部材同士、又は機械部材と電子部材との位置合わせにも用いることができる。
【0060】
なお、アライメントマークの材料を金などの反射率の高い材料で構成し、下地が反射率の低い材料からなる場合には、位置合わせ状態で反射率が極大となることもありうる。その場合には、光量が極大となる地点で、位置合わせが完了していると判断すればよい。
【0061】
上記開示された本発明の実施の形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、携帯電話機の他、デジタルカメラ,ビデオカメラ等のカメラ、ポータブルオーディオプレーヤ、ポータブルDVDプレーヤ、ポータブルノートパソコンなどの電子機器を組み立てる際に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】(a),(b)は、順に、実施の形態1における第1アライメントマークおよび第2アライメントマーク(相補的アライメントマーク)の形状を示す平面図である。
【図2】(a)〜(c)は、実施の形態1における第1アライメントマークの上に,第2アライメントマーク2を重ねたときに順次位置合わせが進んでいく状態を示す図である。
【図3】実施の形態2における,第1アライメントマークおよび第2アライメントマーク用いて、電子部材同士の位置合わせを行う前の状態を示す平面図である。
【図4】実施の形態2における第1アライメントマークおよび第2アライメントマークを用いて、電子部材同士の位置合わせを行なった状態を示す平面図である。
【図5】実施の形態3における携帯電話機として機能する電子機器に内蔵される電子モジュールを示す斜視図である。
【図6】実施の形態4における自動位置合わせシステムの構成を示す図である。
【図7】実施の形態4における第2アライメントマークの送り量Sfdに対する光量Sopの変化を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 第1アライメントマーク
1L ラインパターン
1L〜1L
1S スペースパターン
1S〜1L 間隙
2 第2アライメントマーク
2L ラインパターン
2L〜1L10
2S スペースパターン
2S〜1L 間隙
10 第1電子部材
11 配線
12 電極
14 基板
15a,15b 第1横方向アライメントマーク
16a,16b 第1縦方向アライメントマーク
20 第2電子部材
21 配線
22 電極
24 基板
25a,25b 第2横方向アライメントマーク
26a,26b 第2縦方向アライメントマーク
40 自動位置合わせシステム
41 カメラ
42 CPU
43 メモリ
44 送り装置
45 基台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部材の位置合わせに用いられるアライメントマークであって、
幅が異なる少なくとも2つの線を含む複数の線からなるラインパターン、または幅が異なる少なくとも2つの間隙を含む複数の間隙からなるスペースパターンのいずれか一方を有しているアライメントマーク。
【請求項2】
請求項1記載のアライメントマークにおいて、
前記ラインパターンの各線の幅または前記スペースパターンの各間隙の幅は、一方向に向かって順次拡大している、アライメントマーク。
【請求項3】
請求項2記載のアライメントマークにおいて、
前記ラインパターンの各線の間に存在する各間隙の幅、または前記スペースパターンの各間隙の間に存在する各線の幅も、同方向に向かって順次拡大している、アライメントマーク。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1つに記載のアライメントマークを、導電層が形成された基板の位置合わせ面上に設けてなる、電子部材。
【請求項5】
請求項4記載の電子部材において、
前記基板は、透明材料からなり、
フレキシブルプリント配線板として機能する、電子部材。
【請求項6】
基板の位置合わせ面上に、請求項1または2記載のアライメントマークを有する第1の電子部材と、
前記第1の電子部材に接続される第2の電子部材と、
を備えた電子モジュールであって、
前記第2の電子部材は、
位置合わせ面を有する基板と、
前記位置合わせ面上における前記アライメントマークと重なる位置に形成され、前記アライメントマークの実質的な反転パターンを有する相補的アライメントマークとを有し、
前記第1または第2の電子部材の少なくとも一方の電子部材の基板は、アライメント用観測光を透過する材料によって構成されている、電子モジュール。
【請求項7】
請求項6記載の電子モジュールにおいて、
前記第1および第2の電子部材は、少なくとも2箇所に、前記アライメントマークおよび相補的アライメントマークをそれぞれ備えている電子モジュール。
【請求項8】
請求項6または7記載の電子モジュールにおいて、
前記第1および第2の電子部材は、互いに交差する方向に延びる線および間隙を有する,1対のアライメントマークおよび1対の相補的アライメントマークをそれぞれ備えている電子モジュール。
【請求項9】
請求項6〜8のうちいずれか1つに記載の電子モジュールにおいて、
前記第1および第2の電子部材の各基板の各位置合わせ面は、互いに接している、電子モジュール。
【請求項10】
請求項6〜9のうちいずれか1つに記載の電子モジュールを組み立てる際のアライメント方法であって、
前記第1の電子部材の基板上に、前記第2の電子部材の基板を、前記アライメントマークと前記相補的アライメントマークとが重なるように設置するステップ(a)と、
前記アライメントマークおよび相補的アライメントマークから受ける光量が実質的に極値となる位置まで、前記第1および第2の電子部材を相対的に移動させるステップ(b)と、
を含むアライメント方法。
【請求項11】
請求項10記載のアライメント方法において、
前記ステップ(b)では、
前記第2の電子部材を移動させながら、前記光量の増減を検出し、光量の変化に基づいて、前記第1および第2の電子部材の相対的移動量を決定する、アライメント方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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