説明

アリルグリシン又はその類縁体を製造する方法

【課題】 保護基を用いず、単純な構造の化合物を原料とした1段階のアリル化反応で、アリルグリシンを製造する方法を提供する。
【解決手段】 液相でヒドロキシグリシンと、下式(化2)
【化2】


(式中、R,R、R、及びRはそれぞれ同じであっても異なってもよく、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R及びRは環状をなしてもよく、R及びRは、それぞれ同じであっても異なってもよく、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R及びRは共に環状を成してもよい。)で表されるアリルボロン酸又はアリルボロネートとを反応させ、アリルグリシン又はその類縁体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アリルグリシン又はその類縁体の製造方法に関し、好ましくは高い化学選択性と立体選択性で、アリルグリシン又はその類縁体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アリルグリシンおよびその類縁体は、それ自体に酵素阻害活性などの薬理作用を持つ場合が多いだけでなく(非特許文献1)、二重結合部分の化学変換による様々な非天然アミノ酸や天然物の合成中間体としても有用な化合物群である(非特許文献2〜5)。
光学活性なアリルグリシンおよびその類縁体の製造法としては、不斉アリル化反応による直接的な合成方法が試みられてはいるが(非特許文献6〜8)、コスト的に見て工業化にまだ問題が残されている。
一方、アリルホウ素化合物を用いたカルボニル化合物のアリル化反応や、アリルホウ素化合物とアンモニアを併用したカルボニル化合物のα−アミノアリル化反応などが報告されている(非特許文献9、10)。後者の文献には、グリオキシル酸、アンモニア、クロチルボロネートの3成分反応による、イソロイシン類の立体選択的製造方法も記載されている。
【0003】
【非特許文献1】Kunz, D. A.: Ribbons, D. w.; Chapman, P. J. J. Bacteriol 148, 72(1981).
【非特許文献2】Schneider, H.; Sigmund, G.; Schricker, B.; Trirring, K.; Berner, H. J. Org. Chem. 58, 683(1993).
【非特許文献3】Hutton, C. A.; White, J. M. Tetrahedron Lett. 38, 1643(1997).
【非特許文献4】Baldwin, J. E.; Bradley, M.; Turner, N. J.; Adlington, R. M.; Pitt, A. R.; Sheriden, H, Tetrahedron 47, 8203(1991).
【非特許文献5】Kurokawa, N.; Ohfune, Y. Tetrahedron, 28, 6195(1993).
【非特許文献6】Hamon, D. P. G.; Massy-Westropp, M.; Razzino, P. Tetrahedron, 14, 4183(1995).
【非特許文献7】Hamada, T.; Manabe, K.; Kobayashi, S. Angew. Chem. Int. Ed. 42. 3927(2003).
【非特許文献8】Williams, R. M. "Synthesis of Optically Active α-Amino Acids (Organic Chemistry Series, J. E. Baldwin, Series Editor), Pergamon Press、410頁、1989年
【非特許文献9】Sugiura, M.; Hirano, K.; Kobayashi, S. J. Am. Chem. Soc. 126, 7182(2004).
【非特許文献10】米国特許第6232467号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来技術の場合、保護基が必要であったり、出発原料が複雑な構造の化合物である等の問題がある。
このようなことから、本発明は、保護基を用いず、単純な構造の化合物を原料とした1段階のアリル化反応で、高収率で好ましくは高いジアステレオ選択性でアリルグリシン又はその類縁体、及びイソロイシン又はアロイソロイシンを製造する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために、本発明者らは、出発原料としてヒドロキシグリシンを用い、これに所定のアリルボロン酸(又はアリルボロネート)を求核反応させることにより、無保護のアリルグリシン(又はその類縁体)が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
【0006】
すなわち、本発明は、液相で下式(化1)
【化1】

で表されるヒドロキシグリシンと、下式(化2)
【化2】

(式中、R,R、R、及びRはそれぞれ同じであっても異なってもよく、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R及びRは環状をなしてもよく、R及びRは、それぞれ同じであっても異なってもよく、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R及びRは共に環状を成してもよい。)で表されるアリルボロン酸又はアリルボロネートとを反応させることを含むアリルグリシン又はその類縁体を製造する方法である。
【0007】
前記液相がプロトン性溶媒であることが好ましく、反応系に塩基性物質を添加することが好ましい。
【0008】
又、本発明は、R及びRが水素原子でありRが水素原子以外である(E)−アリルボロン酸又はアリルボロネートを用いて前記方法により製造されたアリルグリシン類縁体であって、下式(化3)
【化3】

(式中、R及びRは前記と同様に定義される。)で表されるアンチ(anti)体アリルグリシン類縁体である。
【0009】
又、本発明は、R及びRが水素原子でありRが水素原子以外である(Z)−アリルボロン酸又はアリルボロネートを用いて前記方法により製造されたアリルグリシン類縁体であって、下式(化4)
【化4】

(式中、R及びRは前記と同様に定義される。)で表されるシン(syn)体アリルグリシン類縁体である。
【0010】
又、本発明は、前記(E)−アリルボロン酸又はアリルボロネートとして(E)−クロチルボロネート(Rがメチル基、Rが水素原子である。)を用いて前記アンチ(anti)体アリルグリシン類縁体を製造する段階、該アンチ(anti)体アリルグリシン類縁体を水素添加する段階を含むイソロイシンを製造する方法である。
【0011】
さらに、本発明は、前記(Z)−アリルボロン酸又はアリルボロネートとして(Z)−クロチルボロネート(Rがメチル基、Rが水素原子である。)を用いて前記シン(syn)体アリルグリシン類縁体を製造する段階、該シン(syn)体アリルグリシン類縁体を水素添加する段階を含むアロイソロイシンを製造する方法である。
【0012】
本発明の好ましい態様によれば、例えば、クロチル化反応の場合に、原料のクロチルボロネートの幾何異性により生成物のシン(syn)/アンチ(anti)の選択性をコントロールできる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、例えば医薬品やそのリード化合物等の原料または合成中間体として有用なアリルグリシン又はその類縁体を、保護基を用いず、単純な構造の化合物を原料とした1段階の反応で、高収率で好ましくは高立体選択的に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、液相でヒドロキシグリシン、及びアリルボロン酸又はアリルボロネートを反応させて、アリルグリシン又はその類縁体を製造する方法、この方法によって製造されるアリルグリシン類縁体、及びイソロイシン又はアロイソロイシンを製造する方法である。
本発明の方法で用いるヒドロキシグリシンは下式(化1)で表される。
【化1】

ヒドロキシグリシンは、グリオキシル酸のアンモニア付加体であり等電点付近(pH=約6)で両性イオンとして得られ、pH6よりも強い酸性水溶液中では容易にグリオキシル酸に分解する。両性イオンとしてのヒドロキシグリシンについては、例えば、文献11(Hoefnagel, A.; van Bekkum, H.; Peters, J. A. J. Org. Chem, 57, 3916(1992).)に記載されている。
又、ヒドロキシグリシンの本反応における実際の反応活性種であるイミノ酢酸は下式(化5)で表される。
【化5】

【0015】
本発明の方法で用いるアリルボロン酸(下式(化2)で、R及びRが共に水素原子を表す。)、又はアリルボロネートは下式(化2)で表される。本発明の方法では、アリルボロネートが好ましく用いられる。
【化2】

,R、R、及びRはそれぞれ同じであっても異なってもよく、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、好ましくはアルキル基が挙げられ、R及びRは環状をなしてもよい。
【0016】
及びRは、それぞれ同じであっても異なってもよく、水素原子、アルキル基又はアリール基であり、R及びRは共に環状を成してもよい。例えば、R及びRは共に下式(化6)のようなアリーレン基やアルキリデン基であってもよい。
【化6】

アリルボロネートとしては、アルコール全般から誘導されるボロン酸エステルが好ましく、光学活性アルコール由来のものでもよい。
【0017】
本発明の方法では、溶媒として、プロトン性溶媒を好適に用いることができる。プロトン性溶媒としては一般にアルコールが好ましく、特にメタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールが好ましく、さらにメタノールがより好ましい。但し、水は、ヒドロキシグリシンを一部グリオキシル酸に加水分解するので収率の低下を招くので好ましくない。
【0018】
溶媒中の各成分の濃度はそれぞれ0.01〜5mol/lであることが好ましい。
この反応の温度は、好ましくは20〜60℃である。室温〜40℃程度とすると、温和な条件で反応させることができるのでより好ましい。なお、温度が高くなりすぎるとヒドロキシグリシンが分解する場合がある。
この反応時間は、数分〜数時間(又は数十時間)程度である。
【0019】
本発明において、好ましくは塩基性物質を添加する。塩基性物質の添加は、目的物質の収率を大幅に向上させる。これは、出発物質であるヒドロキシグリシンの反応活性種であるイミノ酢酸への変換が、塩基性物質によって促進されるためと、生成物の転位反応を抑制するためと考えられる。塩基性物質としては、アミン類、アルカリ無機塩が例示できる.特に、3級アミンが好ましく、特にトリエチルアミンが好ましい。アミン類の添加量は、ヒドロキシグリシンに対して例えば10〜300モル%とすることができる。
【0020】
生成物であるアリルグリシン又はその類縁体の精製法としては、イオン交換、抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の一般的精製法を利用して回収できる。
【0021】
本発明の生成物であるアリルグリシン又はその類縁体は下式(化7)で表すことができる。
【化7】

(式中、R、R、R、Rは上記と同様に定義される。)
本発明では、特にアリルボロン酸のR及び、RまたはRの一方が水素原子であり他方が水素原子以外である場合、E体(R及びRが水素原子)のアリルボロン酸又はアリルボロネートからアンチ体のアリルグリシン類縁体が、Z体(R及びRが水素原子)のアリルボロン酸又はアリルボロネートからはシン体のアリルグリシン類縁体が立体選択的に生成する
このようにして製造したアリルグリシン又はその類縁体は、医薬中間体等の用途に用いることができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
【0023】
本実施例ではヒドロキシグリシン1は上記文献11に従って合成した。アリルボロネート3a〜3fは以下の文献12〜15に従って合成した。
【0024】
文献12:Roush, W. R.; Walts, A. E. Tetrahedron Lett. 26, 3427(1985).
文献13:Roush, W. R.; Adam, M. A.; Walts, A. E.; Harris, D. J. J. Am. Chem. Soc. 108, 3422(1986).
文献14:Hoffmann, W.; Ladner, W.; Ditrich, K. Liebigs Ann. Chem. 1989, 883.
文献15:Murata, M.; Watanabe, S.; Masuda, Y. Tetrahedron Lett. 41, 5877(2000).
【0025】
その他、本実施例において、他の化合物は市販品を必要に応じて精製して使用した。
【0026】
<実施例1>
ヒドロキシグリシン(1)とアリルボロネート(3a)との反応
アルゴン雰囲気下、乾燥メタノール(2ml)に懸濁させたヒドロキシグリシン1(45.5mg、0.5mmol)に、攪拌しながらアリルボロネート3a(0.6mmol)を室温で加えた。所定時間後、水を加えて希釈し、陽イオン交換樹脂(DOWEX 50W−X2、50−100メッシュ、H型、約5g)を充填したカラム管中に水とともに加えた。樹脂を蒸留水で十分に洗浄した後、1.0Mのアンモニア水で溶出した。溶出物のうち、ニンヒドリン反応に陽性のフラクションを集め、濃縮してアリルグリシン4aを得た。なお、副生成物として、ヒドロキシグリシン1の加水分解物である、グリオキシル酸がアリル化されたα−ヒドロキシ酸5aが生じる場合がある。
【化8】

【0027】
表1に実施例1の結果を示す。
【表1】

【0028】
表1において、添字aは単離収率を示す。添字bは、アリルグリシン4aの単離収率に基づき、粗生成物のH-NMR分析により決定した収率を示す。添字cは、2回の試験の平均値である。ndは、検出されなかったことを示す。添字dは、H-NMRスペクトルの積分における実験誤差を含む。
【0029】
エタノール、及びメタノール中では、アリルグリシンが中程度の収率で得られ、α−ヒドロキシ酸5aの生成は僅かであった(実験例1,2)。
メタノール中では、反応温度を上げたり反応時間を延長しても収率が向上した(実験例3、4)。
さらに、触媒量(20モル%、溶媒中に0.1mmol)のトリエチルアミンの添加により収率は大幅に向上した(実験例5)。又、この場合、α−ヒドロキシ酸5aも全く生成しなかった。トリエチルアミンによる反応の加速効果は、ヒドロキシグリシン1のイミノ酢酸2への変換が塩基により促進されたためと考えられる。
一方、水溶媒中では、ヒドロキシグリシン1の加水分解物であるグリオキシル酸がアリル化され、α−ヒドロキシ酸5aが主生成物となった(比較例1)。又、非プロトン性溶媒中ではほとんどアリルグリシン4aは得られなかった(比較例2〜4)。
【0030】
<実施例2>
トリエチルアミンを添加した時の反応
表1の実験例5の反応条件下で、各種のアリルボロネート3(3b〜3f)を用いて反応を行った。
【化9】

【0031】
表2に実施例2の結果を示す。
【表2】

【0032】
表2において、添字aは生成物4、4’(記号4はγ−付加体、4’はα−付加体)の合計収率を示す。添字bは、HNMR分析により決定した値を示す。添字cは、1当量のトリエチルアミンを添加したことを示す。添字dは、2当量のトリエチルアミンを添加したことを示す。添字eは、反応時間が6時間であったことを示す。
【0033】
メタリルボロネートを用いた場合、トリエチルアミンを1当量用いることで81%の収率で目的とする生成物が得られた(実験例6)。
クロチル化反応においては、Z−体のクロチルボロネートからはsyn−体のγ−付加体が主生成物として得られ(実験例7の生成物syn-4c)、E−体のクロチルボロネートからはanti−体のγ−付加体が主生成物として得られた(実験例8の生成物anti-4c)。但し、いずれの場合も、α−付加体が僅かに生成した(実験例7,8の生成物4c’)。
シンナミルボロネートおよびシクロヘキシルボロネートを用いた場合には、いずれも高収率で、高立体選択的に生成物が得られた(実験例9、10)。実験例9の場合、1当量のトリエチルアミンを添加することにより、α−付加体(生成物4d’)の生成を抑制することができた。
γ−位に2つの置換基を持つプロペニルボロネートを用いた場合には、2当量のトリエチルアミンを添加することにより、高収率で生成物が得られた(実験例11)。なお、この場合、γ付加体:α付加体=85:15の混合物となった。
【0034】
なお、実施例2において、反応終了後、精製操作の前に反応混合物を加熱するとα−付加体の比率が増加した。一方、反応後の液を直接イオン交換処理(イオン交換樹脂:DOWEX 50W-X2)することにより、α−付加体の生成が抑制できた。また、トリエチルアミンの添加は単なる反応の加速効果だけでなく、α−付加体の生成を抑制し、目的とするγ−付加体の収量を向上させる効果が認められた。
【0035】
(実施例2のアミノアリル化生成物の分析値)
表2の化合物の分析値を示す。なお、以下の生成物名の括弧内は表2の化合物の符号に対応する。又、M.pは融点を示す。. 1H-13C NMRスペクトルは、日本電子製の測定装置(JEOL ECX-400、 ECX-600)を用い、D2O中で測定し、1,4-Dioxaneを内部標準に用いた (?3.75 ppm for 1H NMR、?67.19 ppm for 13C NMR)。高分解能イオン化質量分析(HR-ESIMS)は、質量分析機器(BRUKER DALTONICS BioTOF II mass spectrometer)によって行った。
【0036】
2-Aminopent-4-enoic acid (4a)
:上記非特許文献9によった。
2-Amino-4-methylpent-4-enoic acid (4b)
:M.p. = 228-231 °C. 1H NMR (400 MHz) δ: 5.00 (s, 1H), 4.90 (s, 1H), 3.85 (dd, J = 9.6, 4.6 Hz, 1H), 2.68 (dd, J = 14.7, 4.6 Hz, 1H), 2.50 (dd, J = 14.7, 9.6 Hz, 1H), 1.77 (s, 3H). 13C NMR (100 MHz) δ: 175.2, 140.7, 116.0, 53.2, 39.7, 21.3. HR-ESIMS calcd for C6H12NO2 (M+H+) 130.0863, found 130.0867.
syn-2-Amino-3-methylpent-4-enoic acid (syn-4c)
:M.p. = 224-227 °C. 1H NMR (400 MHz) δ: 5.84 (ddd, J = 17.9, 10.1, 6.4 Hz, 1H), 5.26 (d, J = 10.1 Hz, 1H), 5.25 (d, J = 17.9 Hz, 1H), 3.76 (d, J = 4.1 Hz, 1H), 2.94-2.82 (m, 1H), 1.10 (d, J = 6.9 Hz, 3H). 13C NMR (100 MHz) δ: 174.0, 138.2, 118.2, 59.0, 38.4, 13.6. HR-ESIMS calcd for C6H12NO2 (M+H+) 130.0863, found 130.0866.
anti-2-Amino-3-methylpent-4-enoic acid (anti-4c)
:M.p. = 220-223 °C. 1H NMR (400 MHz) δ: 5.75 (ddd, J = 17.4, 10.1, 7.3 Hz, 1H), 5.25 (d, J = 17.4 Hz, 1H), 5.24 (d, J = 10.1 Hz, 1H), 3.61 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 2.87-2.74 (m, 1H), 1.16 (d, J = 7.3 Hz, 3H). 13C NMR (100 MHz) δ: 174.4, 137.3, 118.8, 59.8, 39.1, 16.0. HR-ESIMS calcd for C6H12NO2 (M+H+) 130.0863, found 130.0862.
2-Aminohex-4-enoic acid (4c')
1H NMR (400 MHz) (E-isomer) δ: 5.74 (dqt, J = 15.1, 6.4, 1.4 Hz, 1H), 5.38 (dtq, J = 15.1, 7.3, 1.8 Hz, 1H), 3.83 (dd, J = 6.7, 5.3 Hz, 1H), 2.67-2.49 (m, 2H), 1.67 (d, J = 6.4 Hz, 3H). (Z-isomer, a representative signal) δ: 1.63 (d, J = 6.9 Hz, 3H).
anti-2-Amino-3-phenylpent-4-enoic acid (4d) and (E)-2-Amino-5-phenylpent-4-enoic acid (4d') (4d/4d' = 93:7)
:M.p. = 172-176 °C. 1H NMR (400 MHz) δ: 7.52-7.28 (m, 5.00H), 6.65 (d, J = 15.6 Hz, 0.07H), 6.29-6.14 (m, 1.00H), 5.36 (d, J = 17.4 Hz, 0.93H), 5.34 (d, J = 10.1 Hz, 0.93H), 3.98 (d, J = 7.8 Hz, 0.93H), 3.91-3.83 (m, 1.00H), 2.89-2.71 (m, 0.14H). 13C NMR (150 MHz) 4d: δ: 173.6, 139.2, 135.3, 129.8, 128.54, 128.47, 120.6, 60.0, 51.8. 4d' (distinguishable signals): δ: 174.7, 137.2, 129.5, 127.0, 123.6, 54.9, 34.7. HR-ESIMS calcd for C11H14NO2 (M+H+) 192.1019, found 192.1021.
syn-Aminocyclohex-2-enyl-acetic acid (4e):
M.p. = 233-236 °C. 1H NMR (400 MHz) δ: 6.07-5.96 (m, 1H), 5.54 (d, J = 10.1 Hz, 1H), 3.78 (d, J = 4.1 Hz, 1H), 2.94-2.80 (m, 1H), 2.08-1.90 (m, 2H), 1.85-1.74 (m, 1H), 1.72-1.61 (m, 1H), 1.60-1.46 (m, 1H), 1.40-1.25 (m, 1H). 13C NMR (100 MHz) δ: 174.4, 133.7, 126.1, 58.9, 37.1, 24.8, 23.2, 21.6. HR-ESIMS calcd for C8H14NO2 (M+H+) 156.1019, found 156.1015.
2-Amino-3,3-dimethylpent-4-enoic acid (4f):
M.p. = 212-216 °C. 1H NMR (400 MHz) δ: 5.86 (dd, J = 17.4, 11.0 Hz, 1H), 5.24 (d, J = 11.0 Hz, 1H), 5.21 (d, J = 17.4 Hz, 1H), 3.52 (s, 1H), 1.21 (s, 3H), 1.14 (s, 3H). 13C NMR (100 MHz) δ: 173.4, 143.0, 116.0, 62.9, 38.8, 25.0, 22.0. HR-ESIMS calcd for C7H14NO2 (M+H+) 144.1019, found 144.1020 (checked as a 83:17 mixture of 4f and 4f').
2-Amino-5-methylhex-4-enoic acid (4f'):
M.p. = 198-202 °C. 1H NMR (400 MHz) δ: 5.10 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 3.74 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 2.68-2.50 (m, 2H), 1.74 (s, 3H), 1.65 (s, 3H). 13C NMR (100 MHz) δ: 175.1, 139.6, 116.7, 55.3, 29.7, 25.7, 17.7. HR-ESIMS calcd for C7H14NO2 (M+H+) 144.1019, found 144.1021.
【0037】
<実施例3>
アロイソロイシン及びイソロイシンの生成
表2の実験例10,11の生成物に対し、単離を行うことなく直接パラジウム活性炭を添加し水素ガスを導入することで水素化反応を進行させた。
【化10】

【0038】
実験例10(Z−体のクロチルボロネートを出発原料とした)場合、アロイソロイシン(97%syn)が70%の収率で得られた。又、実験例11(E−体のクロチルボロネートを原料とした)場合、イソロイシン(95%anti)が82%の収率で得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相で下式(化1)
【化1】

で表されるヒドロキシグリシンと、下式(化2)
【化2】

(式中、R,R、R、及びRはそれぞれ同じであっても異なってもよく、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R及びRは環状をなしてもよく、R及びRは、それぞれ同じであっても異なってもよく、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R及びRは共に環状を成してもよい。)で表されるアリルボロン酸又はアリルボロネートとを反応させることを含むアリルグリシン又はその類縁体を製造する方法。
【請求項2】
前記液相がプロトン性溶媒である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応系に塩基性物質を添加する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
及びRが水素原子でありRが水素原子以外である(E)−アリルボロン酸又はアリルボロネートを用いて請求項1ないし3のいずれかに記載の方法により製造されたアリルグリシン類縁体であって、下式(化3)
【化3】

(式中、R及びRは前記と同様に定義される。)で表されるアンチ(anti)体アリルグリシン類縁体。
【請求項5】
及びRが水素原子でありRが水素原子以外である(Z)−アリルボロン酸又はアリルボロネートを用いて請求項1ないし3のいずれかに記載の方法により製造されたアリルグリシン類縁体であって、下式(化4)
【化4】

(式中、R及びRは前記と同様に定義される。)で表されるシン(syn)体アリルグリシン類縁体。
【請求項6】
前記E体のアリルボロン酸又はアリルボロネートとして(E)−クロチルボロネート(Rがメチル基、Rが水素原子である。)を用いて請求項4に記載のアンチ(anti)体アリルグリシン類縁体を製造する段階、該アンチ(anti)体アリルグリシン類縁体を水素添加する段階を含むイソロイシンを製造する方法。
【請求項7】
前記Z体のアリルボロン酸又はアリルボロネートとして(Z)−クロチルボロネート(Rがメチル基、Rが水素原子である。)を用いて請求項5に記載のシン(syn)体アリルグリシン類縁体を製造する段階、該シン(syn)体アリルグリシン類縁体を水素添加する段階を含むアロイソロイシンを製造する方法。

【公開番号】特開2006−206531(P2006−206531A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22642(P2005−22642)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】