説明

アリールアミン類の製造方法

【課題】トリアリールアミンなどのアリールアミン類を経済的に得ること。
【解決手段】一般式(1)


(式中、Ar及びAr1は同一または異なって、置換または無置換のアリール基を表す。また、Ar及びAr1は縮環しても良く、aは1または2を表す。)で表されるアリールアミン化合物と、一般式(2) X−Ar2−X1(式中、X、X1は同一または異なって、H、またはBr、I、OMs(メシレート)、OTf(トリフレート)、OTs(トシレート)、の群から選ばれた少なくとも1種の脱離基を表す。但し、X、X1は同時にHであることはできず、少なくとも一つの脱離基を有する。Ar2は置換または無置換のアリール基を表す。)で表される脱離基を有するアリール化合物とを、塩基、アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩、ならびに鉄触媒の存在下、アリールアミノ化反応を行ない、トリアリールアミンなどのアリールアミン類を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス、電子写真感光体、有機半導体、太陽電池等の機能性化合物として有用なトリアリールアミンやジアリールアミンなどのアリールアミン類(以下、トリアリールアミンとジアリールアミンを総称して「アリールアミン類」ともいう)を、炭素−窒素結合の生成方法により、製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アリールアミノ化反応による炭素−窒素結合の生成方法としては、アリールアミンとアリールハライドを塩基の存在下、銅化合物を触媒として製造する方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この反応では、多量の銅触媒を使用する上、高い反応温度を要するため、一般に収率が低く、着色性の不純物や分解物が副生し、電子材料として使用するためには、何回も再結晶等の精製操作を必要とする等、実用的な製造法としては満足できるものではない。
【0003】
一方、S.L.Buchwald、J.F.Hartwigらにより、アリールハライドとアミン化合物から、塩基の存在下でホスフィン類とパラジウム化合物を触媒として用いアリールアミノ化反応を行う手法が報告され(非特許文献1)、更に、反応性と選択性を上げる目的でホスフィン類の分子構造を改良した種々の合成法が開示されている(特許文献2〜3、非特許文献2)。しかしながら、これらの合成法も、触媒として高価なパラジウムと多段階合成が必要とされるホスフィン類が必須であるなど、コストが高いという課題を有し、工業的な製造法としては決して満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−323959号公報
【特許文献2】特許第3161360号公報
【特許文献3】特開2005−320332号公報
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society、vol.118、1996年、p.7215-7216
【非特許文献2】Tetrahedron Letters、vol.39、1998年、p.2367-2370
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の方法では満足できなかったアリールアミノ化反応による炭素−窒素結合の生成方法により、アリールアミン類を製造する方法を提供することにある。すなわち、本発明は、従来の問題点を解決し、安価で経済性に優れた方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、従来の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、アリールアミン化合物とアリールハライドなどの脱離基を有するアリール化合物を、塩基、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、および鉄化合物触媒の存在下、反応を行うことにより、安価にトリアリールアミンなどのアリールアミン類が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、一般式(1)


【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Ar及びAr1は同一または異なって、置換または無置換のアリール基を表す。また、Ar及びAr1は縮環しても良く、aは1または2を表す。)
で表されるアリールアミン化合物と、
一般式(2)
X−Ar2−X1 (2)
(式中、X、X1は同一または異なって、H、またはBr、I、OMs(メシレート)、OTf(トリフレート)、OTs(トシレート)の群から選ばれた少なくとも1種の脱離基を表す。但し、X、X1は同時にHであることはできず、少なくとも一つの脱離基を有する。Ar2は置換または無置換のアリール基を表す。)で表される脱離基を有するアリール化合物とを、
塩基、アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩、ならびに鉄触媒の存在下、
アリールアミノ化反応を行う
ことを特徴とするアリールアミン類の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、従来の問題点を解決して、トリアリールアミンなどのアリールアミン類を経済的に得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
<アリールアミン化合物>
本発明の方法において、原料として使用されるアリールアミン化合物は、上記一般式(1)で表される化合物である。上記一般式(1)において、Ar及びArは置換または無置換のアリール基であり、フェニル基、p−ビフェニル基、m−ビフェニル基、p,p−ターフェニル基、p,m−ターフェニル基、テトラフェニル基、ナフチル基、フルオレン基、ピリジル基等が挙げられる。ここで、Ar及びArは、縮合して環を形成しても良く、例としてカルバゾール基を挙げることができる。また、Ar及びArの置換基の種類に特に制限は無く、例としてアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコシキ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン等が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−メチルプロピル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、sec−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、ビニル基、プロペニル基、エチニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、フッ素、塩素等を挙げることができる。
また、一般式(1)において、aは1または2であり、本発明の方法においては、aが1の場合には、トリアリールアミンが生成し、aが2の場合にはジアリールアミンが生成する。
【0011】
上記一般式(1)で表される原料となるアリールアミン化合物の具体例としては、ジフェニルアミン、ビス(4−メチルフェニル)アミン、ビス(2、4−ジメチルフェニル)アミン、ビス(4−メトキシフェニル)アミン、ビス(ビフェニリル)アミン、N−ビフェニリルアニリン、ビス(4−フルオロフェニル)アミン、ビス(4−クロロフェニル)アミン、アニリン、N−(p−ターフェニル)アニリン、p−アミノ−p−ターフェニル、カルバゾール、9,9−ジメチル−3−アミノフルオレン、3−フェニルアミノ−9,9−ジメチルフルオレン等を挙げることができる。
【0012】
<脱離基を有するアリール化合物>
また、本発明の方法において使用されるアリールハライドなどの脱離基を有するアリール化合物は、一般式(2)で表される化合物である。上記一般式(2)において、X、X1は、同一または異なって、H、またはBr、I、OMs(メシレート)、OTf(トリフレート)、OTs(トシレート)の群から選ばれた少なくとも1種の脱離基を表し(但し、同時にHであることはできず、少なくとも一つの脱離基を有する)、Arは置換または無置換のアリール基であり、上記一般式(1)において定義されたAr及びArと同一の意味で表すことができる。また、上記と同様に置換基の種類に制限はなく、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコシキ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N,N−ジアルキルアミノ基等が挙げられる。
【0013】
上記一般式(2)で表されるアリール化合物の具体例としては、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、ブロモトルエン、ヨードトルエン、ブロモアニソール、ヨードアニソール、ブロモスチレン、ヨードスチレン、ブロモビフェニル、ヨードビフェニル、フルオロブロモベンゼン、フルオロヨードベンゼン、ブロモクロロベンゼン、クロロヨードベンゼン、ブロモナフタレン、ヨードナフタレン、ブロモピリジン、ヨードピリジン、フェニルメシレート、フェニルトリフレート、フェニルトシレート、4,4’−ジヨードビフェニル、4,4−ジブロモビフェニル、4−ブロモ−4’−ヨードビフェニル、3,6−ジブロモ−9,9−ジメチルフルオレン、p−ブロモ−p−ターフェニル、3−ブロモ−6−ヨード−9,9−ジメチルフルオレン、3−ブロモ−9,9−ジメチルフルオレン、3−ヨード−9,9−ジメチルフルオレン、4−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン等を挙げることができる。
【0014】
原料となるアリールアミン化合物と脱離基を有するアリール化合物との使用比率に特に制限は無いが、アリールアミン化合物とアリール化合物の構造や、目的とするトリアリールアミンなどのアリールアミン類の構造に応じて、適切な当量比となるように選択する。具体的には、脱離基を有するアリール化合物の当量数(アリール化合物中の、反応を望むC−X結合数にモル数を乗じた値)が、アリールアミン化合物の当量数(原料となるアリールアミン化合物中の、反応を望むN−H結合数にモル数を乗じた値)に対して、通常、0.5倍以上、1.5倍以下の範囲となるよう選択することが望ましい。原料であるアリールアミン化合物と脱離基を有するアリール化合物との使用比率が適切な当量比を満足しないと、過剰な原料が反応系内に残留し、望ましくない副反応が起こる。
【0015】
<塩基>
本発明の方法において使用される塩基の種類に特に制限はなく、有機化合物、無機化合物いずれも、塩基として作用するものであれば、使用することができる。
このうち、有機化合物としては、n−ブチルリチウム、i−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、フェニルリチウム、トリフェニルメチルナトリウム、エチルナトリウム等の有機アルカリ金属化合物や、メチルマグネシウムブロミド、ジメチルマグネシウム、フェニルマグネシウムクロリド、フェニルカルシウムブロミド、ビス(ジシクロペンタジエン)カルシウム等の有機アルカリ土類金属化合物等を例示することができる。
また、無機化合物としては、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の、水酸化物、水素化物、炭酸塩、リン酸塩、アルコキシド等が挙げられ、反応収率などの点から水素化物の使用が好ましい。
具体的な例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水素化リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化カリウム、水素化セシウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、メトキシナトリウム、メトキシカリウム、t−ブトキシナトリウム、t−ブトキシカリウムなどが挙げられる。
塩基の使用量は、特に限定するものではないが、原料となるアリールアミン化合物に対して、通常、1.0倍モル以上、4.0倍モル以下の範囲である。使用量が1.0倍モル未満では、反応の進行が遅く、一方4.0倍を超えると副生物が生成する上、生産効率的にも好ましくない。
【0016】
<アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩>
本発明の方法において使用されるアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の種類に特に制限はなく、例えば、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩などを使用することができ、具体的な例として、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウムなどが挙げられる。これらの中でも、良好な反応性が得られることから、マグネシウムハライドの使用が好ましい。
アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の使用量は、特に限定するものではないが、原料であるアリールアミン化合物に対して、通常、1.0倍モル以上、4.0倍モル以下の範囲である。使用量が1.0倍モル未満では、反応の進行が遅く、一方4.0倍モルを超えると副生物が生成する上、生産効率的にも好ましくない。
【0017】
また、本発明の方法においては、前記塩基、及びアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の代わりに、アルキルマグネシウムハライドを用いることが可能であり、具体例としてメチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムブロマイド、プロピルマグネシウムブロマイド、ブチルマグネシウムブロマイド等を挙げることができる。
【0018】
<鉄触媒>
本発明の方法において使用される鉄触媒の種類に特に制限はなく、鉄を含む化合物であれば、任意のものが使用される。例えば、フェロセンなどの0価鉄錯体、2価または3価の鉄塩または鉄錯体などが挙げられ、具体的には、ハロゲン化鉄(2価、3価)、またはそれらの水和物、クエン酸鉄(2価、3価)、リン酸鉄(2価、3価)、鉄-アセチルアセトナート錯体(2価、3価)、ステアリン酸鉄(2価、3価)、などが例示され、中でも反応性が良好なことから、2価または3価の鉄塩の使用が好ましい。
鉄触媒の使用量は、特に限定するものではないが、アリールアミン化合物に対して、通常、0.1モル%以上、20.0モル%以下の範囲である。使用量が0.1モル%未満では、反応の進行が遅く、一方20.0モル%を超えると副生物が生成する上、生産効率的にも好ましくない。
【0019】
<溶媒>
本発明の方法においては、通常、反応溶媒が使用される。使用される反応溶媒に格別の限定はないが、原料となるアリールアミン化合物、脱離基を有するアリール化合物、塩基、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を好適に溶解または分散でき、かつこれらの原料類に対して不活性な有機溶媒であれば、任意の有機溶媒を使用することができる。
中でも、原料に対する溶解性の点から、芳香族系溶媒、エーテル系溶媒などが使用され、具体的には、トルエン、キシレン、ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサンなどが挙げられる。また、反応溶媒は、単独で用いても混合溶媒で用いてもどちらでも良い。
反応溶媒の使用量は、特に限定するものではないが、主原料(アリールアミン化合物と脱離基を有するアリール化合物)の反応溶媒に対する重量比が、通常、5.0重量%以上、20重量%以下となるよう調整される。
【0020】
本発明の方法における反応温度は、0℃〜200℃の範囲であり、好ましくは、100℃〜180℃の範囲である。また、反応時間は、1〜48時間、好ましくは5〜24時間程度である。
【0021】
本発明の方法における反応の実施形態に格別の限定はなく、任意の反応剤を任意の順番で添加することができる。
本発明によって得られるトリアリールアミンなどのアリールアミン類の種類は特に制限されず、使用される原料のアリールアミン化合物及び脱離基を有するアリール化合物の種類を適切に選択することにより任意のアリールアミン類を得ることが可能である。以下、本発明の製造方法によって製造されるアリールアミン類の具体例を示すが、これらの例に限定されるものではない。
なお、以下のアリールアミン類において、化合物(3−1)〜(3−30)はトリアリールアミンであり、化合物(3−31)〜(3−33)はジアリールアミンである。
【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
【化6】












【0027】
【化7】

【0028】
【化8】

【0029】
【化9】









【0030】
【化10】

【0031】
反応終了後は、常法に従い反応液に水を加えて生成した塩を溶解処理した後、有機層を分離する。続いて、晶析等により、粗アリールアミン類を得る。得られた粗アリールアミン類は、更に晶析、カラムクロマトグラフィーなどの操作により精製を加え、目的とするアリールアミン類を得ることができる。
【0032】
なお、本方法により製造されたアリールアミン類は、H NMR、13C NMR、質量分析、ガスクロマトグラフィー(GC)などによって、その構造を特定することができる。
すなわち、H NMRでは、水素原子の化学シフトを解析すること、
13C NMRでは、炭素の化学シフトを解析すること、
質量分析では、親イオンの質量数を測定すること、
ガスクロマトグラフィーでは、標準物質との溶出時間を比較すること、
により、容易にその構造を特定することができる。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明の方法を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0034】
実施例1
窒素雰囲気で置換した100mlフラスコに、o−ジクロロベンゼン30g、ジフェニルアミン2.54g(15mmol)、水素化ナトリウム0.48g(19mmol)、臭化マグネシウム3.68g(20mmol)を仕込み、攪拌しながら反応液を135℃まで昇温した。同温度にて2時間熟成後、鉄(III)アセチルアセトナート0.035g(0.1mmol)、ブロモアニソール1.87g(10mmol)を添加し、更に同温度で14時間の熟成を行った。反応終了後、冷却し水を添加し塩を溶解し分液した。有機層を分取した後、これをGCで内部標準法により分析した結果、目的物である4−(N,N−ジフェニルアミノ)アニソールが88%の収率で生成していた。
【0035】
実施例2〜11及び比較例1
実施例1のジフェニルアミン、ブロモアニソール、鉄(III)アセチルアセトナート、及びブロモアニソール添加後の温度条件等を別表1に記載の条件に変えた他は、実施例1に記載の方法に準じて反応を行った。結果を別表1に記す。


【0036】
【表1】

【0037】
実施例12
窒素雰囲気で置換した100mlフラスコに、キシレン 30g、N−(3−メチルフェニル)アニリン 7.33g(40mmol)、水素化ナトリウム 0.96g(40mmol)、臭化マグネシウム 7.36g(40mmol)を仕込み、攪拌しながら反応液を140℃まで昇温した。同温度にて2時間熟成後、塩化鉄(II) 0.063g(0.5mmol)、4,4’−ジブロモビフェニル 3.12g(10mmol)を添加し、更に同温度で14時間の熟成を行った。反応終了後、冷却し水を添加し塩を溶解し分液した。有機層を分取した後、これをGCで内部標準法により分析した結果、目的物であるビス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)ビフェニルが51%の収率で生成していた。
【0038】
実施例13
窒素雰囲気で置換した100mlフラスコに、ヘキサン 5g、ジフェニルアミン 3.38g(20mmol)、ブチルリチウム 1.28g(20mmol)を0℃で仕込み、攪拌しながら反応液を60℃まで昇温した。同温度にて2時間熟成後、キシレンを30g、臭化マグネシウムを3.68g(20mmol)添加し、140℃で2時間熟成後、さらに4−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン 2.0g(10mmol)と塩化鉄(II)を0.063g(0.5mmol)添加し、更に同温度で14時間の熟成を行った。反応終了後、冷却し水を添加し塩を溶解し分液した。有機層を分取した後、これをGCで内部標準法により分析した結果、目的物であるN,N−ジフェニル−N’,N’−ジメチル−p−フェニレンジアミンが84%の収率で生成していた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明により得られるトリアリールアミンなどのアリールアミン類は、有機エレクトロルミネッセンス、電子写真感光体、有機半導体、太陽電池等の機能性化合物として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Ar及びAr1は同一または異なって、置換または無置換のアリール基を表す。また、Ar及びAr1は縮環しても良く、aは1または2を表す。)
で表されるアリールアミン化合物と、
一般式(2)
X−Ar2−X1 (2)
(式中、X、X1は同一または異なって、H、またはBr、I、OMs(メシレート)、OTf(トリフレート)、OTs(トシレート)の群から選ばれた少なくとも1種の脱離基を表す。但し、X、X1は同時にHであることはできず、少なくとも一つの脱離基を有する。Ar2は置換または無置換のアリール基を表す。)で表される脱離基を有するアリール化合物とを、
塩基、アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩、ならびに鉄触媒の存在下、
アリールアミノ化反応を行う
ことを特徴とするアリールアミン類の製造方法。
【請求項2】
前記塩基が、金属水素化物である請求項1に記載のアリールアミン類の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が、マグネシウムハライドである請求項1〜2のいずれかに記載のアリールアミン類の製造方法。
【請求項4】
前記塩基、及び前記アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が、アルキルマグネシウムハライドである請求項1に記載のアリールアミン類の製造方法。
【請求項5】
前記鉄触媒が、二価鉄塩、または三価鉄塩である請求項1に記載のアリールアミン類の製造方法。



【公開番号】特開2012−121880(P2012−121880A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230600(P2011−230600)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(507119250)東ソー有機化学株式会社 (14)
【Fターム(参考)】