説明

アリールウレイドベンゾキサジノン化合物

一般式(I):
【化1】


[式中、Rは、置換または非置換のアリール基であり、RおよびRは、それぞれ独立して、H原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボキシ基、および、ハロゲン原子から選択され、Xは、炭素または硫黄原子であり、nは、1またはそれ以上の整数である]で示される蛍光顔料化合物であり、アリールウレイドベンゾキサジノン化合物を含む。このクラスの化合物の多くは、適切なUV光源で励起されると約560〜約585nmの波長で黄色の発光、一般的に濃い黄色の発光を生じる。これらの化合物は、蛍光顔料として役立つ蛍光を発し、UV光源で励起されると約560〜約585、またはより高い波長の範囲内で発光波長を示す化合物が特に有用である。上記化合物のような発光スペクトルを有する化合物であれば、これらの化合物は、安全保障での用途における顔料として、特にセキュリティーインクおよび繊維で使用するための顔料として特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、好ましくは蛍光性の新規の化合物、特に、化合物そのものがインクの蛍光顔料として有用な化合物に関する。より具体的には、本発明は、新規のアリールウレイドベンゾキサジノン化合物に関する。本発明はまた、本発明の化合物を含む基材、好ましくは、上記のような蛍光顔料を含む繊維またはインクに関する。本発明のさらなる形態は、上述のような新規のアリールウレイドベンゾキサジノン化合物の製造方法に関する。
【0002】
2.発明の背景
ストークスシフトを有する蛍光顔料がよく知られている。特に安全保障での用途のために、可視光域で蛍光を発する無色の顔料が特に注目を集めている。安全保障での用途、特にセキュリティーインクで顔料として使用するために、紫外(「UV」)光源による刺激下で発光波長を有する無色の蛍光顔料に関心が寄せられてきた。このような蛍光顔料は、波長域が約450nm〜約550nmのUV光源による励起下で発光波長を有し、青緑色〜緑色の発光を示すことが知られている。その他のさらなる蛍光顔料が利用可能になることが非常に望ましい。また、セキュリティーインクのような安全保障での用途でその他の種の異なる発光スペクトルを有する顔料を利用可能にして、より広範な、または多種多様な安全保障に関するパラメーターが提供されるように、560nm、またはそれよりより大きいUV光源の励起下で、現存の青緑色〜緑色の発光を示す化合物とは異なる発光波長を示すことができる蛍光顔料を利用可能にすることも特に望ましい。例えば、黄色、または、黄色〜オレンジ色を放出する組成物が望ましい。
【0003】
発明の要約
本発明の新規の化合物は、アリールウレイドベンゾキサジノン化合物であり、好ましくは、紫外光で励起されると蛍光を発し、一般式(I):
【0004】
【化1】

【0005】
を有する化合物であって、式中、Rは、置換または非置換のアリール基であり、RおよびRは、それぞれ独立して、H原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、および、ハロゲン原子から選択され、Xは、酸素または硫黄原子であり、好ましくは酸素原子であり、nは、1またはそれ以上の正の整数であり、好ましくは1または2であり、最も好ましくは1である。好ましくは、Rは、置換または非置換のフェニル、ナフチル、または、ベンゾイル基であり、RおよびRはそれぞれ、水素原子である。置換された基の置換基は、アルキル、アルコキシ、アルキルカルボキシ、アルキルカルボニル、アルキルエステル、シアノ、ハロ、または、ハロアルキル基が可能である。この種の化合物の多くは、適切なUV光源で励起されると約560nm〜約585nmの波長で黄色の発光、一般的には濃い黄色の発光を生じる。UV光源で励起されると約560nm〜約585の範囲またはそれより高い波長で発光波長を示す化合物が好ましく、特に有用である。このような好ましい化合物の考えられる使用の一つは、安全保障での用途における顔料として、特にセキュリティーインクで使用するための顔料としての使用である。その他の使用は、その他の基材、例えば繊維(好ましくはポリプロピレンまたはポリアミド繊維)における顔料としての使用である。
【0006】
本発明のインク組成物は、例えば、蛍光化合物を、場合によりインク組成物で用いられるその他の成分と共に適切な液状媒体に溶解させることによって得ることができる。上記繊維は、繊維製造中に繊維に顔料を包含させることによって得ることができる。
【0007】
本発明の新規のアリールウレイドベンゾキサジノン化合物は、好ましくは、アントラノイルアントラニル酸(anthranoylanthranilic acid)と、アリールモノ、ジもしくはポリイソシアネートまたはイソチオシアネートとを反応させて中間体を形成し、この中間体を脱水して環を閉じ、本発明の化合物を形成することによって製造される。あるいは、本発明のアリールウレイドベンゾキサジノン化合物は、2−(2−アミノフェニル)−4H−3,1−ベンズオキサジノンと、適切なアリールモノ、ジもしくはポリイソシアネート、または、アリールイソチオシアネートとを反応させ、直接的に本発明の化合物を形成することによって製造してもよい。
【0008】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明の新規の化合物は、好ましくは、紫外光で励起されると蛍光を示す化合物であり、特に適切なUV光源で励起されると約560nm〜約585nmの範囲またはそれより高い波長の発光波長で蛍光を発する化合物である。本発明の新規のアリールウレイドベンゾキサジノン化合物は、一般式(I):
【0009】
【化2】

【0010】
を有し、式中、Rは、置換または非置換のアリール基であり、RおよびRは、それぞれ独立して、H原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、および、ハロゲン原子から選択され、Xは、酸素または硫黄原子であり、好ましくは酸素原子であり、nは、1またはそれ以上の正の整数であり、好ましくは1または2であり、最も好ましくは1である。好ましくは、Rは、置換または非置換のフェニル、ナフチル、または、ベンゾイル基であり、RおよびRはそれぞれ、水素原子である。置換された基の置換基は、アルキル、アルコキシ、アルキルカルボキシ、アルキルカルボニル、アルキルエステル、シアノ、ハロ、または、ハロアルキル基が可能である。この種の化合物の多くは、適切なUV光源で励起されると約560nm〜約585nmの波長で黄色の発光、一般的には濃い黄色の発光を生じる。本発明は蛍光を生ずるため蛍光顔料として有用であり、UV光源で励起されると約560nm〜約585nmの範囲またはそれ以上で発光波長を示す化合物が特に有用である。上記化合物のような発光スペクトルを有する化合物であれば、本発明の化合物は、安全保障での用途における顔料として、特にセキュリティーインクで使用するための顔料として特に有用である。
【0011】
式(I)で示される化合物において、Rは、どのような置換または非置換のアリール基でもよいが、好ましくは、置換または非置換のフェニル、ナフチル、または、ベンゾイル基であり、最も好ましくは置換されたフェニル基、好ましくはクロロで置換されたフェニル基、または、非置換のフェニル基である。置換された基に存在し得る置換基の例としては、以下の典型的な置換基が挙げられるが、これらに限定されない:アルキル、アルコキシ、アルキルカルボキシ、アルキルカルボニル、シアノ、ハロ、および、ハロアルキル基。置換基のアルキルまたはアルコキシ成分中の炭素原子の数は、一般的に、1〜約8個、好ましくは約1〜約6個、より好ましくは1〜約4個の炭素原子と予想される。アリール基が置換されたアリール基である場合、アリール基は、1個またはそれ以上の、好ましくは1または2個の置換基で置換されていてもよい。アリール基が置換されている場合、アリール基は、好ましくはは、メチル、メトキシ、ブチル、フルオロ、クロロ、過フルオロ、アセトキシ、シアノ、または、アルキルエステル基から選択される1個またはそれ以上の基を有すると予想される。RまたはRの置換基のアルキル部分またはアルコキシ部分の炭素原子の数は、一般的に、1〜約8個、好ましくは約1〜約6個、より好ましくは1〜約4個の炭素原子を有するだろう。好ましくは、RまたはRはそれぞれ、水素原子である。好ましい化合物は、RおよびRがそれぞれ水素原子であり、Rがフェニル、またはパラクロロフェニルであり、Xが酸素であり、nが1である化合物である。
【0012】
本発明の一般式(I)で示される好ましいアリールウレイドベンゾキサジノン化合物は、例えば、アントラノイルアントラニル酸と、アリールモノ、ジもしくはポリイソシアネートまたはイソチオシアネートとを適切な反応溶媒(例えばメチルエチルケトン)中で還流下にて反応させ、適切な脱水剤(例えば無水酢酸)の使用によって得られた中間体の環を閉じて再構成し、式(I)で示される化合物を形成することによって製造してもよい。このような反応は、以下の反応方法(A)で説明される。アントラノイルアントラニル酸は、容易に入手できる比較的廉価な反応物であるため、これは好ましい合成方法である。あるいは、式(I)で示される化合物は、2−(2−アミノフェニル)−4H−3,1−ベンズオキサジノンと、アリールモノ、ジもしくはポリイソシアネートまたはイソチオシアネートとを、適切な反応溶媒(例えばメチルエチルケトン)中で還流下にて反応させることによって製造してもよい。このような反応は、以下の反応方法(B)で説明される。反応方法(A)および(B)のいずれにおいても、R、R、Rおよびnは、式(I)での定義と同義である。
【0013】
【化3】

【0014】
好ましくは、本発明の式(I)で示される化合物が紫外光源で励起されると、これらは、安全保障での用途における顔料として、例えばセキュリティーインクおよび繊維に含まれる顔料として役に立つ蛍光を示すような発光波長を示す。式(I)で示される化合物の発光波長の範囲は、約400nm〜約585nmの範囲内で様々であるが、最も好ましい化合物は、約560nm〜約585nmの範囲で発光波長を示す。従って、この後者の化合物は、黄色、特に濃い黄色を示す。加えて、本発明の化合物は、インク組成物用の紫外光の類で励起される蛍光の顕色剤として使用するのに十分優れた定着を示す。UV光源で励起されると約560nm〜約585nmの範囲またはそれ以上で発光波長を示す化合物が特に有用である。上記化合物のような発光スペクトルを有する化合物であれば、本発明の化合物は、安全保障での用途における顔料として、特にセキュリティーインクおよび繊維で使用するための顔料として特に有用である。例えば、本発明のインク組成物は、多種多様な表示またはデータ記憶媒体の基材上に用いてもよく、例えば、これらに限定されないが、通貨、パスポート、チップカード、小切手、チェックカード(check card)、クレジットカード、デビットカード、身分証明書、証明書、および、銀行券などの表面、またはそれらの内部での使用が挙げられる。
【0015】
好ましくは、本発明のインク組成物は、本発明の式(I)で示される化合物を、適切な液状媒体(あらゆる有機溶媒一般、例えば、ただしこれらに限定されないが、脂肪族アルコール、エステルまたはケトン溶媒)に溶解させること、および、場合により、それらと、一般的にインク組成物に含まれる成分(例えば、結合剤樹脂、界面活性剤など)の1種またはそれ以上とを混合することにより得ることができる。本発明の化合物は、あらゆる適切な量でインク組成物に溶解できるが、一般的に、インク組成物の総重量に基づいて約0.001%〜約15%、好ましくは約0.01%〜約3重量%の量である。好ましくは、上記の量は、人間の目、または、このような蛍光を感知することができる検出器のいずれかによって発光を測定するか、または、読み取るのに十分な、許容できる量の発光を示すと予想される量である。しかしながら、発光強度を減少させるような自己吸収の原因となるほど多くの量は、避けることが好ましい。米国特許第6,743,283号(B2)に、インク組成物の製造に関する典型的な例が開示されており、この開示は、この参照により本発明の開示に含まれる。
【0016】
インク組成物中に本発明の化合物を溶解させるのに用いられる溶媒としては、あらゆる適切な有機溶媒が可能であるが、不利な環境の作用または悪臭を回避するか、または、最小化することができる場合、好ましくは、脂肪族アルコール溶媒と予想される。本発明の化合物が、ちょうど脂肪族アルコールには十分に溶解しないような環境下では、一般的に、アルコールと、その他の溶媒、例えば有機エステル(例えば酢酸エチル)、または、ケトン(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)との混合物が用いられると予想される。
【0017】
本インク組成物の安定性を高めることが重要である場合、または、インクが早期に乾燥するのを防ぐために、本発明のインク組成物は高沸点溶媒を含んでいてもよく、このような溶媒としては、例えば、エーテル溶媒(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなど)、または、脂肪族ポリオール(例えば1,2−ヘキサンジオール、2,4,6−ヘキサントリオールなど)が挙げられる。
【0018】
本発明の化合物を適切に固定するために、好ましい本発明の発光するインク組成物に、結合剤樹脂が含まれることが多い。結合剤樹脂は、溶媒に対して優れた溶解性を有すること、および、結合剤樹脂をインク組成物に含ませると、インク組成物の粘度が適切に調節することが好ましい。好ましい結合剤樹脂の具体的な例としては、以下に列挙される樹脂が挙げられる:
ポリビニル樹脂、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニルコポリマー;ポリアミン樹脂、例えばポリアリルアミン、ポリビニルアミン、および、ポリエチレンイミン;ポリアクリル酸樹脂、例えばポリアクリル酸メチル、ポリエチレンアクリラート、ポリメタクリル酸メチル、および、ポリメタクリル酸ビニル;および、アミノ樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂、ロジン、ロジンで修飾されたフェノール樹脂、マレイン酸、フマル酸樹脂など、石油樹脂、セルロース樹脂(例えばエチルセルロースおよびニトロセルロース)、ならびに、天然樹脂(アラビアゴム、ゼラチンなど)。
【0019】
特に好ましい結合剤樹脂としては、ポリビニル樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアミン樹脂などが挙げられ、これらは通常、筆記のための装置、インクジェット用インク、および、印刷用インクのためのインクに用いられている。
【0020】
これらの結合剤樹脂は、例えば、インク組成物の総重量に基づいて約0.5%〜30重量%、好ましくは約1%〜約20重量%の量で混合される。結合剤樹脂の量が低すぎると(典型的には約0.5重量%未満)、発光する化合物が、不浸透性の記録材料上に十分に固定されない可能性がある。一方で、上記量が高すぎると(典型的には約30重量%を超える)、得られたインク組成物をインジェクションする際の安定性が不足する可能性がある。さらに、結合剤層により発光化合物が厚く覆われる可能性があり、発光化合物の発光が結合剤樹脂によって損なわれる可能性がある。
【0021】
本発明のインク組成物は、望ましい場合、または、必要な場合、数種の添加剤を含んでいてもよく、このような添加剤としては、様々なタイプの界面活性剤、例えばアニオン性、非イオン性およびカチオン性界面活性剤、例えばアルキル硫酸塩、リン酸塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル、および、アルキルアミン塩;両性界面活性剤、フッ素含有界面活性剤、または、アセチレングリコール界面活性剤、分散剤、例えば、ロジン酸石鹸、ステアリン酸石鹸、オレイン酸石鹸、ジ−β−ナフチルメタン二硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、および、スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム)、または、シクロデキストリン(CD)β−CD、ジメチル−β−CD、メチル−β−CD、ヒドロキシエチル−β−CD、および、ヒドロキシプロピル−β−CD、および、消泡剤などが挙げられる。これらの添加剤は、インク組成物の総重量に基づいて約0.5%〜約5重量%、好ましくは約1%〜3重量%の量で用いてもよい。
【0022】
以下の2つの実施例で、本発明の式(I)で示される化合物の製造方法を説明する。
実施例1:1−フェニル−3−[2−(4−オキソ−4H−ベンゾ[d][1,3]オキサジン−2−イル)−フェニル]−尿素(反応方法(A)による)
250mlの三つ口ボトルに、室温で、12.8g[0.05mol]のアントラノイルアントラニル酸、および、100mlのメチルエチルケトンを入れた。撹拌しながら、5.95g[0.05mol]のフェニルイソシアネートを添加し、還流下(約80℃)で約4時間加熱した。その後、この懸濁液を約40℃に冷却した。次に、40mlの無水酢酸(acetanhydrid)を添加し、さらに3時間加熱した。10℃に冷却した後、沈殿物を吸い出し、アセトンで洗浄し、標準圧力下、50℃で乾燥させた。12.5g(70%)のオフホワイト色の粉末が得られ、これは、長波長のUV光(366nm)で励起したところ、黄色〜オレンジ色の蛍光を示した(567nmでのFlu−Max)。示差熱分析(DTA)によれば、235℃で1つの吸熱性ピーク(融点)を示した。
【0023】
実施例2:1−フェニル−3−[2−(4−オキソ−4H−ベンゾ[d][1,3]オキサジン−2−イル)−フェニル]−尿素(反応方法(B)による)
250mlの三つ口ボトルに、室温で、11.3g[0.05mol]の2−(2−アミノフェニル)−4H−3,1−ベンズオキサジノン、および、100mlのメチルエチルケトンを入れた。撹拌しながら、5.95g[0.05mol]のフェニルイソシアネートを添加し、還流下(約80℃)で約30分間加熱した。その後、この懸濁液を約10℃に冷却し、沈殿を吸い出し、50mlのアセトンで洗浄し、標準圧力下、50℃で乾燥させた。特性は、実施例1の方法Aで製造された生成物と同じであった。
【0024】
上述の方法に従い、適切なアリールモノ、ジまたはポリイソシアネート、または、チオイソシアネート反応物を用いることによって、本発明の式(I)で示される別のアリール−ベンゾキサジノン−フェニル−尿素化合物を合成した。収率は、反応に用いられたアリール−イソシアネートまたはイソチオシアネート反応物によって約60%〜約90%であった。これらの化合物の最大蛍光は、一般的に540nm〜585nmであった。以下の化合物の表で、このようにして製造された化合物を説明する。表中、項目「Excmax」は、化合物の励起波長(nm)であり、「Flumax」は、化合物の蛍光波長(nm)であり、「X」および「Y」は、標準的なカラーチャート(DIN5033)上の色の座標を示し、「DTA」は、示差熱分析の融点(℃)である。本化合物の励起および発光最大を、島津(Shimadzu)のRF−5000蛍光分光光度計で測定した。366nmの光での励起下の蛍光の輝度を、ミノルタ(Minolta)の輝度計LS−11で測定し、強度をcd/mで示した。
【0025】
【表1】

【0026】
本発明の好ましいインク組成物は、これらの化合物のいずれか1種またはそれ以上を、適切な溶媒(例えば、アルコール、エステルまたはケトン、または、これらに類似した溶媒)中に溶解させること、または、分散させることによって製造してもよい。例えば、約1gの1−フェニル−3−[2−(4−オキソ−4H−ベンゾ[d][1,3]オキサジン−2−イル)−フェニル]−尿素を、60gのエタノール、30gの酢酸エチルからなる溶液に溶解させ、そこに4gのポリビニルピロリドン樹脂を添加し、媒体上に印刷して約385nmのUV光を照射すると、567nmで黄色の蛍光を発すると予想されるインク組成物を提供してもよい。その他の本発明の化合物を用いて同様のインク組成物を製造することができる。このようなインク組成物は、セキュリティーインクとして特別な有用性が認められる。
【0027】
本発明の蛍光インク組成物は、多数の用途で、さらに多種多様の基材に、特に安全保障の目的で用いて多種多様の製造品を提供することができる。例えば、本発明のインク組成物は、多種多様な表示またはデータ記憶媒体の基材上に用いてもよく、例えば、これらに限定されないが、通貨、パスポート、チップカード、小切手、チェックカード、クレジットカード、デビットカード、身分証明書、証明書、および、銀行券などの表面、またはそれらの内部での使用が挙げられる。本発明はまた、製品の製造方法も含み、本方法は、製品の表面に、または、製品の内部に本インク組成物を包含させ、製品を標識することを含み、上記製品は、通貨、パスポート、チップカード、小切手、チェックカード、クレジットカード、デビットカード、身分証明書、証明書、および、銀行券から選択される。本発明のさらなる形態は、製品の製造方法であり、本方法は、製品に本発明の化合物を包含させることを含み、上記製品は、インクジェットや電子写真技術などのあらゆる印刷技術のためのインク、有色または無色の塗料、塊状の着色ポリマー、フィルム、コーティング、データ記憶媒体、安全保障マーク、紙、分散体、紡糸繊維、染色された繊維、生化学的なトレーサー、および、ディスプレイから選択される。このような使用は、例えば、WO98/32799、および、WO03/053980A1で例示されており、これらの開示は、この参照により本発明の開示に含まれる。
【0028】
本明細書において本発明の特定の実施形態を参照しながら本発明を説明したが、当然のことながら、本明細書で開示された本発明の概念の本質および範囲から逸脱することなく、変更、改変および変形がなされてもよい。従って、このような添付の特許請求の範囲に本質および範囲内に含まれる変更、改変および変形全てが包含されることとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

[式中、Rは、置換または非置換のアリール基であり、RおよびRは、それぞれ独立して、H原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボキシ基、および、ハロゲン原子からなる群より選択され、Xは、酸素および硫黄原子からなる群より選択され、nは、1またはそれ以上の正の整数である]
を有する化合物。
【請求項2】
適切な紫外光源により励起させると、蛍光を発することができる、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
適切な紫外光源により励起させると、約560nm〜約585nmの範囲内で蛍光を発することができる、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
nが1である、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
Xが酸素である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記アリール基が、置換または非置換のフェニル、ナフチル、または/および、ベンゾイル基からなる群より選択されるアリール基である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記アリール基が、置換されたアリール基であり、その置換基は、アルキル、アルコキシ、アルキルカルボキシ、アルキルカルボニル、アルキルエステル、シアノ、ハロ、および、ハロアルキル基からなる1またはそれ以上の群から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記置換基のアルキル基が、1〜約4個の炭素原子を含む、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
前記置換されたアリール基が、置換されたフェニル基である、請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
前記置換されたアリール基が、置換されたフェニル基である、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
nが2の整数である、請求項2に記載の化合物。
【請求項12】
がフェニルであり、RおよびRがそれぞれ水素であり、Xが酸素であり、nが1である、請求項2に記載の化合物。
【請求項13】
がパラクロロフェニルであり、RおよびRがそれぞれ水素であり、Xが酸素であり、nが1である、請求項2に記載の化合物。
【請求項14】
一般式(I):
【化2】

[式中、Rは、置換または非置換のアリール基であり、RおよびRは、それぞれ独立して、H原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボキシ基、および、ハロゲン原子からなる群より選択され、Xは、酸素および硫黄原子からなる群より選択され、nは、1または2の整数である]
で示される化合物の製造方法であって、
式(I)で示される化合物を形成するために、式R−[NCX]で示される反応用化合物と、アントラノイルアントラニル酸(anthranoylanthranilic acid)および2−(2−アミノフェニル)−4H−3,1−ベンズオキサジノンからなる群より選択される反応用化合物とを還流下で反応させることを含み、ここで、反応物がアントラノイルアントラニル酸の場合、反応生成物を脱水して環を閉じることをさらに含む、上記方法。
【請求項15】
前記反応物R−[NCX]においてnが整数1であり、他方の反応物はアントラノイルアントラニル酸であり、前記脱水と環を閉じることは、脱水剤として無水酢酸を用いて達成される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記Rは、フェニル、または、置換されたフェニル基である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項2に記載の化合物を含む、蛍光インク組成物。
【請求項18】
請求項3に記載の化合物を含む、蛍光インク組成物。
【請求項19】
請求項4に記載の化合物を含む、蛍光インク組成物。
【請求項20】
請求項5に記載の化合物を含む、蛍光インク組成物。
【請求項21】
請求項6に記載の化合物を含む、蛍光インク組成物。
【請求項22】
請求項7に記載の化合物を含む、蛍光インク組成物。
【請求項23】
請求項8に記載の化合物を含む、蛍光インク組成物。
【請求項24】
請求項9に記載の化合物を含む、蛍光インク組成物。
【請求項25】
請求項10に記載の化合物を含む、蛍光インク組成物。
【請求項26】
請求項11に記載の化合物を含む、蛍光インク組成物。
【請求項27】
請求項12に記載の化合物を含む、蛍光インク組成物。
【請求項28】
請求項13に記載の化合物を含む、蛍光インク組成物。
【請求項29】
製品の表面に、または、製品の内部に、請求項17に記載の蛍光インク組成物を有する製品。
【請求項30】
前記製品が、通貨、パスポート、チップカード、小切手、チェックカード、クレジットカード、デビットカード、身分証明書、証明書、および、銀行券からなる群より選択される、請求項29に記載の製品。
【請求項31】
製品の表面に、または、製品の内部に請求項17に記載のインク組成物を包含させ、製品を標識することを含み、ここで、該製品は、通貨、パスポート、チップカード、小切手、チェックカード、クレジットカード、デビットカード、身分証明書、証明書、および、銀行券からなる群より選択される、製品の製造方法。
【請求項32】
製品に請求項2に記載の化合物を包含させることを含み、ここで、該製品は、インク、有色または無色の塗料、塊状の着色ポリマー、フィルム、コーティング、データ記憶媒体、安全保障マーク、紙、分散体、紡糸繊維、染色された繊維、生化学的なトレーサー、および、ディスプレイからなる群より選択される、製品の製造方法。

【公表番号】特表2008−514617(P2008−514617A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533651(P2007−533651)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/034155
【国際公開番号】WO2006/036790
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】