説明

アルカリ金属フリーのガラスの組成、それについての調合および使用

【課題】本発明は、アルカリ金属フリーのガラスの組成、調合および使用に関する。
【解決手段】上記ガラスの組成は(酸化物基準のモルパーセントで)62〜72 SiO2、6.5〜11.5 B2O3、8.5〜15 Al2O3、0〜6.5 MgO、1.5〜< 11 CaO、0〜4 SrO、0〜3 BaOおよび0.001〜2 In2O3を含み、MgO+CaOの合計が5〜15、SrO+BaOの合計が<5、およびMgO+CaO+SrO+BaOの合計が8〜17である。上記ガラスの組成はさらに0〜2 TiO2と0〜1 ZrO2を含むこともできる。このガラスの組成はフラットパネルディスプレイ、特に液晶ディスプレイパネル、の基盤ガラスシートの調合に対して有益である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ金属フリーのガラスの組成、それについての調合および使用の方法に関する。より詳細には、本発明は、低密度、低膨張係数、高歪点および高化学的安定性を有するアルカリ金属フリーのガラスの組成、並びにその調合および使用の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基盤ガラスシートは、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイの中で広く使用されている。液晶ディスプレイパネルの中で使用されている基盤ガラスシートの場合、それらの特性および品質に対する要求は厳しい。基盤ガラスシートの容易な製造、運送および加工だけではなく、液晶ディスプレイパネルの容易な調合とよい表示性能を確保するためである。従って、基盤ガラスシート調合のためのガラスの組成は、アルカリ金属フリー(つまり、アルカリ金属を含んでいない)であるべきであり、優れた熱的化学的安定性を持つべきである。さらに、外観の点で基盤ガラスシートは、適度に高い平滑と平坦を持ち、肉眼で見える傷を持つべきでない。
【0003】
液晶ディスプレイパネル調合の方法は次のステップから構成される。最初に透明導電性フィルム、絶縁フィルム、半導体(多結晶シリコン、アモルファスシリコン等)フィルムおよび金属フィルムを、基盤ガラスシートの表面上にさまざまな手法、例えばスパッタリングまたは化学的蒸着(CVD)および同種の手法、で加える。次に、フォトエッチング手法によりそれらの上に回路とパターンを形成する。フォトエッチングとフィルム印加の段階の間、基盤ガラスシートはさまざまな熱的化学的処理にさらされている。例えば、500〜600℃の高温の熱的処理が、アモルファスまたは多結晶シリコン半導体フィルムの形成の際に行われる。アルカリ金属酸化物(Na2O,K2O、Li2O等)がガラスの組成中に存在すれば、アルカリ金属イオンは熱処理中に、加えられた半導体物質の中に拡散し、結果としてフィルムの特性にダメージを与える。従って、ガラスの組成中にアルカリ金属酸化物(R2O)を含まないことは望ましい。さらに付け加えて、基盤ガラスシートは多量の化学薬品で洗浄、エッチングされるため、高化学的安定性および、ある成分の溶出を避けるため、強酸、例えばHFおよび同種のもの、を含んでいる化学薬品に対する高耐性も持つべきである。
【0004】
基盤ガラスシートの熱的特性の要求は、主にそれらについての熱膨張係数と歪点に関係している。液晶パネルディスプレイ調合の過程中、基盤ガラスシートは、急速な加熱冷却サイクル中に繰り返しの多い熱衝撃を受ける。もし基盤ガラスシートが大きいサイズであるほど、より小さな傷が表面上に起こりやすくなり、熱処理中に、亀裂の可能性の増加を引き起こす。基盤ガラスシートの膨張係数の減少は、異なる処理の手順間の温度差の結果として生じる熱応力の減少を引き起こすことが知られている。逆に基盤ガラスシートが、薄膜トランジスタ(TFT)材料(例えば多結晶シリコン、アモルファスシリコン等)と大きく違う膨張係数を持っていた場合、熱的処理の間にねじ曲げられる。それゆえ、基盤ガラスシートは、約30〜38×10-7/℃の最大範囲内で膨張係数に関し、多結晶およびアモルファスシリコン材料と一致していることが望ましい。さらに基盤ガラスシートは、650℃より高い歪点(1014.5ポアズの粘度になる温度)を持つ高い熱耐性を持つべきである。半導体フィルムの調合の過程で、基盤ガラスシートは、500〜600℃の高温の熱処理にさらされる。従ってもし、基盤ガラスシートが十分な熱耐性を持っていないとき(つまり低い歪点のみ持っている)、その熱収縮はTFTピクセル間の間隔のエラーを引き起こし、さらに表示性能の不足も引き起こし、同時に基盤ガラスシートはゆがめられ、曲げられる可能性もある。
【0005】
基盤ガラスシートを含む大きなディスプレイパネルの要求が増加するにつれて、基盤ガラスシートの重量は徐々に問題となってきている。一方、ポータブルおよびモバイルのフラットパネルディスプレイを作成するため、基盤ガラスシートは可能な限り軽い重さを持つことが望ましい。この目的のため、その厚さと密度を減少させることが一般的である。さらなる尽力はその密度を減少させることに集中している。一方、大きな薄いガラスのシートは、調合過程中の自身の重みにより、ひどいたるみを受ける可能性がある。たるみはシートの密度に直接比例するが、シートの弾性率に反比例する。基盤ガラスシートの作成において、このシートはさまざまな処理、例えば焼きなまし、切断、加工、テスト、清浄および同種の処理、にさらされる。従って大きな薄いガラスのシートのたわみは、包装、取り扱い、およびさまざまな処理装置間を運ぶコンテナ中でのガラスシートの区画化(つまり離れた場所におかれている)に負の影響を及ぼす。ディスプレイパネルの製造者においても同様の問題が起こっている。それゆえ、基盤ガラスシートは、ガラスの組成の最適化を通して最大限可能な範囲で、低密度および高弾性率を持つことが望まれる。
【0006】
特性に関する要求の一方、ガラスの組成は、溶解および成形を容易にするため高い可溶性を持つべきであり、それは溶解温度を減少することおよび、できる限り最小の欠陥で高品質基盤ガラスシートを作成することに役立つ。ガラスの組成の高溶解温度は、ガラスの組成を溶かすための火炉の使用期間およびエネルギー消費に負の影響を与える。
【0007】
さらに生産性を向上させるため、液晶ディスプレイパネルの製作者は、基盤ガラスシートがより厳しい技術的要求、例えばより高い化学的安定性と歪点、を達成することを望んでいる。
【0008】
現在使用可能なガラスの組成は、ガラスの密度および膨張係数に関して、かなり満足していることは確かである。しかし、上記のすべての要求を満足していない。従って、より望まれるガラスの組成を開発する必要はまだ存在する。
【0009】
さらに、もしガラスの組成が、高純度の原料から完全に調合されるならば、そのコストは増加する。逆にもしガラスの組成が従来からの原料で調合されるならば、アルカリ金属の不純物(過度の量でさえ)は、原料、例えばケイ砂、炭酸塩(MgO、CaO、SrO等が組み込まれている)および他の鉱物材料、によって最終組成に当然に組み込まれる。半導体フィルム上のアルカリ金属不純物による不利な影響を避けるため、熱処理中に半導体フィルム内のアルカリ金属イオンの拡散を妨げるように、ガラス組成のアルカリ金属イオン拡散係数を減少させることが可能である。特許文献1によれば、アルカリ金属は2,000ppmより少ない量に制限されるべきである。さらに特許文献2と3によれば、アルカリ金属酸化物は1,000ppmより少ない量に制限されるべきである。原料によって過度のアルカリ金属酸化物の不純物がガラス組成に組み込まれることに関する問題およびその問題に対する解決に対して、先行技術は何も言っていない。しかしながらそのような問題は実際の製造の場面で存在し、取り組むべきものである。
【特許文献1】米国特許第6,465,381B1号明細書
【特許文献2】米国特許第6,096,670号明細書
【特許文献3】米国特許第6,707,526B2号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、低密度、低膨張係数、高歪点および高化学的安定性を有するアルカリ金属フリーのガラスの組成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
アルカリ金属フリーのガラスの組成は、
62〜72 SiO2(62〜72は、62以上72以下を表し、以下も同じである)と
6.5〜11.5 B2O3
8.5〜15 Al2O3
0〜6.5 MgOと
1.5〜<11 CaO(1.5〜<11は、1.5以上11未満を表し、以下も同じである)と
0〜4 SrOと
0〜3 BaOと
0.001〜2 In2O3
を含み(酸化物基準のモルパーセントであり、以下も同じである)、MgO+CaOの合計が5〜15、SrO+BaOの合計が<5、およびMgO+CaO+SrO+BaOの合計が8〜17であり、避けられないアルカリ金属不純物の存在を除いてアルカリ金属酸化物を含んでいない。
【0012】
本発明のもうひとつの目的は、ガラス組成調合のための方法を提供することであり、0.5時間以上の間1500〜1680℃の温度で以下の成分を溶解することであり、その成分は、
62〜72 SiO2
6.5〜11.5 B2O3
8.5〜15 Al2O3
0〜6.5 MgOと
1.5〜<11 CaOと
0〜4 SrOと
0〜3 BaOと
0.001〜2 In2O3
を含み、MgO+CaOの合計が5〜15、SrO+BaOの合計が<5、およびMgO+CaO+SrO+BaOの合計が8〜17であり、避けられないアルカリ金属不純物の存在を除いてアルカリ金属酸化物を含んでいない。
【0013】
本発明のまたもうひとつの目的は、基盤ガラスシートを調合する際における以下のガラス組成の使用方法を提供することであり、上記ガラス組成は、
62〜72 SiO2
6.5〜11.5 B2O3
8.5〜15 Al2O3
0〜6.5 MgOと
1.5〜<11 CaOと
0〜4 SrOと
0〜3 BaOと
0.001〜2 In2O3
を含み、MgO+CaOの合計が5〜15、SrO+BaOの合計が<5、およびMgO+CaO+SrO+BaOの合計が8〜17であり、避けられないアルカリ金属不純物の存在を除いてアルカリ金属酸化物を含んでいない。
【0014】
本発明のまたもうひとつの目的は、基盤ガラスシートを提供することであり、上記基盤ガラスシートは、
62〜72 SiO2
6.5〜11.5 B2O3
8.5〜15 Al2O3
0〜6.5 MgOと
1.5〜<11 CaOと
0〜4 SrOと
0〜3 BaOと
0.001〜2 In2O3
を含み、MgO+CaOの合計が5〜15、SrO+BaOの合計が<5、およびMgO+CaO+SrO+BaOの合計が8〜17であり、避けられないアルカリ金属不純物の存在を除いてアルカリ金属酸化物を含んでいない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
低密度、低膨張係数、高歪点および高化学的安定性を有するアルカリ金属フリーのガラスの組成を提供することは本発明のひとつの態様であり、上記ガラス組成は、
62〜72 SiO2
6.5〜11.5 B2O3
8.5〜15 Al2O3
0〜6.5 MgOと
1.5〜<11 CaOと
0〜4 SrOと
0〜3 BaOと
0.001〜2 In2O3
を含み、MgO+CaOの合計が5〜15、SrO+BaOの合計が<5、およびMgO+CaO+SrO+BaOの合計が8〜17であり、避けられないアルカリ金属不純物の存在を除いてアルカリ金属酸化物を含んでいない。ガラスの組成は2.5g/cm3より小さい密度であり、20〜300℃で30〜36×10-7/℃の平均熱膨張係数を持っている。上記ガラスの組成は、高化学的安定性および660℃より低くないの歪点、例えば680℃と同じくらい高い、および1340℃よりも高くない動作温度も持っている。
【0016】
本発明によるガラス組成は、62〜72 SiO2、6.5〜11.5 B2O3、8.5〜15 Al2O3、0〜6.5 MgO、1.5〜<11 CaO、0〜4 SrO、0〜3 BaO、0.001〜<1.5In2O3を含むことが好ましい。このガラスは、密度ρを2.45g/cm3以下に保つため、さらに0〜2 TiO2および0〜1 ZrO2を含む。
【0017】
本発明によるガラス組成は、さらにモルパーセントで0〜2の範囲のTiO2を含むことが好ましい。
【0018】
本発明によるガラス組成は、さらにモルパーセントで0〜1の範囲のZrO2を含むことが好ましい。
【0019】
本発明によるガラス組成は、アルカリ金属フリーのガラスシートの調合に使用することができ、このガラスシートは同様に液晶ディスプレイパネルの基盤ガラスシートとして使用することができる。さらに、本発明は、基盤ガラスシートを調合する際における本発明によるガラス組成の使用方法にも関係し、上記ガラス組成は62〜72 SiO2、6.5〜11.5 B2O3、8.5〜15 Al2O3、0〜6.5 MgO、1.5〜<11 CaO、0〜4 SrO、0〜3 BaO、0.001〜2 In2O3含み、MgO+CaOの合計が5〜15、SrO+BaOの合計が<5、およびMgO+CaO+SrO+BaOの合計が8〜17であり、避けられないアルカリ金属不純物の存在を除いてアルカリ金属酸化物を含んでいない。
【0020】
酸化物を含んでいる多数のガラスシステムの中で、アルカリ土類金属酸化物を含んでいるホウケイ酸ガラスシステムは、低密度でよい温度衝撃耐性を有し、アルカリ金属を含まず、液晶ディスプレイパネル調合のためのガラスの最初の選択になった。さらに、その熱的化学的耐性を向上し、その膨張係数と密度を減少させるため、そのガラス組成は比較的多量のAl2O3を含む。従って、このガラスは、SiO2、B2O3およびAl2O3の酸化物を主要な成分として持つことになった。さらにアルカリ土類金属酸化物ROと他の金属酸化物は、その技術的、物理的および化学的特性を調整するためガラスの組成に組み込まれるべきである。従って、できたガラスの組成は、最適な特性の組み合わせで液晶ディスプレイガラスパネルの要求に適合することができる。
【0021】
ガラス網形成のための主要な因子として、SiO2はガラス組成の第1の構成要素である。それは熱膨張率と密度を減少させて、ガラス組成の歪点を向上させる。SiO2は本発明によるガラス組成中モルパーセントで62〜72の範囲内で存在している。モルパーセントで62より低いSiO2は、酸耐性のようなガラス組成の化学的安定性の減少を引き起こし、低膨張係数、低密度および高歪点を有するガラス組成を得ることに困難を生じさせる。一方、モルパーセントで72より高いSiO2は、高温の粘度と石(方ケイ石)の欠点への傾向を高め、ガラス組成を溶解する際に困難を生じさせる。
【0022】
B2O3はガラス網形成の因子とフラックスの両方として供給される。これは、粘度を減少させ、ガラス組成の安定性を向上する。ガラス網の形成のための因子として、B2O3は比較的大きな格子間空間で網を形成し、ガラス密度の減少を促進させる。本発明の中ではB2O3はモルパーセントで6.5〜11.5の範囲内で存在する。モルパーセントで6.5より低いB2O3はフラックスの効果はなく、従ってガラス密度を減少させる効果はほとんどない。さらに、HF緩衝(BHF)溶液に対するガラス組成の耐性を減少させる。モルパーセントで11.5より高いB2O3は、大きく減少した歪点、熱と酸に対する耐性の悪化およびガラス組成の層分離の増加傾向(安定性の低下を引き起こす)を引き起こす。そして同時にガラス組成の弾性率の向上に対して負の効果を持っている。
【0023】
Al2O3は中間の酸化物である。Al2O3はガラス組成の歪点と弾性率を有意に増加させ、化学的安定性を高める。Al2O3はモルパーセントで8.5〜15の範囲内で存在する。モルパーセントで8.5より低いAl2O3は、高い歪点、高いヤング率および適切な化学的安定性を有するアルカリ金属フリーのガラス組成を得ることを困難にする。モルパーセントで15より高いAl2O3は、高温の粘度(高溶解温度と高液相温度に対応する)を有意に増加させ、ガラス組成の安定性を減少させる。
【0024】
MgOは、ガラス組成の高温の粘度を減少させ、低温の粘度を増加するために供給され、よってその弾性率を向上させる。本発明の中ではMgOはモルパーセントで6.5を上限として存在する。モルパーセントで6.5より高いMgOは、ガラス組成の安定性を減少させ、液相温度を増加させる。これは、ガラス組成の失透耐性(devitrification resistance)およびBHF溶液に対する耐性を減少させることを引き起こす。MgOが、モルパーセントで0.5〜5の範囲内に存在することが望ましい。
【0025】
CaOも、高温の粘度を減少させ、低温の粘度を増加するフラックスとして供給され、さらにガラス組成の酸耐性を向上する。本発明の中ではCaOはモルパーセントで1.5〜<11の範囲内で存在する。モルパーセントで11より高いCaOは、ガラス組成の膨張係数の増加、BHF溶液に対する耐性の減少、安定性の減少および失透の増加傾向を結果とする。モルパーセントで1.5より低いCaOは、ガラス組成の溶解温度の減少および酸耐性の増加に対して負の影響を持つ。
【0026】
MgO+CaOはモルパーセントで5〜15の範囲内で存在する。モルパーセントで5より低いMgO+CaOは、ガラス組成の溶解温度の減少および酸耐性の向上に対して負の影響を持つ。逆にモルパーセントで15より高いMgO+CaOは、過度に高いガラス膨張係数および液相温度を結果とする。
【0027】
SrOとBaOはともに化学的安定性と失透に対する耐性を高めるために供給され、ガラス組成のBHF溶液に対する耐性を増加させることもできる。本発明の中ではSrOとBaOは、それぞれ個々にモルパーセントで0〜4の範囲内とモルパーセントで0〜3の範囲内に存在し、SrO+BaOの合計はモルパーセントで5よりも低い。上限より高いSrOとBaOはガラス組成の密度と膨張係数の有意な増加を引き起こす。
【0028】
本発明によれば、MgO+CaO+SrO+BaOはガラス組成の中でモルパーセントで8〜17の範囲内で存在する。モルパーセントで17より高いMgO+CaO+SrO+BaOは、ガラス組成の極端に高い液相温度と失透の傾向の増加を引き起こす。
【0029】
ZnOは高温の粘度を減少させるため、ガラス組成のBHF耐性と酸耐性を増加させるために供給される。しかしながら、ガラス組成の歪点を減少させるためおよび熱膨張係数を増加させるためにも供給される。さらにZn2+イオンは、フロートガラスの工程で容易に還元させることが可能な陽イオンであるため、ガラス組成の中に組み込まれるZnOはほとんどないか0であることが望ましい。本発明の中ではZnOはモルパーセントで0〜1の範囲内で存在する。
【0030】
TiO2は、ガラス組成の酸耐性の増加、高温の粘度の減少、可溶性の向上および紫外線耐性の増加のために供給される。本発明ではTiO2はモルパーセントで0〜2の範囲内で存在する。モルパーセントで2よりも高いTiO2は、近紫外線の範囲でガラス組成の透明性を減少させる。
【0031】
ZrO2は、ガラス組成の化学的安定性を高め、膨張係数を減少させ、有意に弾性率を増加させるために供給される。しかしながら、その溶解性はガラス組成の中で低く、ガラス組成の高温の粘度と液相温度の増加、失透の傾向の増加を引き起こす。本発明の中でZrO2はモルパーセントで0〜1の範囲内で存在する。
【0032】
In2O3はガラス網の調節剤に属する。In3+イオンは比較的大きな直径および6の配位数を持つ。それゆえ、それは、[InO6]の八面体を形成するためガラス網の格子間空間内のみを満たすことができ、従ってガラス網のクロスリンキングを高め、同様にガラス組成の歪点、化学的安定性および弾性率の増加を引き起こす。他方、In3+イオンは比較的より高い分極比を持ち、従ってガラス組成の高温の粘度にほとんど影響を与えない。このすべてを考慮して、ガラス組成の調合の中で、比較的ゆるいガラス網の格子間空間内を満たしているIn3+イオンは、イオン拡散係数を減少させるために供給される。さらに、液晶ディスプレイパネルの調合の中で、それらは、R+イオン(最初の材料によってガラスの中に避けられずに組み込まれたアルカリ金属不純物のようなもの)を半導体材料フィルムに拡散させないためにも供給される。従って、半導体フィルムの特性に対するR+イオンのダメージを減少させる。本発明によれば、In2O3はモルパーセントで0.001〜2の範囲内に存在する。モルパーセントで2よりも高いIn2O3は、ガラス組成のガラス密度を向上させ、有意に液相温度を増加させ、安定性を減少させる。
【0033】
それゆえ、本発明によるガラス組成は、向上した電気的特性および低いアルカリ金属イオン拡散係数を示すことが期待される。ガラス組成の中に組み込まれたIn2O3は、ガラス組成の高温の粘度と膨張係数を増加させることなく、後者の化学的安定性を向上させ、歪点を増加させ、およびアルカリ金属イオンの拡散を禁止させるためさらに供給される。本発明の好ましい実施態様では、In2O3の含有量は、ガラス組成の中でモルパーセントで1.5よりも低い。
【0034】
本発明によるガラス組成は、ガラス組成の溶解性能を向上させるため、さらに例えば、As2O3、Sb2O3、CeO2、SnO2、Cl、F、SO3および同種のものからなるグループから選ばれた清澄剤を少なくとも1種含ことができる。As2O3、Sb2O3、CeO2およびSnO2の含有量はそれぞれモルパーセントで0.5を超えず、総計としてモルパーセントで3を超えない。好ましくは、As2O3、Sb2O3、CeO2およびSnO2の含有量はそれぞれモルパーセントで0.3を超えず、総計としてモルパーセントで2を超えない。さらに好ましくは、As2O3、Sb2O3、CeO2およびSnO2の含有量はそれぞれモルパーセントで0.1を超えず、総計としてモルパーセントで1を超えない。Cl、FおよびSO3は、相当する塩化物、フッ化物および硫酸塩、例えば(NH4)3AlF6、CaCl2、CaF2、MgF2、BaF2、BaSO4および同種のものによって、ガラス組成の中に組み込まれる。総計としてモルパーセントで3を超えなく、好ましくはモルパーセントで2を超えなく、さらに好ましくはモルパーセントで1を超えない。特に好ましくは、ガラスバッチは次のように形成される。CaCl2またはCaF2は、CaOの全量を超えない量でCaOの一定量を置き換えることに使用される。MgF2またはMgSO4は、MgOの全量を超えない量でMgOの一定量を置き換えることに使用される。BaF2またはBaSO4は、BaOの全量を超えない量でBaOの一定量を置き換えることに使用される。そして、(NH4)3AlF6は、Al2O3の2倍の量でAl2O3の一定量を置き換えることに使用される。付け加えてAs2O3とSb2O3は、すでに減少するため、透明にする因子の組み合わせであるCeO2とSnO2は、フロートガラスの工程によって基盤ガラスシートの調合の際適切に使用される。
【0035】
ここでのさらなる提供は、ガラス組成の調合の方法であり、0.5時間以上の期間の間1500〜1680℃の温度での溶解から構成され、その成分は62〜72 SiO2、6.5〜11.5 B2O3、8.5〜15 Al2O3、0〜6.5 MgO、1.5〜<11 CaO、0〜4 SrO、0〜3 BaO、0.001〜2 In2O3を含み、MgO+CaOの合計が5〜15、SrO+BaOの合計が<5、およびMgO+CaO+SrO+BaOの合計が8〜17であり、避けられないアルカリ金属不純物の存在を除いてアルカリ金属酸化物を含んでいない。溶解は1520〜1650℃の温度で行うことが好ましい。また1550〜1600℃はより好ましい。溶解は1〜3時間の期間行うのが好ましい。また1.5〜2.5時間の期間行うのがより好ましい。
【0036】
本発明のもうひとつの特徴は、基盤ガラスシートを提供することであり、これは、62〜72 SiO2、6.5〜11.5 B2O3、8.5〜15 Al2O3、0〜6.5 MgO、1.5〜<11 CaO、0〜4 SrO、0〜3 BaO、0.001〜2 In2O3を含み、MgO+CaOの合計が5〜15、SrO+BaOの合計が<5、およびMgO+CaO+SrO+BaOの合計が8〜17であり、避けられないアルカリ金属不純物の存在を除いてアルカリ金属酸化物を含んでいない。基盤ガラスシートは、液晶ディスプレイパネルを含むディスプレイパネルを作るために使用される。従って、本発明は、本発明の基盤ガラスシートを含んでいるすべてのディスプレイパネルも含む。
【0037】
本発明によるガラス組成の種々の態様は、使用、ガラス組成の調合、基盤ガラスシートおよび本発明による基盤ガラスシートの調合に適用されると解釈される。また、本発明の種々の態様は組み合わせることができ、特定の態様の組み合わせに制限されないと解釈される。
【実施例】
【0038】
本発明は、次の例を参照して説明される。次の例は説明することおよび例示することを意図しており、本発明を制限することはすこしも意図していない。
【0039】
本発明による実例1〜40は表1〜5の中に示されている。そこでは、含有量を変化させることで、ガラス特性におけるそれぞれの成分の効果を例示している。その上、ある清澄剤、例えばAs2O3,Sb2O3,CeO2,SnO2,Cl,F,SO3および同種のものもガラス組成中に組み込まれている。詳細には次のように使用されている。例2〜6では0.2SnO2+0.1CeO2、例7〜8では0.2SnO2+0.1CeO2+0.1SO3、例9〜11では0.2SnO2+0.1CeO2+0.3Cl、例12〜15では0.2SnO2+0.1CeO2+0.3F、例16〜24では0.2As2O3+0.2Sb2O3、例25〜40では0.35As2O3
【0040】
400gのガラスバッチが、表に列挙されているようなそれぞれのガラス組成に対して形成される。ガラスバッチは、プラチナ−ロジウムるつぼ内に置かれ、1.5時間の期間1630℃の温度で電気炉の中で溶解される。酸化物の組成(モルパーセントで)とガラスの特性は表1〜5の中で列挙されている。ガラスの特性は、以下を含む。
(1) 20〜300℃での平均熱膨張係数、α20/300[10-7/K]
(2) 密度、ρ[g/cm3]
(3) 弾性率(ヤング率)、E[GPa]
(4) 歪点Ts[℃]、つまり1014.5ポアズの粘度になる温度
(5) 軟化点Tf[℃]、つまり107.6ポアズの粘度になる温度
(6) 液相温度Tl[℃]、つまりガラスが不透明になる温度
(7) 動作点Tw[℃]、つまり104ポアズの粘度になる温度
(8) T2.5[℃]、つまり102.5ポアズの粘度になる温度
(9) HF緩衝溶液に対する耐性(BHF)[mg/cm2]、つまり10%のNH4F-HF緩衝水溶液に20分間25℃の温度で処理した後の6面の磨かれたガラスシートの損失重量をシートの表面積で割った値。
【0041】
表1〜5の中で示されたように、本発明のガラス組成は次の特性を持ち、液晶ディスプレイガラスパネルの基盤ガラスシートの要求およびそれの調合に適合している。
(1) 高温耐性、660℃より高い歪点を有し、例えば680℃と同じくらい高い。
(2) 低い熱膨張係数α20/300、30×10-7/Kから36×10-7/Kまでの範囲で、これらはアモルファスおよび多結晶シリコンの膨張係数と調和する。
(3) 低密度、ρ<2.50g/cm3
(4) 1340℃より高くない動作温度および1640℃より高くない102.5ポアズの粘度になるガラス組成の温度
(5) 比較的高いHF緩衝溶液に対する耐性
【0042】
例33〜36でIn2O3の含有量が増加していることから、In2O3は、ガラス組成の高温の粘度に大きな負の影響を及ぼすことなく、ガラス組成の歪点を増加させることが結論付けられる。また、モルパーセントで1.5より高い含有量のIn2O3は、ガラスの密度の向上および液相温度の有意な増加を引き起こす。本発明におけるIn2O3の含有量はそれゆえ、モルパーセントで1.5より少ないことが好ましい。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モルパーセントで
62〜72 SiO2
6.5〜11.5 B2O3
8.5〜15 Al2O3
0〜6.5 MgOと
1.5〜<11 CaOと
0〜4 SrOと
0〜3 BaOと
0.001〜2 In2O3
を含み、MgO+CaOの合計が5〜15、SrO+BaOの合計が<5、およびMgO+CaO+SrO+BaOの合計が8〜17であり、避けられないアルカリ金属不純物の存在を除いてアルカリ金属酸化物を含まないことを特徴とするアルカリ金属フリーのガラスの組成。
【請求項2】
0.5〜5 MgOを含むことを特徴とする請求項1に記載のアルカリ金属フリーのガラスの組成。
【請求項3】
0.001〜<1.5 In2O3を含むことを特徴とする請求項1に記載のアルカリ金属フリーのガラスの組成。
【請求項4】
0.5〜5 MgOおよび0.001〜<1.5 In2O3を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアルカリ金属フリーのガラスの組成。
【請求項5】
モルパーセントで0〜2 TiO2をさらに含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアルカリ金属フリーのガラスの組成。
【請求項6】
モルパーセントで1.5〜2.0 TiO2を含むことを特徴とする請求項5に記載のアルカリ金属フリーのガラスの組成。
【請求項7】
モルパーセントで0〜1ZrO2をさらに含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアルカリ金属フリーのガラスの組成。
【請求項8】
As2O3,Sb2O3,CeO2,SnO2,Cl,FおよびSO3からなるグループから選ばれた清澄剤を少なくとも1種さらに含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアルカリ金属フリーのガラスの組成。
【請求項9】
0.5時間以上の期間1500〜1680℃の温度で、請求項1から8のいずれか1項に記載のガラスの組成を溶解することを特徴とするガラスの組成を調合する方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載のガラスの組成から作られることを特徴とする基盤ガラスシート。
【請求項11】
基盤ガラスシートを調合する際における請求項1から8のいずれか1項に記載のガラス組成の使用。

【公開番号】特開2006−213595(P2006−213595A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−28236(P2006−28236)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(506041844)ホーナン アンツァイ ハイ−テク カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Henan Ancai High−tech Co., Ltd.
【Fターム(参考)】