説明

アルキルトルエンスルホネートを含む機能液

【課題】機能液、特にはトラクタ液、トラクタ作動液、変速機液および油圧作動液等に使用するのに適した新規な改良された摩擦緩和添加剤を提供する。
【解決手段】摩擦緩和量のアルキルトルエンスルホネート塩またはアルキルトルエンスルホネート塩混合物を含む本発明の機能液の配合物、その製造方法、およびその液を使用して該液体を用いる機械内で最適な摩擦特性を実現して、それを維持する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対的に可動な部分及び継手部分を含む装置および機械に使用するのに適した機能液(機能性流体)組成物に関するものである。特には、本発明は、重機械、特に高出力トラクタや変速機、油圧機器等に使用するのに適した機能液組成物に関する。また、本発明は、機能液にそのような好ましい摩擦特性を付与するために使用することができる新規な改良された摩擦緩和添加剤の部類に関する。さらに、本発明は、機能液を用いる機械に最適な摩擦特性を与え、かつ機械内でそのような特性を維持する方法にも関する。さらには、本発明は、そのような機能液組成物の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
「機能液」なる用語は、様々な種類の液を包含していて、例えばトラクタ液、自動変速機液、手動変速機液、油圧作動液、パワー・ステアリング液、パワー・トレーン部分に使用する液体、並びにその他様々な能力を持つ液体を挙げることができる。これらの液体は一般に、単に液体を用いる機械を潤滑すること以上の仕事をする。むしろ、これらの液体は潤滑性以外の、大抵の場合は潤滑性に加えて、一以上の機能をもたらす。追加の機能によって、機械はもっと有効に及び/又は効率良く作動することができる。従って、機能液は、その機能のうちの少なくとも一つは一般に液体に浸された機械部分に潤滑をもたらすことに関するが、多機能の液体となる傾向にある。
【0003】
機能液の複数の機能および特性は、添加剤によって機能液に付与されている。代表的な機能液用添加剤としては、例えば粘度指数向上剤、酸化防止剤、腐食/さび防止剤、分散剤、流動点降下剤、消泡剤、抗乳化剤、耐摩耗性添加剤、シール膨潤剤、および摩擦緩和剤等を挙げることができる。本発明は、新規な摩擦緩和剤の部類に関する。
【0004】
当該分野の熟練者はしばしば、「摩擦緩和添加剤」と「摩擦緩和剤」なる用語を交替で使用しているが、本発明の目的では摩擦緩和添加剤は、従来の摩擦緩和剤以外の物質を意味する。むしろ、「摩擦緩和添加剤」なる用語は、液体の摩擦特性を改良し、影響を与える何等かの添加剤を意味し、液体に対してその一部となる。参考となる非特許文献1には、摩擦は「物体が伝動運動で別の物体上を移動するときに出合う抵抗」であると定義されている。従来の潤滑油組成物では摩擦緩和剤は、作動中相互に接触するようになる二つの表面の間の摩擦を単に低減し、それによりこれら面の摩耗を低減するものとして知られている。つまり、二つの表面が互いに密接して移動するにつれて潤滑剤は両表面の間から押し出される。この過程で潤滑剤中の摩擦緩和剤は、両表面に吸着されるようになり、その結果両表面の間に保持され、両表面に垂直な分子配向を形成して接触レベルを下げ、そして摩擦を少なくする。一方、摩擦緩和添加剤は一般に、機能液中で摩擦を低減すること以上の仕事をする。これらの液体は、相対的に可動な部分及び継手部分の少なくとも一部を浸液させた状態で使用される。よってこれらの液体は、摩擦レベルを、最適なレベル、すなわち、過剰な摩耗と引きちぎりを防ぐほど充分に低いレベル、かつ相対的に可動部な部分及び継手部分がすべることなく、正確な係合と離脱とを行なうほどに充分に高いレベルに保持しなければならない。
【0005】
従って機能液は、機械の作動要求と潤滑要求の両方を満たすように作製される。例えばトラクタ液は、トラクタで駆動する機械内の変速機やギヤ、軸受、油圧機器、パワー・ステアリング部分、機械式パワーテイクオフ、油浸ブレーキを潤滑にするために使用される。機能液がトラクタの油圧機器を潤滑するために使用される場合には、トラクタ作動液とも呼ばれる。機能液はトラクタに使用されるときは、ブレーキ能、パワーテイクオフ・クラッチの係合と脱離、および作動中に発生する熱の伝達と放散をもたらすことができる。最近のトラクタでは、パワーブレーキはドラム形かディスク形の何れかをとるが、その優れたブレーキ能の点からディスク形ブレーキが好ましい。ディスク形ブレーキのうちでも更に湿式又は油浸ブレーキが好ましい。その理由は、機能液がごみや汚れからブレーキを有効に隔離させることができるからである。湿式ディスクブレーキは、これら利点が分かっているにもかかわらず、少なくとも一つの著しい欠点、すなわちブレーキチャター(ブレーキスクォークとしても知られている)にしばしば苦しめられている。ブレーキチャターは、摩擦材料または反応板のトルク変動が装置内で調和振動を発生させるほど大きい場合に生じる。これらの振動によって通常は、ブレーキを掛けたときに装置から不愉快でいやな音が出ることになる。
【0006】
ブレーキチャターを除去しようとして、当該分野の熟練者は例えば、ジオレイル水素亜リン酸エステルなどの摩擦緩和剤をトラクタ液又はトラクタ作動液に添加している。しかし、しばしば、これら従来の摩擦緩和添加剤は様々な理由から液を使用に適さないものにする。第一に、ブレーキチャターは、トラクタ液又はトラクタ作動液を配合するときに取り扱わざるをえない多くの問題のうちのただ一つにほかならない。例えば、湿式ブレーキとパワーテイクオフ・クラッチ両方の能力が常に考慮される。ジオレイル水素亜リン酸エステルなど従来の摩擦緩和剤は、ブレーキチャターを低減するのには有効であるが、一方では、ブレーキ及びテイクオフ・クラッチ能の許容できないほどの低下を同時にもたらすことがあり、クラッチを係合したり、および/または装置を停止に至らせるのがより困難になる。従って、好適な摩擦緩和添加剤は摩擦を低減させることになるが、できる限り大きくというよりもむしろ単に一定の程度まで低減すべきである。得られる摩擦レベルは、ブレーキ/クラッチ能を維持しながら同時にブレーキチャターを最小にするような妥協したレベルであることが好ましい。従って、好適なトラクタ液又はトラクタ作動液は、湿式ブレーキチャター試験にも湿式ブレーキ能試験にも合格する必要がある。第二に、ブレーキディスク以外にもトラクタの多くの部分が同じ液にさらされるから、好適なトラクタ液又はトラクタ作動液は、これら非ブレーキ部分も潤滑して熱を放散する力と手段を与えるものである。その結果、公知の多数の摩擦緩和剤は、非ブレーキ部分に適切な潤滑を与えたり、あるいは保護する能力が無いために、トラクタに使用することができない。例えば、ジオレイル水素亜リン酸エステルは、特に高温でギヤを使用したときに大きなギヤ摩耗を生じることが分っているから、その添加剤を含む液はトラクタには使用されない。さらに、トラクタに使用するのに適した機能液は、極圧性および水耐性やろ過性など他の一定の能力も供するものでなければならない。よって、トラクタ液又はトラクタ作動液として適格であるためには、ある種の機能液は湿式ブレーキチャター以外の試験および上記の能力試験にも合格しなければならない。そのような追加の試験としては、例えばスパイラル・ベベル試験およびストレート・スパー・ギヤ試験が挙げられ、いずれも極圧性の指標となるものである。
【0007】
変速機液は、別の目立った機能液の群を成している。自動変速機は、タービン駆動装置、トルク・コンバータ、および複雑な油圧制御装置により自動的に係合と離脱かみ合っては外れる一以上の摩擦ブレーキ又はクラッチから構成されている。手動変速機は、同様な一連の要素から構成されているが、一以上の摩擦ブレーキ又はクラッチは手動により係合し、また離脱する。代表的な、ただし簡便なクラッチ組立装置は他の鋼板と接触するようになる鋼平板を含み、前者の板は両側とも例えば樹脂含浸圧縮紙のような摩擦材料で覆われている。変速機のクラッチ組立装置とトラクタのディスクブレーキ・セットとの間には多くの類似点がある。例えば、丁度、ディスクブレーキがトラクタ作動油に完全に又は部分的に浸されるように、ここでもクラッチ組立装置全体が変速機液に完全に又は部分的に浸される。従って、対応するディスクブレーキのトラクタ作動油のように、変速機液も一般には多機能の液である。変速機液は、ギヤや軸受を潤滑し、熱を伝達し、そして油圧制御装置や補助変速機に液体を供給する。つまり、好適な変速機液は、クラッチ板が動力を伝達して、変速機を滑らかにシフトさせ、かつ一の速度から別の速度へのシフトの間ある特定の時間内で変速機を動かなくするほどの充分な摩擦、但し、軸受表面およびクラッチ板の摩耗や引きちぎりを引き起こすほど大きくはない摩擦を与える。
【0008】
組成物について変速機液としての適格性を評価するのに、幾つかのパラメータを当該分野の熟練者は使用している。それらのパラメータは別々でも、あるいは互いに組み合わせても使用することができる。それらパラメータのうちの一つは静的又は始動トルク(TS)であり、クラッチパックなどのかみ合い部分が荷重下で横すべりする傾向を相対的に測定するものである。TSは一般に、予め決めた一定のサイクルでの動的トルク評価の終了に基づいて決定される。摩擦安定性を改善しようとして従来の摩擦緩和剤を使用することによって、この始動TSが、低過ぎて、係合部分が荷重下で横すべりする傾向が許容できなくなるレベルまで減少することがある。この横すべりにより、変速機がその一部を成している乗物の駆動性および安全性が損なわれることになる。別のしばしば使用されるパラメータである「ロックアップ」は、クラッチパックが完全にかみ合って自動車内でスティックスリップやシャダーを引き起こすような比較的低い摺動クラッチ速度で作動しているときに、クラッチが間欠的に把持しては放す傾向を測定するものである。また別のパラメータとしては「慣らし期間」があり、時間をかけて摩擦性能の変化を測定するものである。慣らし期間を示さないか、もしくは非常に短い慣らし期間を持つ摩擦緩和添加剤を有することが望ましい。また、当該分野の熟練者はその他のパラメータも使用するが、そのうちの幾つかは上記三つのパラメータから誘導され、変速機液の摩擦特性を評価するものである。
【0009】
機能液のまた別の例としては、例えば油圧作動油が挙げられるが、同様の一連の多面的考察が必要である。油圧作動油の一種がトラクタ作動油であり、これについてはトラクタに使用するのに適した他の種々の機能液と共に前述している。例えば酸化防止剤や腐食防止剤、消泡剤、耐摩耗性添加剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄剤及び分散剤、シール膨潤剤のような通常の潤滑油添加剤はさておき、摩擦緩和添加剤は一般に、油圧系統の滑らかで固着しない及び/又は横すべりしない作動を促すためにこれらの液体に用いられる。実際に、油圧作動油は一般に適正に機能する摩擦緩和添加剤を含有することを必要としている。重荷重の境界面間の相対運動がゆっくりであるとき、摩擦緩和添加剤の必要性が特に激しくなる。これは、二つの接触面間の相対速度が減じるにつれて、潤滑膜の厚みも減少し、その結果、二面の物理的接触が増大して摩擦が大きくなり、摩耗が大となるからである。また、例えば数値的に制御された工作機械におけるような、継手過程に厳しい精度要求条件があるとき、あるいは継手面が異なる材料でできているときにも、一般に摩擦緩和添加剤が使用される。さらに、充分な速度が達成されて継手面を分離する連続流体潤滑膜が確立されるまでは、表面のざらつきを互いに高くしておかなければならないから、油圧系統では通常初期摩擦が大きい。よって、好適な油圧作動油は、油圧構成部分を潤滑にするだけではなく、様々な速度、荷重および材料の組合せの下で不均一な作動を防ぐように、継手面間で最適なレベルの摩擦を実現して、これを維持する。
【0010】
従って、好適な機能液は、相対的に可動な部分の正確な係合と離脱に対しては低過ぎず、かつ許容できないレベルの摩耗及び引きちぎりが生じるほど高過ぎないレベルの摩擦を与えるものである。本発明は、そのような摩擦緩和添加剤を提供するものであり、本発明の添加剤は各種の機能液に摩擦特性の改善をもたらす。
【0011】
代表的な摩擦緩和添加剤は、極性末端基と非極性線状炭化水素鎖とを含む長鎖分子であると言える。極性末端基は、金属面に物理的に吸着し、化学的に金属面と反応するか、あるいは金属面に付着するかの何れかであるが、一方、炭化水素鎖は機能液中に延びる。多数の摩擦緩和分子からの鎖はそののち互いに、また液中の他の成分とも連結して、金属面に薄膜を形成する。
【0012】
当該分野の熟練者は、従来の潤滑油に使用するのに適した多くの摩擦緩和剤が、往々にして、機能液に使用するのに適さないことに気付いている、というのは、後者の液体には更に過酷な機能及び混合性要求条件があるからである。上述したように、機能液に使用するためには、摩擦緩和添加剤は摩擦を低減できなければならないが、ただし滑らかで正確な作動を犠牲にすることなく、摩耗が最少となるような一定の程度までである。さらに、従来の摩擦緩和剤によっては、機能液に必然的に又は任意に含まれる他の添加剤と、可動金属部分の表面の占有を実際に競合しながら、これら他の添加剤と化学的又は物理的に相互作用することが分っている。
【0013】
当該分野では、各種の機能液に使用するのに適した新規な摩擦緩和添加剤を開発しようとする努力が続けられている。その内の少なからずの添加剤については確認がなされており、そのうちの幾つかを以下に記載する。それにもかかわらず、代替物及び/又は改良物に対する多大な要求が依然として存在する。
【0014】
機能液に使用するのに適していると確認されている摩擦緩和剤の多くは、アミン類、アミド類または他の窒素含有化合物であり、それらは数ある中でも液の窒素分を高めるため、適用範囲が制限される。例えば特許文献1には、(1)オキシアルキル化脂肪族第三級アミン、1−ヒドロキシアルキル−2−アルキルイミダゾリン(例えば1−ヒドロキシエチル−2−ヘプタセシル−2−イミダゾリン)およびそれらの混合物からなる群より選ばれる摩擦緩和剤、および(2)油溶性のアルキレンポリアミンのポリアルケニル置換コハク酸イミドを含有する自動変速機液が開示されている。特許文献2には、主要量の潤滑粘度の油、および有効量の下記の成分の各々を含む別の自動変速機液が開示されている:(1)アルケニルコハク酸イミド、(2)二炭化水素ジチオリン酸の二族金属塩、(3)(a)二価及び他の多価アルコールの脂肪酸エステルおよびそれらの油溶性オキシアルキル化誘導体、(b)低分子量アミノ酸の脂肪酸アミド、(c)N−脂肪アルキル−N,N−ジエタノールアミン、(d)N−脂肪アルキル−N,N−ジ−(エトキシエタノール)アミン、(e)N−脂肪アルキル−N,N−ジ−ポリ−(エトキシ)エタノールアミン、および(f)それらの混合物からなる群より選ばれる摩擦緩和化合物、および(4)塩基性硫化アルカリ土類金属アルキルフェネート。この組成物は、特に客車の自動変速機で使用するのに適していることが示されている。更に最近になって特許文献3には、摩擦緩和量の油溶性脂肪酸アミドと多価アルコールから誘導された脂肪酸エステルとを含むトラクタ液が開示されている。このトラクタ液は良好なチャター防止特性を示すと記載されている。
【0015】
また、当該分野では機能液の摩擦緩和剤として、脂肪炭化水素スルホネートの数種の金属塩の使用も教示されている。例えば特許文献4には、摩擦緩和量の過塩基性金属炭化水素スルホネートと脂肪酸との反応生成物を含む、湿式クラッチ系統に使用するのに適した油圧作動液が記載されている。最近になって特許文献5には、機能液にポリアルケニルスルホネートを使用することによりブレーキ及びクラッチ能の改善がもたらされ、ポリアルケニルスルホネートは、アルキルビニリデンと1,1−ジアルキル異性体を約20モル%より多く含むポリアルケン混合物から誘導された、ポリアルケンスルホン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩であることが開示されている。
【0016】
時には、芳香族炭化水素スルホネート塩が摩擦を緩和するためにある種の機能液に使用されている。例えば特許文献6には、(1)芳香族ヒドロスルホン酸の金属塩でも非芳香族ヒドロスルホン酸の金属塩でもよい、炭化水素スルホン酸の金属塩と、(2)ジアルキルジチオリン酸の亜鉛塩と、(3)塩素化パラフィンろうとの三成分混合物である摩擦緩和剤を含む農業用トラクタ変速機用の液が教示されている。さらに、特許文献7には、主要量の鉱油系潤滑油、および(1)芳香族スルホネートでも非芳香族スルホネートでもよい、過塩基性アルカリ土類金属石油スルホネートと、(2)下記(I)式を有するポリアリールポリアミンと、(3)炭素原子数12〜18の不飽和脂肪酸の亜鉛塩との別の三成分混合物である少量の摩擦緩和剤から基本的に構成される伝動装置液が開示されている。
【0017】
【化1】

【0018】
式中、Xは、酸素、硫黄またはメチレン基であり、そしてRは、C1〜C8アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、ヘキシル、オクチル基である。この特許文献によれば、液の摩擦特性に効果を及ぼすためには三成分全部が含まれなければならない、というのは、「これらの物質はいずれも単独では減摩性を有しないが、組み合わせると優れた減摩剤となる」からである、第1欄、第60〜62行。
【0019】
一方で、アルキルアリールスルホネートなどの芳香族炭化水素スルホネートは、清浄剤または分散剤として機能液に広く適用されている。例えば特許文献8には、潤滑粘度の油および有効量の次の成分の各々を含む機能液が開示されている:(1)炭化水素スルホン酸の二族金属塩、(2)炭化水素スルホン酸の過塩基性二族金属塩、(3)二炭化水素ジチオリン酸の二族金属塩、(4)リン酸トリクレジル、および(5)オレフィンと脂肪酸エステルの硫化混合物。中性スルホネート塩は水耐性、清浄性および分散性の改善をもたらすが、一方過塩基性スルホネート塩は熱安定性、酸化防止性およびさび止め性を改善することが記されている。同様に特許文献9には、主要量の潤滑粘度の油および有効量の次の成分の各々を含む、特に自動変速機液として使用するのに適した機能液が開示されている:(1)アルキニルコハク酸イミド、(2)二炭化水素ジチオリン酸の二族金属塩、(3)二価又は多価アルコールのヒドロキシル脂肪酸エステル又はその油溶性アルコキシル化誘導体、および(4)「機能液を含む系の高温作動中に形成される不純物の堆積を防止するために」、「清浄分散剤として作用する」(第7欄第66行〜第8欄第2行)炭化水素スルホン酸の二族金属塩。また別の例として特許文献10には、清浄剤として炭化水素スルホン酸の過塩基性アルカリ又はアルカリ土類金属塩、アルキルフェネートまたは硫化アルキルフェノールを含む、長期間にわたって静摩擦挙動が改善された機能液が開示されている。その特定の機能液組成物には、炭素原子数約6〜30のアルキル又はアルケニルC4〜C10ジカルボン酸か、または長鎖無水ジカルボン酸とアルデヒド/トリス−ヒドロキシメチルアミノメタン付加物との反応生成物の何れかである摩擦緩和剤も含まれている。
【0020】
また、過塩基性アルキルアリールスルホネートは、混合性、溶解度、泡立ち性、低着色、および最小表皮形成の改善をもたらすことも、例えば特許文献11に報告されている。50乃至85%の線状モノアルキルフェニルスルホネートと、15乃至50%の重質アルキルアリールスルホネートとからなるアルカリ土類金属のアルキルフェニルスルホネート混合物は、良好な溶解度、室温安定性(すなわち、表皮形成無し)を示すか、そうでなければ良好な清浄分散性能を示すと特許文献12に報告されている。この特許文献の重質アルキルアリールスルホネートとしては、次の二種類が挙げられる:(1)2個のアルキル基が両方とも線状であるジアルキルアリールスルホネート、および(2)アルキル置換基が一定の長さを持つ分枝鎖であるモノ又はポリアルキルアリールスルホネート。アルカリ土類金属アルキルフェニルスルホネートの微変性混合物は、清浄剤及び/又は分散剤としての特性が改善されることが特許文献13に記載されている。その変性混合物は、20乃至70%の線状モノアルキルフェニルスルホネートと、30乃至80%の分枝鎖モノアルキルフェニルスルホネートとから構成されている。
【0021】
アルキルアリールスルホネートは、時には耐荷重能向上剤として使用できることも見い出されている。例えば特許文献6には、特に後駆動機やトラクタ変速機に使用するのに適した高荷重ギヤ油が開示されている。高荷重配合物は、次の三成分の組合せが耐荷重能の相乗作用的改善を及ぼすという予測し得ない発見に従って開発されている:(1)分子量が約400乃至約900の炭化水素スルホン酸のアルカリ土類金属塩、(2)ジアルキルジチオリン酸の金属塩、および(3)塩素化炭化水素。
【0022】
【特許文献1】米国特許第3634256号明細書
【特許文献2】米国特許第3933659号明細書
【特許文献3】米国特許第6803350号明細書
【特許文献4】米国特許第3410801号明細書
【特許文献5】米国特許第7012045号明細書
【特許文献6】米国特許第3451930号明細書
【特許文献7】米国特許第3259583号明細書
【特許文献8】米国特許第3899432号明細書
【特許文献9】米国特許第3920562号明細書
【特許文献10】米国特許第4253977号明細書
【特許文献11】米国特許第6479440号明細書
【特許文献12】米国特許第6054419号明細書
【特許文献13】関連欧州特許出願第98401968.7号明細書
【非特許文献1】ラドニック(Rudnick)編集、「潤滑油添加剤、化学と用途(Lubricant Additives, Chemistry & Applications」、マーセル・デッカー社(Marcel Decker Inc.)、ニューヨーク、2003年、p.204
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
我々は、ある種のアルキルトルエンスルホネート塩が望ましい摩擦特性を有し、機能液中で摩擦緩和添加剤の機能を果たすことができることを見い出した。本発明のアルキルトルエンスルホネート塩又はこれら塩の混合物は、特定の機能液において唯一の摩擦緩和添加剤であるとも、そうでないとも言える。例えば、本発明のアルキルトルエンスルホネート塩又はその塩の混合物は、ある種の機能液では単一の摩擦緩和添加剤として使用することもできるし、あるいはその特定の液に所望レベルの摩擦を与えるために、他の一種以上の混合しうる摩擦緩和剤と共に使用することもできる。本発明は、そのようなアルキルトルエンスルホネート、並びにこれらスルホネートを含む機能液組成物を提供するものである。さらに、本発明は、これら機能液の製造方法、およびこれら機能液を使用してある種の機械の相対的に可動な部分及び継手部分間の摩擦レベルに影響を与える方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、機能液、特にはトラクタ液、トラクタ作動液、変速機液および油圧作動液等に使用するのに適した新規な改良された摩擦緩和添加剤の部類に関する。つまり、本発明の摩擦緩和添加剤はアルキルトルエンスルホネート塩を含んでいる。本発明のある態様ではアルキルトルエンスルホネート塩は、まずトルエンを異性化オレフィンでアルキル化した後、アルキル化トルエンをスルホン化し、続いて金属源を導入することにより製造される。本発明のアルキルトルエンスルホネート塩及びそれらの混合物は、摩擦特性の改善を機能液にもたらす。さらに、本発明のアルキルトルエンスルホネート塩の摩擦緩和能は、塩化物イオンが存在しても実質的に低下することがなく、塩化物イオンは時折、例えば製造過程で使用されるある種の粘度調整剤により機能液に混入することがある。すなわち、本発明の機能液は塩化物イオンの存在下でも使用することができる。
【0025】
本発明の第一の態様は、機能液に使用するのに適した摩擦緩和添加剤に関する。この態様の摩擦緩和添加剤はアルキルトルエンスルホネート塩を含んでいる。
【0026】
本発明の第二の態様は、第一の態様の摩擦緩和添加剤を含む摩擦特性の改善された機能液組成物に関する。この態様の機能液は、特にトラクタ液、トラクタ作動液、変速機液または油圧作動液に使用するのに適しているが、相対的に可動な部分及び継手部分を含むその他の機械にも使用することができる。
【0027】
本発明の第三の態様は、第一の態様の摩擦緩和添加剤を含む第二の態様の機能液であって、その摩擦緩和能が塩化物イオンの存在下でも実質的に低下することがない機能液に関する。
【0028】
本発明の第四の態様は、その摩擦緩和能が塩化物イオンの存在下でも実質的に低下することがない、第一の態様の摩擦緩和添加剤に関する。
【0029】
本発明は第五の態様では、第二及び第三の態様の機能液を製造する方法を提供する。
【0030】
第六の態様では本発明は、第二及び第三の態様の機能液を適用することにより、相対的に可動な部分及び継手部分を含む機械に最適レベルの摩擦を与え、維持する方法にも関する。
【0031】
当該分野の熟練者であれば、以下の記述を参照することで本発明のその他の更なる目的、利点および特徴を理解できよう。
【発明の効果】
【0032】
本発明のアルキルトルエンスルホネート塩及びそれらの混合物は、摩擦特性の改善を機能液にもたらす。さらに、本発明のアルキルトルエンスルホネート塩の摩擦緩和能は、塩化物イオンが存在しても実質的に低下することがない。なお、塩化物イオンは時折、例えば製造過程で使用されるある種の粘度調整剤により機能液に混入することがある。従って、本発明の機能液は塩化物イオンの存在下でも使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、様々な好ましい特徴および態様を限定しない説明として記載する。
【0034】
本発明は、摩擦緩和添加剤として一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩を含む機能液組成物に関する。つまり、本発明のアルキルトルエンスルホネート塩は、油溶性のアルキルトルエンスルホン酸の塩である。本発明のアルキルトルエンスルホネート塩は、如何なる種類の金属塩であってもよく、アルカリ土類金属塩およびアルカリ金属塩等が挙げられる。典型的な本発明のアルキルトルエンスルホネート塩の群はカルシウム塩である。また、中性塩も用いることができるが、本発明の塩はしばしば過塩基性塩である。さらに、本発明の塩は二酸化炭素で過塩基化することができる。本発明の一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩は、トルエンと線状オレフィンとのアルキル化生成物であるアルキルトルエンアルキレートから誘導することができる。当該分野の熟練者であれば分かるように本発明の目的では、「線状オレフィン」は非環状オレフィンを意味する。従って、トルエンをアルキル化するのに使用される線状オレフィンは分枝していても分枝していなくてもよい。さらに、トルエンをアルキル化するのに使用される線状オレフィンは単一のオレフィンであっても、あるいは炭素原子数が異なるオレフィンの混合物であってもよい。単一オレフィンおよび/または混合物のオレフィンはC18〜C30の線状オレフィンから選ぶことが好ましい。だが、鎖の長さに関係なく、あるいはアルキル化剤が単一のオレフィンであるか混合物であるかに関係なく、典型的な態様ではこれらオレフィンはアルキル化工程に先立って異性化される。
【0035】
特に断らない限り、パーセントは全て質量パーセント(%)である。
【0036】
[摩擦緩和添加剤]
本発明の摩擦緩和添加剤は、アルキルトルエンスルホネート塩を含有している。これらの塩は、以下に記載する方法によりアルキルトルエン前駆体から製造することができる。
【0037】
1)アルキルトルエン前駆体
本発明のアルキルトルエン前駆体は本来、トルエンをオレフィンでアルキル化する従来のフリーデル・クラフツ反応により得ることができる。本発明のアルキルトルエン前駆体は、炭素原子約3〜約50個の長さであるアルキル鎖を含むことができる。別の本発明のアルキルトルエン前駆体は、炭素原子約10〜約40個の長さであるアルキル鎖を含むことができる。また別の本発明のアルキルトルエン前駆体は、炭素原子約18〜約30個の長さであるアルキル鎖を含むことができる。トルエン環は、アルキル鎖の1位を除いてアルキル鎖の任意の位置に結合させることができる。当該分野の熟練者であれば分かるように、アルキル鎖の「1位」は鎖の末端の炭素位置を意味する。一方、アルキル鎖は、トルエンのメチル基が結合している位置を除いて任意の炭素位置でトルエン環に結合させることができる。
【0038】
トルエンをアルキル化するのに用いられるオレフィンは、単一のオレフィンであっても、種々のオレフィンの混合物であってもよいが、一般には後者が好ましいアルキル化剤である。トルエンをアルキル化するのに単一のオレフィンと混合物の何れかが用いられるかに関係なく、オレフィンを異性化することが好ましい。アルキル化工程の前でも、アルキル化工程の実施時でも、また後であっても、オレフィンを異性化することができるが、好ましくは、アルキル化工程の前に異性化する。アルキル化剤においてオレフィンの少なくとも約0.5%、より好ましくは約1%乃至約50%、特に好ましくは約1.5%乃至約35%はアルファオレフィンである。典型的な本発明の摩擦緩和添加剤では、アルファオレフィン含量は約10%である。別の典型的な本発明の摩擦緩和剤では、アルファオレフィン含量は約16%である。一方、アルキル化混合物のオレフィンは分枝していても分枝していなくてもよいが、全部が分枝してなくはないことが好ましい。好ましくは、オレフィンの約5%乃至約80%が分枝し、より好ましくはオレフィンの約10%乃至約60%が分枝し、そして特にはオレフィンの約14%乃至約31%が分枝している。典型的な本発明の摩擦緩和添加剤では、混合オレフィンアルキル化剤のオレフィンの約14%が分枝している。別の典型的な本発明の摩擦緩和添加剤では、混合オレフィンアルキル化剤のオレフィンの約25%が分枝している。また別の典型的な本発明の摩擦緩和添加剤では、混合オレフィンアルキル化剤のオレフィンの約30%が分枝している。
【0039】
オレフィンの異性化方法は既に知られている。当該分野の熟練者は一般に、この目的では少なくとも二種類の酸性触媒のうちの一方を使用している。酸性触媒は固体でも液体でもよい。公知の多数の固体酸性触媒が適しており、少なくとも一種類の金属酸化物を有する固体触媒が好ましい。金属酸化物は次の物質から選ばれるものであってよい:天然ゼオライト類、合成ゼオライト類、合成分子ふるい、およびクレー。固体酸性触媒は、酸性クレー又は酸性分子ふるい又は平均孔径が少なくとも6.0オングストロームのゼオライトの酸性型を含んでいることが好ましい。例えばモンモリロナイト、ラポナイトおよびサポナイトを含む有用な酸性クレーは、天然産出物質または合成物質から誘導することができる。柱状クレーもアルキル化触媒の機能を果たすことができる。一次元の細孔系を持ち平均孔径が5.5オングストローム未満の別の分子ふるいも、酸性触媒の機能を果たすことができる。例としては、SM−3、MAPO−11、SAPO−11、SSZ−32、ZSM−23、MAPO−39、SAPO−39、ZSM−22、SSZ−20、ZSM−35、SUZ−4、NU−23、NU−86、および天然及び合成フェリエライトを挙げることができる。これらの触媒については、例えばローザマリー・スゾスタク(Rosamarie Szostak)著、「分子ふるい辞典(Handbook of Molecular Sieves)」(ヴァン・ノースランド・ラインホルト(Van Norsrand Reinhold)、ニューヨーク、1992年)、および米国特許第5282858号明細書に記載されていて、それらも参照内容として本明細書の記載とする。
【0040】
異性化工程は、例えば約50℃乃至約280℃の範囲の温度で実施することができる。オレフィンが高沸点の傾向にあるから、この工程は液相で、バッチ式または連続式で実施することが好ましい。バッチ式では、所望の反応温度に加熱することができる、撹拌したオートクレーブ又はガラスフラスコが一般に用いられる。一方、連続法は固定床法で最も効率良く実施される。固定床法では空間速度は、反応体と触媒床間の接触の速度を測るものであるが、約0.1WHSV乃至約10WHSV以上(触媒質量当り時間当りの反応体供給物質量)の範囲であってよい。触媒を反応器に充填して、反応器を所望の反応温度に加熱することができる。オレフィンが触媒床にさらされる前にオレフィンを加熱することもできる。しばしば触媒床に沿って約10℃乃至約15℃の発熱が観察される。次いで、一部分枝した異性化オレフィンを含む反応器流出液を捕集する。バッチ式でも連続式でも、得られた一部分枝した異性化オレフィン混合物は一般に、一定のオレフィン分布(アルファオレフィン、ベータオレフィン、内部オレフィン、三置換オレフィンおよびビニリデンオレフィン)と分枝含量を含んでいて、非異性化オレフィンと区別することができる。
【0041】
当該分野の熟練者であれば、特定レベルの異性化を達成できる異性化条件を選択することができる。つまり、異性化のレベルは一般に、特定のオレフィン試料又は混合物中のアルファオレフィンの量と分枝のレベルにより特徴づけられる。アルファオレフィン量と分枝レベルは順次、例えばフーリエ変換赤外(FTIR)分光法を含む種々の従来法を使用して決定することができる。代表的なFTIR分光法では、アルファオレフィンのレベル(又はパーセント)は、特定試料の910cm-1の吸光度を検出し、それをアルファオレフィンレベルが既知の検定試料の910cm-1吸光度と比較することにより測定することができる。検定試料のアルファオレフィンのレベル(パーセント)は、例えば13C定量核磁気共鳴(NMR)分光法により公知の手順に従って得ることができる。
【0042】
分枝のパーセントも、FTIR分光法により試料の1378cm-1の吸光度を検出することで測定することができる。この吸光度はメチル基の変角振動の大きさに相当する。次いで、異性化オレフィン試料の吸光度を、分枝レベルが既知の検定試料セットの1378cm-1吸光度と比較する。一般には、試験対象の特定の混合オレフィンをまず水素化して非分枝部分をn−アルカンに、分枝部分を分枝アルカンに変換する。次に、ガスクロマトグラフィを使用して非分枝n−アルカンと分枝アルカンを区別し、その割合をその混合オレフィンの分枝レベルパーセントに相関させる。
【0043】
特定のオレフィン混合物で所望のレベルの異性化を達成するためには、当該分野の熟練者は、異性化レベルの異なる既知のオレフィンを混ぜ合わせる。例えば熟練者は、15%のアルファオレフィンを含む45%分枝混合オレフィンA8部を、5%のアルファオレフィンを含む25%分枝混合オレフィンB2部と混合して、41%分枝で13%のアルファオレフィンを含む混合物ABを達成することができる。
【0044】
上述したように、本発明でトルエンをアルキル化するのに用いられるオレフィンは、アルファオレフィンを少なくとも約0.5%、より好ましくは約1%乃至約50%、特に好ましくは約1.5%乃至約35%含む。これに関して好適なオレフィンは、約5%乃至約80%が分枝していてもよく、より好ましくは約10%乃至約60%が分枝し、そして特に好ましくは約14%乃至約31%が分枝していてもよい。
【0045】
本発明のアルキル化工程は、異性化工程の前でも、同時でも、あるいは後でも行うことができる。だが、アルキル化工程の前に異性化工程を行うことが好ましく、それによりトルエンをアルキル化するのに用いられるオレフィンは異性化オレフィンを含んでいる。
【0046】
アルキルトルエン前駆体を調製するのに、公知の各種のアルキル化法を使用することができる。例えば、代表的なアルキル化反応はフッ化水素触媒の存在下で起こるが、本発明の目的に充分に役立つことができる。異性化及び二量化速度に対してアルキル化速度を増加させるためには単一反応器では、例えば約10という高いトルエン対オレフィン充填/モル比が用いられ、高レベルのモノアルキルトルエンを含む反応生成物が生成する。その他の種々の方法もアルキル化を遂行するのに使用することができるが、殆ど常に一段反応器が反応が起こる好ましい容器として用いられる。
【0047】
アルキル化工程は一般に、約20℃乃至約250℃の範囲の温度で生じる。前述した異性化工程と同様にアルキル化工程も、これらの温度で液体オレフィンの反応を進めるために液相で実施することが好ましい。アルキル化工程はバッチ式でも連続式でも活性化させることができ、前者のバッチ式は加熱及び撹拌したオートクレーブ又はガラスフラスコで行い、後者の連続式は固定床法で行う。
【0048】
固定床法では、触媒を所望の反応温度、例えば約100℃乃至約200℃に加熱する。圧力が反応温度でトルエンの泡立ち点圧力より高くなるように、背圧弁により圧力を上げる。系を所望の圧力まで加圧した後、温度を所望の反応温度まで上げる。あるいは、トルエンを反応温度にある反応器に導入してもよい。次に、オレフィン流をトルエン流に導入し、その後で混合物が触媒床と接触するようにする。アルキル化反応を行う方式に関係なく、反応器流出液は一般にアルキルトルエンを過剰のトルエンが混じった状態で含んでいる。過剰のトルエンは、蒸留、減圧下でのストリッピング蒸発、または当該分野の熟練者に知られた他の手段により取り除くことができる。
【0049】
2)アルキルトルエンスルホネート塩
本発明のアルキルトルエンスルホネート塩は、下記一般式で表される。
【0050】
【化2】

【0051】
式中、R1は金属スルホネート基であり、そしてR2はアルキル基である。なお、本発明のアルキルトルエンスルホネート塩は油溶性である。
【0052】
これらの塩は、アルキルトルエンスルホン酸から誘導され、アルキルトルエンスルホン酸はアルキルトルエン前駆体をスルホン化することにより製造することができる。つまり、上記のアルキルトルエン前駆体を従来法で、例えばSO3/空気薄膜スルホン化法を使用してスルホン化することができる。その方法を用いる場合には、アルキルトルエン前駆体を、ケミソン(CHEMITHON)社またはバレストラ(BALLESTRA)社で作られたSO3/空気流下薄膜と混合する。
【0053】
本発明のスルホネート塩は、当該分野の熟練者に知られた方法により製造することができる。例えば、アルキルトルエンスルホン酸を好適な金属の原料と反応させることにより得ることができる。典型的な方法は、水酸化物など反応性金属塩基をアルキルトルエンスルホン酸と結合させることからなる。これは従来より、ヒドロキシル促進剤、例えば水、2−エチルヘキサノール、メタノールまたはエチレングリコールなどのアルコールの存在下で、一般には得られたスルホネート塩が溶解できる不活性溶媒中で行う。反応混合物を一般には加熱する。反応性金属塩基を金属スルホネートに変換した後、反応促進剤と溶媒は蒸留や他の従来法により取り除くことができる。
【0054】
本発明のアルキルトルエンスルホネート塩を生成させる金属は、アルキルトルエンスルホン酸と塩を形成することができる公知の任意の金属であってよい。本発明の特定の態様では、金属はアルカリ金属またはアルカリ土類金属である。「アルカリ土類金属」は、カルシウム、バリウム、マグネシウムおよびストロンチウムを意味する。「アルカリ金属」は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムを意味する。本発明の更なる態様では金属はアルカリ土類金属である。本発明の更に特定の態様では金属はカルシウムである。
【0055】
本発明のアルキルトルエンスルホネート塩は、中性塩であってもあるいは過塩基性塩であってもよい。過塩基性物質の特徴は、過塩基性と言われるスルホネートにおける、金属カチオンの化学量論に従って存在する量よりも過剰となる金属含量にある。「塩基価」又は「BN」は、試料1グラムにおけるKOHのミリグラムと同等の塩基の量を意味する。従って、BNが高いほど、生成物のアルカリ性が強いこと、よって保有するアルカリ度が大きいことを反映している。試料のBNは、例えばASTM D2896試験または他の同等な方法を含む各種の方法により決定することができる。「全塩基価」又は「TBN」は、機能液1グラムにおけるKOHのミリグラムと同等の塩基の量を意味する。これらの用語はしばしば、「塩基価」又は「BN」のそれぞれと同義で使用されている。「低過塩基性」は、BN又はTBNが約2乃至約60を意味する。「高過塩基性」は、BN又はTBNが約60又はそれ以上を意味する。
【0056】
本発明のアルキルトルエンスルホネート塩は、中性塩であっても過塩基性塩であってもよい。従って、そのTBNは約0乃至約400であってよい。本発明のアルキルトルエンスルホネート塩は、過塩基性でTBNが約2乃至約400であることが好ましく、そして好ましくは高過塩基性でTBNが約60から約400の間にあり、より好ましくは約220から約380の間、特に好ましくは約280から約350の間にある。典型的な本発明のアルキルトルエンスルホネート塩は高過塩基性でTBNが約320である。
【0057】
過塩基化の方法及び反応条件は、例えば米国特許第3496105号明細書に総括して開示されているように、当該分野では知られていて、その内容も本開示物及び特許請求の範囲と矛盾しない限り、参照内容として本明細書の記載とする。本発明では、過塩基化は二酸化炭素を用いて実施することができる。二酸化炭素処理は、金属塩基のコロイド分散液を生成させることになると思われている。一般に本発明の過塩基性塩はメタノールとキシレンを存在させて、塩素を存在させないで生成させる。
【0058】
本発明のアルキルトルエンスルホネート塩は、機能液に添加剤として、液体に所望の摩擦特性を与え、かつそれら液体を内包する機械のブレーキ及びクラッチ能を改善するのに充分な量で使用する。一般に、単一のアルキルトルエンスルホネート塩又はそれら塩の混合物は、少なくとも約0.15質量%で本発明の調合済み機能液に使用される。本発明の様々な態様では調合済み機能液中のスルホネートの量は、約0.15質量%乃至約4.0質量%、または約0.5質量%乃至約3.5質量%、または約1.5質量%乃至約2.5質量%の範囲にあってよい。典型的な本発明の調合済み機能液は、一定のアルキルトルエンスルホネート塩混合物を約1.8質量%含んでいる。
【0059】
[機能液]
本発明の機能液は一種以上の基油を含有していて、基油は主要量(すなわち、約50質量%より多い量)で存在する。一般に基油又は基油混合物は、機能液の全質量に基づき約60質量%より多い量、または約70質量%より多い量、または約80質量%より多い量で存在する。典型的な本発明の機能液は基油混合物を約88質量%含有している。
【0060】
基油は、鉱油からでも合成油からでもまたは植物油からでも誘導することができる。粘度が約40℃で少なくとも約2.5cStで、流動点が約20℃又はそれ以下、好ましくは約0℃又はそれ以下である基油が望ましい。基油は天然原料からでも合成原料からでも誘導することができる。好適な基油は、米国石油協会公報1509に規定されたI種乃至V種基材油のうちの何れかまたは任意の組合せから選ぶことができ、その内容も参照内容として本明細書の記載とする。また、好適な基油としては、各種の新たに開発された基材油、例えば非公式にI/+種、II/+種又はIII/+種と称されているもの、並びに最近当該分野の熟練者に使用されている他の基材油も挙げることができる。これら新たに開発された基材油の総括的な記述は様々な所で、例えばシェブロン製品/基油ウェブサイト(www.chevron.com/products/prodserv/BaseOils/gf4_faq.shtml)で見ることができる。
【0061】
天然基油としては、例えば鉱油および植物油が挙げられる。本発明の基油として使用するのに適した鉱油としては例えば、通常潤滑油組成物に使用されるパラフィン系、ナフテン系及びその他の油が挙げられる。好適な植物油としては、例えばカノーラ油または大豆油が挙げられる。
【0062】
適正な粘度の合成油としては、例えば炭化水素合成油、合成エステルおよびそれらの混合物が挙げられる。炭化水素合成油としては例えば、エチレン、高級オレフィンの重合により合成された油、その例としてはポリアルファオレフィン又はPAOが挙げられ、あるいはフィッシャー・トロプシュ法におけるように一酸化炭素ガスと水素ガスを用いる炭化水素合成法により合成された油を挙げることができる。使用できる合成炭化水素油としては、適正な粘度を有するアルファオレフィンの液体重合体が挙げられる。特に有用なものはC6〜C12アルファオレフィンの水素化液体オリゴマー、例えば1−デセン三量体である。同様に、適正な粘度のアルキルベンゼン、例えばジドデシルベンゼンも使用することができる。使用できる合成エステルとしては、モノカルボン酸及びポリカルボン酸とモノヒドロキシアルカノール及びポリオールとのエステルが挙げられる。代表的な例としては、ジドデシルアジペート、ペンタエリトリトールテトラカプロエート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、およびジラウリルセバケート等がある。モノ及びジカルボン酸とモノ及びジヒドロキシアルカノールとの混合物から合成された複合エステルも使用することができる。鉱油と合成油のブレンドも同様に使用可能である。
【0063】
典型的な本発明の機能液は、二種類のI種基油、エクソンモービル(EXXON MOBIL)社のAP/E CORE(商標)150Nと、エクソンモービル社のAP/E CORE(商標)600Nとの混合物を用いている。
【0064】
本発明の機能液は、一種以上の上述したアルキルトルエンスルホネート塩を摩擦緩和をすることが可能な量で含有している。一般には一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩が少なくとも約0.15質量%、本発明の機能液には含まれている。機能液中のアルキルトルエンスルホネート塩の濃度は、好ましくは約0.15質量%乃至約4.0質量%の範囲にあり、より好ましくは約0.5質量%乃至約3.5質量%、特に好ましくは約1.5質量%乃至約2.5質量%の範囲にある。典型的な本発明の機能液は、約1.8質量%のアルキルトルエンスルホネート塩混合物を含んでいる。
【0065】
本発明のアルキルトルエンスルホネート塩以外に、機能液は以下に記載する他の添加剤を含んでいてもよい。これら追加の成分は任意の順序でブレンドすることもできるし、また成分の組合せとしてブレンドすることもできる。次のような添加剤成分を、本発明の範囲を限定することなしに、好ましく用いることができる成分の例として記す。
【0066】
種々の分散剤が本発明の機能液には添加されていてもよい。分散剤、一般には無灰(無金属)種のものは、一般に潤滑剤や機能液に使用されて使用中に酸化により生じた不溶性物質を懸濁状態で維持し、それによりスラッジの凝集や沈殿または金属部分への堆積を防止する。無灰分散剤は一般に、分散対象の粒子と会合できる官能基を持つ油溶性の高分子炭化水素骨格を含んでいる。アミン類、アルコール類、アミド類、または重合体骨格に架橋基で結合してなるエステル極性部を含む、多種類の無灰分散剤が当該分野では知られている。本発明で用いることのできる無灰分散剤は例えば、長鎖炭化水素置換モノ及びジカルボン酸又はそれらの無水物の油溶性塩、エステル、アミノエステル、アミド、イミドおよびオキサゾリン、長鎖炭化水素のチオカルボキシレート誘導体、ポリアミンが直接結合した長鎖脂肪族炭化水素、および長鎖置換フェノールをホルムアルデヒドとポリアルキレンポリアミンで縮合することにより生成したマンニッヒ縮合物から選ぶことができる。好適な無灰分散剤の例としては「カルボン酸分散剤」が挙げられ、炭素原子を少なくとも34個、好ましくは少なくとも54個含むカルボン酸アシル化剤(酸、無水物、エステル等)と、窒素含有化合物(例えば、アミン)、有機ヒドロキシル化合物(例えば、一価及び多価アルコールを含む脂肪族化合物、またはフェノールおよびナフトールを含む芳香族化合物)、および/または塩基性無機物質との反応生成物である。コハク酸イミド分散剤は、カルボン酸分散剤の一種であり、炭化水素置換コハク酸アシル化剤を、有機ヒドロキシル化合物と、または少なくとも1個の水素原子が窒素原子に結合してなるアミンと、またはヒドロキシル化合物とアミンの混合物と反応させることにより製造することができる。好適な無灰分散剤の例としては例えばアミン分散剤も挙げられ、比較的高分子量の脂肪族ハロゲン化物とアミン、好ましくはポリアルキレンポリアミンとの反応生成物である。それらの例は、例えば米国特許第3275554号、第3438757号、第3454555号、第3565804号の各明細書等に記載されている。また、好適な分散剤の例としては例えば「マンニッヒ分散剤」も挙げられ、アルキル基が炭素原子を少なくとも30個含むアルキルフェノールと、アルデヒド(特には、ホルムアルデヒド)およびアミン(特には、ポリアルキレンポリアミン)との反応生成物である。これらの分散剤については、例えば米国特許第3036003号、第3586629号、第3591598号、第3980569号の各明細書等に記載されている。さらに、好適な無灰分散剤としては後処理分散剤も挙げられ、カルボン酸、アミンまたはマンニッヒ分散剤を、ジメルカプトチアゾール、尿素、チオ尿素、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換コハク酸無水物、ニトリルエポキシドおよびホウ素化合物等のような試薬と反応させることにより得ることができる。後処理分散剤は、例えば米国特許第3329658号、第3449250号、第3666730号の各明細書等に記載されている。また、好適な無灰分散剤としては高分子分散剤、例えば米国特許第3329658号、第3449250号、第3666730号の各明細書等に記載のものも挙げられる。上記特許文献の開示内容も、本明細書の開示内容及び特許請求の範囲と矛盾しない限り参照内容として全て本明細書の記載とする。
【0067】
金属含有清浄剤が本発明の機能液に添加されていてもよい。そのような清浄剤としては例えば、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルフェネート、合成及び天然供給原料から誘導されたスルホネート、カルボキシレート、サリチレート、フェノラート、多ヒドロキシアルキル又はアルケニル芳香族化合物の硫化又は未硫化金属塩、アルキル又はアルケニルヒドロキシ芳香族スルホネート、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルナフテネート、アルカノール酸の金属塩、アルキル又はアルケニル多酸の金属塩、およびそれらの化学的及び物理的混合物を挙げることができる。そのような金属含有清浄剤は過塩基性であっても中性であってもよい。過塩基性の金属含有清浄剤は高過塩基性であっても低過塩基性であってもよい。
【0068】
酸化防止剤は、鉱油がサービス中に劣化する傾向を低減するために、任意に機能液に添加される。そのような劣化はさもないと、金属表面へのスラッジ及びワニス状堆積物の堆積を招くことがある。また、酸化による劣化は、液の粘度の許容できない増加を招き、機能液を内包する機械の性能を損ない、および/または相対的に可動な部分及び継手部分に損傷を与えることもある。多数の酸化防止剤が当該分野では知られていて、その例としては、フェノール型(フェノール系)酸化防止剤、例えば4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、およびビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)を挙げることができる。また、酸化防止剤はジフェニルアミン型であってもよく、例えばアルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、およびアルキル化−α−ナフチルアミンが挙げられる。別の型の酸化防止剤としては、例えば金属ジチオカルバメート(例えば、亜鉛ジチオカルバメート)、およびメチレン−ビス(ジブチルジチオカルバメート)等が挙げられる。
【0069】
特に機能液が農業用トラクタなど重負荷機械に使用するためにブレンドされる場合には、一種以上の耐摩耗/極圧剤が本発明の機能液組成物に含まれていてもよい。その名称が意味するように、これら添加剤は可動金属部分の摩耗を低減する。そのような添加剤の例としては、リン酸エステル、カルバメート、エステル、硫黄含有化合物、モリブデン錯体、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(第一級アルキル、第二級アルキルおよびアリール型)、硫化油、硫化イソブチレン、硫化ポリブテン、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、フルオロアルキルポリシロキサン、およびナフテン酸鉛を挙げることができる。
【0070】
一種以上のさび止め添加剤が機能液に添加されてもよい。これら添加剤は一般に二つの広い分類に分かれる:非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤、およびその他の化合物。非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、およびポリエチレングリコールモノオレエートを挙げることができる。その他のさび止め化合物としては、例えばステアリン酸および他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステルを挙げることができる。
【0071】
特に機能液が水質汚染が広く行われているか、避けられないような環境で使用される場合に、そのような液に抗乳化剤を含有させることは珍しいことではない。代表的な抗乳化剤としては、例えばアルキルフェノールと酸化エチレンの付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステルを挙げることができる。
【0072】
摩擦緩和量のアルキルトルエンスルホネート塩に加えて、本発明の機能液は任意に一種以上の他の摩擦緩和剤を含んでいてもよい。これら他の摩擦緩和剤は、例えば脂肪アルコール、1,2−ジオール、ホウ酸化1,2−ジオール、脂肪酸、アミン、脂肪酸アミド、ホウ酸化エステル、および他のエステルから選ぶことができる。
【0073】
当該分野では知られているように、多くの添加剤が多機能性である。例えば、耐摩耗性に加えて分散性を与える特定の化合物を潤滑液に含有させることができる。好適な多機能添加剤としては、例えば硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンオルガノリンジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン・モリブデン錯化合物、および硫黄含有モリブデン錯化合物を挙げることができる。
【0074】
本発明の機能液は任意に、一種以上の粘度指数向上剤を含有していてもよい。その例としては、ポリメタクリレート型重合体、エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、水和スチレン・イソプレン共重合体、ポリイソブチレン、および分散型粘度指数向上剤を挙げることができる。
【0075】
また、用途によっては本発明の機能液は一種以上の流動点降下剤を含有していてもよく、その例としてはポリメチルメタクリレートが挙げられる。
【0076】
さらに、本発明の機能液は一種以上の消泡剤を含んでいてもよい。好適な消泡剤としては、例えばアルキルメタクリレート重合体、ジメチルシリコーン重合体、および類似の分子を挙げることができる。
【0077】
本発明の機能液組成物は公知の方法により配合される。配合は一般には添加剤製造工場又はブレンド施設で実施されるが、人の手で組成物を配合することもできる。
【0078】
粘度指数向上剤と流動点降下剤を除く全ての添加剤はしばしば、濃縮物または添加剤パッケージとしてブレンドされ、その後に基材油にブレンドされて調合済み機能液となる。そのような濃縮物の使用も従来からあり、よく知られている。濃縮物は、予め決めた量の基油と一緒にしたときに最終配合物で所望の濃度となるように、添加剤を適正な量で含むように配合される。
【0079】
[塩化物適合性]
時には一定量の塩化物イオンの存在下で、本発明の摩擦緩和添加剤および機能液を使用する必要が起こりうる。例えば、アルキルトルエンスルホネート塩の製造方法の過程で、粘度を調整するために一種以上の塩化物含有化合物を添加することがあるから、その方法自体が、本発明の摩擦緩和添加剤が使用される環境に塩化物イオンを持ち込む可能性がある。よって、塩化物イオンの存在下で使用できる摩擦緩和添加剤の部類があることは、塩化物イオンを除去しないでそのような摩擦緩和添加剤を使用できるので、望ましい。
【0080】
本発明のアルキルトルエンスルホネート塩および機能液の摩擦緩和能は、塩化物イオンが存在しても実質的に低下することはない。従って、これら機能液中の他の添加剤や基油も同様に塩化物の存在と適合できる。本発明のアルキルトルエンスルホネート塩および機能液の摩擦緩和能は、一般に塩化物イオンが最大で約10ppm、好ましくは最大で約20ppm、特に好ましくは最大で約50ppm存在しても実質的に低下することはない。典型的な態様では、塩化物イオン約50ppmの存在でも、本発明の明細書に従って製造した一定の機能液の摩擦緩和能が実質的に低下することはない。本発明の目的で「実質的に低下することはない」とは、摩擦緩和能の5%、10%、20%又は30%以下の減少を意味する。従って、塩化物が存在するときの一定のアルキルトルエンスルホネート塩/混合物または機能液の摩擦緩和能が、塩化物が存在しないときのその摩擦緩和能の少なくとも約70%、約80%、約90%又は約95%である場合には、塩化物イオンの存在下でもその摩擦緩和能が実質的に低下しないと言える。
【0081】
以下の実施例を参照することで本発明について更に理解が深まることであろうが、実施例は本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【実施例】
【0082】
以下の実施例は、本発明を限定することなく本発明を説明するために記載される。本発明について特定の態様を参照しながら記載するが、本出願は、添付した特許請求の範囲の真意及び範囲から逸脱することなく、当該分野の熟練者であれば成しうるような様々な変更および置換を包含することを意図している。
【0083】
[実施例1] 静始動摩擦値の改善
種々の調製済み機能液試料を製造した。それらの摩擦緩和能について、一連の湿式ブレーキ又は湿式クラッチが作動しうる条件をシミュレートするように設計された静始動摩擦台上試験にて測定した。試験を実施した装置はブレーキディスクを含むが、ブレーキディスクを、下記第3表に列挙する機能液試料1−10および比較機能液Aを含む開放油溜め内で潤滑した。装置は更に摩擦パッドを含むが、摩擦パッドをブレーキディスクおよびブレーキディスクを回転させるシャフトと接触させた。各試験の間中、ブレーキディスクをその原位置に保持しながら、摩擦パッドに一定レベルの圧力を掛け、そして電気モーターがシャフトを駆動させて回転させた。特定の圧力レベルで、シャフトが回転し始めた後0.25秒以内に到達した最大抵抗トルクの読みを記録した。各圧力レベルでこのような0.25秒サイクルを10回行った。10回の最大トルク読みから平均を出して10回平均最大トルクとした後、圧力レベルで割って静始動摩擦値に達した。
【0084】
負の対照試料では、本発明のアルキルトルエンスルホネート混合物の代わりにアルキルベンゼンスルホネートを、機能液試料および比較液試料Aと同じ濃度のCa2+を与える量で含有させた。機能液試料および比較液試料Aの静始動摩擦値[X]から負の対照試料の値[Y]を引き算することにより、静始動摩擦値の増加を求めた。機能液試料1−10および比較液試料Aは、静始動摩擦値の著しい増加を示した。
【0085】
種々の分枝/異性化レベルのオレフィン(第1表のオレフィンI−VIII)を混合して、アルキル化剤(第2表の「混合オレフィン」)を調製した。次に、これら混合オレフィンを用いてアルキルトルエン(第2表のAT I−X)を合成した。比較パッケージAを製造するために、非異性化オレフィン(比較)(第1表)を用いてトルエンをアルキル化し、AT(比較)(第2表)を生成させた。負の対照パッケージを製造するために、同じ非異性化オレフィン(比較)(第1表)を用いてベンゼンをアルキル化し、AB(−)(第2表)を生成させた。これらアルキル化前駆体を、前述したSO3/空気薄膜スルホン化法のような従来法によりスルホン化した。次いで、スルホン化生成物を、液にほぼ同じ量のCa2+を与えるような濃度で添加剤パッケージに導入した。第2表には、添加剤パッケージのその他の成分も列挙する。
【0086】
AB(−)からなるものおよびAT(比較)からなるものも含めて、スルホン化生成物は全て高過塩基性でTBNが約320であった。
【0087】
第 1 表: オレフィン
────────────────────────────────────
オレフィン# 炭素数 分枝レベル アルファオレフィン濃度
────────────────────────────────────
オレフィンI 20−24 20.4% 12.1%
オレフィンII 20−26 54.8% 1.6%
オレフィンIII 20−24 25.0% 1.1%
オレフィンIV 20−26 23.4% 31.9%
オレフィンV 20−24 21.2% 5.6%
オレフィンVI 20−24 17.5% 12.0%
オレフィンVII 20−26 20.7% 11.7%
オレフィンVIII 20−26 0 非異性化
オレフィン(比較) 20−24 0 非異性化
────────────────────────────────────
【0088】
【表1】

【0089】
第2表の添加剤パッケージを更に、一定の基油混合物、一種以上の粘度向上剤および一種以上の流動点降下剤とブレンドした。第3表に、完成機能液およびその成分を列挙する。
【0090】
第 3 表: 完成機能液の成分
────────────────────────────────────
機能液# 添加剤パッケージ その他の成分
(6.85質量%)
────────────────────────────────────
1−10 1−10 粘度指数向上剤 4.75質量%
比較機能液A 比較パッケージA 流動点降下剤 0.20質量%
エクソンモービル
AP/E Core150N 54.70質量%
エクソンモービル
AP/E Core600N 33.50質量%
────────────────────────────────────
【0091】
静始動摩擦値を求めた。実験のばらつきを明らかにするために、各試料または比較試料([X]値)を負の対照試料([Y]値)と同時に測定した。第4表に、機能液試料1−10および比較機能液Aの結果を列挙する。
【0092】
第 4 表: 試験結果
──────────────────────────────────
試料# 静始動摩擦 負の対照の 静始動摩擦値
値(mm3) 静始動摩擦 の増加(mm3)
=[X] (mm3)=[Y] =[X]−[Y]
──────────────────────────────────
1 17463 17010 453
2 17617 17010 607
3 17653 17010 643
4 17340 17010 330
5 17869 17110 759
6 17364 16924 440
7 17951 16881 1070
8 16555 15965 590
9 16923 15965 958
10 16638 15965 673
比較機能液A 17766 17441 325
──────────────────────────────────
【0093】
[実施例2] 塩化物適合性
摩擦緩和添加剤、すなわちアルキルトルエン前駆体(AT)XIから作ったアルキルトルエンスルホネート塩、および機能液、すなわち機能液試料11の塩化物適合性を、比較機能液Bを用いて決定した。第5表に、これら試料の成分を列挙する。アルキルトルエン前駆体(AT)XIは、分枝レベル約20.7%、アルファオレフィン含量約11.7%であった。
【0094】
アルキルトルエンスルホネートの代わりにアルキルベンゼンスルホネートを、Ca2+同等の量で含む負の対照液の静始動摩擦値を、機能液試料11および比較機能液Bと同時に得た。次に、この値を試料の静始動値から引き算したところ、第5表の「静始動摩擦増加」結果になった。
【0095】
機能液試料11および比較機能液Bは両方とも、負の対照液よりも高い始動摩擦値を示し、これらの液両方の摩擦特性が改善されたことを示唆した。液試料11における塩化物の存在によって、その液中のアルキルトルエンスルホネート塩の摩擦緩和能が実質的に低下することはなかった。
【0096】
第 5 表
─────────────────────────────────────
機能液試料11 比較機能液B
─────────────────────────────────────
1.8質量% ATスルホネートXI 1.8質量% ATスルホネートXI
(分枝20.7%) (分枝20.7%)
パッケージは任意に下記成分のうち パッケージは機能液試料11と同じ
の一種以上を含んでいてもよい:* 任意成分を同じ濃度で含み、該成分
は下記から選ばれる一種以上であっ
てよい:*
a)酸化防止剤 a)酸化防止剤
b)耐摩耗/極圧剤 b)耐摩耗/極圧剤
c)さび止め剤 c)さび止め剤
d)清浄剤 d)清浄剤
e)非アルキルトルエンスルホネート e)非アルキルトルエンスルホネート
摩擦緩和剤 摩擦緩和剤
f)消泡剤 f)消泡剤
g)分散剤 g)分散剤
h)抗乳化剤 h)抗乳化剤
i)多機能添加剤、および i)多機能添加剤、および
j)シール調整剤 j)シール調整剤
Cl 50ppm Cl 0ppm
機能液中の他の成分 機能液中の他の成分
a)流動点降下剤 0.20質量% a)流動点降下剤 0.20質量%
b)粘度指数向上剤 4.75質量% b)粘度指数向上剤4.75質量%
c)エクソンモービルAP/E CORE c)エクソンモービルAP/E CORE
基油(混合) 〜88質量% 基油(混合) 〜88質量%
─────────────────────────────────────
静始動摩擦増加=1346mm3 静始動摩擦増加=673mm3
─────────────────────────────────────
*:下記は、好ましく使用できる任意成分の限定しないリストである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分の混合物を含む機能液組成物:
(a)主要量の潤滑粘度の油、および
(b)摩擦を緩和することのできる量の、下記式で表すことができる一種以上の油溶性アルキルトルエンスルホネート塩:
【化1】

[式中、R1は金属スルホネート基であり、そしてR2はアルキル基である]。
【請求項2】
一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩が、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる請求項1に記載の機能液組成物。
【請求項3】
一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩がアルカリ土類金属塩である請求項2に記載の機能液組成物。
【請求項4】
一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩がカルシウム塩である請求項3に記載の機能液組成物。
【請求項5】
一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩が過塩基性塩である請求項1に記載の機能液組成物。
【請求項6】
一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩が、二酸化炭素で過塩基化されている請求項5に記載の機能液組成物。
【請求項7】
一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩の各々の全塩基価が、約0乃至約400である請求項1に記載の機能液組成物。
【請求項8】
各過塩基性塩の全塩基価が約60乃至約400である請求項5に記載の機能液組成物。
【請求項9】
各過塩基性塩の全塩基価が約250乃至約380である請求項8に記載の機能液組成物。
【請求項10】
各過塩基性塩の全塩基価が約300乃至約350である請求項9に記載の機能液組成物。
【請求項11】
一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩が、線状オレフィン類をトルエンと反応させることにより合成されたアルキルトルエン前駆体から誘導されたものである請求項1に記載の機能液組成物。
【請求項12】
線状オレフィン類が、トルエンと反応する前に異性化されている請求項11に記載の機能液組成物。
【請求項13】
各線状オレフィン類が単一のオレフィンまたはオレフィン混合物である請求項11に記載の機能液組成物。
【請求項14】
単一のオレフィンがC18〜C30線状アルファオレフィンである請求項13に記載の機能液組成物。
【請求項15】
オレフィン混合物のオレフィンが、C18〜C30線状アルファオレフィンから選ばれる請求項13に記載の機能液組成物。
【請求項16】
各線状オレフィン類のうちの約0.5%乃至約50%が、アルファオレフィンである請求項12に記載の機能液組成物。
【請求項17】
線状オレフィン類の各々のうちの約1.5%乃至約35%が、アルファオレフィンである請求項16に記載の機能液組成物。
【請求項18】
各異性化線状オレフィン類のうちの約5%乃至約80%が分枝している請求項12に記載の機能液組成物。
【請求項19】
各異性化線状オレフィン類のうちの約10%乃至約60%が分枝している請求項18に記載の機能液組成物。
【請求項20】
一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩を約0.15質量%乃至約4.0質量%含む請求項1に記載の機能液組成物。
【請求項21】
一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩を約0.5質量%乃至約3.5質量%含む請求項20に記載の機能液組成物。
【請求項22】
一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩を約1.5質量%乃至約2.5質量%含む請求項21に記載の機能液組成物。
【請求項23】
さらに、次の成分から選ばれる一種以上の添加剤を含む請求項1に記載の機能液組成物:(1)酸化防止剤、(2)さび止め添加剤、(3)抗乳化剤、(4)アルキルトルエンスルホネート以外の摩擦緩和添加剤、(5)粘度指数向上剤、(6)多機能添加剤、(7)分散剤、(8)耐摩耗/極圧剤、(9)流動点降下剤、(10)消泡剤、(11)清浄剤、および(12)シール調整剤。
【請求項24】
組成物の摩擦緩和能力が、塩化物イオンの存在下で実質的に低下することがない請求項1に記載の機能液組成物。
【請求項25】
組成物の摩擦緩和能力が、最大で約10ppmの塩化物の存在下で実質的に低下することがない請求項24に記載の機能液組成物。
【請求項26】
組成物の摩擦緩和能力が、最大で約50ppmの塩化物の存在下で実質的に低下することがない請求項25に記載の機能液組成物。
【請求項27】
機能液に使用するのに適した摩擦緩和添加剤であって、下記式で表すことができる一種以上の油溶性アルキルトルエンスルホネート塩を含む摩擦緩和添加剤。
【化2】

[式中、R1は金属スルホネート基であり、そしてR2はアルキル基である]。
【請求項28】
一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩が、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選ばれる請求項27に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項29】
一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩がアルカリ土類金属塩である請求項28に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項30】
一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩がカルシウム塩である請求項29に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項31】
一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩が過塩基性塩である請求項27に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項32】
一種以上の過塩基性アルキルトルエンスルホネート塩が、二酸化炭素で過塩基化されたものである請求項31に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項33】
一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩の各々の全塩基価が、約0乃至約400である請求項27に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項34】
一種以上の過塩基性アルキルトルエンスルホネート塩の各々の全塩基価が、約60乃至約400である請求項31に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項35】
一種以上の過塩基性アルキルトルエンスルホネート塩の各々の全塩基価が、約250乃至約380である請求項34に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項36】
一種以上の過塩基性アルキルトルエンスルホネート塩の各々の全塩基価が、約300乃至約350である請求項35に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項37】
一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩が、線状オレフィン類をトルエンと反応させることにより合成されたアルキルトルエン前駆体から誘導されたものである請求項27に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項38】
線状オレフィン類が、トルエンと反応する前に異性化されている請求項37に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項39】
線状オレフィン類の各々が単一のオレフィンまたはオレフィン混合物である請求項38に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項40】
単一のオレフィンがC18〜C30線状アルファオレフィンである請求項39に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項41】
オレフィン混合物のオレフィンが、C18〜C30線状アルファオレフィンから選ばれる請求項39に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項42】
各線状オレフィン類のうちの約0.5%乃至約50%が、アルファオレフィンである請求項38に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項43】
各線状オレフィン類のうちの約1.5%乃至約35%が、アルファオレフィンである請求項42に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項44】
各異性化線状オレフィン類のうちの約5%乃至約80%が分枝している請求項38に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項45】
各異性化線状オレフィン類のうちの約10%乃至約60%が分枝している請求項44に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項46】
摩擦緩和添加剤の摩擦緩和能力が、塩化物イオンの存在下で実質的に低下することがない請求項27に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項47】
摩擦緩和添加剤の摩擦緩和能力が、最大で約10ppmの塩化物の存在下で実質的に低下することがない請求項46に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項48】
摩擦緩和添加剤の摩擦緩和能力が、最大で約50ppmの塩化物の存在下で実質的に低下することがない請求項47に記載の摩擦緩和添加剤。
【請求項49】
相対的に可動に部分及び継手部分を含む機械内で最適な摩擦特性を遂行し、かつそのような特性を維持する方法であって、下記の工程を含む方法:
(a)相対的に可動な部分及び継手部分のうちの少なくとも幾つかの表面を、請求項1に記載の機能液で浸液させる工程、そして
(b)機械を機能液の存在下で作動させる工程。
【請求項50】
機能液が、トラクタ液、トラクタ作動液、変速機液および油圧作動液から選ばれる請求項49に記載の方法。
【請求項51】
機能液がトラクタ作動液である請求項50に記載の方法。
【請求項52】
機能液が更に、次の成分から選ばれる一種以上の添加剤を含んでいる請求項49に記載の方法:(1)酸化防止剤、(2)抗乳化剤、(3)さび止め添加剤、(4)アルキルトルエンスルホネートではない摩擦緩和添加剤、(5)流動点降下剤、(6)粘度指数向上剤、(7)消泡剤、(8)多機能添加剤、(9)耐摩耗/極圧剤、(10)分散剤、(11)清浄剤、および(12)シール調整剤。
【請求項53】
下記の成分をブレンドすることを含む機能液組成物の製造方法:
(a)潤滑粘度の油、および
(b)下記式で表すことができる一種以上の油溶性アルキルトルエンスルホネート塩:
【化3】


[式中、R1は金属スルホネート基であり、そしてR2はアルキル基である]。
【請求項54】
酸化防止剤、さび止め添加剤、アルキルトルエンスルホネート以外の摩擦緩和添加剤、粘度指数向上剤、抗乳化剤、流動点降下剤、耐摩耗/極圧剤、多機能添加剤、消泡剤、清浄剤、シール調整剤および分散剤から選ばれる一種以上の添加剤を、機能液組成物に更にブレンドする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
約0.15質量%乃至約4.0質量%の一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩を、機能液組成物にブレンドする請求項53に記載の方法。
【請求項56】
約0.5質量%乃至約3.5質量%の一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩を、機能液組成物にブレンドする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
約1.5質量%乃至約2.5質量%の一種以上のアルキルトルエンスルホネート塩を、機能液組成物にブレンドする請求項56に記載の方法。

【公開番号】特開2008−127574(P2008−127574A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300974(P2007−300974)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】