説明

アルキレンオキサイドの製造方法

【課題】チタノシリケート含有触媒と併用することにより、酸素、水素及びオレフィンからアルキレンオキサイドを製造するための反応において、結果としてアルキレンオキサイドの高い生成量を与える製造方法を提供すること。
【解決手段】パラジウムと担体とを含むパラジウム含有組成物を、プロピレンと接触させて得られるパラジウム含有触媒と、チタノシリケート含有触媒との存在下において、酸素、水素及びオレフィンを反応させる工程を含むことを特徴とするアルキレンオキサイドの製造方法等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキレンオキサイドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貴金属担持物を第一の触媒として、水素及び酸素から過酸化水素を得、同一の反応容器内でチタノシリケートを第二の触媒として用いて、得られた過酸化水素と、プロピレン等のオレフィンとを反応させることにより、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを製造する方法が知られている。具体的には、特許文献1には、例えば、第一の触媒である貴金属担持物として、パラジウムテトラアンミンクロライドを活性炭素に担持させたものが開示されている。また、第二の触媒であるチタノシリケートを用いて、酸素、水素及びプロピレンからプロピレンオキサイドを製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−201776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、チタノシリケート含有触媒と併用することにより、酸素、水素及びオレフィンからアルキレンオキサイドを製造するための反応において、結果としてアルキレンオキサイドの高い生成量を与える製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況下、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.パラジウムと担体とを含むパラジウム含有組成物を、プロピレンと接触させて得られるパラジウム含有触媒(以下、本パラジウム含有触媒と記すこともある。)と、チタノシリケート含有触媒との存在下において、酸素、水素及びオレフィンを反応させる工程を含むことを特徴とするアルキレンオキサイドの製造方法(以下、本発明アルキレンオキサイド製造方法と記すこともある。);
2.前記オレフィンが、プロピレンであることを特徴とする前項1記載のアルキレンオキサイドの製造方法;
3.前記チタノシリケート含有触媒が、格子面間隔表示で下記の位置にピークを有するX線回折パターンを示すチタノシリケート粒子を含むことを特徴とする前項1又は2のいずれかの前項記載のアルキレンオキサイドの製造方法;
<X線回折パターンにおけるピークの格子面間隔表示による位置(格子面間隔d/Å)>
12.4±0.8、10.8±0.5、9.0±0.3、6.0±0.3、3.9±0.3、3.4±0.1
4.前記工程が、酸素、水素及びオレフィンを溶媒存在下で反応させる工程であることを特徴とする前項1乃至3のいずれかの前項記載のアルキレンオキサイドの製造方法;
5.前記溶媒が、有機溶媒であることを特徴とする前項4記載のアルキレンオキサイドの製造方法;
6.前記溶媒が、有機溶媒及び水の混合溶媒であることを特徴とする前項4記載のアルキレンオキサイドの製造方法;
7.前記有機溶媒が、アセトニトリルであることを特徴とする前項5又は6のいずれかの前項記載のアルキレンオキサイドの製造方法;
8.担体が、活性炭、AlおよびZrOからなる群から選ばれる担体であることを特徴とする前項1乃至7のいずれかの前項記載のアルキレンオキサイドの製造方法;
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、チタノシリケート含有触媒と併用することにより、酸素、水素及びプロピレンからプロピレンオキサイドを製造するための反応において、結果としてアルキレンオキサイドの高い生成量を与える製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本パラジウム含有触媒である「パラジウム含有触媒A」のX線回折スペクトルを示す図である。パラジウム含有触媒Aでは、パラジウム金属の(111)面の結晶面間隔の値が2.30Åであることが確認できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明アルキレンオキサイド製造方法は、パラジウムと担体とを含むパラジウム含有組成物を、プロピレンと接触させて得られるパラジウム含有触媒(即ち、本パラジウム含有触媒)と、チタノシリケート含有触媒との存在下において、酸素、水素及びオレフィンを反応させる工程を含む。
本発明アルキレンオキサイド製造方法で用いられるパラジウム含有触媒(即ち、本パラジウム含有触媒)は、上述のように、パラジウムと担体とを含むパラジウム含有組成物を、プロピレンと接触させて得られるものである。好ましくは、例えば、(1)パラジウムと担体とを含むパラジウム含有組成物を、実質的にプロピレンのみからなる炭素ガスと接触させて得られるパラジウム含有触媒や、(2)X線回折分析により測定される回折角から算出したパラジウム金属の(111)面の結晶面間隔の値が2.30ű0.01Åの範囲内であり、且つ、パラジウムと担体とを含むパラジウム含有組成物を、プロピレンと接触させて得られるパラジウム含有触媒等を挙げることができる。
【0009】
ここで、「担体」としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ニオビア等の酸化物、ニオブ酸、ジルコニウム酸、タングステン酸、チタン酸等の水酸化物、活性炭、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ等の炭素およびそれらの混合物等を挙げることができる。好ましくは、例えば、ジルコニア、アルミナ、チタニア、活性炭等が挙げられる。より好ましくは、例えば、活性炭等を挙げることができる。また、本発明のチタノシリケート含有触媒を担体とすることもできる。
【0010】
ここで、「パラジウムと担体とを含むパラジウム含有組成物」は、例えば、パラジウムコロイド又はパラジウム化合物を公知の方法等により担持した後、これを熱処理する方法等を用いて得ることができる。好ましいパラジウム含有組成物としては、例えば、パラジウムと担体とから実質的になるパラジウム含有組成物等を挙げることができる。尚、上記パラジウム含有組成物に微量含まれる不純物としては、例えば、金、白金、オスミウム、イリジウム、銀及びレニウム等の貴金属、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等のアルカリ土類金属、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム及びネオジム等の希土類金属、又、鉄、チタン、マンガン、モリブデン及び錫等を挙げることができる。
以下、前記「パラジウムと担体とを含むパラジウム含有組成物」の具体的な調製方法を説明する。
【0011】
前記「パラジウムコロイド」としては、例えば、特開2002−294301号公報、実施例1等に記載されるPdコロイド等を挙げることができる。
【0012】
また、前記「パラジウム化合物」としては、例えば、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸カリウム等の4価のパラジウム化合物類;塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロ(ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、ジブロモテトラアンミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)、パラジウムトリフルオロアセテート(II)等の2価パラジウム化合物類等を挙げることができる。
【0013】
前記の担持方法としては、例えば、含浸法、浸漬法、湿式吸着法、イオン交換法、溶媒蒸発法等の通常の湿式担持方法、又は、これらを組み合せた方法等を挙げることができる。
【0014】
前記のような湿式担持方法において用いられる溶媒としては、例えば、水系溶媒、非水系溶媒、又は、これらの混合系溶媒等を挙げることができる。
具体的には例えば、純水、イオン交換水、水道水、工業用水等の水;メタノール、エタノール、インプロパノール、ヘキサノール、オクタノール等のアルコール;ペンタン、石油エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素溶媒;アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、塩化プロピル、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、フッ化メチル等のハロゲン化炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類:酢酸、フロピオン酸等の有機酸類;ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、アニリン等のアミン類;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類等を挙げることができる。好ましくは、例えば、水等が挙げられる。尚、これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、また2種以上を組み合せて用いてもよい。
前記溶媒の使用量としては、特に制限はないが、用いられる担体の全体に十分に接触するために充分な量とすることが好ましい。尚、溶媒の使用量が上記の適量に対して大過剰であると、乾燥処理に長時間を要することになろう。また、溶媒の使用量が上記の適量に対して少なすぎると、担体上に均質に分散させることが容易でなくなろう。
【0015】
前記の湿式担持方法での担持に際しての操作方式としては、例えば、静置法、攪拌法、溶液流通法、溶媒リフラックス法等、又は、これらを組み合せた方式等を挙げることができる。
【0016】
前記のような担持方法を用いることにより、パラジウム含有組成物を得ればよい。尚、得られたパラジウム含有組成物と共に、溶媒又はパラジウム含有溶液が過剰に残存する場合には、通常、前記の溶媒又は貴金属含有溶液の過剰な分を分離除去するか、或いは、溶媒又はパラジウム含有溶液の過剰な分を蒸発させることにより、パラジウム含有組成物を回収すればよい。
前記の溶媒又はパラジウム含有溶液の過剰な分を分離除去する方法としては、例えば、ろ過、遠心分離、デカンテーション等の通常の固液分離方法を挙げることができる。また、前記の溶媒又はパラジウム含有溶液の過剰な分を蒸発させる方法としては、例えば、自然蒸発法、減圧蒸発法、送風蒸発法、気体流通バブル蒸発法等を挙げることができる。
【0017】
このように得られたパラジウム含有組成物は、そのままの状態で、必要に応じて、更に、オーブン等による通常の加熱乾燥処理を施したり、不活性ガスによる熱処理、水素等の還元ガスによる還元処理、空気等による酸化処理等、又は、これらを組み合せた処理等の公知の適切な前処理若しくは活性化処理を施すことができる。
【0018】
パラジウム含有組成物に含まれるパラジウムの含量としては、例えば、パラジウム含有組成物100重量部に対して、例えば、0.00001重量部以上等を挙げることができる。好ましくは、例えば、0.01重量部以上等が挙げられる。より好ましくは、例えば、0.1重量部以上等を挙げることができる。更に好ましくは、例えば、0.01重量部〜20重量部の範囲を挙げることができる。特に好ましくは、例えば、0.1重量部〜5重量部の範囲が挙げられる。
【0019】
本パラジウム含有触媒は、原料とする「パラジウムと担体とを含むパラジウム含有組成物」に微量含まれる不純物を含むことが可能である。ここで、不純物としては、上述のように、例えば、金、白金、オスミウム、イリジウム、銀及びレニウム等の貴金属、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等のアルカリ土類金属、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム及びネオジム等の希土類金属、又、鉄、チタン、マンガン、モリブデン及び錫等を挙げることができる。
【0020】
パラジウムと担体とを含むパラジウム含有組成物と、プロピレンとの接触は、如何なる方法を用いてもよいが、(1)パラジウムと担体とを含むパラジウム含有組成物を反応器に充填した後、保温下で前記化合物を流通させる乾式法、(2)オートクレーブ等の密閉容器内で溶媒等に縣濁させた、パラジウムと担体とを含むパラジウム含有組成物を、前記化合物と共に混合し保温する、あるいは前記化合物をバブリング等で流通させる湿式法、等が例示される。
【0021】
前記接触工程の温度としては、例えば、25℃〜500℃の範囲、好ましくは、例えば、50℃〜300℃、より好ましくは、例えば、100℃〜200℃の範囲を挙げることができる。また前記接触工程の圧力としては、例えば、ゲージ圧力で0MPa〜10MPaの範囲を挙げることができる。
【0022】
前記接触工程の接触時間の下限としては、例えば、10分間、好ましくは、例えば、2時間、より好ましくは、例えば、10時間、更に好ましくは、例えば、12時間を挙げることができる。また前記接触工程の接触時間の上限としては、例えば、120時間、好ましくは、例えば、72時間、より好ましくは、例えば、30時間、例えば、更に好ましくは、例えば、24時間を挙げることができる。
【0023】
前記接触工程においては、パラジウムと担体とを含むパラジウム含有組成物と共に、後述するチタノシリケート含有触媒と混合された状態であっても構わない。
【0024】
本パラジウム含有触媒は、そのままの状態で、必要に応じて、更に、オーブン等による通常の加熱乾燥処理を施したり、不活性ガスによる熱処理、水素等の還元ガスによる還元処理、空気等による酸化処理等、又は、これらを組み合せた処理等の公知の適切な前処理若しくは活性化処理を施して、触媒として反応に使用すればよい。
【0025】
本パラジウム含有触媒としては、例えば、X線回折分析により測定される回折角から算出したパラジウム金属の(111)面の結晶面間隔の値が2.270Å以上であるものを挙げることができる。これは、パラジウムと担体とを含むパラジウム含有組成物に対して、プロピレンとの接触工程を施すことにより、前記由来の炭素がパラジウム含有組成物に導入されたことを確認するための一つの物性値である。尚、パラジウム含有組成物に含まれる担体の種類によっては、測定でのバックグランド値等の影響から、上記の物性値だけでは充分でない場合もあるが、例えば、担体が活性炭、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ等の炭素およびそれらの混合物である場合には、特に有用である。
本パラジウム含有触媒のうち、前述のように、例えば、(1)パラジウムと担体とを含むパラジウム含有組成物を、実質的にプロピレンのみからなる炭素ガスと接触させて得られるパラジウム含有触媒や、(2)X線回折分析により測定される回折角から算出したパラジウム金属の(111)面の結晶面間隔の値が2.30ű0.01Åの範囲内であり、且つ、パラジウムと担体とを含むパラジウム含有組成物を、プロピレンと接触させて得られるパラジウム含有触媒等を好ましく挙げることができる。
【0026】
X線回折パターンは、線源として銅K−アルファ放射線を使用した市販の一般的なX線回折装置を用いて測定すればよい。具体的には例えば、本パラジウム含有触媒又は前記パラジウム含有組成物を試料として、(株)リガク製RINT2500V等のX線回折装置を用いて下記の条件で測定すればよい。
(測定条件)
・出力:40kV−300mA
・走査範囲:2θ=30〜90°
・走査速度:1°/分
【0027】
本パラジウム含有触媒は、水素、酸素及びオレフィンからアルキレンオキサイドを製造するための触媒として用いることができる。そして、本パラジウム含有触媒は、チタノシリケート含有触媒と併用すること(より具体的には、チタノシリケート含有触媒と本パラジウム含有触媒との両者が一体となった形態で、若しくは、前記両者が各々独立した形態で、併用すること)により、酸素、水素及びプロピレンからプロピレンオキサイドを製造するための反応において、結果としてオレフィンオキサイドの高い生成量を与える。
【0028】
本発明アルキレンオキサイド製造方法において用いられる「チタノシリケート含有触媒」としては、例えば、チタノシリケート粒子と呼ばれている触媒等を挙げることができる。チタノシリケート粒子は、実質的に4配位Tiを持ち、200nm〜400nmの波長領域における紫外可視吸収スペクトルが、210nm〜230nmの波長領域で最大の吸収ピークが現れるものがよい(例えば、Chemical Communications 1026−1027 (2002) 図2(d)、(e)参照)。尚、前記紫外可視吸収スペクトルは、拡散反射装置を付属した紫外可視分光光度計を用いた散反射法に基づき測定すればよい。
【0029】
尚、チタノシリケート粒子を、例えば、本パラジウム含有触媒の存在下、酸素と水素とを反応させるような過酸化水素の製造方法における触媒として使用する場合には、過酸化水素と予め接触したチタノシリケート粒子を用いることがよい。当該接触に供する過酸化水素の濃度としては、例えば、0.0001重量%〜50重量%の範囲を挙げることができる。
【0030】
チタノシリケート粒子としては、具体的には例えば、下記1〜7に記載されるもの等を挙げることができる。
【0031】
1.酸素10員環の細孔を有する結晶性チタノシリケート:
IZA(国際ゼオライト学会)の構造コードでMFI構造を有するTS−1(例えば、米国特許第4410501号)、MEL構造を有するTS−2(例えば、Journal of Catalysis 130, 440−446, (1991))、MRE構造を有するTi−ZSM−48(例えば、Zeolites 15, 164−170, (1995))、FER構造を有するTi−FER(例えば、Journal of Materials Chemistry 8, 1685−1686 (1998))等
【0032】
2.酸素12員環の細孔を有する結晶性チタノシリケート:
BEA構造を有するTi−Beta(例えば、Journal of Catalysis 199,41−47,(2001))、MTW構造を有するTi−ZSM−12(例えば、Zeolites 15, 236−242, (1995))、MOR構造を有するTi−MOR(例えば、The Journal of Physical Chemistry B 102, 9297−9303, (1998))、ISV構造を有するTi−ITQ−7(例えば、Chemical Communications 761−762,(2000))、MSE構造を有するTi−MCM−68(例えば、Chemical Communications 6224−6226, (2008))、MWW構造を有するTi−MWW(例えば、Chemistry Letters 774−775, (2000))等
【0033】
3.酸素14員環の細孔を有する結晶性チタノシリケート:
DON構造を有するTi−UTD−1(例えば、Studies in Surface Science and Catalysis 15, 519−525, (1995))等
【0034】
4.酸素10員環の細孔を有する層状チタノシリケート:
Ti−ITQ−6(例えば、Angewandte Chemie International Edition 39, 1499−1501, (2000))等
【0035】
5.酸素12員環の細孔を有する層状チタノシリケート:
Ti−MWW前駆体(例えば、ヨーロッパ公開特許1731515A1)、Ti−YNU−1(例えば、Angewandte Chemie International Edition 43, 236−240, (2004))、Ti−MCM−36(例えば、Catalysis Letters 113, 160−164, (2007))、Ti−MCM−56(例えば、Microporous and Mesoporous Materials 113, 435−444,(2008))等
【0036】
6. メソポーラスチタノシリケート:
Ti−MCM−41(例えば、Microporous Materials 10, 259−271, (1997))、Ti−MCM−48(例えば、Chemical Communications 145−146, (1996))、Ti−SBA−15(例えば、Chemistry of Materials 14, 1657−1664, (2002))等
【0037】
7.シリル化チタノシリケート:
シリル化されたTi−MWW等、上記1〜6記載のチタノシリケートがシリル化された化合物
【0038】
ここで、「細孔」とは、Si−O結合又はTi−O結合から構成される細孔を意味する。前記細孔としては、例えば、サイドポケットと呼ばれるハーフカップ状の細孔(即ち、チタノシリケートの一次粒子を貫通している必要はない。)等を挙げることができる。
また「酸素X員環以上」とは、(a)細孔において最も細い場所の断面、又は、(b)細孔入口における環構造、における酸素原子数がX以上であることを意味する。尚、上記のチタノシリケート粒子が酸素X員環以上の細孔を有することは、例えば、X線回折パターンの解析により確認されるが、既知の構造であれば、そのX線回折パターンと対比させることで簡便に確認できる。
【0039】
ここで、「層状チタノシリケート」とは、例えば、結晶性チタノシリケートの層状前駆体、結晶性チタノシリケートの層間を拡張したチタノシリケート等、層状構造を有するチタノシリケートの総称である。層状構造であることは、電子顕微鏡又はX線回折パターンの測定により確認することができる。尚、「層状前駆体」とは、脱水縮合等の処理を行うことにより結晶性チタノシリケートを形成するチタノシリケートを意味する。層状チタノシリケートが酸素12員環以上の細孔を有することは、対応する結晶性チタノシリケートの構造から容易に判断できる。
【0040】
また、「メソポーラスチタノシリケート」とは、規則性メソ細孔を有するチタノシリケートの総称である。規則性メソ孔とは、メソ孔が規則的に繰り返し配列された構造を意味する。尚、「メソ細孔」とは、細孔径2nm〜10nmの細孔を意味する。
【0041】
また、「シリル化チタノシリケート」とは、シリル化剤で上記1〜4記載のチタノシリケートを処理することにより得られる化合物である。前記シリル化剤として、例えば、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシラン等を挙げることができる(例えば、ヨーロッパ公開特許EP1488853A1)。更にまた、当該シリル化チタノシリケートを過酸化水素溶液と混合(以下、過酸化水素処理と記すことがある。)させたものであってもよい。過酸化水素処理における過酸化水素溶液の濃度としては、例えば、0.0001重量%〜50重量%の範囲を挙げることができる。過酸化水素溶液の溶媒としては、例えば、水又は本発明アルキレンオキサイド製造方法に用いられる溶媒等を挙げることができる。過酸化水素処理の温度としては、例えば、0℃〜100℃の範囲を挙げることができる。好ましくは、0℃〜60℃の範囲が挙げられる。過酸化水素処理の処理(混合)時間としては、過酸化水素の濃度にもよるが、例えば、10分〜10時間の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、1時間〜3時間の範囲が挙げられる。
【0042】
上述のチタノシリケート粒子のうち、例えば、酸素12員環以上の細孔を有するチタノシリケート等を好ましく挙げることができる。かかるチタノシリケートは、結晶であってもよく、層状チタノシリケートであってもよい。酸素12員環以上の細孔を有するチタノシリケートとしては、具体的には例えば、Ti−MWW、Ti−MWW前駆体等を挙げることができる。
【0043】
酸素12員環以上の細孔を有するチタノシリケート粒子の内、格子面間隔表示で下記の位置にピークを有するX線回折パターンを示すものがよい。
<X線回折パターンにおけるピークの格子面間隔表示による位置(格子面間隔d/Å)>
12.4±0.8、10.8±0.5、9.0±0.3、6.0±0.3、3.9±0.3、3.4±0.1
【0044】
以下、X線回折パターンを測定方法について説明する。
【0045】
X線回折パターンは、線源として銅K−アルファ放射線を使用した市販の一般的なX線回折装置を用いて測定すればよい。具体的には例えば、チタノシリケート粒子を試料として、(株)リガク製RINT2500V等のX線回折装置を用いて下記の条件で測定すればよい。
(測定条件)
・出力:40kV−300mA
・走査範囲:2θ=0.75〜20°
・走査速度:1°/分
【0046】
前記に示すX線回折パターンを有するチタノシリケート粒子(格子面間隔表示で上記の位置にピークを有するX線回折パターンを示すもの)の具体的な例としては、例えば、Ti−MWW前駆体(例えば、公開特許公報2005−262164号に記載されたもの)、Ti−YNU−1(例えば、アンゲバンテヒミー・インターナショナルエディション(Angewandte Chemie International Edition) 43, 236−240, (2004)に記載されたもの)、結晶性チタノシリケート、IZA(国際ゼオライト学会)の構造コードで、MWW構造を有する結晶性チタノシリケートであるTi−MWW(例えば、公開特許公報2003−327425号に記載されたもの)、同じくIZAの構造コードでMSE構造を有する結晶性チタノシリケートであるTi−MCM−68(例えば、公開特許公報2008−50186号に記載されたもの)等を挙げることができる。
【0047】
Ti−MWW前駆体は、層状構造を有するチタノシリケートであり、当該Ti−MWW前駆体を脱水縮合することによりTi−MWWを形成する物質を意味する。上記脱水縮合は、通常、上記Ti−MWW前駆体を、200℃を超え、1000℃以下、好ましくは、300℃〜650℃の範囲の温度で加熱することにより行われる。尚、Ti−MWW前駆体は、その製造過程において後述のような構造規定剤処理が施されてもよい。また更に、このようにして得られたTi−MWW前駆体は、後述のような構造規定剤処理を再度施されてもよい。これらもまた、本発明では「Ti−MWW前駆体」と呼ぶ。
【0048】
Ti−MWW前駆体は、各種の酸化反応等において触媒として使用することができる。Ti−MWW前駆体のケイ素と窒素とのモル比(Si/N比)としては、例えば、5〜100の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、10〜20の範囲が挙げられる。
【0049】
Ti−MWW前駆体の製造方法としては、下記の各種方法が例示される。
【0050】
(1)第一の方法:構造規定剤、元素周期表の13族元素を含有する化合物(以下、「13族元素含有化合物」と記すことがある。)、ケイ素含有化合物、チタン含有化合物及び水を含有する混合物を加熱する工程(以下、「工程(1−1)」と記すことがある。)、及び、工程(1−1)で得られた層状化合物と酸とを混合する工程を含む方法である。
(2)第二の方法:構造規定剤、13族元素含有化合物、ケイ素含有化合物及び水を含有する混合物を加熱する工程(以下、「工程(2−1)」と記すことがある。)、及び、工程(2−1)で得られた層状化合物、チタン含有化合物及び酸を混合する工程を含む方法である。
(3)第三の方法:構造規定剤、13族元素含有化合物、ケイ素含有化合物、チタン含有化合物及び水を含有する混合物を加熱する工程(以下、「工程(3−1)」と記すことがある。)、及び、工程(3−1)で得られた層状化合物、チタン含有化合物及び酸を混合する工程を含む方法である。
(4)第四の方法:構造規定剤、13族元素含有化合物、ケイ素含有化合物及び水を含有する混合物を加熱して得られる層状ボロシリケートを、(好ましくは、酸と接触させることにより構造規定剤を除いた後、)焼成してB−MWWを得て、得られたB−MWWを酸等によりホウ素を除去した後、構造規定剤、チタン含有化合物及び水を加え、得られた混合物を加熱して層状化合物を得て、これを約6M硝酸と接触させる工程を含む方法(例えば、Chemical Communication 1026−1027,(2002)参照)
【0051】
上記第一〜第四の方法で得られたTi−MWW前駆体は、更に、追加的に構造規定剤処理を施すことで、ケイ素と窒素とのモル比(Si/N比)を所定の値(例えば、10〜20の範囲)に調製することが可能であるため好ましい。
例えば、オートクレーブ等の密閉耐圧容器内で、チタノシリケート含有触媒を、構造規定剤及び水に混合し、前記密閉耐圧容器を密閉した後、加熱・加圧下にて静置又は攪拌混合して混合液を得、得られた混合液から固形の生成物を、濾過や遠心分離等の方法を用いて分離することにより、得ればよい。また、大気圧下、ガラス製フラスコ中で撹拌しながら、又は、撹拌せずに混合して混合液を得、得られた混合液から固形の生成物を、濾過や遠心分離等の方法を用いて分離することにより、得てもよい。
因みに、得られたチタノシリケート含有触媒を、水等を用いて洗浄してもよい。前記洗浄は、必要により、洗浄液の量、洗浄濾液のpH等を見ながら適宜調整して行えばよい。更に、得られた水洗物を、例えば、0℃〜200℃の範囲で、例えば、通風乾燥、減圧乾燥、真空凍結乾燥等により、重量の減少が見られなくなる程度まで乾燥してもよい。
上記の混合操作で用いられる温度としては、例えば、0℃〜250℃を挙げることができる。好ましくは、20℃〜200℃が挙げられる。より好ましくは、例えば、50℃〜180℃を挙げることができる。
上記の混合操作で用いられる混合時間としては、例えば、1時間〜720時間の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、2時間〜720時間の範囲が挙げられる。より好ましくは、例えば、4時間〜720時間の範囲を挙げることができる。特に好ましくは、例えば、8時間〜720時間の範囲が挙げられる。
上記の混合操作で用いられる圧力としては、特に制限はないが、例えば、ゲージ圧力で0MPa〜10MPaの範囲を挙げることができる。
【0052】
上記の各種方法において用いられるチタン含有化合物の使用量としては、得られる層状化合物1重量部に対して、チタン含有化合物中のチタン原子の重量として、例えば、0.001重量部〜1重量部の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、0.01重量部〜0.5重量部の範囲が挙げられる。
【0053】
上記の各種方法において用いられる酸としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸、過塩素酸、ホウ酸、フルオロスルホン酸等の無機酸、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸等の有機酸、これらの2種以上の組み合わせ等を挙げることができる。好ましくは、例えば、4価チタンよりも高い酸化還元電位を有する無機酸を少なくとも一種以上含む酸等が挙げられる。ここで、「4価チタンよりも高い酸化還元電位を有する無機酸」としては、例えば、硝酸、過塩素酸、フルオロスルホン酸、硝酸と硫酸との組み合わせ、硝酸とホウ酸との組み合わせ等を挙げることができる。
【0054】
上記の各種方法において用いられる酸は、通常、溶媒に溶解させることにより調製された溶液の状態で用いられる。ここで、「溶媒」としては、例えば、水、アルコール溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒、それらの混合物等を挙げることができる。好ましくは、例えば、水等が挙げられる。
当該溶液に含まれる酸の濃度としては、例えば、0.01mol/l〜20mol/lの範囲を挙げることができる。酸として無機酸を用いる場合には、無機酸の濃度としては、例えば、1mol/l〜5mol/lの範囲を好ましく挙げることができる。
【0055】
Ti−MWW前駆体の製造方法において使用される「元素周期表の13族元素」としては、例えば、ホウ素含有化合物、アルミニウム含有化合物、ガリウム含有化合物等を挙げることができる。好ましくは、例えば、ホウ素含有化合物等が挙げられる。
ホウ素含有化合物としては、例えば、ホウ酸、ホウ酸塩、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、炭素数1〜4のアルキル基を有するトリアルキルホウ素化合物等を挙げることができる。好ましくは、例えば、ホウ酸等が挙げられる。
アルミニウム含有化合物としては、例えば、アルミン酸ナトリウム等を挙げることができる。
ガリウム含有化合物としては、例えば、酸化ガリウム等を挙げることができる。
【0056】
Ti−MWW前駆体の製造方法における13族元素含有化合物の使用量としては、ケイ素含有化合物に含まれるケイ素1モルに対して、例えば、0.01モル〜10モルの範囲を挙げることができる。好ましくは、0.1モル〜5モルの範囲が挙げられる。
【0057】
Ti−MWW前駆体の製造方法において使用される「ケイ素含有化合物」としては、例えば、ケイ酸、ケイ酸塩、酸化ケイ素、ハロゲン化ケイ素、テトラアルキルオルトケイ酸エステル及びコロイダルシリカ等を挙げることができる。好ましくは、例えば、オルトケイ酸、メタケイ酸、メタ二ケイ酸等が挙げられる。
ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のアルカリ金属ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のアルカリ土類金属ケイ酸塩等が挙げられる。
酸化ケイ素としては、例えば、石英のような結晶性シリカ、ヒュームドシリカのような非晶質シリカ等を挙げることができる。好ましくは、例えば、ヒュームドシリカ等が挙げられる。ここで「ヒュームドシリカ」としては、一般に市販されているBET比表面積50m/g〜380m/gのものを使用すればよい。中でも、BET比表面積50m/g〜200m/gのものが、取扱い容易であることからよい。また、BET比表面積100m/g〜380m/gのものは、水溶液への溶解が容易であることからよい。
ハロゲン化ケイ素としては、例えば、四塩化ケイ素、四フッ化ケイ素等を挙げることができる。
テトラアルキルオルトケイ酸エステルとしては、例えば、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケート等を挙げることができる。
【0058】
Ti−MWW前駆体の製造方法において使用される「チタン含有化合物」としては、例えば、チタンアルコキシド、チタン酸塩、酸化チタン、ハロゲン化チタン、チタンの無機酸塩、チタンの有機酸塩等を挙げることができる。
チタンアルコキシドとしては、例えば、炭素数1〜4のアルコキシ基を有するチタンアルコキシド、例えばテトラメチルオルソチタネート、テトラエチルオルソチタネート、テトライソプロピルオルソチタネート、テトラ−n−ブチルオルソチタネート等を挙げることができる。好ましくは、例えば、チタンアルコキシド等が挙げられる。より好ましくは、例えば、テトラ−n−ブチルオルソチタネート等を挙げることができる。
チタンの有機酸塩としては、例えば、酢酸チタン等を挙げることができる。
チタンの無機酸塩としては、例えば、硝酸チタン、硫酸チタン、リン酸チタン、過塩素酸チタン等を挙げることができる。
ハロゲン化チタンとしては、例えば、四塩化チタン等を挙げることができる。
酸化チタンとしては、例えば、二酸化チタン等を挙げることができる。
【0059】
Ti−MWW前駆体の製造方法において使用される「水」としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の精製水等を挙げることができる。
Ti−MWW前駆体の製造方法における水の使用量としては、ケイ素含有化合物に含まれるケイ素1モルに対して、例えば、5モル〜20モルの範囲を挙げることができる。好ましくは、10モル〜50モルの範囲が挙げられる。
【0060】
Ti−MWW前駆体の製造方法において使用される「構造規定剤」(即ち、MWW構造を有するゼオライトを形成可能な構造規定剤)としては、例えば、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウム塩(例えば、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヒドロキシド、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムイオダイド等)、オクチルトリメチルアンモニウム塩(例えば、オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド等)(例えば、Chemistry Letters 916−917 (2007)参照)等を挙げることができる。好ましくは、例えば、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0061】
Ti−MWW前駆体の製造方法における構造規定剤の使用量としては、ケイ素含有化合物中のケイ素1モルに対して、例えば、0.1モル〜5モルの範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、0.5モル〜3モルの範囲が挙げられる。
また、Ti−MWW前駆体の構造規定剤処理における構造規定剤の使用量としては、チタノシリケート1重量部に対して、例えば、0.001重量部〜100重量部の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、0.1重量部〜10重量部の範囲が挙げられる。
【0062】
本発明アルキレンオキサイド製造方法における反応のために用いられるチタノシリケート含有触媒の使用量としては、その種類や反応条件等によって異なるが、例えば、反応系に存在するアセトニトリル含有溶剤、本パラジウム含有触媒、チタノシリケート含有触媒及び原料からなる混合物の量100重量部に対して、0.01重量部〜20重量部の範囲を挙げることができる。好ましくは、0.1重量部〜10重量部の範囲が挙げられる。より好ましくは、0.5重量部〜8重量部の範囲を挙げることができる。
【0063】
本発明アルキレンオキサイド製造方法における反応のために用いられる本パラジウム含有触媒の使用量としては、その種類や反応条件等によって異なるが、例えば、反応系に存在するアセトニトリル含有溶剤、本パラジウム含有触媒、チタノシリケート含有触媒及び原料からなる混合物の量100重量部に対して、0.01重量部〜20重量部の範囲を挙げることができる。好ましくは、0.1重量部〜10重量部の範囲が挙げられる。より好ましくは、0.5重量部〜8重量部の範囲を挙げることができる。
【0064】
前記「アセトニトリル含有溶剤」とは、アセトニトリルを含有する溶剤を意味するものであり、当該アセトニトリル含有溶剤は、アセトニトリル以外の溶媒を含んでいてもよい。アセトニトリル以外の溶媒としては、例えば、アセトニトリル以外の有機溶媒、水等を挙げることができる。好ましくは、前記アセトニトリル含有溶剤の中に含まれるアセトニトリルの重量割合としては、例えば、50%以上の範囲を挙げることができる。好ましくは、60%〜100%の範囲が挙げられる。
【0065】
本発明アルキレンオキサイド製造方法における反応のために用いられる原料の一つである「オレフィン」としては、例えば、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、水素がオレフィン二重結合を構成する炭素原子に結合した化合物等を挙げることができる。
ここで「ヒドロカルビル基」の置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等を挙げることができる。また「ヒドロカルビル基」としては、例えば、アルキル基等の飽和のヒドロカルビル基等を挙げることができる。
【0066】
本発明アルキレンオキサイド製造方法における反応のために用いられる原料の一つである「オレフィン」の具体的な例示としては、炭素数2〜10のアルケン、炭素数4〜10のシクロアルケン等を挙げることができる。
ここで「炭素数2〜10のアルケン」としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、2−ブテン、イソブテン、2−ペンテン、3−ペンテン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、2−ヘプテン、3−ヘプテン、2−オクテン、3−オクテン、2−ノネン、3−ノネン、2−デセン、3−デセン等を挙げることができる。また、「炭素数4〜10のシクロアルケン」としては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロへキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセン等を挙げることができる。
前記「オレフィン」のうち、好ましいものとしては、例えば、炭素数2〜10のアルケン等が挙げられる。より好ましくは、例えば、炭素数2〜5のアルケン等を挙げることができる。特に好ましくは、例えば、プロピレン等が挙げられる。
【0067】
本発明アルキレンオキサイド製造方法における反応のために用いられる原料の一つである「オレフィン」が「プロピレン」である場合には、前記プロピレンとしては、例えば、熱分解、重質油接触分解、メタノール接触改質により製造されたもの等を挙げることができる。
前記プロピレンは、精製プロピレンであってもよく、精製工程を経ず得られる粗プロピレン等であってもよい。好ましいプロピレンとしては、その純度が、例えば、90体積%以上、好ましくは95体積%以上であるプロピレンを挙げることができる。
尚、プロピレンに含まれる不純物としては、例えば、プロパン、シクロプロパン、メチルアセチレン、プロパジエン、ブタジエン、ブタン類、ブテン類、エチレン、エタン、メタン、水素等が挙げられる。
前記プロピレンの形状としては、例えば、ガス状、液状等を挙げることができる。ここで、「液状」としては、例えば、(i)プロピレン単独で液状であるもの、(ii)プロピレンが、例えば、有機溶媒若しくは有機溶媒と水との混合溶媒により溶解された混合液等を挙げることができる。また、「ガス状」としては、例えば、(i)プロピレン単独でガス状であるもの、(ii)ガス状のプロピレンと、例えば、窒素ガス、水素ガス等の他のガス成分との混合ガス等を挙げることができる。
【0068】
前記プロピレン等のオレフィンの量としては、その種類や反応条件等によって異なるが、例えば、反応系に存在するアセトニトリル含有溶剤、チタノシリケート含有触媒及び原料からなる混合物の量100重量部に対して、0.01重量部以上を挙げることができる。より好ましくは、0.1重量部以上が挙げられる。
【0069】
本発明アルキレンオキサイド製造方法において用いられるチタノシリケート含有触媒に含まれるチタノシリケートにおけるチタン原子の含有量は、ケイ素原子の含有量1モルに対して、例えば、0.001〜0.1モルの範囲内を挙げることができ。好ましくは、0.005〜0.05モルの範囲内が挙げられる。
チタノシリケートに対する貴金属の重量比(貴金属の重量/チタノシリケートの重量)としては、例えば、0.01重量%〜100重量%の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、0.1重量%〜20重量%が挙げられる。
【0070】
本発明アルキレンオキサイド製造方法において用いられる溶媒としては、本発明過酸化水素製造方法において用いられるものと同様な溶媒を挙げることができる。好ましくは、例えば、ニトリル溶媒の単独、又は、ニトリル溶媒と水との混合溶媒等が挙げられる。より好ましくは、例えば、アセトニトリルと水との混合溶媒等を挙げることができる。
【0071】
水と有機溶媒との混合物を使用する場合における、水と有機溶媒との比率(重量比)としては、例えば、90:10〜0.01:99.99の範囲を挙げることができる。好ましくは、50:50〜0.1:99.9の範囲が挙げられる。
【0072】
本発明アルキレンオキサイド製造方法は、緩衝剤の存在下で実施することが有利である場合がある。
ここで「緩衝剤」とは、pH緩衝作用を与えるアニオン及びカチオンからなる化合物を意味する。尚、前記緩衝剤は、反応溶液に溶解させることが好ましいが、予め本パラジウム含有触媒に緩衝剤を含有させておいてもよい。
上記の緩衝剤の使用量としては、溶媒1kgに対して、例えば、0.001mmol/kg〜100mmol/kgの範囲等を挙げることができる。
【0073】
本発明アルキレンオキサイド製造方法における反応温度としては、例えば、0℃〜200℃の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、40℃〜150℃の範囲が挙げられる。また、反応圧力(ゲージ圧)としては、例えば、0.1MPa以上の加圧下を挙げることができる。好ましくは、例えば、1MPa以上の加圧下が挙げられる。より好ましくは、例えば、10MPa以上の加圧下を挙げることができる。更により好ましくは、例えば、20MPa以上の加圧下が挙げられる。
【0074】
本発明アルキレンオキサイド製造方法における反応のためには、例えば、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルキルアリールアンモニウム塩等を反応系内に存在させてもよい。
触媒活性の減少を防止したり、触媒活性をさらに増大させたり、酸素及び水素の利用効率を向上させる傾向があること等から、緩衝剤を反応系内に存在させることができる。ここで、「緩衝剤」とは、溶液の水素イオン濃度に対して緩衝作用を与える塩等の化合物を意味する。
前記緩衝剤としては、例えば、反応系に存在するアセトニトリル含有溶剤、本パラジウム含有触媒及び原料からなる混合物における前記緩衝剤の溶解度以下の量を挙げることができる。好ましくは、前記混合物1kgに対して、例えば、0.001mmol〜100mmolの範囲を挙げることができる。
【0075】
前記緩衝剤としては、例えば、(1)硫酸イオン、硫酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸2水素イオン、ピロリン酸水素イオン、ピロリン酸イオン、ハロゲンイオン、硝酸イオン、水酸化物イオン、及び、炭素数1〜10のカルボン酸イオンからなる群より選ばれるアニオンと、(2)アンモニウム、炭素数1〜20のアルキルアンモニウム、炭素数7〜20のアルキルアリールアンモニウム、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選ばれるカチオンとからなる緩衝剤を挙げることができる。
【0076】
「炭素数1〜10のカルボン酸イオン」としては、例えば、酢酸イオン、蟻酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、酪酸イオン、吉草酸イオン、カプロン酸イオン、カプリル酸イオン、カプリン酸イオン、安息香酸イオン等を挙げることができる。
「炭素数1〜20のアルキルアンモニウム」としては、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ−n−プロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムを挙げることができる。
「アルカリ金属及びアルカリ土類金属カチオンからなる群より選ばれるカチオン」としては、例えば、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、ルビジウムカチオン、セシウムカチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン、ストロンチウムカチオン、バリウムカチオン等を挙げることができる。
【0077】
好ましい緩衝剤としては、例えば、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、リン酸2水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、ピロリン酸水素アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の炭素数1〜10のカルボン酸のアンモニウム塩、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機酸のアンモニウム塩および酢酸アンモニウム等のカルボン酸のアンモニウム塩が挙げられ、好ましいアンモニウム塩としては、安息香酸アンモニウム、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム等が挙げられる。
【0078】
本発明アルキレンオキサイド製造方法における反応は、連続的に行うことが好ましい。例えば、アセトニトリル含有溶剤及び触媒が収容されたエポキシ化反応槽の中に、原料を連続的に供給して、当該エポキシ化反応槽の中で本発明アルキレンオキサイド製造方法における反応を進行させる。
【0079】
本発明アルキレンオキサイド製造方法における反応において、「酸素及び水素」から「過酸化水素」を発生させる場合には、反応器に供給する酸素と水素との混合ガスにおける酸素と水素との分圧比としては、例えば、酸素:水素=1:50〜50:1の範囲を挙げることができる。好ましくは、酸素:水素=1:10〜10:1の範囲が挙げられる。酸素:水素=1:50よりも酸素の分圧が高いとプロピレンオキサイドの生成速度が向上する傾向があることから好ましく、酸素:水素=50:1よりも酸素の分圧が低いとプロピレンの炭素・炭素二重結合が水素原子で還元された副生物の生成が低減され、プロピレンオキサイドへの選択性が向上する傾向があることから好ましい。
【0080】
また、酸素と水素との混合ガスは、希釈ガスの共存下で取り扱うことが好ましい。ここで「希釈ガス」としては、例えば、窒素、アルゴン、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン等を挙げることができる。好ましくは、窒素、プロパン等が挙げられる。より好ましくは、例えば、窒素等を挙げることができる。
【0081】
酸素、水素、プロピレン及び希釈ガスを混合して取り扱う場合には、その混合比率について、希釈ガスが窒素ガスである場合を例として説明すると、水素及びプロピレンの合計濃度が4.9体積%以下、酸素濃度は9体積%以下、残りは窒素ガスである場合、又は、水素及びプロピレンの合計濃度が50体積%以上、酸素濃度が50体積%以下、残りが窒素ガスである場合が好ましい。
【0082】
酸素として、酸素ガスの他、酸素を含む空気を用いてもよい。酸素ガスとしては、例えば、安価な圧力スウィング法で製造した酸素ガス、深冷分離等で製造した高純度酸素ガス等を挙げることができる。
酸素の供給量としては、供給プロピレン1モルに対して、例えば、0.005モル〜10モルの範囲を挙げることができる。好ましくは、0.05モル〜5モルの範囲が挙げられる。
【0083】
水素としては、例えば、炭化水素を水蒸気改質して得られたもの等を挙げることができる。水素の純度としては、例えば、80体積%以上を挙げることができる。好ましくは、90体積%以上が挙げられる。水素の供給量としては、供給プロピレン1モルに対して、例えば、0.05モル〜10モルの範囲を挙げることができる。好ましくは、0.05モル〜5モルの範囲が挙げられる。
【0084】
本発明アルキレンオキサイド製造方法における反応において、「酸素及び水素」から「過酸化水素」を発生させる場合には、オキシラン化合物への選択性を更に増大させる傾向があることから、キノイド化合物を反応系内に存在させることが好ましい。
【0085】
前記キノイド化合物としては、例えば、式(1)

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子を表すか、又は、RとRと、若しくは、RとRとが、互いに結合して、R、R、R及びRのそれぞれが結合している炭素原子とともに、置換基を有していてもよいベンゼン環若しくは置換基を有していてもよいナフタレン環を形成していてもよい。X及びYはそれぞれ独立に、酸素原子若しくはNH基を表す。)
で示される化合物等を挙げることができる。
【0086】
式(1)で示される化合物としては、例えば、
1)式(1)において、R、R、R及びRが水素原子であり、X及びYが共に酸素原子であるキノン化合物(1A)、
2)式(1)において、R、R、R及びRが水素原子であり、Xが酸素原子であり、YがNH基であるキノンイミン化合物(1B)、
3)式(1)において、R、R、R及びRが水素原子であり、X及びYがNH基であるキノンジイミン化合物(1C)
等を例示することができる。
【0087】
式(1)で表される化合物の他の例示として、式(2)

(式中、XおよびYは式(1)において定義されたとおりであり、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基もしくはアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基)を表す。)
で示されるアントラキノン化合物等を挙げることができる。
【0088】
式(1)で示される化合物におけるX及びYとしては、例えば、酸素原子等を好ましく挙げることができる。
式(1)で示される化合物としては、例えば、ベンゾキノン、ナフトキノン等のキノン化合物;アントラキノン;例えば、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−ブチルアントラキノン、2−t−アミルアントラキノン、2−イソプロピルアントラキノン、2−s−ブチルアントラキノン、2−s−アミルアントラキノン等の2−アルキルアントラキノン化合物;例えば、1,3−ジエチルアントラキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2,7−ジメチルアントラキノン等のポリアルキルアントラキノン化合物;例えば、2,6−ジヒドロキシアントラキノン等のポリヒドロキシアントラキノン化合物;例えば、ナフトキノン、1,4−フェナントラキノン等のp−キノイド化合物;例えば、1,2−フェナントラキノン、3,4−フェナントラキノン及び9,10−フェナントラキノン等のo−キノイド化合物;
等を挙げることができる。好ましくは、例えば、アントラキノン、2−アルキルアントラキノン化合物(式(2)において、X及びYが酸素原子を表し、Rがアルキル基を表し、Rが水素を表し、R及びRが水素原子を表す。)等が挙げられる。
【0089】
本発明アルキレンオキサイド製造方法における反応において、このようなキノイド化合物の使用量としては、溶剤1kgあたり、例えば、0.001mmol〜500mmolの範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、0.01mmol〜50mmolの範囲が挙げられる。
【0090】
前記キノイド化合物は、キノイド化合物のジヒドロ体を反応系内で酸素等を用いて酸化させることにより調製することもできる。例えば、9,10−アントラセンジオール等のキノイド化合物又はヒドロキノン等が水素化された化合物を液相中に添加することにより、反応系内で酸素酸化してキノイド化合物を発生させて使用してもよい。
前記「キノイド化合物のジヒドロ体」としては、例えば、式(1)で示される化合物のジヒドロ体である式(3)

(式中、R、R、R、R、X及びYは、前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物、式(2)で示される化合物のジヒドロ体である式(4)

(式中、X、Y、R、R、R及びRは前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物等を挙げることができる。
式(3)で示される化合物及び式(4)で示される化合物のうち、好ましい化合物としては、前記の好ましいキノイド化合物に対応するジヒドロ体を挙げることができる。また、式(3)で示される化合物及び式(4)で示される化合物におけるX及びYとしては、例えば、酸素原子を好ましく挙げることができる。
【0091】
次に、アルキレンオキサイド製造等に長期間使用した結果、触媒活性が低下した本パラジウム含有触媒の触媒活性を回復若しくは再生させるには、予め、プロピレン等の炭素ガス(好ましくは、実質的にプロピレンのみからなる炭素ガス)と本パラジウム含有触媒とを接触させればよい。
【0092】
本パラジウム含有触媒と、プロピレン等の炭素ガスとの接触は、如何なる方法を用いてもよいが、(1)本パラジウム含有触媒を反応器に充填した後、保温下で前記炭素ガスを流通させる乾式法、(2)オートクレーブ等の密閉容器内で溶媒等に懸濁させた、本パラジウム含有触媒を、前記炭素ガスと共に混合し保温する、あるいは前記炭素ガスをバブリング等で流通させる湿式法、等が例示される。
【0093】
前記触媒活性回復・再生工程の温度としては、例えば、25℃〜500℃の範囲、好ましくは、例えば、50℃〜300℃、より好ましくは、例えば、100℃〜200℃の範囲を挙げることができる。また前記触媒活性回復・再生工程の圧力としては、例えば、ゲージ圧力で0MPa〜10MPaの範囲を挙げることができる。
【0094】
前記触媒活性回復・再生工程の接触時間の下限としては、例えば、10分間、好ましくは、例えば、2時間、より好ましくは、例えば、10時間、更に好ましくは、例えば、12時間を挙げることができる。また前記触媒活性回復・再生工程の接触時間の上限としては、例えば、120時間、好ましくは、例えば、72時間、より好ましくは、例えば、30時間、例えば、更に好ましくは、例えば、24時間を挙げることができる。
【0095】
前記接触工程においては、パラジウムと担体とを含むパラジウム含有組成物と共に、後述するチタノシリケート含有触媒と混合された状態であっても構わない。
【0096】
更に、本パラジウム含有触媒は、酸素及び水素から過酸化水素を製造するための触媒として用いることもできる。以下、当該過酸化水素の製造方法について説明する。
【0097】
本パラジウム含有触媒を利用した過酸化水素の製造方法は、本パラジウム含有触媒の存在下、酸素と水素とを反応させる工程を含む。
【0098】
前記工程においては、酸素及び水素が必要である。水素及び酸素は、任意の供給源を使用することができるが、例えば、酸素の供給源としては、深冷分離等で製造された高純度の酸素ガス、安価な圧力スウィング法で製造された酸素ガス、空気等を挙げることができる。
前記工程において使用される水素と酸素とのモル比(H:O)としては、例えば、1:50〜50:1の範囲を挙げることができる。好ましくは、1:10〜10:1の範囲が挙げられる。より好ましくは、例えば、1:5〜5:1の範囲を挙げることができる。
【0099】
前記工程においては、酸素及び水素に加えて、不活性ガスを希釈のために使用することができる。適当な不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素、二酸化炭素等を挙げることができる。好ましくは、例えば、窒素等が挙げられる。当該不活性ガスを反応系内に存在させることより、反応混合物の中の酸素及び水素のレベルを爆発限界外に有利に保持することが可能となる。
【0100】
前記工程は、溶媒の存在下で実施すればよい。
前記工程において用いられる溶媒としては、例えば、水、有機溶媒又はその両者の混合物等を挙げることができる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、グリセリン等の炭素数1〜12のアルコール溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペタノン、シクロヘキセノン等の炭素数3〜12のケトン溶媒、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル等の炭素数2〜12のニトリル溶媒、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル溶媒、例えば、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、エチレンジクロリド、クロロホルム等の炭素数5〜12の脂肪族炭化水素溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の炭素数6〜12の芳香族炭化水素溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールジアセテート等のエステル溶媒又はそれらの混合物等を挙げることができる。好ましくは、例えば、ニトリル溶媒若しくはアルコール溶媒の単独、又は、ニトリル溶媒若しくはアルコール溶媒と水との混合溶媒等が挙げられる。より好ましくは、例えば、アセトニトリル若しくはメタノールと水との混合溶媒等を挙げることができる。
水と有機溶媒との混合物を使用する場合における、水と有機溶媒との比率(重量比)としては、例えば、90:10〜0.01:99.99の範囲を挙げることができる。好ましくは、50:50〜0.1:99.9の範囲が挙げられる。
【0101】
前記の過酸化水素の製造方法は、連続フロー、セミバッチ、バッチ等の各種モード等で実施することができる。好ましくは、連続フローモードで実施される。本パラジウム含有触媒は、スラリー若しくは固定床中で使用することができる。
【0102】
前記の過酸化水素の製造方法における反応温度としては、例えば、0℃〜100℃の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、20℃〜60℃の範囲が挙げられる。
前記の過酸化水素の製造方法における反応圧力のうち、下限値としては、例えば、0.1MPaを挙げることができる。好ましくは、例えば、1MPaが挙げられる。一方、上限値としては、例えば、20MPaを挙げることができる。好ましくは、例えば、10MPaが挙げられる。
【0103】
前記の過酸化水素の製造方法は、酸の存在下で実施することが有利である場合がある。
前記の過酸化水素の製造方法において用いられる酸として、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸等の無機酸、ピロリン酸、酢酸等の有機酸等を挙げることができる。
前記の過酸化水素の製造方法において用いられる酸の使用量としては、反応混合物の1重量部に対して、例えば、百万分の0.1〜百万分の1000の範囲の重量部を挙げることができる。好ましくは、例えば、百万分の0.1〜百万分の100の範囲の重量部が挙げられる。より好ましくは、例えば、百万分の1〜百万分の10の範囲の重量部を挙げることができる。
【実施例】
【0104】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
【0105】
<実施例で用いられる各種の分析装置>
(元素分析方法)
本パラジウム含有触媒や、パラジウム含有組成物や、チタノシリケート含有触媒に含まれるPd(パラジウム)、Ti(チタン)、Si(ケイ素)の含有量は、アルカリ融解−硝酸溶解−ICP発光分析法に基づき測定した。即ち、白金坩堝にサンプル20mgを量り取り、当該サンプルの上に炭酸ナトリウムを被せた後、これにガスバーナーで融解操作を施した。融解後、純水及び硝酸で白金坩堝中の内容物を加熱溶解し、次いで、純水で定容した後、得られた測定溶液をICP発光分析装置(ICPS−8000 島津製作所製)にて分析し、各元素を定量した。
また、チタノシリケート含有触媒に含まれるN(窒素)含量は、10−20mgに秤量したサンプルを、スミグラフ(住友化学分析センター製)を用いて酸素循環燃焼・TCD検出方法に基づき測定した(反応温度850℃、還元温度600℃)。分離カラムとして、ポーラスポリマービーズ充填カラムを用い、標準試料としてアセトアニリドを使用した。
【0106】
(X線回折法(XRD))
本発明アルキレンオキサイド製造方法で用いられるチタノシリケート含有触媒を、以下の装置及び測定条件でX線回折パターンを測定した。
・装置:(株)リガク製RINT2500V
・X線(源):Cu−Kα
・出力:40kV−300mA
・走査範囲:2θ=0.75〜30°
・走査速度:1°/分
本パラジウム含有触媒を、以下の装置及び測定条件でX線回折パターンを測定した。
・装置:(株)リガク製RINT2500V
・X線(源):Cu−Kα
・出力:40kV−300mA
・走査範囲:2θ=30〜90°
・走査速度:1°/分
【0107】
(紫外可視吸収スペクトル(UV−Vis))
本発明アルキレンオキサイド製造方法で用いられるチタノシリケート含有触媒を、メノウ乳鉢でよく粉砕し、更にペレット化(7mmφ)することにより測定用サンプルを調製した。得られた測定用サンプルについて、以下の装置及び測定条件で紫外可視吸収スペクトルを測定した。
・装置:拡散反射装置(HARRICK製 Praying Mantis)
・付属品:紫外可視分光光度計(日本分光製 V−7100)
・圧力:大気圧
・測定値:反射率
・データ取込時間:0.1秒
・バンド幅:2nm
・測定波長:200〜900nm
・スリット高さ:半開
・データ取込間隔:1nm
・ ベースライン補正(リファレンス):BaSO4ペレット(7mmφ)
【0108】
(実施例1:担体の前処理)
細孔容積が1.22cc/gの活性炭(和光純薬製、商品名:活性炭素、粉末)20gを100℃の熱水10Lを用いて洗浄した後、これを窒素気流下、150℃にて6時間乾燥させることにより、洗浄された活性炭(以下、洗浄活性炭と記すことがある。)を調製した。
【0109】
(参考対照例1:パラジウム含有組成物Aの調製)
実施例1で得られた洗浄活性炭 20gと水300mLとを1Lナスフラスコの中に加え、空気下、20℃にて撹拌した。この懸濁液に、Pdコロイド(日揮触媒化成製、特開2002−294301号公報、実施例1等参照)1.90 mmolを含む水溶液100 mLを空気下、室温にてゆっくり滴下した。滴下終了後、さらに懸濁液を空気下、室温にて8時間撹拌した。攪拌終了後、ロータリーエバポレータを用いて水分を除去し、80℃にて6時間真空乾燥し、パラジウム含有組成物Aを得た。前記のパラジウム含有組成物Aの中に含まれたパラジウムの濃度は、パラジウム金属換算で1.09重量%(ICP発光分析に基づく分析値)であった。
【0110】
(実施例2:本パラジウム含有触媒Aの調製)
参考対照例1で得られたパラジウム含有組成物A 10gをガラス製焼成管に充填し、25℃にて100%プロピレンガスを10mL/分の流量で固体上を通過させた。さらに、プロピレンガス流通下、内容物を2時間かけて200℃にまで昇温し、さらに同温度で6時間保持した。終了後、速やかに窒素ガス100mL/分に切り替え、室温下で放冷することで本パラジウム含有触媒Aを得た。前記のパラジウム含有触媒Aの中に含まれたパラジウムの濃度は、パラジウム金属換算で1.09重量%(ICP発光分析に基づく分析値)であった。ここで、上記で得られた本パラジウム含有触媒AのX線回折パターンを図1に示す。本パラジウム含有触媒Aでは、パラジウム金属の(111)面の結晶面間隔の値が2.270Å以上となっていることが明らかである。
【0111】
(実施例3:チタノシリケート含有触媒の製造)
空気雰囲気下、室温(22℃)にて、ピペリジン899gとイオン交換水2402gとを混合し、これを撹拌した。得られた混合物に、TBOT(テトラ−n−ブチルオルソチタネート)46gを滴下し、これを撹拌しながら溶解させた。TBOTが溶解した後、前記混合物にホウ酸565gを加え、撹拌しながら溶解させた。
次いで、得られた混合物に、ヒュームドシリカ(キャボット製cab-o-sil M7D)410gを加え、空気雰囲気下で、撹拌しながら溶解させた後、更に1.5時間熟成させた。2枚のアンカー型撹拌翼を具備した5Lオートクレーブ内に、熟成させた溶液を移した後、当該オートクレーブを密閉した。アルゴンガスを用いて1.5MPa(ゲージ圧)で気密テストを行った後、脱圧して、前記オートクレーブを再び密閉した。
次いで、前記アンカー型撹拌翼を回転させながら、前記オートクレーブ内にある内容物を、8時間かけて150℃まで昇温した。同温度で120時間保持した後、前記オートクレーブ内にある内容物を冷却することにより、反応物として懸濁溶液を得た。
得られた懸濁溶液をろ過した後、イオン交換水で濾上物を、洗浄されたろ液のpHが10付近になるまで洗浄した。
次いで、洗浄後の濾上物を、その質量減少が見られなくなるまで乾燥(乾燥温度:50℃)した。得られた乾燥物をイオン交換水で洗浄及び乾燥することにより、約520gの層状化合物を得た。上記操作を6回繰り返して、計3120gの層状化合物を得た。
空気雰囲気下、20℃〜30℃の外気温にて、グラスライニングが施された金属製容器(200L、ジャケット及び還流管を具備する。)に、得られた層状化合物3kgと2M硝酸水溶液158kgとTBOT0.38kgとを仕込んだ。当該容器のジャケット温度を115℃まで昇温し、同温度で9時間に保持し、更にジャケット温度124℃に昇温し、同温度で7時間還流させた。還流後、ジャケットの加熱を止め、内容物を室温まで放冷させた。
得られた内容物をろ過した後、イオン交換水で濾上物を、洗浄されたろ液のpHが5付近になるまで洗浄した。
次いで、洗浄後の濾上物を、その質量減少が見られなくなるまで乾燥(乾燥温度:80℃)することにより、白色固体を得、更に当該白色固体を粉砕することにより、白色粉末を得た。得られた白色粉末の一部をガラス管に充填し、これを6L(0℃、1atm換算)/時間の窒素気流下、室温から530℃まで2時間で昇温し、同温度で2時間保持した後、窒素気流の代わりに6L(0℃、1atm換算)/時間の空気気流に切替えて、530℃を4時間保持した。
このようにして焼成処理された白色粉末150g、ピペリジン300g及びイオン交換水600gを、空気雰囲気下、室温にて、1.5Lオートクレーブ中に仕込んだ。仕込んだ内容物を、同雰囲気下、同温度にて撹拌しながら溶解させた後、更に1.5時間熟成させた。1枚のアンカー型撹拌翼を具備した1.5Lオートクレーブ内に、熟成させた溶液を移した後、当該オートクレーブを密閉した。アルゴンガスを用いて1.0MPa(ゲージ圧)で気密テストを行った後、脱圧して、前記オートクレーブを再び密閉した。
次いで、前記アンカー型撹拌翼を回転させながら、前記オートクレーブ内にある内容物を、4時間かけて150℃まで昇温した。その後、160℃を目安として150〜170℃の範囲の温度を保持するようにして、前記内容物を1日間加熱した。加熱後、前記オートクレーブ内にある内容物を冷却することにより、反応物として懸濁溶液を得た。
得られた懸濁溶液をろ過した後、100℃近くまで加熱したイオン交換水で濾上物を、洗浄されたろ液のpHが9付近になるまで洗浄することにより、白色固体を得た。
得られた白色固体を、真空乾燥器を用いて150℃で十分乾燥した後、粉砕することにより白色粉末を得た。元素分析結果によれば、前記白色粉末のTi含有量は2.06質量%、Si含有量は36.3質量%、N含有量は0.91重量%であった。また前記白色粉末のX線回折パターンは、12.4d/Å、11.2d/Å、9.0d/Å、6.2d/Å、3.9d/Å、3.4d/Åのピークを有することが確認された。さらに前記白色粉末の200nm〜400nmの波長領域における紫外可視吸収スペクトルが213nmに最大の吸収ピークを示すことが判明し、Ti−MWW前駆体であることが確認された。
【0112】
(実施例4:本発明アルキレンオキシド製造方法1)
容量0.5Lのオートクレーブ内に、実施例3で得られたチタノシリケート含有触媒 1.14g、実施例2で得られた本パラジウム含有触媒A 0.53g及び水/アセトニトリル=30/70(重量比)の溶液 117gを仕込んだ後、前記オートクレーブを密閉した。
次いで、酸素/水素/窒素/プロピレンの体積比が3.8/3.1/93.0/86.9/6.3である原料ガスを107NL/hの速度で前記オートクレーブ内に供給し、且つ、0.7mmol/kgのアントラキノン、3.0mmol/kgのリン酸水素2アンモニウム塩を含む水/アセトニトリル=30/70(重量比)の溶液を117g/hの速度で前記オートクレーブ内に供給し、当該オートクレーブからフィルターを介して反応混合物を抜き出すことにより、連続式反応を行った。尚、連続式反応の条件は、温度60℃、圧力0.8MPa(ゲージ圧)、滞留時間60分であった。
反応開始から3時間後及び5時間後にサンプリングを実施し、サンプリングされた液相及び気相を、ガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果、プロピレンオキサイドの生成量は73.2mmol/g(パラジウム担持物)/hであった(3時間後での結果と5時間後での結果との平均)。
【0113】
(参考対照例2:参考対照アルキレンオキシド製造方法1)
本パラジウム含有触媒Aの代わりに、参考対照例1で得られたパラジウム含有組成物を用いること以外は実施例4と同様な方法に従い、プロピレンオキサイドの製造を行った。反応開始から3時間後及び5時間後にサンプリングを実施し、サンプリングされた液相及び気相を、ガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果、プロピレンオキサイドの生成量は70.2mmol/g(パラジウム担持物)/hであった(3時間後での結果と5時間後での結果との平均)。

【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明によれば、チタノシリケート含有触媒と併用することにより、酸素、水素及びプロピレンからプロピレンオキサイドを製造するための反応において、結果としてアルキレンオキサイドの高い生成量を与える製造方法を提供することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウムと担体とを含むパラジウム含有組成物を、プロピレンと接触させて得られるパラジウム含有触媒と、チタノシリケート含有触媒との存在下において、酸素、水素及びオレフィンを反応させる工程を含むことを特徴とするアルキレンオキサイドの製造方法。
【請求項2】
前記オレフィンが、プロピレンであることを特徴とする請求項1記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
【請求項3】
前記チタノシリケート含有触媒が、格子面間隔表示で下記の位置にピークを有するX線回折パターンを示すチタノシリケート粒子を含むことを特徴とする請求項1又は2のいずれかの請求項記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
<X線回折パターンにおけるピークの格子面間隔表示による位置(格子面間隔d/Å)>
12.4±0.8、10.8±0.5、9.0±0.3、6.0±0.3、3.9±0.3、3.4±0.1
【請求項4】
前記工程が、酸素、水素及びオレフィンを溶媒存在下で反応させる工程であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの請求項記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
【請求項5】
前記溶媒が、有機溶媒であることを特徴とする請求項4記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
【請求項6】
前記溶媒が、有機溶媒及び水の混合溶媒であることを特徴とする請求項4記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
【請求項7】
前記有機溶媒が、アセトニトリルであることを特徴とする請求項5又は6のいずれかの請求項記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
【請求項8】
担体が、活性炭、AlおよびZrOからなる群から選ばれる担体であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかの請求項記載のアルキレンオキサイドの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−23462(P2013−23462A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158655(P2011−158655)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】