説明

アルキレングリコールの調製方法

本発明は、アルケンからアルキレングリコールを調製する方法を提供する。アルキレンオキシド反応器からのガス組成物を、垂直に積層された棚段の塔を含み、または充填塔を含むアルキレンオキシド吸収装置に供給する。少なくとも20重量%の水を含む貧吸収液をアルキレンオキシド吸収装置に供給し、カルボキシル化および加水分解を促進する1種以上の触媒の存在下でガス組成物と接触させる。アルキレンオキシド吸収装置に入るアルキレンオキシドの少なくとも50%は、アルキレンオキシド吸収装置内で変換される。富吸収液を吸収装置から抜き取り、仕上げ反応器および/またはフラッシュ容器もしくはライトエンドストリッパーに任意選択で供給し、続いて脱水および精製に供して精製されたアルキレングリコール生成物流を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルケンからアルキレングリコールを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モノエチレングリコールは、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタラート(PET)プラスチックおよび樹脂の製造において原料として使用される。モノエチレングリコールは、自動車用不凍液中にも取り込まれる。
【0003】
モノエチレングリコールは、典型的には、エチレンから順次調製されるエチレンオキシドから調製される。エチレンおよび酸素は、典型的には10から30barの圧力および200から300℃の温度で酸化銀触媒上に通され、エチレンオキシド、二酸化炭素、エチレン、酸素および水を含む生成物流が生成される。生成物流中のエチレンオキシド量は、通常、約0.5から10重量%である。生成物流はエチレンオキシド吸収装置に供給され、エチレンオキシドは水を主として含有する再循環溶媒流により吸収される。エチレンオキシド枯渇流は、二酸化炭素吸収塔に部分的にまたは完全に供給され、吸収塔において二酸化炭素が再循環吸収液流により少なくとも部分的に吸収される。再循環吸収液流により吸収されないガスは、二酸化炭素吸収塔を迂回する任意のガスと再び合わせられ、エチレンオキシド反応器に再循環される。
【0004】
エチレンオキシド吸収装置を出る溶媒流は、富吸収液(fat absorbent)と称される。富吸収液はエチレンオキシドストリッパーに供給され、ストリッパーにおいてエチレンオキシドが富吸収液から蒸気流として取り出される。エチレンオキシド枯渇溶媒流は、貧吸収液(lean absorbent)と称され、エチレンオキシド吸収装置に再循環されてさらなるエチレンオキシドを吸収する。
【0005】
エチレンオキシドストリッパーから得られたエチレンオキシドは、貯蔵および販売のために精製することができ、またはさらに反応させてエチレングリコールを提供することができる。ある十分公知のプロセスにおいては、エチレンオキシドは、非触媒プロセスにおいて大過剰な水と反応される。この反応は、典型的には、約90重量%のモノエチレングリコール(残りは主にジエチレングリコール、いくぶんのトリエチレングリコールおよびより高級な同族体少量である。)からなるグリコール生成物流を生成する。別の公知のプロセスにおいては、エチレンオキシドは、二酸化炭素と触媒的に反応されて炭酸エチレンを生成する。炭酸エチレンは、続いて加水分解されてエチレングリコールを提供する。炭酸エチレンを介する反応により、モノエチレングリコールへのエチレンオキシド変換の選択性は顕著に改善される。
【0006】
要求される装置を減らし、エネルギー消費を減らして、エチレンからエチレングリコールを得る方法を簡易化する努力がなされている。GB 2 107 712は、エチレンオキシド反応器からのガスを、エチレンオキシドが炭酸エチレンまたはエチレングリコールおよび炭酸エチレンの混合物に変換される反応器に直接供給する、モノエチレングリコールを調製する方法を記載している。EP 776 890は、エチレンオキシド反応器からのガスを、吸収溶液が炭酸エチレンおよびエチレングリコールを主として含有する吸収装置に供給する方法を記載している。吸収溶液中のエチレンオキシドは、カルボキシル化反応器に供給され、カルボキシル化触媒の存在下で二酸化炭素と反応される。吸収溶液中の炭酸エチレンは、続いて水の添加とともに加水分解反応器に供給され、加水分解触媒の存在下で加水分解に供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】英国特許出願公開第2 107 712号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第776 890号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、アルケンからのアルキレングリコールの製造のさらなる改善を探索した。特に、本発明者らは、コストおよびプラントの複雑性を減らしつつ、高い選択性を確保する方法の提供を探索した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明は、
(a)アルケンを反応器内で触媒の存在下で酸素と反応させてアルキレンオキシド、アルケン、酸素、二酸化炭素および水蒸気を含むガス組成物を生成させ、およびガス組成物から汚染物を除去する段階;
(b)(a)からのガス組成物を、垂直に積層された棚段の塔を含み、または充填塔を含むアルキレンオキシド吸収装置に供給し、貧吸収液をアルキレンオキシド吸収装置に供給し、ガス組成物を、アルキレンオキシド吸収装置内で、カルボキシル化および加水分解を促進する1種以上の触媒の存在下で貧吸収液と接触させ、およびアルキレンオキシド吸収装置から富吸収液を抜き取る段階(貧吸収液は、少なくとも20重量%の水を含み、およびアルキレンオキシド吸収装置に入るアルキレンオキシドの少なくとも50%は、アルキレンオキシド吸収装置内で変換される。);
(c)段階(b)からの富吸収液の一部または全部を、1個以上の仕上げ反応器に任意選択で供給し、および1個以上の仕上げ反応器から生成物流を抜き取る段階(1個以上の仕上げ反応器に入るアルキレンオキシドおよび炭酸アルキレンの少なくとも90%は、1個以上の仕上げ反応器内でアルキレングリコールに変換される。);
(d)段階(b)からの富吸収液または段階(c)における1個以上の仕上げ反応器の少なくとも1個からの生成物流を、フラッシュ容器またはライトエンドストリッパーに任意選択で供給し、およびライトエンドを除去する段階;
(e)段階(b)もしくは(d)からの富吸収液、または段階(c)もしくは(d)からの生成物流を脱水装置に供給し、水を除去し、および脱水された生成物流を提供する段階;および
(f)段階(e)からの脱水された生成物流を精製し、および精製されたアルキレングリコール生成物流を提供する段階
を含む、アルケンからアルキレングリコールを調製する方法を提供する。
【0010】
本発明の方法において、アルキレンオキシド吸収装置は、ガス組成物からアルキレンオキシドを吸収する吸収装置としても、アルキレンオキシドを炭酸アルキレンおよび/またはアルキレングリコールに変換させる反応器としても作用する。アルキレンオキシド吸収装置に入るアルキレンオキシドの少なくとも50%は、炭酸アルキレンおよび/またはアルキレングリコールに変換される。一実施形態においては、本方法は、アルキレンオキシド吸収装置内で変換されないアルキレンオキシドおよび炭酸アルキレンのさらなる変換を提供する1個以上の仕上げ反応器をも使用する。
【0011】
本発明の方法において、カルボキシル化および加水分解は、垂直に積層された棚段の塔を含み、または充填塔を含むアルキレンオキシド吸収装置内で行う。このような吸収装置は、化学反応ではなく物質移動プロセスに慣用的に使用される。GB 2 107 712に開示の方法においては、エチレンオキシド反応器からのガスは、カルボキシル化反応器または加水分解反応器に直接移り、この反応器の性質は規定されていない。本発明者らは、驚くべきことに、垂直に積層された棚段の塔を含み、または充填塔を含むアルキレンオキシド吸収装置が吸収および反応の二重の機能を実施することができることを実証した。
【0012】
本発明の方法は、高い変換および選択性を達成しつつ、本方法を実施するために使用される装置を減らすという要求の均衡を保つ。吸収装置、カルボキシル化反応器および加水分解反応器を使用するEP766890に開示の方法とは対照的に、本発明の方法は、吸収装置内でアルキレンオキシドの顕著な変換を達成し、これにより反応容器についての要求を減らす。本発明の方法は、仕上げ反応器を任意選択で使用するが、仕上げ反応器は、典型的には、カルボキシル化および加水分解の大部分が行われる先行技術の方法における反応器より顕著に小さいものであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による方法を示す模式図である。
【図2】本発明の別の実施形態による方法を示す模式図である。
【図3】本発明の別の実施形態による方法を示す模式図である。
【図4】本発明の別の実施形態による方法を示す模式図である。
【図5】本発明の別の実施形態による方法を示す模式図である。
【図6】アルキレンオキシド吸収塔の塔底また集液部の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、アルケンからアルキレングリコールを調製する方法を提供する。
【0015】
【化1】

、R、RおよびRは、好ましくは、水素または1から6個の炭素原子、より好ましくは1から3個の炭素原子を有する置換されていてもよいアルキル基から選択される。置換基としては、ヒドロキシ基のような部分が存在してよい。好ましくは、R、RおよびRは、水素原子を表し、Rは、水素または非置換C−C−アルキル基を表し、より好ましくは、R、R、RおよびRは全て、水素原子を表す。
【0016】
従って、好適なアルケンの例は、エチレンおよびプロピレンを含む。本発明においては、最も好ましいアルケンはエチレンである。
【0017】
アルケンは、反応器内で触媒の存在下で酸素と反応させてアルキレンオキシド、アルケン、酸素、二酸化炭素および水蒸気を含むガス組成物を生成させる。酸素は、酸素または空気として供給してよいが、好ましくは酸素として供給する。バラストガス、例えばメタンまたは窒素は、典型的には、高酸素レベルにおける操作を可燃性混合物を生じさせることなく可能にするために供給する。調節剤、例えばモノクロロエタンまたはジクロロエタンは、エチレンオキシド触媒性能制御のために供給することができる。アルケン、酸素、バラストガスおよび調節剤は、好ましくは、アルキレンオキシド吸収装置から(任意選択で二酸化炭素吸収塔を介して)アルキレンオキシド反応器に供給される再循環ガスに供給する。
【0018】
アルキレンオキシド反応器は、典型的には、多管型の固定床反応器である。触媒は、好ましくは、微細に分散された銀および任意選択で担体材料上の助触媒金属、例えばアルミナである。反応は、好ましくは、1MPa超および3MPa未満の圧力で、200℃超および300℃未満の温度で実施する。アルキレンオキシド反応器からのガス組成物は、好ましくは、1個以上の冷却器内で、好ましくは1つ以上の温度レベルにおける流の発生により冷却する。
【0019】
汚染物は、ガス組成物をアルキレンオキシド吸収装置に供給する前に、ガス組成物から除去する。考えられる汚染物は、酸、エステル、アルデヒド、アセタールおよび有機ハロゲン化物を含む。汚染物を除去する好ましい方法は、好ましくはガス組成物を冷却された再循環水溶液と接触させることによる急冷である。急冷は、好ましくは、アルキレンオキシド吸収装置と同一容器内で実施し;急冷区画は、好ましくはアルキレンオキシド吸収装置の垂直に積層された棚段または充填物の下方にある。再循環水溶液の一部は、急冷区画から抜出流として抜き取ることができ、抜出流中の任意のアルキレンオキシドは慣用の方法により回収することができる。急冷後、ガス組成物は、ガス組成物をアルキレンオキシド吸収装置に供給する前に、好ましくはアルキレンオキシド反応器から出現する高温ガス組成物との熱統合により再加熱することができる。
【0020】
酸化段階(a)からのガス組成物は、垂直に積層された棚段の塔を含み、または充填塔を含むアルキレンオキシド吸収装置に供給する。棚段または充填塔は、吸収液およびガス組成物が接触するための表面積を提供し、二相間の物質移動が容易になる。さらに、棚段は、液相反応を行うことができる相当の液体体積を提供する。アルキレンオキシド吸収装置が一連の垂直に積層された棚段を含む実施形態においては、ガスは、棚段を上向きに通過することができ、液体は、棚段から棚段に下向きに流れることができる。好ましくは、塔は、少なくとも20個の棚段を含み、より好ましくは少なくとも30個の棚段を含む。好ましくは、塔は、100個未満の棚段を含み、より好ましくは70個未満の棚段を含む。棚段がより多ければ塔の吸収能および反応体積が増大するが、追加の棚段を追加することにより費用が増大する。アルキレンオキシド吸収装置が充填塔を含む実施形態においては、慣用の充填物、例えば規則充填物、不規則充填物および触媒蒸留内部構造物を使用することができる。
【0021】
酸化段階(a)からのガス組成物は、好ましくは、アルキレンオキシド吸収装置の塔底において供給する。アルキレンオキシド吸収装置が垂直に積層された棚段の塔を含む場合、ガス組成物は、好ましくは塔内の塔底棚段の下方において供給する。アルキレンオキシド吸収装置が充填塔を含む場合、ガス組成物は、好ましくは充填材料の下方において供給する。
【0022】
貧吸収液は、アルキレンオキシド吸収装置に供給し、アルキレンオキシド吸収装置内でガス組成物と接触させ、富吸収液(炭酸アルキレンおよびアルキレングリコールを含むガス組成物から吸収された成分を含む。)をアルキレンオキシド吸収装置から抜き取る。一実施形態においては、貧吸収液は、アルキレンオキシド吸収装置の塔頂において供給する。アルキレンオキシド吸収装置が垂直に積層された棚段の塔を含む場合、貧吸収液は、好ましくは、吸収塔内の最上の棚段に供給する。アルキレンオキシド吸収装置が充填塔を含む場合、貧吸収液は、好ましくは、充填材料の上方において供給する。別の実施形態においては、貧吸収液は、貧吸収液がアルキレンオキシド吸収装置に供給される箇所の上方において棚段または充填物が存在するように供給する。この実施形態においては、冷水または冷却された追加の貧吸収液を、アルキレンオキシド吸収装置の塔頂において供給し、アルキレンオキシド吸収装置の塔頂内のアルキレンオキシドまたは汚染物を吸収させることができる。
【0023】
貧吸収液は、少なくとも20重量%の水を含む。貧吸収液中に存在する水は、アルキレンオキシド吸収装置内で行われるアルキレンオキシドおよび炭酸アルキレンの加水分解において使用する。貧吸収液が20重量%未満の水を含む場合、行われる加水分解がおそらく少なくなり、アルキレングリコールへの変換が低くなり得る。また、カルボキシル化および加水分解を促進する1種以上の触媒の性質に応じて、触媒性能は、貧吸収液が20重量%未満の水を含む場合に損なわれ得る。好ましくは、貧吸収液は、少なくとも30重量%の水を含み、より好ましくは少なくとも40重量%の水を含む。好ましくは、貧吸収液は、80重量%未満の水を含む。貧吸収液中の80重量%超の水は、良好な選択性および触媒性能を依然として提供することができるが、水の量がより多ければ、追加の水除去が要求され、エネルギーおよび装置コストを伴う。貧吸収液は、アルキレングリコールおよび炭酸アルキレンを含んでもよい。
【0024】
ガス組成物は、アルキレンオキシド吸収装置内で、カルボキシル化および加水分解を促進する1種以上の触媒の存在下で貧吸収液と接触させる。この接触を1種のみの触媒の存在下で行う場合、触媒は、カルボキシル化および加水分解を促進しなければならない。この接触を2種以上の触媒の存在下で行う場合、各触媒は、カルボキシル化または加水分解を促進することができ、または両反応を促進することができる(ただし、少なくとも1種の触媒はカルボキシル化を促進し、少なくとも1種の触媒は加水分解を促進する。)。好ましい実施形態においては、ガス組成物は、カルボキシル化を促進する第1の触媒および加水分解を促進する第2の触媒を含む少なくとも2種の触媒の存在下で貧吸収液と接触させる。
【0025】
本発明の一実施形態においては、カルボキシル化および加水分解を促進する1種以上の触媒は均一系であり、貧吸収液は1種以上の触媒を含む。カルボキシル化を促進することが知られている均一系触媒は、アルカリ金属ハロゲン化物、例えばヨウ化カリウムおよび臭化カリウム、ならびにハロゲン化有機ホスホニウムまたはアンモニウム塩、例えばヨウ化トリブチルメチルホスホニウム、ヨウ化テトラブチルホスホニウム、ヨウ化トリフェニルメチルホスホニウム、臭化トリフェニル−プロピルホスホニウム、塩化トリフェニルベンジルホスホニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化ベンジルトリエチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウムおよびヨウ化トリブチルメチルアンモニウムを含む。加水分解を促進することが知られている均一系触媒は、塩基性アルカリ金属塩、例えば炭酸カリウム、水酸化カリウムおよび重炭酸カリウムまたはアルカリ金属メタラート(metalates)、例えばモリブデン酸カリウムを含む。好ましい均一系触媒系は、ヨウ化カリウムおよび炭酸カリウムの組み合わせ、ならびにヨウ化カリウムおよびモリブデン酸カリウムの組み合わせを含む。
【0026】
本発明の別の実施形態においては、カルボキシル化および加水分解を促進する1種以上の触媒は不均一系であり、不均一系触媒は、垂直に積層された棚段内または充填塔の充填物内に含有される。カルボキシル化を促進する不均一系触媒は、シリカ上に固定化された第四級アンモニウムおよび第四級ホスホニウムハロゲン化物、不溶性ポリスチレンビーズに結合した第四級アンモニウムおよび第四級ホスホニウムハロゲン化物、ならびに金属塩、例えば第四級アンモニウムまたは第四級ホスホニウム基を含有する固体担体、例えば第四級アンモニウムまたは第四級ホスホニウム基を含有するイオン交換樹脂上に固定化された亜鉛塩を含む。加水分解を促進する不均一系触媒は、固体担体上に固定化されたメタラート、例えば第四級アンモニウムまたは第四級ホスホニウム基を含有するイオン交換樹脂上に固定されたモリブデン酸塩、バナジン酸塩もしくはタングステン酸塩、または塩基性アニオン、例えば固体担体上に固定化された重炭酸塩イオン、例えば第四級アンモニウムまたは第四級ホスホニウム基を含有するイオン交換樹脂上に固定化された重炭酸塩を含む。
【0027】
ガス組成物を、カルボキシル化を促進する第1の触媒および加水分解を促進する第2の触媒を含む少なくとも2種の触媒の存在下で貧吸収液と接触させる実施形態においては、第1の触媒と第2の触媒との比を調節してアルキレンオキシド吸収装置内で消費または放出される二酸化炭素の量を変動させることができる。好ましくは、アルキレンオキシド吸収装置からのガスは、二酸化炭素吸収塔に部分的にまたは完全に供給し、吸収塔において二酸化炭素を再循環吸収液流により少なくとも部分的に吸収させる。アルキレンオキシド吸収装置内で消費または放出される二酸化炭素の量を制御することにより、二酸化炭素吸収塔の収容能およびコストを減らすことができる。
【0028】
アルキレンオキシド吸収装置内の温度は、好ましくは50℃から160℃であり、好ましくは80℃から150℃である。この温度は、慣用の方法における吸収装置内の温度より高く、カルボキシル化および加水分解反応を促進するために要求される。160℃超の温度は、この温度がアルキレングリコールへのアルキレンオキシド変換の選択性を減らし得るので好ましくない。段階(a)からのガス組成物および貧吸収液は両方とも、好ましくは、アルキレンオキシド吸収装置に50℃から160℃の範囲内の温度で供給する。
【0029】
アルキレンオキシド吸収装置内の圧力は、1から4MPaであり、好ましくは2から3MPaである。好ましい圧力は、より安価の装置(例えば、より薄型の壁を有する装置)を要求するより低い圧力と、吸収を増大させ、ガスの体積流量を減らし、これにより装置および管のサイズを減らすより高い圧力との中間である。
【0030】
アルキレンオキシド吸収装置に入るアルキレンオキシドの少なくとも50%は、アルキレンオキシド吸収装置内で変換される。アルキレンオキシドは、カルボキシル化を受けることができ、炭酸アルキレンを提供する。アルキレンオキシドは、加水分解を受けることができ、アルキレングリコールを提供する。さらに、アルキレンオキシドから生成される炭酸アルキレンは、加水分解を受けることができ、アルキレングリコールを提供する。好ましくは、アルキレンオキシド吸収装置に入るアルキレンオキシドの少なくとも60%がアルキレンオキシド吸収装置内で変換され、より好ましくは少なくとも70%が変換される。
【0031】
アルキレンオキシド吸収装置に供給される段階(a)からのガス組成物は、二酸化炭素を含む。ガス組成物は、カルボキシル化の所望レベルを達成するには不十分な二酸化炭素を含有し得ると考えられる。このことは、おそらく段階(a)において触媒の新たなバッチを使用する場合である。二酸化炭素の追加源、例えば仕上げ反応器からの再循環二酸化炭素、二酸化炭素回収ユニットからの、または出発時の二酸化炭素、外部源からの二酸化炭素は、好ましくはアルキレンオキシド吸収装置に供給する。アルキレンオキシド吸収装置に供給される二酸化炭素の全量とアルキレンオキシド吸収装置に供給されるアルキレンオキシドの量との比は、好ましくは5:1から1:3であり、より好ましくは3:1から4:5である。二酸化炭素の量がより多ければ、プロセスの選択性が改善される。それというのも、ほとんどのアルキレンオキシドが二酸化炭素と反応して炭酸アルキレンになり、続いて加水分解されてアルキレングリコールになり、高級グリコールを生成するためのアルキレンオキシドおよびアルキレングリコール間の反応の機会がより少ないからである。しかしながら、二酸化炭素の量がより多ければ、コストがかかり得るプロセスにおける二酸化炭素のための追加の除去能、または触媒性能に悪影響を及ぼすより高い二酸化炭素濃度におけるアルキレンオキシド触媒の操作も要求される。
【0032】
アルキレンオキシド吸収装置内で吸収されないガスは、好ましくは、二酸化炭素吸収塔に部分的にまたは完全に供給し、吸収塔において二酸化炭素を再循環吸収液流により少なくとも部分的に吸収させる。再循環吸収液流により吸収されないガスは、好ましくは、二酸化炭素吸収塔を迂回する任意のガスと再び合わせ、アルキレンオキシド反応器に再循環させる。好ましくは、ガスは、アルキレンオキシド反応器への再循環前に冷却して含水量を減らす。このことは、アルキレンオキシド反応器内の触媒の性能が過剰な水により有害な影響を受け得るので好ましい。ガス流から除去された水は、アルキレンオキシド吸収装置に任意選択で再循環させることができる。
【0033】
カルボキシル化および加水分解を促進する1種以上の触媒がハロゲン含有触媒(例えば、固体担体上に固定化されたアルカリ金属ハロゲン化物、ハロゲン化有機ホスホニウムもしくはアンモニウム塩、または第四級アンモニウムもしくは第四級ホスホニウムハロゲン化物)を含む場合、アルキレンオキシド吸収装置からアルキレンオキシド反応器に再循環されるガスは、ハロゲン化物含有不純物、例えばヨウ化物含有不純物または臭化物含有不純物を含み得る。アルキレンオキシド反応器内の触媒は、これらの不純物により有害な影響を受け得ると考えられる。従って、この実施形態においては、アルキレンオキシド吸収装置からアルキレンオキシド反応器に再循環されるガスは、アルキレンオキシド反応器内の触媒の接触前に、ハロゲン化含有不純物(特に、ヨウ化物含有不純物または臭化物含有不純物)の量を減らすことができる精製吸収剤と接触させることが好ましい。精製吸収剤は、アルキレンオキシド反応器の反応管内、反応管の上流のアルキレンオキシド反応器内、またはアルキレンオキシド反応器の上流の別個の反応器内に位置させることができる。
【0034】
精製吸収剤は、好適には、22から48または82の原子番号、特に22から30の原子番号を有する金属を含むことができる。
【0035】
一実施形態においては、精製吸収剤は、コバルト、クロム、銅、マンガン、ニッケルおよび亜鉛から選択される1種以上の金属を含み、特に、1種以上の金属は、銅、ニッケルおよび亜鉛から選択され、とりわけ、1種以上の金属は、銅を含む。好適には、精製吸収剤は、銅と、22から48の原子番号を有する1種以上の金属とを含む。精製吸収剤は、銅と、マンガン、クロム、亜鉛およびこれらの組み合わせから選択される1種以上の金属とを含むことができる。精製吸収剤は、銅および亜鉛を含むことができる。金属は、還元または酸化物形態で存在してよく、好ましくは酸化物として存在してよい。精製吸収剤は、担体材料を含有してもよい。担体材料は、アルミナ、チタン、シリカ、活性炭またはこれらの混合物から選択されてよい。好ましくは、担体材料はアルミナであってよく、特にα−アルミナであってよい。
【0036】
一実施形態においては、精製吸収剤は、銀、アルカリまたはアルカリ土類金属成分および担体材料を含むことができる。担体材料は、例えば高表面積の担体材料(20m/g超の表面積を有する。)または低表面積の担体材料(1m/g未満の表面積を有する。)であってよい。
【0037】
富吸収液は、好ましくはアルキレンオキシド吸収装置の塔底から、即ち垂直に積層された棚段または充填物の下方において液体を抜き取ることによりアルキレンオキシド吸収装置から抜き取る。
【0038】
本発明の一実施形態においては、段階(b)からの富吸収液の一部または全部を1個以上の仕上げ反応器に供給する。1個以上の仕上げ反応器への供給は、アルキレンオキシドまたは炭酸アルキレンの顕著な量(例えば、少なくとも1%)がアルキレンオキシド吸収装置内でアルキレングリコールに変換されない場合に好ましい。逆に、アルキレンオキシドおよび炭酸アルキレンの大部分(例えば、90%超)がアルキレンオキシド吸収装置内でアルキレングリコールに変換される場合、1個以上の仕上げ反応器は要求されてはならず、本方法において使用される装置はこれにより減らされる。アルキレンオキシド吸収装置内でのアルキレンオキシドの変換を最大にするため、噴霧ノズルをアルキレンオキシド吸収装置の集液部(塔底区画)内で使用して二酸化炭素を分散させ、カルボキシル化を促進することができる。
【0039】
1個以上の仕上げ反応器に入るアルキレンオキシドおよび炭酸アルキレンの少なくとも90%は、1個以上の仕上げ反応器内でアルキレングリコールに変換される。このことは、1個の仕上げ反応器が存在する場合、仕上げ反応器に入るアルキレンオキシドおよび炭酸アルキレンの少なくとも90%は仕上げ反応器内でアルキレングリコールに変換されること、および1個超の仕上げ反応器が存在する場合、第1の仕上げ反応器に入るアルキレンオキシドおよび炭酸アルキレンの少なくとも90%は最後の仕上げ反応器を出る前にアルキレングリコールに変換されることを意味する。好ましくは、1個以上の仕上げ反応器に入るアルキレンオキシドおよび炭酸アルキレンの少なくとも95%が1個以上の仕上げ反応器内でアルキレングリコールに変換され、好ましくは少なくとも98%が変換される。
【0040】
本発明の一実施形態においては、富吸収液の全部を1個以上の仕上げ反応器の少なくとも1個に供給する。本発明の別の実施形態においては、富吸収液の一部を1個以上の仕上げ反応器の少なくとも1個に供給する。好ましくは、富吸収液の10から90重量%を1個以上の仕上げ反応器の少なくとも1個に供給し、最も好ましくは30から70重量%を1個以上の仕上げ反応器の少なくとも1個に供給する。好ましくは、1個以上の仕上げ反応器の少なくとも1個に供給される富吸収液の一部を1個以上の仕上げ反応器の少なくとも1個への供給前に予熱する。好ましくは、富吸収液の一部を100から200℃の範囲内、好ましくは約150℃の温度に熱交換器内で予熱する。
【0041】
1個超の仕上げ反応器が存在する場合、仕上げ反応器は直列に連結されている、即ち、富吸収液は各仕上げ反応器を連続的に通過しなければならないことが好ましい。
【0042】
本発明の一実施形態においては、1個以上の仕上げ反応器の少なくとも1個は邪魔板付反応器であり、邪魔板付反応器は少なくとも4個の区画室を有し、区画室は内部邪魔板により形成されており、内部邪魔板は反応器を通る反応流体のための波状経路を提供する。任意選択で、流を邪魔板付反応器内に注入する。
【0043】
1個以上の仕上げ反応器内では二酸化炭素が生成され得、好ましくは、生成物流が1個以上の仕上げ反応器を出て、再循環されるときに生成物流から分離する。
【0044】
1個以上の仕上げ反応器内の温度は、典型的には100から200℃であり、好ましくは100から180℃である。1個以上の仕上げ反応器内の圧力は、典型的には0.1から3MPaである。
【0045】
段階(b)からの富吸収液または段階(c)における1個以上の仕上げ反応器の少なくとも1個からの生成物流は、フラッシュ容器またはライトエンドストリッパーに任意選択で供給する。ライトエンドは、フラッシュ容器またはライトエンドストリッパー内で除去する。(ライトエンドは、(a)から得られるガス組成物中に存在し、段階(b)において吸収液中に吸収されるガス、例えばアルケン、さらにはバラストガス、例えばメタンである。)
【0046】
フラッシュ容器は、富吸収液が段階(b)からフラッシュ容器に直接移るように、アルキレンオキシド吸収装置の直後に位置させることができる。少なくとも1個の仕上げ反応器が存在する場合、フラッシュ容器は、生成物流が段階(c)からフラッシュ容器に通るように、1個以上の仕上げ反応器の全ての後に位置させることができる。1個超の仕上げ反応器が存在する場合、フラッシュ容器は、富吸収液が段階(b)から少なくとも1個の仕上げ反応器に移り、次いで生成物流がフラッシュ容器に移り、次いでフラッシュ容器からの流が少なくとも別の仕上げ反応器に移るように、仕上げ反応器の間に位置させることができる。
【0047】
フラッシュは、0.01から2MPa、好ましくは0.1から1MPa、最も好ましくは0.1から0.5MPaの圧力におけるものであってよい。
【0048】
ライトエンドストリッパーは、フラッシュ容器の代替として使用することができる。ライトエンドストリッパー内では、二酸化炭素ガスが段階(b)からの富吸収液または段階(c)における1個以上の仕上げ反応器の少なくとも1個からの生成物流を通って分散され、二酸化炭素が液体からライトエンドを効率的に除く。このことは、噴霧ノズルを介するアルキレンオキシド吸収装置の集液部(塔底区画)への二酸化炭素の供給と類似しているが、別個の容器内で行う。ライトエンドストリッパーに供給される二酸化炭素は、好ましくは、ライトエンドストリッパーを出るガスをアルキレンオキシド吸収装置に圧縮せずに供給することができるように、アルキレンオキシド吸収装置内の圧力より高い圧力におけるものである。
【0049】
フラッシュ容器またはライトエンドストリッパーからのライトエンドは、好ましくは、アルキレンオキシド吸収装置に再循環させ;ライトエンドは、段階(a)からのガス組成物をアルキレンオキシド吸収装置に供給する前に段階(a)からのガス組成物と合わせることができ、またはライトエンドは、アルキレンオキシド吸収装置の塔底において供給することができる。アルキレンオキシド吸収装置へのライトエンドの再循環により、プロセスの効率が増大する。それというのも、アルケンを含むライトエンドは回収され、二酸化炭素がプロセスから二酸化炭素抜出流中に除去されるときに失われないからである。
【0050】
好ましくは、段階(b)もしくは(d)からの富吸収液の一部、または段階(c)もしくは(d)からの生成物流の一部を貧吸収液としてアルキレンオキシド吸収装置に再循環させる。
【0051】
段階(b)もしくは(d)からの富吸収液、または段階(c)もしくは(d)からの生成物流は、脱水装置に供給する。脱水装置に供給される流は、好ましくは、アルキレンオキシドまたは炭酸アルキレンをほとんど含まず、即ち、アルキレンオキシドまたは炭酸アルキレンのほとんどは、脱水塔への供給前に、アルキレンオキシド吸収装置内または仕上げ反応器内でアルキレングリコールに変換されている。好ましくは、脱水塔に供給される流中のアルキレングリコールとアルキレンオキシドおよび炭酸アルキレン(合わせたもの)とのモル比は、90:10超であり、より好ましくは95:5超であり、最も好ましくは99:1超である。
【0052】
脱水装置は、好ましくは0.05MPa未満、より好ましくは0.025MPa未満、最も好ましくは約0.0125MPaの圧力で作動する少なくとも1個の真空塔を含む1個以上の塔であることが好ましい。
【0053】
段階(e)からの脱水された生成物流は精製して不純物を除去し、精製されたアルキレングリコール生成物流を提供する。1種以上の触媒が均一系触媒である場合、好ましくはフラッシュ容器内で1種以上の触媒を脱水された生成物流から分離することが必要である。1種以上の均一系触媒は、好ましくは貧吸収液と再び合わせ、アルキレンオキシド吸収装置に供給する。
【0054】
図1は、本発明の方法の好ましい実施形態を示す。エチレン、酸素、メタンおよび調節剤(例えば、モノクロロエタン)は、(1)において再循環ガスに供給する。エチレンオキシド反応器(2)内では、エチレンおよび酸素が反応し、エチレン、酸素、メタン、エチレンオキシド、調節剤および二酸化炭素を含むガス組成物を提供し、ガス組成物を冷却し、急冷部(4)に、急冷区画の塔底棚段の下方において供給する。急冷されたガスを再加熱し、エチレンオキシド吸収塔(3)に、塔底棚段の下方または充填材料の下方において給送する。任意選択で、二酸化炭素回収区画(7)または仕上げ反応器(14)からの追加の二酸化炭素を、エチレンオキシド吸収装置(3)に供給することもでき、またはエチレンオキシド吸収装置への供給前にガスと混合することができる。少なくとも20重量%の水、均一系加水分解触媒および均一系カルボキシル化触媒を含む貧吸収液は、エチレンオキシド吸収装置(3)の塔頂において供給する(5)。エチレンオキシド吸収装置内では、エチレンオキシドおよび二酸化炭素が貧吸収液中に吸収され、反応して炭酸エチレンを提供する。炭酸エチレンおよびエチレンオキシドは水と反応してエチレングリコールを提供する。エチレンオキシド吸収装置(3)内で吸収されないガスは、二酸化炭素回収区画(7)に部分的にまたは完全に供給し、区画において二酸化炭素をガスから取り出す。回収された二酸化炭素流(8)は、エチレンオキシド吸収装置(3)に、直接またはガス給送物との混合により部分的にまたは完全に再循環させることができる。エチレンオキシド吸収塔(3)からのガス、二酸化炭素回収区画(7)からのガスおよび反応器に給送される再び合わせられたガス流は、冷却して含水量を減らすことができる。ガス流から出された液体は、エチレンオキシド吸収塔(3)に任意選択で再循環させることができる。富吸収液は、エチレンオキシド吸収装置塔底から抜き取り(6)、フラッシュ容器(9)に供給し、容器においてライトエンドを除去する。ライトエンド流(10)は、エチレンオキシド吸収装置(3)に、直接またはガス給送物との混合により再循環させることができる。富吸収液流は分割し、一部を熱交換器(12)に給送し、続いて仕上げ反応器(13)に供給する。仕上げ反応器(13)内では、炭酸エチレンのエチレングリコールへのさらなる反応およびエチレンオキシドのエチレングリコールへのさらなる反応を行う。放出された二酸化炭素ガス(14)は、エチレンオキシド吸収装置(3)に、直接またはエチレンオキシド吸収装置給送物との混合により再循環させることができ、または完全にもしくは部分的に抜き出すことができる。仕上げ反応器(13)からの液体生成物流は、脱水装置(15)に供給し、脱水装置において水を除去する。脱水された生成物流は脱水装置(15)から抜き取り、モノエチレングリコール(MEG)精製塔(16)に供給する。グリコール中に溶解したカルボキシル化および加水分解触媒を含む溶液(17)は、MEG精製塔(16)の塔底から抜き取り、仕上げ反応器に供給されない吸収液流(11)との混合後に、貧吸収液(5)としてエチレンオキシド吸収装置(3)に再循環させる。モノエチレングリコール生成物(18)は、MEG精製塔の塔頂区画から抜き取る。補給水(19)を貧吸収液に供給することができる。
【0055】
図2は、エチレンオキシド吸収塔(3)からの富吸収液流(6)を、フラッシュ容器(9)への供給前に、第1の仕上げ反応器(20)に直接供給して全ての残留エチレンオキシドを炭酸エチレンおよび/またはエチレングリコールに変換させる、本発明の方法の代替的な好ましい実施形態を示す。図1と同様、フラッシュ容器の後、流を分割し、一部を熱交換器(12)に給送し、続いて仕上げ反応器(13)に供給し、反応器において炭酸エチレンのエチレングリコールへのさらなる反応およびエチレンオキシドのエチレングリコールへのさらなる反応を行う。図2においては、仕上げ反応器(13)は第2の仕上げ反応器である。
【0056】
図3は、エチレンオキシド吸収塔(3)内の不均一系触媒充填物および仕上げ反応器(13)内の不均一系触媒床を含む、本方法のさらに別の好ましい実施形態を示す。この実施形態においては、MEG精製塔の塔底から必要とされる触媒の再循環流(17)は存在しない。
【0057】
図4は、充填物または棚段がエチレンオキシド吸収塔(3)内に、貧吸収液が塔に入る箇所の上方において存在する実施形態を示す。冷水または吸収液は、塔に、この塔頂充填物または塔頂棚段の上方において給送してエチレンオキシド吸収装置の塔頂内の残留エチレンオキシドおよび/または汚染物を吸収させることができる。
【0058】
図5は、エチレンオキシド吸収塔(3)からのガス、二酸化炭素回収区画(7)からのガスおよび反応器に給送される再び合わせられたガス流を保護床(21aまたは21b)に導通させ、保護床においてEO反応器内のEO触媒を破壊し得るハロゲン含有不純物の微量を除去する実施形態を示す。保護床の最適な操作温度に応じて、保護床は、ガス流内に、ガスをEO反応器入口温度に加熱する前(21a)または加熱した後(21b)に位置させることができる。
【0059】
この実施形態においては、エチレンオキシド吸収塔(3)からの富吸収液流(6)は、ライトエンドストリッピング容器(22)への供給前に、第1の仕上げ反応器(20)に直接供給して全ての残留エチレンオキシドを炭酸エチレンおよび/またはエチレングリコールに変換させる。第2の仕上げ反応器(13)および/または二酸化炭素回収区画(7)からの再循環二酸化炭素は、ストリッピングガスとしてライトエンドストリッパー(22)に給送する。二酸化炭素およびライトエンドのガス流(10)は、エチレンオキシド吸収装置(3)に、直接またはガス給送物との混合により再循環させることができる。ストリッピング容器を出た富吸収液流は、熱交換器(12)に給送し、続いて第2の仕上げ反応器(13)に供給する。第2の仕上げ反応器(13)内では、炭酸エチレンのエチレングリコールへのさらなる反応およびエチレンオキシドのエチレングリコールへのさらなる反応を行う。放出された二酸化炭素ガス(14)は、ライトエンドストリッパー(22)に再循環させる。第2の仕上げ反応器の反応器生成物は分割し、一部を第3の仕上げ反応器(23)に給送する。この第3の仕上げ反応器内で放出された二酸化炭素は、このプロセスから抜き出す(24)。第3の仕上げ反応器(23)からの液体生成物流は、脱水装置(15)に供給し、脱水装置において水を除去する。脱水された生成物流は、脱水装置(15)から抜き取り、モノエチレングリコール(MEG)精製塔(16)に供給する。グリコール中に溶解したカルボキシル化および加水分解触媒を含む溶液(17)は、MEG精製塔(16)の塔底から抜き取り、第3の仕上げ反応器に供給されない第2の仕上げ反応器吸収液流(11)の反応器生成物との混合後に、貧吸収液(5)としてエチレンオキシド吸収装置(3)に再循環させる。
【0060】
図6は、二酸化炭素ガス(100)をノズル(200)に通して液体に供給する、エチレンオキシド吸収塔の塔底または集液部の実施形態を記載する。液位(300)は、塔底棚段または塔充填物の塔底(600)の十分下方において維持する。富吸収液(500)は塔底において出る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アルケンを反応器内で触媒の存在下で酸素と反応させてアルキレンオキシド、アルケン、酸素、二酸化炭素および水蒸気を含むガス組成物を生成させ、およびガス組成物から汚染物を除去する段階;
(b)(a)からのガス組成物を、垂直に積層された棚段の塔を含み、または充填塔を含むアルキレンオキシド吸収装置に供給し、貧吸収液をアルキレンオキシド吸収装置に供給し、ガス組成物を、アルキレンオキシド吸収装置内で、カルボキシル化および加水分解を促進する1種以上の触媒の存在下で貧吸収液と接触させ、およびアルキレンオキシド吸収装置から富吸収液を抜き取る段階(貧吸収液は、少なくとも20重量%の水を含み、およびアルキレンオキシド吸収装置に入るアルキレンオキシドの少なくとも50%は、アルキレンオキシド吸収装置内で変換される。);
(c)段階(b)からの富吸収液の一部または全部を、1個以上の仕上げ反応器に任意選択で供給し、および1個以上の仕上げ反応器から生成物流を抜き取る段階(1個以上の仕上げ反応器に入るアルキレンオキシドおよび炭酸アルキレンの少なくとも90%は、1個以上の仕上げ反応器内でアルキレングリコールに変換される。);
(d)段階(b)からの富吸収液または段階(c)における1個以上の仕上げ反応器の少なくとも1個からの生成物流を、フラッシュ容器またはライトエンドストリッパーに任意選択で供給し、およびライトエンドを除去する段階;
(e)段階(b)もしくは(d)からの富吸収液、または段階(c)もしくは(d)からの生成物流を脱水装置に供給し、水を除去し、および脱水された生成物流を提供する段階;および
(f)段階(e)からの脱水された生成物流を精製し、および精製されたアルキレングリコール生成物流を提供する段階
を含む、アルケンからアルキレングリコールを調製する方法。
【請求項2】
カルボキシル化および加水分解を促進する1種以上の触媒が均一系であり、および貧吸収液が1種以上の触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1種以上の触媒が、ヨウ化カリウムおよび炭酸カリウム、またはヨウ化カリウムおよびモリブデン酸カリウムを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
カルボキシル化および加水分解を促進する1種以上の触媒が不均一系であり、および1種以上の触媒が垂直に積層された棚段内または充填塔の充填物内に含有される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
段階(b)において、二酸化炭素の追加源をアルキレンオキシド吸収装置に供給する、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
段階(b)において、アルキレンオキシド吸収装置内で吸収されないガスを、二酸化炭素吸収塔に部分的にまたは完全に供給し、吸収塔において二酸化炭素を再循環吸収液流により少なくとも部分的に吸収させ、および再循環吸収液流により吸収されないガスを、二酸化炭素吸収塔を迂回する任意のガスと再び合わせ、およびアルキレンオキシド反応器に再循環させる、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
アルキレンオキシドまたは炭酸アルキレンの少なくとも1%がアルキレンオキシド吸収装置内でアルキレングリコールに変換されず、および段階(b)からの富吸収液の一部または全部を1個以上の仕上げ反応器に供給する、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
噴霧ノズルをアルキレンオキシド吸収装置の塔底区画内で使用して二酸化炭素を分散させ、およびカルボキシル化を促進する、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
富吸収液の10から90重量%を予熱し、次いで1個以上の仕上げ反応器の少なくとも1個に供給する、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
段階(b)からの富吸収液または段階(c)における1個以上の仕上げ反応器の少なくとも1個からの生成物流を、フラッシュ容器に供給し、容器においてライトエンドを除去し、およびライトエンドをアルキレンオキシド吸収装置に再循環させる、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
段階(b)からの富吸収液または段階(c)における1個以上の仕上げ反応器の少なくとも1個からの生成物流を、ライトエンドストリッパーに供給し、ストリッパーにおいてライトエンドを二酸化炭素によるストリッピングにより除去し、ならびにライトエンドおよび二酸化炭素をアルキレンオキシド吸収装置に再循環させる、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
段階(b)もしくは(d)からの富吸収液の一部、または段階(c)もしくは(d)からの生成物流の一部を、貧吸収液としてアルキレンオキシド吸収装置に再循環させる、請求項1から11のいずれかに記載の方法。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−535833(P2010−535833A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520523(P2010−520523)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059868
【国際公開番号】WO2009/021830
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】