説明

アルギン酸塩マトリクス粒子

ポリマーの連続相およびオイルの不連続相、ならびに任意でフレーバーまたはフレグランスなどの活性物を有する異種のマトリクス粒子。連続相は、少なくとも1種の充填剤を含む。マトリクス粒子は、高積載効率および低量の表面オイルを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーマトリクス材料の連続相内に分散したオイル含有物の不連続相中のフレーバーおよびフレグランスなどの活性物を封入するマトリクス粒子に関する。オイルは、活性物用の担体として使用してもよく、またはそれ自体で活性物であってもよい。
封入技術はしばしば、繊細な活性物を過酷な環境から保護する手段として、および要求に応じて時間依存性の方法でかかる材料を放出するために用いられる。
【0002】
生産した粒子が、1つの含有物、例えばオイルの貯留容器、または少数の大きな含有物を取り囲むポリマー材料製の殻からなるような方法で封入することが可能である。あるいは、ポリマーマトリクスを含み、その中にオイルの液滴など複数の含有物を分散させたマトリクス粒子を、生産することができる。
かかるマトリクス粒子は、一般的に水中油滴型の乳液から形成され、ここでマトリクス形成ポリマーは水溶性であり、連続相を形成し、そしてオイルは不連続相を形成する。かかるマトリクス粒子の形成に特に有用なポリマーは、アルギン酸塩である。アルギン酸塩は、高水溶性であり、したがって調製するのが容易である。加えて、それらは容易に架橋され、不水溶性マトリクスを形成する。
架橋後に不水溶性粒子を提供するためにアルギン酸塩を使用するマトリクス粒子は、例えば、WO 98/15191からおよびWO 98/15192において既知である。
【0003】
残念なことに、これらの粒子は、多量の表面オイルを有する傾向がある。「表面オイル」は、粒子の表面に生じる望ましくない濃度のオイルを意味する。これはしばしば、当該技術分野で認識されている生産方法の結果であるか(新しく調製した粒子がそれを既に有するような)、または拡散工程により長期間にわたり動的にもたらされ得る。表面オイルの存在は、NMRにより測定してもよく、もしくは貧弱な肉眼的性能特性、例えば、マトリクス粒子は、フリーフロー(free-flow)の粉末というよりむしろ、粘り気があり詰まっている、または一緒に塊になり、凝集体またはケーキを形成している、あるいはオイルの無制御な放出が生じているのを観察することにより、質的に決定してもよい。
【0004】
「表面オイル」は、サンプルマトリクス粒子へ非侵入の試薬におけるサンプルの単純な溶剤洗浄によりサンプルから抽出されるオイルであるサンプルの重量パーセントである。封入されたオイルとは、溶剤との混合およびろ過により抽出不可能なサンプル内の実際上のオイルである。表面オイルは、テトラクロロエチレンなどの無極性溶剤を使用して抽出してもよい。方法は、容易に再現可能であり、NMRによるその定量化には、サンプル重量−重量パーセント表面オイルを計算するために、標準およびブランク点の基準を利用する。液体成分のみがはっきりした信号を生じるため、乾燥マトリクスは、もし水分含有量が低いのであれば、NMRにはっきりした信号を放たないであろうことから、オイル(「総オイル」)であるサンプルの重量−重量パーセンテージを全体として定量化することも可能であり、サンプル内のオイルの総量は、様々な重量または濃度の純粋なオイルについてならびに機器の基準点の測定値となる空の分析チューブについて得られた信号と比較したとき定量化される。NMR測定のために、Bruker MiniSpec mq10 Analyzer(オンタリオ州ミルトン、Bruker Canada Ltd.社製)などの広帯域NMRを使用してもよい。
【0005】
表面オイルを多く有する製品は、フリーフローではないか、あるいは少なくとも部分的に一緒に密着するマトリクス粒子で詰まっていて、ユーザーにとって視覚的に魅力的ではない。さらに、オイルの早過ぎる放出は、保護のないままそれを周囲空気に曝露し、その特性の変化を引き起こすだろう。例えば、フレーバーまたはフレグランスオイルの成分は、分解されるだろう。加えて、成分比、したがって官能特性またはフレーバー組成物のバランスが、より揮発性のある成分の不均衡な蒸発のため、変化するだろう。
【0006】
したがって、大量の水を結合させるアルギン酸塩および他のポリマーが有用な材料であるのに対し、封入におけるそれらの使用に関与する重大な問題がある。
【0007】
表面オイルの問題を、少なくとも1種の充填剤をマトリクス中に組み込むことにより克服できることが見出された。本発明はしたがって、マトリクス内に分散した複数のオイル含有物を含むマトリクス粒子を提供し、該マトリクスは、所望の程度に表面オイルの形成を防止するのに十分な量の架橋ポリマーおよび少なくとも1種の充填剤を含む。
このように、高い積載効率を示すマトリクス粒子を生産することが可能であり、低量の表面オイルを有する粒子を生産することが可能である。マトリクス粒子は典型的に、60%のオイルを乳液に使用した場合、約48〜56%の総オイル含有量(マトリクス粒子内のオイルおよび表面オイル)を有する(上記のNMR試験に従って測定)。
【0008】
マトリクス粒子は、異なる用途に利益をもたらす、異なる粒径分布を有するマトリクス粒子を提供するために、以下に開示する2つの方法のうち1つにより生産することができる。
本出願において使用する「マトリクス粒子」とは、連続相としておよびマトリクス材料として、ポリマー、ならびに不連続相において、マトリクス内に分散したオイル、例えば多数の油滴を含む粒子のことである。親水性マトリクス材料は、例えば、塩橋の形成により架橋され、架橋マトリクス粒子を形成し、それにより、不水溶性になる。
【0009】
ポリマー材料用の充填剤は、プラスチック工学の技術分野において周知である。それらは一般的に、安価で、即入手可能な有機および無機材料であり、材料を広げるためおよび費用削減のために使用される。本発明において有用な充填剤は、不活性、不溶性、非膨張性の物質であり、水中で固体粒子の分散体を形成する。かかる材料の例は、炭酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、リン酸塩、例えば炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、粉末石灰岩、粘土、タルク、二酸化チタン、およびセルロースポリマー、微結晶性セルロース、それらの誘導体などの有機物質ならびに前記物質のいずれかまたはすべての組み合わせを含む。フレーバー分野における用途のために、充填剤はまた、食品成分として許容されなければならないだろう。
【0010】
好ましい充填剤は、微結晶性セルロースである。好ましくは、充填剤を、本発明のマトリクス粒子となるよう、充填剤対ポリマーの比率2:1〜1:3、好ましくは2:1〜1:2、より好ましくは1.5:1〜1:1.5、最も好ましくは約1:1(wt/wt)で処方に追加する。微結晶性セルロースを含むアルギン酸塩マトリクス粒子は、驚くべきことに表面オイルの量を減少させた。
【0011】
「微結晶性セルロース」(MCC)は、塩酸などの鉱酸により、セルロース源、好ましくは繊維性植物材料からのパルプの形状のアルファセルロースを処理することにより生産した、純粋で、部分的に解重合したセルロースである。該酸は、選択的にセルロースポリマー鎖の次数の低い(less ordered)領域を攻撃し、それにより微結晶性セルロースを構成するクリスタリット凝集体を形成する結晶部位を曝露し、遊離させる。そしてこれらを、反応混合物から分離し、洗浄し、分解副産物を除去する。一般的に40〜60パーセントの水分を含有する得られる湿潤した塊は、当該技術分野において、セルロース加水分解物、レベルオフ(level-off)DPセルロース、微結晶性セルロース、微結晶性セルロース湿潤ケーキまたは単純に湿潤ケーキを含むいくつかの名称により示される。湿潤ケーキが乾燥し、水がないとき、得られる製品である微結晶性セルロースは、白色の、無臭で、無味な、比較的フリーフローの粉末であり、水、有機溶剤、希アルカリおよび酸に不溶性である。それは、水中に分散し、ゴムの特性を有する。微結晶性セルロースおよびその製造のより充実した記載については、米国特許第2,978,446号参照。微結晶性セルロースは、例えば、FMC Corporationにより製造され、AVICEL(登録商標)の表記のもとで販売される。
【0012】
MCCは、不活性であり、本質的に不溶性であり、そして本質的に膨張せず、そして水中で固体粒子の分散体を形成する能力がある他の充填剤により置き換えてもよく、またはそれらと共に混合してもよい。これらの材料は、スターチではない多糖類、セルロース、加工スターチ、およびゼインなどのタンパク質を含む他のポリマーを含む。
【0013】
オイルは、不連続相の特に好ましい例であるのに対し、他の水と非混合性の材料もまた、オイルと共にまたはそれらの代わりに、本発明のマトリクス粒子において使用してもよい。本発明における用語「オイル」の使用は、これらの他の材料を包含する。かかる材料は、不連続相の形成に好適な材料の、いかなる水と非混合性の材料または混合物をも含み、例えば、親油性物質、脂質、脂肪およびオイル、モノグリセリドまたはジグリセリド、親油性脂肪代替物、およびショ糖ポリエステルからなる群から選択してもよい。
好ましいオイルは、植物油、GRAS植物油、鉱物油、ミグリオール(miglyol)オイル、および良好なフレーバー溶剤特性を有する他のオイル、またはそれらの組み合わせである。オイルは、それ自体活性でもよく、または活性物を含有してもよく、あるいは活性物を、マトリクス粒子の形成後、それらに積載してもよい。
【0014】
本発明は、フレーバーを封入するのに特に有用であるが、他の活性物もまた、本発明の方法により封入してもよい。本出願において使用される用語「活性物」は、その臭気剤またはフレーバー剤、臭気またはフレーバー促進、混合または修飾特性のため使用されるいかなる材料または単一化合物をも含む。本明細書中で使用される本用語はまた、フェロモン、薬剤、着色剤、およびインクを含む。
【0015】
フレグランスまたはフレーバー材料を、合成、化石または天然原料からの化学合成により、または天然源からの物理的操作により、得てもよい。本部類は、香料、精油、天然抽出物、留出物および単離物、含油樹脂、例えば、ツリーモスアブソリュート、ゼラニウムオイル、ジャスミンアブソリュート、パチュリオイル、ローズオイル、ビャクダンオイル、ベチベロールおよびイランイランオイルなどの天然製品を含み、シトロネロール、EBANOL(登録商標)、ゲラニオール、リナロール、フェニルエチルアルコール、SANDALORE(登録商標)などのアルコール類;FLOROZONE(登録商標)(3−(4−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロピオナル)、ヒドロキシシトロネラル、Iso-E-Super(登録商標)(1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−2,3,8,8−テトラメチル−2−オクタナフタレン)、Isoraldein(登録商標)、マルトール、メチルセドリルケトン、メチルイオノン、バニリンなどのアルデヒド類およびケトン類;アンブロックス、ゲラニルメチルエーテル、ローズオキサイドおよびSPRIAMBREBE(登録商標)(2’,2’,3,7,7−ペンタメチルスピロ[ビシクロ[4.1.0.]ヘプタン−2,5’−[1,3]ジオキサン])などのエーテル類およびアセタール類;BERRYFLOR(登録商標)、γ−デカラクトンおよびγ−ウンデカラクトンなどのエステル類およびラクトン類、およびさらに多くのものを含む。
【0016】
本発明の方法において有用なマトリクス材料は、アルギン酸塩または同等に大量の水と結合する能力を有するポリマー、あるいはかかるポリマーの組み合わせを含む。アルギン酸塩は、例えば海草および他の藻類から得られる高分子量の炭水化物である。アルギン酸塩は、α−L−グルロン酸(G)およびβ−D−マンヌロン酸(M)の線状コポリマーである。アルギン酸鎖は、様々な長さの「G−ブロック」(グルロン酸残基のホモポリマー領域)「M−ブロック」(マンヌロン酸残基のホモポリマー領域)および「MGブロック」(MおよびGのランダム様交互配列のコポリマー領域)からなるブロックコポリマーとしてもよい。化学組成物に関して異種であることを除けば、アルギン酸塩はかなり広い分子量分布を有する。アルギン酸塩は、ポリマー群の総称である。それらの特性は、それらのブロック構造および分子量に依存する。ある臨界分子量以上で、アルギン酸塩の特性は主に、モノマー組成物およびブロック構造によって左右される。一般的に、グルロン酸塩含有量の増加は、非ゲル化/ゲル化防止イオン(例えばNa、Mg2+)およびカルシウム封鎖(sequestering)剤の存在の下、安定性が向上した機械的により強力なゲルをもたらす。高グルロン酸塩含有ゲルは、ゲル形成中、高い多孔性およびより低い収縮を示す。高マンヌロン酸塩含有量では、ゲルはより軟らかく、より弾性を持つようになる;それらは、ゲル形成中、多孔性の減少と同時により収縮する。
【0017】
本発明の封入のために、すべての種類のアルギン酸塩を使用することができる。高分子量を有するものが、それらのより高い粘度はあまり重要でない以下に記載の三次(tertiary)乳液法において、より高い機械的安定性のため、一般的に好ましい。以下に記載の噴霧乾燥方法のために、より低分子量のアルギン酸塩が好ましい。アルギン酸塩は、粘性のある溶液を形成し、大量の水を保持する。好ましいアルギン酸塩は、アルギン酸ナトリウム(CAS 9005-38-3)であり、FMC Biopolymer, Philadelphia, USAにより、登録商標PROTANALの下で販売されている。有用なアルギン酸塩は、鉄、マグネシウム、カリウム、アルギン酸アンモニウム、およびアルギン酸カルシウムを含む。
【0018】
アルギン酸塩は、本発明のマトリクス粒子の生産に特に望ましいのに対し、アルギン酸塩に類似した特徴を有する他の親水性ポリマーもまた、アルギン酸塩に加えて、またはその代わりに使ってもよく、本明細書中で使用される用語「アルギン酸塩(alginate)」は、前記の他のポリマーを含む。有用な親水性ポリマーの他の例は、構造的に関連のあるペクチンおよびその誘導体などの多糖類である。ペクチンは、ポリガラクツロン酸からなるポリマーであり、カルボキシル酸基は部分的にメタノールによりエステル化する。高い熱的安定性のために、エステル化度の低いペクチンの使用、特に5%より低いものが好ましい。使用するポリマーに依存して、周知のように、代わりのまたは追加の架橋剤を使ってもよい。
【0019】
本発明のマトリクス粒子を、好ましくは、調製中、剪断力がそれぞれ低すぎるまたは高すぎるときに形成される傾向にある不規則な凝集体または細長い繊維状のマトリクス粒子とは対照的に、ほぼ球状の実質的に丸いマトリクス粒子をもたらすよう調製してもよい。
マトリクス粒子は、直径5〜2000μm、好ましくは10〜1000μm、より好ましくは20〜600μmの粒径の範囲であってもよい。マトリクス粒子は、実質的に水に不溶性である。以下に記載の本発明の方法において、マトリクス粒度および粒径分布範囲は、方法の選択および方法パラメータの調節に依存する所望の用途に従って調節してもよい。
【0020】
マトリクス粒子は、1〜10%の含水量(Aw=0.7の水分活性に対して)、好ましくは6〜7%の含水量を有してもよい。サンプルの含水量は、重量対重量のベースで、サンプル中に存在する水のレベルである。この水分は、液体サンプルまたは乾燥製品サンプルの水和マトリクス中に自由水として存在してもよい。含水量を、例えば"Coulometric Determination of Trace Warwe in Active Carbonyl Compounds Using Modified Karl Fischer Reagents", Analytical Chemistry, 1987, 59, 749-753; "Evaluation of Two Pyridine-Free Karl Fischer Reagents", Hercules Inc. Analytical Research, 8/8/83, DDR 87-045-01; "Improvements in Karl Fischer Method for Determination of Water", Volume 27, page 450, Journal of Analytical Chemistry, March 1955;および"Nature of the Karl Fischer Reagents", Aquametry, 1948に記載のように、カールフィッシャータイプの試薬によるカールフィッシャー滴定によって、決定してもよい。本手順は、サンプルが使用する溶剤に可溶であるならば、適用可能である。選択した溶剤は、自由水を最小量含有するか、または含有しないべきである。使用する試薬は、以下のものである:エチレングリコール、低水分、(CAS 107-21-1)、メタノール、低水分、(CAS 67-56-1)、ならびに<70%の2−メトキシエタノール(CAS 109-86-4)、<20%のイミダゾール(CAS 288-32-4)、<10%の二酸化硫黄(CAS 7446-09-5)、および<10%のヨウ素(CAS 7553-56-2)含有のハイドラナールコンポジット(Hydranal Composite)5試薬。
【0021】
乳化剤または界面活性剤などの、粒子形成中に乳液を安定させる「安定剤」は、本発明のいくつかの態様において存在してもよい。好適な安定剤は、当該技術分野において既知である。これらは、合成安定剤、例えばステアリン酸マグネシウム、グリセロール、エトキシル化モノグリセリド、酒石酸の、乳酸の、ジアセチル酒石酸の、クエン酸の、または酢酸酸のグリセロールエステル、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドを含む、脂肪酸のグリセロールエステル、モノステアリン酸グリセリル、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、ステアロイル乳酸カルシウム、脂肪酸のポリグリセロールエステル、エステル交換した(interesterified)リシノール酸のポリグリセロールエステル、プロピレングリコールモノエステルおよびジエステル、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、オレイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム、オレイル乳酸カルシウム、脂肪酸のソルビタンエステル、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、脂肪酸のショ糖エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、およびポリソルベート(TWEEN(登録商標))またはソルビタンエステル(SPAN(登録商標))などのポリマーを含むが、それらに限定されない。TWEEN(登録商標)は、ポリオキシエチレン脂肪酸誘導体の群であり、Tween-20(モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビトール)、Tween-40(モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビトール)、Tween-60(モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビトール)およびTween-80(モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビトール)を含む。
【0022】
安定剤はまた、大豆サポニン、酵素的に修飾された大豆サポニン、トランスグリコシル化された(transglycosylated)大豆サポニン、レシチン、分割(fractionated)レシチン、酵素的に修飾されたまたは分解されたレシチン、植物ステロール、植物レシチン、オクテニルコハク酸デンプン(CAPSUL)を含む。
好ましい安定剤は、アカシアゴム(例えばセネガルまたはセヤル)、アラビアゴム(例えばセヤルまたはセネガル)、マルチデキストリン、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、カラヤゴム、タラガム、ゲランガム、トラガカント、カラギーナン、および他のゴム類などの植物ゴムである。
【0023】
本発明のマトリクス粒子は、任意に賦形剤を含有する。これらは、当業者に既知であり、例えば固化防止剤、消泡剤、酸化防止剤、結合剤、着色剤、希釈剤、錠剤分解物質、乳化剤、酵素、脂肪、調味料、フレーバー剤、ゴム、潤滑剤、多糖類、保存剤、タンパク質、可溶化剤、溶剤、安定剤、糖誘導体、界面活性剤、甘味剤、ビタミン類、ワックス類などを含む。これらの賦形剤の例は、"Perfume and Flavor Materials of Natural Origin", S. Arctander, Ed., Elizabeth, N.J., 1960; in "Perfume and Flavor Chemicals", S. Arctander, Ed., Vol. I & II, Allured Publishing Corporation, Carol Stream, USA, 1994; in "Flavourings", E. Ziegler and H. Ziegler (ed.), Wiley-VCH Weinheim, 1998, and "CTFA Cosmetic Ingredient Handbook", J.M. Nikitakis (ed.), 1st ed., The Cosmetic, Toiletry and Fragrance Association, Inc., Washington, 1988などの既知の出典に記載がある。
【0024】
特に好ましい態様において、本発明は、不連続相においてフレーバーを含むオイル、および連続相においてアルギン酸塩および微結晶性セルロース(MCC)を含むマトリクス粒子を提供する。
【0025】
本発明の別の側面において、オイルを含み、低表面オイル含有量を有するマトリクス粒子を提供する。本発明のマトリクス粒子は、10%(wt/wt)より低い、好ましくは5%(wt/wt)より低い、より好ましくは3%(wt/wt)より低い、最も好ましくは1%(wt/wt)より低い表面オイル含有量を有する。
【0026】
マトリクス粒子を、着色してもよい。これは、いかなる簡便な手段により、例えば、粒子形成前に粒子に着色剤を組み込むことにより、または粒子形成後に粒子に色を吸収させることにより、または粒子形成後に粒子を着色被覆剤で被覆することにより達成してもよい。かかる目的に有用な当該技術分野において既知のいかなる好適な着色剤または被覆剤をも、使用してもよい。着色粒子をさらに、別の機能性を追加するために第二の被覆剤により被覆してもよい。
【0027】
本発明のさらなる別の利点は、マトリクス粒子の高い機械的安定性のため、それらの構造的完全性を維持しながら、さらなる加工段階の対象となってもよいことである。特に、マトリクス粒子を、マトリクスへいかなる重大な機械的崩壊をもたらす被覆作業をせずに、そして、大量の表面オイルの形成をもたらすことなく、被覆してもよい。
【0028】
被覆剤を、マトリクス粒子に追加の機能性を追加するために、有利に用いてもよく、例えばマトリクス粒子の不浸透性を追加し、それにより蒸発によるマトリクス粒子内含有の揮発性成分の損失を減少させる。あるいは、それらを、本来ならマトリクス粒子から浸出する傾向を示す原材料を保持するために用いてもよい。特に、被覆剤を、色が漏出するのを保持するまたは防止するために使用してもよく、および色安定性マトリクス粒子は、さらに本発明の別の側面を形成する。
被覆剤は、水中で不溶性または難溶解性である材料であってもよい。それらは、マトリクス粒子に適用するとき、フィルム好ましくは連続フィルムを形成し、それにより封入した材料のマトリクス粒子から周囲の溶剤への漏出を防止する。被覆剤を適用するためにスプレーコーティングを使用する場合、被覆材料を、アルコール溶液、例えばエタノールに可溶であるべきである。被覆材料は、タンパク質、炭水化物、脂質またはこれらの組み合わせを含む。好適な材料は、当業者に周知であり、"CRC Handbook of Food Additives"、Thomas E. Furia、CRC Press中に、Ray C. Roweによる"Handbook of Pharmaceutical Excipients", Pharmaceutical Press中に、またはSusan C. Smolinskeによる"CRC Handbook of Food、Drug and Cosmetic Excipients", CRC Press中に見出されるだろう。被覆剤を、スプレーコーティング、パンコーティング、流動床被覆、空気懸濁被覆、混合、乾式混合、または圧力積載などの周知の方法を使用して適用してもよい。
【0029】
溶剤に溶けるが、水溶性および浸透性が低く、容易に水和しない好ましい被覆剤もまた、当業者に明らかである。被覆材料を溶剤に溶解してもよく、スプレーしてもよく、またはそうでなければマトリクス粒子の表面に適用してもよく、そして溶剤は蒸発し、本質的に膨張または水に溶解しないマトリクス粒子を与える。
【0030】
したがって、本発明のその側面の別の面において、被覆マトリクス粒子を提供し、被覆剤は、脂質またはポリマー、例えばコラーゲン、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物(polyanhydrides)、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、セルロースエーテル、炭水化物、ペクチン、加工スターチ、天然ゴム、食用ポリマー、ポリマー粉末、海草抽出物、陸生植物抽出物、不水溶性修飾セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびポリグリセロール脂肪酸エステルまたは誘導体あるいはそれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0031】
マトリクス粒子を、当業者に周知の方法により、食品またはフレグランス製品に混和、付着、またはそうでなければ適用してもよい。好適な方法は、用途に依存し、スプレー、スクリューフィード、混合、および乾式混合を含むが、それらに限定されない。
【0032】
本発明のマトリクス粒子の用途分野は、マウスウォッシュおよびデンタルケア製品などの経口用のいかなる製品を含む、様々な食品および飲料製品におけるフレーバー、酸化防止剤、栄養物、酸、塩、塩基および緩衝剤、抗菌剤、保存剤、および色素の保護および放出、化粧品および香水などの消費者用ケア製品からのフレグランス放出、薬剤制御放出のための医薬品、農業における昆虫フェロモンの制御放出、冶金における潤滑剤、無カーボン複写紙におけるインク、液体比重または血管内圧測定用のシリコンセンサーなどを含むが、それらに限定されない。
【0033】
本発明の別の側面は、マトリクス粒子、好ましくはフレーバー製品、酸化防止製品、栄養製品、抗菌製品、保存製品、および色素製品、食品、飲料製品、マウスウォッシュおよびデンタルケア製品などの口腔に挿入する製品、消費者用ケア製品、化粧品および香水、医薬製品、昆虫フェロモン製品、殺虫製品、潤滑製品、およびインクを含む製品を対象にする。上記製品、好ましくは食品およびフレグランス製品は、本発明の別の側面からのマトリクス粒子を含む。
【0034】
例えば40〜70μmの小さなマトリクス粒子は、飲料品、大豆飲料、肉汁(broth)飲料、リキュール、ミルク、蒸留飲料、アルコール飲料、ビール、ワイン、清涼飲料、ミネラルウォーターおよび炭酸水ならびに他のノンアルコール飲料、果物飲料、果物ジュース、コーヒー、人工(artificial)コーヒー、紅茶、ココア、飲料用シロップ、デザート、ヨーグルト、ディップ、トッピング用シロップ、ホイップトッピング、冷凍食品、冷凍果物ジュース、アイスクリーム、アイスポップ、缶入り果物ジュース、缶詰の果物および野菜、缶入り野菜ジュース、果物ソース、グレイビー、サラダドレッシング、サワークリーム、食卓用(table)シロップ、トマトソースおよびペースト、料理用オイル、スープ、サワークリームミックス、醤油、調理済み朝食用シリアルなどの食品を含む液体製品;およびオーデコロン、オードトワレ、抽出物、ローション、クリーム、シャンプー、軟膏、デオドラント、液体洗剤を含む芳香消費財、家庭製品およびパーソナルケア製品などの液体フレグランス製品における使用に特に有益である。小さなマトリクス粒子は混合するのがより簡単で、懸濁状態で長く留まる。しかしながら、前記粒径範囲外のマトリクス粒子もまた、前記製品において有益である。
【0035】
より大きな、例えば100〜300μmのマトリクス粒子は、焼いた製品、ビスケット、パン、乾燥した朝食用シリアル、ケーキ、クッキー、クラッカー、ドーナッツ、フラン、マフィン、ペストリー、菓子、シリアル、カスタード、カラギーナンゲル、ゼラチンデザート、パイの詰め物、プディング、肉製品、ビーフシチュー、チューインガム、チョコレート、フォンダン、フロスティング、ハードキャンディー、マシュマロ、ゼリーおよびプリザーブ、圧縮タブレット、菓子の被覆(summer coating)、チーズ、模造の肉料理、即席ライスミックス、マーガリン、マヨネーズ、パンケーキミックス、ペットフード、ジャガイモ、スナック食品、粉末飲料、ミルクベースの粉末飲料、無糖の粉末飲料、インスタントコーヒー、コーヒー用ミルク、コーディアルなどの食品を含む固体製品;ならびにパウダー、石鹸、粉末洗剤、ティッシュ、織物、部屋用消臭剤、部屋用消臭ゲル、キャンドルを含む芳香消費財、家庭製品およびパーソナルケア製品などの固体フレグランス製品における使用に特に好適である。前記範囲外のマトリクス粒子もまた、前記製品用に好適である。
【0036】
消費者に不快な悪い味(off-taste)または苦味のノート(bitter note)を含む食品、例えば大豆製品において、活性のないマトリクス粒子あるいは悪い味または苦味のノートを隠すまたは減少させるフレーバー含有のマトリクス粒子は、例えば大豆の悪い味または苦味のノートの悪臭吸収および減少に好適である。
【0037】
本発明はまた、上記のとおり、マトリクス粒子の製造方法に関する。したがって、別の側面において、本発明は、前記マトリクス粒子を調製する方法を提供し、該方法は、以下の段階を含む。
i)ポリマー、充填剤、およびオイルを含む乳液の形成
ii)親水性ポリマーおよび充填剤を含有する連続相を含み、オイルを含有する不連続相をさらに含む、マトリクス粒子の形成
iii)ポリマーを架橋することによる前記マトリクス粒子の硬化
iv)架橋マトリクス粒子の乾燥
【0038】
特別な側面において、本発明は、アルギン酸塩マトリクス粒子を調製する方法を提供し、該方法は、以下の段階を含む。
1)アルギン酸塩、充填剤、およびオイルを含む乳液の形成
2)アルギン酸塩および充填剤を含有する連続相ならびにオイルを含有する不連続相を含む、マトリクス粒子の形成
3)アルギン酸塩を架橋することによるマトリクス粒子の硬化
4)形成した架橋マトリクス粒子の乾燥
【0039】
上記の段階1)〜3)を、噴霧乾燥および第二乾燥段階を伴う方法(いわゆる「SD2」法)により、または三次乳液を伴う方法(いわゆる「TE」法)により、行うことができる。乳液を形成する第一の段階は、両方の方法に共通であり、以下に説明する。
【0040】
1)SD2法およびTE法に共通の第一段階
アルギン酸塩、充填剤、および水を含む混合物を形成する。アルギン酸塩および充填剤の比率は、約10%の充填剤(90%のアルギン酸塩)から80%の充填剤(20%のアルギン酸塩)であってもよい。好ましくは、比率は、重量で約25%の充填剤(75%のアルギン酸塩)から約66%の充填剤(33%のアルギン酸塩)、より好ましくは33%の充填剤(66%のアルギン酸塩)から約66%の充填剤、さらにより好ましくは約40%の充填剤(60%のアルギン酸塩)から約60%の充填剤(40%のアルギン酸塩)。最も好ましくは、45%〜55%の充填剤が、アルギン酸塩に対して存在する。
SD2法において、任意で安定剤を追加する。TE法は安定剤を含まなくてもよい。
【0041】
アルギン酸塩および充填剤を、ある量の水と混合し、該量は、使用するアルギン酸塩および充填剤の種類、温度、添加するオイルの量、および得られる粘度に依存する。得られる混合物を、約1時間脱気すべきである。
アルギン酸塩は、1〜10%(wt/wt)溶液、好ましくは3〜4%(wt/wt)溶液、および最も好ましくは1.5〜2.5%(wt/wt)溶液として水中に存在してもよい。アルギン酸塩の種類、例えばその分子量およびそのコポリマー組成物に依存して、溶液は、形成される乳液の粘度に影響を与えるために、多かれ少なかれ濃縮されなければならないだろう。
【0042】
アルギン酸塩および充填剤の水性混合物に、オイルを、10%〜80%、好ましくは30%〜70%、より好ましくは55%〜65%の量で添加し、水中油滴(o/w)乳液を、かき混ぜて、例えば攪拌により形成する。乳液の粘度は、約2000〜60000cps(ASTM (American Society for Testing and Materials)試験方法D2857−95により測定された)であってもよく、より好ましくは10000〜40000cpsであり、当業者に明らかであるように、水の添加および/または温度により制御してもよい。
o/w乳液を形成するための好適な均質化方法は、直ちに当業者に明らかであり、ホモジナイザーまたは他の高剪断混合装置の使用を含む。
【0043】
油滴のマトリクス粒度分布を、剪断力の制御により、それぞれの用途について所望の粒径に依存して、例えば、攪拌速度を調節することにより、均質化方法に依存して、調節してもよい。SD2法については、該方法を、おおよそ95%の液滴が、50μmより小さく、好ましくは20μmより小さくなるよう、調節してもよい。最も好ましくは、95%より多い液滴が、直径10〜20μmである。マトリクス粒子の用途および所望の質に依存して、液滴粒径および粒径分布を適宜調節してもよい、すなわち、90%、80%、70%、60%より多いまたはたった50%より多い上記の液滴粒径が必要であろう。粘度を、温度により制御してもよい。連続相において使用するポリマーに依存して、pHを、当業者に明らかであるように、調節しなければならないだろう。アルギン酸塩を、連続相においてポリマーとして使用する場合、pHを制御する必要はない。
【0044】
以下の方法段階2)および3)を、SD2法により、またはTE法により、遂行してもよい。
本発明の一態様において、マトリクス粒子をSD2法により生産する。SD2法は、上記1)の下で説明したように、乳液の形成を含む。乳液を、好ましくは安定剤の添加により安定化させる。該方法は、下記に説明するように、さらに段階2)および3)を含む。
【0045】
2)SD2法
アルギン酸塩乳液を、第一噴霧乾燥段階において噴霧乾燥する。得られる噴霧乾燥した粒子の粒径を、当業者に明らかであるように、それぞれの噴霧乾燥方法を調節することにより、例えば、ノズルまたは回転盤を調節することにより、制御する。噴霧乾燥中に形成された粒子は、約20〜150μm、好ましくは20〜100、最も好ましくは約20〜70μmの直径を有してもよい。噴霧乾燥した粒子を収集する。
好適な噴霧乾燥方法は、当業者に明らかであり、噴霧乾燥、ベルト乾燥、噴霧乾燥およびベルト乾燥の組み合わせ、例えばFiltermat(登録商標)システム、空気噴霧、多段乾燥機、高圧噴霧、および回転盤噴霧を含むが、それらに限定されない。
【0046】
3)SD2法
収集した噴霧乾燥した粒子を、架橋アルギン酸塩により硬化する。前記粒子を、多価陽イオン、例えばカルシウム、ストロンチウム、バリウム、鉄、銀、アルミニウム、マンガン、銅および亜鉛のイオン、好ましくはカルシウムの溶液に導入し、該溶液は、0.9〜10%、好ましくは0.9〜2%の塩化カルシウムであってもよい。溶液は、水またはアルコール、好ましくはエタノール、または水およびアルコールの混合物などの好適な液体中にあってもよい。水対アルコール比は、用途に依存する。より多くの水を使用する場合、得られるマトリクス粒子はより安定している。アルコールが多いほど、表面オイルの量が低下するが、また、粒子内部からオイルを抽出するだろう。水対アルコールの50:50(wt/wt)の比率が、ほとんどの用途において好適である。
【0047】
多価陽イオン溶液への曝露時間は、使用したイオン溶液ならびに溶液の総量および濃度に依存して変化してもよい。それぞれのイオンおよび濃度についての曝露時間は、当業者により容易に決定することができる。0.7:1〜4:1、好ましくは1.2:1〜3:1、より好ましくは1.5:1〜2.5:1の比率の塩水:噴霧乾燥した粒子(wt/wt)で0.9〜10%の塩化カルシウムを使用するとき、約1時間は、通常は十分である。必要なイオンの量は、架橋されるアルギン酸塩の量に依存し、当業者に既知であるように調節してもよい。当業者に周知であるように、塩水の代わりに、追加のまたは代替の架橋剤を使用してもよい。
【0048】
4)SD2法
段階3)から得られる架橋粒子は、本発明のマトリクス粒子を得るための第二乾燥段階の対象である。これを、噴霧乾燥により行ってもよい。架橋粒子を破壊しないために、低剪断力を有する噴霧乾燥方法が好ましい。好適な方法は、直ちに当業者に明らかである。例えば、低剪断ポジティブディスプレースポンプを有する噴霧乾燥機をロータリーアトマイザーホイール(rotary atomiser wheel)と組み合わせて使用することができる。あるいは、多くの異なるポンプを適用してもよい。あるいは、ロータリーホイールの代わりに、スプレーノズルを使用してもよい。
【0049】
噴霧乾燥による第二乾燥段階の代替として、架橋粒子を当業者に明らかである他の乾燥方法により乾燥してもよい。例えば、第二乾燥段階を、流動床乾燥により行うことができる。固化防止剤をこの段階で加えてもよく、あるいは前もって加えてもよく、硬化したマトリクス粒子をふるいにかけてもよく、そして流動床乾燥の対象にしてもよい。
当業者に明らかであるように、噴霧乾燥した乳液の粒度を、例えば第一噴霧乾燥段階における乳液中の油滴の粒径を調節することにより、それぞれの用途に調節してもよい。
【0050】
本発明の別の態様において、マトリクス粒子を、三次乳液法(TE)により形成する。
TE法は、より高い充填率のより大きなマトリクス粒子を生産するのに好適であり、アルギン酸塩は加工中に一部洗い流されるかもしれないため、充填剤は特に重大であり、充填剤なしでは、TE法から、容易に崩壊する粒子を得る傾向にある。
【0051】
TE法は、段階1)〜4)を含む。乳液を形成するために、第一段階1)を上記のように行う。界面活性剤は、TE法の第三段階に悪影響を及ぼすかもしれないので、存在すべきではない。前記乳液は、TE法のいわゆる一次乳液である。TE法はさらに、以下に記載の段階2)〜4)を含む。前記方法は、前記第二段階2)において、オイルの添加によるいわゆる二次乳液の形成(オイル中の水中油滴の液滴);および第三段階3)において、いわゆる三次乳液の形成を含む。前記第三段階において、塩水を、かき混ぜながら添加し(水中の油中水中油滴(oil-in-water-in-oil droplet))、ここでマトリクス材料を架橋し、硬化した粒子(本質的に一次乳液を含む)を油相および塩水から分離し、容器の底に沈ませ、第四段階において収集および乾燥させる。
【0052】
2)TE法
上述の段階1)の一次乳液を、かき混ぜながらオイルと混合し、油中水中油滴の乳液である、二次乳液を形成する。一次乳液対オイル(v/v)の比率は、変化に富んでもよい。一次乳液:オイルの好ましい比率は、0.5:1〜1:20、より好ましくは0.75:1〜1:5、最も好ましくは1:1〜1:2である。
この段階およびまた以下の段階において乳液を形成するのに好適なかくはんは、粘度および使用する容器の形状に依存する;それは、当業者に明らかであるように、例えば適宜容器の選択および攪拌速度の調節により、調節してもよい。
【0053】
3)TE法
硬化した粒子を形成するためにアルギン酸塩を架橋するために、二次乳液を、かき混ぜながら、多価陽イオン、例えばカルシウム、ストロンチウム、バリウム、鉄、銀、アルミニウム、マンガン、銅および亜鉛のイオン、好ましくはカルシウムの塩水に導入する。塩水対二次乳液の比率は、0.7:1〜4:1、好ましくは1.2:1〜3:1、より好ましくは1.5:1〜2.5:1(v/v)である。粒子の硬化には、最低量の多価陽イオンが必要である。アルギン酸塩および塩水の相対量は、変化に富んでもよく、好ましくは塩(saline)固体対アルギン酸塩固体の比率は、6:1〜1:2、好ましくは4:1〜2:1、より好ましくは約3:1(wt/wt)である。塩水の濃度も適宜変化してもよく、好ましくは0.5%〜10%、より好ましくは1%〜5%、最も好ましくは2%〜3%である。溶液は、水またはアルコール、好ましくは エタノール、あるいは水およびアルコールの混合物などの好適な液体中にあってもよい。水対アルコール比は、用途に依存する。より多くの水を使用する場合、得られるマトリクス粒子はより安定する。アルコールが多いほど、表面オイルの量は低下するが、また、粒子内部からオイルを抽出するだろう。水対アルコールの50:50(wt/wt)の比率が、ほとんどの用途において好適である。
塩水の代わりに、周知のように、追加のまたは代替の架橋剤を使用してもよい。
【0054】
架橋粒子は、容器の底に沈み、容易に収集することができる。油相は最高部に集まり、効率性のため、再利用することができ、塩水相は中間部に集まる。塩水濃度およびマトリクス粒子中に存在する充填剤量は、架橋粒子が底に沈むかまたは浮くかのいずれかの傾向に影響を及ぼす。架橋粒子が浮く傾向にある場合、塩水濃度を下げるか、あるいはマトリクス粒子中の充填剤の量(したがって密度)を増やすべきである。
【0055】
架橋時間は、かくはん/剪断力に依存し、当業者に明らかであるように、適宜調節してもよい、剪断が低すぎると、遅い架橋および大きな凝集体の形成となり、剪断が高すぎると、繊維状のマトリクス粒子の変形となる。得られる架橋粒子が、不規則な凝集体または細長い繊維状のマトリクス粒子とは対照的に円形で、ほぼ球状であるよう、剪断力を調節するのは、当業者に明らかである。
【0056】
4)TE法
架橋粒子を、SD2法について段階4)の下で説明した方法により乾燥させてもよい。
取扱作業を回避するためおよびコストを最小限に抑えるため、方法がなされるべき最低限の調節を含むことが望ましい。SD2法およびTE法はほとんど、pH調節およびpH3.9より上の広いpH範囲の下で作業する必要はなく、pH制御の必要がない。
その側面の別の面において、本発明は、pHまたは温度の調節なしで作業可能な方法を提供する。
【0057】
SD2法およびTE法におけるすべての段階を、室温で行ってもよい。分解を助けるため、粘度を制御するため、または微生物の増殖を防止するために、温度を、それぞれの段階において、例えば100℃まで、好ましくは80℃まで、最も好ましくは70℃まで上昇させてもよい。
【0058】
封入関連の既知の方法において、塩化カルシウムは、高濃度で使用される。塩化カルシウムは、特に金属に対して、腐食性がある。方法からの残留塩は、ステンレス製タンクおよび付属品において腐食をもたらし始めるかもしれない。驚くべきことに、出願人は、上記のように、乳液に対して塩化カルシウムの濃度0.7〜2.5%、好ましくは0.9〜1.5%の量が、粒子を硬化させるのに十分であることを見出した。
したがって、特に好ましい態様において、本発明は、最低限量の塩化カルシウム、つまり0.7〜2.5%、好ましくは 0.9〜1.5%の塩化カルシウム溶液を、塩水:第二次乳液(v/v)を0.7:1〜4:1、好ましくは1.2:1〜3:1、より好ましくは1.5:1〜2.5:1の比率で使用する方法を提供する。
【0059】
SD2法は、悪臭吸収用途、例えば大豆製品において利益をもたらす小さなマトリクス粒度の簡単な制御に好適である。SD2法は、過半数(>50%)が粒径10〜200μm、より好ましくは20〜100μm、最も好ましくは直径40〜70μmを有するマトリクス粒子を生産するのに好適である。TE法を、粒径100〜1000μm、より好ましくは100〜600μm、最も好ましくは直径100〜300μmを有する過半数のマトリクス粒子をもたらすよう調節してもよい。
【0060】
オイルは、それら自体が活性物であってもよく、直接封入してもよいのに対し、マトリクス粒子は、活性物ではないオイルと共に形成してもよく、これらのマトリクス粒子は、所望の活性、例えばフレーバーまたはフレグランスをマトリクス粒子に積載するため、および顆粒、粉末またはペーストを形成するために、吸収技術の対象であってもよく、かかる技術は、マイクロカプセルについて、米国特許第6,045,835号に本質的に記載されている。さらに、マトリクス粒子は、フレーバーオイルなどの活性物であるオイルと共に形成してもよく、他の活性物を、マトリクス粒子の形成後にさらに吸収させてもよい。
【0061】
積載方法中、活性物をマトリクス粒子のオイルに溶解させる。活性物を、マトリクス粒子中で使用されるオイルへのそれらの溶解性に応じて選択する。特定の活性物を積載するために、マトリクス粒子を、該活性物が溶解できる好適なオイルと共に形成し、適応させてもよい。マトリクス粒子を、前記マトリクス内での油滴への水性拡散(aqueous diffusion)により、マトリクス材料を通じて化合物の輸送のために水の存在下、マトリクス粒子への活性物の添加により、積載してもよい。
【0062】
水の量は、存在するマトリクス材料の量に依存し、当業者が容易に調節してもよく、水の好適な量は、例えば約10%の水、1〜40%のフレーバーまたはフレグランスまたは他の活性物、および50〜89%のマトリクス粒子(wt/wt/wt)であってもよい。マトリクス粒子を、水と混合してもよく、そしてフレーバーまたはフレグランスを添加し、約30〜60分間混合し、および約1時間乾燥するまで放置してもよく、例えばステンレス製のミキシングボウル(例えばHobart Lab Scale Mixer)で行ってもよい。用途に依存して、アルコール、例えば、エタノールを、当業者に明らかであるように、積載をより高めるため、混合物に添加してもよい。
【0063】

例1
マトリクス粒子およびミグリオールオイルを含むSD2法
溶液を、水中セルロース、アルギン酸ナトリウムおよびアカシアゴムから調製し、約1時間脱気する。水を、約1000cps以下の粘度に対応する量で添加する。60重量%のミグリオールオイルを添加し、高剪断ミキサーを使用して水中油滴型の乳液を形成する。油滴の粒径分布は、10μm未満がおおよそ95%である。乳液の処方は、以下のとおりである。
【0064】
アルギン酸塩乳液の処方(主成分:乾燥重量、2%水分):
12.5% FMC微結晶性セルロース(AVICEL(登録商標))
12.5% アルギン酸ナトリウム(PROTANAL(登録商標))
15% アカシアゴム
60% ミグリオールオイル
および水(1000cps以下の粘度に対応する量)。
【0065】
アルギン酸塩乳液を噴霧乾燥機内で霧吹きし、乾燥機内で迅速に乾燥する小さな20〜100μmの液滴を形成させる。
収集した噴霧乾燥粒子を、1:1(wt/wt)の比率で1%塩化カルシウム溶液に添加し、低剪断ポジティブディスプレースポンプおよびロータリーアトマイザーホイールを有する噴霧乾燥機で第二噴霧乾燥段階において噴霧乾燥する前に、約1時間放置する。
得られるマトリクス粒子は、2〜4%の水分および直径約20〜100μmの範囲、平均約35〜65μmの粒径分布を有する。マトリクス粒子は、1〜3%より低い表面オイル含有量を有する、均整の取れた円形の、本質的に球形のマトリクス粒子である。最終製品は、水に不溶の粉末である。
【0066】
例2
SD2法の連続運転(run)のマトリクス粒度分布
粒径分布を、以下のパラメータを有するBeckman Coulter Analyzer、3.01ソフトウェア、2.02ファームウェアを使用して測定および分析した。連続運転時間:30秒、振動器:30、オーガー(auger):40、掩蔽(obscuration):5%。計算は、375μm〜2000μmである。
【表1】

平均は、62.65μmであり、中央値は、63.27μmである。
【0067】
例3
マトリクス粒子およびミグリオールオイルを含むTE法
一次乳液を、水中MCCおよびアルギン酸塩の溶液を形成することにより、以下に示す原料から調製し、攪拌する。
20% FMC微結晶性セルロース(AVICEL(登録商標))
20% アルギン酸ナトリウム(PROTANAL(登録商標))
60% ミグリオールオイル
および水(25.000cps以下の粘度に対応する量)。
【0068】
得られる二次乳液を、1部の一次乳液を0.75部のミグリオールオイルに添加することにより調製し、約10〜30μmの所望のマトリクス粒度に至るまで攪拌する。
二次乳液を、以下に示す処方にしたがって、10%の背圧でSilversonホモジナイザーを通じて前記乳液をポンプにより、塩水に導入する。
処方(1000部あたりの部、wt/wt):
770部 水
20部 塩化カルシウム(2%カルシウム溶液とするため)
210部 アルギン酸塩一次乳液
混合物を2〜3時間攪拌する。かくはん停止の際、オイルを分離し、再利用用にタンクの最上部から除去する。食塩水を、マトリクス粒子のレベルまで除去する。
【0069】
1%(総重量)の二酸化ケイ素を添加し、材料を遠心分離して水を除去する。アルギン酸カルシウムケーキを収集する。収集した乾燥前のアルギン酸カルシウムケーキは、約100〜1200μm、約77%の水分、約7.5%の表面オイル、および約55%の総オイルのマトリクス粒度を有する。アルギン酸カルシウムケーキを、流動床乾燥機で3%の水分まで乾燥する。
【0070】
例4
TE法の連続運転のマトリクス粒度分布
【表2】

例5
TE法の連続運転のマトリクス粒度分布
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス内に分散したオイル、好ましくはフレーバーまたはフレグランスオイルの複数の含有物を含むマトリクス粒子であり、該マトリクスは、架橋ポリマーおよび少なくとも1種の充填剤を含む、前記マトリクス粒子。
【請求項2】
アルギン酸塩およびペクチン、それらの誘導体またはそれらの組み合わせからなる群に由来する架橋ポリマーを含む、請求項1に記載のマトリクス粒子。
【請求項3】
架橋ポリマーが、アルギン酸塩である、請求項1に記載のマトリクス粒子。
【請求項4】
無機物質、好ましくは炭酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、リン酸塩、より好ましくは炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、粉末石灰岩、粘土、タルク、二酸化チタン、および有機物質、好ましくはセルロースポリマー、それらの誘導体ならびに前記物質のいずれかまたはすべての組み合わせからなる群から選択される充填剤を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のマトリクス粒子。
【請求項5】
好ましくはポリマーに対して2:1〜1:2、より好ましくは1.5:1〜1:1.5、最も好ましくは約1:1の比率の充填剤を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のマトリクス粒子。
【請求項6】
微結晶性セルロースを充填剤として含む、請求項1〜5のいずれかに記載のマトリクス粒子。
【請求項7】
不連続相はオイルを含み、粒子は10%(wt/wt)より少ない、好ましくは5%(wt/wt)より少ない、より好ましくは3%(wt/wt)、最も好ましくは1%(wt/wt)より少ない表面オイルを含む、請求項1〜6のいずれかに記載のマトリクス粒子。
【請求項8】
少なくとも1種の被覆剤を含む、請求項1〜7のいずれかに記載のマトリクス粒子。
【請求項9】
着色剤を含む、請求項1〜8のいずれかに記載のマトリクス粒子。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のマトリクス粒子を含む製品。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載のマトリクス粒子の調製方法であり、
i)ポリマー、充填剤、およびオイルを含む乳液の形成
ii)親水性ポリマーおよび充填剤を含有する連続相を含み、オイルを含有する不連続相をさらに含む、マトリクス粒子の形成
iii)ポリマーを架橋することによる前記マトリクス粒子の硬化
iv)架橋マトリクス粒子の乾燥
を含む、前記方法。

【公表番号】特表2006−525108(P2006−525108A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504187(P2006−504187)
【出願日】平成16年5月5日(2004.5.5)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000270
【国際公開番号】WO2004/098318
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】