説明

アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン

【課題】低い剥離力特性を有し、剥離速度が高く、架橋速度が遅くならない架橋性組成物を提供する。
【解決手段】架橋性組成物は、(A)一般式(II)等のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、(B)Si結合した水素原子を有する有機珪素化合物、および(C)脂肪族二重結合へのSi結合した水素の付加を促進する触媒を含有する。


(式中、Rは、炭素1〜18個の飽和の炭化水素、Rは、炭素2〜8個の末端不飽和の炭化水素)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを含有する架橋性組成物に関する。本発明は更に成形体、特に粘着物を排除する被膜に関する。本発明は更に被膜、特に粘着物を排除する被膜の製造方法に関する。本発明は更にアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着物を排除する被膜を製造するための、特に剥離紙コーティングのための架橋性組成物中のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとして、一般に末端位のビニル基を有する線状ジオルガノポリシロキサンまたはくし状に形成されるビニルシリコーンポリマー、すなわち主鎖に沿って側位の、D単位に直接結合したビニル基を有する線状ジオルガノポリシロキサンが使用される。側位のビニル基を有するくし状に形成されるビニルポリマーは末端位のビニル基を有するポリマーに比べて剥離紙からのラベルのような自己接着性材料の剥離速度が高く、低い分離力特性を示すが、架橋速度が緩慢である。
【0003】
ヒドロシリル化反応で、側位のSiH基を有するジオルガノポリシロキサンを1,5−ヘキサジエンのようなα、ω−ジエンと反応することによりヘキシル基のような側位の高級アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンが得られる(特許文献1参照)。この方法はポリマーに好ましくないヒドロシリル化触媒を残留し、オルガノポリシロキサン鎖の好ましくない架橋を生じる。
【0004】
有利に少なくとも12個のT単位を有する高度に枝分かれした炭化水素基を有するオルガノポリシロキサンは文献に記載されている(特許文献2参照)。
【0005】
非特異的に枝分かれしているアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは文献に記載されている(特許文献3参照)。これはオルガノポリシロキサン鎖の好ましくない架橋を生じる。低い平坦な剥離曲線が得られ、すなわち剥離速度が高まると分離力が増加する。
【0006】
枝分かれ位置から出発する星状アルケニルシロキサンは開示されている(特許文献4参照)。低い平坦な剥離曲線が得られ、すなわち剥離速度が高まると分離力が増加する。
【特許文献1】米国特許第4609574号
【特許文献2】欧州特許第640662号
【特許文献3】米国特許第5616672号
【特許文献4】米国特許第4386135号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、前記の欠点を回避し、剥離速度が高く、低い分離力特性を有し、これにより架橋速度が遅くならない、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを含有する組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は本発明により解決される。
【0009】
本発明の対象は、
(A)一般式
vivi (I)
(式中、
viは式RSiO1/2の単位を表し、
Tは式RSiO3/2の単位を表し、
Dは式RSiOの単位を表し、
viは式RRSiOの単位を表し、
Mは式RSiO1/2の単位を表し、
Rは脂肪族炭素−炭素二重結合を含まない、1〜18個の炭素原子を有する一価のSiC結合した、置換されていないかまたは置換された炭化水素基を表し、
は基1個当たり2〜8個の炭素原子を有する末端の脂肪族炭素−炭素二重結合を有する一価の、SiC結合した炭化水素基を表し、
aは平均的に2.5〜8、有利に3〜8、特に4〜6であり、
bは平均的にa−2であり、有利に1〜6、特に2〜4であり、
cは平均的に41〜1000、有利に80〜500、特に100〜200であり、
dは平均的に0〜4、有利に0〜0.5、特に0であり、
eは平均的に0〜2、有利に0〜0.5、特に0であり、
ただしa−2個のMvi単位は直接T単位に結合している)のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)Si結合した水素原子を有する有機珪素化合物、および
(C)Si結合した水素の脂肪族二重結合への付加を促進する触媒
を含有する架橋性組成物である。
【0010】
本発明の対象は更に、一般式
vivi (I)
(式中、
viは式RSiO1/2の単位を表し、
Tは式RSiO3/2の単位を表し、
Dは式RSiOの単位を表し、
viは式RRSiOの単位を表し、
Mは式RSiO1/2の単位を表し、
Rは脂肪族炭素−炭素二重結合を含まない、1〜18個の炭素原子を有する一価のSiC結合した、置換されていないかまたは置換された炭化水素基を表し、
は基1個当たり2〜8個の炭素原子を有する末端の脂肪族炭素−炭素二重結合を有する一価の、SiC結合した炭化水素基を表し、
aは平均的に2.5〜8、有利に3〜8、特に4〜6であり、
bは平均的にa−2であり、有利に1〜6、特に2〜4であり、
cは平均的に41〜1000、有利に80〜500、特に100〜200であり、
dは平均的に0〜4、有利に0〜0.5、特に0であり、
eは平均的に0〜2、有利に0〜0.5、特に0であり、
ただしa−2個のMvi単位は直接T単位に結合している)のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。
【0011】
有利に(A)アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとして、一般式
【0012】
【化1】

(式中、RおよびRはこれに関して記載された意味を表し、
nは41〜1000、有利に80〜500、特に100〜200であり、
mは1〜6、有利に2〜4である)
のオルガノポリシロキサンを使用する。
【0013】
本発明の範囲で式(II)は、n個の単位−(SiRO)−およびm個の単位−(SiRO3/2)(SiR1/2)−が任意の方法で、例えばブロックとしてまたはランダムにオルガノポリシロキサン分子に分配されていてもよいことであると理解されるべきである。
【0014】
基Rの例はアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基、およびイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、ドデシル基、例えばn−ドデシル基、およびオクタデシル基、例えばn−オクタデシル基、シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、およびメチルシクロヘキシル基、アリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基、およびフェナントリル基、アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基、キシリル基、およびエチルフェニル基、およびアラルキル基、例えばベンジル基、α−およびβ−フェニルエチル基である。
【0015】
置換された基Rの例はハロゲンアルキル基、例えば3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2′,2′,2′−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、およびハロゲンアリール基、例えばo−、m−およびp−クロロフェニル基である。
【0016】
基Rは有利に1〜6個の炭素原子を有する一価の炭化水素基であり、メチル基が特に有利である。
【0017】
基Rの例はアルケニル基、例えばビニル基、5−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1−プロペニル基、アリル基、3−ブテニル基、および4−ブテニル基である。
【0018】
基Rは有利にアルケニル基であり、ビニル基が特に有利である。
【0019】
オルガノポリシロキサン(A)は有利に25℃で100〜10000mPa・s、有利に25℃で200〜1000mPa・sの平均的粘度を有する。
【0020】
本発明のオルガノポリシロキサン(A)は通常の方法により。例えばH−シロキサン均衡物および相当するシランを介して製造する。
【0021】
本発明のオルガノポリシロキサン(A)の例は、式:
【0022】
【化2】

(式中、Meはメチル基を表し、nおよびmはこれに関してすでに記載された意味を表す)のビニル基を有するオルガノポリシロキサンである。
【0023】
本発明のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン(A)は架橋性組成物に使用され、平坦な剥離曲線、すなわち高い剥離速度で低い分離力特性および高い硬化速度を有する付加架橋性剥離系が得られる利点を有する。
【0024】
架橋性組成物に、Si結合した水素原子を有する有機珪素化合物(B)として、有利に一般式IV
SiO(4−e−f/2) (IV)
(式中、
は一価の、脂肪族炭素−炭素二重結合を含まない、SiC結合した、場合により置換された1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
eは0、1、2または3であり、
fは0、1または2であり、
e+fの合計は0、1、2または3であり、
ただし平均的に少なくとも2個のSi結合した水素原子が存在する)
の単位からなる線状、環状または分枝状オルガノポリシロキサンを使用する。
【0025】
炭化水素基Rの例は炭化水素基Rに関して完全に該当する。
【0026】
有機珪素化合物(B)は有利に少なくとも3個のSi結合した水素原子を有する。
【0027】
有機珪素化合物(B)として有利に一般式
3−hSiO(SiRO)(SiRHO)SiR3−h(V)
(式中、
はこれに関して記載された意味を表し、
hは0、1または2であり、
oは0または1〜500の整数であり、
pは0または1〜200の整数であり、
ただし平均的に少なくとも2個のSi結合した水素原子が存在する)
のオルガノポリシロキサンを使用する。
【0028】
本発明の範囲で式Vはo個の単位−(SiRO)−およびp個の単位−(SiRHO)−が任意の方法でオルガノポリシロキサン分子に存在していてもよいことであると理解されるべきである。
【0029】
これらのオルガノポリシロキサンの例は、特にジメチルヒドロゲンシロキサン単位、メチルヒドロゲンシロキサン単位、ジメチルシロキサン単位およびトリメチルシロキサン単位からなるコポリマー、トリメチルシロキサン単位、ジメチルヒドロゲンシロキサン単位、およびメチルヒドロゲンシロキサン単位からなるコポリマー、トリメチルシロキサン単位、ジメチルシロキサン単位およびメチルヒドロゲンシロキサン単位からなるコポリマー、メチルヒドロゲンシロキサン単位およびトリメチルシロキサン単位からなるコポリマー、メチルヒドロゲンシロキサン単位、ジフェニルシロキサン単位およびトリメチルシロキサン単位からなるコポリマー、メチルヒドロゲンシロキサン単位、ジメチルヒドロゲンシロキサン単位、およびジフェニルシロキサン単位からなるコポリマー、メチルヒドロゲンシロキサン単位、フェニルメチルシロキサン単位、トリメチルシロキサン単位および/またはジメチルヒドロゲンシロキサン単位からなるコポリマー、メチルヒドロゲンシロキサン単位、ジメチルシロキサン単位、ジフェニルシロキサン単位、トリメチルシロキサン単位および/またはジメチルヒドロゲンシロキサン単位からなるコポリマー、およびジメチルヒドロゲンシロキサン単位、トリメチルシロキサン単位、フェニルヒドロゲンシロキサン単位、ジメチルシロキサン単位および/またはフェニルメチルシロキサン単位からなるコポリマーである。
【0030】
オルガノポリシロキサン(B)は有利に25℃で10〜1000mPa・sの平均的粘度を有する。
【0031】
有機珪素化合物(B)はオルガノポリシロキサン(A)に、有利に、末端の脂肪族炭素−炭素二重結合を有する炭化水素基R1モル当たりSi結合した水素0.5〜3.5グラム原子、有利に1.0〜3.0グラム原子の量で使用される。
【0032】
脂肪族二重結合へのSi結合した水素の付加を促進する触媒(C)として架橋性組成物においても従来の脂肪族二重結合へのSi結合した水素の付加を促進するために使用できたものと同じ触媒を使用できる。触媒は有利に白金金属の群からなる金属または白金金属の群からなる化合物また錯体である。これらの触媒の例は、二酸化珪素、酸化アルミニウムまたは活性炭のような担体上に存在することができる金属および微粒の白金、白金の化合物または錯体、例えば白金ハロゲン化物、例えばPtCl、HPtCl・6HO、NaPtCl・4HO、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体、白金−アルコラート錯体、白金−エーテル錯体、白金−アルデヒド錯体、HPtCl・6HOおよびシクロヘキサノンからなる反応生成物を含む白金−ケトン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、例えば検出できる無機結合ハロゲンを含有するかまたは含有しない白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、ビス−(γ−ピコリン)白金ジクロリド、トリメチレンジピリジン白金ジクロリド、ジシクロペンタジエン白金ジクロリド、ジメチルスルホキシドエチレン白金(II)ジクロリド、シクロオクタジエン白金ジクロリド、ノルボルナジエン白金ジクロリド、γ−ピコリン白金ジクロリド、シクロペンタジエン白金ジクロリド、および四塩化白金とオレフィンおよび第一級アミンまたは第二級アミンまたは第一級アミンおよび第二級アミンの反応生成物、例えば1−オクテンに溶解した四塩化白金とs−ブチルアミンの反応生成物またはアンモニウム白金錯体である。
【0033】
触媒(C)はそれぞれ元素の白金金属として計算しておよび有機珪素化合物(A)および(B)の全質量に対して、有利に10〜1000質量ppm(100万質量部当たりの質量部)、有利に50〜200質量ppmの量で使用する。
【0034】
架橋性組成物は室温で脂肪族多重結合へのSi結合した水素の付加を遅らせる物質、いわゆる抑制剤を含有することができる。
【0035】
抑制剤(D)として架橋性シリコーン被覆組成物においても従来同じ目的に使用できたすべての抑制剤を使用することができる。
【0036】
抑制剤(D)の例は1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ベンゾトリアゾール、ジアルキルホルムアミド、アルキルチオ尿素、メチルエチルケトキシム、1012ミリバール(絶対圧力)で25℃以上の沸点および少なくとも1個の脂肪族三重結合を有する有機化合物または有機珪素化合物、例えば1−エチニルシクロヘキサン−1−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3−メチル−1−ペンチン−3ーオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、および3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3,7−ジメチル−オクト−1−イン−6−エン−3−オール、ジアリルマレイネートおよびビニルアセテートの混合物、マレイン酸モノエステル、抑制剤、例えば式
HC≡C−C(CH)(OH)−CH−CH−CH=C(CHの化合物であり、BASF社から商標名デヒドロリナルール(Dehydrolinalool)として入手できる。
【0037】
抑制剤(D)を併用する場合は、有利に有機珪素化合物(A)および(B)の全部の質量に対して有利に0.01〜10質量%、特に0.01〜3質量%の量で使用する。
【0038】
架橋性シリコーン被覆組成物に併用することができる他の成分の例は分離力を調節する剤、有機溶剤、付着媒介剤および顔料である。
【0039】
本発明の組成物を使用して製造される粘着物を排除する被膜の分離力を調節する剤の例は式RSiO1/2
およびSiO
の単位からなるシリコーン樹脂、いわゆるMQ樹脂であり、Rは水素原子、炭化水素基R、例えばメチル基、アルケニル基R、例えばビニル基であり、RおよびRはこれに関して記載された意味を表し、RSiO1/2の単位は同じかまたは異なっていてもよい。式RSiO1/2の単位と式SiOの単位の比は有利に0.6〜2である。シリコーン樹脂は有利に有機珪素化合物(A)および(B)の全部の質量に対して5〜80質量%の量で使用する。
【0040】
有機溶剤の例はベンジン、例えば70℃〜180℃の沸点範囲を有するアルカン混合物、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、およびキシレン、1〜6個の炭素原子を有するハロゲン化アルカン、例えば塩化メチレン、トリクロロエチレン、および過クロロエチレン、エーテル、例えばジ−n−ブチルエーテル、エステル、例えば酢酸エチル、およびケトン、例えばメチルエチルケトン、およびシクロヘキサノンである。
【0041】
有機溶剤を併用する場合は、有利に有機珪素化合物(A)および(B)の全部の質量に対して10〜90質量%、有利に10〜70質量%の量で使用する。
【0042】
成分(A)、(B)、(C)を混合する際の順序は重要でないが、成分(C)、すなわち触媒を他の成分の混合物に最後に添加することが有利であると示された。
【0043】
本発明の組成物の架橋は有利に70〜180℃で行う。加熱による架橋のエネルギー源として、有利に炉、例えば空気循環乾燥炉、加熱路、加熱ローラー、熱板または赤外線範囲の熱放射線を使用する。
【0044】
本発明の組成物は加熱によるほかに、紫外線を用いる照射により、またはUV線およびIR線を用いる照射により架橋することができる。紫外線として一般に253.7nmの波長を有する紫外線を使用する。200〜400nmの波長を有する紫外線を放射し、有利に253.7nmの波長を有する紫外線を放射する多数のランプが市販されている。
【0045】
本発明の対象は更に本発明による組成物の架橋により製造される成形体である。
【0046】
成形体は有利に被膜、有利に粘着物を排除する被膜である。
【0047】
本発明の対象は更に本発明の架橋性組成物を被覆すべき表面に被覆し、引き続き組成物を架橋することにより被膜を製造する方法である。
【0048】
本発明の架橋性組成物は有利に粘着物を排除する被膜を製造するために、例えば剥離紙を製造するために使用する。粘着物を排除する被膜は本発明の架橋性組成物を、粘着物排除作用する表面に被覆し、引き続き組成物を架橋することにより製造される。
【0049】
被覆すべき表面、有利に粘着物排除作用する表面への本発明による組成物の被覆は任意の、液体物質からの被膜の製造に適した、多くの公知の方法で、例えば浸漬、塗布、流し込み、噴霧、ロール塗布、印刷により、例えばオフセットグラビア被覆装置、ナイフ塗布、ドクター塗布またはエアーブラシを使用して実施することができる。
【0050】
被覆すべき表面上の層の厚さは有利に0.3〜6μm、特に0.5〜2.0μmである。
【0051】
本発明の範囲で処理することができる被覆すべき表面、有利に粘着物排除作用する表面は、任意の室温および1012ミリバール(絶対圧力)で固体の物質であってもよい。この種の表面の例は紙、木材、コルク、プラスチックフィルム、例えばポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム、またはポリプロピレンフィルム、天然または合成繊維からなる織った布および織らない布、セラミック物品、ガラス繊維を含むガラス、金属、ポリエチレン塗布した紙、アスベストからなるものを含むボール紙の表面である。前記ポリエチレンは高圧ポリエチレン、中圧ポリエチレン、または低圧ポリエチレンであることができる。紙は低価格の紙の種類、例えば未加工の、すなわち化学薬品および/またはポリマー天然物質で予め処理されていない、重さ60〜150g/mを有するクラフト紙を含む吸湿性の紙、接着剤を塗布していない紙、低い粉砕度の紙、木材含有紙、つや出ししていないまたはカレンダー加工していない紙、乾燥つや出しシリンダーを使用することにより製造の際に他の費用のかかる手段なしに片面が滑らかにされ、従って片面機械平滑紙と呼ばれている紙、被覆されていない紙、または紙くずから製造された紙、すなわちいわゆるほご紙である。本発明により処理すべき紙はもちろん高価な紙の種類、吸収の少ない紙、接着剤を塗った紙、高い粉砕度の紙、木材不含の紙、カレンダー加工したまたはつや出しした紙、硫酸紙、硫酸処理した紙、または予め被覆した紙であってもよい。紙は高価であっても低価格であってもよい。
【0052】
本発明の組成物は例えば剥離紙、保護紙、および合紙の製造に適しており、前記合紙は例えば注型フィルムまたは装飾フィルムまたはポリウレタンからなる発泡物質を含む発砲物質の製造に使用される。本発明の組成物は更に例えば剥離用紙、フィルム、および布、保護用紙、フィルムおよび布、合わせ用紙、フィルムおよび布の製造のために、自己接着性テープまたは自己接着性フィルムの裏面または自己接着性ラベルの文字が記載された面の仕上げに適している。本発明の組成物は包装材料、例えば紙、ボール箱、金属フィルムおよび繊維、例えば厚紙、プラスチック、木材、または鉄からなる包装材料の仕上げに適しており、前記包装材料は粘着性材料、例えば接着剤、粘着性食品、例えばケーキ、蜂蜜、ボンボン、および肉、瀝青、アスファルト、脂肪を含む材料、生ゴムの貯蔵および搬送に決定されている。本発明の組成物を使用する他の例はいわゆる転写法で接着層を被覆するための支持体の仕上げである。
【0053】
本発明の組成物はオフライン法による、およびインライン法による剥離紙と結合した自己接着性材料の製造に適している。
【0054】
オフライン法ではシリコーン組成物を紙に塗布し、架橋し、引き続きこれに続く工程で、一般に剥離紙をローラーに巻いた後に、およびローラーを配置した後に、例えばラベル表面の紙に配置された接着剤フィルムを被覆された紙に被覆し、引き続き複合体を一緒に加圧する。インライン法ではシリコーン組成物を紙に塗布し、架橋し、シリコーン被膜に接着剤を被覆し、ラベル表面の紙を接着剤に被覆し、複合体を最後に一緒に加圧する。オフライン法では巻き速度はシリコーン被膜を粘着性でなくするために必要である時間に左右される。インライン法ではシリコーン被膜の移動をなくすために必要である時間に左右される。
【0055】
実施例および比較例1および2
本発明によるビニル基を有するオルガノポリシロキサン1を公知のビニル基を有するオルガノポリシロキサン2および3と剥離被膜の適性を比較した。オルガノポリシロキサン1、2および3の構造はそれぞれ表から理解できる。本発明によるオルガノポリシロキサン1はH−シロキサン均衡物および相当するシランから製造した。比較試験に使用されるオルガノポリシロキサン2および3は通常の均衡化法により製造した。
【0056】
オルガノポリシロキサン1,2および3をそれぞれヒドロゲンメチルシロキサン単位およびトリメチルシロキサン単位のSiH:SiVi=2:1からなる線状ポリシロキサンと混合し、白金化合物(白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体)100ppmを用いて触媒活性化した。架橋性組成物をDIXON被覆装置でグラシン紙に塗布し、乾燥炉内で150℃で2.6秒間硬化した。架橋の程度を抽出可能のシリコーン成分の測定により決定した。標準的FINAT、試験方法FTM3およびFTM4により0.3m/分および300m/分の剥離速度でTESA社のアクリレート接着剤A7475に対する剥離力の測定を行った。
【0057】

【0058】
【表1】

【0059】
結果は本発明のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン1が種々の剥離速度で剥離力の少ない変化を示す。2.6秒の硬化時間での少ない抽出物値は比較オルガノポリシロキサン2および3に対して本発明によるアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン1の高い硬化速度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式
vivi (I)
(式中、
viは式RSiO1/2の単位を表し、
Tは式RSiO3/2の単位を表し、
Dは式RSiOの単位を表し、
viは式RRSiOの単位を表し、
Mは式RSiO1/2の単位を表し、
Rは脂肪族炭素−炭素二重結合を含まない、1〜18個の炭素原子を有する一価のSiC結合した、置換されていないかまたは置換された炭化水素基を表し、
は基1個当たり2〜8個の炭素原子を有する末端の脂肪族炭素−炭素二重結合を有する一価の、SiC結合した炭化水素基を表し、
aは平均的に2.5〜8であり、
bは平均的にa−2であり、
cは平均的に41〜1000であり、
dは平均的に0〜4であり、
eは平均的に0〜2であり、
ただしa−2個のMvi単位は直接T単位に結合している)のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)Si結合した水素原子を有する有機珪素化合物、および
(C)Si結合した水素の脂肪族二重結合への付加を促進する触媒
を含有する架橋性組成物。
【請求項2】
aが3〜8であり、bが1〜6である請求項1記載の架橋性組成物。
【請求項3】
(A)アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとして一般式:
【化1】

(式中、Rは一価の、脂肪族炭素−炭素二重結合を含まない、SiC結合した置換されていないかまたは置換された1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
は基1個当たり2〜8個の炭素原子を有する一価の、SiC結合した、末端の脂肪族炭素−炭素二重結合を有する炭化水素基を表し、
nは41〜1000であり、および
mは1〜6である)のオルガノポリシロキサンを使用する請求項1または2記載の架橋性組成物。
【請求項4】
がビニル基である請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載の組成物の架橋により製造された成形体。
【請求項6】
被膜である請求項5記載の成形体。
【請求項7】
粘着物を排除する被膜である請求項5記載の成形体。
【請求項8】
被覆すべき表面に請求項1から4までのいずれか1項記載の架橋性組成物を被覆し、引き続き組成物を架橋することにより被膜を製造する方法。
【請求項9】
粘着物排除作用する表面に請求項1から4までのいずれか1項記載の架橋性組成物を被覆し、引き続き組成物を架橋することにより粘着物を排除する被膜を製造する方法。
【請求項10】
一般式:
vivi (I)
(式中、
vi、T、D、Dvi、M、a、b、c、dおよびeは請求項1に記載された意味を表し、ただしa−2個のMvi単位は直接T単位に結合している)のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン。
【請求項11】
一般式
【化2】

(式中、R、R、nおよびmは請求項3に記載された意味を有する)のオルガノポリシロキサンである請求項10記載のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン。

【公開番号】特開2006−83392(P2006−83392A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270974(P2005−270974)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(390008969)ワッカー ヘミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, BRD
【Fターム(参考)】