説明

アルコキシマグネシウムの製造方法、オレフィン類重合用固体触媒成分、オレフィン類重合用触媒ならびにオレフィン類重合体の製造方法

【課題】生成ポリマーの立体規則性や重合活性等の性能を低下させることなく高かさ密度でかつ低微粉の重合体を製造するに適した固体触媒成分を得ることのできるアルコキシマグネシウムの調製方法、該アルコキシマグネシウムを用いたオレフィン類重合用固体触媒成分およびオレフィン重合触媒を提供する。
【解決手段】マグネシウムとアルコールと反応促進剤を接触させ、その後さらに2回以上、マグネシウムおよび反応促進剤を接触させて得られるアルコキシマグネシウム(A)、4価のチタンハロゲン化合物(B)および電子供与性化合物(C)を接触して得られるオレフィン類重合用固体触媒成分(X)であり、更に、成分(X)と有機アルミ化合物(Y)から形成されるオレフィン重合用触媒を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシマグネシウムの製造方法、とりわけオレフィン類重合用固体触媒成分の担体原料に適したアルコキシマグネシウムの製造方法、該アルコキシマグネシウムを用いたオレフィン類重合用固体触媒成分およびオレフィン類重合用触媒、ならびにオレフィン類重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チーグラー・ナッタ触媒として知られる、高活性型オレフィン類重合用固体触媒成分の主な製造方法としては、振動ボールミル等の機械的粉砕やアルコール等を使用した溶解再析出によって活性化した塩化マグネシウム担体表面に、チタン化合物を担持させることによって固体触媒成分を得る方法、アルコキシマグネシウムを四塩化チタン等塩化物によってハロゲン化し、次いでチタン化合物を担持させ、オレフィン重合用固体触媒成分を得る方法等が知られている。
【0003】
ところが、上記のような方法により得られるオレフィン重合用固体触媒成分を用いてオレフィン類の重合をおこなうと、得られるオレフィン重合体中には微粉状の重合体が多く含まれ、その粒度分布もブロード化する傾向があった。生成重合体中の微粉重合体の生成量が多くなると、均一な重合反応の継続を妨げ、また重合体移送時における配管の閉塞をもたらす等のプロセス障害原因となり、また得られるオレフィン重合体の粒度分布が広くなると、結果的に重合体の成型加工にまで好ましくない影響を及ぼすため、微粉重合体の生成量が可及的に少なく、かつ均一粒径で粒度分布の狭い重合体を希求する要因となっている。
【0004】
また、近年、オレフィン重合体の生産においては生産性や輸送効率の向上が求められており、オレフィン重合体のかさ密度の向上についても、最も重要な課題のひとつとなっている。
【0005】
上記のような問題を解決する方法として、特許文献1(特開平6−287225号公報)には、球状のアルコキシマグネシウム、芳香族炭化水素およびフタル酸ジエステルとで形成した懸濁液を、前記芳香族炭化水素および該芳香族炭化水素の総量に対する容量比で1/2以下の四塩化チタンと反応させて得られ、粒径200μm 以下の微粉を殆ど含まず球状に近い粒子形状を有するオレフィン類重合用固体触媒成分を、オレフィン重合に供することで、粒形がほぼ球形であり、また微粉重合体の生成が少なく、その粒径分布も狭い範囲に整っているオレフィン重合体が得られることが開示されている。この方法で生成した重合体は球状に近く、良好なモルフォロジーのものが得られるが、かさ比重の点で改善の余地があった。
【0006】
オレフィン類重合用固体触媒成分の担体として使用されるジアルコキシマグネシウムの製造技術として、例えば、特許文献2(特開昭58−41832号公報)には、金属マグネシウムとアルコールと飽和炭化水素からなる反応系に、飽和炭化水素に溶解した活性化剤を徐々に添加して反応させ、粒子状のジアルコキシマグネシウムを高純度で製造する方法、また、特許文献3(特開平3−74341号公報)には、ヨウ素または塩化マグネシウムの存在下、金属マグネシウムとアルコールをアルコール還流温度で断続的もしくは連続的に添加して反応させ、球形で粒度分布の狭いジアルコキシマグネシウムを製造する方法が開示されている。
【0007】
さらに、特許文献4(特開2006−306949号広報)には、高いかさ密度を有するジアルコキシマグネシウムの如き金属アルコキシド化合物担体粒子の存在下、金属マグネシウムをアルコールと反応させ、担体表面上に、アルコキシマグネシウムからなる層を形成させる、プロピレン− エチレンブロック共重合用に適したモフォロジーを有するジアルコキシマグネシウムの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−287225号公報
【特許文献2】特開昭58−41832号公報
【特許文献3】特開平3−74341号公報
【特許文献4】特開2006−306949号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来技術では、オレフィン重合体の高かさ密度化と、微粉発生量の低減といった課題を同時に解決するという点において、更なる改良の余地があった。
【0010】
従って、本発明の目的は、かかる従来技術に残された問題点を解決し、立体規則性や重合活性等の性能を低下させることなく、かさ密度が高く、かつ微粉の少ないオレフィン重合体を製造するに適したオレフィン類重合用固体触媒成分を得ることのできるアルコキシマグネシウムの製造方法、オレフィン類重合用固体触媒成分、オレフィン類重合用触媒ならびにオレフィン類重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる実情において、本発明者は、上記従来技術に残された課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、マグネシウムとアルコールと反応促進剤を接触させ、その後さらに2回以上マグネシウムおよび反応促進剤を接触させて得られたアルコキシマグネシウムをオレフィン類重合用固体触媒成分の担体として用いた場合、立体規則性や重合活性等の性能を低下させることなく、高かさ密度でかつ低微粉量のオレフィン類重合体を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、マグネシウム、アルコール及び反応促進剤を接触した混合物に、マグネシウムおよび反応促進剤を2回以上添加、接触することを特徴とするアルコキシマグネシウムの製造方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、前記方法により製造されたアルコキシマグネシウム、4価のチタンハロゲン化合物および電子供与性化合物を接触して得られることを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、前記オレフィン類重合用固体触媒成分および下記一般式(1);
AlQ3−p (1)
(Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数で、Rが複数存在する場合、各Rは同一であっても異なっていてもよく、Qが複数存在する場合、各Qは同一であっても異なっていてもよい)で表される有機アルミニウム化合物から形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、前記オレフィン類重合用固体触媒成分の存在下、炭素数2〜10のオレフィン類を重合させることを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のアルコキシマグネシウムをオレフィン類重合用固体触媒成分の一成分として用いれば、立体規則性や重合活性等の性能を低下させることなく、高いかさ密度を有し、微粉の発生量が少なく、かつ粒度分布が狭いオレフィン重合体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(アルコキシマグネシウムの合成方法)
本明細書中、混合物を形成するマグネシウムを「成分(a1)」、アルコールを「成分(b)」、反応促進剤を「成分(c1)」ということがある。その後、混合物に添加するマグネシウムを「成分(a2)」、反応促進剤を「成分(c2)」ということがある。
【0018】
本発明の製造方法において、マグネシウムとアルコールと反応促進剤の混合物を作製し、次いで、該混合物にマグネシウムと反応促進剤を2回以上に分割して添加、接触することで、微粉の発生量が少なく、かつ、かさ密度が高いアルコキシマグネシウムを得ることができ、さらにアルコキシマグネシウムの粒径を制御することができる。
【0019】
本発明の製造方法において、混合物は、マグネシウムとアルコールとの懸濁液を作製し、その懸濁液に反応促進剤を添加、接触して得られるものが好ましい。
【0020】
上記混合物に添加する成分(a2)の分割添加回数は、好ましくは3回以上、より好ましくは6回以上、特に8回以上である。また、上記混合物に添加する成分(c2)の分割添加回数は、好ましくは3回以上、より好ましくは4回以上である。成分(a2)と成分(c2)の分割添加回数を増やすことにより、微粉の発生量が少なく、かつ、かさ密度が高いアルコキシマグネシウムを得ることができ、さらに粒径を制御することができる。また、同時に水素ガスの一時的な大量発生を防ぐこともでき、安全面からも非常に望ましい。このとき添加する成分(a2)および成分(c2)は、同時に添加しても良いが、成分(a2)を添加後に成分(c2)を添加することも、本発明の好ましい態様の一つである。なお、成分(a2)のマグネシウムおよび成分(c2)の反応促進剤は、アルコール、飽和炭化水素化合物中に分散させた状態で、反応系内へ添加することが好ましい。
【0021】
成分(a2)と成分(c2)の分割添加回数の上限値は、特に制限されないが、操作性等を考慮すると、好ましくは成分(a2)が15回、成分(c2)が10回である。分割添加回数を上記の数値範囲の中、上限値側の回数とすれば、反応時に生じる熱を制御し易くなり、粒子形状が良好で、粒度分布の狭いアルコキシマグネシウムを得ることができる。
【0022】
本発明のアルコキシマグネシウムの製造方法において、成分(a2)及び成分(c2)を分割添加する際は、直前に添加した成分(a1)と成分(b)との反応が3/4以上進んだ後、添加することが好ましい。なお、金属マグネシウムの反応率は、反応時に発生した水素ガスを捕集し、その量を積算することによって、正確に測定することができる。成分(a2)及び成分(c2)の分割添加を上記のようなタイミングに実施することで、得られるアルコキシマグネシウムの粒度分布を狭くでき、また製造後のアルコキシマグネシウム中に残留するハロゲンやハロゲン化合物の量を低減することができる。
【0023】
本発明のアルコキシマグネシウムの製造方法に用いられる成分(a1)および成分(a2)の形状については特に限定されず、任意の形状の金属マグネシウムを用いることができる。例えば顆粒状、リボン状、粉末状等のものが好適に用いられる。ただしこの中でも、粉末状の金属マグネシウムが好ましく、平均粒径は好ましくは1〜1000μm、さらに好ましくは10〜500μmである。また、マグネシウムの表面状態も特に限定されないが、表面に酸化マグネシウム等の被膜が生成されていないものが望ましい。成分(a1)および成分(a2)は、マグネシウムであれば、異なるものであってもよいし、同じものであっても良い。
【0024】
本発明のアルコキシマグネシウムの製造方法に用いられる成分(b)は、特に限定されず、下記一般式(2);ROH (2)
(式中、Rは炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基である。) で表されるアルコールが挙げられ、中でも、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールおよびヘキサノールのごとき、炭素数1〜6の低級アルコールが好ましく用いられる。特に好ましくは、エタノールである。エタノールを用いることにより形成されるエトキシマグネシウムは、触媒性能の発現を著しく向上させる。上記アルコールの純度及び含水量は、特に限定されないが、含水量が少ないほど好ましく、具体的には無水アルコールや、含水量が200ppm以下の脱水アルコールが望ましい。
【0025】
本発明のアルコキシマグネシウムの製造方法に用いられる成分(c1)および成分(c2)は、ハロゲンまたはハロゲン化合物である。ハロゲンとしてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれか1種以上である。これらの中でも塩素、臭素またはヨウ素が好ましく、特に好ましいものはヨウ素である。また、ハロゲン化合物は、上記のハロゲン原子をその化学式中に含む化合物であり、具体的には、フタル酸ジクロライド、フタル酸ジブロマイド等の酸ハライド、二塩化マグネシウム、三塩化アルミニウム、三塩化チタン、四塩化チタン等のハロゲン化金属、一塩化エトキシマグネシウム、一塩化トリエトキシチタン、二塩化ジエトキシチタン、三塩化エトキシチタンなどのハロゲン化アルコキシ金属等を使用できる。これらの中でも特に好ましくは、三塩化チタン、四塩化チタン等のハロゲン化チタンおよび一塩化トリエトキシチタン、二塩化ジエトキシチタン、三塩化エトキシチタンなどのハロゲン化アルコキシチタンである。また、前記ハロゲンまたはハロゲン含有化合物は、形状、粒度等は特に限定されず、任意のものでよい。また、他の1種または2種以上のハロゲン含有化合物と混合して使用してもよい。成分(c1)および成分(c2)は、反応促進剤であれば、異なるものであってもよいし、同じものであっても良い。
【0026】
本発明のアルコキシマグネシウムの製造方法において、マグネシウムとアルコールと反応促進剤の混合物を形成する際の成分(c1)の量は、特に限定されないが、反応に供する成分(a1)に対するモル比で0.01〜0.09、好ましくは0.01〜0.06の範囲である。
本発明のアルコキシマグネシウムの製造方法において、成分(c2)の量は、特に限定されないが、成分(c2)の小計が、反応に供する反応促進剤の全量(成分(c1)と成分(c2)の合計量)に対するモル比で0.1〜0.9、好ましくは0.1〜0.7となる範囲である。
成分(c1)および成分(c2)の量を上記の範囲とすることが、生成物の粒径を制御し易い等の点で好ましい。
【0027】
また、成分(a1)の量は、目的とするアルコキシマグネシウムの粒径にあわせて調整すればよく特に限定されないが、反応に用いるマグネシウムの全量(成分(a1)と成分(a2)の合計量)に対し、モル比で0.01〜0.5、好ましくは0.05〜0.2の範囲である。
【0028】
なお、成分(b)の量は、マグネシウムおよび反応促進剤を均一に分散させ、攪拌できる範囲であればよく特に限定されないが、反応に用いるマグネシウムの全量(成分(a1)と成分(a2)の合計量)に対し、モル比で1以上あることが好ましく、好ましくは1.5〜10の範囲である。
【0029】
また、添加する成分(a2)の合計量は、成分(a1)の量に対し、モル比で1〜100の範囲が好ましく、目的とするアルコキシマグネシウムの粒径にあわせて調整することができる。より好ましくは、成分(a2)の合計量が、成分(a1)の量に対し、モル比で5〜20の範囲である。また、成分(c2)の合計量は、成分(a2)の合計に対し、モル比で0.001〜0.1の範囲となる量にすることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.01、特に好ましくは、0.002〜0.01である。成分(a2)及び成分(c2)の合計添加量を上記の範囲とすることで、かさ密度が高く、粒度分布が狭いアルコキシマグネシウムを得ることができる。
【0030】
成分(a1)量、成分(b)量および成分(a2)量を上記のような比とすることで、アルコキシマグネシウムの均一な核形成が行なわれ、粒度分布が狭いアルコキシマグネシウムを得ることができる。
【0031】
なお、成分(a2)及び成分(c2)の添加は、溶媒の共存下で行なうことも可能である。溶媒としては、例えば、エタノール、プロパノールなどのアルコールや、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどの飽和炭化水素化合物が挙げられる。これらの中でも特に、成分(b)と同じアルコールが好ましい。
【0032】
成分(a1)、成分(b)および成分(c1)の混合、および成分(a1)、成分(b)および成分(c1)の混合物に対する成分(a2)及び成分(c2)の添加、接触は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、水分、酸素等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行われる。混合または接触温度(反応温度)は、好ましくは室温付近〜成分(b)の還流温度、より好ましくは、30〜成分(b)の還流温度の温度域である。この温度範囲とすることで、反応効率、反応の制御性の点で有利となる。なお、反応時間は1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。なお、成分(a1)、成分(b)および成分(c1)の混合物を得る接触、反応と、成分(a2)及び成分(c2)の分割添加による接触、反応とは上記反応条件において同一又は異なっていてもよい。
【0033】
以上のようにして得られるアルコキシマグネシウムは、次の固体触媒成分の調製に用いるため、加熱乾燥、気流乾燥あるいは減圧乾燥などの手法により乾燥させるか、あるいは不活性炭化水素化合物で洗浄するなどの方法により、アルコールを除去しておくことが望ましい。
【0034】
上記のようにして得られたアルコキシマグネシウムは球状であり、粒子一つ一つの球形度のばらつきが小さく、また、かさ密度が高くかつ微粉粒子が少ない。更に粒度分布がシャープである。本発明の製造方法により得られるアルコキシマグネシウムの平均粒径は、1〜200μm、好ましくは5〜100μmである。
【0035】
アルコキシマグネシウムの粒度分布は、次式;
粒度分布指数(SPAN)=(D90−D10)/D50
において、1.6以下、好ましくは1.4以下、特に好ましくは1.2以下である。なお、この粒度分布指数は、粒径分布の広がり度合いを示すもので、この値が小さいほど粒径分布がシャープであり、粒径がそろっていることを表わしている。
【0036】
上記式中、D90は炭化水素化合物中に懸濁した状態においてレーザー回折式粒度分布測定装置で測定して求められるアルコキシマグネシウムの粒径分布における積算体積分率90%に対応する粒子径(μm)を示し、D50は積算体積分率50%に対応する粒子径(μm)を示し、D10は積算体積分率10%に対応する粒子径(μm)を示す。
【0037】
得られるアルコキシマグネシウムの、微粉の占める割合は、全体の3.0%以下、好ましくは2.0%以下、特に好ましくは1.5%以下である。なお、微粉の占める割合は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定して得られ、粒子径が積算体積分率50%に対応する粒子径D50の1/4以下である粒子を微粉と定義する。
【0038】
得られるアルコキシマグネシウムのかさ密度(BD)は、0.300〜0.400、好適には0.300〜0.350である。なお、当該かさ密度についてはJIS K6721に準拠して測定すればよい。
【0039】
得られるアルコキシマグネシウムは球状で、粒度分布がシャープで、微粉が少なく、且つかさ密度が高いため、これを用いて調製されたオレフィン重合用固体触媒成分を用いてオレフィン類を重合すれば、立体規則性や重合活性等の性能を低下させることなく、高かさ密度で、かつ少ない微粉量の重合体を製造することができる。
【0040】
(オレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法)
本発明において、オレフィン類重合用固体触媒成分(X)(以下、単に「成分(X)」ということがある。)は、上記方法で得られたアルコキシマグネシウム(以下、単に「成分(A)」ということがある。)と、ハロゲン含有チタン化合物と、必要に応じて電子供与性化合物を接触して得られる。成分Xの調製に用いられる成分(A)は、前述した合成方法により得られたアルコキシマグネシウムを用いるものであり、その説明を省略する。
【0041】
本発明における成分(X)の調製に用いられるハロゲン含有チタン化合物(B)(以下単に「成分(B)」ということがある。)は、チタンハライドもしくはアルコキシチタンハライド群から選択される化合物の1種あるいは2種以上である。具体的には、チタンハライドとしてチタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライド、アルコキシチタンハライドとしてメトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド等が例示される。このうち、チタンテトラハライドが好ましく、特に好ましくはチタンテトラクロライドである。これらのチタン化合物は単独あるいは2種以上併用することもできる。
【0042】
本発明における成分(X)の調製に用いられる電子供与性化合物(以下、単に「成分(C)」ということがある。)としては公知の化合物を好適に用いることができ、例えば、酸無水物、酸ハライド、ジエーテル化合物、モノカルボン酸エステル化合物、ジカルボン酸エステル化合物、酸アミド類、ニトリル類、など、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物が挙げられる。
【0043】
上記の中でも、エステル類、特にマレイン酸ジエステル、マロン酸ジエステル、アルキル置換マロン酸ジエステル、ハロゲン置換マロン酸ジエステル、コハク酸ジエステル、アルキル置換コハク酸ジエステル、ハロゲン置換コハク酸ジエステル、シクロアルカンジカルボン酸エステル、シクロアルケンジカルボン酸エステルなどの脂肪族ジカルボン酸ジエステルおよび、フタル酸ジエステル、アルキル置換フタル酸ジエステル、ハロゲン置換フタル酸ジエステルなどの芳香族ジカルボン酸ジエステルが好ましい。なお、このような電子供与性化合物(C)は、2種以上併用することもできる。
【0044】
本発明においては、上記成分(A)、(B)、及び(C)を、沸点50〜150℃の炭化水素溶媒(D)(以下、単に「成分(D)」ということがある。)の存在下で接触させることによって成分(X)を調製する方法が、好ましい調製方法の態様である。このとき、成分(D)としては、上記のハロゲン化チタン化合物を溶解し、かつジアルコキシマグネシウムは溶解しないものであれば特に限定されないが、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカンなどのアルカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどのシクロアルカンなどの飽和炭化水素化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素が好ましい。これらの中でもトルエン、キシレンなどの室温で液体の芳香族炭化水素化合物およびヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの室温で液体の飽和炭化水素化合物が好ましく用いられる。なお、上記の成分(D)は、単独で用いても、2種以上混合して使用しても良い。
【0045】
本発明の固体触媒成分(X)の調製においては、上記成分の他、更に、ポリシロキサン(E)(以下、単に「成分(E)」ということがある。)を使用することができる。成分(E)を用いることにより生成ポリマーの立体規則性あるいは結晶性を向上させることができ、さらには生成ポリマーの微粉を低減することが可能となる。ポリシロキサンは、主鎖にシロキサン結合(−Si−O−Si−結合)を有する重合体であり、シリコーンオイルとも総称され、25℃における粘度が0.02〜100cm/s(2〜10000センチストークス)、より好ましくは0.03〜5cm/s(3〜500センチストークス)を有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンである。
【0046】
鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10〜80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンが、また変性ポリシロキサンとしては、高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサンが例示される。これらの中で、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びジメチルポリシロキサンが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンが特に好ましい。
【0047】
本発明における固体触媒成分の好ましい調製方法としては、成分(A)、成分(C)および成分(D)とからなる懸濁液を、成分(B)および成分(D)とからなる混合溶液と接触させ、その後反応させることによる調製方法を挙げることができる。
【0048】
また、本発明の特に好ましい固体触媒成分の調製方法としては、(1)成分(A)を成分(D)に懸濁させ、次いで成分(B)を接触させた後に成分(C)及び成分(D)を接触させ、反応させることにより固体触媒成分を調製する方法、あるいは、(2)成分(A)を成分(D)に懸濁させ、次いで成分(C)を接触させた後に成分(B)を接触させ、反応させることにより固体触媒成分を調製する方法を挙げることができる。さらに、このように調製した固体触媒成分に再度または複数回成分(B)、または成分(B)および成分(C)を接触させることによって、最終的な固体触媒成分の性能を向上させることができる。上記接触は、成分(D)の存在下に行うことが望ましい。
【0049】
また、成分(E)を含む本発明の好ましい固体触媒成分の調製方法としては、成分(A)を成分(D)に懸濁させ、次いで成分(B)を接触させた後に成分(C)、成分(D)および成分(E)を接触させ、反応させることにより固体触媒成分を調製する方法、あるいは、成分(A)を成分(D)に懸濁させ、次いで成分(C)を接触させた後に成分(B)を接触させ、さらに成分(E)を接触させ、反応させることにより固体触媒成分を調製する方法を挙げることができる。また、このように調製した固体触媒成分に再度または複数回成分(B)、または成分(B)、成分(C)および成分(E)を接触させることによって、最終的な固体触媒成分の性能を向上させることができる。この際、成分(D)の存在下に行うことが望ましい。
【0050】
各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行われる。接触温度は、各成分の接触時の温度であり、反応させる温度と同じ温度でも異なる温度でもよい。接触温度は、単に接触させて撹拌混合する場合や、分散あるいは懸濁させて変性処理する場合には、室温付近の比較的低温域であっても差し支えないが、接触後に反応させて生成物を得る場合には、40〜130℃の温度域が好ましい。反応時の温度が40℃未満の場合は充分に反応が進行せず、結果として調製された固体成分の性能が不充分となり、130℃を超えると使用した溶媒の蒸発が顕著になるなどして、反応の制御が困難になる。なお、反応時間は1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。
【0051】
本発明において成分(X)を調製する際の各成分の使用量比は、調製法により異なるため一概には規定できないが、例えば成分(A)1モル当たり、成分(B)が0.5〜100モル、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは1〜10モルであり、成分(C)が0.01〜10モル、好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.02〜0.6モルであり、成分(D)が0.001〜500モル、好ましくは0.001〜100モル、より好ましくは0.005〜10モルである。成分(E)を使用する場合は、例えば成分(A)1モル当たり、成分(E)が0.01〜100g、好ましくは0.05〜80g、より好ましくは1〜50gである。
【0052】
また、本発明における固体触媒成分(X)中のチタン、マグネシウム、ハロゲン原子、電子供与性化合物の含有量は特に規定されないが、好ましくは、チタンが0.1〜20重量%、好ましくは1.0〜10重量%、マグネシウムが10〜25重量%、より好ましくは15〜25重量%、特に好ましくは20〜25重量%、ハロゲン原子が20〜75重量%、より好ましくは30〜75重量%、特に好ましくは40〜75重量%、更に好ましくは45〜75重量%、また電子供与性化合物を使用するときには合計0.5〜30重量%、より好ましくは合計1〜25重量%、特に好ましくは合計2〜20重量%である。
【0053】
(オレフィン類重合用触媒の説明)
本発明のオレフィン類重合用触媒は、前記の固体触媒成分(X)、下記一般式(1);RAlQ3−p (1)
(Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数で、Rが複数存在する場合、各Rは同一であっても異なっていてもよく、Qが複数存在する場合、各Qは同一であっても異なっていてもよい)で表される有機アルミニウム化合物(Y)、および必要に応じて外部電子供与性化合物(Z)から形成される。
【0054】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる有機アルミニウム化合物(Y)(以下単に「成分(Y)」ということがある。)としては、上記一般式(1)で表される化合物であれば、特に制限されないが、Rとしては、エチル基、イソブチル基が好ましく、Qとしては、水素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、pは2又は3が好ましく、3が特に好ましい。このような有機アルミニウム化合物(Y)の具体例としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドが挙げられ、1種あるいは2種以上が使用できる。好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムである。
【0055】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる外部電子供与性化合物(Z)(以下、「成分(Z)」ということがある。)としては、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物が挙げられ、例えばエーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、有機ケイ素化合物等が挙げられる。上記のなかでも、安息香酸エチル、p−メトキシ安息香酸エチル、p−エトキシ安息香酸エチル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のエステル類、1,3−ジエーテル類、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物、Si−N−C結合を含むアミノシラン化合物が好ましく、特にSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物およびSi−N−C結合を有するアミノシラン化合物が好ましい。
【0056】
上記の有機ケイ素化合物のうち、Si−O−C結合を有する有機ケイ素化合物としては、下記一般式(3); RSi(OR4−q (3)
(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、フェニル基、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基のいずれかで、同一または異なっていてもよい。Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)で表わされる有機ケイ素化合物が挙げられる。
【0057】
上記の有機ケイ素化合物のうち、Si−N−C結合を有するアミノシラン化合物としては、下記一般式(4);(RN)SiR4−s (4)
(式中、RとRは水素原子、炭素数1〜20の直鎖または炭素数3〜20の分岐状アルキル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アリール基であり、RとRは同一でも異なってもよく、またRとRが互いに結合して環を形成してもよい。Rは炭素数1〜20の直鎖または炭素数3〜20の分岐状アルキル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基、炭素数1〜20の直鎖または分岐状アルコキシ基、ビニルオキシ基、アリロキシ基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、およびそれらの誘導体を示し、Rが複数ある場合、複数のRは同一でも異なってもよい。sは1から3の整数である。)で表わされるアミノシラン化合物が挙げられる。
【0058】
このような有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、アルキル(シクロアルキル)アルコキシシラン、(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、シクロアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、テトラキス(アルキルアミノ)シラン、アルキルトリス(アルキルアミノ)シラン、ジアルキルビス(アルキルアミノ)シラン、トリアルキル(アルキルアミノ)シラン等を挙げることができ、具体的には、フェニルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ビス(エチルアミノ)メチルエチルシラン、t−ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(メチルアミノ)(メチルシクロペンチルアミノ)メチルシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、エチル(イソキノリノ)ジメトキシシラン等が挙げられ、中でも、フェニルトリメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、t−ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン等が好ましく用いられる。なお、上記の成分(Z)は、1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0059】
(オレフィン重合体の製造方法)
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、上記オレフィン類重合用触媒の存在下にオレフィン類の重合もしくは共重合を行なう。オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン、1−ヘキセン、3−メチル−ブテン−1等が挙げられ、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用して共重合体として使用することも可能である。例えばエチレンとプロピレン、1−ブテンおよび1−ヘキセンの共重合、プロピレンとエチレン、ブテン−1および1−ヘキセンとの共重合が挙げられる。
【0060】
各成分の使用量比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常は、成分(Y)は成分(X)中のチタン原子1モル当たり、1〜2000モル、好ましくは50〜1000モルの範囲で用いられる。成分(Z)は、成分(Y)1モル当たり、0.002〜10モル、好ましくは0.01〜2モル、特に好ましくは0.01〜0.5モルの範囲で用いられる。
【0061】
各成分の接触順序は任意であるが、例えば成分(Y)の有機アルミニウム化合物を装入し、次いで成分(Z)の外部電子供与性化合物を接触させ、更に成分(X)のオレフィン類重合用固体触媒成分を接触させる方法が挙げられる。
【0062】
本発明における重合方法は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行なうことができ、またプロピレン等のオレフィン単量体は、気体および液体のいずれの状態でも用いることができる。重合温度は200℃以下、好ましくは100℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応を1段で行なってもよいし、2段以上で行なってもよい。
【0063】
更に、本発明において固体触媒成分(X)、成分(Y)、および成分(Z)を接触させて得られる重合触媒を用いてオレフィンを重合するにあたり(本重合ともいう。)、触媒活性、立体規則性および生成する重合体の粒子性状等を一層改善させるために、本重合に先立ち予備重合を行なうことが望ましい。予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることができる。
【0064】
予備重合を行なうに際して、各成分およびモノマーの接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(Y)を装入し、次いで成分(X)を接触させた後、プロピレン等のオレフィンおよび/または1種あるいは2種以上の他のオレフィン類を接触させる。成分(Z)を組み合わせて予備重合を行なう場合は、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(Y)を装入し、次いで成分(Z)を接触させ、更に成分(X)を接触させた後、プロピレン等のオレフィンおよび/または1種あるいはその他の2種以上のオレフィン類を接触させる方法が望ましい。
【0065】
(実施例)
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0066】
<アルコキシマグネシウムの調製>
窒素ガスで充分置換され、攪拌器および還流冷却器を具備した容量1リットルの円筒形フラスコに、成分(a1)として粒径50〜320μm、平均粒径140μmの金属マグネシウム粉末1.6g(65.8ミリモル)と、成分(b)として水分含有量60ppmのエタノール60mlを装入し懸濁液を形成した。次いで、成分(c1)としてヨウ素0.5g(2.0ミリモル)を加え、懸濁液を攪拌しながら70℃まで昇温させた。水素発生が確認されなくなった後、成分(a2)としてエタノール20mlに懸濁させた金属マグネシウム1.6g(65.8ミリモル)を15分間隔で9回添加した。成分(c2)として、上記金属マグネシウムの分割添加3回目、5回目及び7回目の後、それぞれ、すぐにエタノール10mlに懸濁させたヨウ素0.1g(0.39ミリモル)を添加した。成分(a2)の添加量の小計は、成分(a1)と成分(a2)の合計に対するモル比で0.5であった。また、成分(c2)の添加量の小計は、成分(c1)と成分(c2)の合計に対するモル比で0.37であった。
【0067】
全ての成分を添加後、攪拌しながら水素発生が停止するまで70℃の温度を維持しつつ2時間保持した。反応終了後、室温まで冷却し、真空乾燥してジエトキシマグネシウムを得た。乾燥後のジエトキシマグネシウムについて、粒径、粒度分布、微粉割合及びかさ密度を下記の測定方法により求めた。その結果を表1に示した。なお、得られたジエトキシマグネシウムの粒子形状を電子顕微鏡により観察したところ、形状は球形であった。
【0068】
<積算体積粒度10%、50%および90%に該当する粒径および粒度分布指数>
得られたアルコキシマグネシウムの積算体積粒度10%、50%および90%に該当する粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(MICROTRAC HRA 9320−X100 日機装(株)製)を用いて測定した。また、粒度分布指数SPANについては、上記の積算体積粒度10%、50%および90%に該当する粒径D10、D50、およびD90より、下記の式を用い算出した。
【0069】
粒度分布指数(SPAN)=(D90−D10)/D50
(式中、D90は積算体積粒度分布における積算粒度で90%の粒子径(μm)、D50は積算体積粒度分布における積算粒度で50%の粒子径(μm)、D10は積算体積粒度分布における積算粒度で10%の粒子径(μm)を示す。)
【0070】
<微粉割合>
得られたアルコキシマグネシウムの微粉割合は、レーザー回折式粒度分布測定装置(MICROTRAC HRA 9320−X100 日機装(株)製)による粒度分布測定結果をもとに、粒径が積算体積粒度50%に該当する粒径D50の1/4以下である粒子を微粉と定義し、全粒子中において微粉が占める割合(微粉割合)を求めた。
【0071】
<粒子形状>
得られたアルコキシマグネシウムの粒子形状は、走査型電子顕微鏡(JSM−5310LV 日本電子(株)製)にて、加速電圧5kV、倍率300倍、1000倍および5000倍で観察した。
【0072】
<かさ密度(BD)>
得られたアルコキシマグネシウムのかさ密度(BD)については、JIS K6721に従って測定した。
【実施例2】
【0073】
<アルコキシマグネシウムの調製>
金属マグネシウムの分割添加3回目、5回目及び7回目の後、それぞれすぐにエタノール10mlに懸濁させたヨウ素0.1g(0.39ミリモル)を添加することに代えて、金属マグネシウムの分割添加3回目および6回目の後、それぞれすぐにエタノール15mlに懸濁させたヨウ素0.15g(0.59ミリモル)を添加した以外は、実施例1と同様にして、アルコキシマグネシウムの調製および評価を行なった。成分(c2)の添加量の小計は、成分(c1)と成分(c2)の合計に対するモル比で0.37であった。なお、得られたジエトキシマグネシウムの粒子形状は球形であった。結果を表1に示す。
【0074】
(比較例1)
<アルコキシマグネシウムの調製>
成分(c1)のヨウ素0.5g(2.0ミリモル)に代えて、ヨウ素0.8g(3.17ミリモル)を添加したこと、成分(c2)として、金属マグネシウムの分割添加3回目、5回目及び7回目の後にはヨウ素を追加で添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、アルコキシマグネシウムの調製および評価を行なった。すなわち、比較例1はヨウ素の分割添加なしのものである。なお、得られたジエトキシマグネシウムの粒子形状を電子顕微鏡により観察したところ、形状はおおむね球形であったが、不定形粒子も存在した。結果を表1に示す。
【0075】
(比較例2)
<アルコキシマグネシウムの調製>
金属マグネシウムの分割添加3回目、5回目及び7回目の後、それぞれすぐにエタノール10mlに懸濁させたヨウ素0.1g(0.39ミリモル)を添加することに代えて、金属マグネシウムの分割添加3回目の後、すぐにエタノール10mlに懸濁させたヨウ素0.3g(1.17ミリモル)を添加し、金属マグネシウムの分割添加5回目及び7回目の後にはヨウ素を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、アルコキシマグネシウムの調製および評価を行なった。すなわち、比較例2は、ヨウ素を1回だけ分割添加したものである。成分(c2)の添加量の小計は、成分(c1)と成分(c2)の合計に対するモル比で0.37であった。なお、得られたジエトキシマグネシウムの粒子形状を電子顕微鏡により観察したところ、形状はおおむね球形であったが、不定形粒子も存在した。結果を表1に示す。
【実施例3】
【0076】
成分(c2)であるヨウ素0.1g(0.39ミリモル)に代えて、ヨウ素0.2g(0.79ミリモル)とした以外は、実施例1と同様にして、アルコキシマグネシウムの調製および評価を行なった。すなわち、実施例1と異なる点は、金属マグネシウムの分割添加3回目、5回目及び7回目の後にそれぞれ添加する成分(c2)の使用量を変えたものである。成分(c2)添加量の小計は、成分(c1)と成分(c2)の合計に対するモル比で0.54であった。なお、得られたジエトキシマグネシウムの粒子形状は、球形であった。結果を表1に示す。
【実施例4】
【0077】
金属マグネシウムの分割添加3回目、5回目及び7回目の後、それぞれすぐにエタノール10mlに懸濁させたヨウ素0.1g(0.39ミリモル)を添加することに代えて、金属マグネシウムの分割添加1回目、3回目、5回目、7回目、9回目の後、それぞれすぐにエタノール6mlに懸濁させたヨウ素0.12g(0.47ミリモル)を添加したこと以外は、実施例1と同様にして、アルコキシマグネシウムの調製および評価を行なった。成分(c2)の添加量の小計は、成分(c1)と成分(c2)の合計に対するモル比で0.54であった。なお、得られたジエトキシマグネシウムの粒子形状は、球形であった。結果を表1に示す。
【実施例5】
【0078】
金属マグネシウムの分割添加3回目、5回目及び7回目の後、それぞれすぐにエタノール10mlに懸濁させたヨウ素0.1g(0.39ミリモル)を添加することに代えて、上記金属マグネシウムの分割添加2回目の後、すぐにエタノール4.3mlに懸濁させたヨウ素0.085g(0.33ミリモル)を添加し、さらに金属マグネシウムの分割添加3回目、4回目、5回目、6回目、7回目、8回目の後、それぞれすぐにエタノール6mlに懸濁させたヨウ素0.12g(0.47ミリモル)を添加したこと以外は、実施例1と同様にして、アルコキシマグネシウムの調製および評価を行なった。成分(c2)の添加量の小計は、成分(c1)と成分(c2)の合計に対するモル比で0.61であった。なお、得られたジエトキシマグネシウムの粒子形状は、球形であった。結果を表1に示す。
【実施例6】
【0079】
<アルコキシマグネシウムの調製>
最初に添加するヨウ素0.5g(2.0ミリモル)に代えて、ヨウ素0.25g(1.0ミリモル)としたこと、成分(c2)であるヨウ素0.1g(0.39ミリモル)に代えて、ヨウ素0.28g(1.12ミリモル)としたこと以外は、実施例1と同様にして、アルコキシマグネシウムの調製および評価を行なった。すなわち、実施例1と異なる点は、最初に添加するヨウ素の使用量と、金属マグネシウムの分割添加3回目、5回目及び7回目の後にそれぞれ添加するヨウ素の使用量を変えたものである。成分(c2)の添加量の小計は、成分(c1)と成分(c2)の合計に対するモル比で0.77であった。なお、得られたジエトキシマグネシウムの粒子形状は、球形であった。結果を表1に示す。
【実施例7】
【0080】
<アルコキシマグネシウムの調製>
最初に添加するヨウ素0.5g(2.0ミリモル)に代えて、ヨウ素0.7g(2.8ミリモル)としたこと、成分(c2)であるヨウ素0.1g(0.39ミリモル)に代えて、ヨウ素0.13g(0.52ミリモル)とした以外は、実施例1と同様にして、アルコキシマグネシウムの調製および評価を行なった。すなわち、実施例1と異なる点は、最初に添加するヨウ素の使用量と、金属マグネシウムの分割添加3回目、5回目及び7回目の後にそれぞれ添加するヨウ素の使用量を変えたものである。成分(c2)の添加量の小計は、成分(c1)と成分(c2)の合計に対するモル比で0.36であった。なお、得られたジエトキシマグネシウムの粒子形状は球形であった。結果を表1に示す。
【実施例8】
【0081】
<アルコキシマグネシウムの調製>
最初に添加するヨウ素0.5g(2.0ミリモル)に代えて、ヨウ素0.95g(3.8ミリモル)としたこと、成分(c2)であるヨウ素0.1g(0.39ミリモル)に代えて、ヨウ素0.05(0.20ミリモル)とした以外は、実施例1と同様にして、アルコキシマグネシウムの調製および評価を行なった。すなわち、実施例1と異なる点は、最初に添加するヨウ素の使用量と、金属マグネシウムの分割添加3回目、5回目及び7回目の後にそれぞれ添加するヨウ素の使用量を変えたものである。成分(c2)の添加量の小計は、成分(c1)と成分(c2)の合計に対するモル比で0.14であった。なお、得られたジエトキシマグネシウムの粒子形状は、球形であった。結果を表1に示す。
【0082】
(比較例3)
最初に添加するヨウ素量0.8g(3.17ミリモル)に代えて、1.6g(6.3ミリモル)とした以外は、比較例1と同様にして、アルコキシマグネシウムの調製および評価を行なった。すなわち、比較例3はヨウ素の分割添加なしのものである。なお、得られたジエトキシマグネシウムの粒子形状を電子顕微鏡により観察したところ、形状はおおむね球形であったが、不定形粒子も存在した。結果を表1に示す。
【0083】
(比較例4)
<アルコキシマグネシウムの調製>
窒素ガスで充分置換され、攪拌器および還流冷却器を具備した容量1リットルの円筒形フラスコに、成分(a1)として粒径50〜320μm、平均粒径140μmの金属マグネシウム粉末16g(658ミリモル)と、成分(b)として水分含有量60ppmのエタノール600mlを装入し懸濁液を形成した。次いで、成分(c1)としてヨウ素0.5g(2.0ミリモル)を加えて懸濁液を攪拌しながら70℃まで昇温させた。水素発生が確認されなくなった後、成分(c2)としてエタノール10mlに懸濁させたヨウ素0.1g(0.39ミリモル)を45分間隔で3回添加した後、水素の発生が停止するまで攪拌しながら70℃の温度を維持しつつ2時間保持した。反応終了後、室温まで冷却し、真空乾燥してジエトキシマグネシウムを得た。すなわち、比較例4は反応促進剤のみ分割添加したものである。得られたジエトキシマグネシウムの粒径、粒度分布、微粉割合及びかさ密度を、実施例1と同様の方法で求めた。なお、得られたジエトキシマグネシウムの粒子形状を電子顕微鏡により観察したところ、形状はおおむね球形であったが、不定形粒子も存在した。結果を表1に示す。
【実施例9】
【0084】
最初に添加する成分(a1)の金属マグネシウム粉末の量1.6g(65.8ミリモル)に代えて、1.0g(41.1ミリモル)としたこと、また成分(a2)の金属マグネシウム1.6g(65.8ミリモル)に代えて、金属マグネシウム1.7g(68.5ミリモル)としたこと以外は、実施例1と同様にして、アルコキシマグネシウムの調製および評価を行なった。すなわち、実施例1と異なる点は、最初に添加する金属マグネシウム粉末の使用量と、分割添加9回の金属マグネシウムの使用量を変えたものである。成分(a2)の使用量の小計は成分(a1)と成分(a2)の合計に対するモル比で0.94であった。なお、得られたジエトキシマグネシウムの粒子形状は球形であった。結果を表1に示す。
【実施例10】
【0085】
成分(a2)の金属マグネシウム1.6g(65.8ミリモル)に代えて、金属マグネシウム3.2g(132ミリモル)とした以外は、実施例1と同様にして、アルコキシマグネシウムの調製および評価を行なった。すなわち、実施例1と異なる点は、分割添加9回の金属マグネシウムの使用量を変えたものである。成分(a2)の使用量の小計は、成分(a1)と成分(a2)の合計に対するモル比で0.95であった。なお、得られたジエトキシマグネシウムの粒子形状は、球形であった。結果を表1に示す。
【実施例11】
【0086】
窒素ガスで充分置換され、攪拌器および還流冷却器を具備した容量1リットルの円筒形フラスコに、成分(a1)として粒径50〜320μm、平均粒径140μmの金属マグネシウム粉末1.6g(65.8ミリモル)と、成分(b)として脱水した水分含有量60ppmのエタノール40mlを装入し懸濁液を形成した。次いで、成分(c1)として四塩化チタン0.23g(1.21ミリモル)とエタノール20mlの混合液を加え、懸濁液を攪拌しながら70℃まで昇温させた。水素発生が確認されなくなった後、成分(a2)としてエタノール20mlに懸濁させた金属マグネシウム1.6g(65.8ミリモル)を15分間隔で9回添加した。成分(c2)として、上記金属マグネシウムの分割添加3回目、5回目及び7回目の後、それぞれ、すぐにエタノール10mlに混合させた四塩化チタン0.075g(0.40ミリモル)を添加した。成分(c2)の合計量は、成分(c1)と成分(c2)の合計に対するモル比で0.50であった。全ての成分を添加後、攪拌しながら水素発生が停止するまで70℃の温度を維持しつつ2時間保持した。反応終了後、室温まで冷却した後、真空乾燥してジエトキシマグネシウムを得た。なお、得られたジエトキシマグネシウムの粒子形状を電子顕微鏡により観察したところ、形状は球形であった。その結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【実施例12】
【0088】
〔固体触媒成分(A)の調製〕
窒素ガスで充分に置換され、撹拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに、実施例1で作製したジエトキシマグネシウム10g、フタル酸ジ−n−ブチル3.2mlをおよびトルエン80mlを装入して懸濁状態とした。次いで該懸濁溶液に四塩化チタン20mlを加えて昇温し90℃とした。その後90℃の温度を保持した状態で、2時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、90℃のトルエン90mlで4回洗浄し、新たに四塩化チタン20mlおよびトルエン80mlを加え、110℃に昇温し、2時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、40℃のn−ヘプタン70mlで7回洗浄して、固体触媒成分を得た。なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有率を測定したところ、3.1重量%であった。
【0089】
〔重合触媒の形成および重合〕
窒素ガスで完全に置換された内容積2リットルの撹拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32ミリモル、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.13ミリモルおよび前記固体触媒成分をチタン原子として0.0026ミリモル装入し、重合用触媒を形成した。その後、水素ガス1.5リットル、液化プロピレン1.4リットルを装入し、20℃で5分間予備重合を行なった後に昇温し、70℃で1時間重合反応を行った。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中の沸騰n−ヘプタン不溶分の割合(HI)、生成重合体(A)のメルトインデックスの値(MI)、粒度分布指数(SPAN)、全粒子中における粒径が平均粒径の1/4以下の微粉の量およびかさ密度(BD)を測定した。結果を表2に示した。
【0090】
(重合活性)
なお、ここで使用した固体触媒成分当たりの重合活性は下式により算出した。
重合活性=生成重合体(g)/固体触媒成分(g)
生成したオレフィン重合体中の沸騰n−ヘプタン不溶分の割合(HI)は、この生成重合体を沸騰n−ヘプタンで6時間抽出したときのn−ヘプタンに不溶解の重合体の割合(重量%)とした。
【0091】
(MI)
生成重合体(A)のメルトインデックスの値(MI)は、ASTM D 1238、 JIS K 7210に準じて測定した。
【0092】
(オレフィン重合体の平均粒径、および粒度分布指数)
生成したオレフィン重合体の平均粒径は、JIS K0069に従い、積算重量10%、50%、90%に相当する粒子径を求める方法により求めた。また、粒度分布指数(SPAN)については、下記の式により算出した。
粒度分布指数(SPAN)=(D90−D10)/D50
90: 重量積算粒度分布における積算粒度で90%の粒子径(μm)
50: 重量積算粒度分布における積算粒度で50%の粒子径(μm)
10: 重量積算粒度分布における積算粒度で10%の粒子径(μm)
さらに、上記重量積算粒度10%、50%および90%に相当する粒子径より、粒径が積算粒度50%の粒子径D50の1/4以下となる粒子の、全粒子中における含有量を求めた。
【0093】
(かさ密度(BD))
生成したオレフィン重合体のかさ密度(BD)は、JIS K6721に従って測定した。
【0094】
(実施例12〜19、比較例5〜7)
〔固体触媒成分(A)の調製、重合触媒の形成および重合〕
実施例1〜8および比較例1〜3で生成したジエトキシマグネシウムを各々使用した以外は、実施例12と同一の条件にて、固体触媒成分の調製、重合触媒の形成およびオレフィン重合を行ない、得られた重合体の評価を行なった。結果を表2に示す。
【0095】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の製造方法により得られるアルコキシマグネシウムを担体として用いたオレフィン類重合用固体触媒成分およびレフィン重合触媒は、生成ポリマーの立体規則性や重合活性等の性能を低下させることなく、高かさ密度で、かつ低微粉量の重合体を得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム、アルコール及び反応促進剤を接触した混合物に、マグネシウムおよび反応促進剤を2回以上添加、接触することを特徴とするアルコキシマグネシウムの製造方法。
【請求項2】
該混合物に添加する反応促進剤量の小計が、反応促進剤量の合計に対し、モル比で0.1〜0.9の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のアルコキシマグネシウムの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法により得られるアルコキシマグネシウム、4価のチタンハロゲン化合物および電子供与性化合物を接触して得られることを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分。
【請求項4】
前記電子供与性化合物が、脂肪族カルボン酸ジエステルまたは芳香族カルボン酸ジエステルである請求項3に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
【請求項5】
請求項3または4に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分および下記一般式(1);
AlQ3−p (1)
(Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数で、Rが複数存在する場合、各Rは同一であっても異なっていてもよく、Qが複数存在する場合、各Qは同一であっても異なっていてもよい。)で表される有機アルミニウム化合物から形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒。
【請求項6】
さらに、外部電子供与性化合物から形成されることを特徴とする請求項5記載のオレフィン類重合用触媒。
【請求項7】
請求項5または6に記載のオレフィン類重合用触媒の存在下、炭素数2〜10のオレフィン類を重合させることを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法。

【公開番号】特開2013−95890(P2013−95890A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242029(P2011−242029)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(390007227)東邦チタニウム株式会社 (191)
【Fターム(参考)】