説明

アルコールの製造方法、及びアルコール製造装置

【課題】合成ガスを原料とする触媒反応によって、酸素化物を高い選択率で合成でき、生成される酸素化物に含まれるアルコールの比率が高い、アルコールの製造方法、及び該製造方法に使用しうるアルコール製造装置の提供。
【解決手段】水素および一酸化炭素を含む原料ガスを、触媒A、触媒B、及び触媒Cに接触させて、炭素数1〜4のアルコールを製造する方法であって、前記触媒Aは、前記原料ガスから炭素数1〜4のカルボン酸を主生成物として生成するものであり、前記触媒Bは、前記原料ガスから炭素数1〜4のアルデヒドを主生成物として生成するものであり、前記触媒Cは、前記原料ガス、前記カルボン酸、及び前記アルデヒドを炭素数1〜4のアルコールに変換するものであることを特徴とする、アルコールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコールの製造方法、及びアルコール製造装置に関する。より詳しくは、水素および一酸化炭素を含む混合ガスを原料とし、触媒反応によって、アルコールを製造する方法、及び該製造方法に用いうるアルコール製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一酸化炭素と水素の混合ガス(合成ガス)は、C1化学における重要な原料の一つである。合成ガスは天然ガス、石炭、バイオマス等の石油以外の資源から得られるため、石油依存を脱却する化学として従来から研究が盛んである。近年では、バイオマスを有効利用するC1化学は、COの排出を低減し、地球温暖化を改善するとともに、持続可能な工業文明の構築にも資するものとして期待されている。
【0003】
従来、ロジウムおよびアルカリ金属を含む触媒に、合成ガスを接触させることによって、酸素化物である、エタノール、酢酸、アセトアルデヒドを合成する方法が知られている(特許文献1〜2参照)。
しかし、開示された触媒による酸素化物の生成比率に着目すると、アセトアルデヒド、エタノール、酢酸のいずれもが、同程度の比率で含まれるため、エタノール成分を単離するための工程に、多くの時間やエネルギーが必要となる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭61−36730号公報
【特許文献2】特公昭61−36731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、合成ガスを原料とする触媒反応によって、酸素化物を高い選択率で合成でき、生成される酸素化物に含まれるアルコールの比率が高い、アルコールの製造方法、及び該製造方法に使用しうるアルコール製造装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載のアルコールの製造方法は、水素および一酸化炭素を含む原料ガスを、触媒A、触媒B、及び触媒Cに接触させて、炭素数1〜4のアルコールを製造する方法であって、前記触媒Aは、前記原料ガスから炭素数1〜4のカルボン酸を主生成物として生成するものであり、前記触媒Bは、前記原料ガスから炭素数1〜4のアルデヒドを主生成物として生成するものであり、前記触媒Cは、前記カルボン酸、及び前記アルデヒドを炭素数1〜4のアルコールに変換するものであることを特徴とする。
本発明の請求項2に記載のアルコールの製造方法は、請求項1において、前記触媒Aが、ロジウム、ホウ素、及びアルカリ金属を含み、前記触媒A中のロジウム:ホウ素のモル比が1:1〜1:5の範囲であり、前記触媒A中のロジウム:アルカリ金属のモル比が1:0.1〜1:1の範囲であり、前記触媒A中のホウ素:アルカリ金属のモル比が1:0.02〜1:1の範囲であることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載のアルコールの製造方法は、請求項1又は2において、前記触媒Bが、ロジウム、マンガン、及びアルカリ金属を含み、前記触媒B中のロジウム:マンガンのモル比が1:0.01〜1:1の範囲であり、前記触媒B中のロジウム:アルカリ金属のモル比が1:0.1〜1:1の範囲であり、前記触媒B中のマンガン:アルカリ金属のモル比が1:0.1〜1:100の範囲であることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載のアルコールの製造方法は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記原料ガスを触媒Aに接触させ、得られた前記カルボン酸を含む第一の生成物および未反応の前記原料ガスを触媒Bに接触させ、得られた前記アルデヒドを含む第二の生成物、前記第一の生成物および未反応の前記原料ガスを触媒Cに接触させ、前記アルコールを生成することを特徴とする。
本発明の請求項5に記載のアルコールの製造方法は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記原料ガスを触媒Bに接触させ、得られた前記アルデヒドを含む第二の生成物および未反応の前記原料ガスを触媒Aに接触させ、得られた前記カルボン酸を含む第一の生成物、前記第二の生成物および未反応の前記原料ガスを触媒Cに接触させ、前記アルコールを生成することを特徴とする。
本発明の請求項6に記載のアルコールの製造方法は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記触媒Aと前記触媒Bとを混合した触媒Dに、前記原料ガスを接触させ、得られた前記カルボン酸及び前記アルデヒドを含む第三の生成物および未反応の前記原料ガスを触媒Cに接触させ、前記アルコールを生成することを特徴とする。
本発明の請求項7に記載のアルコールの製造方法は、請求項1〜6のいずれか一項において、前記原料ガスを前記触媒A、前記触媒B、前記触媒C、又は前記触媒Dに接触させる際の温度が、150〜450℃の範囲であることを特徴とする。
本発明の請求項8に記載のアルコールの製造方法は、請求項1〜7のいずれか一項において、前記原料ガスを前記触媒A、前記触媒B、前記触媒C、又は前記触媒Dに接触させる際の圧力が、0.5MPa〜10MPaの範囲であることを特徴とする。
本発明の請求項9に記載のアルコールの製造方法は、請求項1〜8のいずれか一項において、前記触媒A、前記触媒B、前記触媒C、又は前記触媒Dが担持触媒であることを特徴とする。
本発明の請求項10に記載のアルコールの製造方法は、請求項9において、前記担持触媒の担体が、シリカであることを特徴とする。
本発明の請求項11に記載のアルコール製造装置は、水素および一酸化炭素を含む原料ガスから炭素数1〜4のカルボン酸を主生成物として生成する触媒Aが内部に配された第一反応管、前記原料ガスから炭素数1〜4のアルデヒドを主生成物として生成する触媒Bが内部に配された第二反応管、前記カルボン酸、及び前記アルデヒドを炭素数1〜4のアルコールに変換する触媒Cが内部に配された第三反応管を少なくとも備え、各反応管には、ガス導入口およびガス排出口が設けられており、前記第一反応管のガス排出口が、前記第二反応管のガス導入口に接続され、前記第二反応管のガス排出口が、前記第三反応管のガス導入口に接続されていることを特徴とする。
本発明の請求項12に記載のアルコール製造装置は、水素および一酸化炭素を含む原料ガスから炭素数1〜4のカルボン酸を主生成物として生成する触媒Aが内部に配された第一反応管、前記原料ガスから炭素数1〜4のアルデヒドを主生成物として生成する触媒Bが内部に配された第二反応管、前記カルボン酸、及び前記アルデヒドを炭素数1〜4のアルコールに変換する触媒Cが内部に配された第三反応管を少なくとも備え、各反応管には、ガス導入口およびガス排出口が設けられており、前記第二反応管のガス排出口が、前記第一反応管のガス導入口に接続され、前記第一反応管のガス排出口が、前記第三反応管のガス導入口に接続されていることを特徴とする。
本発明の請求項13に記載のアルコール製造装置は、水素および一酸化炭素を含む原料ガスから炭素数1〜4のカルボン酸を主生成物として生成する触媒Aと、前記原料ガスから炭素数1〜4のアルデヒドを主生成物として生成する触媒Bとを混合した触媒Dが内部に配された第四反応管、前記カルボン酸、及び前記アルデヒドを炭素数1〜4のアルコールに変換する触媒Cが内部に配された第三反応管を少なくとも備え、各反応管には、ガス導入口およびガス排出口が設けられており、前記第四反応管のガス排出口が、前記第三反応管のガス導入口に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアルコールの製造方法によれば、酸素化物を高い選択率で合成でき、生成される酸素化物に含まれるアルコールの比率を高められるため、生成物からアルコール成分を精製して得ることが容易である。
本発明のアルコール製造装置によれば、酸素化物を高い選択率で合成でき、生成される酸素化物に含まれるアルコールの比率を高められるため、生成物からアルコール成分を精製して得ることが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明にかかるアルコール製造装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明にかかるアルコール製造装置の一例を示す模式図である。
【図3】本発明にかかるアルコール製造装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳しく説明する。
<アルコールの製造方法>
本発明のアルコールの製造方法は、水素および一酸化炭素を含む原料ガスを、触媒A、触媒B、及び触媒Cに接触させて、炭素数1〜4のアルコールを製造する方法であって、前記触媒Aは、前記原料ガスから炭素数1〜4のカルボン酸を主生成物として生成するものであり、前記触媒Bは、前記原料ガスから炭素数1〜4のアルデヒドを主生成物として生成するものであり、前記触媒Cは、前記カルボン酸、及び前記アルデヒドを炭素数1〜4のアルコールに変換するものである。
前記触媒A〜Cを併用することによって、酸素化物を高い選択率で合成できる。つまり、酸素化物を主生成物(選択率50モル%以上)として合成できる(ただし、水は生成物とみなさない。)また、前記触媒A〜Cを併用することによって、生成される酸素化物に含まれるアルコールの比率(モル%)を高められる。
【0010】
前記混合ガスにおける水素ガスと一酸化炭素との混合比(体積比)は、水素ガス:一酸化炭素ガス=5:1〜1:5の範囲が好ましく、3:1〜1:2の範囲がより好ましく、2.5:1〜1:1の範囲がさらに好ましい。
上記範囲であると、酸素化物を高い選択率で合成でき、生成される酸素化物に含まれるアルコールの比率を高められる。
【0011】
本発明において、「選択率」とは、「合成ガス中の消費されたCOのモル数のうち、特定の酸素化物へ変換されたCのモル数が占める百分率」を意味する。例えば、以下の反応式(A)によれば、酸素化物である酢酸の選択率は100モル%である。一方、以下の反応式(B)によれば、酸素化物である酢酸の選択率は50モル%であり、酸素化物であるアセトアルデヒドの選択率も50モル%である。
(A)2H+2CO → CHCOOH
(B)5H+4CO → CHCOOH+CHCHO+H
【0012】
前記触媒Aとしては、ロジウム、ホウ素、又はアルカリ金属のうち、いずれか一種以上の金属を含むものが好ましく、ロジウム、ホウ素、及びアルカリ金属を含むものがより好ましい。
前記金属を含む触媒Aを用いることにより、前記原料ガスから合成される酸素化物の選択率を高めて、該酸素化物に含まれる炭素数1〜4のカルボン酸の比率(モル%)を高められる。
【0013】
前記触媒Bとしては、ロジウム、マンガン、又はアルカリ金属のうち、いずれか一種以上の金属を含むものが好ましく、ロジウム、マンガン、及びアルカリ金属を含むものがより好ましい。
前記金属を含む触媒Bを用いることにより、前記原料ガスから合成される酸素化物の選択率を高めて、該酸素化物に含まれる炭素数1〜4のアルデヒドの比率(モル%)を高められる。
【0014】
前記触媒Cとしては、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)のうち、いずれか一種以上の金属を含むものが好ましい。
前記触媒Cの好適なものとしては、銅を含むもの、銅および亜鉛を含むもの、パラジウムを含むもの、モリブデンを含むもの、ニッケルを含むもの、パラジウム、銅、および亜鉛を含むもの、並びに、パラジウムおよびニッケルを含むものが例示できる。
前記金属を含む触媒Cを用いることにより、前記炭素数1〜4のカルボン酸および前記炭素数1〜4のアルデヒドから合成される炭素数1〜4のアルコールの選択率を高めて、前記触媒A〜Cによって最終的に生成される酸素化物に含まれる炭素数1〜4のアルコールの比率(モル%)を高められる。
【0015】
前記触媒Aが、ロジウム、ホウ素、及びアルカリ金属を含むものである場合、
前記触媒A中のロジウム:ホウ素のモル比が1:1〜1:5の範囲であり、且つ
前記触媒A中のロジウム:アルカリ金属のモル比が1:0.1〜1:1の範囲であり、且つ前記触媒A中のホウ素:アルカリ金属のモル比が1:0.02〜1:1の範囲であることが好ましい。
上記範囲とすることによって、前記原料ガスから前記触媒Aにおいて合成される、酸素化物の選択率を高めて、該酸素化物に含まれる炭素数1〜4のカルボン酸の比率(モル%)を高められる。また、前記触媒A〜Cによって最終的に生成される酸素化物のうち、アルコールの比率(モル%)を高められる。さらに、生成されるアルコールのうち、エタノールの比率(モル%)を高められる。具体的には、生成される前記アルコールに含まれるエタノールの比率を90モル%以上とすることができる。
【0016】
前記触媒Bが、ロジウム、マンガン、及びアルカリ金属を含むものである場合、
前記触媒B中のロジウム:マンガンのモル比が1:0.01〜1:1の範囲であり、且つ
前記触媒B中のロジウム:アルカリ金属のモル比が1:0.1〜1:1の範囲であり、且つ前記触媒B中のマンガン:アルカリ金属のモル比が1:0.1〜1:100の範囲であることが好ましい。
上記範囲とすることによって、前記原料ガスから前記触媒Bにおいて合成される、酸素化物の選択率を高めて、該酸素化物に含まれる炭素数1〜4のアルデヒドの比率(モル%)を高められる。また、前記触媒A〜Cによって最終的に生成される酸素化物のうち、アルコールの比率(モル%)を高められる。さらに、生成されるアルコールのうち、エタノールの比率(モル%)を高められる。具体的には、生成される前記アルコールに含まれるエタノールの比率を90モル%以上とすることができる。
【0017】
本発明において、「酸素化物」は、酢酸、エタノール、アセトアルデヒド、メタノール、プロパノール、ブタノール、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチルなどの炭素原子と水素原子と酸素原子からなる分子を意味する。
本発明において、最終的に生成される酸素化物は、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノールの炭素数1〜4のアルコールのうち、何れか一つ以上を含むことが好ましい。
【0018】
前記触媒Aにおいて生成される炭素数1〜4のカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられる。
前記触媒Aにおいて、前記混合ガスから前記カルボン酸が生成する触媒反応として、例えば以下の反応式が考えられる。
(1)H+CO → HCOOH
(2)2H+2CO → CHCOOH
【0019】
前記触媒Aにおける触媒反応の温度としては、150〜450℃の範囲が好ましく、200〜400℃の範囲がより好ましく、250〜350℃の範囲がさらに好ましい。
上記範囲とすることにより、前記原料ガスから酸素化物を高い選択率で得ることができ、生成される酸素化物に含まれる前記カルボン酸の比率(モル%)を高められる。また、生成されるカルボン酸のうち、酢酸の比率(モル%)を高められる。
上記範囲の下限値以上とすることにより、触媒反応の速度を充分に高められる。上記範囲の上限値以下とすることにより、酸素化物の生成反応を主反応とすることができる。
【0020】
前記触媒Aにおける触媒反応の圧力としては、0.5MPa〜10MPaの範囲が好ましく、1MPa〜7.5MPaの範囲がより好ましく、2MPa〜5MPaの範囲がさらに好ましい。
上記範囲とすることにより、前記原料ガスから酸素化物を高い選択率で得ることができ、生成される酸素化物に含まれる前記カルボン酸の比率(モル%)を高められる。また、生成されるカルボン酸のうち、酢酸の比率(モル%)を高められる。
上記範囲の下限値以上とすることにより、触媒反応の速度を充分に高められる。上記範囲の上限値以下とすることにより、酸素化物の生成反応を主反応とすることができる。
【0021】
前記触媒Bにおいて生成される炭素数1〜4のアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等が挙げられる。
前記触媒Bにおいて、前記混合ガスから前記アルデヒドが生成する主な触媒反応としては、以下の反応式が考えられる。
(1)H+CO → HCHO
(2)3H+2CO → CHCHO+H
(3)5H+3CO → CHCHCHO+2H
(4)7H+4CO → CHCHCHCHO+3H
【0022】
前記触媒Bにおける触媒反応の温度としては、150〜450℃の範囲が好ましく、200〜400℃の範囲がより好ましく、250〜350℃の範囲がさらに好ましい。
上記範囲とすることにより、前記原料ガスから酸素化物を高い選択率で得ることができ、生成される酸素化物に含まれる前記アルデヒドの比率(モル%)を高められる。また、生成されるアルデヒドのうち、アセトアルデヒドの比率(モル%)を高められる。
上記範囲の下限値以上とすることにより、触媒反応の速度を充分に高められる。上記範囲の上限値以下とすることにより、酸素化物の生成反応を主反応とすることができる。
【0023】
前記触媒Bにおける触媒反応の圧力としては、0.5MPa〜10MPaの範囲が好ましく、1MPa〜7.5MPaの範囲がより好ましく、2MPa〜5MPaの範囲がさらに好ましい。
上記範囲とすることにより、前記原料ガスから酸素化物を高い選択率で得ることができ、生成される酸素化物に含まれる前記アルデヒドの比率(モル%)を高められる。また、生成されるアルデヒドのうち、アセトアルデヒドの比率(モル%)を高められる。
上記範囲の下限値以上とすることにより、触媒反応の速度を充分に高められる。上記範囲の上限値以下とすることにより、酸素化物の生成反応を主反応とすることができる。
【0024】
前記触媒Cにおいて生成される炭素数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。
前記触媒Cにおいて、前記混合ガス、前記アルデヒド、及び/又は前記カルボン酸から、前記アルコールが生成する触媒反応としては、以下の反応式が考えられる。
(1)H+HCHO → CHOH
(2)2H+HCOOH → CHOH+H
(3)H+CHCHO → CHCHOH
(4)2H+CHCOOH → CHCHOH+H
(5)H+CHCHCHO → CHCHCHOH
(6)2H+CHCHCOOH → CHCHCHOH+H
(7)H+CHCHCHCHO → CHCHCHCHOH
(8)2H+CHCHCHCOOH → CHCHCHCHOH+H
【0025】
前記触媒Cにおける触媒反応の温度としては、150〜450℃の範囲が好ましく、200〜400℃の範囲がより好ましく、250〜350℃の範囲がさらに好ましい。
上記範囲とすることにより、前記アルデヒド及び前記カルボン酸を含む前記原料ガスから、アルコールを高い選択率(モル%)で得ることができる。
上記範囲の下限値以上とすることにより、触媒反応の速度を充分に高められる。上記範囲の上限値以下とすることにより、アルコールの生成反応を主反応とすることができる。
【0026】
前記触媒Cにおける触媒反応の圧力としては、0.5MPa〜10MPaの範囲が好ましく、1MPa〜7.5MPaの範囲がより好ましく、2MPa〜5MPaの範囲がさらに好ましい。
上記範囲とすることにより、前記アルデヒド及び前記カルボン酸を含む前記原料ガスから、アルコールを高い選択率(モル%)で得ることができる。上記範囲の下限値以上とすることにより、触媒反応の速度を充分に高められる。上記範囲の上限値以下とすることにより、アルコールの生成反応を主反応とすることができる。
【0027】
本発明の好適な方法としては、まず、前記原料ガスを前記触媒Aに接触させ、得られた前記カルボン酸を含む第一の生成物および未反応の前記原料ガスを触媒Bに接触させ、得られた前記アルデヒドを含む第二の生成物、前記第一の生成物、および未反応の前記原料ガスを触媒Cに接触させ、前記アルコールを生成する方法が挙げられる。
このように、触媒A→触媒B→触媒Cを直列に繋いで、前記原料ガスを含むガスを触媒A〜Cに接触させることによって、最終的に生成される酸素化物のうち、アルコールの比率(モル%)を高められる。また、生成されるアルコールのうち、エタノールの比率(モル%)を高められる。
【0028】
また、本発明の好適な方法としては、まず、前記原料ガスを触媒Bに接触させ、得られた前記アルデヒドを含む第二の生成物および未反応の前記原料ガスを触媒Aに接触させ、得られた前記カルボン酸を含む第一の生成物、前記第二の生成物、および未反応の前記原料ガスを触媒Cに接触させ、前記アルコールを生成する方法が挙げられる。
このように、触媒B→触媒A→触媒Cを直列に繋いで、前記原料ガスを含むガスを触媒A〜Cに接触させることによって、最終的に生成される酸素化物のうち、アルコールの比率(モル%)を高められる。また、生成されるアルコールのうち、エタノールの比率(モル%)を高められる。
【0029】
また、本発明の好適な方法としては、まず、予め前記触媒Aと前記触媒Bとを混合した触媒Dを準備して、該触媒Dに、前記原料ガスを接触させ、得られた前記カルボン酸及び前記アルデヒドを含む第三の生成物および未反応の前記原料ガスを触媒Cに接触させ、前記アルコールを生成する方法が挙げられる。
このように、触媒D(触媒A+触媒B)→触媒Cを直列に繋いで、前記原料ガスを含むガスを触媒A〜Cに接触させることによって、最終的に生成される酸素化物のうち、アルコールの比率(モル%)を高められる。また、生成されるアルコールのうち、エタノールの比率(モル%)を高められる。
【0030】
前記好適な方法において、触媒A、触媒B、及び触媒Cを併用して用いることにより、エタノール等のアルコールの生成比率が高められるメカニズムとしては、触媒Aで主として生成されるカルボン酸と、触媒Bで主として生成されるアルデヒドが、異なる物質であるため、流通させるガス内の生成物濃度が増加して反応平衡論的に反応速度が低下することを抑えられることが一因として考えられる。つまり、触媒Aだけを用いて、触媒Cへ供給するガス内のカルボン酸濃度を高める方法、又は触媒Bだけを用いて、触媒Cへ供給するガス内のアルデヒド濃度を高める方法よりも、触媒A及び触媒Bを併用して、触媒Cへ供給するガス内のカルボン酸濃度及びアルデヒド濃度の和を高める方法の方が反応速度論的に優れていることが一因として考えられる。さらに、触媒Cにおけるアルコールの生成反応において、前段で合成されたアルデヒドおよびカルボン酸を効率的に水素化することによりアルコールに変換できることも一因と考えられる。つまり、水素と一酸化炭素から直接エタノールを生成するよりも、アセトアルデヒド及び/又は酢酸を生成した後、これらを水素化してエタノールを生成する方が容易であることも一因として考えられる。
【0031】
また、同一の触媒量を用いた場合、触媒A又は触媒Bを個々に用いてカルボン酸又はアルデヒドを別々に生成する場合に比べ、触媒Aと触媒Bを1:1にて混合した触媒Dを用いた場合の方が、触媒Cを併用して最終的に生成される酸素化物の合計の生成量を増加させられる場合があるので好ましい。
【0032】
ここで、前記触媒Aにおいて、単位時間あたりに、前記原料ガスから前記カルボン酸が1モル生成されるのに必要な触媒量を触媒Aの1単位量と定義する。また、前記触媒Bにおいて、単位時間あたりに、前記原料ガスから前記アルデヒドが1モル生成されるのに必要な触媒量を触媒Bの1単位量と定義する。また、前記触媒Cにおいて、単位時間あたりに、前記触媒A及び触媒Bに接触させて得られた生成物、並びに未反応の前記原料ガスから、前記アルコールが1モル生成されるのに必要な触媒量を、触媒Cの1単位量と定義する。
【0033】
このとき、本発明において、触媒A〜Cの触媒量の比は、触媒A:触媒B:触媒C=1:1:2(単位量)であることが好ましい。また、触媒Dにおける触媒Aと触媒Bとの触媒量の比は1:1(単位量)であることが好ましい。
触媒量が上記の比であることによって、本発明のアルコールの製造方法における触媒の使用効率をより高めることができる。また、前記原料ガスから最終的に合成される酸素化物の選択率を高めて、該酸素化物のうち、前記アルコールの比率(モル%)を高められる。
【0034】
触媒A〜Cの触媒量の比を触媒A:触媒B:触媒C=1:1:2(単位量)とする場合、下記の触媒A〜Cの組み合わせが好適なものとして挙げられる。
【0035】
前記触媒Aとしては、ロジウム、ホウ素、及びアルカリ金属を含むものが好ましい。
より好ましくは、前記触媒Aがロジウム、ホウ素、及びアルカリ金属を含み、且つ前記触媒A中のロジウム:ホウ素のモル比が1:1〜1:5の範囲であり、且つ前記触媒A中のロジウム:アルカリ金属のモル比が1:0.1〜1:1の範囲であり、且つ前記触媒A中のホウ素:アルカリ金属のモル比が1:0.02〜1:1の範囲であることがより好ましい。
【0036】
前記触媒Bとしては、ロジウム、マンガン、及びアルカリ金属を含むものが好ましい。より好ましくは、前記触媒Bがロジウム、マンガン、及びアルカリ金属を含み、且つ前記触媒B中のロジウム:マンガンのモル比が1:0.01〜1:1の範囲であり、且つ前記触媒B中のロジウム:アルカリ金属のモル比が1:0.1〜1:1の範囲であり、且つ前記触媒B中のマンガン:アルカリ金属のモル比が1:0.1〜1:100の範囲であることがより好ましい。
【0037】
前記触媒Cとしては、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)のうち、いずれか一種以上の金属を含むものが好ましい。
前記触媒Cの好適なものとしては、銅を含むもの、パラジウムを含むもの、モリブデンを含むもの、ニッケルを含むもの、銅および亜鉛を含むもの、パラジウム、銅、および亜鉛を含むもの、並びに、パラジウムおよびニッケルを含むものが例示できる。
【0038】
本発明において、前記アルカリ金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)等が挙げられる。これらのなかでも、触媒反応によって生成する酸素化物の選択率を高める観点から、リチウムが好ましい。
【0039】
前記触媒A〜Cに使用しうる前記金属(元素)は、合金を形成していてもよく、形成していなくてもよい。これら金属は、前記混合ガスとの接触面積が大きくなる状態であることが好ましい。例えば、金属を粉体にしたもの、金属を多孔性の担体の表面および細孔内に担持させて担持触媒にしたもの等が挙げられる。
【0040】
前記担持触媒の担体としては、金属触媒の担体として周知のものが使用できるが、比表面積が10〜1000m/gで、多孔質性のものが好ましい。具体的には、シリカ、チタニア、アルミナ、セリア等が挙げられるが、シリカが好ましい。
前記シリカは粒子径(大きさ)の分布が狭いものが好ましい。その平均粒子径は特に制限されないが、例えば、0.5μm〜5000μmのものが適用可能である。
各金属(元素)の合計の質量と、担体であるシリカとのモル比は、0.0005:1〜0.1:1の範囲が好ましい。
シリカは比表面積が大きく、種々の比表面積、細孔容積を有する工業品が容易に入手できるので好ましい。
【0041】
前記触媒A〜Cに使用しうる前記金属(元素)をシリカ等の担体の表面及び細孔内に担持(付着)させる方法としては、いわゆる含浸法が適用できる。より具体的には、前記金属の水溶液を調製し、これにシリカを浸漬して、該水溶液をシリカの細孔中に含浸させた後、該シリカを110℃で3時間加熱し、さらに450℃で3時間加熱することによって、行う方法が例示できる。前記水溶液中の各金属の濃度比(モル比)が、前記触媒中の各金属の存在比(モル比)とほぼ同じになる。
前記水溶液を調製する方法としては、例えば、各金属の塩化物やオキソ酸をそれぞれ水に溶解して調製することができる。
含浸は、各金属を同時に含浸させてもよいし、別々に水溶液を作製し、逐次含浸させてもよい。また、アルカリ金属は2種類以上を使用してもよい。
また、触媒活性、選択率を向上させるためにその他の元素を助触媒として添加しても良い。
【0042】
前記触媒A〜Cに使用しうる前記金属(元素)が各々シリカに担持された担持触媒を、例えばステンレス製の反応管の内部に配することによって、本発明の製造装置とすることができる。製造装置については後述するが、例えば、前記反応管のガス導入口から前記混合ガスを流入することによって、該反応管のガス排出口から酸素化物を含有するガスを得ることができる。
【0043】
前記触媒を内部に配した前記反応管内に、前記合成ガスを流通させる空間速度(単位時間あたり合成ガス流通量÷触媒容量)は、標準状態換算で10h−1〜100000h−1が好ましく、1000〜50000h−1がより好ましく、3000〜20000h−1がさらに好ましい。上記範囲から、目的とする酸素化物に適した反応圧力、反応温度、及び合成ガスの組成に応じて適宜調整すればよい。
【0044】
<製造装置の第一態様>
本発明のアルコール製造装置の第一態様は、前記触媒Aが内部に配された第一反応管1、前記触媒Bが内部に配された第二反応管2、および前記触媒Cが内部に配された第三反応管3を少なくとも備え、各反応管には、ガス導入口およびガス排出口が設けられており、第一反応管1のガス排出口5が、第二反応管2のガス導入口6に接続され、第二反応管2のガス排出口7が、第三反応管3のガス導入口8に接続されている製造装置10である(図1参照)。
【0045】
第一反応管1のガス導入口4から前記原料ガスを導入し、前記触媒Aにおける触媒反応によって前記カルボン酸を含む第一の生成物が合成される。第一の生成物および未反応の原料ガスが、第一反応管1のガス排出口5から排出され、第二反応管2のガス導入口6へ導入され、前記触媒Bにおける触媒反応によって前記アルデヒドを含む第二の生成物が合成される。第二の生成物、第一の生成物、および未反応の原料ガスが、第二反応管2のガス排出口7から排出され、第三反応管3のガス導入口8へ導入され、前記触媒Cにおける触媒反応によって前記アルコールを含む酸素化物が合成される。最終的に生成された酸素化物は、第三反応管3のガス排出口9から回収される。
【0046】
第一態様のアルコール製造装置10は、触媒A〜Cを各々異なる反応管1〜3に配して、第一反応管1、第二反応管2、第三反応管3の順に直列に繋いでいる。この構成によれば、各反応管における触媒反応の反応温度及び反応圧力を個別に制御できるので、各反応管の触媒反応を最適化することができる。この結果、酸素化物を高い選択率で合成でき、該酸素化物に含まれる前記アルコールの比率(モル%)を高められる。また、生成されるアルコールのうち、エタノールの比率(モル%)を高められる。
【0047】
なお、触媒A〜Cを、3部屋に仕切られた単一の反応管の各々部屋に配して、ガス導入口から導入された原料ガスが、触媒A、触媒B、触媒Cの順に接触するように配した製造装置(不図示)を用いた場合にも、前述のアルコール製造装置10と同様にアルコールを製造することができる。ただし、この場合は、触媒A〜Cの反応条件を個別に制御することが比較的難しい。
【0048】
<製造装置の第二態様>
本発明のアルコール製造装置の第二態様は、前記触媒Aが内部に配された第一反応管1、前記触媒Bが内部に配された第二反応管2、および前記触媒Cが内部に配された第三反応管3を少なくとも備え、各反応管には、ガス導入口およびガス排出口が設けられており、第二反応管2のガス排出口7が、第一反応管1のガス導入口4に接続され、第一反応管1のガス排出口5が、第三反応管3のガス導入口8に接続されている製造装置20である(図2参照)。
【0049】
第二反応管2のガス導入口6から前記原料ガスを導入し、前記触媒Bにおける触媒反応によって前記アルデヒドを含む第二の生成物が合成される。第二の生成物および未反応の原料ガスが、第二反応管2のガス排出口7から排出され、第一反応管1のガス導入口4へ導入され、前記触媒Aにおける触媒反応によって前記カルボン酸を含む第一の生成物が合成される。第二の生成物、第一の生成物、および未反応の原料ガスが、第一反応管1のガス排出口5から排出され、第三反応管3のガス導入口8へ導入され、前記触媒Cにおける触媒反応によって前記アルコールを含む酸素化物が合成される。最終的に生成された酸素化物は、第三反応管3のガス排出口9から回収される。
【0050】
第二態様のアルコール製造装置20は、触媒A〜Cを各々異なる反応管1〜3に配して、第二反応管2、第一反応管1、第三反応管3の順に直列に繋いでいる。この構成によれば、各反応管における触媒反応の反応温度及び反応圧力を個別に制御できるので、各反応管の触媒反応を最適化することができる。この結果、酸素化物を高い選択率で合成でき、該酸素化物に含まれる前記アルコールの比率(モル%)を高められる。また、生成されるアルコールのうち、エタノールの比率(モル%)を高められる。
【0051】
なお、触媒A〜Cを、3部屋に仕切られた単一の反応管の各々部屋に配して、ガス導入口から導入された原料ガスが、触媒B、触媒A、触媒Cの順に接触するように配した製造装置(不図示)を用いた場合にも、前述のアルコール製造装置20と同様にアルコールを製造することができる。ただし、この場合は、触媒A〜Cの反応条件を個別に制御することが比較的難しい。
【0052】
<製造装置の第三態様>
本発明のアルコール製造装置の第三態様は、前記触媒Dが内部に配された第四反応管11、および前記触媒Cが内部に配された第三反応管3を少なくとも備え、各反応管には、ガス導入口およびガス排出口が設けられており、第四反応管11のガス排出口13が、前記第三反応管3のガス導入口8に接続されている製造装置30である(図3参照)。
【0053】
第三反応管11のガス導入口12から前記原料ガスを導入し、前記触媒D(触媒A+触媒B)における触媒反応によって前記カルボン酸及び前記アルデヒドを含む第三の生成物が合成される。第三の生成物および未反応の原料ガスが、第三反応管11のガス排出口13から排出され、第三反応管3のガス導入口8へ導入され、前記触媒Cにおける触媒反応によって前記アルコールを含む酸素化物が合成される。最終的に生成された酸素化物は、第三反応管3のガス排出口9から回収される。
【0054】
第三態様のアルコール製造装置30は、触媒Dと触媒Cを異なる反応管11,3に配して、第四反応管11、第三反応管3の順に直列に繋いでいる。この構成によれば、各反応管における触媒反応の反応温度及び反応圧力を個別に制御できるので、各反応管の触媒反応を最適化することができる。この結果、酸素化物を高い選択率で合成でき、該酸素化物に含まれる前記アルコールの比率(モル%)を高められる。また、生成されるアルコールのうち、エタノールの比率(モル%)を高められる。
【0055】
なお、触媒D及び触媒Cを、2部屋に仕切られた単一の反応管の各々部屋に配して、ガス導入口から導入された原料ガスが、触媒D、触媒Cの順に接触するように配した製造装置(不図示)を用いた場合にも、前述のアルコール製造装置30と同様にアルコールを製造することができる。ただし、この場合は、触媒C、Dの反応条件を個別に制御することが比較的難しい。
【0056】
前記第一〜第四反応管内に配された各触媒中の各金属(元素)の分布は、これらの金属が反応管内になるべく均一に配されることが好ましい。すなわち、原料ガスおよび中間生成物を含むガスが、触媒である各金属に充分接触するように配することが好ましい。
【0057】
前記反応管としては、原料ガス及び生成物に対して不活性な材料からなるものが好ましく、100〜500℃程度の加熱、又は10Mpa程度の加圧に耐えうる形状のものが好ましい。例えば、ステンレス製の円筒型(直径1インチ、長さ15インチ)で、その両端にガス導入バルブ及びガス排出バルブが各々備えられたものが挙げられる。
前記反応管を加熱又は加圧する方法は、周知の方法が適用できる。つまり、本発明の製造装置には、電気炉等の温度制御部、マスフロー等のガスの流量を調整するガス流量制御部、圧力弁等の圧力を調整する圧力制御部、などの周知の装置構成が備えられていてもよい。
【0058】
前記反応管の内部に触媒を配する際には、前記原料ガスを流通させる空間速度(単位時間あたり原料ガス流通量×触媒容量)が、標準状態換算で10h−1〜100000h−1の範囲となるようにすることが好ましい。目的とする酸素化物に適した反応圧力、反応温度、及び原料ガスの組成に応じて、より適した空間速度となるように、上記範囲内で適宜調整すればよい。
【実施例】
【0059】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0060】
[実施例1]
塩化ロジウム(RhCl・3HO)0.31g、ホウ酸(HBO)0.079g、塩化リチウム(LiCl・HO)0.021gを精製水4.3mlに溶解させて、水溶液Aを得た。この水溶液において、各モル比は、ロジウム:ホウ酸=1:1.1、ロジウム:リチウム=1:0.3、ホウ酸:リチウム=1:0.27である。
次に、比表面積270m/gのシリカ2.0gに上記水溶液A2.2gを少しずつ滴下し、含浸させた。水溶液Aを含浸させたシリカを110℃で3時間加熱し、さらに450℃で3時間加熱した。
得られたシリカ担持触媒前駆体2gを直径1インチ、長さ10インチのステンレス製反応管に充填し、常圧で水素−窒素混合ガス(体積比で、H:N=1:2)を60ml/分で流通させながら、350℃で3時間加熱し、水素還元を行った。このようにして触媒Aを得た。
【0061】
塩化ロジウム(RhCl・3HO)0.31g、塩化マンガン(MnCl・4HO)0.023g、塩化リチウム(LiCl・HO)0.021gを精製水4.3mlに溶解させて、水溶液Bを得た。この水溶液において、各モル比は、ロジウム:マンガン=1:0.1、ロジウム:リチウム=1:0.3、マンガン:リチウム=1:3である。
つぎに、比表面積270m/gのシリカ2.0gに上記水溶液B2.2gを少しずつ滴下し、含浸させた。水溶液Bを含浸させたシリカを110℃で3時間加熱し、さらに450℃で3時間加熱した。
得られたシリカ担持触媒前駆体2gを直径1インチ、長さ10インチのステンレス製反応管に充填し、常圧で水素−窒素混合ガス(体積比で、H:N=1:2)を60ml/分で流通させながら、350℃で3時間加熱し、水素還元を行った。このようにして触媒Bを得た。
【0062】
硝酸銅(Cu(NO)・3HO)0.44g、硝酸亜鉛(Zn(NO)・6HO)0.54gを精製水4.3mlに溶解させて、水溶液Cを得た。この水溶液において、銅:亜鉛=1:1(モル比)である。
次に、比表面積270m/gのシリカ2.0gに上記水溶液C2.2gを少しずつ滴下し、含浸させた。水溶液Cを含浸させたシリカを110℃で3時間加熱し、さらに450℃で3時間加熱した。
得られたシリカ担持触媒前駆体2gを直径1インチ、長さ10インチのステンレス製反応管に充填し、常圧で水素−窒素混合ガス(体積比で、H:N=1:2)を60ml/分で流通させながら、350℃で3時間加熱し、水素還元を行った。このようにして触媒Cを得た。
【0063】
触媒A、Bを各1g、触媒Cを2g、それぞれ異なるステンレス製反応管に充填し、第一反応管(触媒Aを充填)、第二反応管(触媒Bを充填)、及び第三反応管(触媒Cを充填)として準備した。各反応管にはガス導入口およびガス排出口が設けられている。第一反応管のガス排出口を第二反応管のガス導入口に接続し、第二反応管のガス排出口を第三反応管のガス導入口に接続して、触媒A、B、Cの順に直列に接続した(図1参照)。
【0064】
水素と一酸化炭素の原料ガス(体積比で、H:CO=2:1)を空間速度8000〜15000h−1で流通させながら反応管の温度を室温から徐々に昇温し、第一反応管を295℃、第二反応管を285℃、第三反応管を300℃に昇温した。また、各反応管の圧力を2MPaに昇圧した。
約3時間反応を継続させた時点で、第三反応管のガス排出口から、生成物を含むガスをサンプリングして、それをガスクロマトグラフィーにより分析した。
得られたデータからCO転化率(モル%)、各成分の選択率(モル%)を計算した。この結果を表1に示す。
【0065】
ここで、「選択率」の定義は、前述のとおり、「合成ガス中の消費されたCOのモル数のうち、特定の酸素化物へ変換されたCのモル数が占める百分率」である。
「CO転化率」とは、「合成ガス(原料ガス)中のCOのモル数のうち、消費されたCOのモル数が占める百分率」である。
【0066】
[実施例2]
実施例1と同様に、触媒A、B、Cを得て、第一〜第三反応管を作製して用いた。第二反応管のガス排出口を第一反応管のガス導入口に接続し、第一反応管のガス排出口を第三反応管のガス導入口に接続して、触媒B、A、Cの順に直列に接続した(図2参照)。
水素と一酸化炭素の原料ガス(体積比で、H:CO=2:1)を空間速度8000〜15000h−1で流通させながら反応管の温度を室温から徐々に昇温し、第二反応管を292℃、第一反応管を294℃、第三反応管を303℃に昇温した。また、各反応管の圧力を2MPaに昇圧した。
約3時間反応を継続させた時点で、第三反応管のガス排出口から、生成物を含むガスをサンプリングして、それをガスクロマトグラフィーにより分析した。
得られたデータからCO転化率(モル%)、各成分の選択率(モル%)を計算した。この結果を表1に示す。
【0067】
[実施例3]
実施例1と同様に、触媒A、B、Cを得て、さらに触媒Aと触媒Bとを1gずつ均一に混合し、2gの触媒Dを得た。2gの触媒Dを前記ステンレス製反応管に充填し、第四反応管とした。また、2gの触媒Cを前記ステンレス製反応管に充填し、第三反応管とした。各反応管にはガス導入口およびガス排出口が設けられている。第四反応管のガス排出口を第三反応管のガス導入口に接続して、触媒D、Cの順に直列に接続した(図3参照)。
水素と一酸化炭素の原料ガス(体積比で、H:CO=2:1)を空間速度8000〜15000h−1で流通させながら反応管の温度を室温から徐々に昇温し、第四反応管を290℃、第三反応管を303℃に昇温した。また、各反応管の圧力を2MPaに昇圧した。
約3時間反応を継続させた時点で、第三反応管のガス排出口から、生成物を含むガスをサンプリングして、それをガスクロマトグラフィーにより分析した。
得られたデータからCO転化率(モル%)、各成分の選択率(モル%)を計算した。この結果を表1に示す。
【0068】
[比較例1]
触媒Cを充填した第三反応管を使用せず、第二反応管のガス排出口から生成物を含むガスを得た。この変更以外は、実施例1と同様にして反応データを得た。その結果を、表1に併記する。
【0069】
[比較例2]
2gの触媒Aを前記ステンレス製反応管に充填し、第一反応管とした。触媒Bを充填した第二反応管を使用せず、第一反応管のガス排出口を第三反応管のガス導入口に接続して、触媒A、Cの順に直列に接続した。生成物を含むガスは第三反応管のガス外出口から得た。これらの変更以外は実施例1と同様にして反応データを得た。その結果を、表1に併記する。
【0070】
[比較例3]
2gの触媒Bを前記ステンレス製反応管に充填し、第二反応管とした。触媒Aを充填した第一反応管を使用せず、第二反応管のガス排出口を第三反応管のガス導入口に接続して、触媒B、Cの順に直列に接続した。生成物を含むガスは第三反応管のガス外出口から得た。これらの変更以外は実施例1と同様にして反応データを得た。その結果を、表1に併記する。
【0071】
[比較例4]
2gの触媒Dを前記ステンレス製反応管に充填し、第三反応管とした。第四反応管を使用せず、第三反応管のみを使用した。これらの変更以外は実施例3と同様にして反応データを得た。その結果を、表1に併記する。
【0072】
【表1】

【0073】
表1の結果において、実施例1〜3の酸素化物の選択率(エタノール、酢酸、アセトアルデヒド、及びその他の酸素化物の選択率の合計)は、比較例1〜4の酸素化物の選択率よりも高い。また、生成された酸素化物に含まれるエタノールの比率が顕著に高い。
【0074】
表1の結果から、全生成物中の全酸素化物の選択率を求めた。また、全酸素化物中のエタノールの比率を求めた。これらの結果を表2に併記する。
【0075】
【表2】

【0076】
以上の結果から、本発明に係る実施例1〜3は、全酸素化物の選択率が高く、且つ、全酸素化物中のエタノール比率が高い。よって、本発明はアルコール製造効率に優れることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のアルコールの製造方法、及びアルコール製造装置は、合成ガスから工業的に有用なアルコールを製造するために広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…第一反応管、2…第二反応管、3…第三反応管、4…ガス導入口、5…ガス排出口、6…ガス導入口、7…ガス排出口、8…ガス導入口、9…ガス排出口、10…製造装置、11…第四反応管、12…ガス導入口、13…ガス排出口、20…製造装置、30…製造装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素および一酸化炭素を含む原料ガスを、触媒A、触媒B、及び触媒Cに接触させて、炭素数1〜4のアルコールを製造する方法であって、
前記触媒Aは、前記原料ガスから炭素数1〜4のカルボン酸を主生成物として生成するものであり、
前記触媒Bは、前記原料ガスから炭素数1〜4のアルデヒドを主生成物として生成するものであり、
前記触媒Cは、前記カルボン酸、及び前記アルデヒドを炭素数1〜4のアルコールに変換するものであることを特徴とする、アルコールの製造方法。
【請求項2】
前記触媒Aが、ロジウム、ホウ素、及びアルカリ金属を含み、
前記触媒A中のロジウム:ホウ素のモル比が1:1〜1:5の範囲であり、
前記触媒A中のロジウム:アルカリ金属のモル比が1:0.1〜1:1の範囲であり、
前記触媒A中のホウ素:アルカリ金属のモル比が1:0.02〜1:1の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のアルコールの製造方法。
【請求項3】
前記触媒Bが、ロジウム、マンガン、及びアルカリ金属を含み、
前記触媒B中のロジウム:マンガンのモル比が1:0.01〜1:1の範囲であり、
前記触媒B中のロジウム:アルカリ金属のモル比が1:0.1〜1:1の範囲であり、
前記触媒B中のマンガン:アルカリ金属のモル比が1:0.1〜1:100の範囲であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアルコールの製造方法。
【請求項4】
前記原料ガスを触媒Aに接触させ、得られた前記カルボン酸を含む第一の生成物および未反応の前記原料ガスを触媒Bに接触させ、得られた前記アルデヒドを含む第二の生成物、前記第一の生成物および未反応の前記原料ガスを触媒Cに接触させ、前記アルコールを生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルコールの製造方法。
【請求項5】
前記原料ガスを触媒Bに接触させ、得られた前記アルデヒドを含む第二の生成物および未反応の前記原料ガスを触媒Aに接触させ、得られた前記カルボン酸を含む第一の生成物、前記第二の生成物および未反応の前記原料ガスを触媒Cに接触させ、前記アルコールを生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルコールの製造方法。
【請求項6】
前記触媒Aと前記触媒Bとを混合した触媒Dに、前記原料ガスを接触させ、得られた前記カルボン酸及び前記アルデヒドを含む第三の生成物および未反応の前記原料ガスを触媒Cに接触させ、前記アルコールを生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルコールの製造方法。
【請求項7】
前記原料ガスを前記触媒A、前記触媒B、前記触媒C、又は前記触媒Dに接触させる際の温度が、150〜450℃の範囲であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアルコールの製造方法。
【請求項8】
前記原料ガスを前記触媒A、前記触媒B、前記触媒C、又は前記触媒Dに接触させる際の圧力が、0.5MPa〜10MPaの範囲であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のアルコールの製造方法。
【請求項9】
前記触媒A、前記触媒B、前記触媒C、又は前記触媒Dが担持触媒であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のアルコールの製造方法。
【請求項10】
前記担持触媒の担体が、シリカであることを特徴とする、請求項9に記載のアルコールの製造方法。
【請求項11】
水素および一酸化炭素を含む原料ガスから炭素数1〜4のカルボン酸を主生成物として生成する触媒Aが内部に配された第一反応管、
前記原料ガスから炭素数1〜4のアルデヒドを主生成物として生成する触媒Bが内部に配された第二反応管、
前記カルボン酸、及び前記アルデヒドを炭素数1〜4のアルコールに変換する触媒Cが内部に配された第三反応管を少なくとも備え、
各反応管には、ガス導入口およびガス排出口が設けられており、
前記第一反応管のガス排出口が、前記第二反応管のガス導入口に接続され、
前記第二反応管のガス排出口が、前記第三反応管のガス導入口に接続されている
ことを特徴とするアルコール製造装置。
【請求項12】
水素および一酸化炭素を含む原料ガスから炭素数1〜4のカルボン酸を主生成物として生成する触媒Aが内部に配された第一反応管、
前記原料ガスから炭素数1〜4のアルデヒドを主生成物として生成する触媒Bが内部に配された第二反応管、
前記カルボン酸、及び前記アルデヒドを炭素数1〜4のアルコールに変換する触媒Cが内部に配された第三反応管を少なくとも備え、
各反応管には、ガス導入口およびガス排出口が設けられており、
前記第二反応管のガス排出口が、前記第一反応管のガス導入口に接続され、
前記第一反応管のガス排出口が、前記第三反応管のガス導入口に接続されている
ことを特徴とするアルコール製造装置。
【請求項13】
水素および一酸化炭素を含む原料ガスから炭素数1〜4のカルボン酸を主生成物として生成する触媒Aと、前記原料ガスから炭素数1〜4のアルデヒドを主生成物として生成する触媒Bとを混合した触媒Dが内部に配された第四反応管、
前記カルボン酸、及び前記アルデヒドを炭素数1〜4のアルコールに変換する触媒Cが内部に配された第三反応管を少なくとも備え、
各反応管には、ガス導入口およびガス排出口が設けられており、
前記第四反応管のガス排出口が、前記第三反応管のガス導入口に接続されている
ことを特徴とするアルコール製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−131709(P2012−131709A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282403(P2010−282403)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】