説明

アルコール検知システム

【課題】アルコール検知の際の不正行為が防止され、飲酒状態にある運転者が正確に特定されるアルコール検知システムを提供する。
【解決手段】呼気に含まれるアルコール濃度を検知するアルコール検知装置1と、アルコール検知装置1を用いて呼気を吹き込んでいる状態の運転者の顔と当該アルコール検知装置1とを撮像するカメラ30と、アルコール検知装置1により検知されたアルコール濃度と、カメラ30により撮像された運転者の顔画像とを対応付けるべく、アルコール検知装置1及びカメラ30との間で送受信される情報を制御する制御装置2と、アルコール濃度を検知したアルコール検知装置1とカメラ30によって運転者の顔とともに撮像されたアルコール検知装置1との同一性を判定する統合処理部28とを具備するアルコール検知システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の運転者の呼気に含まれているアルコール濃度が基準値以上であるか否かを判断することで当該運転者が飲酒状態であるか否かを判定するアルコール検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多発しつつある悲惨な飲酒運転事故の防止に鑑みて、運転者の呼気に基準値を超えるアルコール濃度が検出されたとき、自動車や電車等の車両の運転の禁止を促すアルコール検知システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなアルコール検知システムは、呼気吹き込みノズル(呼気吹き込み部)を有し、呼気の圧力を検出して呼気が吹き込まれている状態を検知するとともに、呼気に含まれるアルコール濃度を検知するアルコール検知装置と、前記呼気吹き込みノズルから呼気を吹き込んでいる状態の運転者の顔を撮像するカメラ等の撮像装置とを備えている場合がある。
【0004】
そして、呼気中に含まれるアルコール濃度が基準値以上であるときに、実際にアルコール検知装置を使用して呼気を吹き込み、撮像装置によって顔画像が撮像された者と、車両の運転者との同一性が確認される。そして、同一であることが確認された場合に当該運転者が飲酒状態であると判断され、車両のエンジンの始動が不可となる等の当該車両の運転が禁止されるように車両制御が行なわれるようになっている。
【特許文献1】特開2004−212217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような場合、アルコール検知の際に、例えば、飲酒状態にない同乗者が正規のアルコール検知装置を使用する一方、運転者が正規のものでない偽物のアルコール検知装置を使用した上で、撮像装置によって運転者の方の顔を撮像させるような不正行為を行えば、実際には当該運転者が飲酒状態であったにも拘わらず、呼気中には基準値を超えるような高いアルコール濃度は検出されないことがあり得る。そして、これにより、他者による成り代わりがなされ、飲酒状態にある運転者を特定できない虞がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、アルコール検知の際の不正行為が防止され、飲酒状態にある運転者が正確に特定されるアルコール検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、自動車等の車両の運転者の呼気に含まれるアルコール量が基準値以上であるか否かを判断することで当該運転者が飲酒状態であるか否かを判定するアルコール検知システムであって、呼気に含まれるアルコール量を検知するアルコール検知手段、前記アルコール検知手段を用いて呼気を吹き込んでいる状態の運転者の顔と当該アルコール検知手段とを撮像する撮像手段、前記アルコール検知手段により検知されたアルコール量と、前記撮像手段により撮像された前記運転者の顔画像とを対応付けるべく、前記アルコール検知手段及び撮像手段との間で送受信される情報を制御する制御装置、及び、前記アルコール量を検知したアルコール検知手段と、前記撮像手段によって前記顔とともに撮像されたアルコール検知手段との同一性を判定する同一性判定手段を具備すること、を要旨とする。
【0008】
同構成によれば、同一性判定手段によって、呼気に含まれるアルコール量を検知したアルコール検知手段と、撮像手段により運転者の顔とともに撮像されたアルコール検知手段との同一性が判定される。このため、例えば、正規のものでない偽物のアルコール検知手段を使用した状態で当該アルコール検知手段と運転者の顔画像とを撮像させる一方、正規のアルコール検知手段からは飲酒状態にない同乗者が呼気を吹き込むような不正行為が防止でき、飲酒状態にある運転者を特定できるようになる。また、単一の撮像手段を用いて両アルコール検知手段の同一性が判定できるので、使用する機材点数が少なくて済み、ローコスト且つ簡単に同一性判断操作が行えるようになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアルコール検知システムにおいて、前記同一性判定手段は、前記制御装置において生成されるとともに当該制御装置から前記アルコール検知手段に送信される送信信号と、前記アルコール検知手段から前記撮像手段を介して送信され、前記制御装置により受信された信号との一致・不一致を判定する送受信信号判定部を備えていること、を要旨とする。
【0010】
同構成によれば、同一性判定手段によって、制御装置が生成し、アルコール検知手段に送信された送信信号と、アルコール検知手段から撮像手段を介して送信され、制御装置により受信された信号との一致・不一致が判断される。このため、呼気に含まれるアルコール量を検知したアルコール検知手段と、撮像手段により撮像されたアルコール検知手段との同一性がより的確に判定されるようになる。また、制御装置が独自に生成した送信信号に基づき両アルコール検知手段の同一性が判断されるので、偽造も困難となる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のアルコール検知システムにおいて、前記同一性判定手段は、前記アルコール検知手段に設けられ、前記制御装置において生成されるとともに当該制御装置から送信される送信信号に従って発光パルスを出射する発光部と、前記制御装置に設けられ、該制御装置が生成した前記送信信号と、前記発光パルスとして前記撮像手段を介して当該制御装置により受信された信号との一致・不一致を判定する送受信信号判定部とを備えていること、を要旨とする。
【0012】
同構成によれば、同一性判定手段によって、制御装置が生成し、アルコール検知手段に送信された送信信号と、アルコール検知手段に設けられた発光部からの発光パルスとして撮像手段を介して当該制御装置により受信された信号との一致・不一致が判断される。このため、呼気に含まれるアルコール量を検知したアルコール検知手段と、撮像手段により撮像されたアルコール検知手段との同一性がより的確に判定されるようになる。また、制御装置が生成し、アルコール検知手段に送信した送信信号は、アルコール検知手段に設けられた発光部からの発光パルスとして撮像手段を介して当該制御装置により受信されるので、制御装置による送信信号の受信も容易且つ的確に行えるようになる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のアルコール検知システムにおいて、前記には、符号化及び復号化の合図となるスタートビットが付与され、該送信信号は、さらに所定の符号化処理に基づき符号化されて前記アルコール検知装置に送信される一方、発光パルスとして前記撮像手段を介して当該制御装置により受信され、該制御装置において元の信号に復号化されること、を要旨とする。
【0014】
同構成によれば、信号の符号化及び復号化に伴って送受信信号に独自の特性を与えることができるとともに、送信信号には、その符号化及び復号化の合図となるスタートビットが付与される。これにより、当該スタートビットを規準として、送受信信号の符号化及び復号化のタイミングが合致できるようになり、送信信号を送信する制御装置と、該送信信号をアルコール検知手段からの発光パルス等として受信するカメラ等の撮像手段との間にて送受信信号の同期をとることが容易且つ確実に行えるようになる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のアルコール検知システムにおいて、前記所定の符号化処理は、マンチェスタ符号化処理であること、を要旨とする。
同構成によれば、各ビット区間を半分に分割し、信号「0」を「01」、信号「1」を「10」に変換するデジタル符号化技術であるマンチェスタ符号化処理に基づいて送信信号の符号化処理及び受信信号の復号化処理が行われる。このため、発光部の発光デューティー比が50%で一定となり、長時間非点灯(消灯)の状態が防止される。その結果、アルコール検知手段と制御装置との間で正常な信号の送受信が行われているか否かが的確に判断されるようになる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載のアルコール検知システムにおいて、前記復号化は、前記撮像手段を介して前記制御装置により受信された信号から所定のタイミングで読み取られる読み取り信号より多数決判定によって生成された受信信号に基づいて行われること、を要旨とする。
【0017】
同構成によれば、制御装置から送信される送信信号の復号化は、撮像手段を介して制御装置により受信された信号から所定のタイミングで読み取られる読み取り信号より多数決判定によって生成された受信信号に基づいて行われる。このため、発光部とカメラ等の撮像手段との間で生じる信号遅延や画像ノイズの影響が排除され、符号化された送信信号の元の信号への復号化が正確に行われるようになる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項2〜請求項6のいずれかに記載のアルコール検知システムにおいて、前記アルコール検知手段には、前記発光部の当該アルコール検知手段における位置を特定するためのマークが設けられ、前記マークの位置に基づいて前記発光部が検出されることを条件として、前記同一性判定手段によって、前記アルコール量を検知したアルコール検知手段と、前記撮像手段によって、前記顔とともに撮像されたアルコール検知手段との同一性を判定するようにしたこと、を要旨とする。
【0019】
同構成によれば、マークの位置に基づいて前記発光部が検出されることを条件として、アルコール量を検知したアルコール検知手段と、撮像手段により運転者の顔とともに撮像されたアルコール検知手段との同一性が判定される。このため、当該発光部の発光パルスから位置(座標)ずれなく安定して当該発光パルスに含まれる送信信号が読み取られるようになる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれかに記載のアルコール検知システムにおいて、前記制御装置には、前記アルコール検知手段により検知されたアルコール量と、前記撮像手段により撮像された顔画像とを互いに対応付けて記憶する記憶部が設けられていること、を要旨とする。
【0021】
同構成によれば、記憶部によって、アルコール検知手段により検知されたアルコール量と、撮像手段により撮像された顔画像とを互いに対応付けて保存することができる。これにより、保存された情報を適宜に呼び出すことにより、顔画像が撮像されるとともに、呼気中に所定のアルコール量が検知された者と、特定の車両の運転者との同一性を事後的に判断することができるようになる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8のいずれかに記載のアルコール検知システムにおいて、前記制御装置は、前記撮像手段により撮像された画像中に人物の顔が含まれているかを判定する顔判定機能を備え、前記画像中に人物の顔が含まれていることを条件として、前記同一性判定手段によって、前記アルコール量を検知したアルコール検知手段と、前記撮像手段によって、前記顔とともに撮像されたアルコール検知手段との同一性を判定するようにしたこと、を要旨とする。
【0023】
同構成によれば、撮像手段によって撮像された画像中に人物の顔が含まれていることを条件として、アルコール量を検知したアルコール検知手段と、撮像手段により運転者の顔とともに撮像されたアルコール検知手段との同一性が判定される。このため、正規のものでない偽物のアルコール検知手段を使用した状態で当該アルコール検知手段と運転者の顔とを撮像手段により撮像させる一方、正規のアルコール検知手段からは飲酒状態にない同乗者が呼気を吹き込むような不正行為に加え、さらに例えば、正規のアルコール検知手段ではあるが、実際に呼気を吹き込んでいない状態のアルコール検知手段を撮像手段で撮像させるような不正行為をも防止できるようになる。
【0024】
請求項10に記載の発明は、請求項2〜請求項9のいずれかに記載のアルコール検知システムにおいて、前記制御装置において生成された送信信号は、当該制御装置から暗号化されて前記アルコール検知手段に送信されるとともに、該暗号化された送信信号は、当該アルコール検知手段において元の信号に復元されるようにしたこと、を要旨とする。
【0025】
同構成によれば、制御装置において生成された送信信号は、当該制御装置からアルコール検知手段に暗号化されて送信されるとともに、該暗号化された送信信号は、当該アルコール検知手段において元の信号に復元される。このため、制御装置において生成され、アルコール検知手段で受信される信号の偽造が困難となり、正規のものでない偽物のアルコール検知手段を使用している運転者の顔を撮像手段で撮像させるような不正行為がより効果的に防止できるようになる。
【0026】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜請求項10のいずれかに記載のアルコール検知システムにおいて、前記アルコール検知手段により検知されたアルコール量は、暗号化された暗号化信号として当該アルコール検知手段から前記制御装置へ送信されるようにしたこと、を要旨とする。
【0027】
同構成によれば、アルコール検知手段によって検知されたアルコール量が、当該アルコール検知手段から制御装置に暗号化された信号として送信される。このため、例えば、実際より低いアルコール量に関する情報を含む信号として制御装置に送信するような情報の偽造が的確に防止されるようになる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のアルコール検知システムによれば、アルコール検知の際の不正行為が防止され、飲酒状態にある運転者が正確に特定されるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態のアルコール検知システムは、呼気に含まれるアルコール濃度[mg/L(リットル)](アルコール量)を検知するアルコール検知装置1、該アルコール検知装置1を用いて呼気を吹き込んでいる状態の運転者の顔と当該アルコール検知装置1とを撮像する撮像手段としてのカメラ30、及び、前記アルコール検知装置1により検知されたアルコール濃度と、前記カメラ30により撮像された前記運転者の顔画像とを対応付け、飲酒状態にある運転者を特定すべく、前記アルコール検知装置1及びカメラ30との間で送受信される各種情報(各種信号、各種データ)を制御する制御装置2を具備している。
【0030】
詳しくは、前記アルコール検知装置1は、信号の送受信を中継するインターフェイスとしての機能を有する第一暗号化通信部11であって、前記制御装置2から送信される各種信号を受信する。そして、該信号が暗号化されている場合には当該暗号化された信号を元の信号に復元する一方、当該アルコール検知装置1により検知されたアルコール検知結果としてのアルコール濃度を信号化して送信するとともに、該送信する信号を暗号化する必要がある場合には当該信号を暗号化して送信する第一暗号化通信部11を備えている。
【0031】
該第一暗号化通信部11には、アルコール検知装置1に設けられ、運転者の呼気に含まれるアルコールを検知するアルコールセンサ13が、当該検知されたアルコールについての情報からアルコール濃度を演算するセンサ制御部12を介して電気的に接続されている。該センサ制御部12には、「呼気吹き込み指示(READY!)」等のアルコール検知装置1の状態(ステータス)、及び、検知されたアルコール濃度を表示する液晶表示部12aと、現在、アルコールセンサ13によりアルコールが検出されている状態である旨等を点滅することで表示する状態表示用LED12bとが電気的に接続されている。ここで図2(a)及び図2(b)を参照して、前記アルコール検知装置1は、直方体状の胴体部1bと、該胴体部1bから突出して設けられ、車両の運転者によって咥えられて呼気を胴体部1b中に吹き込むための円筒形の呼気吹き込み口1aとを備えている。そして、この呼気吹き込み口1aから吹き込まれた呼気に含まれるアルコールが前記アルコールセンサ13によって検出されるようになっている。また、図2(a)に示すように、前記胴体部1bの表側には、前記液晶表示部12aと状態表示用LED12bとが視認可能な状態で配設されている。一方、図2(b)に示すように、前記胴体部1bの裏側の所定位置には、当該胴体部1bの表裏を画像処理により判定させるとともに、該胴体部1bに設けられた部材の位置や大きさ(スケール)を特定させる基準となる2個の表裏判定・スケーリング用マーク16b,16bが設けられている。また、前記胴体部1bの裏側であって、且つ前記呼気吹き込み口1aの裏側には、車両の運転者が呼気吹き込み口1aを咥えているか否かを判定させるための咥え込み判定用マーク16aが設けられている。
【0032】
尚、本実施形態では、図3に示すように、車両の運転者40の顔は、当該運転者40が運転席40aに着座し、前記アルコール検知装置1の呼気吹き込み口1aを口唇で咥え込んだ状態にて、前記胴体部1bの裏側に設けられた咥え込み判定用マーク16a及び表裏判定・スケーリング用マーク16b,16bとともに前記カメラ30により撮像されるようになっている。このため、運転者40が呼気吹き込み口1aを口唇で咥え込んだ状態では、前記咥え込み判定用マーク16aが運転者の口によって隠蔽され、咥え込み判定用マーク16aはカメラ30によって撮像されることなく表裏判定・スケーリング用マーク16b,16bのみが撮像される。そしてこれにより、運転者が呼気吹き込み口1aを口唇で咥え込んでいる旨が画像処理により判定されるようになる。
【0033】
図1に戻り、前記第一暗号化通信部11には、アルコール検知装置1に設けられ、前記制御装置2において生成されるとともに当該制御装置2からパルス列として送信される送信信号に従って所定周期で発光パルスを出射する発光器15が、その発光状態を制御するLEDドライバ14を介して電気的に接続されている。さらに、該第一暗号化通信部11には、アルコール検知装置1に設けられ、前記制御装置2から送信される注意信号に基づき、警報音(警報音声)を発するスピーカ17aが、その動作を制御するスピーカドライバ17を介して電気的に接続されている。この発光器15は、前記表裏判定・スケーリング用マーク16b,16bのほぼ中間に位置するように前記アルコール検知装置1の胴体部1bの裏側の所定位置に設けられている(図2(b)参照)。
【0034】
即ち、該発光器15は、前記車両の運転者40の顔、咥え込み判定用マーク16a、表裏判定・スケーリング用マーク16b,16bとともに前記カメラ30によって撮像されるようになっている。ここで、該発光器15は、前記表裏判定・スケーリング用マーク16b,16bとともにカメラ30で撮像されることでマーク16b,16bを規準としてその位置が特定され、同カメラ30によって該発光器15から出射される発光パルスが位置(座標)ずれなく安定して撮像されるようになっている。
【0035】
一方、前記制御装置2は、信号の送受信を中継するインターフェイスとしての機能を有する第二暗号化通信部21であって、前記アルコール検知装置1から前記第一暗号化通信部11を介して送信されるアルコール検知結果を受信し、該信号が暗号化されている場合には当該暗号化された信号を元の信号に復元して後述する統合処理部28に送信する一方、前記発光器15から所定周期で発光パルスを出射させるべく、前記第一暗号化通信部11に当該制御装置2内において生成したパルス列としての送信信号を送信するとともに、前記スピーカ17aから警報音を発するべく注意信号を送信する第二暗号化通信部21を備えている。
【0036】
尚、本実施の形態では、前記第一暗号化通信部11と第二暗号化通信部21との間で送受信される信号には、前記アルコール検知結果としてのアルコール濃度を含めて全て所定の暗号化処理が施されている。即ち、前記第一暗号化通信部11又は第二暗号化通信部21で暗号化された信号は、前記第二暗号化通信部21又は第一暗号化通信部11で元の信号に復元されるようになっている。
【0037】
また、前記制御装置2は、前記第二暗号化通信部21に電気的に接続されるともに、前記アルコール検知装置1の発光器15から所定周期で発光パルスを出射させるための送信信号を生成する符号生成部22を備えている。詳細には、該符号生成部22は、入力された信号をマンチェスタ符号化処理して前記第二暗号化通信部21に出力する符号化部22cと、前記送信信号を生成し、該送信信号を前記符号化部22c及び後述する統合処理部28に送信する送信信号生成部22bと、該送信信号生成部22bから前記符号化部22cに送信された送信信号を前記第二暗号化通信部21に送信する際に信号の同期をとるための同期パルスを生成する同期パルス部22aとを備えている。
【0038】
さらに、前記制御装置2は、前記カメラ30を介して撮像された画像データ(発光器15から出射された発光パルス、運転者の顔画像、各マーク16(16a,16b,16b)を画像処理するための画像処理部23を備えている。詳細には、該画像処理部23は、前記カメラ30から最初に前記画像データが入力される画像入力部24と、該画像入力部24に電気的に接続され、当該画像入力部24から送信される画像データの中から運転者の顔画像を検出し、当該顔画像が人物の顔であるか否かを判定させるための顔判定結果を出力する顔検出部25とを備えている。また、該画像処理部23は、前記画像入力部24に電気的に接続され、当該画像入力部24からの画像データの中から各マーク16a,16b,16bを検出する形状判定部26、及び、該形状判定部26に電気的に接続され、前記画像入力部24から送信される画像データの中から前記発光器15から出射された発光パルスを検出する発光器検出部26aを備えている。さらに、前記画像処理部23は、前記発光器検出部26aに電気的に接続され、当該発光器検出部26aから出力される発光パルスから信号(情報)を読み取るパルス情報読取部27と、該パルス情報読取部で読み取られた信号を復号化して復号化信号とした上で後述する統合処理部28に送信する復号化部27aとを備えている。
【0039】
さらにまた、前記制御装置2は、呼気に含まれるアルコール濃度(アルコール量)を検知したアルコール検知装置1と、前記カメラ30によって運転者の顔とともに撮像されたアルコール検知装置1との同一性を判定する同一性判定手段としての統合処理部28を備えている。
【0040】
詳しくは、該統合処理部28は、前記第二暗号化通信部21からアルコール検知結果、前記符号生成部22の送信信号生成部22bから送信信号、前記画像処理部23の顔検出部25から顔判定結果、及び復号化部27aから復号化信号がそれぞれ入力される総合判定部28aを備えている。そして、該総合判定部28aは、これら各情報に基づいて、前記呼気に含まれるアルコール濃度を検知したアルコール検知装置1と、前記カメラ30によって運転者の顔とともに撮像されたアルコール検知装置1との同一性を判定したり、運転者の呼気に基準値を超えるアルコール濃度が検出された場合には、当該運転者が飲酒状態であると判断し、図示しない車両のエンジン制御装置に制御信号を送信して当該車両のエンジンの始動を禁止したりする等の総合的な制御処理を行う。尚、該総合判定部28aは、その処理結果に基づき、前記アルコール検知装置1のスピーカ17aから警報音(警報音声)を発するべく、前記第二暗号化通信部21及び第一暗号化通信部11を介して前記スピーカドライバ17に注意信号を送信するようにもなっている。
【0041】
また、前記制御装置2は、前記総合判定部28a及び前記画像処理部23の画像入力部24にそれぞれ電気的に接続され、当該総合判定部28aからアルコール検知結果としてのアルコール濃度が入力されるとともに、当該画像入力部24から運転者の顔画像(写真)が入力されるデータ保存部29、及び、該データ保存部29を介して当該アルコール濃度と前記顔画像とを互いに対応付けて記憶する記憶部29aを備えている。尚、該記憶部29aには、運転者の呼気中のアルコール濃度が測定された測定日時も前記アルコール検知結果及び顔画像と対応付けて記憶される。
【0042】
本実施形態のアルコール検知システムは、以上のように構成され、該アルコール検知システムにおいては、前記制御装置2において生成されるとともに当該制御装置2から前記アルコール検知装置1に送信される送信信号と、前記アルコール検知装置1からカメラ30を介して発光パルスとして送信され、前記制御装置2により受信された信号との一致・不一致が判定される。そしてこの判定結果に基づき、運転者の呼気に含まれるアルコール濃度を検知したアルコール検知装置1と、前記カメラ30によって運転者の顔とともに撮像されたアルコール検知装置1との同一性が判定される。
【0043】
即ち、図4に示すように、先ず送信側の処理として、前記制御装置2の符号生成部22の送信信号生成部22bで生成された送信信号は、前記同期パルス部22aで生成された10Hzの同期パルスによって同期がとられ、前記符号化部22cでマンチェスタ符号化処理された上で、前記第二暗号化通信部21に20[bps]の通信レートで送信される。ここで送信信号は、信号伝送のエラーを検出するために当該送信信号の最後に奇数又は偶数パリティビットが付加された10ビットの信号として送信される。
【0044】
このマンチェスタ符号化処理によって、前記送信信号は、各ビット区間が半分に分割され、さらに当該各ビット区間において「01」の信号を周期的に発生する同期パルスが加えられ、送信信号「0」が「01」(即ち、「00」→「0」、「10」→「1」の排他的論理和(EXOR)と等しくなる。)、送信信号「1」が「10」(即ち、「01」→「1」、「11」→「0」の排他的論理和(EXOR)と等しくなる。)のマンチェスタ符号に変換される。これにより、前記発光器15の発光デューティー比が50%で一定となり、即ち、同期パルスの2ビット区間(2×T[sec])が経てば必ず発光器15から出射される発光パルスは点灯状態となり、長時間非点灯(消灯)の状態が防止される。その結果、アルコール検知装置1と制御装置2との間で正常な信号の送受信が行われているか否かが的確に判断されるようになる。つまり、前記発光パルスに2×T[sec]を超える消灯タイミングが出現すれば、当該発光器15の故障や、該発光器15とカメラ30の位置ずれなどのトラブルが想定される。
【0045】
さらに、前記マンチェスタ符号化された送信信号は、当該制御装置2の第二暗号化通信部21を介して通信レートが20[bps]のパルス列として前記アルコール検知装置1の第一暗号化通信部11に送信される。次いで該送信信号は、前記LEDドライバ14を介して発光器15から同じく通信レートが20[bps]の発光パルスとして出射され、前記カメラ30を介して当該制御装置2に送信(返信)される。
【0046】
そして、受信側の処理として、前記発光パルスから、当該制御装置2の画像処理部23の画像入力部24、形状判定部26、及び発光器検出部26aを介して、前記パルス情報読取部27においてフレームレート60[fps]の読み取りタイミングで信号(マンチェスタ符号化された送信信号)が読み取られる。このパルス情報読取部27における信号の読み取りは、前記カメラ30のシャッタタイミング(ここではNTSC方式に準じて1/60[sec])と同期させて行われる。
【0047】
詳しくは、図4を参照して、発光パルスの1ビット区間について3フレームの信号のサンプリング(読み取り)がなされ、各サンプリングにおいて当該発光パルスから「1」又は「0」の信号が読み取られ、「1」又は「0」の2値化信号からなる読み取り信号が得られる。尚、ここでのサンプリングは、前記カメラ30のシャッタタイミングに合わせて行われる。
【0048】
一方、図5を参照して、前記画像処理部23の顔検出部25においては、ステップS1にて、前記カメラ30によって撮像された画像中に人物の顔(に相当する部分)が検出されるとともに、該顔検出結果が前記統合処理部28の総合判定部28aに送信される。
【0049】
次にステップS2にて、前記カメラ30によって撮像された画像中に2個の表裏判定・スケーリング用マーク16b,16bの位置が特定されたか否かが判定される。その結果、マーク16b,16bの位置が特定されたと判定された場合には、ステップS3へ進む。一方、マーク16b,16bの位置が特定されないと判定された場合には、ステップS7にて、アルコール検知装置1に注意信号が送信され、スピーカ17aから警報音が発せられ、状況に応じて再度のアルコールの検知操作(呼気吹き込み操作)又はアルコールの検知操作の終了が促される。
【0050】
そして、ステップS3において、前記マーク16b,16bの位置(座標)に基づいて、発光器15が検出される。このようにマーク16b,16bの位置に基づいて発光器15が検出されることで、次のステップS4にて、画像処理部23において、当該発光器15の発光パルスから位置(座標)ずれなく安定して当該発光パルスに含まれる前記送信信号が読み取られるようになる。
【0051】
図4に戻り、この読み取り信号から、前記発光パルスの1ビット区間毎に、3フレーム分の多数決判定によって、「1」又は「0」の2値化信号からなる受信信号が得られる。この受信信号の通信レートは、3フレーム分の多数決判決のため、60[fps]÷3=20[bps]となる。
【0052】
しかる後、図4とともに図5を参照して、ステップS5において、この受信信号について、前記したマンチェスタ符号化処理の逆の処理、即ち、マンチェスタ復号化処理が行われる。そして、ステップS6において、復号化信号が取得される。具体的には、マンチェスタ符号化された送信信号「01」が「0」、「10」が「1」の元の送信信号に復号され、得られた復号化信号が前記統合処理部28の総合判定部28aに入力される。このマンチェスタ復号化処理では、2ビットで1個の情報を表すことになるので、総合判定部28aで受信される最終的な通信レートは、20[bps]÷2=10[bps]となる。図4においては、前記送信信号に、そのマンチェスタ符号化及びマンチェスタ復号化の合図となるスタートビットが付与され、当該スタートビットの出現を契機として前記送信信号のマンチェスタ符号化及び受信信号のマンチェスタ復号化が行われるようになっている。尚、ここでの符号化については、スタートビットを含めて行われ、復号化については、スタートビットを含めずに行われる。詳しくは、図4では、スタートビットは「0」の信号で与えられており、これをマンチェスタ符号化し、「01」の発光パルス(パルス列)からフレームレート60[fps]で読み取られた信号「000111」の先頭の「0」を開始合図として、それより6番目の信号「1」から復号化が開始される。また、図4において、スタートビット以前の送信信号、即ち、マンチェスタ符号化前の送信信号の送信時間は、当該送信信号に基づく連続した発光と、発光時間が最長で同期パルスの2ビット区間(2×T[sec])となるスタートビットとを明確に識別させる観点から、同期パルスの3ビット区間(3×T[sec])以上、好ましくは、同期パルスの4ビット区間(4×T[sec])以上であることがよい。
【0053】
そして、図6を参照して、前記統合処理部28の総合判定部28aにおいては、ステップS11にて、前記画像処理部23の顔検出部25から総合判定部28aに入力された顔判定結果に基づき、前記カメラ30により撮像された画像中に人物の顔が含まれているか否かが、隠れマルコフモデル等の認識アルゴリズムを利用した所定の顔画像認識技術を用いて判定される。その結果、前記画像中に人物の顔が含まれていると判定された場合には、ステップS12へ進む。一方、前記画像中に人物の顔が含まれていないと判定された場合には、ステップS16にて、アルコール検知装置1に注意信号が送信され、スピーカ17aから警報音が発せられ、状況に応じて再度のアルコールの検知操作(呼気吹き込み操作)又はアルコールの検知操作の終了が促される。
【0054】
次にステップS12にて、送受信信号判定部としての前記総合判定部28aにおいて、前記復号化部27aから入力された復号化信号と、前記送信信号生成部22bから入力された送信信号との比較が行われ、両信号の一致・不一致が判定される。そしてこれにより、運転者の呼気に含まれるアルコール濃度を検知したアルコール検知装置1と、前記カメラ30によって運転者の顔とともに撮像されたアルコール検知装置1との同一性が判定される。
【0055】
その結果、前記復号化信号と送信信号とが一致し、両アルコール検知装置が同一であると判定された場合には、さらにステップS13にて、前記アルコール濃度が基準値以上であるか否かが判定される。一方、基準値以上である場合には、ステップS14にて、当該顔画像が撮像された運転者が飲酒状態と判定され、車両のエンジンの始動が不可となる等の当該車両の運転が禁止される車両制御が行なわれる。また、基準値未満の場合には、ステップS15にて、該運転者が非飲酒状態と判定され、当該車両の運転が許可される車両制御が行われる。
【0056】
一方、前記復号化信号と送信信号が一致せず、両アルコール検知装置が同一でないと判定された場合には、ステップS16にて、アルコール検知装置1に注意信号が送信され、スピーカ17aから警報音が発せられ、状況に応じて再度のアルコールの検知操作(呼気吹き込み操作)又はアルコールの検知操作の終了が促される。
【0057】
以上説明したように、本実施形態のアルコール検知システムによれば、以下の作用・効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、制御装置2の統合処理部28によって、呼気に含まれるアルコール濃度を検知したアルコール検知装置1と、カメラ30により運転者の顔とともに撮像されたアルコール検知装置1との同一性が判定される。このため、例えば、正規のものでない偽物のアルコール検知装置を使用した状態で当該アルコール検知装置と運転者の顔とを撮像させる一方、正規のアルコール検知装置1からは飲酒状態にない同乗者が呼気を吹き込むような不正行為が防止でき、飲酒状態にある運転者を特定できるようになる。また、単一のカメラ30を用いて両アルコール検知装置1の同一性が判定できるので、使用する機材点数が少なくて済み、ローコスト且つ簡単に同一性判断操作が行えるようになる。
【0058】
(2)本実施形態では、制御装置2の統合処理部28によって、制御装置2が生成し、アルコール検知装置1に送信された送信信号と、アルコール検知装置1に設けられた発光器15から出射される発光パルスとしてカメラ30を介して当該制御装置2により受信された信号との一致・不一致が判断される。このため、呼気に含まれるアルコール濃度を検知したアルコール検知装置1と、カメラ30により撮像されたアルコール検知装置1との同一性が的確に判定されるようになる。また、制御装置2が独自に生成した送信信号に基づき両アルコール検知装置1の同一性が判断されるので、偽造も困難となる。
【0059】
(3)本実施形態では、制御装置2の統合処理部28によって、制御装置2が生成し、アルコール検知装置1に送信された送信信号と、アルコール検知装置1に設けられた発光器15から出射される発光パルスとしてカメラ30を介して当該制御装置2により受信された信号との一致・不一致が判断される。このため、呼気に含まれるアルコール濃度を検知したアルコール検知装置1と、カメラ30により撮像されたアルコール検知装置1との同一性が的確に判定されるようになる。また、制御装置2が生成し、アルコール検知装置1に送信した送信信号は、アルコール検知装置1に設けられた発光器15からの発光パルスとしてカメラ30を介して当該制御装置2により受信されるので、制御装置2による送信信号の受信も容易且つ的確に行えるようになる。
【0060】
(4)本実施形態では、送信信号に付与されるスタートビットを規準として、送受信信号の符号化及び復号化のタイミングが合致できるようになり、送信信号を送信する制御装置2と、該送信信号をアルコール検知装置1からの発光パルスとして受信するカメラ30との間にて送受信信号の同期をとることが容易且つ確実に行えるようになる。
【0061】
(5)本実施形態では、各ビット区間を半分に分割し、信号「0」を「01」、信号「1」を「10」に変換するデジタル符号化技術であるマンチェスタ符号化処理に基づいて送信信号の符号化処理及び受信信号の復号化処理が行われる。このため、発光器15の発光デューティー比が50%で一定となり、長時間非点灯(消灯)の状態が防止される。その結果、アルコール検知装置1と制御装置2との間で正常な信号の送受信が行われているか否かが的確に判断されるようになる。
【0062】
(6)本実施形態では、制御装置2から発光器15を介して送信される送信信号の復号化は、カメラ30を介して制御装置2により受信された発光パルスから所定のタイミングで読み取られる読み取り信号より多数決判定によって生成された受信信号に基づいて行われる。このため、発光器15とカメラ30との間で生じる信号遅延や画像ノイズの影響が排除され、符号化された送信信号の元の信号への復号化が正確に行われるようになる。
【0063】
(7)本実施形態では、各マーク16,…の位置に基づいて発光器15が検出されることを条件として、アルコール濃度を検知したアルコール検知装置1と、カメラ30により運転者の顔とともに撮像されたアルコール検知装置1との同一性が判定される。このため、当該発光器15の発光パルスから位置(座標)ずれなく安定して当該発光パルスに含まれる送信信号が読み取られるようになる。
【0064】
(8)本実施形態では、カメラ30によって撮像された画像中に人物の顔が含まれていることを条件として、アルコール濃度を検知したアルコール検知装置1と、カメラ30により運転者の顔とともに撮像されたアルコール検知装置1との同一性が判定される。このため、正規のものでない偽物のアルコール検知装置を使用した状態で当該アルコール検知装置1と運転者の顔とをカメラ30により撮像させる一方、正規のアルコール検知装置1からは飲酒状態にない同乗者が呼気を吹き込むような不正行為に加え、さらに例えば、正規のアルコール検知装置1ではあるが、実際に呼気を吹き込んでいない状態のアルコール検知装置1をカメラ30で撮像させるような不正行為をも防止できるようになる。
【0065】
(9)本実施形態では、制御装置2において生成された送信信号は、当該制御装置2から暗号化されてアルコール検知装置1に送信されるとともに、該暗号化された送信信号は、当該アルコール検知装置1において元の信号に復元される。このため、制御装置2において生成され、アルコール検知装置1で受信される信号の偽造が困難となり、正規のものでない偽物のアルコール検知装置1を使用している状態の運転者の顔をカメラ30で撮像させるような不正行為がより効果的に防止できるようになる。
【0066】
(10)本実施形態では、アルコール検知装置1によって検知されたアルコール濃度(アルコール検知結果)が、当該アルコール検知装置1から制御装置2に暗号化された信号として送信される。このため、例えば、実際より低いアルコール濃度に関する情報を含む信号として制御装置2に送信するような情報の偽造が的確に防止されるようになる。
【0067】
尚、上記実施形態は以下のように変形してもよい。
・上記実施形態では、呼気に含まれるアルコール濃度を検知したアルコール検知装置1と、カメラ30によって運転者の顔とともに撮像されたアルコール検知装置1との同一性を判定する同一性判定手段として制御装置2内に設けた統合処理部28(より正確には総合判定部28a)を用いた。しかし、本発明の技術的思想はこれに限られず、そのような同一性判定手段は、制御装置2の外部、例えば、アルコール検知装置1内に設けることも可能である。
【0068】
・上記実施形態では、車両の運転者の顔と、アルコール検知装置1とは同一のカメラ30により撮像するようにした。しかし、本発明の技術的思想はこれに限られず、両者は個別のカメラで撮像した上で、呼気に含まれるアルコール濃度を検知したアルコール検知装置1と、カメラ30により撮像されたアルコール検知装置1との同一性判定を行うべく、当該撮像された各画像データを制御装置2に送信するようにしてもよい。
【0069】
・上記実施形態では、発光器15とカメラ30との間で生じる信号遅延や画像ノイズの影響を排除するため、発光パルスから読み取られた信号から多数決判定によって受信信号を得た上で当該受信信号を復号化するようした。しかし、これに限られず、発光器15からの発光パルスとカメラ30のシャッタタイミングとを同期させることでそのような多数決判定を行わず、発光パルスから読み取られた信号を直接復号化することも可能である。
【0070】
・上記実施形態では、アルコール検知装置1に設けた咥え込み判定用マーク16a(16)及び表裏判定・スケーリング用マーク16b,16b(16,16)は、いずれも自ら発光しない非自発光タイプのものとしたが、各マーク16,…は、光を自身で出射する自発光タイプのものであってもよい。これにより、各マーク16,…の位置や離間距離について画像処理が、画像処理部23により精確に行われるようになる。
【0071】
・上記実施形態では、アルコール検知装置1の発光器15から出射される発光パルスに基づいて、アルコール濃度を検知したアルコール検知装置1と、前記カメラ30によって運転者の顔とともに撮像されたアルコール検知装置1との同一性を判定するようにする一方、表裏判定・スケーリング用マーク16b,16bは、当該同一性の判定の基準としなかった。しかし、これに限られず、表裏判定・スケーリング用マーク16b,16bの位置、大きさ(離間距離)、又は形状についても前記発光パルスとともに前記同一性の判定の基準とすることができる。
【0072】
・上記実施形態では、運転者が呼気吹き込み口1aを口唇で咥えた状態でカメラ30によって画像が撮像されているか否かの判定ステップは、アルコール濃度を検知したアルコール検知装置1と、前記カメラ30によって運転者の顔とともに撮像されたアルコール検知装置1との同一性を判定する処理フロー(図5、図6参照)中に取り込まなかった。しかし、これに限られず、例えば、形状判定部26から各マーク16,…の形状判定結果を統合処理部28の総合判定部28aに入力し、図6のステップS11とステップS12との間に当該判定ステップを挿入するとともに、運転者が呼気吹き込み口1aを口唇で咥えていない状態でカメラ30により画像が撮像されていると判定された場合には、ステップS16にて、アルコール検知装置1に注意信号が送信され、スピーカ17aから警報音が発せられるようにすることもできる。これにより、呼気吹き込み口1aが運転者の口唇で咥え込まれていない状態のアルコール検知装置1を撮像しようとする不正行為が効果的に防止できるようになる。
【0073】
・上記実施形態では、制御装置2において生成されるとともに当該制御装置2からパルス列として送信される送信信号に、そのマンチェスタ符号化及びマンチェスタ復号化の合図となるスタートビットが付与され、当該スタートビットの出現を契機として前記送信信号のマンチェスタ符号化及び受信信号のマンチェスタ復号化が行われるようにした。これにより、スタートビットを基準として、送受信信号の符号化及び復号化のタイミングが合致できるようになり、送信信号を送信する制御装置2と、該送信信号を発光パルスとして受信するカメラ30との間での送受信信号の同期をとることが容易に且つ確実に行えるようになった。しかし、これに限られず、送信信号を送信する制御装置2と、該送信信号を発光パルスとして受信するカメラ30との間での送受信信号の同期をとることが的確に行われる限り、送信信号にスタートビットを付与する操作を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態に係るアルコール検知システムの全体構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施形態に係るアルコール検知装置の外観を示す外観図であり、(a)は、同アルコール検知装置の表側を示す図、(b)は、同アルコール検知装置の裏側を示す図。
【図3】同アルコール検知装置の使用状態を示す使用状態図。
【図4】マンチェスタ符号化による信号(情報)の送受信を示すタイムチャート図。
【図5】本発明の実施形態に係る画像処理部の処理フローを示すフローチャート図。
【図6】本発明の実施形態に係る統合処理部の処理フローを示すフローチャート図。
【符号の説明】
【0075】
1…アルコール検知装置(アルコール検知手段)、2…制御装置、15…発光器(発光部)、28…統合処理部、30…カメラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車等の車両の運転者の呼気に含まれるアルコール量が基準値以上であるか否かを判断することで当該運転者が飲酒状態であるか否かを判定するアルコール検知システムであって、
呼気に含まれるアルコール量を検知するアルコール検知手段、
前記アルコール検知手段を用いて呼気を吹き込んでいる状態の運転者の顔と当該アルコール検知手段とを撮像する撮像手段、
前記アルコール検知手段により検知されたアルコール量と、前記撮像手段により撮像された前記運転者の顔画像とを対応付けるべく、前記アルコール検知手段及び撮像手段との間で送受信される情報を制御する制御装置、及び、
前記アルコール量を検知したアルコール検知手段と、前記撮像手段によって前記顔とともに撮像されたアルコール検知手段との同一性を判定する同一性判定手段を具備することを特徴とするアルコール検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載のアルコール検知システムにおいて、
前記同一性判定手段は、前記制御装置において生成されるとともに当該制御装置から前記アルコール検知手段に送信される送信信号と、前記アルコール検知手段から前記撮像手段を介して送信され、前記制御装置により受信された信号との一致・不一致を判定する送受信信号判定部を備えているアルコール検知システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のアルコール検知システムにおいて、
前記同一性判定手段は、前記アルコール検知手段に設けられ、前記制御装置において生成されるとともに当該制御装置から送信される送信信号に従って発光パルスを出射する発光部と、前記制御装置に設けられ、該制御装置が生成した前記送信信号と、前記発光パルスとして前記撮像手段を介して当該制御装置により受信された信号との一致・不一致を判定する送受信信号判定部とを備えているアルコール検知システム。
【請求項4】
請求項3に記載のアルコール検知システムにおいて、
前記には、符号化及び復号化の合図となるスタートビットが付与され、該送信信号は、さらに所定の符号化処理に基づき符号化されて前記アルコール検知手段に送信される一方、発光パルスとして前記撮像手段を介して当該制御装置により受信され、該制御装置において元の信号に復号化されるアルコール検知システム。
【請求項5】
請求項4に記載のアルコール検知システムにおいて、
前記所定の符号化処理は、マンチェスタ符号化処理であるアルコール検知システム。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載のアルコール検知システムにおいて、
前記復号化は、前記撮像手段を介して前記制御装置により受信された信号から所定のタイミングで読み取られる読み取り信号より多数決判定によって生成された受信信号に基づいて行われるアルコール検知システム。
【請求項7】
請求項3〜請求項6のいずれかに記載のアルコール検知システムにおいて、
前記アルコール検知手段には、前記発光部の当該アルコール検知手段における位置を特定するためのマークが設けられ、
前記マークの位置に基づいて前記発光部が検出されることを条件として、前記同一性判定手段によって、前記アルコール量を検知したアルコール検知手段と、前記撮像手段によって、前記顔とともに撮像されたアルコール検知手段との同一性を判定するようにしたアルコール検知システム。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載のアルコール検知システムにおいて、
前記制御装置には、前記アルコール検知手段により検知されたアルコール量と、前記撮像手段により撮像された顔画像とを互いに対応付けて記憶する記憶部が設けられているアルコール検知システム。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載のアルコール検知システムにおいて、
前記制御装置は、前記撮像手段により撮像された画像中に人物の顔が含まれているかを判定する顔判定機能を備え、
前記画像中に人物の顔が含まれていることを条件として、前記同一性判定手段によって、前記アルコール量を検知したアルコール検知手段と、前記撮像手段によって、前記顔とともに撮像されたアルコール検知手段との同一性を判定するようにしたアルコール検知システム。
【請求項10】
請求項2〜請求項9のいずれかに記載のアルコール検知システムにおいて、
前記制御装置において生成された送信信号は、当該制御装置から暗号化されて前記アルコール検知手段に送信されるとともに、該暗号化された送信信号は、当該アルコール検知手段において元の信号に復元されるようにしたアルコール検知システム。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれかに記載のアルコール検知システムにおいて、
前記アルコール検知手段により検知されたアルコール量は、暗号化された暗号化信号として当該アルコール検知手段から前記制御装置へ送信されるようにしたアルコール検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−50444(P2009−50444A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219660(P2007−219660)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】