説明

アルデヒドの製造方法

【課題】オレフィンのヒドロホルミル化反応の監視及び制御方法に関し、アルデヒドの生産量、ノルマル/イソの生成比率などの監視及び制御を容易とする方法を提供する。
【解決手段】ヒドロホルミル化反応の際に支配的であるインプットパラメータをヒドロホルミル化反応の目標パラメータにリンクすることによってオレフィンをヒドロホルミル化する方法において、リンクを少なくとも1つの人工のニューロンネットワークによって行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視しそして制御するために人工のニューロンネットワーク(neuronal network)を用いてオレフィンをヒドロホルミル化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロホルミル化とはオレフィンを水素および一酸化炭素と、遷移金属で触媒して反応させ、炭素原子を使用するオレフィンよりも多く含有するアルデヒドおよびアルコールをもたらすことを意味する。このヒドロホルミル化は経済的にも工業的にも非常に重要である。即ち、現在では世界中で6百万トン/年より多い生成物がヒドロホルミル化法によって生産されている。この場合に最初に得られるアルデヒドはそのまま使用されるかまたは例えばアルコール、カルボン酸、エステルまたはアミンを製造するための価値ある中間体である。
【0003】
ヒドロホルミル化はヒドリド金属カルボニル、好ましくは周期律表の第VIII副族の金属のそれによって触媒作用される。古典的な触媒金属のコバルトの他にロジウムをベースとする触媒がこの数年間、触媒として益々使用されてきている。コバルトと反対にロジウムは反応を低圧で実施することを許容する。更に末端に二重結合を持つオレフィンを使用する場合に、特に有利な直鎖状n−アルデヒドが生成されそして二次的な程度でのみイソアルデヒドが生じる。更に、ロジウム触媒の存在下では使用されるオレフィンから飽和炭化水素への水素化もコバルト触媒を使用する場合よりも著しく少ない。
【0004】
オレフィン性不飽和化合物のヒドロホルミル化は、リガンドとして有機第三ホスフィンまたは−ホスフィットを有するロジウムカルボニル錯塩の触媒作用のもとで実施される。一つの変法では、反応を均一有機相において、即ち使用されるオレフィン、触媒および反応生成物を一緒に溶液状態で存在させて実施される。反応生成物は混合物から一般に蒸留によって、稀には抽出の様な別の方法によって分離される。均一相で実施されるヒドロホルミル化法は米国特許第4,247,486号明細書に従うガス循環法の形でまたは米国特許第4,148,830号明細書に記載される様な液体循環法の形で実施される。
【0005】
別の変法では、ロジウムカルボニル錯塩と水溶性有機ホスフィン類を含む水性触媒相が存在することに特徴がある。この実施態様は例えばドイツ特許出願第2,627,354号明細書(B)から公知である。それの特別な長所は、例えば相分離によって有機反応生成物と水性触媒相とを容易に分離することである。この分離は穏やかな条件のもと且つ熱的方法段階なしで行えそして生成されるアルデヒドの後続の反応によって生じ得る損失を回避する。更に、非常に高い収率が達成され、そして分岐していない末端オレフィン結合を持つオレフィンを使用する場合には全く分岐の無いアルデヒドが得られる。水性有機相および水性触媒相が存在するために、このヒドロホルミル化法は不均一法または二相法とも記載される。この方法の確認された実施態様は例えばヨーロッパ特許第0,103,810号明細書(B1)に記載されている。
【0006】
均一相で実施されるヒドロホルミル化法もルールヘミー−ローン・プウレク法(Ruhrchemie/Rhone-Poulenc-Verfahren)としても知られている不均一ヒドロホルミル化法も、工業用途において完成されており、且つ文献、例えばB.Cornils/W.A.HerrmannのC.D.Frohning, C.W.Kohlpaintnerの“Applied Homogeneous Catalysis with Organometallic Compounds”、第1巻、第1版、第29-104頁、 VCH Weinheim社、( 1996)に詳細に説明されている。
【0007】
上述の変法に従う工業的に実施される方法は多年にわたって改良され続けられており、それ故に高度の成熟度を有している。このことは良好な材料およびエネルギー利用性並びに高度な運転安全性で知ることができる。それ故、プロピレンのヒドロホルミル化のためには、使用されるプロピレンを基準として85%以上の領域の転化率が報告されており、同時に90/10のn−ブタナル:イソブタナル−比が達成されることが報告されている。
【0008】
図1はヒドロホルミル化法の概略的原理図を示している。冷却されそして攪拌される反応器(1)にオレフィン(2)および合成ガス(3)、水と一酸化炭素との混合物が供給されている。別の供給ライン(4)は、必要とされる場合に更に触媒を供給するために利用される。ヒドロホルミル化の際に放出される熱は適当な冷却媒体(5aおよび5b)によって冷やされる。不活性物質の蓄積を制限するために、反応器(1)から排ガス流(6)を取り出す。未反応原料物質、触媒および反応生成物は反応器(1)から搬出されそして第一の後続段階(7)で分離され、そこから排出された触媒(8a)が取り出されそして反応器(1)に再循環される。必要な場合には、触媒の一部(8b)は放出されそして後処理および/または再活性化処理段階に導かれる。別の後続段階(9)において、触媒分離後に得られる反応混合物から未反応オレフィンおよび合成ガス並びにオレフィンの水素化によって生じるアルカンが分離されそして反応器に残留ガス(10)として再び戻され、その際に部分流(11)は反応系中の不活性物質の蓄積を制限するために、排ガスとして廃棄しなければならない。反応生成物(12)は後加工段階に供給される。
【0009】
この非常に簡略化された概略図からも、かゝるヒドロホルミル化法の調整および監視が取るに足らない課題ではないことが判る。多量の流量およびそれに関連する滞留時間およびプロセスの沢山の時点での温度、圧力および濃度を測定し且つ制御することが既に重要な必要事項であることが判る。ヒドロホルミル化触媒が運転時間に亙って一定の活性を有さず、避けられないエージング工程によってその効力が変化することがこれを更に困難にしている。制御系は、このプラントの生産水準を一定に維持するために、この変化に、例えばそれぞれの運転温度、原料の量または滞留時間を変えることによって対応しなければならない。ロジウム量またはリガンド濃度の連続的または不連続的な増加も、例えばB.Cornils, E.Wiebusの“ Chem.-Ing.-Techn. 1994、第66、196頁; E.Wiebus, B.Cornilsの“ Chemtech 1995、第25および33頁から公知の通り、プロセス制御系によって行うべき課題である。
【0010】
当業者はB. Cornils、J.Falbe (著者), “New Syntheses with Carbon Monoxide“, Springer出版社, ベルリン1980, 第1版からヒドロホルミル化反応を連続的に実施するための反応パラメータが自由に選択できないことを知っている。例としては以下の公知の一般的な関係を記載することができる:
(a) 高い水素分圧は反応速度にプラスに作用する。しかし同時にオレフィンからアルカンへの水素反応も増加させる。
(b) 高い一酸化炭素分圧は反応速度および生じるアルデヒドのn−/イソ−比にマイナスに作用しそしてリガンドの分解を促進させるが、ロジウムカルボニルヒドリドを安定化させる。
(c) 高い反応温度は反応速度にプラスに作用するが、触媒の安定性にマイナスに作用する。
(d) 高過剰量のリガンドは生じるアルデヒドのn−/イソ−比に有利に作用するが、反応速度にマイナスに作用する。
【0011】
これらの幾つかの例が既に、ヒドロホルミル化反応を安全に、工業的に且つ経済的に成功裏に実施するために沢山のパラメータを測定しそして制御すべきことを明らかにしている。この場合、これらのパラメータの内の一部は互いに依存しているかおよび/または互いに反対に影響している。 従ってヒドロホルミル化法を工業的に実施する場合には、所望の目標パラメータのための所望の値、例えばアルデヒド生産量またはn−アルデヒドとイソアルデヒドとの比を確実に調整できるように、沢山の方法パラメータを互いに調和させそして制御することが必要である。
【0012】
ヒドロホルミル化が既に久しく工業的規模で実施されているとは言え、オレフィン、一酸化炭素および水素の間での以下の反応が、温度、オレフィンや水素および一酸化炭素の分圧、触媒およびリガンドの濃度との関係で反応速度およびその程度を定量的に説明する一般的に使用可能な数学的モデルが、従来には公知になっていなかったことは驚くべきことである:
【0013】
【化1】

【0014】
n−アルデヒド イソ−アルデヒド
確かに文献、例えばS.S.Divekar, R,M.Deshpande, R.V.Chaudariの “Catal.Lett. 1993”、第21、191頁には反応速度平行の例が説明されているが、これは理想条件のもとでセットされており、現実の工業的反応操作の要求には適合していない。
【0015】
化学反応だけでなく、気相、液体有機相および同様に存在する液状触媒水溶液の間での物質移動および三つの相全部の十分な混合への影響も考慮すべきである触媒水性相の存在下での不均一ヒドロホルミル化法をモデル化することは特に困難である(K.-D. Wiese等の“ Catalysis Today 79-80”、 (2003) 、第97-103頁)。
【0016】
従って従来には、オレフィンのヒドロホルミル化法の監視および制御は、長い運転時間に亙って要求される経験的データによって実施されてきた。
【0017】
経験的データに基づきそして最終的には決して満足できないこの状態を改善するアプローチ法が公知になっている。
【0018】
例えばヨーロッパ特許589,463号明細書(B1)は、オレフィン、水素および一酸化炭素(CO)の間でのヒドロホルミル化反応において生じるアルデヒドのn−/イソ−アルデヒド−比を反応系内のCO−分圧の制御によって制御する方法に関する。特許請求の範囲に記載の方法によれば、CO−分圧の目標値を、系に供給される合成ガス(COおよび水素の混合物)の流速あるいは系を離れる排ガスの流速を制御することによって反応系において維持している。この公知の方法は最初にCO−分圧の測定値を記録し、次いでCO分圧の意図する値と実際の値との差から得られる制御パラメータをもたらしそして最後にこの制御パラメータを流速へ影響させるために利用することを提案している。この場合、系に供給される合成ガスの流速も系を離れる排ガスの流速も再び影響される。この公知の方法によればインプットパラメータ、即ちCO−分圧だけがアウトプットパラメータ、即ち生じるアルデヒドのn−/イソ−比と関係している。この場合、維持すべきCO−分圧のレベルはユーザーによって独断で規定される。別の方法パラメータおよび目標パラメータは考慮されていない。
【0019】
スエーデン特許第1,527,234号明細書の場合には、プロピレンヒドロホルミル化における合成ガスおよびプロピレンの使用量の制御を、必要量の合成ガスを低く維持する目的で行っている。供給ガスおよび排ガスのその都度の容量が互いにリンクする制御系が説明されている。別の方法パラメータおよび目標パラメータは考慮されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従って、本発明の課題は、考慮するべき方法パラメータ(インプットパラメータとも言う)をヒドロホルミル化法の目標パラメ―タ(アウトプットパラメータとも言う)と定量的にリンクさせて、目標パラメータの所定の値が関連する方法パラメータをセットすることによって達成されるヒドロホルミル化法を提供することである。これによってヒドロホルミル化法を監視しそして制御することができる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この課題は、ヒドロホルミル化反応の際に支配的であるインプットパラメータをヒドロホルミル化反応の目標パラメータにリンクすることによってオレフィンをヒドロホルミル化する方法において、このリンクを少なくとも1つの人工のニューロンネットワーク(神経回路網:neuronal network)によって行うことを特徴とする、上記方法によって解決される。
【0022】
ヒドロホルミル化反応を監視および制御する改善された慣用のアプローチは 単一の決定的なパラメータかまたはいずれの場合にもできるだけ僅かなかゝる決定的なパラメータを測定および制御することに基づいているのに、本発明に従って少なくとも1つの人工のニューロネットワーク(以下、KNNと略すこともある)を用いることが全く異なる広範な方法を可能とする。
【0023】
KNNの構成および機能が、インプットパラメータとしての沢山の方法パラメータを処理することおよびそれぞれのパラメータを方法の過程および結果への重要な影響を定量的に表すモデルがそれから生じることを可能とする。インプットパラメータとしては、ヒドロホルミル化法の予めの過程で既に得られたデータを使用することが可能である。この方法ではKNNは調整されおよび/または後調整される。
【0024】
しかしながらKNNは、進行するヒドロホルミル化法からのデータをKNNに供給する様に使用するのが有利である。その際にKNNは時間の経過とともに連続的に後調整されそして内部で作成されるモデルの品質は進行するヒドロホルミル化法の環境に自動的に適合されそして改善される。従ってKNNの能力は進行するヒドロホルミル化法の間に自主学習するために利用される。
【0025】
この方法の別の長所は、ヒドロホルミル化反応自体に介入することが必要なく、KNNがヒドロホルミル化法の監視および制御のために予めに測定されたデータを利用するだけであることにある。
【0026】
本発明の本質的な構成要件は、KNNがインプットデータに重要さを付けることにある。その際にこの重要さの絶対値および符号は目標パラメータの値のためのインプットパラメータの意味に相応している。
【0027】
更にKNNの特殊性は、インプットパラメータを目標パラメータにリンクするために必要なアルゴリズムが公知であるべきでなく、KNNが上記のデータ自体から重要さを導き出すことができることでもある。従ってKNNは、既に存在するデータまたは進行するプロセルの間に測定されそしてKNNに供給されるデータに基づいて調整も、後調整もまたは連続的後調整もできる。従ってKNNは、インプットパラメータまたは方法パラメータとアウトプットパラメータまたはヒドロホルミル化法の目標データとの間の複雑な関係を、該関係を定量的に表現するアルゴリズムに転換する能力を有する。一度得られたアルゴリズムは、インプットパラメータのための新しいデータセットから目標パラメータを予想することを可能とする。
【0028】
ヒドロホルミル化反応を実施する場合、当業者には、インプットパラメータまたは反応パラメータと目標パラメータ、例えばオレフィン転化率、生じるアルデヒドのn−/イソ−比、アルカンおよび高沸点成分の生成または触媒の不活性化との間の原理的関係を確かに原則として知らている。しかしKNNの本発明に従う利用することで初めて、個々の方法パラメータ相互の間の関係およびそれら相互の影響を測定しそして定量化することができる。従ってヒドロホルミル化反応の複雑な関係が初めて全体的に測定されそして数学的モデルによって定量的に表現できる。
【0029】
KNNは市販されており、自由に入手できる沢山の入力データにリンクでき、その結果適当な多数のインプットパラメータを選択することができる。このインプットパラメータは原則として自由に選択できるが、方法の結果にとって、また目標パラメータにとっての重要性が知られているかまたは重要性を意図的に実験できる様なインプットパラメータだけを選択するのが有利である。
【0030】
図1に従うヒドロホルミル化法のためには例えば以下のインプットパラメータおよび目標パラメータまたは生産量を決めることができる。
【0031】
インプットパラメータまたは方法パラメータの例を以下に示す:オレフィン(2)の導入量、合成ガス(3)の導入量、反応器(1)中の温度、反応器(1)の触媒濃度、反応器(1)中のリガンドの濃度、反応器(1)中のオレフィン分圧、反応器(1)中の水素分圧、反応器(1)中の一酸化炭素分圧、反応器(1)から放出される排ガス(6)の容積、反応器(1)から取り出される粗生成物(7)の量、循環触媒(8)の容積、循環触媒(8)の温度、ガス分離器(9)から排出される排ガス(11)の容積、ガス分離器(9)から反応器(1)中に戻されるリサイクルガス(10)の容積。
【0032】
アウトプットパラメータまたは生産量の例を以下に示す:粗アルデヒドの質量、n−/イソ−アルデヒド−比、生じるアルカンの質量、生じる高沸点成分の質量、オレフィン転化率。
【0033】
必要なデータはあらゆる適当な出所、例えば存在するデーターシートから取ることができる。しかしながらインプットパラメータは進行するヒドロホルミル化法の間のプロセス制御システムまたは幾つかの他のプロセスデータのロギング・システムから取りそして適当な方式でKNNに、例えばデーター源にオンライン接続によって供給する。多量のデータの場合にはデーターバンクにデータを一時的に保存するのが有利である。
【0034】
KNNは適当とみなした時点に選択されたデータを提供し、そして作成されたモデルがインプットパラメータと目標パラメータとの間の関係を、必要とされるかまたは意図する精度で定量的に表現されるまで調整する。
【0035】
KNNによって測定されるアルゴリズムは、次いで慣用のモデルを用いて最適化計算を実施する基礎として役立て、その際にこの慣用のモデルのための方法パラメータは、ヒドロホルミル化反応の際に支配的であるKNN用インプットパラメータによって決められる範囲に限定される。市販のKNNは、既にKNNによって生じたアルゴリズムを用いて最適化計算を実施するための統合された機能をしばしば有している。同様に、KNNによって生じたアルゴリズムのために通例の市販モデル、例えば表計算プログラムを委ねそしてこのプログラム中で最適化計算を実施する。同様に、KNNによって作成されたアルゴリズムをベースとして得られるデータを方法パラメータの最適化のためにプラントオペレータによって手作業的に処理してもよい。
【0036】
この様に最適化された方法パラメータを次いでヒドロホルミル化の工業的運転において使用する。
【実施例1】
【0037】
実施例1は、複数の方法パラメータまたはインプットパラメータとの関係で目標パラメータを定量的に表現するアルゴリズムを得る目的で、プロピレンヒドロホルミル化法からのデータに対してKNNを用いることを実証している。
【0038】
不均一2相法に従いプロピレンの連続ヒドロホルミル化を実施する。水に溶解するロジウム触媒のためのリガンドとしてトリス−(フェニル−m−スルホン酸ナトリウム)−ホスフィン(TPPTS)を役立てる。触媒水溶液中のロジウムの濃度は255ppmであり、リガンド/ロジウム−比は87/1である。15日間にわたって平均して以下の結果が得られる:
(1) 反応器温度 [°C] 129.2
(2) 循環触媒の温度 [°C] 129.9
(3) 新鮮ガス+循環ガスの反応器入口温度 [°C] 99.7
(4) 供給合成ガス (H2 + CO) [Nm3 /m3(触媒)・時] 96
(5) 供給プロピレン [kg /m3 (触媒)・時] 101.7
(6) 反応器中プロピレン分圧 [MPa] 2.0
(7) 粗アルデヒドの生産量 [kg /m3 (触媒)・時] 144.3

[(3)において、新鮮ガスはヒドロホルミル化反応器に供給される合成ガスとプロピレンとの混合物であり、他方、循環ガスは方法から分離されそして反応器にもどされる、合成ガス、プロピレンおよびアルカンの混合物を意味する;図1)では(10) と番号がふられている; (4)において Nm3 は標準平方メータである。即ち、標準温度 Tn= 273.15 K および標準圧 Pn= 101 325 Paにおける平方メータである。]
30分毎に(1)〜(4)並びに(6)および(7)の位置で全部のデータを測定し、722の全てのデータをこの様にして集める。運転の中断または運転の不調もこのデータセットに含まれ、プロセスの代表的過程を記録する。722のデータセットをKNN(Neuromodel 2.0; Atlan-tec社、 D 47877 Willich-Munchheide) に供給し、その際に (1) 〜 (4) 並びに(6)の位置でインプットパラメータとして、 (7) の位置でインプットパラメータまたは目標パラメータとして規定される。722のデータセットによるKNNの調整は、インプットパラメータから目標パラメータを該目標パラメータの値範囲から1.1%の平均誤差で計算することを可能とするアルゴリズムに供給する。図2は目標パラメータについての測定値と計算値との間で、特にプロセスの運転中断を含めて一致していることを実証している。
【実施例2】
【0039】
実施例2は、予めの計算に従って調和された方法パラメータが目標パラメータにプラスに作用することを示している。
【0040】
製造された粗アルデヒドの量についての最適化計算を、実施例1で得られたアルゴリズムを用いて市販のソフトウエアーによって実施する。この目的のために、Atlan-tec社(D-47877 Willich-Munchheide)の市販のKNN(Neuromodel 2.0)に、集積した機能“Genetischer Optimierer(R)を使用する。その際にインプットパラメータによって測定された範囲に方法パラメータを限定する。触媒水溶液中のロジウム含有量およびTPPTS-リガンド/ロジウム−モル比は変化させない。以下の結果が得られる:
計算値 最良値
(1) 反応器温度 [°C] 133.2 133.0
(2) 循環触媒温度 [°C] 130.4 125.4
(3) 新鮮ガス+循環ガスの反応器入口温度 [°C] 97.1 110.2
(4) 供給合成ガス (H2 + CO) [Nm3 /m3(触媒)・時] 134 108
(5) 供給プロピレン [kg /m3 (触媒)・時] 126.8 109.9
(6) 反応器中プロピレン分圧 [MPa] 2.03 2.02
(7) 粗アルデヒドの生産量 [kg /m3 (触媒)・時] 206.9 172.2
最良値は、実施例1においてと同様に検討された運転期間にわたってKNNを使用して得られた粗アルデヒドの最高生産量である。予め計算された運転状態の調整が次の結果をもたらした:
計算値 最良値
(1) 反応器温度 [°C] 133.2 133.0
(2) 循環触媒温度 [°C] 130.4 129.4
(3) 新鮮ガス+循環ガスの反応器入口温度 [°C] 97.1 98.3
(4) 供給合成ガス (H2 + CO) [Nm3 /m3(触媒)・時] 134 129
(5) 供給プロピレン [kg /m3 (触媒)・時] 126.8 122
(6) 反応器中プロピレン分圧 [MPa] 2.0 2.0
(7) 粗アルデヒドの生産量 [kg /m3 (触媒)・時] 206.9 196
KNNによって作成されたアルゴリズムによって算出された値をヒドロホルミル化法で得られる値と比較すると、複数の予め算出した方法パラメータ(インプットパラメータ)を互いに注意深く釣り合わせることが目標パラメータ“粗アルデヒドの生産量”に持続的に影響を及ぼし得ることが判る。例えば反応パラメータ(1)〜(4) および(6)を釣り合わせることが、粗アルデヒド生産量を144.3kg/m(触媒)・時 から196kg/m(触媒)・時に著しく増加させる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1はヒドロホルミル化法の概略的原理図を示している。
【図2】図2は、目標パラメータについての測定値と計算値を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロホルミル化反応の際に支配的であるインプットパラメータをヒドロホルミル化反応の目標パラメータにリンクすることによってオレフィンをヒドロホルミル化する方法において、リンクを少なくとも1つの人工のニューロンネットワーク(神経回路網)によって行うことを特徴とする、上記方法。
【請求項2】
人工のニューロンネットワークをヒドロホルミル化反応の際に支配的であるインプットパラメータによってヒドロホルミル化反応の後に調整しおよび/または後調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
人工のニューロンネットワークをヒドロホルミル化反応の際に支配的であるインプットパラメータによってヒドロホルミル化反応の間に連続的に後調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
人工のニューロンネットワークの連続的な後調整を、プロセスデータのロギング・システムから得られるヒドロホルミル化反応の際に支配的であるインプットパラメータを用いて行う、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
人工のニューロンネットワークがターゲットのパラメータの値のためにその重要性に従ってインプットパラメータを操作する、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
インプットパラメータと目標パラメータとの間で人工のニューロンネットワークによって測定されるリンクを、インプットパラメータによって測定される範囲をベースとする目標パラメータの最適化を行う慣用モデルと組み合わせる、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
目標パラメータがアルデヒドの生産量である人工のニューロンネットワークを使用する、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
目標パラメータがn−アルデヒドとイソアルデヒドとの比である人工のニューロンネットワークを使用する、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
目標パラメータが生じるアルカンの量である人工のニューロンネットワークを使用する、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
目標パラメータが生じる高沸点成分の量である人工のニューロンネットワークを使用する、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
目標パラメータがオレフィン転化率である人工のニューロンネットワークを使用する、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
反応温度、触媒循環温度、新鮮ガスと循環ガスとの混合物の温度、供給合成ガスの温度および反応器中のオレフィン分圧を、ヒドロホルミル化反応の際に支配的であるインプットパラメータとして人工のニューロンネットワークのために使用する、請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
オレフィンとしてプロピレン、ブテン−1、ブテン−2、またはブテン−1とブテン−2とを含有する混合物を用いる、請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
ヒドロホルミル化を均一有機反応混合物中で実施するかまたは触媒水溶液を不均一な二相法において用いて行う、請求項1〜13のいずれか一つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−143725(P2006−143725A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332902(P2005−332902)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(398010667)セラニーズ・ケミカルズ・ヨーロッパ・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング (11)
【Fターム(参考)】