説明

アルミナ−イットリア粒子およびその製造方法

溶融多結晶質研磨粒子、ならびにその製造および使用方法。たとえば、本発明による溶融多結晶質研磨粒子は、研磨物品における研磨粒子として有用である。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
当業者に公知の各種の研磨粒子(たとえば、ダイヤモンド粒子、立方晶窒化ケイ素粒子、溶融研磨粒子、および焼結したセラミック研磨粒子(ゾルゲル法による研磨粒子を含む))が存在する。いくつかの研磨用途においては、研磨粒子が分散した形態で使用されるのに対し、他の用途では、粒子が研磨製品(たとえば、被覆研磨製品、結合研磨製品、不織研磨製品、および研磨ブラシ)の中に組み込まれる。特定の研磨用途のための研磨粒子を選択する際に用いられる基準としては、研磨材の可使時間、切削速度、基材表面仕上げ、研削効率、および製造コストなどが挙げられる。
【0002】
1900年頃から1980年代中頃まで、被覆研磨製品および結合研磨製品を使用する研磨用途のために広く使用された研磨粒子は、典型的には溶融研磨粒子であった。2種の一般的なタイプの溶融研磨粒子が存在する。(1)溶融アルファアルミナ研磨粒子(たとえば、特許文献1(コールター(Coulter)、特許文献2(トーン(Tone))、特許文献3(サウンダース(Saunders)ら)、特許文献4(アレン(Allen))および特許文献5(バウマン(Baumann)ら)を参照されたい)、ならびに(2)溶融(時には「共溶融」とも呼ばれる)アルミナ−ジルコニア研磨粒子(たとえば、特許文献6(ラウズ(Rowse)ら)、特許文献7(ペット(Pett)ら)、特許文献8(キナン(Quinan)ら)、特許文献9(ワトソン(Watson))、特許文献10(プーン(Poon)ら)、および特許文献11(ギブソン(Gibson)ら)を参照されたい)(さらには、ある種の溶融オキシナイトライド研磨粒子を報告している、たとえば、特許文献12(デュボッツ(Dubots)ら)、および特許文献13(デュボッツ(Dubots)ら)も参照されたい)。溶融アルミナ研磨粒子の典型的な製法では、アルミニウム鉱石またはボーキサイトのようなアルミナ源、さらにはその他の偶然に含まれる不純物および所望の添加物を炉に装入し、原料をその融点以上に加熱し、その溶融物を冷却して凝固した塊状物とし、その凝固した塊状物を破砕して粒子とし、次いでその粒子を篩い分けて分級して、所望の粒度分布の研磨材を得る。溶融アルミナ−ジルコニア研磨粒子も典型的には同様の方法で製造されるが、ただし、炉には、アルミナ源、ジルコニア源、ならびに場合によっては安定化酸化物たとえばイットリア、セリア、マグネシア、希土類酸化物およびチタニアを装入し、その溶融物を、溶融アルミナ研磨粒子を製造するために使用される溶融物の場合よりも急速に冷却する。溶融アルミナ−ジルコニア研磨粒子では、アルミナ源の量は典型的には約15〜85重量パーセント、ジルコニアの量は85〜15重量パーセントである。溶融アルミナおよび溶融アルミナ研磨粒子の製造方法では典型的には、冷却工程より前に溶融物から不純物を除去することが含まれる。残存の不純物(たとえば、シリカ、チタニア、および酸化鉄)は通常、結晶および共融晶の粒界に濃縮される。結晶および/または結晶粒界における不純物は、結晶質および/またはガラス質状態で存在するか、および/またはたとえばアルミナおよび/またはジルコニアの結晶構造に溶解した状態で存在しうる。アーク溶融法により製造される溶融アルミナ−ジルコニアセラミックス中に普通に存在する不純物は炭素である。理論に捕らわれることは欲しないが、アルミナ−ジルコニアセラミックスを酸化性雰囲気下で高い温度(たとえば、一般的に約350℃より高温)に加熱した場合には、炭素がセラミックスに悪影響をおよぼすと考えられる。
【0003】
一般的に、冷却速度が、共晶層構造を含む共融晶のモルホロジー(たとえばサイズ)や共晶層の間の間隔(すなわち、層の厚み)に影響を与えることは知られている。さらに、一般的には、冷却速度が高いほど、典型的には共融晶が小さく、また共晶層が薄くなることが知られている。さらに、一般的には、冷却速度が、得られるセラミックの相の構成にも影響を与えることが知られている。たとえば、冷却速度が高いほど、典型的にはより正方晶系(立方晶系)のジルコニアが生成しやすい。一般的に、安定剤(たとえば、イットリア、マグネシアなど)が存在しない場合、より小さな正方晶系ジルコニア結晶の方が、単斜晶系相への変態に対してはより安定である。さらに、溶融物からの熱の除去に方向性があるような場合(たとえば、ブックモールドの場合)には、共晶構造を含む格子は熱が除去される方向に向けて非対称的に成長する可能性がある(すなわち、格子の成長に配向がある、あるいは延伸される)。典型的には、格子サイズが小さい方が望ましい。
【0004】
溶融研磨粒子の領域における最近の開発は、以下のような特許に報告されている。たとえば、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19(公開日、2001年8月9日)、ならびに特許文献20、特許文献21、特許文献22、特許文献23(公開日、2002年1月31日)。
【0005】
溶融アルファアルミナ研磨粒子および溶融アルミナ−ジルコニア研磨粒子は、依然として研磨用途(被覆および結合研磨製品を使用するものを含む)において広く使用されてはいるが、およそ1980年代中頃以降では、多くの研磨用途に主として使用される研磨粒子は、ゾルゲル法によるアルファアルミナ粒子である(たとえば、特許文献24(ライトハイザー(Leitheiser)ら)、特許文献25(ライトハイザー(Leitheiser)ら)、特許文献26(コットリンガー(Cottringer)ら)、特許文献27(シュワーベル(Schwabel))、特許文献28(モンロー(Monroe)ら)、特許文献29(ウッド(Wood)ら)、特許文献30(ペロウ(Pellow)ら)、特許文献31(ウッド(Wood))、特許文献32(ベルグ(Berg)ら)、特許文献33(ローベンホルスト(Rowenhorst)ら)、特許文献34(ラーミー(Larmie))、特許文献35(コンウェル(Conwell)ら)、特許文献36(ラーミー(Larmie))、特許文献37(ラーミー(Larmie))、および特許文献38(ガーグ(Garg)ら)、を参照されたい)。
【0006】
ゾルゲル法によるアルファアルミナ研磨粒子には、非常に微細なアルファアルミナ結晶子からなる微細構造を有していてもよく、付加的な二次相は存在する場合も存在しない場合もある。ゾルゲル法による研磨粒子の金属に対する研削性能は、たとえば、その研磨粒子を使用して製造した研磨製品の可使寿命によって測定されるが、多くの従来からの溶融アルミナ研磨粒子から製造した製品に比較して劇的に長くなった。
【0007】
当業者には各種の研磨製品(「研磨物品」と呼ばれることもある)が知られている。典型的には、研磨製品にはバインダーと、バインダーによって研磨製品の中に固定されている研磨粒子とが含まれている。研磨製品の例を挙げれば、被覆研磨製品、結合研磨製品、不織研磨製品、および研磨ブラシなどがある。
【0008】
結合研磨製品の例としては、研削ホイール、カットオフホイール、およびホーニングストーンなどがある。結合研磨製品を製造するために使用される主な結合システムのタイプとしては、レジノイド、ビトリファイド、および金属がある。レジノイド結合研磨材では、有機バインダーシステム(たとえば、フェノール系バインダーシステム)を使用して、研磨粒子を互いに結合させて、成形塊状物を形成させる(たとえば、特許文献39(ナラヤナン(Narayanan)ら)、特許文献40(ヘインズ(Haynes)ら)、特許文献41(ナラヤナン(Narayanan)ら)、および特許文献42(ナラヤナン(Narayanan)ら)を参照されたい)。また別な主なタイプにはビトリファイドホイールがあるが、これはガラスバインダーシステムを用いて研磨粒子を互いに結合させて、塊状物とする(たとえば、特許文献43(ルー(Rue))、特許文献44(ヘイ(Hay)ら)、特許文献45(マルコフ−マテニイ(Markhoff−Matheny)ら)、および特許文献46(チー(Qi)ら)を参照されたい)。それらのガラス結合は通常、900℃〜1300℃の間の温度で養生させる。現在では、ビトリファイドホイールでは、溶融アルミナとゾルゲル法による研磨粒子との両方が使用されている。金属結合研磨製品では通常、研磨粒子を結合させるために、焼結またはめっきした金属を使用する。
【特許文献1】米国特許第1,161,620号明細書
【特許文献2】米国特許第1,192,709号明細書
【特許文献3】米国特許第1,247,337号明細書
【特許文献4】米国特許第1,268,533号明細書
【特許文献5】米国特許第2,424,645号明細書
【特許文献6】米国特許第3,891,408号明細書
【特許文献7】米国特許第3,781,172号明細書
【特許文献8】米国特許第3,893,826号明細書
【特許文献9】米国特許第4,126,429号明細書
【特許文献10】米国特許第4,457,767号明細書
【特許文献11】米国特許第5,143,522号明細書
【特許文献12】米国特許第5,023,212号明細書
【特許文献13】米国特許第5,336,280号明細書
【特許文献14】国際公開第01/56945号パンフレット
【特許文献15】国際公開第01/56946号パンフレット
【特許文献16】国際公開第01/56947号パンフレット
【特許文献17】国際公開第01/56948号パンフレット
【特許文献18】国際公開第01/56949号パンフレット
【特許文献19】国際公開第01/56950号パンフレット
【特許文献20】国際公開第02/08143号パンフレット
【特許文献21】国際公開第02/08144号パンフレット
【特許文献22】国際公開第02/08145号パンフレット
【特許文献23】国際公開第02/08146号パンフレット
【特許文献24】米国特許第4,314,827号明細書
【特許文献25】米国特許第4,518,397号明細書
【特許文献26】米国特許第4,623,364号明細書
【特許文献27】米国特許第4,744,802号明細書
【特許文献28】米国特許第4,770,671号明細書
【特許文献29】米国特許第4,881,951号明細書
【特許文献30】米国特許第4,960,441号明細書
【特許文献31】米国特許第5,139,978号明細書
【特許文献32】米国特許第5,201,916号明細書
【特許文献33】米国特許第5,366,523号明細書
【特許文献34】米国特許第5,429,647号明細書
【特許文献35】米国特許第5,547,479号明細書
【特許文献36】米国特許第5,498,269号明細書
【特許文献37】米国特許第5,551,963号明細書
【特許文献38】米国特許第5,725,162号明細書
【特許文献39】米国特許第4,741,743号明細書
【特許文献40】米国特許第4,800,685号明細書
【特許文献41】米国特許第5,038,453号明細書
【特許文献42】米国特許第5,110,332号明細書
【特許文献43】米国特許第4,543,107号明細書
【特許文献44】米国特許第4,898,587号明細書
【特許文献45】米国特許第4,997,461号明細書
【特許文献46】米国特許第5,863,308号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
研磨材業界では、新規な研磨粒子および研磨物品、さらにはそれらを製造するための方法が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一つの態様においては、本発明は、AlおよびYを含む溶融多結晶質物質(たとえば、粒子)を提供するが、ここで、Alの少なくとも一部は、転移(たとえば、ガンマ)Alであり、AlおよびYの少なくとも一部は、複合Al・Yとして存在している。いくつかの実施形態においては、複合Al・Yは、(i)ガーネット結晶構造、(ii)ペロブスカイト結晶構造、または(iii)樹枝状結晶を含む微細構造(たとえば、平均サイズが2マイクロメートル未満、いくつかの実施形態においては、1〜2マイクロメートルの範囲の樹枝状結晶)の内の少なくとも一つを示す。いくつかの実施形態においては、その溶融多結晶質物質には、それぞれの溶融多結晶質物質の全重量を基準にして、少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、さらには少なくとも90重量パーセントのAlを含む。いくつかの実施形態においては、その溶融多結晶質物質には、溶融多結晶質物質の全重量を基準にして、Alを35〜90(いくつかの実施形態においては、40〜90、45〜90、50〜90、55〜90、60〜90、さらには65〜90)重量パーセントの範囲で、そしてYを65〜15(いくつかの実施形態においては、60〜15、55〜15、50〜10、45〜10、40〜10、さらには35〜10)重量パーセントの範囲で含む。
【0011】
一つの態様においては、本発明は、本発明による溶融多結晶質物質を製造するための方法を提供するが、その方法に含まれるのは、
AlおよびYを含む溶融物(たとえば、溶融物を火炎成形する)を提供する工程、および
前記溶融物冷却を冷却して、AlおよびYを含む溶融多結晶質物質を直接提供する工程であって、Alの少なくとも一部は転移(たとえば、ガンマ)Alであり、AlおよびYの少なくとも一部は、複合Al・Yとして存在している工程である。いくつかの実施形態においては、その複合Al・Yは、(i)ガーネット結晶構造、(ii)ペロブスカイト結晶構造、または(iii)樹枝状結晶を含む微細構造の内の少なくとも一つを示す。いくつかの実施形態においては、その物質を破砕して粒子を提供する。いくつかの実施形態においては、溶融物を冷却する工程の少なくとも一部に、流体(たとえば、水)の中に溶融物を浸漬させることが含まれる。
【0012】
一つの態様においては、本発明は、本発明による溶融多結晶質粒子を製造するための方法を提供するが、その方法に含まれるのは、
AlおよびYを含む溶融物(たとえば、溶融物を火炎成形する)を提供する工程、
前記溶融物を前駆体粒子に成形する工程、および
前駆体粒子を冷却して、直接AlおよびYを含む溶融多結晶質粒子を提供する工程であって、Alの少なくとも一部は、転移(たとえば、ガンマ)Alであり、AlおよびYの少なくとも一部は、複合Al・Yとして存在している工程である。いくつかの実施形態においては、その複合Al・Yは、(i)ガーネット結晶構造、(ii)ペロブスカイト結晶構造、または(iii)樹枝状結晶を含む微細構造の内の少なくとも一つを示す。いくつかの実施形態においては、溶融物を冷却する工程の少なくとも一部に、流体(たとえば、水)の中に溶融物を浸漬させることが含まれる。
【0013】
一つの態様においては、本発明は、(a)1〜10マイクロメートル(いくつかの実施形態においては、1〜9、1〜8、1〜7、1〜6、1〜5、さらには5〜10)マイクロメートルの範囲の平均結晶子径を有するアルファアルミナ、および(b)明瞭な結晶質相として存在する複合Y・金属酸化物を含む、溶融多結晶質物質(たとえば、粒子、いくつかの実施形態においては、研磨粒子)を提供する。いくつかの実施形態においては、その溶融多結晶質物質には、溶融多結晶質物質の全重量を基準にして、少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、さらには少なくとも90重量パーセントのAlを含む。いくつかの実施形態においては、その溶融多結晶質物質には、溶融多結晶質物質の全重量を基準にして、Alを35〜90(いくつかの実施形態においては、40〜90、45〜90、50〜90、55〜90、60〜90、さらには65〜90)重量パーセントの範囲で、そしてYを65〜10(いくつかの実施形態においては、60〜10、55〜10、50〜10、45〜10、40〜10、さらには35〜10)重量パーセントの範囲で含む。
【0014】
一つの態様においては、本発明は、(a)1〜10マイクロメートルの範囲の平均結晶子径を有するアルファアルミナ、および(b)明瞭な結晶質相として存在する複合Y・金属酸化物を含む溶融多結晶質物質(たとえば、粒子、いくつかの実施形態においては、研磨粒子)を製造する方法を提供するが、その方法に含まれるのは、
AlおよびYを含む溶融物を提供する工程、および、
前記溶融物を冷却して、溶融多結晶質物質を直接提供する工程である。
【0015】
一つの態様においては、本発明は、(a)1〜10マイクロメートルの範囲の平均結晶子径を有するアルファアルミナ、および(b)明瞭な結晶質相として存在する複合Y・金属酸化物を含む溶融多結晶質物質(たとえば、粒子、いくつかの実施形態においては、研磨粒子)を製造する方法を提供するが、その方法に含まれるのは、
AlおよびYを含む溶融多結晶質物質(たとえば、粒子)を加熱する工程であって、Alの少なくとも一部は、転移(たとえば、ガンマ)Alであり、AlおよびYの少なくとも一部は、複合Al・Yとして存在している工程である。いくつかの実施形態においては、その複合Al・Yは、(i)ガーネット結晶構造、(ii)ペロブスカイト結晶構造、または(iii)樹枝状結晶を含む微細構造の内の少なくとも一つを示す。いくつかの実施形態においては、AlおよびYOを含む溶融多結晶質物質を破砕した後に加熱する。いくつかの実施形態においては、AlおよびYを含む溶融多結晶質物質を加熱して、転移(たとえば、ガンマ)アルミナの少なくとも一部(加熱前の転移(たとえば、ガンマ)アルミナの全容積を基準にして、いくつかの実施形態においては、少なくとも50、60、75、90、96、99、またはさらには100容積パーセント)をアルファアルミナに転化させる。
【0016】
本明細書における定義を以下に述べる。
「複合金属酸化物」という用語は、2種またはそれ以上の異なる金属元素と酸素とを含む金属酸化物(たとえば、CeAl1118、DyAl12、MgAl、およびYAl12)を指す、
「複合Al・金属酸化物」という用語は、理論的酸化物基準で、Alと1種または複数のAl以外の金属元素を含む複合金属酸化物(たとえば、CeAl1118、DyAl12、MgAl、およびYAl12)を指す、
「複合Al・Y」という用語は、理論的酸化物基準で、AlとYとを含む複合金属酸化物(たとえば、YAl12)を指す、
「複合Al・REO」という用語は、理論的酸化物基準で、Alと希土類酸化物とを含む複合金属酸化物(たとえば、CeAl1118およびDyAl12)を指す、
「明瞭な結晶質相」とは、X線回折において、他の明瞭な結晶質相との固溶体として存在しているような相とは対照的なものとして検出される結晶質相である(たとえば、公知のことであるが、YまたはCeOのような酸化物は、結晶質ZrOとの固溶体として存在することができ、相安定化剤として機能するが、この様な状態でのYまたはCeOは明瞭な結晶質相ではない)、
「溶融(fused)」という用語は、溶融物から直接冷却された結晶質物質、および溶融物から直接冷却された結晶質物質を加熱処理することにより製造された結晶質物質(たとえば、溶融物から直接冷却された遷移アルミナを加熱処理することにより製造されたアルファアルミナ)を指す、
「希土類酸化物」という用語は、酸化セリウム(たとえば、CeO)、酸化ジスプロシウム(たとえば、Dy)、酸化エルビウム(たとえば、Er)、酸化ユウロピウム(たとえば、Eu)、酸化ガドリニウム(たとえば、Gd)、酸化ホルミウム(たとえば、Ho)、酸化ランタン(たとえば、La)、酸化ルテチウム(たとえば、Lu)、酸化ネオジム(たとえば、Nd)、酸化プラセオジム(たとえば、Pr11)、酸化サマリウム(たとえば、Sm)、酸化テルビウム(たとえば、Tb)、酸化トリウム(たとえば、Th)、酸化ツリウム(たとえば、Tm)、および酸化イッテリビウム(たとえば、Yb)、ならびにそれらの組み合わせを指す、
「REO]という用語は、希土類酸化物を指す。
【0017】
本発明による溶融多結晶質研磨粒子は、研磨物品の中に組み込むこともできるし、あるいは分散した形態で使用することもできる。研磨粒子は通常、所定の粒度分布に分級してから使用する。そのような分布では通常、粗粒子から微粒子まで、ある範囲の粒度を有している。研磨材業界においては、この範囲を「粗粒(coarse)」、「中粒(control)」および「微粉(fine)」画分と呼ぶこともある。研磨業界に受容された分級標準に従って分級された研磨粒子はそれぞれ、その粒度分布を、ある数値限度内の公称グレードとして規定される。そのような業界に受容された分級標準(すなわち、規定された公称グレード)としては、アメリカン・ナショナル・スタンダーズ・インスティチュート・インコーポレーテッド(American National Standards Institute、Inc.)(ANSI)標準、フェデレーション・オブ・ユーロピアン・プロデューサーズ・オブ・アブレーシブ・プロダクツ(Federation of European Producers of Abrasive Products)(FEPA)標準、および日本工業規格(JIS)標準として知られているものが挙げられる。
【0018】
1つの態様において、本発明は規定された公称グレードを有する複数の研磨粒子を提供するが、その複数の研磨粒子の少なくとも一部は、本発明による溶融多結晶質研磨粒子である。いくつかの実施形態においては、複数の研磨粒子の全重量を基準にして、複数の研磨粒子の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、またはさらには100重量パーセントが、本発明による溶融多結晶質研磨粒子である。
【0019】
本発明による方法のいくつかの実施形態では、その方法には、本発明による溶融多結晶質研磨粒子を分級して、規定された公称グレードを有する複数の粒子を与えることもさらに含む。いくつかの実施形態においては、溶融多結晶質研磨粒子を破砕するか、またはその他の方法で細かくした後に分級する。
【0020】
別な態様においては、本発明は、バインダーおよび複数の研磨粒子を含む研磨物品を提供する。その研磨粒子の少なくとも一部は、本発明による溶融多結晶質研磨粒子である。研磨製品を例示すれば、被覆研磨物品、結合研磨物品(たとえば、ホイール)、不織研磨物品、それに研磨ブラシなどが挙げられる。被覆研磨物品には典型的には、第1および第2の背中合わせの主表面を有するバッキングが含まれ、その第1の主表面の少なくとも一部の上に、バインダーと複数の研磨粒子が研磨層を形成している。
【0021】
いくつかの実施形態においては、研磨物品中の研磨粒子の全重量を基準にして、研磨物品の中の研磨粒子の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、またはさらには100重量パーセントが本発明による溶融多結晶質研磨粒子である。
【0022】
本発明はまた表面を研磨するための方法も提供するが、その方法に含まれるのは、
本発明による溶融多結晶質研磨粒子をワークピースの表面に接触させる工程、および
本発明による溶融多結晶質研磨粒子または接触させた表面の少なくとも一方を移動させて、本発明による溶融多結晶質研磨粒子の一部を用いて、その表面の少なくとも一部を研磨する工程、である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、溶融多結晶質研磨粒子ならびにその製造方法および使用方法を提供する。溶融多結晶質物質および溶融物を形成させるための原料物質には以下のものが含まれる。
【0024】
商業的な供給源も含めたAl(理論的酸化物基準)の供給源としては、ボーキサイト(天然産のボーキサイトおよび合成ボーキサイトの両方)、焼成ボーキサイト、水和アルミナ(たとえば、ベーマイトやギブザイト)、アルミニウム、バイヤー法アルミナ、アルミニウム鉱石、ガンマアルミナ、アルファアルミナ、アルミニウム塩、硝酸アルミニウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。Al限は、Alのみを与えるものであってもよい。それとは別に、Al源が、Alと、さらにはAl以外の1種または複数の金属酸化物(複合Al・金属酸化物(たとえば、DyAl12、YAl12、CeAl1118など)の材料またはそれらを含む)とが得られるものであってもよい。Al源が、たとえば微量のシリカ、酸化鉄、チタニア、および炭素をさらに含んでいてもよい。
【0025】
商業的供給源を含めた希土類酸化物の供給源としては、希土類酸化物粉体、希土類金属、希土類含有鉱石(たとえば、バストナサイトおよびモナザイト)、希土類塩、希土類硝酸塩、および希土類炭酸塩などが挙げられる。この希土類酸化物源は、希土類酸化物を含むか、あるいは希土類酸化物のみが得られるものであってもよい。それとは別に希土類酸化物源が、希土類酸化物と、さらには希土類酸化物以外の1種または複数の金属酸化物(複合希土類酸化物・他の金属酸化物(たとえば、DyAl12、CeAl1118、など)の材料またはそれらを含む)とを含むか、それらが得られるものであってもよい。
【0026】
商業的な供給源も含めたY(理論的酸化物基準)の供給源としては、酸化イットリウム粉体、イットリウム、イットリウム含有鉱石、およびイットリウム塩(たとえば、イットリウムの炭酸塩、硝酸塩、塩酸塩、水酸化物、およびそれらの組み合わせ)などが挙げられる。このY源は、Yを含むか、あるいはYのみが得られるものであってもよい。それとは別にY源は、Yと、さらにはY以外の1種または複数の金属酸化物(たとえば複合Y・金属酸化物(たとえば、YAl12)の材料またはそれらを含む)とを含むか、それらが得られるものであってもよい。
【0027】
さらに、その他の有用な金属酸化物としては、理論的酸化物基準で、BaO、CaO、Cr、CoO、Fe、GeO、HfO、LiO、MgO、MnO、NiO、NaO、Sc、SrO、TiO、ZnO、ZrO、およびそれらの組み合わせなどを挙げることができる。商業的な供給源も含めた供給源としては、酸化物そのもの、金属粉体、複合酸化物、鉱石、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、塩酸塩、水酸化物、などがある。
【0028】
商業的な供給源も含めたZrO(理論的酸化物基準)の供給源としては、酸化ジルコニウム粉体、ジルコンサンド、ジルコニウム、ジルコニウム含有鉱石、およびジルコニウム塩(たとえば、ジルコニウムの炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、塩酸塩、水酸化物、およびそれらの組み合わせ)などが挙げられる。それに加えて、またはその代わりに、ZrO源は、ZrOと、さらにハフニアのような他の金属酸化物とを含むか、それらが得られるものであってもよい。商業的な供給源も含めたHfO(理論的酸化物基準)の供給源としては、酸化ハフニウム粉体、ハフニウム、ハフニウム含有鉱石、およびハフニウム塩などが挙げられる。それに加えて、またはその代わりに、HfO源は、HfOと、さらにZrOのような他の金属酸化物とを含むか、それらが得られるものであってもよい。いくつかの実施形態においては、ジルコニアが安定化ジルコニアであってもよい。ジルコニアのための典型的な安定剤としては、イットリア、カルシア、マグネシア、セリア、またはその他の希土類酸化物が挙げられる。
【0029】
ZrOおよびHfOを含む実施形態においては、ZrO:HfOの重量比は、1:ゼロ(すなわち、全部ZrO、HfOなし)からゼロ:1までの範囲であってよく、さらには、たとえば、少なくとも約99、98、97、96、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、および5部(重量による)のZrOと、それに対応する量のHfO(たとえば、少なくとも約99部(重量による)のZrOと、約1部以下のHfO)、および少なくとも約99、98、97、96、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、および5部のHfOと、それに対応する量のZrOとであればよい。
【0030】
いくつかの実施形態においては、少なくとも一部の金属酸化物源(いくつかの実施形態においては、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、75、80、85、90、95、またはさらには100重量パーセント)は、酸化物形成またはその合金形成で負のエンタルピーを有する少なくとも1種の金属(たとえば、Al、Ca、Cu、Cr、Fe、Li、Mg、Ni、Ag、Ti、Zr、およびそれらの組み合わせ)のMを含む粒子状の金属質材料を添加するか、またはそれらを他の原料物質と組み合わせることによって得るのが好都合となる。理論に捕らわれることを欲するものではないが、金属の酸化に伴う発熱反応によって発生する熱が、均一な溶融物、そして結果として溶融多結晶質物質を形成させるのに有利に働くものと考えられる。たとえば、原料物質(典型的にはフィード粒子)の内部における酸化反応によって発生する追加の熱が、不充分な熱伝導を無くすか、最小化するか、または少なくとも減少させて、それにより、得られる溶融物の形成および均質化を容易にする、と考えられる。さらに、追加の熱が利用できることによって、各種の化学反応および物理的変化(たとえば、高密度化や球状化)を促進して完結させるのに役立つとも考えられる。さらに、いくつかの実施形態では、酸化反応によって発生した追加の熱が存在することによって、材料の融点が高いために、他の方法では困難あるいは非実用的であるような溶融物を形成させることも実際に可能となると考えられる。溶融多結晶質物質を形成させる際に粒子状の金属質材料を含めることの別な利点は、溶融、緻密化および球状化のような化学的および物理的プロセスを、短時間で達成することが可能である、という点にある。
【0031】
粒子状原料物質は典型的には、その粒子径を選択して、均質なフィード粒子、ひいては溶融物の形成が短時間で達成できるようにする。典型的には、比較的小さな平均粒子径を有する原料物質が、この目的に用いられる。たとえば、約5nm〜約50マイクロメートルの範囲(いくつかの実施形態においては、約10nm〜約20マイクロメートル、さらには約15nm〜約1マイクロメートルの範囲)の平均粒子径を有し、ここで、その粒子の少なくとも90(いくつかの実施形態においては、95、さらには100)重量パーセントが原料物質であるようなものが用いられるが、これらの粒子径の範囲から外れているものもまた、有用である。粒度が約5nm未満の粒子原料は、取扱うのが困難である(たとえば、そのような原料物質粒子の流動特性が不良となりがちなために、その粒子の流動特性が望ましくないものとなりがちである)。典型的な火炎成形プロセスにおいて、約50マイクロメートルより大きな粒度の粒子状原料物質を使用すると、均質な溶融物および溶融多結晶質物質および/または所望の組成物を得ることが一層困難となる傾向がある。いくつかの実施形態においては、火炎成形は2500℃以下(いくつかの実施形態においては、1900℃〜2500℃の範囲、さらには2000℃〜2500℃の範囲)で実施する。
【0032】
さらに、いくつかのケースにおいては、たとえばフィード粒子を火炎にフィードして溶融物を形成させるときに、粒子状原料物質を、ある粒子径の範囲で供給するのが望ましい。理論に捕らわれることは欲しないが、このことが、フィード粒子の充填密度と強度に寄与すると考えられる。さらに、原料物質粒子があまりにも粗いと、たとえば火炎成形の過程で、フィード粒子に熱的および機械的応力がかかる傾向がある。そのような場合には最終的には、通常、フィード粒子が小さな断片に破損されたり、組成の均質性が失われたり、収量が低下したりあるいは、溶融が不完全になったりするが、その理由は、そのような断片は一般に、熱源から出る際にその軌跡が多方向に変動するからである。
【0033】
一つの態様においては、フィード粒子(たとえば、予め溶融させた多結晶質物質を含んでいても、そのもの自体であってもよい)を独立して火炎の中にフィードして、溶融混合物を形成させる。別な態様においては、フィード粒子が、他の粒子状と共に混合した、予め溶融させた物質を含んでいてもよい。また、予め溶融させた物質を火炎の中にフィードし、一方ではその他の原料物質を個別に火炎の中に添加して溶融混合物を形成させることも本発明の範囲内である。後者の場合、それらの成分の混合物は、火炎の中で溶融した微少液滴が融合することによって生じるものと考えられる。
【0034】
いくつかの実施形態においては、たとえば、原料物質を組み合わせたり、互いに混合させたりしてから、溶融させてフィード物質を形成する。各種好適な公知の方法を用いて、原料物質を組み合わせて実質的に均質な混合物を形成させることができる。それらの組合せ技術としては、ボールミル粉砕、混合、タンブリングなどが挙げられる。ボールミル中のミリング媒体は、たとえば、金属ボール、セラミックボールなどであってよい。そのセラミックミリング媒体は、たとえば、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシアなどであってよい。ボールミル粉砕は、乾燥環境中、水性環境中、あるいは溶媒系(たとえば、イソプロピルアルコール)環境中で実施することができる。原料物質バッチが金属粉体を含んでいるような場合には、ミリングの際に溶媒を使用するのが一般的には望ましい。その溶媒としては、適切な引火点を有し、原料物質を分散させる能力を有する物質であれば、何であってもよい。ミリング時間は、数分から数日でよいが、一般的には数時間〜24時間の間である。湿式または溶媒系のミリングシステムでは、液体媒体を典型的には乾燥および/または濾過により除去すると、それにより得られる混合物は、典型的には均質であって、水および/または溶媒を実質的に含まないものとなる。溶媒系のミリングシステムを使用した場合、乾燥の際に溶媒回収システムを使用して、溶媒をリサイクルさせることができる。乾燥後には、得られる混合物は「乾燥ケーキ(dried cake)」の形状となっていてもよい。このケーキ状の混合物を次いで、たとえば粉砕または破砕して所望の粒子径としてから溶融させる。別な方法として、たとえば、スプレー乾燥法を用いることも可能である。後者を用いると、典型的には、所望の酸化物混合物の球状粒子が得られる。フィード物質は、沈降法およびゾルゲル法を含めた湿式化学法によっても調製することができる。極端に高レベルの純度および均質性が望まれるような場合には、そのような方法が有利となるであろう。
【0035】
フィード粒子が焼結物質であるのも、本発明の範囲内である。焼結物質を使用すれば、たとえば、焼結プロセスの間に揮発分がすべて除去され、また焼結プロセスの間に前駆体原料物質の対応する酸化物への転化も起きるので、有利である。
【0036】
フィード粒子の粒度は、典型的には、最高1000マイクロメートル(いくつかの実施形態においては、最高500、250、100、またはされには最高50マイクロメートル)までであって、その粒度分布は狭くても広くてもよい。一般的には、使用するフィード粒子の粒度特性は、得られる溶融多結晶質物質の所望の粒度(分布)から求められる。理論に捕らわれることは欲しないが、火炎の中でいくつかの溶融粒子が融合するために、対応する平均フィード粒度よりも大きな平均粒度を有する溶融多結晶質物質を得ることが可能となるのだと考えられる。さらに、たとえば、火炎の中でフィード粒子の高密度化や破壊が起きるために、対応するフィード粒子よりも実質的に小さな平均粒度を有する溶融多結晶質物質を得ることが可能となるのだとも考えられる。一般的に、フィード粒子の粒度を、最大の粒状原料物質の粉体よりも大きなものとして、各種の成分を所望の比率で容易に混合できるようにするのが望ましい。さらに、いずれの組成物においても、フィード粒子の粒度の上限が存在する。この粒度の上限は多くのパラメーターに依存するが、そのようなものとしては、各種の成分さらには組成物全体の熱伝導率、熱容量などが挙げられる。さらに、フィード粒子の多孔度、火炎のタイプおよび熱容量、火炎中でのフィード粒子の滞留時間、および成分の間での化学反応の発生とそのタイプなどが、許容される最大のフィード粒度に影響する。
【0037】
微粒子とは異なる形態、たとえば前駆体塩(たとえば、硝酸塩、酢酸塩などとして)、ポリマー(たとえば、シラン)または有機金属(たとえば、アルコキシド)などの形態で、フィード物質(すなわち、出発物質)の1種または複数の成分を提供するのも、本発明の範囲内である。その前駆体塩、ポリマー、または有機金属は、適切な溶媒(たとえば、水、アセトン、エーテル、アルコール、および炭化水素(たとえば、シクロヘキサン))などの中に溶解または分散させてから、火炎中にフィードする。さらには、フィード粒子を、たとえば溶媒(たとえば、水、アセトン、エーテル、アルコール、および炭化水素(たとえば、シクロヘキサン))の中に分散させてから、火炎中にフィードしてもよい。フィード粒子を溶媒中に分散させる場合には、火炎中における分散微少液滴のサイズを調節するのが望ましい。フィードする分散微少液滴が大きすぎると、溶媒の蒸発が不充分となりやすく、フィード粒子が溶融物の微少液滴への転換が起きない可能性がある。
【0038】
一般には、フィード粒子を、たとえばスクリューフィーダー、振動フィーダーなどの技術を使用して、アグロメレーション、またはいわゆる「クランピング」を起こすことなく、火炎の中にフィードするのが望ましい。フィード粒子が望ましくないアグロメレーションおよび/またはクランピングを起こすと、粒子の溶融が不充分または不均質になったり、最終製品が多孔質になったりする原因となりうる。いくつかの場合には、フィード粒子を、コロイダル粉体(たとえば、ヒュームドシリカおよびアルミナ)または潤滑性粉体(たとえばステアリン酸)粉体と混合して、フィード粒子を単分散の状態に維持して、火炎の中に均質にフィードでいるようにしてもよい。
【0039】
本発明による溶融多結晶質物質は、適切な金属酸化物源を火炎中で加熱して、溶融物、望ましくは均質な溶融物を形成させ、次いでその溶融物を急速に冷却することにより溶融多結晶質物質を得ることにより、製造することができる。溶融多結晶質物質のいくつかの実施形態では、たとえば、金属酸化物源を各種適切な炉(たとえば、誘導加熱炉もしくは抵抗加熱炉、ガスだき炉、またはプラズマ溶融器)を通過させて溶融させることにより製造することができる。典型的には、溶融物を溶融温度よりも20℃〜200℃高温に加熱して、その溶融物の粘度を低下させて、成分をより完全に混合しやすくするのが望ましい。
【0040】
溶融多結晶質物質は典型的には、溶融させた物質(すなわち、溶融物)を比較的急速に冷却することによって得られる。溶融多結晶質物質を得るための急冷速度(すなわち、冷却速度)は、多くの因子に依存するが、そのようなものとしては、溶融多結晶質物質の化学組成、溶融物および得られる溶融多結晶質物質の熱的性質、加工技術、得られる溶融多結晶質物質の寸法と質量、および冷却技術などが挙げられる。
【0041】
冷却速度が急冷された溶融多結晶質物質の性質に影響すると考えられる。たとえば、溶融多結晶質物質の密度、平均結晶子径、結晶の形状、結晶質相組成、および/またはその他の性質は、典型的には、冷却速度と共に変化する。典型的には、冷却速度が早いほど、得られる結晶サイズが小さくなるが、冷却速度が早過ぎると、得られる物質が非晶質となる可能性がある。理論に捕らわれることは欲しないが、溶融多結晶質物質を製造する際に用いられる冷却速度は、典型的には10℃/秒より高い(すなわち、溶融状態から100℃の温度低下させるのに1秒かからない)、典型的には10℃/秒より高い(すなわち、溶融状態から1000℃の温度低下させるのに1秒かからない)と考えられる。溶融物を冷却させる方法としては、冷却媒体(たとえば、高速空気ジェット、液体(たとえば、冷水)、金属プレート(冷却金属プレートを含む)、金属ロール(冷却金属ロールを含む)、金属ボール(冷却金属ボールを含む)など)の中に溶融物を吐出させることが挙げられる。当業者公知のその他の冷却技術としては、ロール冷却(roll−chilling)がある。ロール冷却を実施するには、たとえば、金属酸化物源をその融点よりも通常20〜200℃高い温度で溶融させ、その溶融物を(たとえば、空気、アルゴン、窒素などのガスを使用した)高圧下で、高速回転している(単一または複数の)ロールの上にスプレーすることによって、冷却させる。典型的にはこれらのロールは金属製であって、水冷する。さらに金属ブックモールドも、溶融物を冷却させるには有用である。いくつかの実施形態においては、ブックモールドおよび/またはローラーなどを水中に浸漬させる。
【0042】
理論に捕らわれることは欲しないが、本発明による溶融多結晶質物質のいくつかの実施形態において典型的に存在する、アルファ−アルミナの、転移アルミナ相に対する相対的な割合は、少なくとも部分的には冷却速度に影響される、と考えられる。理論に捕らわれることは欲しないが、冷却速度が早いほど、典型的には、ガンマまたはその他の遷移アルミナ相の形成に有利となり、その一方では冷却速度が遅いほど、アルファアルミナの形成に有利となる、と考えられる。本発明による溶融多結晶質研磨材料におけるアルファ−アルミナおよび遷移アルミナの所望量は、たとえば目的とする用途に依存する。物質を高速で除去することが必要な研磨材用途では、典型的には、アルファアルミナの含量を高くするのが望ましい。その一方で、たとえばポリッシングの場合のように、物質を低速で除去したい場合には、遷移アルミナの含量を高くするのが望ましい。
【0043】
いくつかの実施形態においては、本発明は、(a)1〜10マイクロメートルの範囲の平均結晶子径を有するアルファアルミナ、および(b)明瞭な結晶質相として存在する、複合Y・金属酸化物を含む溶融多結晶質物質を提供する。いくつかの実施形態においては、本発明は、AlおよびYを含む溶融多結晶質物質を提供するが、ここで、Alの少なくとも一部は、転移(たとえば、ガンマ)Alであり、AlおよびYの少なくとも一部は、複合Al・Yとして存在している。
【0044】
いくつかの実施形態においては、(a)1〜10マイクロメートルの範囲の平均結晶子径を有するアルファアルミナ、および(b)明瞭な結晶質相として存在する複合Y・金属酸化物を含む溶融多結晶質物質を、そのAlおよびYを含む溶融多結晶質物質を加熱することによって提供することができる(典型的には900℃以上であるが、もっと低い温度を使用することも可能である)。ここで、Alの少なくとも一部は、転移(たとえば、ガンマ)Alであり、AlおよびYの少なくとも一部が、複合Al・Yとして存在して、転移(たとえば、ガンマ)Alの少なくとも一部が、アルファAlに転化されるようにする(いくつかの実施形態においては、加熱前の転移(たとえば、ガンマ)アルミナの量の全容積を基準にして、少なくとも50、60、75、90、96、99、さらには100容積パーセントである)。典型的には、1600℃以下の温度で加熱するのが望ましい。温度をそれ以上にすると、結晶粒が成長するために、溶融多結晶質物質の望ましくない劣化が急速に進行する可能性がある。一般的には、加熱温度が高いほど、転移(たとえば、ガンマ)アルミナをアルファアルミナに転化させるのに必要な加熱時間は短くなる。温度が低い場合には、より長い加熱時間とするのが望ましい。最も典型的には、1000℃〜1300℃の温度範囲で、5分〜3時間の範囲(いくつかの実施形態においては、10分〜1時間の範囲)で加熱を実施する。加熱には、箱形炉および回転炉を含めて、当業者に公知の各種のタイプの炉を使用することができる。また別な態様においては、その炉が、たとえば抵抗加熱または誘導加熱されていてもよい。
【0045】
急速な冷却をする場合には、たとえば還元性、中性、酸化性雰囲気などその環境を調節して、冷却の間に所望の酸化状態など、相組成を維持したり、および/または影響を与えたりすることもできる。この雰囲気は、過冷却の液の状態からの結晶化の動力学またはメカニズムに影響を与えることによって、結晶形成にも影響する可能性がある。たとえば、空気中に比較してアルゴン中では、Alの溶融物を、より低い温度まで結晶化せずに過冷却できることが報告されている。
【0046】
一つの方法においては、所望の組成を有するフィード物質(たとえば、再溶融させる溶融多結晶質物質および/またはガラスを含むセラミック粒子を含んでいても、あるいはそれらであってもよい)を、たとえば火炎成形プロセスを用いて溶融物に転化させてから、その溶融物を冷却して溶融多結晶質物質を形成させることもできる。火炎溶融プロセスの1例は、たとえば、米国特許第6,254,981号明細書(キャスル(Castle))に記載されている。この方法では、金属酸化物源を(たとえば、「フィード粒子」と呼ばれることもある、粒子の形態で)バーナー(たとえば、メタン−空気バーナー、アセチレン−酸素バーナー、水素−酸素バーナー、など)の中に直接フィードする。
【0047】
溶融多結晶質を製造するためのその他の方法としては、自由落下冷却(free fall cooling)を伴うレーザースピン溶融法、テイラー(Taylor)ワイヤー法、プラズマトロン法、ハンマー・アンド・アンビル法、遠心急冷法、エアガン・スプラット冷却法、1本ローラーまたは2本ローラー急冷法、ローラープレート急冷法、およびペンダント・ドロップ溶融急冷法などが挙げられる(たとえば、ブロックウェイ(Brockway)ら、「ラピッド・ソリディフィケーション・オブ・セラミックス(Rapid Solidification of Ceramics)」、メタルズ・アンド・セラミックス・インフォメーション・センター、ア・デパートメント・オブ・ディフェンス・インフォメーション・アナリシス・センター(Metals And Ceramics Information Center、Department of Defense Information Analysis Center)、オハイオ州、コロンバス(Columbus、OH)、1984年1月、を参照されたい)。溶融多結晶質物質の実施形態は、それ以外の方法でも得ることができ、そのようなものとしては、適当な前駆体を(火炎またはレーザーまたはプラズマを使用して)熱分解する方法、金属前駆体の物理的気相合成(PVS)法、および機械化学的加工法などが挙げられる。さらに、溶融物および溶融多結晶質物質を製造するためのその他の方法としては、プラズマ溶射、溶融抽出、およびガスまたは遠心噴霧法が挙げられる。
【0048】
粉体フィーダー装置のその他の例を図1〜6に示す。粉体フィーダー集成装置1000は、粉体1110を保持し、それを火炎溶融装置1500に送出する。火炎溶融装置1500には、粉体1110を受け取って、溶融させ、本明細書に開示されているような他の物質に転換させるための、粉体受取りセクション1510が含まれる。粉体1110は、粉体フィーダー集成装置1000の排出開口部1130を通過して、粉体受取りセクション1510に送り込まれる。排出開口部1130と粉体受取りセクション1510の間に、接続管1900が位置している。さらに、排出開口部1130に近接して漏斗1300が位置していて、粉体1110が排出開口部1130から出た後に、それを受け取り、その流れの向きを決める。
【0049】
粉体フィーダー集成装置1000には、粉体1110を保持するためのホッパー1100が含まれる。典型的には、ホッパー1100には円筒形の壁面で画定される胴部1120が含まれるが、それとは異なる胴部形状であってもよい。さらに、ホッパー1100は、一体品で構成されていても、複数の部品で構成されていてもよい。例に示した実施形態におけるホッパー1100には、カバーセクション1200がさらに含まれる。そのカバーセクション1200には、粉体1110をホッパー1100にフィードするための開口部1710が含まれる。ホッパー1100に粉体1110を充填するためには、各種市販されている送出手段、たとえばスクリューフィーダー、振動フィーダー、またはブラシフィーダーを使用することができる。カバーセクション1200には、(図6に示したような)シャフト装入開口部1422を有するセクション1415が、さらに含まれていてもよい。
【0050】
ホッパー1100の胴部1120の中には、ブラシ集成装置1400が配される。このブラシ集成装置1400は、ブラシ集成装置1400を回転させるための手段、たとえばモーター1800に接続されている。モーター1800はさらに、モーター1800の速度を調節するための手段、たとえばモーター速度調節器1850に接続されていてもよい。使用するブラシ集成装置は、イリノイ州シカゴ(Chicago,Illinois)のマックマスター・カー(McMaster−Carr)から入手可能な、ナイロン・ストリップ・ブラシ(Nylon Strip Brush)(全高1インチ(2.5cm)、植毛(bristle)の長さ5/16インチ(0.8cm)、直径0.020インチ(5ミリメートル))パーツ#74715T61であった。そのブラシ集成装置を、シャフトに取付け、さらにそのシャフトをDCギアモーター(DC Gear Motor)(イリノイ州シカゴ(Chicago,Illinois)の、ボダイン・エレクトリック・カンパニー(Bodine Electric Company)から入手可能、130ボルト、比60:1、トルク22ポンド・インチ)に取付け、駆動させた。モーターの速度は、これまたボダイン(Bodine)から入手可能なタイプ−FPM・アジャスタブル・スピード・PM・モーター・コントロール(Type−FPM Adjustable Speed PM Motor Control))モデル#818を用いて調節した。
【0051】
ブラシ集成装置1400には、遠位端1411および近位端1412を有する植毛要素1410が含まれる。粉体1110が火炎溶融装置1500へ送出するためのホッパー1100の中に入ったら、ホッパー1100の内部でブラシ集成装置1400を回転させる。ブラシ集成装置1400が回転すると、植毛要素1410が粉体1110を、篩別要素1600を通してホッパー1100へと送り込む。ブラシ集成装置1400の回転速度を調節することによって、篩別要素1600を通過する粉体1110のフィード速度を調節することができる。
【0052】
ブラシ集成装置1400は篩別要素1600と共にはたらいて、所望の性質を有する粉体1110を、排出開口部1130から火炎溶融装置1500の粉体受取りセクション1510へと送り出す。植毛1410の遠位端1411は、篩別要素1600のごく近傍に位置する。植毛1410の遠位端1411と篩別要素1600との間に小さな隙間を設けることが可能であるので、典型的には、そのギャップを粉体の粒度と同じオーダーの大きさに保つが、当業者ならば、取り扱う粉体の具体的な性質に応じて、そのギャップをもっと広くすることができると考えることもあろう。さらに、植毛1410の遠位端1411を篩別要素1600と同一平面とすることも可能であるし、あるいは、篩別要素1600の中のメッシュ開口部1610の中に入り込んだり、突き抜けたりするように位置させることもできる。植毛1410が開口部1610の中に入り込むためには、植毛1410の少なくとも幾分かは、そのメッシュサイズよりも直径が細いものである必要がある。植毛要素1410には、異なった直径と長さを有する植毛が組み合わされて含まれていてもよく、所望される操作条件に応じて、いかなる具体的な組合せとしてもよい。
【0053】
植毛1400の端1411が、開口部1610の中へ入り、突き抜けていることによって、植毛1410が開口部1610にブリッジを形成している粒子をすべて破壊することができる。さらに、植毛1410は、粉体をフィードするときに通常起こりやすい、各種の閉塞を破壊することもあるであろう。植毛要素1410は、単一のものでできていてもよいし、あるいは複数の植毛セグメントから形成されていてもよい。さらに、植毛要素をメッシュ開口部の中に入り込ませたり、および/または突き抜けさせたりしたい場合には、植毛1410のサイズを、メッシュ開口部1610の最も小さいものよりも、さらに小さくしてやる必要がある。
【0054】
図3を参照すると、図面に示した実施形態の例においては、ホッパー1100には、円筒状の胴部1120を画定する壁面が含まれていてよい。この形状が、排出開口部1130からの粉体の流速をよりよく調節することが可能な、対称形を与えるのに都合がよい。そのような円筒状の形態が、回転するブラシ集成装置1400を使用するのにもよく適しているが、その理由は、植毛要素1410が壁面にまで達することができるために、粉体が蓄積する可能性のある篩別要素の領域が残る可能性を、ほとんどまたは完全になくしてしまうからである。しかしながら、特定の使用条件が必要とすれば、他の形状とすることも可能である。
【0055】
ホッパー1100にはさらにカバーセクション1200が含まれる。カバーセクション1200は、ホッパーフィーダー集成装置1700から粉体1110を受け取るための、開口部1710を有している。カバーセクション1200と胴部1120とが一つになって、粉体チャンバー1160を形成している。カバー1200にある開口部1710を無くすかシール可能として、それによりガスたとえば、窒素、アルゴン、またはヘリウムをホッパー1100の上のガス注入ライン1150に注入して、中性の雰囲気にしたり、あるいは粉体または粒子の火炎溶融装置への送り出しに役立たせたりする。さらに、その系にガスを使用することによって、粉体または粒子周りの雰囲気を調節することもできる。また、ガス注入ライン1910を、排出開口部1130より後、たとえば、接続管1900に取り付けることも可能である。
【0056】
粉体フィーダー集成装置1000全体を振動させて、粉体輸送をさらに助けることもできる。場合によっては、篩別要素を振動させて、粉体が粉体フィーダー集成装置1000を通過するのを助けることもできる。当業者のよく知るところであるが、可能なその他の振動手段を使用することもでき、特定の使用条件に合わせて使用することが可能な、各種の振動システムが各種市販されている。
【0057】
図6を参照すると、ホッパー1100がカバー1200と胴部1120を有する場合、カバー1200を取り外し可能としておくと、粉体チャンバー1160の清掃や篩別要素1600の交換が容易となる。さらに、植毛要素1410と篩別要素1600との間が所望の接触状態となるように、ブラシ集成装置1400を配置することができる。ブラシ集成装置1400を回転シャフト1420に取り付けた場合には、そのシャフト1420をカバー1200の中の開口部1422より外側につきださせて、たとえばモーター1800によって駆動させることができる。ブラシ集成装置1400の速度は、速度調節器1850のような手段により調節することができる。この例に挙げたような粉体フィード装置は、同時係属出願中の米国特許出願第10/739233号(本出願と同日出願)に見出すことができる。
【0058】
本発明による方法の実施形態は典型的には、従来からの溶融プロセスよりも、単純であり、フレキシビリティがあり、設備費が安い。それに加えて、本発明による方法の実施形態では、粒子の組成とサイズをよりコントロールすることが可能であり、(たとえば、製造したままで規定された公称グレードとなっているような)所望の粒度分布を有する粒子を製造することが可能となる。
【0059】
ローラー、表面などは、金属(たとえば、鋼(ステンレス鋼および合金鋼を含む)、銅、黄銅、アルミニウムおよびアルミニウム合金、ならびにニッケル)またはグラファイトなどを含め、各種の材料で製造することができる。一般的には、高い熱伝導率と、急激な温度変化に対する良好な熱安定性と、機械的な衝撃に対する良好な安定性を有する材料が適している。いくつかの実施形態においては、各種の表面ではライナーを採用して、たとえば保守コストをより効率化したりおよび/または初期設計や表面の確保を容易にすることができる。たとえば、表面のコアを1種の材料とし、そのライナーを所望の熱的、化学的、機械的性質を有する別な材料とすることもできる。ライナーは、コアよりも高価であっても安価であってもよく、また機械加工がより容易であるものとすることができる。さらに、1回または数回使用したあとにライナーを交換することも可能である。ローラー、表面などの熱除去能力を改良する目的で、たとえば、液体(たとえば、水)を循環させるか、および/またはそれらに冷却ガス(たとえば、空気、窒素、およびアルゴン)を吹き付けるか、さらにはローラーを冷却媒体(たとえば、水)の中に浸漬させることにより、冷却することもできる。
【0060】
ローラーおよび表面は、たとえば運転の規模、所望の粒子量、加工すべき溶融物の量、および/または溶融物の流量などに応じて、各種の大きさに変化させることができる。ローラーおよび/または表面が移動する速度は、たとえば、所望の冷却速度、そのプロセスでの生産量などに依存する。
【0061】
粉砕および/または粒子形状における変化を与えたい場合には、たとえば当業者公知の破砕および/または粉末化技術を使用して、そのような粉砕および/または粒子形状の変化を得ることができる。そのような粒子は、当業者に公知の破砕および/または粉末化技術、たとえば、ロールクラッシャー粉砕、ジョークラッシャー粉砕、ハンマーミル粉砕、ボールミル粉砕、ジェットミル粉砕、インパクトクラッシャー粉砕などを使用して、より小さな粒子または異なった形状に転化させることができる。場合によっては、2種類または多段の破砕工程を実施するのが望ましい。第1の破砕工程では、それらの比較的大きな塊状物すなわち「チャンク(chunks)」を破砕して、より小さな粒子とする。これらのチャンクをこのように破砕するには、ハンマーミル、インパクトクラッシャーまたはジョークラッシャーを使用することができる。次いで、このようにしてより小さくした粒子をさらに破砕して、所望の粒度分布にする。所望の粒度分布(グリットサイズとかグレードとか呼ばれることもある)を製造するためには、多段の破砕工程を実施する必要があることもある。一般的には、破砕条件を最適化して、所望の粒子形状および粒度分布を得る。得られた粒子が所望の大きさではなく、大きすぎる場合には、再破砕することができる。別な態様では、得られた粒子が所望の大きさではない場合に、再溶融のための原料物質として使用することもできる。
【0062】
本発明による溶融多結晶質研磨粒子の形状は、たとえば、セラミックの組成および/または微細構造、冷却時の幾何学的配置、およびセラミックの破砕方法(すなわち、使用した破砕技術)などによって、決まってくる。一般的に言って、「塊状(blocky)」の形状が好ましい場合には、その形状を得るためにはより大きなエネルギーが必要である。逆に、「圭角状(sharp)」の形状が好ましい場合には、その形状を得るために用いるエネルギーは小さくてもよい。破砕技術を変更することで、各種の所望の形状を得ることもできる。いくつかの粒子では、平均のアスペクト比を1:1から5:1までとするのが通常望まれるが、実施形態によっては、1.25:1から3:1まで、さらには1.5:1から2.5:1とする場合もある。
【0063】
ある種の金属酸化物を添加することによって、本発明による溶融多結晶質物質の性質および/または結晶構造または微細構造を変化させることができる。
【0064】
典型的には、本発明による溶融多結晶質研磨粒子を製造するために、金属酸化物源およびその他の添加物を具体的に選択しようとする場合には、たとえば、所望の組成、微細構造、結晶化度、物理的性質(たとえば、硬度または靱性)、望ましくない不純物の存在、および、セラミックスを調製するために使用される具体的なプロセス(装置、ならびに溶融および/または固化の前および/またはその途中における原料物質の各種精製など)の望ましいまたは必要とされる特性などを考慮に入れる。
【0065】
場合によっては、下記からなる群より選択される金属酸化物を限定された量で組み入れるのが望ましい。BaO、CaO、Cr、CoO、CuO、Fe、GeO、HfO、LiO、MgO、MnO、NiO、NaO、Sc、SrO、TiO、Y、希土類酸化物、ZnO、ZrO、およびそれらの組合せ。市販されている出発源も含めた出発源としては、酸化物そのもの、複合酸化物、元素粉体、鉱石、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、塩酸塩、水酸化物などが挙げられる。変性のための金属酸化物が揮発性の形態で添加されるような場合には、その揮発性の化学種を対応する酸化物に転化させるか、または焼成または焼結のような適切な加熱処理をすることによって、揮発分を除去しておいてから、火炎成形を行う。火炎成形より前に揮発性の化学種が除去されていないと、その残存している揮発性の化学種が、典型的には、得られるセラミックの中に実質的な多孔質(すなわち、気泡)を形成する原因となりやすい。別な方法として、得られた多孔質の本発明による溶融多結晶質物質を、複数回火炎の中を通して、ガス類を逃がすことによって、本発明による溶融多結晶質物質の密度を上げることも可能である。
【0066】
そのような金属酸化物を使用する場合、典型的には、全部を合わせて、溶融多結晶質物質の0を超えて49までの(いくつかの実施形態においては、0を超えて40まで、0を超えて30まで、0を超えて25まで、0を超えて20まで、0を超えて15まで、0を超えて10まで、0を超えて5まで、さらには0を超えて2まで)重量パーセントで添加する。
【0067】
ジルコニアの正方晶系(立方晶系)の形態を安定化させることが知られている、いくつかの金属酸化物(たとえば、イットリア、カルシア、マグネシア、セリア、および希土類酸化物)を、安定化ジルコニア粉体を使用して組成物中に添加するか、またはフィード物質の一部として個々に添加することができる。そのような安定化酸化物は、本発明による得られる溶融多結晶質研磨粒子の正方晶系(立方晶系)ジルコニアの含量割合を上げる傾向がある。いくつかの実施形態においては、酸化物添加剤(たとえば、イットリア、カルシア、マグネシア、セリア、および希土類酸化物)は、三元またはさらに高次の共晶を形成させるのに役立つ可能性がある。三元またはさらに高次の共晶のミクロ構造特性は、典型的には、二元系と同様であるが、その物理的性質が顕著に異なる可能性もある。
【0068】
いくつかの金属酸化物添加物、またはそれらとアルミナ、ジルコニア、またはその他の金属酸化物添加物との反応生成物は、溶融物から沈殿し、溶融多結晶質物質のマトリックスの中で明瞭な結晶を形成することができる。その酸化物の沈殿物は、各種の形状(等軸晶、切り子面が有りまたは無しの、プリズム状または樹枝状の形状)と大きさを有する。いくつかの実施形態においては、その酸化物結晶は、10マイクロメートル、5マイクロメートル、3マイクロメートル、2マイクロメートル、さらには1マイクロメートルよりも小さい。その金属酸化物結晶は、本発明による溶融多結晶質研磨粒子に対して所望の性質、たとえば、より高い硬度を与えたり、または、望ましくは、微細構造に影響(たとえば共融晶のサイズを改良)を与えたりすることができる。その酸化物の添加物が、アルミナ−ジルコニアよりも顕著に低い密度を有している場合には(すなわち、金属酸化物の添加物が、極めて高い容積パーセントで存在する場合には)、本発明による溶融多結晶質研磨粒子は、金属酸化物添加物の相互連結膜分離結晶(interconnected film separating crystal)として存在することができるが、共融晶は存在し得ない。
【0069】
本発明による溶融多結晶質研磨粒子には、微少量(典型的には、約10重量パーセント未満(さらには、5、4、3、2、さらに1重量パーセント未満、そしていくつかの実施形態においてはゼロ))の非晶質/ガラス物質が含まれていてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態においては、本発明による溶融多結晶質物質の中に含まれていてもよい炭素不純物は、物質の全重量を基準にして、1重量パーセント以下(いくつかの実施形態においては、0.5以下、さらには0.25重量パーセント以下)である。溶融多結晶質物質の中に存在しうるその他の不純物としては、シリカ、酸化鉄、チタニア、およびそれらの反応生成物が挙げられる。
【0071】
物質の微細構造または相の構成は、たとえば電子顕微鏡法およびX線回折(XRD)を使用して求めることができる。粉体X線回折、XRDを使用することで(たとえば、ニュージャージー州モーウォー(Mahwah、NJ)のフィリップス(PHILLIPS)から商品記号「フィリップス(PHILLIPS)XRG3100」として入手できるようなX線回折計で、1.54050オングストロームの銅Kα1照射を使用)、結晶化させた材料のXRD曲線中に存在するピークを、JCPDS(ジョイント・コミッティー・オン・パウダー・ディフラクション・スタンダーズ(Joint Committee on Powder Diffraction Standards)、インターナショナル・センター・フォア・ディフラクション・データ(International Center for Diffraction Data)出版のデータベースから得られる、結晶質相のXRDパターンと比較することによって、物質中に存在する相を調べることができる。本発明により得られる溶融多結晶質研磨粒子の中に存在しうる結晶質相の例を挙げれば以下のようなものがある。Al(たとえば、アルファアルミナおよび遷移アルミナ)、ZrO(たとえば、立方晶系および正方晶系ZrO)、REO、Y、MgO、BaO、CaO、Cr、CoO、Fe、GeO、LiO、MnO、NiO、NaO、P、Sc、SiO、SrO、TeO、TiO、V、ZnO、HfO、さらには「複合金属酸化物」(複合Al・金属酸化物(たとえば、複合Al・REO))、複合Al・金属酸化物(たとえば、複合Al・REO(たとえば、ReAlO(たとえば、GdAlO、LaAlO)、ReAl1118(たとえば、LaAl1118,)、およびReAl12(たとえば、DyAl12))、複合Al・Y(たとえば、YAl12)、および複合ZrO・REO(たとえば、LaZr))、およびそれらの組合せ。
【0072】
複合Al・金属酸化物(たとえば、複合Al・REOおよび/または複合Al・Y(たとえば、ガーネット結晶構造を示すアルミン酸イットリウム))の中のアルミニウムカチオンの一部を他のカチオンと置換することも、本発明の範囲に含まれる。たとえば、複合Al・Yの中のAlカチオンの一部を、Cr、Ti、Sc、Fe、Mg、Ca、Si、Co、およびそれらの組み合わせ、からなる群より選択される元素の少なくとも1種のカチオンと置換することができる。たとえば、複合Al・Yの中のYカチオンの一部を、Ce、Dy、Er、Eu、Gd、Ho、La、Lu、Nd、Pr、Sm、Th、Tm、Yb、Fe、Ti、Mn、V、Cr、Co、Ni、Cu、Mg、Ca、Sr、およびそれらの組み合わせ、からなる群より選択される元素の少なくとも1種のカチオンと置換することができる。さらに、たとえば、複合Al・REOの中の希土類カチオンの一部を、Y、Fe、Ti、Mn、V、Cr、Co、Ni、Cu、Mg、Ca、Sr、およびそれらの組み合わせ、からなる群より選択される少なくとも1種のカチオンと置換することができる。上述のようにカチオンを置換することによって、本発明による溶融多結晶質研磨粒子の物性(たとえば、硬度、靱性、強度、熱伝導率、など)に影響を与えることができる。
【0073】
平均結晶サイズは、ASTM標準E112−96の「スタンダード・テスト・メソッズ・フォア・デターミニング・アベレージ・グレイン・サイズ(Standard Test Methods for Determining Average Grain Size)」に従った、直線切断法(line intercept method)によって求めることができる。サンプルを、固定用樹脂(たとえば、イリノイ州レーク・ブラフ(Lake Bluff、IL)のビューラー(Buehler)から商品記号「トランスオプティック・パウダー(TRANSOPTIC POWDER)」として得られるようなもの)で固定して、典型的には、直径約2.5cm、高さ約1.9cmの樹脂の円柱の形とする。固定した切片を、ポリッシャー(たとえば、イリノイ州レーク・ブラフ(Lake Bluff、IL)のビューラー(Buehler)から商品記号「エコメット(ECOMET)3」として入手できるもの)を使用した通常のポリッシング法で調製する。このサンプルは、125マイクロメートルのダイヤモンドを含むダイヤモンドホイールを用いて約3分間ポリッシングした後で、それぞれ45、30、15、9、3および1マイクロメートルのスラリーを用いて5分間ポリッシングする。固定してポリッシングしたサンプルを、金・パラジウムの薄膜でスパッタリングしてから、走査電子顕微鏡(たとえば、マサチューセッツ州ピーボディ(Peabody,MA)のJEOLからのモデルJSM840A)を用いて観察する。サンプル中に見出される微細構造の典型的な後方散乱電子(BSE)顕微鏡写真を使用して、以下のようにして平均結晶子の径を求める。顕微鏡写真の上にランダムに引いた直線の単位長さ(N)あたりの、それを切断している結晶子の数を計数する。この数字から、以下の式を使用して平均の結晶子の径を求める。
【数1】

ここでNは、単位長さを切断している結晶子の数であり、Mは顕微鏡写真の倍率である。
【0074】
本発明による溶融多結晶質物質は、たとえば、組成そのもの、急冷速度および/またはフィード物質の性質などに依存して、各種の微細構造を示す。たとえば、共晶の近傍の組成物は、典型的には、アルミナと複合Al・Yとの共晶層構造を含む微細構造を示す。共晶組成から外れた組成物では、典型的には、アルミナと複合Al・Yの初晶(primary crystal)を含む。その初晶は各種の形態をとることが可能で、そのようなものとしては、樹枝状、切り子状、球状などが挙げられる。典型的には、初晶の大きさは冷却速度によって決まってくる。いくつかの本発明による溶融多結晶質物質中に存在する初晶の大きさは、10マイクロメートル、5マイクロメートル、3マイクロメートル、2マイクロメートル、さらには1マイクロメートル未満である。典型的には、初晶の大きさは、1マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲(いくつかの実施形態においては、1マイクロメートル〜5マイクロメートル、1マイクロメートル〜3マイクロメートル、さらには少なくとも1マイクロメートル〜2マイクロメートルの範囲)である。
【0075】
本発明による溶融多結晶研磨粒子の平均硬度は、以下のようにして測定することができる。物質の切片を、固定用樹脂(たとえば、イリノイ州レーク・ブラフ(Lake Bluff、IL)のビューラー(Buehler)から商品記号「トランスオプティック・パウダー(TRANSOPTIC POWDER)」として得られるもの)で固定して、典型的には、直径約2.5cm、高さ約1.9cmの樹脂の円柱の形とする。固定した切片を、ポリッシャー(たとえば、イリノイ州レーク・ブラフ(Lake Bluff、IL)のビューラー(Buehler)から商品記号「エコメット(ECOMET)3」として入手できるもの)を使用した通常のポリッシング法で調製する。このサンプルは、125マイクロメートルのダイヤモンドを含むダイヤモンドホイールを用いて約3分間ポリッシングした後で、それぞれ45、30、15、9、3および1マイクロメートルのスラリーを用いて5分間ポリッシングする。微小硬度の測定には従来タイプのビッカース圧子を取り付けた微小硬度試験器(たとえば、日本国東京の(株)ミツトヨ(Mitutoyo Corporation)から入手可能な商品記号「ミツトヨ(MITUTOYO)MVK−VL」)を使用し、押し込み荷重として100グラムを用いる。微小硬度の測定は、ASTM試験方法E384「テスト・メソッズ・フォア・マイクロハードネス・オブ・マテリアルズ(Test Methods for Microhardness of Materials)(1991)」に記載されたガイドラインに従って行う。その平均硬度は、10個の測定の平均値である。
【0076】
本発明による溶融多結晶質物質の平均硬度は、少なくとも15GPaである。
【0077】
本発明による溶融多結晶質物質は典型的には、理論密度の、少なくとも75%(いくつかの実施形態においては、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、さらには100%)の密度を有する。
【0078】
本発明による溶融多結晶子研磨粒子は、当業者には周知の方法を用いて篩い分けし、分級することが可能で、そのようなものとしては、産業界で承認されている分級標準たとえば、ANSI(アメリカン・ナショナル・スタンダーズ・インスティチュート(American National Standards Institute))、FEPA(フェデラシオン・ユーロピニー・デ・ファブリカント・デ・プロダクツ・アブラシフス(Federation Europeenne des Fabricants de Products Abrasifs))およびJIS(日本工業規格)などを使用する。しかしながら、製造したままの溶融多結晶質研磨粒子で既に狭い粒度分布を有している(たとえば、全部の粒子が実質的に同じ大きさである)ので、所望の粒度分布を得るための分級を必要としない可能性もある。
【0079】
研磨粒子は、広い範囲の粒度で使用することが可能であって、典型的には約0.1〜約5000マイクロメートルのサイズ、約1〜約2000マイクロメートル、約5〜約1500マイクロメートル、さらにはいくつかの実施形態においては、約50〜1000、あるいはさらには約100〜約1000マイクロメートルの範囲とすることができる。
【0080】
所定の粒度分布の中では、粗粒子から微粒子までの範囲の粒度がある。研磨材業界においては、この範囲を「粗粒(coarse)」、「中粒(control)」および「微粉(fine)」画分と呼ぶこともある。研磨業界に受容された分級標準に従って分級された研磨粒子はそれぞれ、その粒度分布を、ある数値限度内の公称グレードとして規定される。そのような業界に受容された分級標準としては、アメリカン・ナショナル・スタンダーズ・インスティチュート・インコーポレーテッド(American National Standards Institute、Inc.)(ANSI)標準、フェデレーション・オブ・ユーロピアン・プロデューサーズ・オブ・アブレーシブ・プロダクツ(Federation of European Producers of Abrasive Products)(FEPA)標準、および日本工業規格(JIS)標準として知られているものが挙げられる。ANSIグレード等級(すなわち規定された公称グレード)としては、ANSI4、ANSI6、ANSI8、ANSI16、ANSI24、ANSI36、ANSI40、ANSI50、ANSI60、ANSI80、ANSI100、ANSI120、ANSI150、ANSI180、ANSI220、ANSI240、ANSI280、ANSI320、ANSI360、ANSI400、およびANSI600が挙げられる。FEPAグレード等級としては、P8、P12、P16、P24、P36、P40、P50、P60、P80、P100、P120、P150、P180、P220、P320、P400、P500、P600、P800、P1000、およびP1200が挙げられる。JISグレード等級としては、JIS8、JIS12、JIS16、JIS24、JIS36、JIS46、JIS54、JIS60、JIS80、JIS100、JIS150、JIS180、JIS220、JIS240、JIS280、JIS320、JIS360、JIS400、JIS600、JIS800、JIS1000、JIS1500、JIS2500、JIS4000、JIS6000、JIS8000、およびJIS10,000が挙げられる。
【0081】
篩い分けた後では、典型的には、多くの異なった研磨粒子の粒度分布すなわちグレードが存在する。このようにグレードが多いと、時期によっては、生産業者や供給業者の要求に適合しないこともあり得る。在庫を最小とするためには、要求されたグレードから外れているものは、本発明による溶融多結晶質物質を製造するための溶融物の中に戻してリサイクルさせることも可能である。このリサイクルは破砕工程の後に実施でき、そのような粒子は、篩い分けで特定の粒度分布に入らない、大きすぎるチャンクまたは小さすぎる粒子(微粉と呼ばれることもある)などである。
【0082】
別な態様において本発明は、バインダーによって互いに結合された複数の本発明による溶融多結晶質研磨粒子をそれぞれ含む凝集研磨結晶粒を提供する。また別な態様においては、本発明は、バインダーと複数の研磨粒子とを含む、研磨物品(たとえば、被覆研磨物品、結合研磨物品(たとえばビトリファイド、レジノイド、および金属結合研削ホイール、カットオフホイール、マウンテッドポイント、ホーニングストーンなど)、不織研磨物品、および研磨ブラシ)を提供するが、ここで、その研磨粒子の少なくとも一部は、本発明による溶融多結晶質研磨粒子(研磨粒子が凝集体である場合も含む)である。そのような研磨物品の製造方法および研磨物品の使用方法は当業者には周知である。さらに、本発明による溶融多結晶質研磨粒子は、研磨粒子を用いる研磨用途、たとえば研磨コンパウンドのスラリー(たとえば、ポリッシングコンパウンド)、ミリング媒体、ショットブラスト媒体、振動ミル媒体などにおいて、使用することができる。
【0083】
被覆研磨物品には一般に、バッキング、研磨粒子、およびその研磨粒子をバッキングの上に保持するための少なくとも1種のバインダーが含まれる。バッキングとしては適当な材料ならば何を使用してもよいが、たとえば、布、ポリマーフィルム、繊維、不織ウェブ、紙、それらの組み合わせ、およびそれらを処理したものなどが挙げられる。好適なバインダーとしては無機または有機バインダーが挙げられる(熱硬化性樹脂および放射線硬化性樹脂を含む)。研磨粒子は、被覆研磨物品の1層内に存在していても、2層内に存在していてもよい。
【0084】
被覆研磨物品の例を図7に示している。図7を参照すると、被覆研磨物品1には、バッキング(基材)2と研磨層3が含まれる。研磨層3には、メイクコート5およびサイズコート6によってバッキング2の主表面に保持されている、本発明による溶融多結晶質研磨粒子4が含まれる。場合によっては、スーパーサイズコートも使用される(図示せず)。
【0085】
結合研磨物品には典型的には、有機、金属系またはビトリファイドバインダーによって結合された研磨粒子の成形塊状物が含まれる。そのような成形塊状物は、たとえば、ホイール、たとえば研削ホイールまたはカットオフホイールのような形状であってもよい。研削ホイールの直径は典型的には、約1cmから1メートルを超えるものまで、カットオフホイールの直径は約1cmから80cmを超えるものまで(より典型的には3cm〜約50cm)ある。カットオフホイールの厚みは典型的には、約0.5mm〜約5cm、より典型的には約0.5mm〜約2cmである。成形塊状物は、たとえば、ホーニングストーン、セグメント、マウンテッドポイント、ディスク(たとえば、ダブルディスクグラインダー)の形状、またはその他の従来からの結合研磨材形状であってもよい。結合研磨物品には典型的には、結合研磨物品の全容積を基準にして、約3〜50容積%の結合材料、約30〜90容積%の研磨粒子(または研磨粒子ブレンド物)、50容積%までの添加物(研削助剤を含む)、および70容積%までの気孔が含まれる。
【0086】
研削ホイールの例を図8に示す。図8に研削ホイール10を示しているが、これには、ホイールの形に成形されハブ12に取り付けられた、本発明による溶融多結晶質研磨粒子11が含まれている。
【0087】
不織研磨物品は典型的には、通気性の多孔質で嵩だかなポリマーフィラメント構造を含んでいて、本発明による溶融多結晶質研磨粒子が構造全体に分散され、有機バインダーによってその中に接着結合させられている。フィラメントの例を挙げれば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維およびポリアラミド繊維などがある。不織研磨物品の例を図9に示す。図9には、典型的な不織研磨物品を約100倍に拡大した模式的な図を示しているが、それには基材として繊維マット150を含み、バインダー154を用いてその上に本発明による研磨粒子152を接着させてある。
【0088】
有用な研磨ブラシとしては、バッキングと一体になった複数の植毛を有するものが挙げられる(たとえば、米国特許第5,427,595号明細書(ピール(Pihl)ら)、米国特許第5,443,906号明細書(ピール(Pihl)ら)、米国特許第5,679,067号明細書(ジョンソン(Johnson)ら)、および米国特許第5,903,951号明細書(イオンタ(Ionta)ら)を参照されたい)。そのようなブラシは、ポリマーおよび研磨粒子の混合物を射出成形することによって製造するのが望ましい。
【0089】
研磨物品を作るのに好適な有機バインダーとしては、熱硬化性有機ポリマーが挙げられる。好適な熱硬化性有機ポリマーの例としては、フェノール樹脂、尿素・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、ウレタン樹脂、アクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、α,β−不飽和カルボニル基をペンダントさせたアミノプラスト樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート化ウレタン、アクリレート化エポキシ、およびそれらの組み合わせ、を挙げることができる。バインダーおよび/または研磨物品にはさらに添加物を加えることができ、そのようなものとしては、繊維、潤滑剤、濡れ剤、チキソトロープ原料、界面活性剤、顔料、染料、静電防止剤(たとえば、カーボンブラック、酸化バナジウム、グラファイトなど)、カップリング剤(たとえば、シラン、チタン酸塩、ジルコアルミン酸塩など)、可塑剤、沈殿防止剤、などを挙げることができる。これら任意成分の添加物の量は、所望の性質が得られるように選択する。カップリング剤は、研磨粒子および/または充填材に対する接着性を改良する。バインダー化学品は、加熱硬化、放射線硬化あるいはそれらの組み合わせで硬化させることができる。バインダー用化学品に関するさらに詳しいことは、米国特許第4,588,419号明細書(カウル(Caul)ら)、米国特許第4,751,138号明細書(チュミイ(Tumey)ら)および米国特許第5,436,063号明細書(フォレット(Follett)ら)に見出すことができる。
【0090】
ビトリファイド結合研磨材に関してさらに具体的に言えば、非晶質構造を示し典型的には硬度の高いガラス質結合材料が、当業者には周知である。場合によっては、そのガラス質結合材料には結晶質相が含まれる。本発明による結合させたビトリファイド研磨物品は、ホイール(カットオフホイールを含む)、ホーニングストーン、マウンテッドポイントの形態またはその他の従来からの結合研磨材の形態であってもよい。いくつかの実施形態においては、本発明によるビトリファイド結合研磨物品は研削ホイールの形態である。
【0091】
ガラス質結合材料を形成させるために使用される金属酸化物の例を挙げれば、シリカ、ケイ酸塩、アルミナ、ソーダ、カルシア、ポタシア、チタニア、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化リチウム、マグネシア、ボリア、ケイ酸アルミニウム、ホウケイ酸ガラス、ケイ酸アルミニウムリチウム、それらの組み合わせ、などがある。典型的には、ガラス質結合材料は、10%から100%までのガラスフリットを含む組成物から形成することができるが、より典型的には、20%〜80%のガラスフリット、または30%〜70%のガラスフリットを含む組成物から形成することができる。ガラス質結合材料の残りの部分は、非フリット材料でよい。別な方法としては、ガラス質の結合を、フリット非含有組成物から誘導することもできる。ガラス質結合材料は、典型的には約700℃〜約1500℃の範囲の温度、通常は約800℃〜約1300℃の範囲、時には約900℃〜約1200℃の範囲、さらには約950℃〜約1100℃の範囲で養生させる。結合を養生させる実際の温度は、たとえば、個々の結合の化学によって決まってくる。
【0092】
いくつかの実施形態においては、ビトリファイド結合材料としては、シリカ、アルミナ(望ましくは少なくとも10重量パーセントのアルミナ)およびボリア(望ましくは少なくとも10重量パーセントのボリア)を含むものを挙げることができる。ほとんどの場合、このビトリファイド結合材料にはさらに、アルカリ金属酸化物(たとえば、NaOおよびKO)を含む(場合によっては、少なくとも10重量パーセントのアルカリ金属酸化物を含む)。
【0093】
バインダー材料には、さらに、充填材物質または研削助剤を、典型的には粒子状物質として含むことができる。典型的にはこの粒子状物質は、無機物質である。本発明のための充填材として有用なものの例を挙げると、金属炭酸塩(たとえば、炭酸カルシウム(たとえば、チョーク、方解石、マール、トラバーチン、大理石および石灰石)、炭酸カルシウムマグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム)、シリカ(たとえば、石英、ガラスビーズ、ガラスバブルおよびガラス繊維)、ケイ酸塩(たとえば、タルク、クレイ、(モンモリロナイト)長石、マイカ、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム)、金属硫酸塩(たとえば、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウムナトリウム、硫酸アルミニウム)、セッコウ、バーミキュライト、木粉、アルミニウム三水和物、カーボンブラック、金属酸化物(たとえば、酸化カルシウム(ライム)、酸化アルミニウム、二酸化チタン)、および金属亜硫酸塩(たとえば、亜硫酸カルシウム)などがある。
【0094】
一般的には、研削助剤を添加すると、研磨物品の使用寿命が延びる。研削助剤は、研磨の化学的、物理的過程に大きな影響を与えて、それにより性能を向上させる物質である。理論に捕らわれることを欲するものではないが、研削助剤は、(a)研磨粒子と、研磨されるワークピースとの間の摩擦を減少させ、(b)研磨粒子の「キャッピング(capping)」を防止する(すなわち、研磨粒子の上に金属粒子が融着するのを防止する)か、または少なくとも研磨粒子がキャッピングする傾向を抑える、(c)研磨粒子とワークピースの界面の温度を下げ、または(d)研削力を軽減する、と考えられる。
【0095】
研削助剤には、幅広い範囲の各種物質が含まれ、それらは無機系であっても有機系であってもよい。研削助剤について化合物の群で例を挙げれば、ワックス、有機ハロゲン化化合物、ハロゲン化物塩ならびに金属およびそれらの合金がある。有機ハロゲン化化合物は典型的には、研磨の際に分解して、ハロゲン酸または気体のハロゲン化化合物を放出する。そのような物質の例としては、テトラクロロナフタレン、ペンタクロロナフタレン、およびポリ塩化ビニルのような塩素化ワックスが挙げられる。ハロゲン化物塩の例としては、塩化ナトリウム、カリウム氷晶石、ナトリウム氷晶石、アンモニウム氷晶石、テトラフルオロホウ酸カリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、フッ化ケイ素、塩化カリウム、および塩化マグネシウムが挙げられる。金属の例としては、スズ、鉛、ビスマス、コバルト、アンチモン、カドミウム、および鉄チタンが挙げられる。その他の研削助剤には、硫黄、有機硫黄化合物、グラファイト、および金属硫化物を挙げることができる。各種の研削助剤を組み合わせて使用することも本発明の範囲に含まれ、場合によってはそれによって相乗効果が得られることもある。
【0096】
研削助剤は、被覆研磨物品および結合研磨物品において特に有用である。被覆研磨物品の場合、研削助剤は典型的には、研磨粒子の表面に塗布されるスーパーサイズコートの中で使用される。しかしながら、場合によっては、研削助剤をサイズコートに添加することもある。被覆研磨物品の中に加える研削助剤の量は典型的には、約50〜300g/m(望ましくは約80〜160g/m)である。ビトリファイド結合研磨物品の場合には、典型的には研削助剤を物品の気孔の中に含浸させる。
【0097】
研磨物品には、本発明による溶融多結晶質研磨粒子を100%含ませてもよいし、あるいは、そのような研磨粒子と他の研磨粒子および/または希釈粒子とのブレンド物を含ませてもよい。しかしながら、研磨物品中の研磨粒子の少なくとも約2重量%、望ましくは少なくとも約5重量%、より望ましくは約30〜100重量%が、本発明による溶融多結晶質研磨粒子となるようにするべきである。場合によっては、本発明による研磨粒子を他の研磨粒子および/または希釈粒子と、その比を5対75重量%、約25対75重量%、約40対60重量%、または約50%対50重量%(すなわち、重量で等量)の間として、ブレンドしてもよい。好適な従来からの研磨粒子の例を挙げれば、溶融酸化アルミニウム(白色溶融アルミナ、加熱処理酸化アルミニウムおよび褐色酸化アルミニウムを含む)、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、ダイヤモンド、立方晶窒化ケイ素、ガーネット、溶融アルミナ−ジルコニア、およびゾルゲル法による研磨粒子、などがある。ゾルゲル法による研磨粒子は、種結晶有りのものでも、無しのものでもよい。同様にして、ゾルゲル法による研磨粒子は、ランダムな形状をしていてもよいし、あるいは、種結晶に関連した、棒状または三角形などのような形状をとっていてもよい。ゾルゲル研磨粒子の例としては、以下の特許に記載されているものを挙げることができる。米国特許第4,314,827号明細書(ライトハイザー(Leitheiser)ら)、米国特許第4,518,397号明細書(ライトハイザー(Leitheiser)ら)、米国特許第4,623,364号明細書(コットリンガー(Cottringer)ら)、米国特許第4,744,802号明細書(シュワーベル(Schwabel))、米国特許第4,770,671号明細書(モンロー(Monroe)ら)、米国特許第4,881,951号明細書(ウッド(Wood)ら)、米国特許第5,011,508号明細書(ワルド(Wald)ら)、米国特許第5,090,968号明細書(ペロウ(Pellow))、米国特許第5,139,978号明細書(ウッド(Wood))、米国特許第5,201,916号明細書(ベルグ(Berg)ら)、米国特許第5,227,104号明細書(バウアー(Bauer))、米国特許第5,366,523号明細書(ローベンホルスト(Rowenhorst)ら)、米国特許第5,429,647号明細書(ラーミー(Larmie))、米国特許第5,498,269号明細書(ラーミー(Larmie))、および米国特許第5,551,963号明細書(ラーミー(Larmie))。原料物質源としてアルミナ粉体を使用して製造した、焼結アルミナ研磨粒子に関するさらに詳しいこともまた、たとえば、米国特許第5,259,147号明細書(ファルツ(Falz))、米国特許5,593,467号明細書(モンロー(Monroe))、および米国特許5,665,127号明細書(モルツゲン(Moltgen))に見出すことができる。溶融研磨粒子についてのさらに詳しいことは、たとえば、以下の特許に見出すことができる。米国特許第1,161,620号明細書(コールター(Coulter))、米国特許第1,192,709号明細書(トーン(Tone))、米国特許第1,247,337号明細書(サウンダース(Saunders)ら)、米国特許第1,268,533号明細書(アレン(Allen))、および米国特許第2,424,645号明細書(バウマン(Baumann)ら)、米国特許第3,891,408号明細書(ラウズ(Rowse)ら)、米国特許第3,781,172号明細書(ペット(Pett)ら)、米国特許第3,893,826号明細書(キナン(Quinan)ら)、米国特許第4,126,429号明細書(ワトソン(Watson))、米国特許第4,457,767号明細書(プーン(Poon)ら)、米国特許第5,023,212号明細書(デュボッツ(Dubots)ら)、米国特許第5,143,522号明細書(ギブソン(Gibson)ら)、および米国特許第5,336,280号明細書(デュボッツ(Dubots)ら)、ならびに米国特許出願第09/495,978号明細書、同第09/496,422号明細書、同第09/496,638号明細書および同第09/496,713号明細書(上記はいずれも、2000年2月2日出願)、および米国特許出願第09/618,876号明細書、同第09/618,879号明細書、同第09/619,106号明細書、同第09/619,191号明細書、同第09/619,192号明細書、同第09/619,215号明細書、同第09/619,289号明細書、同第09/619,563号明細書、同第09/619,729号明細書、同第09/619,744号明細書および同第09/620,262号明細書(以上いずれも、2000年7月19日出願)、同第09/704,843号明細書(いずれも200年11月2日出願)、および米国特許出願第09/772,730号明細書(2001年1月30日出願)。セラミック研磨粒子についてのさらに詳しいことは、たとえば、以下の出願に見出すことができる。米国特許出願第09/922,526号明細書、同第09/922,527号明細書、同第09/922,528号明細書、および同第09/922,530(いずれも、2001年8月2日出願、現在では放棄)、同第10/211,597号明細書、同第10/211,638号明細書、同第10/211,629号明細書、同第10/211,598号明細書、同第10/211,630号明細書、同第10/211,639号明細書、同第10/211,034号明細書、同第10/211,044号明細書、同第10/211,628号明細書、同第10/211,491号明細書、同第10/211,640号明細書、および同第10/211,684号明細書(いずれも、2002年8月2日出願)、および同第10/358,772号明細書、同第10/358,765号明細書、同第10/358,910号明細書、同第10/358,855号明細書、および同第10/358,708号明細書(いずれも、2003年2月5日出願)。場合によっては、研磨粒子をブレンドすることによって得られる研磨物品が、それぞれの研磨粒子100%からなる研磨物品に比較して、改良された研削性能を示すこともあり得る。
【0098】
研磨粒子のブレンド物を用いる場合には、そのブレンド物を形成する研磨粒子のタイプは、同じ粒度のものであってもよい。それとは逆に、その研磨粒子のタイプが異なった粒度を持っていてもよい。たとえば、大きい方の粒度の研磨粒子が本発明による溶融多結晶質研磨粒子であり、小さい方の粒度の粒子が他のタイプの研磨粒子であってもよい。逆に、小さい方の粒度の研磨粒子が本発明による溶融多結晶質研磨粒子であり、大きい方の粒度の粒子が他のタイプの研磨粒子であってもよい。
【0099】
好適な希釈粒子の例としては、大理石、セッコウ、フリント、シリカ、酸化鉄、ケイ酸アルミニウム、ガラス(ガラスバブルおよびガラスビーズを含む)、アルミナバブル、アルミナビーズおよび希釈凝集体を挙げることができる。
【0100】
本発明による溶融多結晶質研磨粒子を研磨凝集体の中に組み込んだり、研磨凝集体と共に使用することも可能である。典型的には研磨凝集体粒子には、複数の研磨粒子、バインダーおよび任意の添加物が含まれる。そのバインダーは有機系および/または無機系であってよい。研磨凝集体はランダムな形状をしていても、あるいはそれらに関連する予め定められた形状をしていてもよい。その形状は、ブロック状、円筒状、角錐状、コイン状、四角形などであってよい。研磨凝集体粒子の典型的な粒度は、約100から約5000マイクロメートルの範囲、典型的には約250〜約2500マイクロメートルである。研磨凝集体粒子についてのさらに詳しいことは、たとえば、以下の特許に見出すことができる。米国特許第4,311,489号明細書(クレスナー(Kressner))、米国特許第4,652,275号明細書(ブレッチャー(Bloecher)ら)、米国特許第4,799,939号明細書(ブレッチャー(Bloecher)ら)、米国特許第5,549,962号明細書(ホームズ(Holmes)ら)、および米国特許第5,975,988号明細書(クリスチャンソン(Christianson))、ならびに米国特許出願第09/688,444号明細書および同第09/688,484号明細書(それぞれ2000年10月16日出願)、米国特許出願第09/688,444号明細書、同第09/688,484号明細書、および同第09/688,486号明細書(それぞれ、2000年10月16日出願)、および米国特許出願第09/971,899号明細書、同第09/972,315号明細書、および同第09/972,316号明細書(それぞれ、2001年10月05日出願)。
【0101】
研磨粒子は、研磨物品の中に均一に分散させてもよいし、あるいは研磨物品の選択した領域または部分に集中させてもよい。たとえば、被覆研磨材の場合には、研磨粒子の層が2層であってもよい。第1層には本発明による溶融多結晶質研磨粒子以外の研磨粒子を含み、第2(最外)層には本発明による溶融多結晶質研磨粒子を含むようにする。結合研磨材の場合にも同様で、研削ホイールに2つの別々の区域が存在してもよい。最外区域には本発明による研磨粒子を含み、それに対して最内区域には本発明による研磨粒子を含まないようにしてもよい。別な方法として、本発明による溶融多結晶質研磨粒子を結合研磨物品の全体にわたって均一に分散させることもできる。
【0102】
被覆研磨物品に関するさらに詳しいことは以下の特許に見出すことができる。たとえば、米国特許第4,734,104号明細書(ブロベルグ(Broberg))、米国特許第4,737,163号明細書(ラーキー(Larkey))、米国特許第5,203,884号明細書(ブキャナン(Buchanan)ら)、米国特許第5,152,917号明細書(ピーパー(Pieper)ら)、米国特許第5,378,251号明細書(カラー(Culler)ら)、米国特許第5,417,726号明細書(スタウト(Stout)ら)、米国特許第5,436,063号明細書(フォレット(Follett)ら)、米国特許第5,496,386号明細書(ブロベルグ(Broberg)ら)、米国特許第5、609,706号明細書(ベネディクト(Benedict)ら)、米国特許第5,520,711号明細書(ヘルミン(Helmin))、米国特許第5,954,844号明細書(ロウ(Law)ら)、米国特許第5,961,674号明細書(ガグリアルディ(Gagliardi)ら)、および米国特許第5,975,988号明細書(クリスチャンソン(Christianson))。結合研磨物品に関するさらに詳しいことは以下の特許に見出すことができる。たとえば、米国特許第4,543,107号明細書(ルー(Rue))、米国特許第4,741,743号明細書(ナラヤナン(Narayanan)ら)、米国特許第4,800,685号明細書(ヘインズ(Haynes)ら)、米国特許第4,898,597号明細書(ヘイ(Hay)ら)、米国特許第4,997,461号明細書(マルコフ−マテニイ(Markhoff−Matheny)ら)、米国特許第5,037,453号明細書(ナラヤナン(Narayanan)ら)、米国特許第5,110,332号明細書(ナラヤナン(Narayanan)ら)、および米国特許第5,863,308号明細書(チー(Qi)ら)。ガラス質結合研磨材に関するさらに詳しいことは以下の特許に見出すことができる。たとえば、米国特許第4,543,107号明細書(ルー(Rue))、米国特許第4,898,597号明細書(ヘイ(Hay)ら)、米国特許第4,997,461号明細書(マルコフ−マテニイ(Markhoff−Matheny)ら)、米国特許第5,094,672号明細書(ジャイルズ、ジュニア(Giles Jr.)ら)、米国特許第5,118,326号明細書(シェルドン(Sheldon)ら)、米国特許第5,131,926号明細書(シェルドン(Sheldon)ら)、米国特許第5,203,886号明細書(シェルドン(Sheldon)ら)、米国特許第5,282,875号明細書(ウッド(Wood)ら)、米国特許第5,738,696号明細書(ウー(Wu)ら)、および米国特許第5,863,308号明細書(チー(Qi))。不織研磨物品に関するさらに詳しいことは、たとえば、米国特許第2,958,593号明細書(フーバー(Hoover)ら)に見出すことができる。
【0103】
本発明は表面を研磨する方法を提供し、その方法には、本発明による少なくとも1種の溶融多結晶質研磨粒子をワークピースの表面に接触させること、および溶融多結晶質研磨粒子と接触表面の少なくとも一方を移動させて、前記表面の少なくとも一部を研磨粒子を用いて研磨することを含む。本発明による溶融多結晶質研磨粒子を用いて研磨する方法には、スナッギング(すなわち、高圧、高切削(high stock)除去)からポリッシング(たとえば、被覆研磨ベルトを用いた医療用インプラントのポリッシング)まであるが、後者の場合は典型的には、細かいグレードの研磨粒子(たとえば、ANSI220およびそれより細かいもの)を用いて実施する。この溶融多結晶質研磨粒子は、精密研磨用途、たとえばビトリファイド結合ホイールを有する粉砕カムシャフトなどにも使用することができる。特定の研磨用途に使用する研磨剤粒子の粒度は、当業者には明らかであろう。
【0104】
本発明による溶融多結晶質研磨粒子を使用する研磨は、乾式で実施しても、湿式で実施してもよい。湿式研磨の場合には液体を、軽質のミスト状から完全な注液までの形態で導入することができる。一般的に使用される液体の例を挙げれば、水、水溶性オイル、有機潤滑剤、およびエマルションなどがある。この液体の役目は、研磨に伴う発熱を抑制し、および/または潤滑剤として機能することである。この液体には、微量の添加物、たとえば殺菌剤や消泡剤などが含まれていてもよい。
【0105】
本発明による溶融多結晶質研磨粒子は、たとえば、アルミニウム金属、炭素鋼、軟鋼、工具鋼、ステンレス鋼、焼入鋼、チタン、ガラス、セラミックス、木材、木材状材料(たとえば、合板およびパーティクルボード)、ペイント、ペイント表面、有機塗装表面などのワークピースを研磨するのに有用である。研磨の際に加える力は典型的には、約1〜約100キログラムの範囲である。
【0106】
本発明の利点と実施形態について、以下の非限定的な実施例でさらに説明するが、それらの実施例で引用する特定の物質およびその量、さらにはその他の条件および詳細が本発明を不当に限定するものと受け取ってはならない。すべての部とパーセントは、特に断らない限り、重量基準である。
【実施例】
【0107】
実施例1
250mLのポリエチレンビン(直径7.3cm)に、64gの酸化アルミニウム粉体(アルコア・インダストリアル・ケミカルズ(Alcoa Industrial Chemicals)から入手、ボーキサイト、AR、商品記号「A16SG])、36gの酸化イットリウム粉体(カリフォルニア州ブレア(Brea,CA)のモリコープ・インコーポレーテッド(Molycorp Inc.)から入手)、100gのイソプロピルアルコール、および200gのアルミナミリング媒体(円筒形状、高さ、直径ともに0.635cm、99.9%アルミナ、クアーズ,ゴールデン,カンパニー(Coors,Golden,CO)から入手)を仕込んだ。ポリエチレン瓶の内容物を、16時間、60回転/分(rpm)でミリングさせた。ミリングさせた後で、ミリング媒体を除き、スラリーを、温めた(約75℃)ガラス(「パイレックス(PYREX)」)のパンの上に層状に注ぎ、冷却および乾燥させた。スラリー物質の層が比較的に薄く(すなわち、厚み約3mm)、またパンを温めてあったので、スラリーは5分以内にケーキを形成し、約30分間で乾燥した。その乾燥させた混合物を破砕し、ペンキ用のはけを使いながら30メッシュの金網(開口寸法600マイクロメートル)を通して篩い分けし、電気加熱炉中(ニュージャージー州ブルームフィールド(Bloomfield,NJ)のCM・ファーネシズ(CM Furnaces)から入手、商品記号「ラピッド・テンプ・ファーネス(Rapid Temp Furnace)」)で、空気雰囲気1325℃で2時間かけて予備焼結させた。
【0108】
その焼結混合物を分級して−80+100メッシュの画分(すなわち、開口寸法180マイクロメートルの金網と開口寸法150マイクロメートルの金網の間で集めた画分、平均粒子径約165マイクロメートル)を得た。そうして得られた篩い分けした粒子を、窒素ガス雰囲気(5標準リットル/分(SLPM))下で、粉体フィーダーに取り付けた漏斗を通して徐々に(約0.5g/分)水素/酸素トーチフレームの中にフィードし、そのトーチフレームによって粒子を溶融させてから、19リットル(5ガロン)の長方形の容器(41センチメートル(cm)×53cm×18cm高さ)の中に直接移動させたが、その容器には乱流域の水(20℃)を連続的に循環させて、溶融微少液滴を急冷させた。その粉体フィーダーには、その底部が70メッシュの金網(開口寸法212マイクロメートル)となっているキャニスター(直径8cm)が含まれていた。使用した具体的な粉体フィーダーは先に説明した図1〜6の図面のものであるが、ここでその金網はステンレス鋼製のものであった(オハイオ州メントル(Mentor,OH)のW.S.タイラー・インコーポレーテッド(W.S.Tyler Inc.)から入手可能)。粉体をキャニスターの中に充填し、回転ブラシを用いて金網の開口部を通して強制的に押出した。そのトーチは、ペンシルバニア州ヘラータウン(Hellertown,PA)のベスレヘム・アパラタス・カンパニー(Bethlehem Apparatus Co.)から入手した、ベスレヘム(Bethlehem)ベンチバーナー・PM2DモデルBであった。そのトーチには、中央フィードポート(内径0.475cm(3/16インチ))があり、そこを通してフィード粒子を火炎の中に導入した。トーチへの水素と酸素の流量は次のとおりであった。水素の流量は42標準リットル/分(SLPM)、酸素の流量は18SLPMであった。火炎が水を打つ角度は約90度であり、火炎の長さ、すなわちバーナーと水の表面との距離は、約38センチメートル(cm)であった。得られた(急冷)粒子をパンに集め、電気加熱炉中で110℃に加熱して、乾燥させた(約30分)。その粒子の形状は球状で、粒度は100マイクロメートルから最高180マイクロメートルまで、平均粒度は約145マイクロメートルであって。
【0109】
結晶質収率パーセントを、得られた火炎形成ビーズから計算した。その測定は以下のようにした。ガラススライドの上に、ビーズを1層の厚みで拡げた。それらのビーズを32倍の光学顕微鏡を用いて観察した。光学顕微鏡の接眼レンズにある十字線をガイドとして使用し、直線的に十字線と水平に並んでいるビーズについて、透明であるかまたは不透明(すなわち、結晶質)のいずれであるかを、その光学的透明度に従って計数した。全部で500個のビーズを計数し、結晶質収率パーセントは、不透明なビーズの数を、計数した全部のビーズの数で割り算し、それに100をかけ算することにより求めた。それらの粒子は、圧倒的に不透明であった(数で>90%)。
【0110】
粉体X線回折法、XRD(X線回折計(ニュージャージー州モーウォー(Mahwah、NJ)のフィリップス(Phillips)から入手、商品記号「フィリップス(PHILLIPS)XRG3100」)で1.54050オングストロームの銅Kα1照射を使用)を用いて、実施例1の結晶質粒子の中に存在する相を測定した。相は、結晶化させた材料のXRD線図中に存在するピークを、JCPDSデータベース(インターナショナル・センター・フォア・ディフラクション・データ(International Center for Diffraction Data)による出版物)から得られる結晶質相のXRDパターンと比較することによって求めた。実施例1の物質で得られた結晶質相は、ガーネット結晶構造(YAG)を示すイットリア・アルミナ結晶と、アルファおよびガンマAl相の混合物とであった。
【0111】
以下の方法により、微細構造分析のためのサンプルを調製した。約1gの実施例1の粒子を、固定用樹脂(イリノイ州レーク・ブラフ(Lake Bluff,IL))のビューラー(Buehler)から商品記号「トランスオプティック・パウダー(TRANSOPTIC POWDER)」として入手)に取り付けた。樹脂から作った円筒は、その直径が約2.5cmで、高さが約1.9cmであった。ポリッシャー(イリノイ州レーク・ブラフ(Lake Bluff、IL)のビューラー(Buehler)から商品記号「エコメット(ECOMET)3」として入手したもの)を使用した通常のポリッシング法により、固定した切片を調製した。このサンプルは、125マイクロメートルのダイヤモンドを含むダイヤモンドホイールを用いて約3分間ポリッシングした後で、それぞれ45、30、15、9、3および1マイクロメートルのスラリーを用いて5分間ポリッシングした。取付け、ポリッシングしたサンプルを、金・パラジウムの薄膜でコーティングしてから、JEOL・SEM(モデルJSM840A)を用いて観察した。
【0112】
図10は、実施例1の物質のポリッシングしたセクションの走査型電子顕微鏡(SEM)の電子顕微鏡写真である。実施例1の物質の微細構造は、マトリックスのアルミナ103の中でYAG結晶101が、樹枝状に成長して得られたものであることが観察された。倍率を12,000倍にして観察しても、マトリックスの中に共晶構造の存在は認められなかった。樹枝状YAG結晶の平均サイズは、直線切断法を用いて求めた。微細構造の後方散乱電子顕微鏡(BSE)写真を用いて、以下のようにして、平均結晶子径を求めた。顕微鏡写真の上にランダムに引いた直線の単位長さ(N)あたりの、それを切断している結晶子の数を計数する。この数字から、以下の式を使用して平均の結晶子の径を求める。
【数2】

ここでNは、単位長さを切断している結晶子の数であり、Mは顕微鏡写真の倍率である。その樹枝状YAG結晶は、約1.5マイクロメートルの平均直径を有していた。
【0113】
実施例1の結晶質粒子の平均硬度は、以下のようにして求めた。微細構造評価のところに記載したのと同じ方法を用い、約1gのビーズを取り付けてポリッシングした。微小硬度の測定には従来タイプのビッカース圧子を取り付けた微小硬度試験器(たとえば、日本国東京の(株)ミツトヨ(Mitutoyo Corporation)から商品記号「ミツトヨ(MITUTOYO)MVK−VL」として入手したもの)を使用し、押し込み荷重として200gを用いた。その微小硬度測定は、ASTM試験法E384「材料の微小硬度のための試験方法」(1991)に記載のガイドラインに従って行ったが、その開示を参考として引用し本明細書に組み入れる。実施例1の物質の平均微小硬度(10回の測定の平均値)は、9.8GPaであった。
【0114】
実施例2
実施例2の粒子は、実施例1の記載と同様にして調製したが、ただし、使用した原料物質の量は、50gのアルミナ粒子(「A16SG])、50gの酸化イットリウム粒子(モリコープ・インコーポレーテッド(Molycorp Inc.)から入手)、100gのイソプロピルアルコール、および200gのアルミナミリング媒体(円筒形状、高さ、直径ともに0.635cm、99.9%アルミナ、クアーズ(Coors)から入手)であった。さらに、分級したフィード粒子については、火炎成形操作の前の予備焼結は行わなかった。火炎成形では、フィード粒子の径は−45+60メッシュの範囲(すなわち、開口寸法250マイクロメートルと開口寸法355マイクロメートルとの金網の間で集めた画分で、その平均粒度が約300マイクロメートル)であった。
【0115】
火炎形成された粒子の形状は球状で、粒度は約210マイクロメートルから最高約300マイクロメートルまで、その平均粒度は約250マイクロメートルであった。
【0116】
実施例2の物質の結晶質相含量は、実施例1で述べたようにして、XRDにより求めた。実施例2の物質ついて同定された結晶質相は、YAG、およびガンマ(微量)とアルファAl相の混合物であった。
【0117】
実施例2の物質の微細構造は、実施例1で述べたSEM法を使用して分析した。その物質の微細構造は、アルミナとYAGを含む共晶マトリックス中のYAGの初晶からできていることが観察された。YAGの初晶は、ロッド状またはより等軸晶の形状のいずれかであって、樹枝状に成長したパターンで配列していた。YAGの初晶の間の微細構造は、明確な格子を有さない特徴的な共晶構造であった。
【0118】
実施例1の記載のようにして硬度を測定すると、8.9GPaであった。
【0119】
実施例3
実施例3の粒子は、実施例2の記載と同様にして調製したが、ただし、使用した原料物質の量は、66gのアルミナ粒子(「A16SG])、34gの酸化イットリウム粒子(モリコープ・インコーポレーテッド(Molycorp Inc.)から入手)、100gのイソプロピルアルコール、および200gのアルミナミリング媒体(円筒形状、高さ、直径ともに0.635cm、99.9%アルミナ、クアーズ(Coors)から入手)であった。
【0120】
火炎形成された粒子の形状は球状で、粒度は約210マイクロメートルから最高約300マイクロメートルまで、その平均粒度は約250マイクロメートルであった。
【0121】
実施例3の物質の結晶質相含量は、実施例1で述べたようにして、XRDにより求めた。実施例3の物質について同定された結晶質相は、YAG、およびガンマ(微量)とアルファAl相の混合物であった。
【0122】
実施例3の物質の微細構造は、実施例1で述べたSEMを使用して分析した。その物質の微細構造は、アルミナとYAGを含む共晶マトリックス中のアルミナの初晶からできていることが観察された。そのアルミナの初晶は等軸晶で、切り子面を有していた。そのアルミナの初晶の平均サイズは、直線切断法により測定して、約3マイクロメートルであった。アルミナの初晶の間の微細構造は、明確な格子を有さない特徴的な共晶構造であった。
【0123】
実施例1の記載のようにして硬度を測定すると、11.7GPaであった。
【0124】
実施例4
実施例4の粒子は、実施例2の記載と同様にして調製したが、ただし、使用した原料物質の量は、80gのアルミナ粒子(「A16SG])、20gの酸化イットリウム粒子(モリコープ・インコーポレーテッド(Molycorp Inc.)から入手)、100gのイソプロピルアルコール、および200gのアルミナミリング媒体(円筒形状、高さ、直径ともに0.635cm、99.9%アルミナ、クアーズ(Coors)から入手)であった。
【0125】
火炎形成された粒子の形状は球状で、粒度は約210マイクロメートルから最高約300マイクロメートルまで、その平均粒度は約250マイクロメートルであった。
【0126】
実施例4の物質の結晶質相含量は、実施例1で述べたようにして、XRDにより求めた。実施例4の物質について同定された結晶質相は、YAGと、アルファAl相であった。
【0127】
実施例4の物質の微細構造は、実施例1で述べたSEM法を使用して分析した。図11は、実施例4の物質のポリッシングしたセクションの走査型電子顕微鏡(SEM)の電子顕微鏡写真である。そのサンプルの微細構造は、アルミナとYAGを含む共晶マトリックス113中のアルミナの初晶Al111からできていることが観察された。そのアルミナの初晶は等軸晶で、切り子面を有していた。そのアルミナの初晶の平均サイズは、直線切断法により測定して、約4マイクロメートルであった。アルミナの初晶の間の微細構造は、明確な格子を有さない特徴的な共晶構造であった。
【0128】
実施例1の記載のようにして硬度を測定すると、13.2GPaであった。
【0129】
本発明の範囲および本発明の精神から外れることなく、本発明の各種の修正と変更が可能であることは当業者には明らかであるが、本発明が、本明細書に記載した説明のための実施形態によって不当に限定されるものではないことは、理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】火炎−溶融装置のための粉体フィーダー集成装置を含む装置の実施形態の1例の側面図である。
【図2】図1の装置の断面図である。
【図3】図1の装置の分解断面図である。
【図4】図1の粉体フィーダー集成装置の一部の側面図である。
【図5】図1の粉体フィーダー集成装置の一部の斜視図である。
【図6】図1の粉体フィーダー集成装置の一部の断面図である。
【図7】本発明による溶融多結晶質研磨粒子を含む被覆研磨物品の部分破断概略図である。
【図8】本発明による溶融多結晶質研磨粒子を含む結合研磨物品の斜視図である。
【図9】本発明の方法による溶融多結晶質研磨粒子を含む不織研磨物品の一部の拡大概略図である。
【図10】実施例1により製造した溶融多結晶質物質の電子顕微鏡写真である。
【図11】実施例4により製造した溶融多結晶質物質の電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AlおよびYを含む溶融多結晶質物質であって、Alの少なくとも一部が、転移Alであり、そして、AlおよびYの少なくとも一部が、複合Al・Yとして存在している、溶融多結晶質物質。
【請求項2】
前記複合Al・Yがガーネット結晶構造を示す、請求項1に記載の溶融多結晶質物質。
【請求項3】
前記複合Al・Yがペロブスカイト結晶構造を示す、請求項1に記載の溶融多結晶質物質。
【請求項4】
前記複合Al・Yが樹枝状結晶を含む微細構造を示す、請求項1に記載の溶融多結晶質物質。
【請求項5】
前記樹枝状結晶が、2マイクロメートル未満の平均サイズを有する、請求項4に記載の溶融多結晶質物質。
【請求項6】
少なくとも50重量パーセントのAlを含む、請求項1に記載の溶融多結晶質物質。
【請求項7】
前記複合Al・Yがガーネット結晶構造を示す、請求項6に記載の溶融多結晶質物質。
【請求項8】
前記複合Al・Yがペロブスカイト結晶構造を示す、請求項6に記載の溶融多結晶質物質。
【請求項9】
前記複合Al・Yが樹枝状結晶を含む微細構造を示す、請求項6に記載の溶融多結晶質物質。
【請求項10】
前記樹枝状結晶が、2マイクロメートル未満の平均サイズを有する、請求項9に記載の溶融多結晶質物質。
【請求項11】
AlおよびYを含む溶融多結晶質粒子であって、Alの少なくとも一部が、転移Alであり、そしてAlおよびYの少なくとも一部が、複合Al・Yとして存在している、溶融多結晶質粒子。
【請求項12】
前記複合Al・Yがガーネット結晶構造を示す、請求項11に記載の溶融多結晶質粒子。
【請求項13】
前記複合Al・Yがペロブスカイト結晶構造を示す、請求項11に記載の溶融多結晶質粒子。
【請求項14】
前記複合Al・Yが樹枝状結晶を含む微細構造を示す、請求項1に記載の溶融多結晶質粒子。
【請求項15】
請求項11に記載の複数の溶融多結晶質粒子。
【請求項16】
それぞれの粒子の全重量を基準にして、少なくとも50重量パーセントのAlを含む、請求項15に記載の複数の溶融多結晶質粒子。
【請求項17】
規定された公称グレードを有する複数の粒子であって、前記複数の粒子の少なくとも一部が、請求項16に記載の粒子である、複数の粒子。
【請求項18】
前記複合Al・Yがガーネット結晶構造を示す、請求項17に記載の規定された公称グレードを有する複数の粒子。
【請求項19】
前記複合Al・Yがペロブスカイト結晶構造を示す、請求項17に記載の規定された公称グレードを有する複数の粒子。
【請求項20】
前記複合Al・Yが樹枝状結晶を含む微細構造を示す、請求項17に記載の規定された公称グレードを有する複数の粒子。
【請求項21】
前記樹枝状結晶が、2マイクロメートル未満の平均サイズを有する、請求項20に記載の規定された公称グレードを有する複数の粒子。
【請求項22】
前記規定された公称グレードが、ANSI、FEPA、またはJIS標準の少なくとも一つである、請求項17に記載の規定された公称グレードを有する複数の粒子。
【請求項23】
それぞれの溶融多結晶質粒子の全重量を基準にして、少なくとも75重量パーセントのAlを含む、請求項16に記載の複数の溶融多結晶質粒子。
【請求項24】
それぞれの溶融多結晶質粒子の全重量を基準にして、少なくとも85重量パーセントのAlを含む、請求項16に記載の複数の溶融多結晶質粒子。
【請求項25】
重量にして、それぞれの溶融多結晶質粒子の全重量を基準にして、40〜90重量パーセントの範囲のAlと、60〜10重量パーセントの範囲のYとを含む、請求項16に記載の複数の溶融多結晶質粒子。
【請求項26】
(a)1〜10マイクロメートルの範囲の平均結晶子径を有するアルファアルミナ、および(b)明瞭な結晶質相として存在する複合Y・金属酸化物を含む、溶融多結晶質物質。
【請求項27】
少なくとも50重量パーセントのAlを含む、請求項26に記載の溶融多結晶質物質。
【請求項28】
AlおよびYを含む溶融多結晶質物質を加熱して、請求項26に記載の溶融多結晶質物質を提供する工程を含む、溶融多結晶質物質を製造するための方法であって、
Alの少なくとも一部は、転移Alであり、AlおよびYの少なくとも一部が複合Al・Yとして存在する、方法。
【請求項29】
請求項26に記載の溶融多結晶質物質を製造するための方法であって、前記方法は、
AlおよびYを含む溶融物を提供する工程、
前記溶融物を冷却して、溶融多結晶質物質を直接提供する工程、
を含む、方法。
【請求項30】
(a)1〜10マイクロメートルの範囲の平均結晶子径を有するアルファアルミナ、および(b)明瞭な結晶質相として存在する複合Y・金属酸化物を含む、溶融多結晶質研磨粒子。
【請求項31】
請求項30に記載の複数の溶融多結晶質研磨粒子。
【請求項32】
規定された公称グレードを有する複数の研磨粒子であって、前記複数の研磨粒子の少なくとも一部が、請求項31に記載の溶融多結晶質研磨粒子である、複数の研磨粒子。
【請求項33】
前記複数の溶融多結晶質研磨粒子の少なくとも一部が、1〜8マイクロメートルの範囲の平均結晶子径を有する、請求項32に記載の複数の研磨粒子。
【請求項34】
前記複数の溶融多結晶質研磨粒子の少なくとも一部が、1〜5マイクロメートルの範囲の平均結晶子径を有する、請求項32に記載の複数の研磨粒子。
【請求項35】
前記複数の溶融多結晶質研磨粒子の少なくとも一部が、それぞれの溶融多結晶質研磨粒子の全重量を基準にして、少なくとも50重量パーセントのAlを含む、請求項32に記載の複数の研磨粒子。
【請求項36】
前記複数の溶融多結晶質研磨粒子の少なくとも一部が、それぞれの溶融多結晶質研磨粒子の全重量を基準にして、少なくとも75重量パーセントのAlを含む、請求項32に記載の複数の研磨粒子。
【請求項37】
前記複数の溶融多結晶質研磨粒子の少なくとも一部が、それぞれの溶融多結晶質研磨粒子の全重量を基準にして、少なくとも85重量パーセントのAlを含む、請求項32に記載の複数の研磨粒子。
【請求項38】
前記複数の溶融多結晶質研磨粒子の少なくとも一部が、重量にして、それぞれの溶融多結晶質研磨粒子の全重量を基準にして、40〜90重量パーセントの範囲のAlと、60〜10重量パーセントの範囲のYとを含む、請求項32に記載の複数の研磨粒子。
【請求項39】
前記規定された公称グレードが、ANSI、FEPA、またはJIS標準の少なくとも一つである、請求項32に記載の複数の研磨粒子。
【請求項40】
それぞれの溶融多結晶質研磨粒子の全重量を基準にして、少なくとも50重量パーセントのAlを含む、請求項31に記載の複数の溶融多結晶質研磨粒子。
【請求項41】
それぞれの溶融多結晶質研磨粒子の全重量を基準にして、少なくとも75重量パーセントのAlを含む、請求項31に記載の複数の溶融多結晶質研磨粒子。
【請求項42】
それぞれの溶融多結晶質研磨粒子の全重量を基準にして、少なくとも85重量パーセントのAlを含む、請求項31に記載の複数の溶融多結晶質研磨粒子。
【請求項43】
重量にして、それぞれの溶融多結晶質研磨粒子の全重量を基準にして、40〜90重量パーセントの範囲のAlと、60〜10重量パーセントの範囲のYとを含む、請求項31に記載の複数の溶融多結晶質研磨粒子。
【請求項44】
バインダーおよび研磨粒子を含む研磨物品であって、前記研磨粒子の少なくとも一部が、請求項31に記載の溶融多結晶質研磨粒子である、研磨物品。
【請求項45】
前記研磨物品が、結合研磨物品、被覆研磨物品、および不織研磨物品からなる群より選択される、請求項44に記載の研磨物品。
【請求項46】
前記溶融多結晶質研磨粒子が、それぞれの溶融多結晶質研磨粒子の全重量を基準にして、少なくとも75重量パーセントのAlを含む、請求項44に記載の研磨物品。
【請求項47】
前記溶融多結晶質研磨粒子が、それぞれの溶融多結晶質ベースの研磨粒子の全重量を基準にして、少なくとも85重量パーセントのAlを含む、請求項44に記載の研磨物品。
【請求項48】
前記溶融多結晶質研磨粒子が、重量にして、それぞれの溶融多結晶質研磨粒子の全重量を基準にして、40〜90重量パーセントの範囲のAlと、60〜10重量パーセントの範囲のYとを含む、請求項44に記載の研磨物品。
【請求項49】
AlおよびYを含む複数の溶融多結晶質粒子を加熱して、請求項31に記載の溶融多結晶質研磨粒子を提供する工程を含む、溶融多結晶質研磨粒子を製造するための方法であって、
Alの少なくとも一部は、転移Alであり、AlおよびYの少なくとも一部が複合Al・Yとして存在する、方法。
【請求項50】
前記溶融多結晶質研磨粒子が、それぞれの溶融多結晶質研磨粒子の全重量を基準にして、少なくとも75重量パーセントのAlを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記溶融多結晶質研磨粒子が、それぞれの溶融多結晶質研磨粒子の全重量を基準にして、少なくとも85重量パーセントのAlを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記溶融多結晶質研磨粒子が、重量にして、それぞれの溶融多結晶質研磨粒子の全重量を基準にして、40〜90重量パーセントの範囲のAlと、60〜10重量パーセントの範囲のYとを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
請求項31に記載の溶融多結晶質研磨粒子を製造するための方法であって、前記方法は、
AlおよびYを含む溶融物を提供する工程、
前記溶融物を前駆体粒子に成形する工程、
前記前駆体粒子を冷却して、AlおよびYを含む溶融多結晶質粒子を直接提供する工程であって、Alの少なくとも一部は、転移Alであり、AlおよびYの少なくとも一部は、複合Al・Yとして存在している工程、および
AlおよびYを含む前記溶融多結晶質粒子を加熱して、請求項31に記載の溶融多結晶質研磨粒子を提供する工程、
を含む方法。
【請求項54】
前記溶融多結晶質研磨粒子を分級して、前記溶融多結晶質研磨粒子を含む規定された公称グレードを提供する工程をさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
溶融多結晶質研磨粒子を製造するための方法であって、前記方法は、
AlおよびYを含む溶融物を提供する工程、
前記溶融物を冷却して、AlおよびYを含む溶融多結晶質物質を提供する工程であって、Alの少なくとも一部は、転移Alであり、AlおよびYの少なくとも一部は、複合Al・Yとして存在している工程、
AlおよびYを含む前記溶融多結晶質物質を破砕して、AlおよびYを含む粒子を提供する工程、および
前記粒子を加熱して、請求項31に記載の溶融多結晶質研磨粒子を提供する工程、
を含む方法。
【請求項56】
前記溶融多結晶質研磨粒子を分級して、前記溶融多結晶質研磨粒子を含む規定された公称グレードを提供する工程をさらに含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
規定された公称グレードを提供するために、加熱する前に、AlおよびYを含む前記溶融多結晶質粒子を分級する工程をさらに含む、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
表面を研磨するための方法であって、前記方法は、
請求項26に記載の少なくとも1種の溶融多結晶質研磨粒子をワークピースの表面に接触させる工程、および
前記溶融多結晶質研磨粒子または前記接触させている表面の少なくとも一方を移動させて、前記溶融多結晶質研磨粒子を用いて前記表面の少なくとも一部を研磨する工程、
を含む方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公表番号】特表2007−514856(P2007−514856A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545676(P2006−545676)
【出願日】平成16年11月23日(2004.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/039396
【国際公開番号】WO2005/066097
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
2.PYREX
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】