説明

アルミニウム製品のノンフラックスロー付け炉

【課題】アルゴンガスによって炉内を高純度の不活性雰囲気を保つ構成とし、アルゴンガスを回収しながら再利用を可能とし、フラックスを使用することなく、ロー付け品質を向上させ、ランニングコストを低減させる。
【解決手段】ロー付け室4及び冷却室5にアルゴンガスを充填するとともに、そのアルゴンガスの一部を回収タンク10に供給し、回収タンク10内のアルゴンガスを、ロー付けするアルミニウム製品をロー付け室4に搬入する時及びロー付けしたアルミニウム製品を冷却室5から搬出する時に、搬入真空パージ室2及び搬出真空パージ室7の空気を排気しアルゴンガスで置換し、アルゴンガスの充填されたロー付け室4及び冷却室5における圧力は、アルゴンガスの充填された搬入真空パージ室2及び搬出真空パージ室7より高く設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム製品のロー付け炉に関し、特にフラックスを使用しなくてもアルミニウム製品のロー付けが可能なアルミニウム製品のノンフラックスロー付け炉に関する。
【背景技術】
【0002】
金属のロー付けのための炉は、接合部品表面の酸化を防ぐことが重要である。ステンレス製品のロー付けは、1000℃〜1200℃位のロー付け温度で真空雰囲気中または水素雰囲気中で行い、還元し易いので、接合部品表面の酸化は比較的問題とならない。
【0003】
しかしながら、アルミニウム製品のロー付け炉においては、ロー付けは600℃前後の温度で行いアルミニウムは難還元金属であり、還元しにくいので、接合部品表面の酸化が生じやすい。そのために、従来は、接合部品表面の酸化を防ぎ、また表面の酸化被膜を除去し、ローの流れを良くするために、フラックスが使用されている。
【0004】
また、炉内雰囲気として不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス)を用い接合部品表面の酸化及びフラックスの酸化を抑制している。加えて、炉内壁、マッフル、断熱材等の一部又は全部をグラファイト等の炭素質で構成している。これにより、外乱として空気、酸素が存在しても、炭素質として接触し反応して、炉内雰囲気ガスの酸素濃度を低く保つようにしている(特許文献1、2、3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−5993号公報
【特許文献2】特開平11−83332号公報
【特許文献3】特開2004−50223号公報
【特許文献4】特開2007−319924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の不活性ガス雰囲気の窒素ガスは、接合部品表面が窒化し易く、ロー付け性能を低下させるので、必ずしも好ましくない。そこで、不活性ガス雰囲気を保つためには、不活性ガスをアルゴンガスとして使用することが好ましい。
【0007】
しかしながら、アルゴンガスはコストが高いために、アルゴンガスを不活性ガス雰囲気を保つために使用すると、稼働コストが高くなる。そこで、使用したアルゴンガスを回収して再利用を図ることができれば、稼働コストを下げられるだけでなく、資源の有効利用を促進することができる。
【0008】
しかし、ロー付け炉内で使用したアルゴンガスは、回収しても、余剰のフラックスが不純物として混入し、再利用しても、適正な不活性雰囲気を保つことができず、ロー付け品質を低下させることとなる。
【0009】
本発明は、上記従来の問題を解決することを目的とするものであり、次の点を主な課題とする。
(1)フラックスを使用することなく、アルゴンガスによって炉内を高純度の不活性雰囲気低酸素雰囲気に保つことのできるアルミニウム製品のロー付け炉を実現する。
【0010】
(2)このような構成とすることにより、アルゴンガスを回収しながら再利用を可能とし、低酸素雰囲気化で、ロー付け品質を向上させる。
(3)しかも、アルゴンガスの回収使用及びフラックスの不使用(ノンフラックス)により、ロー付け工程にかかるランニングコストを低減させる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するために、搬入真空パージ室と、ロー付け室と、冷却室と、搬出真空パージ室と、ロー付け室及び冷却室を通して設けられた搬送ベルト装置又は搬送ローラーハース装置と、を備えたアルミニウム製品のロー付け炉であって、ロー付け室及び冷却室にアルゴンガスを充填するとともに、そのアルゴンガスの一部を回収タンクに供給可能とし、回収タンクのアルゴンガスを、搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室に供給し、かつ搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室から回収可能とし、ロー付けするアルミニウム製品をロー付け室に搬入する時及びロー付けしたアルミニウム製品を冷却室から搬出する時に、搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室の空気を排気し、回収タンクのアルゴンガスを充填可能とする構成であり、アルゴンガスの充填されたロー付け室及び冷却室における圧力は、アルゴンガスの充填された搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室より高くなるように構成されており、フラックスを使用することなくアルミニウム製品のロー付けを可能とすることを特徴とするアルミニウム製品のロー付け炉を提供する。
【0012】
本発明は上記課題を解決するために、搬入真空パージ室と、ロー付け室と、冷却室と、搬出真空パージ室と、ロー付け室及び冷却室を通して設けられた搬送ベルト装置又は搬送ローラーハース装置と、アルゴンガスの配管系と、アルゴンガスの回収タンクと、空気排気系と、を備えたアルミニウム製品のロー付け炉であって、ロー付け室は、断熱材で囲まれて形成された炉室を備え、該炉室内には、炉室の長手方向に延びるグラファイト製マッフルと、マッフルの外部に設置された複数のラジアントチューブヒータ又は炭化珪素ヒータを有し、搬送ベルト装置のベルト又は搬送ローラーハース装置のローラーは、耐熱鋼又は炭素繊維強化炭素複合材で形成されており、搬送ベルト装置又は搬送ローラーハース装置の搬送部はマッフル内を通過し、アルゴンガスの配管系は、ロー付け室及び冷却室にアルゴンガスを充填するとともに、そのアルゴンガスの一部を回収タンクに供給し、回収タンクのアルゴンガスを、搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室に供給し、かつ搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室から回収可能とし、ロー付けするアルミニウム製品をロー付け室に搬入する時及びロー付けしたアルミニウム製品を冷却室から搬出する時に、搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室の空気を排気し回収タンクから供給するアルゴンガスを充填する構成であり、アルゴンガスの充填されたロー付け室及び冷却室における圧力は、アルゴンガスの充填された搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室より高くなるように構成されており、フラックスを使用することなくアルミニウム製品のロー付けを可能とすることを特徴とするアルミニウム製品のロー付け炉を提供する。
【0013】
アルゴンガスの配管系は、アルゴンガスをロー付け室に供給するアルゴンガス源供給管と、アルゴンガスをロー付け室及び冷却室からアルゴンガス回収タンクに供給するアルゴンガス供給管と、アルゴンガスを回収タンクから搬入真空パージ室と搬出真空パージ室に供給するパージ送りアルゴンガス供給管と、搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室から、アルゴンガス用真空ポンプで吸引したアルゴンガスを、回収タンクへ回収するアルゴンガス回収管と、を備え、空気排気系は、搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室からそれぞれ空気用真空ポンプで吸引した空気を排気する空気排気管を備えている構成とすることが好ましい。
【0014】
搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室は、それぞれ独立して開閉可能な入口扉と出口扉を有し、ロー付けするアルミニウム製品をロー付け室に搬入する時及びロー付けしたアルミニウム製品を冷却室から搬出する時は、搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室は、それぞれ入口扉と出口扉を閉じて密閉状態とし、空気が排気されてからアルゴンガスが充填され、その後、搬入真空パージ室の出口扉及び搬出真空パージ室の入口扉が開く構成とすることが好ましい。
【0015】
ロー付け室の前部には前室が一体で設けられており、冷却室の後部には後室が一体で設けられており、前室及び後室には搬送ベルト装置の前後のベルトプーリが配置されている構成である、又は前室及び後室のいずれかに設けられた搬送ローラーハース装置のローラーはローラ駆動装置で駆動される構成であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フラックスを使用することなく、アルゴンガスによって炉内を高純度の不活性雰囲気を保つ構成としたので、アルゴンガスを回収しながら再利用を可能とし、低酸素雰囲気化で、ロー付け品質を向上させることができ、しかも、アルゴンガスの回収使用及びフラックスの不使用(ノンフラックス)により、ロー付け工程にかかるランニングコストを低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るアルミニウム製品のロー付け炉の実施例1を説明する図である。
【図2】実施例1の制御装置を説明する図である。
【図3】本発明に係るアルミニウム製品のロー付け炉の実施例2を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るアルミニウム製品のロー付け炉を実施するための形態を実施例に基づき図面を参照して、以下説明する。
【0019】
アルミニウム製品のロー付け炉においては、炉内雰囲気を低酸素雰囲気に保つ必要がある。本発明のアルミニウム製品のロー付け炉の特徴は、フラックスを使用することなく、アルゴンガスによって炉内を高純度の不活性雰囲気を保つ構成とし、しかもアルゴンガスを回収しながら再利用し、少ないアルゴンガスの使用量で炉内の低酸素雰囲気化を維持し、ロー付け品質を向上させ、ラニングコストも低減できる構成である。
【0020】
さらに、本発明のアルミニウム製品のロー付け炉は、炉内を低酸素雰囲気に保つために、マッフル等を、非酸化性の材料を使用して構成している。
【実施例1】
【0021】
本発明のアルミニウム製品のロー付け炉の実施例1を、図1を参照して以下に説明する。図1は、本発明の実施例1のアルミニウム製品のロー付け炉1の全体構成を示す図である。アルミニウム製品のロー付け炉1は、全体的には、搬入真空パージ室2、前室3、ロー付け室4、冷却室5、後室6、搬出真空パージ室7、搬送ベルト装置8、アルゴンガスの配管系9、回収タンク10及び空気排気系11を備えている。
【0022】
アルミニウム製品のロー付け炉1の搬入真空パージ室2の前方に入口テーブル16が設けられており、また搬出真空パージ室7の後方に出口テーブル17が設けられている。入口テーブル16は、ロー付けすべきアルミニウム製品を搬入真空パージ室2へ送り込む手段であり、出口テーブル17はロー付けされ冷却室5から搬出され、搬出真空パージ室7から送り出されてくるアルミニウム製品を受け入れる手段である。
【0023】
ロー付け室4は、炉内壁20でトンネル状の炉室21が形成されており、炉内壁20の外側は断熱材22で囲まれている。
【0024】
ロー付け室4の中心部には、ロー付け室4の入り口から出口に向けて長手方向(前後方向)に延びるように、マッフル26が配設されている。このマッフル26は、グラファイトで形成されており、加熱通路28を構成するとともに、酸素のゲッター材、雰囲気保持及び保温板としての機能を奏する。
【0025】
マッフル26の上下には、複数のヒータ27が長手方向に間隔をおいて配設されている。複数のヒータ27は、棒状の炭化珪素ヒータ(「炭化珪素質ヒータ」とも言う)27が使用されており、それぞれロー付け室4の長手方向に直交して水平に取り付けられている。ヒータ27は、マッフル26で構成される加熱通路28内を600℃前後になるように加熱する。なお、複数のヒータ27は、炭化珪素ヒータに替えて、複数のラジアントチューブヒータでも良い。
【0026】
搬送ベルト装置8は、搬送ベルト31と、ベルト駆動装置32と、ベルトプーリ33と、を備えている。前室3、ロー付け室4、冷却室5、後室6を通して、C/C製の搬送ベルト31が配設されている。ここで、「C/C製」とは、 炭素繊維強化炭素複合材(「C/Cコンポジット」という)で製造されたという意味である。
【0027】
前室3はロー付け室4の前部にロー付け室4と一体に設けられており、後室6は冷却室5の後部に冷却室5と一体に設けられている。前室3及び後室6には、それぞれ搬送ベルト31の前後のベルトプーリ33が設置されている。
【0028】
搬送ベルト31は、ロー付け室4内でマッフル26で囲まれる加熱通路28内を通過するように設けられている。これにより、ロー付けされるアルミニウム製品は、搬送ベルト31で搬送され加熱通路28内を通過する。
【0029】
搬入真空パージ室2の入口側及び出口側には、それぞれ独立して開閉可能な入口扉35及び出口扉36が設けられている。入口扉35及び出口扉36が同時に閉じている時には、搬入真空パージ室2は密閉される。
【0030】
同様に、搬出真空パージ室7の入口側及び出口側には、それぞれ独立して開閉可能な入口扉39及び出口扉40が設けられている。入口扉39及び出口扉40が同時に閉じている時には、搬出真空パージ室7は密閉される。
【0031】
アルゴンガスの配管系9は、次の配管等を備えている。
(1)アルゴンガスをその供給源45から、供給源ポンプ46によって、ロー付け室4へ供給するアルゴンガス源供給管47。
(2)アルゴンガスをロー付け室4及び冷却室5から、回収タンク10へ供給するアルゴンガス供給管50。このアルゴンガス供給管50の途中には、供給ポンプ51が設けられている。
(3)アルゴンガスを回収タンク10から、パージ送りポンプ54で加圧して搬出真空パージ室7及び搬出真空パージ室7へ供給するパージ送りアルゴンガス供給管55。
(4)搬入真空パージ室2及び搬出真空パージ室7から、アルゴンガス用真空ポンプ58で吸引したアルゴンガスを、回収タンク10へ回収するアルゴンガス回収管59。
(5)回収タンク10から余剰のアルゴンガスを排気するアルゴンガス排気管62。
【0032】
空気排気系11は、搬入真空パージ室2及び搬出真空パージ室7から空気用真空ポンプ63によって空気を排気する空気排気管64と、を備えている。
【0033】
アルゴンガスを、供給源45から供給源ポンプ46によってアルゴンガス源供給管47を通してロー付け室4に供給する。この場合、ロー付け室4及び冷却室5の圧力を、常時、大気圧以上に保持するように、炉内圧力センサ70、冷却室圧力センサ71圧力を検知して供給源ポンプ46を制御する。
【0034】
そして、ロー付け室4及び冷却室5からアルゴンガスの一部をアルゴンガス供給管50を通して回収タンク10に供給する。
【0035】
回収タンク10からアルゴンガスを、パージ送りアルゴンガス供給管55を通して搬入真空パージ室2及び搬出真空パージ室7に供給する。アルゴンガスが充填されたロー付け室4及び冷却室5の圧力を、アルゴンガスが充填された搬入真空パージ室2及び搬出真空パージ室7における圧力より高くなるように設定されている。
【0036】
具体的には、ロー付け室4、冷却室5、搬入真空パージ室2及び搬出真空パージ室7の圧力を、それぞれ炉内圧力センサ70、冷却室圧力センサ71、搬入真空パージ室圧力センサ72、搬出真空パージ室圧力センサ73で検知して、それらの検知に基づいて、図2に示すように、制御装置75(マイコン等が使用される)で供給源ポンプ46、パージ送りポンプ54、 アルゴンガス用真空ポンプ58の動作を制御する。これによって、ロー付け4、冷却室5、搬入真空パージ室2、搬出真空パージ室7の圧力をそれぞれ制御する。
【0037】
回収タンク10内のアルゴンガスがその収容容量を越えた場合に、余剰のアルゴンガスを排気するためのアルゴンガス排気管62が回収タンク10に接続されている。
【0038】
なお、搬入真空パージ室2及び搬出真空パージ室7には、それぞれ大気復圧管76、77が連通するように取り付けられている。
【0039】
(作用)
以上の構成から成る本発明に係るアルミニウム製品のロー付け炉1の作用を説明する。ロー付け作業を始める前に、準備作業として、搬入真空パージ室2は少なくともその出口扉36を閉じ、搬出真空パージ室7は少なくとも入口扉39を閉じて、ロー付け室4及び冷却室5を密閉状態とする。
【0040】
そして、アルゴンガスを、供給源45から供給源ポンプ46によってアルゴンガス源供給管47を通してロー付け室4に供給する。さらに、ロー付け室4及び冷却室5から、アルゴンガスの一部を供給ポンプ51で回収タンク10へ供給する。
【0041】
以上の準備作業が完了してから、次のプロセスで、アルミニウム製品のロー付け作業を行う。搬入真空パージ室2の出口扉36及び搬出真空パージ室7の入口扉39を閉じた状態で、入口扉35を開いて、ロー付けすべきアルミニウム製品を入口テーブル16から搬入真空パージ室2内に装填する。
【0042】
そして、搬入真空パージ室2の入口扉35及び搬出真空パージ室7の出口扉40を閉じて、搬入真空パージ室2及び搬出真空パージ室7を密閉状態とする。この状態で空気用真空ポンプ63を動作させて、搬入真空パージ室2及び搬出真空パージ室7内の空気を排気し、搬入真空パージ室2及び搬出真空パージ室7を真空状態とする。
【0043】
次に、パージ送りポンプ54を作動させて、アルゴンガスを、回収タンク10からパージ送りアルゴンガス供給管55を通して搬入真空パージ室2及び搬出真空パージ室7に供給する。この場合、アルゴンガスが充填されたロー付け室4及び冷却室5の圧力を、アルゴンガスが充填された搬入真空パージ室2及び搬出真空パージ室7における圧力より高くなるように設定する。
【0044】
次に、搬入真空パージ室2の入口扉35を閉じた状態で出口扉36を開き、搬入真空パージ室2からロー付けすべきアルミニウム製品を搬送ベルト31に載置して、搬送ベルト31によって前室3からロー付け室4内に搬入する。
【0045】
ロー付け室4及び冷却室5の圧力は、アルゴンガスが充填された搬入真空パージ室2の圧力より高く設定されているので、搬入真空パージ室2の出口扉36を開いても、搬入真空パージ室2からロー付け室4内にアルゴンガスが流入するようなことはない。
【0046】
従って、搬入真空パージ室2から仮に空気を十分排気されていなくても、搬入真空パージ室2の出口扉36を開いた際に、ロー付け室4内に空気が入り込むようなことはない。よって、ロー付け室4及び冷却室5は、低酸素雰囲気に保つことができる。
【0047】
ロー付けすべきアルミニウム製品をロー付け室4内に搬入した後に、出口扉36を閉じる。なお、アルミニウム製品のロウ付け作業が全て完了した段階で、大気復圧管76で大気に復圧してから搬入真空パージ室2の入口扉35を開く。
【0048】
ロー付け室4内に搬入されたロー付けすべきアルミニウム製品は、搬送ベルト31でマッフル26内を搬送され、600℃前後で加熱され、ロー付けが行われる。ロー付けされたアルミニウム製品は、搬送ベルト31で冷却室5に搬送され冷却される。
【0049】
次に、搬出真空パージ室7の入口扉39を開き、ロー付けされたアルミニウム製品を、後室6から搬出真空パージ室7に搬出する。この場合、冷却室5の圧力は、アルゴンガスが充填された搬出真空パージ室7の圧力より高く設定されているので、搬出真空パージ室7の入口扉39を開いても、搬出真空パージ室7からロー付け室4及び冷却室5内にアルゴンガスが流入するようなことはない。
【0050】
従って、搬出真空パージ室7から仮に空気を十分排気されていなくても、搬出真空パージ室7の入口扉39を開いた際に、ロー付け室4及び冷却室5内に空気が入り込むようなことはない。よって、ロー付け室4及び冷却室5は、低酸素雰囲気に保つことができる。
【0051】
そして、搬出真空パージ室7の入口扉39を閉じ、搬出真空パージ室7のアルゴンガス用真空ポンプ58を作動させて搬出真空パージ室7のアルゴンガスを回収タンク10内に回収する。次に大気圧復圧管77で大気に復圧しその後、搬出真空パージ室7の出口扉40を開いて、ロー付けされたアルミニウム製品を出口テーブル17に取り出す。
【0052】
回収タンク10内に回収したアルゴンガスが回収容量を超えた場合には、余剰のアルゴンガスをアルゴンガス排気管62から排気する。
【0053】
以上説明した構成、作用のとおり、本発明に係るアルミニウム製品のロー付け炉1は、ロー付け作業をする場合は、ロー付け室4及び冷却室5は、完全に密閉可能であり、しかも搬入真空パージ室2及び搬出真空パージ室7は、それぞれ入口扉35、39及び出口扉36、40を備え、アルミニウム製品のロー付け室4への搬入及び冷却室5から搬出の際には、空気とアルゴンガスの交換を行う構成となっている。そのために、空気等のロー付け作業の外乱となる物質がロー付け室4及び冷却室5炉内に混入することがない。
【0054】
さらに、アルミニウム製品のロー付け炉1は、マッフル、断熱材、搬送ベルト等を、非酸化性の材料を使用して構成しているので、この点からも、炉内を低酸素雰囲気に保つことができる。
【0055】
従って、ロー付け室4及び冷却室5は、低酸素雰囲気に保つことができるので、ロー付け工程においてフラックスを使用しなくても、ロー付け品質を低下させることなく、ロー付け作業が可能となる。フラックスを使用しないので、余剰のフラックスやフラックスの残渣が、アルゴンガス内に混入することがない。
【0056】
よって、従来のように、フラックス等の外乱が混入したアルゴンガスを逐次排気し、新鮮なアルゴンガスを常時補強するような必要はない。アルゴンガスは、回収タンク10から搬入真空パージ室2及び搬出真空パージ室7への供給し、回収する必要はあるが、従来のアルミニウム製品のロー付け炉1に比べて、アルゴンガスに使用量はきわめて少量でよく、経済効果が優れている。
【実施例2】
【0057】
図2は、本発明の実施例2のアルミニウム製品のロー付け炉81の全体構成を示す図である。実施例1のアルミニウム製品のロー付け炉1は、ロー付けすべきアルミニウム製品をロー付け炉1内を搬送する搬送手段として、図1に示すように、搬送ベルト装置8を設けている。
【0058】
これに対して、実施例2のアルミニウム製品のロー付け炉81は、ロー付けすべきアルミニウム製品をロー付け炉81内を搬送する手段として、図3に示すように、搬送ローラーハース装置82を設けている。
【0059】
このように搬送手段として搬送ローラーハース装置82を設けた構成(ローラーハース炉とした構成)を除いて、実施例2は、実施例1と制御装置75も含め同じ構成を備え、同じ作用、効果を生じるので、同じ構成については、実施例1と同じ符号を付し、説明は省略する。
【0060】
実施例2のアルミニウム製品のロー付け炉81では、図3に示すように、搬送ローラーハース装置82を構成する複数のローラー83が、搬入真空パージ室2から搬出真空パージ室7にわたって配列されている。後室6内に設けられたローラー83がチェーン86を介してローラ駆動装置87によって駆動されるように構成されている。前室3内に設けられたローラー83がチェーンを介してローラ駆動装置によって駆動されるように構成としてもよい。
【0061】
具体的には、図示はしないが、後室6の外側側方に突出したローラー83の回転軸に固定したスプロケットとローラー駆動装置87の駆動軸に固定したスプロケット間にチェーン86を掛けて成る構成としている。
【0062】
そして、搬送ローラーハース装置82を構成する複数のローラー83間には、図示はしないが、ロー付け炉81の外側側方においてチェーンが掛けられており、ローラ駆動装置87によって、複数のローラー83が連動して駆動され、搬送ローラーハース装置82上に載せたロー付けすべきアルミニウム製品は搬送される。
【0063】
搬送ローラーハース装置82の搬送部は、ロー付け室4においては、マッフル26内を通過するように設けられている。搬送ローラーハース装置82を構成するローラー83は、実施例1における搬送ベルト31と同様に、耐熱鋼又は炭素繊維強化炭素複合材で形成されている。
【0064】
以上、本発明に係るアルミニウム製品のロー付け炉を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係るアルミニウム製品のロー付け炉は上記のような構成であるから、アルミ製熱交換器等の自動車部品をはじめとして、各種のアルミニウム製品に適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 アルミニウム製品のロー付け炉
2 搬入真空パージ室
3 前室
4 ロー付け室
5 冷却室
6 後室
7 搬出真空パージ室
8 搬送ベルト装置
9 アルゴンガスの配管系
10 回収タンク
11 空気排気系
16 入口テーブル
17 出口テーブル
20 炉内壁
21 炉室
22 断熱材
26 マッフル
27 ヒータ
28 加熱通路
31 搬送ベルト
32 ベルト駆動装置
33 ベルトプーリ
35 搬入真空パージ室の入口扉
36 出口扉
39 搬出真空パージ室の入口扉
40 出口扉
45 アルゴンガスの供給源
46 供給源ポンプ
47 アルゴンガス源供給管
50 アルゴンガス供給管
51 供給ポンプ
54 パージ送りポンプ
55 パージ送りアルゴンガス供給管
58 アルゴンガス用真空ポンプ
59 アルゴンガス回収管
62 アルゴンガス排気管
63 空気用真空ポンプ
64 空気排気管
70 炉内圧力センサ
71 冷却室圧力センサ
72 搬入真空パージ室圧力センサ
73 搬出真空パージ室圧力センサ
75 制御装置
76、77 大気復圧管
81 アルミニウム製品のロー付け炉
82 搬送ローラーハース装置
83 ローラー
86 チェーン
87 ローラ駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬入真空パージ室と、ロー付け室と、冷却室と、搬出真空パージ室と、ロー付け室及び冷却室を通して設けられた搬送ベルト装置又は搬送ローラーハース装置と、を備えたアルミニウム製品のロー付け炉であって、
ロー付け室及び冷却室にアルゴンガスを充填するとともに、そのアルゴンガスの一部を回収タンクに供給可能とし、回収タンクのアルゴンガスを、搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室に供給し、かつ搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室から回収可能とし、
ロー付けするアルミニウム製品をロー付け室に搬入する時及びロー付けしたアルミニウム製品を冷却室から搬出する時に、搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室の空気を排気し、回収タンクのアルゴンガスを充填可能とする構成であり、
アルゴンガスの充填されたロー付け室及び冷却室における圧力は、アルゴンガスの充填された搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室より高くなるように構成されており、
フラックスを使用することなくアルミニウム製品のロー付けを可能とすることを特徴とするアルミニウム製品のロー付け炉。
【請求項2】
搬入真空パージ室と、ロー付け室と、冷却室と、搬出真空パージ室と、ロー付け室及び冷却室を通して設けられた搬送ベルト装置又は搬送ローラーハース装置と、アルゴンガスの配管系と、アルゴンガスの回収タンクと、空気排気系と、を備えたアルミニウム製品のロー付け炉であって、
ロー付け室は、グラファイト製断熱材で囲まれて形成された炉室を備え、該炉室内には、炉室の長手方向に延びるグラファイト製マッフルと、マッフルの外部に設置された複数のラジアントチューブヒータ又は炭化珪素ヒータを有し、
搬送ベルト装置のベルト又は搬送ローラーハース装置のローラーは、耐熱鋼又は炭素繊維強化炭素複合材で形成されており、搬送ベルト装置又は搬送ローラーハース装置の搬送部はマッフル内を通過し、
アルゴンガスの配管系は、ロー付け室及び冷却室にアルゴンガスを充填するとともに、そのアルゴンガスの一部を回収タンクに供給し、回収タンクのアルゴンガスを、搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室に供給し、かつ搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室から回収可能とし、
ロー付けするアルミニウム製品をロー付け室に搬入する時及びロー付けしたアルミニウム製品を冷却室から搬出する時に、搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室の空気を排気し回収タンクから供給するアルゴンガスを充填する構成であり、
アルゴンガスの充填されたロー付け室及び冷却室における圧力は、アルゴンガスの充填された搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室より高くなるように構成されており、
フラックスを使用することなくアルミニウム製品のロー付けを可能とすることを特徴とするアルミニウム製品のロー付け炉。
【請求項3】
アルゴンガスの配管系は、アルゴンガスをロー付け室に供給するアルゴンガス源供給管と、アルゴンガスをロー付け室及び冷却室からアルゴンガス回収タンクに供給するアルゴンガス供給管と、アルゴンガスを回収タンクから搬入真空パージ室と搬出真空パージ室に供給するパージ送りアルゴンガス供給管と、搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室から、アルゴンガス用真空ポンプで吸引したアルゴンガスを、回収タンクへ回収するアルゴンガス回収管と、を備え、
空気排気系は、搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室からそれぞれ空気用真空ポンプで吸引した空気を排気する空気排気管を備えていることを特徴とする請求項2記載のアルミニウム製品のロー付け炉。
【請求項4】
搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室は、それぞれ独立して開閉可能な入口扉と出口扉を有し、ロー付けするアルミニウム製品をロー付け室に搬入する時及びロー付けしたアルミニウム製品を冷却室から搬出する時は、搬入真空パージ室及び搬出真空パージ室は、それぞれ入口扉と出口扉を閉じて密閉状態とし、空気が排気されてからアルゴンガスが充填され、その後、搬入真空パージ室の出口扉及び搬出真空パージ室の入口扉が開く構成であることを特徴とする請求項3記載のアルミニウム製品のロー付け炉。
【請求項5】
ロー付け室の前部には前室が一体で設けられており、冷却室の後部には後室が一体で設けられており、前室及び後室には搬送ベルト装置の前後のベルトプーリが配置されている構成である、又は前室及び後室のいずれかに設けられた搬送ローラーハース装置のローラーはローラ駆動装置で駆動される構成であることを特徴とする請求項4記載のアルミニウム製品のロー付け炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−31862(P2013−31862A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168392(P2011−168392)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000157072)関東冶金工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】