アレイ導波路回折格子型光合分波器
【課題】低コストかつ光学特性が安定したアレイ導波路回折格子型光合分波器を提供すること。
【解決手段】第1入出力導波路に接続された第1スラブ導波路と、第1スラブ導波路に接続され、互いに長さが異なり並列に配列された複数のチャネル導波路からなるアレイ導波路と、アレイ導波路に接続された第2スラブ導波路と、第2スラブ導波路に接続された複数の第2入出力導波路と、を有するアレイ導波路回折格子チップと、その下面に接合された下地板とが、第1スラブ導波路または第2スラブ導波路を横断する切断面において2つに切断されて形成された固定片および可動片と、固定片が接合されるとともに可動片が当接される基準板と、固定片と可動片との間に掛け渡されるように設けられ、アレイ導波路回折格子の光透過中心波長の温度依存シフトを補償する補償部材と、可動片が基準板上をスライドできるように基準板と可動片とを挟持するクリップと、を備える。
【解決手段】第1入出力導波路に接続された第1スラブ導波路と、第1スラブ導波路に接続され、互いに長さが異なり並列に配列された複数のチャネル導波路からなるアレイ導波路と、アレイ導波路に接続された第2スラブ導波路と、第2スラブ導波路に接続された複数の第2入出力導波路と、を有するアレイ導波路回折格子チップと、その下面に接合された下地板とが、第1スラブ導波路または第2スラブ導波路を横断する切断面において2つに切断されて形成された固定片および可動片と、固定片が接合されるとともに可動片が当接される基準板と、固定片と可動片との間に掛け渡されるように設けられ、アレイ導波路回折格子の光透過中心波長の温度依存シフトを補償する補償部材と、可動片が基準板上をスライドできるように基準板と可動片とを挟持するクリップと、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイ導波路回折格子型光合分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
アレイ導波路回折格子(Arrayed Waveguide Grating:AWG)を利用した波長合分波器は、構成材料である石英系ガラスの屈折率に温度依存性があるため、透過中心波長に温度依存性が生じることが知られている。
【0003】
石英系ガラスからなるAWGの透過中心波長の温度依存性dλ/dTは、0.011nm/℃であり、D−WDM(Dense-Wavelength Division Multiplexing)伝送システムで使用するためには、無視できない大きな値となっている。
【0004】
温度依存性を解消するために、電力を用いる加熱素子や冷却素子によってAWGの温度を一定に制御する技術がある。しかしながら、近年多様化が進むD−WDM伝送システムにおいては、AWGに対して、電力を必要としないアサーマル化(温度無依存化)が強く求められている。
【0005】
補償部材を用いてアサーマル化を実現したアレイ導波路回折格子型光合分波器(以下、適宜AWG型光合分波器と記載する)が特許文献1に開示されている。特許文献1のAWG型光合分波器は、AWGチップを、スラブ導波路を横断するように切断し、切断により分離した部分間を掛け渡すように所定の熱膨張係数を有する補償部材を設けた構成を有する。このAWG型光合分波器の温度が変化した場合には、補償部材が伸縮し、分離した部分間の相対位置を変化させる。この相対位置の変化量は、温度変化に依存した透過中心波長のシフトが補償されるような変化量に調整されている。これによって、AWG型光合分波器のアサーマル化が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3764105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1のAWG型光合分波器において、安定した光学特性を実現させるためには、AWGチップの分離した部分間で光軸が精密に調整され、かつ維持される必要がある。そのために、AWGチップの分離した部分において、クリップによってAWGチップを上面と下面とから挟持して押圧力をかけることによって、調整された光軸を維持するようにしている。また、特許文献1のAWG型光合分波器では、さらにクリップとAWGチップとの間に押さえ基板を介在させて挟持する構成も記載されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1のAWG型光合分波器では、光軸を維持するためのクリップや押さえ基板の構成が複雑または大型であり、高コストなものとなっていた。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低コストかつ光学特性が安定したアレイ導波路回折格子型光合分波器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器は、光が入出力される第1入出力導波路と、前記第1入出力導波路に接続された第1スラブ導波路と、前記第1スラブ導波路に接続され、互いに長さが異なり並列に配列された複数のチャネル導波路からなるアレイ導波路と、前記アレイ導波路に接続された第2スラブ導波路と、前記第2スラブ導波路に接続された、光が入出力される複数の第2入出力導波路と、を有するアレイ導波路回折格子チップと、前記アレイ導波路回折格子チップの下面に接合された下地板と、が前記第1スラブ導波路または前記第2スラブ導波路を横断する切断面において2つに切断されて形成された固定片および可動片と、前記固定片が接合されるとともに前記可動片が当接される基準板と、前記固定片と前記可動片との間に掛け渡されるように設けられ、温度変化に応じて伸縮して前記固定片と前記可動片との相対位置を変えることにより、前記アレイ導波路回折格子の光透過中心波長の温度依存シフトを補償する補償部材と、前記可動片が前記基準板上をスライドできるように前記基準板と前記可動片とを挟持するクリップと、を備える。
【0011】
また、本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器は、上記発明において、前記可動片の質量が前記固定片の質量よりも小さい。
【0012】
また、本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器は、上記発明において、前記クリップは、1本の棒体を折り曲げて形成されたものである。
【0013】
また、本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器は、上記発明において、前記基準板は、前記固定片が接合される領域において、前記可動片が当接される領域よりも厚さが薄くなることによって段差が形成されており、前記固定片の前記可動片側の端部は前記可動片が当接される領域に当接している。
【0014】
また、本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器は、上記発明において、前記基準板の表面が、前記固定片が接合される領域において凹凸処理されている。
【0015】
また、本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器は、上記発明において、前記基準板の表面の、前記固定片の下方かつ前記可動片が当接される側に、前記アレイ導波路回折格子チップの切断面に略沿って溝が形成されている。
【0016】
また、本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器は、上記発明において、前記基準板の表面が、前記可動片が当接される領域において凹凸処理されている。
【0017】
また、本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器は、上記発明において、前記基準板の表面の前記可動片が当接される領域に窪み部が形成されている。
【0018】
また、本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器は、上記発明において、前記アレイ導波路回折格子チップは、前記アレイ導波路回折格子の輪郭形状に沿った形状を有する。
【0019】
また、本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器は、上記発明において、前記補償部材は、前記固定片の前記下地板と前記可動片の前記下地板との間に掛け渡されるように設けられている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、低コストかつ光学特性が安定したアレイ導波路回折格子型光合分波器を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、実施の形態に係るAWG型光合分波器の模式的な上面図である。
【図2】図2は、図1に示すAWG型光合分波器の背面図である。
【図3】図3は、図1に示すAWG型光合分波器のX−X線断面図である。
【図4】図4は、図1に示すAWGチップの製造方法を説明する図である。
【図5】図5は、図1に示すクリップの模式的な斜視図である。
【図6】図6は、変形例1に係る基準板の模式的な上面図である。
【図7】図7は、図5に示す基準板に固定片を接合し可動片を当接した状態を示す側面図である。
【図8】図8は、変形例2に係る基準板に固定片を接合し可動片を当接した状態を示す模式的な側面図である。
【図9】図9は、変形例3に係る基準板の模式的な上面図である。
【図10】図10は、図9に示す基準板に固定片を接合し可動片を当接した状態を示す側面図である。
【図11】図11は、変形例4に係る基準板に固定片を接合し可動片を当接した状態を示す模式的な側面図である。
【図12】図12は、実施例のAWG型光合分波器の回路パラメータを示す図である。
【図13】図13は、実施例のAWG型光合分波器の透過中心波長の変動の温度依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各層の厚みと幅との関係、各層の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0023】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係るAWG型光合分波器100の模式的な上面図である。図2は、図1に示すAWG型光合分波器100の背面図である。図3は、図1に示すAWG型光合分波器100のX−X線断面図である。
【0024】
図1〜3に示すように、AWG型光合分波器100は、AWGチップ10と、下地板20と、基準板30と、補償部材40と、クリップ50とを備えている。
【0025】
AWGチップ10は、シリコンや石英ガラス等からなる基板上に、石英系ガラスからなり、AWG10Aを構成する各導波路、すなわち、光が入出力される第1入出力導波路10Aaと、第1入出力導波路10Aaに接続された第1スラブ導波路10Abと、第1スラブ導波路10Abに接続されたアレイ導波路10Acと、アレイ導波路10Acに接続された第2スラブ導波路10Adと、第2スラブ導波路10Adに接続され、光が入出力される複数の第2入出力導波路10Aeが形成された平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)チップである。
【0026】
アレイ導波路10Acは、互いに長さが異なるチャネル導波路が所定のピッチで並列に配列されたものである。各チャネル導波路は円弧状に屈曲しており、かつ円弧の内周側から外周側に向かって長さが長くなる順に配列されている。隣接するチャネル導波路の光路長の差は同一である。また、チャネル導波路の数は、入力されるWDM信号光のチャネル数に応じて設定されており、たとえば100本である。
【0027】
第1スラブ導波路10Abおよび第2スラブ導波路10Adは直線状に形成されている。また、第1入出力導波路10Aaおよび複数の第2入出力導波路10Aeはアレイ導波路10Acとは逆の方向に円弧状に屈曲している。複数の第2入出力導波路10Aeの数は、使用するWDM信号光のチャネル数に設定されており、たとえば40本である。また、AWGチップ10は、AWG10Aの輪郭形状に沿って屈曲した形状(ブーメラン形状)を有している。
【0028】
下地板20は、図3に示すように、AWGチップ10の下面に接着剤61によって接合されている。下地板20は、たとえば石英ガラスからなる。下地板20はAWGチップ10と線膨張係数が略同一である材料からなるものが好ましいが、特に限定はされない。
【0029】
AWGチップ10と下地板20とは、接合された状態で切断面Cにおいて2つに切断され、固定片71と可動片72とに分離している。切断面Cは、第1スラブ導波路10Abの長手方向に略垂直な方向に沿って第1スラブ導波路10Abを横断し、かつ途中で略90度だけ屈曲している。ここで、分離したAWGチップ10および下地板20のうち、固定片71に含まれるものをそれぞれAWGチップ片11、下地片21とする。また、可動片72に含まれるものをそれぞれAWGチップ片12、下地板片22とする。固定片71と可動片72とは切断面Cにより形成される溝Gを隔てて配置されている。第1スラブ導波路10Abにおける溝Gによる反射や光損失を抑制するために、溝Gにはマッチングオイルやマッチンググリースを充填することが好ましい。
【0030】
基準板30は、図3に示すように、固定片71が接合されるとともに可動片72が当接される。すなわち、固定片71は、表面の所定領域31に固定片71が接着剤等で接合されている。一方、可動片72は、固定片71には接合されていない。基準板30を構成する材料は特に限定されないが、たとえば石英ガラスからなるものを用いることができる。
【0031】
補償部材40は、板状であり、固定片71と可動片72との間に掛け渡されるように設けられ、固定片71と可動片72とにそれぞれ接着剤等によって接合されている。また、補償部材40は、第1スラブ導波路10Abにおける切断面Cと略平行に延伸している。なお、本実施の形態では、AWGチップ10がAWG10Aの形状に沿ったブーメラン形状をしているので、AWGチップ10には補償部材40を接合するスペースが無い。そのため、補償部材40は下地板片21、22に接合されている。補償部材40は、銅や純アルミニウム(JIS:A1050)などの金属からなるものを使用することができる。
【0032】
クリップ50は、図1、2に示すように、基準板30と可動片72とを挟持するものである。これによって、基準板30と可動片72とに図3に示すような押圧力Fが印加されるが、この押圧力Fは、可動片72が基準板30上をスライドできる程度の大きさとする。クリップ50は、たとえばいわゆるゼムクリップと同様に、スチール等の金属からなる1本の棒体を折り曲げて形成されたものを使用することができる。
【0033】
つぎに、このAWG型光合分波器100の動作について説明する。
AWG型光合分波器100のAWGチップ10では、第1入出力導波路10Aaから、波長が互いに信号光が波長多重されたWDM信号光が入力されると、第1スラブ導波路10Abは第1入出力導波路10Aaから入力されたWDM信号光を回折により広げてアレイ導波路10Acに入力させる。アレイ導波路10Acは、WDM信号光に含まれる信号光に位相差を付加して第2スラブ導波路10Adに入力させる。第2スラブ導波路10Adは、アレイ導波路10Acによって付加された位相差によって、波長の異なる各信号光を複数の第2入出力導波路10Aeのそれぞれに集光させる。その結果、複数の第2入出力導波路10Aeのそれぞれからは、互いに波長の異なる信号光が分波されて出力される。このように、AWG型光合分波器100は波長多重光分波器として機能する。
【0034】
一方、複数の第2入出力導波路10Aeのそれぞれから波長の異なる信号光を入力した場合は、光の相反性によって上記した作用と逆の作用が生じ、第1入出力導波路10Aaからは、複数の第2入出力導波路10Aeから入力された信号光が波長多重されたWDM信号光が出力される。この場合、AWG型光合分波器100は波長多重光合波器として機能する。したがって、AWG型光合分波器100は波長多重光合分波器として機能する。
【0035】
ここで、通常のAWGチップでは、AWGチップを構成する材料の屈折率に温度依存性があるため、AWGチップが温度変化すると、複数の第2入出力導波路のそれぞれに集光する光の波長が、本来集光されるべき波長からシフトする。その結果、AWGチップの光透過中心波長はシフトしてしまう。
【0036】
これに対して、本実施の形態に係るAWG型光合分波器100では、AWG型光合分波器100の温度変化に応じて補償部材40が方向Dで伸縮することによって可動片72をスライドさせて、固定片71と可動片72との相対位置を変えることにより、AWGチップ10の光透過中心波長の温度依存シフトを補償する。これによって、AWG型光合分波器100のアサーマル化が実現されている。
【0037】
特に、補償部材40は、第1スラブ導波路10Abにおける切断面Cと略平行に延伸しているので、その伸縮の方向Dも切断面Cと略平行である。したがって、補償部材40が伸縮した場合にも溝Gの幅が殆ど変化しない。その結果、補償部材40が伸縮してもAWG型光合分波器100の光学特性は変動せずに安定する。
【0038】
また、クリップ50は、押圧力Fを印加して基準板30と可動片72とを挟持している。その結果、補償部材40が伸縮して固定片71と可動片72との相対位置が変化しても、AWG型光合分波器100の光軸が変動せずに維持されるので、光学特性も安定する。
【0039】
ここで、本実施の形態では、固定片71を基準板30に接合しているので、クリップ50は可動片72のみを基準板30に押圧すればよい。これによって、クリップ50が印加すべき押圧力Fは小さくてよい。その結果、クリップ50として小型で簡略なものを使用できるので、部品コストが低減される。また、クリップ50は可動片72のみを基準板30に押圧すればよいので、押さえ基板のような複雑かつ高価な部品を使用しなくてもよくなり、より低コストかつ小型にできる。
【0040】
さらに、本実施の形態では、クリップ50で挟持すべき可動片72の方が、基準板30に接合した固定片71よりも質量が小さいので、クリップ50としてより小型で簡略なものを使用できる。
【0041】
これに対して、従来はAWGチップを切断して分離した2片の両方に対して押圧力を印加するようにしているため、クリップとして押圧力が大きく大型なものを用いる必要がある。また、2片の両方に押圧力を適切に印加するために押さえ基板などの追加の部品が必要となる。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態に係るAWG型光合分波器100は、光学特性が安定しており、かつ小型、低コストなものである。
【0043】
なお、AWGチップ10の光透過中心波長の温度依存シフトを補償するための補償部材40による位置補正量dxは、AWGチップ10の回路パラメータ等を用いて、以下の式(1)により設定することができる。
【0044】
【数1】
ここで、Lfは第1スラブ導波路10Abの焦点距離、ΔLはアレイ導波路10Acにおける隣接するチャネル導波路間の光路差、dはアレイ導波路10Acにおける隣接するチャネル導波路間のピッチ、nsは第1スラブ導波路10Abの実効屈折率、ngはアレイ導波路10Acの群屈折率、dλ/dTは透過中心波長の温度依存性(たとえば0.011nm/℃)、ΔTは温度変化量である。また、λ0は第1スラブ導波路10Abにおいて回折角が0度になる波長であり、AWGの中心波長と呼ばれるものである。
【0045】
温度変化量がΔTの場合に、可動片72が式(1)で示される位置補正量dxだけスライドするように補償部材40の線膨張係数と長さとを設定することによって、AWGチップ10の光透過中心波長の温度依存シフトを補償することができる。
【0046】
つぎに、AWGチップ10の製造方法について説明する。まず、シリコンや石英ガラス等からなる基板上に、火炎堆積(Flame Hydrolysis Deposition:FHD)法により、下部クラッド層およびコア層となるシリカ材料(SiO2系のガラス粒子)を順次堆積し、堆積層を加熱して溶融透明化する。つぎに、フォトリソグラフィと反応性イオンエッチングとを用いて、複数のAWG10Aの導波路パターンにコア層を形成する。つぎに、再びFHD法により、導波路パターンの上部および側部を覆うように上側部クラッド層を形成する。
【0047】
つぎに、図4に示すように、基板S上に、第1入出力導波路10Aa、第1スラブ導波路10Ab、アレイ導波路10Ac、第2スラブ導波路10Ad、および複数の第2入出力導波路10AeからなるAWG10Aを複数形成したものを、CO2レーザを用いてAWG10Aの輪郭形状に沿った切断線Lに沿って切断する。これによって、AWG10Aの輪郭形状に沿ったブーメラン形状のAWGチップ10を得ることができる。なお、切断は、CO2レーザに限らず種々の加工用のレーザやウォータージェット等を用いて行ってもよい。
【0048】
このように、基板S上にAWG10Aを高密度に複数形成し、AWG10Aの輪郭形状に沿ったブーメラン形状に切断してAWGチップ10を得ることによって、AWGを含む矩形状に基板を切断する場合よりも、1つの基板Sからより多数のAWGチップ10を得ることができる。これによってAWGチップ10を低コストに製造することができる。
【0049】
つぎに、クリップ50について説明する。図5は、図1に示すクリップ50の模式的な斜視図である。図5に示すように、クリップ50は、1本の棒体を角丸円形に沿って折り曲げて底部を形成し、さらに上方に伸びる立設部を形成するように折り曲げ、そこから下方の底部に向かって傾斜する傾斜部を形成するように折り曲げ、最後に端部を上方に屈曲させて押さえ部を形成したものである。そして、使用する際には、図1、2に示すように、クリップ50の底部と押さえ部との間に基準板30と可動片72とを介挿して挟持する。このような簡易な構成のクリップ50によって、可動片72を基準板30に十分な押圧力で押圧することができる。また、このようなクリップ50は高さも低く、小型化に好適である。
【0050】
(基準板の変形例)
つぎに、基準板30に置き換えて使用できる基準板の変形例について説明する。本実施の形態に係るAWG型光合分波器100では、固定片71は基準板30に接着剤等で接合し、可動片72は基準板30に当接させている。その結果、接着剤等の厚みによっては、固定片71と可動片72との高さがズレ、これによってAWGチップ片11と可動片72に含まれるAWGチップ片21との高さがズレるので、第1スラブ導波路10Abの光軸がズレるおそれがある。そこで、以下に説明する変形例の基準板によれば、AWGチップ片11とAWGチップ片21との高さズレがより確実に防止される。
【0051】
図6は、変形例1に係る基準板30Aの模式的な上面図である。図7は、図5に示す基準板30Aに固定片71を接合し可動片72を当接した状態を示す側面図である。図6、7に示すように、変形例1に係る基準板30Aは、固定片71が接合される領域31Aにおいて、可動片72が当接される領域よりも厚さが薄くなることによって段差32Aが形成されている。その結果、固定片71を基準板30Aに接合するための接着剤62は厚さが薄い領域31Aと固定片71との間に充填され、かつ固定片71の可動片72側の端部は可動片72が当接される領域に当接する。したがって、固定片71は接着剤によっても高さ方向にズレないので、AWGチップ片11とAWGチップ片21との高さズレはより確実に防止される。
【0052】
図8は、変形例2に係る基準板30Bに固定片71を接合し可動片72を当接した状態を示す模式的な側面図である。図8に示すように、変形例2に係る基準板30Bは、表面全体の領域31Bがフロスト処理により凹凸処理されている。基準板30Bに固定片71を接合する場合は、基準板30Bの固定片71側の端部33Bから接着剤を供給すると、領域31Bのフロスト処理された凹部に接着剤が浸透して充填されるので、固定片71を基準板30Bに接合することができる。したがって、固定片71は接着剤によって高さ方向にズレないので、AWGチップ片11とAWGチップ片21との高さズレはより確実に防止される。さらに、基準板30Bは、可動片72が当接される表面の領域にもフロスト処理がされている。その結果、基準板30Bと可動片72との間の接触面積が減少し、摩擦力が減少するので、可動片72は補償部材40の伸縮によってスムーズにスライドすることができる。なお、フロスト処理の凹凸の程度は、十分な量の接着剤がスムーズに凹部に浸透する程度であり、かつ固定片71を接合または可動片72を当接したときに凹凸によって傾斜しないような平滑性が維持されている程度、たとえば表面粗さRaを10μm以下とすることが好ましい。
【0053】
図9は、変形例3に係る基準板30Cの模式的な上面図である。図10は、図9に示す基準板30Cに固定片71を接合し可動片72を当接した状態を示す側面図である。図9、10に示すように、変形例3に係る基準板30Cは、表面全体の領域31Cがフロスト処理により凹凸処理されているとともに、固定片71の下方かつ可動片72が当接される側に、AWGチップの切断面に略沿って溝34Cが形成されている。溝34Cはたとえばダイシング等で形成することができる。基準板30Cは、変形例2に係る基準板30Bが奏する効果に加え、基準板30Cの固定片71側の端部33Cから接着剤を供給した場合に、領域31Cのフロスト処理された凹部に浸透していった接着剤は、さらに可動片72側まで流れていくと、溝34Cに溜まることになる。これによって、接着剤が可動片72まで流れていくことが防止される。したがって、固定片71が接合される面積をより確実に管理できるとともに、可動片72が誤って基準板30Cに接合されてしまうことが防止される。
【0054】
図11は、変形例4に係る基準板30Dに固定片71を接合し可動片72を当接した状態を示す模式的な側面図である。図11に示すように、変形例4に係る基準板30Dは、表面全体の領域31Dがフロスト処理により凹凸処理されているとともに、固定片71の下方かつ可動片72が当接される側と、可動片72が当接される領域とに、AWGチップの切断面に略沿ってそれぞれ溝34D、35Dが形成されている。なお、接着剤は基準板30Cの固定片71側の端部33Dから供給する。基準板30Dは、変形例3に係る基準板30Cが奏する効果に加え、溝35Dによって基準板30Dと可動片72との間の摩擦力がさらに減少するので、可動片72は補償部材40の伸縮によってさらにスムーズにスライドすることができる。
【0055】
(実施例)
本発明の実施例として、図1に示す実施の形態の構成のAWG型光合分波器を製造した。ただし、基準板としては、図11に示す変形例4の構成の基準板を用いた。図12は、実施例のAWG型光合分波器の回路パラメータを示す図である。この回路パラメータを用いて、純アルミニウム(JIS:A1050)からなる補償部材の長さを18.0mmに設定した。
【0056】
図13は、実施例のAWG型光合分波器の透過中心波長の変動の温度依存性を示す図である。図13に示すように、実施例のAWG型光合分波器は、−5℃〜70℃の広い温度範囲において透過中心波長の変動が±0.010nmであり、きわめて良好な温度特性を有していた。
【0057】
なお、上記実施の形態では、AWGチップを切断して分離したうちの質量が小さい方を可動片としてクリップで押圧するようにしているが、質量が大きい方を可動片としてクリップで押圧するようにしてもよい。すなわち、分離したAWGチップの一方のみをクリップで基準板に押圧し、他方は基準板に接合固定することによって、クリップを小型で簡略なものとすることができる。
【0058】
また、上記実施の形態では、第1スラブ導波路を切断して分離しているが、第2スラブ導波路、または第1スラブ導波路および第2スラブ導波の両方を切断して分離するようにしてもよい。
【0059】
また、上記実施の形態では、基板をAWGの輪郭形状に沿って切断し、ブーメラン形状のAWGチップを得ているが、基板を矩形に切断して矩形のAWGチップを得るようにしてもよい。この場合、AWGチップにスペースがあれば、補償部材は分離した2つのAWGチップ片の間に掛け渡すように設けてもよい。
【0060】
また、上記実施の形態では、基準板の表面にフロスト処理をしているが、サンドブラスト、ショットブラスト、梨地処理・シボ処理等の他の凹凸処理でもよい。また、可動片をスムーズにスライドさせるために、フロスト処理等の凹凸処理をしたり、溝を設けたりしているが、可動片と基準板との接触面積を減少させるような窪み部であれば、その態様は特に限定はされない。また、溝を設ける場合は、その延伸方向はAWGチップの切断面に沿う方向に限られず、切断面に垂直の方向でもよい。
【0061】
また、下地板、基準板の構成材料は、石英ガラスに限られない。下地板、基準板の構成材料の線膨張係数を考慮して補償部材の長さを決定すれば、金属、半導体、セラミックスなどの種々の材料を用いることができる。
【0062】
また、AWGチップと下地板とを接合する位置および補償部材を掛け渡す位置も、実施の形態のものに限られず、補償部材の伸縮によって切断されたAWGチップの位置が相対的に変化できるような位置であればよい。
【0063】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
10 AWGチップ
10A AWG
10Aa 第1入出力導波路
10Ab 第1スラブ導波路
10Ac アレイ導波路
10Ad 第2スラブ導波路
10Ae 第2入出力導波路
11、12 AWGチップ片
20 下地板
21、22 下地板片
30、30A、30B、30C、30D 基準板
31、31A、31B、31C、31D 領域
32A 段差
33B、33C、33D 端部
34C、34D、35D 溝
40 補償部材
50 クリップ
61、62 接着剤
71 固定片
72 可動片
100 AWG型光合分波器
C 切断面
D 方向
F 押圧力
G 溝
L 切断線
S 基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイ導波路回折格子型光合分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
アレイ導波路回折格子(Arrayed Waveguide Grating:AWG)を利用した波長合分波器は、構成材料である石英系ガラスの屈折率に温度依存性があるため、透過中心波長に温度依存性が生じることが知られている。
【0003】
石英系ガラスからなるAWGの透過中心波長の温度依存性dλ/dTは、0.011nm/℃であり、D−WDM(Dense-Wavelength Division Multiplexing)伝送システムで使用するためには、無視できない大きな値となっている。
【0004】
温度依存性を解消するために、電力を用いる加熱素子や冷却素子によってAWGの温度を一定に制御する技術がある。しかしながら、近年多様化が進むD−WDM伝送システムにおいては、AWGに対して、電力を必要としないアサーマル化(温度無依存化)が強く求められている。
【0005】
補償部材を用いてアサーマル化を実現したアレイ導波路回折格子型光合分波器(以下、適宜AWG型光合分波器と記載する)が特許文献1に開示されている。特許文献1のAWG型光合分波器は、AWGチップを、スラブ導波路を横断するように切断し、切断により分離した部分間を掛け渡すように所定の熱膨張係数を有する補償部材を設けた構成を有する。このAWG型光合分波器の温度が変化した場合には、補償部材が伸縮し、分離した部分間の相対位置を変化させる。この相対位置の変化量は、温度変化に依存した透過中心波長のシフトが補償されるような変化量に調整されている。これによって、AWG型光合分波器のアサーマル化が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3764105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1のAWG型光合分波器において、安定した光学特性を実現させるためには、AWGチップの分離した部分間で光軸が精密に調整され、かつ維持される必要がある。そのために、AWGチップの分離した部分において、クリップによってAWGチップを上面と下面とから挟持して押圧力をかけることによって、調整された光軸を維持するようにしている。また、特許文献1のAWG型光合分波器では、さらにクリップとAWGチップとの間に押さえ基板を介在させて挟持する構成も記載されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1のAWG型光合分波器では、光軸を維持するためのクリップや押さえ基板の構成が複雑または大型であり、高コストなものとなっていた。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低コストかつ光学特性が安定したアレイ導波路回折格子型光合分波器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器は、光が入出力される第1入出力導波路と、前記第1入出力導波路に接続された第1スラブ導波路と、前記第1スラブ導波路に接続され、互いに長さが異なり並列に配列された複数のチャネル導波路からなるアレイ導波路と、前記アレイ導波路に接続された第2スラブ導波路と、前記第2スラブ導波路に接続された、光が入出力される複数の第2入出力導波路と、を有するアレイ導波路回折格子チップと、前記アレイ導波路回折格子チップの下面に接合された下地板と、が前記第1スラブ導波路または前記第2スラブ導波路を横断する切断面において2つに切断されて形成された固定片および可動片と、前記固定片が接合されるとともに前記可動片が当接される基準板と、前記固定片と前記可動片との間に掛け渡されるように設けられ、温度変化に応じて伸縮して前記固定片と前記可動片との相対位置を変えることにより、前記アレイ導波路回折格子の光透過中心波長の温度依存シフトを補償する補償部材と、前記可動片が前記基準板上をスライドできるように前記基準板と前記可動片とを挟持するクリップと、を備える。
【0011】
また、本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器は、上記発明において、前記可動片の質量が前記固定片の質量よりも小さい。
【0012】
また、本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器は、上記発明において、前記クリップは、1本の棒体を折り曲げて形成されたものである。
【0013】
また、本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器は、上記発明において、前記基準板は、前記固定片が接合される領域において、前記可動片が当接される領域よりも厚さが薄くなることによって段差が形成されており、前記固定片の前記可動片側の端部は前記可動片が当接される領域に当接している。
【0014】
また、本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器は、上記発明において、前記基準板の表面が、前記固定片が接合される領域において凹凸処理されている。
【0015】
また、本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器は、上記発明において、前記基準板の表面の、前記固定片の下方かつ前記可動片が当接される側に、前記アレイ導波路回折格子チップの切断面に略沿って溝が形成されている。
【0016】
また、本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器は、上記発明において、前記基準板の表面が、前記可動片が当接される領域において凹凸処理されている。
【0017】
また、本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器は、上記発明において、前記基準板の表面の前記可動片が当接される領域に窪み部が形成されている。
【0018】
また、本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器は、上記発明において、前記アレイ導波路回折格子チップは、前記アレイ導波路回折格子の輪郭形状に沿った形状を有する。
【0019】
また、本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器は、上記発明において、前記補償部材は、前記固定片の前記下地板と前記可動片の前記下地板との間に掛け渡されるように設けられている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、低コストかつ光学特性が安定したアレイ導波路回折格子型光合分波器を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、実施の形態に係るAWG型光合分波器の模式的な上面図である。
【図2】図2は、図1に示すAWG型光合分波器の背面図である。
【図3】図3は、図1に示すAWG型光合分波器のX−X線断面図である。
【図4】図4は、図1に示すAWGチップの製造方法を説明する図である。
【図5】図5は、図1に示すクリップの模式的な斜視図である。
【図6】図6は、変形例1に係る基準板の模式的な上面図である。
【図7】図7は、図5に示す基準板に固定片を接合し可動片を当接した状態を示す側面図である。
【図8】図8は、変形例2に係る基準板に固定片を接合し可動片を当接した状態を示す模式的な側面図である。
【図9】図9は、変形例3に係る基準板の模式的な上面図である。
【図10】図10は、図9に示す基準板に固定片を接合し可動片を当接した状態を示す側面図である。
【図11】図11は、変形例4に係る基準板に固定片を接合し可動片を当接した状態を示す模式的な側面図である。
【図12】図12は、実施例のAWG型光合分波器の回路パラメータを示す図である。
【図13】図13は、実施例のAWG型光合分波器の透過中心波長の変動の温度依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本発明に係るアレイ導波路回折格子型光合分波器の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各層の厚みと幅との関係、各層の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0023】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係るAWG型光合分波器100の模式的な上面図である。図2は、図1に示すAWG型光合分波器100の背面図である。図3は、図1に示すAWG型光合分波器100のX−X線断面図である。
【0024】
図1〜3に示すように、AWG型光合分波器100は、AWGチップ10と、下地板20と、基準板30と、補償部材40と、クリップ50とを備えている。
【0025】
AWGチップ10は、シリコンや石英ガラス等からなる基板上に、石英系ガラスからなり、AWG10Aを構成する各導波路、すなわち、光が入出力される第1入出力導波路10Aaと、第1入出力導波路10Aaに接続された第1スラブ導波路10Abと、第1スラブ導波路10Abに接続されたアレイ導波路10Acと、アレイ導波路10Acに接続された第2スラブ導波路10Adと、第2スラブ導波路10Adに接続され、光が入出力される複数の第2入出力導波路10Aeが形成された平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)チップである。
【0026】
アレイ導波路10Acは、互いに長さが異なるチャネル導波路が所定のピッチで並列に配列されたものである。各チャネル導波路は円弧状に屈曲しており、かつ円弧の内周側から外周側に向かって長さが長くなる順に配列されている。隣接するチャネル導波路の光路長の差は同一である。また、チャネル導波路の数は、入力されるWDM信号光のチャネル数に応じて設定されており、たとえば100本である。
【0027】
第1スラブ導波路10Abおよび第2スラブ導波路10Adは直線状に形成されている。また、第1入出力導波路10Aaおよび複数の第2入出力導波路10Aeはアレイ導波路10Acとは逆の方向に円弧状に屈曲している。複数の第2入出力導波路10Aeの数は、使用するWDM信号光のチャネル数に設定されており、たとえば40本である。また、AWGチップ10は、AWG10Aの輪郭形状に沿って屈曲した形状(ブーメラン形状)を有している。
【0028】
下地板20は、図3に示すように、AWGチップ10の下面に接着剤61によって接合されている。下地板20は、たとえば石英ガラスからなる。下地板20はAWGチップ10と線膨張係数が略同一である材料からなるものが好ましいが、特に限定はされない。
【0029】
AWGチップ10と下地板20とは、接合された状態で切断面Cにおいて2つに切断され、固定片71と可動片72とに分離している。切断面Cは、第1スラブ導波路10Abの長手方向に略垂直な方向に沿って第1スラブ導波路10Abを横断し、かつ途中で略90度だけ屈曲している。ここで、分離したAWGチップ10および下地板20のうち、固定片71に含まれるものをそれぞれAWGチップ片11、下地片21とする。また、可動片72に含まれるものをそれぞれAWGチップ片12、下地板片22とする。固定片71と可動片72とは切断面Cにより形成される溝Gを隔てて配置されている。第1スラブ導波路10Abにおける溝Gによる反射や光損失を抑制するために、溝Gにはマッチングオイルやマッチンググリースを充填することが好ましい。
【0030】
基準板30は、図3に示すように、固定片71が接合されるとともに可動片72が当接される。すなわち、固定片71は、表面の所定領域31に固定片71が接着剤等で接合されている。一方、可動片72は、固定片71には接合されていない。基準板30を構成する材料は特に限定されないが、たとえば石英ガラスからなるものを用いることができる。
【0031】
補償部材40は、板状であり、固定片71と可動片72との間に掛け渡されるように設けられ、固定片71と可動片72とにそれぞれ接着剤等によって接合されている。また、補償部材40は、第1スラブ導波路10Abにおける切断面Cと略平行に延伸している。なお、本実施の形態では、AWGチップ10がAWG10Aの形状に沿ったブーメラン形状をしているので、AWGチップ10には補償部材40を接合するスペースが無い。そのため、補償部材40は下地板片21、22に接合されている。補償部材40は、銅や純アルミニウム(JIS:A1050)などの金属からなるものを使用することができる。
【0032】
クリップ50は、図1、2に示すように、基準板30と可動片72とを挟持するものである。これによって、基準板30と可動片72とに図3に示すような押圧力Fが印加されるが、この押圧力Fは、可動片72が基準板30上をスライドできる程度の大きさとする。クリップ50は、たとえばいわゆるゼムクリップと同様に、スチール等の金属からなる1本の棒体を折り曲げて形成されたものを使用することができる。
【0033】
つぎに、このAWG型光合分波器100の動作について説明する。
AWG型光合分波器100のAWGチップ10では、第1入出力導波路10Aaから、波長が互いに信号光が波長多重されたWDM信号光が入力されると、第1スラブ導波路10Abは第1入出力導波路10Aaから入力されたWDM信号光を回折により広げてアレイ導波路10Acに入力させる。アレイ導波路10Acは、WDM信号光に含まれる信号光に位相差を付加して第2スラブ導波路10Adに入力させる。第2スラブ導波路10Adは、アレイ導波路10Acによって付加された位相差によって、波長の異なる各信号光を複数の第2入出力導波路10Aeのそれぞれに集光させる。その結果、複数の第2入出力導波路10Aeのそれぞれからは、互いに波長の異なる信号光が分波されて出力される。このように、AWG型光合分波器100は波長多重光分波器として機能する。
【0034】
一方、複数の第2入出力導波路10Aeのそれぞれから波長の異なる信号光を入力した場合は、光の相反性によって上記した作用と逆の作用が生じ、第1入出力導波路10Aaからは、複数の第2入出力導波路10Aeから入力された信号光が波長多重されたWDM信号光が出力される。この場合、AWG型光合分波器100は波長多重光合波器として機能する。したがって、AWG型光合分波器100は波長多重光合分波器として機能する。
【0035】
ここで、通常のAWGチップでは、AWGチップを構成する材料の屈折率に温度依存性があるため、AWGチップが温度変化すると、複数の第2入出力導波路のそれぞれに集光する光の波長が、本来集光されるべき波長からシフトする。その結果、AWGチップの光透過中心波長はシフトしてしまう。
【0036】
これに対して、本実施の形態に係るAWG型光合分波器100では、AWG型光合分波器100の温度変化に応じて補償部材40が方向Dで伸縮することによって可動片72をスライドさせて、固定片71と可動片72との相対位置を変えることにより、AWGチップ10の光透過中心波長の温度依存シフトを補償する。これによって、AWG型光合分波器100のアサーマル化が実現されている。
【0037】
特に、補償部材40は、第1スラブ導波路10Abにおける切断面Cと略平行に延伸しているので、その伸縮の方向Dも切断面Cと略平行である。したがって、補償部材40が伸縮した場合にも溝Gの幅が殆ど変化しない。その結果、補償部材40が伸縮してもAWG型光合分波器100の光学特性は変動せずに安定する。
【0038】
また、クリップ50は、押圧力Fを印加して基準板30と可動片72とを挟持している。その結果、補償部材40が伸縮して固定片71と可動片72との相対位置が変化しても、AWG型光合分波器100の光軸が変動せずに維持されるので、光学特性も安定する。
【0039】
ここで、本実施の形態では、固定片71を基準板30に接合しているので、クリップ50は可動片72のみを基準板30に押圧すればよい。これによって、クリップ50が印加すべき押圧力Fは小さくてよい。その結果、クリップ50として小型で簡略なものを使用できるので、部品コストが低減される。また、クリップ50は可動片72のみを基準板30に押圧すればよいので、押さえ基板のような複雑かつ高価な部品を使用しなくてもよくなり、より低コストかつ小型にできる。
【0040】
さらに、本実施の形態では、クリップ50で挟持すべき可動片72の方が、基準板30に接合した固定片71よりも質量が小さいので、クリップ50としてより小型で簡略なものを使用できる。
【0041】
これに対して、従来はAWGチップを切断して分離した2片の両方に対して押圧力を印加するようにしているため、クリップとして押圧力が大きく大型なものを用いる必要がある。また、2片の両方に押圧力を適切に印加するために押さえ基板などの追加の部品が必要となる。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態に係るAWG型光合分波器100は、光学特性が安定しており、かつ小型、低コストなものである。
【0043】
なお、AWGチップ10の光透過中心波長の温度依存シフトを補償するための補償部材40による位置補正量dxは、AWGチップ10の回路パラメータ等を用いて、以下の式(1)により設定することができる。
【0044】
【数1】
ここで、Lfは第1スラブ導波路10Abの焦点距離、ΔLはアレイ導波路10Acにおける隣接するチャネル導波路間の光路差、dはアレイ導波路10Acにおける隣接するチャネル導波路間のピッチ、nsは第1スラブ導波路10Abの実効屈折率、ngはアレイ導波路10Acの群屈折率、dλ/dTは透過中心波長の温度依存性(たとえば0.011nm/℃)、ΔTは温度変化量である。また、λ0は第1スラブ導波路10Abにおいて回折角が0度になる波長であり、AWGの中心波長と呼ばれるものである。
【0045】
温度変化量がΔTの場合に、可動片72が式(1)で示される位置補正量dxだけスライドするように補償部材40の線膨張係数と長さとを設定することによって、AWGチップ10の光透過中心波長の温度依存シフトを補償することができる。
【0046】
つぎに、AWGチップ10の製造方法について説明する。まず、シリコンや石英ガラス等からなる基板上に、火炎堆積(Flame Hydrolysis Deposition:FHD)法により、下部クラッド層およびコア層となるシリカ材料(SiO2系のガラス粒子)を順次堆積し、堆積層を加熱して溶融透明化する。つぎに、フォトリソグラフィと反応性イオンエッチングとを用いて、複数のAWG10Aの導波路パターンにコア層を形成する。つぎに、再びFHD法により、導波路パターンの上部および側部を覆うように上側部クラッド層を形成する。
【0047】
つぎに、図4に示すように、基板S上に、第1入出力導波路10Aa、第1スラブ導波路10Ab、アレイ導波路10Ac、第2スラブ導波路10Ad、および複数の第2入出力導波路10AeからなるAWG10Aを複数形成したものを、CO2レーザを用いてAWG10Aの輪郭形状に沿った切断線Lに沿って切断する。これによって、AWG10Aの輪郭形状に沿ったブーメラン形状のAWGチップ10を得ることができる。なお、切断は、CO2レーザに限らず種々の加工用のレーザやウォータージェット等を用いて行ってもよい。
【0048】
このように、基板S上にAWG10Aを高密度に複数形成し、AWG10Aの輪郭形状に沿ったブーメラン形状に切断してAWGチップ10を得ることによって、AWGを含む矩形状に基板を切断する場合よりも、1つの基板Sからより多数のAWGチップ10を得ることができる。これによってAWGチップ10を低コストに製造することができる。
【0049】
つぎに、クリップ50について説明する。図5は、図1に示すクリップ50の模式的な斜視図である。図5に示すように、クリップ50は、1本の棒体を角丸円形に沿って折り曲げて底部を形成し、さらに上方に伸びる立設部を形成するように折り曲げ、そこから下方の底部に向かって傾斜する傾斜部を形成するように折り曲げ、最後に端部を上方に屈曲させて押さえ部を形成したものである。そして、使用する際には、図1、2に示すように、クリップ50の底部と押さえ部との間に基準板30と可動片72とを介挿して挟持する。このような簡易な構成のクリップ50によって、可動片72を基準板30に十分な押圧力で押圧することができる。また、このようなクリップ50は高さも低く、小型化に好適である。
【0050】
(基準板の変形例)
つぎに、基準板30に置き換えて使用できる基準板の変形例について説明する。本実施の形態に係るAWG型光合分波器100では、固定片71は基準板30に接着剤等で接合し、可動片72は基準板30に当接させている。その結果、接着剤等の厚みによっては、固定片71と可動片72との高さがズレ、これによってAWGチップ片11と可動片72に含まれるAWGチップ片21との高さがズレるので、第1スラブ導波路10Abの光軸がズレるおそれがある。そこで、以下に説明する変形例の基準板によれば、AWGチップ片11とAWGチップ片21との高さズレがより確実に防止される。
【0051】
図6は、変形例1に係る基準板30Aの模式的な上面図である。図7は、図5に示す基準板30Aに固定片71を接合し可動片72を当接した状態を示す側面図である。図6、7に示すように、変形例1に係る基準板30Aは、固定片71が接合される領域31Aにおいて、可動片72が当接される領域よりも厚さが薄くなることによって段差32Aが形成されている。その結果、固定片71を基準板30Aに接合するための接着剤62は厚さが薄い領域31Aと固定片71との間に充填され、かつ固定片71の可動片72側の端部は可動片72が当接される領域に当接する。したがって、固定片71は接着剤によっても高さ方向にズレないので、AWGチップ片11とAWGチップ片21との高さズレはより確実に防止される。
【0052】
図8は、変形例2に係る基準板30Bに固定片71を接合し可動片72を当接した状態を示す模式的な側面図である。図8に示すように、変形例2に係る基準板30Bは、表面全体の領域31Bがフロスト処理により凹凸処理されている。基準板30Bに固定片71を接合する場合は、基準板30Bの固定片71側の端部33Bから接着剤を供給すると、領域31Bのフロスト処理された凹部に接着剤が浸透して充填されるので、固定片71を基準板30Bに接合することができる。したがって、固定片71は接着剤によって高さ方向にズレないので、AWGチップ片11とAWGチップ片21との高さズレはより確実に防止される。さらに、基準板30Bは、可動片72が当接される表面の領域にもフロスト処理がされている。その結果、基準板30Bと可動片72との間の接触面積が減少し、摩擦力が減少するので、可動片72は補償部材40の伸縮によってスムーズにスライドすることができる。なお、フロスト処理の凹凸の程度は、十分な量の接着剤がスムーズに凹部に浸透する程度であり、かつ固定片71を接合または可動片72を当接したときに凹凸によって傾斜しないような平滑性が維持されている程度、たとえば表面粗さRaを10μm以下とすることが好ましい。
【0053】
図9は、変形例3に係る基準板30Cの模式的な上面図である。図10は、図9に示す基準板30Cに固定片71を接合し可動片72を当接した状態を示す側面図である。図9、10に示すように、変形例3に係る基準板30Cは、表面全体の領域31Cがフロスト処理により凹凸処理されているとともに、固定片71の下方かつ可動片72が当接される側に、AWGチップの切断面に略沿って溝34Cが形成されている。溝34Cはたとえばダイシング等で形成することができる。基準板30Cは、変形例2に係る基準板30Bが奏する効果に加え、基準板30Cの固定片71側の端部33Cから接着剤を供給した場合に、領域31Cのフロスト処理された凹部に浸透していった接着剤は、さらに可動片72側まで流れていくと、溝34Cに溜まることになる。これによって、接着剤が可動片72まで流れていくことが防止される。したがって、固定片71が接合される面積をより確実に管理できるとともに、可動片72が誤って基準板30Cに接合されてしまうことが防止される。
【0054】
図11は、変形例4に係る基準板30Dに固定片71を接合し可動片72を当接した状態を示す模式的な側面図である。図11に示すように、変形例4に係る基準板30Dは、表面全体の領域31Dがフロスト処理により凹凸処理されているとともに、固定片71の下方かつ可動片72が当接される側と、可動片72が当接される領域とに、AWGチップの切断面に略沿ってそれぞれ溝34D、35Dが形成されている。なお、接着剤は基準板30Cの固定片71側の端部33Dから供給する。基準板30Dは、変形例3に係る基準板30Cが奏する効果に加え、溝35Dによって基準板30Dと可動片72との間の摩擦力がさらに減少するので、可動片72は補償部材40の伸縮によってさらにスムーズにスライドすることができる。
【0055】
(実施例)
本発明の実施例として、図1に示す実施の形態の構成のAWG型光合分波器を製造した。ただし、基準板としては、図11に示す変形例4の構成の基準板を用いた。図12は、実施例のAWG型光合分波器の回路パラメータを示す図である。この回路パラメータを用いて、純アルミニウム(JIS:A1050)からなる補償部材の長さを18.0mmに設定した。
【0056】
図13は、実施例のAWG型光合分波器の透過中心波長の変動の温度依存性を示す図である。図13に示すように、実施例のAWG型光合分波器は、−5℃〜70℃の広い温度範囲において透過中心波長の変動が±0.010nmであり、きわめて良好な温度特性を有していた。
【0057】
なお、上記実施の形態では、AWGチップを切断して分離したうちの質量が小さい方を可動片としてクリップで押圧するようにしているが、質量が大きい方を可動片としてクリップで押圧するようにしてもよい。すなわち、分離したAWGチップの一方のみをクリップで基準板に押圧し、他方は基準板に接合固定することによって、クリップを小型で簡略なものとすることができる。
【0058】
また、上記実施の形態では、第1スラブ導波路を切断して分離しているが、第2スラブ導波路、または第1スラブ導波路および第2スラブ導波の両方を切断して分離するようにしてもよい。
【0059】
また、上記実施の形態では、基板をAWGの輪郭形状に沿って切断し、ブーメラン形状のAWGチップを得ているが、基板を矩形に切断して矩形のAWGチップを得るようにしてもよい。この場合、AWGチップにスペースがあれば、補償部材は分離した2つのAWGチップ片の間に掛け渡すように設けてもよい。
【0060】
また、上記実施の形態では、基準板の表面にフロスト処理をしているが、サンドブラスト、ショットブラスト、梨地処理・シボ処理等の他の凹凸処理でもよい。また、可動片をスムーズにスライドさせるために、フロスト処理等の凹凸処理をしたり、溝を設けたりしているが、可動片と基準板との接触面積を減少させるような窪み部であれば、その態様は特に限定はされない。また、溝を設ける場合は、その延伸方向はAWGチップの切断面に沿う方向に限られず、切断面に垂直の方向でもよい。
【0061】
また、下地板、基準板の構成材料は、石英ガラスに限られない。下地板、基準板の構成材料の線膨張係数を考慮して補償部材の長さを決定すれば、金属、半導体、セラミックスなどの種々の材料を用いることができる。
【0062】
また、AWGチップと下地板とを接合する位置および補償部材を掛け渡す位置も、実施の形態のものに限られず、補償部材の伸縮によって切断されたAWGチップの位置が相対的に変化できるような位置であればよい。
【0063】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
10 AWGチップ
10A AWG
10Aa 第1入出力導波路
10Ab 第1スラブ導波路
10Ac アレイ導波路
10Ad 第2スラブ導波路
10Ae 第2入出力導波路
11、12 AWGチップ片
20 下地板
21、22 下地板片
30、30A、30B、30C、30D 基準板
31、31A、31B、31C、31D 領域
32A 段差
33B、33C、33D 端部
34C、34D、35D 溝
40 補償部材
50 クリップ
61、62 接着剤
71 固定片
72 可動片
100 AWG型光合分波器
C 切断面
D 方向
F 押圧力
G 溝
L 切断線
S 基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が入出力される第1入出力導波路と、前記第1入出力導波路に接続された第1スラブ導波路と、前記第1スラブ導波路に接続され、互いに長さが異なり並列に配列された複数のチャネル導波路からなるアレイ導波路と、前記アレイ導波路に接続された第2スラブ導波路と、前記第2スラブ導波路に接続された、光が入出力される複数の第2入出力導波路と、を有するアレイ導波路回折格子チップと、
前記アレイ導波路回折格子チップの下面に接合された下地板と、が前記第1スラブ導波路または前記第2スラブ導波路を横断する切断面において2つに切断されて形成された固定片および可動片と、
前記固定片が接合されるとともに前記可動片が当接される基準板と、
前記固定片と前記可動片との間に掛け渡されるように設けられ、温度変化に応じて伸縮して前記固定片と前記可動片との相対位置を変えることにより、前記アレイ導波路回折格子の光透過中心波長の温度依存シフトを補償する補償部材と、
前記可動片が前記基準板上をスライドできるように前記基準板と前記可動片とを挟持するクリップと、
を備えることを特徴とするアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項2】
前記可動片の質量が前記固定片の質量よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項3】
前記クリップは、1本の棒体を折り曲げて形成されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項4】
前記基準板は、前記固定片が接合される領域において、前記可動片が当接される領域よりも厚さが薄くなることによって段差が形成されており、前記固定片の前記可動片側の端部は前記可動片が当接される領域に当接していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項5】
前記基準板の表面が、前記固定片が接合される領域において凹凸処理されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項6】
前記基準板の表面の、前記固定片の下方かつ前記可動片が当接される側に、前記アレイ導波路回折格子チップの切断面に略沿って溝が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項7】
前記基準板の表面が、前記可動片が当接される領域において凹凸処理されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項8】
前記基準板の表面の前記可動片が当接される領域に窪み部が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項9】
前記アレイ導波路回折格子チップは、前記アレイ導波路回折格子の輪郭形状に沿った形状を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項10】
前記補償部材は、前記固定片の前記下地板と前記可動片の前記下地板との間に掛け渡されるように設けられていることを特徴とする請求項9に記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項1】
光が入出力される第1入出力導波路と、前記第1入出力導波路に接続された第1スラブ導波路と、前記第1スラブ導波路に接続され、互いに長さが異なり並列に配列された複数のチャネル導波路からなるアレイ導波路と、前記アレイ導波路に接続された第2スラブ導波路と、前記第2スラブ導波路に接続された、光が入出力される複数の第2入出力導波路と、を有するアレイ導波路回折格子チップと、
前記アレイ導波路回折格子チップの下面に接合された下地板と、が前記第1スラブ導波路または前記第2スラブ導波路を横断する切断面において2つに切断されて形成された固定片および可動片と、
前記固定片が接合されるとともに前記可動片が当接される基準板と、
前記固定片と前記可動片との間に掛け渡されるように設けられ、温度変化に応じて伸縮して前記固定片と前記可動片との相対位置を変えることにより、前記アレイ導波路回折格子の光透過中心波長の温度依存シフトを補償する補償部材と、
前記可動片が前記基準板上をスライドできるように前記基準板と前記可動片とを挟持するクリップと、
を備えることを特徴とするアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項2】
前記可動片の質量が前記固定片の質量よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項3】
前記クリップは、1本の棒体を折り曲げて形成されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項4】
前記基準板は、前記固定片が接合される領域において、前記可動片が当接される領域よりも厚さが薄くなることによって段差が形成されており、前記固定片の前記可動片側の端部は前記可動片が当接される領域に当接していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項5】
前記基準板の表面が、前記固定片が接合される領域において凹凸処理されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項6】
前記基準板の表面の、前記固定片の下方かつ前記可動片が当接される側に、前記アレイ導波路回折格子チップの切断面に略沿って溝が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項7】
前記基準板の表面が、前記可動片が当接される領域において凹凸処理されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項8】
前記基準板の表面の前記可動片が当接される領域に窪み部が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項9】
前記アレイ導波路回折格子チップは、前記アレイ導波路回折格子の輪郭形状に沿った形状を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【請求項10】
前記補償部材は、前記固定片の前記下地板と前記可動片の前記下地板との間に掛け渡されるように設けられていることを特徴とする請求項9に記載のアレイ導波路回折格子型光合分波器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−57907(P2013−57907A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197584(P2011−197584)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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