説明

アレルゲン吸着剤

【課題】加熱されても色変化を生じることがない上に、アレルゲンを効率良く吸着することのできるアレルゲン吸着剤を提供する。また、アレルゲンを効率良く吸着できる布帛を提供する。
【解決手段】本発明のアレルゲン吸着剤は、化学組成式における酸化ナトリウム(Na2O)の含有率が2.0〜5.0質量%の範囲であり、化学組成式における酸化カルシウム(CaO)の含有率が0質量%以上2.2質量%以下であるスメクタイトを含むことを特徴とする。本発明の布帛1は、前記アレルゲン吸着剤が固着された繊維を構成繊維の少なくとも一部に用いて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状粘土鉱物であるスメクタイトの層間にアレルゲンを取り込んで吸着することのできるアレルゲン吸着剤に関する。
【0002】
なお、この明細書及び特許請求の範囲において、「樹脂シート」の語は、樹脂シートのみならず、樹脂フィルムをも含む意味で用いる。
【背景技術】
【0003】
近年、住宅の高気密化に伴い、ハウスダストといわれる塵等が室内にこもりやすくなっており、これらの塵等がアレルギーを引き起こす原因であるアレルゲンとなり、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎等のアレルギー疾患を多く発症しているといわれている。
【0004】
アレルゲンには様々なタイプがあるが、例えばダニ(虫体、死骸、抜け殻、糞等)、カビ、ペット(毛、フケ等)、花粉などが挙げられ、これらがアレルギー疾患の主な原因物質であると考えられている。このようなアレルギー疾患を防ぐ対策としては、一般に、花粉等のアレルゲンを室内に入れないように工夫する、アレルゲンを除去する、アレルゲンを不活性化処理する等の手法が知られている。
【0005】
例えばエアコンや空気清浄機においてフィルターで空気中のアレルゲンを捕集して除去することが行われている。
【0006】
また、ダニ(虫体、死骸、抜け殻、糞等)、カビ、ペットの毛やフケ、花粉等のアレルゲンは床に堆積することが多いことから、本出願人は、カーペットにアレルゲン低減化物質を固着せしめることを提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−54898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前者のエアコンや空気清浄機のフィルターで空気中のアレルゲンを捕集する手法は、室内に浮遊しているアレルゲンに対しては効果があるものの、床面や壁面等に付着して浮遊していないアレルゲンに対しては全く効果は得られない。
【0009】
また、上記特許文献1で用いているアレルゲン低減化物質は、そのほとんどがポリフェノールの一種であるから、製造工程において加熱工程を経る場合には色変化を生じやすく、このためにカーペット等の表面に所望の色合いの意匠、デザインを構成する上で支障を生じやすいという問題があった。
【0010】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、加熱されても色変化を生じることがない上に、アレルゲンを効率良く吸着することのできるアレルゲン吸着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0012】
[1]化学組成式における酸化ナトリウム(Na2O)の含有率が2.0〜5.0質量%の範囲であり、化学組成式における酸化カルシウム(CaO)の含有率が0質量%以上2.2質量%以下であるスメクタイトを含むことを特徴とするアレルゲン吸着剤。
【0013】
[2]前記スメクタイトの化学組成式において酸化ナトリウム(Na2O)/酸化カルシウム(CaO)の質量比が10/0〜10/10の範囲である前項1に記載のアレルゲン吸着剤。
【0014】
[3]前記スメクタイトは、モンモリロナイトを70質量%以上含有するものである前項1または2に記載のアレルゲン吸着剤。
【0015】
[4]前記スメクタイトは、平均粒子径が0.01〜5μmの粉体である前項1〜3のいずれか1項に記載のアレルゲン吸着剤。
【0016】
[5]構成繊維の少なくとも一部の繊維に前項1〜4のいずれか1項に記載のアレルゲン吸着剤が固着されていることを特徴とする布帛。
【0017】
[6]前記布帛におけるアレルゲン吸着剤の固着量が0.05〜3g/m2である前項5に記載の布帛。
【0018】
[7]合成樹脂及び前項1〜4のいずれか1項に記載のアレルゲン吸着剤を含有する樹脂組成物からなる練り込み繊維を構成繊維の少なくとも一部に用いて構成された布帛。
【0019】
[8]前記練り込み繊維におけるアレルゲン吸着剤の含有率が0.025〜1.5質量%である前項7に記載の布帛。
【0020】
[9]合成樹脂シートの表面に前項1〜4のいずれか1項に記載のアレルゲン吸着剤が固着されていることを特徴とする樹脂シート。
【0021】
[10]前記樹脂シートにおけるアレルゲン吸着剤の固着量が0.05〜3g/m2である前項9に記載の樹脂シート。
【0022】
[11]合成樹脂及び前項1〜4のいずれか1項に記載のアレルゲン吸着剤を含有する樹脂組成物からなる樹脂シート。
【0023】
[12]前記樹脂組成物におけるアレルゲン吸着剤の含有率が0.5〜5質量%である前項11に記載の樹脂シート。
【発明の効果】
【0024】
[1]の発明に係るアレルゲン吸着剤は、化学組成式における酸化ナトリウム(Na2O)の含有率が2.0〜5.0質量%の範囲であり、化学組成式における酸化カルシウム(CaO)の含有率が0質量%以上2.2質量%以下であるスメクタイトで構成されているから、このスメクタイトの層間にアレルゲンを多く取り込んで吸着することができる。また、スメクタイトは、粘土鉱物であり、加熱されても色変化を生じることがないから、布帛や樹脂シート等の付与対象物の表面に所望の色合いの意匠、デザインを構成することができる。
【0025】
[2]の発明では、スメクタイトの化学組成式において酸化ナトリウム(Na2O)/酸化カルシウム(CaO)の質量比が10/0〜10/10の範囲であるから、アレルゲンの吸着性能をさらに向上させることができる。
【0026】
[3]の発明では、スメクタイトは、モンモリロナイトを70質量%以上含有するから、アレルゲンの吸着性能をより一層向上させることができる(後述する実施例1と実施例7の対比から明らかである)。
【0027】
[4]の発明では、スメクタイトは、平均粒子径が0.01〜5μmの粉体であるから、分散性を向上させることができ、例えばこのアレルゲン吸着剤を布帛や樹脂シートに均一に付与(固着、練り込み等)することができる。
【0028】
[5]の発明では、アレルゲンを効率良く吸着することのできる布帛が提供される。
【0029】
[6]の発明では、布帛におけるアレルゲン吸着剤の固着量が0.05〜3g/m2であるから、アレルゲンをより効率良く吸着することのできる布帛が提供される。
【0030】
[7]の発明では、アレルゲンを効率良く吸着することのできる布帛が提供される。
【0031】
[8]の発明では、練り込み繊維におけるアレルゲン吸着剤の含有率が0.025〜1.5質量%であるから、アレルゲンをより効率良く吸着することのできる布帛が提供される。
【0032】
[9]の発明では、アレルゲンを効率良く吸着することのできる樹脂シートが提供される。
【0033】
[10]の発明では、樹脂シートにおけるアレルゲン吸着剤の固着量が0.05〜3g/m2であるから、アレルゲンをより効率良く吸着することのできる樹脂シートが提供される。
【0034】
[11]の発明では、アレルゲンを効率良く吸着することのできる樹脂シートが提供される。
【0035】
[12]の発明では、樹脂組成物におけるアレルゲン吸着剤の含有率が0.5〜5質量%であるから、アレルゲンをより効率良く吸着することのできる樹脂シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る布帛の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る樹脂シートの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明のアレルゲン吸着剤(アレルゲン捕捉剤)は、化学組成式における酸化ナトリウム(Na2O)の含有率が2.0〜5.0質量%の範囲であり、化学組成式における酸化カルシウム(CaO)の含有率が0質量%以上2.2質量%以下であるスメクタイトを含むことを特徴とする。
【0038】
本発明のアレルゲン吸着剤は、化学組成式における酸化ナトリウム(Na2O)の含有率が2.0〜5.0質量%の範囲であり、化学組成式における酸化カルシウム(CaO)の含有率が0質量%以上2.2質量%以下であるスメクタイトで構成されているから、このスメクタイトの層間にアレルゲン(ハウスダスト、花粉等)を多く取り込んで吸着することができる。
【0039】
本発明において、前記スメクタイトの化学組成式における酸化ナトリウム(Na2O)の含有率は2.0〜5.0質量%の範囲であることが必要である。2.0質量%未満では、アレルゲンを吸着する効果が十分に得られない(格段に低下する)。2.0質量%以上であることで、スメクタイトの層間が広がりやすく(膨潤しやすく)なってアレルゲンを多く取り込んで吸着できるものと推定される。一方、5.0質量%を超えたものは現状では市販品を見出せておらず、また5.0質量%を超えると、スメクタイトが水等に分散しにくくなる上に、高粘度になる等の不都合を生じると推定される。中でも、前記スメクタイトの化学組成式における酸化ナトリウム(Na2O)の含有率は3.0〜4.0質量%の範囲であるのが好ましい。
【0040】
また、前記スメクタイトの化学組成式における酸化カルシウム(CaO)の含有率は0質量%以上2.2質量%以下であることが必要である。0質量%である場合(即ち、酸化カルシウムを含有しない場合)、又は0質量%を超えて2.2質量%以下である場合には、アレルゲンを吸着する効果が十分に得られる。2.2質量%を超えると、アレルゲンを吸着する効果が十分に得られない(格段に低下する)。
【0041】
なお、前記スメクタイトにおける化学組成の定量分析法(各含有率の測定方法)としては、例えば、高周波誘導プラズマ(ICP)発光分析法、蛍光X線分析法などが挙げられるが、本発明では、高周波誘導プラズマ(ICP)発光分析法で測定された値を用いるものとする。
【0042】
また、前記スメクタイトとしては、その化学組成式において酸化ナトリウム(Na2O)/酸化カルシウム(CaO)の質量比が10/0〜10/10(10/0及び10/10を含む)の範囲であるスメクタイトを用いるのが好ましい。このような比率範囲にある場合には、アレルゲンの吸着性能をさらに向上させることができる。
【0043】
前記スメクタイトとしては、特に限定されるものではないが、例えばモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等が挙げられる。
【0044】
中でも、前記スメクタイトとしては、モンモリロナイトを70質量%以上含有するスメクタイトを用いるのが好ましい。この場合には、アレルゲンの吸着性能をより一層向上させることができる。
【0045】
前記スメクタイトとしては、平均粒子径が0.01〜5μmのスメクタイト粉体(粉末)を用いるのが好ましい。この場合には、スメクタイトの分散性を向上させることができるので、例えばこのアレルゲン吸着剤を布帛や樹脂シートに均一に付与(固着、練り込み等)することが可能となる。なお、平均粒子径が0.01μm未満のものは入手が困難であるし、小さすぎて舞い上がる等取り扱いが困難であるので、好ましくない。中でも、平均粒子径が0.1〜3μmのスメクタイト粉体を用いるのがより好ましい。
【0046】
前記平均粒子径は、レーザー回折/散乱法により測定される体積平均粒子径(メジアンD50)である。体積平均粒子径(メジアンD50)は、全粒子の粒子径及び体積を測定し、小さい粒子径のものから順次体積を積算し、該積算体積が全粒子の合計体積に対して50%となる粒子の粒子径である。
【0047】
なお、本発明のアレルゲン吸着剤は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、前記特定のスメクタイト(化学組成式における酸化ナトリウムの含有率が2.0〜5.0質量%の範囲であり、酸化カルシウムの含有率が0質量%以上2.2質量%以下であるスメクタイト)以外に、粘土鉱物(前記特定のスメクタイトを除く)等の他の成分を含有していてもよい。
【0048】
本発明のアレルゲン吸着剤を布帛、樹脂シート等に付与する手法としては、特に限定されるものではないが、例えば、固着、練り込み等が挙げられる。即ち、下記のような構成の布帛や樹脂シートを構成するのが好ましい。
1)構成繊維の少なくとも一部の繊維に前記アレルゲン吸着剤が固着されてなる布帛1
2)合成樹脂及び前記アレルゲン吸着剤を含有する樹脂組成物からなる練り込み繊維を構成繊維の少なくとも一部に用いて構成された布帛1
3)合成樹脂シートの表面に前記アレルゲン吸着剤が固着されてなる樹脂シート(樹脂フィルムを含む)10
4)合成樹脂および前記アレルゲン吸着剤を含有する樹脂組成物からなる樹脂シート(樹脂フィルムを含む)10。
【0049】
上記1)の構成において、布帛1におけるアレルゲン吸着剤の固着量は0.05〜3g/m2であるのが好ましい。0.05g/m2以上であることでアレルゲンをより効率良く吸着できる。また、3g/m2を超えても固着量の増加に見合った効果の向上が得られないので、3g/m2以下であるのがよい。
【0050】
上記2)の構成において、前記練り込み繊維におけるアレルゲン吸着剤の含有率は0.025〜1.5質量%であるのが好ましい。0.025質量%以上であることでアレルゲンをより効率良く吸着できる。また、1.5質量%を超えても含有率の増加に見合った効果の向上が得られないので、1.5質量%以下であるのがよい。
【0051】
上記3)の構成において、前記樹脂シート10におけるアレルゲン吸着剤の固着量は0.05〜3g/m2であるのが好ましい。0.05g/m2以上であることでアレルゲンをより効率良く吸着できる。また、3g/m2を超えても固着量の増加に見合った効果の向上が得られないので、3g/m2以下であるのがよい。
【0052】
上記4)の構成において、前記樹脂組成物におけるアレルゲン吸着剤の含有率は0.5〜5.0質量%であるのが好ましい。0.5質量%以上であることでアレルゲンをより効率良く吸着できる。また、5.0質量%を超えても含有率の増加に見合った効果の向上が得られないので、5.0質量%以下であるのがよい。
【0053】
前記布帛としては、特に限定されるものではないが、例えば、不織布、織布、編布、パイル布帛等が挙げられる。前記不織布、織布、編布を構成する繊維としては、特に限定されるものではなくどのようなものでも使用でき、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維等の合成繊維、あるいは麻、綿、羊毛等の天然繊維等が挙げられる。
【0054】
前記パイル布帛の一実施形態を図1に示す。このパイル布帛1は、カーペットとして用いられるものであり、表面にパイル層2を有する基布3の裏面に裏打ち層4が積層一体化されたものである。これら構成部材2、3、4のいずれに前記アレルゲン吸着剤が付与(固着、練り込み等)されていてもよい。
【0055】
なお、本発明の布帛1の構成は、図1に例示のパイル層を有する構成のものに特に限定されるものではなく、例えばパイル層を有しない布帛(不織布、織布、編布等)であってもよい。
【0056】
前記樹脂シート(樹脂フィルムを含む)10の一実施形態を図2に示す。この樹脂シート10は、片面に前記アレルゲン吸着剤が固着されてなる。即ち、図2では、樹脂シート10の片面が、アレルゲン吸着剤固着面10aである。勿論、樹脂シート10の両面がアレルゲン吸着剤固着面10aになっていてもよい。前記樹脂シート(樹脂フィルムを含む)10を構成する合成樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー(エチレン−酢酸ビニル、非晶性エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム等)、スチレン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム等のゴム成分系などが挙げられる。
【0057】
本発明において、アレルゲン吸着剤を布帛、樹脂シート等に固着させるためのバインダー樹脂としては、例えば自己架橋型(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。例えば、前記アレルゲン吸着剤及び前記バインダー樹脂を含むエマルジョン(水系エマルジョン、非水系エマルジョンなど)を布帛の構成繊維、或いは樹脂シートの表面等に塗布して乾燥させることによって固着させることができる。前記塗布の手法としては、特に限定されるものではないが、例えばスプレー法、コーティング法、ディッピング法等が挙げられる。
【0058】
前記基布3としては、特に限定されるものではなくどのようなものでも使用できる。例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維等の合成繊維、あるいは麻、綿、羊毛等の天然繊維等の繊維からなる糸を製編織した布地の他、各種の繊維や糸を、ニードリング等により機械的に接結したり、あるいは接着剤等により化学的に接結した不織布等を使用できる。
【0059】
前記パイル層2のパイル素材としては、特に限定されるものではなく、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維等の繊維からなるもの等を好適に使用でき、その他、麻、綿、羊毛等の天然繊維からなるもの等を使用できる。更にパイル層の形成手段も特に限定されるものではなく、例えばモケット等のように経パイル織、緯パイル織等の製織によりパイル層を形成する手段、タフティングマシン等によりパイル糸を植毛してパイル層を形成する手段、編機によりパイル層を形成する手段、接着剤を用いてパイル糸を接着してパイル層を形成する手段等を例示することができる。パイル形態も特に限定されず、カットパイル、ループパイル等いずれの形態であっても良い。
【0060】
前記裏打ち層4の材質としては、特に限定されず、例えば樹脂組成物、ゴム組成物、ジュート、ポリプロピレン織布、ニードルパンチ基布などが挙げられるが、これらの中でも樹脂組成物やゴム組成物が好適に使用される。この樹脂組成物の樹脂成分としては、アクリル系、ウレタン系、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の樹脂を挙げることができる。また、ゴム組成物のゴム成分としては、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、MBR(メチルメタクリレート−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、あるいは天然ゴム等が挙げられる。
【実施例】
【0061】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。なお、以下の平均粒子径は、レーザー回折/散乱法により測定された体積平均粒子径(メジアンD50)である。
【0062】
<原材料(粘土鉱物)>
[スメクタイトA]
化学組成:表1に記載
(化学組成式における酸化ナトリウム(Na2O)の含有率が3.2質量%、化学組成式における酸化カルシウム(CaO)の含有率が1.1質量%、モンモリロナイト含有率:87質量%、平均粒子径1μmの粉末)。
【0063】
[スメクタイトB]
化学組成:表1に記載
(化学組成式における酸化ナトリウム(Na2O)の含有率が4.5質量%、化学組成式における酸化カルシウム(CaO)の含有率が0.0質量%、モンモリロナイト含有率:98質量%、平均粒子径0.1μmの粉末)。
【0064】
[スメクタイトC]
化学組成:表1に記載
(化学組成式における酸化ナトリウム(Na2O)の含有率が2.7質量%、化学組成式における酸化カルシウム(CaO)の含有率が1.0質量%、モンモリロナイト含有率:59質量%、平均粒子径1μmの粉末)。
【0065】
[スメクタイトD]
化学組成:表1に記載
(化学組成式における酸化ナトリウム(Na2O)の含有率が2.0質量%、化学組成式における酸化カルシウム(CaO)の含有率が2.0質量%、モンモリロナイト含有率:67質量%、平均粒子径1μmの粉末)。
【0066】
[スメクタイトE]
化学組成:表1に記載
(化学組成式における酸化ナトリウム(Na2O)の含有率が2.4質量%、化学組成式における酸化カルシウム(CaO)の含有率が1.8質量%、モンモリロナイト含有率:76質量%、平均粒子径1μmの粉末)。
【0067】
[スメクタイトF]
化学組成:表1に記載
(化学組成式における酸化ナトリウム(Na2O)の含有率が2.6質量%、化学組成式における酸化カルシウム(CaO)の含有率が0.0質量%、モンモリロナイト含有率:92質量%、平均粒子径1μmの粉末)。
【0068】
[スメクタイトX]
化学組成:表1に記載
(化学組成式における酸化ナトリウム(Na2O)の含有率が2.0質量%、化学組成式における酸化カルシウム(CaO)の含有率が3.2質量%、モンモリロナイト含有率:80質量%、平均粒子径2μmの粉末)。
【0069】
[スメクタイトY]
化学組成:表1に記載
(化学組成式における酸化ナトリウム(Na2O)の含有率が1.8質量%、化学組成式における酸化カルシウム(CaO)の含有率が1.2質量%、モンモリロナイト含有率:52質量%、平均粒子径2μmの粉末)。
【0070】
[スメクタイトZ]
化学組成:表1に記載
(化学組成式における酸化ナトリウム(Na2O)の含有率が2.7質量%、化学組成式における酸化カルシウム(CaO)の含有率が2.4質量%、モンモリロナイト含有率:82質量%、平均粒子径1μmの粉末)。
【0071】
[Mgバーミキュライト]
平均粒子径5μmの粉末。
【0072】
【表1】

【0073】
なお、表1における「強熱減量」(Ig−Loss)については、蒸発残留物を強熱(600±25℃で30分間)したときに揮散する物質が主として有機物質であって、蒸発残留物と強熱残留物の濃度差を強熱減量の値(質量%)とする。また、表1で化学組成における各含有率(質量%)は、高周波誘導プラズマ(ICP)発光分析法で測定された値である。
【0074】
<実施例1>
上記スメクタイトAを5質量部、水85質量部、ウレタン樹脂(バインダー樹脂)10質量部を混合してなる加工液(水系エマルジョン液)を作製した。次いで、ポリエステル繊維布帛(織布)を前記加工液にディッピングした(加工液に浸漬した)後、150℃で10分間加熱乾燥することによって、繊維にスメクタイトA(アレルゲン吸着剤)が固着されてなる繊維布帛を得た。得られた布帛におけるアレルゲン吸着剤の固着量は0.5g/m2であった。
【0075】
<実施例2>
5質量部のスメクタイトAに代えて、5質量部のスメクタイトBを用いた以外は、実施例1と同様にして、繊維にスメクタイトB(アレルゲン吸着剤)が固着されてなる繊維布帛を得た。得られた布帛におけるアレルゲン吸着剤の固着量は0.5g/m2であった。
【0076】
<実施例3>
上記スメクタイトAを10質量部、水70質量部、ウレタン樹脂(バインダー樹脂)20質量部を混合してなる加工液(水系エマルジョン液)を作製した。次いで、ポリエステル繊維布帛(織布)を前記加工液にディッピングした(加工液に浸漬した)後、150℃で10分間加熱乾燥することによって、繊維にスメクタイトA(アレルゲン吸着剤)が固着されてなる繊維布帛を得た。得られた布帛におけるアレルゲン吸着剤の固着量は1.5g/m2であった。
【0077】
<実施例4>
上記スメクタイトAを0.25質量%練り込んでマスターチップ化したポリエチレンテレフタレートチップを溶融紡糸機を用いて紡糸することによってポリエチレンテレフタレート製練り込み繊維を得た。この練り込み繊維を織機で製織することによりポリエステル繊維布帛を得た。
【0078】
<実施例5>
上記スメクタイトAを5質量部、水5質量部、アクリル樹脂(バインダー樹脂)90質量部を混合してなる加工液(水系エマルジョン液)を作製した。次いで、塩化ビニルフィルムにロールコーター加工にて前記加工液を塗布した後、160℃で5分間加熱乾燥することによって、フィルムの表面にスメクタイトA(アレルゲン吸着剤)が固着されてなる厚さ100μmのフィルムを得た。得られたフィルムにおけるアレルゲン吸着剤の固着量は0.5g/m2であった。
【0079】
<実施例6>
5質量部のスメクタイトA(平均粒子径1μm)に代えて、5質量部のスメクタイトA(平均粒子径7μmタイプ)を用いた以外は、実施例1と同様にして、繊維にスメクタイト(アレルゲン吸着剤)が固着されてなる繊維布帛を得た。得られた布帛におけるアレルゲン吸着剤の固着量は0.5g/m2であった。
【0080】
<実施例7>
5質量部のスメクタイトAに代えて、5質量部のスメクタイトCを用いた以外は、実施例1と同様にして、繊維にスメクタイトC(アレルゲン吸着剤)が固着されてなる繊維布帛を得た。得られた布帛におけるアレルゲン吸着剤の固着量は0.5g/m2であった。
【0081】
<実施例8>
5質量部のスメクタイトAに代えて、5質量部のスメクタイトDを用いた以外は、実施例1と同様にして、繊維にスメクタイトD(アレルゲン吸着剤)が固着されてなる繊維布帛を得た。得られた布帛におけるアレルゲン吸着剤の固着量は0.5g/m2であった。
【0082】
<実施例9>
5質量部のスメクタイトAに代えて、5質量部のスメクタイトEを用いた以外は、実施例1と同様にして、繊維にスメクタイトE(アレルゲン吸着剤)が固着されてなる繊維布帛を得た。得られた布帛におけるアレルゲン吸着剤の固着量は0.5g/m2であった。
【0083】
<実施例10>
上記スメクタイトEを4級アミンで有機カチオン化処理したもの(アレルゲン吸着剤)を4質量部、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体86質量部、マレイン酸変性ポリエチレン10質量部をバンバリーミキサーで混練した後、設定温度160℃の2本ロールを用いて加工することによって、スメクタイトEが練り込まれてなる厚さ1.0mmの樹脂シートを得た。
【0084】
<実施例11>
5質量部のスメクタイトAに代えて、5質量部のスメクタイトFを用いた以外は、実施例1と同様にして、繊維にスメクタイトF(アレルゲン吸着剤)が固着されてなる繊維布帛を得た。得られた布帛におけるアレルゲン吸着剤の固着量は0.5g/m2であった。
【0085】
<比較例1>
5質量部のスメクタイトAに代えて、5質量部のスメクタイトXを用いた以外は、実施例1と同様にして、繊維にスメクタイトXが固着されてなる繊維布帛を得た。得られた布帛におけるスメクタイトXの固着量は0.5g/m2であった。
【0086】
<比較例2>
5質量部のスメクタイトAに代えて、5質量部のスメクタイトYを用いた以外は、実施例1と同様にして、繊維にスメクタイトYが固着されてなる繊維布帛を得た。得られた布帛におけるスメクタイトYの固着量は0.5g/m2であった。
【0087】
<比較例3>
5質量部のスメクタイトAに代えて、5質量部のスメクタイトZを用いた以外は、実施例1と同様にして、繊維にスメクタイトZが固着されてなる繊維布帛を得た。得られた布帛におけるスメクタイトYの固着量は0.5g/m2であった。
【0088】
<比較例4>
5質量部のスメクタイトAに代えて、5質量部のMgバーミキュライトを用いた以外は、実施例1と同様にして、繊維にMgバーミキュライトが固着されてなる繊維布帛を得た。得られた布帛におけるMgバーミキュライトの固着量は0.5g/m2であった。
【0089】
【表2】

【0090】
【表3】

【0091】
上記のようにして得られた繊維布帛、フィルム、シートのアレルゲン低減性能及び風合いを下記評価法に基づいて評価した。これらの評価結果を表2、3に示す。
【0092】
<アレルゲン低減性能(アレルゲン吸着性能)評価法>
pH7.4のリン酸バッファー(緩衝溶液)で200倍に希釈したダニアレルゲンDerf1(コナヒョウヒダニ;フン由来アレルゲン)含有リン酸バッファー溶液(以下、「PBS」という)3.0mLに、4cm角の大きさの測定試験片(繊維布帛、フィルム、シート)を加え、35℃で16時間撹拌した後(以下、「測定液」という)、PBS溶液中のダニアレルゲン濃度をELISA法のサンドイッチ法により測定した。即ち、次のような手順で行った。
1)50mMの炭酸ナトリウムバッファー(pH9.6)で、6A8モノクローナル抗体を1000倍希釈し、この希釈液をELISA用96穴プレートの各ウェルに100μLずつ分注し、4℃で16時間放置する。
2)プレートの液を捨て、Tween20を0.05質量%含有するリン酸バッファー溶液(以下、「PBST」という)で3回洗浄した後、ブロッキング液(1%BSAを含むPBS)を各ウェルに加え、30分間放置する。
3)プレートの液を捨て、PBSTで3回洗浄した後、測定液を各ウェルに100μL加えて30分間静置する。
4)プレートの液を捨て、PBSTで3回洗浄した後、1000倍に希釈した4C1ビオチン化モノクローナル抗体を各ウェルに100μL加えて1時間静置する。
5)プレートの液を捨て、PBSTで3回洗浄した後、1000倍に希釈したペルオキシターゼ標識ストレプトアビジンを各ウェルに100μL加えて30分間静置する。
6)プレートの液を捨て、PBSTで3回洗浄した後、発色基質液を各ウェルに100μL加えて遮光したまま10分間静置し、反応停止液を各ウェルに100μL加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダーを用いて吸光度を測定する。
7)検量線用標準溶液の吸光度から得られる検量線を用いてダニアレルゲン濃度を算出する。
【0093】
アレルゲン低減率(%)=(当初のアレルゲン濃度−試験後のアレルゲン濃度)÷(当 初のアレルゲン濃度)×100
上記の式からアレルゲン低減率(%)を算出した。
【0094】
<風合い評価法>
繊維布帛、フィルムの表面を手で触り、その時の感触が、ざらつき感が全くなくて風合いに優れているものを「◎」とし、ざらつき感が殆どなくて風合いの良いものを「○」とし、ざらつき感があって風合いが悪いものを「×」とした。
【0095】
表から明らかなように、本発明のアレルゲン吸着剤を用いた実施例1〜4、6〜9、11の繊維布帛及び実施例5のフィルム並びに実施例10のシートは、アレルゲン低減率が高く(アレルゲンが大きく低減されており)、アレルゲンを多く取り込んで吸着できることがわかる。
【0096】
これに対し、本発明の規定範囲を逸脱するアレルゲン吸着剤を用いた比較例1〜4では、アレルゲン低減率は低かった。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明のアレルゲン吸着剤は、アレルゲンを吸着する性能に優れているので、これを布帛や樹脂シートに付与することにより、アレルゲン低減性能を有する布帛、樹脂シートを提供できる。
【符号の説明】
【0098】
1…布帛
2…パイル層
3…基布
4…裏打ち層
10…樹脂シート
10a…アレルゲン吸着剤固着面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学組成式における酸化ナトリウム(Na2O)の含有率が2.0〜5.0質量%の範囲であり、化学組成式における酸化カルシウム(CaO)の含有率が0質量%以上2.2質量%以下であるスメクタイトを含むことを特徴とするアレルゲン吸着剤。
【請求項2】
前記スメクタイトの化学組成式において酸化ナトリウム(Na2O)/酸化カルシウム(CaO)の質量比が10/0〜10/10の範囲である請求項1に記載のアレルゲン吸着剤。
【請求項3】
前記スメクタイトは、モンモリロナイトを70質量%以上含有するものである請求項1または2に記載のアレルゲン吸着剤。
【請求項4】
前記スメクタイトは、平均粒子径が0.01〜5μmの粉体である請求項1〜3のいずれか1項に記載のアレルゲン吸着剤。
【請求項5】
構成繊維の少なくとも一部の繊維に請求項1〜4のいずれか1項に記載のアレルゲン吸着剤が固着されていることを特徴とする布帛。
【請求項6】
前記布帛におけるアレルゲン吸着剤の固着量が0.05〜3g/m2である請求項5に記載の布帛。
【請求項7】
合成樹脂及び請求項1〜4のいずれか1項に記載のアレルゲン吸着剤を含有する樹脂組成物からなる練り込み繊維を構成繊維の少なくとも一部に用いて構成された布帛。
【請求項8】
前記練り込み繊維におけるアレルゲン吸着剤の含有率が0.025〜1.5質量%である請求項7に記載の布帛。
【請求項9】
合成樹脂シートの表面に請求項1〜4のいずれか1項に記載のアレルゲン吸着剤が固着されていることを特徴とする樹脂シート。
【請求項10】
前記樹脂シートにおけるアレルゲン吸着剤の固着量が0.05〜3g/m2である請求項9に記載の樹脂シート。
【請求項11】
合成樹脂及び請求項1〜4のいずれか1項に記載のアレルゲン吸着剤を含有する樹脂組成物からなる樹脂シート。
【請求項12】
前記樹脂組成物におけるアレルゲン吸着剤の含有率が0.5〜5質量%である請求項11に記載の樹脂シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−206656(P2011−206656A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75721(P2010−75721)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【出願人】(390029458)一方社油脂工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】