アレーアンテナ
【課題】アンテナ素子間隔以外のパラメータを利用して空間相関を小さくする。
【解決手段】アレーアンテナが備えるアンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンを、信号が先に到来するアンテナ素子の位相指向性パターンの位相が信号が遅れて到来するアンテナ素子の位相指向性パターンの位相より遅れる関係を満たすように定めて、アンテナ素子の配置に起因する位相差に、指向性パターンに起因する位相差が加算されるようにする。
【解決手段】アレーアンテナが備えるアンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンを、信号が先に到来するアンテナ素子の位相指向性パターンの位相が信号が遅れて到来するアンテナ素子の位相指向性パターンの位相より遅れる関係を満たすように定めて、アンテナ素子の配置に起因する位相差に、指向性パターンに起因する位相差が加算されるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナ素子から構成されるアレーアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
MIMO(Multiple Input Multiple Output)は、独立した空間伝送路(以下、「チャネル」と言う。)を複数用意することで、同時に同じ帯域で複数のデータストリームを伝送する技術である。なお、MIMOはIEEE802.11nやIEEE802.16eなどに規格として採用されている。また、LTE(Long Term Evolution)などの次世代の広帯域無線通信システムでは2多重を超える多重度のMIMOも計画されている。
【0003】
MIMO伝送では、送受信側の双方に複数のアンテナ素子を配置し、送受信側双方のアンテナ素子間隔を複数のチャネルが互いに独立であるとみなせる程度にまで広げる必要がある。これは、チャネルが互いに独立であることによって、各チャネルの最大伝送速度の総和までMIMO伝送の伝送速度を向上させることができるためである。
チャネルが互いに独立かどうかを示す指標として空間相関があり(例えば、非特許文献1参照。)、チャネルが互いに独立であればあるほど空間相関は小さい値になる。例えば、2多重で、送信側のアンテナ素子及び受信側のアンテナ素子の夫々が2本の場合の空間相関ρ12は、チャネル応答ベクトルを夫々下記の式(1),(2)とすると、下記の式(3)で表される。
【0004】
【数1】
【0005】
【数2】
【0006】
【数3】
但し、h11,h12,h21,h22の夫々はチャネル応答であり(図1参照。)、振幅及び位相を含んだ複素数である。また、正規化後の空間相関は0から1の間の値となる。なお、上添え字Tは転置を示し、上添え字Hは複素共役転置を示し、上添え字*は複素共役を示す。
【0007】
空間相関を下げるためには、h11とh21との間の位相差、及びh12とh22との間の位相差を大きくする必要があり、そのためにはアンテナ素子間隔を広げる必要があり、例えばアンテナ素子はその間隔が0.5波長になるように配置される。ところで、2.5GHz帯を無線通信に使用した場合、2.5GHzでの0.5波長は6cmであることから、空間相関の劣化を回避するために、2本のアンテナ素子はその間隔が6cmになるように配置される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】田中,大鐘,小川,“アダプティブアレーを用いたSDMA方式におけるチャネル割当基準”,電子情報通信学会論文誌(B),vol.J82-B,no.11,pp.2133-2141,Nov.1999.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、多重度が増大すればこれに合わせて必要なアンテナ素子の数が増加し、例えば4多重のMIMOの場合には4本のアンテナ素子が必要になる。このため、例えば4多重のMIMOを携帯電話機などの通信機器に適用した場合には、通信機器の寸法からくる制約により、4本のアンテナ素子を0.5波長分間隔を空けて配置し難くなることが想定される。
【0010】
また、2多重の場合であっても、例えば、通信機器の寸法によっては、また、無線通信に利用する帯域によっては、2本のアンテナ素子を0.5波長分間隔を空けて配置することが難しいこともある。
なお、MIMO以外の例えばSIMO(Simple Input Multiple Output)などの無線通信においても受信側のアンテナ素子においては同様のことが言える。
【0011】
そこで、本発明は、アンテナ素子間隔以外のパラメータを利用して空間相関を小さくすることが可能なアレーアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明のアレーアンテナは、M(Mは2以上の整数)本のアンテナ素子を備えるアレーアンテナであって、各前記アンテナ素子は指向性アンテナであり、前記アンテナ素子の位相指向性パターンが互いに異なるように、各アンテナ素子の位相指向性パターンが設定されている。
【発明の効果】
【0013】
上記のアレーアンテナによれば、アンテナ素子間の位相指向性パターンが互いに異なるため、同じアンテナ素子間隔であっても空間相関を小さくすることができる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態の無線通信システムのシステム構成図。
【図2】図1の携帯電話機の構成図。
【図3】図1のアンテナ素子に用いられる電子制御導波器アンテナの模式図。
【図4】図1のアンテナ素子に用いられる電子制御導波器アンテナのバラクタダイオードのリアクタンス値の関係を示す図。
【図5】(a)は図1のアンテナ素子の振幅指向性パターンを示す図であり、(b)はその位相指向性パターンを示す図。
【図6】図1のアンテナ素子A1とアンテナ素子A2との受信信号の位相差を説明するための図。
【図7】アンテナ素子の他の指向性を示す図。
【図8】(a)は4本のアンテナ素子の振幅指向性パターンを示す図であり、(b)はその位相指向性パターンを示す図。
【図9】第2の実施の形態の受信装置が備えるアンテナ素子に用いられる電子制御導波器アンテナの模式図。
【図10】第2の実施の形態の受信装置が備えるアンテナ素子に用いられる電子制御導波器アンテナのバラクタダイオードのリアクタンス値の関係を示す図。
【図11】(a)は第2の実施の形態の受信装置が備えるアンテナ素子の振幅指向性パターンを示す図であり、(b)はその位相指向性パターンを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪第1の実施の形態≫
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
<無線通信システム>
本実施の形態の無線通信システムについて図1を参照しつつ説明する。図1は本実施の形態の無線通信システムのシステム構成図である。
【0016】
基地局Tはアンテナ素子TA1,TA2を備え、携帯電話機Rはアンテナ素子RA1,RA2を備える。但し、アンテナ素子TA1,TA2によってアレーアンテナが構成され、アンテナ素子RA1,RA2によってアレーアンテナが構成される。
基地局Tから携帯電話機Rへの無線通信では、図1に示す4つのチャネルが形成され、夫々のチャネル応答を、図1に示すように、h11,h21,h12,h22で表す。チャネル応答h11,h21,h12,h22は、夫々、送受信点間の振幅及び位相の変動量を示す複素数であり、それらには送信側及び受信側のアンテナ素子の振幅特性及び位相特性も含まれる。本実施の形態は、チャネル応答h11とチャネル応答h21との位相差及びチャネル応答h12とチャネル応答h22との位相差を大きくして空間相関を小さくするために、アンテナ素子RA1,RA2の位相特性に異なる指向性を持たせるものである。
【0017】
以下では、基地局Tから携帯電話機Rへの下り通信に着目し、更には受信側の携帯電話機Rのアンテナ素子RA1,RA2の振幅指向性及び位相指向性に着目して説明する。
<携帯電話機>
以下、図1の携帯電話機Rの構成について図2を参照しつつ説明する。図2は図1の携帯電話機Rの構成図である。
【0018】
携帯電話機Rは、アンテナ素子RA1,RA2、フロントエンド部11,12、チャネル推定部13、ウェイト生成部14、分離合成部15及び復調部16を備える。なお、携帯電話機Rは、アンテナ素子RA1,RA2を除いては、一般的な構成を利用でき、アンテナ素子RA1,RA2の詳細は後述するものとして、ここでは、各構成要素の概略を説明するに留める。
【0019】
アンテナ素子RA1,RA2は、指向性アンテナであり、後述するように可変指向性アンテナの一つである電子制御導波器アンテナが用いられる。但し、アンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2とは例えば0.25波長分間隔を空けて配される。
フロントエンド部11,12は、アンテナ素子RA1,RA2で受信されたRF(Radio Frequency)信号に対してゲイン調整や周波数変換などを施して例えばベースバンド帯の受信信号を出力する。
【0020】
チャネル推定部13は、フロントエンド部11,12から出力される受信信号中のプリアンブルを利用してチャネル応答h11,h21,h12,h22を推定する。そして、ウェイト生成部14はチャネル推定部13により推定されたチャネル応答h11,h21,h12,h22を用いてウェイトを生成する。なお、ウェイトの生成は、例えば最大比合成(Maximum Ratio Combining:MRC)や最小二乗誤差(Minimum Mean Square Error:MMSE)を利用することによって行われる。
【0021】
分離合成部15は、フロントエンド部11,12から出力される受信信号に対してウェイト生成部14で生成されたウェイトを用いて重み付けを行うことによって信号の分離及び合成を行い、基地局Tから送信された2つの送信信号を推定する。復調部16は分離合成部15から出力される2つの送信信号を復調する。
<アンテナ素子>
(構造)
図1のアンテナ素子RA1,RA2に用いられる電子制御導波器アンテナの構造について図3を参照しつつ説明する。図3は図1のアンテナ素子RA1,RA2に用いられる電子制御導波器アンテナの構造を示す模式図である。
【0022】
アンテナ素子RA1,RA2に用いられる電子制御導波器アンテナは素子間電磁結合を利用した可変指向性アンテナである。なお、電子制御導波器アンテナは、例えば、「橋口,程,飯草,TAILLEFER,平田,大平,“無線アドホックネットワーク用エスパアンテナの設計と試作,”電子情報通信学会論文誌(B),vol.J85-B, no.12, pp.2245-2256, Dec. 2002.」に開示されている。
【0023】
電子制御導波器アンテナは、交流電源32に接続されたモノポールの給電素子(中央素子)31の周辺にバラクタダイオード34,36,38付きの線状導体(周辺素子)33,35,37を配置した構造を有する。電子制御導波器アンテナは、バラクタダイオード34,36,38のリアクタンス値を変化させることによって、素子間電磁結合を変化させて指向性パターンを変化させるものである。但し、本実施の形態では、線状導体33,35,37は円周に沿う方向に120°(2π/3)間隔で配置されているものとする。
【0024】
給電素子31と線状導体33,35,37とは、自由空間中で0.25波長程度離して配置することが好ましいが、給電素子31と線状導体33,35,37との間を誘電体39で埋めることによって、自由空間中に換算して0.025波長程度にまで間隔を狭めることが可能である。なお、2.5GHz帯を使用する場合には給電素子31と線状導体33,35,37との間隔は3mmである。
【0025】
(電子制御導波器アンテナの指向性及び給電素子での受信信号)
図3に構造を示した電子制御導波器アンテナの指向性及び給電素子での受信信号について説明する。
電子制御導波器アンテナの仰角θ且つ方位角φの方向の指向性パターンD(θ,φ)は下記の式(4)で表され、仰角θ且つ方位角φの方向からの到来信号に対する給電素子での受信信号y(t)は下記の式(5)で表される。なお、式(4)、(5)において、上添え字Tは転置を示す。
【0026】
【数4】
【0027】
【数5】
但し、a(θ,φ)は電子制御導波器アンテナのモードベクトルであり、下記の式(6)で表される。w(x1,x2,x3)は電子制御導波器アンテナの素子間相互結合を含んだ等価ウェイトベクトルであり、下記の式(7)で表され、x1,x2,x3はバラクタダイオード34,36,38のリアクタンス値である。s(t)は送信信号であり、hsは送信点から電子制御導波器アンテナの給電素子までのチャネル応答(アンテナ素子の指向性を除いたチャネル応答)である。
【0028】
【数6】
但し、βは伝搬定数(=2π/λ)、dは給電素子と線状導体間の間隔である。
【0029】
【数7】
但し、zsは送受信機の入出力インピーダンスである。Zは給電素子及び線状導体間のインピーダンス行列であり、下記の式(8)で表される。Xは送受信機の入出力インピーダンスとバラクタダイオードのリアクタンス値を成分とする対角行列であり、下記の式(9)で表される。u0は単位ベクトルであり、下記の式(10)で表される。なお、式(10)において、上添え字Tは転置を示す。
【0030】
【数8】
但し、Zの各要素は複素パラメータであり、z00は給電素子の自己入力インピーダンス、z01は給電素子と線状導体間結合インピーダンス、z11は線状導体の自己入力インピーダンス、z12は隣接する線状導体間結合入力インピーダンスである。
【0031】
【数9】
【0032】
【数10】
上記のw(x1,x2,x3)はリアクタンス値x1,x2,x3の関数であるため、w(x1,x2,x3)はリアクタンス値x1,x2,x3によって変化し、指向性パターンD(θ,φ)はリアクタンス値x1,x2,x3によって変化する(式(4)参照。)。従って、リアクタンス値x1,x2,x3を調整することによって、所望の指向性パターンD(θ,φ)を得ることが可能である。つまり、リアクタンス値x1,x2,x3を調整することによって、所望の振幅指向性パターンを得ることができ、また、所望の位相指向性パターンを得ることができる。
【0033】
(電子制御導波器アンテナの指向性の具体例)
本実施の形態で利用するアンテナ素子RA1,RA2の指向性パターンについて図4及び図5を参照しつつ説明する。図4はアンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2のバラクタダイオード34,36,38のリアクタンス値の関係を示す図である。図5(a)はアンテナ素子RA1,RA2の振幅指向性パターンを示す図であり、図5(b)はアンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンを示す図である。但し、以下において記載する水平面方位角は、上記の(電子制御導波器アンテナの指向性)における方位角φに相当する。
【0034】
アンテナ素子RA1,RA2のバラクタダイオード34,36,38が接続された線状導体33,35,37は、水平面方位角φが90°(π/2),210°(7π/6),330°(11π/6)の位置に配されている。
図4に示すように、アンテナ素子RA1のバラクタダイオード34、36、38のリアクタンス値をxa,xb,xcに設定する(x1=xa,x2=xb,x3=xc)。但し、上述したように、バラクタダイオード34、36、38のリアクタンス値を調節することによって所望の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンが得られる。そこで、アンテナ素子RA1の振幅指向性パターンが図5(a)になるように、その位相指向性パターンが図5(b)になるように、バラクタダイオード34、36、38のリアクタンス値を調節し、その結果としてバラクタダイオード34、36、38のリアクタンス値としてxa,xb,xcが得られたとする。
【0035】
また、アンテナ素子RA2のバラクタダイオード34、36、38のリアクタンス値をxa,xc,xbに設定する(x1=xa,x2=xc,x3=xb)。これによって、アンテナ素子RA2の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンとして図5(a)及び図5(b)に示すものが得られる。なお、アンテナ素子RA2のバラクタダイオード34、36、38のリアクタンス値は、アンテナ素子RA2の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンが図5(a)及び図5(b)に示すパターンになるように調節されていればよい。
【0036】
以下に、アンテナ素子RA1,RA2の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンについて以下に記載する。
アンテナ素子RA1,RA2の振幅指向性パターンは図5(a)に示すように略無指向性である。
図5(b)に示すように、アンテナ素子RA1の位相指向性パターンでは、位相は水平面方位角φが0°以上180°以下の範囲では単調増加、水平面方位角φが180°以上360°以下の範囲では単調減少である。これに対して、アンテナ素子RA2の位相指向性パターンでは、位相は水平面方位角φが0°以上180°以下の範囲では単調減少、水平面方位角φが180°以上360°以下の範囲では単調増加である。このように、アンテナ素子RA1の位相指向性パターンとアンテナ素子RA2の位相指向性パターンとは逆のパターンになっている。なお、位相指向性パターンを単調増加及び単調減少にすることによって、略全ての方位から到来した電波に対して、アンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンの相違に起因する位相差を発生させることが可能である。
【0037】
また、水平面方位角φが0°以上90°未満及び270°より大きく360°以下ではアンテナ素子RA2の位相指向性パターンの位相がアンテナ素子RA1のそれより進んでおり、水平面方位角φが90°より大きく270°未満ではアンテナ素子RA1の位相指向性パターンの位相がアンテナ素子RA2のそれより進んでいる。つまり、アンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンでは、遅れた位相で信号が到来するアンテナ素子の位相指向性パターンの位相が、進んだ位相で信号が到来するアンテナ素子の位相指向性パターンの位相より遅れた位相となっている。
【0038】
(アンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2との受信信号の位相差)
以下、アンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2の受信信号の位相差について図6を参照しつつ説明する。図6はアンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2との受信信号の位相差を説明するための図である。但し、ここでの「受信信号」は、アンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンによる位相が加味された後の信号である。なお、基地局Tは2ストリーム伝送を行うが、何れの場合も同じことが言えるので、ここでは1ストリームのみに着目して説明する。
【0039】
アンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2との間隔をLとし、水平面方位角φの方向から信号Aがアンテナ素子RA1,RA2に到来したとする。アンテナ素子RA1には、アンテナ素子RA2より、アンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2との配置に起因する距離Lcosφに相当する位相差hφ1遅れた信号Aが到来する(図6(a)参照)。
そして、水平面方位角φでは、アンテナ素子RA1の位相指向性パターンの位相はアンテナRA2のそれよりも位相差hφ2遅れている(図6(b)参照。)。
【0040】
アンテナ素子RA1によって受信された受信信号は、アンテナ素子RA2によって受信された受信信号より、アンテナ素子の配置に起因する位相差hφ1に位相指向性パターンに起因する位相差hφ2が加算された位相差(hφ1+hφ2)遅れたものになる(図6(a)参照。)。
仮に、アンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンが無指向性であれば、アンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2との間で位相指向性パターンに起因する位相差は生じない。このため、アンテナ素子RA1によって受信された受信信号は、アンテナ素子RA2によって受信された受信信号より、アンテナ素子の配置に起因する位相差hφ1だけ遅れることになる。
【0041】
従って、アンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンを図5(b)のように設定した場合には、アンテナ素子の配置に起因する位相差に位相指向性パターンに起因する位相差が加算されるため、アンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンが無指向性である場合に比べて、チャネル応答h11とチャネル応答h21との位相差及びチャネル応答h12とチャネル応答h22との位相差を大きくすることができる。このように、本実施の形態のアレーアンテナは、アンテナ素子RA1,RA2の間隔が従来のアレーアンテナと同じであっても、空間相関を小さくすることができる。
【0042】
(空間相関)
アンテナ素子RA1,RA2が異なる位相指向性パターンを有する場合の空間相関について説明する。
チャネル応答h(図1のh11,h12,h21,h22)は、アンテナ素子RA1,RA2の指向性パターンD(θ,φ)と送信点から電子制御導波器アンテナの給電素子までのチャネル応答hsとを乗算した下記の式(11)で表わされる。なお、式(11)において、上添え字Tは転置を示す。
【0043】
【数11】
アンテナ素子RA1、RA2に図5(b)に示す逆の位相指向性パターンが与えられた場合の、MIMOにおけるアンテナ素子TA1及びアンテナ素子TA2に対するチャネル応答ベクトルh1,directional,h2,directionalは、夫々、下記の式(12)、(13)で与えられる。なお、式(12),(13)において、上添え字Tは転置を示す。
【0044】
【数12】
【0045】
【数13】
但し、h、hs、θ、φの夫々の下添え字の2つの数字のうちの1つ目の“1”は受信側のアンテナ素子RA1を、“2”はアンテナ素子RA2を示し、当該下添え字の2つ目の“1”は送信側のアンテナ素子TA1を、“2”はアンテナ素子TA2を示す。ψ11及びψ12は、夫々、アンテナ素子TA1からの信号到来方向に対するアンテナ素子RA1及びアンテナ素子RA2の指向性パターンの位相を示す。また、ψ12及びψ22は、夫々、アンテナ素子TA2からの信号到来方向に対するアンテナ素子RA1及びアンテナ素子RA2の指向性パターンの位相を示す。なお、指向性パターンの振幅は大きな減衰がない無指向性に近いものであるとしているため、空間相関の計算においては無視できるものとして、チャネル応答ベクトルの要素から省略している。
【0046】
受信アンテナに指向性アンテナを使用した場合の空間相関ρ12directionalは下記の式(14)で表わされる。なお、式(14)において、上添え字Hは複素共役転置を示す。
【0047】
【数14】
式(3)と式(14)とを比較すると、受信側に指向性アンテナを使用し適切な位相指向性パターンを形成することによって、空間相関を低下させることが可能となることが分かる。なお、このことは、受信側のみならず、送信側のみに可変指向性アンテナを使用した場合であっても、また、送受信側双方に可変指向性アンテナを使用した場合であっても同様に成立する。
【0048】
≪第1の実施の形態の変形例≫
<第1の変形例>
上記の第1の実施の形態の携帯電話機Rが備えるアンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターン(図5(b)参照)の代わりに、携帯電話機が備えるアンテナ素子RA1,RA2が図7に示すような位相指向性パターンを有するようにする。
【0049】
<第2の変形例>
第2の変形例の携帯電話機は、第1の実施の形態の携帯電話機Rと異なり、4本のアンテナ素子A1〜A4を有し、アンテナ素子A1〜A4は図8(a)に示す振幅指向性パターン及び図8(b)に示す位相指向性パターンを有する。但し、アンテナ素子A1,A2,A3,A4はその順番に一直線上に並んでいるとする。
【0050】
アンテナ素子A1,A2,A3,A4の振幅指向性パターンは、図8(a)に示すように、略無指向性に設定されている。
図8(b)に示すように、アンテナ素子A1,A2の各位相指向性パターンでは、位相は水平面方位角φが0°以上180°以下の範囲では単調増加、水平面方位角φが180°以上360°以下の範囲では単調減少である。これに対して、アンテナ素子A3,A4の位相指向性パターンでは、位相は水平面方位角φが0°以上180°以下の範囲では単調減少、水平面方位角φが180°以上360°以下の範囲では単調増加である。
【0051】
また、水平面方位角φが0°以上90°未満及び270°より大きく360°以下ではアンテナ素子A4,A3,A2,A1の順番で位相指向性パターンの位相が進んでおり、水平面方位角φが90°より大きく270°未満ではアンテナ素子A1,A2,A3,A4の順番で位相指向性パターンの位相が進んでいる。つまり、アンテナ素子A1,A2,A3,A4の位相指向性パターンでは、遅れた位相で信号が到来するアンテナ素子の位相指向性パターンの位相が、進んだ位相で信号が到来するアンテナ素子の位相指向性パターンの位相より遅れた位相となっている。
【0052】
≪第2の実施の形態≫
以下、本発明の第2の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施の形態の携帯電話機は、第1の実施の形態の第2の変形例と同様に、4本のアンテナ素子B1〜B4を備えているが、アンテナ素子B1〜アンテナ素子B4の位相指向性パターンの関係が、第1の実施の形態の第2の変形例のアンテナ素子A1〜アンテナ素子A4の位相指向性パターンの関係(図8(b)参照)と異なる。
【0053】
<アンテナ素子>
本実施の形態のアンテナ素子B1〜B4に用いられる電子制御導波器アンテナの構造について図9を参照しつつ説明する。図9は本実施の形態のアンテナ素子B1〜B4に用いられる電子制御導波器アンテナの構造を示す模式図である。
アンテナ素子B1〜B4に用いられる電子制御導波器アンテナは、交流電源102に接続されたモノポールの給電素子(中央素子)101の周辺にバラクタダイオード104,106,108,110付きの線状導体(周辺素子)103,105,107,109を配置した構造を有する。但し、本実施の形態では、線状導体103,105,107,109は円周に沿う方向に90°(π/2)間隔で配置されているものとする。
【0054】
(電子制御導波器アンテナの指向性及び給電素子での受信信号)
図9に構造を示した電子制御導波器アンテナの指向性及び給電素子での受信信号について説明する。
電子制御導波器アンテナの仰角θ且つ方位角φの方向の指向性パターンD(θ,φ)は下記の式(15)で表され、仰角θ且つ方位角φの方向からの到来信号に対する給電素子での受信信号y(t)は下記の式(16)で表される。なお、式(15)、(16)において、上添え字Tは転置を示す。
【0055】
【数15】
【0056】
【数16】
但し、a(θ,φ)は電子制御導波器アンテナのモードベクトルであり、下記の式(17)で表される。w(x1,x2,x3,x4)は電子制御導波器アンテナの素子間相互結合を含んだ等価ウェイトベクトルであり、下記の式(18)で表され、x1,x2,x3,x4はバラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値である。s(t)は送信信号であり、hsは送信点から電子制御導波器アンテナの給電素子までのチャネル応答(アンテナ素子の指向性を除いたチャネル応答)である。
【0057】
【数17】
但し、βは伝搬定数(=2π/λ)、dは給電素子と線状導体間の間隔である。
【0058】
【数18】
但し、zsは送受信機の入出力インピーダンスである。Zは給電素子及び線状導体間のインピーダンス行列であり、下記の式(19)で表される。Xは送受信機の入出力インピーダンスとバラクタダイオードのリアクタンス値を成分とする対角行列であり、下記の式(20)で表される。u0は単位ベクトルであり、下記の式(21)で表される。なお、式(21)において、上添え字Tは転置を示す。
【0059】
【数19】
但し、Zの各要素は複素パラメータであり、z00は給電素子の自己入力インピーダンス、z01は給電素子と線状導体間結合インピーダンス、z11は線状導体の自己入力インピーダンス、z12は隣接する線状導体間結合入力インピーダンスであり、z13は対角にある線状導体間結合入力インピーダンスである。
【0060】
【数20】
【0061】
【数21】
上記のw(x1,x2,x3,x4)はリアクタンス値x1,x2,x3,x4の関数であるため、w(x1,x2,x3,x4)はリアクタンス値x1,x2,x3,x4によって変化し、指向性パターンD(θ,φ)はリアクタンス値x1,x2,x3,x4によって変化する(式(15)参照。)。従って、リアクタンス値x1,x2,x3,x4を調整することによって、所望の指向性パターンD(θ,φ)を得ることが可能である。つまり、リアクタンス値x1,x2,x3,x4を調整することによって、所望の振幅指向性パターンを得ることができ、また、所望の位相指向性パターンを得ることができる。
【0062】
(電子制御導波器アンテナの指向性の具体例)
本実施の形態で利用するアンテナ素子B1〜B4の指向性パターンについて図10及び図11を参照しつつ説明する。図10はアンテナ素子B1〜B4の夫々のバラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値の関係を示す図である。図11(a)はアンテナ素子B1〜B4の振幅指向性パターンを示す図であり、図11(b)はアンテナ素子B1〜B4の位相指向性パターンを示す図である。但し、以下において記載する水平面方位角は、上記の(電子制御導波器アンテナの指向性)における方位角φに相当する。
【0063】
アンテナ素子B1〜B4は、夫々、正方形の頂点上に配され、つまり、水平面方位角φが225°(5π/4)、315°(7π/4)、45°(π/4),135°(3π/4)の位置に配されている。また、アンテナ素子B1〜B4のバラクタダイオード104,106,108,110が接続された線状導体103,105,107,109は、水平面方位角φが225°(5π/4)、315°(7π/4)、45°(π/4),135°(3π/4)の位置に配されている。
【0064】
図10に示すように、アンテナ素子B1のバラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値をxa,xb,xc,xdに設定する(x1=xa,x2=xb,x3=xc,x4=xd)。但し、上述したように、バラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値を調節することによって所望の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンが得られる。そこで、アンテナ素子B1の振幅指向性パターンが図11(a)になるように、その位相指向性パターンが図11(b)になるように、バラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値を調節し、その結果としてバラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値としてxa,xb,xc,xdが得られたとする。
【0065】
また、アンテナ素子B2のバラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値をxd,xa,xb,xcに設定する(x1=xd,x2=xa,x3=xb,x4=xc)。これによって、アンテナ素子B2の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンとして図11(a)及び図11(b)に示すものが得られる。なお、アンテナ素子B2のバラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値は、アンテナ素子B2の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンが図11(a)及び図11(b)に示すパターンになるように調節されていればよい。
【0066】
さらに、アンテナ素子B3のバラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値をxc,xd,xa,xbに設定する(x1=xc,x2=xd,x3=xa,x4=xb)。これによって、アンテナ素子B3の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンとして図11(a)及び図11(b)に示すものが得られる。なお、アンテナ素子B3のバラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値は、アンテナ素子B3の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンが図11(a)及び図11(b)に示すパターンになるように調節されていればよい。
【0067】
さらに、アンテナ素子B4のバラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値をxb,xc,xd,xaに設定する(x1=xb,x2=xc,x3=xd,x4=xa)。これによって、アンテナ素子B4の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンとして図11(a)及び図11(b)に示すものが得られる。なお、アンテナ素子B4のバラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値は、アンテナ素子B4の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンが図11(a)及び図11(b)に示すパターンになるように調節されていればよい。
【0068】
以下に、アンテナ素子B1〜B4の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンについて以下に記載する。
アンテナ素子B1〜B4の振幅指向性パターンは図11(a)に示すように略無指向性である。
アンテナ素子B1の位相指向性パターンでは、図11(b)に示すように、水平面方位角が0°以上45°以下の範囲及び0°以上225°以下360°では単調減少、水平面方位角が45°以上225°以下では単調増加である。アンテナ素子B1の位相指向性パターンは、アンテナ素子B4の後述する位相指向性パターンを水平面方位角の正の方向に90°スライドさせたものである。但し、この90°は、360°をアンテナ素子の本数“4”で除算して得られるものである。
【0069】
アンテナ素子B2の位相指向性パターンは、アンテナ素子B1の位相指向性パターンを水平面方位角の正の方向に90°スライドさせたものである。また、アンテナ素子B3の位相指向性パターンは、アンテナ素子B2の位相指向性パターンを水平面方位角の正の方向に90°スライドさせたものである。更に、アンテナ素子B4の位相指向性パターンは、アンテナ素子B3の位相指向性パターンを水平面方位角の正の方向に90°スライドさせたものである。
【0070】
つまり、アンテナ素子B1,B2,B3,B4の位相指向性パターンは、反時計回りの1つ前のアンテナ素子B4,B1,B2,B3の位相指向性パターンを水平面方位角の正の方向に90度スライドさせたものである。
また、アンテナ素子B1〜B4の位相指向性パターンでは、水平面方位角φが0°より大きく45°未満アンテナ素子B3,B2,B4,B1の順番で位相指向性パターンの位相が進んでいる。水平面方位角φが45°より大きく90°未満ではアンテナ素子B3,B4,B2,B1の順番で位相指向性パターンの位相が進んでいる。水平面方位角φが90°より大きく135°未満ではアンテナ素子B4,B3,B1,B2の順番で位相指向性パターンの位相が進んでいる。水平面方位角φが135°より大きく180°未満ではアンテナ素子B4,B1,B3,B2の順番で位相指向性パターンの位相が進んでいる。
【0071】
水平面方位角φが180°より大きく225°未満ではアンテナ素子B1,B4,B2,B3の順番で位相指向性パターンの位相が進んでいる。水平面方位角φが225°より大きく270°未満ではアンテナ素子B1,B2,B4,B3の順番で位相指向性パターンの位相が進んでいる。水平面方位角φが270°より大きく315°未満ではアンテナ素子B2,B1,B3,B4の順番で位相指向性パターンの位相が進んでいる。水平面方位角φが315°より大きく360°未満ではアンテナ素子B2,B3,B1,B4の順番で位相指向性パターンの位相が進んでいる。
【0072】
つまり、アンテナ素子B1〜B4の位相指向性パターンでは、遅れた位相で信号が到来するアンテナ素子の位相指向性パターンの位相が、進んだ位相で信号が到来するアンテナ素子の位相指向性パターンの位相より遅れた位相となっている。
≪補足≫
本発明は上記の実施の形態で説明した内容に限定されず、本発明の目的とそれに関連又は付随する目的を達成するためのいかなる形態においても実施可能であり、例えば、以下であってもよい。
【0073】
(1)上記の第2の実施の形態では、4本のアンテナ素子を正方形の頂点上に配置するとしたが、これに限られるものではなく、例えば、長方形や菱型や平行四辺形など正方形でなくてもよい。
(2−1)アレーアンテナが備えるアンテナ素子間の位相指向性パターンの関係は、上記の第1の実施の形態及びその変形例で説明した関係に限られない。例えば、アレーアンテナが備えるアンテナ素子がM(Mは2以上の整数)本であり、第i(iは1以上M以下の整数)のアンテナ素子の第iの位相指向性パターンと、第j(jは1以上M以下であって、i以外の整数)のアンテナ素子の第jの位相指向性パターンとの関係とが次のような関係を満たすものであってもよい。
【0074】
第iの位相指向性パターンと第jの位相指向性パターンとは、同一送信源から到来する信号に対して、第iのアンテナ素子と第jのアンテナ素子の配置に基づき発生する位相差に、第iのアンテナ素子と第jのアンテナ素子の位相指向性に基づき発生する位相差が加算される関係になるように、設定されていればよい。言い換えると、第iの位相指向性パターンと第jの位相指向性パターンとは、遅れた位相で信号が到来するアンテナ素子の指向性パターンの位相が、進んだ位相で信号が到来するアンテナ素子の指向性パターンの位相より遅れた位相となるように、設定されていればよい。
【0075】
また、第i(iは1以上M以下の整数)のアンテナ素子と第j(jは1以上M以下でi以外の整数)のアンテナ素子とを通り、第iのアンテナ素子から第jのアンテナ素子に向かう方向を正方向とする軸に対する角度をφとした場合、φは0°以上360°以下とし、0°≦φ<φA1°(φA1は90より小さい所定の値)及びφB1°(φB1は270より大きい所定の値)<φ≦360°では、第jのアンテナ素子の第jの位相指向性パターンの位相が第iのアンテナ素子の第iの位相指向性パターンの位相より進み、φA2°(φA2は90より大きい所定の値)<φ<φB2°(φB2はφA2より大きく270より小さい所定の値)では、第iの位相指向性パターンの位相が第jの位相指向性パターンの位相より進む関係になるように、第i及び第jの位相指向性パターンが設定されていればよい。例えば、φA1及びφA2は略90であり、φB1及びφB2は略270である。
【0076】
この場合、各アンテナ素子の位相指向性パターンとして、0°≦φ≦180°では単調増加で、180°≦φ≦360°では単調減少となるパターン、及び0°≦φ≦180°では単調減少で、180°≦φ≦360°では単調増加となるパターンの何れかとして、上記の関係を満たすように各アンテナ素子の位相指向性パターンを設定してもよい。
更に、M本のアンテナ素子を2本のアンテナ素子の対に分けた場合に、同じ対の2本のアンテナ素子の位相指向性パターンが互いに逆パターンになるように、各アンテナ素子の位相指向性パターンが設定されるようにしてもよい。但し、Mが奇数の場合には、1本のアンテナ素子は除かれる。なお、図5(b)、図7の例では、アンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンは互いに逆パターンになっている。また、図8(b)の例では、アンテナ素子A1,A4の位相指向性パターンは互いに逆パターンになっており、アンテナ素子A2,A3の位相指向性パターンは互いに逆パターンになっている。
【0077】
(2−2)アレーアンテナが備えるアンテナ素子間の位相指向性パターンの関係は、上記の第2の実施の形態で説明した関係に限られない。例えば、アレーアンテナが備えるアンテナ素子の数がM(Mは3以上の整数)本であり、各アレーアンテナ素子は、M角形(頂点の数がMである多角形)の頂点上に反時計回りに第1、第2、・・・第Mのアンテナ素子が配されている場合に、各アンテナ素子の位相指向性パターンは次のような関係を満たすものであってもよい。
【0078】
第i(iは1以上M以下の整数)のアンテナ素子の第iの位相指向性パターンと、第j(jは1以上M以下であって、i以外の整数)のアンテナ素子の第jの位相指向性パターンとは、同一送信源から到来する信号に対して、第iのアンテナ素子と第jのアンテナ素子の配置に基づき発生する位相差に、第iのアンテナ素子と第jのアンテナ素子の位相指向性に基づき発生する位相差が加算される関係になるように、設定されていればよい。言い換えると、第iの位相指向性パターンと第jの位相指向性パターンとは、遅れた位相で信号が到来するアンテナ素子の指向性パターンの位相が、進んだ位相で信号が到来するアンテナ素子の指向性パターンの位相より遅れた位相となるように、設定されていればよい。
【0079】
上記の条件の下、第i(iは1以上M以下の整数)のアンテナ素子の第iの位相指向性パターンは、iが1の場合には第Mのアンテナ素子の第Mの位相指向性パターンを、iが1以外の場合には第(i−1)のアンテナ素子の第(i−1)の位相指向性パターンを水平面方位角方向にスライドさせるようにしてもよい。この場合、スライドさせる角度を略φとし、φの値は、例えば、360°をMで除算した値(360°/M)としてもよい。
【0080】
(3)上記の第1の実施の形態では、アンテナ素子RA1,RA2の線状導体33,35,37の配置及びバラクタダイオード34,36,38のリアクタンス値の夫々の関係を図4に示すものとしたが、これに限られるものではない。例えば、各アンテナ素子の線状導体の配置及びバラクタダイオードのリアクタンス値の夫々は、各アンテナ素子の位相指向性パターンが上記の第1の実施の形態で説明した関係を満たすように、設定されていればよい。
【0081】
上記の第2の実施の形態では、アンテナ素子B1〜B4の線状導体103,105,107,109の配置及びバラクタダイオード104,105,108,110のリアクタンス値の夫々の関係を図10に示すものとしたが、これに限られるものではない。例えば、各アンテナ素子の線状導体の配置及びバラクタダイオードのリアクタンス値の夫々は、各アンテナ素子の位相指向性パターンが上記の第2の実施の形態で説明した関係を満たすように、設定されていればよい。
【0082】
(4)上記の第1の実施の形態では、アンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2との間隔が0.25波長であると記載したが、アンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2との間隔は0.25波長に限られるものではなく、アンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2を有するアレーアンテナを搭載する携帯電話機のサイズやアンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンを考慮して定めればよい。なお、第1の実施の形態の第1の変形例及び第2の変形例、第2の実施の形態、並びに補足で説明した場合においても、アンテナ素子間の間隔はアレーアンテナを搭載する携帯電話機のサイズや各アンテナ素子の位相指向性パターンを考慮して定めればよい。
【0083】
(5)上記の第1の実施の形態では、電子制御導波器アンテナは給電素子の周辺のバラクタダイオード付きの線状導体の数が3つであるものを対象としたが、バラクタダイオード付きの線状導体の数はこれに限らず、例えば、2つでも4つ以上であってもよい。
例えば、一のアンテナ素子と他のアンテナ素子とを通り、一のアンテナ素子から他のアンテナ素子に向かう方向を正方向とする軸に対する角度をφとした場合、一のアンテナ素子及び他のアンテナ素子では、バラクタダイオード付きの線状導体の一つは方位角φが90°の位置に配置され、他のバラクタダイオード付きの線状導体は円周方向に沿って一定間隔で配置されているとする。この場合に、一のアンテナ素子では、方位角φが90°の位置に配された線状導体から反時計回りに順番に、線状導体に付けられたバラクタダイオードのリアクタンス値をX1,X2,X3,・・・とする。これに対して、他のアンテナ素子では、方位角φが90°の位置に配された線状導体から時計回りに順番に、線状導体に付けられたバラクタダイオードのリアクタンス値をX1,X2,X3,・・・とする。なお、一のアンテナ素子の位相指向性パターンが例えば図5(b)、図7に示すアンテナ素子RA1の位相指向性パターンになるように、リアクタンス値X1,X2,X3,・・・が調整される。
【0084】
(6)上記の第2の実施の形態では、携帯電話機が4つのアンテナ素子を有する場合を対象としたので、給電素子の周辺のバラクタダイオード付きの線状導体が4つであるとした。これに限らず、例えば、次のようなものであってもよい。携帯電話機がM(Mは3、5以上の整数)本のアンテナ素子を有する場合を対象とし、給電素子の周辺のバラクタダイオード付きの線状導体がMであるとする。この場合、例えば、各アンテナ素子の各バラクタダイオードのリアクタンス値は、反時計回りの1つ前のアンテナ素子の各バラクタダイオードのリアクタンス値を反時計周りに1つ分回転させるように設定する。なお、携帯電話機が備えるアンテナ素子の本数とアンテナ素子が備えるバラクタダイオード付きの線状導体の本数とが必ずしも一致する必要はない。
【0085】
(7)上記の実施の形態では、アンテナ素子RA1,RA2に電子制御導波器アンテナを用いているが、これに限らず、位相指向性パターンを調整できるアンテナ素子、例えば切替ダイバーシチアンテナやメタマテリアルアンテナをアンテナ素子RA1,RA2に用いてもよい。なお、第1の実施の形態の第1の変形例及び第2の変形例、第2の実施の形態、並びに補足で説明したアンテナ素子についても同様である。
【0086】
(8)上記の実施の形態では、携帯電話機Rのアンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンが互いに異なるようにしたが、これに限られるものではなく、基地局Tのアンテナ素子TA1,TA2の位相指向性パターンが互いに異なるようにしてもよい。また、携帯電話機Rのアンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンが互いに異なり、且つ、基地局Tのアンテナ素子TA1,TA2の位相指向性パターンが互いに異なるようにしてもよい。なお、基地局Tのアンテナ素子TA1,TA2の位相指向性パターンの設定方法は、携帯電話機Rのアンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンの設定方法と実質的に同じである。なお、第1の実施の形態の第1の変形例及び第2の変形例、第2の実施の形態、並びに補足で説明した位相指向性パターンの設定方法を基地局Tに適用するようにしてもよい。
【0087】
(9)上記の実施の形態で説明したアレーアンテナは、基地局と携帯電話機とを例に挙げて説明したが、これに限らず、各種通信機器に適用することが可能である。
(10)上記の実施の形態で説明したアレーアンテナは、MIMOに適用可能である他、例えばSIMO(Simple Input Multiple Output)に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、複数のアンテナ素子から構成されるアレーアンテナに利用可能である。
【符号の説明】
【0089】
T 基地局
TA1,TA2 アンテナ素子
R 携帯電話機
RA1,RA2 アンテナ素子
11,12 フロントエンド部
13 チャネル推定部
14 ウェイト生成部
15 分離合成部
16 復調部
31 給電素子
32 交流電源
33,35,37 線状導体
34,36,38 バラクタダイオード
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナ素子から構成されるアレーアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
MIMO(Multiple Input Multiple Output)は、独立した空間伝送路(以下、「チャネル」と言う。)を複数用意することで、同時に同じ帯域で複数のデータストリームを伝送する技術である。なお、MIMOはIEEE802.11nやIEEE802.16eなどに規格として採用されている。また、LTE(Long Term Evolution)などの次世代の広帯域無線通信システムでは2多重を超える多重度のMIMOも計画されている。
【0003】
MIMO伝送では、送受信側の双方に複数のアンテナ素子を配置し、送受信側双方のアンテナ素子間隔を複数のチャネルが互いに独立であるとみなせる程度にまで広げる必要がある。これは、チャネルが互いに独立であることによって、各チャネルの最大伝送速度の総和までMIMO伝送の伝送速度を向上させることができるためである。
チャネルが互いに独立かどうかを示す指標として空間相関があり(例えば、非特許文献1参照。)、チャネルが互いに独立であればあるほど空間相関は小さい値になる。例えば、2多重で、送信側のアンテナ素子及び受信側のアンテナ素子の夫々が2本の場合の空間相関ρ12は、チャネル応答ベクトルを夫々下記の式(1),(2)とすると、下記の式(3)で表される。
【0004】
【数1】
【0005】
【数2】
【0006】
【数3】
但し、h11,h12,h21,h22の夫々はチャネル応答であり(図1参照。)、振幅及び位相を含んだ複素数である。また、正規化後の空間相関は0から1の間の値となる。なお、上添え字Tは転置を示し、上添え字Hは複素共役転置を示し、上添え字*は複素共役を示す。
【0007】
空間相関を下げるためには、h11とh21との間の位相差、及びh12とh22との間の位相差を大きくする必要があり、そのためにはアンテナ素子間隔を広げる必要があり、例えばアンテナ素子はその間隔が0.5波長になるように配置される。ところで、2.5GHz帯を無線通信に使用した場合、2.5GHzでの0.5波長は6cmであることから、空間相関の劣化を回避するために、2本のアンテナ素子はその間隔が6cmになるように配置される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】田中,大鐘,小川,“アダプティブアレーを用いたSDMA方式におけるチャネル割当基準”,電子情報通信学会論文誌(B),vol.J82-B,no.11,pp.2133-2141,Nov.1999.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、多重度が増大すればこれに合わせて必要なアンテナ素子の数が増加し、例えば4多重のMIMOの場合には4本のアンテナ素子が必要になる。このため、例えば4多重のMIMOを携帯電話機などの通信機器に適用した場合には、通信機器の寸法からくる制約により、4本のアンテナ素子を0.5波長分間隔を空けて配置し難くなることが想定される。
【0010】
また、2多重の場合であっても、例えば、通信機器の寸法によっては、また、無線通信に利用する帯域によっては、2本のアンテナ素子を0.5波長分間隔を空けて配置することが難しいこともある。
なお、MIMO以外の例えばSIMO(Simple Input Multiple Output)などの無線通信においても受信側のアンテナ素子においては同様のことが言える。
【0011】
そこで、本発明は、アンテナ素子間隔以外のパラメータを利用して空間相関を小さくすることが可能なアレーアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明のアレーアンテナは、M(Mは2以上の整数)本のアンテナ素子を備えるアレーアンテナであって、各前記アンテナ素子は指向性アンテナであり、前記アンテナ素子の位相指向性パターンが互いに異なるように、各アンテナ素子の位相指向性パターンが設定されている。
【発明の効果】
【0013】
上記のアレーアンテナによれば、アンテナ素子間の位相指向性パターンが互いに異なるため、同じアンテナ素子間隔であっても空間相関を小さくすることができる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態の無線通信システムのシステム構成図。
【図2】図1の携帯電話機の構成図。
【図3】図1のアンテナ素子に用いられる電子制御導波器アンテナの模式図。
【図4】図1のアンテナ素子に用いられる電子制御導波器アンテナのバラクタダイオードのリアクタンス値の関係を示す図。
【図5】(a)は図1のアンテナ素子の振幅指向性パターンを示す図であり、(b)はその位相指向性パターンを示す図。
【図6】図1のアンテナ素子A1とアンテナ素子A2との受信信号の位相差を説明するための図。
【図7】アンテナ素子の他の指向性を示す図。
【図8】(a)は4本のアンテナ素子の振幅指向性パターンを示す図であり、(b)はその位相指向性パターンを示す図。
【図9】第2の実施の形態の受信装置が備えるアンテナ素子に用いられる電子制御導波器アンテナの模式図。
【図10】第2の実施の形態の受信装置が備えるアンテナ素子に用いられる電子制御導波器アンテナのバラクタダイオードのリアクタンス値の関係を示す図。
【図11】(a)は第2の実施の形態の受信装置が備えるアンテナ素子の振幅指向性パターンを示す図であり、(b)はその位相指向性パターンを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪第1の実施の形態≫
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
<無線通信システム>
本実施の形態の無線通信システムについて図1を参照しつつ説明する。図1は本実施の形態の無線通信システムのシステム構成図である。
【0016】
基地局Tはアンテナ素子TA1,TA2を備え、携帯電話機Rはアンテナ素子RA1,RA2を備える。但し、アンテナ素子TA1,TA2によってアレーアンテナが構成され、アンテナ素子RA1,RA2によってアレーアンテナが構成される。
基地局Tから携帯電話機Rへの無線通信では、図1に示す4つのチャネルが形成され、夫々のチャネル応答を、図1に示すように、h11,h21,h12,h22で表す。チャネル応答h11,h21,h12,h22は、夫々、送受信点間の振幅及び位相の変動量を示す複素数であり、それらには送信側及び受信側のアンテナ素子の振幅特性及び位相特性も含まれる。本実施の形態は、チャネル応答h11とチャネル応答h21との位相差及びチャネル応答h12とチャネル応答h22との位相差を大きくして空間相関を小さくするために、アンテナ素子RA1,RA2の位相特性に異なる指向性を持たせるものである。
【0017】
以下では、基地局Tから携帯電話機Rへの下り通信に着目し、更には受信側の携帯電話機Rのアンテナ素子RA1,RA2の振幅指向性及び位相指向性に着目して説明する。
<携帯電話機>
以下、図1の携帯電話機Rの構成について図2を参照しつつ説明する。図2は図1の携帯電話機Rの構成図である。
【0018】
携帯電話機Rは、アンテナ素子RA1,RA2、フロントエンド部11,12、チャネル推定部13、ウェイト生成部14、分離合成部15及び復調部16を備える。なお、携帯電話機Rは、アンテナ素子RA1,RA2を除いては、一般的な構成を利用でき、アンテナ素子RA1,RA2の詳細は後述するものとして、ここでは、各構成要素の概略を説明するに留める。
【0019】
アンテナ素子RA1,RA2は、指向性アンテナであり、後述するように可変指向性アンテナの一つである電子制御導波器アンテナが用いられる。但し、アンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2とは例えば0.25波長分間隔を空けて配される。
フロントエンド部11,12は、アンテナ素子RA1,RA2で受信されたRF(Radio Frequency)信号に対してゲイン調整や周波数変換などを施して例えばベースバンド帯の受信信号を出力する。
【0020】
チャネル推定部13は、フロントエンド部11,12から出力される受信信号中のプリアンブルを利用してチャネル応答h11,h21,h12,h22を推定する。そして、ウェイト生成部14はチャネル推定部13により推定されたチャネル応答h11,h21,h12,h22を用いてウェイトを生成する。なお、ウェイトの生成は、例えば最大比合成(Maximum Ratio Combining:MRC)や最小二乗誤差(Minimum Mean Square Error:MMSE)を利用することによって行われる。
【0021】
分離合成部15は、フロントエンド部11,12から出力される受信信号に対してウェイト生成部14で生成されたウェイトを用いて重み付けを行うことによって信号の分離及び合成を行い、基地局Tから送信された2つの送信信号を推定する。復調部16は分離合成部15から出力される2つの送信信号を復調する。
<アンテナ素子>
(構造)
図1のアンテナ素子RA1,RA2に用いられる電子制御導波器アンテナの構造について図3を参照しつつ説明する。図3は図1のアンテナ素子RA1,RA2に用いられる電子制御導波器アンテナの構造を示す模式図である。
【0022】
アンテナ素子RA1,RA2に用いられる電子制御導波器アンテナは素子間電磁結合を利用した可変指向性アンテナである。なお、電子制御導波器アンテナは、例えば、「橋口,程,飯草,TAILLEFER,平田,大平,“無線アドホックネットワーク用エスパアンテナの設計と試作,”電子情報通信学会論文誌(B),vol.J85-B, no.12, pp.2245-2256, Dec. 2002.」に開示されている。
【0023】
電子制御導波器アンテナは、交流電源32に接続されたモノポールの給電素子(中央素子)31の周辺にバラクタダイオード34,36,38付きの線状導体(周辺素子)33,35,37を配置した構造を有する。電子制御導波器アンテナは、バラクタダイオード34,36,38のリアクタンス値を変化させることによって、素子間電磁結合を変化させて指向性パターンを変化させるものである。但し、本実施の形態では、線状導体33,35,37は円周に沿う方向に120°(2π/3)間隔で配置されているものとする。
【0024】
給電素子31と線状導体33,35,37とは、自由空間中で0.25波長程度離して配置することが好ましいが、給電素子31と線状導体33,35,37との間を誘電体39で埋めることによって、自由空間中に換算して0.025波長程度にまで間隔を狭めることが可能である。なお、2.5GHz帯を使用する場合には給電素子31と線状導体33,35,37との間隔は3mmである。
【0025】
(電子制御導波器アンテナの指向性及び給電素子での受信信号)
図3に構造を示した電子制御導波器アンテナの指向性及び給電素子での受信信号について説明する。
電子制御導波器アンテナの仰角θ且つ方位角φの方向の指向性パターンD(θ,φ)は下記の式(4)で表され、仰角θ且つ方位角φの方向からの到来信号に対する給電素子での受信信号y(t)は下記の式(5)で表される。なお、式(4)、(5)において、上添え字Tは転置を示す。
【0026】
【数4】
【0027】
【数5】
但し、a(θ,φ)は電子制御導波器アンテナのモードベクトルであり、下記の式(6)で表される。w(x1,x2,x3)は電子制御導波器アンテナの素子間相互結合を含んだ等価ウェイトベクトルであり、下記の式(7)で表され、x1,x2,x3はバラクタダイオード34,36,38のリアクタンス値である。s(t)は送信信号であり、hsは送信点から電子制御導波器アンテナの給電素子までのチャネル応答(アンテナ素子の指向性を除いたチャネル応答)である。
【0028】
【数6】
但し、βは伝搬定数(=2π/λ)、dは給電素子と線状導体間の間隔である。
【0029】
【数7】
但し、zsは送受信機の入出力インピーダンスである。Zは給電素子及び線状導体間のインピーダンス行列であり、下記の式(8)で表される。Xは送受信機の入出力インピーダンスとバラクタダイオードのリアクタンス値を成分とする対角行列であり、下記の式(9)で表される。u0は単位ベクトルであり、下記の式(10)で表される。なお、式(10)において、上添え字Tは転置を示す。
【0030】
【数8】
但し、Zの各要素は複素パラメータであり、z00は給電素子の自己入力インピーダンス、z01は給電素子と線状導体間結合インピーダンス、z11は線状導体の自己入力インピーダンス、z12は隣接する線状導体間結合入力インピーダンスである。
【0031】
【数9】
【0032】
【数10】
上記のw(x1,x2,x3)はリアクタンス値x1,x2,x3の関数であるため、w(x1,x2,x3)はリアクタンス値x1,x2,x3によって変化し、指向性パターンD(θ,φ)はリアクタンス値x1,x2,x3によって変化する(式(4)参照。)。従って、リアクタンス値x1,x2,x3を調整することによって、所望の指向性パターンD(θ,φ)を得ることが可能である。つまり、リアクタンス値x1,x2,x3を調整することによって、所望の振幅指向性パターンを得ることができ、また、所望の位相指向性パターンを得ることができる。
【0033】
(電子制御導波器アンテナの指向性の具体例)
本実施の形態で利用するアンテナ素子RA1,RA2の指向性パターンについて図4及び図5を参照しつつ説明する。図4はアンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2のバラクタダイオード34,36,38のリアクタンス値の関係を示す図である。図5(a)はアンテナ素子RA1,RA2の振幅指向性パターンを示す図であり、図5(b)はアンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンを示す図である。但し、以下において記載する水平面方位角は、上記の(電子制御導波器アンテナの指向性)における方位角φに相当する。
【0034】
アンテナ素子RA1,RA2のバラクタダイオード34,36,38が接続された線状導体33,35,37は、水平面方位角φが90°(π/2),210°(7π/6),330°(11π/6)の位置に配されている。
図4に示すように、アンテナ素子RA1のバラクタダイオード34、36、38のリアクタンス値をxa,xb,xcに設定する(x1=xa,x2=xb,x3=xc)。但し、上述したように、バラクタダイオード34、36、38のリアクタンス値を調節することによって所望の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンが得られる。そこで、アンテナ素子RA1の振幅指向性パターンが図5(a)になるように、その位相指向性パターンが図5(b)になるように、バラクタダイオード34、36、38のリアクタンス値を調節し、その結果としてバラクタダイオード34、36、38のリアクタンス値としてxa,xb,xcが得られたとする。
【0035】
また、アンテナ素子RA2のバラクタダイオード34、36、38のリアクタンス値をxa,xc,xbに設定する(x1=xa,x2=xc,x3=xb)。これによって、アンテナ素子RA2の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンとして図5(a)及び図5(b)に示すものが得られる。なお、アンテナ素子RA2のバラクタダイオード34、36、38のリアクタンス値は、アンテナ素子RA2の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンが図5(a)及び図5(b)に示すパターンになるように調節されていればよい。
【0036】
以下に、アンテナ素子RA1,RA2の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンについて以下に記載する。
アンテナ素子RA1,RA2の振幅指向性パターンは図5(a)に示すように略無指向性である。
図5(b)に示すように、アンテナ素子RA1の位相指向性パターンでは、位相は水平面方位角φが0°以上180°以下の範囲では単調増加、水平面方位角φが180°以上360°以下の範囲では単調減少である。これに対して、アンテナ素子RA2の位相指向性パターンでは、位相は水平面方位角φが0°以上180°以下の範囲では単調減少、水平面方位角φが180°以上360°以下の範囲では単調増加である。このように、アンテナ素子RA1の位相指向性パターンとアンテナ素子RA2の位相指向性パターンとは逆のパターンになっている。なお、位相指向性パターンを単調増加及び単調減少にすることによって、略全ての方位から到来した電波に対して、アンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンの相違に起因する位相差を発生させることが可能である。
【0037】
また、水平面方位角φが0°以上90°未満及び270°より大きく360°以下ではアンテナ素子RA2の位相指向性パターンの位相がアンテナ素子RA1のそれより進んでおり、水平面方位角φが90°より大きく270°未満ではアンテナ素子RA1の位相指向性パターンの位相がアンテナ素子RA2のそれより進んでいる。つまり、アンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンでは、遅れた位相で信号が到来するアンテナ素子の位相指向性パターンの位相が、進んだ位相で信号が到来するアンテナ素子の位相指向性パターンの位相より遅れた位相となっている。
【0038】
(アンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2との受信信号の位相差)
以下、アンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2の受信信号の位相差について図6を参照しつつ説明する。図6はアンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2との受信信号の位相差を説明するための図である。但し、ここでの「受信信号」は、アンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンによる位相が加味された後の信号である。なお、基地局Tは2ストリーム伝送を行うが、何れの場合も同じことが言えるので、ここでは1ストリームのみに着目して説明する。
【0039】
アンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2との間隔をLとし、水平面方位角φの方向から信号Aがアンテナ素子RA1,RA2に到来したとする。アンテナ素子RA1には、アンテナ素子RA2より、アンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2との配置に起因する距離Lcosφに相当する位相差hφ1遅れた信号Aが到来する(図6(a)参照)。
そして、水平面方位角φでは、アンテナ素子RA1の位相指向性パターンの位相はアンテナRA2のそれよりも位相差hφ2遅れている(図6(b)参照。)。
【0040】
アンテナ素子RA1によって受信された受信信号は、アンテナ素子RA2によって受信された受信信号より、アンテナ素子の配置に起因する位相差hφ1に位相指向性パターンに起因する位相差hφ2が加算された位相差(hφ1+hφ2)遅れたものになる(図6(a)参照。)。
仮に、アンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンが無指向性であれば、アンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2との間で位相指向性パターンに起因する位相差は生じない。このため、アンテナ素子RA1によって受信された受信信号は、アンテナ素子RA2によって受信された受信信号より、アンテナ素子の配置に起因する位相差hφ1だけ遅れることになる。
【0041】
従って、アンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンを図5(b)のように設定した場合には、アンテナ素子の配置に起因する位相差に位相指向性パターンに起因する位相差が加算されるため、アンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンが無指向性である場合に比べて、チャネル応答h11とチャネル応答h21との位相差及びチャネル応答h12とチャネル応答h22との位相差を大きくすることができる。このように、本実施の形態のアレーアンテナは、アンテナ素子RA1,RA2の間隔が従来のアレーアンテナと同じであっても、空間相関を小さくすることができる。
【0042】
(空間相関)
アンテナ素子RA1,RA2が異なる位相指向性パターンを有する場合の空間相関について説明する。
チャネル応答h(図1のh11,h12,h21,h22)は、アンテナ素子RA1,RA2の指向性パターンD(θ,φ)と送信点から電子制御導波器アンテナの給電素子までのチャネル応答hsとを乗算した下記の式(11)で表わされる。なお、式(11)において、上添え字Tは転置を示す。
【0043】
【数11】
アンテナ素子RA1、RA2に図5(b)に示す逆の位相指向性パターンが与えられた場合の、MIMOにおけるアンテナ素子TA1及びアンテナ素子TA2に対するチャネル応答ベクトルh1,directional,h2,directionalは、夫々、下記の式(12)、(13)で与えられる。なお、式(12),(13)において、上添え字Tは転置を示す。
【0044】
【数12】
【0045】
【数13】
但し、h、hs、θ、φの夫々の下添え字の2つの数字のうちの1つ目の“1”は受信側のアンテナ素子RA1を、“2”はアンテナ素子RA2を示し、当該下添え字の2つ目の“1”は送信側のアンテナ素子TA1を、“2”はアンテナ素子TA2を示す。ψ11及びψ12は、夫々、アンテナ素子TA1からの信号到来方向に対するアンテナ素子RA1及びアンテナ素子RA2の指向性パターンの位相を示す。また、ψ12及びψ22は、夫々、アンテナ素子TA2からの信号到来方向に対するアンテナ素子RA1及びアンテナ素子RA2の指向性パターンの位相を示す。なお、指向性パターンの振幅は大きな減衰がない無指向性に近いものであるとしているため、空間相関の計算においては無視できるものとして、チャネル応答ベクトルの要素から省略している。
【0046】
受信アンテナに指向性アンテナを使用した場合の空間相関ρ12directionalは下記の式(14)で表わされる。なお、式(14)において、上添え字Hは複素共役転置を示す。
【0047】
【数14】
式(3)と式(14)とを比較すると、受信側に指向性アンテナを使用し適切な位相指向性パターンを形成することによって、空間相関を低下させることが可能となることが分かる。なお、このことは、受信側のみならず、送信側のみに可変指向性アンテナを使用した場合であっても、また、送受信側双方に可変指向性アンテナを使用した場合であっても同様に成立する。
【0048】
≪第1の実施の形態の変形例≫
<第1の変形例>
上記の第1の実施の形態の携帯電話機Rが備えるアンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターン(図5(b)参照)の代わりに、携帯電話機が備えるアンテナ素子RA1,RA2が図7に示すような位相指向性パターンを有するようにする。
【0049】
<第2の変形例>
第2の変形例の携帯電話機は、第1の実施の形態の携帯電話機Rと異なり、4本のアンテナ素子A1〜A4を有し、アンテナ素子A1〜A4は図8(a)に示す振幅指向性パターン及び図8(b)に示す位相指向性パターンを有する。但し、アンテナ素子A1,A2,A3,A4はその順番に一直線上に並んでいるとする。
【0050】
アンテナ素子A1,A2,A3,A4の振幅指向性パターンは、図8(a)に示すように、略無指向性に設定されている。
図8(b)に示すように、アンテナ素子A1,A2の各位相指向性パターンでは、位相は水平面方位角φが0°以上180°以下の範囲では単調増加、水平面方位角φが180°以上360°以下の範囲では単調減少である。これに対して、アンテナ素子A3,A4の位相指向性パターンでは、位相は水平面方位角φが0°以上180°以下の範囲では単調減少、水平面方位角φが180°以上360°以下の範囲では単調増加である。
【0051】
また、水平面方位角φが0°以上90°未満及び270°より大きく360°以下ではアンテナ素子A4,A3,A2,A1の順番で位相指向性パターンの位相が進んでおり、水平面方位角φが90°より大きく270°未満ではアンテナ素子A1,A2,A3,A4の順番で位相指向性パターンの位相が進んでいる。つまり、アンテナ素子A1,A2,A3,A4の位相指向性パターンでは、遅れた位相で信号が到来するアンテナ素子の位相指向性パターンの位相が、進んだ位相で信号が到来するアンテナ素子の位相指向性パターンの位相より遅れた位相となっている。
【0052】
≪第2の実施の形態≫
以下、本発明の第2の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施の形態の携帯電話機は、第1の実施の形態の第2の変形例と同様に、4本のアンテナ素子B1〜B4を備えているが、アンテナ素子B1〜アンテナ素子B4の位相指向性パターンの関係が、第1の実施の形態の第2の変形例のアンテナ素子A1〜アンテナ素子A4の位相指向性パターンの関係(図8(b)参照)と異なる。
【0053】
<アンテナ素子>
本実施の形態のアンテナ素子B1〜B4に用いられる電子制御導波器アンテナの構造について図9を参照しつつ説明する。図9は本実施の形態のアンテナ素子B1〜B4に用いられる電子制御導波器アンテナの構造を示す模式図である。
アンテナ素子B1〜B4に用いられる電子制御導波器アンテナは、交流電源102に接続されたモノポールの給電素子(中央素子)101の周辺にバラクタダイオード104,106,108,110付きの線状導体(周辺素子)103,105,107,109を配置した構造を有する。但し、本実施の形態では、線状導体103,105,107,109は円周に沿う方向に90°(π/2)間隔で配置されているものとする。
【0054】
(電子制御導波器アンテナの指向性及び給電素子での受信信号)
図9に構造を示した電子制御導波器アンテナの指向性及び給電素子での受信信号について説明する。
電子制御導波器アンテナの仰角θ且つ方位角φの方向の指向性パターンD(θ,φ)は下記の式(15)で表され、仰角θ且つ方位角φの方向からの到来信号に対する給電素子での受信信号y(t)は下記の式(16)で表される。なお、式(15)、(16)において、上添え字Tは転置を示す。
【0055】
【数15】
【0056】
【数16】
但し、a(θ,φ)は電子制御導波器アンテナのモードベクトルであり、下記の式(17)で表される。w(x1,x2,x3,x4)は電子制御導波器アンテナの素子間相互結合を含んだ等価ウェイトベクトルであり、下記の式(18)で表され、x1,x2,x3,x4はバラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値である。s(t)は送信信号であり、hsは送信点から電子制御導波器アンテナの給電素子までのチャネル応答(アンテナ素子の指向性を除いたチャネル応答)である。
【0057】
【数17】
但し、βは伝搬定数(=2π/λ)、dは給電素子と線状導体間の間隔である。
【0058】
【数18】
但し、zsは送受信機の入出力インピーダンスである。Zは給電素子及び線状導体間のインピーダンス行列であり、下記の式(19)で表される。Xは送受信機の入出力インピーダンスとバラクタダイオードのリアクタンス値を成分とする対角行列であり、下記の式(20)で表される。u0は単位ベクトルであり、下記の式(21)で表される。なお、式(21)において、上添え字Tは転置を示す。
【0059】
【数19】
但し、Zの各要素は複素パラメータであり、z00は給電素子の自己入力インピーダンス、z01は給電素子と線状導体間結合インピーダンス、z11は線状導体の自己入力インピーダンス、z12は隣接する線状導体間結合入力インピーダンスであり、z13は対角にある線状導体間結合入力インピーダンスである。
【0060】
【数20】
【0061】
【数21】
上記のw(x1,x2,x3,x4)はリアクタンス値x1,x2,x3,x4の関数であるため、w(x1,x2,x3,x4)はリアクタンス値x1,x2,x3,x4によって変化し、指向性パターンD(θ,φ)はリアクタンス値x1,x2,x3,x4によって変化する(式(15)参照。)。従って、リアクタンス値x1,x2,x3,x4を調整することによって、所望の指向性パターンD(θ,φ)を得ることが可能である。つまり、リアクタンス値x1,x2,x3,x4を調整することによって、所望の振幅指向性パターンを得ることができ、また、所望の位相指向性パターンを得ることができる。
【0062】
(電子制御導波器アンテナの指向性の具体例)
本実施の形態で利用するアンテナ素子B1〜B4の指向性パターンについて図10及び図11を参照しつつ説明する。図10はアンテナ素子B1〜B4の夫々のバラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値の関係を示す図である。図11(a)はアンテナ素子B1〜B4の振幅指向性パターンを示す図であり、図11(b)はアンテナ素子B1〜B4の位相指向性パターンを示す図である。但し、以下において記載する水平面方位角は、上記の(電子制御導波器アンテナの指向性)における方位角φに相当する。
【0063】
アンテナ素子B1〜B4は、夫々、正方形の頂点上に配され、つまり、水平面方位角φが225°(5π/4)、315°(7π/4)、45°(π/4),135°(3π/4)の位置に配されている。また、アンテナ素子B1〜B4のバラクタダイオード104,106,108,110が接続された線状導体103,105,107,109は、水平面方位角φが225°(5π/4)、315°(7π/4)、45°(π/4),135°(3π/4)の位置に配されている。
【0064】
図10に示すように、アンテナ素子B1のバラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値をxa,xb,xc,xdに設定する(x1=xa,x2=xb,x3=xc,x4=xd)。但し、上述したように、バラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値を調節することによって所望の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンが得られる。そこで、アンテナ素子B1の振幅指向性パターンが図11(a)になるように、その位相指向性パターンが図11(b)になるように、バラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値を調節し、その結果としてバラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値としてxa,xb,xc,xdが得られたとする。
【0065】
また、アンテナ素子B2のバラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値をxd,xa,xb,xcに設定する(x1=xd,x2=xa,x3=xb,x4=xc)。これによって、アンテナ素子B2の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンとして図11(a)及び図11(b)に示すものが得られる。なお、アンテナ素子B2のバラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値は、アンテナ素子B2の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンが図11(a)及び図11(b)に示すパターンになるように調節されていればよい。
【0066】
さらに、アンテナ素子B3のバラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値をxc,xd,xa,xbに設定する(x1=xc,x2=xd,x3=xa,x4=xb)。これによって、アンテナ素子B3の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンとして図11(a)及び図11(b)に示すものが得られる。なお、アンテナ素子B3のバラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値は、アンテナ素子B3の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンが図11(a)及び図11(b)に示すパターンになるように調節されていればよい。
【0067】
さらに、アンテナ素子B4のバラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値をxb,xc,xd,xaに設定する(x1=xb,x2=xc,x3=xd,x4=xa)。これによって、アンテナ素子B4の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンとして図11(a)及び図11(b)に示すものが得られる。なお、アンテナ素子B4のバラクタダイオード104,106,108,110のリアクタンス値は、アンテナ素子B4の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンが図11(a)及び図11(b)に示すパターンになるように調節されていればよい。
【0068】
以下に、アンテナ素子B1〜B4の振幅指向性パターン及び位相指向性パターンについて以下に記載する。
アンテナ素子B1〜B4の振幅指向性パターンは図11(a)に示すように略無指向性である。
アンテナ素子B1の位相指向性パターンでは、図11(b)に示すように、水平面方位角が0°以上45°以下の範囲及び0°以上225°以下360°では単調減少、水平面方位角が45°以上225°以下では単調増加である。アンテナ素子B1の位相指向性パターンは、アンテナ素子B4の後述する位相指向性パターンを水平面方位角の正の方向に90°スライドさせたものである。但し、この90°は、360°をアンテナ素子の本数“4”で除算して得られるものである。
【0069】
アンテナ素子B2の位相指向性パターンは、アンテナ素子B1の位相指向性パターンを水平面方位角の正の方向に90°スライドさせたものである。また、アンテナ素子B3の位相指向性パターンは、アンテナ素子B2の位相指向性パターンを水平面方位角の正の方向に90°スライドさせたものである。更に、アンテナ素子B4の位相指向性パターンは、アンテナ素子B3の位相指向性パターンを水平面方位角の正の方向に90°スライドさせたものである。
【0070】
つまり、アンテナ素子B1,B2,B3,B4の位相指向性パターンは、反時計回りの1つ前のアンテナ素子B4,B1,B2,B3の位相指向性パターンを水平面方位角の正の方向に90度スライドさせたものである。
また、アンテナ素子B1〜B4の位相指向性パターンでは、水平面方位角φが0°より大きく45°未満アンテナ素子B3,B2,B4,B1の順番で位相指向性パターンの位相が進んでいる。水平面方位角φが45°より大きく90°未満ではアンテナ素子B3,B4,B2,B1の順番で位相指向性パターンの位相が進んでいる。水平面方位角φが90°より大きく135°未満ではアンテナ素子B4,B3,B1,B2の順番で位相指向性パターンの位相が進んでいる。水平面方位角φが135°より大きく180°未満ではアンテナ素子B4,B1,B3,B2の順番で位相指向性パターンの位相が進んでいる。
【0071】
水平面方位角φが180°より大きく225°未満ではアンテナ素子B1,B4,B2,B3の順番で位相指向性パターンの位相が進んでいる。水平面方位角φが225°より大きく270°未満ではアンテナ素子B1,B2,B4,B3の順番で位相指向性パターンの位相が進んでいる。水平面方位角φが270°より大きく315°未満ではアンテナ素子B2,B1,B3,B4の順番で位相指向性パターンの位相が進んでいる。水平面方位角φが315°より大きく360°未満ではアンテナ素子B2,B3,B1,B4の順番で位相指向性パターンの位相が進んでいる。
【0072】
つまり、アンテナ素子B1〜B4の位相指向性パターンでは、遅れた位相で信号が到来するアンテナ素子の位相指向性パターンの位相が、進んだ位相で信号が到来するアンテナ素子の位相指向性パターンの位相より遅れた位相となっている。
≪補足≫
本発明は上記の実施の形態で説明した内容に限定されず、本発明の目的とそれに関連又は付随する目的を達成するためのいかなる形態においても実施可能であり、例えば、以下であってもよい。
【0073】
(1)上記の第2の実施の形態では、4本のアンテナ素子を正方形の頂点上に配置するとしたが、これに限られるものではなく、例えば、長方形や菱型や平行四辺形など正方形でなくてもよい。
(2−1)アレーアンテナが備えるアンテナ素子間の位相指向性パターンの関係は、上記の第1の実施の形態及びその変形例で説明した関係に限られない。例えば、アレーアンテナが備えるアンテナ素子がM(Mは2以上の整数)本であり、第i(iは1以上M以下の整数)のアンテナ素子の第iの位相指向性パターンと、第j(jは1以上M以下であって、i以外の整数)のアンテナ素子の第jの位相指向性パターンとの関係とが次のような関係を満たすものであってもよい。
【0074】
第iの位相指向性パターンと第jの位相指向性パターンとは、同一送信源から到来する信号に対して、第iのアンテナ素子と第jのアンテナ素子の配置に基づき発生する位相差に、第iのアンテナ素子と第jのアンテナ素子の位相指向性に基づき発生する位相差が加算される関係になるように、設定されていればよい。言い換えると、第iの位相指向性パターンと第jの位相指向性パターンとは、遅れた位相で信号が到来するアンテナ素子の指向性パターンの位相が、進んだ位相で信号が到来するアンテナ素子の指向性パターンの位相より遅れた位相となるように、設定されていればよい。
【0075】
また、第i(iは1以上M以下の整数)のアンテナ素子と第j(jは1以上M以下でi以外の整数)のアンテナ素子とを通り、第iのアンテナ素子から第jのアンテナ素子に向かう方向を正方向とする軸に対する角度をφとした場合、φは0°以上360°以下とし、0°≦φ<φA1°(φA1は90より小さい所定の値)及びφB1°(φB1は270より大きい所定の値)<φ≦360°では、第jのアンテナ素子の第jの位相指向性パターンの位相が第iのアンテナ素子の第iの位相指向性パターンの位相より進み、φA2°(φA2は90より大きい所定の値)<φ<φB2°(φB2はφA2より大きく270より小さい所定の値)では、第iの位相指向性パターンの位相が第jの位相指向性パターンの位相より進む関係になるように、第i及び第jの位相指向性パターンが設定されていればよい。例えば、φA1及びφA2は略90であり、φB1及びφB2は略270である。
【0076】
この場合、各アンテナ素子の位相指向性パターンとして、0°≦φ≦180°では単調増加で、180°≦φ≦360°では単調減少となるパターン、及び0°≦φ≦180°では単調減少で、180°≦φ≦360°では単調増加となるパターンの何れかとして、上記の関係を満たすように各アンテナ素子の位相指向性パターンを設定してもよい。
更に、M本のアンテナ素子を2本のアンテナ素子の対に分けた場合に、同じ対の2本のアンテナ素子の位相指向性パターンが互いに逆パターンになるように、各アンテナ素子の位相指向性パターンが設定されるようにしてもよい。但し、Mが奇数の場合には、1本のアンテナ素子は除かれる。なお、図5(b)、図7の例では、アンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンは互いに逆パターンになっている。また、図8(b)の例では、アンテナ素子A1,A4の位相指向性パターンは互いに逆パターンになっており、アンテナ素子A2,A3の位相指向性パターンは互いに逆パターンになっている。
【0077】
(2−2)アレーアンテナが備えるアンテナ素子間の位相指向性パターンの関係は、上記の第2の実施の形態で説明した関係に限られない。例えば、アレーアンテナが備えるアンテナ素子の数がM(Mは3以上の整数)本であり、各アレーアンテナ素子は、M角形(頂点の数がMである多角形)の頂点上に反時計回りに第1、第2、・・・第Mのアンテナ素子が配されている場合に、各アンテナ素子の位相指向性パターンは次のような関係を満たすものであってもよい。
【0078】
第i(iは1以上M以下の整数)のアンテナ素子の第iの位相指向性パターンと、第j(jは1以上M以下であって、i以外の整数)のアンテナ素子の第jの位相指向性パターンとは、同一送信源から到来する信号に対して、第iのアンテナ素子と第jのアンテナ素子の配置に基づき発生する位相差に、第iのアンテナ素子と第jのアンテナ素子の位相指向性に基づき発生する位相差が加算される関係になるように、設定されていればよい。言い換えると、第iの位相指向性パターンと第jの位相指向性パターンとは、遅れた位相で信号が到来するアンテナ素子の指向性パターンの位相が、進んだ位相で信号が到来するアンテナ素子の指向性パターンの位相より遅れた位相となるように、設定されていればよい。
【0079】
上記の条件の下、第i(iは1以上M以下の整数)のアンテナ素子の第iの位相指向性パターンは、iが1の場合には第Mのアンテナ素子の第Mの位相指向性パターンを、iが1以外の場合には第(i−1)のアンテナ素子の第(i−1)の位相指向性パターンを水平面方位角方向にスライドさせるようにしてもよい。この場合、スライドさせる角度を略φとし、φの値は、例えば、360°をMで除算した値(360°/M)としてもよい。
【0080】
(3)上記の第1の実施の形態では、アンテナ素子RA1,RA2の線状導体33,35,37の配置及びバラクタダイオード34,36,38のリアクタンス値の夫々の関係を図4に示すものとしたが、これに限られるものではない。例えば、各アンテナ素子の線状導体の配置及びバラクタダイオードのリアクタンス値の夫々は、各アンテナ素子の位相指向性パターンが上記の第1の実施の形態で説明した関係を満たすように、設定されていればよい。
【0081】
上記の第2の実施の形態では、アンテナ素子B1〜B4の線状導体103,105,107,109の配置及びバラクタダイオード104,105,108,110のリアクタンス値の夫々の関係を図10に示すものとしたが、これに限られるものではない。例えば、各アンテナ素子の線状導体の配置及びバラクタダイオードのリアクタンス値の夫々は、各アンテナ素子の位相指向性パターンが上記の第2の実施の形態で説明した関係を満たすように、設定されていればよい。
【0082】
(4)上記の第1の実施の形態では、アンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2との間隔が0.25波長であると記載したが、アンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2との間隔は0.25波長に限られるものではなく、アンテナ素子RA1とアンテナ素子RA2を有するアレーアンテナを搭載する携帯電話機のサイズやアンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンを考慮して定めればよい。なお、第1の実施の形態の第1の変形例及び第2の変形例、第2の実施の形態、並びに補足で説明した場合においても、アンテナ素子間の間隔はアレーアンテナを搭載する携帯電話機のサイズや各アンテナ素子の位相指向性パターンを考慮して定めればよい。
【0083】
(5)上記の第1の実施の形態では、電子制御導波器アンテナは給電素子の周辺のバラクタダイオード付きの線状導体の数が3つであるものを対象としたが、バラクタダイオード付きの線状導体の数はこれに限らず、例えば、2つでも4つ以上であってもよい。
例えば、一のアンテナ素子と他のアンテナ素子とを通り、一のアンテナ素子から他のアンテナ素子に向かう方向を正方向とする軸に対する角度をφとした場合、一のアンテナ素子及び他のアンテナ素子では、バラクタダイオード付きの線状導体の一つは方位角φが90°の位置に配置され、他のバラクタダイオード付きの線状導体は円周方向に沿って一定間隔で配置されているとする。この場合に、一のアンテナ素子では、方位角φが90°の位置に配された線状導体から反時計回りに順番に、線状導体に付けられたバラクタダイオードのリアクタンス値をX1,X2,X3,・・・とする。これに対して、他のアンテナ素子では、方位角φが90°の位置に配された線状導体から時計回りに順番に、線状導体に付けられたバラクタダイオードのリアクタンス値をX1,X2,X3,・・・とする。なお、一のアンテナ素子の位相指向性パターンが例えば図5(b)、図7に示すアンテナ素子RA1の位相指向性パターンになるように、リアクタンス値X1,X2,X3,・・・が調整される。
【0084】
(6)上記の第2の実施の形態では、携帯電話機が4つのアンテナ素子を有する場合を対象としたので、給電素子の周辺のバラクタダイオード付きの線状導体が4つであるとした。これに限らず、例えば、次のようなものであってもよい。携帯電話機がM(Mは3、5以上の整数)本のアンテナ素子を有する場合を対象とし、給電素子の周辺のバラクタダイオード付きの線状導体がMであるとする。この場合、例えば、各アンテナ素子の各バラクタダイオードのリアクタンス値は、反時計回りの1つ前のアンテナ素子の各バラクタダイオードのリアクタンス値を反時計周りに1つ分回転させるように設定する。なお、携帯電話機が備えるアンテナ素子の本数とアンテナ素子が備えるバラクタダイオード付きの線状導体の本数とが必ずしも一致する必要はない。
【0085】
(7)上記の実施の形態では、アンテナ素子RA1,RA2に電子制御導波器アンテナを用いているが、これに限らず、位相指向性パターンを調整できるアンテナ素子、例えば切替ダイバーシチアンテナやメタマテリアルアンテナをアンテナ素子RA1,RA2に用いてもよい。なお、第1の実施の形態の第1の変形例及び第2の変形例、第2の実施の形態、並びに補足で説明したアンテナ素子についても同様である。
【0086】
(8)上記の実施の形態では、携帯電話機Rのアンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンが互いに異なるようにしたが、これに限られるものではなく、基地局Tのアンテナ素子TA1,TA2の位相指向性パターンが互いに異なるようにしてもよい。また、携帯電話機Rのアンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンが互いに異なり、且つ、基地局Tのアンテナ素子TA1,TA2の位相指向性パターンが互いに異なるようにしてもよい。なお、基地局Tのアンテナ素子TA1,TA2の位相指向性パターンの設定方法は、携帯電話機Rのアンテナ素子RA1,RA2の位相指向性パターンの設定方法と実質的に同じである。なお、第1の実施の形態の第1の変形例及び第2の変形例、第2の実施の形態、並びに補足で説明した位相指向性パターンの設定方法を基地局Tに適用するようにしてもよい。
【0087】
(9)上記の実施の形態で説明したアレーアンテナは、基地局と携帯電話機とを例に挙げて説明したが、これに限らず、各種通信機器に適用することが可能である。
(10)上記の実施の形態で説明したアレーアンテナは、MIMOに適用可能である他、例えばSIMO(Simple Input Multiple Output)に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、複数のアンテナ素子から構成されるアレーアンテナに利用可能である。
【符号の説明】
【0089】
T 基地局
TA1,TA2 アンテナ素子
R 携帯電話機
RA1,RA2 アンテナ素子
11,12 フロントエンド部
13 チャネル推定部
14 ウェイト生成部
15 分離合成部
16 復調部
31 給電素子
32 交流電源
33,35,37 線状導体
34,36,38 バラクタダイオード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
M(Mは2以上の整数)本のアンテナ素子を備えるアレーアンテナであって、
各前記アンテナ素子は指向性アンテナであり、
前記アンテナ素子の位相指向性パターンが互いに異なるように、各アンテナ素子の位相指向性パターンが設定されている
ことを特徴とするアレーアンテナ。
【請求項2】
第i(iは1以上M以下の整数)のアンテナ素子の第iの位相指向性パターン及び第j(jは1以上M以下でi以外の整数)のアンテナ素子の第jの位相指向性パターンは、
同一送信源から到来する信号に対して、第i及び第jのアンテナ素子の配置に基づき発生する位相差に、第i及び第jのアンテナ素子の位相指向性に基づき発生する位相差が加算される関係になるように
設定されている
ことを特徴とする請求項1記載のアレーアンテナ。
【請求項3】
第i(iは1以上M以下の整数)のアンテナ素子と第j(jは1以上M以下でi以外の整数)のアンテナ素子とを通り、第iのアンテナ素子から第jのアンテナ素子に向かう方向を正方向とする軸に対する角度をφとした場合、φは0°以上360°以下とし、
0°≦φ<φA1°(φA1は90より小さい所定の値)及びφB1°(φB1は270より大きい所定の値)<φ≦360°では、第jのアンテナ素子の第jの位相指向性パターンの位相が第iのアンテナ素子の第iの位相指向性パターンの位相より進み、
φA2°(φA2は90より大きい所定の値)<φ<φB2°(φB2はφA2より大きく270より小さい所定の値)では、第iの位相指向性パターンの位相が第jの位相指向性パターンの位相より進む
関係になるように
第i及び第jの位相指向性パターンが設定されている
ことを特徴とする請求項1記載のアレーアンテナ。
【請求項4】
φA1及びφA2は略90であり、φB1及びφB2は略270である
ことを特徴とする請求項3記載のアレーアンテナ。
【請求項5】
各前記アンテナ素子の位相指向性パターンは、
0°≦φ≦180°では単調増加で、180°≦φ≦360°では単調減少となるパターン、及び
0°≦φ≦180°では単調減少で、180°≦φ≦360°では単調増加となるパターンの何れかである
ことを特徴とする請求項3又は請求項4の何れか1項に記載のアレーアンテナ。
【請求項6】
2本のアンテナ素子を対とした場合に、当該2本の前記アンテナ素子の位相指向性パターンが互いに逆パターンになるように、各前記アンテナ素子の位相指向性パターンが設定されている
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載のアレーアンテナ。
【請求項7】
前記Mは2であり、
各前記アンテナ素子は、給電素子を備え、その周囲に円周方向に一定間隔で配されたバラクタダイオード付きの線状導体を複数備える電子制御導波器アンテナであり、
各前記アンテナ素子の線状導体の一つは、一のアンテナ素子と他のアンテナ素子とを通り、一のアンテナ素子から他のアンテナ素子に向かう方向を正方向とする軸に対して90°の位置に配され、
一のアンテナ素子の各バラクタダイオードのリアクタンス値の反時計方向の並びと、他のアンテナ素子のバラクタダイオードのリアクタンス値の時計方向の並びとが等しい
ことを特徴とする請求項1記載のアレーアンテナ。
【請求項8】
前記M本のアンテナ素子は、M角形の頂点上に配され、
各前記アンテナ素子の位相指向性パターンは、反時計回りの1つ前の前記アンテナ素子の位相指向性パターンを方位角方向にスライドさせたものである
ことを特徴とする請求項2記載のアレーアンテナ。
【請求項9】
前記スライドさせる角度は、略φであって、
前記φは360を前記Mで除算した値である
ことを特徴とする請求項8記載のアレーアンテナ。
【請求項10】
各前記アンテナ素子は、給電素子を備え、その周囲に円周方向に一定間隔で配されたバラクタダイオード付きの線状導体を複数備える電子制御導波器アンテナであり、
各前記アンテナ素子の各バラクタダイオードのリアクタンス値は、反時計回りの1つ前の前記アンテナ素子の各バラクタダイオードのリアクタンス値を反時計周りに1つ分回転させたものである
ことを特徴とする請求項1記載のアレーアンテナ。
【請求項1】
M(Mは2以上の整数)本のアンテナ素子を備えるアレーアンテナであって、
各前記アンテナ素子は指向性アンテナであり、
前記アンテナ素子の位相指向性パターンが互いに異なるように、各アンテナ素子の位相指向性パターンが設定されている
ことを特徴とするアレーアンテナ。
【請求項2】
第i(iは1以上M以下の整数)のアンテナ素子の第iの位相指向性パターン及び第j(jは1以上M以下でi以外の整数)のアンテナ素子の第jの位相指向性パターンは、
同一送信源から到来する信号に対して、第i及び第jのアンテナ素子の配置に基づき発生する位相差に、第i及び第jのアンテナ素子の位相指向性に基づき発生する位相差が加算される関係になるように
設定されている
ことを特徴とする請求項1記載のアレーアンテナ。
【請求項3】
第i(iは1以上M以下の整数)のアンテナ素子と第j(jは1以上M以下でi以外の整数)のアンテナ素子とを通り、第iのアンテナ素子から第jのアンテナ素子に向かう方向を正方向とする軸に対する角度をφとした場合、φは0°以上360°以下とし、
0°≦φ<φA1°(φA1は90より小さい所定の値)及びφB1°(φB1は270より大きい所定の値)<φ≦360°では、第jのアンテナ素子の第jの位相指向性パターンの位相が第iのアンテナ素子の第iの位相指向性パターンの位相より進み、
φA2°(φA2は90より大きい所定の値)<φ<φB2°(φB2はφA2より大きく270より小さい所定の値)では、第iの位相指向性パターンの位相が第jの位相指向性パターンの位相より進む
関係になるように
第i及び第jの位相指向性パターンが設定されている
ことを特徴とする請求項1記載のアレーアンテナ。
【請求項4】
φA1及びφA2は略90であり、φB1及びφB2は略270である
ことを特徴とする請求項3記載のアレーアンテナ。
【請求項5】
各前記アンテナ素子の位相指向性パターンは、
0°≦φ≦180°では単調増加で、180°≦φ≦360°では単調減少となるパターン、及び
0°≦φ≦180°では単調減少で、180°≦φ≦360°では単調増加となるパターンの何れかである
ことを特徴とする請求項3又は請求項4の何れか1項に記載のアレーアンテナ。
【請求項6】
2本のアンテナ素子を対とした場合に、当該2本の前記アンテナ素子の位相指向性パターンが互いに逆パターンになるように、各前記アンテナ素子の位相指向性パターンが設定されている
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載のアレーアンテナ。
【請求項7】
前記Mは2であり、
各前記アンテナ素子は、給電素子を備え、その周囲に円周方向に一定間隔で配されたバラクタダイオード付きの線状導体を複数備える電子制御導波器アンテナであり、
各前記アンテナ素子の線状導体の一つは、一のアンテナ素子と他のアンテナ素子とを通り、一のアンテナ素子から他のアンテナ素子に向かう方向を正方向とする軸に対して90°の位置に配され、
一のアンテナ素子の各バラクタダイオードのリアクタンス値の反時計方向の並びと、他のアンテナ素子のバラクタダイオードのリアクタンス値の時計方向の並びとが等しい
ことを特徴とする請求項1記載のアレーアンテナ。
【請求項8】
前記M本のアンテナ素子は、M角形の頂点上に配され、
各前記アンテナ素子の位相指向性パターンは、反時計回りの1つ前の前記アンテナ素子の位相指向性パターンを方位角方向にスライドさせたものである
ことを特徴とする請求項2記載のアレーアンテナ。
【請求項9】
前記スライドさせる角度は、略φであって、
前記φは360を前記Mで除算した値である
ことを特徴とする請求項8記載のアレーアンテナ。
【請求項10】
各前記アンテナ素子は、給電素子を備え、その周囲に円周方向に一定間隔で配されたバラクタダイオード付きの線状導体を複数備える電子制御導波器アンテナであり、
各前記アンテナ素子の各バラクタダイオードのリアクタンス値は、反時計回りの1つ前の前記アンテナ素子の各バラクタダイオードのリアクタンス値を反時計周りに1つ分回転させたものである
ことを特徴とする請求項1記載のアレーアンテナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−154489(P2010−154489A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42109(P2009−42109)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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