説明

アンカーボルト据付用治具、モルタルまたはコンクリート製基礎

【課題】 アンカーボルトを従来よりも簡便な工程で所定の位置に配置することが可能なアンカーボルト据付用治具、およびモルタルまたはコンクリート製基礎を提供する。
【解決手段】 アンカーボルト据付用治具3は、アンカーボルト4を把持した状態で自立可能なアンカーボルト据付用治具であって、脚部3Cと、脚部3Cから立ち上がる支柱部3Bと、支柱部3Bに取付けられ、アンカーボルト4を着脱可能に挟持する把持部3Aとを備える。把持部3Aは、1組の板状部材3Dから形成される。板状部材3Dとしては、たとえば板バネなどが用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカーボルト据付用治具、およびモルタルまたはコンクリート製基礎に関し、特に、アンカーボルトの据付を容易に行なうことができるアンカーボルト据付用治具、およびモルタルまたはコンクリート製基礎に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアンカーボルト据付手段としては、たとえば、アンカーボルトを固定する枠構造(アンカーフレーム)を形成したものや、鉄筋とアンカーボルトとを結合する治具などが挙げられる。
【0003】
このような従来例に関する特許文献としては、たとえば、実公平7−32755号公報、特開平6−42064号公報、実開平6−40150号公報、特許第2555111号公報、特開平9−316890号公報、特開2000−345567号公報などが挙げられる。
【0004】
たとえば、実公平7−32755号公報においては、基礎中央部開口部成型用鋼板型枠の開口端部周縁にテンプレートを、同型枠外周には基礎ボルトおよび基礎鉄筋を各々組み立ててなることを特徴とするコンクリート型枠兼用基礎ボルト据付架台が開示されている。
【0005】
また、実開平6−40150号公報においては、各々側縁に開口する欠円状のアンカーボルト用ホールを有する上下一双の水平のアンカーボルト把持片と、下端縁に開口する欠円状の基礎梁上筋用ホールを有する基礎梁上筋把持片より、各々型枠スペーサ構成用側板片を突設したアンカーボルトセット用治具が開示されている。
【特許文献1】実公平7−32755号公報
【特許文献2】特開平6−42064号公報
【特許文献3】実開平6−40150号公報
【特許文献4】特許第2555111号公報
【特許文献5】特開平9−316890号公報
【特許文献6】特開2000−345567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようなアンカーボルト据付手段においては、以下のような問題があった。
【0007】
上述した各従来例においては、アンカーボルトを固定するために、アンカーフレーム構造や鉄筋などを利用している。アンカーフレーム構造を採用した場合、据付作業が大掛かりであり、たとえば、一度固定した後の変更が容易ではないなどの問題がある。また、鉄筋などを利用してアンカーボルトを固定する場合、鉄筋の配置などにより、アンカーボルトの配置が制限される場合がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、アンカーボルトを従来よりも簡便な工程で所定の位置に配置することが可能なアンカーボルト据付用治具、およびモルタルまたはコンクリート製基礎を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るアンカーボルト据付用治具は、アンカーボルトを把持した状態で自立可能なアンカーボルト据付用治具であって、脚部と、脚部から立ち上がる支柱部と、支柱部に取付けられ、アンカーボルトを着脱可能に挟持する把持部とを備える。
【0010】
これにより、コンクリート基礎などの内部に埋め込まれるアンカーボルトを、所定の位置に簡便な手法で配置することができる。
【0011】
上記の把持部は、支柱部に取付けられた1組の板状部材を含み、板状部材はアンカーボルトを受け入れる空間を規定するように支柱部から略同一方向に延在することが好ましい。
【0012】
これにより、板状部材によってアンカーボルトを挟持することができる。
ここで、1組の板状部材とは、1組の面が対向するように1枚の板を折り曲げて形成したものを含む。
【0013】
脚部は、アンカーボルト直下の領域を囲むように設けられた棒状体により形成されることが好ましい。ここで、棒状体とは、中空のパイプも含む。
【0014】
上記構造により、現場において、脚部に付された印と、地面の所定の位置に付された罫書きとを用意に合わせることができる。したがって、据付用治具を、容易に所定の位置に合わせて設置することができる。
【0015】
なお、脚部を構成する棒状体は、アンカーボルト直下の領域を完全に取り囲む必要はなく、罫書きに対応した印をつけることができる限り、脚部が不連続な部分を有する場合も、該脚部がアンカーボルト直下の領域を囲んでいるものとする。
【0016】
本発明に係るモルタルまたはコンクリート製基礎は、上述したアンカーボルト据付用治具に把持されたアンカーボルトを有する。
【0017】
上述したアンカーボルト据付用治具によって、アンカーボルトを容易に設置することができる。したがって、アンカーボルトが埋め込まれたモルタルまたはコンクリート製基礎を、簡便な工程により得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アンカーボルトを従来よりも簡便な工程で所定の位置に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明に基づくアンカーボルト据付用治具、およびモルタルまたはコンクリート製基礎の実施の形態について、図1から図10を用いて説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係るアンカーボルト据付用治具により据付られたアンカーボルトを含む基礎上に機器を設置した状態を示す図である。
【0021】
図1を参照して、基礎2上に機器1が設置されている。機器1としては、たとえば、電気温水器の貯湯タンクなどが挙げられるが、その他任意の機器に変更可能である。
【0022】
基礎2には、アンカーボルト据付用治具3に保持されたアンカーボルト4が設けられている(図1中のa部)。アンカーボルト据付用治具3は、基礎2内に埋め込まれ、アンカーボルト4の先端部は、基礎2から突出している。アンカーボルト4は、機器1の取付金具などに対応した位置に設けられ、アンカーボルト4と機器1側の取付金具などは、ナット5を用いて結合される。これにより、機器1が、基礎2上に固定されている。なお、アンカーボルト4の径は、たとえばM12程度である。
【0023】
図2は、上記のアンカーボルト据付用治具3を示した側面図である。
図2を参照して、アンカーボルト据付用治具3は、把持部3Aと支柱部3Bと脚部3Cとを有する。脚部3Cから支柱部3Bがほぼ垂直に立ち上がり、支柱部3Bの先端部に把持部3Aが取付けられている。
【0024】
把持部3Aは、1組の板状部材3Dにより構成される。板状部材3Dとしては、典型的には、板バネなどを用いる。
【0025】
図3は、図2におけるIII−III断面図であり、図4は、図2におけるIV−IV断面図である。
【0026】
図3を参照して、板状部材3Dが、アンカーボルト4を挟持する。板状部材3Dは、アンカーボルト4の長さ方向の任意の位置を把持することができるので、アンカーボルト4が基礎2から突出する長さを、自在に変化させることができる。
【0027】
本実施の形態において、1組の板状部材3Dは、支柱部3Bを介して接続されているが、この1組の板状部材3Dを、1枚の板を折り曲げることにより形成してもよい。
【0028】
図4を参照して、支柱部3Bと脚部3Cとは、1本の棒状体により構成される。脚部3Cは、アンカーボルト4の直下の領域(図4中の二点鎖線)を取り囲むように3角形状に形成されている。なお、脚部3Cは、完全に閉じた3角形を形成しているわけではなく、不連続部分3Eを有している。また、脚部3Cの形状としては、3角形に限定されるものではなく、たとえば円形状や楕円形状、および任意の多角形形状などが適用可能である。
【0029】
基礎2を設ける現場においては、アンカーボルトの中心となるべき位置の地面に、予め罫書きがなされる。一方、アンカーボルト据付用治具3においては、図4に示すように、把持部3Aの所定の位置でアンカーボルト4を保持した際のアンカーボルト4の中心を規定するように、脚部3Cに印3Fが付されている。したがって、把持部3Aにアンカーボルト4をセットし、印3Fと地面上の罫書きとを合わせるように、アンカーボルト据付用治具3を地面上に載置するだけで、アンカーボルト4を所定の位置に固定することができる。
【0030】
上記のように、アンカーボルト据付用治具3は、非常に簡便な方法で、アンカーボルト4を所定の位置に固定することができるが、アンカーボルト据付用治具3の設置の後、コンクリート(またはモルタル)を打設する際に、この治具3が転倒/移動などしないように留意する必要がある。
【0031】
これに対し、アンカーボルト据付用治具3を転倒/移動させずに、コンクリートなどを打設することができる工法の一例について、以下に説明する。
【0032】
図5から図10は、本実施の形態に係るアンカーボルト据付用治具を用いた基礎構築方法の一例における各工程を示した図である。なお、図5から図10は、それぞれ第1から図6工程を示す。
【0033】
図5を参照して、まず、基礎を設置する部分の地面に凹部10を設け、その底面を、図5中の矢印の方向につき固める。
【0034】
次に、図6を参照して、凹部10の底面上に透水層20を堆積する。堆積層20は、典型的には、乾燥した砂などから形成される。
【0035】
次に、図7を参照して、透水層20上に型枠30を設け、型枠30内の透水層20上に、遮水層40を設ける。遮水層40としては、水を通さないシート状のものなどが用いられる。さらに、遮水層40上の所定の位置に、アンカーボルト据付用治具3を用いてアンカーボルト4を設置する。アンカーボルト4を設置する位置は、基礎上に設けられる機器などに対応して決められる。
【0036】
次に、図8を参照して、凹部10内における型枠30の外側を満たすように、埋め戻し層70を設ける。また、型枠30の内側を満たすように、堆積層80を設ける。
【0037】
堆積層80としては、たとえば、普通ポルトランドセメント、混和材(フライアッシュなど)、骨材などを混ぜ合わせたものを用いる。
【0038】
図9を参照して、ホース90から堆積層80に向けて注水する。注水は、堆積層80の表面に水が浮く程度まで行なわれる。
【0039】
次に、図10を参照して、上述した注水工程の完了から数分後に、キリなどを用いて遮水層40に開孔を設ける。開孔は、基礎2の面積がたとえば1m程度の場合、1箇所から数箇所程度に設けられる。
【0040】
開孔を設けることにより、図10中の破線矢印のように、堆積層80に注水された水が、該開孔を介して、透水層20側に移動しようとする。この際、堆積層80内において、水の対流がおこり、これにより、堆積層80に含まれる各成分(セメント、骨材など)が混練りされた水硬性無機質材料層80Aが形成される。
【0041】
その後、水硬性無機質材料層80Aの表面を鏝で押さえ、平らな形状になるように仕上げる。そして、水硬性無機質材料層80Aを1日程度養生する。これにより、水硬性無機質材料層80Aが硬化し、機器を載置することが可能な基礎が形成される。
【0042】
なお、上述した工程の実施の途中においては、基礎内部に雨水などが入りこまないように注意する必要がある。
【0043】
上述した内容について換言すると以下のようになる。すなわち、本実施の形態に係るアンカーボルト据付用治具3は、アンカーボルト4を把持した状態で自立可能なアンカーボルト据付用治具であって、脚部3Cと、脚部3Cから立ち上がる支柱部3Bと、支柱部3Bに取付けられ、アンカーボルト4を着脱可能に挟持する把持部3Aとを備える。
【0044】
これにより、コンクリート基礎などの内部に埋め込まれるアンカーボルト4を、所定の位置にされた罫書きと脚部3C上の印3Fとを合わせて置くだけで配置することができる。したがって、従来よりも簡便な手法でアンカーボルトを配置することができる。
【0045】
上記の把持部3Aは、支柱部3Bに取付けられた1組の板状部材3Dを含み、板状部材3Dはアンカーボルト4を受け入れる空間を規定するように支柱部3Bから略同一方向に延在することが好ましい。
【0046】
これにより、板状部材3Dによってアンカーボルトを挟持することができる。
脚部3Cは、アンカーボルト4直下の領域(図4中の二点鎖線)を囲むように設けられた棒状体により形成されることが好ましい。
【0047】
この構造により、現場において、印3Fと罫書きとを用意に合わせることができる。
なお、脚部3Cを構成する棒状体は、アンカーボルト4直下の領域を完全に取り囲む必要はなく、脚部3Cが不連続部分3Eを有する場合であっても、罫書きに対応した印3Fをつけることができる限り、脚部3Cがアンカーボルト4直下の領域を囲んでいると解すべきである。
【0048】
ところで、本実施の形態に係るモルタルまたはコンクリート製基礎は、上述したアンカーボルト据付用治具3に把持されたアンカーボルト4を有する。
【0049】
上述したアンカーボルト据付用治具3によって、アンカーボルト4を容易に設置することができる。したがって、モルタルまたはコンクリート製基礎を、従来よりも簡便な工程により得ることができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の1つの実施の形態に係るアンカーボルト据付用治具により据付られたアンカーボルトを含む基礎上に機器を設置した状態を示す図である。
【図2】本発明の1つの実施の形態に係るアンカーボルト据付用治具を示した側面図である。
【図3】図2におけるIII−III断面図である。
【図4】図2におけるIV−IV断面図である。
【図5】本発明の1つの実施の形態に係るアンカーボルト据付用治具を用いた基礎構築方法の第1工程を示した図である。
【図6】本発明の1つの実施の形態に係るアンカーボルト据付用治具を用いた基礎構築方法の第2工程を示した図である。
【図7】本発明の1つの実施の形態に係るアンカーボルト据付用治具を用いた基礎構築方法の第3工程を示した図である。
【図8】本発明の1つの実施の形態に係るアンカーボルト据付用治具を用いた基礎構築方法の第4工程を示した図である。
【図9】本発明の1つの実施の形態に係るアンカーボルト据付用治具を用いた基礎構築方法の第5工程を示した図である。
【図10】本発明の1つの実施の形態に係るアンカーボルト据付用治具を用いた基礎構築方法の第6工程を示した図である。
【符号の説明】
【0052】
1 機器、2 基礎、3 アンカーボルト据付用治具、3A 把持部、3B 支柱部、3C 脚部、3D 板状部材、3E 不連続部分、3F 印、4 アンカーボルト、5 ナット、10 凹部、20 透水層、30 型枠、40 遮水層、70 埋め戻し層、80 堆積層、80A 水硬性無機質材料層、90 ホース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンカーボルトを把持した状態で自立可能なアンカーボルト据付用治具であって、
脚部と、
前記脚部から立ち上がる支柱部と、
前記支柱部に取付けられ、アンカーボルトを着脱可能に挟持する把持部とを備えたアンカーボルト据付用治具。
【請求項2】
前記把持部は、前記支柱部に取付けられた1組の板状部材を含み、
前記板状部材は前記アンカーボルトを受け入れる空間を規定するように前記支柱部から略同一方向に延在する、請求項1に記載のアンカーボルト据付用治具。
【請求項3】
前記脚部は、前記アンカーボルト直下の領域を囲むように設けられた棒状体により形成される、請求項1または請求項2に記載のアンカーボルト据付用治具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のアンカーボルト据付用治具に把持されたアンカーボルトを有する、モルタルまたはコンクリート製基礎。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−316528(P2006−316528A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140950(P2005−140950)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】