説明

アンサマイシン製剤およびその使用方法

本発明は、ベンゾキノン含有アンサマイシンの還元体およびその塩の医薬組成物を提供する。本発明はさらに、癌等の過剰増殖に関連する障害を治療するおよび調節する方法における該医薬組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(原文に記載なし)
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒートショックプロテイン90(「HSP90」)は、豊富に存在するタンパク質であり、細胞の生存に極めて重要で、デュアルシャペロン機構を示す(J. Cell. Biol. (2001) 154:267-273, Trends Biochem. Sci. (1999) 24:136-141)。このタンパク質は、多くのタンパク質が、熱ショック、適切なタンパク質折り畳みの確保、非特異的凝集の阻止等の様々な環境のストレスによってその元々の立体配座の改変を受けた後、それらと相互作用することにより細胞ストレス応答における重要な役割を担っている(Pharmacological Rev. (1998) 50:493-513)。さらに、最近の結果から、HSP90は、恐らくは突然変異したタンパク質の不適当な折り畳みを修正することによって、突然変異の影響に対する緩衝においても重要な役割をになっていることが示唆されている(Nature (1998) 396:336-342)。また一方で、HSP90は、通常の生理学的条件下で重要な調節の役割も有し、約40種類が知られている具体的な多くのクライアントタンパク質のコンフォメーションの安定性および成熟に関与している(Expert. Opin. Biol Ther. (2002) 2(1):3-24参照)。
【0003】
HSP90アンタゴニストは、現在、HSP90活性の1以上の側面を阻害することにより、疾患または障害に対する治療効果をもたらし得る、数多くの生物学的役割において研究がなされている。癌などの増殖性障害に主に焦点が当てられているものの、その他の疾患を治療するためのHSP90アンタゴニストの使用が研究されている。そのような疾患の例としては、ウイルス性障害、炎症、自己免疫障害、卒中、虚血、心疾患、繊維形成障害(fibrogenetic disorders)、強皮症、多発性筋炎、全身性狼瘡、慢性関節リウマチ、肝硬変、ケロイド形成、間質性腎炎および肺線維症が挙げられる。
【0004】
ゲルダナマイシンは、天然物のベンゾキノン含有アンサマイシンファミリーに属する大環状ラクタムである。癌細胞の死滅に関するゲルダナマイシンのナノモル濃度の効力と明らかな選択性並びに哺乳類細胞におけるその主要な標的がHSP90であるという発見は、その抗癌薬としての開発において関心を呼び起こした。しかし、その非常に低い溶解度とゲルダナマイシンの投与に伴う肝臓毒性は、治療上の適用について承認される薬剤の開発において困難を招いていた。特に、ゲルダナマイシンは水に溶け難いため、治療的に有効な用量での送達が困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の要旨
本発明は、アンサマイシンのヒドロキノン類縁体の医薬組成物を提供する。本発明はさらに、癌などの細胞の望ましくない過剰増殖によって特徴付けられる疾患または状態、並びに望ましくないHSP90活性に関連するまたはその障害を引き起こすことにHSP90が関与している細胞において役割を担っている他の状態または障害の処置におけるこれら医薬組成物の使用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、少なくとも1つの製薬的に許容し得る賦形剤および式1で示される化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【化1】

式中、各々独立に、
Wは酸素または硫黄であり;
Qは酸素、NR、N(アシル)または結合であり;
Rは、それぞれ独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から独立に選択され;
1は、ヒドロキシル、アルコキシル、−OC(O)R8、−OC(O)OR9、−OC(O)NR1011、−OSO212、−OC(O)NHSO2NR1314、−NR1314またはハライドであり、R2は、水素、アルキルまたはアラルキルであるか;またはR1とR2がそれらが結合している炭素と共に一緒になって、−(C=O)−、−(C=N−OR)−、−(C=N−NHR)−、または−(C=N−R)−であり;
3およびR4はそれぞれ、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび−[(CR2p]−R16からなる群から独立に選択されるか、またはR3はR4と一緒になって4〜8員の場合により置換されたヘテロ環を表し;
5は、H、アルキル、アラルキルおよび式1a:
【化2】

(式中、R17は、水素、ハライド、ヒドロキシル、アルコキシル、アリールオキシ、アシルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アシルアミノ、アルアルキルアミノ、ニトロ、アシルチオ、カルボキサミド、カルボキシル、ニトリル、−COR18、−CO218、−N(R18)CO219、−OC(O)N(R18)(R19)、−N(R18)SO219、−N(R18)C(O)N(R18)(R19)および−CH2O−ヘテロシクリルからなる群から独立に選択される)
を有する基
からなる群から選択され;
6およびR7はいずれも水素であるか、またはR6およびR7が一緒になって結合を形成し;
8は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは−[(CR2p]−R16であり;
9は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは−[(CR2p]−R16であり;
10およびR11はそれぞれ、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび−[(CR2p]−R16からなる群から独立に選択されるか、またはR10とR11は、それらが結合している窒素と一緒になって4〜8員の場合により置換されたヘテロ環を表し;
12は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは−[(CR2p]−R16であり;
13およびR14はそれぞれ、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび−[(CR2p]−R16からなる群から独立に選択されるか、またはR13とR14は、それらが結合している窒素と一緒になって4〜8員の場合により置換されたヘテロ環を表し;
16はそれぞれ、水素、ヒドロキシル、アシルアミノ、−N(R18)COR19、−N(R18)C(O)OR19、−N(R18)SO2(R19)、−CON(R18)(R19)、−OC(O)N(R18)(R19)、−SO2N(R18)(R19)、−N(R18)(R19)、−OC(O)OR18、−COOR18、−C(O)N(OH)(R18)、−OS(O)2OR18、−S(O)2OR18、−OP(O)(OR18)(OR19)、−N(R18)P(O)(OR18)(OR19)、および−P(O)(OR18)(OR19)からなる群から独立に選択され;
Pは1、2、3、4、5または6であり;
18はそれぞれ、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から独立に選択され;
19はそれぞれ、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から独立に選択されるか、またはR18はR19と一緒になって4〜8員の場合により置換された環を表し;
20、R21、R22、R24およびR25はそれぞれ独立にアルキルであり;
23は、アルキル、−CH2OH、−CHO、−COOR18または−CH(OR182であり;
26およびR27はそれぞれ、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から独立に選択され;
式1の立体中心の絶対立体化学は、RもしくはSまたはそれらの混合物であってよく、二重結合の立体化学は、EもしくはZまたはそれらの混合物であってよい。
【0007】
ある態様では、式1の化合物は以下からなる群から選択される。
【化3】

【0008】
ある態様では、上記の医薬組成物はさらに酸化防止剤および/または金属キレート剤を含有する。
【0009】
酸化防止剤は、例えば、アスコルビン酸塩、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオグリセリン、メルカプト酢酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、またはアルファ−トコフェロールである。
【0010】
金属キレート剤は、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはその塩、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)もしくはその塩、EGTAもしくはその塩、NTA(ニトリロ酢酸)もしくはその塩、ソルビトールもしくはその塩、酒石酸もしくはその塩、N−ヒドロキシイミノ二酢酸もしくはその塩、ヒドロキシエチル−エチレンジアミン四酢酸もしくはその塩、1−プロパンジアミン四酢酸もしくはその塩、3−プロパンジアミン四酢酸もしくはその塩、1−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸もしくはその塩、3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸もしくはその塩、グルコン酸ナトリウム、ヒドロキシエタン二ホスホン酸もしくはその塩、またはリン酸もしくはその塩である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の詳細な記載
本明細書において用いる用語の定義には、化学および医薬の分野における用語それぞれについて認識されている当分野の技術水準が盛り込まれることを意図している。適宜、例を示す。特別に限定する場合を除き、個別にまたは大きなグループの一部として、その用語に対して本明細書中に用いる定義をそのまま適用する。
【0012】
立体化学を特定していない場合は、純粋な化合物、並びにそれらの混合物として、本発明化合物のすべての立体異性体が本発明の範囲に含まれる。特に指定しない限り、個々のエナンチオマー、ジアステレオマー、幾何異性体、並びにそれらの組合せおよびそれらの混合物がすべて本発明に含まれる。多形結晶形態および溶媒和物もまた本発明の範囲内に含まれる。
【0013】
用語「ヘテロ原子」は当分野で認識されており、炭素または水素以外の任意の元素の原子を意味する。ヘテロ原子の例としては、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄およびセレンが挙げられる。
【0014】
用語「アルキル」は、当分野において認識されており、飽和脂肪族基を包含し、直鎖のアルキル基、分岐鎖のアルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基が挙げられる。ある態様では、直鎖または分岐鎖のアルキルは、その骨格に約30個またはそれ以下(例えば、直鎖がC1−C30、分岐鎖がC3−C30)、あるいは約20個またはそれ以下の炭素原子を有する。同様に、シクロアルキルは、環構造において約3〜約10個の炭素原子を有する、あるいは約5、6または7個の炭素を環構造に有する。
【0015】
炭素数を特定しない限り、「低級アルキル」は前記と同意義のアルキル基であって、1〜約10個の炭素、あるいは1〜約6個の炭素原子、をその骨格に有するものを意味する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は同様の長さの鎖を有する。
【0016】
用語「アラルキル」は、当分野において認識されており、アリール基(例えば、芳香族またはヘテロ芳香族基)で置換されたアルキル基を意味する。
【0017】
用語「アルケニル」および「アルキニル」は、当分野において認識されており、長さとそれらの置換基において上記のアルキルと同様であるが、それぞれ、少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む不飽和脂肪族基を意味する。
【0018】
用語「アリール」は、当分野において認識されており、0〜4個のヘテロ原子を含んでいてもよい5、6および7員の単環式芳香族基、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどを意味する。環構造においてヘテロ原子を有するそれらのアリール基は、「アリールヘテロ環」または「ヘテロ芳香族」とも称される。芳香族環は、1またはそれ以上の環の位置で、例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族またはヘテロ芳香族部分、−CF3、−CNなどの上記の置換基で置換されていてもよい。用語「アリール」はまた、2またはそれ以上の炭素が2つの隣接する環で共通している(その環は「縮合環」である)、2またはそれ以上の環を有する多環系を含んでいてもよく、少なくとも1つの環が芳香族であり、それ以外の環が、例えばシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリルであってよい。
【0019】
用語「オルト」「メタ」および「パラ」は、当分野において認識されており、それぞれ1,2−,1,3−および1,4−ジ置換されたベンゼンを意味する。例えば、1,2−ジメチルベンゼンなる名称とオルト−ジメチルベンゼンは同義語である。
【0020】
用語「ヘテロシクリル」、「ヘテロアリール」または「ヘテロ環基」は、当分野において認識されており、3員〜約10員環、あるいは3〜約7員環の構造を有し、その環構造に1〜4個のヘテロ原子を含む。ヘテロ環は多環であってもよい。ヘテロ環基としては、例えば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサンテン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジニン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、アゼチジノンおよびピロリドン等のラクタム、スルタム、スルトンなどが挙げられる。ヘテロ環は、1以上の位置で上記のような置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロ環、芳香族またはヘテロ芳香族部分、−CF3、−CNなどで置換されていてもよい。
【0021】
用語「場合により置換された」は、1以上の水素が、本明細書に記載された置換基、例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族またはヘテロ芳香族部分、−CF3、−CNなどで置換されていてもよい、アルキル、シクロアルキルアリール等の化学基を意味する。
【0022】
用語「多環」または「多環基」は、当分野において認識されており、2またはそれ以上の炭素が2つの隣接する環で共通している(例えば、その環は「縮合環」である)、2またはそれ以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリル)を意味する。隣接していない原子を介して連結している環は、「架橋」環と称する。多環のそれぞれの環は、上記のような置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族またはヘテロ芳香族部分、−CF3、−CNなどで置換されていてもよい。
【0023】
用語「炭素環」は、当分野において認識されており、環のそれぞれの原子が炭素である芳香族または非芳香族環を意味する。
【0024】
用語「ニトロ」は、当分野において認識されており、−NO2を意味し;用語「ハロゲン」は、当分野において認識されており、−F、−Cl、−Brまたは−Iを意味し;用語「スルフヒドリル」は、当分野において認識されており、SHを意味し;用語「ヒドロキシル」は−OHを意味し;および用語「スルホニル」は、当分野において認識されており、−SO2-を意味する。「ハライド」はハロゲンに対応するアニオンであり、「シュードハライド」は、Cotton and Wilkinson著,"Advanced Inorganic Chemistry"の第560頁に記載されている定義を有する。
【0025】
用語「アミン」および「アミノ」は、当分野において認識されており、置換されていないアミンおよび置換されたアミンの両方を意味し、例えば、一般式:
【化4】

[式中、
R50、R51およびR52は、それぞれ独立に水素、アルキル、アルケニル、(CH2m−R61を表すか、またはR50およびR51はそれらが結合しているN原子と一緒になって環構造において4〜8原子を有するヘテロ環を形成し;R61はアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロ環または多環を表し;およびmは0または1〜8の範囲の整数である。その他の態様では、R50およびR51(および場合によりR52)はそれぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH2m−R61を表する]
で示され得る部分を意味する。従って、用語「アルキルアミン」には、アミンに結合した置換されたまたは置換されていないアルキルを有する、即ち、R50およびR51の少なくとも1つがアルキル基である、上で定義したアミン基が含まれる。
【0026】
用語「アシルアミノ」は、当分野において認識されており、一般式:
【化5】

[式中、
R50は前記と同意義であり、R54は水素、アルキル、アルケニルまたは(CH2m−R61を表し、mおよびR61は前記と同意義である]
で示され得る部分を意味する。
【0027】
用語「アミド」は、アミノ置換カルボニルとして当分野において認識されており、一般式:
【化6】

[式中、R50およびR51は前記と同意義である]
で示され得る部分が挙げられる。本発明におけるアミドの特定の態様では、不安定であるイミドは含まれない。
【0028】
用語「アルキルチオ」は、アルキル基に結合した硫黄ラジカルを有する、上で定義したアルキル基を意味する。ある態様では、「アルキルチオ」部分は、−S−アルキル、−S−アルケニル、−S−アルキニル、および−S−(CH2m−R61(ここでmおよびR61は前記と同意義)のいずれかによって表される。アルキルチオ基の代表例としては、メチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。
【0029】
用語「カルボキシル」は、当分野において認識されており、一般式:
【化7】

[式中、X50は結合または酸素または硫黄を表し、R55およびR56は水素、アルキル、アルケニル、−(CH2m−R61または医薬上許容される塩を表し、R56は水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH2m−R61を表し、mおよびR61は前記と同意義である]
で示され得るような部分が挙げられる。X50が酸素であり、R55またはR56が水素でないとき、この式は「エステル」を表する。X50が酸素であり、R55が前記と同意義であるとき、本明細書においてこの部分はカルボキシル基を表し、特にR55が水素であるとき、この式は「カルボン酸」を表する。X50が酸素でありR56が水素であるとき、この式は「ギ酸エステル」を表する。一般に、上記式の酸素原子が硫黄によって置き換わる場合は、この式は「チオールカルボニル」基を表する。X50が硫黄であり、R55またはR56が水素でないとき、この式は「チオールエステル」を表する。X50が硫黄であり、R55が水素であるとき、この式は「チオールカルボン酸」を表する。X50が硫黄でありR56が水素であるとき、この式は「チオールギ酸エステル」を意味する。他方、X50が結合であり、R55が水素でないとき、この式は「ケトン」基を表する。X50が結合であり、R55が水素であるとき、上記式は「アルデヒド」基を表する。
【0030】
用語「カルバモイル」は、−O(C=O)NRR’(ここで、RおよびR’は独立にH、脂肪族基、アリール基またはヘテロアリール基である)を意味する。
【0031】
用語「オキソ」はカルボニル酸素(=O)を意味する。
【0032】
用語「オキシム」および「オキシムエーテル」は、当分野において認識されており、一般式:
【化8】

[式中、R75は、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、または−(CH2m−R61である]
で示され得る部分を意味する。この部分は、RがHである場合は「オキシム」であり;Rがアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、または−(CH2m−R61である場合は「オキシムエーテル」である。
【0033】
用語「アルコキシル」または「アルコキシ」は、当分野において認識されており、アルキル基に結合した酸素ラジカルを有する、上で意義したアルキル基を意味する。アルコキシル基の代表例としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert−ブトキシなどが挙げられる。「エーテル」は、酸素により共有結合で連なった2つの炭化水素である。従って、アルキルをエーテルにするアルキルの置換基は、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−(CH2m−R61(ここでmおよびR61は前記と同意義である)のいずれかによって表されるようなアルコシルに類似するものである。
【0034】
用語「スルホナート」は、当分野において認識されており、一般式:
【化9】

[式中、R57は電子対、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールである]
で表され得る部分を意味する。
【0035】
用語「スルファート」は、当分野において認識されており、一般式:
【化10】

[式中、R57は前記と同意義である]
で表され得る部分が挙げられる。
【0036】
用語「スルホンアミド」は、当分野において認識されており、一般式:
【化11】

[式中、R50およびR56は前記と同意義である]
で表され得る部分が挙げられる。
【0037】
用語「スルファモイル」は、当分野において認識されており、一般式:
【化12】

[式中、R50およびR51は前記と同意義である]
で表され得る部分を意味する。
【0038】
用語「スルホニル」は、当分野において認識されており、一般式:
【化13】

[式中、R58は以下のいずれか1つ:水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリール]
で表され得る部分を意味する。
【0039】
用語「スルホキシド」は、当分野において認識されており、一般式:
【化14】

[式中、R58は前記と同意義である]
で表され得る部分を意味する。
【0040】
例えばアルキル、m、nなどの表現の定義については、ある構造においてそれが2個以上存在する場合、同構造の他の場所での定義と無関係であると意図している。
【0041】
トリフリル、トシル、メシル、およびノナフリルなる用語は、当分野において認識されており、それぞれトリフルオロメタンスルホニル、p−トルエンスルホニル、メタンスルホニル、およびノナフルオロブタンスルホニル基を意味する。トリフラート、トシラート、メシラート、およびノナフレートなる用語は、当分野において認識されており、それぞれトリフルオロメタンスルホン酸エステル、p−トルエンスルホン酸エステル、メタンスルホン酸エステル、およびノナフルオロブタンスルホン酸エステル官能基およびそれらの基を含む分子を意味する。
【0042】
略語、Me、Et、Ph、Tf、Nf、Ts、およびMsは、それぞれメチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロブタンスルホニル、p−トルエンスルホニルおよびメタンスルホニルを表する。当分野の有機化学者によって用いられている略語のより包括的な一覧は、Journal of Organic Chemistryの第1版の各巻に記載されている;この一覧は典型的に、Standard List of Abbreviationsと題する表に示されている。
【0043】
本発明の組成物に含まれる特定の化合物は、特定の幾何異性体または立体異性体の形態で存在し得る。本発明は、本発明の範囲に含まれる化合物として、シス−およびトランス−異性体、R−およびS−エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、それらのラセミ混合物、および他のそれらの混合物を含むそのような化合物をすべて企図する。さらなる不斉炭素原子はアルキル基等の置換基に存在し得る。そのような異性体、並びにそれらの混合物、はすべて本発明に含まれると意図している。
【0044】
例えば、本発明の化合物の特定のエナンチオマーが望ましい場合は、不斉合成により、またはキラル補助基により誘導体化して得られたジアステレオマー混合物を分離して補助基を開裂することによって純粋な所望のエナンチオマーを得ることにより、製造することができる。あるいは、分子が、アミノのような塩基性の官能基、またはカルボキシルのような酸性官能基を含む場合、適当な光学活性な酸または塩基とともにジアステレオマーの塩を形成した後、形成したジアステレオマーを、当分野において周知の分別結晶化またはクロマトグラフィー手段により分割し、純粋なエナンチオマーを回収する。
【0045】
「置換された」または「で置換された」には、そのような置換が、置換された原子および置換基の許容される原子価に従うものであり、そして、その置換により、例えば転位、環化、脱離またはその他の反応などによるトランスフォーメーションを自発的に受けない安定な化合物を生じるという、暗黙の条件が含まれる。
【0046】
用語「置換された」にはまた、有機化合物の許容されるすべての置換基が包含される。広い態様では、許容される置換基として、有機化合物の、非環式および環式の、枝分かれしているおよび枝分かれしていない、炭素環のおよびヘテロ環の、芳香族および非芳香族の置換基が挙げられる。置換基の例としては、例えば、本明細書中、上に記載されたものが挙げられる。許容される置換基は、適当な有機化合物に関して、1個でもまたはそれ以上でも、同一でも異なっていてもよい。本発明においては、窒素等のヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満足する本明細書に記載された水素置換基および/または有機化合物の許容される任意の置換基を有していてもよい。有機化合物の許容される置換基によって本発明が限定されることは何ら意図していない。
【0047】
本明細書で用いられる「保護基」なる語は、反応の可能性がある官能基を、望ましくない化学的変換から一時的に保護する置換基を意味する。そのような保護基の例としては、カルボン酸のエステル、アルコールのシリルエーテル、およびそれぞれアルデヒドおよびケトンのアセタールおよびケタールが挙げられる。保護基の化学の分野についての総説がある(Greene, T.W.; Wuts, P.G.M. Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed.; Wiley: New York, 1991)。本発明化合物の保護された形態は、本発明の範囲に含まれる。
【0048】
用語「組成物」は、特定量の特定成分を含有する生成物、並びに特定量の特定成分の組み合わせから直接的または間接的に生じる任意の生成物を包含することを企図している。
【0049】
用語「HSP90介在疾患」または「HSP90発現細胞が介在する障害」は、HSP90が役割を担っている病理学的および病的状態を意味する。そのような役割は、病理学的状態に直接関連するかまたはその状態に間接的に関連する。このクラスの状態に共通する特徴は、その状態が、HSP90の活性、機能または他のタンパク質との会合を阻害することによって改善されるということである。
【0050】
用語「製薬的に許容し得る担体」は、化合物の所望の投与形態を製造するために用いられる媒体を意味する。製薬的に許容し得る担体としては、1以上の溶媒、希釈剤、またはその他の液体ビークル;分散または懸濁補助剤;表面活性剤;等張剤;増粘剤または乳化剤;保存剤;固形結合剤(solid binder);滑沢剤などが挙げられる。Remington's Pharmaceutical Sciences, Fifteenth Edition, E. W. Martin (Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1975) および Handbook of Pharmaceutical Excipients, Third Edition, A. H. Kibbe ed. (American Pharmaceutical Assoc. 2000)には、医薬組成物の製剤化およびその製造のための公知技術に用いられる様々な担体が開示されている。
【0051】
本発明の組成物は酸化防止剤を含有してよい。製薬的に許容し得る酸化防止剤としては、以下のものが挙げられるがこれに限定されない:(1)水溶性の酸化防止剤(アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオグリセリン、メルカプト酢酸ナトリウム、およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム等);(2)脂溶性の酸化防止剤(パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロール等)。
【0052】
式1の化合物は、溶液中または固体の形態中で長期間保管すると酸化し得る。鉄や銅などの重金属は、酸化反応の触媒となり得、一般的な試薬や実験器具には微量が存在し得る。金属キレート剤により重金属の酸化作用から保護することができる。
【0053】
組成物中に存在させることができる製薬的に許容し得る金属キレート剤としては、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはその塩、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)またはその塩、EGTAまたはその塩、NTA(ニトリロ酢酸)またはその塩、ソルビトールまたはその塩、酒石酸またはその塩、N−ヒドロキシイミノ二酢酸またはその塩、ヒドロキシエチル−エチレンジアミン四酢酸またはその塩、1−または3−プロパンジアミン四酢酸またはその塩、1−または3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸またはその塩、グルコン酸ナトリウム、ヒドロキシエタン二ホスホン酸またはその塩、およびリン酸またはその塩が挙げられるがこれに限定されない。
【0054】
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム等の湿潤剤、乳化剤および滑沢剤、並びに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味料、香味料および香料、保存剤、可溶化剤、緩衝剤および酸化防止剤もまた組成物中に存在させることができる。
【0055】
式1の化合物の溶解度は、可溶化剤またはまたは錯化剤の添加により液体媒体中で改善することができる。
【0056】
組成物中に存在させてもよい製薬的に許容し得る可溶化剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート80を含む)、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ベンジルアルコール、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリム、シクロデキストリン、およびポロクサマーが挙げられるがこれに限定されない。
【0057】
組成物中に存在させてよい製薬的に許容し得る錯化剤としては、シクロデキストリン(アルファ、ベータ、ガンマ)、特に、置換されたベータシクロデキストリン(2−ヒドロキシプロピル−ベータ、ジメチルベータ、2−ヒドロキシエチルベータ、3−ヒドロキシプロピルベータ、トリメチルベータ等)が挙げられるがこれに限定されない。
【0058】
非経口投与に適当な本発明の医薬組成物は、1以上の本発明の化合物を、糖、アルコール、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、錯化剤、製剤の浸透圧を目的とするレシピエントの血液と等しくするための溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含有してもよい、1以上の製薬的に許容し得る無菌の等張性の水溶液または非水溶液、分散液、懸濁液もしくは乳液、または使用直前に滅菌注射溶液または分散液に再構成することができる無菌の粉末と共に含有する。例えば、活性成分を製薬的に許容し得る担体と溶液中で一緒にした後、凍結乾燥して乾燥粉末を得る。乾燥粉末は、単位投与剤型に包装され、その後、水または生理食塩水等の滅菌溶液をその粉末に添加することにより非経口投与用に再構成される。
【0059】
本発明の医薬組成物に用いることができる適当な水性および非水性の担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)および適当なそれらの混合物、植物油(オリーブ油等)および注射可能な有機エステル(オレイン酸エチル等)が挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティング材の使用により、分散液の場合は要求される粒子サイズを維持することにより、および表面活性剤の使用により得られる。
【0060】
これらの組成物はさらに、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤等の助剤を含有することもできる。様々な抗菌薬や抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸など)を含有させることにより、本発明化合物に対する微生物の作用を防止することができる。また、糖、塩化ナトリウム等の等張剤を組成物に含有させることも好ましいであろう。さらに、モノステアリン酸アルミニウムやゼラチンのような吸収を遅らせる物質を含有させることにより、注射可能な医薬形態を長時間に渡って吸収させることができる。
【0061】
いくつかの場合では、薬物の効果を長引かせるために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅くすることが望ましい。これは、水溶性の低い結晶性または非晶質材料の懸濁液を用いることにより可能である。薬物の吸収速度は、その拡散速度に依存し、それは結晶サイズと結晶形態に依存し得る。あるいは、薬物を油のビークル中に溶解または懸濁することにより、非経口投与形態の薬物の吸収遅延が可能である。
【0062】
本発明化合物の製剤の1つは、アスコルビン酸を含有する(例えば、式1で示される化合物に対するアスコルビン酸のモル比が約0.1〜約10の範囲であるか;または別の例では、式1で示される化合物に対するアスコルビン酸のモル比が約1〜約6の範囲である)。
【0063】
製造方法
本発明の化合物の製造に様々な方法論を適用することができる。一般的に、(1)アンサマイシンを17−脱メトキシ−17−アミノ類縁体(例えば、17−AAG)に変換する、(2)アンサマイシン中のベンゾキノンを還元してヒドロキノンとする、および(3)還元されたベンゾキノン含有アンサマイシンを少なくとも1つの製薬的に許容し得る賦形剤と組み合わせる、工程が含まれる。
【0064】
ある態様では、生物から既知の方法を用いて単離された天然物の類縁体を合成法を用いて作製する。例えば、適当な微生物の発酵培養物からゲルダナマイシンを単離し、当分野で知られている官能基化反応を用いて誘導体にすることができる。代表例としては、金属触媒によるカップリング反応、酸化、還元、求核試薬との反応、求電子試薬との反応、ペリ環状反応、保護基の導入、保護基の脱離などが挙げられる。様々なベンゾキノンアンサマイシンの類縁体を製造するための多くの方法が当分野において知られている(例えば、本明細書の一部を構成する、米国特許第4,261,989;5,387,584;および5,932,566およびJ. Med. Chem. 1995, 38, 3806-3812を参照)。これらの類縁体を以下に概説する方法を用いて容易に還元し、本発明の18,21−ジヒドロ誘導体が得られる。
【0065】
様々な方法および反応条件を用いて、アンサマイシンのベンゾキノン部分を還元することができる。還元剤としてヒドロ亜硫酸ナトリウムを用いることができる。用いることができる他の還元剤としては、亜鉛末と無水酢酸または酢酸、アスコルビン酸および電気化学的還元が挙げられるがこれに限定されない。還元方法については、WO2005/063714にさらに記載されている。
【0066】
アンサマイシン誘導体のベンゾキノン部分の還元は、二相性の反応混合物中、ヒドロ亜硫酸ナトリウムを用いて行うことができる。典型的には、ゲルダナマイシン類縁体は、EtOAc等の有機溶媒に溶解する。使用できる他の溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、THF、MeTHF、ジエチルエーテル、ジグリム、1,2−ジメトキシエタン、MTBE、THP、ジオキサン、2−エトキシブタン、メチルブチルエーテル、酢酸メチル、2−ブタノン、水およびそれらの混合物が挙げられるがこれに限定されない。室温にて2当量以上のヒドロ亜硫酸ナトリウムを水中の溶液(5〜30%(m/v)、好ましくは10%(m/v))として反応溶液に加える。ヒドロ亜硫酸ナトリウムの水溶液は不安定であるため、使用直前に新たに調製する必要がある。二相性の混合物を勢いよく混合し十分な反応速度が得られるようにする。
【0067】
出発物質である17−AAGの紫色は、黄色の生成物であるジヒドロ−17AAGへの反応が進行するに従い消失するので、この工程では反応を目視により容易に観察することができる。但し、HPLC/UVまたは他の解析方法を用いて反応を監視することができる。
【0068】
反応が完了したら、ヒドロキノンの酸化を最小限にするため、精製することなく粗製の反応生成物を本発明の医薬組成物の製造に直接用いてもよい。
【0069】
製剤または組成物の製造方法は、本発明化合物と、担体および所望により1以上の副成分とを接触させる工程を含む。一般に、本発明化合物を液体の担体(液体製剤)、凍結乾燥した液体の担体(滅菌水等による再構成のための粉末製剤)もしくは微粉化した固形担体またはその両方と均一に且つ密に会合させた後、適宜、生成物を成形または包装する。液体の担体の例としてはアセトニトリル、アルコール、THF、アセトンブタノン、およびポリオールが挙げられるがこれに限定されない。本発明の医薬組成物の製造方法を以下に記載する。
【実施例】
【0070】
実施例
いまここで一般的に記載した発明は、本発明のある特定の側面および態様の説明のために単に記載され、本発明の限定を意図していない、以下の実施例を参照することでさらに容易に理解される。
【0071】
実施例1
17−AAGのヒドロキノン類縁体の製造
【化15】

17−アリルアミノゲルダナマイシン(1)(0.548g、0.937mmol、1.0当量)を12.0mLの酢酸エチルに溶解し、ヒドロ亜硫酸ナトリウムの水溶液(水12mL中のヒドロ亜硫酸ナトリウム1.2g)と共に攪拌した。5分後に濃紫色の溶液は黄色になり、混合物をさらに25分間攪拌した。有機層を回収し、MgSO4で乾燥し、減圧下で濃縮して所望のヒドロキノン2(0.500g、0.85mmol、収率90%)を得た。
【0072】
実施例2
ヒドロキノン2の医薬組成物の製造
アセトニトリル(4mL)中のヒドロキノン2(58mg、0.99mmol)に、水(4mL)中のアスコルビン酸(0.872g、4.95mmol、5当量)の溶液を加えた。この溶液を凍結し、凍結乾燥して灰白色の粉末を得た。
【0073】
実施例3
ヒドロキノン2の医薬組成物の製造
t−BuOH(4mL)中のヒドロキノン2(58mg、0.99mmol、1当量)に、pH3.1の緩衝溶液(4mL;2.4mM、EDTA 50mMアスコルビン酸、および50mMクエン酸)を加え、得られた溶液を凍結し、凍結乾燥して医薬組成物を得た。
【0074】
均等物および文献の援用
本明細書において記載した例示および態様は単に説明を目的としたものであり、それに照らし合わせて様々な修飾または変更が当業者には示唆され、本願の精神と範囲そして添付する請求項の範囲に含まれるものと理解される。本明細書において引用した米国特許および米国特許出願公報は、あらゆる目的においてその全体を援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの製薬的に許容し得る賦形剤、および式1で示される化合物を含有する医薬組成物:
【化1】

式中、各々独立に、
Wは酸素または硫黄であり;
Qは酸素、NR、N(アシル)または結合であり;
Rは、それぞれ独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から独立に選択され;
1は、ヒドロキシル、アルコキシル、−OC(O)R8、−OC(O)OR9、−OC(O)NR1011、−OSO212、−OC(O)NHSO2NR1314、−NR1314またはハライドであり、R2は、水素、アルキルまたはアラルキルであるか;またはR1とR2がそれらが結合している炭素と共に一緒になって、−(C=O)−、−(C=N−OR)−、−(C=N−NHR)−、または−(C=N−R)−を表し;
3およびR4はそれぞれ、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび−[(CR2p]−R16からなる群から独立に選択されるか、またはR3はR4と一緒になって4〜8員の場合により置換されたヘテロ環を表し;
5は、H、アルキル、アラルキルおよび式1a:
【化2】

(式中、R17は、水素、ハライド、ヒドロキシル、アルコキシル、アリールオキシ、アシルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アシルアミノ、アルアルキルアミノ、ニトロ、アシルチオ、カルボキサミド、カルボキシル、ニトリル、−COR18、−CO218、−N(R18)CO219、−OC(O)N(R18)(R19)、−N(R18)SO219、−N(R18)C(O)N(R18)(R19)および−CH2O−ヘテロシクリルからなる群から独立に選択される)
を有する基
からなる群から選択され;
6およびR7はいずれも水素であるか、またはR6およびR7が一緒になって結合を形成し;
8は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは−[(CR2p]−R16であり;
9は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは−[(CR2p]−R16であり;
10およびR11はそれぞれ、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび−[(CR2p]−R16からなる群から独立に選択されるか、またはR10とR11は、それらが結合している窒素と一緒になって4〜8員の場合により置換されたヘテロ環を表し;
12は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは−[(CR2p]−R16であり;
13およびR14はそれぞれ、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび−[(CR2p]−R16からなる群から独立に選択されるか、またはR13とR14は、それらが結合している窒素と一緒になって4〜8員の場合により置換されたヘテロ環を表し;
16はそれぞれ、水素、ヒドロキシル、アシルアミノ、−N(R18)COR19、−N(R18)C(O)OR19、−N(R18)SO2(R19)、−CON(R18)(R19)、−OC(O)N(R18)(R19)、−SO2N(R18)(R19)、−N(R18)(R19)、−OC(O)OR18、−COOR18、−C(O)N(OH)(R18)、−OS(O)2OR18、−S(O)2OR18、−OP(O)(OR18)(OR19)、−N(R18)P(O)(OR18)(OR19)、および−P(O)(OR18)(OR19)からなる群から独立に選択され;
Pは1、2、3、4、5または6であり;
18はそれぞれ、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から独立に選択され;
19はそれぞれ、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から独立に選択されるか、またはR18はR19と一緒になって4〜8員の場合により置換された環を表し;
20、R21、R22、R24およびR25はそれぞれ独立にアルキルであり;
23は、アルキル、−CH2OH、−CHO、−COOR18または−CH(OR182であり;
26およびR27はそれぞれ、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から独立に選択され;
但し、R1がヒドロキシル、R2が水素、R6およびR7が一緒になって二重結合を形成し、R20がメチル、R21がメチル、R22がメチル、R23がメチル、R24がメチル、R25がメチル、R26が水素、R27が水素、Qが結合、およびWが酸素であるとき;R3とR4の両方が水素であることはなく、一緒になって置換されていないアゼチジンを示すこともない;そして
式1の立体中心の絶対立体化学は、RもしくはSまたはそれらの混合物であってよく、二重結合の立体化学は、EもしくはZまたはそれらの混合物であってよい。
【請求項2】
式1の化合物が
【化3】

からなる群から選択される請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
酸化防止剤をさらに含有する請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項4】
金属キレート剤をさらに含有する請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項5】
酸化防止剤および金属キレート剤をさらに含有する請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項6】
酸化防止剤が、アスコルビン酸塩、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオグリセリン、メルカプト酢酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、またはアルファ−トコフェロールである請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
金属キレート剤が、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)もしくはその塩、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)もしくはその塩、EGTAもしくはその塩、NTA(ニトリロ酢酸)もしくはその塩、ソルビトールもしくはその塩、酒石酸もしくはその塩、N−ヒドロキシイミノ二酢酸もしくはその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸、1−プロパンジアミン四酢酸もしくはその塩、3−プロパンジアミン四酢酸もしくはその塩、1−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸もしくはその塩、3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸もしくはその塩、グルコン酸ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸もしくはその塩、またはリン酸もしくはその塩である請求項5記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2008−543941(P2008−543941A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518314(P2008−518314)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/023987
【国際公開番号】WO2007/002093
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(506418758)インフィニティ・ディスカバリー・インコーポレイテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】INFINITY DISCOVERY, INC.
【Fターム(参考)】