アンチセンスIAP核酸塩基オリゴマーおよびその使用
【課題】細胞においてアポトーシスを誘導するために有用な方法および試薬を提供する。
【解決手段】IAPをコードするポリヌクレオチドの機能を調節することに使用するための核酸塩基オリゴマー、特にオリゴヌクレオチドを特徴とする。これらのオリゴマーは、産生されるIAPの量を低下させ、IAPを正常に発現する細胞にアポトーシスを起こす。これは、IAPをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする核酸塩基オリゴマーを供給することにより達成される。
【解決手段】IAPをコードするポリヌクレオチドの機能を調節することに使用するための核酸塩基オリゴマー、特にオリゴヌクレオチドを特徴とする。これらのオリゴマーは、産生されるIAPの量を低下させ、IAPを正常に発現する細胞にアポトーシスを起こす。これは、IAPをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする核酸塩基オリゴマーを供給することにより達成される。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
本発明は、アンチセンスIAP核酸塩基オリゴマーおよびアポトーシスを誘導するためにそれらを用いる方法に関する。
【0002】
細胞が死滅する一つの方法はアポトーシスまたはプログラム細胞死と呼ばれる。アポトーシスは、しばしば、健康な組織の発生および維持の正常な部分として起こる。その過程は非常に速やかに起こりうるので検出するのが難しい。
【0003】
アポトーシス経路は、胚発生、ウイルス病原、癌、自己免疫疾患、および神経変性疾患、加えて他の事象において重要な役割を果たしていることが今や知られている。アポトーシス応答の不全は、癌、エリテマトーデスおよび多発性硬化症のような自己免疫疾患の発生、ならびにヘルペスウイルス、ポックスウイルスおよびアデノウイルスに関連したものを含むウイルス感染に関係してきた。
【0004】
癌におけるアポトーシスの重要性は、近年、明らかになってきた。1970年代後半における成長促進発癌遺伝子の同定によって、長年の間、癌生物学における研究を支配する細胞増殖にほとんど全世界の焦点が向けられた。抗癌療法は、「正常な」細胞に対して急速に分裂する癌細胞を優先的に標的にするという長年にわたるドグマが保たれた。増殖がいくらか遅い腫瘍は容易に治療され、一方で多くの急速に分裂する腫瘍型は抗癌療法に極めて抵抗性であることから、この解釈は完全には満足できるものではない。癌分野における進歩により、異常増殖はプログラム細胞死の正常な経路を実行することの不全としてみなされるという、癌生物学における新しいパラダイムが、現在導かれている。正常細胞は、様々な成長因子を通して、それらの隣接細胞から連続的なフィードバックを受け、この関係から除かれた場合に、「自殺」をする。癌細胞は何らかの形でこれらの命令を回避し、不適切な増殖を継続する。放射線療法および多くの化学療法を含む多くの癌療法は、以前は、細胞の損傷を引き起こすことにより作用すると考えられていたが、現在、実際はアポトーシスを誘導することにより働くと考えられている。
【0005】
正常細胞型および癌細胞型の両方が、アポトーシスのトリガーに対する幅広い範囲の感受性を示すが、この抵抗性の決定子は、現在やっと調査段階にある。多くの正常細胞型は、致死下の量の放射線または細胞毒性化学薬品に応答して一時的増殖停止を起こすが、近くの癌細胞はアポトーシスを起こす。所定の用量におけるこの示差的な効果は、抗癌療法の成功を可能にする決定的な治療を見出す手段を提供する。それゆえに、癌細胞のアポトーシスへの抵抗性が癌治療失敗の主な範疇として持ち上がることは驚くべきことではない。
【0006】
哺乳動物細胞におけるBcl-2およびIAP(アポトーシスの阻害剤(inhibitor-of apoptosis))ファミリーを含む、アポトーシスを阻害するいくつかの強力な内因性タンパク質が同定された。後者のファミリーの特定のメンバーは、細胞死の実行に関与する終末のエフェクターカスパーゼ、すなわち、casp-3およびcasp-7、加えて、癌化学療法誘発性細胞死の仲介にとって重要な、鍵となるミトコンドリアのイニシエータのカスパーゼ、casp-9を直接的に阻害する。IAPは、唯一の知られている内因性カスパーゼ阻害剤であり、このように、アポトーシスの制御において中心的な役割を果たす。
【0007】
IAPは、いくつかの癌の発生に寄与することが仮定され、一つの特定のIAP(cIAP2/HIAP1)を含む仮定された原因となる染色体転座がMALTリンパ腫において同定された。急性骨髄性白血病の患者では、最近、XIAP上昇、予後不良、および短い生存において相関が実証された。XIAPは、NCIパネルの多くの腫瘍細胞系で高度に過剰発現した。
【0008】
改良された癌療法および、特に、アポトーシスを起こすように癌細胞を誘導し、そのような細胞において供給される抗アポトーシスのシグナルを無効にすることができる治療法の必要性が存在している。
【発明の概要】
【0009】
発明の概要
一般に、本発明は、細胞においてアポトーシスを誘導するために有用な方法および試薬を特徴とする。本発明の方法および試薬は、癌および他の増殖性疾患の治療に有用である。
【0010】
本発明は、IAPをコードするポリヌクレオチドの機能を調節することに使用するための核酸塩基オリゴマー、特にオリゴヌクレオチドを特徴とする。これらのオリゴマーは、産生されるIAPの量を低下させ、IAPを正常に発現する細胞にアポトーシスを起こす。これは、IAPをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする核酸塩基オリゴマーを供給することにより達成される。IAPポリヌクレオチド(例えば、RNA、DNA)との核酸塩基オリゴマーの特異的なハイブリダイゼーションは、そのIAPポリヌクレオチドの正常な機能に干渉し、産生されるIAPタンパク質の量を低下させる。標的に特異的にハイブリダイズする化合物による標的核酸の機能の調節は、一般に「アンチセンス」と呼ばれている。
【0011】
一つの局面において、本発明は、30核酸塩基長までの核酸塩基オリゴマーで、オリゴマーが、配列番号:1〜99、143、147、151、163〜260、287、289および300〜460より選択される配列の少なくとも8個の連続した核酸塩基を含むことを特徴とする。望ましくは、細胞に投与される場合、オリゴマーは、IAPの発現を阻害する。
【0012】
特定の態様において、核酸塩基オリゴマーは、配列番号:1〜99、143、147、151、163〜260、287、289および300〜460より選択される配列を含む。核酸塩基オリゴマーは、前記の配列番号の1つまたは複数からなる(または本質的に構成される)ことが望ましい。例えば、核酸塩基オリゴマーは、配列番号:97、98、99、143、147、151、287および289より選択される配列を含むXIAPアンチセンス核酸、配列番号:300〜389より選択される配列を含むHIAP1アンチセンス核酸、または配列番号:390〜460より選択される配列を含むHIAP2アンチセンス核酸でありうる。特に望ましい態様において、本発明は、両側に4個の2'-O-メチルRNA残基を隣接している11個のDNA残基を有する核酸塩基オリゴマーを特徴とし、以下の配列の1つからなる。
【0013】
本発明の核酸塩基オリゴマーは、少なくとも1つの修飾された結合(例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロジチオエート、またはホスホセレネート結合)、修飾された核酸塩基(例えば、5-メチルシトシン)、および/または修飾された糖部分(例えば、2'-O-メトキシエチル基または2'-O-メチル基)を含みうる。一つの態様において、オリゴマーは、キメラのオリゴマー(ホスホロチオエート結合により共に連結された少なくとも1個、2個、3個または4個の2'-O-メチルRNA残基を両側に隣接している、ホスホロチオエート結合またはホスホジエステル結合により共に連結されたDNA残基を含むオリゴヌクレオチド)である。
【0014】
もう一つの態様において、本発明は、細胞においてアポトーシスを促進させる方法を特徴とする。この方法は、IAP(例えば、XIAP、HIAP1またはHIAP2)の発現が阻害されるように、本発明の核酸塩基オリゴマーを細胞に投与する段階を含む。核酸塩基オリゴマーは、例えば、アンチセンス化合物、二本鎖RNA、リボザイムの構成要素でありうる。この投与段階は、単独で、または第二段階(化学療法剤、生物学的応答改変剤、および/または化学増感剤の投与)と組み合わせて行ってもよい。細胞は、インビトロまたはインビボでありうる。一つの態様において、細胞は、癌細胞(例えば、ヒト癌細胞)またはリンパ系もしくは骨髄系起源の細胞である。
【0015】
関連した局面において、本発明は、増殖性疾患(例えば、癌、リンパ組織増殖性疾患または脊髄異形性症候群)を有する動物を、本発明の核酸塩基オリゴマーの有効量を動物に投与することにより、治療するまたはそのような疾患の発生を防ぐための方法を特徴とする。
【0016】
癌は、例えば、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、脊髄異形性症候群、慢性リンパ性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝腫、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上皮細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫でありうる。癌を治療する場合、1つまたは複数の化学療法剤、生物学的応答改変剤および/または化学増感剤も投与することが望ましい場合がある。望ましくは、1つまたは複数のこれらの薬剤の投与は、核酸塩基オリゴマーの投与の5日以内である。典型的化学療法剤は、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、ビノレルビン、エトポシド、タキソールおよびシスプラチンである。結果として、所望の部位における有効量を生じる任意の投与経路が用いられうるが、特に望ましい経路は、静脈内および腫瘍内投与による。
【0017】
もう一つの態様において、本発明は、本発明の核酸塩基オリゴマーおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を特徴とする。望ましい場合には、薬学的組成物は、追加成分(例えば、コロイド分散系または化学療法剤)をさらに含みうる。
【0018】
本発明はまた、XIAP、HIAP1またはHIAP2のmRNAを切断することができる触媒性RNA分子を特徴とする。望ましい態様において、触媒性RNA分子は、それの結合アームにおいて、本発明の核酸塩基オリゴマー(例えば、表1、表2、表6、および表7のいずれか一つの核酸塩基配列)に対応する少なくとも8個の連続した核酸塩基を含む。RNA分子は、望ましくは、ハンマーヘッドモチーフ型であるが、ヘアピンの、δ型肝炎ウイルス、グループ1イントロン、VS RNAまたはリボヌクレアーゼP RNAのモチーフ型でもありうる。
【0019】
本発明はまた、哺乳動物細胞における発現のために配置された本発明の1つまたは複数の触媒性RNA分子をコードする核酸を含む発現ベクターを特徴とする。
【0020】
本発明はまた、癌またはリンパ組織増殖性疾患を有する動物を、上記の触媒性RNA分子の有効量またはそのような触媒性RNA分子をコードする発現ベクターを動物に投与することにより治療する方法を特徴とする。
【0021】
さらにもう一つの局面において、本発明は、21個〜29個の間の核酸塩基を有する二本鎖RNA分子であって、表1、表2、表6、および表7のいずれか1つの配列に対応する少なくとも8個の連続した核酸塩基が存在していることを特徴とする。
【0022】
関連した局面において、本発明はまた、50個〜70個の間の核酸塩基を有する二本鎖RNA分子であって、RNA分子が、表1、表2、表6、および表7のいずれか1つの配列に対応する最小8個の連続した核酸塩基を含む21個〜29個の間の核酸塩基の第一ドメイン;第一ドメインに相補的な第二ドメイン;ならびに第一および第二ドメインが二本鎖RNA分子を形成するように第一と第二ドメインとの間に位置している、二重鎖(duplex)形成するためのループドメインを有することを特徴とする。本発明はまた、そのような二本鎖RNAをコードする発現ベクター(例えば、アデノウイルスベクターまたはレトロウイルスベクター)を特徴とする。
【0023】
本発明はまた、癌またはリンパ組織増殖性疾患を有する動物を、上記の二本鎖RNA分子の有効量を動物に投与することにより治療する方法を特徴とする。
【0024】
「核酸塩基オリゴマー」とは、結合基により共に連結された少なくとも8個の核酸塩基の鎖を含む化合物を意味する。この定義には、修飾されているおよび修飾されていない双方の、天然および非天然のオリゴヌクレオチド、加えて、タンパク質核酸(Protein Nucleic Acid)、ロックド核酸(locked nucleic acid)およびアラビノ核酸(arabinonucleic acid)のようなオリゴヌクレオチド模倣体が含まれる。下記の「オリゴヌクレオチドおよび他の核酸塩基オリゴマー」と題する項にて本明細書で詳細に記載されているものを含む、多数の核酸塩基および結合基を本発明の核酸塩基オリゴマーに用いることができる。
【0025】
「タンパク質」または「ポリペプチド」もしくは「ポリペプチド断片」とは、翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)にかかわらず、2個より多いアミノ酸の任意の鎖を意味し、天然に存在するポリペプチドもしくはペプチドのすべてまたは部分を構成する、または天然に存在しないポリペプチドもしくはペプチドを構成する。
【0026】
「アポトーシス」とは、死んでいく細胞が、細胞膜泡形成、細胞体収縮、クロマチン凝縮およびDNAラダー形成を含む一連のよく特徴付けられた生化学的に顕著な特徴を示す細胞死の過程を意味する。アポトーシスにより死滅する細胞は、神経細胞(例えば、脳卒中、パーキンソン病およびアルツハイマー病のような神経変性疾患の経過中に)、心筋細胞(例えば、心筋梗塞後またはうっ血性心不全の経過にわたって)、および癌細胞(例えば、放射線または化学療法剤への曝露後)を含む。軽減されない環境的ストレス(例えば、低酸素ストレス)により、細胞は、可逆性であるアポトーシス経路の初期相(すなわち、アポトーシス経路の初期における細胞は救出されうる)に入る可能性がある。アポトーシスの後期相(拘束相)においては細胞は救出されず、結果として死滅するように拘束される。
【0027】
多様な種類の細胞においてアポトーシスを刺激するおよび阻害することがわかっているタンパク質および化合物は、当技術分野においてよく知られている。例えば、カスパーゼ(ICE)ファミリーの細胞内発現および活性化は、アポトーシスの細胞死を誘導するまたは刺激するが、IAPの発現またはBcl-2ファミリーのいくつかのメンバーは、アポトーシスの細胞死を阻害する。さらに、特定の細胞型において細胞死を阻害する生存因子がある。例えば、NGFのような神経栄養因子は、神経細胞のアポトーシスを阻害する。
【0028】
「IAP遺伝子」とは、少なくとも1つのBIRドメインを有するポリペプチドをコードし、かつ他の細胞内または細胞外送達方法により供給される場合、細胞または組織においてアポトーシスを調節する(阻害するまたは促進する)ことができる遺伝子を意味する(例えば、米国特許第5.919,912号を参照)。好ましい態様において、IAP遺伝子は、ヒトもしくはマウスのXIAP、HIAP1、またはHIAP2(それぞれは、米国特許第6,156,535号に記載されている)の少なくとも1つと約50%またはそれ以上のヌクレオチド配列同一性(例えば、少なくとも85%、90%または95%)をもつ遺伝子である。好ましくは、同一性が測定される配列の領域は、少なくとも1つのBIRドメインおよび環ジンクフィンガードメインをコードする領域である。哺乳動物のIAP遺伝子は、任意の哺乳動物供給源から単離されるヌクレオチド配列を含む。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0029】
「IAPタンパク質」または「IAPポリペプチド」とは、IAP遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはその断片を意味する。
【0030】
「IAP生物活性」とは、IAPポリペプチドによりインビボまたはインビトロで引き起こされることがわかっている任意の活性を意味する。
【0031】
「アポトーシスを促進すること」とは、与えられた細胞集団(例えば、癌細胞、リンパ球、線維芽細胞または任意の他の細胞)においてアポトーシスする細胞の数を増加させることを意味する。与えられたアッセイにおいてアポトーシス促進化合物により与えられるアポトーシス促進の程度は異なるが、当業者は、IAPにより別のやり方で制限されたアポトーシスを促進する核酸塩基オリゴマーを同定する、アポトーシスレベルの統計的に有意な変化を測定することができることは、認識されているものと思われる。好ましくは、「アポトーシスを促進すること」とは、アポトーシスを起こす細胞の数の増加が、本発明の核酸塩基オリゴマーを投与されないが、他の点では実質的に類似した様式で処理された細胞に対して、少なくとも10%、より好ましくは増加が25%または50%までにもなる、および最も好ましくは増加が少なくとも1倍であることを意味する。好ましくは、モニターされる試料は、通常には不十分なアポトーシスを起こす細胞の試料である(すなわち、癌細胞)。アポトーシスレベルの変化(すなわち、促進または低下)を検出するための方法は本明細書に記載されている。
【0032】
標的遺伝子(例えば、IAP)の「発現を阻害する」核酸塩基オリゴマーとは、標的mRNAまたはそのようなmRNAによりコードされるタンパク質の量を、未処理の対照に対して、少なくとも約5%、より望ましくは少なくとも約10%、25%、または50%にまで低下させるものを意味する。mRNAレベルおよびタンパク質レベルの両方を測定するための方法は、当技術分野において周知である;典型的方法は本明細書に記載されている。
【0033】
「ハイブリダイゼーション」とは、相補的な核酸塩基間のワトソン-クリック、フーグスティーン、または逆フーグスティーン水素結合でもよい水素結合を意味する。例えば、アデニンおよびチミンは、水素結合の形成を通じて対になる相補的な核酸塩基である。
【0034】
「増殖性疾患」とは、不適切に高レベルの細胞分裂、不適切に低レベルのアポトーシス、もしくは両方により引き起こされる、または結果として生じる疾患を意味する。例えば、癌は、増殖性疾患の例である。癌の例は、限定されないが、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病、非ホジキン病)、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、H鎖病、ならびに肉腫および癌腫のような固形腫瘍(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝腫、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上皮細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫)を含む。リンパ組織増殖性疾患もまた、増殖性疾患であるとみなされる。
【0035】
好ましくは、本発明の核酸塩基オリゴマーは、通常には十分なアポトーシスを起こさない細胞において存在する場合、アポトーシスを促進することおよび/またはIAP mRNAもしくはタンパク質レベルを減少させることができる。好ましくは、増加は、対照に対して、少なくとも10%、より好ましくは25%、および最も好ましくは1倍またはそれ以上である。好ましくは、本発明の核酸塩基オリゴマーは、少なくとも8個の連続した核酸塩基が、配列番号:1〜99、143、147、151、163〜260、287、289および300〜460より選択される配列由来である、約8個から30個までの核酸塩基を含む。本発明の核酸塩基オリゴマーはまた、例えば、IAPポリヌクレオチドに相補的である追加の20個、40個。60個、85個、120個またはそれ以上の連続した核酸塩基を含みうる。核酸塩基オリゴマー(または、その部分)は、修飾された骨格(backbone)を含みうる。ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートおよび他の修飾された骨格が当技術分野において知られている。核酸塩基オリゴマーはまた、1つまたは複数の非天然結合を含みうる。
【0036】
「化学療法剤」とは、癌細胞を殺すまたはそれらの増殖を遅らせるために用いられる薬剤を意味する。従って、細胞毒性および細胞増殖抑制性薬剤が化学療法剤であるとみなされる。
【0037】
「生物学的応答改変剤」とは、疾患と闘う免疫系の能力を刺激するまたは回復させる薬剤を意味する。すべてではないがいくつかの生物学的応答改変剤は、癌細胞の増殖を遅らせることができ、したがって化学療法剤であるともみなされる。生物学的応答改変剤の例は、インターフェロン(α、β、γ)、インターロイキン-2、リツキシマブ(rituximab)、およびトラスツズマブ(trastuzumab)である。
【0038】
「化学増感剤」とは、腫瘍細胞の感受性を化学療法の効果に対してより高くさせる薬剤を意味する。
【0039】
「有効量」とは、未処理の患者と比較して、疾患の症状を寛解させる、標的細胞の増殖を阻害する、腫瘍のサイズもしくは数を低下させる、IAPの発現を阻害する、または標的細胞のアポトーシスを促進するために必要とされる化合物(例えば、核酸塩基オリゴマー)の量を意味する。異常な増殖(すなわち、癌)の治療的処理として本発明を実施するために用いられる活性化合物の有効量は、投与方式、対象の年齢、体重および一般的な健康状態に依存して変動する。最終的に、病院所属の医師または獣医師が適切な量および投与計画を決定するものである。そのような量は、「有効」量と呼ばれる。
【0040】
「リンパ組織増殖性疾患」とは、リンパ系の細胞(例えば、T細胞およびB細胞)の異常な増殖がある疾患を意味し、多発性硬化症、クローン病、エリテマトーデス、慢性関節リウマチおよび変形性関節症を含む。
【0041】
「リボザイム」とは、標的RNA分子に対する部位特異性および切断能力を有する、酵素活性をもつRNAを意味する。リボザイムは、ポリペプチドの発現を減少させるために用いられうる。ポリペプチド発現を減少させるためにリボザイムを用いる方法は、例えば、Turnerら(Adv. Exp. Med. Biol. 465:303-318, 2000)およびNorrisら(Adv. Exp. Med. Biol. 465:293-301, 2000)により記載されている。
【0042】
「レポーター遺伝子」とは、発現がアッセイされうるポリペプチドをコードする遺伝子を意味する;そのようなポリペプチドは、限定されないが、グルクロニダーゼ(GUS)、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールトランスアセチラーゼ(CAT)およびβガラクトシダーゼを含む。
【0043】
「プロモーター」とは、転写を指示するのに十分なポリヌクレオチドを意味する。
【0044】
「動作可能に連結された」とは、適切な分子(例えば、転写活性化タンパク質)が第二ポリヌクレオチドに結合している場合に、第一ポリヌクレオチドが、第一ポリヌクレオチドの転写を指示する第二ポリヌクレオチドに隣接して位置していることを意味する。
【0045】
本発明の他の特徴および利点は、その好ましい態様の以下の説明、および特許請求の範囲から明らかであると思われる。
【0046】
発明の詳細な説明
本発明は、IAPの発現を阻害する核酸塩基オリゴマー、および細胞においてアポトーシスを誘導するためにそれらを用いるための方法を提供する。本発明の核酸塩基オリゴマーはまた、薬学的組成物を形成するために用いられうる。本発明はまた、細胞毒性薬剤、細胞増殖抑制性薬剤、または生物学的応答改変剤(例えば、アドリアマイシン、ビノレルビン、エトポシド、タキソール、シスプラチン、インターフェロン、インターロイキン-2、モノクローナル抗体)のような化学療法剤と組み合わせて本発明のオリゴヌクレオチドを投与することにより細胞においてアポトーシスを促進するための方法を特徴とする。例えば、化学療法剤がありうる。望ましい場合には、化学増感剤(すなわち、増殖している細胞の感受性を化学療法に対してより高くさせる薬剤)も投与されうる。前記の薬剤の任意の組み合わせもまた薬学的組成物を形成するために用いられうる。これらの薬学的組成物は、増殖性疾患、例えば、癌もしくはリンパ組織増殖性疾患、または増殖性疾患の症状を治療するために用いられうる。本発明の核酸塩基オリゴマーはまた、癌または他の増殖性疾患の治療のために放射線療法と組み合わせて用いることができる。
【0047】
癌細胞におけるアポトーシスの活性化は、通常の化学療法または放射線療法に対する患者の応答を改善するための新規、かつ有用である可能性のあるアプローチを提供する。XIAPは、カスパーゼを直接的に阻害する、およびアポトーシスを抑制する能力に関して、IAP遺伝子ファミリーの最も強力なメンバーである。本発明者らは、インビトロおよびインビボにおいて、増殖したヒト非小細胞肺癌(NIH-H460)に対するアンチセンス(AS)オリゴヌクレオチドによるXIAP下方制御の効果を調べた。培養されたH460ヒト肺癌細胞において、オリゴヌクレオチドG4 ASは、最も強力な化合物として同定され、リアルタイムRT-PCR法およびウエスタンブロット法により測定される場合、XIAP mRNAを55%、およびタンパク質レベルを60%まで効果的に下方制御し、1.2μM濃度において60%の細胞死を誘導した。対照的に、スクランブル(scrambled)対照G4オリゴヌクレオチドは、ほとんどXIAPの減損を引き起こさず、10%未満の細胞死を引き起こした。G4 ASによる処理は、プロカスパーゼ-3およびPARPタンパク質の分解として明らかにされるが、1.2μM濃度で有意な核DNA凝縮および断片化を伴ってアポトーシスを誘導した。そのうえ、XIAP ASオリゴヌクレオチドは、H460細胞をドキソルビシン、タキソール、ビノレルビンおよびエトポシドの細胞毒性効果に対して増感させた。動物モデルにおいて、本発明者らは、15mg/kgでのG4 ASが、全身性腹腔内投与によりSCID/RAG2-免疫不全マウスの異種移植モデルにおけるヒトH460腫瘍へ有意な配列特異的増殖阻害効果を生じたことを実証している。全身性AS ODN投与は、腫瘍異種移植片においてXIAPタンパク質の85%下方制御と関連づけられた。15mg/kg G4 ASと5mg/kgビノレルビンの組み合わせは、いずれかの薬剤単独より強く、腫瘍増殖を有意に阻害した。これらの研究は、XIAPの下方制御が、肺癌細胞における強力な死シグナルであり、インビトロでのアポトーシスを誘導する、およびインビボで腫瘍増殖を阻害することができることを示している。これらの研究は、IAPが、ヒト非小細胞肺癌および他の固形腫瘍における癌治療に適した標的であるという主張を裏付ける。
【0048】
治療法
治療法は、癌療法が行われる場所:自宅、医院、診療所、病院の外来患者部門または病院のどこであっても提供されうる。治療は、一般に、医師が治療法の効果をきっちりと観察し、かつ必要とされる任意の調整をすることができるように、病院で始まる。治療法の期間は、治療される癌の種類、患者の年齢および状態、患者の疾患の段階および型、ならびに患者の身体が治療に対してどのように応答するかに依存する。薬剤投与は、異なる間隔(例えば、毎日、毎週または毎月)で行われうる。治療法は、患者の身体が健康な新しい細胞を構築し、かつ体力を回復する機会をもつように、休止期間を含む断続的な周期で与えられてもよい。
【0049】
癌の型およびそれの発生の段階に依存して、治療法は、癌の蔓延を遅らせる、癌の増殖を遅らせる、最初の腫瘍から身体の他の部分へ広がってしまった可能性がある癌細胞を殺すもしくは抑止する、癌により引き起こされた症状を軽減する、または第一に癌を防ぐために用いられうる。
【0050】
本明細書に用いられる場合、「癌」または「新生物」または「新生物細胞」という用語は、異常な様式で増殖する細胞の収集物を意味する。癌増殖は、抑制されておらず、進行性であり、正常細胞の増殖が誘発されない、または正常細胞の停止が引き起こされる条件下において生じる。
【0051】
本発明の核酸塩基オリゴマーまたはIAP抗アポトーシス経路の他の負の制御因子は、単位剤形の薬学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤内で投与されうる。通常の薬務は、過剰な細胞増殖により引き起こされる疾患を患う患者への化合物の投与に適した製剤または組成物を供給するために使用されうる。投与は、患者が症候を示す前に始めてもよい。投与では、任意の適切な経路を用いることができ、例えば、投与は、非経口、静脈内、動脈内、皮下、腫瘍内、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼、脳室内、肝臓内、嚢内、髄腔内、大槽内、腹腔内、鼻腔内、エアゾール、坐剤、または経口投与でありうる。例えば、治療的製剤は、脂質溶液または懸濁液の形態をとりうる;経口投与については、製剤は錠剤またはカプセルの形態をとりうる;および鼻腔内製剤については、粉末、点鼻薬、またはエアゾールの形態をとりうる。
【0052】
製剤を作製するための当技術分野においてよく知られた方法は、例えば、「Remington: The Science and Practice of Pharmacy」、A.R. Gennaro編、Lippincourt Williams & Wilkins、フィラデルフィア、PA、2000に見出される。非経口投与のための製剤は、例えば、賦形剤、滅菌水もしくは食塩水、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレングリコール、植物起源の油、または水素化ナフタレンを含みうる。生体適合性、生分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリド共重合体、またはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体は、化合物の放出を制御するために用いることができる。IAP調節性化合物についての他の有用である可能性のある非経口送達系は、エチレン-酢酸ビニル共重合体粒子、浸透性ポンプ、移植可能注入系およびリポソームを含む。吸入法のための製剤は、賦形剤、例えば、ラクトースを含みうる、または、例えば、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココール酸塩およびデオキシコール酸塩を含む水溶液でありうる、または点鼻薬の形態をとった、もしくはゲルとしての投与のための油性溶液でありうる。
【0053】
製剤は、疾患または状態についての治療法を提供するために治療的有効量(例えば、病理学的状態を防ぐ、除去するまたは低減させる量)においてヒト患者に投与されうる。本発明の核酸塩基オリゴマーの好ましい投与量は、疾患の型および程度、特定の患者の全般的な健康状態、化合物賦形剤の製剤、ならびにその投与経路のような変化するものに依存する可能性が高い。
【0054】
上記のように、望ましい場合には、本発明の核酸塩基オリゴマーでの処理は、増殖性疾患の処理についての治療法(例えば、放射線療法、外科術または化学療法)と組み合わせることができる。
【0055】
上記の適用の方法のいずれについても、本発明の核酸塩基オリゴマーは、望ましくは、静脈内に投与される、または必要とされるアポトーシス事象の部位へ適用される(例えば、注射により)。
【0056】
オリゴヌクレオチドおよび他の核酸塩基オリゴマー
少なくとも2つの型のオリゴヌクレオチドが、リボヌクレアーゼHによるRNAの切断を引き起こす:ホスホジエステル(PO)またはホスホロチオエート(PS)結合をもつポリデオキシヌクレオチド。2'-OMe-RNA配列はRNA標的へ高親和性を示すが、これらの配列はリボヌクレアーゼHについての基質ではない。望ましいオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ耐性のためにホスホロチオエートへと修飾されたいくつかまたはすべてのインターヌクレオチド結合をもつオリゴデオキシヌクレオチドギャップを含む2'-修飾オリゴヌクレオチドに基づくものである。メチルホスホネート修飾の存在は、それの標的RNAに対するオリゴヌクレオチドの親和性を増加させ、それに従って、IC50を低下させる。この修飾はまた、修飾オリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ耐性を増加させる。本発明の方法および試薬が、共有結合的に閉じられた多重アンチセンス(CMAS)オリゴヌクレオチド(Moonら、Biochem J. 346:295-303, 2000;国際公開公報第00/61595号)、リボン型アンチセンス(RiAS)オリゴヌクレオチド(Moonら、J. Biol. Chem. 275:4647-4653, 2000;国際公開公報第00/61595号)、および大環状アンチセンスオリゴヌクレオチド(米国特許出願第2002/0168631号A1)を含む、開発されうる任意の技術と共に用いることができることは理解される。
【0057】
当技術分野において知られているように、ヌクレオシドは、核酸塩基-糖の組み合わせである。ヌクレオシドの塩基部分は、通常、複素環式塩基である。そのような複素環式塩基の2つの最も広く知られた種類は、プリンおよびピリミジンである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合的に連結されたリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むそれらのヌクレオシドについて、リン酸基は、糖の2'、3'、または5'ヒドロキシ部分のいずれかに連結されうる。オリゴヌクレオチドを形成するにおいて、リン酸基は、直鎖状重合化合物を形成するために、お互いに隣接したヌクレオシドを共有結合的に連結する。次には、この直鎖状重合構造の各末端は、環状構造を形成するためにさらに連結されうる;開いた直鎖状構造が一般的に好ましい。オリゴヌクレオチド構造内において、リン酸基が、一般に、オリゴヌクレオチドの骨格を形成するとして言及される。RNAおよびDNAの通常の結合または骨格は、3'から5'へのホスホジエステル結合である。
【0058】
本発明において有用な好ましい核酸塩基オリゴマーの特定の例は、修飾された骨格または非天然のインターヌクレオシド結合を含むオリゴヌクレオチドを含む。本明細書で定義されているように、修飾された骨格を有する核酸塩基オリゴマーは、骨格にリン原子を保持しているもの、および骨格にリン原子をもたないものを含む。本明細書の目的のために、インターヌクレオシド骨格にリン原子をもたない修飾されたオリゴヌクレオチドも核酸塩基オリゴマーであるとみなされる。
【0059】
修飾されたオリゴヌクレオチド骨格を有する核酸塩基オリゴマーは、例えば、ホスホロチオエート、キラルのホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキル-ホスホトリエステル、3'-アルキレンホスホネートおよびキラルのホスホネートを含むメチルおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィン酸塩、3'-アミノホスホルアミデートおよびアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびに通常の3'-5'結合をもつボラノホスフェート、2'-5'結合されたこれらの類似体、およびヌクレオシド単位の隣接した対が3'-5'から5'-3'へ、または2'-5'から5'-2'へ連結されている、反転した極性をもつものを含む。様々な塩、混合された塩および遊離酸型も含まれる。上のリン含有結合の調製を開示する代表的な米国特許は、限定されるものではないが、米国特許第3,687,808号;第4,469,863号;第4,476,301号;第5,023,243号;第5,177,196号;第5,188,897号;第5,264,423号;第5,276,019号;第5,278,302号;第5,286,717号;第5,321,131号;第5,399,676号;第5,405,939号;第5,453,496号;第5,455,233号;第5,466,677号;第5,476,925号;第5,519,126号;第5,536,821号;第5,541,306号;第5,550,111号;第5,563,253号;第5,571,799号;第5,587,361号;および第5,625,050号を含み、それぞれは参照として本明細書に組み入れられている。
【0060】
その中にリン原子を含まない修飾されたオリゴヌクレオチド骨格を有する核酸塩基オリゴマーは、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルのインターヌクレオシド結合、混合された異種原子およびアルキルもしくはシクロアルキルのインターヌクレオシド結合、または1つもしくは複数の短鎖異種原子もしくは複素環式のインターヌクレオシド結合により形成される骨格を有する。これらは、モルホリノ結合(ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成される);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびに混合されたN、O、SおよびCH2構成要素部分をもったその他を有するものを含む。上のオリゴヌクレオチドの調製を開示する代表的な米国特許は、限定されるものではないが、米国特許第5,034,506号;第5,166,315号;第5,185,444号;第5,214,134号;第5,216,141号;第5,235,033号;第5,264,562号;第5,264,564号;第5,405,938号;第5,434,257号;第5,466,677号;第5,470,967号;第5,489,677号;第5,541,307号;第5,561,225号;第5,596,086号;第5,602,240号;第5,610,289号;第5,602,240号;第5,608,046号;第5,610,289号;第5,618,704号;第5,623,070号;第5,663,312号;第5,633,360号;第5,677,437号;および第5,677,439号を含み、それぞれは参照として本明細書に組み入れられている。
【0061】
他の核酸塩基オリゴマーにおいて、糖およびインターヌクレオシド結合双方、すなわち骨格は、新規な群で置換される。核酸塩基単位は、IAPとのハイブリダイゼーションのために維持される。一つのそのような核酸塩基オリゴマーは、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖-骨格は、アミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格で置換されている。核酸塩基は、保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子へ直接的にまたは間接的に結合されている。これらの核酸塩基オリゴマーを作製かつ使用するための方法は、例えば、「Peptide Nucleic Acids: Protocols and Applications」、P.E. Nielsen編、Horizon Press、ノーフォーク、英国、1999に記載されている。PNAの調製を開示する代表的な米国特許は、限定されるものではないが、米国特許第5,539,082号;第5,714,331号;および第5,719,262号を含み、それぞれは参照として本明細書に組み入れられている。さらなるPNA化合物の開示は、Nielsenら、Science、1991、254、1497-1500に見出すことができる。
【0062】
本発明の特定の態様において、核酸塩基オリゴマーは、ホスホロチオエート骨格および異種原子骨格をもつヌクレオシド、および特に、-CH2-NH-O-CH2-、-CH2-N(CH3)-O-CH2-(メチレン(メチリミノ)またはMMI骨格として知られている)、-CH2-O-N(CH3)-CH2-、-CH2-N(CH3)-N(CH3)-CH2-、および-O-N(CH3)-CH2-CH2-を有する。他の態様において、オリゴヌクレオチドは、米国特許第5,034,506号に記載されるモルホリノ骨格構造を有する。
【0063】
核酸塩基オリゴマーはまた、1つまたは複数の置換糖部分を含みうる。核酸塩基オリゴマーは、2'位において以下のうちの1つを含む:OH;F;O-、S-もしくはN-アルキル;O-、S-、もしくはN-アルケニル;O-、S-、もしくはN-アルキニル;またはO-アルキル-O-アルキル、そのアルキル、アルケニルおよびアルキニルは、置換もしくは非置換のC1〜C10アルキルまたはC2〜C10アルケニルおよびアルキニルでありうる。特に好ましいのは、O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON[(CH2)nCH3]2であり、nおよびmは、1から約10までである。他の好ましい核酸塩基オリゴマーは、2'位において以下のうちの1つを含む:C1〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリルまたはO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断群、レポーター群、インターカレーター、核酸塩基オリゴマーの薬動力学的性質を改良するための群または核酸塩基オリゴマーの薬力薬理学的性質を改良するための群、および類似した性質をもつ他の置換分を含む。好ましい修飾は、2'-O-メチルおよび2'-メトキシエトキシ(2'-O-CH2CH2OCH3、これは2'-O-(2-メトキシエチル)または2'-MOEとしても知られている)である。もう一つの望ましい修飾は、2'-DMAOEとしても知られている、2'-ジメチルアミノオキシエトキシ(すなわち、O(CH2)2ON(CH3)2)である。他の修飾は、2'-アミノプロポキシ(2'-OCH2CH2CH2NH2)および2'-フルオロ(2'-F)を含む。同様の修飾はまた、オリゴヌクレオチドまたは他の核酸塩基オリゴマー上の他の位置、特に、3'末端ヌクレオチド上または2'-5'結合オリゴヌクレオチドにおける糖の3'位、および5'末端ヌクレオチドの5'位、においてなされうる。核酸塩基オリゴマーはまた、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分のような糖模倣体を有しうる。そのような修飾された糖構造の調製を開示する代表的な米国特許は、限定されるものではないが、米国特許第4,981,957号;第5,118,800号;第5,319,080号;第5,359,044号;第5,393,878号;第5,446,137号;第5,466,786号;第5,514,785号;第5,519,134号;第5,567,811号;第5,576,427号;第5,591,722号;第5,597,909号;第5,610,300号;第5,627,053号;第5,639,873号;第5,646,265号;第5,658,873号;第5,670,633号;および第5,700,920号を含み、それぞれは完全に参照として本明細書に組み入れられている。
【0064】
核酸塩基オリゴマーはまた、核酸塩基修飾または置換を含みうる。本明細書に用いられる場合、「修飾されていない」または「天然の」核酸塩基は、プリン塩基アデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を含む。修飾された核酸塩基は、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ハイポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体;アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体;2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン;5-ハロウラシルおよび5-ハロシトシン;5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシン;6-アゾウラシル、6-アゾシトシンおよび6-アゾチミン;5-ウラシル(プソイドウラシル);4-チオウラシル;8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシおよび他の8-置換ウラシルおよびグアニン;5-ハロ(例えば、5-ブロモ)、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシン;7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン;8-アザグアニンおよび8-アザアデニン;7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン;ならびに3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンのような、他の合成および天然の核酸塩基を含む。さらなる核酸塩基は、米国特許第3,687,808号に開示されているもの、「The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering」、858〜859ページ、Kroschwitz, J.I.編、John Wiley & Sons、1990に開示されているもの、Englischら、「Angewandte Chemie」、International Edition、1991、30、613により開示されているもの、ならびにSanghvi, Y.S.、15章、「Antisense Research and Applications」、289〜302ページ、Crooke, S.T.およびLebleu, B.編、CRC Press、1993により開示されているものに含まれる。これらの核酸塩基の若干数は、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの結合親和性を増加させるために特に有用である。これらには、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンを含む、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、ならびにN-2、N-6およびO-6置換プリンを含む。5-メチルシトシン置換は、0.6〜1.2℃だけ核酸二重鎖安定性を増加させることが示され(Sanghvi, Y.S.、Crooke, S.T.およびLebleu, B.編、「Antisense Research and Applications」、CRC Press、Boca Raton、1993、pp. 276-278)、望ましい塩基置換であり、特に、2'-O-メトキシエチルまたは2'-O-メチル糖修飾と組み合わされた場合、よりいっそう望ましい。若干数の上で示されている修飾された核酸塩基および他の修飾された核酸塩基の調製を開示する代表的な米国特許は、米国特許第4,845,205号;第5,130,302号;第5,134,066号;第5,175,273号;第5,367,066号;第5,432,272号;第5,457,187号;第5,459,255号;第5,484,908号;第5,502,177号;第5,525,711号;第5,552,540号;第5,587,469号;第5,594,121号;第5,596,091号;第5,614,617号;第5,681,941号;および第5,750,692号を含み、それぞれは参照として本明細書に組み入れられている。
【0065】
本発明の核酸塩基オリゴマーのもう一つの修飾は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞性分布(cellular distribution)、または細胞取り込みを増強する、1つもしくは複数の部分または結合体を核酸塩基オリゴマーへ化学的に連結することを含む。そのような部分は、限定されるものではないが、コレステロール部分(Letsingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:6553-6556, 1989)、コール酸(Manoharanら、Bioorg. Med. Chem. Let, 4:1053-1060, 1994)、チオエーテル、例えばヘキシル-S-トリチルチオール(Manoharanら、Ann. N.Y. Acad. Sci., 660:306-309, 1992; Manoharanら、Bioorg. Med. Chem. Let., 3:2765-2770, 1993)、チオコレステロール(Oberhauserら、Nucl. Acids Res., 20:533-538, 1992)、脂肪鎖、例えばドデカンジオールもしくはウンデシル残基(Saison-Behmoarasら、EMBO J., 10:1111-1118, 1991; Kabanovら、FEBS Lett., 259:327-330, 1990; Svinarchukら、Biochimie, 75:49-54, 1993)、リン脂質、例えばジ-ヘキサデシル-ラック-グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-ラック-グリセロ-3-H-ホスホネート(Manoharanら、Tetrahedron Lett., 36:3651-3654, 1995; Sheaら、Nucl. Acids Res., 18:3777-3783, 1990)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖(Manoharanら、Nucleosides & Nucleotides, 14:969-973, 1995)、またはアダマンタン酢酸(Manoharanら、Tetrahedron Lett., 36:3651-3654, 1995)、パルミチル部分(Mishraら、Biochim. Biophys. Acta, 1264:229-237, 1995)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分(Crookeら、J. Pharmacol. Exp. Ther., 277:923-937, 1996)を含む。そのような核酸塩基オリゴマー結合体の調製を開示する代表的な米国特許は、米国特許第4,587,044号;第4,605,735号;第4,667,025号;第4,762,779号;第4,789,737号;第4,824,941号;第4,828,979号;第4,835,263号;第4,876,335号;第4,904,582号;第4,948,882号;第4,958,013号;第5,082,830号;第5,109,124号;第5,112,963号;第5,118,802号;第5,138,045号;第5,214,136号;第5,218,105号;第5,245,022号;第5,254,469号;第5,258,506号;第5,262,536号;第5,272,250号;第5,292,873号;第5,317,098号;第5,371,241号;第5,391,723号;第5,414,077号;第5,416,203号;第5,451,463号;第5,486,603号;第5,510,475号;第5,512,439号;第5,512,667号;第5,514,785号;第5,525,465号;第5,541,313号;第5,545,730号;第5,552,538号;第5,565,552号;第5,567,810号;第5,574,142号;第5,578,717号;第5,578,718号;第5,580,731号;第5,585,481号;第5,587,371号;第5,591,584号;第5,595,726号;第5,597,696号;第5,599,923号;第5,599,928号;第5,608,046号;および第5,688,941号を含み、それぞれは参照として本明細書に組み入れられている。
【0066】
本発明はまた、キメラの化合物である核酸塩基オリゴマーを含む。「キメラの」核酸塩基オリゴマーは、それぞれが少なくとも1つの単量体単位、すなわち、オリゴヌクレオチドの場合ヌクレオチド、から作製される、2つまたはそれ以上の化学的に別個の領域を含む核酸塩基オリゴマー、特にオリゴヌクレオチドである。これらの核酸塩基オリゴマーは、典型的には、核酸塩基オリゴマーに、ヌクレアーゼ分解に対して増大した耐性、増加した細胞取り込み、および/または標的核酸に対して増大した結合親和性を与えるように核酸塩基オリゴマーが修飾されている少なくとも1つの領域を含む。核酸塩基オリゴマーの付加的な領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断することができる酵素についての基質としての役割を果たしうる。例として、リボヌクレアーゼHは、RNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する細胞のエンドヌクレアーゼである。それゆえに、リボヌクレアーゼHの活性化は、結果として、RNA標的の切断を生じ、それにより、遺伝子発現の核酸塩基オリゴマー阻害の効率を大いに増強する。従って、同じ標的領域にハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシオリゴヌクレオチドに比較して、キメラの核酸塩基オリゴマーが用いられる場合は、より短い核酸塩基オリゴマーによって匹敵する結果が得られることが多い。
【0067】
本発明のキメラの核酸塩基オリゴマーは、上記の2つまたはそれ以上の核酸塩基オリゴマーの複合性構造として形成されうる。オリゴヌクレオチドの場合のそのような核酸塩基オリゴマーはまた、当技術分野においてハイブリッドまたはギャップマーと呼ばれていた。そのようなハイブリッド構造の調製を開示する代表的な米国特許は、米国特許第5,013,830号;第5,149,797号;第5,220,007号;第5,256,775号;第5,366,878号;第5,403,711号;第5,491,133号;第5,565,350号;第5,623,065号;第5,652,355号;第5,652,356号;および第5,700,922号を含み、それぞれは完全に参照として本明細書に組み入れられている。
【0068】
本発明により用いられる核酸塩基オリゴマーは、固相合成の周知の技術を通して便利かつ日常的に作製されうる。そのような合成のための装置は、例えば、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)(フォスターシティー、カルフォルニア)を含むいくつかの業者により販売されている。当技術分野において知られたそのような合成のための任意の他の手段は、追加的にまたは代替的に用いられうる。ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体のようなオリゴヌクレオチドを調製するために類似した技術を用いることは、よく知られている。
【0069】
本発明の核酸塩基オリゴマーはまた、取り込み、分布および/または吸収において補助するために、例えば、リポソーム、受容体にターゲットされる分子、経口の、直腸の、局所のまたは他の製剤のような、混合された、カプセル化された、結合されたもしくは別のやり方で他の分子と関連した、分子構造または化合物の混合物でありうる。そのような取り込み、分布および/または吸収を補助する製剤の調製を開示する代表的な米国特許は、米国特許第5,108,921号;第5,354,844号;第5,416,016号;第5,459,127号;第5,521,291号;第5,543,158号;第5,547,932号;第5,583,020号;第5,591,721号;第4,426,330号;第4,534,899号;第5,013,556号;第5,108,921号;第5,213,804号;第5,227,170号;第5,264,221号;第5,356,633号;第5,395,619号;第5,416,016号;第5,417,978号;第5,462,854号;第5,469,854号;第5,512,295号;第5,527,528号;第5,534,259号;第5,543,152号;第5,556,948号;第5,580,575号;および第5,595,756号を含み、それぞれは参照として本明細書に組み入れられている。
【0070】
本発明の核酸塩基オリゴマーは、任意の薬学的に許容される塩、エステル、もしくはそのようなエステルの塩、または動物への投与において、生物活性のある代謝物もしくはその残留物を(直接的にまたは間接的に)供給することができる任意の他の化合物を含む。従って、例えば、開示はまた、本発明の化合物のプロドラッグおよび薬学的に許容される塩、そのようなプロドラッグの薬学的に許容される塩、ならびに他の生物学的同等物へと引用される。
【0071】
「プロドラッグ」という用語は、内因性酵素または他の化学物質および/もしくは状態の作用により、身体またはその細胞内において活性型(すなわち、ドラッグ)へ変換される不活性型で調製される治療剤を示す。特に、本発明のオリゴヌクレオチドのプロドラッグバージョンは、国際公開公報第93/24510号または第94/26764号において開示された方法によりSATE[(S-アセチル-2-チオエチル)ホスフェート]誘導体として調製されうる。
【0072】
「薬学的に許容される塩」という用語は、親化合物の望ましい生物活性を保持し、かつそれに望ましくない毒物学的影響を与えない塩を指す。薬学的に許容される塩基付加塩は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属もしくは有機アミンのような金属またはアミンで形成される。陽イオンとして用いられる金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどである。適するアミンの例は、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミンおよびプロカインである(例えば、Bergeら、J. Pharma Sci.、66:1-19、1977を参照)。酸性化合物の塩基付加塩は、通常の方法において塩を生成するために遊離酸型を十分な量の所望の塩基に接触させることにより調製される。遊離酸型は、通常の方法において、塩を酸に接触させ、遊離酸を単離することにより再生成されうる。遊離酸型は、それらのそれぞれの塩型と、極性溶媒における溶解度のような特定の物理的性質においていくらか異なるが、他の点では、塩は、本発明の目的にとって、それらのそれぞれの遊離酸と等価である。本明細書に用いられる場合、「薬学的付加塩」は、本発明の組成物の成分の1つの酸型の薬学的に許容される塩を含む。これらは、アミンの有機酸塩または無機酸塩を含む。好ましい酸塩は、塩酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩およびリン酸塩である。他の適する薬学的に許容される塩は、当業者によく知られており、例として、例えば、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸またはリン酸のような無機酸;有機のカルボン酸、スルホン酸、イオウの酸もしくはリンの酸、またはN-置換型スルファミン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、エンボン酸、ニコチン酸もしくはイソニコチン酸;および、天然においてタンパク質の合成に関与する20個のαアミノ酸のようなアミノ酸、例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸、ならびに、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、2-ホスホグリセレートもしくは3-ホスホグリセレート、グルコース-6-リン酸、N-シクロヘキシルスルファミン酸(シクラメートの形成と共に)、またはアスコルビン酸のような他の有機化合物のような、様々な無機酸および有機酸の塩基性塩を含む。化合物の薬学的に許容される塩はまた、薬学的に許容される陽イオンと共に調製されうる。適する薬学的に許容される陽イオンは、当業者によく知られており、アルカリ陽イオン、アルカリ土類陽イオン、アンモニウム陽イオンおよび第四アンモニウム陽イオンを含む。炭酸塩または炭酸水素塩もまた可能である。
【0073】
オリゴヌクレオチドおよび他の核酸塩基オリゴマーについて、適する薬学的に許容される塩は、(i)ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウムのような陽イオン、スペルミンおよびスペルミジンなどのようなポリアミンで形成される塩;(ii)無機酸、例えば、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸などで形成される酸付加塩;(iii)例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸などのような有機酸で形成される塩;ならびに(iv)塩素、臭素、およびヨウ素のような元素の陰イオンから形成される塩を含む。
【0074】
本発明はまた、本発明の核酸塩基オリゴマーを含む薬学的組成物および製剤を含む。本発明の薬学的組成物は、局所的治療が望ましいかまたは全身的治療が望ましいかに応じて、および治療されるべき領域に応じて、多数の方法により投与されうる。投与は、局所(眼、ならびに膣送達および直腸送達を含む粘膜を含む)、肺、例えば、粉末もしくはエアゾールの吸入法もしくは通気法による(噴霧器の使用を含む;気管内、鼻腔内、表皮および経皮的)、経口または非経口でありうる。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下、腹膜内もしくは筋肉内の注射もしくは注入;または頭蓋内、例えば髄腔内もしくは脳室内の投与を含む。
【0075】
ロックド(locked)核酸
ロックド核酸(LNA)は、本発明に用いることができる核酸塩基オリゴマーである。LNAは、ヌクレオチド類似体のリボフラノース環の可撓性を制限する2'O、4'-Cメチレン架橋を含み、それを堅い二環式N型高次構造へと固定する。LNAは、特定のエキソヌクレアーゼおよびエンドヌクレアーゼに対する向上した耐性を示し、リボヌクレアーゼHを活性化し、ほとんどの任意の核酸塩基オリゴマーへ取り込まれうる。さらに、LNA含有核酸塩基オリゴマーは、標準的ホスホルアミダイト合成プロトコールを用いて調製されうる。LNAに関する追加の詳細は、国際公開公報第99/14226号および米国特許出願第2002/0094555号A1に見出すことができ、それぞれは参照として本明細書に組み入れられている。
【0076】
アラビノ核酸
アラビノ核酸(ANA)もまた、本発明の方法および試薬に用いることができる。ANAは、天然のD-2'-デオキシリボース糖の代わりにD-アラビノース糖に基づく核酸塩基オリゴマーである。非誘導体化ANA類似体は、ホスホロチオエートがもつような類似したRNAに対する結合親和性をもつ。アラビノース糖がフッ素で誘導体化される場合(2'F-ANA)、結合親和性における増強が結果として生じ、その結果生じたANA/RNAおよびF-ANA/RNA二重鎖において、結合したRNAの選択的加水分解が効率的に起きる。これらの類似体は、単純なL糖でのそれらの末端における誘導体化によって細胞の培地において安定化されうる。治療法におけるANAの使用は、例えば、Damhaら、Nucleosides Nucleotides & Nucleic Acids 20:429-440、2001に考察されている。
【0077】
核酸塩基オリゴマーの送達
本発明者らは、裸のオリゴヌクレオチドが腫瘍細胞に入り、IAP発現を阻害することができることを本明細書で実証している。それでもなお、オリゴヌクレオチドまたは他の核酸塩基オリゴマーの細胞への送達において助けとなる製剤を利用することが望ましい場合がある(例えば、米国特許第5,656,611号、第5,753,613号、第5,785,992号、第6,120,798号、第6,221,959号、第6,346,613号および第6,353,055号を参照、それぞれは参照として本明細書に組み入れられている)。
【0078】
リボザイム
本発明のアンチセンスIAP配列を含む触媒性RNA分子またはリボザイムは、インビボにおいてIAPポリヌクレオチドの発現を阻害するために用いられうる。アンチセンスRNA内のリボザイム配列の包含は、それらにRNA切断活性を与え、それにより構築物の活性を増加させる。標的RNA特異的リボザイムの設計および使用は、Haseloffら、Nature 334:585-591、1988、および米国特許出願第2003/0003469号A1に記載されており、それぞれは参照として本明細書に組み入れられている。
【0079】
従って、本発明はまた、結合アームにおいて、表1、表2、表6、および表7のいずれか1つの配列に対応する8個〜19個の間の連続した核酸塩基を有するアンチセンスRNAを含む触媒性RNA分子を特徴とする。本発明の好ましい態様において、触媒性核酸分子は、ハンマーヘッドまたはヘアピンモチーフで形成されるが、δ型肝炎ウイルス、グループIイントロンまたはリボヌクレアーゼP RNA(RNAガイド配列に関する)またはニューロスポラVS RNAのモチーフでも形成されうる。そのようなハンマーヘッドモチーフの例は、Rossiら、Aids Research and Human Retroviruses、8:183、1992により記載されている。ヘアピンモチーフの例は、1989年9月20日に出願された、Hampelら、「RNA Catalyst for Cleaving Specific RNA Sequences」(1988年9月20日に出願された米国特許出願第07/247,100号の一部継続出願である)、HampelおよびTritz、Biochemistry、28:4929、1989、ならびにHampelら、Nucleic Acids Research、18:299、1990により記載されている。δ型肝炎ウイルスモチーフの例は、PerrottaおよびBeen、Biochemistry、31:16、1992により記載されている。リボヌクレアーゼPモチーフは、Guerrier-Takadaら、Cell、35:849、1983により記載されている。ニューロスポラVS RNAリボザイムモチーフは、Collinsら(SavilleおよびCollins、Cell 61:685-696、1990;SavilleおよびCollins、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8826-8830、1991;CollinsおよびOlive、Biochemistry 32:2795-2799、1993)により記載されている。これらの特定のモチーフは、本発明において限定的ではなく、本発明の酵素的核酸分子において重要であることのすべては、それが、1つまたは複数の標的遺伝子RNA領域に相補的である特異的基質結合部位を有すること、およびそれが、その基質結合部位の内または周囲に、分子へRNA切断活性を分け与えるヌクレオチド配列を有することであることを、当業者は認識しているものと思われる。
【0080】
RNA干渉
本発明の核酸塩基オリゴマーは、IAP発現のRNA干渉(RNAi)媒介ノックダウンのための二本鎖RNAに用いることができる。RNAiは、対象となる特定のタンパク質の細胞性発現を減少させるための方法である(Tuschl、Chembiochem 2:239-245、2001;Sharp、Genes & Devel. 15:485-490、2000;HutvagnerおよびZamore、Curr. Opin. Genet. Devel. 12:225-232、2002;ならびにHannon、Nature 418:244-251、2002)。RNAiにおいて、遺伝子サイレンシングは、典型的には、細胞において二本鎖RNA(dsRNA)の存在により転写後に引き起こされる。このdsRNAは、低分子干渉RNA(siRNA)と呼ばれるより短い小片へと細胞内でプロセシングされる。dsRNAのトランスフェクションによるかまたはプラスミド基盤発現系を用いるsiRNAの発現によるかのいずれかによる細胞へのsiRNAの導入は、哺乳動物において機能喪失表現型を作製するために、次第に用いられるようになってきている。
【0081】
本発明の一つの態様において、本発明の核酸塩基オリゴマーの8個〜19個の間の連続した核酸塩基を含む二本鎖RNA(dsRNA)分子が作製される。dsRNAは、二重になっているRNAの2つの別個の鎖、または自己二重になっている単一RNA鎖(低分子ヘアピン(sh)RNA)でありうる。典型的には、dsRNAは、約21個または22個の塩基対であるが、望ましい場合には、より短くまたはより長く(約29個の核酸塩基まで)てもよい。dsRNAは、標準的技術(例えば、化学合成またはインビトロでの転写)を用いて作製できる。キットが、例えば、Ambion(オースティン、TX)およびEpicentre(マディソン、WI)から入手可能である。哺乳動物細胞においてdsRNAを発現させるための方法は、Brummelkampら、Science 296:550-553、2002;Paddisonら、Genes & Devel. 16:948-958、2002;Paulら、Nature Biotechnol. 20:505-508、2002;Suiら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:5515-5520、2002;Yuら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:6047-6052、2002;Miyagishiら、Nature Biotechnol. 20:497-500、2002;およびLeeら、Nature Biotechnol. 20:500-505、2002に記載されており、それぞれは参照として本明細書に組み入れられている。
【0082】
低分子ヘアピンRNAは、選択的な3'UU突出をもつステムループ構造からなる。変動があってもよく、ステムは、21 bpから31 bpまで(望ましくは、25 bp〜29 bp)の範囲、ループは、4 bpから30 bpまで(望ましくは4 bp〜23 bp)の範囲でありうる。細胞内のshRNAの発現について、ポリメラーゼIII H1-RNAかまたはU6プロモーターのいずれか、ステムループ化RNA挿入のためのクローニング部位、および4-5-チミジン転写終結シグナルを含むプラスミドベクターが用いられうる。ポリメラーゼIIIプロモーターは、一般に、よく定義された開始および停止部位を有し、それらの転写物は、ポリ(A)テールを欠く。これらのプロモーターについての終結シグナルは、ポリチミジン域により定義され、転写物は、典型的には、二番目のウリジンの後で切断される。この位置での切断は、発現されたshRNAにおいて3'UU突出を生じ、それは合成siRNAの3'突出と類似している。哺乳動物細胞においてshRNAを発現させるための追加の方法は、上で引用された参照文献に記載されている。
【0083】
以下の実施例は、本発明を例証するためのものである。それらは、どんな点においても本発明を限定することを意図するものではない。
【0084】
実施例1:核酸塩基オリゴマー選択
本発明者らは、下に列挙された選択基準に基づいて、ヒトXIAPおよびHIAP1について、それぞれ、96個および98個の、ほとんど重複していない、19merの核酸塩基配列を選択した。XIAPの場合、cDNA配列の開始コドンの約1 kb上流の領域から停止コドンの約1 kb下流までの96個の配列(それぞれ、長さが19個の核酸塩基である)(配列番号:1〜96;表1)を選択した。これは、コード領域ならびに隣接した5'および3'UTR配列の約50%を網羅している(すなわち、標的とされる領域は、1.5 kbのコード領域とUTR配列の両側における1 kbとから構成される、長さが約3.5 kbであるが、96個の19merは1.8 kbの配列にわたる)。
【0085】
【表1】
【0086】
前記の核酸塩基オリゴマー、または本明細書に記載される任意の他の核酸塩基オリゴマーのいずれにおいても、各核酸塩基は、非依存的に、DNA残基または2'-O-メチルもしくは2'-O-メトキシエチルRNA残基のようなRNA残基でありうる。例えば、配列番号:3の核酸塩基配列は、例えば、
(mXは、2'-O-メチルX残基を表す)でありうる。追加の修飾核酸塩基は当技術分野において知られている。結合は、ホスホジエステル(PO)、ホスホロチオエート(PS)、もしくはメチルホスホネート(MP)結合でありうる、または混合骨格(mixed backbone)(MB)をもちうる。骨格は、標的IAPポリヌクレオチドに核酸塩基オリゴマーをハイブリダイズさせる任意の適切な骨格でありうる。典型的な骨格が本明細書に記載されている。他の態様において、核酸塩基オリゴマーは、アクリジン保護化結合、コレステリルもしくはソラレン成分、C5-プロピニルピリミジン、またはC5-メチルピリミジンを含む。本発明の核酸塩基オリゴマーへの適切な修飾は、上記のもの、加えて、参照として本明細書に組み入れられている、米国特許出願第2002/0128216号A1に記載されるものを含む。
【0087】
核酸塩基オリゴマーの例を以下の表2に提供する(mXは、2'-O-メチルX RNA残基を表す)。
【0088】
【表2】
ペネトラチン、および核酸塩基オリゴマーの細胞への侵入を媒介することにおけるペネトラチンの使用は、PCT特許出願番号FR 91/00444に記載されている。
【0089】
HIAP1に対して核酸塩基オリゴマーを設計するために、同様の同定方法に取り組んだ。初めに、98個の19mer核酸塩基オリゴマーが選択された(配列番号:163〜260;表3)。HIAP1配列へ向けられるこれらの98個の核酸塩基オリゴマーのうち、15個(配列番号:163〜170、173、179、202、222、223、247、および259)がさらなる評価のために選択された。これらの15個の候補核酸塩基オリゴマーは、コード領域を標的とする4個の核酸塩基オリゴマー(配列番号:202、222、223および247)、3'UTRを標的とする1個の核酸塩基オリゴマー(配列番号:259)、5'UTRを標的とする7個の核酸塩基オリゴマー(配列番号:166〜170、173および179;7個の核酸塩基オリゴマーのうちの1個は開始コドンに重なった)、および5'UTRのイントロンのセグメントを標的とするように設計された3個の他のオリゴヌクレオチド(配列番号:163〜165)を含んだ。
【0090】
【表3】
【0091】
核酸塩基オリゴマー選択基準
コンピュータープログラムOLIGO(National Biosciences Inc.により以前に配布された)が以下の基準に基づいて候補核酸塩基オリゴマーを選択するために用いられた。
1)75%より多くないGC含有量、および75%より多くないAT含有量;
2)好ましくは、4個またはそれ以上の連続したG残基をもつ核酸塩基オリゴマーは存在しない(1個を毒性対照として選択したが、報告された毒性作用のためである);
3)安定した二量体またはヘアピン構造を形成する能力をもつ核酸塩基オリゴマーは存在しない;ならびに
4)翻訳開始部位の周囲の配列が好ましい領域である。
さらに、標的mRNAの接近可能領域が、RNA二次構造折り畳みプログラムMFOLD(M. Zuker, D.H. Mathews & D.H. Turner、「Algorithms and Thermodynamics for RNA Secondary Structure Prediction: A Practical Guide.」、「RNA Biochemistry and Biotechnology」中、J. Barciszewski & B.F.C. Clark編、NATO ASIシリーズ、Kluwer Academic Publishers、(1999))の助けを借りて予測された。予測された最も安定したmRNAの折り畳みの5%以内の自由エネルギー値をもつ最適下限の折り畳みは、残基が塩基対結合を形成する相補的な塩基を見出すことができる200塩基のウィンドウを用いて予測された。塩基対を形成しなかったオープン領域は、各最適下限の折り畳みと共に総計され、一貫してオープンとして予測された領域は、核酸塩基オリゴマーへの結合に、より接近しやすいとみなされた。上の選択基準のいくつかを部分的にのみ満たした追加の核酸塩基オリゴマーもまた、それらが標的mRNAの予測オープン領域を認識した場合には可能性のある候補として選択された。
【0092】
実施例2:オリゴヌクレオチド合成
IAP発現を阻害する核酸塩基オリゴマーの能力は、典型的核酸塩基オリゴマーとしてオリゴヌクレオチドを用いて試験された。オリゴヌクレオチドは、隣接しているRNA残基間にホスホロチオエート結合をもつ2個の2'-O-メチルRNA残基により両側に隣接されているホスホジエステルDNA残基のコアからなる、キメラの第二世代オリゴヌクレオチドとしてIDT(Integrated DNA Technologies、USA)により合成された。オリゴヌクレオチドは、96ウェルのプレートおよびそろったチューブに、検出方法がTaqMan定量PCRまたはELISAのような感度の高い方法である場合、トランスフェクションのために十分な材料(96ウェル形式において100回より多いアッセイ)を供給する12 ODの核酸塩基オリゴマーを最小限として供給された。一旦、陽性のヒットが同定されたならば(下記参照)、オリゴヌクレオチドは、安定性/ヌクレアーゼ耐性をさらに増大させるために、2個ではなく、3個の隣接RNA残基で再合成された。さらに、確証する目的で、適当な対照(スクランブルした、4塩基のミスマッチおよび逆極性オリゴヌクレオチドのような)が、最高の活性を生じる標的のいくつかについて合成された。
【0093】
実施例3:スクリーニングアッセイ法および核酸塩基オリゴマーの最適化
IAPの発現を阻害することができる核酸塩基オリゴマーを同定する本発明者らの方法は、標的にされる特定のIAP遺伝子についてのRNAおよび/またはタンパク質の特異的な減少(ノックダウン)について上記のオリゴヌクレオチドライブラリーをスクリーニングすることであった。かなり多数の標準的アッセイ法が、細胞におけるRNAおよびタンパク質レベルを検出するために用いることができる。例えば、RNAレベルは、標準的ノーザンブロット分析またはRT-PCR技術を用いて測定されうる。タンパク質レベルは、例えば、標準的ウエスタンブロット分析または免疫沈降技術により測定されうる。または、アンチセンスIAP核酸を投与された細胞は、例えば、参照として本明細書に組み入れられている、米国特許第5,919,912号、第6,156,535号および第6,133,437号に記載される方法に従って、細胞生存度について試験されうる。
【0094】
本発明者らは、オリゴヌクレオチド処理後のmRNAレベルにおける変化についてアッセイするためにTaqMan定量PCR(下に記載されている)を用いた。XIAPタンパク質レベルを測定するためにELISAを、HIAP1タンパク質レベルを測定するためにウエスタンブロット法を使用した。トランスフェクション条件は、対照として開始コドンにまたがるXIAP由来のフルオレセイン標識センスオリゴヌクレオチド
を用いて、T24膀胱癌細胞もしくはH460非小細胞肺癌細胞においてはリポフェクタミンプラス(Lipofectamine plus)もしくはリポフェクタミン2000(Life Technologies、カナダ)、またはSF-295神経膠芽細胞腫においてはリポフェクチンで最適化された。結果は可視化され、エピ蛍光顕微鏡により測定された。T24細胞の場合、トランスフェクションは、サバイビン(survivin)発現の下方制御に関して発表されたオリゴヌクレオチド
の能力に基づき、さらに最適化された(Liら、Nat. Cell Biol. 1:461-466、1999)。本発明者らは、以下詳細に記載するPCRプライマーおよび蛍光プローブにより検出されたサバイビンRNAノックダウンのTaqMan結果に基づいてトランスフェクション条件を最適化した。細胞によるオリゴヌクレオチド取り込みについての最適な条件は、総量70μL中、940nM オリゴヌクレオチドおよび4μL PLUS試薬および0.8μL リポフェクタミンを3時間、であることが見出された。その後、T24細胞に対するオリゴライブラリーを用いてXIAPタンパク質ノックダウンについてスクリーニングするためにこれらの条件を適用した。
【0095】
SF-295細胞は、容易に検出かつ識別できる70kDa HIAP1タンパク質を有するが、一方、多くの細胞系はそのタンパク質を高レベルで発現しない、または区別できない類似サイズの68kDa HIAP2タンパク質が多量であるため、HIAP1ノックダウンは、SF-295細胞において研究された。
【0096】
リアルタイムPCR
RNAは、RLT緩衝液(QIAGEN、バレンシア、CA)に溶解した細胞から抽出し、QIAGEN RNeasyカラム/キットを用いて精製した。リアルタイム定量PCRは、Perkin-Elmer ABI 7700 Prism PCR装置で行った。RNAは、逆転写し、XIAP、HIAP1、サバイビン、またはGAPDHを特異的に認識するように設計されたプライマーおよびプローブを用いて、PE BiosystemsのTaqMan Universal PCR Master Mixプロトコールに従って増幅した。ヒトのサバイビンについて、フォワードプライマーは
であり、リバースプライマーは
であり、プローブは
であった。ヒトHIAP1について、フォワードプライマーは
であり、リバースプライマーは
であり、プローブは
であった。ヒトXIAPについて、フォワードプライマーは
であり、リバースプライマーは
であり、プローブは
であった。ヒトGAPDHについて、フォワードプライマーは
であり、リバースプライマーは
であり、プローブは
であった。FAMは6-カルボキシフルオロセイン、JOEは6-カルボキシ-4,5-ジクロロ-2,7-ジメトキシフルオロセイン、TAMRAは6-カルボキシ-N,N,N',N'-テトラメチルローダミンである。FAMおよびJOEは、5'レポーター色素であり、一方、TAMRAは3'消光剤色素である。
【0097】
遺伝子発現の相対的定量は、内部標準としてGAPDHを用い、PE Biosystemsマニュアルに記載されているように行った。比較Ct(サイクル閾値)方法が、GAPDH mRNAレベルと比較したIAP mRNAレベルの相対的定量のために用いられた。簡単に述べると、リアルタイム蛍光測定値を、各PCRサイクルにおいて取得し、各試料についての閾値サイクル(Ct)は、蛍光がベースライン標準偏差の30倍の閾値を超える時点を測定することにより計算した。平均ベースライン値およびベースラインSDは、3回目のサイクルベースライン値から開始し、シグナルが指数関数的に上昇し始める3サイクル前のベースライン値で終了し、計算する。特定のIAPについてのPCRプライマーおよび/またはプローブは、ゲノムDNA混入を増幅かつ検出する可能性を低減させるために、1 kbもしくはそれ以上のゲノムDNAにより分離される少なくとも1つのエキソン-イントロン境界にまたがるように設計された。シグナルの特異性および可能性のあるDNA由来の混入は、逆転写およびPCR反応段階を行う前に、デオキシリボヌクレアーゼかまたはリボヌクレアーゼのいずれかでいくつかのRNA試料を処理することにより検証された。
【0098】
XIAP ELISAおよびHIAP1ウエスタン免疫ブロット
標準比色定量XIAP ELISAアッセイ法を、捕獲抗体としてXIAPに対するアフィニティー精製されたウサギポリクローナル抗体を用いて行い、XIAPモノクローナル抗体(MBL、日本)およびビオチン化抗マウスIg抗体および西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンおよびTMB基質で検出した。または、ポリクローナルXIAPまたはHIAP1抗体が、XIAPまたはHIAP1タンパク質レベルをそれぞれ測定するために用いられてもよい。
【0099】
HIAP1は、一次抗体としてアフィニティー精製された抗ラットHIAP1ウサギポリクローナル抗体を用いるウエスタン免疫ブロット上で検出し、二次西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗ウサギIg抗体および化学発光基質を用いてX線フィルム上でのECL(Amersham)により検出した。抗HIAP1ポリクローナル抗体は、ラットHIAP1のGST融合に対して産生される。この抗体は、ヒトおよびマウス両方のHIAP1ならびにHIAP2と交差反応する。
【0100】
実施例4:アンチセンスXIAPオリゴヌクレオチドによる、XIAP RNAおよびポリペプチド発現の低下
96個のアンチセンスオリゴヌクレオチドのXIAP合成ライブラリーは、まず、XIAPタンパク質レベルの減少についてスクリーニングされた。具体的には、T24細胞を1日目に96ウェルプレートのウェルに播き、24時間、抗生物質を含まないマッコイ(McCoy's)培地で培養した。2日目に、上記のように細胞は、XIAPアンチセンスオリゴヌクレオチドでトランスフェクトした(オリゴヌクレオチドは、それらのプレーティング位置、すなわちA1〜H12、2個の繰り返しと、密封膜に貼り付いた凍結乾燥のDNAペレットを含むA13およびB13とを含む、に従って標識された)。簡単に述べると、核酸塩基オリゴマーを血清不含有、抗生物質不含有のマッコイ培地10μl/ウェルに希釈し、その後、PLUS試薬を添加した。リポフェクタミンを血清不含有、抗生物質不含有のマッコイ培地10μl/ウェルに希釈し、両混合物を室温で15分間インキュベートした。その後、混合物を合わせて、室温で15分間インキュベートした。
【0101】
その間に、完全培地を細胞から除去し、血清不含有、抗生物質不含有の培地50μl/ウェルを細胞へ添加した。トランスフェクション混合物をウェルへ添加し、細胞を3時間インキュベートした。その後、血清不含有、抗生物質不含有の培地30μl/ウェルおよび20%ウシ胎児血清を含む抗生物質不含有の完全培地100μl/ウェルを各ウェルへ添加した。
【0102】
3日目に、XIAP RNAレベルを上記のように定量リアルタイムPCR技術を用いて測定した。4日目に、XIAPタンパク質レベルをELISAにより測定し(図1A、1C、1E、1G、1Iおよび1K)、細胞総タンパク質量を生化学的に測定した(図1B、1D、1F、1H、1Jおよび1L;XIAPタンパク質レベルを標準化するために用いられる)。結果は、偽のトランスフェクション試料(オリゴヌクレオチドDNAは添加されないが、トランスフェクション剤で処理され、その後、他の試料に関して処理される)と比較された。時間経過実験より、タンパク質ノックダウンのための最適な時間が約12〜24時間であると決定された。
【0103】
オリゴヌクレオチドライブラリーはまた、上記のプライマーおよびプローブを用いて、適切な最適時間におけるTaqMan特異的PCRプライマーおよび蛍光プローブを用いるRNAレベルにおける減少についてスクリーニングされた。時間経過実験により、mRNAが6〜9時間において最適に減少することが決定された。これらの結果は、タンパク質結果とよく一致している。
【0104】
第一スクリーニング(おそらくは、トランスフェクトしていない細胞の増殖のために、XIAPレベルが正常まで戻りつつある最適下限の時点において行われる)は、偽の(核酸塩基オリゴマー無し)トランスフェクションレベルと比較して、総タンパク質量に対するXIAPタンパク質レベルにいくらかの減少を示す(図1A、1C、1E、1G、1Iおよび1K)、試験した96個の核酸塩基オリゴマーから16個のアンチセンスオリゴヌクレオチドを同定した(表1:C2、E2、E3、F3、C4、D4、E4、F4、G4、C5、D5、B6、F6、D7、D8、F8)。総タンパク質量は、これらの16個の核酸塩基オリゴマーのそれぞれについて減少し、これらの核酸塩基オリゴマーの毒性または細胞増殖抑制効果を示している(図1B、1D、1F、1H、1J、1L)。核酸塩基オリゴマーB9およびC9は、総タンパク質量において明らかな下落を示したが、XIAPタンパク質レベルにおいて相対的な下落を示さなかった。
【0105】
偽のトランスフェクションと比較して相対的XIAPタンパク質レベルにおいていくらかの減少を示した16個のアンチセンス核酸塩基オリゴマーは、上記の時間経過研究に基づいたより最適な時点(12時間)における、XIAPタンパク質をノックダウンする能力について、1個の対照核酸塩基オリゴマー(D2)を含め、単独または組み合わせて、再試験された(図2B)。これらの核酸塩基オリゴマーはまた、12時間目においてXIAP mRNAレベルを減少させる能力について試験され、GAPDHに対して標準化され、偽のトランスフェクションと比較された。12時間目における総タンパク質濃度も測定された(図2C)。
【0106】
核酸塩基オリゴマーのXIAPタンパク質レベルを減少させる能力(図2A)とXIAP mRNAレベルを減少させる能力(図2A)の間に良い相関があった。さらに、この初期時点において、総タンパク質量の主要な損失はなく、XIAP mRNAおよびタンパク質における減少が、後期時点に見られる総タンパク質量における減少より先に起こる。単独でまたは1:1の比で加えられた2個の核酸塩基オリゴマーの組み合わせにおいて、XIAPタンパク質またはmRNAのレベルの50%より大きい損失を示した核酸塩基オリゴマーは、最良の核酸塩基オリゴマーとして同定され、さらに検証された。これらの16個のオリゴヌクレオチドのうち、10個(E2、E3、F3、E4、F4、G4、C5、B6、D7、F8)が、用いられるトランスフェクション条件に依存して、または組み合わせて(C5とG4のように)用いられる場合、50%より大きくXIAPタンパク質またはRNAレベルを減少させる一貫した能力を示した。さらに、アンチセンス活性を実証したこれらの16個のオリゴヌクレオチドは、XIAP mRNAの4つの異なる標的領域にクラスターを形成し、隣接した核酸塩基オリゴマーはかなりのノックダウン活性を示した。これらの感受性の領域または島の間の配列を標的とする核酸塩基オリゴマーでは、ほとんどまたは全くアンチセンス活性が観察されなかった。おそらく、これらの領域は、細胞内部において核酸塩基オリゴマーに接近できるmRNA上におけるオープン域を示している。2個の核酸塩基オリゴマー、E3およびF3は、IRESと翻訳開始部位との間の介在領域における開始コドンのすぐ上流でXIAPを標的にし、IRESエレメントの末端と部分的に重なる。C2、D2、およびE2は、最小IRESエレメントの上流でXIAP領域を標的にし、最小IRES領域がインビボにおいて核酸塩基オリゴマーへ容易に接近できないRNAの高次構造化領域であるというさらなる証拠を提供している。すべての他の核酸塩基オリゴマーは、XIAP配列の856位〜916位における活性のクラスター(E4、F4、およびG4)、ならびに、例えば、核酸塩基オリゴマーC5およびD5により実証されているようなより小さい分離した領域を含む、コード領域の部分に相補的である。
【0107】
表1に示す96個の核酸塩基オリゴマーの一部は、トランスフェクション後9時間目における、NCI-H460細胞中のXIAP mRNAをノックダウンする能力について再スクリーニングした。データを以下の表4にまとめる。
【0108】
【表4】
【0109】
本発明者らはまた、4x4 MBO(すべてPS、DNA残基の両側に4個の2'-O-メチルRNA残基が隣接している)がH460細胞においてXIAPタンパク質をノックダウンできるかどうかを測定した。図3および図4に示すように、E12およびもう一つのオリゴヌクレオチド、FG8、の4x4 MBは、31nMほどの低い量で効果があった。
【0110】
実施例5:XIAPアンチセンス核酸塩基オリゴマーによる、細胞毒性および化学増感の増大
本発明者らは、XIAPアンチセンス核酸塩基オリゴマーが、アドリアマイシンまたはシスプラチンのような伝統的な化学療法剤に対して、高い薬剤耐性のT24細胞を化学増感させることができるかどうかを調べた。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、異なるXIAP標的領域のいくつかを代表するように選択され、単独でまたは他のオリゴヌクレオチドもしくは薬剤と組み合わせて、それらの細胞毒性効果について試験された。5個のXIAPアンチセンスオリゴヌクレオチドが、T24膀胱癌細胞を殺すまたは化学増感させる能力について試験され、3個の対応するスクランブル対照オリゴヌクレオチドの効果と比較された。
【0111】
T24細胞は、XIAPアンチセンスオリゴヌクレオチド、スクランブルオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド無し(偽のトランスフェクション)でトランスフェクトし、または未処理のままとした。細胞は、WST-1テトラゾリウム色素が代謝活性のある細胞において有色のホルマザン生成物へ還元されるWST-1テトラゾリウム色素アッセイ法を用いて、トランスフェクション(未処理の対照を除く)後20時間目に、生存度について試験した(図5A)。
【0112】
オリゴヌクレオチドE4により誘導された細胞毒性の発生は、未処理のまま、偽のトランスフェクション、またはE4、スクランブルE4、E4逆極性、もしくはE4ミスマッチ化オリゴヌクレオチドをトランスフェクトしたT24細胞を視覚的に調べることにより検査した。トランスフェクション後20時間目に、形態について細胞を調べた(図5D)。アンチセンスE4オリゴヌクレオチドをトランスフェクトした細胞のみが毒性の徴候を示した。
【0113】
シスプラチンまたはアドリアマイシンに対するT24細胞の化学増感への核酸塩基オリゴマーの効果を調べるために、オリゴヌクレオチドは、アドリアマイシンの一定用量(0.5μg/ml)の存在下において、T24細胞をさらに殺す能力について試験された。細胞を、まず、オリゴヌクレオチドでトランスフェクトし、その後、さらに20時間、アドリアマイシンを添加した。20時間の薬剤処理の最後に、生存度をWST-1により測定した(図5B)。結果は、核酸塩基オリゴマー処理のみと比較した生存度%として図5Cに示す。
【0114】
試験した5個の核酸塩基オリゴマーすべて(F3、E4、G4、C5、D7)、加えてE4+C5およびG4+C5の組み合わせは、T24細胞を殺し、偽の(オリゴヌクレオチド無し)トランスフェクション細胞またはF3
、E4
およびC5
に対応する3個のスクランブル対照をトランスフェクトした細胞と比較して、24時間後、10〜15%の生存細胞のみを残した(図5Aおよび図5C)。それゆえに、毒性は、XIAPレベルを低下させるそれらの核酸塩基オリゴマーに対して配列特異的であり、一般にこの化学現象は、核酸塩基オリゴマーによる配列非特異的な毒性によるのではない。この細胞毒性は、XIAPタンパク質ノックダウンの複合的な効果(およびXIAPにより与えられる抗アポトーシス保護の予想される損失)ならびにトランスフェクション自体の細胞毒性に起因しうる。
【0115】
3時間のトランスフェクション期間の最後にアドリアマイシンまたはシスプラチンの一定用量を添加すると、結果として、試験したオリゴヌクレオチドのいくつかにおいて生存はさらに低下し、核酸塩基オリゴマー、F3、D7、およびG4+C5組み合わせ、について、それらの対応するオリゴヌクレオチドで処理した値(図5C)と比較して、20時間後に、生存はさらに40%低下した(図5B)。図5Bでの値(オリゴヌクレオチドと薬剤)は、図5Cでのオリゴヌクレオチド単独の値と比較しており、各ODNを100%に設定する。アドリアマイシン化学増感についての結果のみを示す;細胞をシスプラチンで化学増感した場合、同様の結果が得られた。用いた一定用量において、偽およびスクランブル対照のトランスフェクションでは、アドリアマイシンで処理された場合、どちらも生存の喪失に一切の増加がみられなかった(図5B)。化学増感は、XIAPレベルが特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドにより減少させられる場合のみ見られる。
【0116】
実施例6:H460細胞におけるXIAP mRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの下方制御効果
リアルタイムPCRを用いることにより、アンチセンスオリゴヌクレオチド(2x2 MBO、ホスホロチオエート結合をもつ両末端における2個の隣接する2'-O-メチルRNA残基、および15個のホスホジエステルDNA残基の中心のコアから構成される)を、H460細胞におけるXIAP mRNAに対するそれらの効果について調べた。この配置において、核酸塩基オリゴマー、F3、G4、C5、AB6、およびDE4は、未処理の対照と比較して、50〜70%、mRNAレベルを低下させ、一方、D7 AS核酸塩基オリゴマーは、30%、mRNAを低下させた(図6)。対照的に、対照核酸塩基オリゴマーおよびトランスフェクタント剤単独(LFA)はそれぞれ、未処理の対照の20%未満までmRNAレベルを低下させただけであった(図6)。核酸塩基オリゴマーF3、G4、およびC5は、インビトロおよびインビボでのさらなる研究のために選択された。TaqMan分析により観察されたXIAP mRNAの追加のノックダウンを図7および図8に示す。
【0117】
実施例7:XIAPタンパク質に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの下方制御効果
本発明者らは、ウエスタンブロット分析により、XIAPタンパク質発現に対するオリゴヌクレオチド配置における核酸塩基オリゴマーF3、G4、およびC5の能力を特徴付けた(図9、10A、および10B)。G4 ASオリゴヌクレオチドは、XIAPタンパク質に対し最強の下方制御効果を示し、1.2μMの濃度で、トランスフェクションの終了後24時間で、62%、XIAPタンパク質レベルを低下させた(図10Aおよび10B)。1.2μMでのF3 ASオリゴヌクレオチドは、50%、XIAPタンパク質レベルを低下させ、一方、C5 ASオリゴヌクレオチドは、それの対照と比較して配列特異的効果を示さなかった(図10B)。追加の研究において、E12およびFG8 ASオリゴヌクレオチドは、XIAPタンパク質レベルを有意に低下させた(図9)。
【0118】
実施例8:XIAP ASオリゴヌクレオチドによるアポトーシスの誘導
XIAP AS核酸塩基オリゴマーは、後でH460細胞およびT24膀胱癌細胞の生存度を低下させることができることを実証したが、本発明者らは、観察された細胞死がアポトーシスの誘導によるのかどうかを決定した。図11Aに示すように、1.2μMでのF3またはG4 ASオリゴヌクレオチドで処理したH460細胞は、プロカスパーゼ-3タンパク質を、未処理の対照細胞と比較して、それぞれ、タンパク質レベルの40%または60%の低下を伴って分解し、かつ活性化した。PARPはまた、カスパーゼ-3で生じる予想された断片になった(図11A)。対照的に、1.2μMでのF3およびG4 SCオリゴヌクレオチド対照は、カスパーゼ-3またはPARPタンパク質発現に少しも効果を生じなかった(図11A)。Bcl-2:Baxの比は、1.2μMでのF3およびG4 ASオリゴヌクレオチドならびにそれらのそれぞれの対照で処理されたH460細胞において変化しなかった。フローサイトメトリーは、G4 ASオリゴヌクレオチドで処理されたH460細胞における低二倍体DNA含有量を検出するために用いられ、PIで染色された(図12A)。H460細胞が、1.2μMでのG4 ASオリゴヌクレオチドまたはスクランブル対照オリゴヌクレオチドで処理された場合、細胞の低二倍体DNA含有量は、未処理の対照細胞についての16.6%と比較して、それぞれ、40.8%および22.1%であった。DAPI染色は、1.2μMでのG4 ASオリゴヌクレオチドまたはスクランブル対照オリゴヌクレオチドで処理されたH460細胞の核形態学的変化を検出するために用いられた。図12Bに示すように、G4 ASオリゴヌクレオチドで処理した細胞は、クロマチン凝縮および核DNA断片化を含むアポトーシスに特有な形態学的変化を起こした。G4 SCで処理した対照細胞においては、ほとんどの細胞がこれらの形態学的変化を示さなかった。
【0119】
実施例9:ASオリゴヌクレオチドによる細胞増殖の阻害および抗癌剤に対するH460細胞の増感
XIAP発現の下方制御およびアポトーシスに関連した核酸塩基オリゴマーの生物学的効果を分析するために、G4 ASオリゴヌクレオチドで処理されたH460細胞の増殖をMTTアッセイ法により調べた。トランスフェクション後48時間において、G4 ASオリゴヌクレオチドは、用量依存的にH460細胞増殖を低下させ、1.2μMでは未処理の対照レベルに対して55%の低下を示した(図13A)。対照的に、G4 SCオリゴヌクレオチド、またはトランスフェクタント剤単独の増殖阻害効果は、比較的に低く、それらの未処理の対照のたった10%未満だけであった。
【0120】
XIAP発現の下方制御に、H460細胞を化学療法に対して増感させる可能性があるかどうかを調べるために、G4 ASオリゴヌクレオチドおよび以下の抗癌薬の1つを用いる組み合わせ処理を行った:ドキソルビシン(DOX)、タキソール、ビノレルビン(VNB)およびエトポシド(Etop)。図13Bは、各組み合わせが、G4 ASオリゴヌクレオチドまたは抗癌薬のいずれか単独での処理と比較して、少なくとも細胞死に追加的な細胞毒性効果を生じたことを実証している。
【0121】
実施例10:H460およびLCC6腫瘍異種移植片に対するG4 ASオリゴヌクレオチドの抗腫瘍効力
本発明者らは、まず、皮下にH460ヒト肺癌異種移植片を有するSCID-RAG2マウスに対するXIAPアンチセンス2x2-MBOの腫瘍内注射により、腫瘍増殖量が低下するかどうかを決定した。処理は、腫瘍細胞接種(s.c. 106細胞の肩注射)後14日目より、2週間、週に3回、触知できる腫瘍塊へMBO(1g腫瘍あたり50μgの2'-O-メチルRNAオリゴヌクレオチド)を注射することにより開始した。ビノレルビン(VNB;ナベルビン(NVB)とも呼ばれる)(15mg/kg i.p.)は、17日目および24日目に注射した。腫瘍サイズは、週に3回、カリパスで測定した。処理期間の最後(24日目)に、C5+G4 AS MBOおよびVNBの組み合わせで処理したマウスの相対的腫瘍増殖平均は、スクランブル対照MBOおよびVNBで処理されたものと比較して〜70%低下した。C5 AS MBOおよびVNBでの処理は、結果として、スクランブル対照と比較して、腫瘍サイズの〜60%低下をもたらした(図14)。
【0122】
最初の全身性PS-オリゴヌクレオチド研究は、どんな化学療法剤も用いないように設計された。SCID-RAG2マウスに、H460ヒト肺癌細胞を接種し(s.c. 106細胞の肩注射)、G4およびFS AS PS-オリゴヌクレオチド、加えてスクランブル対照での処理は、腫瘍接種後3日目に開始した。核酸塩基オリゴマー注射は、3週間、週に3回、12.5mg/kgで腹腔内に施した。処理期間の最後に、G4またはF3 ASオリゴヌクレオチドのいずれかで処理した群における平均腫瘍サイズは、スクランブル対照オリゴヌクレオチドで処理した群においてよりも〜50%小さかった(図15)。同じ処理プロトコールが、MDA-MB-435/LCC6ヒト乳癌細胞を同所に接種した雌SCID-RAG2マウスにおいて試験された。最後の処理後2週間目(35日目)に、F3、C5、またはG4 ASオリゴヌクレオチドで処理したマウスの腫瘍容積は、媒質対照よりそれぞれ、70%、60%、および45%小さかった(図16)。
【0123】
本発明者らは、皮下に移植されたH460ヒト非小細胞肺腫瘍の異種移植片を有するSCID-RAG2マウスにおいてG4 ASオリゴヌクレオチドの抗腫瘍効果の追加の試験を行った。食塩水処理された対照腫瘍は、約24日間以内に、0.75 cm3のサイズまで再生的に増殖した(図17)。オリゴヌクレオチド処理は、腫瘍細胞接種後3日目に開始した。G4 ASオリゴヌクレオチド(5〜15mg/kg)は、3〜7日目、10〜14日目、および17〜21日目にかけて1日1回腹腔内に注射する処理計画で投与した。5mg/kgまたは15mg/kg G4 ASオリゴヌクレオチドでの処理は、腫瘍増殖を大いに遅らせた:24日目において、平均腫瘍サイズは、対照、5mg/kg、および15mg/kgの処理群において、それぞれ、0.75 cm3、0.45 cm3、および0.29 cm3であった(図18A)。腫瘍増殖の用量依存的阻害があった。15mg/kg G4 ASオリゴヌクレオチドで処理したマウスにおける腫瘍サイズは、対照群においてよりも有意に小さく、対照の平均腫瘍サイズの39%を示した。対照的に、15mg/kgでのG4 SCオリゴヌクレオチドの投与は、治療的活性を与えなかった(図17)。オリゴヌクレオチドで処理したマウスはいずれも一切の毒性の徴候を見せず、両オリゴヌクレオチドの用量は耐容性を示した。将来的な抗癌薬との併用処理投与計画としては、用量15mg/kgが選択された。
【0124】
実施例11:G4 ASオリゴヌクレオチドで処理したH460腫瘍におけるXIAP発現の低下
G4 ASオリゴヌクレオチドの腫瘍増殖阻害効果をXIAPタンパク質発現と相関させるために、本発明者らは、15mg/kgのG4 ASおよびSCオリゴヌクレオチドでのインビボの処理の最後に、XIAP発現における変化を調べた。腫瘍接種後21日目または24日目に腫瘍のサイズが1 cm3に達した時点で(図17)、腫瘍を収集し、腫瘍ホモジネートからの溶解物をウエスタンブロット分析に用いた。ヒトタンパク質に対するXIAPおよびβアクチンの抗体を用いることにより、マウス細胞由来のXIAPからの混入が無い状態で、腫瘍細胞検体から得られたヒトXIAPレベルの測定が可能であった。G4 ASオリゴヌクレオチドで処理した腫瘍におけるXIAPタンパク質レベルは、対照腫瘍の約85%まで有意に低下した(P<0.005)(図18Aおよび18B)。G4 SCオリゴヌクレオチドで処理した腫瘍は、サイズが対照腫瘍の24%縮小した。これらの結果は、G4 ASオリゴヌクレオチドによるH460腫瘍増殖の阻害が、XIAPタンパク質発現の下方制御と相関していることを示した。
【0125】
実施例12:腫瘍検体の組織病理学
XIAP ASオリゴヌクレオチドの投与が、結果として、直接的な腫瘍細胞死をもたらすかどうかを評価するために、本発明者らは、形態およびユビキチン免疫染色の両方について、処理後の腫瘍の組織構造を調べた(図19Aおよび19B)。腫瘍接種後21日目または24日目において、15mg/kgのG4 ASオリゴヌクレオチド、SCオリゴヌクレオチド、または食塩水対照で処理した腫瘍を、切除し、切片にし、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。結果は、所定のXIAP ASオリゴヌクレオチド処理を施した動物の腫瘍には数の増加した死細胞が含まれ、その無定形の形状および凝縮した核物質によって形態学的に同定されることを実証している(図19A)。
【0126】
タンパク質の分解は、たいてい、ユビキチン-プロテアソーム依存性であり;ユビキチン発現上昇がアポトーシスにおいて観察されている。従って、本発明者らは、ヘマトキシリンおよびエオシン染色に用いられた腫瘍切片においてユビキチン発現を調べた。図19Bに示すように、XIAP ASオリゴヌクレオチドを投与したマウスにおける腫瘍は、対照またはSC ODNを処理したマウスにおける腫瘍と比較して、より強い免疫組織化学的染色を示した。これらのデータは、XIAP AS核酸塩基オリゴヌクレオチドを処理した腫瘍細胞では、対照腫瘍よりも遊離ユビキチンおよび/またはユビキチン化したタンパク質が多いことを示している。
【0127】
実施例13:ビノレルビンと組み合わせたG4 ASオリゴヌクレオチド処理
G4 AS核酸塩基オリゴマーおよびビノレルビン(VNB)、肺癌治療に用いられる化学療法剤、の組み合わせ処理により、結果として、何らかの協同的な効果がもたらされるかどうかを評価するために、本発明者らは、G4 ASオリゴヌクレオチドまたはG4 SCオリゴヌクレオチドの存在下および非存在下において、VNBの治療的効力を比較した。処理投与計画は、腫瘍接種後3日目に開始された。図20Aは、H460腫瘍をもつマウスへ与えられ、食塩水対照と比較された、VNBの5mg/kgおよび10mg/kg用量についてのインビボの効力結果を示している。2つの投与計画のそれぞれは、望ましくない毒性の有意な徴候(すなわち、体重減少)を示すことなく、用量依存的に有意な腫瘍増殖抑制を誘導した。G4 ASオリゴヌクレオチド(15mg/kg)の投与がH460腫瘍の処理のためにVNB(5mg/kg)と組み合わされた場合、いずれかを単独で投与した処理と比較して、H460腫瘍増殖のよりいっそう著しい遅延が観察された(図20B)。これも、マウスは、毒性の一切の有意な徴候(すなわち、体重減少)を示さなかった。G4 ASもしくはSCオリゴヌクレオチドの存在下または非存在下において5mg/kg VNBで処理したマウスにおける平均腫瘍サイズは、29日目に比較された(図20Aおよび20B)。VNBおよびG4 ASオリゴヌクレオチドの群における平均腫瘍サイズは、0.22±0.03 cm3であり、5mg/kg VNB単独でまたはVNB G4 SCオリゴヌクレオチドとの組み合わせで処理された動物における平均腫瘍サイズ(それぞれ、0.59±0.04 cm3および0.48±0.05 cm3)より有意に小さかった。
【0128】
方法
実施例5〜13において得られた結果は、以下の方法を用いて得られた。
【0129】
オリゴヌクレオチド合成
96個を超す重複していないキメラの、または混合骨格(MBO)の、19merアンチセンスオリゴヌクレオチドのライブラリーが、ホスホロチオエート結合をもつ両末端における2個の隣接2'-O-メチルRNA残基と、15個のホスホジエステルDNA残基の中心のコアとから構成される、2x2 MBOオリゴヌクレオチドとして合成された。各最終生成物は、Sephadex G-25クロマトグラフィー(IDT Inc.、コーラルビレ(coralville)、IA)により脱塩した。このキメラのウィングマー(wingmer)配置ならびにホスホロチオエートおよびホスホジエステル結合の混合(2x2 PS/POと呼ばれる)は、十分な安定性を提供し、同時にまた、ホスホロチオエート残基に関連する非特異的毒性を低減させた。インビボおよびインビトロの研究のための完全にホスホロチオエート化された非キメラの(DNA)アンチセンスオリゴヌクレオチドは、Trilink Biotechにより合成され、RP-HPLCで精製された。
【0130】
アンチセンスオリゴヌクレオチドスクリーニング
1〜1.2μM オリゴヌクレオチド-リポフェクチン複合体を24〜48時間トランスフェクトしたT24膀胱癌細胞は、XIAPタンパク質をノックダウンする各オリゴヌクレオチドの能力を測定するために評価した。陽性ヒットは、T24膀胱癌細胞およびH460肺癌細胞において、(i)ウエスタン分析による、トランスフェクションの12〜18時間目におけるXIAPタンパク質レベル、および(ii)定量RT-PCR(下記参照)による、トランスフェクションの6〜9時間目におけるXIAP mRNAレベル、をノックダウンする能力について再確認された。候補オリゴヌクレオチドは、さらに同定かつ試験された。同定された2x2 PS/POキメラのオリゴヌクレオチドは、400〜1200nM濃度の範囲において、6〜9時間で、XIAP mRNAレベルを減少させる用量依存的能力を示した。典型的なオリゴヌクレオチドを表5に示す。
【0131】
【表5】
*太字残基=ホスホロチオエート結合をもつDNA残基、下線の引かれた残基=2'-O-メチルRNA塩基、装飾のない残基=ホスホジエステルDNA残基。
【0132】
腫瘍細胞系および動物異種移植片モデル
ヒト非小細胞肺癌細胞系(大細胞型)NCI-H460(H460)は、ATCCから得られ、5% CO2を含む加湿された雰囲気下、37℃で、10% FCSを追加したRPMI 1640において維持された。細胞は、最大25回のインビトロ継代まで、指数関数的な増殖相において用いた。雄SCID-RAG2マウス(週齢7〜9週間、23〜26g)は、British Columbia Cancer Agency Joint Animal Facility繁殖コロニーから得、無菌的環境で飼育した。SCID-RAG2マウスにおけるNCI-H460細胞の腫瘍モデルは、マウスの背中へ1x106個のNCI-H460細胞を皮下移植することにより樹立した。
【0133】
アンチセンスおよび抗癌薬による細胞の処理
トランスフェクションの1日前に、H460細胞を、6ウェルまたは96ウェルの組織培養プレートに播いた。ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドは、リポソーム-オリゴヌクレオチド複合体の形をとって、リポフェクタミン2000(Life Technologies)と共に細胞へ送達された。4.5時間または6時間のトランスフェクション後、トランスフェクション培地を10% FBSを含むRPMI培地と交換し、細胞をもう24時間または48時間インキュベートした。
【0134】
リアルタイム定量RT-PCR
リポソーム-オリゴヌクレオチド複合体で6時間処理したH460細胞由来の全RNAを、RNeasyミニスピンカラムおよびデオキシリボヌクレアーゼ処理(QIAGEN、バレンシア、CA)を用いて直ちに単離した。特定のXIAP mRNAは、リアルタイム定量RT-PCR法を用いて測定した。XIAPフォワードおよびリバースプライマー(600nM)およびプローブ(200nM)
は、エキソン3〜4および4〜5の接合部にまたがるように設計された。プライマー、およびプローブの1つは、いかなる可能性のあるゲノムDNA混入の検出も遮断するためにイントロン-エキソン境界に重なるように設計された。RNAは、ABI prism 7700配列検出システム(Sequence Detection System)(PE/ABI)において、TaqMan EZ RT-PCRキット(PE/ABI、フォスターシティー、CA)を用いて、逆転写およびPCR増幅した。RT段階についての温度サイクリング条件は、50℃で2分間、60℃で30分間、95℃で5分間とし、続いてPCR(1サイクルにつき、94℃で20秒間、60℃で1分間)を45サイクルとした。各試料のXIAP mRNAレベルは、未処理の対照細胞に対して計算した。XIAP mRNAレベルは、30XベースラインSDの閾値を用いるサイクル閾値法(Ct)により測定し、XIAPレベルは、PE/ABI供給プライマーおよびプローブを用いて、GAPDH含有量に対して標準化した。
【0135】
ウエスタンブロット分析
細胞または腫瘍組織試料は、プロテアーゼ阻害剤(Complete-Miniプロテアーゼ阻害剤錠剤;Boehringer Mannheim GmBH、マンハイム、ドイツ)を含む氷冷溶解緩衝液(50mM トリス、150mM NaCl、2.5mM EDTA、0.1% SDS、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、1% NP-40、0.02%アジ化ナトリウム)で溶解させた。氷上で30分間インキュベーションした後、試料を、10,000 rpmで15分間遠心分離し、-20℃で保存した。溶解した抽出物におけるタンパク質含有量は、界面活性剤適合性Bio-Radアッセイ法(Bio-Rad Labs、ヘルクレス、CA)を用いて測定した。等量のタンパク質(40μg/レーン)を12% SDS-ポリアクリルアミドゲルまたは4〜15%勾配SDS-ポリアクリルアミド事前作製ゲル(Bio-Rad)上で分離し、ニトロセルロース膜へ転写した。XIAP、Bcl-2(DAKO、グロストラップ、デンマーク)、Bax(Sigma、セントルイス、MO)、βアクチン(Sigma)、カスパーゼ-3(BD PharMingen、サンディエゴ、CA)、およびPARP(BD PharMingen)に対する一次抗体を用いた。二次抗体は、適当な西洋ワサビ結合型抗マウスまたは抗ラビットIgG(Promega、マディソン、WI)であった。タンパク質は、増強化学発光(ECL;Amersham Pharmacia Biotech、バッキンガムシア、英国)により検出し、Kodak自動X線撮影フィルムへの露光後、可視化した。走査型濃度測定(Molecular Dynamics、サニーヴェール、CA)は、量/面の積分によりバンド強度を定量するように行った。細胞におけるXIAP、カスパーゼ-3、Bcl-2、およびBaxの量は、ストリッピングかつリプロービングを行った上で、それらのそれぞれのレーンのβアクチンレベルに対して標準化した。
【0136】
細胞増殖および細胞生存度または細胞死の測定
H460細胞の増殖阻害は、比色定量MTT細胞生存度/増殖アッセイ法により測定した。簡単に述べると、細胞を、リポソーム-オリゴヌクレオチド複合体で4.5時間、処理し、その後、抗癌薬の存在下または非存在下、トランスフェクション試薬またはオリゴヌクレオチドを含まない培地において37℃でさらに48時間インキュベートした。MTT(25μg/ウェル)を各ウェルへ添加し、プレートを、37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション段階後、有色のホルマザン生成物を200μl DMSOの添加により溶解した。プレートを570nmの波長でマイクロタイタープレートリーダー(Dynex Technologies Inc.、シャンティイ、VA)を用いて読み取った。オリゴヌクレオチドで処理したウェルにおける生存細胞のパーセンテージは、未処理の対照に対して標準化した。すべてのアッセイは3連で行った。
【0137】
アポトーシスのフローサイトメトリーアッセイ法
細胞を、リポソーム-オリゴヌクレオチド複合体で4.5時間処理し、37℃でトランスフェクション試薬を含まない培地においてさらに48時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を収集し、試料緩衝液(Ca++およびMg++を含まないPBS中に0.5%グルコース)で2回洗浄し、70%冷エタノール中に4℃で少なくとも18時間、固定させた。試料を3000 rpmで10分間遠心分離し、その後、50μg/ml ヨウ化プロピジウム(PI)および400 U/ml リボヌクレアーゼAを含む試料緩衝液に再懸濁した。試料を、室温で30分間および氷上で30分間インキュベートし、続いて、フローサイトメトリーにより分析した。EXPOソフトウェア(Applied Cytometry Systems、サクラメント、CA)は、ヒストグラムを作製するために用い、これは壊死組織片除去後、細胞周期相分布を決定するために使用した。G1/G0下の細胞画分が、アポトーシスの細胞について代表するものとみなされた。
【0138】
核形態学
細胞をリポソーム-オリゴヌクレオチド複合体で4.5時間処理し、トランスフェクション試薬またはオリゴヌクレオチドを含まない培地において37℃でさらに48時間インキュベートした。細胞を収集し、室温で30分間、0.10μg/ml DAPI(4',6-ジアミジノ-2-2-フェニルインドール)で染色した。細胞をスライドガラスに置き、サイトスピンし、UV蛍光証明下においてLeica顕微鏡および40X 対物レンズで観察した。デジタル画像は、Imagedatabase V. 4.01ソフトウェア(Leica、ドイツ)を用いて捕捉した。
【0139】
インビボ抗腫瘍活性
効力実験は、NCI-H460を有する雄RAG2免疫不全マウスまたはLCC6腫瘍を有する雌RAG2マウスにおいて行った。処理は、腫瘍接種後3日目に開始した。食塩水(対照)、G4 ASオリゴヌクレオチド(5mg/kgまたは15mg/kg)、G4 SCオリゴヌクレオチド(5mg/kgまたは15mg/kg)を3週間の投与計画にわたって、週に5用量として毎日腹腔内に投与した。ビノレルビン(VNB、5mg/kgまたは10mg/kg)は、腫瘍接種後3日目、7日目、11日目、および17日目において、単独でまたはオリゴヌクレオチドとの組み合わせのいずれかで、尾静脈経由で静脈内に投与した。オリゴヌクレオチドをVNBと組み合わせて投与する場合、薬剤処理はODN処理の4時間後に行った。
【0140】
マウスは毎日観察した。体重測定およびストレスの徴候(例えば、無気力、波立った毛、運動失調)が、可能性のある毒性を検出するために用いられた。潰瘍化した腫瘍、または1 cm3またはそれ以上の腫瘍容積をもつ動物は殺された。腫瘍のデジタルカリパス測定値は、式:1/2[長さ(cm)]x[幅(cm)]2を用いて平均腫瘍サイズ(cm3)へ変換した。マウスあたりの平均腫瘍サイズを用いて、群あたり少なくとも2つの独立した実験から群平均腫瘍サイズ±SE(n=6頭のマウス)を計算した。
【0141】
腫瘍および組織加工
マウス腫瘍は、腫瘍接種および処理後21日目または24日目に収集した。腫瘍組織の1部分は、ホルマリン中に固定した。パラフィン包埋組織は切片にし、ヘマトキシリンおよびエオシン染色を用いる肉眼的組織病理学ならびにユビキチン発現についての免疫組織化学にかけた。腫瘍の他の部分は、ウエスタンブロット分析のために溶解緩衝液中でホモジナイズした(上記参照)。
【0142】
統計的解析
スチューデント検定が、2つの処理群間の統計的有意性を測定するために用いられた。多重比較は、一元ANOVA、およびシェレ(Shelle)検定基準(Statistica release 4.5、StatSoft Inc.、タルサ、OK)により異なる処理群を比較する事後検定を用いて行われた。データは、<0.05のP値について有意とみなした。
【0143】
実施例14:アンチセンスHIAP1オリゴヌクレオチドによる、HIAP1 RNAおよびポリペプチド発現の低下
オリゴヌクレオチドとしての15個のHIAP1アンチセンス核酸塩基オリゴマーのライブラリーは、ウエスタンブロット分析によりタンパク質ノックダウンについて、ならびに2つの異なる条件下で上の実施例3に記載したプライマーおよびプローブを用いるTaqManによりRNAノックダウンについて、スクリーニングした。HIAP1 RNAレベルは、標準的ノーザンブロット分析またはRT-PCR技術を用いて検出できる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、基礎条件下またはシクロヘキシミド誘導条件下(毒性下の用量での24時間処理)において細胞へ投与した。シクロヘキシミド(CHX)は、処理した細胞系に応じて、HIAP1 mRNAの10倍〜200倍の誘導へと導くことができる。これは、次に、ウエスタンブロットに見られるような(70kDaバンド)、HIAP1タンパク質の増加へと導く。CHXのこの効果は、2つの別個の作用機構による。第一に、CHXは、NFκB、既知のHIAP1の転写誘導物質を、NFκBの阻害剤である不安定なタンパク質、IκBの新たな合成を遮断することにより、活性化する。この効果は、ピューロマイシン、もう一つのタンパク質合成阻害剤、およびTNF-αにより模倣され、IκBのリン酸化、ユビキチン化および分解へと導くシグナル伝達カスケードを誘導する。新たな転写を遮断するためのアクチノマイシンDと、CHXとの存在下では、アクチノマイシンDとピューロマイシンまたはTNF-αとの組み合わせとは対照的に、HIAP1メッセージの消失の比率が減少することに見られるように、CHXのみがHIAP1 mRNAをさらに安定化させる。
【0144】
SF295神経膠芽細胞腫細胞は、リポフェクチンおよびオリゴヌクレオチド(スクランブルサバイビン、オリゴヌクレオチド無し、アンチセンスAPO 1〜APO 15)でトランスフェクトし、または処理されないままとした。RNAは、トランスフェクション後6時間で、細胞から単離し、HIAP1 mRNAのレベルを、定量PCR(TaqMan分析)により測定し、スクランブルサバイビンオリゴヌクレオチドトランスフェクションについての値を1.0として設定して、GAPDH mRNAに対して標準化した。この実験の結果は、3つの別々の実験をまとめて図21に示す。スクランブルサバイビンオリゴヌクレオチド、偽のトランスフェクションおよび未処理(トランスフェクトしていない)細胞は、すべて、類似したHIAP1 mRNAレベルを示した。15個のアンチセンスオリゴヌクレオチドのうち、7個(APO 1、2、7、8、9、12、15)は、偽のトランスフェクションまたはサバイビンのスクランブル対照オリゴヌクレオチドトランスフェクション
と比較した場合、ほぼ50%の減少を示した(図21)。オリゴヌクレオチドのいくつかは、非特異的な毒性のオリゴヌクレオチドに対してストレス応答である可能性があるHIAP1 mRNAを誘導した。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、たとえそのメッセージが増加しているとしても、オリゴヌクレオチドが翻訳過程に干渉できる場合には、HIAP1タンパク質レベルをノックダウンするのになお有効である可能性がある。
【0145】
HIAP1タンパク質およびmRNA発現に対するHIAP1アンチセンス核酸塩基オリゴマーの効果はまた、HIAP1を発現するように誘導された細胞において試験した。SF295細胞は、オリゴヌクレオチドでトランスフェクトするか、または偽のトランスフェクションとした。その後、トランスフェクトした細胞は、70kDa HIAP1 mRNAおよびタンパク質を誘導するように24時間、10μg/ml シクロヘキシミドで処理した。タンパク質レベルは、抗HIAP1ポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロット分析により測定し、同ブロットをリプロービングしたアクチンタンパク質に対して標準化した。ウエスタンブロット走査結果を図22Aに示す。濃度測定の走査結果を偽の結果(100%に設定)に対してプロットした(図22B)。最も効力のあるアンチセンスオリゴヌクレオチドを容易に同定するために、50%に線を引いている。トランスフェクションの過程自体(例えば、偽またはスクランブルサバイビン)は、ウエスタン免疫ブロットに示されるように、未処理の試料と比較して、HIAP1タンパク質を誘導している。
【0146】
15個の試験した核酸塩基オリゴマーのうち、それらの6個(APO 1、2、7、8、12、および15)は、タンパク質およびmRNAアッセイの両方において、高活性を示すか、または有意な活性があり、APO 4、6、11、13、14について(図21)、およびAPO 2に対する対照オリゴヌクレオチド(ミスマッチまたは逆極性、本文下記ならびに図23および図24を参照)により見られるような、HIAP1 mRNAのストレス誘導性増加を引き起こさなかった。APO 6はまた、総タンパク質量の一般的な減少により見られるような、毒性の証拠を示したことに留意されたい(図23)。
【0147】
シクロヘキシミド誘導条件下におけるHIAP1アンチセンスオリゴヌクレオチドの効力をさらに調べるために、HIAP1のイントロン内のAlu反復を標的としHIAP1 mRNAおよびタンパク質のCHX誘導上方制御の最大の遮断をもたらすAPO 2でトランスフェクションを行った後、6時間目に、HIAP1 mRNAの変化をTaqManリアルタイムPCRにより測定した。この実験の対照は、APO 2についての3個のオリゴヌクレオチド:1個のスクランブル配列(同じ塩基組成だが、順序がランダムである、
)、1個の逆極性(同じ塩基組成、同じ配列順序だが、反対方向になっている、
)、および1個のミスマッチ配列(19個の塩基のうち4個の塩基ミスマッチを含む、
)であった。
【0148】
APO 2の細胞へのトランスフェクションは、結果として、スクランブルサバイビン対照と比較してmRNAを50%減少させ、タンパク質の結果と完全に一致していたが、APO 2についてのスクランブル対照(図24におけるH1 sc apo 2)は、HIAP1 mRNAレベルを全く変化させなかった(ここでは2度、2つの異なる実験において繰り返された)。しかしながら、ミスマッチ対照ODN(H1 mm apo2)および逆極性対照オリゴヌクレオチド(H1 RV apo 2)は、6時間目にHIAP1 mRNAの6〜7倍の誘導を示した。これらのオリゴヌクレオチドは、予想どおり、もはやHIAP1を標的とはしないが、それでもなお、Alu反復を、これらの配列の縮重および反復性質のために、標的にしている可能性がある。それゆえに、これらの2個の対照は細胞に対して毒性であり、HIAP1の誘導へと導くストレス応答を引き起こす可能性がある。この効果は、アンチセンスAPO 2オリゴヌクレオチドでも起こりうるが、この場合、APO 2はまた、スクランブルサバイビン対照と比較してHIAP1 mRNAの相対的減少をもたらす誘導されたHIAP1 mRNAの分解を引き起こし、かつトランスフェクションおよびCHX処理後のHIAP1タンパク質の相対的な折り畳み誘導を、スクランブルサバイビン対照オリゴヌクレオチドと比較して減少させる。
【0149】
6個のアンチセンスHIAP1核酸塩基オリゴマーは、イントロンの配列に対する2個の非常に効力のあるオリゴヌクレオチドを含む(APO 1およびAPO 2、APO 2がより良い活性を示している)。これらのオリゴヌクレオチドは、癌または自己免疫疾患の治療について治療的に用いることができる。イントロンの配列に対するオリゴヌクレオチドは、プレmRNA(非常に短命な標的)のみを標的にし、成熟したプロセシング後のHIAP1の型を標的にしない可能性が高い。典型的には、イントロンは、イントロン-エキソン境界または分枝点を標的にすることによりスプライシングを変えたい場合を除いて、アンチセンスについて標的にされない。これらは、通常、メッセージのリボヌクレアーゼによる分解よりむしろ、エキソンの読み飛ばしを生じる。両方の機構はアポトーシスの促進に有利である可能性が高いが、読み飛ばしにより、HIAP1の最初の2つの重要なBIRドメインをコードするエキソンの損失が生じる。APO 2アンチセンスODNはまた、19個のうちの18個の連続した塩基についてサバイビンのイントロンを標的とするが、本発明者らは、サバイビンタンパク質の一切の損失を見ることはなかった;HIAP1のみがオリゴ処理後に減少し、HIAP1アンチセンスオリゴヌクレオチドの特異性を実証した)。これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、HIAP1イントロンおよび可能性的に多くの他の遺伝子におけるAlu配列をヒットし、癌細胞が死滅するように誘導するが(下記参照)、HIAP1およびいくつかの他の重要な遺伝子の下方制御が原因である可能性があり、従って、それが正常細胞にとってあまり毒性でない場合には治療的に評価される結果となる可能性がある。
【0150】
癌細胞は、報告によれば、より多くのAlu含有転写物を有し、それゆえに、Aluを標的とする核酸塩基オリゴマーでのアポトーシス誘導に対して感受性がより高い可能性がある。さらになお、核酸塩基オリゴマーAPO 1およびAPO 2のこの死滅効果は、Alu配列およびHIAP1の両方を同時に標的とする複合効果による可能性がある。この二重効果は、細胞が特定の毒性剤にさらされる場合、NFκB経路によるHIAP1誘導の正常なストレス応答を阻止するための効果的な方法を生じるものと思われる。このストレス応答は、おそらく、癌細胞の抗アポトーシスプログラムの一部である可能性が高い。HIAP1発現を遮断することにより、本発明者らは、この抗アポトーシスのストレス応答を阻止し、癌細胞の消滅を促進する。
【0151】
実施例15:HIAP1アンチセンスオリゴヌクレオチドによる、細胞毒性および化学増感の増大
SF295細胞の化学増感に対するHIAP1アンチセンス核酸塩基オリゴマーの効果もまた評価された。細胞は、3個の異なるアンチセンスオリゴヌクレオチド(APO 7、APO 15およびSC APO 2(対照))の1個でトランスフェクトした。オリゴヌクレオチドでのトランスフェクション後24時間で、細胞をさらに24時間アドリアマイシンとインキュベートし、その後WST-1をアッセイすることにより細胞生存率について評価した。
【0152】
上記のHIAP1オリゴヌクレオチドをトランスフェクトし、その後、漸増濃度のアドリアマイシンで処理したSF295細胞についてのWST-1生存曲線を図25に示す。HIAP1 mRNAの減少をもたらす2個のオリゴヌクレオチドではまた、HIAP1 mRNAレベルを低下させないオリゴヌクレオチドで処理した細胞と比較して、アドリアマイシンで処理した場合に生存率における減少がみられた。従って、アンチセンスまたは他の手段によりHIAP1レベルを低下させることにより、多くの化学療法剤の細胞毒性作用に高い抵抗性をもつ神経膠芽細胞腫細胞系を化学増感させることができる。
【0153】
本発明の方法に用いることができる追加の89個のHIAP1アンチセンス配列を、表6に示す。ヒトHIAP1とヒトHIAP2との間で100%同一である配列、または1つもしくは2つのミスマッチをもつ配列は、太字になっている。
【0154】
【表6】
【0155】
本発明者らはまた、アンチセンス核酸塩基オリゴマーとしての使用に適した配列についてヒトHIAP2を分析した。同定された配列を表7に示す。
【0156】
【表7】
【0157】
他の態様
米国特許第5,919,912号、第6,156,535号、および第6,133,437号を含む、本明細書で言及されているすべての刊行物および特許出願は、各独立した刊行物または特許出願が、参照として組み入れられるように、詳細かつ個々に示されるのと同程度まで、参照として本明細書に組み入れられる。
【0158】
本発明は、その特定の態様に関して記載しているが、それはさらなる改変が可能であり、本出願は、一般に、本発明の原理に従い、かつ本発明が属する技術分野内の公知もしくは通常の実施内でみられる、上に示される本質的な特徴に適用されうるそのような本開示からの逸脱を含む、本発明のいかなる変化、使用または適応も網羅するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】総タンパク質量に対するXIAPタンパク質発現へのアンチセンスXIAPオリゴヌクレオチドの効果を示すグラフである(図1A、1C、1E、1G、1Iおよび1K)。図1B、1D、1F、1H、1J、および1Lは、上のXIAPタンパク質結果を標準化するために用いた偽のトランスフェクション結果と比較し、各オリゴヌクレオチドトランスフェクションについて示した総タンパク質濃度値である。
【図2】XIAP RNA(図2A)およびXIAタンパク質(図2B)への、単独または組み合わせでの様々なアンチセンスXIAPオリゴヌクレオチドの効果を示すグラフである。図2Cは、偽のトランスフェクション結果と比較した各オリゴヌクレオチドトランスフェクションについての総タンパク質濃度値を示したグラフであり、図2Bに示したXIAPタンパク質結果を標準化するために用いられた。
【図3】31nMの量での4x4混合骨格(MBO)FG8またはE12オリゴヌクレオチドの効果を示すグラフである。H460肺癌細胞は、125nM MBOおよびリポフェクタミン2000を用いて、1日、2日または3日の連続した日において18時間トランスフェクションを行った。ウエスタン分析のための試料は、表示された時間において収集した。走査濃度測定を行い、XIAPタンパク質レベルを、GAPDHに対して標準化し、100%に設定した偽対照と比較した。示すパーセンテージは、特定のスクランブル対照に対するXIAPタンパク質ノックダウン%を表している。
【図4】63nMの量での4x4混合骨格(MBO)FG8またはE12オリゴヌクレオチドの効果を示すグラフである。H460肺癌細胞は、125nM MBOおよびリポフェクタミン2000を用いて、1日、2日または3日の連続した日において18時間トランスフェクションを行った。ウエスタン分析のための試料は、表示された時間において収集した。走査濃度測定を行い、XIAPタンパク質レベルを、GAPDHに対して標準化し、100%に設定した偽対照と比較した。示すパーセンテージは、特定のスクランブル対照に対するXIAPタンパク質ノックダウン%を表している。
【図5】細胞生存度(図5A、5Cおよび5D)、ならびにアドリアマイシンの存在下での化学増感(図5B)に対するアンチセンスXIAPオリゴヌクレオチドの効果を示すグラフである。
【図6】インビトロでのH460細胞におけるXIAP mRNAのオリゴヌクレオチドによる特異的下方制御を示すグラフである。リポフェクタミン2000単独(LFA)、または1.2μMのオリゴヌクレオチドF3、G4、C5、AB6、DE4、もしくはD7、もしくはそれぞれの逆極性(RP)もしくはスクランブル(SC)オリゴヌクレオチド対照と共にリポフェクタミン2000で処理したH460細胞におけるXIAP mRNAレベルを示す。XIAP mRNAの相対量のリアルタイムRT-PCR定量を、トランスフェクション後6時間目に行った。すべてのデータを、それぞれの実験からの三連の平均±標準偏差(SD)として提示する。同一の実験条件下で維持した未処理の細胞(対照)におけるXIAP mRNAのレベルに、1の値を割当てた。
【図7】様々なPS-XIAPオリゴヌクレオチドでのトランスフェクション後のH460細胞におけるXIAP RNAレベルを示すグラフである。H460ヒト肺癌細胞は、1μM PS-オリゴヌクレオチドおよびリポフェクタミン2000を用いて6時間、トランスフェクションを行った。細胞は、その後、TaqMan分析用に収集した。
【図8】4x4 MBOでのトランスフェクション後9時間目のH460細胞におけるXIAP RNAレベルを示すグラフである。H460細胞は、62.5nM〜1μMの4x4 MBOおよびリポフェクタミン2000を用いて、9時間、トランスフェクションを行った。細胞は、その後、TaqMan分析用に収集した。
【図9】4x4 MBOでのトランスフェクション後24時間目のH460細胞におけるXIAPタンパク質ノックダウンを示すグラフである。H460細胞は、1μM 4x4 MBOおよびリポフェクタミン2000を用いて、24時間、トランスフェクションを行った。細胞は、その後、ウエスタンブロット分析用に収集した。走査濃度測定を行い、XIAPタンパク質レベルをアクチンに対して標準化し、100%に設定したそれらの特定のスクランブル(sm、rm)対照と比較した。
【図10】インビトロでのH460細胞におけるXIAPタンパク質のアンチセンスによる特異的下方制御を示す概要図である。リポフェクタミン2000単独(LFA)、またはLFAと1.2μMのXIAPオリゴヌクレオチドF3、G4、もしくはC5、もしくはそれらのそれぞれのオリゴヌクレオチド対照(RP、SC)で処理したH460細胞におけるXIAPタンパク質レベルを示す。XIAPタンパク質レベルは、ウエスタンブロット法により分析し(図10A)、タンパク質の量は、濃度測定により定量した(図10B)。XIAPレベルは、細胞のアクチンレベルに対して標準化し、未処理の対照(CNT)レベルと比較した。
【図11】カスパーゼ活性化に対するXIAPオリゴヌクレオチドによる効果を示す概要図である。トランスフェクトしたH460細胞における、対照と比較した、1.2μMでのXIAPオリゴヌクレオチドF3、G4、もしくはC5、またはそれらのそれぞれのRPおよびSCのODN対照の、プロカスパーゼ-3、PARP(完全長(116kDa)およびプロセシングされたもの(85kDa)両方)の発現(図10A)、ならびにBcl-2およびBaxタンパク質レベル(図10B)に対する効果を示す。タンパク質発現は、ウエスタンブロットにより分析した。Bcl-2およびBaxタンパク質レベルは、細胞のアクチンレベルに対して標準化し、濃度測定により定量した。Bcl-2/Baxの比率は、2つまたは3つの独立した実験の平均として提示し、対照(CNT)細胞における比率を1に設定する。
【図12】アポトーシスのXIAPオリゴヌクレオチド特異的誘導を示す概要図である。アポトーシスの誘導は、1.2μMのXIAP G4 ASオリゴヌクレオチド、G4 SCオリゴヌクレオチドまたは未処理の対照(CNT)で処理されたH460細胞において測定した。図12Aは、ヨード化プロピジウム(PI)染色およびフローサイトメトリーにより測定される場合の、G0/G1下(アポトーシス)のDNA含有量を有する細胞のパーセンテージを示す。図12Bは、DAPIで染色されたオリゴヌクレオチド処理H460細胞の核形態を示す。矢印は、核DNA凝縮または断片化の、アポトーシスに特徴的な形態をもつ細胞を指している。
【図13】H460細胞の生存度に対するXIAP G4 ASオリゴヌクレオチド処理の効果を示すグラフである。細胞は、LFA単独またはG4 ASオリゴヌクレオチドもしくはG4 SCオリゴヌクレオチドとのLFA-オリゴヌクレオチド複合体の漸増濃度で処理し、細胞生存度は、処理の24時間後、MTTアッセイ法により測定した。データは、3つの独立した実験の平均±SDを表す。図13Bは、MTTアッセイ法により測定した場合の、ドキソルビシン(DOX)、タキソール、ビノレルビン(VNB)もしくはエトポシド(Etop)の存在下または非存在下、LFAと、0.4μM用量のG4 ASオリゴヌクレオチドまたはG4 SCオリゴヌクレオチドとの複合体で処理した後のH460死細胞のパーセンテージを示すグラフである。データは、3つの独立した実験の平均±SDを表す。
【図14】XIAP AS 2x2 MBOおよびビノレルビンで処理したマウスにおける相対的H460腫瘍増殖を示すグラフである。50μg/g腫瘍塊におけるオリゴヌクレオチドの腫瘍内注射が、皮下にH460細胞異種移植片を有するSCID-RAG2マウスにおいて行われた。この処理は、ビノレルビンの投与と組み合わされた。
【図15】XIAP AS PS-オリゴヌクレオチドを全身性に処理したマウスにおける平均H460細胞腫瘍サイズを示すグラフである。皮下にH460細胞異種移植片が移植されたSCID-RAG2マウスに対するXIAP AS PS-オリゴヌクレオチドの全身性送達(i.p.)は、対照と比べて腫瘍のサイズを縮小させた。
【図16】XIAP AS PS-オリゴヌクレオチドを全身性に処理したマウスにおけるMDA-MB-435/LCC6ヒト乳癌細胞(LCC細胞)腫瘍サイズを示すグラフである。乳房脂肪パッドにLCC6細胞異種移植片を移植した雌SCID-RAG2マウスに対するXIAP AS PS-オリゴヌクレオチドの全身性送達(i.p.)は、対照と比べて腫瘍のサイズを縮小させた。
【図17】腫瘍増殖および腫瘍XIAPタンパク質レベルに対するG4オリゴヌクレオチドのインビボの効果を示す概要図である。雌SCID-RAG2マウスにおける皮下H460細胞異種移植片の増殖に対する、全身性に送達された裸のXIAP G4 ASオリゴヌクレオチドまたはG4 SCオリゴヌクレオチドの抗腫瘍効力。すべてのデータは、平均±SEM(n=6マウス/群)として表す。
【図18】ウエスタンブロットにより分析し、かつ濃度測定により定量した、G4 ASオリゴヌクレオチド、G4 SCオリゴヌクレオチド、または媒質単独(対照)で21日間処理した後のSCID-RAG2マウスに移植されたH460腫瘍異種移植片におけるXIAPタンパク質発現レベルを示す概要図である。XIAPレベルは、細胞のアクチンレベルに対して標準化した。すべてのデータは、平均±SD(n=3)として表す。
【図19】21日間にわたるXIAP G4 ASオリゴヌクレオチドまたはG4 SCオリゴヌクレオチドの15mg/kgの全身性投与後のSCID-RAG2マウスにおける移植されたH460腫瘍の組織病理に対するG4オリゴヌクレオチドのインビボの効果を示す顕微鏡写真である。図19Aは、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した腫瘍切片を示す。図19Bは、腫瘍切片におけるユビキチン発現の免疫組織化学を示す。代表的な腫瘍顕微鏡写真が示される。内部尺度マーカーは、100μmに等しい。
【図20】XIAPオリゴヌクレオチドと組み合わせたビノレルビン(VNB)のインビボ効力の増加を示すグラフである。XIAP G4 ASオリゴヌクレオチドもしくはG4 SCオリゴヌクレオチドの存在下または非存在下、H460腫瘍異種移植片に対するVNBの抗腫瘍効力を、SCID-RAG2マウスにおいて測定した。図20Aは、単一の薬剤による抗腫瘍活性を示し、一方、図20Bは、組み合わせたVNBおよびG4オリゴヌクレオチドによる抗腫瘍活性を示す。すべてのデータは、平均±SEM(n=6マウス/群)として表す。
【図21】HIAP1 RNAレベルに対するHIAP1オリゴヌクレオチドの効果を示すグラフである。
【図22】HIAP1タンパク質のシクロヘキシミド誘導性上方制御を遮断する細胞の能力に対する、HIAP1オリゴヌクレオチドの効果を示すウエスタンブロットの濃度測定走査を示す概要図である。
【図23】総タンパク質量により測定される場合の細胞毒性に対するHIAP1オリゴヌクレオチドの効果を示すグラフである。
【図24】HIAP1オリゴヌクレオチドAPO 2についての配列特異性の確証を示すグラフである。
【図25】薬剤耐性SF295神経膠芽細胞腫の化学増感に対するHIAP1オリゴヌクレオチドの効果を示すグラフである。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図1J】
【図1K】
【図1L】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
本発明は、アンチセンスIAP核酸塩基オリゴマーおよびアポトーシスを誘導するためにそれらを用いる方法に関する。
【0002】
細胞が死滅する一つの方法はアポトーシスまたはプログラム細胞死と呼ばれる。アポトーシスは、しばしば、健康な組織の発生および維持の正常な部分として起こる。その過程は非常に速やかに起こりうるので検出するのが難しい。
【0003】
アポトーシス経路は、胚発生、ウイルス病原、癌、自己免疫疾患、および神経変性疾患、加えて他の事象において重要な役割を果たしていることが今や知られている。アポトーシス応答の不全は、癌、エリテマトーデスおよび多発性硬化症のような自己免疫疾患の発生、ならびにヘルペスウイルス、ポックスウイルスおよびアデノウイルスに関連したものを含むウイルス感染に関係してきた。
【0004】
癌におけるアポトーシスの重要性は、近年、明らかになってきた。1970年代後半における成長促進発癌遺伝子の同定によって、長年の間、癌生物学における研究を支配する細胞増殖にほとんど全世界の焦点が向けられた。抗癌療法は、「正常な」細胞に対して急速に分裂する癌細胞を優先的に標的にするという長年にわたるドグマが保たれた。増殖がいくらか遅い腫瘍は容易に治療され、一方で多くの急速に分裂する腫瘍型は抗癌療法に極めて抵抗性であることから、この解釈は完全には満足できるものではない。癌分野における進歩により、異常増殖はプログラム細胞死の正常な経路を実行することの不全としてみなされるという、癌生物学における新しいパラダイムが、現在導かれている。正常細胞は、様々な成長因子を通して、それらの隣接細胞から連続的なフィードバックを受け、この関係から除かれた場合に、「自殺」をする。癌細胞は何らかの形でこれらの命令を回避し、不適切な増殖を継続する。放射線療法および多くの化学療法を含む多くの癌療法は、以前は、細胞の損傷を引き起こすことにより作用すると考えられていたが、現在、実際はアポトーシスを誘導することにより働くと考えられている。
【0005】
正常細胞型および癌細胞型の両方が、アポトーシスのトリガーに対する幅広い範囲の感受性を示すが、この抵抗性の決定子は、現在やっと調査段階にある。多くの正常細胞型は、致死下の量の放射線または細胞毒性化学薬品に応答して一時的増殖停止を起こすが、近くの癌細胞はアポトーシスを起こす。所定の用量におけるこの示差的な効果は、抗癌療法の成功を可能にする決定的な治療を見出す手段を提供する。それゆえに、癌細胞のアポトーシスへの抵抗性が癌治療失敗の主な範疇として持ち上がることは驚くべきことではない。
【0006】
哺乳動物細胞におけるBcl-2およびIAP(アポトーシスの阻害剤(inhibitor-of apoptosis))ファミリーを含む、アポトーシスを阻害するいくつかの強力な内因性タンパク質が同定された。後者のファミリーの特定のメンバーは、細胞死の実行に関与する終末のエフェクターカスパーゼ、すなわち、casp-3およびcasp-7、加えて、癌化学療法誘発性細胞死の仲介にとって重要な、鍵となるミトコンドリアのイニシエータのカスパーゼ、casp-9を直接的に阻害する。IAPは、唯一の知られている内因性カスパーゼ阻害剤であり、このように、アポトーシスの制御において中心的な役割を果たす。
【0007】
IAPは、いくつかの癌の発生に寄与することが仮定され、一つの特定のIAP(cIAP2/HIAP1)を含む仮定された原因となる染色体転座がMALTリンパ腫において同定された。急性骨髄性白血病の患者では、最近、XIAP上昇、予後不良、および短い生存において相関が実証された。XIAPは、NCIパネルの多くの腫瘍細胞系で高度に過剰発現した。
【0008】
改良された癌療法および、特に、アポトーシスを起こすように癌細胞を誘導し、そのような細胞において供給される抗アポトーシスのシグナルを無効にすることができる治療法の必要性が存在している。
【発明の概要】
【0009】
発明の概要
一般に、本発明は、細胞においてアポトーシスを誘導するために有用な方法および試薬を特徴とする。本発明の方法および試薬は、癌および他の増殖性疾患の治療に有用である。
【0010】
本発明は、IAPをコードするポリヌクレオチドの機能を調節することに使用するための核酸塩基オリゴマー、特にオリゴヌクレオチドを特徴とする。これらのオリゴマーは、産生されるIAPの量を低下させ、IAPを正常に発現する細胞にアポトーシスを起こす。これは、IAPをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする核酸塩基オリゴマーを供給することにより達成される。IAPポリヌクレオチド(例えば、RNA、DNA)との核酸塩基オリゴマーの特異的なハイブリダイゼーションは、そのIAPポリヌクレオチドの正常な機能に干渉し、産生されるIAPタンパク質の量を低下させる。標的に特異的にハイブリダイズする化合物による標的核酸の機能の調節は、一般に「アンチセンス」と呼ばれている。
【0011】
一つの局面において、本発明は、30核酸塩基長までの核酸塩基オリゴマーで、オリゴマーが、配列番号:1〜99、143、147、151、163〜260、287、289および300〜460より選択される配列の少なくとも8個の連続した核酸塩基を含むことを特徴とする。望ましくは、細胞に投与される場合、オリゴマーは、IAPの発現を阻害する。
【0012】
特定の態様において、核酸塩基オリゴマーは、配列番号:1〜99、143、147、151、163〜260、287、289および300〜460より選択される配列を含む。核酸塩基オリゴマーは、前記の配列番号の1つまたは複数からなる(または本質的に構成される)ことが望ましい。例えば、核酸塩基オリゴマーは、配列番号:97、98、99、143、147、151、287および289より選択される配列を含むXIAPアンチセンス核酸、配列番号:300〜389より選択される配列を含むHIAP1アンチセンス核酸、または配列番号:390〜460より選択される配列を含むHIAP2アンチセンス核酸でありうる。特に望ましい態様において、本発明は、両側に4個の2'-O-メチルRNA残基を隣接している11個のDNA残基を有する核酸塩基オリゴマーを特徴とし、以下の配列の1つからなる。
【0013】
本発明の核酸塩基オリゴマーは、少なくとも1つの修飾された結合(例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロジチオエート、またはホスホセレネート結合)、修飾された核酸塩基(例えば、5-メチルシトシン)、および/または修飾された糖部分(例えば、2'-O-メトキシエチル基または2'-O-メチル基)を含みうる。一つの態様において、オリゴマーは、キメラのオリゴマー(ホスホロチオエート結合により共に連結された少なくとも1個、2個、3個または4個の2'-O-メチルRNA残基を両側に隣接している、ホスホロチオエート結合またはホスホジエステル結合により共に連結されたDNA残基を含むオリゴヌクレオチド)である。
【0014】
もう一つの態様において、本発明は、細胞においてアポトーシスを促進させる方法を特徴とする。この方法は、IAP(例えば、XIAP、HIAP1またはHIAP2)の発現が阻害されるように、本発明の核酸塩基オリゴマーを細胞に投与する段階を含む。核酸塩基オリゴマーは、例えば、アンチセンス化合物、二本鎖RNA、リボザイムの構成要素でありうる。この投与段階は、単独で、または第二段階(化学療法剤、生物学的応答改変剤、および/または化学増感剤の投与)と組み合わせて行ってもよい。細胞は、インビトロまたはインビボでありうる。一つの態様において、細胞は、癌細胞(例えば、ヒト癌細胞)またはリンパ系もしくは骨髄系起源の細胞である。
【0015】
関連した局面において、本発明は、増殖性疾患(例えば、癌、リンパ組織増殖性疾患または脊髄異形性症候群)を有する動物を、本発明の核酸塩基オリゴマーの有効量を動物に投与することにより、治療するまたはそのような疾患の発生を防ぐための方法を特徴とする。
【0016】
癌は、例えば、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、脊髄異形性症候群、慢性リンパ性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝腫、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上皮細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫でありうる。癌を治療する場合、1つまたは複数の化学療法剤、生物学的応答改変剤および/または化学増感剤も投与することが望ましい場合がある。望ましくは、1つまたは複数のこれらの薬剤の投与は、核酸塩基オリゴマーの投与の5日以内である。典型的化学療法剤は、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、ビノレルビン、エトポシド、タキソールおよびシスプラチンである。結果として、所望の部位における有効量を生じる任意の投与経路が用いられうるが、特に望ましい経路は、静脈内および腫瘍内投与による。
【0017】
もう一つの態様において、本発明は、本発明の核酸塩基オリゴマーおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を特徴とする。望ましい場合には、薬学的組成物は、追加成分(例えば、コロイド分散系または化学療法剤)をさらに含みうる。
【0018】
本発明はまた、XIAP、HIAP1またはHIAP2のmRNAを切断することができる触媒性RNA分子を特徴とする。望ましい態様において、触媒性RNA分子は、それの結合アームにおいて、本発明の核酸塩基オリゴマー(例えば、表1、表2、表6、および表7のいずれか一つの核酸塩基配列)に対応する少なくとも8個の連続した核酸塩基を含む。RNA分子は、望ましくは、ハンマーヘッドモチーフ型であるが、ヘアピンの、δ型肝炎ウイルス、グループ1イントロン、VS RNAまたはリボヌクレアーゼP RNAのモチーフ型でもありうる。
【0019】
本発明はまた、哺乳動物細胞における発現のために配置された本発明の1つまたは複数の触媒性RNA分子をコードする核酸を含む発現ベクターを特徴とする。
【0020】
本発明はまた、癌またはリンパ組織増殖性疾患を有する動物を、上記の触媒性RNA分子の有効量またはそのような触媒性RNA分子をコードする発現ベクターを動物に投与することにより治療する方法を特徴とする。
【0021】
さらにもう一つの局面において、本発明は、21個〜29個の間の核酸塩基を有する二本鎖RNA分子であって、表1、表2、表6、および表7のいずれか1つの配列に対応する少なくとも8個の連続した核酸塩基が存在していることを特徴とする。
【0022】
関連した局面において、本発明はまた、50個〜70個の間の核酸塩基を有する二本鎖RNA分子であって、RNA分子が、表1、表2、表6、および表7のいずれか1つの配列に対応する最小8個の連続した核酸塩基を含む21個〜29個の間の核酸塩基の第一ドメイン;第一ドメインに相補的な第二ドメイン;ならびに第一および第二ドメインが二本鎖RNA分子を形成するように第一と第二ドメインとの間に位置している、二重鎖(duplex)形成するためのループドメインを有することを特徴とする。本発明はまた、そのような二本鎖RNAをコードする発現ベクター(例えば、アデノウイルスベクターまたはレトロウイルスベクター)を特徴とする。
【0023】
本発明はまた、癌またはリンパ組織増殖性疾患を有する動物を、上記の二本鎖RNA分子の有効量を動物に投与することにより治療する方法を特徴とする。
【0024】
「核酸塩基オリゴマー」とは、結合基により共に連結された少なくとも8個の核酸塩基の鎖を含む化合物を意味する。この定義には、修飾されているおよび修飾されていない双方の、天然および非天然のオリゴヌクレオチド、加えて、タンパク質核酸(Protein Nucleic Acid)、ロックド核酸(locked nucleic acid)およびアラビノ核酸(arabinonucleic acid)のようなオリゴヌクレオチド模倣体が含まれる。下記の「オリゴヌクレオチドおよび他の核酸塩基オリゴマー」と題する項にて本明細書で詳細に記載されているものを含む、多数の核酸塩基および結合基を本発明の核酸塩基オリゴマーに用いることができる。
【0025】
「タンパク質」または「ポリペプチド」もしくは「ポリペプチド断片」とは、翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)にかかわらず、2個より多いアミノ酸の任意の鎖を意味し、天然に存在するポリペプチドもしくはペプチドのすべてまたは部分を構成する、または天然に存在しないポリペプチドもしくはペプチドを構成する。
【0026】
「アポトーシス」とは、死んでいく細胞が、細胞膜泡形成、細胞体収縮、クロマチン凝縮およびDNAラダー形成を含む一連のよく特徴付けられた生化学的に顕著な特徴を示す細胞死の過程を意味する。アポトーシスにより死滅する細胞は、神経細胞(例えば、脳卒中、パーキンソン病およびアルツハイマー病のような神経変性疾患の経過中に)、心筋細胞(例えば、心筋梗塞後またはうっ血性心不全の経過にわたって)、および癌細胞(例えば、放射線または化学療法剤への曝露後)を含む。軽減されない環境的ストレス(例えば、低酸素ストレス)により、細胞は、可逆性であるアポトーシス経路の初期相(すなわち、アポトーシス経路の初期における細胞は救出されうる)に入る可能性がある。アポトーシスの後期相(拘束相)においては細胞は救出されず、結果として死滅するように拘束される。
【0027】
多様な種類の細胞においてアポトーシスを刺激するおよび阻害することがわかっているタンパク質および化合物は、当技術分野においてよく知られている。例えば、カスパーゼ(ICE)ファミリーの細胞内発現および活性化は、アポトーシスの細胞死を誘導するまたは刺激するが、IAPの発現またはBcl-2ファミリーのいくつかのメンバーは、アポトーシスの細胞死を阻害する。さらに、特定の細胞型において細胞死を阻害する生存因子がある。例えば、NGFのような神経栄養因子は、神経細胞のアポトーシスを阻害する。
【0028】
「IAP遺伝子」とは、少なくとも1つのBIRドメインを有するポリペプチドをコードし、かつ他の細胞内または細胞外送達方法により供給される場合、細胞または組織においてアポトーシスを調節する(阻害するまたは促進する)ことができる遺伝子を意味する(例えば、米国特許第5.919,912号を参照)。好ましい態様において、IAP遺伝子は、ヒトもしくはマウスのXIAP、HIAP1、またはHIAP2(それぞれは、米国特許第6,156,535号に記載されている)の少なくとも1つと約50%またはそれ以上のヌクレオチド配列同一性(例えば、少なくとも85%、90%または95%)をもつ遺伝子である。好ましくは、同一性が測定される配列の領域は、少なくとも1つのBIRドメインおよび環ジンクフィンガードメインをコードする領域である。哺乳動物のIAP遺伝子は、任意の哺乳動物供給源から単離されるヌクレオチド配列を含む。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0029】
「IAPタンパク質」または「IAPポリペプチド」とは、IAP遺伝子によりコードされるポリペプチドまたはその断片を意味する。
【0030】
「IAP生物活性」とは、IAPポリペプチドによりインビボまたはインビトロで引き起こされることがわかっている任意の活性を意味する。
【0031】
「アポトーシスを促進すること」とは、与えられた細胞集団(例えば、癌細胞、リンパ球、線維芽細胞または任意の他の細胞)においてアポトーシスする細胞の数を増加させることを意味する。与えられたアッセイにおいてアポトーシス促進化合物により与えられるアポトーシス促進の程度は異なるが、当業者は、IAPにより別のやり方で制限されたアポトーシスを促進する核酸塩基オリゴマーを同定する、アポトーシスレベルの統計的に有意な変化を測定することができることは、認識されているものと思われる。好ましくは、「アポトーシスを促進すること」とは、アポトーシスを起こす細胞の数の増加が、本発明の核酸塩基オリゴマーを投与されないが、他の点では実質的に類似した様式で処理された細胞に対して、少なくとも10%、より好ましくは増加が25%または50%までにもなる、および最も好ましくは増加が少なくとも1倍であることを意味する。好ましくは、モニターされる試料は、通常には不十分なアポトーシスを起こす細胞の試料である(すなわち、癌細胞)。アポトーシスレベルの変化(すなわち、促進または低下)を検出するための方法は本明細書に記載されている。
【0032】
標的遺伝子(例えば、IAP)の「発現を阻害する」核酸塩基オリゴマーとは、標的mRNAまたはそのようなmRNAによりコードされるタンパク質の量を、未処理の対照に対して、少なくとも約5%、より望ましくは少なくとも約10%、25%、または50%にまで低下させるものを意味する。mRNAレベルおよびタンパク質レベルの両方を測定するための方法は、当技術分野において周知である;典型的方法は本明細書に記載されている。
【0033】
「ハイブリダイゼーション」とは、相補的な核酸塩基間のワトソン-クリック、フーグスティーン、または逆フーグスティーン水素結合でもよい水素結合を意味する。例えば、アデニンおよびチミンは、水素結合の形成を通じて対になる相補的な核酸塩基である。
【0034】
「増殖性疾患」とは、不適切に高レベルの細胞分裂、不適切に低レベルのアポトーシス、もしくは両方により引き起こされる、または結果として生じる疾患を意味する。例えば、癌は、増殖性疾患の例である。癌の例は、限定されないが、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病、非ホジキン病)、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、H鎖病、ならびに肉腫および癌腫のような固形腫瘍(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝腫、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上皮細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫)を含む。リンパ組織増殖性疾患もまた、増殖性疾患であるとみなされる。
【0035】
好ましくは、本発明の核酸塩基オリゴマーは、通常には十分なアポトーシスを起こさない細胞において存在する場合、アポトーシスを促進することおよび/またはIAP mRNAもしくはタンパク質レベルを減少させることができる。好ましくは、増加は、対照に対して、少なくとも10%、より好ましくは25%、および最も好ましくは1倍またはそれ以上である。好ましくは、本発明の核酸塩基オリゴマーは、少なくとも8個の連続した核酸塩基が、配列番号:1〜99、143、147、151、163〜260、287、289および300〜460より選択される配列由来である、約8個から30個までの核酸塩基を含む。本発明の核酸塩基オリゴマーはまた、例えば、IAPポリヌクレオチドに相補的である追加の20個、40個。60個、85個、120個またはそれ以上の連続した核酸塩基を含みうる。核酸塩基オリゴマー(または、その部分)は、修飾された骨格(backbone)を含みうる。ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートおよび他の修飾された骨格が当技術分野において知られている。核酸塩基オリゴマーはまた、1つまたは複数の非天然結合を含みうる。
【0036】
「化学療法剤」とは、癌細胞を殺すまたはそれらの増殖を遅らせるために用いられる薬剤を意味する。従って、細胞毒性および細胞増殖抑制性薬剤が化学療法剤であるとみなされる。
【0037】
「生物学的応答改変剤」とは、疾患と闘う免疫系の能力を刺激するまたは回復させる薬剤を意味する。すべてではないがいくつかの生物学的応答改変剤は、癌細胞の増殖を遅らせることができ、したがって化学療法剤であるともみなされる。生物学的応答改変剤の例は、インターフェロン(α、β、γ)、インターロイキン-2、リツキシマブ(rituximab)、およびトラスツズマブ(trastuzumab)である。
【0038】
「化学増感剤」とは、腫瘍細胞の感受性を化学療法の効果に対してより高くさせる薬剤を意味する。
【0039】
「有効量」とは、未処理の患者と比較して、疾患の症状を寛解させる、標的細胞の増殖を阻害する、腫瘍のサイズもしくは数を低下させる、IAPの発現を阻害する、または標的細胞のアポトーシスを促進するために必要とされる化合物(例えば、核酸塩基オリゴマー)の量を意味する。異常な増殖(すなわち、癌)の治療的処理として本発明を実施するために用いられる活性化合物の有効量は、投与方式、対象の年齢、体重および一般的な健康状態に依存して変動する。最終的に、病院所属の医師または獣医師が適切な量および投与計画を決定するものである。そのような量は、「有効」量と呼ばれる。
【0040】
「リンパ組織増殖性疾患」とは、リンパ系の細胞(例えば、T細胞およびB細胞)の異常な増殖がある疾患を意味し、多発性硬化症、クローン病、エリテマトーデス、慢性関節リウマチおよび変形性関節症を含む。
【0041】
「リボザイム」とは、標的RNA分子に対する部位特異性および切断能力を有する、酵素活性をもつRNAを意味する。リボザイムは、ポリペプチドの発現を減少させるために用いられうる。ポリペプチド発現を減少させるためにリボザイムを用いる方法は、例えば、Turnerら(Adv. Exp. Med. Biol. 465:303-318, 2000)およびNorrisら(Adv. Exp. Med. Biol. 465:293-301, 2000)により記載されている。
【0042】
「レポーター遺伝子」とは、発現がアッセイされうるポリペプチドをコードする遺伝子を意味する;そのようなポリペプチドは、限定されないが、グルクロニダーゼ(GUS)、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールトランスアセチラーゼ(CAT)およびβガラクトシダーゼを含む。
【0043】
「プロモーター」とは、転写を指示するのに十分なポリヌクレオチドを意味する。
【0044】
「動作可能に連結された」とは、適切な分子(例えば、転写活性化タンパク質)が第二ポリヌクレオチドに結合している場合に、第一ポリヌクレオチドが、第一ポリヌクレオチドの転写を指示する第二ポリヌクレオチドに隣接して位置していることを意味する。
【0045】
本発明の他の特徴および利点は、その好ましい態様の以下の説明、および特許請求の範囲から明らかであると思われる。
【0046】
発明の詳細な説明
本発明は、IAPの発現を阻害する核酸塩基オリゴマー、および細胞においてアポトーシスを誘導するためにそれらを用いるための方法を提供する。本発明の核酸塩基オリゴマーはまた、薬学的組成物を形成するために用いられうる。本発明はまた、細胞毒性薬剤、細胞増殖抑制性薬剤、または生物学的応答改変剤(例えば、アドリアマイシン、ビノレルビン、エトポシド、タキソール、シスプラチン、インターフェロン、インターロイキン-2、モノクローナル抗体)のような化学療法剤と組み合わせて本発明のオリゴヌクレオチドを投与することにより細胞においてアポトーシスを促進するための方法を特徴とする。例えば、化学療法剤がありうる。望ましい場合には、化学増感剤(すなわち、増殖している細胞の感受性を化学療法に対してより高くさせる薬剤)も投与されうる。前記の薬剤の任意の組み合わせもまた薬学的組成物を形成するために用いられうる。これらの薬学的組成物は、増殖性疾患、例えば、癌もしくはリンパ組織増殖性疾患、または増殖性疾患の症状を治療するために用いられうる。本発明の核酸塩基オリゴマーはまた、癌または他の増殖性疾患の治療のために放射線療法と組み合わせて用いることができる。
【0047】
癌細胞におけるアポトーシスの活性化は、通常の化学療法または放射線療法に対する患者の応答を改善するための新規、かつ有用である可能性のあるアプローチを提供する。XIAPは、カスパーゼを直接的に阻害する、およびアポトーシスを抑制する能力に関して、IAP遺伝子ファミリーの最も強力なメンバーである。本発明者らは、インビトロおよびインビボにおいて、増殖したヒト非小細胞肺癌(NIH-H460)に対するアンチセンス(AS)オリゴヌクレオチドによるXIAP下方制御の効果を調べた。培養されたH460ヒト肺癌細胞において、オリゴヌクレオチドG4 ASは、最も強力な化合物として同定され、リアルタイムRT-PCR法およびウエスタンブロット法により測定される場合、XIAP mRNAを55%、およびタンパク質レベルを60%まで効果的に下方制御し、1.2μM濃度において60%の細胞死を誘導した。対照的に、スクランブル(scrambled)対照G4オリゴヌクレオチドは、ほとんどXIAPの減損を引き起こさず、10%未満の細胞死を引き起こした。G4 ASによる処理は、プロカスパーゼ-3およびPARPタンパク質の分解として明らかにされるが、1.2μM濃度で有意な核DNA凝縮および断片化を伴ってアポトーシスを誘導した。そのうえ、XIAP ASオリゴヌクレオチドは、H460細胞をドキソルビシン、タキソール、ビノレルビンおよびエトポシドの細胞毒性効果に対して増感させた。動物モデルにおいて、本発明者らは、15mg/kgでのG4 ASが、全身性腹腔内投与によりSCID/RAG2-免疫不全マウスの異種移植モデルにおけるヒトH460腫瘍へ有意な配列特異的増殖阻害効果を生じたことを実証している。全身性AS ODN投与は、腫瘍異種移植片においてXIAPタンパク質の85%下方制御と関連づけられた。15mg/kg G4 ASと5mg/kgビノレルビンの組み合わせは、いずれかの薬剤単独より強く、腫瘍増殖を有意に阻害した。これらの研究は、XIAPの下方制御が、肺癌細胞における強力な死シグナルであり、インビトロでのアポトーシスを誘導する、およびインビボで腫瘍増殖を阻害することができることを示している。これらの研究は、IAPが、ヒト非小細胞肺癌および他の固形腫瘍における癌治療に適した標的であるという主張を裏付ける。
【0048】
治療法
治療法は、癌療法が行われる場所:自宅、医院、診療所、病院の外来患者部門または病院のどこであっても提供されうる。治療は、一般に、医師が治療法の効果をきっちりと観察し、かつ必要とされる任意の調整をすることができるように、病院で始まる。治療法の期間は、治療される癌の種類、患者の年齢および状態、患者の疾患の段階および型、ならびに患者の身体が治療に対してどのように応答するかに依存する。薬剤投与は、異なる間隔(例えば、毎日、毎週または毎月)で行われうる。治療法は、患者の身体が健康な新しい細胞を構築し、かつ体力を回復する機会をもつように、休止期間を含む断続的な周期で与えられてもよい。
【0049】
癌の型およびそれの発生の段階に依存して、治療法は、癌の蔓延を遅らせる、癌の増殖を遅らせる、最初の腫瘍から身体の他の部分へ広がってしまった可能性がある癌細胞を殺すもしくは抑止する、癌により引き起こされた症状を軽減する、または第一に癌を防ぐために用いられうる。
【0050】
本明細書に用いられる場合、「癌」または「新生物」または「新生物細胞」という用語は、異常な様式で増殖する細胞の収集物を意味する。癌増殖は、抑制されておらず、進行性であり、正常細胞の増殖が誘発されない、または正常細胞の停止が引き起こされる条件下において生じる。
【0051】
本発明の核酸塩基オリゴマーまたはIAP抗アポトーシス経路の他の負の制御因子は、単位剤形の薬学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤内で投与されうる。通常の薬務は、過剰な細胞増殖により引き起こされる疾患を患う患者への化合物の投与に適した製剤または組成物を供給するために使用されうる。投与は、患者が症候を示す前に始めてもよい。投与では、任意の適切な経路を用いることができ、例えば、投与は、非経口、静脈内、動脈内、皮下、腫瘍内、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼、脳室内、肝臓内、嚢内、髄腔内、大槽内、腹腔内、鼻腔内、エアゾール、坐剤、または経口投与でありうる。例えば、治療的製剤は、脂質溶液または懸濁液の形態をとりうる;経口投与については、製剤は錠剤またはカプセルの形態をとりうる;および鼻腔内製剤については、粉末、点鼻薬、またはエアゾールの形態をとりうる。
【0052】
製剤を作製するための当技術分野においてよく知られた方法は、例えば、「Remington: The Science and Practice of Pharmacy」、A.R. Gennaro編、Lippincourt Williams & Wilkins、フィラデルフィア、PA、2000に見出される。非経口投与のための製剤は、例えば、賦形剤、滅菌水もしくは食塩水、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレングリコール、植物起源の油、または水素化ナフタレンを含みうる。生体適合性、生分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリド共重合体、またはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体は、化合物の放出を制御するために用いることができる。IAP調節性化合物についての他の有用である可能性のある非経口送達系は、エチレン-酢酸ビニル共重合体粒子、浸透性ポンプ、移植可能注入系およびリポソームを含む。吸入法のための製剤は、賦形剤、例えば、ラクトースを含みうる、または、例えば、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココール酸塩およびデオキシコール酸塩を含む水溶液でありうる、または点鼻薬の形態をとった、もしくはゲルとしての投与のための油性溶液でありうる。
【0053】
製剤は、疾患または状態についての治療法を提供するために治療的有効量(例えば、病理学的状態を防ぐ、除去するまたは低減させる量)においてヒト患者に投与されうる。本発明の核酸塩基オリゴマーの好ましい投与量は、疾患の型および程度、特定の患者の全般的な健康状態、化合物賦形剤の製剤、ならびにその投与経路のような変化するものに依存する可能性が高い。
【0054】
上記のように、望ましい場合には、本発明の核酸塩基オリゴマーでの処理は、増殖性疾患の処理についての治療法(例えば、放射線療法、外科術または化学療法)と組み合わせることができる。
【0055】
上記の適用の方法のいずれについても、本発明の核酸塩基オリゴマーは、望ましくは、静脈内に投与される、または必要とされるアポトーシス事象の部位へ適用される(例えば、注射により)。
【0056】
オリゴヌクレオチドおよび他の核酸塩基オリゴマー
少なくとも2つの型のオリゴヌクレオチドが、リボヌクレアーゼHによるRNAの切断を引き起こす:ホスホジエステル(PO)またはホスホロチオエート(PS)結合をもつポリデオキシヌクレオチド。2'-OMe-RNA配列はRNA標的へ高親和性を示すが、これらの配列はリボヌクレアーゼHについての基質ではない。望ましいオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ耐性のためにホスホロチオエートへと修飾されたいくつかまたはすべてのインターヌクレオチド結合をもつオリゴデオキシヌクレオチドギャップを含む2'-修飾オリゴヌクレオチドに基づくものである。メチルホスホネート修飾の存在は、それの標的RNAに対するオリゴヌクレオチドの親和性を増加させ、それに従って、IC50を低下させる。この修飾はまた、修飾オリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ耐性を増加させる。本発明の方法および試薬が、共有結合的に閉じられた多重アンチセンス(CMAS)オリゴヌクレオチド(Moonら、Biochem J. 346:295-303, 2000;国際公開公報第00/61595号)、リボン型アンチセンス(RiAS)オリゴヌクレオチド(Moonら、J. Biol. Chem. 275:4647-4653, 2000;国際公開公報第00/61595号)、および大環状アンチセンスオリゴヌクレオチド(米国特許出願第2002/0168631号A1)を含む、開発されうる任意の技術と共に用いることができることは理解される。
【0057】
当技術分野において知られているように、ヌクレオシドは、核酸塩基-糖の組み合わせである。ヌクレオシドの塩基部分は、通常、複素環式塩基である。そのような複素環式塩基の2つの最も広く知られた種類は、プリンおよびピリミジンである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合的に連結されたリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むそれらのヌクレオシドについて、リン酸基は、糖の2'、3'、または5'ヒドロキシ部分のいずれかに連結されうる。オリゴヌクレオチドを形成するにおいて、リン酸基は、直鎖状重合化合物を形成するために、お互いに隣接したヌクレオシドを共有結合的に連結する。次には、この直鎖状重合構造の各末端は、環状構造を形成するためにさらに連結されうる;開いた直鎖状構造が一般的に好ましい。オリゴヌクレオチド構造内において、リン酸基が、一般に、オリゴヌクレオチドの骨格を形成するとして言及される。RNAおよびDNAの通常の結合または骨格は、3'から5'へのホスホジエステル結合である。
【0058】
本発明において有用な好ましい核酸塩基オリゴマーの特定の例は、修飾された骨格または非天然のインターヌクレオシド結合を含むオリゴヌクレオチドを含む。本明細書で定義されているように、修飾された骨格を有する核酸塩基オリゴマーは、骨格にリン原子を保持しているもの、および骨格にリン原子をもたないものを含む。本明細書の目的のために、インターヌクレオシド骨格にリン原子をもたない修飾されたオリゴヌクレオチドも核酸塩基オリゴマーであるとみなされる。
【0059】
修飾されたオリゴヌクレオチド骨格を有する核酸塩基オリゴマーは、例えば、ホスホロチオエート、キラルのホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキル-ホスホトリエステル、3'-アルキレンホスホネートおよびキラルのホスホネートを含むメチルおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィン酸塩、3'-アミノホスホルアミデートおよびアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびに通常の3'-5'結合をもつボラノホスフェート、2'-5'結合されたこれらの類似体、およびヌクレオシド単位の隣接した対が3'-5'から5'-3'へ、または2'-5'から5'-2'へ連結されている、反転した極性をもつものを含む。様々な塩、混合された塩および遊離酸型も含まれる。上のリン含有結合の調製を開示する代表的な米国特許は、限定されるものではないが、米国特許第3,687,808号;第4,469,863号;第4,476,301号;第5,023,243号;第5,177,196号;第5,188,897号;第5,264,423号;第5,276,019号;第5,278,302号;第5,286,717号;第5,321,131号;第5,399,676号;第5,405,939号;第5,453,496号;第5,455,233号;第5,466,677号;第5,476,925号;第5,519,126号;第5,536,821号;第5,541,306号;第5,550,111号;第5,563,253号;第5,571,799号;第5,587,361号;および第5,625,050号を含み、それぞれは参照として本明細書に組み入れられている。
【0060】
その中にリン原子を含まない修飾されたオリゴヌクレオチド骨格を有する核酸塩基オリゴマーは、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルのインターヌクレオシド結合、混合された異種原子およびアルキルもしくはシクロアルキルのインターヌクレオシド結合、または1つもしくは複数の短鎖異種原子もしくは複素環式のインターヌクレオシド結合により形成される骨格を有する。これらは、モルホリノ結合(ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成される);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびに混合されたN、O、SおよびCH2構成要素部分をもったその他を有するものを含む。上のオリゴヌクレオチドの調製を開示する代表的な米国特許は、限定されるものではないが、米国特許第5,034,506号;第5,166,315号;第5,185,444号;第5,214,134号;第5,216,141号;第5,235,033号;第5,264,562号;第5,264,564号;第5,405,938号;第5,434,257号;第5,466,677号;第5,470,967号;第5,489,677号;第5,541,307号;第5,561,225号;第5,596,086号;第5,602,240号;第5,610,289号;第5,602,240号;第5,608,046号;第5,610,289号;第5,618,704号;第5,623,070号;第5,663,312号;第5,633,360号;第5,677,437号;および第5,677,439号を含み、それぞれは参照として本明細書に組み入れられている。
【0061】
他の核酸塩基オリゴマーにおいて、糖およびインターヌクレオシド結合双方、すなわち骨格は、新規な群で置換される。核酸塩基単位は、IAPとのハイブリダイゼーションのために維持される。一つのそのような核酸塩基オリゴマーは、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖-骨格は、アミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格で置換されている。核酸塩基は、保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子へ直接的にまたは間接的に結合されている。これらの核酸塩基オリゴマーを作製かつ使用するための方法は、例えば、「Peptide Nucleic Acids: Protocols and Applications」、P.E. Nielsen編、Horizon Press、ノーフォーク、英国、1999に記載されている。PNAの調製を開示する代表的な米国特許は、限定されるものではないが、米国特許第5,539,082号;第5,714,331号;および第5,719,262号を含み、それぞれは参照として本明細書に組み入れられている。さらなるPNA化合物の開示は、Nielsenら、Science、1991、254、1497-1500に見出すことができる。
【0062】
本発明の特定の態様において、核酸塩基オリゴマーは、ホスホロチオエート骨格および異種原子骨格をもつヌクレオシド、および特に、-CH2-NH-O-CH2-、-CH2-N(CH3)-O-CH2-(メチレン(メチリミノ)またはMMI骨格として知られている)、-CH2-O-N(CH3)-CH2-、-CH2-N(CH3)-N(CH3)-CH2-、および-O-N(CH3)-CH2-CH2-を有する。他の態様において、オリゴヌクレオチドは、米国特許第5,034,506号に記載されるモルホリノ骨格構造を有する。
【0063】
核酸塩基オリゴマーはまた、1つまたは複数の置換糖部分を含みうる。核酸塩基オリゴマーは、2'位において以下のうちの1つを含む:OH;F;O-、S-もしくはN-アルキル;O-、S-、もしくはN-アルケニル;O-、S-、もしくはN-アルキニル;またはO-アルキル-O-アルキル、そのアルキル、アルケニルおよびアルキニルは、置換もしくは非置換のC1〜C10アルキルまたはC2〜C10アルケニルおよびアルキニルでありうる。特に好ましいのは、O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON[(CH2)nCH3]2であり、nおよびmは、1から約10までである。他の好ましい核酸塩基オリゴマーは、2'位において以下のうちの1つを含む:C1〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリルまたはO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断群、レポーター群、インターカレーター、核酸塩基オリゴマーの薬動力学的性質を改良するための群または核酸塩基オリゴマーの薬力薬理学的性質を改良するための群、および類似した性質をもつ他の置換分を含む。好ましい修飾は、2'-O-メチルおよび2'-メトキシエトキシ(2'-O-CH2CH2OCH3、これは2'-O-(2-メトキシエチル)または2'-MOEとしても知られている)である。もう一つの望ましい修飾は、2'-DMAOEとしても知られている、2'-ジメチルアミノオキシエトキシ(すなわち、O(CH2)2ON(CH3)2)である。他の修飾は、2'-アミノプロポキシ(2'-OCH2CH2CH2NH2)および2'-フルオロ(2'-F)を含む。同様の修飾はまた、オリゴヌクレオチドまたは他の核酸塩基オリゴマー上の他の位置、特に、3'末端ヌクレオチド上または2'-5'結合オリゴヌクレオチドにおける糖の3'位、および5'末端ヌクレオチドの5'位、においてなされうる。核酸塩基オリゴマーはまた、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分のような糖模倣体を有しうる。そのような修飾された糖構造の調製を開示する代表的な米国特許は、限定されるものではないが、米国特許第4,981,957号;第5,118,800号;第5,319,080号;第5,359,044号;第5,393,878号;第5,446,137号;第5,466,786号;第5,514,785号;第5,519,134号;第5,567,811号;第5,576,427号;第5,591,722号;第5,597,909号;第5,610,300号;第5,627,053号;第5,639,873号;第5,646,265号;第5,658,873号;第5,670,633号;および第5,700,920号を含み、それぞれは完全に参照として本明細書に組み入れられている。
【0064】
核酸塩基オリゴマーはまた、核酸塩基修飾または置換を含みうる。本明細書に用いられる場合、「修飾されていない」または「天然の」核酸塩基は、プリン塩基アデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を含む。修飾された核酸塩基は、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ハイポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体;アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体;2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン;5-ハロウラシルおよび5-ハロシトシン;5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシン;6-アゾウラシル、6-アゾシトシンおよび6-アゾチミン;5-ウラシル(プソイドウラシル);4-チオウラシル;8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシおよび他の8-置換ウラシルおよびグアニン;5-ハロ(例えば、5-ブロモ)、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシン;7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン;8-アザグアニンおよび8-アザアデニン;7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン;ならびに3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンのような、他の合成および天然の核酸塩基を含む。さらなる核酸塩基は、米国特許第3,687,808号に開示されているもの、「The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering」、858〜859ページ、Kroschwitz, J.I.編、John Wiley & Sons、1990に開示されているもの、Englischら、「Angewandte Chemie」、International Edition、1991、30、613により開示されているもの、ならびにSanghvi, Y.S.、15章、「Antisense Research and Applications」、289〜302ページ、Crooke, S.T.およびLebleu, B.編、CRC Press、1993により開示されているものに含まれる。これらの核酸塩基の若干数は、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの結合親和性を増加させるために特に有用である。これらには、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンを含む、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、ならびにN-2、N-6およびO-6置換プリンを含む。5-メチルシトシン置換は、0.6〜1.2℃だけ核酸二重鎖安定性を増加させることが示され(Sanghvi, Y.S.、Crooke, S.T.およびLebleu, B.編、「Antisense Research and Applications」、CRC Press、Boca Raton、1993、pp. 276-278)、望ましい塩基置換であり、特に、2'-O-メトキシエチルまたは2'-O-メチル糖修飾と組み合わされた場合、よりいっそう望ましい。若干数の上で示されている修飾された核酸塩基および他の修飾された核酸塩基の調製を開示する代表的な米国特許は、米国特許第4,845,205号;第5,130,302号;第5,134,066号;第5,175,273号;第5,367,066号;第5,432,272号;第5,457,187号;第5,459,255号;第5,484,908号;第5,502,177号;第5,525,711号;第5,552,540号;第5,587,469号;第5,594,121号;第5,596,091号;第5,614,617号;第5,681,941号;および第5,750,692号を含み、それぞれは参照として本明細書に組み入れられている。
【0065】
本発明の核酸塩基オリゴマーのもう一つの修飾は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞性分布(cellular distribution)、または細胞取り込みを増強する、1つもしくは複数の部分または結合体を核酸塩基オリゴマーへ化学的に連結することを含む。そのような部分は、限定されるものではないが、コレステロール部分(Letsingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:6553-6556, 1989)、コール酸(Manoharanら、Bioorg. Med. Chem. Let, 4:1053-1060, 1994)、チオエーテル、例えばヘキシル-S-トリチルチオール(Manoharanら、Ann. N.Y. Acad. Sci., 660:306-309, 1992; Manoharanら、Bioorg. Med. Chem. Let., 3:2765-2770, 1993)、チオコレステロール(Oberhauserら、Nucl. Acids Res., 20:533-538, 1992)、脂肪鎖、例えばドデカンジオールもしくはウンデシル残基(Saison-Behmoarasら、EMBO J., 10:1111-1118, 1991; Kabanovら、FEBS Lett., 259:327-330, 1990; Svinarchukら、Biochimie, 75:49-54, 1993)、リン脂質、例えばジ-ヘキサデシル-ラック-グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-ラック-グリセロ-3-H-ホスホネート(Manoharanら、Tetrahedron Lett., 36:3651-3654, 1995; Sheaら、Nucl. Acids Res., 18:3777-3783, 1990)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖(Manoharanら、Nucleosides & Nucleotides, 14:969-973, 1995)、またはアダマンタン酢酸(Manoharanら、Tetrahedron Lett., 36:3651-3654, 1995)、パルミチル部分(Mishraら、Biochim. Biophys. Acta, 1264:229-237, 1995)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分(Crookeら、J. Pharmacol. Exp. Ther., 277:923-937, 1996)を含む。そのような核酸塩基オリゴマー結合体の調製を開示する代表的な米国特許は、米国特許第4,587,044号;第4,605,735号;第4,667,025号;第4,762,779号;第4,789,737号;第4,824,941号;第4,828,979号;第4,835,263号;第4,876,335号;第4,904,582号;第4,948,882号;第4,958,013号;第5,082,830号;第5,109,124号;第5,112,963号;第5,118,802号;第5,138,045号;第5,214,136号;第5,218,105号;第5,245,022号;第5,254,469号;第5,258,506号;第5,262,536号;第5,272,250号;第5,292,873号;第5,317,098号;第5,371,241号;第5,391,723号;第5,414,077号;第5,416,203号;第5,451,463号;第5,486,603号;第5,510,475号;第5,512,439号;第5,512,667号;第5,514,785号;第5,525,465号;第5,541,313号;第5,545,730号;第5,552,538号;第5,565,552号;第5,567,810号;第5,574,142号;第5,578,717号;第5,578,718号;第5,580,731号;第5,585,481号;第5,587,371号;第5,591,584号;第5,595,726号;第5,597,696号;第5,599,923号;第5,599,928号;第5,608,046号;および第5,688,941号を含み、それぞれは参照として本明細書に組み入れられている。
【0066】
本発明はまた、キメラの化合物である核酸塩基オリゴマーを含む。「キメラの」核酸塩基オリゴマーは、それぞれが少なくとも1つの単量体単位、すなわち、オリゴヌクレオチドの場合ヌクレオチド、から作製される、2つまたはそれ以上の化学的に別個の領域を含む核酸塩基オリゴマー、特にオリゴヌクレオチドである。これらの核酸塩基オリゴマーは、典型的には、核酸塩基オリゴマーに、ヌクレアーゼ分解に対して増大した耐性、増加した細胞取り込み、および/または標的核酸に対して増大した結合親和性を与えるように核酸塩基オリゴマーが修飾されている少なくとも1つの領域を含む。核酸塩基オリゴマーの付加的な領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断することができる酵素についての基質としての役割を果たしうる。例として、リボヌクレアーゼHは、RNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する細胞のエンドヌクレアーゼである。それゆえに、リボヌクレアーゼHの活性化は、結果として、RNA標的の切断を生じ、それにより、遺伝子発現の核酸塩基オリゴマー阻害の効率を大いに増強する。従って、同じ標的領域にハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシオリゴヌクレオチドに比較して、キメラの核酸塩基オリゴマーが用いられる場合は、より短い核酸塩基オリゴマーによって匹敵する結果が得られることが多い。
【0067】
本発明のキメラの核酸塩基オリゴマーは、上記の2つまたはそれ以上の核酸塩基オリゴマーの複合性構造として形成されうる。オリゴヌクレオチドの場合のそのような核酸塩基オリゴマーはまた、当技術分野においてハイブリッドまたはギャップマーと呼ばれていた。そのようなハイブリッド構造の調製を開示する代表的な米国特許は、米国特許第5,013,830号;第5,149,797号;第5,220,007号;第5,256,775号;第5,366,878号;第5,403,711号;第5,491,133号;第5,565,350号;第5,623,065号;第5,652,355号;第5,652,356号;および第5,700,922号を含み、それぞれは完全に参照として本明細書に組み入れられている。
【0068】
本発明により用いられる核酸塩基オリゴマーは、固相合成の周知の技術を通して便利かつ日常的に作製されうる。そのような合成のための装置は、例えば、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)(フォスターシティー、カルフォルニア)を含むいくつかの業者により販売されている。当技術分野において知られたそのような合成のための任意の他の手段は、追加的にまたは代替的に用いられうる。ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体のようなオリゴヌクレオチドを調製するために類似した技術を用いることは、よく知られている。
【0069】
本発明の核酸塩基オリゴマーはまた、取り込み、分布および/または吸収において補助するために、例えば、リポソーム、受容体にターゲットされる分子、経口の、直腸の、局所のまたは他の製剤のような、混合された、カプセル化された、結合されたもしくは別のやり方で他の分子と関連した、分子構造または化合物の混合物でありうる。そのような取り込み、分布および/または吸収を補助する製剤の調製を開示する代表的な米国特許は、米国特許第5,108,921号;第5,354,844号;第5,416,016号;第5,459,127号;第5,521,291号;第5,543,158号;第5,547,932号;第5,583,020号;第5,591,721号;第4,426,330号;第4,534,899号;第5,013,556号;第5,108,921号;第5,213,804号;第5,227,170号;第5,264,221号;第5,356,633号;第5,395,619号;第5,416,016号;第5,417,978号;第5,462,854号;第5,469,854号;第5,512,295号;第5,527,528号;第5,534,259号;第5,543,152号;第5,556,948号;第5,580,575号;および第5,595,756号を含み、それぞれは参照として本明細書に組み入れられている。
【0070】
本発明の核酸塩基オリゴマーは、任意の薬学的に許容される塩、エステル、もしくはそのようなエステルの塩、または動物への投与において、生物活性のある代謝物もしくはその残留物を(直接的にまたは間接的に)供給することができる任意の他の化合物を含む。従って、例えば、開示はまた、本発明の化合物のプロドラッグおよび薬学的に許容される塩、そのようなプロドラッグの薬学的に許容される塩、ならびに他の生物学的同等物へと引用される。
【0071】
「プロドラッグ」という用語は、内因性酵素または他の化学物質および/もしくは状態の作用により、身体またはその細胞内において活性型(すなわち、ドラッグ)へ変換される不活性型で調製される治療剤を示す。特に、本発明のオリゴヌクレオチドのプロドラッグバージョンは、国際公開公報第93/24510号または第94/26764号において開示された方法によりSATE[(S-アセチル-2-チオエチル)ホスフェート]誘導体として調製されうる。
【0072】
「薬学的に許容される塩」という用語は、親化合物の望ましい生物活性を保持し、かつそれに望ましくない毒物学的影響を与えない塩を指す。薬学的に許容される塩基付加塩は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属もしくは有機アミンのような金属またはアミンで形成される。陽イオンとして用いられる金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどである。適するアミンの例は、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミンおよびプロカインである(例えば、Bergeら、J. Pharma Sci.、66:1-19、1977を参照)。酸性化合物の塩基付加塩は、通常の方法において塩を生成するために遊離酸型を十分な量の所望の塩基に接触させることにより調製される。遊離酸型は、通常の方法において、塩を酸に接触させ、遊離酸を単離することにより再生成されうる。遊離酸型は、それらのそれぞれの塩型と、極性溶媒における溶解度のような特定の物理的性質においていくらか異なるが、他の点では、塩は、本発明の目的にとって、それらのそれぞれの遊離酸と等価である。本明細書に用いられる場合、「薬学的付加塩」は、本発明の組成物の成分の1つの酸型の薬学的に許容される塩を含む。これらは、アミンの有機酸塩または無機酸塩を含む。好ましい酸塩は、塩酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩およびリン酸塩である。他の適する薬学的に許容される塩は、当業者によく知られており、例として、例えば、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸またはリン酸のような無機酸;有機のカルボン酸、スルホン酸、イオウの酸もしくはリンの酸、またはN-置換型スルファミン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、エンボン酸、ニコチン酸もしくはイソニコチン酸;および、天然においてタンパク質の合成に関与する20個のαアミノ酸のようなアミノ酸、例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸、ならびに、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、2-ホスホグリセレートもしくは3-ホスホグリセレート、グルコース-6-リン酸、N-シクロヘキシルスルファミン酸(シクラメートの形成と共に)、またはアスコルビン酸のような他の有機化合物のような、様々な無機酸および有機酸の塩基性塩を含む。化合物の薬学的に許容される塩はまた、薬学的に許容される陽イオンと共に調製されうる。適する薬学的に許容される陽イオンは、当業者によく知られており、アルカリ陽イオン、アルカリ土類陽イオン、アンモニウム陽イオンおよび第四アンモニウム陽イオンを含む。炭酸塩または炭酸水素塩もまた可能である。
【0073】
オリゴヌクレオチドおよび他の核酸塩基オリゴマーについて、適する薬学的に許容される塩は、(i)ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウムのような陽イオン、スペルミンおよびスペルミジンなどのようなポリアミンで形成される塩;(ii)無機酸、例えば、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸などで形成される酸付加塩;(iii)例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸などのような有機酸で形成される塩;ならびに(iv)塩素、臭素、およびヨウ素のような元素の陰イオンから形成される塩を含む。
【0074】
本発明はまた、本発明の核酸塩基オリゴマーを含む薬学的組成物および製剤を含む。本発明の薬学的組成物は、局所的治療が望ましいかまたは全身的治療が望ましいかに応じて、および治療されるべき領域に応じて、多数の方法により投与されうる。投与は、局所(眼、ならびに膣送達および直腸送達を含む粘膜を含む)、肺、例えば、粉末もしくはエアゾールの吸入法もしくは通気法による(噴霧器の使用を含む;気管内、鼻腔内、表皮および経皮的)、経口または非経口でありうる。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下、腹膜内もしくは筋肉内の注射もしくは注入;または頭蓋内、例えば髄腔内もしくは脳室内の投与を含む。
【0075】
ロックド(locked)核酸
ロックド核酸(LNA)は、本発明に用いることができる核酸塩基オリゴマーである。LNAは、ヌクレオチド類似体のリボフラノース環の可撓性を制限する2'O、4'-Cメチレン架橋を含み、それを堅い二環式N型高次構造へと固定する。LNAは、特定のエキソヌクレアーゼおよびエンドヌクレアーゼに対する向上した耐性を示し、リボヌクレアーゼHを活性化し、ほとんどの任意の核酸塩基オリゴマーへ取り込まれうる。さらに、LNA含有核酸塩基オリゴマーは、標準的ホスホルアミダイト合成プロトコールを用いて調製されうる。LNAに関する追加の詳細は、国際公開公報第99/14226号および米国特許出願第2002/0094555号A1に見出すことができ、それぞれは参照として本明細書に組み入れられている。
【0076】
アラビノ核酸
アラビノ核酸(ANA)もまた、本発明の方法および試薬に用いることができる。ANAは、天然のD-2'-デオキシリボース糖の代わりにD-アラビノース糖に基づく核酸塩基オリゴマーである。非誘導体化ANA類似体は、ホスホロチオエートがもつような類似したRNAに対する結合親和性をもつ。アラビノース糖がフッ素で誘導体化される場合(2'F-ANA)、結合親和性における増強が結果として生じ、その結果生じたANA/RNAおよびF-ANA/RNA二重鎖において、結合したRNAの選択的加水分解が効率的に起きる。これらの類似体は、単純なL糖でのそれらの末端における誘導体化によって細胞の培地において安定化されうる。治療法におけるANAの使用は、例えば、Damhaら、Nucleosides Nucleotides & Nucleic Acids 20:429-440、2001に考察されている。
【0077】
核酸塩基オリゴマーの送達
本発明者らは、裸のオリゴヌクレオチドが腫瘍細胞に入り、IAP発現を阻害することができることを本明細書で実証している。それでもなお、オリゴヌクレオチドまたは他の核酸塩基オリゴマーの細胞への送達において助けとなる製剤を利用することが望ましい場合がある(例えば、米国特許第5,656,611号、第5,753,613号、第5,785,992号、第6,120,798号、第6,221,959号、第6,346,613号および第6,353,055号を参照、それぞれは参照として本明細書に組み入れられている)。
【0078】
リボザイム
本発明のアンチセンスIAP配列を含む触媒性RNA分子またはリボザイムは、インビボにおいてIAPポリヌクレオチドの発現を阻害するために用いられうる。アンチセンスRNA内のリボザイム配列の包含は、それらにRNA切断活性を与え、それにより構築物の活性を増加させる。標的RNA特異的リボザイムの設計および使用は、Haseloffら、Nature 334:585-591、1988、および米国特許出願第2003/0003469号A1に記載されており、それぞれは参照として本明細書に組み入れられている。
【0079】
従って、本発明はまた、結合アームにおいて、表1、表2、表6、および表7のいずれか1つの配列に対応する8個〜19個の間の連続した核酸塩基を有するアンチセンスRNAを含む触媒性RNA分子を特徴とする。本発明の好ましい態様において、触媒性核酸分子は、ハンマーヘッドまたはヘアピンモチーフで形成されるが、δ型肝炎ウイルス、グループIイントロンまたはリボヌクレアーゼP RNA(RNAガイド配列に関する)またはニューロスポラVS RNAのモチーフでも形成されうる。そのようなハンマーヘッドモチーフの例は、Rossiら、Aids Research and Human Retroviruses、8:183、1992により記載されている。ヘアピンモチーフの例は、1989年9月20日に出願された、Hampelら、「RNA Catalyst for Cleaving Specific RNA Sequences」(1988年9月20日に出願された米国特許出願第07/247,100号の一部継続出願である)、HampelおよびTritz、Biochemistry、28:4929、1989、ならびにHampelら、Nucleic Acids Research、18:299、1990により記載されている。δ型肝炎ウイルスモチーフの例は、PerrottaおよびBeen、Biochemistry、31:16、1992により記載されている。リボヌクレアーゼPモチーフは、Guerrier-Takadaら、Cell、35:849、1983により記載されている。ニューロスポラVS RNAリボザイムモチーフは、Collinsら(SavilleおよびCollins、Cell 61:685-696、1990;SavilleおよびCollins、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:8826-8830、1991;CollinsおよびOlive、Biochemistry 32:2795-2799、1993)により記載されている。これらの特定のモチーフは、本発明において限定的ではなく、本発明の酵素的核酸分子において重要であることのすべては、それが、1つまたは複数の標的遺伝子RNA領域に相補的である特異的基質結合部位を有すること、およびそれが、その基質結合部位の内または周囲に、分子へRNA切断活性を分け与えるヌクレオチド配列を有することであることを、当業者は認識しているものと思われる。
【0080】
RNA干渉
本発明の核酸塩基オリゴマーは、IAP発現のRNA干渉(RNAi)媒介ノックダウンのための二本鎖RNAに用いることができる。RNAiは、対象となる特定のタンパク質の細胞性発現を減少させるための方法である(Tuschl、Chembiochem 2:239-245、2001;Sharp、Genes & Devel. 15:485-490、2000;HutvagnerおよびZamore、Curr. Opin. Genet. Devel. 12:225-232、2002;ならびにHannon、Nature 418:244-251、2002)。RNAiにおいて、遺伝子サイレンシングは、典型的には、細胞において二本鎖RNA(dsRNA)の存在により転写後に引き起こされる。このdsRNAは、低分子干渉RNA(siRNA)と呼ばれるより短い小片へと細胞内でプロセシングされる。dsRNAのトランスフェクションによるかまたはプラスミド基盤発現系を用いるsiRNAの発現によるかのいずれかによる細胞へのsiRNAの導入は、哺乳動物において機能喪失表現型を作製するために、次第に用いられるようになってきている。
【0081】
本発明の一つの態様において、本発明の核酸塩基オリゴマーの8個〜19個の間の連続した核酸塩基を含む二本鎖RNA(dsRNA)分子が作製される。dsRNAは、二重になっているRNAの2つの別個の鎖、または自己二重になっている単一RNA鎖(低分子ヘアピン(sh)RNA)でありうる。典型的には、dsRNAは、約21個または22個の塩基対であるが、望ましい場合には、より短くまたはより長く(約29個の核酸塩基まで)てもよい。dsRNAは、標準的技術(例えば、化学合成またはインビトロでの転写)を用いて作製できる。キットが、例えば、Ambion(オースティン、TX)およびEpicentre(マディソン、WI)から入手可能である。哺乳動物細胞においてdsRNAを発現させるための方法は、Brummelkampら、Science 296:550-553、2002;Paddisonら、Genes & Devel. 16:948-958、2002;Paulら、Nature Biotechnol. 20:505-508、2002;Suiら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:5515-5520、2002;Yuら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:6047-6052、2002;Miyagishiら、Nature Biotechnol. 20:497-500、2002;およびLeeら、Nature Biotechnol. 20:500-505、2002に記載されており、それぞれは参照として本明細書に組み入れられている。
【0082】
低分子ヘアピンRNAは、選択的な3'UU突出をもつステムループ構造からなる。変動があってもよく、ステムは、21 bpから31 bpまで(望ましくは、25 bp〜29 bp)の範囲、ループは、4 bpから30 bpまで(望ましくは4 bp〜23 bp)の範囲でありうる。細胞内のshRNAの発現について、ポリメラーゼIII H1-RNAかまたはU6プロモーターのいずれか、ステムループ化RNA挿入のためのクローニング部位、および4-5-チミジン転写終結シグナルを含むプラスミドベクターが用いられうる。ポリメラーゼIIIプロモーターは、一般に、よく定義された開始および停止部位を有し、それらの転写物は、ポリ(A)テールを欠く。これらのプロモーターについての終結シグナルは、ポリチミジン域により定義され、転写物は、典型的には、二番目のウリジンの後で切断される。この位置での切断は、発現されたshRNAにおいて3'UU突出を生じ、それは合成siRNAの3'突出と類似している。哺乳動物細胞においてshRNAを発現させるための追加の方法は、上で引用された参照文献に記載されている。
【0083】
以下の実施例は、本発明を例証するためのものである。それらは、どんな点においても本発明を限定することを意図するものではない。
【0084】
実施例1:核酸塩基オリゴマー選択
本発明者らは、下に列挙された選択基準に基づいて、ヒトXIAPおよびHIAP1について、それぞれ、96個および98個の、ほとんど重複していない、19merの核酸塩基配列を選択した。XIAPの場合、cDNA配列の開始コドンの約1 kb上流の領域から停止コドンの約1 kb下流までの96個の配列(それぞれ、長さが19個の核酸塩基である)(配列番号:1〜96;表1)を選択した。これは、コード領域ならびに隣接した5'および3'UTR配列の約50%を網羅している(すなわち、標的とされる領域は、1.5 kbのコード領域とUTR配列の両側における1 kbとから構成される、長さが約3.5 kbであるが、96個の19merは1.8 kbの配列にわたる)。
【0085】
【表1】
【0086】
前記の核酸塩基オリゴマー、または本明細書に記載される任意の他の核酸塩基オリゴマーのいずれにおいても、各核酸塩基は、非依存的に、DNA残基または2'-O-メチルもしくは2'-O-メトキシエチルRNA残基のようなRNA残基でありうる。例えば、配列番号:3の核酸塩基配列は、例えば、
(mXは、2'-O-メチルX残基を表す)でありうる。追加の修飾核酸塩基は当技術分野において知られている。結合は、ホスホジエステル(PO)、ホスホロチオエート(PS)、もしくはメチルホスホネート(MP)結合でありうる、または混合骨格(mixed backbone)(MB)をもちうる。骨格は、標的IAPポリヌクレオチドに核酸塩基オリゴマーをハイブリダイズさせる任意の適切な骨格でありうる。典型的な骨格が本明細書に記載されている。他の態様において、核酸塩基オリゴマーは、アクリジン保護化結合、コレステリルもしくはソラレン成分、C5-プロピニルピリミジン、またはC5-メチルピリミジンを含む。本発明の核酸塩基オリゴマーへの適切な修飾は、上記のもの、加えて、参照として本明細書に組み入れられている、米国特許出願第2002/0128216号A1に記載されるものを含む。
【0087】
核酸塩基オリゴマーの例を以下の表2に提供する(mXは、2'-O-メチルX RNA残基を表す)。
【0088】
【表2】
ペネトラチン、および核酸塩基オリゴマーの細胞への侵入を媒介することにおけるペネトラチンの使用は、PCT特許出願番号FR 91/00444に記載されている。
【0089】
HIAP1に対して核酸塩基オリゴマーを設計するために、同様の同定方法に取り組んだ。初めに、98個の19mer核酸塩基オリゴマーが選択された(配列番号:163〜260;表3)。HIAP1配列へ向けられるこれらの98個の核酸塩基オリゴマーのうち、15個(配列番号:163〜170、173、179、202、222、223、247、および259)がさらなる評価のために選択された。これらの15個の候補核酸塩基オリゴマーは、コード領域を標的とする4個の核酸塩基オリゴマー(配列番号:202、222、223および247)、3'UTRを標的とする1個の核酸塩基オリゴマー(配列番号:259)、5'UTRを標的とする7個の核酸塩基オリゴマー(配列番号:166〜170、173および179;7個の核酸塩基オリゴマーのうちの1個は開始コドンに重なった)、および5'UTRのイントロンのセグメントを標的とするように設計された3個の他のオリゴヌクレオチド(配列番号:163〜165)を含んだ。
【0090】
【表3】
【0091】
核酸塩基オリゴマー選択基準
コンピュータープログラムOLIGO(National Biosciences Inc.により以前に配布された)が以下の基準に基づいて候補核酸塩基オリゴマーを選択するために用いられた。
1)75%より多くないGC含有量、および75%より多くないAT含有量;
2)好ましくは、4個またはそれ以上の連続したG残基をもつ核酸塩基オリゴマーは存在しない(1個を毒性対照として選択したが、報告された毒性作用のためである);
3)安定した二量体またはヘアピン構造を形成する能力をもつ核酸塩基オリゴマーは存在しない;ならびに
4)翻訳開始部位の周囲の配列が好ましい領域である。
さらに、標的mRNAの接近可能領域が、RNA二次構造折り畳みプログラムMFOLD(M. Zuker, D.H. Mathews & D.H. Turner、「Algorithms and Thermodynamics for RNA Secondary Structure Prediction: A Practical Guide.」、「RNA Biochemistry and Biotechnology」中、J. Barciszewski & B.F.C. Clark編、NATO ASIシリーズ、Kluwer Academic Publishers、(1999))の助けを借りて予測された。予測された最も安定したmRNAの折り畳みの5%以内の自由エネルギー値をもつ最適下限の折り畳みは、残基が塩基対結合を形成する相補的な塩基を見出すことができる200塩基のウィンドウを用いて予測された。塩基対を形成しなかったオープン領域は、各最適下限の折り畳みと共に総計され、一貫してオープンとして予測された領域は、核酸塩基オリゴマーへの結合に、より接近しやすいとみなされた。上の選択基準のいくつかを部分的にのみ満たした追加の核酸塩基オリゴマーもまた、それらが標的mRNAの予測オープン領域を認識した場合には可能性のある候補として選択された。
【0092】
実施例2:オリゴヌクレオチド合成
IAP発現を阻害する核酸塩基オリゴマーの能力は、典型的核酸塩基オリゴマーとしてオリゴヌクレオチドを用いて試験された。オリゴヌクレオチドは、隣接しているRNA残基間にホスホロチオエート結合をもつ2個の2'-O-メチルRNA残基により両側に隣接されているホスホジエステルDNA残基のコアからなる、キメラの第二世代オリゴヌクレオチドとしてIDT(Integrated DNA Technologies、USA)により合成された。オリゴヌクレオチドは、96ウェルのプレートおよびそろったチューブに、検出方法がTaqMan定量PCRまたはELISAのような感度の高い方法である場合、トランスフェクションのために十分な材料(96ウェル形式において100回より多いアッセイ)を供給する12 ODの核酸塩基オリゴマーを最小限として供給された。一旦、陽性のヒットが同定されたならば(下記参照)、オリゴヌクレオチドは、安定性/ヌクレアーゼ耐性をさらに増大させるために、2個ではなく、3個の隣接RNA残基で再合成された。さらに、確証する目的で、適当な対照(スクランブルした、4塩基のミスマッチおよび逆極性オリゴヌクレオチドのような)が、最高の活性を生じる標的のいくつかについて合成された。
【0093】
実施例3:スクリーニングアッセイ法および核酸塩基オリゴマーの最適化
IAPの発現を阻害することができる核酸塩基オリゴマーを同定する本発明者らの方法は、標的にされる特定のIAP遺伝子についてのRNAおよび/またはタンパク質の特異的な減少(ノックダウン)について上記のオリゴヌクレオチドライブラリーをスクリーニングすることであった。かなり多数の標準的アッセイ法が、細胞におけるRNAおよびタンパク質レベルを検出するために用いることができる。例えば、RNAレベルは、標準的ノーザンブロット分析またはRT-PCR技術を用いて測定されうる。タンパク質レベルは、例えば、標準的ウエスタンブロット分析または免疫沈降技術により測定されうる。または、アンチセンスIAP核酸を投与された細胞は、例えば、参照として本明細書に組み入れられている、米国特許第5,919,912号、第6,156,535号および第6,133,437号に記載される方法に従って、細胞生存度について試験されうる。
【0094】
本発明者らは、オリゴヌクレオチド処理後のmRNAレベルにおける変化についてアッセイするためにTaqMan定量PCR(下に記載されている)を用いた。XIAPタンパク質レベルを測定するためにELISAを、HIAP1タンパク質レベルを測定するためにウエスタンブロット法を使用した。トランスフェクション条件は、対照として開始コドンにまたがるXIAP由来のフルオレセイン標識センスオリゴヌクレオチド
を用いて、T24膀胱癌細胞もしくはH460非小細胞肺癌細胞においてはリポフェクタミンプラス(Lipofectamine plus)もしくはリポフェクタミン2000(Life Technologies、カナダ)、またはSF-295神経膠芽細胞腫においてはリポフェクチンで最適化された。結果は可視化され、エピ蛍光顕微鏡により測定された。T24細胞の場合、トランスフェクションは、サバイビン(survivin)発現の下方制御に関して発表されたオリゴヌクレオチド
の能力に基づき、さらに最適化された(Liら、Nat. Cell Biol. 1:461-466、1999)。本発明者らは、以下詳細に記載するPCRプライマーおよび蛍光プローブにより検出されたサバイビンRNAノックダウンのTaqMan結果に基づいてトランスフェクション条件を最適化した。細胞によるオリゴヌクレオチド取り込みについての最適な条件は、総量70μL中、940nM オリゴヌクレオチドおよび4μL PLUS試薬および0.8μL リポフェクタミンを3時間、であることが見出された。その後、T24細胞に対するオリゴライブラリーを用いてXIAPタンパク質ノックダウンについてスクリーニングするためにこれらの条件を適用した。
【0095】
SF-295細胞は、容易に検出かつ識別できる70kDa HIAP1タンパク質を有するが、一方、多くの細胞系はそのタンパク質を高レベルで発現しない、または区別できない類似サイズの68kDa HIAP2タンパク質が多量であるため、HIAP1ノックダウンは、SF-295細胞において研究された。
【0096】
リアルタイムPCR
RNAは、RLT緩衝液(QIAGEN、バレンシア、CA)に溶解した細胞から抽出し、QIAGEN RNeasyカラム/キットを用いて精製した。リアルタイム定量PCRは、Perkin-Elmer ABI 7700 Prism PCR装置で行った。RNAは、逆転写し、XIAP、HIAP1、サバイビン、またはGAPDHを特異的に認識するように設計されたプライマーおよびプローブを用いて、PE BiosystemsのTaqMan Universal PCR Master Mixプロトコールに従って増幅した。ヒトのサバイビンについて、フォワードプライマーは
であり、リバースプライマーは
であり、プローブは
であった。ヒトHIAP1について、フォワードプライマーは
であり、リバースプライマーは
であり、プローブは
であった。ヒトXIAPについて、フォワードプライマーは
であり、リバースプライマーは
であり、プローブは
であった。ヒトGAPDHについて、フォワードプライマーは
であり、リバースプライマーは
であり、プローブは
であった。FAMは6-カルボキシフルオロセイン、JOEは6-カルボキシ-4,5-ジクロロ-2,7-ジメトキシフルオロセイン、TAMRAは6-カルボキシ-N,N,N',N'-テトラメチルローダミンである。FAMおよびJOEは、5'レポーター色素であり、一方、TAMRAは3'消光剤色素である。
【0097】
遺伝子発現の相対的定量は、内部標準としてGAPDHを用い、PE Biosystemsマニュアルに記載されているように行った。比較Ct(サイクル閾値)方法が、GAPDH mRNAレベルと比較したIAP mRNAレベルの相対的定量のために用いられた。簡単に述べると、リアルタイム蛍光測定値を、各PCRサイクルにおいて取得し、各試料についての閾値サイクル(Ct)は、蛍光がベースライン標準偏差の30倍の閾値を超える時点を測定することにより計算した。平均ベースライン値およびベースラインSDは、3回目のサイクルベースライン値から開始し、シグナルが指数関数的に上昇し始める3サイクル前のベースライン値で終了し、計算する。特定のIAPについてのPCRプライマーおよび/またはプローブは、ゲノムDNA混入を増幅かつ検出する可能性を低減させるために、1 kbもしくはそれ以上のゲノムDNAにより分離される少なくとも1つのエキソン-イントロン境界にまたがるように設計された。シグナルの特異性および可能性のあるDNA由来の混入は、逆転写およびPCR反応段階を行う前に、デオキシリボヌクレアーゼかまたはリボヌクレアーゼのいずれかでいくつかのRNA試料を処理することにより検証された。
【0098】
XIAP ELISAおよびHIAP1ウエスタン免疫ブロット
標準比色定量XIAP ELISAアッセイ法を、捕獲抗体としてXIAPに対するアフィニティー精製されたウサギポリクローナル抗体を用いて行い、XIAPモノクローナル抗体(MBL、日本)およびビオチン化抗マウスIg抗体および西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンおよびTMB基質で検出した。または、ポリクローナルXIAPまたはHIAP1抗体が、XIAPまたはHIAP1タンパク質レベルをそれぞれ測定するために用いられてもよい。
【0099】
HIAP1は、一次抗体としてアフィニティー精製された抗ラットHIAP1ウサギポリクローナル抗体を用いるウエスタン免疫ブロット上で検出し、二次西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗ウサギIg抗体および化学発光基質を用いてX線フィルム上でのECL(Amersham)により検出した。抗HIAP1ポリクローナル抗体は、ラットHIAP1のGST融合に対して産生される。この抗体は、ヒトおよびマウス両方のHIAP1ならびにHIAP2と交差反応する。
【0100】
実施例4:アンチセンスXIAPオリゴヌクレオチドによる、XIAP RNAおよびポリペプチド発現の低下
96個のアンチセンスオリゴヌクレオチドのXIAP合成ライブラリーは、まず、XIAPタンパク質レベルの減少についてスクリーニングされた。具体的には、T24細胞を1日目に96ウェルプレートのウェルに播き、24時間、抗生物質を含まないマッコイ(McCoy's)培地で培養した。2日目に、上記のように細胞は、XIAPアンチセンスオリゴヌクレオチドでトランスフェクトした(オリゴヌクレオチドは、それらのプレーティング位置、すなわちA1〜H12、2個の繰り返しと、密封膜に貼り付いた凍結乾燥のDNAペレットを含むA13およびB13とを含む、に従って標識された)。簡単に述べると、核酸塩基オリゴマーを血清不含有、抗生物質不含有のマッコイ培地10μl/ウェルに希釈し、その後、PLUS試薬を添加した。リポフェクタミンを血清不含有、抗生物質不含有のマッコイ培地10μl/ウェルに希釈し、両混合物を室温で15分間インキュベートした。その後、混合物を合わせて、室温で15分間インキュベートした。
【0101】
その間に、完全培地を細胞から除去し、血清不含有、抗生物質不含有の培地50μl/ウェルを細胞へ添加した。トランスフェクション混合物をウェルへ添加し、細胞を3時間インキュベートした。その後、血清不含有、抗生物質不含有の培地30μl/ウェルおよび20%ウシ胎児血清を含む抗生物質不含有の完全培地100μl/ウェルを各ウェルへ添加した。
【0102】
3日目に、XIAP RNAレベルを上記のように定量リアルタイムPCR技術を用いて測定した。4日目に、XIAPタンパク質レベルをELISAにより測定し(図1A、1C、1E、1G、1Iおよび1K)、細胞総タンパク質量を生化学的に測定した(図1B、1D、1F、1H、1Jおよび1L;XIAPタンパク質レベルを標準化するために用いられる)。結果は、偽のトランスフェクション試料(オリゴヌクレオチドDNAは添加されないが、トランスフェクション剤で処理され、その後、他の試料に関して処理される)と比較された。時間経過実験より、タンパク質ノックダウンのための最適な時間が約12〜24時間であると決定された。
【0103】
オリゴヌクレオチドライブラリーはまた、上記のプライマーおよびプローブを用いて、適切な最適時間におけるTaqMan特異的PCRプライマーおよび蛍光プローブを用いるRNAレベルにおける減少についてスクリーニングされた。時間経過実験により、mRNAが6〜9時間において最適に減少することが決定された。これらの結果は、タンパク質結果とよく一致している。
【0104】
第一スクリーニング(おそらくは、トランスフェクトしていない細胞の増殖のために、XIAPレベルが正常まで戻りつつある最適下限の時点において行われる)は、偽の(核酸塩基オリゴマー無し)トランスフェクションレベルと比較して、総タンパク質量に対するXIAPタンパク質レベルにいくらかの減少を示す(図1A、1C、1E、1G、1Iおよび1K)、試験した96個の核酸塩基オリゴマーから16個のアンチセンスオリゴヌクレオチドを同定した(表1:C2、E2、E3、F3、C4、D4、E4、F4、G4、C5、D5、B6、F6、D7、D8、F8)。総タンパク質量は、これらの16個の核酸塩基オリゴマーのそれぞれについて減少し、これらの核酸塩基オリゴマーの毒性または細胞増殖抑制効果を示している(図1B、1D、1F、1H、1J、1L)。核酸塩基オリゴマーB9およびC9は、総タンパク質量において明らかな下落を示したが、XIAPタンパク質レベルにおいて相対的な下落を示さなかった。
【0105】
偽のトランスフェクションと比較して相対的XIAPタンパク質レベルにおいていくらかの減少を示した16個のアンチセンス核酸塩基オリゴマーは、上記の時間経過研究に基づいたより最適な時点(12時間)における、XIAPタンパク質をノックダウンする能力について、1個の対照核酸塩基オリゴマー(D2)を含め、単独または組み合わせて、再試験された(図2B)。これらの核酸塩基オリゴマーはまた、12時間目においてXIAP mRNAレベルを減少させる能力について試験され、GAPDHに対して標準化され、偽のトランスフェクションと比較された。12時間目における総タンパク質濃度も測定された(図2C)。
【0106】
核酸塩基オリゴマーのXIAPタンパク質レベルを減少させる能力(図2A)とXIAP mRNAレベルを減少させる能力(図2A)の間に良い相関があった。さらに、この初期時点において、総タンパク質量の主要な損失はなく、XIAP mRNAおよびタンパク質における減少が、後期時点に見られる総タンパク質量における減少より先に起こる。単独でまたは1:1の比で加えられた2個の核酸塩基オリゴマーの組み合わせにおいて、XIAPタンパク質またはmRNAのレベルの50%より大きい損失を示した核酸塩基オリゴマーは、最良の核酸塩基オリゴマーとして同定され、さらに検証された。これらの16個のオリゴヌクレオチドのうち、10個(E2、E3、F3、E4、F4、G4、C5、B6、D7、F8)が、用いられるトランスフェクション条件に依存して、または組み合わせて(C5とG4のように)用いられる場合、50%より大きくXIAPタンパク質またはRNAレベルを減少させる一貫した能力を示した。さらに、アンチセンス活性を実証したこれらの16個のオリゴヌクレオチドは、XIAP mRNAの4つの異なる標的領域にクラスターを形成し、隣接した核酸塩基オリゴマーはかなりのノックダウン活性を示した。これらの感受性の領域または島の間の配列を標的とする核酸塩基オリゴマーでは、ほとんどまたは全くアンチセンス活性が観察されなかった。おそらく、これらの領域は、細胞内部において核酸塩基オリゴマーに接近できるmRNA上におけるオープン域を示している。2個の核酸塩基オリゴマー、E3およびF3は、IRESと翻訳開始部位との間の介在領域における開始コドンのすぐ上流でXIAPを標的にし、IRESエレメントの末端と部分的に重なる。C2、D2、およびE2は、最小IRESエレメントの上流でXIAP領域を標的にし、最小IRES領域がインビボにおいて核酸塩基オリゴマーへ容易に接近できないRNAの高次構造化領域であるというさらなる証拠を提供している。すべての他の核酸塩基オリゴマーは、XIAP配列の856位〜916位における活性のクラスター(E4、F4、およびG4)、ならびに、例えば、核酸塩基オリゴマーC5およびD5により実証されているようなより小さい分離した領域を含む、コード領域の部分に相補的である。
【0107】
表1に示す96個の核酸塩基オリゴマーの一部は、トランスフェクション後9時間目における、NCI-H460細胞中のXIAP mRNAをノックダウンする能力について再スクリーニングした。データを以下の表4にまとめる。
【0108】
【表4】
【0109】
本発明者らはまた、4x4 MBO(すべてPS、DNA残基の両側に4個の2'-O-メチルRNA残基が隣接している)がH460細胞においてXIAPタンパク質をノックダウンできるかどうかを測定した。図3および図4に示すように、E12およびもう一つのオリゴヌクレオチド、FG8、の4x4 MBは、31nMほどの低い量で効果があった。
【0110】
実施例5:XIAPアンチセンス核酸塩基オリゴマーによる、細胞毒性および化学増感の増大
本発明者らは、XIAPアンチセンス核酸塩基オリゴマーが、アドリアマイシンまたはシスプラチンのような伝統的な化学療法剤に対して、高い薬剤耐性のT24細胞を化学増感させることができるかどうかを調べた。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、異なるXIAP標的領域のいくつかを代表するように選択され、単独でまたは他のオリゴヌクレオチドもしくは薬剤と組み合わせて、それらの細胞毒性効果について試験された。5個のXIAPアンチセンスオリゴヌクレオチドが、T24膀胱癌細胞を殺すまたは化学増感させる能力について試験され、3個の対応するスクランブル対照オリゴヌクレオチドの効果と比較された。
【0111】
T24細胞は、XIAPアンチセンスオリゴヌクレオチド、スクランブルオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド無し(偽のトランスフェクション)でトランスフェクトし、または未処理のままとした。細胞は、WST-1テトラゾリウム色素が代謝活性のある細胞において有色のホルマザン生成物へ還元されるWST-1テトラゾリウム色素アッセイ法を用いて、トランスフェクション(未処理の対照を除く)後20時間目に、生存度について試験した(図5A)。
【0112】
オリゴヌクレオチドE4により誘導された細胞毒性の発生は、未処理のまま、偽のトランスフェクション、またはE4、スクランブルE4、E4逆極性、もしくはE4ミスマッチ化オリゴヌクレオチドをトランスフェクトしたT24細胞を視覚的に調べることにより検査した。トランスフェクション後20時間目に、形態について細胞を調べた(図5D)。アンチセンスE4オリゴヌクレオチドをトランスフェクトした細胞のみが毒性の徴候を示した。
【0113】
シスプラチンまたはアドリアマイシンに対するT24細胞の化学増感への核酸塩基オリゴマーの効果を調べるために、オリゴヌクレオチドは、アドリアマイシンの一定用量(0.5μg/ml)の存在下において、T24細胞をさらに殺す能力について試験された。細胞を、まず、オリゴヌクレオチドでトランスフェクトし、その後、さらに20時間、アドリアマイシンを添加した。20時間の薬剤処理の最後に、生存度をWST-1により測定した(図5B)。結果は、核酸塩基オリゴマー処理のみと比較した生存度%として図5Cに示す。
【0114】
試験した5個の核酸塩基オリゴマーすべて(F3、E4、G4、C5、D7)、加えてE4+C5およびG4+C5の組み合わせは、T24細胞を殺し、偽の(オリゴヌクレオチド無し)トランスフェクション細胞またはF3
、E4
およびC5
に対応する3個のスクランブル対照をトランスフェクトした細胞と比較して、24時間後、10〜15%の生存細胞のみを残した(図5Aおよび図5C)。それゆえに、毒性は、XIAPレベルを低下させるそれらの核酸塩基オリゴマーに対して配列特異的であり、一般にこの化学現象は、核酸塩基オリゴマーによる配列非特異的な毒性によるのではない。この細胞毒性は、XIAPタンパク質ノックダウンの複合的な効果(およびXIAPにより与えられる抗アポトーシス保護の予想される損失)ならびにトランスフェクション自体の細胞毒性に起因しうる。
【0115】
3時間のトランスフェクション期間の最後にアドリアマイシンまたはシスプラチンの一定用量を添加すると、結果として、試験したオリゴヌクレオチドのいくつかにおいて生存はさらに低下し、核酸塩基オリゴマー、F3、D7、およびG4+C5組み合わせ、について、それらの対応するオリゴヌクレオチドで処理した値(図5C)と比較して、20時間後に、生存はさらに40%低下した(図5B)。図5Bでの値(オリゴヌクレオチドと薬剤)は、図5Cでのオリゴヌクレオチド単独の値と比較しており、各ODNを100%に設定する。アドリアマイシン化学増感についての結果のみを示す;細胞をシスプラチンで化学増感した場合、同様の結果が得られた。用いた一定用量において、偽およびスクランブル対照のトランスフェクションでは、アドリアマイシンで処理された場合、どちらも生存の喪失に一切の増加がみられなかった(図5B)。化学増感は、XIAPレベルが特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドにより減少させられる場合のみ見られる。
【0116】
実施例6:H460細胞におけるXIAP mRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの下方制御効果
リアルタイムPCRを用いることにより、アンチセンスオリゴヌクレオチド(2x2 MBO、ホスホロチオエート結合をもつ両末端における2個の隣接する2'-O-メチルRNA残基、および15個のホスホジエステルDNA残基の中心のコアから構成される)を、H460細胞におけるXIAP mRNAに対するそれらの効果について調べた。この配置において、核酸塩基オリゴマー、F3、G4、C5、AB6、およびDE4は、未処理の対照と比較して、50〜70%、mRNAレベルを低下させ、一方、D7 AS核酸塩基オリゴマーは、30%、mRNAを低下させた(図6)。対照的に、対照核酸塩基オリゴマーおよびトランスフェクタント剤単独(LFA)はそれぞれ、未処理の対照の20%未満までmRNAレベルを低下させただけであった(図6)。核酸塩基オリゴマーF3、G4、およびC5は、インビトロおよびインビボでのさらなる研究のために選択された。TaqMan分析により観察されたXIAP mRNAの追加のノックダウンを図7および図8に示す。
【0117】
実施例7:XIAPタンパク質に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの下方制御効果
本発明者らは、ウエスタンブロット分析により、XIAPタンパク質発現に対するオリゴヌクレオチド配置における核酸塩基オリゴマーF3、G4、およびC5の能力を特徴付けた(図9、10A、および10B)。G4 ASオリゴヌクレオチドは、XIAPタンパク質に対し最強の下方制御効果を示し、1.2μMの濃度で、トランスフェクションの終了後24時間で、62%、XIAPタンパク質レベルを低下させた(図10Aおよび10B)。1.2μMでのF3 ASオリゴヌクレオチドは、50%、XIAPタンパク質レベルを低下させ、一方、C5 ASオリゴヌクレオチドは、それの対照と比較して配列特異的効果を示さなかった(図10B)。追加の研究において、E12およびFG8 ASオリゴヌクレオチドは、XIAPタンパク質レベルを有意に低下させた(図9)。
【0118】
実施例8:XIAP ASオリゴヌクレオチドによるアポトーシスの誘導
XIAP AS核酸塩基オリゴマーは、後でH460細胞およびT24膀胱癌細胞の生存度を低下させることができることを実証したが、本発明者らは、観察された細胞死がアポトーシスの誘導によるのかどうかを決定した。図11Aに示すように、1.2μMでのF3またはG4 ASオリゴヌクレオチドで処理したH460細胞は、プロカスパーゼ-3タンパク質を、未処理の対照細胞と比較して、それぞれ、タンパク質レベルの40%または60%の低下を伴って分解し、かつ活性化した。PARPはまた、カスパーゼ-3で生じる予想された断片になった(図11A)。対照的に、1.2μMでのF3およびG4 SCオリゴヌクレオチド対照は、カスパーゼ-3またはPARPタンパク質発現に少しも効果を生じなかった(図11A)。Bcl-2:Baxの比は、1.2μMでのF3およびG4 ASオリゴヌクレオチドならびにそれらのそれぞれの対照で処理されたH460細胞において変化しなかった。フローサイトメトリーは、G4 ASオリゴヌクレオチドで処理されたH460細胞における低二倍体DNA含有量を検出するために用いられ、PIで染色された(図12A)。H460細胞が、1.2μMでのG4 ASオリゴヌクレオチドまたはスクランブル対照オリゴヌクレオチドで処理された場合、細胞の低二倍体DNA含有量は、未処理の対照細胞についての16.6%と比較して、それぞれ、40.8%および22.1%であった。DAPI染色は、1.2μMでのG4 ASオリゴヌクレオチドまたはスクランブル対照オリゴヌクレオチドで処理されたH460細胞の核形態学的変化を検出するために用いられた。図12Bに示すように、G4 ASオリゴヌクレオチドで処理した細胞は、クロマチン凝縮および核DNA断片化を含むアポトーシスに特有な形態学的変化を起こした。G4 SCで処理した対照細胞においては、ほとんどの細胞がこれらの形態学的変化を示さなかった。
【0119】
実施例9:ASオリゴヌクレオチドによる細胞増殖の阻害および抗癌剤に対するH460細胞の増感
XIAP発現の下方制御およびアポトーシスに関連した核酸塩基オリゴマーの生物学的効果を分析するために、G4 ASオリゴヌクレオチドで処理されたH460細胞の増殖をMTTアッセイ法により調べた。トランスフェクション後48時間において、G4 ASオリゴヌクレオチドは、用量依存的にH460細胞増殖を低下させ、1.2μMでは未処理の対照レベルに対して55%の低下を示した(図13A)。対照的に、G4 SCオリゴヌクレオチド、またはトランスフェクタント剤単独の増殖阻害効果は、比較的に低く、それらの未処理の対照のたった10%未満だけであった。
【0120】
XIAP発現の下方制御に、H460細胞を化学療法に対して増感させる可能性があるかどうかを調べるために、G4 ASオリゴヌクレオチドおよび以下の抗癌薬の1つを用いる組み合わせ処理を行った:ドキソルビシン(DOX)、タキソール、ビノレルビン(VNB)およびエトポシド(Etop)。図13Bは、各組み合わせが、G4 ASオリゴヌクレオチドまたは抗癌薬のいずれか単独での処理と比較して、少なくとも細胞死に追加的な細胞毒性効果を生じたことを実証している。
【0121】
実施例10:H460およびLCC6腫瘍異種移植片に対するG4 ASオリゴヌクレオチドの抗腫瘍効力
本発明者らは、まず、皮下にH460ヒト肺癌異種移植片を有するSCID-RAG2マウスに対するXIAPアンチセンス2x2-MBOの腫瘍内注射により、腫瘍増殖量が低下するかどうかを決定した。処理は、腫瘍細胞接種(s.c. 106細胞の肩注射)後14日目より、2週間、週に3回、触知できる腫瘍塊へMBO(1g腫瘍あたり50μgの2'-O-メチルRNAオリゴヌクレオチド)を注射することにより開始した。ビノレルビン(VNB;ナベルビン(NVB)とも呼ばれる)(15mg/kg i.p.)は、17日目および24日目に注射した。腫瘍サイズは、週に3回、カリパスで測定した。処理期間の最後(24日目)に、C5+G4 AS MBOおよびVNBの組み合わせで処理したマウスの相対的腫瘍増殖平均は、スクランブル対照MBOおよびVNBで処理されたものと比較して〜70%低下した。C5 AS MBOおよびVNBでの処理は、結果として、スクランブル対照と比較して、腫瘍サイズの〜60%低下をもたらした(図14)。
【0122】
最初の全身性PS-オリゴヌクレオチド研究は、どんな化学療法剤も用いないように設計された。SCID-RAG2マウスに、H460ヒト肺癌細胞を接種し(s.c. 106細胞の肩注射)、G4およびFS AS PS-オリゴヌクレオチド、加えてスクランブル対照での処理は、腫瘍接種後3日目に開始した。核酸塩基オリゴマー注射は、3週間、週に3回、12.5mg/kgで腹腔内に施した。処理期間の最後に、G4またはF3 ASオリゴヌクレオチドのいずれかで処理した群における平均腫瘍サイズは、スクランブル対照オリゴヌクレオチドで処理した群においてよりも〜50%小さかった(図15)。同じ処理プロトコールが、MDA-MB-435/LCC6ヒト乳癌細胞を同所に接種した雌SCID-RAG2マウスにおいて試験された。最後の処理後2週間目(35日目)に、F3、C5、またはG4 ASオリゴヌクレオチドで処理したマウスの腫瘍容積は、媒質対照よりそれぞれ、70%、60%、および45%小さかった(図16)。
【0123】
本発明者らは、皮下に移植されたH460ヒト非小細胞肺腫瘍の異種移植片を有するSCID-RAG2マウスにおいてG4 ASオリゴヌクレオチドの抗腫瘍効果の追加の試験を行った。食塩水処理された対照腫瘍は、約24日間以内に、0.75 cm3のサイズまで再生的に増殖した(図17)。オリゴヌクレオチド処理は、腫瘍細胞接種後3日目に開始した。G4 ASオリゴヌクレオチド(5〜15mg/kg)は、3〜7日目、10〜14日目、および17〜21日目にかけて1日1回腹腔内に注射する処理計画で投与した。5mg/kgまたは15mg/kg G4 ASオリゴヌクレオチドでの処理は、腫瘍増殖を大いに遅らせた:24日目において、平均腫瘍サイズは、対照、5mg/kg、および15mg/kgの処理群において、それぞれ、0.75 cm3、0.45 cm3、および0.29 cm3であった(図18A)。腫瘍増殖の用量依存的阻害があった。15mg/kg G4 ASオリゴヌクレオチドで処理したマウスにおける腫瘍サイズは、対照群においてよりも有意に小さく、対照の平均腫瘍サイズの39%を示した。対照的に、15mg/kgでのG4 SCオリゴヌクレオチドの投与は、治療的活性を与えなかった(図17)。オリゴヌクレオチドで処理したマウスはいずれも一切の毒性の徴候を見せず、両オリゴヌクレオチドの用量は耐容性を示した。将来的な抗癌薬との併用処理投与計画としては、用量15mg/kgが選択された。
【0124】
実施例11:G4 ASオリゴヌクレオチドで処理したH460腫瘍におけるXIAP発現の低下
G4 ASオリゴヌクレオチドの腫瘍増殖阻害効果をXIAPタンパク質発現と相関させるために、本発明者らは、15mg/kgのG4 ASおよびSCオリゴヌクレオチドでのインビボの処理の最後に、XIAP発現における変化を調べた。腫瘍接種後21日目または24日目に腫瘍のサイズが1 cm3に達した時点で(図17)、腫瘍を収集し、腫瘍ホモジネートからの溶解物をウエスタンブロット分析に用いた。ヒトタンパク質に対するXIAPおよびβアクチンの抗体を用いることにより、マウス細胞由来のXIAPからの混入が無い状態で、腫瘍細胞検体から得られたヒトXIAPレベルの測定が可能であった。G4 ASオリゴヌクレオチドで処理した腫瘍におけるXIAPタンパク質レベルは、対照腫瘍の約85%まで有意に低下した(P<0.005)(図18Aおよび18B)。G4 SCオリゴヌクレオチドで処理した腫瘍は、サイズが対照腫瘍の24%縮小した。これらの結果は、G4 ASオリゴヌクレオチドによるH460腫瘍増殖の阻害が、XIAPタンパク質発現の下方制御と相関していることを示した。
【0125】
実施例12:腫瘍検体の組織病理学
XIAP ASオリゴヌクレオチドの投与が、結果として、直接的な腫瘍細胞死をもたらすかどうかを評価するために、本発明者らは、形態およびユビキチン免疫染色の両方について、処理後の腫瘍の組織構造を調べた(図19Aおよび19B)。腫瘍接種後21日目または24日目において、15mg/kgのG4 ASオリゴヌクレオチド、SCオリゴヌクレオチド、または食塩水対照で処理した腫瘍を、切除し、切片にし、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。結果は、所定のXIAP ASオリゴヌクレオチド処理を施した動物の腫瘍には数の増加した死細胞が含まれ、その無定形の形状および凝縮した核物質によって形態学的に同定されることを実証している(図19A)。
【0126】
タンパク質の分解は、たいてい、ユビキチン-プロテアソーム依存性であり;ユビキチン発現上昇がアポトーシスにおいて観察されている。従って、本発明者らは、ヘマトキシリンおよびエオシン染色に用いられた腫瘍切片においてユビキチン発現を調べた。図19Bに示すように、XIAP ASオリゴヌクレオチドを投与したマウスにおける腫瘍は、対照またはSC ODNを処理したマウスにおける腫瘍と比較して、より強い免疫組織化学的染色を示した。これらのデータは、XIAP AS核酸塩基オリゴヌクレオチドを処理した腫瘍細胞では、対照腫瘍よりも遊離ユビキチンおよび/またはユビキチン化したタンパク質が多いことを示している。
【0127】
実施例13:ビノレルビンと組み合わせたG4 ASオリゴヌクレオチド処理
G4 AS核酸塩基オリゴマーおよびビノレルビン(VNB)、肺癌治療に用いられる化学療法剤、の組み合わせ処理により、結果として、何らかの協同的な効果がもたらされるかどうかを評価するために、本発明者らは、G4 ASオリゴヌクレオチドまたはG4 SCオリゴヌクレオチドの存在下および非存在下において、VNBの治療的効力を比較した。処理投与計画は、腫瘍接種後3日目に開始された。図20Aは、H460腫瘍をもつマウスへ与えられ、食塩水対照と比較された、VNBの5mg/kgおよび10mg/kg用量についてのインビボの効力結果を示している。2つの投与計画のそれぞれは、望ましくない毒性の有意な徴候(すなわち、体重減少)を示すことなく、用量依存的に有意な腫瘍増殖抑制を誘導した。G4 ASオリゴヌクレオチド(15mg/kg)の投与がH460腫瘍の処理のためにVNB(5mg/kg)と組み合わされた場合、いずれかを単独で投与した処理と比較して、H460腫瘍増殖のよりいっそう著しい遅延が観察された(図20B)。これも、マウスは、毒性の一切の有意な徴候(すなわち、体重減少)を示さなかった。G4 ASもしくはSCオリゴヌクレオチドの存在下または非存在下において5mg/kg VNBで処理したマウスにおける平均腫瘍サイズは、29日目に比較された(図20Aおよび20B)。VNBおよびG4 ASオリゴヌクレオチドの群における平均腫瘍サイズは、0.22±0.03 cm3であり、5mg/kg VNB単独でまたはVNB G4 SCオリゴヌクレオチドとの組み合わせで処理された動物における平均腫瘍サイズ(それぞれ、0.59±0.04 cm3および0.48±0.05 cm3)より有意に小さかった。
【0128】
方法
実施例5〜13において得られた結果は、以下の方法を用いて得られた。
【0129】
オリゴヌクレオチド合成
96個を超す重複していないキメラの、または混合骨格(MBO)の、19merアンチセンスオリゴヌクレオチドのライブラリーが、ホスホロチオエート結合をもつ両末端における2個の隣接2'-O-メチルRNA残基と、15個のホスホジエステルDNA残基の中心のコアとから構成される、2x2 MBOオリゴヌクレオチドとして合成された。各最終生成物は、Sephadex G-25クロマトグラフィー(IDT Inc.、コーラルビレ(coralville)、IA)により脱塩した。このキメラのウィングマー(wingmer)配置ならびにホスホロチオエートおよびホスホジエステル結合の混合(2x2 PS/POと呼ばれる)は、十分な安定性を提供し、同時にまた、ホスホロチオエート残基に関連する非特異的毒性を低減させた。インビボおよびインビトロの研究のための完全にホスホロチオエート化された非キメラの(DNA)アンチセンスオリゴヌクレオチドは、Trilink Biotechにより合成され、RP-HPLCで精製された。
【0130】
アンチセンスオリゴヌクレオチドスクリーニング
1〜1.2μM オリゴヌクレオチド-リポフェクチン複合体を24〜48時間トランスフェクトしたT24膀胱癌細胞は、XIAPタンパク質をノックダウンする各オリゴヌクレオチドの能力を測定するために評価した。陽性ヒットは、T24膀胱癌細胞およびH460肺癌細胞において、(i)ウエスタン分析による、トランスフェクションの12〜18時間目におけるXIAPタンパク質レベル、および(ii)定量RT-PCR(下記参照)による、トランスフェクションの6〜9時間目におけるXIAP mRNAレベル、をノックダウンする能力について再確認された。候補オリゴヌクレオチドは、さらに同定かつ試験された。同定された2x2 PS/POキメラのオリゴヌクレオチドは、400〜1200nM濃度の範囲において、6〜9時間で、XIAP mRNAレベルを減少させる用量依存的能力を示した。典型的なオリゴヌクレオチドを表5に示す。
【0131】
【表5】
*太字残基=ホスホロチオエート結合をもつDNA残基、下線の引かれた残基=2'-O-メチルRNA塩基、装飾のない残基=ホスホジエステルDNA残基。
【0132】
腫瘍細胞系および動物異種移植片モデル
ヒト非小細胞肺癌細胞系(大細胞型)NCI-H460(H460)は、ATCCから得られ、5% CO2を含む加湿された雰囲気下、37℃で、10% FCSを追加したRPMI 1640において維持された。細胞は、最大25回のインビトロ継代まで、指数関数的な増殖相において用いた。雄SCID-RAG2マウス(週齢7〜9週間、23〜26g)は、British Columbia Cancer Agency Joint Animal Facility繁殖コロニーから得、無菌的環境で飼育した。SCID-RAG2マウスにおけるNCI-H460細胞の腫瘍モデルは、マウスの背中へ1x106個のNCI-H460細胞を皮下移植することにより樹立した。
【0133】
アンチセンスおよび抗癌薬による細胞の処理
トランスフェクションの1日前に、H460細胞を、6ウェルまたは96ウェルの組織培養プレートに播いた。ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドは、リポソーム-オリゴヌクレオチド複合体の形をとって、リポフェクタミン2000(Life Technologies)と共に細胞へ送達された。4.5時間または6時間のトランスフェクション後、トランスフェクション培地を10% FBSを含むRPMI培地と交換し、細胞をもう24時間または48時間インキュベートした。
【0134】
リアルタイム定量RT-PCR
リポソーム-オリゴヌクレオチド複合体で6時間処理したH460細胞由来の全RNAを、RNeasyミニスピンカラムおよびデオキシリボヌクレアーゼ処理(QIAGEN、バレンシア、CA)を用いて直ちに単離した。特定のXIAP mRNAは、リアルタイム定量RT-PCR法を用いて測定した。XIAPフォワードおよびリバースプライマー(600nM)およびプローブ(200nM)
は、エキソン3〜4および4〜5の接合部にまたがるように設計された。プライマー、およびプローブの1つは、いかなる可能性のあるゲノムDNA混入の検出も遮断するためにイントロン-エキソン境界に重なるように設計された。RNAは、ABI prism 7700配列検出システム(Sequence Detection System)(PE/ABI)において、TaqMan EZ RT-PCRキット(PE/ABI、フォスターシティー、CA)を用いて、逆転写およびPCR増幅した。RT段階についての温度サイクリング条件は、50℃で2分間、60℃で30分間、95℃で5分間とし、続いてPCR(1サイクルにつき、94℃で20秒間、60℃で1分間)を45サイクルとした。各試料のXIAP mRNAレベルは、未処理の対照細胞に対して計算した。XIAP mRNAレベルは、30XベースラインSDの閾値を用いるサイクル閾値法(Ct)により測定し、XIAPレベルは、PE/ABI供給プライマーおよびプローブを用いて、GAPDH含有量に対して標準化した。
【0135】
ウエスタンブロット分析
細胞または腫瘍組織試料は、プロテアーゼ阻害剤(Complete-Miniプロテアーゼ阻害剤錠剤;Boehringer Mannheim GmBH、マンハイム、ドイツ)を含む氷冷溶解緩衝液(50mM トリス、150mM NaCl、2.5mM EDTA、0.1% SDS、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、1% NP-40、0.02%アジ化ナトリウム)で溶解させた。氷上で30分間インキュベーションした後、試料を、10,000 rpmで15分間遠心分離し、-20℃で保存した。溶解した抽出物におけるタンパク質含有量は、界面活性剤適合性Bio-Radアッセイ法(Bio-Rad Labs、ヘルクレス、CA)を用いて測定した。等量のタンパク質(40μg/レーン)を12% SDS-ポリアクリルアミドゲルまたは4〜15%勾配SDS-ポリアクリルアミド事前作製ゲル(Bio-Rad)上で分離し、ニトロセルロース膜へ転写した。XIAP、Bcl-2(DAKO、グロストラップ、デンマーク)、Bax(Sigma、セントルイス、MO)、βアクチン(Sigma)、カスパーゼ-3(BD PharMingen、サンディエゴ、CA)、およびPARP(BD PharMingen)に対する一次抗体を用いた。二次抗体は、適当な西洋ワサビ結合型抗マウスまたは抗ラビットIgG(Promega、マディソン、WI)であった。タンパク質は、増強化学発光(ECL;Amersham Pharmacia Biotech、バッキンガムシア、英国)により検出し、Kodak自動X線撮影フィルムへの露光後、可視化した。走査型濃度測定(Molecular Dynamics、サニーヴェール、CA)は、量/面の積分によりバンド強度を定量するように行った。細胞におけるXIAP、カスパーゼ-3、Bcl-2、およびBaxの量は、ストリッピングかつリプロービングを行った上で、それらのそれぞれのレーンのβアクチンレベルに対して標準化した。
【0136】
細胞増殖および細胞生存度または細胞死の測定
H460細胞の増殖阻害は、比色定量MTT細胞生存度/増殖アッセイ法により測定した。簡単に述べると、細胞を、リポソーム-オリゴヌクレオチド複合体で4.5時間、処理し、その後、抗癌薬の存在下または非存在下、トランスフェクション試薬またはオリゴヌクレオチドを含まない培地において37℃でさらに48時間インキュベートした。MTT(25μg/ウェル)を各ウェルへ添加し、プレートを、37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション段階後、有色のホルマザン生成物を200μl DMSOの添加により溶解した。プレートを570nmの波長でマイクロタイタープレートリーダー(Dynex Technologies Inc.、シャンティイ、VA)を用いて読み取った。オリゴヌクレオチドで処理したウェルにおける生存細胞のパーセンテージは、未処理の対照に対して標準化した。すべてのアッセイは3連で行った。
【0137】
アポトーシスのフローサイトメトリーアッセイ法
細胞を、リポソーム-オリゴヌクレオチド複合体で4.5時間処理し、37℃でトランスフェクション試薬を含まない培地においてさらに48時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を収集し、試料緩衝液(Ca++およびMg++を含まないPBS中に0.5%グルコース)で2回洗浄し、70%冷エタノール中に4℃で少なくとも18時間、固定させた。試料を3000 rpmで10分間遠心分離し、その後、50μg/ml ヨウ化プロピジウム(PI)および400 U/ml リボヌクレアーゼAを含む試料緩衝液に再懸濁した。試料を、室温で30分間および氷上で30分間インキュベートし、続いて、フローサイトメトリーにより分析した。EXPOソフトウェア(Applied Cytometry Systems、サクラメント、CA)は、ヒストグラムを作製するために用い、これは壊死組織片除去後、細胞周期相分布を決定するために使用した。G1/G0下の細胞画分が、アポトーシスの細胞について代表するものとみなされた。
【0138】
核形態学
細胞をリポソーム-オリゴヌクレオチド複合体で4.5時間処理し、トランスフェクション試薬またはオリゴヌクレオチドを含まない培地において37℃でさらに48時間インキュベートした。細胞を収集し、室温で30分間、0.10μg/ml DAPI(4',6-ジアミジノ-2-2-フェニルインドール)で染色した。細胞をスライドガラスに置き、サイトスピンし、UV蛍光証明下においてLeica顕微鏡および40X 対物レンズで観察した。デジタル画像は、Imagedatabase V. 4.01ソフトウェア(Leica、ドイツ)を用いて捕捉した。
【0139】
インビボ抗腫瘍活性
効力実験は、NCI-H460を有する雄RAG2免疫不全マウスまたはLCC6腫瘍を有する雌RAG2マウスにおいて行った。処理は、腫瘍接種後3日目に開始した。食塩水(対照)、G4 ASオリゴヌクレオチド(5mg/kgまたは15mg/kg)、G4 SCオリゴヌクレオチド(5mg/kgまたは15mg/kg)を3週間の投与計画にわたって、週に5用量として毎日腹腔内に投与した。ビノレルビン(VNB、5mg/kgまたは10mg/kg)は、腫瘍接種後3日目、7日目、11日目、および17日目において、単独でまたはオリゴヌクレオチドとの組み合わせのいずれかで、尾静脈経由で静脈内に投与した。オリゴヌクレオチドをVNBと組み合わせて投与する場合、薬剤処理はODN処理の4時間後に行った。
【0140】
マウスは毎日観察した。体重測定およびストレスの徴候(例えば、無気力、波立った毛、運動失調)が、可能性のある毒性を検出するために用いられた。潰瘍化した腫瘍、または1 cm3またはそれ以上の腫瘍容積をもつ動物は殺された。腫瘍のデジタルカリパス測定値は、式:1/2[長さ(cm)]x[幅(cm)]2を用いて平均腫瘍サイズ(cm3)へ変換した。マウスあたりの平均腫瘍サイズを用いて、群あたり少なくとも2つの独立した実験から群平均腫瘍サイズ±SE(n=6頭のマウス)を計算した。
【0141】
腫瘍および組織加工
マウス腫瘍は、腫瘍接種および処理後21日目または24日目に収集した。腫瘍組織の1部分は、ホルマリン中に固定した。パラフィン包埋組織は切片にし、ヘマトキシリンおよびエオシン染色を用いる肉眼的組織病理学ならびにユビキチン発現についての免疫組織化学にかけた。腫瘍の他の部分は、ウエスタンブロット分析のために溶解緩衝液中でホモジナイズした(上記参照)。
【0142】
統計的解析
スチューデント検定が、2つの処理群間の統計的有意性を測定するために用いられた。多重比較は、一元ANOVA、およびシェレ(Shelle)検定基準(Statistica release 4.5、StatSoft Inc.、タルサ、OK)により異なる処理群を比較する事後検定を用いて行われた。データは、<0.05のP値について有意とみなした。
【0143】
実施例14:アンチセンスHIAP1オリゴヌクレオチドによる、HIAP1 RNAおよびポリペプチド発現の低下
オリゴヌクレオチドとしての15個のHIAP1アンチセンス核酸塩基オリゴマーのライブラリーは、ウエスタンブロット分析によりタンパク質ノックダウンについて、ならびに2つの異なる条件下で上の実施例3に記載したプライマーおよびプローブを用いるTaqManによりRNAノックダウンについて、スクリーニングした。HIAP1 RNAレベルは、標準的ノーザンブロット分析またはRT-PCR技術を用いて検出できる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、基礎条件下またはシクロヘキシミド誘導条件下(毒性下の用量での24時間処理)において細胞へ投与した。シクロヘキシミド(CHX)は、処理した細胞系に応じて、HIAP1 mRNAの10倍〜200倍の誘導へと導くことができる。これは、次に、ウエスタンブロットに見られるような(70kDaバンド)、HIAP1タンパク質の増加へと導く。CHXのこの効果は、2つの別個の作用機構による。第一に、CHXは、NFκB、既知のHIAP1の転写誘導物質を、NFκBの阻害剤である不安定なタンパク質、IκBの新たな合成を遮断することにより、活性化する。この効果は、ピューロマイシン、もう一つのタンパク質合成阻害剤、およびTNF-αにより模倣され、IκBのリン酸化、ユビキチン化および分解へと導くシグナル伝達カスケードを誘導する。新たな転写を遮断するためのアクチノマイシンDと、CHXとの存在下では、アクチノマイシンDとピューロマイシンまたはTNF-αとの組み合わせとは対照的に、HIAP1メッセージの消失の比率が減少することに見られるように、CHXのみがHIAP1 mRNAをさらに安定化させる。
【0144】
SF295神経膠芽細胞腫細胞は、リポフェクチンおよびオリゴヌクレオチド(スクランブルサバイビン、オリゴヌクレオチド無し、アンチセンスAPO 1〜APO 15)でトランスフェクトし、または処理されないままとした。RNAは、トランスフェクション後6時間で、細胞から単離し、HIAP1 mRNAのレベルを、定量PCR(TaqMan分析)により測定し、スクランブルサバイビンオリゴヌクレオチドトランスフェクションについての値を1.0として設定して、GAPDH mRNAに対して標準化した。この実験の結果は、3つの別々の実験をまとめて図21に示す。スクランブルサバイビンオリゴヌクレオチド、偽のトランスフェクションおよび未処理(トランスフェクトしていない)細胞は、すべて、類似したHIAP1 mRNAレベルを示した。15個のアンチセンスオリゴヌクレオチドのうち、7個(APO 1、2、7、8、9、12、15)は、偽のトランスフェクションまたはサバイビンのスクランブル対照オリゴヌクレオチドトランスフェクション
と比較した場合、ほぼ50%の減少を示した(図21)。オリゴヌクレオチドのいくつかは、非特異的な毒性のオリゴヌクレオチドに対してストレス応答である可能性があるHIAP1 mRNAを誘導した。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、たとえそのメッセージが増加しているとしても、オリゴヌクレオチドが翻訳過程に干渉できる場合には、HIAP1タンパク質レベルをノックダウンするのになお有効である可能性がある。
【0145】
HIAP1タンパク質およびmRNA発現に対するHIAP1アンチセンス核酸塩基オリゴマーの効果はまた、HIAP1を発現するように誘導された細胞において試験した。SF295細胞は、オリゴヌクレオチドでトランスフェクトするか、または偽のトランスフェクションとした。その後、トランスフェクトした細胞は、70kDa HIAP1 mRNAおよびタンパク質を誘導するように24時間、10μg/ml シクロヘキシミドで処理した。タンパク質レベルは、抗HIAP1ポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロット分析により測定し、同ブロットをリプロービングしたアクチンタンパク質に対して標準化した。ウエスタンブロット走査結果を図22Aに示す。濃度測定の走査結果を偽の結果(100%に設定)に対してプロットした(図22B)。最も効力のあるアンチセンスオリゴヌクレオチドを容易に同定するために、50%に線を引いている。トランスフェクションの過程自体(例えば、偽またはスクランブルサバイビン)は、ウエスタン免疫ブロットに示されるように、未処理の試料と比較して、HIAP1タンパク質を誘導している。
【0146】
15個の試験した核酸塩基オリゴマーのうち、それらの6個(APO 1、2、7、8、12、および15)は、タンパク質およびmRNAアッセイの両方において、高活性を示すか、または有意な活性があり、APO 4、6、11、13、14について(図21)、およびAPO 2に対する対照オリゴヌクレオチド(ミスマッチまたは逆極性、本文下記ならびに図23および図24を参照)により見られるような、HIAP1 mRNAのストレス誘導性増加を引き起こさなかった。APO 6はまた、総タンパク質量の一般的な減少により見られるような、毒性の証拠を示したことに留意されたい(図23)。
【0147】
シクロヘキシミド誘導条件下におけるHIAP1アンチセンスオリゴヌクレオチドの効力をさらに調べるために、HIAP1のイントロン内のAlu反復を標的としHIAP1 mRNAおよびタンパク質のCHX誘導上方制御の最大の遮断をもたらすAPO 2でトランスフェクションを行った後、6時間目に、HIAP1 mRNAの変化をTaqManリアルタイムPCRにより測定した。この実験の対照は、APO 2についての3個のオリゴヌクレオチド:1個のスクランブル配列(同じ塩基組成だが、順序がランダムである、
)、1個の逆極性(同じ塩基組成、同じ配列順序だが、反対方向になっている、
)、および1個のミスマッチ配列(19個の塩基のうち4個の塩基ミスマッチを含む、
)であった。
【0148】
APO 2の細胞へのトランスフェクションは、結果として、スクランブルサバイビン対照と比較してmRNAを50%減少させ、タンパク質の結果と完全に一致していたが、APO 2についてのスクランブル対照(図24におけるH1 sc apo 2)は、HIAP1 mRNAレベルを全く変化させなかった(ここでは2度、2つの異なる実験において繰り返された)。しかしながら、ミスマッチ対照ODN(H1 mm apo2)および逆極性対照オリゴヌクレオチド(H1 RV apo 2)は、6時間目にHIAP1 mRNAの6〜7倍の誘導を示した。これらのオリゴヌクレオチドは、予想どおり、もはやHIAP1を標的とはしないが、それでもなお、Alu反復を、これらの配列の縮重および反復性質のために、標的にしている可能性がある。それゆえに、これらの2個の対照は細胞に対して毒性であり、HIAP1の誘導へと導くストレス応答を引き起こす可能性がある。この効果は、アンチセンスAPO 2オリゴヌクレオチドでも起こりうるが、この場合、APO 2はまた、スクランブルサバイビン対照と比較してHIAP1 mRNAの相対的減少をもたらす誘導されたHIAP1 mRNAの分解を引き起こし、かつトランスフェクションおよびCHX処理後のHIAP1タンパク質の相対的な折り畳み誘導を、スクランブルサバイビン対照オリゴヌクレオチドと比較して減少させる。
【0149】
6個のアンチセンスHIAP1核酸塩基オリゴマーは、イントロンの配列に対する2個の非常に効力のあるオリゴヌクレオチドを含む(APO 1およびAPO 2、APO 2がより良い活性を示している)。これらのオリゴヌクレオチドは、癌または自己免疫疾患の治療について治療的に用いることができる。イントロンの配列に対するオリゴヌクレオチドは、プレmRNA(非常に短命な標的)のみを標的にし、成熟したプロセシング後のHIAP1の型を標的にしない可能性が高い。典型的には、イントロンは、イントロン-エキソン境界または分枝点を標的にすることによりスプライシングを変えたい場合を除いて、アンチセンスについて標的にされない。これらは、通常、メッセージのリボヌクレアーゼによる分解よりむしろ、エキソンの読み飛ばしを生じる。両方の機構はアポトーシスの促進に有利である可能性が高いが、読み飛ばしにより、HIAP1の最初の2つの重要なBIRドメインをコードするエキソンの損失が生じる。APO 2アンチセンスODNはまた、19個のうちの18個の連続した塩基についてサバイビンのイントロンを標的とするが、本発明者らは、サバイビンタンパク質の一切の損失を見ることはなかった;HIAP1のみがオリゴ処理後に減少し、HIAP1アンチセンスオリゴヌクレオチドの特異性を実証した)。これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、HIAP1イントロンおよび可能性的に多くの他の遺伝子におけるAlu配列をヒットし、癌細胞が死滅するように誘導するが(下記参照)、HIAP1およびいくつかの他の重要な遺伝子の下方制御が原因である可能性があり、従って、それが正常細胞にとってあまり毒性でない場合には治療的に評価される結果となる可能性がある。
【0150】
癌細胞は、報告によれば、より多くのAlu含有転写物を有し、それゆえに、Aluを標的とする核酸塩基オリゴマーでのアポトーシス誘導に対して感受性がより高い可能性がある。さらになお、核酸塩基オリゴマーAPO 1およびAPO 2のこの死滅効果は、Alu配列およびHIAP1の両方を同時に標的とする複合効果による可能性がある。この二重効果は、細胞が特定の毒性剤にさらされる場合、NFκB経路によるHIAP1誘導の正常なストレス応答を阻止するための効果的な方法を生じるものと思われる。このストレス応答は、おそらく、癌細胞の抗アポトーシスプログラムの一部である可能性が高い。HIAP1発現を遮断することにより、本発明者らは、この抗アポトーシスのストレス応答を阻止し、癌細胞の消滅を促進する。
【0151】
実施例15:HIAP1アンチセンスオリゴヌクレオチドによる、細胞毒性および化学増感の増大
SF295細胞の化学増感に対するHIAP1アンチセンス核酸塩基オリゴマーの効果もまた評価された。細胞は、3個の異なるアンチセンスオリゴヌクレオチド(APO 7、APO 15およびSC APO 2(対照))の1個でトランスフェクトした。オリゴヌクレオチドでのトランスフェクション後24時間で、細胞をさらに24時間アドリアマイシンとインキュベートし、その後WST-1をアッセイすることにより細胞生存率について評価した。
【0152】
上記のHIAP1オリゴヌクレオチドをトランスフェクトし、その後、漸増濃度のアドリアマイシンで処理したSF295細胞についてのWST-1生存曲線を図25に示す。HIAP1 mRNAの減少をもたらす2個のオリゴヌクレオチドではまた、HIAP1 mRNAレベルを低下させないオリゴヌクレオチドで処理した細胞と比較して、アドリアマイシンで処理した場合に生存率における減少がみられた。従って、アンチセンスまたは他の手段によりHIAP1レベルを低下させることにより、多くの化学療法剤の細胞毒性作用に高い抵抗性をもつ神経膠芽細胞腫細胞系を化学増感させることができる。
【0153】
本発明の方法に用いることができる追加の89個のHIAP1アンチセンス配列を、表6に示す。ヒトHIAP1とヒトHIAP2との間で100%同一である配列、または1つもしくは2つのミスマッチをもつ配列は、太字になっている。
【0154】
【表6】
【0155】
本発明者らはまた、アンチセンス核酸塩基オリゴマーとしての使用に適した配列についてヒトHIAP2を分析した。同定された配列を表7に示す。
【0156】
【表7】
【0157】
他の態様
米国特許第5,919,912号、第6,156,535号、および第6,133,437号を含む、本明細書で言及されているすべての刊行物および特許出願は、各独立した刊行物または特許出願が、参照として組み入れられるように、詳細かつ個々に示されるのと同程度まで、参照として本明細書に組み入れられる。
【0158】
本発明は、その特定の態様に関して記載しているが、それはさらなる改変が可能であり、本出願は、一般に、本発明の原理に従い、かつ本発明が属する技術分野内の公知もしくは通常の実施内でみられる、上に示される本質的な特徴に適用されうるそのような本開示からの逸脱を含む、本発明のいかなる変化、使用または適応も網羅するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】総タンパク質量に対するXIAPタンパク質発現へのアンチセンスXIAPオリゴヌクレオチドの効果を示すグラフである(図1A、1C、1E、1G、1Iおよび1K)。図1B、1D、1F、1H、1J、および1Lは、上のXIAPタンパク質結果を標準化するために用いた偽のトランスフェクション結果と比較し、各オリゴヌクレオチドトランスフェクションについて示した総タンパク質濃度値である。
【図2】XIAP RNA(図2A)およびXIAタンパク質(図2B)への、単独または組み合わせでの様々なアンチセンスXIAPオリゴヌクレオチドの効果を示すグラフである。図2Cは、偽のトランスフェクション結果と比較した各オリゴヌクレオチドトランスフェクションについての総タンパク質濃度値を示したグラフであり、図2Bに示したXIAPタンパク質結果を標準化するために用いられた。
【図3】31nMの量での4x4混合骨格(MBO)FG8またはE12オリゴヌクレオチドの効果を示すグラフである。H460肺癌細胞は、125nM MBOおよびリポフェクタミン2000を用いて、1日、2日または3日の連続した日において18時間トランスフェクションを行った。ウエスタン分析のための試料は、表示された時間において収集した。走査濃度測定を行い、XIAPタンパク質レベルを、GAPDHに対して標準化し、100%に設定した偽対照と比較した。示すパーセンテージは、特定のスクランブル対照に対するXIAPタンパク質ノックダウン%を表している。
【図4】63nMの量での4x4混合骨格(MBO)FG8またはE12オリゴヌクレオチドの効果を示すグラフである。H460肺癌細胞は、125nM MBOおよびリポフェクタミン2000を用いて、1日、2日または3日の連続した日において18時間トランスフェクションを行った。ウエスタン分析のための試料は、表示された時間において収集した。走査濃度測定を行い、XIAPタンパク質レベルを、GAPDHに対して標準化し、100%に設定した偽対照と比較した。示すパーセンテージは、特定のスクランブル対照に対するXIAPタンパク質ノックダウン%を表している。
【図5】細胞生存度(図5A、5Cおよび5D)、ならびにアドリアマイシンの存在下での化学増感(図5B)に対するアンチセンスXIAPオリゴヌクレオチドの効果を示すグラフである。
【図6】インビトロでのH460細胞におけるXIAP mRNAのオリゴヌクレオチドによる特異的下方制御を示すグラフである。リポフェクタミン2000単独(LFA)、または1.2μMのオリゴヌクレオチドF3、G4、C5、AB6、DE4、もしくはD7、もしくはそれぞれの逆極性(RP)もしくはスクランブル(SC)オリゴヌクレオチド対照と共にリポフェクタミン2000で処理したH460細胞におけるXIAP mRNAレベルを示す。XIAP mRNAの相対量のリアルタイムRT-PCR定量を、トランスフェクション後6時間目に行った。すべてのデータを、それぞれの実験からの三連の平均±標準偏差(SD)として提示する。同一の実験条件下で維持した未処理の細胞(対照)におけるXIAP mRNAのレベルに、1の値を割当てた。
【図7】様々なPS-XIAPオリゴヌクレオチドでのトランスフェクション後のH460細胞におけるXIAP RNAレベルを示すグラフである。H460ヒト肺癌細胞は、1μM PS-オリゴヌクレオチドおよびリポフェクタミン2000を用いて6時間、トランスフェクションを行った。細胞は、その後、TaqMan分析用に収集した。
【図8】4x4 MBOでのトランスフェクション後9時間目のH460細胞におけるXIAP RNAレベルを示すグラフである。H460細胞は、62.5nM〜1μMの4x4 MBOおよびリポフェクタミン2000を用いて、9時間、トランスフェクションを行った。細胞は、その後、TaqMan分析用に収集した。
【図9】4x4 MBOでのトランスフェクション後24時間目のH460細胞におけるXIAPタンパク質ノックダウンを示すグラフである。H460細胞は、1μM 4x4 MBOおよびリポフェクタミン2000を用いて、24時間、トランスフェクションを行った。細胞は、その後、ウエスタンブロット分析用に収集した。走査濃度測定を行い、XIAPタンパク質レベルをアクチンに対して標準化し、100%に設定したそれらの特定のスクランブル(sm、rm)対照と比較した。
【図10】インビトロでのH460細胞におけるXIAPタンパク質のアンチセンスによる特異的下方制御を示す概要図である。リポフェクタミン2000単独(LFA)、またはLFAと1.2μMのXIAPオリゴヌクレオチドF3、G4、もしくはC5、もしくはそれらのそれぞれのオリゴヌクレオチド対照(RP、SC)で処理したH460細胞におけるXIAPタンパク質レベルを示す。XIAPタンパク質レベルは、ウエスタンブロット法により分析し(図10A)、タンパク質の量は、濃度測定により定量した(図10B)。XIAPレベルは、細胞のアクチンレベルに対して標準化し、未処理の対照(CNT)レベルと比較した。
【図11】カスパーゼ活性化に対するXIAPオリゴヌクレオチドによる効果を示す概要図である。トランスフェクトしたH460細胞における、対照と比較した、1.2μMでのXIAPオリゴヌクレオチドF3、G4、もしくはC5、またはそれらのそれぞれのRPおよびSCのODN対照の、プロカスパーゼ-3、PARP(完全長(116kDa)およびプロセシングされたもの(85kDa)両方)の発現(図10A)、ならびにBcl-2およびBaxタンパク質レベル(図10B)に対する効果を示す。タンパク質発現は、ウエスタンブロットにより分析した。Bcl-2およびBaxタンパク質レベルは、細胞のアクチンレベルに対して標準化し、濃度測定により定量した。Bcl-2/Baxの比率は、2つまたは3つの独立した実験の平均として提示し、対照(CNT)細胞における比率を1に設定する。
【図12】アポトーシスのXIAPオリゴヌクレオチド特異的誘導を示す概要図である。アポトーシスの誘導は、1.2μMのXIAP G4 ASオリゴヌクレオチド、G4 SCオリゴヌクレオチドまたは未処理の対照(CNT)で処理されたH460細胞において測定した。図12Aは、ヨード化プロピジウム(PI)染色およびフローサイトメトリーにより測定される場合の、G0/G1下(アポトーシス)のDNA含有量を有する細胞のパーセンテージを示す。図12Bは、DAPIで染色されたオリゴヌクレオチド処理H460細胞の核形態を示す。矢印は、核DNA凝縮または断片化の、アポトーシスに特徴的な形態をもつ細胞を指している。
【図13】H460細胞の生存度に対するXIAP G4 ASオリゴヌクレオチド処理の効果を示すグラフである。細胞は、LFA単独またはG4 ASオリゴヌクレオチドもしくはG4 SCオリゴヌクレオチドとのLFA-オリゴヌクレオチド複合体の漸増濃度で処理し、細胞生存度は、処理の24時間後、MTTアッセイ法により測定した。データは、3つの独立した実験の平均±SDを表す。図13Bは、MTTアッセイ法により測定した場合の、ドキソルビシン(DOX)、タキソール、ビノレルビン(VNB)もしくはエトポシド(Etop)の存在下または非存在下、LFAと、0.4μM用量のG4 ASオリゴヌクレオチドまたはG4 SCオリゴヌクレオチドとの複合体で処理した後のH460死細胞のパーセンテージを示すグラフである。データは、3つの独立した実験の平均±SDを表す。
【図14】XIAP AS 2x2 MBOおよびビノレルビンで処理したマウスにおける相対的H460腫瘍増殖を示すグラフである。50μg/g腫瘍塊におけるオリゴヌクレオチドの腫瘍内注射が、皮下にH460細胞異種移植片を有するSCID-RAG2マウスにおいて行われた。この処理は、ビノレルビンの投与と組み合わされた。
【図15】XIAP AS PS-オリゴヌクレオチドを全身性に処理したマウスにおける平均H460細胞腫瘍サイズを示すグラフである。皮下にH460細胞異種移植片が移植されたSCID-RAG2マウスに対するXIAP AS PS-オリゴヌクレオチドの全身性送達(i.p.)は、対照と比べて腫瘍のサイズを縮小させた。
【図16】XIAP AS PS-オリゴヌクレオチドを全身性に処理したマウスにおけるMDA-MB-435/LCC6ヒト乳癌細胞(LCC細胞)腫瘍サイズを示すグラフである。乳房脂肪パッドにLCC6細胞異種移植片を移植した雌SCID-RAG2マウスに対するXIAP AS PS-オリゴヌクレオチドの全身性送達(i.p.)は、対照と比べて腫瘍のサイズを縮小させた。
【図17】腫瘍増殖および腫瘍XIAPタンパク質レベルに対するG4オリゴヌクレオチドのインビボの効果を示す概要図である。雌SCID-RAG2マウスにおける皮下H460細胞異種移植片の増殖に対する、全身性に送達された裸のXIAP G4 ASオリゴヌクレオチドまたはG4 SCオリゴヌクレオチドの抗腫瘍効力。すべてのデータは、平均±SEM(n=6マウス/群)として表す。
【図18】ウエスタンブロットにより分析し、かつ濃度測定により定量した、G4 ASオリゴヌクレオチド、G4 SCオリゴヌクレオチド、または媒質単独(対照)で21日間処理した後のSCID-RAG2マウスに移植されたH460腫瘍異種移植片におけるXIAPタンパク質発現レベルを示す概要図である。XIAPレベルは、細胞のアクチンレベルに対して標準化した。すべてのデータは、平均±SD(n=3)として表す。
【図19】21日間にわたるXIAP G4 ASオリゴヌクレオチドまたはG4 SCオリゴヌクレオチドの15mg/kgの全身性投与後のSCID-RAG2マウスにおける移植されたH460腫瘍の組織病理に対するG4オリゴヌクレオチドのインビボの効果を示す顕微鏡写真である。図19Aは、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した腫瘍切片を示す。図19Bは、腫瘍切片におけるユビキチン発現の免疫組織化学を示す。代表的な腫瘍顕微鏡写真が示される。内部尺度マーカーは、100μmに等しい。
【図20】XIAPオリゴヌクレオチドと組み合わせたビノレルビン(VNB)のインビボ効力の増加を示すグラフである。XIAP G4 ASオリゴヌクレオチドもしくはG4 SCオリゴヌクレオチドの存在下または非存在下、H460腫瘍異種移植片に対するVNBの抗腫瘍効力を、SCID-RAG2マウスにおいて測定した。図20Aは、単一の薬剤による抗腫瘍活性を示し、一方、図20Bは、組み合わせたVNBおよびG4オリゴヌクレオチドによる抗腫瘍活性を示す。すべてのデータは、平均±SEM(n=6マウス/群)として表す。
【図21】HIAP1 RNAレベルに対するHIAP1オリゴヌクレオチドの効果を示すグラフである。
【図22】HIAP1タンパク質のシクロヘキシミド誘導性上方制御を遮断する細胞の能力に対する、HIAP1オリゴヌクレオチドの効果を示すウエスタンブロットの濃度測定走査を示す概要図である。
【図23】総タンパク質量により測定される場合の細胞毒性に対するHIAP1オリゴヌクレオチドの効果を示すグラフである。
【図24】HIAP1オリゴヌクレオチドAPO 2についての配列特異性の確証を示すグラフである。
【図25】薬剤耐性SF295神経膠芽細胞腫の化学増感に対するHIAP1オリゴヌクレオチドの効果を示すグラフである。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図1J】
【図1K】
【図1L】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸塩基オリゴマーが配列番号:97、98、99、143、147、151、287、289、および300〜460からなる群より選択される配列の少なくとも8個の連続した核酸塩基を含む、長さが30核酸塩基長までの実質的に純粋な核酸塩基オリゴマー。
【請求項2】
配列番号:97、98、99、143、147、151、287、289、および300〜460からなる群より選択される配列で本質的に構成される、請求項1記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項3】
配列番号:97、98、99、143、147、151、287、289、および300〜460からなる群より選択される配列からなる、請求項2記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項4】
オリゴヌクレオチドである、請求項1〜3のいずれか一項記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項5】
オリゴヌクレオチドが少なくとも1つの修飾された結合を含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項6】
修飾された結合がホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロジチオエート、およびホスホセレネート結合からなる群より選択される、請求項5記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項7】
少なくとも1つの修飾された糖部分を含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項8】
修飾された糖部分が2'-O-メチル基または2'-O-メトキシエチル基である、請求項7記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項9】
少なくとも1個の修飾された核酸塩基を含む、請求項1〜8のいずれか一項記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項10】
修飾された核酸塩基が5-メチルシトシンである、請求項9記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項11】
キメラの核酸塩基オリゴマーである、請求項1〜10のいずれか一項記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項12】
核酸塩基オリゴマーが、ホスホロチオエート結合により共に連結されたDNA残基を含み、該DNA残基の両側が、少なくとも1個の2'-O-メチルまたは2'-O-メトキシエチルRNA残基に隣接している、請求項11記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項13】
DNA残基の両側が、少なくとも3個の2'-O-メチルまたは2'-O-メトキシエチルRNA残基に隣接している、請求項12記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項14】
DNA残基の両側が、4個の2'-O-メチルまたは2'-O-メトキシエチルRNA残基に隣接している、請求項13記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項15】
RNA残基がホスホロチオエート結合により共に連結されており、かつ該RNA残基がホスホロチオエート結合によりDNA残基へ連結されている、請求項12〜14のいずれか一項記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項16】
核酸塩基オリゴマーが、ホスホジエステル結合により共に連結されたDNA残基を含み、該DNA残基の両側が、ホスホロチオエート結合により共に連結された少なくとも2個の2'-O-メチルまたは2'-O-メトキシエチルRNA残基に隣接している、請求項11記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項17】
DNA残基の両側が、少なくとも3個の2'-O-メチルまたは2'-O-メトキシエチルRNA残基に隣接している、請求項16記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項18】
4個の2'-O-メチルRNA残基を両側に隣接した11個のDNA残基を含む核酸塩基オリゴマーであって、配列
の1つからなり、該残基はホスホロチオエート結合により共に連結されている、核酸塩基オリゴマー。
【請求項19】
配列番号:155の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項20】
配列番号:16の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項21】
配列番号:157の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項22】
配列番号:27の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項23】
配列番号:141の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項24】
配列番号:41の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項25】
配列番号:47の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項26】
配列番号:51の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項27】
配列番号:63の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項28】
配列番号:161の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項29】
配列番号:151の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項30】
細胞においてIAPの発現を阻害する、請求項1〜29のいずれか一項記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項31】
核酸塩基オリゴマーが細胞においてIAPの発現を阻害するような条件下で請求項1〜29のいずれか一項記載の核酸塩基オリゴマーを動物に投与する段階を含む、動物において細胞のアポトーシスを促進する方法。
【請求項32】
化学療法剤を動物に投与する段階をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
化学療法剤が細胞増殖抑制性薬剤である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
化学療法剤が細胞毒性薬剤である、請求項32記載の方法。
【請求項35】
化学増感剤を動物に投与する段階をさらに含む、請求項31〜34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
生物学的応答改変薬剤を動物に投与する段階をさらに含む、請求項31〜35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
核酸塩基オリゴマーが静脈内にまたは腫瘍内に動物へ投与される、請求項31〜36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
動物がヒトである、請求項31〜37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
癌またはリンパ組織増殖性疾患を有する動物を治療する方法であって、請求項1〜30のいずれか一項記載の核酸塩基オリゴマーの治療的有効量を該動物に投与する段階を含む方法。
【請求項40】
癌が、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、脊髄異形性症候群、慢性リンパ性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝腫、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上皮細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、または網膜芽細胞腫である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
化学療法剤を動物に投与する段階をさらに含む、請求項39または40記載の方法。
【請求項42】
核酸塩基オリゴマーおよび化学療法剤が互いから5日以内に動物へ投与される、請求項41記載の方法。
【請求項43】
核酸塩基オリゴマーおよび化学療法剤が互いから24時間以内に動物へ投与される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
化学療法剤がアドリアマイシン、ビノレルビン、エトポシド、タキソール、およびシスプラチンからなる群より選択される、請求項41〜43のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
化学療法剤が細胞増殖抑制性薬剤である、請求項41記載の方法。
【請求項46】
化学療法剤が細胞毒性薬剤である、請求項41記載の方法。
【請求項47】
化学増感剤を動物に投与する段階をさらに含む、請求項39〜46のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
生物学的応答改変薬剤を動物に投与する段階をさらに含む、請求項39〜47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
核酸塩基オリゴマーが静脈内にまたは腫瘍内に動物へ投与される、請求項39〜48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
動物がヒトである、請求項39〜49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
請求項1〜30のいずれか一項記載の核酸塩基オリゴマーおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。
【請求項52】
コロイド分散系をさらに含む、請求項51記載の薬学的組成物。
【請求項53】
XIAP、HIAP1、またはHIAP2のmRNAを切断することができる触媒性RNA分子。
【請求項54】
結合アームが表1、2、6および7のいずれか1つの配列に対応する少なくとも8個の連続した核酸塩基を含む、請求項53記載の触媒性RNA分子。
【請求項55】
RNA分子がハンマーヘッドモチーフ型である、請求項53または54記載の触媒性RNA分子。
【請求項56】
RNA分子がヘアピン、δ型肝炎ウイルス、グループ1イントロン、VS RNAまたはリボヌクレアーゼP RNAモチーフ型である、請求項53または54記載の触媒性RNA分子。
【請求項57】
哺乳動物細胞における発現のために配置された請求項53〜56のいずれか一項記載の1個または複数の触媒性RNA分子をコードする核酸を含む発現ベクター。
【請求項58】
癌またはリンパ組織増殖性疾患を有する動物を治療する方法であって、請求項53〜56のいずれか一項記載の触媒性RNA分子の有効量を該動物に投与する段階を含む方法。
【請求項59】
表1、2、6、および7のいずれか1つの配列に対応する少なくとも8個の連続した核酸塩基を含む、21個〜29個の間の核酸塩基からなる二本鎖RNA分子。
【請求項60】
表1、2、6、および7のいずれか1つの配列に対応する少なくとも8個の連続した核酸塩基を含む21個〜29個の間の核酸塩基の第一ドメイン;該第一ドメインに相補的な第二ドメイン;ならびに該第一ドメインおよび該第二ドメインが二重鎖形成することができるように該第一ドメインと該第二ドメインの間に位置している、二本鎖ヘアピンRNA分子を形成するためのループドメインを含む、50個〜70個の間の核酸塩基からなる二本鎖ヘアピンRNA分子。
【請求項61】
哺乳動物細胞における発現のために配置された請求項60記載の二本鎖RNA分子をコードする核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項62】
癌またはリンパ組織増殖性疾患を有する動物を治療する方法であって、請求項59または60記載の二本鎖RNA分子の有効量を該動物に投与する段階を含む方法。
【請求項63】
配列番号:97、98、99、143、147、151、287、289、および300〜460より選択される配列からなるオリゴヌクレオチド。
【請求項1】
核酸塩基オリゴマーが配列番号:97、98、99、143、147、151、287、289、および300〜460からなる群より選択される配列の少なくとも8個の連続した核酸塩基を含む、長さが30核酸塩基長までの実質的に純粋な核酸塩基オリゴマー。
【請求項2】
配列番号:97、98、99、143、147、151、287、289、および300〜460からなる群より選択される配列で本質的に構成される、請求項1記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項3】
配列番号:97、98、99、143、147、151、287、289、および300〜460からなる群より選択される配列からなる、請求項2記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項4】
オリゴヌクレオチドである、請求項1〜3のいずれか一項記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項5】
オリゴヌクレオチドが少なくとも1つの修飾された結合を含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項6】
修飾された結合がホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロジチオエート、およびホスホセレネート結合からなる群より選択される、請求項5記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項7】
少なくとも1つの修飾された糖部分を含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項8】
修飾された糖部分が2'-O-メチル基または2'-O-メトキシエチル基である、請求項7記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項9】
少なくとも1個の修飾された核酸塩基を含む、請求項1〜8のいずれか一項記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項10】
修飾された核酸塩基が5-メチルシトシンである、請求項9記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項11】
キメラの核酸塩基オリゴマーである、請求項1〜10のいずれか一項記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項12】
核酸塩基オリゴマーが、ホスホロチオエート結合により共に連結されたDNA残基を含み、該DNA残基の両側が、少なくとも1個の2'-O-メチルまたは2'-O-メトキシエチルRNA残基に隣接している、請求項11記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項13】
DNA残基の両側が、少なくとも3個の2'-O-メチルまたは2'-O-メトキシエチルRNA残基に隣接している、請求項12記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項14】
DNA残基の両側が、4個の2'-O-メチルまたは2'-O-メトキシエチルRNA残基に隣接している、請求項13記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項15】
RNA残基がホスホロチオエート結合により共に連結されており、かつ該RNA残基がホスホロチオエート結合によりDNA残基へ連結されている、請求項12〜14のいずれか一項記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項16】
核酸塩基オリゴマーが、ホスホジエステル結合により共に連結されたDNA残基を含み、該DNA残基の両側が、ホスホロチオエート結合により共に連結された少なくとも2個の2'-O-メチルまたは2'-O-メトキシエチルRNA残基に隣接している、請求項11記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項17】
DNA残基の両側が、少なくとも3個の2'-O-メチルまたは2'-O-メトキシエチルRNA残基に隣接している、請求項16記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項18】
4個の2'-O-メチルRNA残基を両側に隣接した11個のDNA残基を含む核酸塩基オリゴマーであって、配列
の1つからなり、該残基はホスホロチオエート結合により共に連結されている、核酸塩基オリゴマー。
【請求項19】
配列番号:155の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項20】
配列番号:16の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項21】
配列番号:157の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項22】
配列番号:27の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項23】
配列番号:141の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項24】
配列番号:41の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項25】
配列番号:47の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項26】
配列番号:51の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項27】
配列番号:63の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項28】
配列番号:161の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項29】
配列番号:151の配列からなる、請求項18記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項30】
細胞においてIAPの発現を阻害する、請求項1〜29のいずれか一項記載の核酸塩基オリゴマー。
【請求項31】
核酸塩基オリゴマーが細胞においてIAPの発現を阻害するような条件下で請求項1〜29のいずれか一項記載の核酸塩基オリゴマーを動物に投与する段階を含む、動物において細胞のアポトーシスを促進する方法。
【請求項32】
化学療法剤を動物に投与する段階をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
化学療法剤が細胞増殖抑制性薬剤である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
化学療法剤が細胞毒性薬剤である、請求項32記載の方法。
【請求項35】
化学増感剤を動物に投与する段階をさらに含む、請求項31〜34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
生物学的応答改変薬剤を動物に投与する段階をさらに含む、請求項31〜35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
核酸塩基オリゴマーが静脈内にまたは腫瘍内に動物へ投与される、請求項31〜36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
動物がヒトである、請求項31〜37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
癌またはリンパ組織増殖性疾患を有する動物を治療する方法であって、請求項1〜30のいずれか一項記載の核酸塩基オリゴマーの治療的有効量を該動物に投与する段階を含む方法。
【請求項40】
癌が、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、脊髄異形性症候群、慢性リンパ性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝腫、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上皮細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、または網膜芽細胞腫である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
化学療法剤を動物に投与する段階をさらに含む、請求項39または40記載の方法。
【請求項42】
核酸塩基オリゴマーおよび化学療法剤が互いから5日以内に動物へ投与される、請求項41記載の方法。
【請求項43】
核酸塩基オリゴマーおよび化学療法剤が互いから24時間以内に動物へ投与される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
化学療法剤がアドリアマイシン、ビノレルビン、エトポシド、タキソール、およびシスプラチンからなる群より選択される、請求項41〜43のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
化学療法剤が細胞増殖抑制性薬剤である、請求項41記載の方法。
【請求項46】
化学療法剤が細胞毒性薬剤である、請求項41記載の方法。
【請求項47】
化学増感剤を動物に投与する段階をさらに含む、請求項39〜46のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
生物学的応答改変薬剤を動物に投与する段階をさらに含む、請求項39〜47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
核酸塩基オリゴマーが静脈内にまたは腫瘍内に動物へ投与される、請求項39〜48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
動物がヒトである、請求項39〜49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
請求項1〜30のいずれか一項記載の核酸塩基オリゴマーおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。
【請求項52】
コロイド分散系をさらに含む、請求項51記載の薬学的組成物。
【請求項53】
XIAP、HIAP1、またはHIAP2のmRNAを切断することができる触媒性RNA分子。
【請求項54】
結合アームが表1、2、6および7のいずれか1つの配列に対応する少なくとも8個の連続した核酸塩基を含む、請求項53記載の触媒性RNA分子。
【請求項55】
RNA分子がハンマーヘッドモチーフ型である、請求項53または54記載の触媒性RNA分子。
【請求項56】
RNA分子がヘアピン、δ型肝炎ウイルス、グループ1イントロン、VS RNAまたはリボヌクレアーゼP RNAモチーフ型である、請求項53または54記載の触媒性RNA分子。
【請求項57】
哺乳動物細胞における発現のために配置された請求項53〜56のいずれか一項記載の1個または複数の触媒性RNA分子をコードする核酸を含む発現ベクター。
【請求項58】
癌またはリンパ組織増殖性疾患を有する動物を治療する方法であって、請求項53〜56のいずれか一項記載の触媒性RNA分子の有効量を該動物に投与する段階を含む方法。
【請求項59】
表1、2、6、および7のいずれか1つの配列に対応する少なくとも8個の連続した核酸塩基を含む、21個〜29個の間の核酸塩基からなる二本鎖RNA分子。
【請求項60】
表1、2、6、および7のいずれか1つの配列に対応する少なくとも8個の連続した核酸塩基を含む21個〜29個の間の核酸塩基の第一ドメイン;該第一ドメインに相補的な第二ドメイン;ならびに該第一ドメインおよび該第二ドメインが二重鎖形成することができるように該第一ドメインと該第二ドメインの間に位置している、二本鎖ヘアピンRNA分子を形成するためのループドメインを含む、50個〜70個の間の核酸塩基からなる二本鎖ヘアピンRNA分子。
【請求項61】
哺乳動物細胞における発現のために配置された請求項60記載の二本鎖RNA分子をコードする核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項62】
癌またはリンパ組織増殖性疾患を有する動物を治療する方法であって、請求項59または60記載の二本鎖RNA分子の有効量を該動物に投与する段階を含む方法。
【請求項63】
配列番号:97、98、99、143、147、151、287、289、および300〜460より選択される配列からなるオリゴヌクレオチド。
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
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【図13B】
【図14】
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【図16】
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【図20】
【図21】
【図22】
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【図24】
【図25】
【公開番号】特開2010−42009(P2010−42009A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215798(P2009−215798)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【分割の表示】特願2003−578391(P2003−578391)の分割
【原出願日】平成15年3月27日(2003.3.27)
【出願人】(504361333)エーゲーラ セラピューティクス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【分割の表示】特願2003−578391(P2003−578391)の分割
【原出願日】平成15年3月27日(2003.3.27)
【出願人】(504361333)エーゲーラ セラピューティクス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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