説明

アンテナモジュール及び非接触電力伝送装置

【課題】 磁界共鳴を用いても、電力伝送と通信を同じアンテナで行うことができるアンテナモジュール及び非接触電力伝送を提供すること。
【解決手段】 アンテナ10は、第1のコイル11と、この第1のコイル11の外側に配置され、かつLC共振により任意の共振周波数に調整された第2のコイル12を具備し、第1のコイル11は受電回路14に接続され、第2のコイル12は、通信回路15に接続されている。通信回路15のインピーダンスを制御することにより、電力伝送と通信を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナモジュール及び非接触電力伝送装置に係り、特に携帯電話、ヘッドセット、デジタルカメラ、デジタルビデオ等の携帯機器に好適なアンテナモジュール及び非接触電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導を利用した非接触電力伝送においては、単純な平面コイルをアンテナとして組み合わせて用いることで非接触電力伝送が可能であり、非接触電力充電装置ならびに非接触型ICカード、リーダーライター等が実用化されている。
【0003】
しかしながら、電磁誘導を利用した場合、送電側アンテナと受電側アンテナの位置関係により、その電力伝送効率が大きく変化してしまうため、高効率での電力伝送を維持するためには、送電側アンテナと受電側アンテナの位置関係が常に一定となるような機構を具備する必要がある。このような課題に対して、例えば、特許文献1のような磁界共鳴を用いた手段が開示されている。
【0004】
図4は、従来技術によるアンテナモジュールの一例を説明する図である。図4に示すように、従来のアンテナ50は、2つのコイルからなり、受電回路54と接続したループコイルからなる第1のコイル51と、コンデンサ53と接続した、ある特定の周波数の共振を有する第2のコイル52から構成される。第2のコイル52は、第1のコイル51に、特定の周波数を持った電力が入力されると、第2のコイル52が励磁され、第2のコイル52から電力を伝送することができる。この磁界共鳴を用いた方法によれば、電磁誘導を用いた場合に比べ、送電側アンテナと受電側アンテナの位置関係がよりズレていても、高効率で電力を送ることが可能となり、送電側アンテナと受電側アンテナの位置関係が常に一定となるような機構を具備する必要がなくなる。
【0005】
また、安全に電力伝送を行うためには、充電対象となる携帯機器の認証等の通信を行なう必要があるが、充電用アンテナと通信用アンテナを別々にすると、搭載スペースが増加したり、アンテナ間の干渉などが発生したりしてしまうため、1つのアンテナで電力伝送と通信ができることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009−501510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の従来技術では、同じ周波数帯域を用いて、電力伝送と通信を行なおうとした場合、磁界共鳴を用いた電力伝送をするためのアンテナでは、高効率での電力伝送は可能であるものの、RF−ID通信等の通信を行うことができない。これは、磁界共鳴用アンテナは高いQ値が必要とされるのに対し、RF−ID通信等の通信アンテナとして使用する場合は低いQ値が必要となるため、磁界共鳴用アンテナでは、通信アンテナに必要な満足なQ値が得られない。
【0008】
したがって、磁界共鳴を利用した非接触電力伝送においても、同じアンテナを用いて電力伝送と通信が行なえることが望ましい。
【0009】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、磁界共鳴を用いても、電力伝送と通信を同じアンテナで行うことができるアンテナモジュール及び非接触電力伝送を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、アンテナは第1のコイルと、第1のコイルの外側もしくは内側に配置され、かつLC共振により任意の共振周波数に調整された第2のコイルを具備し、第1のコイルは受電回路に接続され、第2のコイルは通信回路に接続されており、通信回路内又は通信回路と第2のコイルの間には、第2のコイルの両端のインピーダンスを制御し、Q値を変化させることができる制御回路を具備することを特徴とするアンテナが得られる。
【0011】
即ち、本発明によれば、ループ状の第1のコイルと、前記第1のコイルの内側又は外側に配置されたループ状の第2のコイルからなるアンテナを備え、前記第1のコイルは受電回路に接続され、前記第2のコイルは任意の共振周波数に調整するとともに、通信回路に接続され、前記通信回路のインピーダンスを制御することにより、電力伝送と通信を切り替えることを特徴とするアンテナモジュールが得られる。
【0012】
また、本発明によれば、前記通信回路にリアクタンス成分を持たせ、電力伝送と通信とで周波数が異なることを特徴とする上記のアンテナモジュールが得られる。
【0013】
また、本発明によれば、前記アンテナに磁性体を配置したことを特徴とする上記のアンテナモジュールが得られる。
【0014】
また、本発明によれば、前記アンテナにシールド板を配置したことを特徴とする上記のアンテナモジュールが得られる。
【0015】
また、本発明によれば、前記受電回路を送電回路に代えて、送電装置としたことを特徴とする上記のアンテナモジュールが得られる。
【0016】
また、本発明によれば、前記アンテナを複数個配置したことを特徴とする上記のアンテナモジュールが得られる。
【0017】
また、本発明によれば、上記のアンテナモジュールを用いたことを特徴とする非接触電力伝送装置が得られる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明により、磁界共鳴を用いても、電力伝送と通信を同じアンテナで行うことができるアンテナモジュール及び非接触電力伝送を提供することができる。
【0019】
本発明によれば、電力伝送時には、第2のコイルからみた通信回路のインピーダンスを十分大きくすることによって、第2のコイルから通信回路へ電流ができるだけ流れないようにすることで、受電回路からみたアンテナのインピーダンスは、アンテナの共振点にて、最小値をとり、Q値が高くなり、高効率で電力伝送を行うための、磁界共鳴用アンテナとして駆動させることができる。また、通信時には、第2のコイルからみた通信回路のインピーダンスを十分小さくすることによって、第2のコイルに通信回路が負荷された分、Q値を下げることで、通信用アンテナとして必要なQ特性を満足することができるため、アンテナを通信用アンテナとして駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるアンテナモジュールの一例を説明する図である。
【図2】本発明の実施例1におけるアンテナモジュールを説明する図である。図2(a)は、平面を示す図。図2(b)は、底面を示す図。
【図3】本発明の実施例2におけるアンテナモジュールを説明する図である。
【図4】従来技術によるアンテナモジュールの一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0022】
図1は、本発明によるアンテナモジュールの構成の一例を説明する図である。図1に示すように、本発明のアンテナモジュールは、アンテナ10と、受電回路14と、通信回路15とから構成される。アンテナ10は、第1のコイル11と、第1のコイル11の外側に配置された第2のコイル12からなる。第2のコイル12は、任意の周波数に共振周波数が調整されており、第1のコイル11は、受電回路14に接続されている。第2のコイル12は、通信回路15に接続され、さらに通信回路15内又は通信回路と第2のコイルの間に設置された制御回路により、第2のコイル12の両端のインピーダンスを制御し、通信回路15へのインピーダンスを制御することにより、電力伝送と通信を切り替えるよう構成される。電力伝送と通信を切り替えは、電力伝送時には、通信回路15と第2のコイル12が等価回路的に切り離され、通信時には、通信回路15と第2のコイル12が接続されることにより行われる。なお、第2のコイル12は、第1のコイル11の内側に配置してもよい。
【0023】
また、上記通信回路15と同様に、受電回路14は、第1のコイル11の両端のインピーダンスを制御する機能を持たせ、通信時には、第1のコイル11からみた受電回路14のインピーダンスを十分大きくすることで、第1のコイル11から第2のコイル12への干渉を抑制し、通信特性を向上させることもできる。
【0024】
アンテナ10は、FPCやFR−4基板等の平面基板上に作製される。もしくは、巻き線のみで作製することもできる。
【0025】
第2のコイル12のLC共振は、第2のコイル12とコンデンサ13を並列に接続することで調整されるほか、第2のコイル12の自己共振および、基板上の銅箔パターンの重なりによって生じた容量成分を用いることもできる。
【0026】
受電回路もしくは、通信回路にリアクタンス成分を持たせ、アンテナの共振周波数を変化させることで、電力伝送と通信で、異なる周波数を利用することもできる。
【0027】
受電回路は、送電回路に置き換え、送電装置として使用することもできる。
【0028】
アンテナの背面に磁性体を配置しても良い。磁性体は、NiZnフェライト等の高周波でも低損失である材料が望ましい。また、複数の異なる透磁率を持った磁性材料を組み合わせた複合材でもよい。
【0029】
磁性体の背面には、シールド材を配置してもよい。
【0030】
アンテナは複数個を組み合わせて使用してもよい。
【実施例1】
【0031】
以下、本発明の実施例におけるモジュールの構成の一例について説明する。
【0032】
図2は、本発明の実施例1におけるアンテナモジュールを説明する図であり、図2(a)は、平面を示す図、図2(b)は、底面を示す図である。図2(a)では、受信回路、通信回路を省略して示している。図2に示すように、アンテナ30は、ループ状の第1のコイル31とループ状の第2のコイル32から構成される。アンテナ30の寸法は、40mm×20mmとし、FR−4基板上に作製した。アンテナ30の外側から、第2のコイル32を配置し、第2のコイル32の内側に第1のコイル31を配置した。第1のコイル31は1ターン平面コイルからなり、コイルパターン幅0.5mmで、第2のコイル32の内側に作製した。第2のコイル32は、4ターンコイルからなり、コイルパターン幅0.5mm、コイルパターン間隙0.3mmで作製した。第2のコイル32は、コンデンサ33と接続し、LC共振を持ち、共振周波数が13.56MHzに調整した。平面(表面)の第1のコイル31の端部31a、31b、第2のコイル32の端部32a、32bは、底面(裏面)の端部31c、31d、及び端部32c、32dにそれぞれ、基板の貫通孔を介して接続されている。コンデンサ33は、共振周波数が調整されればよく、必要に応じて複数個あってもよい。
【0033】
アンテナ30において、第1のコイル31は、図2(b)の端子38を介して受電回路34に接続され、受電回路34は第1の半導体スイッチを備え、第1の半導体スイッチはIC制御によって、第1のコイル31の端子のオープンとショートを切り替えられる。第2のコイル32は、端子39を介して通信回路35に接続され、通信回路35は第2の半導体スイッチを備え、第2の半導体スイッチはIC制御によって、第2のコイル32端子のオープンとショートを切り替えられる。このように、それぞれのインピーダンスの制御回路は、ICと半導体スイッチで構成した。
【0034】
以上のように構成された、アンテナ30を有する本発明のアンテナモジュールについて、その動作を説明する。
【0035】
電力伝送を行う場合、IC制御によって、第1の半導体スイッチがショート、第2の半導体スイッチがオープンとなるように制御される。このとき、第1のコイル31と第2のコイル32は磁場結合によって結合している。アンテナ30が13.56MHzの磁場中に置かれると、第2のコイル32は磁場によって励磁され、かつ、LC共振のために、高効率で電力を受電することができる。この電力は第1のコイル31によって取り出され、受電回路に伝送されることで、電力伝送が可能となる。上述のように、第2の半導体スイッチをオープンにする理由は、第1の半導体スイッチと第2の半導体スイッチがともにショートとなっていた場合、第2のコイル32が受電した電力の一部が通信回路に流れてしまうため、電力伝送効率が低下し、また、第2のコイル32の両端に発生した電圧が通信回路に印加されることとなり、大電力を伝送する場合には、通信回路が破壊される可能性もあるためである。
【0036】
通信を行なう場合、IC制御によって、第1の半導体スイッチがオープン、第2の半導体スイッチがショートとなるように制御される。このとき、第1のコイル31はコイルとして機能せず、第1のコイル31と第2のコイル32の間に磁場結合は生じない。アンテナ30が13.56MHzの磁場中に置かれると、第2のコイル32は磁場によって励磁され、第2のコイル32の両端に生じた電圧が通信回路に印加され、通信が可能となる。上述のように、第1の半導体スイッチをオープンにする理由は、第1の半導体スイッチと第2の半導体スイッチがともにショートとなっていた場合、第2のコイル32の励磁を阻害するように第1のコイル31が励磁されてしまうため、通信特性が劣化する。しかし、通信特性の劣化が軽微な場合には、必ずしも第1の半導体スイッチが必要なわけではない。
【実施例2】
【0037】
実施例1で説明したアンテナを1単位として、図3に示したように、複数単位のアンテナを配置することで、送電装置もしくは受電装置を構成することができる。図3は、本発明の実施例2におけるアンテナモジュールを説明する図である。図3に示すように、実施例2のアンテナモジュールは、第1のコイル41、第2のコイル42からなるアンテナ単位を3単位備えたアンテナ40を有する。
【0038】
アンテナを複数個配置する場合には、隣同士に接するような配置に限定されず、重ねたり、間隔を開けたりして配置してもよい。
【0039】
送電用のアンテナモジュールは、アンテナ1単位で任意に変更することが可能であり、アンテナ1単位ごとに取り外し可能な構造を持っていても良い。
【0040】
送電用のアンテナモジュールから電力伝送できる最大送電電力は、送電用のアンテナモジュールを構成しているアンテナの数で調整可能である。例えば、アンテナ1単位あたり1Wの電力を送電できるとすれば、アンテナ4単位から構成される送電アンテナ装置は、最大4Wまで送電可能となる。
【0041】
また、送電用のアンテナモジュールのアンテナのうち、励磁させるアンテナを選択できる制御システムを付加することで、送電装置のアンテナの一部分を使用し、電力伝送を行うことも可能となる。
【0042】
また、送電用のアンテナモジュールは、合計送電電力が最大送電電力以下であれば、複数の受電用のアンテナモジュールへの電力伝送も可能である。
【0043】
受電用のアンテナモジュールの最大受電電力はアンテナモジュールを構成しているアンテナの数で調整可能である。例えば、アンテナ1単位あたり1Wの電力を受電できるとすれば、アンテナ4単位から構成される受電用のアンテナモジュールは、最大4Wまで受電可能となる。
【0044】
以上、図面を用いて本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、部材や構成の変更があっても本発明に含まれる。例えば、アンテナの構成は図1に示したものに限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加したり、接続関係を変更するなどの種々の変形実施が可能である。また、半導体スイッチの代わりに、機械スイッチを用いることもできる。また、コイルの共振周波数は、任意の周波数に設定することが可能である。すなわち、当業者であれば当然なしえるであろう各種変形や修正もまた、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0045】
10、30、40 アンテナ
11、31、41、51 第1のコイル
12、32、42、52 第2のコイル
13、33、53 コンデンサ
14、34、54 受電回路
15、35 通信回路
31a、31b、31c、31d、32a、32b、32c、32d 端部
38、39 端子
50 従来のアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループ状の第1のコイルと、前記第1のコイルの内側又は外側に配置されたループ状の第2のコイルからなるアンテナを備え、前記第1のコイルは受電回路に接続され、前記第2のコイルは任意の共振周波数に調整するとともに、通信回路に接続され、前記通信回路のインピーダンスを制御することにより、電力伝送と通信を切り替えることを特徴とするアンテナモジュール。
【請求項2】
前記通信回路にリアクタンス成分を持たせ、電力伝送と通信とで周波数が異なることを特徴とする請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項3】
前記アンテナに磁性体を配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載のアンテナモジュール。
【請求項4】
前記アンテナにシールド板を配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアンテナモジュール。
【請求項5】
前記受電回路を送電回路に代えて、送電装置としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアンテナモジュール。
【請求項6】
前記アンテナを複数個配置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のアンテナモジュール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のアンテナモジュールを用いたことを特徴とする非接触電力伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−19302(P2012−19302A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154386(P2010−154386)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】