説明

アンテナ及びアンテナを作成する方法

本アンテナは、寄生ドライバブルアンテナ素子のアレイを規定する複数のループ状導電体を含む平坦なリフレクタと、平坦なリフレクタから隔てられ、寄生ドライバブルアンテナ素子のアレイを寄生駆動し、そのアレイにおいて進行波の電流分布を与える円偏波アンテナ給電部とを有する。アンテナは、放物型リフレクタ及び駆動されるアレイ双方の利点を有することに加えて、風加重を少なくすることができる比較的コンパクトな円偏波アンテナをもたらすことができる。閉回路又はループ素子は、回転型ダイポールリフレクタの素子を利用するアンテナを上回るゲインの増加をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に通信の技術分野に関し、特にアンテナ及びアンテナに関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線周波数(RF)通信の技術分野では、RF信号の焦点を合わせること、RF信号の向きを合わせること及びRF信号を操作することがしばしば望まれる。従来、これらは、信号経路に反射面を設け、受信した信号を集めて焦点を合わせたり、送信される信号を集中させることで行われている。平坦な表面はRFエネルギを反射するが、その作用は光学的な鏡に非常に似ており、入射角を入射角度に直交する角度で反射する。したがって、集中させたり焦点を合わせる機能を果たすものではない。しかしながら、湾曲した面(例えば、放物面)を利用すると、集中させたり焦点を合わせる機能を発揮できる。
【0003】
衛星通信の利用は、円偏波アンテナや、二重波アンテナ(dual polarization antennas)の需要を増加させた。例えば、今日の多くの衛星トランスポンダは、別個の偏波を用いることで同じ周波数で2つの番組を搬送している。したがって、単一のアンテナ構造は、2つの偏波を同時に受信すること、又は一方の偏波で送信しかつ他方の偏波で受信することを要する。そして、単一のアンテナ構造は、2つの偏光チャネルを高い分離度で分離する。
【0004】
二重直線偏波又は二重円偏波チャネルダイバーシチを行うことが可能である。すなわち、一方のチャネルが垂直偏波であり、他方が水平偏波であった場合に、周波数は再利用されてもよい。あるいは、一方のチャネルが右回り円偏波(RHCP)を使用し、他方のチャネルが左回り円偏波(LHCP)を使用する場合に、周波数が再利用されてもよい。偏光(polarization)は、電波の電界の向きを指し、電場(Eフィールド)が時間とともに回転する場合、その電波は回転波又は円偏波と呼ばれる。
【0005】
電磁波(特に、無線電波)は、伝搬方向に沿う面内で正弦波のように変化する電場を有し、同様なことが磁場についても当てはまる。電場の面及び磁場の面は直交しており、それらの面の交わりは電波の伝搬方向である。電場の面が(伝搬方向に対して)回転していなかった場合、偏光は直線偏光である。時間が経つにつれて電場の面が(及び磁場の面も)回転する場合、偏光は回転している。回転偏光は、通常、楕円的であり、電場ベクトルの先端が時間とともに円を描く場合、偏光は円偏向である。送信される無線電波の偏光は、通常、送信するアンテナ(及び給電)により決定され、すなわちアンテナのタイプ及びアンテナの向きによって決定される。例えば、モノポールアンテナ及びダイポールアンテナは、直線偏波のアンテナに関する典型的な2つの具体例である。軸モード螺旋アンテナ(axial mode helix antennas)は、円偏波のアンテナの典型例であり、他の例として、直交するダイポール配列がある。直線偏光は、通常、垂直又は水平としてさらに特徴付けられる。円偏波は、通常、右回り又は左回りとしてさらに分類される。
【0006】
ダイポールアンテナは、全てのタイプのアンテナの中でおそらく最も広く利用されている。しかしながら、当然に、直線的には構成されていない導体から放射することも可能である。好ましいアンテナ形状はしばしばユークリッド的(Euclidian)であり、これは古くから知られている簡易な幾何学形状を有する。一般に、アンテナは、ダイポール及びループに対応する電荷分離型又は電荷輸送型、直線構造及び円形構造として分類される。
【0007】
輻射又は放射は、平面アンテナ、スロットアンテナ及びスケルトンアンテナのような同じ形状の3つの相補的な形式により行うことができる。ダイポールの場合、これらは、平坦な金属ストリップ、平坦な金属シートから切り抜かれた直線状スロット、又は四角形のワイヤに対応する。したがって、同じアンテナ形状がバビネの原理(Babinet’s Principle)にしたがって再利用できる。
【0008】
ダイポールアンテナによる円偏波については、非特許文献1に記載されている。ダイポールターンスタイル又は回転型ダイポール(dipole turnstile)の場合、十字型に直交するダイポールが、0度及び90度の直交する位相によりダイポールポートから給電される。ダイポール末端における位相は、互いに常に0度、90度、180度及び270度である。
【0009】
ループアンテナによる円偏波についての試みは、あまり知られていない。例えば、非特許文献2は、1つのループアンテナから円偏波を得るための具体的方法を述べていない。全波ループ対半波ダイポールの高いゲイン(3.6dB vs.2.1dB)にもかかわらず、例えばターンスタイル配列のダイポールが、円偏波に使用されるのが通常的である。ダイポールターンスタイル及びシングルループアンテナは双方とも平坦であり、それらの薄い構造はほぼ1つの面内にある。
【0010】
ループアンテナとして多くの構造があるが、基準となるループ形状は円形のものである。共鳴ループは、全波円周導体(full wave circumference circular conductor)であり、しばしば「全波ループ(full wave loop)」と言及される。従来の典型的な全波ループは、2枚の薔薇の花びらのような放射パターンを有する直線偏波であり、ループ面に垂直方向に2つの対向するローブを有し、約3.6dBiのゲインを有する。単一方向のパターンを得るために、全波ループアンテナとともに平面リフレクタがしばしば使用される。
【0011】
偏波ダイバーシチは、通常、交差したダイポールアンテナにより得られる。例えば、ランゲ(Runge)による特許文献1は、0度及び90度の位相で給電されるダイポールを有する交差ダイポールシステムを提案している。円偏波が生じるが、偏波ダイバーシチしか説明されていない。
【0012】
イワサキ(Iwasaki)による特許文献2は、「円偏波アンテナ(Circularly−Polarized Antennas)」と題し、1つの円偏波ループ要素ではなく、円偏波アンテナアレイに関連している。円形は、アンテナ構造の中で最も基本的なものであり、円偏波が可能な最も基本的な単一形状である。
【0013】
地表面状の遠く離れた場所同士の間でデータ、ビデオその他の形式の情報を通信するために、通信衛星が広く使用されている。アンテナは、伝送線と自由空間との間の変換を行うトランスデューサである。アンテナ設計における一般規則は、送信される利用可能なエネルギを狭いビームに向けること又は「焦点を合わせること」、比較的大きな「開口、口径又はアパーチャ(aperture)」が必要なことである。アパーチャは、ブロードサイドアレイ(broadside array)、縦型アレイ(longitudinal array)又は角の口(mouth of a horn)のような実際の物理的な開口等により設けられる。
【0014】
他のタイプのアンテナはリフレクタアンテナであり、受信モードの場合、平行なエネルギビームを受信し、そのエネルギを、給電アンテナに向いた集束ビームに焦点を合わせ、送信モードの場合、給電アンテナから発散するエネルギの焦点を平行なビームに合わせる。アンテナは相対的(reciprocal)であり、送信及び受信特性が等価であることは、当業者にとって既知である。一般に、アンテナの動作は、送信又は受信の何れか一方の観点から参照され、他方のモードはそれから理解できる。例えば図1に示されるような従来のアンテナ10は、給電部12及びパラボラアンテナのような皿状部14を含み、エネルギの焦点を合わせる。
【0015】
パーシェ(Parsche)等による「Multiple Polarization Loop Antenna And Associated Methods」と題する米国特許出願第11/609046号は、ループアンテナによる円偏波のための方法に言及している。全波円周ループは、2つの駆動点を用いて直交する位相(0°,90°)により給電される。
【0016】
アーレンスペック(Ehrenspeck)による「Reflection Antenna Employing Multiple Director Elements and Multiple Refection of Energy to Effect Increased Gain」と題する特許文献3は、「バックファイア(backfire)」アンテナに関連する。八木宇田のようなスローウェーブアンテナ(slow wave antenna)が平面リフレクタに向けて設けられ、ゲインの向上及びサイドローブの抑制を図っている。これは、おそらく直感的には通常の場合とは相容れないものである。なぜなら、八木宇田アンテナの方向要素は、しばしば通信方向を向いているからである。バックファイアアンテナについては、非特許文献3に記載されている。
【0017】
ウッドワード(Woodward)による特許文献4は、「周波数選択リフレクタシステム」と題し、デュアルバンドカセグランアンテナシステム(dual−band Cassegrain antenna system)に関連している。このアンテナシステムは、メイン放物リフレクタと双曲サブリフレクタ(hyperbolic sub−reflector)とを含み、第1周波数バンドの信号を反射し、より低い第2周波数バンドの信号を送信する。一実施例による双曲サブリフレクタは、導電性リングを伴う方形グリッドメッシュであり、その導電性リングは方形グリッドメッシュの接続脚部に沿う位置に中心を有する。
【0018】
ウォーカー(Walker)等による特許文献5は、「低風加重衛星アンテナ」と題し、低風加重リフレクタ(low−wind load reflector)を含む衛星通信アンテナに関連し、例えば船舶のような風加重が高い場合にアンテナを使用できるようにしている。このリフレクタは、比較的大きなアパーチャを有するグリッド状構造を含む支持構造を有し、風がそこを通過するようにしている。固体表面の放物リフレクタとは異なり、ウォーカー等のリフレクタは、支持構造に設けられた反射放射素子(例えば、ダイポール)を含み、少なくとも1つの所望の動作周波数に合わせる。
【0019】
ウォーカー等のリフレクタは、低い空気抵抗を有するように設計され、如何なる表面形状も、それがあたかも放物リフレクタとして電磁的に動作するように設計できることが、前提とされている。この点についてのさらなる詳細については、本願のリファレンスに組み入れられる特許文献6に記載されており、FLAPS(商標)(平坦な放物面)として、当該技術分野において一般に参照され、例えば図2に示されているようなものである。アンテナ20は、給電部22及びリフレクタ24を含み、リフレクタ表面に沿った異なる場所に適切な位相遅延を導入することで、効果が得られる。個々のリフレクタ要素を調整することで、アレイの「焦点」において、同相合成が行われる。実現手段の基本概念は、接地面上に又は反射するショートダイポール上に設けられたショートダイポール散乱部26のアレイを設けることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第1,892,221号明細書
【特許文献2】米国特許第6,522,302号明細書
【特許文献3】米国特許第3,122,745号明細書
【特許文献4】米国特許第4,017,865号明細書
【特許文献5】米国特許第6,198,457号明細書
【特許文献6】米国特許第4,905,014号明細書
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】“The Turnstile Antenna”, George Brown, Electronics, 9, 15, April 1936
【非特許文献2】“Antenna Engineering Handbook”, R.Johnson and H.Jasik
【非特許文献3】“The Short Backfire Antenna”, Proceedings Of the IEEE, 53, 1138-1140, August 1965
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、簡便性、実用性及びコストの観点から、より大きなゲインを有する小型で風加重が少ない衛星通信アンテナが依然として望まれている。
【0023】
上記の背景技術を踏まえ、本発明は、十分なゲインを有しかつ風加重が少ない比較的コンパクトな円偏波アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
一実施例によるアンテナは、
寄生ドライバブルアンテナ素子のアレイを規定する複数のループ状導電体を含む平坦なリフレクタと、
前記平坦なリフレクタから隔てられ、前記寄生ドライバブルアンテナ素子の前記アレイを寄生駆動し、該アレイにおいて進行波の電流分布を与える円偏波アンテナ給電部と
を有するアンテナである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来のパラボラリフレクタアンテナの概略斜視図。
【図2】従来のFLAPS(商標)(フラットパラボリックサーフェス)の概略斜視図。
【図3】ループ(スケルトンの場合)を示す本発明によるアンテナの概略斜視図。
【図4】従来のダイポールターンスタイル素子の場合と比較した図3の反射アンテナのXZ面における遠方電磁放射パターンを示す図。
【図5】本発明によるループ状導電体の配列及びリフレクタのディスク(パネルの場合)を示す概略平面図。
【図6】本発明によるループ状導電体の配列及びリフレクタのホール(スロットの場合)を示す概略平面図。
【図7】図3のループ状導電体の配列及びリフレクタの一部分の概略的な拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に関する上記及び他の目的、特徴及び利点は、以下のアンテナにより達成及び提供される。本アンテナは、寄生ドライバブル(drivable)アンテナ素子のアレイ(配列)を規定する複数のループ状導電体を含む平坦なリフレクタと、平坦なリフレクタから隔てられ、進行波の電流分布を与えることで、寄生ドライバブルアンテナ素子のアレイを寄生駆動する(parasitically drive)円偏波アンテナ給電部とを有する。
【0027】
ループ状の導電体各々は、ワイヤ、印刷された導電性トレース、金属リング及び/又は固体ディスクのような円形の導電体により形成されてもよい。別の実施例において、平坦なリフレクタは、複数の円孔を含む導電性シートを含んでもよく、ループ状の導電体各々は、1つの円孔の周囲によって規定される。円形反射素子は、相補的なパネル、スロット及びスケルトン等により実現されてもよい。
【0028】
平坦なリフレクタは、アレイに属する複数のループ状導電体を支持する誘電体メッシュを含んでもよい。例えば、誘電体メッシュは、糸状又は棒状のものによる格子(グリッド)でもよい。平坦なリフレクタは誘電体基板を有し、誘電体基板は、複数の穴を有し、アレイに属する複数のループ状導電体を支持する。さらに、複数のループ状導電体の各々は、少なくとも1つの不連続部(切れ目)を含んでもよい。
【0029】
本発明の方法の形態はアンテナを作成することに関し、本方法は、寄生ドライバブル(drivable)アンテナ素子のアレイ(配列)を規定する複数のループ状導電体を含む平坦なリフレクタを形成し、平坦なリフレクタに隣接して円偏波アンテナ給電部を設けるステップを有し、寄生ドライバブルアンテナ素子のアレイを寄生駆動(parasitically drive)し、進行波の電流分布を与えるようにする。平坦なリフレクタを形成する際、導電性のシートに複数の円形の穴を形成してもよく、ループ状導電体の各々は、1つの円形の穴の周囲によって規定される。
【0030】
あるいは、平坦なリフレクタを形成する際、アレイに属する複数のループ状導電体を支持する誘電体メッシュを形成してもよく、例えば、糸状又は棒状のものによる格子(グリッド)として誘電体メッシュを形成してもよい。平坦なリフレクタを形成する際、誘電体基板に複数の穴を形成し、その基板により複数のループ状導電体を支持してもよい。
【実施例1】
【0031】
以下、本発明の好適実施例が示されている添付図面を参照しながら本発明を説明する。しかしながら、本発明は多くの形態で実現可能であり、説明される実施例に限定して解釈してはならない。むしろ、これらの実施例は開示説明が充実するように与えられているにすぎず、当業者に本発明の意図を伝えるためのものである。図中、同様な数字は同様な要素を示す。
【0032】
図3を参照しながら、風加重を低くすることができ、十分に大きなゲインを有する比較的コンパクトな円偏波アンテナ30を説明する。アンテナ30は、複数のループ状導電体36を含む平坦なリフレクタ34を含み、複数のループ状導電体は寄生ドライバブルアンテナ素子(parasitically drivable antenna element)のアレイ(配列)35を規定する。円偏波アンテナ給電部32は、平坦なリフレクタから離れて設けられ、寄生ドライバブルアンテナ素子のアレイ35を寄生駆動し(parasitically drive)、進行波電流分布(traveling wave current distribution)を与える。
【0033】
図示されているように、アンテナ30は、例えば円形導電体であるループ状導電体36を含む。ループ状導電体36の各々は、導電性ワイヤ、管状物(チューブ)、金属リング、印刷された導電性トレース等でもよい。ループ状導電体36の外周は、好ましくは全波共鳴(full wave resonance)に対応し、約1.04波長に等しい(例えば、導電体の直径に依存して、0.94及び1.14波長の間の長さである。)。ループ状導電体36の好ましい形状は円であるが、本発明はそれに限定されず、四角形又は多角形のような他の閉じた形状が使用されてもよい。また、ループ状導電体36は、リフレクタ34の中心から離れた場所において、完全な円から変形した楕円形でもよい。
【0034】
図3を参照しながら、本発明の理論的な動作を説明する。放射部又は給電部32は、ループ状導電体36に向けて放射し、そこでの電流を励起する。ループ状導電体36は、給電部32からのエネルギを放射し直し、ブロードサイド(broadside)フェーズドアレイでもよいフェーズドアレイ35における個々の放射素子を形成する。こうして、給電部32は1次パターンを提供し、アレイ35は2次パターンを提供し、パターンを増やしかつアパーチャを拡大することで、2次パターンは、より強い指向性及びゲインを有する。限定ではないが、ループ状導電体36は、典型的にはノンリアクティブ(non reactive)で動作し、給電部32の遠方に放射する。
【0035】
ループ状導電体36は、放物面ではなく、平面に設けられ、この場合、アレイ35の中心から離れた場所のループ状導電体36は、中心付近のループ状導電体36よりも、時間的に送れて励起されかつ送れた位相を有する。アレイ35の面に対してブロードサイド(垂直方向)においてアンテナの最大放射を得ることが望ましいので、全てのループ状導電体36は同じ位相で放射することが望ましい。図3を参照するに、直径dを調整することで、ループ状導電体36において等位相が実現され、直径dは、共鳴の調整によって放射のループ素子の位相を変える。アレイ35の中で変化するループ直径は、給電部32に対する経路の長さを補償することに寄与する。ループ状導電体36は、場合によっては、位相を調整するために、ループの外周において1つ以上の不連続部、切れ目又はギャップを含んでいてもよい。
【0036】
ループ状導電体36はアレイ素子を形成するので、それらの電流の振幅及び位相が、最終的な放射パターン形状を決定する。アレイの中で徐々に変化する照射は、最大ゲインの観点から(一様分布)、サイドローブが生じないようにする観点から(二項分布)又はそれらのトレードオフの観点から、給電部32による1次パターンの形状を調整することにより最適化されてもよい。アレイ35が円形である場合、一様な照射になり、給電パターン が、リフレクタの境界の間においてGf(θ’)=sec2(θ’/2)であり、リフレクタ境界の外側においてGf(θ’)=0である場合、理想的に徐々に一様に変化するテーパ状の照射が効率的に実現される(この点については次の文献に記載されている:“High
Efficiency Microwave Reflector Antennas”,P.Clarricoats and G.Poulton,Proc.Of the IEEE,Vol65,No.10,Oct.1975)。ワイヤ要素の場合における本発明によるゲインは、G=3.6+10Log10(N)に近づき、Nは全波ループ素子の総数であり、Gの単位はdBiである。
【0037】
給電部32は、アレイ35に属する素子を駆動するための「無線ビームフォーミングネットワーク」を規定する。これにより、例えば同軸ケーブルの給電回路網を利用する場合に不可避的に存在する伝搬損失を排除することができる。アレイ要素に対して伝送線を一切使用していないので、アレイ35に属する要素は、バランもインピーダンスマッチング回路も要しない。ループ状導電体36内のアレイ素子同士の間隔は、最大ゲインをもたらすために、0.6ないし1.0波長程度の中心間距離である。直線的でオフセットがあるオフセット給電法(in line and offset feed approach)が、アンテナ30に対して可能である。オフセット給電法の場合、給電部32は、切り取られた放物形状の部分のみを使用する放物リフレクタのように、メインビームから横にずれた位置に設けられる。オフセット給電法は、給電の障害を減らし、ゲインの増加及びサイドローブの抑制を図ることができる。
【0038】
ダイポールターンスタイル及び単一のループアンテナの双方は、円偏波に使用可能である。ループの外周付近の電流分布が、進行波(traveling wave)のタイプのものであった場合、環状ループアンテナは、円偏波の電磁波を放射する。進行波の電流分布は振幅に関して一様であり、位相に関して線形である。すなわち、電流の振幅はループ状導電体に沿う至る所で一定であり、位相はループ状導電体に沿って線形に変化する。ループアンテナが、円偏波の入射波に浸される(受ける)場合、進行波の分布が形成され、円偏波アンテナアレイにおけるリフレクタとして、ループ素子を適切なものにする。背景技術の欄において説明したように、全波ループアンテナは、電流分布が正弦波であった場合、直線偏光の電波を放射する。
【0039】
図4は、図3のアンテナ30における個々のループ状導電体36のXZ面(断面)における遠方電磁界放射パターンCLと、従来のダイポールターンスタイル素子のXZ面における遠方電磁界放射パターンDTとの比較例を示す。図示されているように、図3のアンテナ30におけるループ状導電体36の遠方電磁界放射パターンCLは、3.6dBicのゲインをもたらし、これに対してダイポールターンスタイル素子は2.1dBicのゲインをもたらすにすぎない。したがって、アンテナ30により、約1.4dBのゲインの向上が達成されている。全波円周導体のループ要素は、交差した半波長ダイポールのターンスタイルよりも僅かに小さな領域を占める。
【0040】
図5を参照するに、平坦なリフレクタ44は、寄生ドライバブルアンテナ素子のアレイ45を規定する複数のループ状導電体46を含み、ループ状導電体46の各々は固体の導体ディスクにより形成されている。あるいは、図6に示されるように、平坦なリフレクタ54は、複数の円形の穴(円孔)57を含む電気的に導電性のシートでもよく、ループ状導電体56の各々は、円孔57の外周1つにより規定される。図5、6において、影が付いた領域は導電体であり、そうでない領域は誘電体又は絶縁体である。図5の例はパネル形式の円形アンテナ素子に対応し、図6の例はスロット形式の円形アンテナ素子に対応し、図3の例はスケルトン形式の円形アンテナ素子に対応する。ダイポールに関するパネル、スロット及びスケルトンアンテナについては良く知られている(この点については、例えば、“Antennas”,
John Kraus, 2nd Edition, Chap.13に記載されている。)。RF電流は、回折に起因して、大きな固体導電体構造の縁(エッジ)に沿って流れる傾向がある。
【0041】
従来技術による穿孔された金属シートによるリフレクタは、概して、波長よりもかなり短い外周の穴を使用し、共鳴を回避している。本発明の穴は動作周波数において共鳴に寄与し、従来のものよりもかなり大きい点で、図6の例は従来の穿孔された金属シートのリフレクタと相違する。図6に示す例の利点は、例えば4ないし10GHzよりも高い周波数において、穿孔されたリフレクタをさらに有意義にすることである。なぜなら、そのような周波数において従来のリフレクタに必要であった小さな共鳴に寄与しない穴は、風加重を適切に軽減することに寄与しないからである。
【0042】
図7を参照するに、平坦なリフレクタ64は誘電体メッシュ67を含み、誘電体メッシュはアレイに属する複数のループ状導電体66を支持する。例えば、誘電体メッシュ67は、糸状又は棒状のものの格子(グリッド)でもよい。誘電体メッシュ67は、複数の穴を有しかつアレイに属する複数のループ状導電体66を支持する誘電体基板を規定する。また、複数のループ状導電体66の各々は、例えば偏光を調整及び/又は選択するために、少なくとも1つの不連続部69を含んでもよい。
【0043】
方法の形態はアンテナ30を作成することに関し、本方法は、寄生ドライバブルアンテナ素子のアレイ35を規定する複数のループ状導電体36を含む平坦なリフレクタ34を形成し、平坦なリフレクタ34に隣接して円偏波アンテナ給電部32を設けるステップを有し、寄生ドライバブルアンテナ素子のアレイを寄生駆動し、進行波の電流分布を与えるようにする。
【0044】
ループ素子(特にアレイの周辺のループ素子)は、楕円でもよく、位相又は偏光を調整するために様々なサイズを備えてもよい。アレイ35は、ループ状導電体36の2つ以上の連続層を含み、アンテナ30からの単一方向性の放射を得てもよい。軸方向に離れた2つのループは、0.2λの間隔の場合、約6.2dBicのゲインをもたらし、これは交差した八木宇田アレイの単一方向の作用よりも1.5dB良い。八木宇田の場合と同様に、前方のループ素子は後方のループ素子より小さくてよい。帯域幅における動作に関し、給電部36は周波数に関して安定的な位相の中心を有する点で、本実施例は有利であり、給電部からの放射がアレイ35の焦点からずれないようにすることができる。全波ループアンテナ素子における共鳴は、1.0λの外周よりも僅かに多い所で生じる。
【0045】
図6を参照するに、平坦なリフレクタ54を形成する際、電気的に導電性のシートにおいて複数の円形の穴57を形成し、ループ状導電体56の各々は、円形の穴57の1つの外周により規定される。図7を参照するに、平坦なリフレクタ64を形成する際、アレイに属する複数のループ状導電体66を支持する誘電体メッシュ67を形成し、これは例えば糸状又は棒状のものによる格子(グリッド)のように誘電体メッシュを形成することを含む。
【0046】
上記の本発明の特徴によれば、ループ状素子又は閉回路素子を利用して、十分に高い利得を有し、比較的小型の円偏波リフレクタアレイを作成することができる。アンテナは、放物型リフレクタ及び駆動されるアレイ双方の利点を有することに加えて、風加重を少なくすることができ、しかも衛星通信及び/又は携帯無線アプリケーション等の様々な分野で使用されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寄生ドライバブルアンテナ素子のアレイを規定する複数のループ状導電体を含む平坦なリフレクタと、
前記平坦なリフレクタから隔てられ、前記寄生ドライバブルアンテナ素子の前記アレイを寄生駆動し、該アレイにおいて進行波の電流分布を与える円偏波アンテナ給電部と
を有するアンテナ。
【請求項2】
前記ループ状導電体の各々が、円形の導電体により形成されている、請求項1記載のアンテナ。
【請求項3】
前記ループ状導電体の各々が、ワイヤにより形成されている、請求項1記載のアンテナ。
【請求項4】
前記ループ状導電体の各々が、少なくとも1つの印刷された導体トレース及び金属リングにより形成されている、請求項1記載のアンテナ。
【請求項5】
前記ループ状導電体の各々が、固体の導電体ディスクにより形成されている、請求項1記載のアンテナ。
【請求項6】
前記平坦なリフレクタが、複数の円形の穴を含む導電性のシートを含み、前記ループ状導電体の各々は、1つの前記円形の穴の外周により規定される、請求項1記載のアンテナ。
【請求項7】
寄生ドライバブルアンテナ素子のアレイを規定する複数のループ状導電体を含む平坦なリフレクタを形成し、
前記平坦なリフレクタに隣接して円偏波アンテナ給電部を設け、寄生ドライバブルアンテナ素子の前記アレイを寄生駆動し、該アレイにおいて進行波の電流分布を与えるステップと
を有する、アンテナを作成する方法。
【請求項8】
前記平坦なリフレクタを形成する際、前記ループ状導電体の各々を、円形の導電体として形成する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記平坦なリフレクタを形成する際、前記ループ状導電体の各々を、ワイヤ、印刷された導電性トレース、金属リング及び固体の導電性ディスクの内の少なくとも1つとして形成する、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記平坦なリフレクタを形成する際、電気的に導電性のシートに複数の円形の穴を形成し、前記ループ状導電体の各々は、1つの前記円形の穴の外周により規定される、請求項7記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−519251(P2011−519251A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507580(P2011−507580)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/041958
【国際公開番号】WO2009/134787
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(594071675)ハリス コーポレイション (287)
【氏名又は名称原語表記】Harris Corporation
【Fターム(参考)】