説明

アンテナ測定装置およびアンテナ測定方法

【課題】
フェーズドアレーアンテナの素子電界の測定を簡素化することのできるアンテナ測定方法およびアンテナ測定装置を得る。
【解決手段】
高周波信号を生成する高周波信号生成ステップと、高周波信号生成ステップにおいて生成された高周波信号のうち、測定対象とする素子アンテナに対応する高周波信号の振幅および位相を互いに関連付けて変化させる振幅位相変化ステップと、振幅位相変化ステップにおいて振幅および位相を変化させた高周波信号を含む高周波信号を、それぞれ対応する複数の素子アンテナから放射する高周波信号放射ステップと、放射された高周波信号を、測定用アンテナで受信する高周波信号受信ステップと、高周波信号受信ステップで受信した高周波信号に基づいて、測定対象となる素子アンテナの素子電界を算出する素子電界算出ステップと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フェーズドアレーアンテナを構成する素子アンテナ(以下、適宜、素子と略記する)から送信または受信される高周波信号の電界(以下、素子電界と略記する)を測定するアンテナ装置およびアンテナ測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェーズドアレーアンテナを構成する各素子アンテナの素子電界の振幅および位相を測定するアンテナ測定方法として、フェーズドアレーアンテナを構成する任意の一つの素子の励振位相を0度から360度まで変化させ、そのときのアレーアンテナの合成電力(以下、アレー合成電力と略記する)の振幅の変化を計測し、得られた計測結果を演算処理する方法がある(例えば、特許文献1参照)。この測定方法によれば、アレー合成電力の振幅変化が余弦状となる性質を利用して、測定対象となる素子アンテナの可変移相器を変化させて合成電力レベルを測るという単純な方法で、測定対象となる素子の素子電界の振幅および位相を算出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許平1−37882号公報(第2頁〜第4頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のアンテナ測定方法では、以下の点から測定が煩雑であるという問題があった。第一に、1つの素子の素子電界を測定するために、測定対象となる素子の励振位相を0度から360度まで変化させる必要があるため、多くの測定時間が必要となる。例えば、励振位相を変化させる手段として5ビットのディジタル移相器を用いると32通りの移相状態があるため、1素子あたり32回のアレー合成電力の計測が必要である。
【0005】
第二に、特許文献1記載のアンテナ測定方法では、特許文献1に記載のように各素子電界の測定値として2組の解が存在するため、適切な解を選択するための工程が必要となる。特許文献1では、その選択についての複数の判定方法が開示されているが、判定のための事前情報が必要、あるいは再度の測定を必要となる。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、フェーズドアレーアンテナの素子電界の測定を簡素化することのできるアンテナ測定方法およびアンテナ測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るアンテナ測定方法は、フェーズドアレーアンテナを構成する複数の素子アンテナのうち、測定対象とする素子アンテナの素子電界を測定するアンテナ測定方法であって、高周波信号を生成する高周波信号生成ステップと、高周波信号生成ステップにおいて生成された高周波信号のうち、測定対象とする素子アンテナに対応する高周波信号の振幅および位相を互いに関連付けて変化させる振幅位相変化ステップと、高周波信号生成ステップで生成された高周波信号であって、振幅位相変化ステップにおいて振幅および位相を変化させた高周波信号を含む高周波信号を、それぞれ対応する複数の素子アンテナから放射する高周波信号放射ステップと、高周波信号放射ステップにおいて複数の素子アンテナから放射された高周波信号を、測定用アンテナで受信する高周波信号受信ステップと、高周波信号受信ステップで受信した高周波信号に基づいて、測定対象となる素子アンテナの素子電界を算出する素子電界算出ステップと、を備える。
【0008】
また、この発明に係るアンテナ測定方法は、フェーズドアレーアンテナを構成する複数の素子アンテナのうち、測定対象とする素子アンテナの素子電界を測定するアンテナ測定方法であって、高周波信号を生成する高周波信号生成ステップと、高周波信号生成ステップで生成された高周波信号を、測定用アンテナから放射する高周波信号放射ステップと、高周波信号放射ステップで放射された高周波信号を、複数の素子アンテナでそれぞれ受信する高周波信号受信ステップと、受信ステップで受信した高周波信号のうち、測定対象とする素子アンテナで受信した高周波信号の振幅および位相を互いに関連付けて変化させる振幅位相変化ステップと、高周波信号受信ステップにおいて対応する複数の素子アンテナで受信された高周波信号であって、振幅位相制御ステップにおいて振幅および位相を変化させた高周波信号を含む高周波信号を合成する高周波信号合成ステップと、高周波信号合成ステップにおいて合成された高周波信号に基づいて、測定対象となる素子アンテナの素子電界を算出する素子電界算出ステップと、を備える。
【0009】
また、この発明に係るアンテナ測定装置は、フェーズドアレーアンテナを構成する複数の素子アンテナのうち、測定対象とする素子アンテナの素子電界を測定するアンテナ測定装置であって、高周波信号を生成する高周波信号生成手段と、高周波信号生成手段により生成され、複数の素子アンテナから放射される高周波信号のうち、測定対象とする素子アンテナから放射される高周波信号の振幅および位相を互いに関連付けて変化させる振幅位相変化手段と、複数の素子アンテナから放射された高周波信号を受信する測定用アンテナと、測定用アンテナで受信した高周波信号に基づいて、測定対象となる素子アンテナの素子電界を算出する素子電界算出手段と、を備える。
【0010】
また、この発明に係るアンテナ測定装置は、フェーズドアレーアンテナを構成する複数の素子アンテナのうち、測定対象とする素子アンテナの素子電界を測定するアンテナ測定装置であって、高周波信号を生成する高周波信号生成手段と、高周波信号生成手段により生成された高周波信号を放射する測定用アンテナと、測定用アンテナにより放射され、複数の素子アンテナで受信された高周波信号のうち、測定対象とする素子アンテナで受信された高周波信号の振幅および位相を互いに関連付けて変化させる振幅位相変化手段と、複数の素子アンテナで受信された高周波信号であって、振幅位相変化手段により振幅および位相を変化させた高周波信号を含む高周波信号を合成する高周波信号合成手段と、高周波信号合成手段により合成された高周波信号に基づいて、測定対象となる素子アンテナの素子電界を算出する素子電界算出手段と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、フェーズドアレーアンテナの素子電界の測定を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に示すアンテナ測定装置の構成図である。
【図2】この発明に実施の形態1に示すアンテナ測定方法の処理を表すフローチャートである。
【図3】この発明に実施の形態1に示すアンテナ測定装置の励振振幅の変化を表すグラフである。
【図4】この発明に実施の形態1に示すアンテナ測定装置の励振位相の変化を表すグラフである。
【図5】この発明に実施の形態1に示すアンテナ測定装置のアレー合成電力の変化を表すグラフである。
【図6】この発明に実施の形態1に示す素子電界振幅の測定結果を表すグラフである。
【図7】この発明に実施の形態1に示す素子電界位相の測定結果を表すグラフである。
【図8】この発明の実施の形態1に示すアンテナ測定装置の構成図である.
【図9】この発明の実施の形態2に示すアンテナ測定装置の励振振幅の変化を表すグラフである。
【図10】この発明の実施の形態2に示すアンテナ測定装置の励振位相の変化を表すグラフである。
【図11】この発明の実施の形態3に係るアンテナ測定装置の構成図である。
【図12】この発明の実施の形態3に示すアンテナ測定装置の励振振幅の変化を表すグラフである。
【図13】この発明の実施の形態3に示すアンテナ測定装置の励振位相の変化を表すグラフである。
【図14】この発明の実施の形態3に示すアンテナ測定装置のアレー合成電力の変化を表すグラフである。
【図15】この発明の実施の形態3に示す素子電界振幅の測定結果を表すグラフである。
【図16】この発明の実施の形態3に示す素子電界位相の測定結果を表すグラフである。
【図17】この発明の実施の形態4に示すアンテナ測定装置の構成図である。
【図18】この発明の実施の形態5に示すアンテナ測定装置の構成図である。
【図19】この発明の実施の形態6に示すアンテナ測定装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
実施の形態1に係るアンテナ測定装置について、図1〜8を用いて説明する。まず、供試アンテナ側から高周波信号を送信し、測定用アンテナで受信する場合、すなわち、供試アンテナが送信アンテナとして動作する場合のアンテナ測定装置について説明する。図1に、この発明の実施の形態1に係る供試アンテナを含むアンテナ測定装置の構成図を示す。図1において、供試アンテナは、測定対象とする素子アンテナを含む複数の素子アンテナから構成されるフェーズドアレーアンテナであり、素子アンテナ1−1,1−2,…,1−M、可変減衰器2−1,2−2,…,2−M、ディジタル移相器3−1,3−2,…,3−M、電力分配合成回路4を備えている。ここで、Mはフェーズドアレーアンテナの素子数である。なお、素子アンテナ1−1,1−2,…,1−Mは、どのような方式のアンテナでもよく、例えば、パッチアンテナ、ホーンアンテナ等である。可変減衰器2−1,2−2,…,2−Mは、それぞれ素子アンテナ1−1,1−2,…,1−Mに接続されており、対応する素子アンテナの励振振幅を変化させる。ディジタル移相器3−1,3−2,…,3−Mは、素子アンテナ1−1,1−2,…,1−Mに接続されており、対応する素子アンテナの励振位相を変化させる。ここでは、例えば、5ビットのディジタル移相器とする。電力分配合成回路4は、入力された高周波信号を素子数に応じて分配し、対応する(分配された高周波信号が放射される)素子アンテナ1−1,1−2,…,1−Mに対して給電する。
【0014】
可変減衰器制御回路5は、各可変減衰器2−1,2−2,…,2−Mの減衰量、すなわち振幅を制御し、移相器制御回路6はディジタル移相器3−1,3−2,…,3−Mの移相状態を制御する。振幅位相制御指令回路7は、素子アンテナ1−1,1−2,…,1−
Mの任意の1素子の励振振幅と励振位相とを関連付けて制御、すなわち、可変減衰器制御回路5と移相器制御回路6を同期動作させる。送信機8は電力分配合成回路4に高周波信号を送信する。
【0015】
測定用アンテナ9−aは、素子アンテナ1−1,1−2,…,1−Mに対向する位置に設置され、供試アンテナから送信された高周波信号を受信する。測定用アンテナ9−aにより受信された高周波信号は、受信機10に測定用アンテナ9−aが受信した高周信号を受信する。平均値演算回路11は、受信機10の受信電力の変化から平均値を算出し、2倍波フーリエ係数演算回路12は受信機10の受信電力の変化をフーリエ級数展開し、2倍波成分のフーリエ余弦係数およびフーリエ正弦係数を算出する。第1の素子電界演算回路13は、平均値演算回路11が算出した平均値と、2倍波フーリエ係数演算回路12が算出した2倍波成分のフーリエ余弦係数およびフーリエ正弦係数から、素子電界の振幅および位相を求める。
【0016】
次に、動作について説明する。ここでは、素子アンテナ1−mを測定対象として説明を行う。
【0017】
実施の形態1に係るアンテナ測定方法全体の流れを図2に示すフローチャートを用いて説明する。まず、送信機8により生成、送信された高周波信号は(ステップST1)、電力分配合成回路4に入力され、供試アンテナの素子数に対応して分配される(ステップST2)。分配された高周波信号は、ディジタル移相器3−1,3−2,…,3−Mにより、それぞれ所定の移相変化量が与えられる。その後、この高周波信号は、可変減衰器2−1,2−2,…,2−Mにより、可変減衰器の減衰量に応じた所定の振幅値に設定された後(ステップST3)、素子アンテナ1−1,1−2,…,1−Mから空間に放射される(ステップST4)。空間に放射された高周波信号は、空間で電力合成され測定用アンテナ9−aにて受信される(ステップST5)。測定用アンテナ9−aにて受信されたアレー合成電力は受信機10にて検出される。これらの工程を、測定対象とする素子アンテナに対応するディジタル移相器の移相変化量および可変減衰器の減衰量を変化させて所定の回数実施し(ステップST6)、得られたアレー合成電力から測定対象とする素子アンテナの素子電界を算出する演算処理を行う(ステップST7)。本発明の特徴となる工程について以下で詳細に説明する。
【0018】
可変減衰制御回路5および位相制御回路6による、素子アンテナの励振振幅及び励振位相の制御方法(ステップST3)について図3および図4を参照して説明する。素子アンテナの励振振幅及び励振位相の制御は、ステップST1〜ステップST5を所定回数実施する工程において、測定対象とする素子アンテナについては励振振幅及び励振位相を関連づけて変化させ、測定対象とする素子アンテナ以外の素子アンテナについては、励振振幅および励振位相を一定として測定を行う。図3は、可変減衰制御回路5により制御する励振振幅の変化、図4は移相器制御回路6により制御する励振位相の変化を示している。図3において、横軸は励振振幅を変化させる回数を表し、縦軸はその回数に対応する励振振幅(ここでは、説明の便宜上、規格化した電圧値として説明する)を表している。図3中の、14−aは本実施の形態1で想定する励振振幅の変化を表しており、励振振幅を−1.0〜1.0まで余弦状に変化させる。図4の横軸は励振位相を変化させる回数を表し、図3で示した励振振幅の変化させる回数と対応している。縦軸は変化させる回数に対応する励振位相(度)を表している。図3中の15−aは本実施の形態1で想定する励振位相の変化を表し、0〜360度まで線形に変化させる。
【0019】
可変減衰器制御回路5および移相器制御回路6は、可変減衰器2−mとディジタル移相器3−mを制御し、素子アンテナ1−mの励振振幅および励振位相がそれぞれ図3および図4記載のプロファイルと一致するように変化させる。例えば、初期状態(図3および図4で横軸が0)では、励振振幅が1.0、励振位相が0[度]となるように、16回変化させた場合(図3および図4で横軸が16)では、励振振幅が−1.0、励振位相が180[度]となるように、可変減衰器2−mとディジタル移相器3−mを制御する。すなわち、ここでは、振幅位相制御指令回路7により可変減衰器制御回路5と移相器制御回路6を制御させ、測定対象となる素子アンテナの励振振幅と励振位相を同期させて変化させる。励振位相および励振振幅を変化させた高周波信号を含む高周波信号は、それぞれ対応する素子アンテナから放射される。
【0020】
次に、測定アンテナで受信されるアレー合成電力(ステップST5)について説明する。図5に、励振振幅および励振位相を変化させる素子を素子アンテナ1−mとし、図3および図4記載のプロファイルにしたがって励振振幅および励振位相を変化させたときに受信機10で計測されるアレー合成電力の変化の例を実線で示す。図5において、横軸は素子アンテナ1−mの励振振幅および励振位相を変化させる回数であり図3および図4の横軸に対応している。縦軸はアレー合成電力である。また、図5に特許文献1に示すような、測定対象とする素子アンテナの励振振幅を一定とし、励振位相を図5にように0度から360度まで線形に変化させた場合のアレー合成電力の変化17を破線で併記している。
【0021】
図5より、上述の特許文献1に記載されたアンテナ測定方法では、アレー合成電力の変化17は、特許文献1の記載通り余弦状の変化をすることがわかる。一方、本発明の実施の形態1によるアレー合成電力の変化16は、同じ32回の変化回数で余弦状の変化を2回繰り返す、すなわち2倍の余弦状変化をすることがわかる。したがって、この2倍の余弦状変化の最大値、最小値、および最大値を与える励振位相がわかれば、特許文献1と同様の原理に基づき、素子アンテナ1−mの素子電界の振幅および位相を求めることができる。
【0022】
次に、素子電界の振幅および位相の算出方法(ステップST7)について説明する。図5に示す本発明の実施の形態1おけるアレー合成電力の変化16は、初期状態からの相対値として数式1で表すことができる。ここで、初期状態からの相対値とは図5の横軸0におけるアレー合成電力を1としたときの相対値であることを意味する。
【0023】
【数1】

数式1において、f0,iはアレー合成電力、kは素子アンテナ1−mの素子電界振幅値である。Δφはディジタル移相器の最小移相量であり、ここでは5ビットのディジタル移相器を想定しているので11.25度である。iは励振振幅および励振位相を変化させる回数であり、図3、図4、図5の横軸に相当する。また、YとΦm,0は定数であり、それぞれ数式2と数式3で与えられる。
【0024】
【数2】

【0025】
【数3】

ここで、Xは素子アンテナ1−mの素子電界位相値である。
【0026】
数式1からわかるように、本実施の形態1のアレーアンテナの合成電力の変化は余弦状に変化するが、iに対し2倍の変化となることがわかる。これは図4に示したように、2倍の余弦状変化をすることに対応する。また、数式1〜数式3記載の式は、特許文献1記載の式と同形式となっている。したがって、特許文献1と同様に位相Φm,0と、アレー合成電力の最大値と最小値の比rから素子電界振幅kと素子電界位相Xを求めることができる。
数式1よりアレー合成電力の最大値と最小値の比rは数式4で与えられる。
【0027】
【数4】

数式4より、rは数式5に示す2つの値をとる。
【0028】
【数5】

数式5の右辺の符号により、素子電界振幅kと素子電界位相Xも2つの値をとる。数式5右辺の符号が正の場合には、素子電界振幅kは数式6で与えられ、素子電界位相Xは数式7で与えられる。一方、数式5右辺の符号が負の場合には、素子電界振幅kは数式8で与えられ、素子電界位相Xは数式9で与えられる。
【0029】
【数6】

【0030】
【数7】

【0031】
【数8】

【0032】
【数9】

ここで、Γは数式10で与えられる。
【0033】
【数10】

【0034】
以上に示したように、素子電界振幅kと素子電界位相Xは、位相Φm,0と、アレー合成電力の最大値と最小値の比rから求められる。なお、素子電界振幅kと素子電界位相Xには、数式6と数式7、あるいは数式8と数式9の2組の解が存在する。この解の判定は、特許文献1に記載のように、素子電界振幅の設計値と比較して一致する解、あるいは各素子の位相分布を変化させた測定を再度行い振幅値が同一になる解を選択することにより可能である。
【0035】
次に、Φm,0とrを求める方法を説明する。Φm,0とrは、受信機10が計測したアレー合成電力の変化、すなわち、測定対象となる素子アンテナの励振振幅および励振位相を変化させて、アレー合成電力の振幅値のみを計測することにより、素子電界振幅kと素子電界位相Xを算出することができる。ここでは、一例として、フーリエ級数展開を用いたΦm,0とrの算出方法について示す。まず、平均値演算回路11によりアレー合成電力の変化16の平均値を求める。この平均値をaとする。また、2倍波フーリエ級数展開演算回路によりアレー合成電力の変化16をフーリエ級数展開したときの2倍波のフーリエ余弦係数および2倍波のフーリエ正弦係数から算出する。このアレー合成電力の2倍波のフーリエ余弦係数をa2、アレー合成電力の2倍波のフーリエ正弦係数をbとする。a、a、bは、それぞれ数式11、数式12、数式13により求めることができる。
【0036】
【数11】

【0037】
【数12】

【0038】
【数13】

ここで、f0,iは、iに対応したアレー合成電力の計測結果である。また、Nはアレー合成電力の1周期分の余弦状変化を得るために必要なアレー合成電力の計測回数であり、ここでは16である。すなわち、特許文献1と比べて半分の測定回数で、Φm,0とrを算出することが可能となる。Φm,0は、これらの演算回路により求めた結果から数式14で求められ、rは数式15で求めることができる。
【0039】
【数14】

【0040】
【数15】

【0041】
したがって、本発明の実施の形態1では、第1の素子電界演算回路において、平均値aと、2倍波のフーリエ余弦係数aと、2倍波のフーリエ正弦係数b2とから、数式14と数式15により、それぞれΦm,0とrを求めることができる。さらに、Φm,0とrから、素子電界振幅kと素子電界位相Xを数式6〜10により求めることができる。ここでは、アレー合成電力の変化をフーリエ級数展開することにより、Φm,0とrを算出する場合について示したが、アレー合成電力の変化について、例えば、最小2乗法を用いて近似式を算出し、Φm,0とrを算出する構成としても良い。
【0042】
以上の説明では、素子アンテナ1−mに対して本発明を適用した場合を述べたが、これを全ての素子に対して繰り返すことにより、全ての素子の素子電界振幅および素子電界位相を求めることができる。例えば、図6と図7に20素子のフェーズドアレーの全素子に対して本発明を適用し、素子電界振幅kと素子電界位相Xを求めた結果を示す。図6は素子電界振幅kの測定結果、図7は素子電界位相Xの測定結果である。図6、図7においてそれぞれの横軸は素子の番号を表し、縦軸は振幅あるいは位相を表している。また、各図の実線は素子電界振幅あるいは素子電界位相の真値、プロットは本発明により求めた測定結果である。これより、本発明により求めた測定結果は、真値と良く一致していることがわかる。また、複数個の素子アンテナについて励振振幅および励振位相を変化させ、同様の測定を行うこともでき、当該複数個の素子アンテナを1つの素子アンテナとみなした素子電界振幅および素子電界位相を求める事ができる。
【0043】
以上のように、本発明の実施の形態1によれば、アレー合成電力の振幅変化16を計測し、その結果を演算処理することにより、各素子の素子電界振幅および素子電界位相を求めることができる。位相計測が不要であり、振幅計測のみにより素子電界振幅および素子電界位相を求めることができるので、安定かつ精度の高い測定が可能であるという効果がある。
【0044】
また、本発明の実施の形態1におけるアレー合成電力の変化は、励振振幅および励振位相を互いに関連付けて変化させることにより、2倍の余弦状変化をするため、半分のアレー合成電力の計測回数で、上述のΦm,0とrを算出することができ、特許文献1と比べると素子電界の測定時間を半分にすることができるという効果がある。したがって、フェーズドアレーアンテナを構成する素子の素子電界の測定を簡素化することができる。
【0045】
なお、ここでは、供試アンテナを送信アンテナとして用いた場合について示したが、受信アンテナとして用いた場合、すなわち、測定アンテナから放射された高周波信号を供試アンテナ(フェーズドアレーアンテナ)で受信する場合も同様の効果が得られる。図8に、供試アンテナを受信アンテナとして動作させる場合のアンテナ測定装置の構成図を示す。図8に示すアンテナ測定装置では、図1と測定用アンテナ側に高周波信号を発生させる送信機8を設置し、供試アンテナ側に受信機10、平均演算回路11、2倍波フーリエ係数演算回路12、第1素子電界演算回路13を設置した点で異なる。
【0046】
受信アンテナとして用いた場合の動作について説明する。なお、測定対象とする素子アンテナを素子アンテナ1−mとする。送信アンテナとして用いた場合と同様に、送信機8により生成された高周波信号を測定用アンテナ9−aから放射し、素子アンテナ1−1,1−2,…,1−Mで受信する。素子アンテナ1−mで受信された高周波信号に対して、上述の送信アンテナとして動作させた場合と同様に励振振幅および励振位相を関連付けて変化させ、変化後の高周波信号を電力分配合成回路4により合成する。
【0047】
合成した高周波信号を、上述の送信アンテナとして動作させた場合と同様の演算処理を行うことにより、受信アンテナとして動作させた場合の素子電界を算出することができる。したがって、受信アンテナとして動作させた場合においても、送信アンテナとして動作させた場合と同様の効果が得られる。
【0048】
実施の形態2.
実施の形態1では、図3に示したようなプロファイルにより各素子の励振振幅を変化させていた。これより、図3記載の励振振幅のプロファイルでは、振幅値が負の値をとる場合がある。これは可変減衰器では実現できないため、負の値をとる場合にはディジタル移相器の位相値を180度オフセットさせてもよい。実施の形態2に示すアンテナ測定装置では、振幅値(電圧値)が負の値をとる場合、ディジタル移相器の位相を180度オフセットさせる構成としている。
【0049】
実施の形態2に係るアンテナ測定装置の構成は、図1に示す場合と同様である。また、動作についても測定対象となる素子の励振振幅および励振位相の制御方法を除き、実施の形態1に係るアンテナ測定装置と同様である。図9に測定対象となる素子に与えるべき励振振幅の変化を示し、図10に励振位相の変化を示す。図9において、横軸は励振振幅を変化させる回数を表し、縦軸は対応する励振振幅(ここでは、説明の便宜上、規格化した電圧値として説明する)を表し、14−bは本実施の形態2で想定する励振振幅の変化を表している。図10の横軸は励振位相を変化させる回数を表し、縦軸は対応する励振位相(度)を表し、15−bは本実施の形態2で想定する励振位相の変化を表している。
【0050】
以上のように、実施の形態2に係るアンテナ測定装置では、励振振幅が負の値をとる場合にも、可変減衰器を用いて正しく設定でき、実施の形態1と同様に、安定かつ精度の高い測定の実現、測定の簡素化、および測定時間の短縮という効果が得られる。
【0051】
実施の形態3.
実施の形態1では、測定対象となる素子アンテナの励振振幅を余弦状に変化させる構成について示したが、実施の形態3では、測定対象となる素子アンテナの励振振幅を(1+余弦状)に変化させる構成について示す。ここでは、供試アンテナ(フェーズドアレーアンテナ)を送信アンテナとして動作させた場合について説明する。図11は、この発明の実施の形態3に係るアンテナ測定装置の構成図である。図11において、実施の形態1に示した図1と同一の符号は、同一または相当の部分を表している。基本波フーリエ係数演算回路18は受信機10の受信電力の変化をフーリエ級数展開し、基本波成分のフーリエ余弦係数およびフーリエ正弦係数を算出する。第2の素子電界演算回路19は、基本波フーリエ係数演算回路18が算出した基本波成分のフーリエ余弦係数およびフーリエ正弦係数から、素子電界の振幅および位相を求める。すなわち、アレー合成電力の平均値および2倍波フーリエ係数を算出する構成としていたが、実施の形態3では、アレー合成電力の基本波フーリエ係数を算出する構成としている。
【0052】
次に、動作について説明する。実施の形態3に係るアンテナ測定方法全体の流れは、実施の形態1に示す場合と同様であり、図2に示すフローチャートで表される。可変減衰器制御回路5と移相器制御回路6は、可変減衰器5とディジタル移相器6を制御し、素子アンテナ1−1,1−2,…,1−Mの任意の1素子の励振振幅および励振位相がそれぞれ図12および図13記載のプロファイルと一致するように変化させる。図12において、横軸は励振振幅を変化させる回数を表し、縦軸は対応する励振振幅(ここでは、説明の便宜上、規格化した電圧値として説明する)を表し、20は本実施の形態3で想定する励振振幅の変化を表している。図13の横軸は励振位相を変化させる回数を表し、縦軸は対応する励振位相(度)を表し、15−aは本実施の形態1で想定する励振位相の変化を表している。本実施の形態3では、任意の1素子の励振振幅を、平均値を1かつ振幅を1とした余弦状に変化させ、励振位相は0度から360度まで線形に変化させる。実施の形態1において図3で示した励振振幅の変化は、−1.0〜1.0において余弦状に変化させていたのに対し、実施の形態3では、0〜2.0において余弦状に変化させる。また、振幅位相制御指令回路7により可変減衰器制御回路5と移相器制御回路6の制御を同期させ、励振振幅と励振位相を関連付けて変化させる。
【0053】
測定アンテナで受信されるアレー合成電力について説明する。励振振幅および励振位相を変化させる素子アンテナを素子アンテナ1−mとし、図12および図13に示すプロファイルにしたがって励振振幅および励振位相を変化させたときに受信機10で計測されるアレー合成電力の変化の例を図14に示す。図14において、横軸は素子アンテナ1−mの励振振幅および励振位相を変化させる回数であり、図10および図11の横軸に対応している。縦軸はアレー合成電力である。また図12中の21は本実施の形態3におけるアレー合成電力の変化である。
【0054】
本発明の実施の形態3では、受信機10で計測されたアレー合成電力の変化21を、基本波フーリエ係数演算回路18においてフーリエ級数展開し基本波成分のフーリエ余弦係数およびフーリエ正弦係数を算出する。第2の素子電界演算回路19では、基本波フーリエ係数演算回路18が算出した基本波成分のフーリエ余弦係数およびフーリエ正弦係数から、素子電界の振幅および位相を求める。以下では、素子電界の振幅および位相の算出方法の詳細を説明する。
【0055】
本発明の実施の形態3おけるアレー合成電力の変化21は、初期状態からの相対値として数式16のようになる。ここで、初期状態からの相対値とは図14の横軸0におけるアレー合成電力を1としたときの相対値であることを意味する。
【0056】
【数16】

【0057】
数式16において、kは素子アンテナ1−mの素子電界振幅値、Xは素子アンテナ1−mの素子電界位相値ある。Δφはディジタル移相器の最小移相量であり、ここでは5ビットのディジタル移相器を想定しているので11.25度である。iは励振振幅および励振位相を変化させる回数であり、図12〜図14の横軸に相当する。
【0058】
数式16の右辺第4項(2kcos(iΔφ+X))はフーリエ級数の基本波成分であり、その振幅が素子電界振幅kの2倍、位相が素子電界位相となる。したがって、基本波フーリエ係数演算回路18で求めた基本波成分のフーリエ余弦係数およびフーリエ正弦係数をそれぞれa,bとすれば、素子電界振幅kは数式17で求められ、素子電界位相Xは数式18で求めることができる。
【0059】
【数17】

【0060】
【数18】

なお、基本波成分のフーリエ余弦係数a、フーリエ正弦係数bは、アレー合成電力の振幅変化21よりそれぞれ数式19、数式20で求めることができる。
【0061】
【数19】

【0062】
【数20】

【0063】
ここで、f0,iは、iに対応したアレー合成電力の計測結果であり、Nは、アレー合成電力の計測回数である。したがって、本発明の実施の形態3では、第2の素子電界演算回路において、基本波のフーリエ余弦係数aと基本波のフーリエ正弦係数bとから、素子電界振幅kと素子電界位相Xを数式17と18により求めることができる。
【0064】
以上の説明では、素子アンテナ1−mに対して本発明を適用した場合を述べたが、これを全ての素子に対して繰り返すことにより、全ての素子の素子電界振幅および素子電界位相を求めることができる。例えば、20素子のフェーズドアレーの全素子に対して本発明を適用し、素子電界振幅kと素子電界位相Xを求めた結果を図15および図16に示す。図15は素子電界振幅kの測定結果、図16は素子電界位相Xの測定結果である。図15、図16それぞれの横軸は素子の番号を表し、縦軸は振幅あるいは位相を表している。また、各図の実線は素子電界振幅あるいは素子電界位相の真値、プロットは本発明により求めた測定結果である。これより、本発明により求めた測定結果は、真値と良く一致していることがわかる。また、複数個の素子アンテナについて励振振幅および励振位相を変化させ、同様の測定を行うこともでき、当該複数個の素子アンテナを1つの素子アンテナとみなした素子電界振幅および素子電界位相を求める事ができる。
【0065】
以上のように、本発明の実施の形態3によれば、アレー合成電力の振幅変化21を測定し、その結果を演算処理することにより、各素子の素子電界振幅および素子電界位相を求めることができる。位相計測が不要であり、振幅計測のみにより素子電界振幅および素子電界位相を求めることができるので、安定かつ精度の高い測定が可能であるという効果がある。
【0066】
また、本発明の実施の形態3では、アレー合成電力の変化をフーリエ級数展開した基本波成分のフーリエ余弦級数とフーリエ正弦級数から、素子電界振幅および素子電界位相の単一解を求めることが可能である。したがって、特許文献1や実施の形態1に示すアンテナ測定装置およびアンテナ測定方法では、2つの解が存在するため、2つの解の判定処理が必要であったが、実施の形態3に係るアンテナ測定装置および測定方法では、解の判定処理不要であり、測定を簡素化できるという効果がある。
【0067】
なお、ここでは、供試アンテナを送信アンテナとして動作させた場合について示したが、実施の形態1に示す場合と同様に受信アンテナとして動作させた場合についても、送信アンテナとして動作させた場合と同様に解の判定処理が不要であり、測定を簡素化できるという効果が得られる。
【0068】
実施の形態4.
上述の実施の形態では、測定対象となる素子アンテナの励振振幅を変化させる手段として可変減衰器および可変減衰器および可変減衰器制御回路を用いる構成について示したが、実施の形態4では、増幅器およびバイアス電圧制御回路を用いた構成について示す。ここでは、供試アンテナ(フェーズドアレーアンテナ)を送信アンテナとして動作させた場合について説明する。図17は、この発明の実施の形態4のアンテナ測定装置の構成図である。図17において、図1と同一の符号は、同一または相当の部分を表している。増幅器22−1,22−2,…,22−Mは、それぞれ素子アンテナ1−1,1−2,…,1−Mに接続され、入力された高周波信号を設定された励振振幅値まで振幅を変化させる。た増幅器である。また、バイアス電圧制御回路23は増幅器22−1,22−2,…,22−Mのバイアス電圧を変化させ、増幅器の利得を制御する。
【0069】
次に、動作について説明する。本発明の実施の形態4の動作は、ほぼ実施の形態1に示す場合と同様であるが、バイアス電圧制御回路23と移相器制御回路6は、増幅器の利得およびディジタル移相器を制御し、素子アンテナ1−1,1−2,…,1−Mのうち測定対象となる任意の1素子の励振振幅および励振位相を対応させて変化させる点で異なる。なお、その変化は、例えば図3および図4記載のプロファイルと一致させるものとする。また、振幅位相制御指令回路7によりバイアス電圧制御回路23と移相器制御回路6の制御を同期させ、励振振幅と励振位相を関連付けて変化させる。
【0070】
以上のように、本実施の形態4では、実施の形態1と同様に任意の1素子の励振振幅および励振位相を変化させることが可能であり、その間のアレー合成電力の振幅変化16を測定し、その結果を演算処理することにより、各素子の素子電界振幅および素子電界位相を求めることができる。したがって、実施の形態1と同様に、安定かつ精度の高い測定の実現、測定時間の短縮という効果がある。
【0071】
また、本実施の形態4では、素子の励振振幅、励振位相をそれぞれ図8、図9のように変化させることも可能である。この場合には、実施の形態2と同様の効果がある。さらに、本実施の形態3では、素子の励振振幅、励振位相をそれぞれ図12、図13のように変化させることも可能である。この場合には、実施の形態3と同様に解の判定処理不要であり、測定を簡素化できるという効果がある。
【0072】
なお、ここでは、供試アンテナを送信アンテナとして動作させた場合について示したが、実施の形態1に示す場合と同様に受信アンテナとして動作させた場合についても、送信アンテナとして動作させた場合と同様の効果が得られる。
【0073】
実施の形態5.
上述の実施の形態では、1つの素子アンテナから構成される測定用アンテナを用いた場合について示したが、実施の形態5に係るアンテナ測定装置では、複数の素子アンテナからの構成されるアレーアンテナを測定用アンテナとして用いた場合について示す。ここでは、供試アンテナ(フェーズドアレーアンテナ)を送信アンテナとして動作させた場合について説明する。図18は、この発明の実施の形態5のアンテナ測定装置の構成図である。図18において、図1と同一の符号は、同一または相当の部分を表している。測定用アンテナ9−a,9−b,9−cは、供試アンテナに対向して配置されており、電力分配合成回路24により、測定用アンテナ9−a,9−b,9−cが受信した信号を合成する構成となっている。これより、本実施の形態では、測定用アンテナ9−a,9−b,9−cおよび電力分配合成回路24によりアレーアンテナが形成されている。したがって、受信信号の信号対雑音比を向上させることができる。
【0074】
以上のように、本実施の形態5に係るアンテナ測定装置は、実施の形態1に示す場合の効果に加えて、受信信号の信号対雑音比を向上させることができるので、測定精度が向上する効果がある。なお、ここでは、供試アンテナを送信アンテナとして動作させた場合について示したが、実施の形態1に示す場合と同様に受信アンテナとして動作させた場合についても同様の効果が得られる。
【0075】
実施の形態6.
上述の実施の形態では、測定用アンテナを供試アンテナと対向する位置に配置していたが、実施の形態6に係るアンテナ測定装置では、測定用アンテナを供試アンテナと同一開口面上に配置する。ここでは、供試アンテナ(フェーズドアレーアンテナ)を送信アンテナとして動作させた場合について説明する。図19は、この発明の実施の形態6に係るアンテナ測定装置の構成図である。図19において、図18と同一の符号は、同一または同様の部分を表す。図19に示すアンテナ測定装置では、測定用アンテナ9−aから9−dが、素子アンテナ1−1から1−Mと同一開口面上に設置される。
【0076】
実施の形態6に係るアンテナ測定装置では、以上のような構成をしているため、実施の形態4に示す場合の効果に加えて、当該アンテナ測定装置の小型化できるとういう効果が得られる。なお、ここでは、供試アンテナを送信アンテナとして動作させた場合について示したが、実施の形態1に示す場合と同様に受信アンテナとして動作させた場合についても同様の効果が得られる。
【0077】
以上の各実施の形態では、発明の本質を逸脱しない限り、各実施の形態を相互に組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0078】
1−1〜1−M 素子アンテナ、2−1〜2−M 可変減衰器、3−1〜3−M ディジタル移相器、4 電力分配合成回路、5 可変減衰器制御回路、6 移相器制御回路、7 振幅位相制御指令回路、8 送信機、9−a〜9−c 測定用アンテナ、10 受信機、11 平均値演算回路、12 2倍波フーリエ係数演算回路、13 第1素子電界演算回路、14−a,14−b 励振振幅の変化、15−a 励振位相の変化、16 アレー合成電力の変化、17 アレー合成電力の変化、18 基本波フーリエ係数演算回路、19 第2の素子電界演算回路、20 励振振幅の変化、21 アレー合成電力の変化、22 増幅器、23 バイアス電圧制御回路、24 電力分配合成回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェーズドアレーアンテナを構成する複数の素子アンテナのうち、測定対象とする素子アンテナの素子電界を測定するアンテナ測定方法であって、
高周波信号を生成する高周波信号生成ステップと、
前記高周波信号生成ステップにおいて生成された高周波信号のうち、前記測定対象とする素子アンテナに対応する高周波信号の振幅および位相を互いに関連付けて変化させる振幅位相変化ステップと、
前記高周波信号生成ステップで生成された高周波信号であって、前記振幅位相変化ステップにおいて振幅および位相を変化させた高周波信号を含む高周波信号を、それぞれ対応する前記複数の素子アンテナから放射する高周波信号放射ステップと、
前記高周波信号放射ステップにおいて前記複数の素子アンテナから放射された高周波信号を、測定用アンテナで受信する高周波信号受信ステップと、
前記高周波信号受信ステップで受信した高周波信号に基づいて、前記測定対象となる素子アンテナの素子電界を算出する素子電界算出ステップと、
を備えたことを特徴とするアンテナ測定方法。
【請求項2】
フェーズドアレーアンテナを構成する複数の素子アンテナのうち、測定対象とする素子アンテナの素子電界を測定するアンテナ測定方法であって、
高周波信号を生成する高周波信号生成ステップと、
前記高周波信号生成ステップで生成された高周波信号を、測定用アンテナから放射する高周波信号放射ステップと、
前記高周波信号放射ステップで放射された高周波信号を、前記複数の素子アンテナでそれぞれ受信する高周波信号受信ステップと、
前記受信ステップで受信した高周波信号のうち、前記測定対象とする素子アンテナで受信した高周波信号の振幅および位相を互いに関連付けて変化させる振幅位相変化ステップと、
前記高周波信号受信ステップにおいて対応する前記複数の素子アンテナで受信された高周波信号であって、前記振幅位相制御ステップにおいて振幅および位相を変化させた高周波信号を含む高周波信号を合成する高周波信号合成ステップと、
前記高周波信号合成ステップにおいて合成された高周波信号に基づいて、前記測定対象となる素子アンテナの素子電界を算出する素子電界算出ステップと、
を備えたことを特徴とするアンテナ測定方法。
【請求項3】
前記振幅位相変化ステップにおいて、可変減衰器または増幅器を用いて前記測定対象とする素子アンテナに対応する高周波信号の振幅を変化させることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のアンテナ測定方法。
【請求項4】
前記振幅位相変化ステップにおいて、前記測定対象となる素子アンテナに対応する高周波信号の振幅を余弦状に、前記測定対象となる素子アンテナに対応する高周波信号の位相を0度から360度まで線形に変化させ、
素子電界算出ステップにおいて、前記素子電界の平均値と2倍波のフーリエ係数を算出すること、
を特徴する請求項1〜3のいずれか1項に記載のアンテナ測定方法。
【請求項5】
前記振幅位相変化ステップにおいて、前記測定対象となる素子アンテナに対応する高周波信号の振幅を(1+余弦状)に、前記測定対象となる素子アンテナに対応する高周波信号の位相を0度から360度まで線形に変化させ、
素子電界算出ステップにおいて、前記素子電界の平均値と基本波のフーリエ係数を算出すること、
を特徴する請求項1〜3のいずれか1項に記載のアンテナ測定方法。
【請求項6】
前記測定用アンテナは、複数個の素子アンテナと電力分配合成回路を備えるアレーアンテナであること、を特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のアンテナ測定方法。
【請求項7】
前記測定用アンテナは、前記複数の素子アンテナと同一開口面上に設置されること、を特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のアンテナ測定方法。
【請求項8】
フェーズドアレーアンテナを構成する複数の素子アンテナのうち、測定対象とする素子アンテナの素子電界を測定するアンテナ測定装置であって、
高周波信号を生成する高周波信号生成手段と、
前記高周波信号生成手段により生成され、前記複数の素子アンテナから放射される高周波信号のうち、前記測定対象とする素子アンテナから放射される高周波信号の振幅および位相を互いに関連付けて変化させる振幅位相変化手段と、
前記複数の素子アンテナから放射された高周波信号を受信する測定用アンテナと、
前記測定用アンテナで受信した高周波信号に基づいて、前記測定対象となる素子アンテナの素子電界を算出する素子電界算出手段と、
を備えたことを特徴とするアンテナ測定装置。
【請求項9】
フェーズドアレーアンテナを構成する複数の素子アンテナのうち、測定対象とする素子アンテナの素子電界を測定するアンテナ測定装置であって、
高周波信号を生成する高周波信号生成手段と、
前記高周波信号生成手段により生成された高周波信号を放射する測定用アンテナと、
前記測定用アンテナにより放射され、前記複数の素子アンテナで受信された高周波信号のうち、前記測定対象とする素子アンテナで受信された高周波信号の振幅および位相を互いに関連付けて変化させる振幅位相変化手段と、
前記複数の素子アンテナで受信された高周波信号であって、前記振幅位相変化手段により振幅および位相を変化させた高周波信号を含む高周波信号を合成する高周波信号合成手段と、
前記高周波信号合成手段により合成された高周波信号に基づいて、前記測定対象となる素子アンテナの素子電界を算出する素子電界算出手段と、
を備えたことを特徴とするアンテナ測定装置。
【請求項10】
前記振幅位相変化手段は、前記測定対象とする素子アンテナに対応する高周波信号の振幅を変化させる可変減衰器または増幅器を備えること、を特徴とする請求項8または9のいずれかに記載のアンテナ測定装置。
【請求項11】
前記振幅位相変化手段は、前記測定対象となる素子アンテナに対応する高周波信号の振幅を余弦状に、前記測定対象となる素子アンテナに対応する高周波信号の位相を0度から360度まで線形に変化させ、
素子電界算出手段は、前記素子電界の平均値と2倍波のフーリエ係数を算出すること、
を特徴する請求項8〜10のいずれか1項に記載のアンテナ測定装置。
【請求項12】
前記振幅位相変化手段は、前記測定対象となる素子アンテナに対応する高周波信号の振幅を(1+余弦状)に、前記測定対象となる素子アンテナに対応する高周波信号の位相を0度から360度まで線形に変化させ、
素子電界算出手段は、前記素子電界の平均値と基本波のフーリエ係数を算出すること、
を特徴する請求項8〜10のいずれか1項に記載のアンテナ測定装置。
【請求項13】
前記測定用アンテナは、複数個の素子アンテナと電力分配合成回路を備えるアレーアンテナであること、を特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載のアンテナ測定装置。
【請求項14】
前記測定用アンテナは、前記複数の素子アンテナと同一開口面上に設置されること、を特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載のアンテナ測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−117959(P2012−117959A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269281(P2010−269281)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】