説明

アンテナ装置、受信装置および電波時計

【課題】振動体を電波信号により共振させて、この共振運動を電気信号に変換することで、電波信号の受信を行うアンテナ装置において、幅広い信号レベルの電波信号を受信可能とする。
【解決手段】所定の固有振動数で振動する特性を有するとともに外部磁界を受けて変位する振動体、および、該振動体の運動を電気信号に変換する変換手段を備えたアンテナ部10を有したアンテナ装置において、振動体の外部磁界に対する変位の度合いを変化させる感度可変手段107と、取り込まれた電気信号に応じて感度可変手段107にAGC信号を出力する感度制御手段102とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電波信号を受信するアンテナ装置および受信装置、ならびに、タイムコードを含んだ標準電波の受信を行う電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、線状アンテナ、巻線型のバーアンテナ、平面アンテナなど、様々なアンテナが知られている。また、標準電波を受信する電波時計などでは、小さな時計本体にアンテナを搭載する必要があることから巻線型のバーアンテナが用いられる。
【0003】
また、本発明に関連する従来技術として、特許文献1,2には、磁気抵抗効果素子によって電波の磁界成分に反応することで電波信号を受信するアンテナ装置が開示されている。また、特許文献3には、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)作製技術によって形成された振動板に磁性体の薄膜を形成し、この振動板を振動させつつ、この振動板の共振周波数の変化を検出して外部磁場の測定を行う共振型磁気センサが開示されている。
【特許文献1】特開2000−188558号公報
【特許文献2】特開2007−124335号公報
【特許文献3】特開2005−201775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、現在、MEMS作製技術を用いて形成した振動体に磁性体を設け、この振動体を電波信号により共振させて、この共振運動を電気信号に変換させることで、特定周波数帯の電波信号を受信するアンテナ装置の開発を行っている。
【0005】
しかしながら、上記MEMSの振動体は、電波信号の信号レベルが大きく変化した場合に、振動振幅が飽和して、電波信号の振幅に応じた振動が得られなくなるといった事態が発生することが考えられた。特に、高感度な受信を可能とするアンテナ構成では、検出限界の電波強度より1000倍以上の強度の電波信号が到来することも想定され、そのままの構成では、全てのレベルの電波信号を歪みなしに受信・再生することは難しいと考えられた。
【0006】
この発明の目的は、振動体を電波信号により共振させて、この共振運動を電気信号に変換することで、電波信号の受信を行うアンテナ装置において、幅広い信号レベルの電波信号を受信可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
所定の固有振動数で振動する特性を有するとともに外部磁界を受けて変位する振動体、および、該振動体の運動を電気信号に変換する変換手段を備え、前記振動体を共振させる周波数帯の電波信号が到来したときに、当該電波信号の磁界成分によって前記振動体が共振し、この共振が前記変換手段により電気信号に変換されることで、当該周波数帯の電波信号が電気信号にされて取り込まれるアンテナ部を有したアンテナ装置であって、
前記振動体の外部磁界に対する変位の度合いを変化させる感度可変手段と、
取り込まれた前記電気信号に応じて前記感度可変手段による前記変位の度合いの変化量を調整する感度制御手段と、
を備えていることを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のアンテナ装置において、
前記感度可変手段は、
前記変換手段の出力に対して可変的なインピーダンスを付加する可変インピーダンス手段からなることを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のアンテナ装置において、
前記振動体に磁力を及ぼすコイル磁石を備え、
前記感度可変手段は、前記コイル磁石に流れる電流量を変化させる可変電流手段からなることを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1記載のアンテナ装置において、
前記感度可変手段は、
前記振動体の周囲に配置されたコイルと、
前記コイルに流れる電流に対して可変的なインピーダンスを付加する可変インピーダンス手段と、
から構成されることを特徴としている。
【0011】
請求項5記載の発明は、
所定の固有振動数で振動する特性を有するとともに外部磁界を受けて変位する振動体、および、該振動体の運動を電気信号に変換する変換手段を備え、前記振動体を共振させる周波数帯の電波信号が到来したときに、当該電波信号の磁界成分によって前記振動体が共振し、この共振が前記変換手段により電気信号に変換されることで、当該周波数帯の電波信号が電気信号にされて取り込まれるアンテナ部を有するアンテナ装置であって、
前記アンテナ部が、前記振動体の外部磁界による変位の度合いを異ならせて、複数設けられ、
さらに前記複数のアンテナ部の出力を合成して出力する合成手段を備えていることを特徴としている。
【0012】
請求項6記載の発明は、
所定の固有振動数で振動する特性を有するとともに外部磁界を受けて変位する振動体、および、該振動体の運動を電気信号に変換する変換手段を備え、前記振動体を共振させる周波数帯の電波信号が到来したときに、当該電波信号の磁界成分によって前記振動体が共振し、この共振が前記変換手段により電気信号に変換されることで、当該周波数帯の電波信号が電気信号にされて取り込まれるアンテナ部を有するアンテナ装置であって、
前記アンテナ部が、前記振動体の外部磁界による変位の度合いを異ならせて、複数設けられ、
前記複数のアンテナ部のうち何れかのアンテナ部からの電気信号を選択的に後段に送るスイッチ手段を備えていることを特徴としている。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6の何れか1項に記載のアンテナ装置において、
少なくとも前記アンテナ部が1チップの基板上に形成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項8記載の発明は、
請求項1〜7の何れか1項に記載のアンテナ装置と、
前記アンテナ装置から送られてくる電気信号を増幅する増幅器と、
前記増幅器により増幅された信号に対して復調処理を行う復調器と、
を備えたことを特徴とする受信装置である。
【0015】
請求項9記載の発明は、
請求項8に記載の受信装置により標準電波を受信するとともに、該標準電波に含まれるタイムコードを復調し、このタイムコードに基づいて時刻修正を行うことを特徴とする電波時計である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に従うと、幅広い強度レベルの電波信号に対して正常な受信を行えるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の電波時計の全体を示す構成図である。
【0019】
この実施形態の電波時計1は、タイムコードによって変調された標準電波の受信を行うアンテナ部としてのMEMSアンテナ10と、MEMSアンテナ10の感度を変化させる感度可変手段および可変インピーダンス手段としての可変抵抗器107と、固定抵抗器110(図4参照)、MEMSアンテナ10から入力された受信信号を増幅する増幅器101と、受信信号からタイムコードの検波を行う復調器としての検波器102と、時計の全体制御を行うマイクロコンピュータ103と、時刻の表示出力を行う時刻表示器104と、計時を行う計時カウンタ105等から構成される。これらの構成のうちMEMSアンテナ10、可変抵抗器107、増幅器101および検波器102によって受信装置としての電波受信部100が構成される。
【0020】
可変抵抗器107は、MEMSアンテナ10の出力端子間に、MEMSアンテナ10の受信動作によって生じる電流を流して配線h1,h2間の電圧変化量を減少させることで、MEMSアンテナ10の受信動作を抑制し、さらにMEMSアンテナ10のQ値を低下させることでMEMSアンテナ10の感度を低下させるように機能するものである。可変抵抗器107の抵抗値を変化させることで、MEMSアンテナ10の感度の低下量が変化する。
【0021】
検波器102は、振幅変調された受信信号からタイムコードの検波を行う機能に加えて、感度制御手段としても機能するものであり、例えば、内部で受信信号の最大振幅を表わす信号を生成するとともに、この最大振幅が一定の範囲を超えないように上記の可変抵抗器107の抵抗値を変化させるAGC(オートゲイン制御)信号を生成するようになっている。例えば、受信信号の最大振幅が大きくなってきたら可変抵抗器107の抵抗値を低下させ、受信信号の最大振幅が小さくなってきたら可変抵抗器107の抵抗値を大きくさせるようなAGC信号を生成する。
【0022】
なお、AGC信号を生成する回路は、検波器102に設ける必要はなく、例えば、専用のAGC回路を設け、このAGC回路が検波器102、増幅器101、或いは、MEMSアンテナ10の出力を受けて上記のようなAGC信号を生成するようにしても良い。また、マイクロコンピュータ103が検波器102からの検波出力に基づきデジタル的な処理によって上記のようなAGC信号を生成するように構成することもできる。
【0023】
電波受信部100は、例えば、MEMSアンテナ10を含めて、1個の半導体基板上に形成されたものである。また、この電波受信部100とともに、マイクロコンピュータ103や計時カウンタ105も含めて1個の半導体基板上に形成することも可能である。
【0024】
図2は、第1実施形態のMEMSアンテナ10の構成を示す斜視図、図3は、このMEMSアンテナ10の縦断面図である。
【0025】
MEMSアンテナ10は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)作製技術を用いて半導体基板上に形成された極めて小さな(例えば数ミリメートル以下、或いは、ミクロンオーダーの大きさの)アンテナであり、電波信号の磁界成分を受けてこの受信電波を電気信号に変換するものである。
【0026】
このMEMSアンテナ10は、図2や図3に示すように、基板11上に形成された梁部12と、梁部12の一部を固定している絶縁体からなるスペーサー15,15と、梁部12の可動範囲に形成された磁性体13と、梁部12の下側に固定された永久磁石14と、該梁部12に形成された面状の電極(第1電極)16と、梁部12に対向する基板11上の部位に形成された面状の電極17(第2電極)等から構成される。そして、梁部12の周囲に空間を設けて梁部12が上下に変位可能な状態で樹脂19等により周囲が封止されてなる。なお、梁部12自体に導電性を持たせることで、電極16を梁部12と共用にしても良い。
【0027】
上記の構成のうち、梁部12と磁性体13によって振動体が構成され、電極16,17により梁部12の変位を電気信号に変換する変換手段が構成される。
【0028】
梁部12は、例えば、シリコンにより形成されたものである。梁部12は、板状の構成であり、その長手方向が基板11に沿った向きで、一部の箇所(例えば両端部)がスペーサー15,15を介して基板11に固定され、他の部位が空間をあけて基板11上に浮いた状態になっている。梁部12の下側の空間は犠牲層エッチングなどにより形成することができる。そして、この固定されていない部位が基板11に対して上下に振動するようになっている。
【0029】
梁部12の固有振動数は、梁部12の長さや厚みなどから所望の振動数に設定することが可能になっており、この実施の形態では標準電波の搬送波の周波数(例えば60kHz)と同一になるように設定されている。また、梁部12にSiGe(シリコン・ゲルマニウム)やその他の材料を適宜組み合わせることで、このような振動特性の温度補償を行うことも可能である。
【0030】
梁部12に形成される面状の電極16や、基板11に形成される面状の電極17は、対向配置されて電気容量を構成するものであり、例えば、金属材料を蒸着して形成されるものである。この金属材料は磁化しないアルミなどを使用すると好ましい。なお、梁部12に電極16を形成する換わりに、梁部12を形成している材料自体をドーピング等することで導電性を付加した構成とし、この梁部12自体を電極としても良い。
【0031】
電極16,17には、通常の半導体製造プロセスによって配線h1,h2が接続され、これらの配線h1,h2が基板11上に引き出された構成となっている。図3では、配線h1,h2を単純化して示しているが、実際には、基板11側の配線h2はそのまま基板11上のMEMSアンテナ10の外部まで引き出され、梁部12側の配線h1はスペーサー15にコンタクトホールを形成して基板11上まで導いた後、基板11上のMEMSアンテナ10の外部まで引き出されている。
【0032】
スペーサー15,15は、例えば、絶縁性を持たせるためにシリコン酸化膜(SiO2)などにより形成されたものである。
【0033】
永久磁石14は、梁部12の磁性体13に磁力を及ぼすためのものであり、例えば、スパッタリングにより強磁性体の薄膜堆積により強磁性体のブロックを形成した後、この強磁性体のブロックに強い磁界を加えて該強磁性体を特定の方向に磁化させることで形成することができる。
【0034】
梁部12上の磁性体13は、電波信号の磁界成分を受けて磁化することで、永久磁石14に対して斥力や引力を発生させて梁部12を変位させるように作用するものであり、例えば、スパッタリングを使用した磁性体(例えば軟磁性体)の薄膜堆積により形成することができる。
【0035】
図4は、このMEMSアンテナ10の電気的な構成を示す回路図である。
【0036】
図4に示すように、MEMSアンテナ10の電極16,17は、梁部12が変位することで電気容量の大きさを変化させる可変容量Cvを構成するものである。半導体基板上には、この可変容量Cvと直列に容量素子C1が接続され、これらの直列回路に電圧E1が印加された構成になっている。このような構成により、梁部12が変位して可変容量Cvの容量値が変化することで、可変容量Cvの端子間に梁部12の変位に応じた電気信号(電圧)が出力されるようになっている。なお、図4の容量素子C1の換わりに抵抗素子を可変容量Cvに直列接続しても同様の作用が得られる。
【0037】
ここで、可変抵抗器107の作用について説明する。可変抵抗器107は、抵抗値が高く設定されているときには、殆ど電流を流さないため、上記梁部12の変位および可変容量Cvの容量変化に対してエネルギー的なロスを殆ど及ぼさない。適切に設定された固定抵抗器110も同様である。増幅器101の入力インピーダンスも非常に高いため、MEMSアンテナ10から増幅器101への電流流入は殆どなく、梁部12の変位および可変容量Cvの容量変化に対してエネルギー的なロスを殆ど及ぼさない。
【0038】
一方、可変抵抗器107の抵抗値が低い値に設定された場合、梁部12の変位によって可変容量Cvの容量値が変化することで、可変抵抗器107に電流が流れて電力消費が発生する。そして、この電力消費は梁部12の変位を抑制するように作用する。従って、可変抵抗器107の抵抗値が低い値に設定されることで、外部磁界に対する梁部12の変位の度合いが低下し、MEMSアンテナ10の受信感度を低くすることができる。
【0039】
次に、上記構成の電波時計1および電波受信部100の動作について説明する。
【0040】
マイクロコンピュータ103は、時刻表示器104への出力データを計時カウンタ105の計時データに同期させて更新していくことで時刻の表示出力を行う。さらに、マイクロコンピュータ103は、所定の時刻になったら、電波受信の制御プログラムを実行して、電波受信部100を作動させる。それにより、所定周波数帯の搬送波により送信されてくる標準電波が電波受信部100で受信され、この受信信号からタイムコードが検波される。
【0041】
図5には、MEMSアンテナと従来のコイル型アンテナとの周波数特性を表わしたグラフを示す。
【0042】
MEMS作製技術によって形成された梁部12は、帯域の狭い固有振動数の範囲でのみ大きな共振を行うといった周波数特性を有している。それゆえ、本実施形態のMEMSアンテナ10は、梁部12の固有振動数に対応した周波数帯(例えば60kHz)の標準電波が到来したときには、この電波信号の磁界成分が梁部12に作用力を及ぼして梁部12が共振するとともに、梁部12が電波信号の磁界成分の大きさに応じた変位を行う。
【0043】
この梁部12の変位は可変容量Cvの容量変化となって、この容量変化に応じた電気信号がMEMSアンテナ10から増幅器101に出力される。この電気信号は到来した標準電波をほぼそのまま電気信号に変換した信号となる。そして、この電気信号が増幅器101で増幅され、その後、検波器102に送られてタイムコードが検波される。
【0044】
一方、梁部12の固有振動数から外れた周波数帯の電波が到来したときには、この電波信号の磁界成分が梁部12に作用力を及ぼすが、梁部12の固有振動数から外れた周波数で振動する作用力なので、梁部12において吸収および打ち消されて梁部12は振動しない。従って、可変容量Cvの容量変化も生じず、MEMSアンテナ10の信号出力はほぼゼロとなる。
【0045】
また、上記の標準電波とそれ以外の周波数帯の電波が入り混じって到来したときには、両者による作用がそれぞれ重なるように動作するので、梁部12の固有振動数から外れた周波数帯の電波はカットされ、標準電波のみがMEMSアンテナ10で抽出されて受信される。そして、標準電波の信号のみが増幅器101と検波器102に送られることとなる。
【0046】
図5の実線に示すように、上記構成のMEMSアンテナ10によれば、非常に高いQ値で、特定の周波数f0(例えば60kHz)の電波のみを受信し、特定周波数f0から外れた電波の入力を大幅にカットすることができる。比較用として、図5の点線にコイル型アンテナの周波数特性を示すが、図5の実線と点線の特性線の比較から分かるように、MEMSアンテナ10は、アンテナ自体の受信利得のQ値がコイル型アンテナに比べて非常に高くなっている。
【0047】
次に、標準電波の信号レベルが非常に大きくなった場合について説明する。標準電波の信号レベルが過大になってくると、梁部12の振動振幅が最大振幅に達して飽和する。すると、標準電波を振幅変調しているタイムコードのハイレベル期間もローレベル期間も、梁部12の振動振幅にあまり変化が生じなくなる。このような場合、そのままでは、再生したタイムコードの信号波形は歪んでくる。
【0048】
そこで、この実施形態の電波受信部100では、MEMSアンテナ10の出力信号の振幅最大値が一定範囲を超えた場合に、それが検知されて、検波器102から可変抵抗器107の抵抗値を低下させるようなAGC信号が出力される。
【0049】
可変抵抗器107の抵抗値が下げられると、先に説明したように、可変抵抗器107での電力消費によってMEMSアンテナ10の梁部12の振動が抑制される。そして、この振動の抑制作用によって、過大な信号レベルの標準電波が受信されても、梁部12の振動振幅は可変抵抗器107によるQ値の低下により適性な範囲に収まる。すなわち、図5の一点鎖線の特性線に示されるように、MEMSアンテナ10の受信感度が低下して、過大な信号レベルの標準電波が受信されても、適度な信号レベルの受信信号を出力することができる。そして、この適度な信号レベルの受信信号が検波器102に送られて、この受信信号からタイムコードが検波される。
【0050】
マイクロコンピュータ103は、検波されたタイムコードを受けると、このタイムコードから正確な現在時刻を求める。そして、計時カウンタ105の計時時刻にずれがある場合に、これを自動的に修正する。このような制御動作によって、常に正確な時刻表示が行われるようになっている。
【0051】
以上のように、この実施の形態のMEMSアンテナ10および電波受信部100によれば、可変抵抗器107によりMEMSアンテナ10の受信感度を変化させることができる。従って、受信される標準電波の信号レベルが過大になった場合でも、受信感度を低下させることで、正常な電波受信を行うことができる。
【0052】
また、受信信号の振幅が過大になってきた場合に、検波器102から出力されるAGC信号により可変抵抗器107の抵抗値が自動的に低くなるように制御されるので、標準電波の信号レベルの変化に追従して、MEMSアンテナ10の感度が自動的に調整され、常に、正常な電波受信を行うことが可能となる。
【0053】
また、MEMSアンテナ10の梁部12の振動を抑制する感度可変手段として、MEMSアンテナ10の出力端子間に接続した可変抵抗器107を採用しているので、半導体製造プロセスによって感度可変手段を容易に形成することができ、また、感度可変手段のチップの占有面積も小さくできる。
【0054】
また、この実施形態の電波時計1によれば、MEMSアンテナ10を含めて電波受信部100を極めて小型に構成できる。また、MEMSアンテナ10自体に帯域の狭いフィルタ特性が付与されているので、別途、狭帯域のフィルタなどを設ける必要がなく、電波受信部100の回路の単純化や実装面積の削減を図ることができる。それゆえ、腕時計本体など小さな装置にも余裕をもってアンテナや受信回路を搭載することができる。
【0055】
また、コイル型アンテナでは、電波受信に伴ってコイルやコアに比較的大きな磁束の変化が生じるため、周囲の金属に渦電流を発生させて、この渦電流の発生により受信感度が大幅に低下するという問題があったが、MEMSアンテナ10ではこのような渦電流を発生させないので、それによる受信感度が低下することもない。従って、金属の筐体に囲まれた電波時計の内部であっても、アンテナや受信回路の搭載箇所の自由度を増すことができる。
【0056】
[MEMSアンテナの変形例]
図6は、MEMSアンテナの変形例を示す縦断面図である。
【0057】
この変形例のMEMSアンテナ10Aは、梁部12の上方(基板11の逆側)にも電極を設けることで、MEMSアンテナ10Aから比較的に大きな電気信号を取り出せるようにしたものであり、基本的な構成は図2のMEMSアンテナ10と同様である。同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
この変形例のMEMSアンテナ10Aにおいては、梁部12の上方を覆うように板状の覆い板20が設けられ、この覆い板20に面状の電極(第3電極)21が形成されている。覆い板20は、梁部12の自由な変位を妨げないように、例えば、スペーサー22,22を介して梁部12から浮いた状態に形成されている。
【0059】
このような覆い板20は、例えば梁部12と同様の材料および製造プロセスによって形成することができる。また、覆い板20は、梁部12のように振動することがないように、例えば厚みを増したり硬度を増したりして形成されている。
【0060】
電極21は梁部12の電極16と同様の材料および製造プロセスによって形成することができ、スペーサー22,22は梁部12を支持するスペーサー15,15と同様の材料および製造プロセスにより形成することができる。スペーサー22,22は、例えば、梁部12を支持するスペーサー15,15と重なる配置で形成されている。
【0061】
図7は、変形例のMEMSアンテナの電気的な接続構成を示す回路図である。
【0062】
図7に示すように、上記の3つの電極17,16,21は、梁部12が変位することで各々の電気容量を変化させる2つの可変容量Cv,Cv2を構成するものである。詳細には、梁部12の電極16と基板11側の電極17によって一方の可変容量Cvが構成され、梁部12の電極16と覆い板20の電極21によってもう一方の可変容量Cv2が構成される。また、これら2つの可変容量Cv,Cv2は直列に接続され、これらの直列回路に定電圧E1が印加された構成にされる。また、受信信号を出力する可変容量Cの両端子間には可変抵抗器107が接続されている。
【0063】
このような構成によれば、梁部12が変位すると、2つの可変容量Cv,Cv2の容量値が互いに正負逆向きに変化する。それにより、可変容量Cvの端子間に梁部12の変位に応じた電気信号が出力される。この構成によれば、図4に示した上述の回路と比較して、出力電圧の振幅をほぼ二倍近く大きくすることができる。
【0064】
また、このような構成のMEMSアンテナ10Aにおいても、可変抵抗器107の抵抗値を変化させることで、梁部12の振動の抑制量を変化させて、過大な信号レベルの標準電波が到来したときでも、MEMSアンテナ10Aから正常な受信信号を出力させることが可能となる。
【0065】
[第2実施形態]
図8は、本発明の第2実施形態の電波受信部100Bを示す構成図である。
【0066】
第2実施形態の電波受信部100Bは、MEMSアンテナ10Eと、その受信感度を変化させる構成のみが、第1実施形態と異なるものである。第1実施形態と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0067】
この実施形態の電波受信部100Bは、コイル磁石25を有したMEMSアンテナ10Eと、コイル磁石25に電流を出力するとともにAGC信号に応じて電流量を変化させる可変電流手段としてのVI変換器108と、受信信号を増幅する増幅器101と、受信信号からタイムコードを検波したり受信感度を調整するAGC信号を出力する検波器102とを備えたものである。
【0068】
図9は、第2実施形態のMEMSアンテナ10Eを示すもので、(a)は縦断面図、(b)は基板面の平面図である。
【0069】
第2実施形態のMEMSアンテナ10Eは、梁部12の磁性体13に磁力を与える構成として、永久磁石の替わりにコイル磁石(電磁石)25を適用したものである。
【0070】
コイル磁石25は、図9(b)に示すように、配線を複数回巻回してなり、この巻回された配線に定電流を流すことで所定の磁力を磁性体13に及ぼすものである。この実施形態においては、コイル磁石25は、基板11上の磁性体13の下方に配置されている。
【0071】
このコイル磁石25は、例えば、基板11上の電極17Eを形成する蒸着工程においてマスクパターンにコイル磁石25の配線パターンを付加することで、電極17Eと同時に形成されたものである。図9(b)に示すように、電極17Eの中央部位に隙間171が設けられ、この部位にコイル磁石25の巻回配線が形成されている。巻回された配線は多層配線により内側の配線が外側に引き出されている。
【0072】
また、電極17Eの中央部位から一方の端部にかけてスリット172が形成され、このスリット172の部位に、コイル磁石25の巻回配線から外部の端子T25a,T25bまで伸びる引き出し線が形成されている。このように電極17Eにスリット172を設けて、電極17Eがコイル磁石25の巻回配線の全周を取り囲まないようにすることで、コイル磁石25に電流を流すときや停止させるときに、電極17Eの巻回配線の周りで、巻回配線を周回するような渦電流が生じることを回避して、この渦電流によりコイル磁石25に影響が生じないようにされている。
【0073】
この第2実施形態のMEMSアンテナ10Eによれば、電波受信時にコイル磁石25に定電流を流すことでコイル磁石25から磁性体13に所定の磁力を及ぼすことができ、その他は、第1実施形態のMEMSアンテナ10と同様の動作によって標準電波の受信を行うことができる。
【0074】
また、この第2実施形態のMEMSアンテナ10Eによれば、コイル磁石25に流す電流量を変化させることで、コイル磁石25から梁部12の磁性体13に及ぼされる磁力の大きさを変化させることができる。コイル磁石25の磁力が小さくなることで、到来した外部磁界に対して梁部12の変位量が小さくなり、それにより、MEMSアンテナ10Eの受信感度が低下される。
【0075】
従って、標準電波の信号レベルが過大になって検波器102から出力されるAGC信号の電圧レベルが低くなると、VI変換器108によってコイル磁石25に流れる電流が低くされて、MEMSアンテナ10Eの受信感度が低くされる。そして、このような制御によって、過大な信号レベルの標準電波に対しても正常な受信動作が行われて、適度な信号レベルの受信信号を出力することが可能となる。
【0076】
[第3実施形態]
図10は、本発明の第3実施形態の電波受信部を示す構成図である。
【0077】
第3実施形態の電波受信部100Cは、MEMSアンテナ10Fの構成と、MEMSアンテナ10Fの受信感度を変化させる構成のみが、第1や第2実施形態と異なるものである。第1と第2の実施形態と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0078】
この実施形態の電波受信部100Cは、感度調整用コイル25Fを有したMEMSアンテナ10Fと、感度調整用コイル25Fに流れる電流に対して可変的な抵抗を付加する可変インピーダンス手段としての可変抵抗器109と、受信信号を増幅する増幅器101と、受信信号からタイムコードを検波したり受信感度を調整するAGC信号を出力する検波器102とを備えたものである。
【0079】
図11は、第3実施形態のMEMSアンテナ10Fを示すもので(a)はその縦断面図、(b)は感度調整用コイルの基板面を示す平面図である。
【0080】
この実施形態のMEMSアンテナ10Fは、図6に示したMEMSアンテナ10Aの覆い板20に、図11(a),(b)に示す感度調整用コイル25Fを形成したものである。感度調整用コイル25Fの巻回配線や引き出し線は、覆い板20の電極21を形成する半導体製造プロセスにおいてマスクパターンに感度調整用コイル25Fの配線パターンを付加することで形成することができる。
【0081】
この実施形態のMEMSアンテナ10Fによれば、可変抵抗器109の抵抗値が小さな値に設定されると、標準電波の磁界成分によって梁部12が振動したときに、梁部12の磁性体13によって生起される磁束の変化が感度調整用コイル25Fを貫く。そして、それにより、感度調整用コイル25Fに電流が流れて、この電流により可変抵抗器109で電力消費が発生する。この電力消費は梁部12の変位を抑制するように作用するため、外部磁界に対する梁部12の変位の度合いが低下し、MEMSアンテナ10Fの受信感度が低下することになる。
【0082】
さらに、可変抵抗器109の抵抗値が小さな値に設定されることで、標準電波の磁界成分によって感度調整用コイル25Fに電流が流れ、それにより標準電波の一部が吸収される。そして、これによりMEMSアンテナ10Fの受信感度が低下するように作用する。
【0083】
一方、可変抵抗器109の抵抗値が大きな値に設定されると、感度調整用コイル25Fには、梁部12の振動に起因した電流や、標準電波の磁界成分に起因した電流が流れなくなる。それゆえ、上記のような受信感度を低下させる作用は働かなくなる。従って、可変抵抗器107の抵抗値を変化させることで、MEMSアンテナ10Fの感度を調整することが可能となる。
【0084】
第3実施形態の電波受信部100Cにおいても、標準電波の信号レベルが過大になって検波器102から可変抵抗器109の抵抗値を下げるようなAGC信号が出力されることで、MEMSアンテナ10Fの受信感度が低くされる。そして、このような制御によって、過大な信号レベルの標準電波に対して正常な受信動作を行って、適度な信号レベルの受信信号を出力することが可能となる。
【0085】
なお、第3実施形態では、感度調整用コイル25Fを電極21の一部の範囲を切欠いてこの中に形成した例を示したが、感度調整用コイル25Fの形成方法や形成配置は種々の変形が可能である。
【0086】
図12には、感度調整用コイルの第1変形例を表わした平面図を、図13には、感度調整用コイルの第2変形例を表わした斜視図を示す。
【0087】
第1変形例の感度調整用コイル25Dは、図12に示すように、覆い板20から電極21を省き、その分、大きな範囲に感度調整用コイル25Dを形成したものである。感度調整用コイル25Dの巻回配線を大きく形成することで、MEMSアンテナ10Fの感度の調整幅を大きくすることができる。
【0088】
第2変形例の感度調整用コイル25Gは、図13に示すように、基板11上の梁部12の周囲に梁部12を取り巻くように巻回配線を形成したものである。図示は省略しているが、感度調整用コイル25Gの端子間には可変抵抗器が接続されている。
【0089】
感度調整用コイル25Gを、このような配置としても、梁部12の振動に起因して感度調整用コイル25Gに電流を流してMEMSアンテナ10Gの感度を変化させたり、外部から到来する標準電波の一部を感度調整用コイル25Gで吸収することでMEMSアンテナ10Gの感度を変化させることができる。
【0090】
[第4実施形態]
図14は、本発明の第4実施形態の電波受信部を示す構成図である。
【0091】
第4実施形態の電波受信部100Dは、受信感度の異なる複数のMEMSアンテナ10,10a〜10zを設け、これらの中から到来した標準電波の信号レベルに適した受信感度のMEMSアンテナを選択的に使用して電波受信を行うようにしたものである。
【0092】
この電波受信部100Dは、受信感度の異なる複数のMEMSアンテナ10,10a〜10zと、これら複数のMEMSアンテナ10,10a〜10zのうち何れか1つと選択的に接続するスイッチ手段としてのスイッチ回路201と、スイッチ回路201を介して取り込まれた受信信号を増幅する増幅器101と、受信信号からタイムコードを検波するとともにAGC信号を出力する検波器102と、AGC信号を受けてその大きさに応じたスイッチ回路201の切り換えを行う制御ロジック200等を備えている。
【0093】
複数のMEMSアンテナ10,10a〜10zは、例えば、梁部12に形成される磁性体13の体積を異ならせることで、外部磁界に対する梁部12の変位量の度合い、すなわち、アンテナの受信感度をそれぞれ異ならせたものである。これら複数のMEMSアンテナ10,10a〜10zは同一の製造プロセスにより同一のチップ上に形成されたものである。また、これら複数のMEMSアンテナ10,10a〜10zにおいて、梁部12の固有振動数は皆同一に設定されている。
【0094】
スイッチ回路201は、例えば、MOSトランジスタやバイポーラトランジスタを組み合わせて形成したスイッチであり、複数のMEMSアンテナ10,10a〜10zの複数の出力端子t1,t1,…t1の何れか1つと、増幅器101の入力端子t2とを選択的に接続するものである。
【0095】
制御ロジック200は、例えば、AGC信号の電圧レベルが高くなってきたらMEMSアンテナの接続が一段受信感度の低いものに切り換わるように選択信号を出力し、また、AGC信号の電圧レベルが低くなってきたらMEMSアンテナの接続が一段受信感度の高いものに切り換わるように選択信号を出力するように組まれている。
【0096】
このような構成の電波受信部100Dにおいても、スイッチ回路201の接続を切り換えることにより、異なる受信感度のMEMSアンテナ10,10a〜10zの何れか1つから電波受信が行われることになる。従って、受信される標準電波の信号レベルが過大になった場合に、受信感度の低いMEMSアンテナが選択されることで、正常な電波受信を行うことができる。
【0097】
[第5実施形態]
図15は、本発明の第5実施形態の電波受信部を示す構成図である。
【0098】
第5実施形態の電波受信部100Eは、受信感度の異なる複数のMEMSアンテナ10,10a〜10zからそれぞれ出力される複数の受信信号を合成して、この合成された受信信号からタイムコードの検波を行うようにしたものである。
【0099】
この電波受信部100Eは、受信感度の異なる複数のMEMSアンテナ10,10a〜10zと、複数のMEMSアンテナ10,10a〜10zの出力を合成する合成器(合成手段)202と、合成器202を介して取り込まれた受信信号を増幅する増幅器101と、受信信号からタイムコードを検波する検波器102等から構成される。
【0100】
合成器202は、例えば、複数の入力信号の信号レベルをそのままアナログ的に加算して出力する回路である。
【0101】
この電波受信部100Eによれば、例えば、信号レベルの低い標準電波が受信された場合には、受信感度の高いMEMSアンテナ10zにおいて、梁部12の適度な振動が生起されて、適度な信号レベルの受信信号が出力される。また、受信感度の異なる他のMEMSアンテナ10,10a…では、梁部12に生起される振動が小さくなって、この梁部12の振動により信号レベルの低い受信信号が出力される。そして、これらの受信信号が合成器202で合成されることで、タイムコードによる変調成分が大きく乗った受信信号を増幅器101に送ることができる。
【0102】
一方、信号レベルの非常に高い標準電波が受信された場合には、受信感度の低いMEMSアンテナ10において、梁部12の適度な振動が生起されて、適度の信号レベルの受信信号が出力される。また、受信感度の高いMEMSアンテナ10zでは、信号レベルの非常に高い標準電波によって梁部12の振動振幅が最大振幅に達して飽和する。そのため、このMEMSアンテナ10zからはタイムコードによる変調成分が余り含まれない受信信号が出力される。また、中間の受信感度のMEMSアンテナ10a…からは、これらの中間の受信信号が出力される。従って、これらの受信信号が合成器202で合成されることで、タイムコードによる変調成分が一定以上含まれた受信信号が出力されてこれを増幅器101に送ることができる。
【0103】
従って、この第5実施形態の電波受信部100Eにおいても、受信される標準電波の信号レベルが過大になった場合でも、正常な電波受信と正常なタイムコードの検波とを行うことが可能となる。
【0104】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記第1と第3の実施形態では、可変インピーダンス手段として可変抵抗器を採用した例を示したが、梁部12の振動成分の信号を受けて振動変位量を可変にできるものであれば、抵抗器に限られるものではない。
【0105】
また、上記第1〜第5の実施形態では、梁部12の磁性体13に磁力を及ぼす磁石14やコイル磁石25を、梁部12の下方に配置した例を示したが、スペーサーを介して梁部12の上方に配置したり、側方に配置したり、種々に変更可能である。さらに、MEMSアンテナの製造プロセスとは別の工程で、MEMSアンテナが形成されたチップに対して磁石やコイル磁石を後付するようにしても良い。
【0106】
また、上記第1〜第5の実施形態では、MEMSアンテナをシリコン基板上に形成した例を示したが、シリコン基板に限られず、例えば、ガラス基板や有機材料などの上に集積化することもできる。また、振動体として両端が支持され中央部位が上下に振動する梁部12を例示したが、例えば、片持支持されたカンチレバー型の振動体を適用したり、音叉構造の振動体を適用したりしても良い。
【0107】
また、上記第1〜第5の実施形態では、梁部12の一部に磁性体13を形成した例を示したが、梁部12の全体に磁性体を薄く形成するようにしても良い。また、梁部12自体を磁性体から構成するようにしても良い。また、電波信号の磁界成分を受けて磁性体のみで変位する大きさの電波信号を受信する構成であれば、磁性体に磁力を及ぼす磁石を省略しても良い。
【0108】
また、上記第1〜第5の実施形態では、梁部12の固有振動数を受信電波の周波数帯と一致させた例を示したが、梁部12が実際に共振する場合に、本来の固有振動数から僅かに振動数がずれるような場合には、この振動数のズレを反映させた特性で梁部12を形成するようにしても良い。
【0109】
また、第4と第5の実施形態においては、梁部12上の磁性体13の体積を異ならせることで、複数のMEMSアンテナ10,10a〜10zの受信感度をそれぞれ異ならせた例を示したが、例えば、個々のMEMSアンテナ10,10a〜10zごとに永久磁石14の磁力の大きさを異ならせるようにしても良いし、また、永久磁石14の換わりにコイル磁石25を適用させ、コイル磁石25に流す電流値を個々のMEMSアンテナ10,10a〜10zごとに異ならせるようにしても良い。また、複数のMEMSアンテナ10,10a〜10zを全て同一種類のものとする必要はなく、異なる構造のMEMSアンテナを混在させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の第1実施形態の電波時計の全体を示す構成図である。
【図2】図1のMEMSアンテナ10の構成を示す斜視図である。
【図3】図1のMEMSアンテナ10の縦断面図である。
【図4】図1のMEMSアンテナの電気的な構成を示す回路図である。
【図5】MEMSアンテナと従来のコイル型アンテナとの周波数特性を表わしたグラフを示す。
【図6】MEMSアンテナの第1変形例を示す縦断面図である。
【図7】第1変形例のMEMSアンテナの電気的な接続構成を示す回路図である。
【図8】本発明の第2実施形態の電波受信部を示す構成図である。
【図9】図8のMEMSアンテナを示すもので、(a)は縦断面図、(b)は基板面の平面図である。
【図10】本発明の第3実施形態の電波受信部を示す構成図である。
【図11】図10のMEMSアンテナを示すもので(a)はその縦断面図、(b)は感度調整用コイルの基板面を示す平面図である。
【図12】感度調整用コイルの第1変形例を示す平面図である。
【図13】感度調整用コイルの第2変形例を示す斜視図である。
【図14】本発明の第4実施形態の電波受信部を示す構成図である。
【図15】本発明の第5実施形態の電波受信部を示す構成図である。
【符号の説明】
【0111】
1 電波時計
10,10a〜10z,10A,10F,10G MEMSアンテナ(アンテナ部)
11 基板
12 梁部
13 磁性体
14 永久磁石
15 スペーサー
16 電極(第1電極)
17 電極(第2電極)
20 覆い板
21 電極(第3電極)
25 コイル磁石
Cv,Cv2 可変容量
100,100B〜100E 電波受信部(受信装置)
101 増幅器
102 検波器(復調器)
103 マイクロコンピュータ
104 時刻表示器
105 計時カウンタ
107 可変抵抗器(可変インピーダンス手段)
108 VI変換器(可変電流手段)
25F,25D,25G 感度調整用コイル
109 可変抵抗器(可変インピーダンス手段)
200 制御ロジック
201 スイッチ回路
202 合成器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の固有振動数で振動する特性を有するとともに外部磁界を受けて変位する振動体、および、該振動体の運動を電気信号に変換する変換手段を備え、前記振動体を共振させる周波数帯の電波信号が到来したときに、当該電波信号の磁界成分によって前記振動体が共振し、この共振が前記変換手段により電気信号に変換されることで、当該周波数帯の電波信号が電気信号にされて取り込まれるアンテナ部を有したアンテナ装置であって、
前記振動体の外部磁界に対する変位の度合いを変化させる感度可変手段と、
取り込まれた前記電気信号に応じて前記感度可変手段による前記変位の度合いの変化量を調整する感度制御手段と、
を備えていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記感度可変手段は、
前記変換手段の出力に対して可変的なインピーダンスを付加する可変インピーダンス手段からなることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記振動体に磁力を及ぼすコイル磁石を備え、
前記感度可変手段は、前記コイル磁石に流れる電流量を変化させる可変電流手段からなることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記感度可変手段は、
前記振動体の周囲に配置されたコイルと、
前記コイルに流れる電流に対して可変的なインピーダンスを付加する可変インピーダンス手段と、
から構成されることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項5】
所定の固有振動数で振動する特性を有するとともに外部磁界を受けて変位する振動体、および、該振動体の運動を電気信号に変換する変換手段を備え、前記振動体を共振させる周波数帯の電波信号が到来したときに、当該電波信号の磁界成分によって前記振動体が共振し、この共振が前記変換手段により電気信号に変換されることで、当該周波数帯の電波信号が電気信号にされて取り込まれるアンテナ部を有するアンテナ装置であって、
前記アンテナ部が、前記振動体の外部磁界による変位の度合いを異ならせて、複数設けられ、
さらに前記複数のアンテナ部の出力を合成して出力する合成手段を備えていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
所定の固有振動数で振動する特性を有するとともに外部磁界を受けて変位する振動体、および、該振動体の運動を電気信号に変換する変換手段を備え、前記振動体を共振させる周波数帯の電波信号が到来したときに、当該電波信号の磁界成分によって前記振動体が共振し、この共振が前記変換手段により電気信号に変換されることで、当該周波数帯の電波信号が電気信号にされて取り込まれるアンテナ部を有するアンテナ装置であって、
前記アンテナ部が、前記振動体の外部磁界による変位の度合いを異ならせて、複数設けられ、
前記複数のアンテナ部のうち何れかのアンテナ部からの電気信号を選択的に後段に送るスイッチ手段を備えていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項7】
少なくとも前記アンテナ部が1チップの基板上に形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載のアンテナ装置と、
前記アンテナ装置から送られてくる電気信号を増幅する増幅器と、
前記増幅器により増幅された信号に対して復調処理を行う復調器と、
を備えたことを特徴とする受信装置。
【請求項9】
請求項8に記載の受信装置により標準電波を受信するとともに、該標準電波に含まれるタイムコードを復調し、このタイムコードに基づいて時刻修正を行うことを特徴とする電波時計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2010−141492(P2010−141492A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314413(P2008−314413)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】