説明

アンテナ装置およびそれを備えた無線装置

【課題】小型で、かつ、狭いICT機器内部のマルチパス環境においても三重偏波のいずれの偏波も送受信可能なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置10は、地板1と、給電線路2と、導体線路3,4とを備える。給電線路2は、z軸に沿って地板1に略垂直に配置される。導体線路3は、略L字形状を有し、導体線路31,32からなる。導体線路31は、z軸に沿って地板1に略垂直に配置される。導体線路32は、x軸に沿って地板1に略平行に配置され、導体線路4と直交する。導体線路4は、略L字形状を有し、導体線路41,42からなる。導体線路41は、z軸に沿って地板1に略垂直に配置される。導体線路42は、x軸に沿って地板1に略平行に配置され、導体線路3と直交する。導体線路3,4の各々は、電波の波長の略4分の1に等しい長さを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アンテナ装置およびそれを備えた無線装置に関し、特に、マルチパスフェージング環境に適したアンテナ装置およびそれを備えた無線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、プリンタおよび券売機等のICT(Information and Communication Technology)機器では、プリンタ用紙や紙幣の有無をセンサーによって読み取り、その読み取った情報を制御部へ有線で伝送することが行なわれている。
【0003】
数十個〜数百個という非常に多くのセンサーが配置されたICT機器では、制御線の線噛みトラブルなどが多発し、製造工程や保守などにおいて時間と労力がかかるという問題がある。
【0004】
そこで、そのようなワイヤハーネスを全て無線化すれば、上記の問題が発生しない。この場合、各センサーと制御部との情報のやり取りは、無線通信によって行なわれる。
【0005】
機器内の無線通信において、回線が成立するか否かは、各センサーと制御部との間の電波の伝搬環境に大きく依存する。
【0006】
ICT機器内は、電波の障害物となる様々な成形品(プラスチック製および金属製等)で構成されている。また、ICT機器筐体の外部は、金属などで囲まれた非常に込み入った狭い空間である。
【0007】
無線LAN(Local Area Network)や携帯電話等の従来の無線通信環境は、屋内や屋外などであり、空間的にも広い環境であることから、ICT機器内は、特殊な通信環境である。
【0008】
この特殊環境においては、時間的に受信電力レベルが変動する環境ではないが、周波数によって受信電力レベルが異なり、受信電力レベルが大きく低下する深い落ち込み(ディップ)が生じる周波数が多数存在する。
【0009】
また、この特殊環境においては、制御部からセンサーまでのICT機器内の伝搬損失の累積確率分布は、概ね、レイリー分布に従っており、この特殊環境は、制御部からの直接波がセンサーで受信されず、多重反射波が支配的なマルチパスリッチ環境である。
【0010】
電波環境は、センサーの位置によって異なるため、深いディップが発生する周波数では、受信感度が閾値を下回ると、回線が成立しない。それを回避して無線通信の信頼性を向上させるには、適応チャネル制御やダイバーシチ等による対策が必要である。
【0011】
従来の有線で確保されてきた信頼性と同等の性能を無線通信でも得るには、上記の技術の組合せのみならず、更に別の対策を施さなければ、十分な信頼性を得ることはできない。
【0012】
その対策の1つとして、各センサー位置でのアンテナの受信レベルを向上させる技術がある。センサー側でダイバーシチやアダプティブアレーアンテナ技術を用いれば、受信レベルの向上が期待できる。しかし、狭いICT機器内では、センサーの配置スペースは、非常に小さく、複数のアンテナを設置できない。また、全てのセンサーでアダプティブ制御を実行すると、消費電力が増大し、現在のICT機器の省エネルギー化の潮流に反する。従って、低消費電力でディップを保障して所要の受信感度レベルを確保することが重要である。
【0013】
近年、マルチパスフェージングの対策として、多重反射波を1つ(多くとも2つ)の偏波を持つアンテナで受信するのではなく、3つの偏波で受信するアンテナが提案されている(特許文献1)。
【0014】
このアンテナの基本構成は、3つのダイポールアンテナの各々に受信部を備え、3つのダイポールアンテナが自由空間の3方向に直交するように配置するものである。そして、従来のアンテナでは、単一偏波あるいは直交2偏波で送受信を行なうのに対し、このアンテナは、第3の偏波方向のアンテナを新たに設置して問題を解決している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2001−237757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、制御部が単一あるいは複数のアンテナを備えているか、あるいは1つまたは2つの偏波を持つアンテナを備えているかに関係なく、ICT機器内の制御部からセンサーまでの伝搬環境は、マルチパスフェージングが発生し、センサーでの受信電力レベルは大きく低下するという問題がある。
【0017】
また、3つの偏波方向においてエネルギー成分を持つ受信信号を3つのダイポールアンテナを用いて受信することによってマルチパスフェージングによる特性劣化を改善できるが、アンテナが大型であるため、ICT機器内部の狭小空間には設置できないという問題がある。
【0018】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、小型で、かつ、狭いICT機器内部のマルチパス環境においても三重偏波のいずれの偏波も送受信可能なアンテナ装置を提供することである。
【0019】
また、この発明の別の目的は、小型で、かつ、狭いICT機器内部のマルチパス環境においても三重偏波のいずれの偏波も送受信可能なアンテナ装置を備えた無線装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この発明によれば、アンテナ装置は、ギガヘルツ帯の周波数を有する電波を送受信するアンテナ装置であって、地板と、給電線路と、第1および第2の導体線路とを備える。給電線路は、地板に略垂直に配置される。第1の導体線路は、一方端が給電線路の一方端に接続され、地板に略平行に配置される。第2の導体線路は、一方端が給電線路の一方端に接続され、地板に略平行に配置されるとともに第1の導体線路に略直交する。そして、第1および第2の導体線路の各々は、送受信される電波の波長の略4分の1に等しい長さを有する。
【0021】
また、この発明によれば、アンテナ装置は、ギガヘルツ帯の周波数を有する電波を送受信するアンテナ装置であって、地板と、給電線路と、第1から第4の導体線路とを備える。給電回路は、地板に略垂直に配置される。第1の導体線路は、一方端が給電線路の一方端に接続され、地板に略平行に配置される。第2の導体線路は、一方端が給電線路の一方端に接続され、地板に略平行に配置されるとともに第1の導体線路に略直交する。第3の導体線路は、地板に略平行に配置されるとともに、一方端が給電線路の一方端に接続され、第1および第2の導体線路から遠ざかる方向へ延伸している。第4の導体線路は、一方端が地板に略垂直に接続され、他方端が第3の導体線路の他方端に接続される。そして、地板に平行な平面内において第3の導体線路が第1の導体線路となす角度は、90度よりも大きく、かつ、180度以下である。また、第1の導体線路の長さと第3の導体線路の長さと第4の導体線路の長さとの第1の合計は、送受信される電波の波長の略4分の1に等しい。更に、第2の導体線路の長さと第3の導体線路の長さと第4の導体線路の長さとの第2の合計は、送受信される電波の波長の略4分の1に等しい。更に、第3の導体線路の長さは、第1の合計の10分の1から2分の1の範囲である。
【0022】
更に、この発明によれば、アンテナ装置は、ギガヘルツ帯の周波数を有する電波を送受信するアンテナ装置であって、地板と、給電線路と、第1および第2の導体線路とを備える。給電線路は、地板に略垂直に配置される。第1の導体線路は、略L字形状からなり、地板に略垂直に配置された第1の部分と地板に略平行に配置された第2の部分とを有する。第2の導体線路は、略L字形状からなり、地板に略垂直に配置された第3の部分と地板に略平行に配置された第4の部分とを有する。第2の部分は、第4の部分と略直交する。給電線路は、地板と反対側の一方端が第2の部分と第4の部分との直交部に接続される。第1および第2の導体線路の各々は、送受信される電波の波長の略4分の1に等しい長さを有する。第2の部分のうち、第1の部分から直交部までの第5の部分の長さは、第2の部分の長さの10分の1から2分の1の範囲である。第4の部分のうち、第3の部分から直交部までの第6の部分の長さは、第4の部分の長さの10分の1から2分の1の範囲である。
【0023】
更に、この発明によれば、無線装置は、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のアンテナ装置を備える。
【発明の効果】
【0024】
この発明の実施の形態によるアンテナ装置は、ギガヘルツ帯の周波数を有する電波を送受信する。そして、給電線路は、z軸方向の偏波成分を送受信し、第1および第2の導体線路は、x軸方向の偏波成分およびy軸方向の偏波成分を送受信する。また、第1および第2の導体線路の各々は、送受信される電波の波長の略4分の1に等しい長さを有する。
【0025】
従って、アンテナ装置の小型化を実現でき、三重偏波のいずれの偏波成分も送受信できる。
【0026】
また、この発明の実施の形態によるアンテナ装置は、ギガヘルツ帯の周波数を有する電波を送受信する。そして、第1および第2の導体線路は、x軸方向の偏波成分およびy軸方向の偏波成分を送受信し、給電線路および第4の導体線路は、z軸方向の偏波成分を送受信する。また、第1の導体線路の長さと第3の導体線路の長さと第4の導体線路の長さとの第1の合計は、送受信される電波の波長の略4分の1に等しく、第2の導体線路の長さと第3の導体線路の長さと第4の導体線路の長さとの第2の合計は、送受信される電波の波長の略4分の1に等しい。
【0027】
従って、アンテナ装置の小型化を実現でき、三重偏波のいずれの偏波成分も送受信できる。
【0028】
更に、この発明の実施の形態によるアンテナ装置は、ギガヘルツ帯の周波数を有する電波を送受信する。そして、第1の導体線路の第2の部分および第2の導体線路の第4の部分は、x軸方向の偏波成分およびy軸方向の偏波成分を送受信し、第1の導体線路の第1の部分、第2の導体線路の第3の部分および給電線路は、z軸方向の偏波成分を送受信する。また、第1および第2の導体線路の各々は、送受信される電波の波長の略4分の1に等しい長さを有する。
【0029】
従って、アンテナ装置の小型化を実現でき、三重偏波のいずれの偏波成分も送受信できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施の形態1によるアンテナ装置の概略図である。
【図2】図1に示すアンテナ装置の反射特性の周波数依存性を示す図である。
【図3】図1に示すアンテナ装置のx−z平面における放射特性を示す図である。
【図4】図1に示すアンテナ装置のy−z平面における放射特性を示す図である。
【図5】図1に示すアンテナ装置のx−y平面における放射特性を示す図である。
【図6】図1に示すアンテナ装置を流れる電流経路の概略図である。
【図7】図1に示す導体線路32,42の長さを20.7mmに固定し、距離d,dを変化させたときの反射特性の周波数依存性を示す図である。
【図8】実施の形態1による他のアンテナ装置の概略図である。
【図9】実施の形態2によるアンテナ装置の概略図である。
【図10】実施の形態2による他のアンテナ装置の概略図である。
【図11】実施の形態3によるアンテナ装置の概略図である。
【図12】z軸の正の方向から見たアンテナ装置の平面図である。
【図13】実施の形態3による他のアンテナ装置の概略図である。
【図14】この発明の実施の形態によるアンテナ装置を備えた無線装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0032】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1によるアンテナ装置の概略図である。図1を参照して、この発明の実施の形態1によるアンテナ装置10は、地板1と、給電線路2と、導体線路3,4とを備える。そして、アンテナ装置10は、例えば、2.45GHzの周波数を有する電波を送受信する。
【0033】
地板1は、略四角形の平板形状を有し、金属からなる。そして、地板1は、例えば、x−y平面に沿って配置される。
【0034】
給電線路2は、導体線路21と、給電回路22とからなる。導体線路21は、例えば、z軸に沿って、地板1に略垂直に配置される。また、導体線路21は、その一方端が給電回路22に接続され、他方端が導体線路3,4の交差部に接続される。そして、導体線路21は、例えば、1.5mmφの直径、および9.6mmの長さhを有する。給電回路22は、導体線路21の一方端と接地電位GNDとの間に接続される。
【0035】
導体線路3は、略L字形状を有する。そして、導体線路3は、例えば、1.5mmφの直径、および30.3mmの長さLを有する。この30.3mmの長さは、アンテナ装置10が送受信する電波の波長λの略4分の1に相当する。
【0036】
導体線路3は、導体線路31,32からなる。導体線路31は、給電線路2から距離dの位置でz軸に沿って地板1に略垂直に配置され、長さhを有する。距離dは、例えば、3.0mmである。
【0037】
導体線路32は、x軸に沿って地板1に略平行に配置される。また、導体線路32は、その一方端が導体線路31の一方端に接続され、導体線路31から距離dの位置で給電線路2の他方端に接続されるとともに導体線路4と直交する。そして、導体線路32は、l+d=17.7mm+3.0mm=20.7mmの長さを有する。
【0038】
導体線路4は、略L字形状を有する。そして、導体線路4は、例えば、1.5mmφの直径、および30.3mmの長さLを有する。このように、導体線路4は、導体線路3と同じ長さを有し、波長λの略4分の1に相当する長さを有する。
【0039】
導体線路4は、導体線路41,42からなる。導体線路41は、給電線路2から距離dの位置でz軸に沿って地板1に略垂直に配置され、長さhを有する。距離dは、例えば、3.0mmである。
【0040】
導体線路42は、y軸に沿って地板1に略平行に配置される。また、導体線路42は、その一方端が導体線路41の一方端に接続され、導体線路41から距離dの位置で給電線路2の他方端に接続されるとともに導体線路32と直交する。そして、導体線路42は、l+d=17.7mm+3.0mm=20.7mmの長さを有する。
【0041】
導体線路31は、整合用のショートピンとして機能する。即ち、導体線路31は、導体線路3で電波を送受信するときのインピーダンスを50Ωに設定する。また、導体線路41も、整合用のショートピンとして機能し、導体線路4で電波を送受信するときのインピーダンスを50Ωに設定する。
【0042】
図2は、図1に示すアンテナ装置10の反射特性の周波数依存性を示す図である。図2において、縦軸は、反射係数S11を表し、横軸は、周波数を表す。
【0043】
図2を参照して、反射係数S11は、2.45GHzの周波数で最小となっている。従って、アンテナ装置10は、2.45GHzの周波数で共振し、2.45GHzの周波数を有する電波を送受信できる。
【0044】
図3は、図1に示すアンテナ装置10のx−z平面における放射特性を示す図である。図3において、曲線k1は、x方向の偏波の放射パターンを示し、曲線k2は、y方向の偏波の放射パターンを示し、曲線k3は、z方向の偏波の放射パターンを示す。また、図3においては、地板1は、無限大のサイズを仮定しているため、+z軸方向のみの放射パターンが図示されている。
【0045】
また、図4は、図1に示すアンテナ装置10のy−z平面における放射特性を示す図である。図4において、曲線k4は、y方向の偏波の放射パターンを示し、曲線k5は、x方向の偏波の放射パターンを示し、曲線k6は、z方向の偏波の放射パターンを示す。また、図4においても、地板1は、無限大のサイズを仮定しているため、+z軸方向のみの放射パターンが図示されている。
【0046】
更に、図5は、図1に示すアンテナ装置10のx−y平面における放射特性を示す図である。図5において、曲線k7は、z方向の偏波の放射パターンを示す。また、図5においては、x方向の偏波およびy方向の偏波は、存在しないため、x方向の偏波の放射パターンおよびy方向の偏波の放射パターンは、図示されていない。
【0047】
x軸方向の偏波の放射パターンは、x軸方向にダイポールアンテナを配置したときに比べてビーム幅が広がっており、双峰性の放射パターンとなっているが(図3の曲線k1参照)、x軸方向およびy軸方向には、放射していないので、反射板付きx軸方向ダイポールアンテナと同様の放射パターンである。
【0048】
一方、y軸方向の偏波の放射パターンも、x軸方向の偏波の放射パターンとx−z面とy−z面の放射パターンとが逆になっているだけなので(曲線k1,k2,k4,k5参照)、反射板付きy軸方向ダイポールアンテナと同様の放射パターンである。
【0049】
z軸方向の偏波の放射パターンは、z軸方向には放射がなく、水平面内で無指向性に近いパターンであるため、z軸方向に沿って配置されたモノポールアンテナと同じ放射パターンを有する(曲線k7参照)。
【0050】
図6は、図1に示すアンテナ装置10を流れる電流経路の概略図である。図6を参照して、給電線路2および導体線路3,4上をx方向、y方向およびz方向に流れる電流i,i,iは、次式によって表される。
【0051】
=i(x)e・・・(1)
=i(y)e・・・(2)
=i(z)e・・・(3)
ここで、e,e,eは、それぞれ、x方向、y方向およびz方向の単位ベクトルである。また、i(x),i(y),i(z)は、それぞれ、x方向、y方向およびz方向の電流の複素振幅である。
【0052】
x軸方向の偏波の放射パターンは、導体線路3,4上をx軸方向に流れる電流iによって生じている。また、y軸方向の偏波の放射パターンは、導体線路3,4をy方向に流れる電流iによって生じている。更に、z軸方向の偏波の放射パターンは、給電線路2および導体線路3,4をz方向に流れる電流iによって生じている。
【0053】
図3〜図5に示す放射パターンの結果と、図6に示す電流経路の説明とから解るように、アンテナ装置10は、x軸、y軸およびz軸に個別にダイポールアンテナを配置したときに得られる放射パターンと概ね同じ放射パターンを単一のアンテナで実現した三重偏波アンテナである。
【0054】
単一偏波のアンテナは、式(1)〜式(3)のうちのいずれかの電流成分しか持たないため、それに直交する偏波を受信できない。
【0055】
一方、アンテナ装置10は、i,i,iの3成分を持つので、いずれかの偏波で必ず信号を受信できる。
【0056】
図7は、図1に示す導体線路32,42の長さを20.7mmに固定し、距離d,dを変化させたときの反射特性の周波数依存性を示す図である。図7において、縦軸は、反射係数S11を表し、横軸は、周波数を表す。なお、図7は、距離d,dを同じ値に設定して距離d,dを変化させたときの反射特性の周波数依存性を示す。
【0057】
図7を参照して、反射係数S11は、距離d,dが2mm,3mm,4mm,5mm,6mm,7mm,8mm,9mm,10mmであるとき、−10dBよりも低くなる。即ち、導体線路32,42の長さをL(=d+l=d+l)としたとき、反射係数S11は、距離d,dが、概ね、0.1L〜0.5Lの範囲であるとき、−10dBよりも低くなる。
【0058】
従って、給電線路2と導体線路31,41との距離d=dは、0.1L〜0.5Lの範囲に設定される。そして、アンテナ装置10は、給電線路2と導体線路31,41との距離d=dを0.1L〜0.5Lの範囲に設定することによって2.45GHzの周波数を有する電波を低反射で送受信できる。
【0059】
なお、上記においては、距離d,dは、同じ値に設定されると説明したが、実施の形態1においては、これに限らず、距離d,dは、0.1L〜0.5Lの範囲内で相互に異なる値に設定されてもよい。
【0060】
図8は、実施の形態1による他のアンテナ装置の概略図である。なお、図8においては、地板1の一部が省略されている。実施の形態1によるアンテナ装置は、図8に示すアンテナ装置10Aであってもよい。
【0061】
図8を参照して、アンテナ装置10Aは、図1に示すアンテナ装置10の給電線路2を給電線路12に代え、導体線路3,4をそれぞれ導体線路13,14に代え、誘電体5〜8を追加したものであり、その他は、アンテナ装置10と同じである。そして、アンテナ装置10Aは、例えば、2.45GHzの周波数を有する電波を送受信する。
【0062】
給電線路12は、導体線路121と、給電回路122とからなる。導体線路121は、例えば、z軸に沿って、地板1に略垂直に配置される。また、導体線路121は、その一方端が給電回路122に接続され、他方端が導体線路13,14の交差部に接続される。そして、導体線路121は、誘電体5〜8の実効比誘電率をε=((ε+1)/2)1/2(εは、誘電体5〜8の比誘電率)としたとき、例えば、1.5mmφの直径、および9.6/ε(mm)の長さh’(=h/ε)を有する。給電回路122は、導体線路121の一方端と接地電位GNDとの間に接続される。
【0063】
導体線路13は、略L字形状を有する。そして、導体線路13は、例えば、1.5mmφの直径、および30.3/ε(mm)の長さL’(=λ/εの略4分の1)を有する。
【0064】
導体線路13は、導体線路131,132からなる。導体線路131は、給電線路2から距離d/εの位置でz軸に沿って地板1に略垂直に配置され、長さh’を有する。
【0065】
導体線路132は、x軸に沿って地板1に略平行に配置される。また、導体線路132は、その一方端が導体線路131の一方端に接続され、導体線路131から距離d/εの位置で給電線路12の他方端に接続されるとともに導体線路14と直交する。そして、導体線路132は、20.7/ε(mm)の長さを有する。
【0066】
導体線路14は、略L字形状を有する。そして、導体線路14は、例えば、1.5mmφの直径、および30.3/ε(mm)の長さL’(=λ/εの略4分の1)を有する。このように、導体線路14は、導体線路13と同じ長さを有する。
【0067】
導体線路14は、導体線路141,142からなる。導体線路141は、給電線路12から距離d/εの位置でz軸に沿って地板1に略垂直に配置され、長さh’を有する。
【0068】
導体線路142は、y軸に沿って地板1に略平行に配置される。また、導体線路142は、その一方端が導体線路141の一方端に接続され、導体線路141から距離d/εの位置で給電線路12の他方端に接続されるとともに導体線路132と直交する。そして、導体線路142は、20.7/ε(mm)の長さを有する。
【0069】
導体線路131および導体線路141は、整合用のショートピンとして機能する。即ち、導体線路131は、導体線路13で電波を送受信するときのインピーダンスを50Ωに設定する。また、導体線路141は、導体線路14で電波を送受信するときのインピーダンスを50Ωに設定する。
【0070】
誘電体5〜8の各々は、例えば、比誘電率εが2〜4であるテフロン(登録商標)からなる。誘電体5は、給電線路12の長さh’と同じ長さ、距離d/εと同じ幅、および1.5mmの厚みを有する。そして、誘電体5は、地板1、給電線路12、および導体線路131,132によって囲まれる領域に地板1、給電線路12、および導体線路131,132に接して配置される。
【0071】
誘電体6は、給電線路12の長さh’と同じ長さ、長さl/εと同じ幅、および1.5mmの厚みを有する。そして、誘電体6は、地板1、給電線路12、および導体線路132によって囲まれる領域に地板1、給電線路12、および導体線路132に接して配置される。
【0072】
誘電体7は、給電線路12の長さh’と同じ長さ、距離d/εと同じ幅、および1.5mmの厚みを有する。そして、誘電体7は、地板1、給電線路12、および導体線路141,142によって囲まれる領域に地板1、給電線路12、および導体線路141,142に接して配置される。
【0073】
誘電体8は、給電線路12の長さh’と同じ長さ、長さl/εと同じ幅、および1.5mmの厚みを有する。そして、誘電体8は、地板1、給電線路12、および導体線路142によって囲まれる領域に地板1、給電線路12、および導体線路142に接して配置される。
【0074】
このように、アンテナ装置10Aは、アンテナ装置10の給電線路2および導体線路3,4の配置形状と相似な配置形状を有し、給電線路2および導体線路3,4の寸法を1/ε倍にしたものである。
【0075】
誘電体5〜8を設けることによって、アンテナ装置10Aが送受信する電波の波長は、λ/εになるので、アンテナ装置10Aは、アンテナ装置10のサイズを1/ε倍にしたサイズを有する。
【0076】
そして、導体線路132,142の長さをL’(=L/ε)としたとき、給電線路12は、導体線路131,141からの距離が0.1L’〜0.5L’の範囲内になるように配置される。
【0077】
アンテナ装置10Aは、図3から図5に示す放射パターンと同じ放射パターンを有する。
【0078】
このように、誘電体5〜8を設けることによってアンテナ装置10Aのサイズを小さくできる。
【0079】
なお、誘電体5〜8の比誘電率εは、2〜4に限らず、一般的には、2〜10の範囲であればよい。
【0080】
また、アンテナ装置10Aにおいては、距離d/ε,d/εは、相互に同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。
【0081】
更に、アンテナ装置10Aにおいては、給電線路12および導体線路13,14の全体を覆うように直方体形状の誘電体を地板1上に設けてもよい。
【0082】
実施の形態1によれば、アンテナ装置10は、x軸方向に配置された導体線路32と、y軸方向に配置された導体線路42と、z軸方向に配置された導体線路31,41と、z軸方向に配置された給電線路2とを備え、導体線路3,4の長さが電波の波長λの略4分の1に相当する。その結果、導体線路21,31,41は、z軸方向の偏波成分を送受信し、導体線路32,42は、x方向の偏波成分およびy方向の偏波成分を送受信する。
【0083】
また、実施の形態1によれば、アンテナ装置10Aは、x軸方向に配置された導体線路132と、y軸方向に配置された導体線路142と、z軸方向に配置された導体線路131,141と、z軸方向に配置された給電線路12と、誘電体5〜8とを備え、導体線路13,14の長さがλ/εの略4分の1に相当する。その結果、導体線路121,131,141は、z軸方向の偏波成分を送受信し、導体線路132,142は、x方向の偏波成分およびy方向の偏波成分を送受信する。
【0084】
従って、実施の形態1によれば、アンテナ装置の小型化を実現でき、マルチパス環境において三重偏波のいずれの偏波も送受信できる。
【0085】
なお、実施の形態1においては、導体線路3は、「第1の導体線路」を構成し、導体線路4は、「第2の導体線路」を構成する。
【0086】
また、実施の形態1においては、導体線路31は、第1の導体線路の「第1の部分」を構成し、導体線路32は、第1の導体線路の「第2の部分」を構成する。
【0087】
更に、実施の形態1においては、導体線路41は、第2の導体線路の「第3の部分」を構成し、導体線路42は、第2の導体線路の「第4の部分」を構成する。
【0088】
更に、実施の形態1においては、導体線路32のうち、給電線路2と導体線路31との間に配置された部分は、「第5の部分」を構成し、導体線路42のうち、給電線路2と導体線路41との間に配置された部分は、「第6の部分」を構成する。
【0089】
更に、実施の形態1においては、導体線路13は、「第1の導体線路」を構成し、導体線路14は、「第2の導体線路」を構成する。
【0090】
更に、実施の形態1においては、導体線路131は、第1の導体線路の「第1の部分」を構成し、導体線路132は、第1の導体線路の「第2の部分」を構成する。
【0091】
更に、実施の形態1においては、導体線路141は、第2の導体線路の「第3の部分」を構成し、導体線路142は、第2の導体線路の「第4の部分」を構成する。
【0092】
更に、実施の形態1においては、導体線路132のうち、給電線路12と導体線路131との間に配置された部分は、「第5の部分」を構成し、導体線路142のうち、給電線路12と導体線路141との間に配置された部分は、「第6の部分」を構成する。
【0093】
更に、実施の形態1においては、誘電体5および誘電体6は、「第1の誘電体」を構成し、誘電体7および誘電体8は、「第2の誘電体」を構成する。
【0094】
[実施の形態2]
図9は、実施の形態2によるアンテナ装置の概略図である。図9を参照して、実施の形態2によるアンテナ装置100は、地板1と、給電線路20と、導体線路30,40とを備える。そして、アンテナ装置100は、例えば、2.45GHzの周波数を有する電波を送受信する。
【0095】
地板1については、実施の形態1において説明したとおりである。給電線路20は、導体線路201と、給電回路202とからなる。導体線路201は、例えば、1.5mmφの直径、および長さhを有する。導体線路201は、z軸に沿って地板1に略垂直に配置される。また、導体線路201は、その一方端が給電回路202に接続され、他方端が導体線路30,40の交差部に接続される。
【0096】
給電回路202は、導体線路201と接地電位GNDとの間に接続される。
【0097】
導体線路30は、x軸に沿って地板1に略平行に配置される。また、導体線路30は、その一方端が導体線路201の他方端および導体線路40の一方端に接続されるとともに、導体線路40と直交する。そして、導体線路30は、例えば、1.5mmφの直径およびlの長さを有する。
【0098】
導体線路40は、y軸に沿って地板1に略平行に配置される。また、導体線路40は、その一方端が導体線路201の他方端および導体線路30の一方端に接続されるとともに、導体線路30と直交する。そして、導体線路40は、例えば、1.5mmφの直径およびlの長さを有する。
【0099】
このように、アンテナ装置100は、図1に示すアンテナ装置10の整合用のショートピンである導体線路31,32を削除した構造からなる。
【0100】
アンテナ装置100においては、x方向の電流iは、導体線路30をx軸の正の方向へ流れ、y方向の電流iは、導体線路40をy軸の負の方向へ流れ、z方向の電流iは、導体線路201をz軸の正の方向へ流れる。
【0101】
その結果、導体線路30,40は、x軸方向の偏波成分とy軸方向の偏波成分とを送受信し、導体線路201は、z軸方向の偏波成分を送受信する。そして、アンテナ装置100は、図3から図5に示す放射パターンと同じ放射パターンを有する。
【0102】
従って、アンテナ装置100は、マルチパス環境において三重偏波のいずれの偏波も送受信できる。
【0103】
図10は、実施の形態2による他のアンテナ装置の概略図である。実施の形態2によるアンテナ装置は、図10に示すアンテナ装置100Aであってもよい。
【0104】
図10を参照して、アンテナ装置100Aは、図9に示すアンテナ装置100の給電線路20を給電線路120に代え、導体線路30,40を導体線路130,140に代え、誘電体60,70を追加したものであり、その他は、アンテナ装置100と同じである。そして、アンテナ装置100Aは、例えば、2.45GHzの周波数を有する電波を送受信する。
【0105】
給電線路120は、導体線路1201と、給電回路1202とからなる。導体線路1201は、例えば、z軸に沿って地板1に略垂直に配置される。また、導体線路1201は、その一方端が給電回路1202に接続され、他方端が導体線路130,140の交差部に接続される。そして、導体線路1201は、例えば、1.5mmφの直径、およびh/ε(mm)の長さを有する。なお、εは、誘電体60,70の実効比誘電率ε=((ε+1)/2)1/2(εは、誘電体60,70の比誘電率)である。給電回路1202は、導体線路1201の一方端と接地電位GNDとの間に接続される。
【0106】
導体線路130は、x軸に沿って地板1に略平行に配置される。また、導体線路130は、その一方端が導体線路1201の他方端および導体線路140の一方端に接続されるとともに、導体線路140と直交する。そして、導体線路130は、例えば、1.5mmφの直径およびl/εの長さを有する。
【0107】
導体線路140は、y軸に沿って地板1に略平行に配置される。また、導体線路140は、その一方端が導体線路1201の他方端および導体線路130の一方端に接続されるとともに、導体線路130と直交する。そして、導体線路140は、例えば、1.5mmφの直径およびl/εの長さを有する。
【0108】
誘電体60,70の各々は、例えば、比誘電率εが2〜4であるテフロン(登録商標)からなる。誘電体60は、長さh/ε、長さl/εと同じ幅、および1.5mmの厚みを有する。そして、誘電体60は、地板1および導体線路130,1201によって囲まれた領域に地板1および導体線路130,1201に接して配置される。
【0109】
誘電体70は、長さh/ε、長さl/εと同じ幅、および1.5mmの厚みを有する。そして、誘電体70は、地板1および導体線路140,1201によって囲まれた領域に地板1および導体線路140,1201に接して配置される。
【0110】
このように、アンテナ装置100Aは、アンテナ装置100の給電線路20および導体線路30,40の配置形状と相似な配置形状を有し、給電線路20および導体線路30,40の寸法を1/ε倍にしたものである。
【0111】
誘電体60,70を設けることによって、アンテナ装置100Aが送受信する電波の波長は、λ/εになるので、アンテナ装置100Aは、アンテナ装置100のサイズを1/ε倍にしたサイズを有する。
【0112】
そして、アンテナ装置100Aは、図3から図5に示す放射パターンと同じ放射パターンを有する。
【0113】
このように、誘電体60,70を設けることによってアンテナ装置100Aのサイズを小さくできる。
【0114】
なお、誘電体60,70の比誘電率εは、2〜4に限らず、一般的には、2〜10の範囲であればよい。
【0115】
また、アンテナ装置100Aにおいては、給電線路120および導体線路130,140の全体を覆うように直方体形状の誘電体を地板1上に設けてもよい。
【0116】
実施の形態2によれば、アンテナ装置100は、x軸方向に配置された導体線路30と、y軸方向に配置された導体線路40と、z軸方向に配置された給電線路20とを備え、導体線路30,40の長さが電波の波長λの略4分の1よりも短い。その結果、導体線路201は、z軸方向の偏波成分を送受信し、導体線路30,40は、x方向の偏波成分およびy方向の偏波成分を送受信する。
【0117】
また、実施の形態2によれば、アンテナ装置100Aは、x軸方向に配置された導体線路130と、y軸方向に配置された導体線路140と、z軸方向に配置された給電線路120と、誘電体60,70とを備え、導体線路130,140の長さがλ/εの略4分の1よりも短い。その結果、導体線路1201は、z軸方向の偏波成分を送受信し、導体線路130,140は、x方向の偏波成分およびy方向の偏波成分を送受信する。
【0118】
従って、実施の形態2によれば、アンテナ装置の小型化を実現でき、マルチパス環境において三重偏波のいずれの偏波も送受信できる。
【0119】
なお、実施の形態2においては、導体線路30は、「第1の導体線路」を構成し、導体線路40は、「第2の導体線路」を構成する。
【0120】
また、実施の形態2においては、導体線路130は、「第1の導体線路」を構成し、導体線路140は、「第2の導体線路」を構成する。
【0121】
更に、実施の形態2においては、誘電体60は、「第1の誘電体」を構成し、誘電体70は、「第2の誘電体」を構成する。
【0122】
[実施の形態3]
図11は、実施の形態3によるアンテナ装置の概略図である。図11を参照して、実施の形態3によるアンテナ装置200は、地板1と、給電線路210と、導体線路220,230,240,250とを備える。そして、アンテナ装置200は、例えば、2.45GHzの周波数を有する電波を送受信する。
【0123】
地板1については、実施の形態1において説明したとおりである。給電線路210は、導体線路2101と、給電回路2102とからなる。導体線路2101は、例えば、1.5mmφの直径、および長さhを有する。導体線路2101は、z軸に沿って地板1に略垂直に配置される。また、導体線路2101は、その一方端が給電回路2102に接続され、他方端が導体線路240,250の交差部に接続される。
【0124】
給電回路2102は、導体線路2101と接地電位GNDとの間に接続される。
【0125】
導体線路220は、z軸に沿って地板1に略垂直に配置される。そして、導体線路220は、例えば、1.5mmφの直径および長さhを有する。
【0126】
導体線路230は、x−y平面に沿って地板1に略平行に配置される。また、導体線路230は、一方端が導体線路220の一方端に接続され、他方端が導体線路240,250の交差部に接続される。そして、導体線路230は、例えば、1.5mmφの直径および長さd(=d=d)を有する。
【0127】
導体線路240は、x軸に沿って地板1に略平行に配置される。また、導体線路240は、その一方端が導体線路230の他方端および導体線路250の一方端に接続されるとともに、導体線路250と直交する。そして、導体線路240は、例えば、1.5mmφの直径およびlの長さを有する。
【0128】
導体線路250は、y軸に沿って地板1に略平行に配置される。また、導体線路250は、その一方端が導体線路230の他方端および導体線路240の一方端に接続されるとともに、導体線路240と直交する。そして、導体線路250は、例えば、1.5mmφの直径およびlの長さを有する。
【0129】
そして、導体線路230の長さdと導体線路240の長さlとの合計、または導体線路230の長さdと導体線路250の長さlとの合計をL”としたとき、給電線路210は、導体線路220からの距離が0.1L”〜0.5L”の範囲内になるように配置される。
【0130】
導体線路220は、整合用のショートピンとして機能する。即ち、導体線路220は、導体線路230,240,250によって電波を送受信するときのインピーダンスを50Ωに設定する。
【0131】
このように、アンテナ装置200は、図1に示すアンテナ装置10の2本の整合用のショートピンを1本の整合用のショートピンに代えた構造からなる。
【0132】
図12は、z軸の正の方向から見たアンテナ装置200の平面図である。図12を参照して、導体線路230は、導体線路240と角度θ1で交差し、導体線路250と角度θ2で交差する。
【0133】
そして、アンテナ装置200においては、角度θ1は、角度θ2と等しく、θ1=θ2=135度である。
【0134】
アンテナ装置200においては、x方向の電流iは、導体線路240をx軸の正の方向へ流れ、y方向の電流iは、導体線路250をy軸の負の方向へ流れ、z方向の電流iは、導体線路220,2101をz軸の正の方向へ流れる。そして、導体線路220をz軸の正の方向へ流れた電流は、導体線路230を経由して導体線路2101をz軸の正の方向へ流れた電流と合体する。その後、合体した電流は、導体線路240,250へ分岐され、電流iが導体線路240を流れるとともに、電流iが導体線路250を流れる。
【0135】
その結果、導体線路240,250は、x軸方向の偏波成分およびy軸方向の偏波成分を送受信し、導体線路220,2101は、z軸方向の偏波成分を送受信する。そして、アンテナ装置200は、図3から図5に示す放射パターンと同じ放射パターンを有する。
【0136】
従って、アンテナ装置200は、マルチパス環境において三重偏波のいずれの偏波も送受信できる。
【0137】
また、アンテナ装置200においては、導体線路220の長さhと、導体線路230の長さdと、導体線路240の長さlとの合計は、9.6mm+3.0mm+17.7mm=30.3mmとなる。また、導体線路220の長さhと、導体線路230の長さdと、導体線路250の長さlとの合計は、9.6mm+3.0mm+17.7mm=30.3mmとなる。そして、この30.3mmの値は、アンテナ装置200が送受信する電波の波長λの略4分の1に相当する。
【0138】
従って、アンテナ装置200の小型化を実現できる。
【0139】
なお、アンテナ装置200においては、角度θ1は、角度θ2と等しくなくてもよい。そして、角度θ1は、一般的には、90度<θ1≦180度の範囲に設定される。この場合、角度θ2は、90度≦θ2<270度の範囲に設定される。
【0140】
図13は、実施の形態3による他のアンテナ装置の概略図である。実施の形態3によるアンテナ装置は、図13に示すアンテナ装置200Aであってもよい。
【0141】
図13を参照して、アンテナ装置200Aは、アンテナ装置200の給電線路210を給電線路310に代え、導体線路220,230,240,250をそれぞれ導体線路320,330,340,350に代え、誘電体260,270,280を追加したものであり、その他は、アンテナ装置200と同じである。そして、アンテナ装置200Aは、例えば、2.45GHzの周波数を有する電波を送受信する。
【0142】
給電線路310は、導体線路3101と、給電回路3102とからなる。導体線路3101は、例えば、z軸に沿って地板1に略垂直に配置される。また、導体線路3101は、その一方端が給電回路3102に接続され、他方端が導体線路330,340,350の交差部に接続される。そして、導体線路3101は、例えば、1.5mmφの直径、およびh/ε(mm)の長さを有する。なお、εは、誘電体260,270,280の実効比誘電率ε=((ε+1)/2)1/2(εは、誘電体260,270,280の比誘電率)である。給電回路3102は、導体線路3101の一方端と接地電位GNDとの間に接続される。
【0143】
導体線路320は、z軸に沿って地板1に略垂直に配置される。そして、導体線路320は、例えば、1.5mmφの直径および長さh/εを有する。
【0144】
導体線路330は、x−y平面に沿って地板1に略平行に配置される。また、導体線路330は、一方端が導体線路320の一方端に接続され、他方端が導体線路340,350の交差部に接続される。そして、導体線路330は、例えば、1.5mmφの直径および長さd/εを有する。
【0145】
導体線路340は、x軸に沿って地板1に略平行に配置される。また、導体線路340は、その一方端が導体線路330の他方端および導体線路350の一方端に接続されるとともに、導体線路350と直交する。そして、導体線路340は、例えば、1.5mmφの直径およびl/εの長さを有する。
【0146】
導体線路350は、y軸に沿って地板1に略平行に配置される。また、導体線路350は、その一方端が導体線路330の他方端および導体線路340の一方端に接続されるとともに、導体線路340と直交する。そして、導体線路350は、例えば、1.5mmφの直径およびl/εの長さを有する。
【0147】
誘電体260,270,280の各々は、例えば、比誘電率εが2〜4であるテフロン(登録商標)からなる。誘電体260は、給電線路310の長さh/εと同じ長さ、距離d/εと同じ幅、および1.5mmの厚みを有する。そして、誘電体260は、地板1、給電線路310、および導体線路320,330によって囲まれる領域に地板1、給電線路310、および導体線路320,330に接して配置される。
【0148】
誘電体270は、給電線路310の長さh/εと同じ長さ、長さl/εと同じ幅、および1.5mmの厚みを有する。そして、誘電体270は、地板1、給電線路310、および導体線路340によって囲まれる領域に地板1、給電線路310、および導体線路340に接して配置される。
【0149】
誘電体280は、給電線路310の長さh/εと同じ長さ、長さl/εと同じ幅、および1.5mmの厚みを有する。そして、誘電体280は、地板1、給電線路310、および導体線路350によって囲まれる領域に地板1、給電線路310、および導体線路350に接して配置される。
【0150】
アンテナ装置200Aにおいては、導体線路330は、導体線路340と角度θ1を成し、導体線路330は、導体線路350と角度θ2を成す。そして、角度θ1,θ2は、アンテナ装置200と同じように設定される。
【0151】
このように、アンテナ装置200Aは、アンテナ装置200の給電線路210および導体線路220,230,240,250の配置形状と相似な配置形状を有し、給電線路210および導体線路220,230,240,250の寸法を1/ε倍にしたものである。
【0152】
誘電体260,270,280を設けることによって、アンテナ装置200Aが送受信する電波の波長は、λ/εになるので、アンテナ装置200Aは、アンテナ装置200のサイズを1/ε倍にしたサイズを有する。
【0153】
アンテナ装置200Aにおいては、導体線路320の長さh/εと、導体線路330の長さd/εと、導体線路340の長さl/εとの合計は、9.6/ε(mm)+3.0/ε(mm)+17.7/ε(mm)=30.3/ε(mm)となる。また、導体線路320の長さh/εと、導体線路330の長さd/εと、導体線路350の長さl/εとの合計は、9.6/ε(mm)+3.0/ε(mm)+17.7/ε(mm)=30.3/ε(mm)となる。そして、この30.3/ε(mm)の値は、アンテナ装置200Aが送受信する電波の波長λ/εの略4分の1に相当する。
【0154】
そして、導体線路330の長さd/εと導体線路340の長さl/εとの合計、または導体線路330の長さd/εと導体線路350の長さl/εとの合計をLLとしたとき、給電線路310は、導体線路320からの距離が0.1LL〜0.5LLの範囲内になるように配置される。
【0155】
アンテナ装置200Aは、図3から図5に示す放射パターンと同じ放射パターンを有する。
【0156】
このように、誘電体260,270,280を設けることによってアンテナ装置200Aのサイズを小さくできる。
【0157】
なお、誘電体260,270,280の比誘電率εは、2〜4に限らず、一般的には、2〜10の範囲であればよい。
【0158】
また、アンテナ装置200Aにおいては、給電線路310および導体線路320,330,340,350の全体を覆うように直方体形状の誘電体を地板1上に設けてもよい。
【0159】
実施の形態3によれば、アンテナ装置200は、x軸方向に配置された導体線路240と、y軸方向に配置された導体線路250と、z軸方向に配置された導体線路220と、z軸方向に配置された給電線路210とを備える。その結果、導体線路220,2101は、z軸方向の偏波成分を送受信し、導体線路240,250は、x方向の偏波成分およびy方向の偏波成分を送受信する。また、アンテナ装置200においては、導体線路220、導体線路230および導体線路240の合計の長さ、および導体線路220、導体線路230および導体線路250の合計の長さは、アンテナ装置200が送受信する電波の波長λの略4分の1に相当する。
【0160】
また、実施の形態3によれば、アンテナ装置200Aは、x軸方向に配置された導体線路340と、y軸方向に配置された導体線路350と、z軸方向に配置された導体線路1320と、z軸方向に配置された給電線路310と、誘電体260,270,280とを備える。その結果、導体線路320,3101は、z軸方向の偏波成分を送受信し、導体線路340,350は、x方向の偏波成分およびy方向の偏波成分を送受信する。また、アンテナ装置200Aにおいては、導体線路320、導体線路330および導体線路340の合計の長さ、および導体線路320、導体線路330および導体線路350の合計の長さは、アンテナ装置200Aが送受信する電波の波長λ/εの略4分の1に相当する。
【0161】
従って、実施の形態3によれば、アンテナ装置の小型化を実現でき、マルチパス環境において三重偏波のいずれの偏波も送受信できる。
【0162】
なお、実施の形態3においては、導体線路240は、「第1の導体線路」を構成し、導体線路250は、「第2の導体線路」を構成し、導体線路230は、「第3の導体線路」を構成し、導体線路220は、「第4の導体線路」を構成する。
【0163】
また、実施の形態3においては、導体線路340は、「第1の導体線路」を構成し、導体線路350は、「第2の導体線路」を構成し、導体線路330は、「第3の導体線路」を構成し、導体線路320は、「第4の導体線路」を構成する。
【0164】
更に、実施の形態3においては、誘電体270は、「第1の誘電体」を構成し、誘電体280は、「第2の誘電体」を構成し、誘電体260は、「第3の誘電体」を構成する。
【0165】
図14は、この発明の実施の形態によるアンテナ装置10,10A,100,100A,200,200Aを備えた無線装置の概略図である。図14を参照して、無線装置400は、アンテナ410と、送受信部420とを備える。
【0166】
アンテナ410は、上述したアンテナ装置10,10A,100,100A,200,200Aのいずれかからなる。
【0167】
無線装置400およびセンサー430は、例えば、プリンタの内部に設置される。そして、センサー430は、プリンタのプリンタ用紙の枚数を検知し、その検知した枚数を示す検知信号を無線装置400の送受信部420へ出力する。
【0168】
送受信部420は、センサー430から検知信号を受け、その受けた検知信号をアンテナ410を介して他の無線装置へ送信する。
【0169】
また、送受信部420は、他の無線装置からの検知信号をアンテナ410を介して受信し、その受信した検知信号をセンサー430へ出力する。
【0170】
アンテナ装置10,10A,100,100A,200,200Aは、上述したように、電波の波長の略4分の1に相当するサイズを有し、マルチパス環境においても、三重偏波のいずれの偏波成分も送受信できる。
【0171】
従って、無線装置400およびセンサー430をプリンタの狭小な空間に配置でき、無線装置400は、その狭小な空間において信号を正確に送受信できる。
【0172】
なお、無線装置400およびセンサー430は、プリンタに限らず、一般的に、券売機等のICT機器内に設置される。
【0173】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0174】
この発明は、三重偏波のいずれの偏波も送受信可能なアンテナ装置、およびそのアンテナ装置を備えた無線装置に適用される。
【符号の説明】
【0175】
1 地板、2,12,20,120,210,310 給電線路、3,4,13,14,21,30,31,32,40,41,42,121,130,131,132,140,141,142,201,220,230,240,250,320,330,340,350,1201,2101,3101 導体線路、5〜8,60,70,260,270,280 誘電体、10,10A,100,100A,200,200A アンテナ装置、22,122,202,1202,2102,3102 給電回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギガヘルツ帯の周波数を有する電波を送受信するアンテナ装置であって、
地板と、
前記地板に略垂直に配置された給電線路と、
一方端が前記給電線路の一方端に接続され、前記地板に略平行に配置された第1の導体線路と、
一方端が前記給電線路の一方端に接続され、前記地板に略平行に配置されるとともに前記第1の導体線路に略直交する第2の導体線路とを備え、
前記第1および第2の導体線路の各々は、送受信される電波の波長の略4分の1に等しい長さを有する、アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1の導体線路と前記地板との間に配置された第1の誘電体と、
前記第2の導体線路と前記地板との間に配置された第2の誘電体とを更に備える、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
ギガヘルツ帯の周波数を有する電波を送受信するアンテナ装置であって、
地板と、
前記地板に略垂直に配置された給電線路と、
一方端が前記給電線路の一方端に接続され、前記地板に略平行に配置された第1の導体線路と、
一方端が前記給電線路の一方端に接続され、前記地板に略平行に配置されるとともに前記第1の導体線路に略直交する第2の導体線路と、
前記地板に略平行に配置されるとともに、一方端が前記給電線路の前記一方端に接続され、前記第1および第2の導体線路から遠ざかる方向へ延伸した第3の導体線路と、
一方端が前記地板に略垂直に接続され、他方端が前記第3の導体線路の他方端に接続された第4の導体線路とを備え、
前記地板に平行な平面内において前記第3の導体線路が前記第1の導体線路となす角度は、90度よりも大きく、かつ、180度以下であり、
前記第1の導体線路の長さと前記第3の導体線路の長さと前記第4の導体線路の長さとの第1の合計は、送受信される電波の波長の略4分の1に等しく、
前記第2の導体線路の長さと前記第3の導体線路の長さと前記第4の導体線路の長さとの第2の合計は、送受信される電波の波長の略4分の1に等しく、
前記第3の導体線路の長さは、前記第1の合計の10分の1から2分の1の範囲である、アンテナ装置。
【請求項4】
前記第1の導体線路と前記地板との間に配置された第1の誘電体と、
前記第2の導体線路と前記地板との間に配置された第2の誘電体と、
前記第3の導体線路と前記地板との間に配置された第3の誘電体とを更に備える、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
ギガヘルツ帯の周波数を有する電波を送受信するアンテナ装置であって、
地板と、
前記地板に略垂直に配置された給電線路と、
略L字形状からなり、前記地板に略垂直に配置された第1の部分と前記地板に略平行に配置された第2の部分とを有する第1の導体線路と、
略L字形状からなり、前記地板に略垂直に配置された第3の部分と前記地板に略平行に配置された第4の部分とを有する第2の導体線路とを備え、
前記第2の部分は、前記第4の部分と略直交し、
前記給電線路は、前記地板と反対側の一方端が前記第2の部分と前記第4の部分との直交部に接続され、
前記第1および第2の導体線路の各々は、送受信される電波の波長の略4分の1に等しい長さを有し、
前記第2の部分のうち、前記第1の部分から前記直交部までの第5の部分の長さは、前記第2の部分の長さの10分の1から2分の1の範囲であり、
前記第4の部分のうち、前記第3の部分から前記直交部までの第6の部分の長さは、前記第4の部分の長さの10分の1から2分の1の範囲である、アンテナ装置。
【請求項6】
前記第5の部分の長さは、前記第6の部分の長さに略等しい、請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第1の導体線路と前記地板との間に配置された第1の誘電体と、
前記第2の導体線路と前記地板との間に配置された第2の誘電体とを更に備える、請求項5または請求項6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のアンテナ装置を備える無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−188307(P2011−188307A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52257(P2010−52257)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「ICT機器内ハーネスのワイヤレス化の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】