アンテナ装置およびそれを用いた携帯端末装置
【課題】通信可能領域を拡張しつつ、通信可能領域内で良好な通信性能を有したアンテナ装置およびそれを用いた携帯端末装置を提供することを目的とする。
【解決手段】開口部を有するアンテナパターン2と、アンテナパターン2と電気的に絶縁され、アンテナパターン2の開口部を有する一方の面に配置した金属体7とを備え、金属体7には、アンテナパターン2の外形より小さく、金属体7の外周と繋がるような切り欠き部8を設け、アンテナパターン2は切り欠き部8を覆うように金属体7の上に設けたことを特徴とするアンテナ装置。
【解決手段】開口部を有するアンテナパターン2と、アンテナパターン2と電気的に絶縁され、アンテナパターン2の開口部を有する一方の面に配置した金属体7とを備え、金属体7には、アンテナパターン2の外形より小さく、金属体7の外周と繋がるような切り欠き部8を設け、アンテナパターン2は切り欠き部8を覆うように金属体7の上に設けたことを特徴とするアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RF−ID(Radio Frequency Identification)やNFC(Near Field Communication)におけるアンテナ装置およびそれを用いた携帯端末装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やスマートフォン等の携帯端末に、非接触型ICカードやICタグの情報を読み取ったり、R/Wとの情報を行うために、ループ状のアンテナが多く用いられている。
【0003】
これらのループ状のアンテナにおいて、例えば非接触ICカードから情報を読み取る場合、一般的にループ状のアンテナは非接触ICカードより小さく、磁界取り込み領域(通信可能領域)が狭いため、読み取りにくい場合があった。
【0004】
そこで、上記通信可能領域を拡張するものとして、ループ状のアンテナと金属線を組み合わせたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−28506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の構造では金属線を用いて通信可能領域の拡張を行っているため拡張した領域内に近傍に金属線が存在しない空気領域が存在する。
【0007】
そのため、空気領域に非接触ICカードからの送信磁界が入るとループ状のアンテナにはほとんどICカードからの磁束による誘電起電力が発生せず、その結果通信領域を拡張したとしても、上記空気領域においてループ状のアンテナはICカードと通信できない恐れがあった。
【0008】
そこで、本発明は上記の問題に鑑み、通信可能領域を拡張しつつ、通信可能領域内で良好な通信性能を有したアンテナ装置およびそれを用いた携帯端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、開口部を有するループアンテナと、ループアンテナと電気的に絶縁され、ループアンテナの開口部を有する一方の面に配置した金属体とを備え、金属体には、ループアンテナの外形より小さく、金属体の外周と繋がるような切り欠き部を設け、ループアンテナは切り欠き部を覆うように金属体上に設けたことを特徴とするアンテナ装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、通信可能領域を拡張しつつ、通信可能領域内の空気領域を減少させるため、通信可能領域内で良好な通信性能を有したものを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1におけるアンテナ装置の斜視図
【図2】本発明の実施例1におけるアンテナ装置の上面図
【図3】本発明の実施例1におけるアンテナ装置の側面図
【図4】本発明の実施例1におけるアンテナ装置から磁界を放射するときの概念を説明した図
【図5】本発明の実施例1におけるアンテナ装置が磁界を受けるときの概念を説明した図
【図6】本発明の実施例1におけるアンテナ装置が放射する磁界強度を表した図
【図7】本発明の実施例1におけるアンテナ装置を用いた携帯端末の分解斜視図
【図8】本発明の実施例2におけるアンテナ装置の斜視図
【図9】本発明の実施例2におけるアンテナ装置の平面図
【図10】本発明の実施例2におけるアンテナ装置の側面図
【図11】本発明の実施例2におけるアンテナ装置が磁界を放射するときの概念を説明した図
【図12】本発明の実施例2におけるアンテナ装置が磁界を受けるときの概念を説明した図
【図13】本発明の実施例2におけるアンテナ装置が放射する磁界強度を表した図
【図14】本発明の実施例2におけるアンテナ装置を用いた携帯端末の分解斜視図
【図15】本発明の実施例2における別のアンテナ装置が放射する磁界強度を表した図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のアンテナ装置は、開口部を有するループアンテナと、ループアンテナと電気的に絶縁され、ループアンテナの開口部を有する一方の面に配置した金属体とを備え、金属体には、ループアンテナの外形より小さく、金属体の外周と繋がるような切り欠き部を設け、ループアンテナは切り欠き部を覆うように金属体上に設けたことを特徴とする。
【0013】
これにより、通信可能領域を拡張しつつ、通信可能領域内の空気領域を減少させるため、通信可能領域内で良好な通信性能を有したアンテナ装置を提供することができる。
【0014】
また、切り欠き部の大きさは、ループアンテナの開口部とほぼ同じ大きさであることにより、アンテナ装置と金属体とを効率よく結合することができ、外部磁界によって金属体に発生する誘導起電力を効率よくアンテナに伝達することができる。
【0015】
また、上記アンテナ装置を、筐体内に設け、金属体を筐体の裏面に設けたことにより、筐体を利用して、通信可能領域を拡張しつつ、通信可能領域内で良好な通信性能を有した携帯端末装置を提供することができる。
【0016】
また、上記アンテナ装置を、筐体内に設け、筐体内に設けられた回路基板を金属体として用いることにより、携帯端末の回路基板を利用して、通信可能領域を拡張しつつ、通信可能領域内で良好な通信性能を有した携帯端末装置を提供することができる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例について以下図面を用いて説明する。
【0018】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1におけるアンテナ装置の斜視図であり、図2は本発明の実施例1におけるアンテナ装置の上面図であり、図3は本発明の実施例1におけるアンテナ装置の側面図である。なお、図3は図2のA−A‘断面図である。
【0019】
図1に表されたアンテナ装置1は、アンテナ基板2の上にループ状のアンテナパターン3が形成されている。図1においては、アンテナパターン3は3ターンの場合を図示しているが、3ターンに限定するものではない。
【0020】
また、アンテナ上部に金属が配置されたときの影響を軽減するために、アンテナパターン3の上部に磁性体シート4を配置している。
【0021】
また、アンテナパターン3は、入出力端子5、6によって、整合回路およびICの入出力端子に接続される。
【0022】
ここで、金属体7には、金属体7の外周と繋がるように形成され、アンテナの形状に合わせた矩形状の切り欠き部8が設けられ、金属体7は、切り欠き部8によってコの字形状となっている。
【0023】
つまり、切り欠き部8は、金属体7の中に穴が設けられるように形成するのではなく、金属体7の外周から切り欠いたような形状になっている。
【0024】
そして、その金属体7の切り欠き部8を覆うようにアンテナ基板2とアンテナパターン3を金属体7にほぼ接して配置し、金属体7、アンテナ基板2、アンテナパターン3、磁性体シート4の順に積層している。
【0025】
以下、図2、図3を中心にアンテナパターン3と切り欠き部8の形状について詳細に説明する。
【0026】
図を見れば明らかなように、切り欠き部8の大きさは、アンテナパターン3の外形(アンテナパターン3の最外周のループの大きさ)より小さく、さらにアンテナパターン3の開口部(アンテナパターン3の最内周のループの大きさ)に沿うように形成されている。
【0027】
つまり、切り欠き部8は、アンテナパターン3の開口部とほぼ同じ大きさにしている。
【0028】
そして、アンテナパターン3の開口部を切り欠き部8に一致するように配置し、図2に示すように、アンテナパターン3は、切り欠き部8を設けた側の金属体7の一辺と直線状となるようにしている。
【0029】
また、図3に示すようにアンテナパターン3は、アンテナ基板2を介して、金属体7の上に配置されている。
【0030】
上記のようにすることで、後述するが金属体7に発生する電流を効率よく利用することができる。
【0031】
また、切り欠き部8の位置は、本実施例では、切り欠きを設ける部分の辺の中心となるように配置している。
【0032】
以下、アンテナ装置1の構成について説明する。
【0033】
まずアンテナ基板2について説明する。アンテナ基板2はアンテナパターン3、入出力端子5、6などの電子部材を搭載するベース基板であり、本実施例では絶縁性を有する基板であればよく、例えば、ポリイミド、PET、ガラエポ基板等で形成することが可能である。
【0034】
次にアンテナパターン3について説明する。アンテナパターン3は、スパイラル状に形成される。スパイラルの構造としては、中央に開口部を備えたスパイラル形状であればよく、その形状は円形または略矩形または三角形や四角形に代表される多角形のいずれであってもよい。また、アンテナパターン3の配置は、同一平面上に配置しても積層して配置してもよい。スパイラル構造とすることで、開口部に、リーダライタから発生された磁界を鎖交させ、誘導電力を誘起させ、入出力端子5、6と接続される整合回路およびICチップに電気信号を伝達させることが可能となり、リーダライタとの通信が可能となる。さらに、パターンの材質としては、導電性を有するものであればよく、金、銀、銅、アルミ、ニッケル等の導電性の金属製線材、金属製板材、金属製箔材、または金属製筒材等から適宜選択することができ、金属線、金属箔、導電性ペースト、めっき転写、スパッタ、蒸着、もしくは、スクリーン印刷により形成することができる。
【0035】
次に磁性体シート4について説明する。磁性体シート4は、アンテナパターン3の上部に配置されており、形状としては円形または略矩形または三角形や四角形に代表される多角形のいずれであってもよい。磁性体シート4は、磁性体シート4の上部に金属体が配置されたときの影響を軽減するためのものであり、アンテナパターン3を完全に覆っていることが望ましく、アンテナパターン3を覆っていれば、アンテナパターン3より大きくてもよく、例えば、金属体7と同じ大きさであってもよい。
【0036】
また、磁性体の材質としては、フェライトなどの絶縁性磁性体、または電磁鋼板などの導電性磁性体のいずれであってもよい。
【0037】
次に入出力端子5、6について説明する。入出力端子5、6はアンテナパターン3と電気的に接続されている。材質としては導電性を有するものであればよく、金、銀、銅、アルミ、ニッケル等の導電性の金属製線材、金属製板材、金属製箔材、または金属製筒材等から適宜選択することができ、金属線、金属箔、導電性ペースト、めっき転写、スパッタ、蒸着、もしくは、スクリーン印刷により形成することができる。また、入出力端子5、6は整合回路およびICチップと電気的に接続されるものであり、接続方法としてはピンやバネによる接続やはんだ付け、コネクタによる接続など、通常利用される接続方法を選択できる。
【0038】
材質としては導電性を有するものであればよく、金、銀、銅、アルミ、ニッケル等の導電性の金属製箔材、金属製板材等から適宜選択することができ、金属箔、導電性ペースト、めっき転写、スパッタ、蒸着、もしくはスクリーン印刷により形成することができる。
【0039】
次に図4、図5を用いて本発明のアンテナ装置の動作概念を説明する。
【0040】
図4はアンテナから送信する場合の本発明の概念図である。外部回路より、入出力端子5、6へ入った信号によりアンテナパターン3に電流9が流れ、それによって磁界10が生じる。金属体7には磁界10を打ち消す方向に渦電流11が発生するが、このとき金属体7にアンテナパターン3の開口部に沿うように切り欠き部8を設けることで、切り欠き部の3辺には、アンテナパターン3に流れる電流9に対して逆方向となる渦電流11が流れるが、金属体7の切り欠き部8以外の部分に流れる渦電流11はアンテナパターン3に流れる電流9に対して順方向となるため、見かけ上アンテナパターンが大きくなった状態になり、通信相手となるカードとの結合度が強くなるため、結果として通信性能が向上することになる。
【0041】
図5はアンテナが外部からの磁界を受ける場合の本発明の概念図である。外部からの磁界12によって、金属体7の外周部に沿って渦電流13が流れ、渦電流13によって金属体7の外周部には磁界14が発生する。このとき金属体7にアンテナパターン3の開口部に沿うように切り欠き部8を設けることで、切り欠き部8の3辺の外周部には図5のような磁界14が発生するため、アンテナパターン3の内周部には図5のような、下向きの磁界15が発生することになる。このとき磁界15を打ち消す方向にアンテナパターン3には渦電流16が発生するが、この渦電流16は金属体7の外周部に流れる渦電流13と順方向となるため、見かけ上アンテナパターンが大きくなった状態になり、通信相手となるRWが発する磁界をより多く受信できるようになり、結果として通信性能が向上することになる。
【0042】
図6は本発明のアンテナ装置1と、金属体7を用いない場合のアンテナ装置を比較したときの実験結果である。測定条件は以下の通りである。まず、本発明のアンテナ装置1を上下反対にして配置し、入出力端子5、6から整合回路を介して入力インピーダンスを50Ωに整合させた後、シグナルジェネレータから20dBmを入力する。金属板7のサイズは62mm×38mm、アンテナパターン3の外形サイズは20mm×20mmである。
【0043】
次に、上記アンテナ装置1の上空に72mm×42mmサイズで1ターンの探りコイルを配置し、上記探りコイルの両端をオシロスコープの観測端子に接続し、1MΩのポートインピーダンスで観測する。上記アンテナ装置1から発生した磁界が、上記探りコイルを鎖交することにより探りコイルの両端に誘導起電圧が発生し、上記オシロスコープによって観測されることになる。上記探りコイルは、上記アンテナ装置1の金属体7の中心と上記探りコイルの中心を正対させるように配置している。
【0044】
また、金属体7を用いない場合は、アンテナパターン3の中心と上記探りコイルの中心を正対させるように配置している。図6のグラフの横軸はアンテナ装置1と探りコイルの距離であり、縦軸は上記オシロスコープで観測した電圧波形のピーク間電圧の値である。図6のグラフによれば、金属体7を用いない場合のアンテナ装置と比較して、本発明のアンテナ装置1の方がより大きな誘導起電圧を発生させることができ、特に20mm以内の近傍においてはより大きな効果が確認できる。
【0045】
図7は本発明の実施例1のアンテナ装置を用いた携帯端末(本実施例では携帯電話)の分解斜視図である。携帯端末18は液晶パネル19とボタン20と筐体23と筐体24とそれに内包される基板21とバッテリー22などから構成されており、アンテナ1が筐体24に取り付けられている。アンテナ装置1は、基板21の、液晶パネル19が配置されている方向とは反対側の面に取り付けられている。また金属体7は、筐体24に貼り付けられており、その上にアンテナパターン3、磁性シート4が重ねられた構造になっている。
【0046】
金属体7は筐体24に貼り付けなくてもよいが、金属体7と基板21およびそれに実装される金属部品が接近すると特性が劣化するため、金属体7と基板21およびそれに実装される金属部品の距離をできる限り離すことが望ましい。
【0047】
また、筐体24と金属体7を一体化してもよく、その場合の筐体24の材質としては、金属体7と同様、導電性を有するものであればよく、金、銀、銅、アルミ、ニッケル等の導電性の金属製箔材、金属製板材等から適宜選択することができ、金属箔、導電性ペースト、めっき転写、スパッタ、蒸着、もしくはスクリーン印刷により形成することができる。
【0048】
また、基板21を金属体7の代わりにしてもよく、その場合、基板21の、液晶パネルが配置されている方向とは反対側の面に取り付けられ、構造としては、基板21の下に磁性体シート4、アンテナパターン3の順番で配置される。
【0049】
さらに、本実施例では、金属体7を金属製箔材等の形成しているため、例えば、カメラ等の搭載する携帯端末の部品の配置に応じて金属体7に切り欠きを設けて、部品の配置を避けて配置することができる。
【0050】
また、上記のように金属体7を金属製箔材等の折り曲げることができる材料を利用する、または、スパッタ等で筐体の曲面に直接形成することで、金属体7を筐体の曲面に沿って配置することができ、曲面に配置できない従来のアンテナ装置と比較して、アンテナ装置として自由に設計を行うことができる。
【0051】
(実施例2)
図8は本発明の実施例2におけるアンテナ装置1の斜視図であり、図9は本発明の実施例2におけるアンテナ装置の平面図であり、図10は本発明の実施例2におけるアンテナ装置の側面図である。
【0052】
図8に表されたアンテナ装置1は、アンテナ基板2の上にループ状のアンテナパターン3が形成されている。図8においては、アンテナパターン3は3ターンの場合を図示しているが、3ターンに限定するものではない。また、アンテナ上部に金属が配置されたときの影響を軽減するために、アンテナパターン3の上部に磁性体シート4を配置している。また、アンテナパターン3は入出力端子5、6によって、整合回路およびICの入出力端子に接続される。金属体7はアンテナ基板にほぼ接して配置されている。金属体7の切り欠き部8は、まずアンテナパターン3を金属体7の中心部に配置したときのアンテナパターン3の開口部に沿って切り抜き、そのうちの1辺から金属体7の向かい合う辺にスリット17を入れた形状に配置されている。アンテナ装置1の構成については、本発明の実施例1と同様である。
【0053】
次に図11、図12を用いて本発明のアンテナ装置の動作概念を説明する。
【0054】
図11はアンテナから送信する場合の本発明の概念図である。外部回路より、入出力端子5、6へ入った信号によりアンテナパターン3に電流9が流れ、それによって磁界10が生じる。金属体7には磁界10を打ち消す方向に渦電流11が発生するが、このとき金属体7にアンテナパターン3の開口部に沿うように切り欠き部8と、切り欠き部8の1辺から金属体7の外周部へスリット17を設けることで、切り欠き部の各辺には、アンテナパターン3に流れる電流9に対して逆方向となる渦電流11が流れるが、スリット17によって切り欠き部の各辺を流れる渦電流11は金属体7の外周部へと誘導されるため、金属体7の外周部を流れる渦電流11はアンテナパターン3に流れる電流9に対して順方向となる。そのため見かけ上アンテナパターンが大きくなった状態になり、通信相手となるカードとの結合度が強くなるため、結果として通信性能が向上することになる。
【0055】
図12はアンテナが外部からの磁界を受ける場合の本発明の概念図である。外部からの磁界12によって、金属体7の外周部に沿って渦電流13が流れ、渦電流13によって金属体7の外周部には磁界14が発生する。このとき金属体7にアンテナパターン3の開口部に沿うように切り欠き部8と、切り欠き部8の1辺から金属体7の外周部へスリット17を設けることで、切り欠き部8の各辺の外周部には図12のような磁界14が発生するため、アンテナパターン3の内周部には図12のような、下向きの磁界15が発生することになる。このとき磁界15を打ち消す方向にアンテナパターン3には渦電流16が発生するが、この渦電流16は金属体7の外周部に流れる渦電流13と順方向となるため、見かけ上アンテナパターンが大きくなった状態になり、通信相手となるRWが発する磁界をより多く受信できるようになり、結果として通信性能が向上することになる。
【0056】
図13は本発明のアンテナ装置1と、金属体7を用いない場合のアンテナ装置を比較したときの実験結果である。測定条件は、本発明の実施例1と同様である。図13のグラフによれば、金属体7を用いない場合のアンテナ装置と比較して、本発明のアンテナ装置1の方がより大きな誘導起電圧を発生させることができ、特に20mm以内の近傍においてはより大きな効果が確認できる。
【0057】
図14は本発明の実施例2のアンテナ装置を用いた携帯端末の分解斜視図である。携帯端末18とアンテナ装置1の構造については、本発明の実施例1と同様である。アンテナパターン3は、金属体7の中心に配置するのが望ましい。この場合においても、金属体7は筐体24に貼り付けなくてもよいが、金属体7と基板21およびそれに実装される金属部品が接近すると特性が劣化するため、金属体7と基板21およびそれに実装される金属部品の距離をできる限り離すことが望ましい。
【0058】
また、図1ではアンテナパターン3の開口部の3辺に沿うように切り欠き部8を形成しているが、切り欠き8をアンテナパターン3の開口部の2辺に沿うように形成してもよい。
【0059】
図15は、金属体7の切り欠き部8がアンテナパターン3の開口部の2辺に沿うときのアンテナ装置1と、金属体7を用いない場合のアンテナ装置を比較したときの実験結果である。図15のグラフによれば、アンテナパターン3の開口部の2辺に沿うときも、金属体7を用いない場合のアンテナ装置と比較して、本発明のアンテナ装置1の方がより大きな誘導起電圧を発生させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のアンテナ装置およびそれを用いた携帯端末装置は、通信可能領域を拡張しつつ、通信可能領域内で良好な通信性能を有するので、携帯電話等の電子機器に有用である。
【符号の説明】
【0061】
1 アンテナ装置
2 アンテナ基板
3 アンテナパターン
4 磁性体シート
5 入出力端子
6 入出力端子
7 金属体
8 切り欠き部
【技術分野】
【0001】
本発明は、RF−ID(Radio Frequency Identification)やNFC(Near Field Communication)におけるアンテナ装置およびそれを用いた携帯端末装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やスマートフォン等の携帯端末に、非接触型ICカードやICタグの情報を読み取ったり、R/Wとの情報を行うために、ループ状のアンテナが多く用いられている。
【0003】
これらのループ状のアンテナにおいて、例えば非接触ICカードから情報を読み取る場合、一般的にループ状のアンテナは非接触ICカードより小さく、磁界取り込み領域(通信可能領域)が狭いため、読み取りにくい場合があった。
【0004】
そこで、上記通信可能領域を拡張するものとして、ループ状のアンテナと金属線を組み合わせたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−28506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の構造では金属線を用いて通信可能領域の拡張を行っているため拡張した領域内に近傍に金属線が存在しない空気領域が存在する。
【0007】
そのため、空気領域に非接触ICカードからの送信磁界が入るとループ状のアンテナにはほとんどICカードからの磁束による誘電起電力が発生せず、その結果通信領域を拡張したとしても、上記空気領域においてループ状のアンテナはICカードと通信できない恐れがあった。
【0008】
そこで、本発明は上記の問題に鑑み、通信可能領域を拡張しつつ、通信可能領域内で良好な通信性能を有したアンテナ装置およびそれを用いた携帯端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、開口部を有するループアンテナと、ループアンテナと電気的に絶縁され、ループアンテナの開口部を有する一方の面に配置した金属体とを備え、金属体には、ループアンテナの外形より小さく、金属体の外周と繋がるような切り欠き部を設け、ループアンテナは切り欠き部を覆うように金属体上に設けたことを特徴とするアンテナ装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、通信可能領域を拡張しつつ、通信可能領域内の空気領域を減少させるため、通信可能領域内で良好な通信性能を有したものを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1におけるアンテナ装置の斜視図
【図2】本発明の実施例1におけるアンテナ装置の上面図
【図3】本発明の実施例1におけるアンテナ装置の側面図
【図4】本発明の実施例1におけるアンテナ装置から磁界を放射するときの概念を説明した図
【図5】本発明の実施例1におけるアンテナ装置が磁界を受けるときの概念を説明した図
【図6】本発明の実施例1におけるアンテナ装置が放射する磁界強度を表した図
【図7】本発明の実施例1におけるアンテナ装置を用いた携帯端末の分解斜視図
【図8】本発明の実施例2におけるアンテナ装置の斜視図
【図9】本発明の実施例2におけるアンテナ装置の平面図
【図10】本発明の実施例2におけるアンテナ装置の側面図
【図11】本発明の実施例2におけるアンテナ装置が磁界を放射するときの概念を説明した図
【図12】本発明の実施例2におけるアンテナ装置が磁界を受けるときの概念を説明した図
【図13】本発明の実施例2におけるアンテナ装置が放射する磁界強度を表した図
【図14】本発明の実施例2におけるアンテナ装置を用いた携帯端末の分解斜視図
【図15】本発明の実施例2における別のアンテナ装置が放射する磁界強度を表した図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のアンテナ装置は、開口部を有するループアンテナと、ループアンテナと電気的に絶縁され、ループアンテナの開口部を有する一方の面に配置した金属体とを備え、金属体には、ループアンテナの外形より小さく、金属体の外周と繋がるような切り欠き部を設け、ループアンテナは切り欠き部を覆うように金属体上に設けたことを特徴とする。
【0013】
これにより、通信可能領域を拡張しつつ、通信可能領域内の空気領域を減少させるため、通信可能領域内で良好な通信性能を有したアンテナ装置を提供することができる。
【0014】
また、切り欠き部の大きさは、ループアンテナの開口部とほぼ同じ大きさであることにより、アンテナ装置と金属体とを効率よく結合することができ、外部磁界によって金属体に発生する誘導起電力を効率よくアンテナに伝達することができる。
【0015】
また、上記アンテナ装置を、筐体内に設け、金属体を筐体の裏面に設けたことにより、筐体を利用して、通信可能領域を拡張しつつ、通信可能領域内で良好な通信性能を有した携帯端末装置を提供することができる。
【0016】
また、上記アンテナ装置を、筐体内に設け、筐体内に設けられた回路基板を金属体として用いることにより、携帯端末の回路基板を利用して、通信可能領域を拡張しつつ、通信可能領域内で良好な通信性能を有した携帯端末装置を提供することができる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例について以下図面を用いて説明する。
【0018】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1におけるアンテナ装置の斜視図であり、図2は本発明の実施例1におけるアンテナ装置の上面図であり、図3は本発明の実施例1におけるアンテナ装置の側面図である。なお、図3は図2のA−A‘断面図である。
【0019】
図1に表されたアンテナ装置1は、アンテナ基板2の上にループ状のアンテナパターン3が形成されている。図1においては、アンテナパターン3は3ターンの場合を図示しているが、3ターンに限定するものではない。
【0020】
また、アンテナ上部に金属が配置されたときの影響を軽減するために、アンテナパターン3の上部に磁性体シート4を配置している。
【0021】
また、アンテナパターン3は、入出力端子5、6によって、整合回路およびICの入出力端子に接続される。
【0022】
ここで、金属体7には、金属体7の外周と繋がるように形成され、アンテナの形状に合わせた矩形状の切り欠き部8が設けられ、金属体7は、切り欠き部8によってコの字形状となっている。
【0023】
つまり、切り欠き部8は、金属体7の中に穴が設けられるように形成するのではなく、金属体7の外周から切り欠いたような形状になっている。
【0024】
そして、その金属体7の切り欠き部8を覆うようにアンテナ基板2とアンテナパターン3を金属体7にほぼ接して配置し、金属体7、アンテナ基板2、アンテナパターン3、磁性体シート4の順に積層している。
【0025】
以下、図2、図3を中心にアンテナパターン3と切り欠き部8の形状について詳細に説明する。
【0026】
図を見れば明らかなように、切り欠き部8の大きさは、アンテナパターン3の外形(アンテナパターン3の最外周のループの大きさ)より小さく、さらにアンテナパターン3の開口部(アンテナパターン3の最内周のループの大きさ)に沿うように形成されている。
【0027】
つまり、切り欠き部8は、アンテナパターン3の開口部とほぼ同じ大きさにしている。
【0028】
そして、アンテナパターン3の開口部を切り欠き部8に一致するように配置し、図2に示すように、アンテナパターン3は、切り欠き部8を設けた側の金属体7の一辺と直線状となるようにしている。
【0029】
また、図3に示すようにアンテナパターン3は、アンテナ基板2を介して、金属体7の上に配置されている。
【0030】
上記のようにすることで、後述するが金属体7に発生する電流を効率よく利用することができる。
【0031】
また、切り欠き部8の位置は、本実施例では、切り欠きを設ける部分の辺の中心となるように配置している。
【0032】
以下、アンテナ装置1の構成について説明する。
【0033】
まずアンテナ基板2について説明する。アンテナ基板2はアンテナパターン3、入出力端子5、6などの電子部材を搭載するベース基板であり、本実施例では絶縁性を有する基板であればよく、例えば、ポリイミド、PET、ガラエポ基板等で形成することが可能である。
【0034】
次にアンテナパターン3について説明する。アンテナパターン3は、スパイラル状に形成される。スパイラルの構造としては、中央に開口部を備えたスパイラル形状であればよく、その形状は円形または略矩形または三角形や四角形に代表される多角形のいずれであってもよい。また、アンテナパターン3の配置は、同一平面上に配置しても積層して配置してもよい。スパイラル構造とすることで、開口部に、リーダライタから発生された磁界を鎖交させ、誘導電力を誘起させ、入出力端子5、6と接続される整合回路およびICチップに電気信号を伝達させることが可能となり、リーダライタとの通信が可能となる。さらに、パターンの材質としては、導電性を有するものであればよく、金、銀、銅、アルミ、ニッケル等の導電性の金属製線材、金属製板材、金属製箔材、または金属製筒材等から適宜選択することができ、金属線、金属箔、導電性ペースト、めっき転写、スパッタ、蒸着、もしくは、スクリーン印刷により形成することができる。
【0035】
次に磁性体シート4について説明する。磁性体シート4は、アンテナパターン3の上部に配置されており、形状としては円形または略矩形または三角形や四角形に代表される多角形のいずれであってもよい。磁性体シート4は、磁性体シート4の上部に金属体が配置されたときの影響を軽減するためのものであり、アンテナパターン3を完全に覆っていることが望ましく、アンテナパターン3を覆っていれば、アンテナパターン3より大きくてもよく、例えば、金属体7と同じ大きさであってもよい。
【0036】
また、磁性体の材質としては、フェライトなどの絶縁性磁性体、または電磁鋼板などの導電性磁性体のいずれであってもよい。
【0037】
次に入出力端子5、6について説明する。入出力端子5、6はアンテナパターン3と電気的に接続されている。材質としては導電性を有するものであればよく、金、銀、銅、アルミ、ニッケル等の導電性の金属製線材、金属製板材、金属製箔材、または金属製筒材等から適宜選択することができ、金属線、金属箔、導電性ペースト、めっき転写、スパッタ、蒸着、もしくは、スクリーン印刷により形成することができる。また、入出力端子5、6は整合回路およびICチップと電気的に接続されるものであり、接続方法としてはピンやバネによる接続やはんだ付け、コネクタによる接続など、通常利用される接続方法を選択できる。
【0038】
材質としては導電性を有するものであればよく、金、銀、銅、アルミ、ニッケル等の導電性の金属製箔材、金属製板材等から適宜選択することができ、金属箔、導電性ペースト、めっき転写、スパッタ、蒸着、もしくはスクリーン印刷により形成することができる。
【0039】
次に図4、図5を用いて本発明のアンテナ装置の動作概念を説明する。
【0040】
図4はアンテナから送信する場合の本発明の概念図である。外部回路より、入出力端子5、6へ入った信号によりアンテナパターン3に電流9が流れ、それによって磁界10が生じる。金属体7には磁界10を打ち消す方向に渦電流11が発生するが、このとき金属体7にアンテナパターン3の開口部に沿うように切り欠き部8を設けることで、切り欠き部の3辺には、アンテナパターン3に流れる電流9に対して逆方向となる渦電流11が流れるが、金属体7の切り欠き部8以外の部分に流れる渦電流11はアンテナパターン3に流れる電流9に対して順方向となるため、見かけ上アンテナパターンが大きくなった状態になり、通信相手となるカードとの結合度が強くなるため、結果として通信性能が向上することになる。
【0041】
図5はアンテナが外部からの磁界を受ける場合の本発明の概念図である。外部からの磁界12によって、金属体7の外周部に沿って渦電流13が流れ、渦電流13によって金属体7の外周部には磁界14が発生する。このとき金属体7にアンテナパターン3の開口部に沿うように切り欠き部8を設けることで、切り欠き部8の3辺の外周部には図5のような磁界14が発生するため、アンテナパターン3の内周部には図5のような、下向きの磁界15が発生することになる。このとき磁界15を打ち消す方向にアンテナパターン3には渦電流16が発生するが、この渦電流16は金属体7の外周部に流れる渦電流13と順方向となるため、見かけ上アンテナパターンが大きくなった状態になり、通信相手となるRWが発する磁界をより多く受信できるようになり、結果として通信性能が向上することになる。
【0042】
図6は本発明のアンテナ装置1と、金属体7を用いない場合のアンテナ装置を比較したときの実験結果である。測定条件は以下の通りである。まず、本発明のアンテナ装置1を上下反対にして配置し、入出力端子5、6から整合回路を介して入力インピーダンスを50Ωに整合させた後、シグナルジェネレータから20dBmを入力する。金属板7のサイズは62mm×38mm、アンテナパターン3の外形サイズは20mm×20mmである。
【0043】
次に、上記アンテナ装置1の上空に72mm×42mmサイズで1ターンの探りコイルを配置し、上記探りコイルの両端をオシロスコープの観測端子に接続し、1MΩのポートインピーダンスで観測する。上記アンテナ装置1から発生した磁界が、上記探りコイルを鎖交することにより探りコイルの両端に誘導起電圧が発生し、上記オシロスコープによって観測されることになる。上記探りコイルは、上記アンテナ装置1の金属体7の中心と上記探りコイルの中心を正対させるように配置している。
【0044】
また、金属体7を用いない場合は、アンテナパターン3の中心と上記探りコイルの中心を正対させるように配置している。図6のグラフの横軸はアンテナ装置1と探りコイルの距離であり、縦軸は上記オシロスコープで観測した電圧波形のピーク間電圧の値である。図6のグラフによれば、金属体7を用いない場合のアンテナ装置と比較して、本発明のアンテナ装置1の方がより大きな誘導起電圧を発生させることができ、特に20mm以内の近傍においてはより大きな効果が確認できる。
【0045】
図7は本発明の実施例1のアンテナ装置を用いた携帯端末(本実施例では携帯電話)の分解斜視図である。携帯端末18は液晶パネル19とボタン20と筐体23と筐体24とそれに内包される基板21とバッテリー22などから構成されており、アンテナ1が筐体24に取り付けられている。アンテナ装置1は、基板21の、液晶パネル19が配置されている方向とは反対側の面に取り付けられている。また金属体7は、筐体24に貼り付けられており、その上にアンテナパターン3、磁性シート4が重ねられた構造になっている。
【0046】
金属体7は筐体24に貼り付けなくてもよいが、金属体7と基板21およびそれに実装される金属部品が接近すると特性が劣化するため、金属体7と基板21およびそれに実装される金属部品の距離をできる限り離すことが望ましい。
【0047】
また、筐体24と金属体7を一体化してもよく、その場合の筐体24の材質としては、金属体7と同様、導電性を有するものであればよく、金、銀、銅、アルミ、ニッケル等の導電性の金属製箔材、金属製板材等から適宜選択することができ、金属箔、導電性ペースト、めっき転写、スパッタ、蒸着、もしくはスクリーン印刷により形成することができる。
【0048】
また、基板21を金属体7の代わりにしてもよく、その場合、基板21の、液晶パネルが配置されている方向とは反対側の面に取り付けられ、構造としては、基板21の下に磁性体シート4、アンテナパターン3の順番で配置される。
【0049】
さらに、本実施例では、金属体7を金属製箔材等の形成しているため、例えば、カメラ等の搭載する携帯端末の部品の配置に応じて金属体7に切り欠きを設けて、部品の配置を避けて配置することができる。
【0050】
また、上記のように金属体7を金属製箔材等の折り曲げることができる材料を利用する、または、スパッタ等で筐体の曲面に直接形成することで、金属体7を筐体の曲面に沿って配置することができ、曲面に配置できない従来のアンテナ装置と比較して、アンテナ装置として自由に設計を行うことができる。
【0051】
(実施例2)
図8は本発明の実施例2におけるアンテナ装置1の斜視図であり、図9は本発明の実施例2におけるアンテナ装置の平面図であり、図10は本発明の実施例2におけるアンテナ装置の側面図である。
【0052】
図8に表されたアンテナ装置1は、アンテナ基板2の上にループ状のアンテナパターン3が形成されている。図8においては、アンテナパターン3は3ターンの場合を図示しているが、3ターンに限定するものではない。また、アンテナ上部に金属が配置されたときの影響を軽減するために、アンテナパターン3の上部に磁性体シート4を配置している。また、アンテナパターン3は入出力端子5、6によって、整合回路およびICの入出力端子に接続される。金属体7はアンテナ基板にほぼ接して配置されている。金属体7の切り欠き部8は、まずアンテナパターン3を金属体7の中心部に配置したときのアンテナパターン3の開口部に沿って切り抜き、そのうちの1辺から金属体7の向かい合う辺にスリット17を入れた形状に配置されている。アンテナ装置1の構成については、本発明の実施例1と同様である。
【0053】
次に図11、図12を用いて本発明のアンテナ装置の動作概念を説明する。
【0054】
図11はアンテナから送信する場合の本発明の概念図である。外部回路より、入出力端子5、6へ入った信号によりアンテナパターン3に電流9が流れ、それによって磁界10が生じる。金属体7には磁界10を打ち消す方向に渦電流11が発生するが、このとき金属体7にアンテナパターン3の開口部に沿うように切り欠き部8と、切り欠き部8の1辺から金属体7の外周部へスリット17を設けることで、切り欠き部の各辺には、アンテナパターン3に流れる電流9に対して逆方向となる渦電流11が流れるが、スリット17によって切り欠き部の各辺を流れる渦電流11は金属体7の外周部へと誘導されるため、金属体7の外周部を流れる渦電流11はアンテナパターン3に流れる電流9に対して順方向となる。そのため見かけ上アンテナパターンが大きくなった状態になり、通信相手となるカードとの結合度が強くなるため、結果として通信性能が向上することになる。
【0055】
図12はアンテナが外部からの磁界を受ける場合の本発明の概念図である。外部からの磁界12によって、金属体7の外周部に沿って渦電流13が流れ、渦電流13によって金属体7の外周部には磁界14が発生する。このとき金属体7にアンテナパターン3の開口部に沿うように切り欠き部8と、切り欠き部8の1辺から金属体7の外周部へスリット17を設けることで、切り欠き部8の各辺の外周部には図12のような磁界14が発生するため、アンテナパターン3の内周部には図12のような、下向きの磁界15が発生することになる。このとき磁界15を打ち消す方向にアンテナパターン3には渦電流16が発生するが、この渦電流16は金属体7の外周部に流れる渦電流13と順方向となるため、見かけ上アンテナパターンが大きくなった状態になり、通信相手となるRWが発する磁界をより多く受信できるようになり、結果として通信性能が向上することになる。
【0056】
図13は本発明のアンテナ装置1と、金属体7を用いない場合のアンテナ装置を比較したときの実験結果である。測定条件は、本発明の実施例1と同様である。図13のグラフによれば、金属体7を用いない場合のアンテナ装置と比較して、本発明のアンテナ装置1の方がより大きな誘導起電圧を発生させることができ、特に20mm以内の近傍においてはより大きな効果が確認できる。
【0057】
図14は本発明の実施例2のアンテナ装置を用いた携帯端末の分解斜視図である。携帯端末18とアンテナ装置1の構造については、本発明の実施例1と同様である。アンテナパターン3は、金属体7の中心に配置するのが望ましい。この場合においても、金属体7は筐体24に貼り付けなくてもよいが、金属体7と基板21およびそれに実装される金属部品が接近すると特性が劣化するため、金属体7と基板21およびそれに実装される金属部品の距離をできる限り離すことが望ましい。
【0058】
また、図1ではアンテナパターン3の開口部の3辺に沿うように切り欠き部8を形成しているが、切り欠き8をアンテナパターン3の開口部の2辺に沿うように形成してもよい。
【0059】
図15は、金属体7の切り欠き部8がアンテナパターン3の開口部の2辺に沿うときのアンテナ装置1と、金属体7を用いない場合のアンテナ装置を比較したときの実験結果である。図15のグラフによれば、アンテナパターン3の開口部の2辺に沿うときも、金属体7を用いない場合のアンテナ装置と比較して、本発明のアンテナ装置1の方がより大きな誘導起電圧を発生させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のアンテナ装置およびそれを用いた携帯端末装置は、通信可能領域を拡張しつつ、通信可能領域内で良好な通信性能を有するので、携帯電話等の電子機器に有用である。
【符号の説明】
【0061】
1 アンテナ装置
2 アンテナ基板
3 アンテナパターン
4 磁性体シート
5 入出力端子
6 入出力端子
7 金属体
8 切り欠き部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するループアンテナと、
前記ループアンテナと電気的に絶縁され、前記ループアンテナの開口部を有する一方の面に配置した金属体とを備え、
前記金属体には、前記ループアンテナの外形より小さく、前記金属体の外周と繋がるような切り欠き部を設け、前記ループアンテナは前記切り欠き部を覆うように前記金属体上に設けたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記切り欠き部の大きさは、前記ループアンテナの開口部とほぼ同じ大きさであることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1記載のアンテナ装置を筐体内に設け、前記金属体を筐体の裏面に設けたことを特徴とする携帯端末装置。
【請求項4】
請求項1記載のアンテナ装置を筐体内に設け、筐体内に設けられた回路基板を金属体として用いることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項1】
開口部を有するループアンテナと、
前記ループアンテナと電気的に絶縁され、前記ループアンテナの開口部を有する一方の面に配置した金属体とを備え、
前記金属体には、前記ループアンテナの外形より小さく、前記金属体の外周と繋がるような切り欠き部を設け、前記ループアンテナは前記切り欠き部を覆うように前記金属体上に設けたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記切り欠き部の大きさは、前記ループアンテナの開口部とほぼ同じ大きさであることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1記載のアンテナ装置を筐体内に設け、前記金属体を筐体の裏面に設けたことを特徴とする携帯端末装置。
【請求項4】
請求項1記載のアンテナ装置を筐体内に設け、筐体内に設けられた回路基板を金属体として用いることを特徴とする携帯端末装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−199343(P2011−199343A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60617(P2010−60617)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]