説明

アンテナ装置および携帯無線機

【課題】容量結合に要する領域を極力小さくしながら、必要な強度の容量結合を実現することで、防水対策を不要にするとともに、結合部の小型化を図る。
【解決手段】第1アンテナ素子部121および第2アンテナ素子部122が容量結合にて接続されている結合部では、第1アンテナ素子部121および第2アンテナ素子部122は、ベース部105を介して、z方向に沿って対向する部分、および、xy方向に沿って対向する部分を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水性能を有するアンテナ装置、およびそれを備える携帯無線機に関し、特に、容量結合に要する領域を最小にしつつ、必要な強度の容量結合を実現する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来の携帯電話200の概略構成を示す図であり、筐体201の背面側を抽出して示している。図6は、図5に示すスルーホール205部分の断面図である。
【0003】
従来、図5に示すように、携帯電話の一構造として、筐体201の背面側の外面に、外観上筐体201と一体化して見えるように、アンテナ装置202が設置されたものがある。アンテナ装置202は、二色成型により作製されたアンテナ素子203およびベース部204により構成されている。
【0004】
このような構造では、筐体201内に設置された回路基板の給電部から、筐体201外に設置されたアンテナ装置202のアンテナ素子203に給電を行うために、筐体201に形成された開口部にアンテナ装置202のベース部204に形成された突起部が嵌め込まれ、該突起部に形成されたスルーホール205を介して、アンテナ素子203が筐体201内に露出するように延設されている。すなわち、アンテナ素子203が、ベース部204の外面および内面に設けられ、それらがスルーホール205によって接続されている(図6参照)。筐体201内に露出したアンテナ素子203の一部分と、回路基板の給電部とを、導電体を用いて電気的に接続し給電を行うことで、アンテナ素子203を励振させ、アンテナ動作を行わせることができる。
【0005】
しかし、上記構造を有する携帯電話200では、筐体201とアンテナ装置202との境界部(筐体201の開口部とベース部204の突起部との嵌合部)を介して、また、スルーホール205を介して、外部から水が浸入するため、その2箇所に防水対策を施す必要があった。防水構造の実現には、メッキの段差や隙間などにシビアな設計が求められたり、部品・作業の増加による生産性の悪化やコスト増などを招くことがある。それゆえ、防水箇所を少なくすることが重要である。
【0006】
ここで、筐体201とアンテナ装置202との境界部の防水は、両者が別体であり組み立てられる性質上、ある程度防水対策が付随することは仕方ないが、アンテナ装置202は、それ自体が貫通穴であるスルーホール205を有する構成であるため、スルーホール205を除いて別の接続手段を用いることで、防水対策を不要とする改善の余地がある。
【0007】
ところで、屋外に設置する比較的大きなアンテナ、例えば、家屋の屋根に取り付けられるアンテナや、自動車に取り付けられるアンテナの分野では、給電部からアンテナ素子までを直流的(DC的)に接続するのではなく、容量結合を用いて電気的に接続する技術が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0008】
上記技術によれば、容量結合を用いることにより容量結合間の構成部材は分離することができる。よって、上述のアンテナ装置202において、アンテナ素子203を、ベース部204(筐体201)の外側に配置するアンテナ素子部と、ベース部204(筐体201)の内側に配置するアンテナ素子部とに分離し、両者をベース部204を介して対向させ、容量結合させることが考えられる。これにより、アンテナ動作を行わせつつ、ベース部204の外側と内側とを構造的に遮断し、内側(給電側)への水の浸入を防止することが可能となる。また、この容量結合を用いたアンテナ装置202を備える携帯電話200では、防水箇所を1箇所に抑え、防水構造を簡易化することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−275311号公報(1997年10月21日公開)
【特許文献2】特開2009−302668号公報(2009年12月24日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の技術では、アンテナ動作が可能な電気的接続を確立するのに必要な容量結合を実現するためには、結合部の平面面積が大きくなるため、結合部の小型化が困難であるという問題がある。
【0011】
つまり、容量結合とは、第1導電性部材と第2導電性部材とが、互いに向かい合う第1導電性部材および第2導電性部材の面積および距離によって決定される静電容量で、結合することをいう。
【0012】
例えば、特許文献1には、樹脂フィルムによって両面が被覆されたアンテナ素子と、給電端子とを容量結合させる構成が記載されている。よって、両者を樹脂フィルムを介して平面的に設ける構成のため、容量結合を強くしたい場合は、結合部の面積を大きくしなければならない。
【0013】
また、樹脂フィルムではなく、厚みのある部材(例えば樹脂成型品)を使用すると、容量結合を強くしたい場合は、さらに結合部の面積が大きくなる。例えば、特許文献2には、ダイポールアンテナに対する距離が比較的大きくても、容量結合によってダイポールアンテナに給電することが可能なアンテナ給電装置が記載されている。しかし、ダイポールアンテナを励振させるための仕組みとして、給電端子にスタブを付加しているため、結合部の面積は大きくなってしまう。
【0014】
さらに、上記問題によって、容量結合を用いたアンテナ装置を、携帯電話などの小型端末に採用することは難しい。例えば、携帯電話に搭載した場合、結合部の面積を大きくすると、アンテナ装置の近くに配置されている他の金属物と結合してしまい、アンテナ特性が劣化するという問題が生じる。
【0015】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、容量結合に要する領域を極力小さくしながら、必要な強度の容量結合を実現することで、防水対策を不要にするとともに、結合部の小型化を図ることができるアンテナ装置、およびそれを備える携帯無線機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のアンテナ装置は、上記課題を解決するために、
ベース部材と、
上記ベース部材の第1面に設けられた第1アンテナ素子部、および、上記ベース部材の上記第1面と反対側の第2面に設けられた第2アンテナ素子部により構成されたアンテナ素子とを備え、
上記第1アンテナ素子部および上記第2アンテナ素子部は、容量結合にて接続され、
上記第1面に平行な方向をxy方向とし、上記第1面から上記第2面に向かう方向をz方向とするとき、上記容量結合にて接続されている結合部では、上記第1アンテナ素子部および上記第2アンテナ素子部は、上記ベース部材を介して、z方向に沿って対向する部分、および、xy方向に沿って対向する部分を含むことを特徴としている。
【0017】
従来、容量結合は、平面的に形成された2つの部材が対向することにより実現されていた。これに対し、上記の構成によれば、容量結合にて接続されている結合部において、第1アンテナ素子部および第2アンテナ素子部は、z方向に沿って対向する部分に加えて、xy方向に沿って対向する部分を含んでいる。
【0018】
よって、上記の構成によれば、平面面積が同じ従来の構成と比べて、第1アンテナ素子部と第2アンテナ素子部とが対向する総面積を、増加させることが可能となる。つまりは、結合部を立体的に構成することで、平面的に構成する従来の構成(結合距離は同じ)と比べて、最小領域で容量結合の強度を確保することが可能となる。
【0019】
また、アンテナ素子を容量結合を用いて構成することで、ベース部材の第1面側と第2面側とは構造的に分離されている。よって、アンテナ装置は防水性能を有するので、アンテナ装置自体への防水対策は不要となっている。
【0020】
したがって、容量結合に要する領域を最小にしつつ、必要な強度の容量結合を実現することで、防水対策を不要にするとともに、結合部の小型化を図ることが可能となる。
【0021】
また、本発明のアンテナ装置では、
上記第1アンテナ素子部は、上記結合部において、
上記第1面に平面的に形成された第1平板部と、
上記ベース部材を貫通しない長さで上記第1平板部からz方向に沿って上記ベース部材の内部にそれぞれ形成され、互いに離間して配置された複数の第2平板部とを含み、
上記第2アンテナ素子部は、上記結合部において、
上記第2面に平面的に形成された第3平板部と、
上記ベース部材を貫通しない長さで上記第3平板部からz方向に沿って上記ベース部材の内部にそれぞれ形成され、互いに離間して配置された複数の第4平板部とを含み、
上記第1平板部と上記第3平板部とが、z方向に沿って対向し、
上記第2平板部と上記第4平板部とが、交互に配置されて、xy方向に沿って対向している構成とすることもできる。
【0022】
さらに、本発明のアンテナ装置では、
上記第1アンテナ素子部および上記第2アンテナ素子部は、上記ベース部材の上記結合部を横切り上記第2平板部および第4平板部に垂直な断面において、櫛型の形状をそれぞれ有し、互いに噛み合うように配置されている構成とすることもできる。
【0023】
さらに、本発明のアンテナ装置では、
z方向は、上記第1面から上記第2面までを垂直的に貫通する方向であることが好ましい。
【0024】
また、本発明のアンテナ装置では、
上記ベース部材の、少なくとも、対向する上記第1アンテナ素子部と上記第2アンテナ素子部とにより挟まれる部分は、誘電体により構成されていることが好ましい。
【0025】
上記の構成によれば、好適に容量結合を実現することが可能となる。
【0026】
本発明の携帯無線機は、
筐体と、
上記筐体に取り付けられたアンテナ装置とを備える携帯無線機であって、
上記アンテナ装置は、上述のアンテナ装置であることを特徴としている。
【0027】
上記の構成によれば、上述のアンテナ装置を備えることで、従来要していたアンテナ装置自体への余分な防水対策が不要になるとともに、結合部の小型化が可能となる。よって、筐体の内部と外部との境目以外に防水構造を必要としないので、携帯無線機に要する防水箇所を減らすことが可能となる。また、アンテナ素子と筐体内の他の金属物との距離を広げることができるので、アンテナとしての効率を確保しやすいエレメントの配置(例えば、アンテナ素子とGNDとの距離を確保する、アンテナ素子を筺体に対してできる限り外形に配置する、など)が可能となる。
【0028】
また、本発明の携帯無線機では、
上記アンテナ装置のベース部材には、上記第2面が天面となる突起部が形成され、
上記突起部は、上記筐体に形成された開口部に嵌め込まれていることが好ましい。
【0029】
上記の構成によれば、必要な防水箇所は、突起部が開口部に嵌め込まれている嵌合部の1箇所のみであり、防水構造を簡易化することが可能となる。
【0030】
また、本発明の携帯無線機では、
上記突起部が上記開口部に嵌め込まれている嵌合部には、防水部材が設けられている構成とすることもできる。
【0031】
また、本発明の携帯無線機では、
上記アンテナ装置のベース部材は、上記筐体に一体化されている構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明のアンテナ装置は、上記第1アンテナ素子部および上記第2アンテナ素子部が容量結合にて接続されている結合部では、上記第1アンテナ素子部および上記第2アンテナ素子部は、上記ベース部材を介して、z方向に沿って対向する部分、および、xy方向に沿って対向する部分を含む構成である。
【0033】
それゆえ、結合部を立体的に構成することで、平面的に構成する従来の構成と比べて、最小領域で容量結合の強度を確保することが可能となる。したがって、容量結合に要する領域を最小にしつつ、必要な強度の容量結合を実現することで、防水対策を不要にするとともに、結合部の小型化を図ることができるという効果を奏する。
【0034】
本発明の携帯無線機は、上記のアンテナ装置を備える構成である。
【0035】
それゆえ、従来要していたアンテナ装置自体への余分な防水対策が不要になるとともに、結合部の小型化が可能となる。したがって、携帯無線機に要する防水箇所を減らすことができるとともに、アンテナとしての効率を確保しやすいエレメントの配置が可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明における携帯無線機の実施の一形態を示す概略図であり、(a)は背面側を示し、(b)は表示面側を示す。
【図2】図1の携帯無線機の背面にある筐体を部分的に抽出して示す図であり、(a)は背面側を示し、(b)は側面を示し、(c)は筐体101の内部側を示す。
【図3】図2の携帯無線機の構成を分解して示す分解図である。
【図4】図1の携帯無線機に設けられたアンテナ装置のアンテナ素子を拡大して示す図であり、(a)は第1アンテナ素子部の配置側を示し、(b)は結合部の断面を示し、(c)は第2アンテナ素子部の配置側を示す。
【図5】従来の携帯電話の概略構成を示す図であり、筐体の背面側を抽出して示している。
【図6】図5に示すスルーホール部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0038】
図1は、本実施の形態の携帯無線機100の一構成例を示す概略図であり、(a)は背面側を示し、(b)は表示面側を示す。図2は、図1の携帯無線機100の背面にある筐体101を部分的に抽出して示す図であり、(a)は背面側を示し、(b)は側面を示し、(c)は筐体101の内部側を示す。図3は、図2の携帯無線機100の構成を分解して示す分解図である。
【0039】
(携帯無線機の構成)
図1〜図3に示すように、本実施の形態の携帯無線機100は、筐体101、表示部102、およびアンテナ装置103を備えている。携帯無線機100は、例えば手の平に収まる程度の大きさの小型の無線機であり、携帯電話(スマートフォン)や携帯タブレットなどの携帯端末として提供することができる。
【0040】
筐体101は、絶縁体により構成されている。筐体101の前面には、表示部102が設けられ、筐体101の背面には、アンテナ装置103が設けられている。筐体101の背面部分は、アンテナ装置103を収容し取り付けるための、段差が形成された形状を有している。筐体101の1段低くなった段差部分には、開口部107が形成されている。筐体101の内部には、回路基板など(図示せず)が格納されている。表示部102は、画像を表示する部分であり、例えば液晶パネルなどにより構成されている。表示部102は、タッチパネル機能を有していてもよい。
【0041】
アンテナ装置103は、アンテナ素子104およびベース部105(ベース部材)を備えている。アンテナ素子104およびベース部105は、例えば、金型を用いた成型により作製される。
【0042】
ベース部105は、誘電体(例えば樹脂)により構成されている。ベース部105は、L字型の形状を有するブロック材であり、L字状の一方の面にアンテナ素子104の大部分が設けられ、他方の面(一方の面と反対側の面)に突起部106が形成されている。以下、ベース部105の、上記一方の面を表面(第1面)と称し、上記他方の面を裏面(第2面)と称する。
【0043】
アンテナ素子104は、導電体(例えば金属)により構成されている。アンテナ素子104は、ベース部105の表面に設けられた第1アンテナ素子部と、ベース部105の裏面に設けられた第2アンテナ素子部とを含む。第1アンテナ素子部および第2アンテナ素子部は、容量結合にて接続されている。アンテナ素子104の具体的な構成については後述する。
【0044】
アンテナ装置103は、筐体101の外側であって、筐体101の背面の1段低くなった段差部分に取り付けられている。このとき、アンテナ装置103の突起部106は、筐体101の開口部107に嵌め込まれている。また、この嵌合部には、Oリング110が設けられている。これにより、筐体101とアンテナ装置103との境界部(筐体101の開口部107とベース部105の突起部106との嵌合部)からの水の浸入を防止することが可能となっている。
【0045】
(アンテナ素子の構成)
次に、アンテナ素子104の具体的な構成について説明する。
【0046】
図4は、アンテナ素子104を拡大して示す図であり、(a)は第1アンテナ素子部121の配置側を示し、(b)は結合部の断面を示し、(c)は第2アンテナ素子部122の配置側を示す。なお以下では、説明の便宜上、ベース部105の表面に平行な方向をxy方向とし、該表面から裏面までを垂直的に貫通する方向(xy方向と垂直な方向)をz方向とする。
【0047】
図4に示すように、アンテナ素子104は、第1アンテナ素子部121および第2アンテナ素子部122により構成されている。第1アンテナ素子部121および第2アンテナ素子部122は分離されているが、誘電率を持ったベース部105を介して間接的に容量結合させることで、電気的に接続されて、アンテナを構成する。ここで、以下では、第1アンテナ素子部121および第2アンテナ素子部122が容量結合にて接続されている部分(静電容量を形成している部分)を、結合部と呼ぶ。結合部は、アンテナ素子104の一部である。
【0048】
第1アンテナ素子部121は、ベース部105の表面に設けられており、携帯無線機100においては筐体101の外側に配置される。第1アンテナ素子部121は、L字状に形成されている。第1アンテナ素子部121の一方の端は開放されており、他方の端は結合部となっている。第1アンテナ素子部121の結合部以外の部分は、ベース部105の表面に平面的に形成されている。第1アンテナ素子部121の結合部の部分は、ベース部105の表面に平面的な第1平板部123と、ベース部105の表面に垂直的な複数の第2平板部124とを含んでいる。
【0049】
第1平板部123は、矩形の形状を有し、ベース部105の表面に平面的に形成されている。第2平板部124は、矩形の形状を有し、ベース部105の内部に、ベース部105の表面からz方向に沿って垂直的に形成されている。第2平板部124は、第1平板部123に接続されており、予め定められた一定の間隔をあけて配置されている。第2平板部124は、予め定められた一定の厚み(厚みA)を残すような、ベース部105を貫通しない長さを有する。これにより、第1アンテナ素子部121の結合部の部分は、断面視で櫛型の形状を有している(図4の(b)参照)。
【0050】
第2アンテナ素子部122は、ベース部105の裏面に設けられており、携帯無線機100においては筐体101の内側に配置される。第2アンテナ素子部122は、矩形状に形成されている。第2アンテナ素子部122は、全体が結合部となっている。第2アンテナ素子部122は、ベース部105の裏面に平面的な第3平板部125と、ベース部105の裏面に垂直的な複数の第4平板部126とを含んでいる。
【0051】
第3平板部125は、矩形の形状を有し、ベース部105の裏面、具体的には突起部106上に平面的に形成されている。第4平板部126は、矩形の形状を有し、ベース部105の内部に、ベース部105の裏面からz方向に沿って垂直的に形成されている。第4平板部126は、第3平板部125に接続されており、予め定められた一定の間隔をあけて配置されている。第4平板部126は、予め定められた一定の厚み(厚みB)を残すような、ベース部105を貫通しない長さを有する。これにより、第2アンテナ素子部122の結合部の部分は、断面視で櫛型の形状を有している(図4の(b)参照)。
【0052】
また、第1アンテナ素子部121の第1平板部123と、第2アンテナ素子部122の第3平板部125とは、z方向に沿って対向している。さらに、第1アンテナ素子部121の第2平板部124と、第2アンテナ素子部122の第4平板部126とは、予め定められた一定の間隔(間隔C)をあけて交互に配置され、xy方向に沿って対向している。これにより、結合部において、第1アンテナ素子部121と第2アンテナ素子部122とは、櫛型の構造体が互いに噛み合うように配置されている。すなわち、第1アンテナ素子部121および第2アンテナ素子部122は、互い違いに配置されるよう組み合わせられている。
【0053】
よって、結合部においては、第1アンテナ素子部121および第2アンテナ素子部122は、一定の厚みのベース部105を介して、すなわち一定の間隔で、z方向に沿って対向するとともに、xy方向に沿って対向している。ゆえに、第1アンテナ素子部121と第2アンテナ素子部122との間においては、直流的に非導通であるが、z方向に沿って対向する部分およびxy方向に沿って対向する部分の面積および距離によって決定される静電容量で、第1アンテナ素子部121と第2アンテナ素子部122とが結合する。つまりは、第1アンテナ素子部121と第2アンテナ素子部122とが容量結合するので、一体的に励振させることが可能となる。
【0054】
また、この容量結合は、z方向に沿って対向する部分に加えて、xy方向に沿って対向する部分も寄与しているので、結合部の平面面積をなるべく小さく抑えたまま、静電容量を増加させることができる。このように、アンテナ装置103は、小さな体積で、所定の結合量を確保するための仕組みを有している。なお、「厚みA=厚みB=間隔C」とすることが望ましいが、これに限らない。また、ベース部105は、例えば樹脂成型により作製されるので、ある程度の厚みを有している。
【0055】
容量結合のための静電容量の値は、アンテナ素子104が、例えば、音声通話の電波やデジタル放送の電波などを受信することができる程度に設定される。本実施例の構成によれば、結合部をコンパクトにして、静電容量を増加させることができるので、結合部の小型化を実現しつつ、広いレンジのアンテナを構成することが可能である。
【0056】
第2アンテナ素子部122の第3平板部125は、筐体101の内部にある回路基板に設けられた給電部と、導電体(例えばバネ端子など)を用いて電気的に接続される。これにより、給電部から第2アンテナ素子部122の第3平板部125に給電を行うことで、第1アンテナ素子部121および第2アンテナ素子部122、すなわちアンテナ素子104を励振させ、アンテナ動作を行わせることができる。第2アンテナ素子部122の第3平板部125は、給電点となる。
【0057】
なお、第1アンテナ素子部121の結合部以外の部分および第1平板部123は、ベース部105の表面と平らな面を構成するように、ベース部105に埋め込んで形成することが好ましい。第2アンテナ素子部122の第3平板部125は、ベース部105の裏面、すなわち突起部106の天面と平らな面を構成するように、ベース部105(突起部106)に埋め込んで形成することが好ましい。
【0058】
このように、本実施例のアンテナ装置103によれば、容量結合にて接続されている結合部において、第1アンテナ素子部121および第2アンテナ素子部122は、z方向に沿って対向する部分に加えて、xy方向に沿って対向する部分を含んでいる。
【0059】
よって、従来では、容量結合は平面的に形成された2つの部材が対向することにより実現されていたことを考えると、本実施例のアンテナ装置103では、平面面積が同じ従来の構成と比べて、第1アンテナ素子部121と第2アンテナ素子部122とが対向する総面積を、増加させることが可能となる。つまりは、結合部を立体的に構成することで、平面的に構成する従来の構成(結合距離は同じ)と比べて、小さい領域で容量結合の強度を確保することが可能となる。
【0060】
また、アンテナ素子104を容量結合を用いて構成することで、ベース部105の表面側と裏面側とは構造的に分離されている。よって、アンテナ装置103は防水性能を有するので、アンテナ装置103自体への防水対策は不要となっている。
【0061】
したがって、アンテナ装置103では、容量結合に要する領域を最小にしつつ、必要な強度の容量結合を実現することで、防水対策を不要にするとともに、結合部の小型化を図ることが可能となる。
【0062】
また、携帯無線機100では、アンテナ装置103を備えることで、従来要していたアンテナ装置自体への余分な防水対策が不要になるとともに、結合部の小型化が可能となる。よって、筐体101の内部と外部との境目以外に防水構造を必要としないので、携帯無線機100に要する防水箇所を減らすことができる。また、アンテナ素子104と筐体101内の他の金属物との距離を広げることができるので、アンテナとしての効率を確保しやすいエレメントの配置(例えば、アンテナ素子104とGNDとの距離を確保する、アンテナ素子104を筺体101に対してできる限り外形に配置する、など)が可能となる。
【0063】
さらに、携帯無線機100では、必要な防水箇所は、突起部106が開口部107に嵌め込まれている嵌合部の1箇所のみであり、防水構造を簡易化することが可能となる。例えば、嵌合部にOリング110を設けるという簡易な防水構造を採用することができる。
【0064】
(変形例)
上述のアンテナ装置103では、第1アンテナ素子部121の第2平板部124は、ベース部105の表面から垂直的に形成され、第2アンテナ素子部122の第4平板部126は、ベース部105の裏面から垂直的に形成されていた。しかしながら、第2平板部124および第4平板部126はそれぞれ、ベース部105の表面およびベース部105の裏面に対して垂直でなくてもよい。すなわち、z方向は、ベース部105の表面から裏面に向かう方向であればよく、ベース部105の表面から裏面までを垂直的に貫通する方向からずれていてもよい。
【0065】
また、上述のアンテナ装置103では、アンテナ素子104の結合部は櫛型構造を有していたが、櫛型構造に限るものではなく、第1アンテナ素子部121と第2アンテナ素子部122とを立体的に対向させる形の構造(第1アンテナ素子部121および第2アンテナ素子部122が、z方向に沿って対向する部分と、xy方向に沿って対向する部分とを含む構造)であればよい。これにより、櫛型構造と略同様に、最小の面積(領域)で必要な容量を確保することができる。なお、結合部において、第1アンテナ素子部121と第2アンテナ素子部122とが向かい合ったときの距離は、一定であることが望ましいが、これに限らない。
【0066】
また、ベース部105は誘電体により構成されているので、結合部において、好適に容量結合を実現することが可能となる。但し、アンテナ特性を劣化させない限りは、ベース部105は、少なくとも、対向する第1アンテナ素子部121と第2アンテナ素子部122とにより挟まれる部分が、誘電体により構成されていてもよい。
【0067】
また、上述の携帯無線機100では、アンテナ装置103と筐体101との間の嵌合部における防水構造に、Oリング110を用いていたが、これに限るわけではない。例えば、Oリング110の代わりに防水テープなどの防水部材を用いることもでき、さらには、複数の防水部材を併用することも勿論可能である。
【0068】
さらに、上述の携帯無線機100では、筐体101とアンテナ装置103とが別体であり組み立てられていたため、上記境目に防水構造が必要となっていたが、筐体101とアンテナ装置103とを一体化して、防水構造を除くこともできる。つまりは、ベース部105を筐体101と一体化し、この一体化した筐体にアンテナ素子104を埋め込むような構成を適用してもよい。これにより、上記の防水部材のような特別な防水構造を不要とすることが可能となる。
【0069】
なお、図3などに示したように、ベース部105および第1アンテナ素子部121はL型の形状を有していたが、この形状に限るものではなく、例えば長方形などの形状を有していてもよい。特に、ベース部105は、アンテナ特性の保護、また、組立の容易さ(組立式の場合)などを考慮して、様々な形状で作製することができる。
【0070】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、防水性能を有することが望まれるアンテナ装置に関する分野に好適に用いることができるだけでなく、アンテナ装置の製造方法に関する分野に好適に用いることができ、さらには、アンテナ装置を備える携帯無線機、例えば携帯電話などの分野にも広く用いることができる。
【符号の説明】
【0072】
100 携帯無線機
101 筐体
102 表示部
103 アンテナ装置
104 アンテナ素子
105 ベース部(ベース部材)
106 突起部
107 開口部
110 Oリング(防水部材)
121 第1アンテナ素子部
122 第2アンテナ素子部
123 第1平板部
124 第2平板部
125 第3平板部
126 第4平板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
上記ベース部材の第1面に設けられた第1アンテナ素子部、および、上記ベース部材の上記第1面と反対側の第2面に設けられた第2アンテナ素子部により構成されたアンテナ素子とを備え、
上記第1アンテナ素子部および上記第2アンテナ素子部は、容量結合にて接続され、
上記第1面に平行な方向をxy方向とし、上記第1面から上記第2面に向かう方向をz方向とするとき、上記容量結合にて接続されている結合部では、上記第1アンテナ素子部および上記第2アンテナ素子部は、上記ベース部材を介して、z方向に沿って対向する部分、および、xy方向に沿って対向する部分を含むことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
上記第1アンテナ素子部は、上記結合部において、
上記第1面に平面的に形成された第1平板部と、
上記ベース部材を貫通しない長さで上記第1平板部からz方向に沿って上記ベース部材の内部にそれぞれ形成され、互いに離間して配置された複数の第2平板部とを含み、
上記第2アンテナ素子部は、上記結合部において、
上記第2面に平面的に形成された第3平板部と、
上記ベース部材を貫通しない長さで上記第3平板部からz方向に沿って上記ベース部材の内部にそれぞれ形成され、互いに離間して配置された複数の第4平板部とを含み、
上記第1平板部と上記第3平板部とが、z方向に沿って対向し、
上記第2平板部と上記第4平板部とが、交互に配置されて、xy方向に沿って対向していることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
上記第1アンテナ素子部および上記第2アンテナ素子部は、上記ベース部材の上記結合部を横切り上記第2平板部および第4平板部に垂直な断面において、櫛型の形状をそれぞれ有し、互いに噛み合うように配置されていることを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
z方向は、上記第1面から上記第2面までを垂直的に貫通する方向であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
上記ベース部材の、少なくとも、対向する上記第1アンテナ素子部と上記第2アンテナ素子部とにより挟まれる部分は、誘電体により構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
筐体と、
上記筐体に取り付けられたアンテナ装置とを備える携帯無線機であって、
上記アンテナ装置は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアンテナ装置であることを特徴とする携帯無線機。
【請求項7】
上記アンテナ装置のベース部材には、上記第2面が天面となる突起部が形成され、
上記突起部は、上記筐体に形成された開口部に嵌め込まれていることを特徴とする請求項6に記載の携帯無線機。
【請求項8】
上記突起部が上記開口部に嵌め込まれている嵌合部には、防水部材が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の携帯無線機。
【請求項9】
上記アンテナ装置のベース部材は、上記筐体に一体化されていることを特徴とする請求項6に記載の携帯無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−98938(P2013−98938A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242835(P2011−242835)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】