説明

アンテナ装置および通信装置

【課題】通信時に、自動的に受信に適した状態に調整することが可能なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】所定長の線状のアンテナ導体21を直接的に支持して、あるいは、補助部材を介して、アンテナ導体21と一体的に変位可能な部材であって、供給される制御電圧に応じて、アンテナ導体21の空間での位置を変更させるように変位するアクチュエータ部材22を備える。アンテナ導体21の一端側において、アクチュエータ部材22およびアンテナ導体21を、取り付け用部材により通信装置に対して取り付ける。アクチュエータ部材22は、制御電圧により、線状のアンテナ導体12の中心線を含む少なくとも1平面内において、アンテナ導体21を、その一端側を固定支点として変位させるように変位制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯電話端末などの通信装置に適用して好適なアンテナ装置に関する。また、このアンテナ装置を装着した通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話端末のような携帯型通信装置は、持ち運びするものであり、アンテナ装置部を含めた全体のサイズは、できるだけ小型にした方が良く、アンテナ装置部も邪魔にならないようにした方が良い。
【0003】
そこで、従来、例えば特許文献1(特開2005−167829号公報)に示されているように、アンテナ装置部をストラップ形状にした携帯通信端末が提案されている。すなわち、この特許文献1においては、アンテナ装置部は、可撓性の基板(フレキシブル基板)にアンテナ導体を形成したアンテナ部材を用いており、携帯通信端末に対してストラップとして取り付けることができる。
【0004】
したがって、アンテナ装置部は、携帯通信端末に対して邪魔にならずに、また、携帯通信端末の外観を損なうこともない。
【0005】
また、特許文献2(特開平7−147508号公報)には、形状記憶合金をアンテナ部材に用いた通信装置用アンテナが提案されている。すなわち、特許文献2のアンテナは、非通信時(非使用時)には、アンテナ部材をできるだけ通信装置筐体内に収納させるようにすると共に、通信時には、アンテナ部材を構成する形状記憶合金を加熱して、アンテナを筐体外部に伸長させるように起立させるものである。
【0006】
したがって、特許文献2によれば、アンテナは、非通信時には邪魔にならない収納状態とされ、通信時には、自動的に、起立させられて、受信感度が高められるようにようにされ、便利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−167829号公報
【特許文献1】特開平7−147508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のアンテナ装置では、通信時に、アンテナ部材を、受信感度を高めた状態に保持したり、受信方向に保持したり、受信に適した状態にすることが困難であるという問題があった。
【0009】
特許文献2のアンテナ装置の場合には、この問題点が回避されるが、形状記憶合金を用いて、ある決められた状態に戻すだけなので、自由度が少なく、受信感度の細かい調整が困難であるという問題があった。
【0010】
この発明は、以上の問題点にかんがみ、通信時に、自動的に受信に適した状態に調整することが可能なアンテナ装置および通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、この発明は、
所定長の線状のアンテナ導体と、
前記線状のアンテナ導体を直接的に支持して、あるいは、補助部材を介して、前記アンテナ導体と一体的に変位可能な部材であって、供給される制御電圧に応じて、前記アンテナ導体の空間での位置を変更させるように変位するアクチュエータ部材と、
前記アンテナ導体の一端側において、前記アクチュエータ部材および前記アンテナ導体を、通信装置に対して取り付けるための取り付け用部材と、
を備え、
前記アクチュエータ部材は、前記制御電圧により、前記線状のアンテナ導体の中心線を含む少なくとも1平面内において、前記アンテナ導体を、前記一端側を固定支点として変位させるように変位制御される
ことを特徴とするアンテナ装置を提供する。
【0012】
上述の構成のこの発明によるアンテナ装置によれば、線状のアンテナ導体が、アクチュエータ部材により変位制御される構成であるので、非通信時には、邪魔にならない状態にされると共に、通信時には、アクチュエータ部材に制御電圧が供給されることにより、自動的に受信に適した状態に調整されることが可能である。
【0013】
また、この発明は、
通信回路および制御回路が内蔵される筐体と、
前記筐体の外部にアンテナ導体が設けられるアンテナ装置と、
を備える通信装置であって、
前記アンテナ装置は、
所定長の線状の前記アンテナ導体と、
前記線状のアンテナ導体を直接的に支持して、あるいは、補助部材を介して、前記アンテナ導体と一体的に変位可能な部材であって、供給される制御電圧に応じて、前記アンテナ導体の空間での位置を変更させるように変位するアクチュエータ部材と、
前記アンテナ導体の一端側において、前記アクチュエータ部材および前記アンテナ導体を、通信装置に対して取り付けるための取り付け用部材と、
を備え、
前記制御回路は、
前記アンテナ導体を通じて受信される電波の強度を検知する検知手段と、
前記検知手段で検知された前記電波の強度に応じて前記制御電圧を生成し、生成した前記制御電圧を前記アクチュエータ部材に供給して、前記アンテナ導体を受信感度の高い位置にするように前記アクチュエータ部材を変位制御するアクチュエータ駆動制御手段と、
を備える通信装置を提供する。
【0014】
上述の構成のこの発明による通信装置によれば、線状のアンテナ導体が、アクチュエータ部材により変位制御される構成であるので、非通信時には、邪魔にならない状態にされる。そして、通信時には、アクチュエータ部材に、電波の強度に応じた制御電圧が供給されることにより、自動的に受信感度の高い位置に調整される。
【0015】
さらに、この発明は、
通信回路および制御回路が内蔵される筐体と、
前記筐体の外部にアンテナ導体が設けられるアンテナ装置と、
を備え、
ユーザの頭部近傍に保持されて通信機能が実行される通信装置であって、
前記アンテナ装置は、
所定長の線状の前記アンテナ導体と、
前記線状のアンテナ導体を直接的に支持して、あるいは、補助部材を介して、前記アンテナ導体と一体的に変位可能な部材であって、供給される制御電圧に応じて、前記アンテナ導体の空間での位置を変更させるように変位するアクチュエータ部材と、
前記アンテナ導体の一端側において、前記アクチュエータ部材および前記アンテナ導体を、通信装置に対して取り付けるための取り付け用部材と、
を備え、
前記制御回路は、
前記通信機能の実行時を検知する通信状態検知手段と、
前記通信状態検知手段で前記通信が実行されていることが検知されたときに、ユーザの頭部近傍に保持された状態において、人体に許容される電磁波の基準を満足するように、前記アンテナ導体を、ユーザの頭部から遠ざけるようにする前記制御電圧を生成し、生成した前記制御電圧を前記アクチュエータ部材に供給するアクチュエータ駆動制御手段と、
を備える通信装置を提供する。
【0016】
上述の構成のこの発明による通信装置によれば、線状のアンテナ導体が、アクチュエータ部材により変位制御される構成であるので、非通信時には、邪魔にならない状態にされる。そして、通信時には、アクチュエータ部材に、アンテナ導体をユーザの頭部から遠ざけるようにする制御電圧が供給されることにより、自動的に、人体に許容される電磁波の基準を満足するように、アンテナ導体が、ユーザの頭部から遠ざけられる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、通信時に、自動的に受信に適した状態に調整することが可能なアンテナ装置および通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明によるアンテナ装置の一実施形態を説明するための図である。
【図2】この発明による通信装置の一実施形態としての携帯電話端末の外観を示す図である。
【図3】この発明によるアンテナ装置の一実施形態におけるアンテナ導体の変位制御を説明するための図である。
【図4】この発明によるアンテナ装置の一実施形態におけるアンテナ導体の変位制御を説明するための図である。
【図5】この発明によるアンテナ装置の一実施形態におけるアンテナ導体の変位制御を説明するための図である。
【図6】この発明による通信装置の一実施形態としての携帯電話端末の内部回路のハードウエア構成例を示す図である。
【図7】この発明によるアンテナ装置の一実施形態におけるアクチュエータ駆動回路の構成例を示す図である。
【図8】この発明によるアンテナ装置の一実施形態におけるアンテナ導体の変位制御処理の一例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
【図9】この発明によるアンテナ装置の一実施形態におけるアンテナ導体の変位制御処理の一例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
【図10】この発明によるアンテナ装置の一実施形態におけるアンテナ導体の変位制御処理の一例を説明するために用いる図である。
【図11】この発明によるアンテナ装置の一実施形態におけるアンテナ導体の変位制御処理の一例を説明するために用いる図である。
【図12】この発明によるアンテナ装置の一実施形態におけるアンテナ導体の変位制御処理の一例を説明するために用いる図である。
【図13】この発明によるアンテナ装置の一実施形態におけるアンテナ導体の変位制御処理の一例を説明するために用いる図である。
【図14】この発明によるアンテナ装置の一実施形態におけるアンテナ導体の変位制御処理の一例を説明するために用いる図である。
【図15】この発明によるアンテナ装置の一実施形態におけるアンテナ導体の変位制御処理の他の例を説明するために用いる図である。
【図16】この発明によるアンテナ装置の一実施形態におけるアンテナ導体の変位制御処理の他の例を説明するために用いる図である。
【図17】この発明によるアンテナ装置の一実施形態におけるアンテナ導体の変位制御処理の他の例を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図18】この発明によるアンテナ装置の他の実施形態を説明するための図である。
【図19】この発明によるアンテナ装置の他の実施形態を説明するための図である。
【図20】この発明によるアンテナ装置の他の実施形態を説明するための図である。
【図21】この発明によるアンテナ装置の他の実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明によるアンテナ装置の実施形態および、この実施形態のアンテナ装置を備える通信装置の実施形態を、図を参照しながら説明する。
【0020】
以下に説明する実施形態は、通信装置が携帯電話端末の場合の例である。
【0021】
携帯電話端末では、一般的に、携帯電話端末筐体に設けられる受話器(スピーカ)で受話音声を聴取するので、ユーザは、携帯電話端末筐体を頭部の耳の近傍に保持するようにする。
【0022】
ところで、人体に対する電磁波の影響を考慮して、平成9年に、人体に許容される電磁波の基準が定められた。この人体に許容される電磁波の基準の指標としては、現行では、SAR(Specific Absorption Rate)が用いられている。このSARは、単位質量の組織に単位時間に吸収されるエネルギー量のことであり、このSARにより、人体が、或る電波を発する機器から、一定時間にどのくらいのエネルギーを受けたかが判る。
【0023】
SARの単位はW/kgで、1キログラム(kg)当たり、何ワット(W)の熱エネルギーを吸収するかという単位で表わされる。この値が大きいほど、人体への影響が大きいということになる。
【0024】
人体に許容される電磁波の基準として「全身平均SAR」と「局所SAR」が定められたが、携帯電話端末では、人体頭部の近傍で使用する通信機器における電磁波が問題となるので、局所SARが用いられる。
【0025】
この実施形態の通信装置では、以下に説明するように、アンテナ装置の空間的な位置を変位制御することができるようにする。この実施形態の携帯電話端末の場合には、上述の人体への電磁波の影響を考慮して、アンテナ装置を最適な受信状態になるようにするだけでなく、人体に許容される電磁波の基準を満足するようにする。
【0026】
図2は、この実施形態の携帯電話端末10の外観を示すもので、この実施形態の携帯電話端末10は、細長のほぼ直方体形状の筐体1に、線状のアンテナ装置2が取り付けられたものとされている。
【0027】
図2に示されるように、この実施形態では、線状のアンテナ装置2は、筐体1の受話用スピーカの放音口が形成される面1aとは反対側の、面1aと対向する面1b側に設けられる。筐体1の面1bは、ユーザが携帯電話端末10を手で持って、筐体1を頭部の耳の近傍に保持して通話をする際に、頭部側ではなく、外側を向く面である。
【0028】
そして、線状のアンテナ装置2は、細長直方体の筐体1の面1bの長手方向の一端側に設けられた取付部1cに、その一端側が固定されて取り付けられることにより、筐体1に対してストラップのように取り付けられる。なお、筐体1の面1aの、面1bの取付部1cとは反対側の部分には、図示は省略するが、受話用スピーカの放音口が設けられている。
【0029】
ここで、この実施形態では、取付部1cは、面1bの短辺方向のほぼ中央に設けられている。そして、線条のアンテナ装置1の長さ方向が、面1bに対して直交するように取付部1cは形成されている。
【0030】
このようにすると、携帯電話端末10を手で持って、筐体1を頭部の耳の近傍に保持して通話をする際には、アンテナ装置2とユーザの頭部との間に筐体1が存在し、アンテナ装置2からの電磁波の頭部への直接的な入射が、できるだけ回避される。
【0031】
しかし、筐体1が小型化された場合には、筐体1の存在のみでは、線状のアンテナ装置2からの電磁波について、人体に許容される基準を満足することが困難である。そこで、この実施形態では、携帯電話端末10での発呼、着信に基づく通話時には、アンテナ装置2は、人体に許容される電磁波の基準を満足するように位置変位させるように構成する。
【0032】
<アンテナ装置2の実施形態>
この実施形態のアンテナ装置2の構成例を、図1以下を参照しながら説明する。
【0033】
図1(A)は、アンテナ装置2および携帯電話端末10の筐体1の取付部1cの部分、さらに筐体1の内部のアンテナ装置2に対する回路部分を示す図である。また、図1(B)は、アンテナ装置2の線状部分の断面図であり、これは、図1(A)のA−A断面図に相当する。
【0034】
図1に示すように、この実施形態のアンテナ装置2は、アンテナ導体21と、アクチュエータ部材22と、カバー23と、取り付け用部材24とからなる。
【0035】
この実施形態では、図1に示すように、アンテナ装置2は、線状のアンテナ導体21と、線状のアクチュエータ部材22とが、電気的に分離された状態で、カバー23に覆われて一体的なものとされ、その全体として線状に構成されている。したがって、アンテナ装置2は、補助部材の例としてのカバー23により、アンテナ導体2とアクチュエータ部材23とが一体的に変位可能な構造とされる。
【0036】
また、この線状のアンテナ装置2は、その長さ方向の一端側が取り付け用部材24に固定して取り付けられている。そして、アンテナ装置2は、取り付け用部材24が、筐体1の取付部11cに対して、筐体1の内側から接着、ねじ止めなどにより、固定されることにより、当該アンテナ装置2の一端側において、筐体1に対して固定されてストラップ状に取り付けられる。
【0037】
アンテナ導体21は、携帯電話端末1のアンテナ導体として適当な所定長を備える線状の可撓性導体からなる。このアンテナ導体21の一端側は、取り付け用部材24を通じて携帯電話端末10の筐体1内に導かれ、アンテナ回路11に接続されている。
【0038】
アンテナ回路11は、アンテナ導体21で受信された受信電波から、受信信号を抽出して、後段の回路部に供給すると共に、送信信号生成部(図示を省略)からの送信信号をアンテナ導体21に供給するようにする。
【0039】
アクチュエータ部材22は、この例では、アンテナ導体21とほぼ同じ長さとされ、アンテナ導体21に沿って配された線状の部材とされる。このアクチュエータ部材22は、この例では、イオン交換樹脂を素材として用いたイオン導電性高分子線条220により構成されている。すなわち、アクチュエータ部材22は、この例では、高分子アクチュエータ(イオン伝導アクチュエータ)からなる。
【0040】
そして、イオン導電性高分子線条220は、この実施形態では、図1(B)に示すように、断面が正方形の四角柱の形状とされていると共に、その4つの側面には、4個の電極25x,25y,26x,26yが、互いに絶縁されて形成されている。この場合、4個の電極25x,25y,26x,26yのそれぞれは、イオン導電性高分子線条220の4側面のそれぞれにおいて、イオン導電性高分子線条220の長さ方向の一端側から他端側の全体に渡って、例えば蒸着などにより被着形成されている。
【0041】
筐体1内には、アクチュエータ駆動回路12が設けられ、このアクチュエータ駆動回路12からのアクチュエータ駆動制御電圧が、アクチュエータ部材22に供給される。この例では、アクチュエータ駆動制御電圧は、直流電圧である。
【0042】
そして、この例の場合、図3に示すように、互いに対向する電極25x,26xが第1の対電極とされて、この第1の対電極25x,26xに第1のアクチュエータ駆動制御電圧Vxが、アクチュエータ駆動回路12から供給される。
【0043】
また、図3に示すように、互いに対向する電極25y,26yが第2の対電極とされて、この第2の対電極25y、26yに、第2のアクチュエータ駆動制御電圧Vyが、アクチュエータ駆動回路12から供給される。
【0044】
この場合、イオン導電性高分子線条220の電極25x,26xが形成される側面と、電極25y,26yが側面とは、互いに直交しているので、直流電圧VxとVyとでは、その印加方向(電界方向)が互いに直交している。
【0045】
アクチュエータ部材22は、第1および第2のアクチュエータ駆動制御電圧VxおよびVyの極性および大きさのそれぞれに応じて変位(変形)をする。以下、このアクチュエータ部材22の変位原理について説明する。なお、このイオン伝導アクチュエータについては、アドレス(URL)が(http://www.eamex.co.jp/ion.html)のwebサイトに詳しく紹介されている。
【0046】
この例のイオン導電性高分子線条220は、生体の筋肉程度の硬さであり、可撓性の素材である。このイオン導電性高分子線条220は、図4に示すように、当該線条220を挟んで対向する2電極間に直流電圧を印加することにより、変位(変形)を起こす。
【0047】
図4においては、2個の電極25x,26x間に、アクチュエータ駆動制御電圧Vxが印加されたときの、イオン導電性高分子線状220の変位状況を示している。
【0048】
すなわち、この例のイオン導電性高分子線条220は、図4に示すように、イオン交換樹脂221内に陽イオン222および極性分子223を充填したものである。
【0049】
電極24,25間に電圧を印加しない状態では、この例のイオン導電性高分子線条220、すなわち、アクチュエータ部材22は、重力あるいはユーザによって加えられる外力に応じて曲げられた状態となり、通常のストラップと同様の動きをすることができる。
【0050】
この実施の形態では、アクチュエータ駆動回路12からのアクチュエータ駆動制御電圧は、携帯電話端末1において発信が行われたり、着信があったときに、アクチュエータ部材22に供給されるように構成されている。したがって、アクチュエータ部材22は、携帯電話端末1が通信状態でないときには、通常のストラップと同様に、自由に外力によって曲げられる。なお、このとき、イオン導電性高分子線条220の電極には、曲げに応じた起電力が発生する。
【0051】
図4(B)に示すように、電極25x,26x間の印加電圧をゼロとしたときには、陽イオン222および極性分子223は、いずれの電極側にも偏らずに分散し、イオン導電性高分子線条220、すなわち、アクチュエータ部材22は、真直状態を保つ。
【0052】
なお、このアクチュエータ部材22が真直状態であるときのアクチュエータ部材22の長さ方向を、この明細書では、互いに直交するx,y,zからなる3次元方向のうちのz方向とする。
【0053】
次に、図4(A)に示すように、電極25x,26x間に、電極25xを陽極、電極26xを陰極として直流電圧Vxを印加すると、陽イオン222および極性分子223が、陰極である電極26x側に移動する。すると、イオン導電性高分子線条220の電極25x側と電極26x側とで膨潤に差が生じ、電極26x側が伸び、電極25x側が縮んで、イオン導電性高分子線条220、すなわち、アクチュエータ部材22は、固定端側を支点として、自由端側が電極25x側に曲がるように変形(変位)する。
【0054】
また、逆に、図4(C)に示すように、電極25x,26x間に、電極25xを陰極、電極26xを陽極として電圧Vxを印加すると、陽イオン222および極性分子223が、陰極である電極25x側に移動する。すると、イオン導電性高分子線条220の電極25x側と電極26x側とで膨潤に差が生じ、電極26x側が縮み、電極25x側が伸びて、イオン導電性高分子線条220、すなわち、アクチュエータ部材22は、固定端側を支点として、自由端側が電極26x側に曲がるように変形(変位)する。
【0055】
以上のように、イオン導電性高分子線条220からなるアクチュエータ部材22は、直流電圧の印加方向(電界方向)を含む面内において、印加直流電圧の大きさに応じた変形(変位)をする。
【0056】
この明細書では、電極25x,26x間に印加される電圧Vxによりアクチュエータ部材22が変位する方向を、互いに直交するx,y,zの3次元方向のうちのx方向とする。したがって、電極25x,26x間に印加される電圧Vxによりアクチュエータ部材22は、図3に示すように、z方向およびx方向を含む面Sxz内で、電圧Vxの極性および大きさに応じた変形(変位)をする。
【0057】
前述したように、この例では、イオン導電性高分子線条220を挟んで対向する2対の電極25x,26xおよび25y,26yが、イオン導電性高分子線条220の長さ方向の一端側から他端側まで全体に渡って形成されている。
【0058】
そして、前述の図3に示したように、対電極25x,26xに対して第1のアクチュエータ駆動制御電圧Vxが印加されると共に、対電極25y,26yに対して第2のアクチュエータ駆動制御電圧Vyが印加される。
【0059】
前述したように、イオン導電性高分子線条220からなるアクチュエータ部材22は、直流電圧の印加方向(電界方向)を含む面内において、印加直流電圧の大きさに応じた変形(変位)をするので、イオン導電性高分子線条220は、電圧Vyの印加方向を含む面内において変位する。
【0060】
この明細書では、電極25y,26y間に印加される電圧Vyによりアクチュエータ部材22が変位する方向を、互いに直交するx,y,zの3次元方向のうちのy方向とする。
【0061】
したがって、この実施形態では、図3に示すように、イオン導電性高分子線条220は、アクチュエータ駆動制御電圧Vyにより、その直流電圧の印加方向(電界方向)を含む面Syz(z方向およびy方向を含む面)内で、電圧Vyの極性および大きさに応じた変形(変位)をする。
【0062】
この結果、イオン導電性高分子線条220は、図5に示すように、2種のアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyが同時に印加されることにより、それぞれ面Sxzおよび面Syz内での独立の変形(変位)をする。そして、イオン導電性高分子線条220は、実際上は、面Sxzおよび面Syz内での独立の変形(変位)を合成した変形(変位)をするようになる。
【0063】
つまり、アクチュエータ部材22においては、2つの面Sxzおよび面Syzで規定される空間における任意の方向および任意の大きさの変形(変位)を、2種のアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyをイオン導電性高分子線条220に同時に印加することにより、実現することができる。
【0064】
そして、この実施形態では、アンテナ導体21は、このアクチュエータ部材22と共に、カバー23で覆われて線状とされているので、アクチュエータ部材22と一体的に変位(変形)するようになる。
【0065】
したがって、この実施形態のアンテナ装置2は、イオン導伝性高分子線条220に設けられている対の電極25x,26xおよび電極25y,26yに供給される直流電圧Vx,Vyに応じて、空間に占める位置が変位制御される。
【0066】
よって、この実施形態のアンテナ装置2に対するアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyを、工夫することにより、アンテナ装置2の筐体1に対する空間的な位置を、所望の状態に制御することができる。
【0067】
この実施形態の通信装置としての携帯電話端末10では、前述したように、アンテナ装置2を、人体に許容される電磁波の基準を満足しながら、最適な受信状態になるようにすることができるように変位制御するようにする。以下、そのようにした場合の携帯電話端末10の要部について説明する。
【0068】
<携帯電話端末10の内部回路のハードウエア構成例>
図6は、携帯電話端末10の内部回路のハードウエア構成例を示すブロック図である。この実施形態の携帯電話端末10においては、制御バス101およびデータバス102からなるシステムバスに対して、マイクロコンピュータにより構成される制御部110が接続されている。また、システムバスには、通信回路112と、表示部113と、操作部114と、メモリ115と、スピーカ116と、マイクロホン117と、アクチュエータ駆動部118(アクチュエータ駆動回路12を内蔵)とが接続されている。
【0069】
制御部110を構成するマイクロコンピュータには、この実施形態の携帯電話端末10の種々の処理を制御するためのソフトウエアプログラムが格納されている。制御部110は、そのソフトウエアプログラムにしたがって種々の制御処理を実行する。
【0070】
このソフトウエアプログラムには、発信(発呼)や着信の処理のためのシーケンス制御プログラムのほか、人体に許容される電磁波の基準を満足しながら、最適な受信状態になるようにするための、アンテナ装置2の変位制御プログラムも含まれている。
【0071】
電話通信回路112は、基地局および携帯電話ネットワークを通じて電話通信やその他の情報通信(インターネットを通じた通信を含む)を行なうための携帯電話通信用の無線通信部であり、アンテナ装置2を通じて通信データを送受する。電話通信回路112は、前述したアンテナ回路11を含む。
【0072】
表示部113は、液晶ディスプレイなどの表示素子を備え、当該表示素子に制御部110の制御を受けながら、種々の表示画面を表示したり、撮像された動画像をモニター表示したりするようにする機能を備える。
【0073】
操作部114は、テンキーやメニュー選択用の上下左右キー、その他のキーを備える。制御部110は、操作部114を通じていかなるキーが操作されたかを検知し、当該操作されたキーに対応する制御処理動作を実行するように構成されている。
【0074】
メモリ115は、この実施形態においては、携帯電話端末における電話帳データやメールアドレス、インターネットを通じてアクセスする相手のURL(Uniform Resource Locator)などのデータを格納する。また、メモリ115は、当該携帯電話端末が備える機能に付随する蓄積データ(アプリケーションプログラムを含む)も格納する。
【0075】
さらに、この実施形態では、メモリ115には、アンテナ装置2が前述した局所SARを満足するアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyについての可能範囲情報が記憶されている。
【0076】
このアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyについての可能範囲情報は、この例では、アンテナ導体21を人体から最も遠ざけたときのそれぞれの電圧値Vxmax,Vymaxと、局所SARを満足する人体に最もアンテナ装置21が近くなる電圧値Vxmin,Vyminとからなる。
【0077】
スピーカ116は、電話通信における受話音声を再生する機能を果たすと共に、受信した配信情報から再生された音声データを音響再生するためなどにも用いられる。マイクロホン117は、電話通信の送話音声を収音するために用いられる。
【0078】
そして、制御部110は、この実施形態では、特に、記憶したプログラムを用いて、図示のような機能部として制御処理をも実行するようにする。
【0079】
すなわち、制御部110は、この実施形態では、受信電界強度判定機能部1101と、アクチュエータ駆動制御機能部1102とを具備する。
【0080】
受信電界強度判定機能部1101は、電話通信回路112のアンテナ回路11からの受信信号に基づいて、受信電界強度を判定する処理を行う。そして、受信電界強度判定機能部1101は、判定した受信電界強度の情報を、アクチュエータ駆動制御機能部1102に通知する。
【0081】
アクチュエータ駆動制御機能部1102は、アンテナ装置2のアクチュエータ部材22を変位(変形)させるアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyを生成する。この生成の際に、アクチュエータ駆動制御機能部1102は、受信電界強度判定機能部1101で判定された受信電界強度を考慮すると共に、メモリ115に記憶されている局所SARの基準値を満足するアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyについての可能範囲情報を考慮するようにする。
【0082】
受信電界強度判定機能部1101で検出された受信電界強度は、アンテナ装置2の位置における電磁波の強さ(エネルギー量)に応じたものである。したがって、アクチュエータ駆動制御機能部1102が、この受信電界強度判定機能部1101で判定された受信電界強度を監視しながら、生成するアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyを制御することにより、最適なアンテナ位置の調整が可能となる。
【0083】
また、アクチュエータ駆動制御機能部1102が、生成するアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyを、メモリ115に記憶されている可能範囲情報内とするように制御することにより、常に、局所SARの条件を満足することができる。
【0084】
アクチュエータ駆動部118は、制御部110のアクチュエータ駆動制御機能部1102からのアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyの情報を受けて、アクチュエータ部材22に供給する実際の直流電圧Vx,Vyを生成し、アクチュエータ部材22に供給する。
【0085】
図7に、この実施形態におけるアクチュエータ駆動部118の構成例を示す。
【0086】
この実施形態のアクチュエータ駆動部118は、図7に示すように、アクチュエータ駆動回路12と、制御信号発生部1181とからなる。
【0087】
制御信号発生部1181は、アクチュエータ駆動制御機能部1102からのアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyの情報を受け取り、アクチュエータ駆動回路12に供給する各種制御信号SWx,SWy,CVx,CVyを生成する。
【0088】
アクチュエータ駆動回路12は、アクチュエータ駆動制御電圧Vxを発生する可変直流電源121と、アクチュエータ駆動制御電圧Vyを発生する可変直流電源124とを備える。
【0089】
制御信号発生部1181は、アクチュエータ駆動制御機能部1102からのアクチュエータ駆動制御電圧Vxの大きさの情報に基づき、その大きさの直流電圧Vxを可変直流電源121から出力するようにするための制御信号CVxを生成し、生成した制御信号CVxを、可変直流電源121に供給する。
【0090】
また、制御信号発生部1181は、アクチュエータ駆動制御機能部1102からのアクチュエータ駆動制御電圧Vyの大きさの情報に基づき、その大きさの直流電圧Vyを可変直流電源124から出力するようにするための制御信号CVyを生成し、生成した制御信号CVyを、可変直流電源124に供給する。
【0091】
可変直流電源121の正極側端および負極側端は、それぞれ電圧極性切り替え用のスイッチ回路122および123をそれぞれ介して、アクチュエータ部材22の対電極25x,26xに接続される。
【0092】
そして、制御信号発生部1181は、アクチュエータ駆動制御機能部1102からのアクチュエータ駆動制御電圧Vxの極性の情報に基づき、スイッチ回路122および123を連動して切り換える制御信号SWxを生成し、生成した制御信号SWxを、スイッチ回路122および123に供給する。
【0093】
図7の例では、スイッチ回路122および123が、制御信号SWxにより、端子a側に切り換えられるときには、アクチュエータ駆動制御電圧Vxは、電極25x側が陽極、電極26x側が陰極となるように印加される。また、スイッチ回路122および123が、制御信号SWxにより、端子b側に切り換えられるときには、アクチュエータ駆動制御電圧Vxは、電極25x側が陰極、電極26x側が陽極となるように印加される。
【0094】
同様に、可変直流電源124の正極側端および負極側端は、それぞれ電圧極性切り替え用のスイッチ回路125および126をそれぞれ介して、アクチュエータ部材22の対電極25y,26yに接続される。
【0095】
そして、制御信号発生部1181は、アクチュエータ駆動制御機能部1102からのアクチュエータ駆動制御電圧Vyの極性の情報に基づき、スイッチ回路125および126を連動して切り換える制御信号SWyを生成し、生成した制御信号SWyを、スイッチ回路125および126に供給する。
【0096】
図7の例では、スイッチ回路125および126が、制御信号SWyにより、端子a側に切り換えられるときには、アクチュエータ駆動制御電圧Vyは、電極25y側が陽極、電極26y側が陰極となるように印加される。また、スイッチ回路125および126が、制御信号SWyにより、端子b側に切り換えられるときには、アクチュエータ駆動制御電圧Vyは、電極25y側が陰極、電極26y側が陽極となるように印加される。
【0097】
<アンテナ装置2の変位制御処理動作例>
<第1の例>
携帯電話端末10におけるアンテナ装置2の変位制御処理動作の第1の例を、図8、図9のフローチャートおよび図10〜図14を参照して説明する。
【0098】
この実施形態の携帯電話端末10においては、着信があったとき、また、発信(発呼)がなされたとき、それに続く通信(通話)のために、アンテナ装置2のアンテナ導体21を、局所SARの条件を満足すると共に、適切な受信状態にするように、変位制御させる。
【0099】
図8およびそれの続きである図9は、この例のアンテナ変位制御における制御部110の処理動作例のフローチャートである。
【0100】
先ず、制御部110は、着信を検出したか否か判別し(ステップS101)、着信を検出しなかったときには、発信(発呼)がされたか否かを検出し(ステップS102)、ステップS102で発信(発呼)も検出されなかったときには、ステップS101に戻る。
【0101】
そして、ステップS101で着信が検出されたとき、または、ステップS102で発信(発呼)が検出されたときには、制御部110は、アクチュエータ駆動制御機能部1102を起動し、アンテナ装置2のアンテナ導体21を、人体(頭部)から最も遠い初期位置(以下、最遠位置という)にするように変位制御する。すなわち、この例では、制御部1101は、アンテナ導体21を、最遠位置に変位制御するようにするアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyを、アンテナ装置2のアクチュエータ部材22の電極25x、26x間、25y、26yに供給する(ステップS103)。これにより、初期的には、局所SARの条件を必ず満足するようにされる。
【0102】
この例では、アンテナ導体21を、最遠位置に変位制御したときのアクチュエータ部材22は、図10(A)および(B)に示すように、アクチュエータ部材22の長さ方向が、筐体1の面1bに対してほぼ直交するような状態とされる。このときのアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyの値は、この例では、Vx=Vy=0ボルトとされる。
【0103】
なお、最遠位置におけるアクチュエータ部材22の状態は、この例のように、アクチュエータ部材22の長さ方向が、筐体1の面1bに対してほぼ直交するような状態ではなく、図4(A)または(C)に示されるように変位させた状態であっても良い。その場合には、Vx=Vy=Voボルト(Voは、ゼロではない任意の値)とされる。また、この例では、アクチュエータ部材22が筐体1の面1bに対してほぼ直交するような状態となるアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyをゼロボルトとしたが、所定の電圧が印加されるときに、アクチュエータ部材22が筐体1の面1bに対してほぼ直交するようになることもある。
【0104】
次に、制御部110は、この最遠位置での受信電界強度を、受信電界強度判定機能部1101において判定し、通信に十分な受信電界強度が得られているか否か判別する(ステップS104)。
【0105】
このステップS104で通信に十分な受信電界強度が得られていないと判別したときには、制御部110は、人体に許容される電磁波の基準である局所SARを満足する範囲内において、アクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyの値をステップ的に変化させて、アクチュエータ部材22を変形(変位)させ、アンテナ導体2を変位させるようにする(ステップS105)。
【0106】
このステップS105の次には、ステップS104に戻り、制御部110は、変位させたアンテナ導体21の位置で、通信に十分な受信電界強度が得られているか否か判別する。そして、ステップS104で通信に十分な受信電界強度が得られていると判別されるまで、制御部110は、ステップS104の処理とステップS105の処理とを繰り返す。
【0107】
このステップS104とステップS105の繰り返し処理がなされた場合におけるアクチュエータ部材22の動きの例を図11に示す。また、この図11の例のような動き動作を生じさせるように、アクチュエータ部材22を変位させるための、ステップ的に変化させるアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyの例を図12に示す。
【0108】
図11は、アンテナ装置2を変位制御した場合において、アクチュエータ部材22のイオン導電性高分子線条220の動きを、その取付部1cに固定されている長さ方向の一端側とは反対側の遊端側の上方から見た簡略図である。図11において、矢印および数字は、ステップ的に変化させるときの各ステップにおけるアクチュエータ部材22の変位方向および変位位置番号(ステップ的変位の順番)を、それぞれ示している。
【0109】
図10に示したように、アクチュエータ部材22の初期制御位置である前述の最遠位置では、この例では、Vx=Vy=0(したがって、アクチュエータ部材22は真直の状態)であり、図11においては、この位置を位置番号0としている。
【0110】
そして、通信に十分な受信電界強度が得られるまで、ステップS105で繰り返されるステップ的な制御電圧の変更処理により、イオン導電性高分子線条220が変形し、アクチュエータ部材22の遊端側の先端位置は、図11に順次の位置番号で示すように位置になるように変位制御される。すなわち、この例では、アクチュエータ部材22のイオン導電性高分子線条220の固定されている長さ方向の一端側とは反対側の遊端側の先端部分が、図11において、位置番号で示すように順次に変位するように制御される。
【0111】
図11の位置番号の変位から判るように、この実施形態では、アクチュエータ部材22のイオン導電性高分子線条22の遊端側は、位置番号0を中心位置として、ステップ的に順次に、渦巻き状に、かつ、その渦巻きの半径が徐々に大きくなるように変位制御される。
【0112】
ステップS105では、この例においては、図12に示すように、図11の各位置番号への変位に対して、電圧Vx,Vyの一方をステップ的に変位させるように増減ステップ電圧が設定される。図12の例では、イオン導電性高分子線条220を、面Sxzに含まれる方向に所定量変位させるステップ電圧は、ΔVxとされ、その極性は、変位させたい方向に応じたものとされる。同様に、イオン導電性高分子線条220を、面Syzに含まれる方向に所定量変位させるステップ電圧は、ΔVyとされ、その極性は、変位させたい方向に応じたものとされる。
【0113】
そして、通信に十分な受信電界強度が得られるまで、図12において、位置番号順に、順次に増減ステップ電圧が設定される。そして、各位置番号への変位に際しては、その設定された増減ステップ電圧が、直前のアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyの値に対して加減されることにより、新たなアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyが、図12の表のように設定される。
【0114】
この図12の表のアクチュエータ駆動制御電圧VxおよびVyが、それぞれ、アクチュエータ部材22の電極25xと26xとの間、および電極25yと26yとの間に印加される。
【0115】
この場合に、アクチュエータ駆動制御電圧VxおよびVyの極性に応じて、図7のアクチュエータ駆動回路12のスイッチ回路122,123およびスイッチ回路125,126が切り換えられる。また、図7のアクチュエータ駆動回路12においては、可変直流電源121および124からのアクチュエータ駆動制御電圧VxおよびVyの大きさが、図12のそれぞれの位置番号での値(絶対値)となるように、可変直流電源121および124が制御される。
【0116】
上述のようにステップS104およびステップS105での処理を行い、ステップS104において、通信に十分な受信電界強度が得られたと判別したときには、制御部110は、アクチュエータ部材22の変位制御を停止して、その位置での印加電圧Vx,Vyを継続するようにする(ステップS106)。
【0117】
次に、制御部110は、通話(通信)が終了したか否か判別し(ステップS107)、通話(通信)が終了してはいないと判別したときには、アクチュエータ変位制御を停止した時点から予め定められた所定時間が経過したか否か判別する(図9のステップS111)。このステップS111で、所定時間経過していないと判別したときには、制御部110は、ステップS106に戻り、そのときの印加電圧Vx,Vyの状態を継続するようにする。
【0118】
また、ステップS111で、所定時間経過したと判別したときには、制御部110は、当該時点における受信電界強度判定機能部1101での判定結果を参照し、通信に十分な受信電界強度を下回ったか否か判別する(ステップS112)。
【0119】
このステップS112で、通信に十分な受信電界強度を下回ってはいないと判別したときには、制御部110は、ステップS106に戻り、そのときの印加電圧Vx,Vyの状態を継続するようにする。
【0120】
ステップS112で、通信に十分な受信電界強度を下回ったと判別したときには、制御部110は、当該時点でのアンテナ位置を中心としたステップ的なアンテナ変位制御を開始する(ステップS113)。そして、制御部110は、ステップS105のときと同様にして、印加電圧Vx,Vyの値をステップ的に変化させて、アクチュエータ部材22を変形(変位)させ、アンテナ導体2を変位させるようにする(ステップS114)。
【0121】
次に、制御部115は、変位させたアンテナ導体21の位置で、通信に十分な受信電界強度が得られているか否か判別する(ステップS115)。このステップS115で、通信に十分な受信電界強度が得られていないと判別したときには、制御部110は、ステップS114に戻る。そして、ステップS115で通信に十分な受信電界強度が得られていると判別されるまで、制御部110は、ステップS114の処理とステップS115の処理とを繰り返す。
【0122】
このステップS114とステップS115の繰り返し処理がなされた場合におけるアクチュエータ部材22の動きの例を図13に示す。また、この図13の例のような動き動作を生じさせるように、アクチュエータ部材22を変位させるための、ステップ的に変化させるアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyの例を図14に示す。
【0123】
図13は、前述の図11と同様に、アンテナ装置2を変位制御した場合において、アクチュエータ部材22のイオン導電性高分子線条220の動きを、その取付部1cに固定されている長さ方向の一端側とは反対側の遊端側の上方から見た簡略図である。この図13において、矢印および数字は、ステップ的に変化させるときの各ステップにおけるアクチュエータ部材22の変位方向および変位位置番号(ステップ的変位の順番)を、それぞれ示している。
【0124】
図13に示すように、このステップS114およびステップS115における処理においては、ステップS113でアクチュエータ変位制御を開始するときのアンテナ位置を、位置番号0としている。
【0125】
そして、図13に示すように、ステップS114およびステップS115における処理においては、アクチュエータ部材22のイオン導電性高分子線条22の遊端側は、この位置番号0の変位位置を中心として、ステップ的に順次に、渦巻き状に、かつ、その渦巻きの半径が徐々に大きくなるように変位制御される。
【0126】
ステップS115では、図14に示すように、図13の各位置番号への変位に対して、電圧Vx,Vyの一方をステップ的に変位させるように増減ステップ電圧が設定される。この図14の例においても、イオン導電性高分子線条220を、面Sxzに含まれる方向に所定量変位させるステップ電圧は、ΔVxとされ、その極性は、変位させたい方向に応じたものとされる。同様に、イオン導電性高分子線条220を、面Syzに含まれる方向に所定量変位させるステップ電圧は、ΔVyとされ、その極性は、変位させたい方向に応じたものとされる。
【0127】
そして、通信に十分な受信電界強度が得られるまで、図14において、位置番号順に、順次に増減ステップ電圧が設定される。そして、各位置番号への変位に際しては、その設定された増減ステップ電圧が、直前のアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyの値に対して加減されることにより、新たなアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyが、図14の表のように設定される。
【0128】
この図14の表のアクチュエータ駆動制御電圧VxおよびVyが、前述したステップS105における場合の説明と同様にして、それぞれ、図7のアクチュエータ駆動回路12の可変直流電源121および124から得られるように制御されると共に、スイッチ回路122,123およびスイッチ回路125,126が、図14の表のアクチュエータ駆動制御電圧VxおよびVyの極性に応じて切り換えられる。
【0129】
ステップS114およびステップS115での処理を行い、ステップS115において、通信に十分な受信電界強度が得られたと判別したときには、制御部110は、アクチュエータ部材22の変位制御を停止して(ステップS116)、ステップS106に進み、その位置での印加電圧Vx,Vyを継続するようにする。
【0130】
そして、ステップS107で、通話(通信)が終了したと判別したときには、制御部110は、通話路の切断処理を行い(ステップS108)、この処理ルーチンを終了する。
【0131】
以上のようにして、携帯電話端末10において、着信や発信が検出されると、アンテナ装置2のアンテナ導体21は、人体に許容される電磁波の基準である局所SARを満足すると共に、適切な受信感度の状態に、自動的に変位させられる。
【0132】
<第2の例>
以上の第1の例は、アンテナ装置2のアクチュエータ部材22をステップ的に制御するようにしたので、ステップ電圧の幅を小さくすることで、より適切に受信を行うことができるアンテナ位置を細かく制御することができる。
【0133】
しかし、より簡易的には、幾つかの適切なアンテナ位置と思われる候補位置情報についてのアクチュエータ駆動制御電圧情報を、それぞれ別々のテーブル情報として記憶しておき、その複数のテーブル情報の中から、適切なものを選択するようにすることにより、比較的容易かつ迅速に適切なアンテナ位置に変位制御することが可能である。
【0134】
第2の例は、その場合の例である。図15および図16は、予め用意するアクチュエータ駆動制御電圧のテーブル情報の例を示すものである。図15には、説明の簡単のため、4個のテーブルA,テーブルB,テーブルC,テーブルDについての情報のみを示したが、より多数のテーブルが用意されるものである。これらのテーブル情報は、この例では、メモリ115に予め記憶される。これらのテーブル情報は、制御部110に内蔵されるメモリ部(図示は省略)に記憶されるようにしても良い。
【0135】
この第2の例におけるテーブル情報は、図16に示すように、アクチュエータ駆動制御電圧VxおよびVyのペアの情報からなる。このテーブル情報であるアクチュエータ駆動制御電圧VxおよびVyのペアの電圧値は、アンテナ装置2のアンテナ導体21を、人体に許容される電磁波についての局所SARを満足すると共に、通信に十分な受信電界強度が得られるであろうと予測されるアンテナ位置とするものである。
【0136】
例えばテーブルAは、ユーザが携帯電話端末10を耳の近傍に保持したときに、筐体1に対して、アンテナ装置2が図15(A)に示すような状態になるアクチュエータ駆動制御電圧Vx=VxAと、アクチュエータ駆動制御電圧Vy=VyAとのペア情報からなる。なお、電圧VxAおよび電圧VyAには、極性も含まれるものである。以下同様である。
【0137】
また、テーブルBは、同様に、筐体1に対して、アンテナ装置2が図15(B)に示すような状態になるアクチュエータ駆動制御電圧Vx=VxBと、アクチュエータ駆動制御電圧Vy=VyBとのペア情報からなる。
【0138】
同様に、テーブルC,Dは、筐体1に対して、アンテナ装置2が図15(C),(D)に示すような状態になるアクチュエータ駆動制御電圧VxCとVyCとのペア情報、アクチュエータ駆動制御電圧VxDとVyDとのペア情報からなる。
【0139】
これらの複数のテーブル情報についての読み出し順序が予め定められており、制御部110は、その定められた読み出し順序に従ってテーブル情報を読み出し、そのテーブル情報によるアンテナ位置での受信電界強度を参照して、最適なアンテナ位置をサーチするようにする。
【0140】
この複数のテーブル情報を用いる第2の例の場合におけるアンテナ装置2の変位制御処理動作の例を、図17のフローチャートを参照して説明する。図17の各ステップは、図8および図9の例と同様に、制御部110がその処理動作を実行するものである。
【0141】
先ず、制御部110は、着信を検出したか否か判別し(ステップS201)、着信を検出しなかったときには、発信(発呼)がされたか否かを検出し(ステップS202)、ステップS202で発信(発呼)も検出されなかったときには、ステップS201に戻る。
【0142】
そして、ステップS201で着信が検出されたとき、または、ステップS202で発信(発呼)が検出されたときには、制御部110は、アクチュエータ駆動制御機能部1102を起動する。アクチュエータ駆動制御機能部1102は、この第2の例では、メモリ115に記憶されている複数のテーブル情報のうち、最初に読み出すべきとして定められているテーブル情報(初期最適位置のテーブル情報)を読み出し、読み出した印加電圧Vxi,Vyi(i=A,B,C,・・・のいずれか)をアクチュエータ駆動部118を介してアンテナ装置2に供給するようにする(ステップS203)。
【0143】
次に、制御部110は、このテーブル情報により変位制御されたアンテナ位置での受信電界強度を、受信電界強度判定機能部1101において判定し、通信に十分な受信電界強度が得られているか否か判別する(ステップS204)。
【0144】
このステップS204で通信に十分な受信電界強度が得られていないと判別したときには、制御部110は、次順位のテーブル情報を読み出し、アクチュエータ駆動部118を介してアンテナ装置2のアクチュエータ部材22を変位制御するようにする(ステップS205)。
【0145】
このステップS205の次には、ステップS204に戻り、制御部110は、変位させたアンテナ導体21の位置で、通信に十分な受信電界強度が得られているか否か判別する。そして、ステップS204で通信に十分な受信電界強度が得られていると判別されるまで、制御部110は、ステップS204の処理とステップS205の処理とを繰り返す。
【0146】
上述のようにステップS204およびステップS205での処理を行い、ステップS204において、通信に十分な受信電界強度が得られたと判別したときには、制御部110は、アクチュエータ部材22の変位制御を停止して、その位置での印加電圧Vx,Vyを継続するようにする(ステップS206)。
【0147】
次に、制御部110は、通話(通信)が終了したか否か判別し(ステップS207)、通話(通信)が終了してはいないと判別したときには、アクチュエータ変位制御を停止した時点から予め定められた所定時間が経過したか否か判別する(ステップS208)。このステップS208で、所定時間経過していないと判別したときには、制御部110は、ステップS206に戻り、そのときの印加電圧Vx,Vyの状態を継続するようにする。
【0148】
また、ステップS208で、所定時間経過したと判別したときには、制御部110は、ステップS204に戻り、当該時点における受信電界強度判定機能部1101での判定結果を参照し、通信に十分な受信電界強度が継続して得られているかか否か判別する。
【0149】
このステップS204で、通信に十分な受信電界強度を得られていると判別したときには、制御部110は、ステップS206に進み、そのときの印加電圧Vx,Vyの状態を継続するようにする。
【0150】
また、ステップS204で、通信に十分な受信電界強度を得られなくなったと判別したときには、制御部110は、ステップS205に進んで、当該時点でのテーブル情報の次のテーブル情報を読み出し、アンテナ変位制御を実行する。そして、ステップS204で通信に十分な受信電界強度が得られると判別されるまで、制御部110は、ステップS204とステップS205とを繰り返す。
【0151】
そして、ステップS207で、通話(通信)が終了したと判別したときには、制御部110は、通話路の切断処理を行い(ステップS209)、この処理ルーチンを終了する。
【0152】
以上のようにして、携帯電話端末10において、着信や発信が検出されると、アンテナ装置2のアンテナ導体21は、人体に許容される電磁波の基準である局所SARを満足すると共に、適切な受信感度の状態に、自動的に変位させられる。
【0153】
[他の実施形態または変形例]
<アンテナ装置2の変形例1>
上述の例のアンテナ装置2では、アンテナ導体21は、アクチュエータ部材22の電極25x,25y,26x,26yとは独立に別個に設けるようにしたが、アンテナ導体21を、アクチュエータ部材22の電極と兼用することもできる。
【0154】
図18(A),(B)は、この例の場合のアンテナ装置2およびアンテナ装置2と携帯電話端末10の内部の関連回路部分の例を示すものである。
【0155】
この図18の例は、電極26xをアンテナ導体と兼用した場合である。この例の場合には、電極25xおよび電極26x間には、アクチュエータ駆動回路12からのアクチュエータ駆動制御電圧Vxが供給されるとともに、電極26xが直流遮断用のコンデンサ13を通じてアンテナ回路11に接続される。
【0156】
これにより、アンテナ導体21を別個に設ける必要がなくなり、アンテナ装置2の構成を簡単にすることができる。そして、この例のアンテナ装置2の場合には、アクチュエータ部材22の電極をアンテナ導体としているので、アクチュエータ部材22は、アンテナ導体を直接的に支持する構造となる。
【0157】
アンテナ装置2のカバー23は、上述の実施形態では、アンテナ導体21をアクチュエータ部材22により変位制御する場合の補助部材となるので、当該カバー23は、アンテナ導体21とアクチュエータ部材22とを一体的に変位させるようにする材質のものとする必要がある。これに対して、この例の場合には、アンテナ導体は、アクチュエータ部材22に直接に支持されていることになるので、アクチュエータ部材22をカバーすることができるものであれば良いという利点もある。
【0158】
また、アクチュエータ部材22の電極をアンテナ導体に兼用する場合において、アンテナ導体と兼用する電極は、図18の例のように、1個ではなく、複数個とすることもできる。その場合には、アンテナ導体として兼用する電極は、直流遮断用のコンデンサを介してアンテナ回路11に接続される。
【0159】
図19は、アクチュエータ部材22の4個の電極25x,25y,26x,26yの全てをアンテナ導体に兼用するようにした場合の要部の構成例である。すなわち、図19に示すように、その場合には、電極25x,25y,26x,26yのそれぞれは、コンデンサ131,132,133,134のそれぞれを介して互いに接続され、その接続点がアンテナ回路11に接続される。
【0160】
なお、この場合においても、電極25xおよび電極26x間には、アクチュエータ駆動回路12からアクチュエータ駆動制御電圧Vxが供給されるとともに、電極25yおよび電極26y間には、アクチュエータ駆動回路12からアクチュエータ駆動制御電圧Vyが供給されるのは、前述の例と同様である。
【0161】
そして、アンテナ装置2のアクチュエータ部材22が、上述したアンテナ装置2の変位制御処理動作の第1の例または第2の例により、変位制御されることにより、上述の実施形態と同様にして、適切なアンテナ導体位置となるように制御される。
【0162】
なお、アンテナ導体を、アクチュエータ部材22の電極で兼用する場合において、イオン導電性高分子線条220の先端側に、電極と電気的に接続される線条導体を設けることで、アンテナ導体としての長さを調整することができる。
【0163】
<アンテナ装置2の変形例2>
上述したアンテナ装置2の例は、線条のアンテナ導体21と、アクチュエータ部材22を構成するイオン導電性高分子線条220とを平行に横に並べ、両者が一体的に変位可能なように構成したものである。
【0164】
これに対して、この変形例2は、アクチュエータ部材22の長さ方向に、アンテナ装置21を連結して設けるように構成した場合である。
【0165】
図20(A)は、その場合のアンテナ装置2およびアンテナ装置2と携帯電話端末10の内部の関連回路部分の例を示すものである。また、図20(B)は、アンテナ装置2を、その長さ方向の上方から見た図である。
【0166】
この図20の例においては、図1に示した前述の実施形態のアンテナ装置2のアクチュエータ部材と同様の構成のアクチュエータ部材22の、イオン導電性高分子線条220の長さ方向の先端部分にアンテナ導体211を固定するようにする。この場合に、この例では、アンテナ導体211は、硬性(非可撓性)の金属導体で構成される。そして、図20(A)に示すように、アンテナ導体211は、その長さ方向が、アクチュエータ部材22の長さ方向に連結して繋がる状態で固定される。
【0167】
そして、例えばアンテナ導体211の長さ方向の端部が、イオン導電性高分子線条220に埋め込まれて接着されるなどして、アンテナ導体211がイオン導電性高分子線条220に固定される。
【0168】
したがって、アンテナ導体211は、アクチュエータ部材22が、上述の実施形態と同様にして、アクチュエータ駆動回路12からのアクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyにより、図20(A)の矢印で示されるように変位制御されることより、その変位に応じて位置変位することになる。
【0169】
そして、図20の例においては、アクチュエータ部材22のイオン導電性高分子線条220の長さは、ユーザが携帯電話端末10を耳の近傍に保持したときに、アンテナ導体211の位置を、局所SARの基準を満足できると共に、通信に適した位置に変位制御することが十分にできる長さに選定されている。
【0170】
また、アンテナ導体211の長さは、通信に際して、十分な受信電界強度を得られるような長さに選定されている。図20の例では、アンテナ導体211は、イオン導電性高分子線条220の先端部分において電極26xに接続されている。したがって、この例では、電極26xもアンテナ導体の一部を構成し、アンテナ導体211の長さとしては、この電極26x部分の長さも含めたものとされる。
【0171】
そして、図20(A)に示すように、電極26xが、コンデンサ13を通じてアンテナ回路11に接続されている。
【0172】
なお、図20の例のように、電極26xをアンテナ導体211の一部とするのはなく、アンテナ導体211の、イオン導電性高分子線条220との結合部分の端部を、アンテナリード線を通じて、アンテナ回路11に接続するようにしても勿論よい。その場合には、コンデンサ13は省略することができる。
【0173】
そして、この例の場合にも、電極25xおよび電極26x間には、アクチュエータ駆動回路12からアクチュエータ駆動制御電圧Vxが供給されるとともに、電極25yおよび電極26y間には、アクチュエータ駆動回路12からアクチュエータ駆動制御電圧Vyが供給されるのは、前述の例と同様である。
【0174】
そして、アンテナ装置2のアクチュエータ部材22が、上述したアンテナ装置2の変位制御処理動作の第1の例または第2の例により、変位制御されることにより、上述の実施形態と同様にして、適切なアンテナ導体位置となるように制御される。
【0175】
なお、上述の例では、アンテナ導体211は、硬性の金属導体からなるものとしたが、可撓性の線条導体で構成しても良い。
【0176】
<アンテナ装置2の変形例3>
上述の例においては、アクチュエータ部材22は、1本の4角柱の形状のイオン導電性高分子線条220の4側面のそれぞれに、電気的に独立の電極を形成することにより、対の電極25x,26xおよび25y,26yを形成し、それら対の電極間に、アクチュエータ駆動制御電圧Vx,Vyを印加して、3次元的な変位をさせるようにした。
【0177】
しかし、面Sxzにおける変位をさせるイオン導電性高分子線条と、面Syzにおける変位をさせるイオン導電性高分子線条とを別々に構成しても良い。アンテナ装置2の変形例3は、その場合の例である。
【0178】
図21は、この変形例3の一例の構成を示すもので、この例では、アクチュエータ部材22を、図1の例の1個のイオン導電性高分子線条220で構成する代わりに、2個のイオン導電性高分子線条220Yと220Xとで構成する。
【0179】
この例においては、図21(A)および(B)に示すように、アンテナ導体21は、2個のイオン導電性高分子線条220Yと220Xとの間に設けられ、前述例と同様にして、その端部がアンテナ回路11に接続されている。そして、アンテナ導体21と、2個のイオン導電性高分子線条220Yおよび220Xとの全体が、カバー23で覆われた構成となっている。
【0180】
そして、イオン導電性高分子線条220Yには、対向する対の電極25y、26yが形成され、イオン導電性高分子線条220Xには、対の電極25y、26yに対して直交する方向に対向する対の電極25x、26xが形成される。
【0181】
そして、図21では、図示を省略するが、対の電極25y、26yには、アクチュエータ駆動回路12からアクチュエータ駆動制御電圧Vyが供給され、対の電極25x、26xには、アクチュエータ駆動回路12からアクチュエータ駆動制御電圧Vxが供給されるように構成される。
【0182】
したがって、この変形例3においても、図1の実施形態で説明したのと全く同様にして、アンテナ導体21が、2個のイオン導電性高分子線条220Y,220Xからなるアクチュエータ部材22により、変位制御される。
【0183】
なお、この変形例3においても、アンテナ導体21は、アクチュエータ部材22の電極で兼用するようにすることもできる。その場合、アンテナ導体21は、2個のイオン導電性高分子線条220Y,220Xの一方の対電極の一方の電極で構成するようにしても良いし、一方の対電極の両方を用い、図19の例のように、コンデンサを通じて互いに接続して、アンテナ回路11に接続するように構成しても良い。
【0184】
また、図19の例のように、2個のイオン導電性高分子線条220Y,220Xの全ての電極をそれぞれコンデンサを通じて接続し、その接続点をアンテナ回路11に接続するようにして、2個のイオン導電性高分子線条220Y,220Xの全ての電極をアンテナ導体として兼用するように構成しても良い。
【0185】
また、この変形例3と、図20に示した変形例とを組み合わせるようにすることもできる。その場合には、2個のイオン導電性高分子線条220Y,220Xを一体的に変位可能に構成すると共に、2個のイオン導電性高分子線条220Y,220Xの一方に、アンテナ導体211を固定するように構成することができる。
【0186】
また、この変形例3においては、イオン導電性高分子線条220Y,220Xのそれぞれには、対向する1対の電極が形成されるだけであるので、イオン導電性高分子線条220Y,220Xの長さ方向の側面には、これら1対の電極の間に、スペースができる。よって、イオン導電性高分子線条220Yまたは220Xのそのスペースに、電極と平行にアンテナ導体を構成する線条の導電体を被着形成することが容易にできる。
【0187】
もちろん、イオン導電性高分子線条220に2対の電極を設ける場合においても、アンテナ導体を、それらの2対の電極に平行に、それら2対の電極とは電気的に非接続の状態で、イオン導電性高分子線条220の側面上に被着形成することもできる。
【0188】
[その他の実施形態および変形例]
上述の例は、全て互いに直交する面Sxz内および面Syz内の両方においてアクチュエータ部材22が変位することができるように、対向方向が互いに直交する2対の電極25x,26xおよび25y,26yを、アクチュエータ部材22に形成するようにした。
【0189】
しかしながら、この発明は、対の電極25x,26xまたは対の電極25y,26yの一方のみをイオン導電性高分子線条220に設けることで、面Sxz内または面Syz内の一方の面内でのみ変位させるようにしても良い。つまり、この発明においては、アクチュエータ部材22の変位方向は、1方向であってもよい。しかし、上述の実施形態のように、互いに直交する2方向にアクチュエータ部材22を変位させることにより、3次元空間の任意の方向にアクチュエータ部材22を変位させることができるという利益がある。
【0190】
また、対向方向が互いに直交する2対の電極をアクチュエータ部材に設けることで、いずれの方向にもアクチュエータ部材を変位させることができるが、より簡便に、任意の方向にアクチュエータ部材を変位させるには、2対以上の複数対の電極を設けて、変位制御することもできる。
【0191】
例えば、アクチュエータ部材22を構成するイオン導電性高分子線条220を6角柱形状として、その6角柱の側面に、3対の電極を設けるようにした場合には、それぞれの電極対方向への変位制御は、当該電極への印加直流電圧値のみを制御すればよいので、制御が容易になる。
【0192】
また、この発明では、アンテナ装置2の変位制御処理の第1の例と第2の例とを組み合わせて実行するようにしても良い。例えば、図8のステップS105では、第2の例を行い、図9のステップS114では、第1の例で説明したようなステップ的な処理を実行するようにしても良い。
【0193】
また、上述の例では、アクチュエータ部材22は線条で先端が遊端となるようにしたが、アクチュエータ部材22を一部含むリング状のストラップ状に形成することもできる。その場合には、アクチュエータ部材22は、例えばリング状ストラップの全長の1/2以下の長さ部分とするのが良い。
【0194】
なお、以上の説明は、通信装置が携帯電話端末の場合であったが、この発明の通信装置は、携帯電話端末に限られるものではないことは言うまでもない。例えば、小型のラジオ受信機やワンセグのテレビ受信機、トランシーバ、無線通信機能付携帯端末などにおいて、アンテナ装置をストラップ状とする場合に非常に好適である。
【0195】
また、この発明は、携帯電話端末のみではなく、トランシーバなどの通話を行う無線通信端末の場合においては、SARを考慮することもできるので好適である。
【0196】
また、アンテナ導体を変位制御する契機は、上述のような着信や発信に限られるものではなく、通信端末に電源が投入されたときや、通信装置の筐体が人体に近づいたことを検出したとき、などであっても良い。
【0197】
なお、SARは、人体が許容できる電磁波の基準の指標値の一例であって、他の指標値が存在する場合には、その指標値に基づいて、人体が許容できる電磁波の基準を満足するように、アクチュエータ部材を変位制御することができることは言うまでもない。
【0198】
なお、アクチュエータ部材は、上述の例のようなイオン交換樹脂を素材として用いたイオン導電性高分子線条に限られるものではなく、例えば、バイメタル(Bimetal)を用いることもできる。
【符号の説明】
【0199】
1…携帯電話端末の筐体、2…アンテナ装置、10…携帯電話端末、11…アンテナ回路、12…アクチュエータ駆動回路、21…アンテナ導体、22…アクチュエータ部材、23…カバー、24…取付部、25x,26xおよび25y,26y…電極、220…イオン導電性高分子線条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長の線状のアンテナ導体と、
前記線状のアンテナ導体を直接的に支持して、あるいは、補助部材を介して、前記アンテナ導体と一体的に変位可能な部材であって、供給される制御電圧に応じて、前記アンテナ導体の空間での位置を変更させるように変位するアクチュエータ部材と、
前記アンテナ導体の長さ方向の一端側において、前記アクチュエータ部材および前記アンテナ導体を、通信装置に対して取り付けるための取り付け用部材と、
を備え、
前記アクチュエータ部材は、前記制御電圧に応じて、前記アンテナ導体を、前記長さ方向の一端側を固定支点として、自由端である他端側を変位させるように変位制御させるものである
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記アクチュエータ部材は、線状体であって、
前記アクチュエータ部材には、前記線状体に沿って前記制御電圧が印加される電極が形成され、前記電極が前記アンテナ導体として兼用される
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記制御電圧は直流電圧であって、前記アクチュエータ部材は、前記制御電圧の印加方向を含む平面内で変位するものであり、
前記アクチュエータ部材には、異なる2種の前記制御電圧が、その印加方向が互いに直交するように印加される
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記アクチュエータ部材は、イオン交換樹脂を用いた高分子アクチュエータからなる
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
通信回路および制御回路が内蔵される筐体と、
前記筐体の外部にアンテナ導体が設けられるアンテナ装置と、
を備える通信装置であって、
前記アンテナ装置は、
所定長の線状の前記アンテナ導体と、
前記線状のアンテナ導体を直接的に支持して、あるいは、補助部材を介して、前記アンテナ導体と一体的に変位可能な部材であって、供給される制御電圧に応じて、前記アンテナ導体の空間での位置を変更させるように変位するアクチュエータ部材と、
前記アンテナ導体の長さ方向の一端側において、前記アクチュエータ部材および前記アンテナ導体を、通信装置に対して取り付けるための取り付け用部材と、
を備え、
前記アクチュエータ部材は、前記制御電圧に応じて、前記アンテナ導体を、前記長さ方向の一端側を固定支点として、自由端である他端側を変位させるように変位制御させるものであり、
前記制御回路は、
前記アンテナ導体を通じて受信される電波の強度を検知する検知手段と、
前記検知手段で検知された前記電波の強度に応じて前記制御電圧を生成し、生成した前記制御電圧を前記アクチュエータ部材に供給して、前記アンテナ導体を受信感度の高い位置にするように前記アクチュエータ部材を変位制御するアクチュエータ駆動制御手段と、
を備える通信装置。
【請求項6】
通信回路および制御回路が内蔵される筐体と、
前記筐体の外部にアンテナ導体が設けられるアンテナ装置と、
を備え、
ユーザの頭部近傍に保持されて通信機能が実行される通信装置であって、
前記アンテナ装置は、
所定長の線状の前記アンテナ導体と、
前記線状のアンテナ導体を直接的に支持して、あるいは、補助部材を介して、前記アンテナ導体と一体的に変位可能な部材であって、供給される制御電圧に応じて、前記アンテナ導体の空間での位置を変更させるように変位するアクチュエータ部材と、
前記アンテナ導体の長さ方向の一端側において、前記アクチュエータ部材および前記アンテナ導体を、通信装置に対して取り付けるための取り付け用部材と、
を備え、
前記アクチュエータ部材は、前記制御電圧に応じて、前記アンテナ導体を、前記長さ方向の一端側を固定支点として、自由端である他端側を変位させるように変位制御させるものであり、
前記制御回路は、
前記通信機能の実行時を検知する通信状態検知手段と、
前記通信状態検知手段で前記通信が実行されていることが検知されたときに、ユーザの頭部近傍に保持された状態において、人体に許容される電磁波の基準を満足するように、前記アンテナ導体を、ユーザの頭部から遠ざけるようにする前記制御電圧を生成し、生成した前記制御電圧を前記アクチュエータ部材に供給するアクチュエータ駆動制御手段と、
を備える通信装置。
【請求項7】
請求項6に記載の通信装置において、
前記制御回路は、
前記アンテナ導体を通じて受信される電波の強度を検知する強度検知手段を備えると共に、
前記アクチュエータ駆動制御手段は、
前記人体に許容される電磁波の基準を満足する状態を維持しつつ、前記強度検知手段で検知された前記電波の強度に応じた前記制御電圧を生成し、生成した前記制御電圧を前記アクチュエータ部材に供給して、前記アンテナ導体を受信感度の高い位置にするように前記アクチュエータ部材を変位制御する
ことを特徴とする通信装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の通信装置において、
前記通信は、携帯電話の電話通信であって、
前記通信状態検知手段は、電話の発信および着信を検知する手段である
ことを特徴とする通信装置。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の通信装置において、
前記アクチュエータ部材は、イオン交換樹脂を用いた高分子アクチュエータからなる可撓性の線状体であり、前記アンテナ導体と共にストラップ形状に構成されてなる
ことを特徴とするアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−124685(P2011−124685A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279274(P2009−279274)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(501431073)ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ株式会社 (810)
【Fターム(参考)】