説明

アンテナ装置及びアレーアンテナ装置

【課題】アンテナサイズを小形化、薄型化することができ、かつ軽量化を図ることができるアンテナ装置を得る。また、複数のアンテナ素子を配列する際に、円偏波励振回路のレイアウトスペースを確保することができるアレーアンテナ装置を得る。
【解決手段】正方形の底面及び開口面を有するキャビティ2と、4個の逆L字型励振プローブ3とを設け、4個の励振プローブ3をキャビティの中心に対して周方向に90度毎の回転対称となる位置で、先端をキャビティの中心方向に向け、他端がキャビティ側壁に近づけて配置し、隣接プローブ間で90度位相差をつけて励振する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば人工衛星に搭載され、衛星通信等に用いられるキャビティアンテナを構成するアンテナ装置及びアレーアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、アンテナを人工衛星に搭載する場合、ロケット打ち上げ時におけるロケットの積載スペース及び積載重量が制限されるため、アンテナは構造的に小形で、かつ軽量であることが求められる。
【0003】
従来の衛星搭載用アンテナの例として、例えば、ホーンアンテナがある(例えば、特許文献1参照)。従来の円偏波を放射するホーンアンテナについて図10を参照しながら説明する。図10は、従来の円偏波を放射するホーンアンテナの構成を示す図である。図10(a)は上からみた平面図、同図(b)は(a)に示すA−A'線からみた断面図である。
【0004】
図10において、ホーンアンテナ30には、導波管(円形キャビティ)31と、4個の励振プローブ32と、テーパ状ホーンアンテナ開口部33とが設けられている。4個の励振プローブ32は、円偏波を励振するために周方向に90度毎ずれて配置されている。
【0005】
次に、従来の円偏波を放射するホーンアンテナの動作について図面を参照しながら説明する。導波管31の外側に設けられている図示しない円偏波励振回路から導波管31の側壁を介してプローブ32が接続されている。このプローブ32は、短絡された導波管31の底面から略λg/4(λg:管内波長)離れた箇所に位置することで、効率よく導波管31への励振がなされる。4個ある励振プローブ32は、隣同士で90度ずつ励振位相が異なり、良好な円偏波励振が実現される。励振された導波管31の短絡面と反対側の面にはテーパ状のホーンアンテナ開口部33が接続されており、空間中への整合を図りながら、徐々に円偏波放射がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−35507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような従来のホーンアンテナは以下のような課題がある。従来のホーンアンテナにおいて、励振プローブ32が導波管31の短絡面から略λg/4離れた位置に配置され、その先に導波管モードの励振となるように導波管31が伸長され、さらにその先にテーパ状のホーンアンテナ開口部33が接続されている。このため、アンテナサイズ(全長及び開口径)や重量の面で課題がある。また、励振プローブ32が導波管31の側壁を介して円偏波励振回路と接続されるため、複数のアンテナ素子を配列してなるアレーアンテナ装置を構成する際に円偏波励振回路を配置するレイアウトスペースを確保することが困難である。
【0008】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、アンテナサイズを小形化、薄型化することができ、かつ、軽量化を図ることができるアンテナ装置を得ることを目的とする。また、複数のアンテナ素子を配列する際に、円偏波励振回路のレイアウトスペースを確保することができるアレーアンテナ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るアンテナ装置は、所定形状の底面を有すると共に上面が空間に開放された所定形状の開口面を有し、かつ前記底面から前記開口面までの側壁が所定の高さを有する、金属導体により構成された筒状のキャビティと、前記キャビティの側壁から所望間隔離れた近傍で、前記キャビティの底面から前記キャビティの開口面方向に鉛直に伸長し、前記キャビティの底面から使用周波数の略1/4波長の箇所で前記キャビティの開口面中央方向に略90度折れ曲がり、折れ曲がり部から先端部までの長さが使用周波数の略1/4波長であり、他端部が前記キャビティの底面を介して円偏波励振回路に接続され、前記キャビティの底面の中心を基準点とし、前記キャビティの周方向に隣接プローブ間で90度回転対称となる位置に配置され、かつ隣接プローブ間で90度位相差をつけて励振する、逆L字型でなる4つの励振プローブとを備えたものである。
【0010】
また、この発明に係るアレーアンテナ装置は、上記構成を備えるアンテナ装置が複数配列されて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、部品点数が少なくアンテナ構造を簡易化することができ、かつ、軽量化を図ることができるアンテナ装置及びアレーアンテナ装置を得る。また、アンテナ裏面に形成した給電回路と励振プローブとを一体成形できるので、PIM抑圧にも効果的であり、アレー化にも適する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る別形状のアンテナ装置の構成を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の電気的特性を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係るアンテナ装置の構成を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係るアンテナ装置の構成を示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係る別構造のアンテナ装置の構成を示す上視図である。
【図7】この発明の実施の形態4に係るアンテナ装置の構成を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態5に係るアンテナ装置の構成を示す断面図である。
【図9】この発明の実施の形態6に係るアレーアンテナ装置の構成を示す上視図である。
【図10】従来の円偏波を放射するホーンアンテナの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明のアンテナ装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。なお、各実施の形態では、アンテナ装置の理想的な構成として、各導体、線路間の誘電体基板を省略した構成について説明する。
【0014】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係るアンテナ装置について図1を参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の構成を示す図である。図1(a)は上からみた平面図、同図(b)は(a)に示すA−A'線からみた断面図である。なお、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0015】
図1において、この発明の実施の形態1に係るアンテナ装置1には、正方形の底面及び上面開口面を有する金属導体により構成された筒状のキャビティ2と、4個の逆L字型励振プローブ3と、当該逆L字型励振プローブ3がキャビティ2と導通しないようにキャビティ2の底面に構成された穴(同軸線路内部構造4)とが備えられている。
【0016】
ここで、キャビティ2は、開口面形状にはとらわれないとする。逆L字型励振プローブ3は、キャビティ2の側壁から所望間隔離れた近傍に合計4個あり、キャビティ2の底面の中心を基準点とし、キャビティ2の周方向に隣接プローブ間で90度回転対称となる位置に配置されている。
【0017】
逆L字型励振プローブ3の先端部は、キャビティ2の底面と略平行に配置されている。プローブ先端から1/4波長程度伸長した(図1の「長さL」に相当)のち、キャビティ2の側壁近傍で90度折れ曲がり、それ以後プローブ3はキャビティ2の側壁に沿って、キャビティ2の底面方向に伸長していく(図1の「高さH」に相当)。この伸長したプローブ3の他端部は、キャビティ2の底面を介して円偏波励振回路に電気的に接続されている。その際、プローブ3がキャビティ2と導通しないように、キャビティ2の底面には穴が開いていて、その穴の中心をプローブ3が貫通して同軸線路内部構造4を形成している。逆L字型励振プローブ3におけるキャビティ2の側壁に沿った伸長部分の長さ(高さH)は、略1/4波長である。
【0018】
図1に記載されているキャビティ2の深さDは、通常、キャビティ2の側壁に沿った逆L字型励振プローブ3の長さと同等の1/4波長程度とするのが妥当である。1/4波長よりも極端に短い場合は、本アンテナ装置1の本来の動作ができない。これに関しては、以後の動作説明の箇所で詳細を記す。一方、深さDが1/4波長よりも長い場合は、導波管開口型のアンテナとなり、前述した従来のアンテナ形状に近づき、アンテナの小形化という効果に反する。
【0019】
キャビティ2の開口面の大きさは、放射特性の利得、ビーム幅等に影響を及ぼす。一般に、波長に対して相対的に開口面が大きいと利得は高く、ビーム幅は狭くなる。逆に、波長に対して相対的に開口面が小さいと、利得は低く、ビーム幅が広がる。開口面の大きさは、本アンテナ装置1を複数配列しアレーアンテナを構成する場合にサイズ制限を受ける。この場合、通常は1波長未満とする。
【0020】
次に、この実施の形態1に係るアンテナ装置の動作について図面を参照しながら説明する。ここでは、本実施の形態1のアンテナ装置1を送信用とした場合について説明するが、可逆性の原理から受信用とすることも可能である。キャビティ2の底面裏側に設けられた円偏波励振回路(図示せず)からの使用周波数の入力信号は、キャビティ2の底面に設けられた穴(同軸線路内部構造4)を介して逆L字型励振プローブ3に伝わる。この励振プローブ3におけるキャビティ2の底面から高さHまでの箇所は、キャビティ2の側壁に近接し、且つ、側壁に沿ってキャビティ2の開口面方向に伸長している。このため、その箇所は伝送線路として動作し、そこからの放射はない。
【0021】
入力信号は、不要放射による損失を伴わずに励振プローブ3の90度折れ曲がり部分にまで到達する。90度折れ曲がり部分に到達した入力信号は、キャビティ2の中心方向に伸長した励振プローブ3の先端部に伝わる際に放射する。この放射原理はモノポールアンテナと同様である。すなわち、キャビティ2の側壁を地導体、励振プローブ3の先端部(長さLの部分)をモノポール放射導体とするものである。励振プローブ3先端部の長さLが使用周波数にて1/4波長であるので、共振現象を伴って励振プローブ3(の長さLの部分)から放射する。励振プローブ3は、キャビティ2の中心に対して、90度回転対称に配置されている。また、各励振プローブ3には、円偏波励振回路により、それぞれ90度の位相差をもった励振信号が入力される。これによって、アンテナ装置1のキャビティ2開口面から天頂方向に円偏波が放射される。
【0022】
本実施の形態1のアンテナ装置1は、励振プローブ3による4点励振でキャビティ2の開口面から円偏波が放射されるので、軸比を低くすることができる。
【0023】
ところで、本実施の形態1のアンテナ装置1は、断面矩形状の金属導体であるキャビティ2を有している。前述したとおりキャビティ2の深さDの違いによりアンテナ装置1の動作が異なる。
【0024】
具体的に、キャビティ2の深さを1/4波長よりも極端に浅く設定した場合には、励振プローブ3において伝送線路として動作する部分が短く、キャビティ2の開口面より上方に伸長した励振プローブ3から放射されることになる。このキャビティ2の開口面より伸長した部分の長さは1/4波長よりも長くなるので、使用周波数からずれた周波数にて放射量が最大となってしまう。また、キャビティ2底面から鉛直方向に伸長した部分からも放射することが考えられ、放射パターン形状をコントロールできない。
【0025】
上記の場合、励振プローブ3の高さHをキャビティ2の深さD程度に極端に低くすることも考えられるが、この場合、励振プローブ3の長さLに相当する放射部がキャビティ2の底面に極端に近づいてしまう。金属導体であるキャビティ2に近づくと放射効率が低下するので、このような構造は避ける必要がある。
【0026】
これに対して、キャビティ2を深く設定した場合には、導波管開口型の従来からのアンテナとなり、小形化という効果が期待できない。ただし、キャビティ深さDを使用周波数での略3/8波長に設定した場合、天頂方向の利得を最大にすることができる特長がある。
【0027】
これらのことを鑑みると、キャビティ2の深さDは励振プローブ3の高さHと同等に設定することが妥当である。
【0028】
また、キャビティ2の開口面の大きさは、放射特性の利得、ビーム幅等に影響を及ぼす。素子(アンテナ装置1)単体で用いるのではなく、アレー状態とする場合には、キャビティ2の開口面の大きさは1波長未満の中で所望の特性を得るようにある程度任意に設定可能である。
【0029】
ところで、本実施の形態1のアンテナ装置1は、逆L字型励振プローブ3をキャビティ2の底面より伸長した構造であるため、円偏波励振回路をキャビティ2の底面裏側に構成できる。これは、本アンテナ装置1をアレー化した際に、給電構造を簡略化できる利点を持つ。
【0030】
逆L字型励振プローブ3は、キャビティ2の底面裏側に構成された円偏波励振回路のポート端より先で異種金属による接続箇所が存在しない。このため、パッシブインターモジュレーション(PIM:Passive Intermodulation)の発生を抑圧できる特長がある。なお、PIMとは、異種金属で接続されている箇所に大電力が入力された際に、放射電波の歪や混変調が生じる現象である。
【0031】
逆L字型励振プローブ3は、図1のように導線のように細くなくてはならないというものではなく、板状としても差し支えない。板状とすることで、広帯域性が図れたり、励振プローブ長を短く設定でき、アンテナの小形化にも繋がる。
【0032】
図1において、キャビティ2は側壁全体が金属導体で囲まれているが、側壁の少なくとも一部が導体で囲まれている場合でも、アンテナ特性に影響を与えるものではない可能性がある。従って、これを満足するようにキャビティ2の側壁にスリットを設けてもよいし、側壁自体を金網等で構成しても問題ない。すなわち、キャビティ2の側壁の一部が不連続金属導体であってもよい。
【0033】
なお、キャビティ構造については、正方形だけに限定するものではなく、例えば、図2に示すような円形や任意形状としても問題ない。なお、図2(a)は上からみた平面図、同図(b)は(a)に示すA−A'線からみた断面図である。
【0034】
この実施の形態1に係るアンテナ装置1によれば、逆L字型励振プローブ3の一部をキャビティ2の側壁に近接配置させて伝送線路動作部分を設け、それより先の部分でモノポールアンテナのように放射させる構造としている。このため、アンテナ構造が簡略化され、サイズ低減が図れる。また、逆L字型励振プローブ3の後段に繋がる励振回路をキャビティ2の底面裏側に配置できるので、本アンテナ装置1を複数個配列したアレー構造としても複雑にならない特長がある。さらに、4個の励振プローブ3をキャビティ2の開口面の中心に対して周方向に90度毎に回転対称となるように配置し、かつ、90度毎励振位相差を設けているので、低軸比特性を有する。加えて、モノポールアンテナと同等、あるいは4点円偏波励振としていることで、それ以上の比帯域特性を望める。
【0035】
ここで、実施の形態1のアンテナ装置1の電気的特性について図3を参照しながら説明する。図3は、この発明の実施の形態1に係るアンテナ装置1の電気的特性を示す図である。図3(a)はアンテナ装置1の各L字型励振プローブ3の入力端における反射特性、同図(b)は使用周波数での放射パターン、同図(c)は軸比特性をそれぞれ示すグラフである。図3(a)の横軸は使用周波数fで規格化されている。図3(a)に示すように、ポート(Port)X1、X2、Y1、Y2における反射特性は略重なっており、全ポートで同様の特性を得ている。また、放射パターンの図3(b)において、正偏波成分(RHCP:right-handed circularly polarized wave)を実線で示し、交差偏波成分(LHCP:left-handed circularly polarized wave))を破線で示している。図3(b)の縦軸は最大利得で規格化した相対値である。図3(b)、(c)から使用周波数において良好な放射パターン形状と低軸比特性が得られていることがわかる。
【0036】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係るアンテナ装置について図4を参照しながら説明する。図4は、この発明の実施の形態2に係るアンテナ装置の構成を示すものである。図4(a)は、図1の下図と同様の断面図である。一方、図4(b)はキャビティの中心から励振プローブをみた図である。
【0037】
図4において、上記の実施の形態1と重複するものについては説明を省略する。新たな符号として、5はキャビティ2の側壁までの間隔が徐々に変化している逆L字型励振プローブである。6はキャビティ2の側壁に沿って伸長している部分の導体線路幅が徐々に変化している板状の逆L字型励振プローブである。
【0038】
本アンテナ装置の動作については、上記の実施の形態1と同様であるので、ここでは省略する。実施の形態1と異なる点は、キャビティ2の側壁と近接配置され、側壁に沿って伸長している逆L字型励振プローブの伝送線路として働く部分である。図4(a)ではキャビティ2の側壁と逆L字型励振プローブ5との間隔が、図4(b)では板状の逆L字型励振プローブ6の導体線路幅がそれぞれ徐々に変化している。両者とも、この伝送線路として働く部分において、線路の特性インピーダンスを徐々に変化させてインピーダンス整合を取っている。この図ではキャビティ2の底面から徐々に低インピーダンスに変化させる構造を示している。これらの構造とすることで、実施の形態1のアンテナ装置よりも高効率化が図れる。
【0039】
なお、図4では逆L字型励振プローブ5と板状の逆L字型励振プローブ6とがテーパ状に変化しているが、階段状に変化させても差し支えない。
【0040】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係るアンテナ装置について図5および図6を参照しながら説明する。図5は、この発明の実施の形態3に係るアンテナ装置の構成を示すものであり、図1の下図と同様の断面図である。一方、図6は、この発明の実施の形態3に係るアンテナ装置のキャビティの開口面上方からみた上視図である。
【0041】
図5において、上記の実施の形態1と重複するものについては説明を省略する。新たな符号として、7はキャビティ2の側壁内側を囲み、逆L字型励振プローブ3のキャビティ2の側壁に沿った伸長部分を含んだ、薄い層状で、かつキャビティ2の側壁に密着して配置される矩形環状の絶縁体である。
【0042】
図5に示す本実施の形態3のアンテナ装置は、実施の形態1のアンテナ装置に対して絶縁体7を装荷した点が異なる。本アンテナ装置の動作は、実施の形態1と同様であるので、ここでは省略する。絶縁体7は、励振プローブ3をその内部に含み、キャビティ2の側壁に密着しているので、励振プローブ3は強固に固定される。このため、振動を伴うような劣悪環境下においても、アンテナ構造の変形あるいは破損が生じる恐れがないという特長を有する。
【0043】
なお、絶縁体7は矩形環状としているが、キャビティ2の断面形状に合った環状であれば良いことは言うまでもない。
【0044】
図6において、上記の実施の形態1と重複するものについては説明を省略する。新たな符号として、8は各逆L字型励振プローブ3の周囲のみに装荷した角柱状の絶縁体である。
【0045】
図6に示す本実施の形態3のアンテナ装置は、実施の形態1のアンテナ装置に対して絶縁体8を装荷した点が異なる。本アンテナ装置の動作は、実施の形態1と同様であるので、ここでは省略する。絶縁体8は、励振プローブ3をその内部に含み、キャビティ2の側壁に密着しているので、励振プローブ3は強固に固定される。加えて、図5のように環状とはしていないので、使用する絶縁体材料の削減を図れる。このため、アンテナ装置の重量を極力抑えつつ、振動を伴うような劣悪環境下においても、アンテナ構造の変形あるいは破損が生じる恐れがないという特長を有する。
【0046】
損失による放射効率低下を抑えるために、絶縁体8は強固でありつつ、低損失なものが望まれる。
【0047】
図6には、絶縁体8として角柱状の絶縁体を示しているが、その形状に制限はない。励振プローブ3が固定されれば良く、キャビティ2の側壁の形状に合わせて選定すれば良い。
【0048】
なお、キャビティ2の底面から鉛直上方に向かって、上記絶縁体の比誘電率が徐々に変化させることでも、伝送線路の特性インピーダンスを変化させることができる。この方法でも、インピーダンス整合を実現でき、アンテナの放射効率向上を図れる。
【0049】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4に係るアンテナ装置について図7を参照しながら説明する。図7は、この発明の実施の形態4に係るアンテナ装置の構成を示すものである。
【0050】
図7において、上記の実施の形態1と重複するものについては説明を省略する。新たな符号として、9はキャビティ2の底面に設けられた穴(同軸線路内部構造4)の一部がキャビティ2の側壁下部に隠れた様子を示している。
【0051】
本実施の形態4のアンテナ装置は、実施の形態1のアンテナ装置に対してキャビティ2の底面に設けた穴(同軸線路内部構造4)の一部が側壁下部に隠れた様子9が異なる。すなわち、キャビティ2の底面に設けられた励振プローブ3と励振回路との接続部分の同軸構造が、励振プローブ3とキャビティ2の側壁との間隔が狭くなった際に、同軸構造の一部がキャビティ2の側壁下部に隠れるようになっている。
【0052】
本アンテナ装置の動作は、実施の形態1と同様であるので、ここでは省略する。穴(同軸線路内部構造4)の一部が側壁下部に隠れても、アンテナ装置の特性に大きな影響を及ぼさないことを確認している。この結果は、キャビティ2の底面に設ける同軸構造の大きさにとらわれずに、励振プローブ3をキャビティ2の側壁に近接配置することが可能であることを示すものであり、円偏波励振回路との整合を取りやすい利点がある。
【0053】
実施の形態5.
この発明の実施の形態5に係るアンテナ装置について図8を参照しながら説明する。図8は、この発明の実施の形態5に係るアンテナ装置の構成を示す断面図である。
【0054】
図8において、この発明の実施の形態5に係るアンテナ装置10には、正方形の底面及び開口面を有する金属のキャビティ2と、4個の逆L字型励振プローブ3と、誘電体基板15と、誘電体基板15上に構成した地導体16と、地導体16上に設けられた穴17とマイクロストリップ線路18とが設けられている。
【0055】
上記実施の形態1のアンテナ装置1の説明では、キャビティ2の底面の裏面側に円偏波励振回路が構成されることのみを言及していたが、本実施の形態5においては、円偏波励振回路を、誘電体基板15上に、マイクロストリップ線路18にて構成し、それをキャビティ2の底面の裏面に貼り付けている。
【0056】
図8において、誘電体基板15のキャビティ2側の表面上は大半が銅箔で覆われており(グラウンド面として機能する)、誘電体基板15の裏面上に円偏波励振回路が構成されている。
【0057】
逆L字型励振プローブ3とマイクロストリップ線路18とが接続する近傍の構造をさらに詳しく説明する。キャビティ2の底面の裏面と誘電体基板15の表面(大半が銅箔で覆われている、これが誘電体基板上に構成した地導体16)とが電気的に接続するように貼り合わされる。キャビティ2の底面には、逆L字型励振プローブ3との接触を避けるように穴4が開いており、これと同じ位置の誘電体基板15の表面(地導体16)の銅箔にも接触を避ける穴17がエッチング加工などで開いている。また、同じ位置の誘電体基板15に、逆L字型励振プローブ3が貫通する穴も開いている。
【0058】
すなわち、逆L字型励振プローブ3はキャビティ2と誘電体基板15の表面上の地導体16との接触がなく誘電体基板15の裏面まで伸長できる。誘電体基板15の裏面には逆L字型励振プローブ3が貫通する穴を持つマイクロストリップ線路18がエッチング加工などで構成されており、逆L字型励振プローブ3が貫通したあとに、はんだ付けなどにより両者が接続される。これにより、逆L字型励振プローブ3と円偏波励振回路とが接続される。
【0059】
従って、誘電体基板15上に構成された円偏波励振回路は、キャビティ2の底面の裏面側に設置されるので、嵩張らず、軽量化が可能である。また、アレー化の際にも、素子間隔に左右されず、後段の回路との接続も容易になる利点がある。
【0060】
上記のようなアンテナ装置10では、円偏波励振回路が誘電体基板15上に構成されているので、さらに後段に接続されるフィルタや増幅器等も誘電体基板15上に一体構成できる。あるいは、フィルタや増幅器等を別の誘電体基板上に構成し、誘電体基板15と積層化して接続することも可能である。いずれにしても、アンテナ素子部分と後段の給電回路部分とを省スペースのもとで接続させることができる利点がある。
【0061】
実施の形態6.
この発明の実施の形態6に係るアレーアンテナ装置について図9を参照しながら説明する。図9は、この発明の実施の形態6に係るアレーアンテナ装置の構成を示す平面図である。
【0062】
実施の形態1から実施の形態5までのアンテナ装置のいずれかをアンテナ素子とし、図9に示すように、そのアンテナ素子1あるいは10を複数個適宜配列して給電することにより、アレーアンテナ装置を構成することができる。このように、アレー化した場合にも、実施の形態1から実施の形態5までのアンテナ装置の特性が基本的には反映され、良好なアンテナ特性とすることができるとともに、給電回路まで含めて簡略構造、小形、薄型化にすることができる。
【0063】
ここで、キャビティ2の側壁高さを比較的高く設定した場合には、ビーム幅を絞ることが可能となり、隣接アンテナ素子間の相互結合量の低減化を図ることができる。また、互いに隣接するアンテナ素子間の相互結合量がキャビティ2によって低減されるため、損失を軽減させることができる。
【0064】
なお、図9に示した実施の形態6に係るアレーアンテナ装置は、三角配列された13個のアンテナ素子によって構成されている。しかしながら、この例に限定するものではなく、アレーアンテナ装置を構成するアンテナ素子の個数や配列方法は、所望の特性が得られるよう適宜決定することができる。
【0065】
さらに、実施の形態1〜5では、送信系のアンテナ装置及びアレーアンテナ装置について説明したが、この発明は、受信系のアンテナ装置及びアレーアンテナ装置にも適用することができる。
【0066】
また、実施の形態1〜6では、円偏波を放射するために4個の逆L字型励振プローブを用いたが、軸比特性の劣化を許容できる場合には90度回転対称配置された2個の逆L字型励振プローブにそれぞれ90度の位相差を持った信号を入力すれば十分である。このような構成とすることで、逆L字型励振プローブの数を4個から2個へ低減し、低コスト化を図ることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 アンテナ装置、2 キャビティ、3 逆L字型励振プローブ、4 同軸線路内部構造、5 逆L字型励振プローブ、6 板状逆L字型励振プローブ、7 矩形環状絶縁体、8 励振プローブ周囲の絶縁体、9 キャビティ壁下部に同軸外導体が隠れた様子、10 アンテナ装置、15 誘電体基板、16 誘電体基板上に構成した地導体、17 地導体16上の穴、18 マイクロストリップ線路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状の底面を有すると共に上面が空間に開放された所定形状の開口面を有し、かつ前記底面から前記開口面までの側壁が所定の高さを有する、金属導体により構成された筒状のキャビティと、
前記キャビティの側壁から所望間隔離れた近傍で、前記キャビティの底面から前記キャビティの開口面方向に鉛直に伸長し、前記キャビティの底面から使用周波数の略1/4波長の箇所で前記キャビティの開口面中央方向に略90度折れ曲がり、折れ曲がり部から先端部までの長さが使用周波数の略1/4波長であり、他端部が前記キャビティの底面を介して円偏波励振回路に接続され、前記キャビティの底面の中心を基準点とし、前記キャビティの周方向に隣接プローブ間で90度回転対称となる位置に配置され、かつ隣接プローブ間で90度位相差をつけて励振する、逆L字型でなる4つの励振プローブと
を備えたアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記キャビティは、前記側壁の一部が不連続金属導体である
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアンテナ装置において、
前記キャビティの底面から開口面までの距離である、側壁の高さを使用周波数の略3/8波長に設定した
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のアンテナ装置において、
前記励振プローブは、前記キャビティの底面側から開口面までの間に、前記キャビティの側壁に沿って前記キャビティの側壁との間隔または導体線路幅が徐々に変化している
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のアンテナ装置において、
前記キャビティの側壁内側を囲み、前記励振プローブの前記キャビティの側壁に沿った伸長部分を含んだ、薄い層状で、かつ前記キャビティの側壁に密着して配置される絶縁体をさらに備える
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のアンテナ装置において、
前記絶縁体は、前記励振プローブの周囲のみに配置されている
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項7】
請求項5に記載のアンテナ装置において、
前記絶縁体は、前記キャビティの底面側から開口面までの間に、比誘電率が徐々に変化している
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載のアンテナ装置において、
前記キャビティの底面に設けられた前記励振プローブと前記励振回路との接続部分の同軸構造は、前記励振プローブと前記キャビティの側壁との間隔が狭くなった際は、前記同軸構造の一部が前記キャビティの側壁下部に隠れる
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載のアンテナ装置において、
前記キャビティの底面の裏面に設けられた誘電体基板と、
前記キャビティの底面の裏面と接しない前記誘電体基板の裏面上に円偏波励振回路として設けられたマイクロストリップ線路と
をさらに備え、
前記キャビティの底面の裏面と接する前記誘電体基板の表面上は、銅箔で覆われ、前記第1ないし第4のL字型励振プローブの他端部が位置する銅箔及び誘電体基板の箇所のみ所定の大きさの穴が設けられており、
前記第1ないし第4のL字型励振プローブの先端部が、前記穴を非接触で貫通して、前記誘電体基板の裏面上に設けられた円偏波励振回路と接続している
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のアンテナ装置が複数配列されて構成されている
ことを特徴とするアレーアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−3984(P2011−3984A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143419(P2009−143419)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】