説明

アンテナ装置及びアンテナユニット

【課題】フロントガラスやダッシュボード上等の設置場所によらず、特性の安定したアンテナ装置及びアンテナユニットを提供する。
【解決手段】本発明のアンテナ装置1をフロントガラスに設置して用いる場合には、アンテナ本体2のみを前記フロントガラスに近接して設置し、フロントガラス以外の例えばダッシュボード等に設置する場合には、アンテナ本体2にインピーダンス整合用誘電体板3を装着して用いる。アンテナ本体2は、パッチアンテナ11及び地板12を備えており、パッチアンテナ11と前記フロントガラスまたはインピーダンス整合用誘電体板3とを所定の間隔で近接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載されて車室外との情報通信を行うための無線通信装置に用いるのに好適なアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車には、GPS(全地球測位システム)、VICS(道路交通情報通信システム)、ETC(自動料金収受システム)などの無線通信装置が搭載されるようになってきている。
【0003】
無線通信装置の増加とともに、アンテナ装置への小型化の要求が高まる一方、アンテナ装置の設置場所についても目立たない場所等への設置が強く望まれるようになってきている。
【0004】
例えば、ETC用のアンテナ装置は前方斜め上方からの電波を受信する必要があることから、フロントガラス等に設置することが望まれている。この場合、運転者が前方を視認する妨げにならないよう、アンテナ装置の設置場所を十分検討する必要がある。
【0005】
運転者の視認の妨げにならないフロントガラス上の位置として、例えば室内後写鏡で遮へいされる位置等にアンテナ装置を設置することが、最近積極的に進められている。
【0006】
しかしながら、フロントガラス等の車内の誘電体板に近接してアンテナ装置を設置すると、当該誘電体板の影響を受けてアンテナ特性が劣化してしまうという問題があった。そこで、特許文献1には、誘電率の異なる複数の誘電体を組み合わせることで、上記のようなフロントガラスの影響を回避する技術が記載されている。
【0007】
またアンテナ装置の設置場所に関する別のニーズとして、目立たない場所に設置できるだけでなく、設置場所の自由度の高いものが要求されている。具体的には、フロントガラスに設置できるとともに、同一のアンテナ装置をダッシュボードにも設置できるといった、複数の設置場所に対応できるアンテナ装置の必要性が高まっている。
【0008】
このような複数の設置場所に対応できるアンテナ装置の一実施例として、例えば特許文献2に記載のものがある。特許文献2では、アンテナ装置の設置場所の違いによって共振周波数がずれるのを補正するために、選択的に着脱可能な誘電体部材を用いる方法が記載されている。
【特許文献1】特開2005−033475
【特許文献2】特開平08−162843号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の方法では下記のような問題があった。
特許文献1に記載の方法において、アンテナ装置を薄型化するためには、組み合わせる誘電体の誘電率を高くする必要があり、特殊な誘電体を用いることになる。そのため、コストアップの原因となっていた。
【0010】
また特許文献2に記載の方法では、共振周波数を補正するのに用いる誘電体の誘電率がばらつくと、共振周波数そのものもばらついてしまう。そのため、前記誘電体の誘電率を厳密に管理する必要があり、誘電体部材の管理が煩雑になりコストアップに繋がるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、フロントガラス等の自動車内の誘電体板に設置されるアンテナ装置であって、アンテナの設置場所によらず特性の安定したアンテナ装置及びアンテナユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明のアンテナ装置の第1の態様は、車室外から自動車のガラスを通過して車室内に送信される電波を受信する、あるいは車室内から前記ガラスを通過して車室外に電波を送信する無線通信装置に用いられアンテナ装置であって、前記ガラスに搭載する場合には、前記アンテナと前記ガラスとが別の所定幅の空気層を形成するように設置し、前記ガラスから離間して搭載する場合には、所定の誘電率を有する所定の厚さのインピーダンス整合用誘電体板を前記アンテナに近接して装着することを特徴とするアンテナ装置である。
【0013】
第2の態様は、前記インピーダンス整合用誘電体板の前記所定の厚さ及び/または前記所定の誘電率が、前記ガラスと実質的に同じないしは小さくかつ2分の1以上の範囲内であることを特徴とするアンテナ装置である。
【0014】
第3の態様は、前記インピーダンス整合用誘電体板の平面方向の寸法が、前記地板と同じかそれより大きいことを特徴とするアンテナ装置である。
【0015】
第4の態様は、前記アンテナはパッチアンテナであって、アンテナの1辺の寸法を2Lとし、前記パッチアンテナの中心と給電点との距離をα×Lと表したとき、0.5≦α≦1なる位置に前記給電点を設けることを特徴とするアンテナ装置である。
【0016】
第5の態様は、前記パッチアンテナのパッチと地板の間は所定幅の空気層により構成されることを特徴とするアンテナ装置である。
【0017】
第6の態様は、前記インピーダンス整合用誘電体板と前記パッチアンテナとの間には、空気と実質的に同じ誘電率を有する誘電体を配設することを特徴とするアンテナ装置である。
【0018】
第7の態様は、前記ガラスと前記パッチアンテナとの間、あるいは前記パッチアンテナと前記地板との間には、前記空気層に代えて空気と実質的に同じ誘電率を有する誘電体を配設することを特徴とするアンテナ装置である。
【0019】
第8の態様は、前記パッチアンテナが1点給電円偏波用アンテナであって、前記インピーダンス整合用誘電体板の誘電率及び寸法が、前記ガラスから離間して搭載される場合の軸比が所定の値以下となるように調整されていることを特徴とするアンテナ装置である。
【0020】
第9の態様は、第1の態様から第9の態様のいずれかのアンテナ装置と、前記アンテナ装置を収納するブラケットからなるアンテナユニットであって、前記アンテナ装置を前記ガラスから離間して搭載する場合に、前記インピーダンス整合用誘電体板を前記アンテナ装置に装着した状態で前記ブラケット内に収納することを特徴とするアンテナユニットである。
【0021】
第10の態様は、前記インピーダンス整合用誘電体板を前記ブラケットに固定して装着し、前記アンテナ装置を前記ガラスから離間して搭載する場合に、前記アンテナ装置のみを前記ブラケット内に収納することを特徴とするアンテナユニットである。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、フロントガラス等の自動車内の所定の誘電体板に設置できるとともに、前記所定の誘電体板以外の場所に設置する場合でも、インピーダンス整合用誘電体板を装着することで、安定した特性が得られるアンテナ装置を提供することができる。
【0023】
またこの発明によれば、上記の通り複数の場所に設置可能なアンテナ装置を、コストアップさせることなく薄型化することが可能である。
【0024】
さらに、1点給電円偏波駆動するパッチアンテナに適用する場合には、優れた軸比特性を有するアンテナ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図面を参照して本発明の好ましい実施の形態におけるアンテナ装置の構成について詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0026】
本発明のアンテナ装置は、通常はフロントガラス等のガラスに設置して用いるとともに、それ以外の場所(例えばダッシュボード上)にも設置して用いることができるものである。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の概略の構成を示す図である。図1(a)は、本発明のアンテナ装置1をガラスに設置して用いる場合の構成を示しており、図1(b)は、本発明のアンテナ装置1をガラス以外の例えばダッシュボード等に設置する場合の構成を示している。
【0028】
本発明のアンテナ装置1の設置状態を、図2を用いて説明する。アンテナ装置4は、本発明のアンテナ装置1をフロントガラス6に設置した状態を示しており、この場合には図1(a)に示す通り、アンテナ本体2のみを設置している。
【0029】
また、アンテナ装置5は、本発明のアンテナ装置1をダッシュボード7上に設置した状態を示しており、この場合には図1(b)に示す通り、アンテナ本体2にインピーダンス整合用誘電体板3を装着した状態でダッシュボード上に設置している。
【0030】
次に、アンテナ本体2の構造を図3を用いて詳細に説明する。図3(a)はアンテナ本体2の平面図であり、図3(b)はアンテナ本体2の断面図を示している。図3に示すアンテナ本体2は、パッチアンテナ11と地板12とがケース13の内部に収納された構造としている。
【0031】
パッチアンテナ11と地板12とは所定の間隔を設けて配置されており、両者の間には空気層が形成される構造となっている。また、パッチアンテナ11と地板12とを収納するケース13は、誘電率が空気とほぼ同程度の誘電体で形成されており、アンテナ特性に影響を与えないようにしている。
【0032】
アンテナ本体2では、パッチアンテナ11と地板12との間に空気層を形成しているが、これにより本発明のアンテナ装置1のQ値を小さくすることができ、その結果、共振周波数における帯域を広くすることが可能となる。
【0033】
本発明のアンテナ装置1では、上記のように共振周波数における帯域を拡大することで、設置場所による共振周波数のズレを補正する必要がないようにしている。すなわち、帯域を広くすることで、共振周波数が変動してもアンテナ特性の劣化を抑えることが可能になる。
【0034】
上記の通り構成された本発明のアンテナ装置1は、図4に示すように、自動車のフロントガラス21に設置する場合には、アンテナ本体2をフロントガラス21に直接設置できるように構成されたものである。図4は、図2に示すアンテナ装置4の状態を拡大して表示したものである。
【0035】
図4に示す通り、フロントガラス21にアンテナ装置1を設置する場合には、アンテナ本体2のみをフロントガラス21に近接して設置する。本発明のアンテナ装置1では、アンテナ本体2がフロントガラス21に近接して設置された状態において、良好なアンテナ特性が得られるように構成されている。
【0036】
本発明のアンテナ装置1は、例えば特許文献1に記載のようにガラスとの間に誘電体部材を介在させて該ガラスの影響を調整するのではなく、誘電体としてのガラスを利用して優れたアンテナ特性が得られるように構成されたものである。
【0037】
すなわち図4において、パッチアンテナ11とフロントガラス21とを近接して設置することにより、逆マイクロストリップ線路(Inverted Microstrip Line)と同様の構造となるアンテナ装置としている。通常のマイクロストリップ線路(Microstrip Line)の構造をもつパッチアンテナでは、パッチアンテナと地板とが誘電体基板をはさんで対向する面に配置されるのに対し、逆マイクロストリップ線路では誘電体基板、パッチアンテナ、地板の順に配置される。
【0038】
逆マイクロストリップ線路構造のパッチアンテナは、一般的に、同じ線路幅であれば、マイクロストリップ線路構造のものに比べてより低インピーダンスになることが知られている。
【0039】
本発明のアンテナ装置1では、フロントガラス21をアンテナの誘電体基板と見立てることにより、逆マイクロストリップ線路の構造としている。その結果、マイクロストリップ線路構造のものに比べて低インピーダンスになることから、インピーダンスが所定の値まで高くなるよう、給電点14をパッチアンテナ11の外周側に配置している。
【0040】
給電点5の配置位置を図3(a)の平面図を用いて以下に詳細に説明する。図3(a)では、給電点14をパッチアンテナ11の中心15から水平方向に所定の距離離れた位置に配置している。同図では、パッチアンテナ11の中心15から水平方向に外周までの長さをLとしており、中心15から給電点14までの距離をα×Lとしている。
【0041】
通常のマイクロストリップ線路構造のパッチアンテナでは、給電点14を中心15から0.3×L前後(α=0.3〜0.4程度)の距離の位置に配置するのに対し、逆マイクロストリップ線路構造のパッチアンテナでは、0.5≦α≦1としたときの中心15からの距離α×Lの位置に給電点14を配置している。すなわち、本発明のアンテナ装置1では、給電点14をマイクロストリップ線路構造のものよりパッチアンテナ11の外周側に配置している。
【0042】
次に、本発明のアンテナ装置1のインピーダンス特性を図5を用いて説明する。図5は、パッチアンテナ11のサイズを24mm×24mm、地板12のサイズを25mm×25mmとしたときのアンテナ装置1のインピーダンス特性を、スミス図上に表示したものである。
【0043】
実線31は、ガラスを近接させない状態でインピーダンスが最適になるよう設計したアンテナ本体2に対し、ガラスを4mmの距離のところまで平行に近接させたときのインピーダンス特性を示している。上記の設計では、図3に示すα=0.25の位置に給電点14を配置している。
【0044】
実線31が示す通り、ガラスに近接させないで最適設計したアンテナ本体2を4mmの距離までガラスに近接させると、ガラスの影響を受けてインピーダンスが低くなってしまう。
【0045】
これに対し図5の破線32は、アンテナ本体2の上面に厚さ4.7mmのガラス(フロントガラス21)を近接させた状態でインピーダンス整合をとったときのインピーダンス特性を示している。フロントガラス21とアンテナパッチ11との距離は、4mmとしている。
【0046】
この場合には、図3に示すα=0.6の位置に給電点14を配置しており、破線32が示す通りインピーダンスの整合が取れていることが分かる。なお、インピーダンスの整合を取るとは、一般的に所望の周波数のインピーダンス軌跡をスミス図上の中心点に近づけることをいう。
【0047】
以上説明したように、本発明のアンテナ装置1は、図4に示す通りアンテナ本体2をフロントガラス21に近接させ、アンテナ装置の一部(誘電体)としてフロントガラス21を利用するような構成としている。
【0048】
本発明のアンテナ装置1を上記のように構成した場合には、アンテナ本体2をフロントガラス21から離間して設置する場合には、アンテナ装置1の一部(誘電体)として利用されていたフロントガラス21がなくなることで、インピーダンス特性が大きく劣化してしまう。
【0049】
すなわち、フロントガラス21を利用して本発明のアンテナ装置1を逆マイクロストリップ線路構造のアンテナとしたために、給電点14を通常より高インピーダンス側に配置している。
【0050】
そのため、フロントガラス21から離間して設置した場合には、本発明のアンテナ装置1は、通常のマイクロストリップ線路構造のパッチアンテナとして動作するため、高インピーダンス給電となって不整合がおき、反射損失が増大して利得が低下してしまうといった問題が生じる。
【0051】
アンテナ装置1をフロントガラス21から離間して設置したときのインピーダンス特性の変化を図6を用いて説明する。図6は、図5の破線32に加えて、アンテナ装置1をフロントガラス21から離間させたときのインピーダンス特性を1点鎖線33で表示している。
【0052】
図6の破線32に示す通り、アンテナ本体2をフロントガラス21に近接させた場合にはインピーダンス整合が取れていたのに対し、フロントガラス21から離間させると1点鎖線33のように高インピーダンスになってしまうことが分かる。
【0053】
このようなインピーダンス特性の劣化の影響は、パッチアンテナ11が1点給電円偏波駆動している場合には、特に軸比の劣化として現れてくる。この軸比は、一般に円偏波アンテナの特性を見るときの代表的な特性の一つとして知られており、その値が小さいほど良好な特性となる。
【0054】
円偏波は、直交する2つの偏波成分で構成されており、この2つの偏波成分の大きさが等しいときは軸比の値が0dBとなり、完全な円偏波と見なすことができる。これに対し、前記2つの偏波成分の差が大きくなると、それにつれて軸比の値も大きくなり、それとともに徐々に楕円偏波、直線偏波へと変化していく。
【0055】
パッチアンテナ11を1点給電円偏波駆動としたときの軸比-周波数特性の一実施例を図7に示す。同図において、実線41はアンテナ本体2をフロントガラス21に近接させたときの軸比-周波数特性を示しており、この場合にはインピーダンス整合が取れているため軸比も小さくなっている。
【0056】
これに対し、アンテナ本体2をフロントガラス21から離間させたときの軸比-周波数特性を破線42で示す。この場合には、インピーダンス整合が劣化して高インピーダンスとなるため、軸比も破線42のように大きくなってしまう。高インピーダンス給電の影響により、2つの偏波成分のうちの一方の偏波成分の利得が低下して軸比が大きくなっている。
【0057】
そこで、本発明のアンテナ装置1では、フロントガラス21から離間して設置する場合には、図1(b)に示すとおり、インピーダンスの変化を低減するために、ガラスを模擬した誘電体部材からなるインピーダンス整合用誘電体板3をアンテナ本体2に装着している。
【0058】
インピーダンス整合用誘電体板3は、所定の厚さと所定の誘電率を有しており、パッチアンテナ11から所定の距離を隔てて装着される。すなわち、インピーダンス整合用誘電体板3とパッチアンテナ11との間には、所定幅の空気層を介在させるようにしている。また、インピーダンス整合用誘電体板3の平面方向の寸法は、地板12と同程度かそれより大きくするのが好ましい。
【0059】
インピーダンス整合用誘電体板3の誘電率を、例えばフロントガラス21の誘電率と同程度とした場合には、インピーダンス整合用誘電体板3の厚さも、フロントガラス21と同程度の4.7mmとすることができる。
【0060】
さらに、インピーダンス整合用誘電体板3の厚さ及び/または誘電率を、フロントガラス21よりも小さくかつ2分の1以上の範囲としてもよい。
【0061】
図1(b)に示すように、本発明のアンテナ装置1をフロントガラス21から離間して設置する場合には、アンテナ本体2にインピーダンス整合用誘電体板3を装着した構成とすることにより、インピーダンスの変化を低減することができる。これにより、パッチアンテナ11が1点給電円偏波駆動の場合には、上記の軸比も改善される。
【0062】
アンテナ本体2にインピーダンス整合用誘電体板3を装着した構成の本発明のアンテナ装置1は、図7の1点鎖線43で示すような軸比−周波数特性を有している。
【0063】
図7より、1点鎖線43で示す軸比−周波数特性は、共振周波数(f/f0=1)において、アンテナ本体2をフロントガラス21から離間した時の軸比(破線42)よりも大幅に小さくなっていることがわかる。
【0064】
なお、図7に示す1点鎖線43は、インピーダンス整合用誘電体板3として4.7mm厚のABS板を用いた場合の特性である。
【0065】
上記のとおり、アンテナ装置1をフロントガラス21から離間して設置する場合には、アンテナ本体2にインピーダンス整合用誘電体板3を装着した構成とすることにより、インピーダンスを整合させることが可能である。また、パッチアンテナ11が1点給電円偏波駆動する場合には、軸比を改善することが可能である。
【0066】
本発明のアンテナ装置の別の実施形態として、インピーダンス整合用誘電体板3とパッチアンテナ11との間に、空気と同程度の誘電率を有する誘電体を配設してもよい。また、フロントガラス21とパッチアンテナ11との間、あるいはパッチアンテナ11と地板12との間に、空気層に代えて空気と同程度の誘電率を有する誘電体を配設することも可能である。
【0067】
上記のとおり、空気層に代えて空気と同程度の誘電率を有する誘電体を配設することにより、アンテナ装置1の構造上の強度を高めることができる。
【0068】
次に、本発明のアンテナ装置1と、アンテナ装置1を収納するブラケットからなるアンテナユニットについて、図8を用いて以下に説明する。ブラケットは、アンテナ装置1をフロントガラス21以外の、例えばダッシュボードに設置する場合に用いるものである。図8には、ブラケットの実施例として2種類のものを示している。
【0069】
図8(a)に示すアンテナユニット51は、アンテナ本体2にインピーダンス整合用誘電体板3を装着したものをブラケット52に収納したものである。アンテナ本体2とインピーダンス整合用誘電体板3とは、挿入口53からブラケット52の内部に挿入される。なお、図8では挿入口53をブラケット52の側面に設けているが、挿入口53の位置は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えばブラケット52の前方にあってもよい。
【0070】
ブラケット51には固定部54が設けられており、固定部54をダッシュボードに固定できるようになっている。また、固定部54とブラケット52の上面との角度を調整できるようになっており、ブラケット52内に内蔵されたアンテナ装置1のパッチアンテナ11の放射面を所定の方向に設定することが可能となっている。
【0071】
一方、図8(b)に示すアンテナユニット55では、インピーダンス整合用誘電体板3がブラケット56の内部に固定されており、アンテナ本体2のみを挿入口57から挿入して用いる。
【0072】
アンテナ本体2が挿入口57からブラケット56の内部に挿入されると、ブラケット56内に固定されているインピーダンス整合用誘電体板3とアンテナ本体2とが、所定の間隔で平行になるように構成されている。
【0073】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係るアンテナ装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態におけるアンテナ装置の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、本発明のアンテナ装置の概略構成を示す図である。図1(a)は、本発明のアンテナ装置1をガラスに設置して用いる場合の構成を示しており、図1(b)は、本発明のアンテナ装置1をガラス以外の例えばダッシュボード等に設置する場合の構成を示している。
【図2】図2は、本発明のアンテナ装置1の設置状態を説明する図である。
【図3】図3は、アンテナ本体2の構造を説明する詳細図である。図3(a)はアンテナ本体2の平面図、図3(b)はアンテナ本体2の断面図をそれぞれ示す。
【図4】図4は、図2に示すアンテナ装置4の状態を拡大して表示した図である。
【図5】図5は、本発明のアンテナ装置1のインピーダンス特性を示すスミス図である。
【図6】図6は、アンテナ装置1をフロントガラス21から離間して設置したときのインピーダンス特性の変化を示すスミス図である。
【図7】図7は、パッチアンテナ11を1点給電円偏波駆動としたときの軸比-周波数特性の一実施例を示す図である。
【図8】図8は、本発明のアンテナ装置1とブラケットからなるアンテナユニットを説明する図である。図8(a)は、アンテナ本体2とインピーダンス整合用誘電体板3とをブラケット52に収納する形式のものであり、図8(b)は、インピーダンス整合用誘電体板3がブラケット56の内部に固定されている形式のものである。
【符号の説明】
【0075】
1、4、5・・・アンテナ装置
2・・・アンテナ本体
3・・・インピーダンス整合用誘電体板
6、21・・・フロントガラス
7・・・ダッシュボード
11・・・パッチアンテナ
12・・・地板
13・・・ケース
14・・・給電点
15・・・中心
31、32、33・・・インピーダンス特性
41、42、43・・・軸比-周波数特性
51、55・・・アンテナユニット
52、56・・・ブラケット
53、57・・・挿入口
54・・・固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室外から自動車のガラスを通過して車室内に送信される電波を受信する、あるいは車室内から前記ガラスを通過して車室外に電波を送信する無線通信装置に用いられるアンテナ装置であって、
前記ガラスに搭載する場合には、前記アンテナと前記ガラスとが別の所定幅の空気層を形成するように設置し、
前記ガラスから離間して搭載する場合には、所定の誘電率を有する所定の厚さのインピーダンス整合用誘電体板を前記アンテナに近接して装着する
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記インピーダンス整合用誘電体板の前記所定の厚さ及び/または前記所定の誘電率は、前記ガラスと実質的に同じないしは小さくかつ2分の1以上の範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記インピーダンス整合用誘電体板の平面方向の寸法は、前記地板と同じかそれより大きい
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記アンテナはパッチアンテナであって、アンテナの1辺の寸法を2Lとし、前記パッチアンテナの中心と給電点との距離をα×Lと表したとき、0.5≦α≦1なる位置に前記給電点を設ける
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記パッチアンテナのパッチと地板の間は所定幅の空気層により構成される
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記インピーダンス整合用誘電体板と前記パッチアンテナとの間には、空気と実質的に同じ誘電率を有する誘電体を配設する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記ガラスと前記パッチアンテナとの間、あるいは前記パッチアンテナと前記地板との間には、前記空気層に代えて空気と実質的に同じ誘電率を有する誘電体を配設する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記パッチアンテナは1点給電円偏波用アンテナであって、
前記インピーダンス整合用誘電体板の誘電率及び寸法は、前記ガラスから離間して搭載される場合の軸比が所定の値以下となるように調整されている
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のアンテナ装置と、
前記アンテナ装置を収納するブラケットからなるアンテナユニットであって、
前記アンテナ装置を前記ガラスから離間して搭載する場合に、前記インピーダンス整合用誘電体板を前記アンテナ装置に装着した状態で前記ブラケット内に収納する
ことを特徴とするアンテナユニット。
【請求項10】
前記インピーダンス整合用誘電体板を前記ブラケットに固定して装着し、
前記アンテナ装置を前記ガラスから離間して搭載する場合に、前記アンテナ装置のみを前記ブラケット内に収納する
ことを特徴とするアンテナユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−49225(P2007−49225A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228530(P2005−228530)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】