アンテナ装置
【課題】 安価に製造できて小型化も損なわれないアンテナ装置を提供すること。
【解決手段】 片面のほぼ全面に接地パターン11が設けられ他面に配線パターンおよび半田ランド14が設けられた回路基板8と、回路基板8の前記他面に実装された電子部品13と、電子部品13を覆って接地パターン11に半田付けされたシールドケース10と、接地パターン11に対向して配置された放射導体板12とを備えたアンテナ装置において、放射導体板12の中央部を除く複数箇所に回路基板8側へ折り返して形成された取付脚15を設け、各取付脚15を半田ランド14に半田付けした。また、取付脚15に設けた弾性フック部15aを貫通孔8aに圧入して回路基板8に係着させると共に、シールドケース10に設けた弾性係止片10bを回路基板8の切欠き8bにスナップ嵌合させるようにした。
【解決手段】 片面のほぼ全面に接地パターン11が設けられ他面に配線パターンおよび半田ランド14が設けられた回路基板8と、回路基板8の前記他面に実装された電子部品13と、電子部品13を覆って接地パターン11に半田付けされたシールドケース10と、接地パターン11に対向して配置された放射導体板12とを備えたアンテナ装置において、放射導体板12の中央部を除く複数箇所に回路基板8側へ折り返して形成された取付脚15を設け、各取付脚15を半田ランド14に半田付けした。また、取付脚15に設けた弾性フック部15aを貫通孔8aに圧入して回路基板8に係着させると共に、シールドケース10に設けた弾性係止片10bを回路基板8の切欠き8bにスナップ嵌合させるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパッチアンテナ構造の小型のアンテナ装置に係り、特に、低雑音増幅回路等を備えた回路基板とアンテナ素子とがユニット化されているアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のアンテナ装置は、例えば車両等の移動体に搭載されるETC(自動料金収受システム)用アンテナやGPS(全地球測位システム)用アンテナ等として近年急速に需要が高まっている。
【0003】
図11は、この種のアンテナ装置の従来例を説明するための断面図である(例えば、特許文献1参照)。同図に示すアンテナ装置は、下面に各種の電子部品21が実装されている回路基板20と、この回路基板20上に搭載された誘電体アンテナ22と、電子部品21をシールドするために回路基板20に取り付けられた金属板製のシールドケース23と、これら本体部分を収納する図示せぬ筐体(レドーム)とによって主に構成されている。回路基板20の上面にはほぼ全面に接地パターン24が設けられている。また、回路基板20の下面には図示せぬ配線パターンが設けられており、この配線パターンに電子部品21を接続することによって低雑音増幅回路が構成されている。
【0004】
誘電体アンテナ22はパッチアンテナと称されるもので、誘電体基板25の上面に放射導体であるパッチ電極26が設けられており、このパッチ電極26の給電点に誘電体基板25を貫通する給電ピン27の上端部が半田付けされている。給電ピン27の下端部は回路基板20の前記配線パターンに半田付けされているので、パッチ電極26は前記低雑音増幅回路と電気的に接続されている。この誘電体アンテナ22の下面は、両面接着テープ28によって回路基板20の接地パターン24に固定されている。また、シールドケース23には外周部の複数箇所に係止片23aが突設されている。これらの係止片23aは、回路基板20の透孔に挿通されて先端部が折曲加工された後、接地パターン24に半田付けされている。なお、図示していないが、前記配線パターンには同軸ケーブル等の信号ケ−ブルが接続されており、この信号ケ−ブルを介して外部の受信回路へ信号が送られるようになっている。
【0005】
このように概略構成された従来のアンテナ装置は、所定の高周波信号が前記低雑音増幅回路を介してパッチ電極26に供給されると、パッチ電極26から円偏波あるいは直線偏波の電波が放射されるようになっている。そして、信号電波がパッチ電極26によって受信されると、その電気的信号が前記低雑音増幅回路や前記信号ケ−ブルを経て外部の受信回路へ出力されるようになっている。また、このアンテナ装置のように低雑音増幅回路の電子部品21がシールドケース23で覆われていると、低雑音増幅回路から放射される不所望な電波によってアンテナ特性が劣化したり、外部からの妨害波が低雑音増幅回路に悪影響を及ぼす可能性が大幅に低減するので、高信頼性が確保しやすくなる。
【特許文献1】特開2004−88444号公報(第2−3頁、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来例のように、回路基板20上に誘電体アンテナ22を搭載して構成されるアンテナ装置では、比較的高価な誘電体基板25を使用するため部品コストが低減しにくかった。また、このアンテナ装置の製造工程では、シールドケース23の係止片23aを回路基板20の接地パターン24にリフロー半田した後、誘電体アンテナ22を回路基板20に接着する工程と、給電ピン27をパッチ電極26の給電点にリフロー半田する工程とが必要となるため、組立作業が煩雑で組立コストが低減しにくかった。それゆえ、かかる従来のアンテナ装置は、安価に製造することが困難であるという問題があった。
【0007】
そこで、誘電体アンテナの代わりにパッチアンテナ構造の板金アンテナ(いわゆる板金パッチアンテナ)を使用することが考えられるが、板金パッチアンテナでは誘電体による波長短縮効果を利用した小型化が困難なため、アンテナ装置全体が大型化しやすいという別の問題が発生する。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、安価に製造できて小型化も損なわれないアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明によるアンテナ装置では、片面のほぼ全面に接地パターンが設けられ、他面に配線パターンおよび前記接地パターンに対向する複数の半田ランドが設けられた回路基板と、該回路基板の前記他面に実装されて前記配線パターンに接続された電子部品と、該電子部品を覆って前記接地パターンに半田付けされた金属板からなるシールドケースと、前記回路基板の前記片面に対向して配置された金属板からなる放射導体板とを備え、前記放射導体板の給電部が前記配線パターンに接続されていると共に、該放射導体板の中央部を除く複数箇所に前記回路基板側へ折り返して形成された取付脚を設け、これら複数の取付脚を前記半田ランドに半田付けする構成とした。
【0010】
このように金属板からなる放射導体板を所定厚の空気層を介在させて接地パターンと対向させることにより、板金パッチアンテナとして動作させることができるため、誘電体アンテナに比べて部品コストが低減できる。そして、この板金パッチアンテナの場合、放射導体板の取付脚が半田付けされた半田ランドが、回路基板を介して接地パターンと対向することになるので、これら半田ランドと接地パターンとの間に付加容量が形成されて共振周波数が低くなり、よって小型化が図りやすい板金パッチアンテナが得られる。また、複数の半田ランドの大きさや配置に応じて共振周波数が変化するため、共振周波数の微調整や広帯域化が比較的容易に行える。
【0011】
上記の構成において、前記取付脚に前記回路基板に係止される第1の係止手段を設け、かつ、前記シールドケースの外周部に前記回路基板に係止される第2の係止手段を設けておくことが好ましい。すなわち、アンテナ装置の組立工程で、放射導体板を取付脚の第1の係止手段によって回路基板に自立させ、かつ、シールドケースを第2の係止手段によって回路基板に自立させた状態でリフロー半田を実施すれば、半田ランドに対する取付脚の半田付け作業と接地パターンに対するシールドケースの半田付け作業とが一括して行えるため、工程数の削減により組立コストが低減できる。
【0012】
この場合、回路基板に半田ランドに臨出する貫通孔を設けると共に、取付脚の先端部に前記第1の係止手段として弾性フック部を設け、該弾性フック部を前記貫通孔に圧入して回路基板に係着させるようにしておけば、リフロー半田に先立つ放射導体板の仮固定が簡単かつ正確に行えるため好ましい。また、回路基板の外周部の複数箇所に切欠きを設けると共に、シールドケースの外周部の複数箇所に前記第2の係止手段として回路基板側へ突出する弾性係止片を設け、該弾性係止片を前記切欠きにスナップ嵌合させるようにしておけば、リフロー半田に先立つシールドケースの仮固定が簡単かつ正確に行えるため好ましい。
【0013】
また、かかる構成のアンテナ装置は、前記放射導体板および前記回路基板を覆う位置に配置されたレドームと、前記シールドケースを介して前記回路基板と対向する位置に配置された反射板とを備え、該反射板が前記放射導体板よりも大形な金属板からなると共に、該反射板と前記レドームとを嵌め合わせて筐体を構成しておくことが好ましい。これにより、放射導体板、回路基板およびシールドケースを筐体の内部に収納して防塵性や防水性を高めたアンテナ装置が得られ、かつ、反射板で電波を反射させることにより不所望方向への放射を抑制して利得を高めることができる。この場合、反射板のシールドケース側とは逆側の面に磁石を取り付けておけば、車室内外の金属埋設部分や金属露出部分等の任意箇所に容易に取付可能なアンテナ装置が得られる。
【0014】
また、上記の構成において、前記シールドケースは、前記回路基板の前記他面に対向する平板部と、該平板部の縁部に折曲形成された複数の側壁とを有し、該側壁の1箇所に略U字状のケーブル保持部を形成すると共に、該ケーブル保持部の一部を前記平板部の孔から切り起こして該平板部よりも突出させ、前記ケーブル保持部に同軸ケーブルの外導体を半田付けするように構成することが好ましい。これにより、同軸ケーブルの外導体を半田付けするための面積(半田代)を確保した上で、シールドケースの高さ寸法を抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるアンテナ装置は、板金パッチアンテナとして動作させることができるため、誘電体アンテナに比べて部品コストが低減できる。また、放射導体板の取付脚が半田付けされた半田ランドと、回路基板の片面側の接地パターンとの間に付加容量が形成されるため、共振周波数が低くなってアンテナ装置全体の小型化が図りやすくなっている。
【0016】
また、このアンテナ装置は、放射導体板を取付脚の第1の係止手段によって回路基板に自立させ、かつ、シールドケースを第2の係止手段によって回路基板に自立させた状態でリフロー半田を実施すれば、半田ランドに対する取付脚の半田付け作業と接地パターンに対するシールドケースの半田付け作業とが一括して行えるため、工程数の削減により組立コストが低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明の実施の形態を図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係るアンテナ装置(アンテナユニット)の全体構成を示す断面図、図2は該アンテナ装置を底面側から見た斜視図、図3は図2において反射板を除去した状態を示す斜視図、図4は該アンテナ装置に組み付けられるシール部材の斜視図、図5は該アンテナ装置の本体部分を示す斜視図、図6は該本体部分の分解斜視図、図7は該本体部分に備えられるシールドケースを背面側から見た斜視図、図8は該シールドケースと同軸ケーブルの半田付け部分を示す斜視図、図9は図5のA−A線に沿う該本体部分の断面図、図10は図5のB部拡大図である。
【0018】
これらの図に示すアンテナ装置は、上ケースであるレドーム2と下ケースである反射板3とを嵌め合わせて構成される筐体1と、レドーム2および反射板3の嵌め合い部1a等に装着されたシール部材4と、反射板3の底面側に取り付けられた磁石5と、筐体1の内部空間に収納された本体部分6と、この本体部分6を図示せぬ外部回路(受信回路等)に電気的に接続するための同軸ケーブル7とによって主に構成されている。ここで、本体部分6は、低雑音増幅回路等の電子回路部を備えた回路基板8と、板金パッチアンテナであるアンテナ素子9と、金属板からなるシールドケース10とからなり(図6参照)、回路基板8の上面のほぼ全面に設けられている接地パターン11とアンテナ素子9の放射導体板12とが所定の間隔を存して対向している。また、回路基板8の下面には図示せぬ配線パターンが設けられていると共に、この配線パターンに接続された各種の電子部品13が実装されており、これら電子部品13と配線パターンとによって前記電子回路部が構成されている。
【0019】
上ケースであるレドーム2は合成樹脂からなる成形品であり、このレドーム2は下部開口を有して本体部分6を覆っている。下ケースである反射板3は金属板をプレス加工したものであり、この反射板3はレドーム2の下部開口を蓋閉している。反射板3には底面側の中央部に凹所3aが形成されており、この凹所3a内に磁石5が固着されている(ただし、図2中に磁石5は省略されている)。なお、この反射板3はアンテナ素子9の放射導体板12よりも大きめに設定されている。筐体1はこれらレドーム2と反射板3とを嵌め合わせることによって組み立てられ、両者2,3の間には、方形に近い枠状の嵌め合い部1aと、この嵌め合い部1aに隣接するケーブル取出し口1bとが形成されている。そして、図3に示すように、シール部材4のリング状の環装部4aを嵌め合い部1aに装着し、かつ、シール部材4のケ−ブル挿通部4bをケーブル取出し口1bに装着することによって、嵌め合い部1aやケーブル取出し口1bに存する空隙を封止している。
【0020】
このシール部材4は、エラストマー等の弾性材料からなる成形品であって、筐体1に組み付ける前の単品の状態(無負荷状態)では、図4に示すような形状で環装部4aとケ−ブル挿通部4bとが一体成形されている。すなわち、環装部4aは嵌め合い部1aと略同形の方形に近い枠状に形成されている。また、ケ−ブル挿通部4bはケーブル取出し口1bに嵌まり込む外形の凸状体に挿通孔4cを設けた形状に形成されており、この挿通孔4cの軸線方向は環装部4aの軸線方向と合致している。そして、ケ−ブル挿通部4bの一隅に環装部4aを連続させているため、ケ−ブル挿通部4bは図4に矢印Cで示すように、環装部4aのうちケ−ブル挿通部4bに隣接する部分の延伸方向と略直交する平面に沿って回動可能である。なお、ケ−ブル挿通部4bの挿通孔4cは、同軸ケーブル7を挿通するためのものである。このシール部材4を筐体1に組み付ける際には、挿通孔4cに同軸ケーブル7を挿通した後、ケ−ブル挿通部4bを矢印C方向へ弾性的に約90度回転させた状態でケーブル取出し口1bに装着したうえで、環装部4aを嵌め合い部1aに装着する。こうすることによって、図3に示すように、挿通孔4cの軸線方向を環装部4aの軸線方向(筐体1の高さ方向)に対して略直角な向きに設定することができるため、同軸ケーブル7の引き回しが容易になる。
【0021】
アンテナ装置の本体部分6について説明すると、回路基板8の下面に設けられた前記配線パターンには同軸ケーブル7の中心導体7aが半田付けされており、また、この回路基板8の下面の4箇所には前記配線パターンとは電気的に独立した半田ランド14(図9参照)が設けられている。さらに、図6に示すように、この回路基板8には各半田ランド14と対応する箇所を含む複数箇所に貫通孔8aが穿設されていると共に、外周部の複数箇所に凹状の切欠き8bが形成されている。
【0022】
アンテナ素子9は、接地パターン11と所定厚の空気層を介して対向する放射導体板12と、放射導体板12の中央部を除く4箇所を回路基板8側へ折り返して形成された取付脚15と、放射導体板12の中央部寄りの2箇所を回路基板8側へ折り返して形成された給電片16とを備えている。4本の取付脚15と2本の給電片16はそれぞれ対応する貫通孔8aに挿通されて、回路基板8の下面側で半田付けされており、各取付脚15は半田ランド14に接続され、各給電片16は前記配線パターン接続されている。また、図9に示すように、取付脚15の先端部には弾性フック部15aが形成されており、この弾性フック部15aを貫通孔8aに圧入することによって、取付脚15が回路基板8に係着されるようになっている。したがって、各取付脚15を対応する貫通孔8aに圧入することにより、アンテナ素子9を回路基板8に対して簡単かつ正確に仮固定することができ、こうして自立させたアンテナ素子9をリフロー炉へ供給して半田付けすることにより、アンテナ素子9は回路基板8に本固定される。
【0023】
シールドケース10は低雑音増幅回路の電子部品13を覆っており、これにより、低雑音増幅回路から放射される不所望な電波によってアンテナ特性が劣化したり、外部からの妨害波が低雑音増幅回路に悪影響を及ぼす可能性が大幅に低減するので、高信頼性が確保しやすくなっている。このシールドケース10は、回路基板8の下面に対向する平板部と、該平板部の縁部に折曲形成された複数の側壁とを有しており、平板部には回路基板8の下面側の半田付け部位と対向する複数箇所に逃げ孔10aが形成されている。また、シールドケース10の側壁の複数箇所には弾性係止片10bが上向きに突出形成されており、これらの弾性係止片10bは回路基板8の対応する切欠き8bにスナップ嵌合された後、回路基板8の上面側の接地パターン11に半田付けされる。この場合も、各弾性係止片10bをそれぞれ切欠き8bにスナップ嵌合させることによって、シールドケース10を回路基板8に対して簡単かつ正確に仮固定することができるため、こうして自立させたシールドケース10をリフロー炉へ供給して半田付けすることにより、シールドケース10は回路基板8に本固定される。さらに、シールドケース10の側壁の1箇所には同軸ケーブル7を保持するための略U字形のケ−ブル保持部10cが形成されており、このケ−ブル保持部10cの下端部(図7では上端部)を逃げ孔10aから下向きに切り起こすことにより、該ケ−ブル保持部10cの下端部はシールドケース10平板部から下方へ突出している。したがって、図8に示すように、同軸ケーブル7の外導体7bをケ−ブル保持部10cに半田付けする際、その半田付けに必要とされる面積(半田代)がケ−ブル保持部10cに確保されるため、シールドケース10の高さ寸法を抑えることができる。しかも、ケ−ブル保持部10cの下端部は逃げ孔10aから下向きに切り起こされたものであって、この逃げ孔10aを通して同軸ケーブル7の中心導体7aが回路基板8の前記配線パターンに半田付けされるようになっているため、ケ−ブル保持部10cの切り起こしによって逃げ孔10aの大きさが拡大されることになり、その結果、中心導体7aの半田付け作業を簡単に行うことができる。
【0024】
このように構成されたアンテナ装置は、回路基板8の配線パターンに接続されている2本の給電片16を介して放射導体板12に2点給電を行うことにより、円偏波アンテナとして動作させることができる。すなわち、所定の高周波信号が前記低雑音増幅回路を介して放射導体板12に供給されると、放射導体板12から円偏波の電波が放射され、信号電波が放射導体板12によって受信されると、その電気的信号が前記低雑音増幅回路や同軸ケーブル7を経て外部の受信回路へ出力されるようになっている。
【0025】
また、本実施形態例に係るアンテナ装置は、回路基板8や放射導体板12等を含む本体部分6が筐体1の内部に収納されており、かつ、筐体1の嵌め合い部1aやケーブル取出し口1bにはシール部材4が装着されているので、防塵性や防水性を確保することができる。しかも、このシール部材4は、嵌め合い部1aに装着される環装部4aと、ケーブル取出し口1bに装着されるケ−ブル挿通部4bとが一体成形されているため、相異なる2個のシール部材を用意して別々に組み付ける場合に比べて組み付け作業を容易に行うことができ、かつ、環装部4aとケ−ブル挿通部4bとの間に隙間が生じないため、ケーブル取出し口1bにおけるシール効果も高いものとなっている。したがって、このようなシール構造を採用することによって、アンテナ装置の組立コストの低減や防塵防水性の向上が期待できる。また、このシール部材4は、無負荷状態では挿通孔4cの軸線方向が環装部4aの軸線方向と合致しているので、成形時に金型の型開き方向を該軸線方向とすることによってスライドコア等が不要となり、単純な構造の金型によって安価に製造することができる。さらに、このシール部材4を筐体1に組み付ける際には、ケ−ブル挿通部4bを弾性的に回転させた状態でケーブル取出し口1bに装着することによって、挿通孔4cの軸線方向を環装部4aの軸線方向(筐体1の高さ方向)に対して略直角な向きに設定することができるため、同軸ケーブル7の引き回しも容易に行える。
【0026】
また、本実施形態例に係るアンテナ装置は、放射導体板12の取付脚15が半田付けされた半田ランド14が回路基板8を介して接地パターン11と対向しているため、これら半田ランド14と接地パターン11との間に付加容量が形成されて共振周波数が低くなっており、それゆえアンテナ素子9の小型化が図りやすくなっている。また、複数の半田ランド14の大きさや配置に応じて共振周波数が変化するため、共振周波数の微調整や広帯域化も比較的容易に行える。さらに、このアンテナ装置は下ケースとして金属板からなる反射板3を用いているため、反射板3で電波を反射させることにより不所望方向への放射を抑制して利得を高めることができる。しかも、反射板3の底面側の凹所3a内に磁石5が固着されていることから、このアンテナ装置は車室内外の金属埋設部分や金属露出部分等の任意箇所に容易に取り付けることができる。
【0027】
また、本実施形態例に係るアンテナ装置は、取付脚15の弾性フック部15aを貫通孔8aに圧入することによって、半田付け工程前のアンテナ素子9が回路基板8に対して自立可能であり、かつ、弾性係止片10bを切欠き8bにスナップ嵌合させることによって、半田付け工程前のシールドケース10が回路基板8に対して自立可能であることから、アンテナ素子9とシールドケース10を一括してリフロー半田することができる。すなわち、このアンテナ装置の組立工程では、取付脚15や給電片16や弾性係止片10b等を半田付けする回路基板8の所定部位にクリーム半田を塗布した後、この回路基板8に対してアンテナ素子9やシールドケース10を取り付けるが、その際、アンテナ素子9は弾性フック部15aの係着によって仮固定され、かつ、シールドケース10は弾性係止片10bのスナップ嵌合によって仮固定されるため、アンテナ素子9とシールドケース10を回路基板8に対し自立させた状態で一括してリフロー半田を行うことができる。こうすると、アンテナ素子9とシールドケース10を別々にリフロー半田する場合に比べて工程数が削減できるため、組立コストを大幅に低減できる。また、このアンテナ装置は、アンテナ素子9が板金パッチアンテナなので、誘電体アンテナに比べて部品コストを低減できることは言うまでもない。
【0028】
なお、アンテナ素子9の形状や給電方式等は適宜選択可能であり、例えば1点給電方式の直線偏波用のアンテナ装置等にも本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態例に係るアンテナ装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】該アンテナ装置を底面側から見た斜視図である。
【図3】図2において反射板を除去した状態を示す斜視図である。
【図4】該アンテナ装置に組み付けられるシール部材の斜視図である。
【図5】該アンテナ装置の本体部分を示す斜視図である。
【図6】該本体部分の分解斜視図である。
【図7】該本体部分に備えられるシールドケースを背面側から見た斜視図である。
【図8】該シールドケースと同軸ケーブルの半田付け部分を示す斜視図である。
【図9】図5のA−A線に沿う該本体部分の断面図である。
【図10】図5のB部拡大図である。
【図11】従来例に係るアンテナ装置の断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 筐体
2 レドーム
3 反射板
4 シール部材
5 磁石
6 本体部分
7 同軸ケーブル
7a 中心導体
7b 外導体
8 回路基板
8a 貫通孔
8b 切欠き
9 アンテナ素子
10シールドケース
10a 逃げ孔
10b 弾性係止片
10c ケ−ブル保持部
11 接地パターン
12 放射導体板
13 電子部品
14 半田ランド
15 取付脚
15a 弾性フック部
16 給電片
【技術分野】
【0001】
本発明はパッチアンテナ構造の小型のアンテナ装置に係り、特に、低雑音増幅回路等を備えた回路基板とアンテナ素子とがユニット化されているアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のアンテナ装置は、例えば車両等の移動体に搭載されるETC(自動料金収受システム)用アンテナやGPS(全地球測位システム)用アンテナ等として近年急速に需要が高まっている。
【0003】
図11は、この種のアンテナ装置の従来例を説明するための断面図である(例えば、特許文献1参照)。同図に示すアンテナ装置は、下面に各種の電子部品21が実装されている回路基板20と、この回路基板20上に搭載された誘電体アンテナ22と、電子部品21をシールドするために回路基板20に取り付けられた金属板製のシールドケース23と、これら本体部分を収納する図示せぬ筐体(レドーム)とによって主に構成されている。回路基板20の上面にはほぼ全面に接地パターン24が設けられている。また、回路基板20の下面には図示せぬ配線パターンが設けられており、この配線パターンに電子部品21を接続することによって低雑音増幅回路が構成されている。
【0004】
誘電体アンテナ22はパッチアンテナと称されるもので、誘電体基板25の上面に放射導体であるパッチ電極26が設けられており、このパッチ電極26の給電点に誘電体基板25を貫通する給電ピン27の上端部が半田付けされている。給電ピン27の下端部は回路基板20の前記配線パターンに半田付けされているので、パッチ電極26は前記低雑音増幅回路と電気的に接続されている。この誘電体アンテナ22の下面は、両面接着テープ28によって回路基板20の接地パターン24に固定されている。また、シールドケース23には外周部の複数箇所に係止片23aが突設されている。これらの係止片23aは、回路基板20の透孔に挿通されて先端部が折曲加工された後、接地パターン24に半田付けされている。なお、図示していないが、前記配線パターンには同軸ケーブル等の信号ケ−ブルが接続されており、この信号ケ−ブルを介して外部の受信回路へ信号が送られるようになっている。
【0005】
このように概略構成された従来のアンテナ装置は、所定の高周波信号が前記低雑音増幅回路を介してパッチ電極26に供給されると、パッチ電極26から円偏波あるいは直線偏波の電波が放射されるようになっている。そして、信号電波がパッチ電極26によって受信されると、その電気的信号が前記低雑音増幅回路や前記信号ケ−ブルを経て外部の受信回路へ出力されるようになっている。また、このアンテナ装置のように低雑音増幅回路の電子部品21がシールドケース23で覆われていると、低雑音増幅回路から放射される不所望な電波によってアンテナ特性が劣化したり、外部からの妨害波が低雑音増幅回路に悪影響を及ぼす可能性が大幅に低減するので、高信頼性が確保しやすくなる。
【特許文献1】特開2004−88444号公報(第2−3頁、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来例のように、回路基板20上に誘電体アンテナ22を搭載して構成されるアンテナ装置では、比較的高価な誘電体基板25を使用するため部品コストが低減しにくかった。また、このアンテナ装置の製造工程では、シールドケース23の係止片23aを回路基板20の接地パターン24にリフロー半田した後、誘電体アンテナ22を回路基板20に接着する工程と、給電ピン27をパッチ電極26の給電点にリフロー半田する工程とが必要となるため、組立作業が煩雑で組立コストが低減しにくかった。それゆえ、かかる従来のアンテナ装置は、安価に製造することが困難であるという問題があった。
【0007】
そこで、誘電体アンテナの代わりにパッチアンテナ構造の板金アンテナ(いわゆる板金パッチアンテナ)を使用することが考えられるが、板金パッチアンテナでは誘電体による波長短縮効果を利用した小型化が困難なため、アンテナ装置全体が大型化しやすいという別の問題が発生する。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、安価に製造できて小型化も損なわれないアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明によるアンテナ装置では、片面のほぼ全面に接地パターンが設けられ、他面に配線パターンおよび前記接地パターンに対向する複数の半田ランドが設けられた回路基板と、該回路基板の前記他面に実装されて前記配線パターンに接続された電子部品と、該電子部品を覆って前記接地パターンに半田付けされた金属板からなるシールドケースと、前記回路基板の前記片面に対向して配置された金属板からなる放射導体板とを備え、前記放射導体板の給電部が前記配線パターンに接続されていると共に、該放射導体板の中央部を除く複数箇所に前記回路基板側へ折り返して形成された取付脚を設け、これら複数の取付脚を前記半田ランドに半田付けする構成とした。
【0010】
このように金属板からなる放射導体板を所定厚の空気層を介在させて接地パターンと対向させることにより、板金パッチアンテナとして動作させることができるため、誘電体アンテナに比べて部品コストが低減できる。そして、この板金パッチアンテナの場合、放射導体板の取付脚が半田付けされた半田ランドが、回路基板を介して接地パターンと対向することになるので、これら半田ランドと接地パターンとの間に付加容量が形成されて共振周波数が低くなり、よって小型化が図りやすい板金パッチアンテナが得られる。また、複数の半田ランドの大きさや配置に応じて共振周波数が変化するため、共振周波数の微調整や広帯域化が比較的容易に行える。
【0011】
上記の構成において、前記取付脚に前記回路基板に係止される第1の係止手段を設け、かつ、前記シールドケースの外周部に前記回路基板に係止される第2の係止手段を設けておくことが好ましい。すなわち、アンテナ装置の組立工程で、放射導体板を取付脚の第1の係止手段によって回路基板に自立させ、かつ、シールドケースを第2の係止手段によって回路基板に自立させた状態でリフロー半田を実施すれば、半田ランドに対する取付脚の半田付け作業と接地パターンに対するシールドケースの半田付け作業とが一括して行えるため、工程数の削減により組立コストが低減できる。
【0012】
この場合、回路基板に半田ランドに臨出する貫通孔を設けると共に、取付脚の先端部に前記第1の係止手段として弾性フック部を設け、該弾性フック部を前記貫通孔に圧入して回路基板に係着させるようにしておけば、リフロー半田に先立つ放射導体板の仮固定が簡単かつ正確に行えるため好ましい。また、回路基板の外周部の複数箇所に切欠きを設けると共に、シールドケースの外周部の複数箇所に前記第2の係止手段として回路基板側へ突出する弾性係止片を設け、該弾性係止片を前記切欠きにスナップ嵌合させるようにしておけば、リフロー半田に先立つシールドケースの仮固定が簡単かつ正確に行えるため好ましい。
【0013】
また、かかる構成のアンテナ装置は、前記放射導体板および前記回路基板を覆う位置に配置されたレドームと、前記シールドケースを介して前記回路基板と対向する位置に配置された反射板とを備え、該反射板が前記放射導体板よりも大形な金属板からなると共に、該反射板と前記レドームとを嵌め合わせて筐体を構成しておくことが好ましい。これにより、放射導体板、回路基板およびシールドケースを筐体の内部に収納して防塵性や防水性を高めたアンテナ装置が得られ、かつ、反射板で電波を反射させることにより不所望方向への放射を抑制して利得を高めることができる。この場合、反射板のシールドケース側とは逆側の面に磁石を取り付けておけば、車室内外の金属埋設部分や金属露出部分等の任意箇所に容易に取付可能なアンテナ装置が得られる。
【0014】
また、上記の構成において、前記シールドケースは、前記回路基板の前記他面に対向する平板部と、該平板部の縁部に折曲形成された複数の側壁とを有し、該側壁の1箇所に略U字状のケーブル保持部を形成すると共に、該ケーブル保持部の一部を前記平板部の孔から切り起こして該平板部よりも突出させ、前記ケーブル保持部に同軸ケーブルの外導体を半田付けするように構成することが好ましい。これにより、同軸ケーブルの外導体を半田付けするための面積(半田代)を確保した上で、シールドケースの高さ寸法を抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるアンテナ装置は、板金パッチアンテナとして動作させることができるため、誘電体アンテナに比べて部品コストが低減できる。また、放射導体板の取付脚が半田付けされた半田ランドと、回路基板の片面側の接地パターンとの間に付加容量が形成されるため、共振周波数が低くなってアンテナ装置全体の小型化が図りやすくなっている。
【0016】
また、このアンテナ装置は、放射導体板を取付脚の第1の係止手段によって回路基板に自立させ、かつ、シールドケースを第2の係止手段によって回路基板に自立させた状態でリフロー半田を実施すれば、半田ランドに対する取付脚の半田付け作業と接地パターンに対するシールドケースの半田付け作業とが一括して行えるため、工程数の削減により組立コストが低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明の実施の形態を図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係るアンテナ装置(アンテナユニット)の全体構成を示す断面図、図2は該アンテナ装置を底面側から見た斜視図、図3は図2において反射板を除去した状態を示す斜視図、図4は該アンテナ装置に組み付けられるシール部材の斜視図、図5は該アンテナ装置の本体部分を示す斜視図、図6は該本体部分の分解斜視図、図7は該本体部分に備えられるシールドケースを背面側から見た斜視図、図8は該シールドケースと同軸ケーブルの半田付け部分を示す斜視図、図9は図5のA−A線に沿う該本体部分の断面図、図10は図5のB部拡大図である。
【0018】
これらの図に示すアンテナ装置は、上ケースであるレドーム2と下ケースである反射板3とを嵌め合わせて構成される筐体1と、レドーム2および反射板3の嵌め合い部1a等に装着されたシール部材4と、反射板3の底面側に取り付けられた磁石5と、筐体1の内部空間に収納された本体部分6と、この本体部分6を図示せぬ外部回路(受信回路等)に電気的に接続するための同軸ケーブル7とによって主に構成されている。ここで、本体部分6は、低雑音増幅回路等の電子回路部を備えた回路基板8と、板金パッチアンテナであるアンテナ素子9と、金属板からなるシールドケース10とからなり(図6参照)、回路基板8の上面のほぼ全面に設けられている接地パターン11とアンテナ素子9の放射導体板12とが所定の間隔を存して対向している。また、回路基板8の下面には図示せぬ配線パターンが設けられていると共に、この配線パターンに接続された各種の電子部品13が実装されており、これら電子部品13と配線パターンとによって前記電子回路部が構成されている。
【0019】
上ケースであるレドーム2は合成樹脂からなる成形品であり、このレドーム2は下部開口を有して本体部分6を覆っている。下ケースである反射板3は金属板をプレス加工したものであり、この反射板3はレドーム2の下部開口を蓋閉している。反射板3には底面側の中央部に凹所3aが形成されており、この凹所3a内に磁石5が固着されている(ただし、図2中に磁石5は省略されている)。なお、この反射板3はアンテナ素子9の放射導体板12よりも大きめに設定されている。筐体1はこれらレドーム2と反射板3とを嵌め合わせることによって組み立てられ、両者2,3の間には、方形に近い枠状の嵌め合い部1aと、この嵌め合い部1aに隣接するケーブル取出し口1bとが形成されている。そして、図3に示すように、シール部材4のリング状の環装部4aを嵌め合い部1aに装着し、かつ、シール部材4のケ−ブル挿通部4bをケーブル取出し口1bに装着することによって、嵌め合い部1aやケーブル取出し口1bに存する空隙を封止している。
【0020】
このシール部材4は、エラストマー等の弾性材料からなる成形品であって、筐体1に組み付ける前の単品の状態(無負荷状態)では、図4に示すような形状で環装部4aとケ−ブル挿通部4bとが一体成形されている。すなわち、環装部4aは嵌め合い部1aと略同形の方形に近い枠状に形成されている。また、ケ−ブル挿通部4bはケーブル取出し口1bに嵌まり込む外形の凸状体に挿通孔4cを設けた形状に形成されており、この挿通孔4cの軸線方向は環装部4aの軸線方向と合致している。そして、ケ−ブル挿通部4bの一隅に環装部4aを連続させているため、ケ−ブル挿通部4bは図4に矢印Cで示すように、環装部4aのうちケ−ブル挿通部4bに隣接する部分の延伸方向と略直交する平面に沿って回動可能である。なお、ケ−ブル挿通部4bの挿通孔4cは、同軸ケーブル7を挿通するためのものである。このシール部材4を筐体1に組み付ける際には、挿通孔4cに同軸ケーブル7を挿通した後、ケ−ブル挿通部4bを矢印C方向へ弾性的に約90度回転させた状態でケーブル取出し口1bに装着したうえで、環装部4aを嵌め合い部1aに装着する。こうすることによって、図3に示すように、挿通孔4cの軸線方向を環装部4aの軸線方向(筐体1の高さ方向)に対して略直角な向きに設定することができるため、同軸ケーブル7の引き回しが容易になる。
【0021】
アンテナ装置の本体部分6について説明すると、回路基板8の下面に設けられた前記配線パターンには同軸ケーブル7の中心導体7aが半田付けされており、また、この回路基板8の下面の4箇所には前記配線パターンとは電気的に独立した半田ランド14(図9参照)が設けられている。さらに、図6に示すように、この回路基板8には各半田ランド14と対応する箇所を含む複数箇所に貫通孔8aが穿設されていると共に、外周部の複数箇所に凹状の切欠き8bが形成されている。
【0022】
アンテナ素子9は、接地パターン11と所定厚の空気層を介して対向する放射導体板12と、放射導体板12の中央部を除く4箇所を回路基板8側へ折り返して形成された取付脚15と、放射導体板12の中央部寄りの2箇所を回路基板8側へ折り返して形成された給電片16とを備えている。4本の取付脚15と2本の給電片16はそれぞれ対応する貫通孔8aに挿通されて、回路基板8の下面側で半田付けされており、各取付脚15は半田ランド14に接続され、各給電片16は前記配線パターン接続されている。また、図9に示すように、取付脚15の先端部には弾性フック部15aが形成されており、この弾性フック部15aを貫通孔8aに圧入することによって、取付脚15が回路基板8に係着されるようになっている。したがって、各取付脚15を対応する貫通孔8aに圧入することにより、アンテナ素子9を回路基板8に対して簡単かつ正確に仮固定することができ、こうして自立させたアンテナ素子9をリフロー炉へ供給して半田付けすることにより、アンテナ素子9は回路基板8に本固定される。
【0023】
シールドケース10は低雑音増幅回路の電子部品13を覆っており、これにより、低雑音増幅回路から放射される不所望な電波によってアンテナ特性が劣化したり、外部からの妨害波が低雑音増幅回路に悪影響を及ぼす可能性が大幅に低減するので、高信頼性が確保しやすくなっている。このシールドケース10は、回路基板8の下面に対向する平板部と、該平板部の縁部に折曲形成された複数の側壁とを有しており、平板部には回路基板8の下面側の半田付け部位と対向する複数箇所に逃げ孔10aが形成されている。また、シールドケース10の側壁の複数箇所には弾性係止片10bが上向きに突出形成されており、これらの弾性係止片10bは回路基板8の対応する切欠き8bにスナップ嵌合された後、回路基板8の上面側の接地パターン11に半田付けされる。この場合も、各弾性係止片10bをそれぞれ切欠き8bにスナップ嵌合させることによって、シールドケース10を回路基板8に対して簡単かつ正確に仮固定することができるため、こうして自立させたシールドケース10をリフロー炉へ供給して半田付けすることにより、シールドケース10は回路基板8に本固定される。さらに、シールドケース10の側壁の1箇所には同軸ケーブル7を保持するための略U字形のケ−ブル保持部10cが形成されており、このケ−ブル保持部10cの下端部(図7では上端部)を逃げ孔10aから下向きに切り起こすことにより、該ケ−ブル保持部10cの下端部はシールドケース10平板部から下方へ突出している。したがって、図8に示すように、同軸ケーブル7の外導体7bをケ−ブル保持部10cに半田付けする際、その半田付けに必要とされる面積(半田代)がケ−ブル保持部10cに確保されるため、シールドケース10の高さ寸法を抑えることができる。しかも、ケ−ブル保持部10cの下端部は逃げ孔10aから下向きに切り起こされたものであって、この逃げ孔10aを通して同軸ケーブル7の中心導体7aが回路基板8の前記配線パターンに半田付けされるようになっているため、ケ−ブル保持部10cの切り起こしによって逃げ孔10aの大きさが拡大されることになり、その結果、中心導体7aの半田付け作業を簡単に行うことができる。
【0024】
このように構成されたアンテナ装置は、回路基板8の配線パターンに接続されている2本の給電片16を介して放射導体板12に2点給電を行うことにより、円偏波アンテナとして動作させることができる。すなわち、所定の高周波信号が前記低雑音増幅回路を介して放射導体板12に供給されると、放射導体板12から円偏波の電波が放射され、信号電波が放射導体板12によって受信されると、その電気的信号が前記低雑音増幅回路や同軸ケーブル7を経て外部の受信回路へ出力されるようになっている。
【0025】
また、本実施形態例に係るアンテナ装置は、回路基板8や放射導体板12等を含む本体部分6が筐体1の内部に収納されており、かつ、筐体1の嵌め合い部1aやケーブル取出し口1bにはシール部材4が装着されているので、防塵性や防水性を確保することができる。しかも、このシール部材4は、嵌め合い部1aに装着される環装部4aと、ケーブル取出し口1bに装着されるケ−ブル挿通部4bとが一体成形されているため、相異なる2個のシール部材を用意して別々に組み付ける場合に比べて組み付け作業を容易に行うことができ、かつ、環装部4aとケ−ブル挿通部4bとの間に隙間が生じないため、ケーブル取出し口1bにおけるシール効果も高いものとなっている。したがって、このようなシール構造を採用することによって、アンテナ装置の組立コストの低減や防塵防水性の向上が期待できる。また、このシール部材4は、無負荷状態では挿通孔4cの軸線方向が環装部4aの軸線方向と合致しているので、成形時に金型の型開き方向を該軸線方向とすることによってスライドコア等が不要となり、単純な構造の金型によって安価に製造することができる。さらに、このシール部材4を筐体1に組み付ける際には、ケ−ブル挿通部4bを弾性的に回転させた状態でケーブル取出し口1bに装着することによって、挿通孔4cの軸線方向を環装部4aの軸線方向(筐体1の高さ方向)に対して略直角な向きに設定することができるため、同軸ケーブル7の引き回しも容易に行える。
【0026】
また、本実施形態例に係るアンテナ装置は、放射導体板12の取付脚15が半田付けされた半田ランド14が回路基板8を介して接地パターン11と対向しているため、これら半田ランド14と接地パターン11との間に付加容量が形成されて共振周波数が低くなっており、それゆえアンテナ素子9の小型化が図りやすくなっている。また、複数の半田ランド14の大きさや配置に応じて共振周波数が変化するため、共振周波数の微調整や広帯域化も比較的容易に行える。さらに、このアンテナ装置は下ケースとして金属板からなる反射板3を用いているため、反射板3で電波を反射させることにより不所望方向への放射を抑制して利得を高めることができる。しかも、反射板3の底面側の凹所3a内に磁石5が固着されていることから、このアンテナ装置は車室内外の金属埋設部分や金属露出部分等の任意箇所に容易に取り付けることができる。
【0027】
また、本実施形態例に係るアンテナ装置は、取付脚15の弾性フック部15aを貫通孔8aに圧入することによって、半田付け工程前のアンテナ素子9が回路基板8に対して自立可能であり、かつ、弾性係止片10bを切欠き8bにスナップ嵌合させることによって、半田付け工程前のシールドケース10が回路基板8に対して自立可能であることから、アンテナ素子9とシールドケース10を一括してリフロー半田することができる。すなわち、このアンテナ装置の組立工程では、取付脚15や給電片16や弾性係止片10b等を半田付けする回路基板8の所定部位にクリーム半田を塗布した後、この回路基板8に対してアンテナ素子9やシールドケース10を取り付けるが、その際、アンテナ素子9は弾性フック部15aの係着によって仮固定され、かつ、シールドケース10は弾性係止片10bのスナップ嵌合によって仮固定されるため、アンテナ素子9とシールドケース10を回路基板8に対し自立させた状態で一括してリフロー半田を行うことができる。こうすると、アンテナ素子9とシールドケース10を別々にリフロー半田する場合に比べて工程数が削減できるため、組立コストを大幅に低減できる。また、このアンテナ装置は、アンテナ素子9が板金パッチアンテナなので、誘電体アンテナに比べて部品コストを低減できることは言うまでもない。
【0028】
なお、アンテナ素子9の形状や給電方式等は適宜選択可能であり、例えば1点給電方式の直線偏波用のアンテナ装置等にも本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態例に係るアンテナ装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】該アンテナ装置を底面側から見た斜視図である。
【図3】図2において反射板を除去した状態を示す斜視図である。
【図4】該アンテナ装置に組み付けられるシール部材の斜視図である。
【図5】該アンテナ装置の本体部分を示す斜視図である。
【図6】該本体部分の分解斜視図である。
【図7】該本体部分に備えられるシールドケースを背面側から見た斜視図である。
【図8】該シールドケースと同軸ケーブルの半田付け部分を示す斜視図である。
【図9】図5のA−A線に沿う該本体部分の断面図である。
【図10】図5のB部拡大図である。
【図11】従来例に係るアンテナ装置の断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 筐体
2 レドーム
3 反射板
4 シール部材
5 磁石
6 本体部分
7 同軸ケーブル
7a 中心導体
7b 外導体
8 回路基板
8a 貫通孔
8b 切欠き
9 アンテナ素子
10シールドケース
10a 逃げ孔
10b 弾性係止片
10c ケ−ブル保持部
11 接地パターン
12 放射導体板
13 電子部品
14 半田ランド
15 取付脚
15a 弾性フック部
16 給電片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面のほぼ全面に接地パターンが設けられ、他面に配線パターンおよび前記接地パターンに対向する複数の半田ランドが設けられた回路基板と、該回路基板の前記他面に実装されて前記配線パターンに接続された電子部品と、該電子部品を覆って前記接地パターンに半田付けされた金属板からなるシールドケースと、前記回路基板の前記片面に対向して配置された金属板からなる放射導体板とを備え、
前記放射導体板の給電部が前記配線パターンに接続されていると共に、該放射導体板の中央部を除く複数箇所に前記回路基板側へ折り返して形成された取付脚を設け、これら複数の取付脚を前記半田ランドに半田付けしたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記取付脚に前記回路基板に係止される第1の係止手段を設け、かつ、前記シールドケースの外周部に前記回路基板に係止される第2の係止手段を設けたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記回路基板に前記半田ランドに臨出する貫通孔を設けると共に、前記取付脚の先端部に前記第1の係止手段として弾性フック部を設け、該弾性フック部を前記貫通孔に圧入して前記回路基板に係着させたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項2または3の記載において、前記回路基板の外周部の複数箇所に切欠きを設けると共に、前記シールドケースの外周部の複数箇所に前記第2の係止手段として前記回路基板側へ突出する弾性係止片を設け、該弾性係止片を前記切欠きにスナップ嵌合させたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の記載において、前記放射導体板および前記回路基板を覆う位置に配置されたレドームと、前記シールドケースを介して前記回路基板と対向する位置に配置された反射板とを備え、該反射板が前記放射導体板よりも大形な金属板からなると共に、該反射板と前記レドームとを嵌め合わせて筐体を構成したことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
請求項5の記載において、前記反射板の前記シールドケース側とは逆側の面に磁石が取り付けられていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項7】
請求項1の記載において、前記シールドケースは、前記回路基板の前記他面に対向する平板部と、該平板部の縁部に折曲形成された複数の側壁とを有し、該側壁の1箇所に略U字状のケーブル保持部を形成すると共に、該ケーブル保持部の一部を前記平板部の孔から切り起こして該平板部よりも突出させ、前記ケーブル保持部に同軸ケーブルの外導体を半田付けするようにしたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項1】
片面のほぼ全面に接地パターンが設けられ、他面に配線パターンおよび前記接地パターンに対向する複数の半田ランドが設けられた回路基板と、該回路基板の前記他面に実装されて前記配線パターンに接続された電子部品と、該電子部品を覆って前記接地パターンに半田付けされた金属板からなるシールドケースと、前記回路基板の前記片面に対向して配置された金属板からなる放射導体板とを備え、
前記放射導体板の給電部が前記配線パターンに接続されていると共に、該放射導体板の中央部を除く複数箇所に前記回路基板側へ折り返して形成された取付脚を設け、これら複数の取付脚を前記半田ランドに半田付けしたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記取付脚に前記回路基板に係止される第1の係止手段を設け、かつ、前記シールドケースの外周部に前記回路基板に係止される第2の係止手段を設けたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記回路基板に前記半田ランドに臨出する貫通孔を設けると共に、前記取付脚の先端部に前記第1の係止手段として弾性フック部を設け、該弾性フック部を前記貫通孔に圧入して前記回路基板に係着させたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項2または3の記載において、前記回路基板の外周部の複数箇所に切欠きを設けると共に、前記シールドケースの外周部の複数箇所に前記第2の係止手段として前記回路基板側へ突出する弾性係止片を設け、該弾性係止片を前記切欠きにスナップ嵌合させたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の記載において、前記放射導体板および前記回路基板を覆う位置に配置されたレドームと、前記シールドケースを介して前記回路基板と対向する位置に配置された反射板とを備え、該反射板が前記放射導体板よりも大形な金属板からなると共に、該反射板と前記レドームとを嵌め合わせて筐体を構成したことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
請求項5の記載において、前記反射板の前記シールドケース側とは逆側の面に磁石が取り付けられていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項7】
請求項1の記載において、前記シールドケースは、前記回路基板の前記他面に対向する平板部と、該平板部の縁部に折曲形成された複数の側壁とを有し、該側壁の1箇所に略U字状のケーブル保持部を形成すると共に、該ケーブル保持部の一部を前記平板部の孔から切り起こして該平板部よりも突出させ、前記ケーブル保持部に同軸ケーブルの外導体を半田付けするようにしたことを特徴とするアンテナ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−101467(P2006−101467A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352803(P2004−352803)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
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