説明

アンテナ装置

【課題】反射素子を備えたループ型アンテナにおいて、反射素子の横幅を小さくして小型化を図ることができるアンテナ装置を提供する。
【解決手段】ループ長が約1λaのループ状放射素子21の背面側にループ長が約1.2λaのループ状反射素子22を設け、4隅に設けたサポート材23a〜23dによって所定の間隔Dbに保持する。放射素子21は、高さがHb1、横幅がLb1で下側中央に給電部25を備える。反射素子22は、放射素子21の高さHb1と略同じ高さHb2に設定し、横幅Lb2を放射素子21の横幅Lb1より広く設定する。また、反射素子22には、左右両側の導体部22a、22bに高さHc、横幅Lcのホール31a、31bをそれぞれ設け、導体部22a、22bを放射素子21と反対方向に幅Wbで折り曲げて形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば地上デジタル放送や無線通信等に使用されるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル(テレビジョン)放送(ISTB-T:Terrestrial Integrated Services Digital Broadcasting)は、2003年12月から関東、近畿及び中京広域圏で放送が開始され、2010年には普及の過渡期を迎えている。上記地上デジタル放送は、UHF帯の電波が使用され、その周波数帯域は470〜770MHz(13〜62チャンネル)が使用され、主に水平偏波が用いられている。このような背景の中、アンテナの多様化が進み、小型化の要求が高まってきており、特に水平偏波受信の設置状態における小型化が求められている。
【0003】
UHF帯の電波を受信する水平偏波受信用のアンテナにおいて、幅方向を小型化するアンテナとしては、図5に示すループ型アンテナが知られている。
【0004】
図5はループ型アンテナを用いたUHF帯受信用アンテナの外観構成を示す斜視図である。従来のループ型アンテナは、金属板を用いてループ状に形成したループ長が約1λa(λaは使用周波数帯の下端周波数における波長)の放射素子11及びループ長が約1.2λaの反射素子12により構成され、放射素子11及び反射素子12は4隅に設けたサポート材13a〜13dによって所定の間隔に保持される。上記サポート材13a〜13dは絶縁体で構成され、放射素子11と反射素子12との間をネジ14a〜14dにより固定する。
【0005】
上記放射素子11には、下側中央に給電部15が設けられる。放射素子11は下側中央位置がスリットにより左右に分割され、この分割部分において上記スリットの左右に給電点が形成される。上記給電部15は絶縁部材からなる保持基材16によって給電用同軸ケーブル17を保持し、この給電用同軸ケーブル17の中心導体及び外導体を上記放射素子11の給電点に接続する。
【0006】
上記放射素子11の高さHa1、横幅La1、反射素子12の高さHa2、横幅La2、放射素子11と反射素子12との間隔Da、放射素子11及び反射素子12の導体部の幅Waは、次のように設定される。
【0007】
Ha1:約0.35λa
Ha2:約0.35λa
La1:約0.15λa
La2:約0.22λa
Da :約0.078λa
Wa :約0.031λa
上記ループ型アンテナは、放射素子11及び反射素子12をループ状に形成することで、横幅(電界面方向)が小型化されることが一般に知られている。上記放射素子11のループ長は約1λa、反射素子12のループ長は約1.2λa程度必要である。アンテナを小型化するために放射素子11の高さHa1及び反射素子12の高さHb1を同一サイズとすると、放射素子11の横幅La1に対して反射素子12の横幅La2の方が自ずと長くなってしまい、小型化を図る場合に問題となっている。
【0008】
また、本発明に関連する公知技術として、略長方形に形成された板状の一対のダイポール素子の中央部に空隙を設けると共に、上記ダイポール素子の背面に所定の間隔を保って板状の反射板を設けてなるUHF帯用広帯域アンテナが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−244926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように従来のループ型アンテナは、小型化するために放射素子11の高さHa1及び反射素子12の高さHa2を同一サイズとすると、放射素子11の横幅La1に対して反射素子12の横幅La2の方が広くなってしまい、小型化を図る場合に問題となっている。
【0011】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、反射素子を備えたループ型アンテナにおいて、充分な利得を確保しながら正面から見た反射素子の横幅を小さくして小型化を図ることができるアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るアンテナ装置は、平面状に形成された所定ループ長のループ状放射素子と、前記放射素子に設けられた給電部と、前記放射素子の背面側に所定の間隔で設けられ、前記放射素子より長いループ長で平面状に形成され、前記放射素子と略同じ高さに設定されて両側導体部が後方に折り曲げられた反射素子とを具備し、前記反射素子は、前記後方に折り曲げられた両側導体部に縦長のホールを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、反射素子を備えたループ型アンテナにおいて、後方に折り曲げた反射素子の両側導体部に縦長のホールを設けることにより、動作周波数が高域へシフトすることを防止し、充分な利得を確保しながら正面から見た反射素子の横幅を放射素子と略同じ値に設定して小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1に係るアンテナ装置の外観構成を示す斜視図である。
【図2】同実施例1に係るアンテナ装置及び従来のアンテナ装置の利得特性図である。
【図3】本発明の実施例2に係るアンテナ装置の外観構成を示す斜視図である。
【図4】同実施例2に係るアンテナ装置及び従来のアンテナ装置の利得特性図である。
【図5】従来のループ型アンテナを用いたUHF帯受信用アンテナの外観構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の実施例1に係るアンテナ装置の外観構成を示す斜視図である。この実施例1は、ループ型アンテナを用いたUHF帯(水平偏波)受信用アンテナに実施した場合の例を示している。
【0017】
図1において、21はループ長が約1λa(λaは使用周波数帯の下端周波数における波長)のループ状の放射素子で、この放射素子21の背面側にループ長が約1.2λaのループ状の反射素子22が設けられる。上記放射素子21及び反射素子22は、導体板を用いて平板状に形成され、ループ状導体部の幅がWbに設定される。
【0018】
上記放射素子21及び反射素子22は、4隅に設けたサポート材23a〜23dによって所定の間隔Dbに保持される。上記サポート材23a〜23dは、絶縁体で構成され、放射素子21と反射素子22との間を例えばネジ24a〜24dにより固定する。
【0019】
上記放射素子21は高さがHb1、横幅がLb1に設定され、反射素子22は高さがHb2、横幅がLb2に設定される。
【0020】
上記放射素子21には、下側中央に給電部25が設けられる。放射素子21は下側中央位置がスリットにより左右に分割され、この分割部分において上記スリットの左右に給電点が形成される。上記給電部25は絶縁部材からなる保持基材26によって給電用同軸ケーブル27を保持し、この給電用同軸ケーブル27の中心導体及び外導体を上記放射素子21の給電点に接続する。
【0021】
また、反射素子22には、左右両側の側部導体部22a、22bにそれぞれ垂直方向に例えば角形に形成したホール31a、31bが設けられる。このホール31a、31bは、高さがHc、横幅がLcに設定される。
【0022】
上記放射素子21の高さHb1、横幅Lb1、反射素子22の高さHb2、横幅Lb2、放射素子21と反射素子22との間隔Db、放射素子21の側部導体部21a、21b及び反射素子22の側部導体部22a、22bの幅Wb、反射素子22のホール31a、31bの高さHc及び横幅Lcは、例えば次のように設定される。
【0023】
Hb1:約0.35λa
Hb2:約0.35λa
Lb1:約0.15λa
Lb2:約0.22λa
Db :約0.078λa
Wb :約0.031λa
Hc :約0.31λa
Lc :約0.015λa
図2は上記実施例1に係るアンテナ装置の利得特性であり、横軸に周波数(MHz)をとり、縦軸に指向性利得(dBi)をとって示した。図2において、符号Aで示す特性は実施例1に係るアンテナ装置の利得特性であり、符号Bで示す特性は図5に示した従来のアンテナ装置の利得特性である。
【0024】
上記実施例1に係るアンテナ装置は、図2に示したように同一サイズの従来のアンテナ装置に比較し、1〜2dBi程度高利得化することが可能である。このことから実施例1に係るアンテナ装置の利得を従来のアンテナ装置と同程度の利得に設定することで、小型化することができる。
【実施例2】
【0025】
次に本発明の実施例2に係るアンテナ装置について説明する。
【0026】
図3は本発明の実施例2に係るアンテナ装置の外観構成を示す斜視図である。この実施例2に係るアンテナ装置は、上記実施例1に係るアンテナ装置において、反射素子22の側部導体部22a、22bを後方、すなわち放射素子21と反対方向に側部導体部22a、22bの幅Wbで略90°折り曲げて形成したものである。この折曲げた反射素子22の側部導体部22a、22bには、実施例1で示したように高さHc及び横幅Lcのホール31a、31bを設けている。また、側部導体部22a、22bを後方に折り曲げた反射素子22の正面から見た横幅Lb3は約0.158λaに設定される。その他の構成及び各部の寸法等は、実施例1に係るアンテナ装置と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0027】
図4は上記実施例2に係るアンテナ装置の利得特性であり、横軸に周波数(MHz)をとり、縦軸に指向性利得(dBi)をとって示した。図4において、符号Cで示す特性は実施例2に係るアンテナ装置の利得特性であり、符号Bで示す特性は図5に示した従来のアンテナ装置の利得特性である。
【0028】
反射素子22の側部導体部22a、22bを後方に折り曲げて正面から見た反射素子22の幅を狭く形成した場合、一般的には動作周波数が高域へシフトし、500MHz以下の低域周波数の利得が低下するが、実施例2で示したように後方に折り曲げた反射素子22の側部導体部22a、22bにホール31a、31bを形成することにより、図4の利得特性に示したように動作周波数が高域へシフトすることを防止でき、使用周波数帯域の下端周波数である470MHz近傍における利得を従来のアンテナ装置の利得と略同じ値に保持することができる。すなわち、反射素子22の側部導体部22a、22bにホール31a、31bを形成することにより、側部導体部22a、22bにはホール31a、31bの周囲にループ状導体部が形成されて500MHz以下の低域周波数に共振する。このため反射素子22の側部導体部22a、22bを後方に折り曲げて横幅Lb3を狭く設定しても、動作周波数が高域へシフトすることを防止することが可能となる。
【0029】
上記実施例2に示したように反射素子22の側部導体部22a、22bにホール31a、31bを形成することにより、動作周波数が高域へシフトすることを防止して従来のアンテナ装置と略同じ利得を保持でき、また、反射素子22の側部導体部22a、22bを後方に折り曲げることにより、正面から見たアンテナの横幅Lb3を約0.158λaに設定でき、図5に示した従来のアンテナ装置の横幅La2(約0.22λa)に比較して約0.062λaの幅だけ狭く形成することができる。
【0030】
なお、上記実施例1、2では、反射素子22の側部導体部22a、22bに角形のホール31a、31bを設けた場合について示したが、ホール31a、31bの形状は角形に限らず、その他の形状に形成することが可能である。
【0031】
また、放射素子21及び反射素子22の各部の寸法は、上記実施例1、2に示した値に限定されるものではなく、要望されるアンテナの特性等に応じて任意の値に設定し得るものである。
【0032】
また、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【符号の説明】
【0033】
11…放射素子、12…反射素子、13a〜13d…サポート材、14a〜14d…ネジ、15…給電部、16…保持基材、17…給電用同軸ケーブル、21…放射素子、21a、21b…放射素子の側部導体部、22…反射素子、22a、22b…反射素子の側部導体部、23a〜23d…サポート材、24a〜24d…ネジ、25…給電部、26…保持基材、27…給電用同軸ケーブル、31a、31b…縦長のホール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状に形成された所定ループ長のループ状放射素子と、前記放射素子に設けられた給電部と、前記放射素子の背面側に所定の間隔で設けられ、前記放射素子より長いループ長で平面状に形成され、前記放射素子と略同じ高さに設定されて両側導体部が後方に折り曲げられた反射素子とを具備し、
前記反射素子は、前記後方に折り曲げられた両側導体部に縦長のホールを設けたことを特徴とするアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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