説明

アンテナ装置

【課題】UHF放送よりも高い周波数の電波とUHF放送の電波を受信することが可能な小型のアンテナ装置を提供する。
【解決手段】このアンテナ装置は、衛星放送の電波を受信する平面アンテナ1と、平面アンテナ1よりも大きく、平面アンテナ1の反射板として使用されるとともに、UHF放送の電波を受信する平面アンテナ2と、平面アンテナ2よりも大きく、平面アンテナ2とともにUHF放送の電波を受信する平面アンテナ3と、平面アンテナ3よりも大きな地板4とを所定の間隔で重ねたものである。したがって、衛星放送とUHF放送の両方の電波を受信できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はアンテナ装置に関し、特に、衛星放送とUHF(Ultra-High Frequency)放送の両方の電波を受信するアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、UHF帯の電波を利用した地上波デジタル放送が実用化されている。地上波デジタル放送(UHF放送)を受信するためにはUHFアンテナが必要である。また、衛星放送を受信するためには、放送衛星(BS;Broadcasting Satellite)からの電波を受信するためのパラボラアンテナのようなBSアンテナが必要である。
【0003】
また、UHF放送と衛星放送の両方を受信するアンテナ装置として、オフセット型パラボラアンテナの焦点に配置された受信部にUHFアンテナを固定したものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−60009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のアンテナ装置では、衛星放送の受信を妨げずに大きなUHFアンテナを設けるためには大きなオフセット型パラボラアンテナが必要となり、装置寸法が大型化すると言う問題があった。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、UHF放送よりも高い周波数の電波とUHF放送の電波を受信することが可能な小型のアンテナ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るアンテナ装置は、UHFよりも高い周波数の電波を受信する第1の平面アンテナと、第1の平面アンテナよりも大きく、その表面の中央部が第1の平面アンテナの裏面に対向して設けられ、第1の平面アンテナの反射板として使用されるとともに、UHF放送の電波を受信する第2の平面アンテナと、第2の平面アンテナよりも大きく、その表面の中央部が第2の平面アンテナの裏面に対向して設けられ、第2の平面アンテナとともにUHF放送の電波を受信する第3の平面アンテナと、第3の平面アンテナよりも大きく、その表面の中央部が第3の平面アンテナの裏面に対向して配置された地板とを備えたものである。
【0008】
好ましくは、さらに、第3の平面アンテナと地板との間に設けられ、第2および第3の平面アンテナの給電点に電気的に結合されたスタブを備える。
【0009】
また、この発明に係る他のアンテナ装置は、UHFよりも高い周波数の電波を受信する第1の平面アンテナと、第1の平面アンテナよりも大きく、その表面の中央部が第1の平面アンテナの裏面に対向して設けられ、第1の平面アンテナの反射板として使用されるとともに、UHF放送の電波を受信する第2の平面アンテナと、第2の平面アンテナよりも大きく、その表面の中央部が第2の平面アンテナの裏面に対向して配置された地板とを備えたものである。
【0010】
好ましくは、さらに、第2の平面アンテナと地板との間に設けられ、第2の平面アンテナの給電点に電気的に結合されたスタブを備える。
【0011】
また好ましくは、第1の平面アンテナはラジアルラインスロットアンテナである。
また好ましくは、UHFよりも高い周波数の電波は衛星放送の電波である。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係るアンテナ装置では、UHFよりも高い周波数の電波を受信する第1の平面アンテナと、第1の平面アンテナよりも大きく、その表面の中央部が第1の平面アンテナの裏面に対向して設けられ、第1の平面アンテナの反射板として使用されるとともに、UHF放送の電波を受信する第2の平面アンテナとを備える。したがって、UHF放送よりも高い周波数の電波とUHF放送の電波を受信することができ、装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施の形態によるアンテナ装置の要部を示す正面図である。
【図2】図1に示した平面アンテナ1の構成を示す平面図である。
【図3】図1に示した平面アンテナ2の構成を示す平面図である。
【図4】図1に示した平面アンテナ3の構成を示す平面図である。
【図5】図1に示した地板の構成を示す平面図である。
【図6】図1に示したスタブの構成を示す平面図である。
【図7】図1に示したアンテナ装置の全体構成を示す図である。
【図8】図1に示したアンテナ装置の周波数特性を示す図である。
【図9】図1〜図8に示したアンテナ装置から平面アンテナ3を除去したアンテナ装置の周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、この発明の一実施の形態によるアンテナ装置の要部を示す正面図である。図1において、このアンテナ装置は、3つの平面アンテナ1〜3と、地板4とを備える。平面アンテナ1は、ラジアルスロットラインアンテナであり、衛星放送の電波を受信する。平面アンテナ1は、所定の直径(たとえば290mm)の円形の金属板(たとえば銅板)で形成されている。図2に示すように、円形の金属板には、複数の同心円に沿って多数のハの字を書くように、多数のスロット1aが形成されている。平面アンテナ1は、図1に示すように、絶縁材料で形成された複数のスペーサ5を介して平面アンテナ2の上に固定されている。
【0015】
平面アンテナ2は、UHF放送の電波を受信するアンテナであり、平面アンテナ1の反射板(地板)を兼ねている。平面アンテナ2は、平面アンテナ1よりも大きな直径(たとえば300mm)の円形の金属板(たとえば銅板)で形成されている。平面アンテナ1と2は、所定の隙間(たとえば12mm)を開けて平行に配置されている。平面アンテナ1,2の中心線は一致しており、平面アンテナ2の表面の中央部は平面アンテナ1の裏面に対向して配置されている。
【0016】
図3に示すように、平面アンテナ2の中心には、円形の孔2aが開口されている。また、平面アンテナ2の中心点から所定の距離だけ離れた位置に給電点2bが設けられている。平面アンテナ2の中心点と給電点2bとの間の距離は、アンテナ装置とテレビ受信機を結ぶ同軸線の特性インピーダンス(たとえば75Ω)に応じて設定されている。平面アンテナ2は、図1に示すように、絶縁材料で形成された複数の支持棒6を介して平面アンテナ3の上に固定されている。
【0017】
平面アンテナ3は、平面アンテナ2とともにUHF放送の電波を受信するアンテナである。平面アンテナ3は、平面アンテナ2よりも大きな直径(たとえば310mm)の円形の金属板(たとえば銅板)で形成されている。平面アンテナ2と3は、所定の隙間(たとえば8mm)を開けて平行に配置されている。平面アンテナ2,3の中心線は一致しており、平面アンテナ3の表面の中央部は平面アンテナ2の裏面に対向して配置されている。
【0018】
図4に示すように、平面アンテナ3の中心には、四角形の孔3aが形成されている。孔3a内には、平面アンテナ1によって収束された衛星放送の電波を受信するプローブ7aを備えた受信部7が配置される。プローブ7aは、平面アンテナ2の孔2aの中心に挿入される。プローブ7aによって受信された衛星放送の電波は、受信部7内の電気回路によって電気信号に変換され、同軸線(図示せず)を介してテレビ受信機に供給される。
【0019】
また、平面アンテナ3の中心点から所定の距離だけ離れた位置に給電点3bが設けられている。平面アンテナ3の中心点と給電点3bとの間の距離は、アンテナ装置とテレビを結ぶ同軸線の特性インピーダンス(たとえば75Ω)に応じて設定されている。平面アンテナ3は、図1に示すように、絶縁材料で形成された複数の支持棒8を介して地板4の上に固定されている。
【0020】
地板4は、平面アンテナ3よりも大きな直径(たとえば400mm)の円形の金属板(たとえばアルミニウム板)で形成されている。平面アンテナ3と地板4は、所定の隙間(たとえば45mm)を開けて平行に配置されている。平面アンテナ1〜3と地板4の中心線は一致しており、地板4の表面の中央部は平面アンテナ3の裏面に対向して配置されている。図5に示すように、地板4の給電点2b,3bに対向する位置には、同軸コネクタ9が固定されている。同軸コネクタ9の中心導体9aは、銅線10によって給電点3b,2bに接続されている。
【0021】
また、平面アンテナ3と地板4の間の空間には、平面アンテナ2,3の帯域を広げるとともにVSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)を下げるためのスタブ11が設けられている。スタブ11は、所定寸法(たとえば幅20mm、長さ405mm)の金属板(たとえば銅板)で形成されている。スタブ11は、幅方向を地板4の表面に対して垂直な方向に向けるとともに、長さ方向を地板4の表面に対して平行な方向に向けて配置されている。スタブ11は、偏波に対して平行になるように配置される。図6に示すように、スタブ11の両端部は互いに逆方向に直角に折り曲げられている。たとえば、スタブ11の折り曲げられた端部11a,11bの各々の長さは20mmであり、残りの部分11cの長さは365mmである。スタブ11は、銅線10に接続される。
【0022】
図7は、図1〜図6で示したアンテナ装置の全体構成を示す図である。図7において、図1で示した構成のうち地板4の裏面を除く部分は、カバー12で覆われる。カバー12は、絶縁材料で形成され、電波を通過させるとともに、平面アンテナ1〜3などを風雨から保護する。
【0023】
地板4の裏面は、保持部材13を介してポール14の先端部に固定される。平面アンテナ1〜3の方向および角度は、保持部材13によって調整可能になっている。平面アンテナ1〜3は、放送衛星の方向に向けられる。同軸コネクタ9は、同軸線15を介してテレビ受信機に接続される。
【0024】
図8は、図1〜図7で示したアンテナ装置の周波数特性を示す図である。図8から分かるように、470〜620MHzにおいて、4.0以上の高い利得と、4.0以下の低いVSWRが得られた。地上波デジタル放送では、470〜710MHzの周波数帯域が使用される。このアンテナ装置では、470〜620MHzのローチャンネルの電波と、衛星放送の電波を受信することができる。
【0025】
図9は、図1〜図8で示したアンテナ装置から平面アンテナ3を除去した場合の周波数特性を示す図である。図8および図9を参照して、UHFアンテナとして2つの平面アンテナ2,3を設けた場合と1つの平面アンテナ2のみを設けた場合の利得およびVSWRを比較すると、470〜620MHzの周波数帯域では2つの平面アンテナ2,3を設けた方が優れており、上記の周波数帯域での受信に実用上、問題なく使用できる。また、1つの平面アンテナ2のみを設けた場合は、590〜620MHzの周波数帯域では利得およびVSWRの点で2つの平面アンテナ2,3を設けた場合より劣るが、470〜590MHzの周波数帯域では実用上、問題なく使用可能である。
【0026】
以上のように、この実施の形態では、平面アンテナ1〜3を重ねて衛星放送とUHF放送の両方を受信するので、オフセット型パラボラアンテナの受信部にUHFアンテナを固定する従来技術に比べ、アンテナ装置の小型化、薄型化を図ることができる。
【0027】
なお、この実施の形態では、平面アンテナ1によって衛星放送を受信したが、これに限るものではなく、平面アンテナ1によってUHF放送の電波よりも高い周波数の電波(たとえば、ミリ波、2.4GHzの電波、5GHzの電波)を受信してもよい。
【0028】
また、同軸コネクタ9の中心導体9aを平面アンテナ2,3の給電点2b,3bの両方に接続したが、平面アンテナ2と3は電磁結合されているので、同軸コネクタ9の中心導体9aを給電点2b,3bのうちのいずれか一方の給電点のみに接続してもよい。同軸コネクタ9の中心導体9aを給電点2bのみに接続する場合は、平面アンテナ3に銅線10を通す孔を形成するとよい。
【0029】
また、平面アンテナ1としてラジアルスロットラインアンテナを使用したが、これに限るものではなく、平面アンテナ1として、クランクアンテナ、カールアンテナ、パッチアンテナなども使用可能である。
【0030】
また、平面アンテナ1によって受信した衛星放送の電波に基づいて衛星受信信号を生成するとともに、平面アンテナ2,3によって受信したUHF放送の電波に基づいて地上波受信信号を生成し、衛星受信信号と地上波受信信号を混合してテレビ信号を生成する電気回路部をアンテナ装置に搭載し、そのテレビ信号を1本の同軸線を介してテレビ受信機に供給してもよい。
【0031】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0032】
1〜3 平面アンテナ、1a スロット、2a,3a 孔、2b,3b 給電点、4 地板、5 スペーサ、6,8 支持棒、7 受電部、7a プローブ、9 同軸コネクタ、9a 中心導体、10 銅線、11 スタブ、12 カバー、13 保持部材、14 ポール、15 同軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
UHFよりも高い周波数の電波を受信する第1の平面アンテナと、
前記第1の平面アンテナよりも大きく、その表面の中央部が前記第1の平面アンテナの裏面に対向して設けられ、前記第1の平面アンテナの反射板として使用されるとともに、UHF放送の電波を受信する第2の平面アンテナと、
前記第2の平面アンテナよりも大きく、その表面の中央部が前記第2の平面アンテナの裏面に対向して設けられ、前記第2の平面アンテナとともに前記UHF放送の電波を受信する第3の平面アンテナと、
前記第3の平面アンテナよりも大きく、その表面の中央部が前記第3の平面アンテナの裏面に対向して配置された地板とを備える、アンテナ装置。
【請求項2】
さらに、前記第3の平面アンテナと前記地板との間に設けられ、前記第2および第3の平面アンテナの給電点に電気的に結合されたスタブを備える、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
UHFよりも高い周波数の電波を受信する第1の平面アンテナと、
前記第1の平面アンテナよりも大きく、その表面の中央部が前記第1の平面アンテナの裏面に対向して設けられ、前記第1の平面アンテナの反射板として使用されるとともに、UHF放送の電波を受信する第2の平面アンテナと、
前記第2の平面アンテナよりも大きく、その表面の中央部が前記第2の平面アンテナの裏面に対向して配置された地板とを備える、アンテナ装置。
【請求項4】
さらに、前記第2の平面アンテナと前記地板との間に設けられ、前記第2の平面アンテナの給電点に電気的に結合されたスタブを備える、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1の平面アンテナはラジアルラインスロットアンテナである、請求項1から請求項4までのいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記UHFよりも高い周波数の電波は衛星放送の電波である、請求項1から請求項5までのいずれかに記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−23600(P2012−23600A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160492(P2010−160492)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】