説明

アンテナ装置

【課題】複数の周波数帯の電波に対応できるアンテナ装置において、より高いRFIDに対応するアンテナの性能を確保すること。
【解決手段】アンテナ装置10は、第1の給電部31と接続される第1のアンテナ導体11と、第1のアンテナ導体11を介して第1の給電部31に接続される第2のアンテナ導体12と、第2の給電部32と接続される第3のアンテナ導体13と、第3のアンテナ導体13と第1のアンテナ導体11とを接続する第1のインダクタ15と、第3のアンテナ導体13と第2のアンテナ導体12とを接続する第2のインダクタ16と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の周波数帯の電波に対応できるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
RFID(Radio Frequency IDentification)は、非接触通信機能による電子マネーによる支払い等に利用される。携帯電話機に代表される無線通信機器は、RFIDを用いた電子マネーの支払い等の機能を有するものが普及してきている。また、近年においては、無線通信機器の多機能化が進んでいる。例えば、GPS(Global Positioning System)を利用して位置を検索する機能、Bluetoothを利用して他の機器との通信する機能等を有する携帯通信機器がある。このような無線通信機器は、それぞれの機能に対応した複数の周波数帯の電波を利用して、複数の通信対象と通信するので、複数の周波数帯の電波を一つの無線通信機器で取り扱う必要がある。例えば、特許文献1、2には、複数の周波数帯の電波に対応できるアンテナ(マルチバンドアンテナ)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−194995号公報
【特許文献2】特開2009−111999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、RFIDを利用する場合、非接触で無線通信機器と外部の機器との間で通信が行われる。この場合、非接触かつ短時間で情報を読み取る必要があるので、RFIDの通信に用いるアンテナの性能は高いことが好ましい。しかし、複数の周波数帯に対応できるマルチバンドアンテナは、複数の周波数帯の電波に対応する必要があるので、それぞれの周波数帯域で必要な性能を確保することが難しい。本発明は、複数の周波数帯の電波に対応できるアンテナ装置において、RFIDに対応するアンテナの性能を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、容量素子を介して第1の給電部と接続される第1のアンテナ導体と、前記第1のアンテナ導体及び前記容量素子を介して前記第1の給電部に接続される第2のアンテナ導体と、第2の給電部と接続される第3のアンテナ導体と、前記第3のアンテナ導体と、前記第1のアンテナ導体の、前記第1の給電部と接続される部分とは異なる部分とを接続する第1のインダクタと、前記第3のアンテナ導体の、前記第1のインダクタと接続される部分とは異なる部分と、前記第2のアンテナ導体の、前記第1の給電部と接続される部分とは異なる部分とを接続する第2のインダクタと、を含むことを特徴とするアンテナ装置である。
【0006】
このアンテナ装置は、第1のアンテナ導体と第2のアンテナ導体と第3のアンテナ導体とを用いて、複数の周波数帯の電波に対応できる。そして、このアンテナ装置は、第1のアンテナ導体、第2のアンテナ導体及び第3のアンテナ導体と第1のインダクタ及び第2のインダクタとを利用してループアンテナを構成することができるので、前記ループアンテナの電気長を確保することができる。前記ループアンテナをRFIDに対応させることにより、このアンテナ装置は、複数の周波数帯の電波に対応するにあたって、RFIDに対応するアンテナの性能を確保することができる。
【0007】
本発明において、前記第3のアンテナ導体と重なり、かつ前記第1のアンテナ導体及び前記第2のアンテナ導体とは重ならない位置に電磁波遮蔽シートを有することが好ましい。このようにすることで、第3のアンテナ導体を用いるループアンテナの性能を向上させつつ、第1のアンテナ導体を用いるアンテナ及び第2のアンテナ導体を用いるアンテナの性能低下を抑制することができる。
【0008】
本発明において、前記第1のアンテナ導体は、前記第1のアンテナ導体に接続する第3の給電部と接続された第4のアンテナ導体が、容量素子及びインダクタを介して接続されることが好ましい。このようにすることで、アンテナ装置は、さらに異なる周波数帯域の電波に対応することができる。
【0009】
本発明において、前記第3のアンテナ導体と重なり、かつ前記第1のアンテナ導体、前記第2のアンテナ導体及び前記第4のアンテナ導体とは重ならない位置に電磁波遮蔽シートを有することが好ましい。このようにすることで、第3のアンテナ導体を用いるループアンテナの性能を向上させつつ、第1のアンテナ導体を用いるアンテナ、第2のアンテナ導体を用いるアンテナ及び第4のアンテナ導体を用いるアンテナの性能低下を抑制することができる。
【0010】
本発明において、前記第3の給電部が設けられる位置は、前記第1の給電部から、前記第1のアンテナ導体を用いるアンテナの共振周波数の波長のm/4倍離れた位置以外、かつ前記第2のアンテナ導体を用いるアンテナの共振周波数の波長のn/4倍離れた位置以外であることが好ましい(m、nは自然数)。このようにすることで、第1の給電部と第3の給電部との間のアイソレーション特性が良好になるので、第1のアンテナ導体を用いるアンテナ及び第2のアンテナ導体を用いるアンテナの放射特性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、複数の周波数帯の電波に対応できるアンテナ装置において、RFIDに対応するアンテナの性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施形態1に係るアンテナ装置の斜視図である。
【図2】図2は、実施形態1に係るアンテナ装置の平面図である。
【図3】図3は、実施形態1に係るアンテナ装置の断面構造を示す模式図である。
【図4】図4は、実施形態1に係るアンテナ装置の等価回路を示す図である。
【図5】図5は、第1のアンテナの動作時における導体を示す平面図である。
【図6】図6は、第1のアンテナの等価回路を示す図である。
【図7】図7は、第2のアンテナの動作時における導体を示す平面図である。
【図8】図8は、第2のアンテナの等価回路を示す図である。
【図9】図9は、第3のアンテナの動作時における導体を示す平面図である。
【図10】図10は、第3のアンテナの等価回路を示す図である。
【図11】図11は、第4のアンテナの動作時における導体を示す平面図である。
【図12】図12は、第4のアンテナの等価回路を示す図である。
【図13】図13は、実施形態2に係る第3のアンテナ導体を示す平面図である。
【図14】図14は、実施形態2に係る第3アンテナ導体の一部断面図である。
【図15】図15は、実施形態3に係る第3のアンテナ導体を示す平面図である。
【図16】図16は、評価に供したアンテナ装置の寸法及び形状を示す平面図である。
【図17】図17は、第1のアンテナの電気特性を示す図である。
【図18】図18は、第1のアンテナのアイソレーションを示す図である。
【図19】図19は、第2のアンテナの電気特性を示す図である。
【図20】図20は、第1のアンテナのアイソレーションを示す図である。
【図21】図21は、第3のアンテナの伝送損失を示す図である。
【図22】図22は、第4のアンテナの電気特性を示す図である。
【図23】図23は、第4のアンテナのアイソレーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0014】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るアンテナ装置の斜視図である。図2は、実施形態1に係るアンテナ装置の平面図である。図3は、実施形態1に係るアンテナ装置の断面構造を示す模式図である。図4は、実施形態1に係るアンテナ装置の等価回路を示す図である。アンテナ装置10は、例えば、携帯電話機等の無線通信機器に搭載されて、複数の周波数帯の電波を受信又は送信する。アンテナ装置10は、一般に、マルチバンドアンテナと称される。アンテナ装置10の適用対象は、複数の無線通信機能を有する無線通信機器であればよく、携帯電話機に限定されるものではない。
【0015】
図1、図2に示すように、本実施形態において、アンテナ装置10は、第1のアンテナ導体11と、第2のアンテナ導体12と、第3のアンテナ導体13と、第1のインダクタ15と、第2のインダクタ16とを少なくとも含む。本実施形態において、アンテナ装置10は、さらに、第4のアンテナ導体14と、電磁波遮蔽体としての電磁波遮蔽シート20とを有している。
【0016】
アンテナ装置10は、上述した要素によって構成された、第1のアンテナ1と、第2のアンテナ2と、第3のアンテナ3と、第4のアンテナ4とを有する。第1のアンテナ1は、共振周波数f1における波長がλ1の電波を送受信し、第2のアンテナ2は、共振周波数f2における波長がλ2の電波を送受信し、第3のアンテナ3は、共振周波数f3における波長がλ3の電波を送受信し、第4のアンテナ4は、共振周波数f4における波長がλ4の電波を送受信する。
【0017】
第1のアンテナ1は、第1のアンテナ導体11と第1のインダクタ15とを含む。第2のアンテナ2は、第1のアンテナ導体11の一部と第2のアンテナ導体12と第2のインダクタ16とを含む。第3のアンテナ3は、第3のアンテナ導体13と、第2のアンテナ導体12と、第1のアンテナ導体11と、第1のインダクタ15と、第2のインダクタ16とを含む。第4のアンテナ4は、第4のアンテナ導体14と、第2のコンデンサ24と、第3のインダクタ25と、第1のアンテナ導体11と、第1のインダクタ15と、第2のアンテナ導体12と、第2のインダクタ16とを含む。
【0018】
第1のアンテナ導体11は、容量素子としての第1コンデンサ17Cを介して第1の給電部31と接続される。第2のアンテナ導体12は、第1のアンテナ導体11及び容量素子としての第1コンデンサ17Cを介して第1の給電部31に接続される。第3のアンテナ導体13は、第2の給電部32と接続される。第1のインダクタ15は、第3のアンテナ導体13と、第1のアンテナ導体11の、第1の給電部31と接続される部分とは異なる部分とを接続する。第2のインダクタ16は、第3のアンテナ導体13の、第1のインダクタ15と接続される部分とは異なる部分と、第2のアンテナ導体12の、第1の給電部31と接続される部分とは異なる部分とを接続する。
【0019】
第4のアンテナ導体14は、第3の給電部33と接続されるとともに、容量素子としての第2コンデンサ24及びインダクタ(第3のインダクタ)25を介して第1のアンテナ導体11と接続される。なお、図1、図2に示すように、本実施形態において、第2コンデンサ24と第3のインダクタ25とは、接続導体28によって電気的に接続されている。図2に示すように、アンテナ装置10が有する電磁波遮蔽シート20は、第3のアンテナ導体13と重なり、かつ第1のアンテナ導体11及び第2のアンテナ導体12とは重ならない位置に配置される。なお、アンテナ装置10が第4のアンテナ導体14を有する場合、電磁波遮蔽シート20は、第4のアンテナ導体14とは重ならない位置に配置される。
【0020】
このようなアンテナ装置10は、携帯電話機の筐体100の内部に配置される。筐体100の材質は、例えば、PC(Polycarbonate)/ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂である。第1のアンテナ導体11、第2のアンテナ導体12、第3のアンテナ導体13及び第4のアンテナ導体14は、アンテナ支持体としての基体10FBの表面に形成される。これらは、例えば、接着剤によって所定の導体パターン(銅又はアルミニウム等の金属の箔)が、基体10FBの表面に接着されることにより形成される。本実施形態において、基体10FBは、FPC(Flexible Print Circuits)であるが、基体10FBはこれに限定されるものではない。基体10FBは、第1のアンテナ導体11及び第2のアンテナ導体12等が形成されている面とは反対面が、例えば、両面テープによって筐体100の内面に取り付けられる。このような構造により、本実施形態において、図3に示すように、第1のアンテナ導体11、第2のアンテナ導体12、第3のアンテナ導体13及び第4のアンテナ導体14は、基体10FBよりも筐体100の内側に配置される。電磁波遮蔽シート20は、第3のアンテナ導体13の表面に設けられるので、基体10FBよりも筐体100の内側に配置されることになる。
【0021】
第1のアンテナ導体11と第3のアンテナ導体13と第4のアンテナ導体14とは、第1の給電線21と第2の給電線22A、22Bと第3の給電線23とによって、それぞれ、第1の給電部31と第2の給電部32と第3の給電部33と接続される。第1の給電線21、第2の給電線22A、22B、第3の給電線23、第1の給電部31、第2の給電部32及び第3の給電部33は、回路基板30に設けられる。図3に示すように、回路基板30は、基体10FBよりも筐体100の内側に配置される。回路基板30は、アンテナ装置10の受信機能又は送信機能を実現するための電子回路及び配線パターンを有している。回路基板30は、例えば、第1の整合回路17、第2の整合回路18、第3の整合回路19及び端子電極34、35A、35Ba、35Bb、36等を有している。
【0022】
本実施形態において、第1のアンテナ導体11は、一端部11Taが第1の給電部31と接続され、他端部11Tbが第1のインダクタ15と接続される。第1のアンテナ導体11は、平面視が略L字形状、すなわち第1の長方形部分と第2の長方形部分とが組み合わされた形状をした導体のパターンである。第1のアンテナ導体11の一端部11Taは、第1の長方形部分に設けられる。
【0023】
第2のアンテナ導体12は、一端部12Taが第1のアンテナ導体11、より具体的には第1のアンテナ導体11が有する一端部11Ta側の部分と接続され、他端部12Tbが第2のインダクタ16と接続される。このように、本実施形態において、第2のアンテナ導体12は、第1のアンテナ導体11から分岐している。第2のアンテナ導体12は、平面視が略L字形状、すなわち第1の長方形部分と第2の長方形部分とが組み合わされた形状をした導体のパターンである。第2のアンテナ導体12の一端部12Taは、第1の長方形部分に設けられる。
【0024】
本実施形態において、第1のアンテナ導体11と第2のアンテナ導体12とは、一体不可分に構成されている。このような構造により、第2のアンテナ導体12は、第1のアンテナ導体11を介して第1の給電部31と接続される。第2のアンテナ導体12がアンテナとして機能する場合、第2のアンテナ導体12とともに、第1のアンテナ導体11の一部(本実施形態では一端部11Ta)が用いられる。第2のアンテナ導体12は、一端部12Ta(第1の長方形部分)が第1のアンテナ導体11の一端部11Ta(第1の長方形部分)で接続されているが、第2のアンテナ導体12と第1のアンテナ導体11との接続位置はこれに限定されるものではない。例えば、第2のアンテナ導体12は、一端部12Taが第1のアンテナ導体11の第2の長方形部分と接続されていてもよい。
【0025】
第1のアンテナ導体11と第2のアンテナ導体12とは、所定の距離を設けて配置されている。より具体的には、第1のアンテナ導体11及び第2のアンテナ導体12は、それぞれの第2の長方形部分が所定の距離を設けて平行に配置されるとともに、それぞれの第2の長方形部分が同一の方向に延在している。本実施形態では、第2のアンテナ導体12の方が第1のアンテナ導体11よりも第2の長方形部分が長くなっている。このため、第2のアンテナ導体12は、第1のアンテナ導体11よりも全長が長くなる。そして、第1のアンテナ導体11の一端部11Taから第2のアンテナ導体12の一端部12Taを通って他端部12Tbに至るまでの長さは、第1のアンテナ導体11の一端部11Taから他端部11Tbまでの長さよりも大きくなる。第1のアンテナ導体11は、第2のアンテナ導体12が送受信する電波よりも波長の短い電波を送受信することができる。第1のアンテナ導体11及び第2のアンテナ導体12は、いずれもモノポールアンテナになる。
【0026】
本実施形態において、第3のアンテナ導体13は、第1部分13Aと第2部分13Bとで構成される。第1部分13Aは平面視が略凹字形状であり、第2部分13Bは平面視が長方形状であり、すなわち第1部分13Aと第2部分13Bとが組み合わされた形状をした導体のパターンである。第1部分13Aの一端部13ATa及び第2部分13Bの一端部13BTaは、端子電極35A、35Ba、35Bb及び第2の給電線22A、22Bを介して、第2の給電部32と接続される。第1部分13Aの他端部13ATbは、第1のインダクタ15と接続される。また、第2部分13Bの他端部13BTbは、第2のインダクタ16と接続される。このような構造により、第3のアンテナ導体13は、第1部分13Aが第1のインダクタ15を介して第1のアンテナ導体11と接続され、第2部分13Bが第2のインダクタ16を介して第2のアンテナ導体12と接続される。第3のアンテナ導体13は、ループアンテナになる。
【0027】
第4のアンテナ導体14は、一端部14Taが第3の給電線23を介して第3の給電部33と接続され、他端部14Tbが第2コンデンサ24及び第3のインダクタ25を介して第1のアンテナ導体11の一端部11Taと接続される。第2のアンテナ導体12は、平面視が略L字形状、すなわち第1の長方形部分と第2の長方形部分とが組み合わされた形状をした導体のパターンである。第4のアンテナ導体14は、ハーフループアンテナになる。第1のアンテナ導体11、第2のアンテナ導体12、第3のアンテナ導体13及び第4のアンテナ導体14の形態は、上述したものに限定されない。
【0028】
図2に示すように、回路基板30には、第1の整合回路17と第2の整合回路18と第3の整合回路19とが搭載されている。また、回路基板30が有する端子電極34には第1の給電線21が接続されており、端子電極35A、35Baには第2の給電線22A、22Bが接続されており、端子電極36には第3の給電線23が接続されている。第1の整合回路17は、第1の給電部31と端子電極34とを接続する。第2の給電部32は、端子電極35Aと端子電極35Bbとが接続されている。端子電極35Bbと端子電極35Baと端子電極35Aとの間には、第2の整合回路18が接続される。第3の整合回路19は、第3の給電部33と端子電極36とを接続する。本実施形態において、第1の給電部31、第2の給電部32、第3の給電部33、第1の整合回路17、第2の整合回路18及び第3の整合回路19は、回路基板30のグランド領域に形成されている。
【0029】
図4に示すように、第1の整合回路17は、第1コンデンサ17Cとインダクタ(第1整合回路用インダクタ)17Lとを有する。第1コンデンサ17Cは、第1の給電部31と第1のアンテナ導体11とを直列に接続する。第1整合回路用インダクタ17Lは、第1の給電部31とGND(グランド)とを接続する。すなわち、第1整合回路用インダクタ17Lは、第1コンデンサ17Cに対して並列に接続される。第2の整合回路18は、第2整合回路用コンデンサ18Ca、18Cbを有する。一方の第2整合回路用コンデンサ18Caは、第3のアンテナ導体の第1部分13Aと第2部分13Bとを並列に接続する。他方の第2整合回路用コンデンサ18Cbは、第2部分13Bと第2の給電部32とを直列に接続する。第3の整合回路19は、第3の給電部33と第2のコンデンサ24との間に直列に接続される。
【0030】
図5は、第1のアンテナの動作時における導体を示す平面図である。図6は、第1のアンテナの等価回路を示す図である。図7は、第2のアンテナの動作時における導体を示す平面図である。図8は、第2のアンテナの等価回路を示す図である。図9は、第3のアンテナの動作時における導体を示す平面図である。図10は、第3のアンテナの等価回路を示す図である。図11は、第4のアンテナの動作時における導体を示す平面図である。図12は、第4のアンテナの等価回路を示す図である。
【0031】
本実施形態において、第1のアンテナ1は、Bluetooth帯に対応する。図5に示すように、第1アンテナ1がアンテナとして機能するとき、第1のアンテナ導体11が用いられる。第1のアンテナ1は、第1のアンテナ導体11の長さと第1の整合回路17と第1のインダクタ15とで、第1の共振周波数f1を制御する。第1のアンテナ導体11の他端部に接続された第1インダクタ15(図6参照)は、第1のアンテナ1の所定帯域であるBluetooth帯の共振周波数(2442MHz)以上の周波数で高インピーダンス(1.13kΩ)となるインダクタンス値(47nH)を有したチョークコイルの機能を有している。第1のインダクタ15は、図2に示す基体10FBの表面に設けられる。
【0032】
本実施形態において、第2のアンテナ2は、GPS帯に対応する。図7に示すように、第2アンテナ2がアンテナとして機能するとき、第1のアンテナ導体11の一端部11Taと第2のアンテナ導体12とが用いられる。第2のアンテナ2は、第1のアンテナ導体11の一部(より具体的には第1のアンテナ導体11の一端部11Ta)の長さと第2のアンテナ導体12の長さと第1の整合回路17と第2のインダクタ16とで、第2の共振周波数f2を制御する。第2のアンテナ2の他端部に接続された第2のインダクタ16(図8参照)は、第2のアンテナ2の所定帯域であるGPS帯の共振周波数(1575MHz)以上の周波数で高インピーダンス(1.16kΩ)となるインダクタンス値(82nH)を有したチョークコイルの機能を有している。第2のインダクタ16は、図2に示す基体10FBの表面に設けられる。
【0033】
第1のインダクタ15と第2のインダクタ16とは、図9、図10に示す第3のアンテナ3の電気長と、図11、図12に示す第4のアンテナ4の電気長とを短くさせる機能も有している。
【0034】
第1の整合回路17は、第1のアンテナ1の所定帯域であるBluetooth帯と第2のアンテナ2の所定帯域であるGPS帯で良好なリターン・ロス特性を得るために設けられる。具体的には、第1の整合回路17は、第1コンデンサ17C(1.3pF)と第1整合回路用インダクタ17L(3.6nH)とを有している。第1コンデンサ17Cは、第3のアンテナ3の所定帯域であるRFID帯の周波数と、第4のアンテナ4の所定帯域であるFM帯の周波数とでそれぞれ高インピーダンス(RFID帯は9kΩ、FM帯は1.1kΩ)となる。このため、第3のアンテナ3の所定帯域であるRFID帯の電流I3と第4のアンテナの所定帯域であるFM帯の電流I4とが、第1の給電部31に進入することを防ぐための機能を有している。すなわち、第1のアンテナ1及び第2のアンテナ2は、第1のアンテナ導体11の長さと第2のアンテナ導体12の長さと第1の整合回路17とによって、基本モードの周波数で共振するように設定されて、放射特性を向上することができる。
【0035】
本実施形態において、第3のアンテナ3は、RFID帯に対応する。図9に示すように、第3のアンテナ3はループアンテナであるので、第3のアンテナ3がアンテナとして機能するときに、第3のアンテナ導体13の第1部分13Aから、第1のアンテナ導体11と第2のアンテナ導体12とを経由して第2部分13Bに戻るループ形状の部分が用いられる。第3のアンテナ3は、第1のアンテナ導体11の長さ(より具体的には他端部11Tbから第2のアンテナ導体12までの長さ)と第2のアンテナ導体12の長さと第3のアンテナ導体13長さと第2の整合回路18と第1のインダクタ15と第2のインダクタ16とで、第3の共振周波数f3を制御する。第2の整合回路18は、第3のアンテナ3の所定帯域であるRFID帯で良好な反射損失の特性を得るために設けられる。具体的には、第2の整合回路18は、並列の第2整合回路用コンデンサ18Ca(820pF)と、直列の第2整合回路用コンデンサ18Cb(43pF)とを有する。
【0036】
本実施形態において、第4のアンテナ4は、FM帯(例えば、92MHz)に対応する。図11に示すように、第4のアンテナ4がアンテナとして機能するとき、第4のアンテナ導体14と、第1のアンテナ導体11と、第2のアンテナ導体12と、第3のアンテナ導体13とが用いられる。第4のアンテナ4は、第4のアンテナ導体14の長さと第1のアンテナ導体11の長さと第2のアンテナ導体12の長さと第3のアンテナ導体13長さと第2の整合回路18と第1のインダクタ15と第2のインダクタ16と第3のインダクタ25と第2コンデンサ24とで、第4の共振周波数f4を制御する。
【0037】
第4のアンテナ導体14と接続される第3の給電部33は、第1の給電部31から約8mm(≒λ1/15、λ1はBluetooth帯の共振周波数の波長)離れた場所に設置される。すなわち、第1のアンテナ1(第1のアンテナ導体11)の共振周波数f1(この例では2442MHz)の波長λ1のm/4倍(mは自然数)離れた位置以外、かつ第2のアンテナ2(第2のアンテナ導体12)の共振周波数f2(この例では1575MHz)の波長λ2のn/4倍(nは自然数)離れた位置以外の位置に配置される。このようにすることで、第1のアンテナ1の所定帯域であるBluetooth帯と第2のアンテナ2の所定帯域であるGPS帯とにおいて、第1の給電部31と第3の給電部33との間のアイソレーション特性が良好になり、第1のアンテナ1及び第2のアンテナ2の放射特性を向上させることができる。
【0038】
第3のインダクタは、第1のアンテナ1の所定帯域であるBluetooth帯の共振周波数以上の周波数で高インピーダンス(1.13kΩ)となるインダクタンス値(47nH)を有したチョークコイルである。第2コンデンサ24は、第3のアンテナ3の所定帯域であるRFID帯の共振周波数以上の周波数で低インピーダンス(1000MHzのとき0.5kΩ)となるコンデンサ値(20pF)を有した低周波カット用コンデンサである。
【0039】
第3の整合回路19は、低雑音増幅器(LNA)の機能を有する。第3の整合回路19は、第4のアンテナ4の所定帯域であるFM帯で放射特性を向上させることができる。第3のインダクタは、第1のアンテナ1の所定帯域であるBluetooth帯の電流I1及び第2のアンテナの所定帯域であるGPS帯の電流I2が、第3の給電部33に侵入することを防ぐための機能を有している。第2コンデンサ24は、第3のアンテナ3の所定帯域であるRFID帯の電流I3が、第3の給電部33に侵入することを防ぐための機能を有している。
【0040】
アンテナ装置10は、上述した構成により、第1のアンテナ1から第3のアンテナ3がそれぞれの周波数帯域における電波を送受信する際には、第1のアンテナ1から第3のアンテナ3がそれぞれの周波数帯域における電波の周波数で共振する。このとき、第1のインダクタ15が第1の共振周波数f1で高インピーダンスとなるので、第1のアンテナ1の周波数帯域における電流I1は、第1の給電部31から第1の給電線21及び第1のアンテナ導体11を通って第1のインダクタ15まで流れる。これによって、第1のアンテナ1は第1の共振周波数f1のみ共振する。
【0041】
第2のインダクタ16が第2の共振周波数f2で高インピーダンスとなるので、第2のアンテナ2の周波数帯域における電流I2は、第1の給電部31から第1の給電線21、第1のアンテナ導体11の一部(より具体的には第1のアンテナ導体11の一端部11Ta)及び第2のアンテナ導体12を通って第2のインダクタ16まで流れる。これによって、第2のアンテナ2は第2の共振周波数f2のみ共振する。そして、第1のインダクタ15と第2のインダクタ16とは、第3の周波数帯域で低インピーダンスとなるので、第3のアンテナ3が対応する周波数帯域の電流I3は、第3のアンテナ3に流れ、第3のアンテナは第3の共振周波数f3のみ共振する。このように、アンテナ装置10は、第1のアンテナ1から第3のアンテナ3により、3つの周波数帯域における電波を送受信することができる。
【0042】
第1の整合回路17は、第1のアンテナ1の第1の共振周波数f1と第2のアンテナ2の第2の共振周波数f2とを制御する。第2の整合回路18は、第3のアンテナ3の第3の共振周波数f3を制御する。すなわち、第1のアンテナ1による共振と第2のアンテナ2による共振と第3のアンテナ3による共振との複共振化が図られている。さらに、アンテナ装置10は、第1のアンテナ1から第3のアンテナ3が対応する周波数帯域を、第1のインダクタ15と第2のインダクタ16とによってそれぞれ分離している。すなわち、第3のアンテナ3の第3の共振周波数f3は、第1のアンテナ1の第1の共振周波数f1と第2のアンテナ2の第2の共振周波数f2とに影響を与えないため、第1のアンテナ1から第3のアンテナ3の共振周波数は、それぞれ独立に変化させることができる。
【0043】
また、第3のアンテナ3は、第1のアンテナ導体11と第2のアンテナ導体12と第3のアンテナ導体13(第1部分13A及び第2部分13B)と第1のインダクタ15と第2のインダクタ16とが接続されたループアンテナとなる。このため、限られた基体10FBのスペースを有効に利用して、第3のアンテナ3の電気長を確保することができるので、RFIDに対応した第3のアンテナ3の性能を確保することができる。その結果、アンテナ装置10は、複数の周波数帯の電波に対応できるアンテナ装置において、RFIDに対応するアンテナの性能を確保することができる。
【0044】
上述したように、第4のアンテナ4に対応する第3の給電部33が設けられる位置は、第1の給電部31から、第1のアンテナ1の共振周波数の波長のm/4倍離れた位置以外、かつ第2のアンテナ2の共振周波数の波長のn/4倍離れた位置以外とすることが好ましい。このようにすると、第1のアンテナ1の周波数帯域の電流I1は、第2の給電部32及び第3の給電部33に流れないので、電流I1は、第1の給電部31から第1のインダクタ15までの第1のアンテナ導体11に流れ、第1の給電部31を通じてグランドGNDに流れない。また、第2のアンテナ2の周波数帯域の電流I2も、第2の給電部32及び第3の給電部33に流れない。このため、電流I2は、第1の給電部31から第2のインダクタ16までの第2のアンテナ導体12に流れ、第1の給電部31を通じてグランドGNDに流れない。第3のアンテナ3の周波数帯域の電流I3は、第1の給電部31及び第3の給電部33に流れず、第3のアンテナ導体13に流れる。第4のアンテナ4の周波数帯域の電流I4は、第1の給電部31及び第2の給電部32に流れない。このため、アンテナ装置10は、第4のアンテナ4及び第3の給電部33を追加しても、第1の給電部31から第3の給電部33との間のアイソレーション特性が確保できるので、第1のアンテナ1から第4のアンテナ4の放射特性を確保することができる。
【0045】
第1のアンテナ1及び第2のアンテナ2は、モノポールアンテナであり、それぞれに対応する第1アンテナ導体11、第2アンテナ導体12を流れる電流I1、I2は、進行波として流れ、第1のインダクタ15及び第2のインダクタ16までしか流れない。そして、第1アンテナ導体11、第2アンテナ導体12を流れた電流I1、I2は、第1の給電部31に戻ってこないので、第1の給電部31から流れる電流I1、I2と打ち消し合うことはない。その結果、第1のアンテナ1及び第2のアンテナ2は、放射効率が高くなる。
【0046】
電磁波遮蔽シート20は、金属又は磁性体等の材料のシートである。電磁波遮蔽シート20は、携帯電話機等の無線通信機の回路基板30から放射される電磁波の影響及び回路基板30で吸収又は反射される電磁波の影響を抑制するために、第3のアンテナ導体13の内面側に設けられている。電磁波遮蔽シート20により、第3のアンテナ3の性能が向上する。
【0047】
本実施形態において、電磁波遮蔽シート20で使用される磁性体の材料損失は、FM帯とGPS帯とBluetooth帯の方が、RFID帯よりも大きくなっている。第1のアンテナ1の所定帯域であるBluetooth帯の電流I1が流れることで、第1のアンテナ1の周辺に磁界M1が発生する。同様に、第2のアンテナ2の所定帯域であるGPS帯の電流I2及び第4のアンテナ4の所定帯域であるFM帯の電流I4が流れることで、それぞれ第2のアンテナ2の周辺に磁界M2が発生し、第4のアンテナ4の周辺に磁界M4が発生する。
【0048】
第1のアンテナ1と第2のアンテナ2と第4のアンテナ4とに重なる領域に電磁波遮蔽シート20が貼り付けられている場合、貼り付けられていない場合と比較して、磁界M1と磁界M2と磁界M4とは電磁波遮蔽シート20を広く通過する。そして、電磁波遮蔽シート20に使用される材料損失のため、磁界M1と磁界M2と磁界M4とは小さくなり磁界放射が弱まる。このため、第1のアンテナ1と第2のアンテナ2と第4のアンテナ4との放射特性は劣化する。すなわち、磁界M1と磁界M2と磁界M4とが電磁波遮蔽シート20を通過する領域を狭くすることで、第3のアンテナ3の放射特性を改善しつつ、第1のアンテナ1及び第2のアンテナ2及び第4のアンテナ4の放射特性を向上させることができる。
【0049】
本実施形態において、アンテナ装置10は、第1のアンテナ導体11と第2のアンテナ導体12と第3のアンテナ導体13と第4のアンテナ導体14と第1のインダクタ15と第2のインダクタ16と第3のインダクタ25と第2コンデンサ24を基体10FBに設け、第1の整合回路17と第2の整合回路18と第3の整合回路19を回路基板30に設ける。このようにすることで、アンテナ装置10と回路基板30とのデットスペースを利用して、第1のアンテナ1及び第2のアンテナ2等の放射特性を向上させることができる。
【0050】
本実施形態において、アンテナ装置10は、第1のアンテナ1から第4のアンテナ4のうち少なくとも1つに、さらに追加のアンテナ導体を少なくとも1つ接続してもよい。このようにすることで、複数の共振周波数を独立又は同時に制御することができる。
【0051】
以上、本実施形態は、第1のアンテナ導体と第2のアンテナ導体と第3のアンテナ導体とを含み、第1のアンテナ導体と第3のアンテナ導体とは第1のインダクタを介して接続され、第2のアンテナ導体と第3のアンテナ導体とは第2のインダクタを介して接続されている。このような構造により、RFIDに対応した第3のアンテナは、第1のアンテナ導体と第2のアンテナ導体と第3のアンテナ導体とを利用したループアンテナとなるので、電気長を確保することができる。その結果、本実施形態のアンテナ装置は、複数の周波数帯の電波に対応するにあたって、RFIDに対応するアンテナの性能を確保することができる。また、本実施形態のアンテナ装置は、第3のアンテナ導体に加え、第1のアンテナ導体及び第2のアンテナ導体を利用することにより、限られた基体のスペースを有効に利用して、RFIDに対応した第3のアンテナの性能を確保することができる。このため、本実施形態のアンテナ装置は、筐体内部のスペースに制限のある機器、例えば、携帯無線通信機器に好適である。本実施形態の構成は、以下においても単独で、又は適宜組み合わせて適用することができる。また、本実施形態の構成を有するものは、本実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0052】
(実施形態2)
図13は、実施形態2に係る第3のアンテナ導体を示す平面図である。図14は、実施形態2に係る第3アンテナ導体の一部断面図である。図13に示したマルチバンドアンテナは、フレキシブルプリント基板にスルーホールを設けて、フレキシブルプリント基板上下に二重のループ形状を形成した第3のアンテナである。本実施例においても、第1から第4のアンテナの全てにおいて、良好な放射特性となっている。
【0053】
実施形態2において、第3のアンテナ導体13’は、第1部分13A’と第2部分13B’とで構成される。第1部分13A’は、スルーホール26を介して、基体10FBの筐体100側にループ状の導体パターンが設けられ、更に、スルーホール27を介して、基体10FBの回路基板30側に凹状の導体パターンが設けられている。第1部分13A’の一端部13ATa及び第2部分13B’の一端部13BTbは、端子電極35A、35Ba、35Bb及び第2の給電線22A、22Bを介して、第2の給電部32と接続される。第1部分13Aの他端部13ATbは、第1のインダクタ15と接続される。また、第2部分13Bの他端部13BTbは、第2のインダクタ16と接続される。このような構造により、第3のアンテナ導体13は、第1部分13A’が第1のインダクタ15を介して第1のアンテナ導体11と接続され、第2部分13B’が第2のインダクタ16を介して第2のアンテナ導体12と接続される。第3のアンテナ導体13’は、二重のループアンテナになる。
【0054】
実施形態2の第3のアンテナは、実施形態1の第3のアンテナ3の特性と比べて、基体10FBの両面に二重のループ形状の第3のアンテナ導体13’があり、それぞれのループに流れる電流の方向が同じであるため磁界の方向も同じであり、第3のアンテナ導体で発生する磁界が強くなる。その結果、第3のアンテナとリーダ/ライタ間との磁界結合が強くなり、第3のアンテナの特性が向上する。
【0055】
(実施形態3)
図15は、実施形態3に係る第3のアンテナ導体を示す平面図である。図15に示したマルチバンドアンテナは、フレキシブルプリント基板にスルーホールを設けて、フレキシブルプリント基板にスパイラル形状を形成した第3のアンテナでる。本実施例においても、第1から第4のアンテナの全てにおいて、良好な放射特性となっている。
【0056】
実施形態3において、第3のアンテナ導体13”は、第1部分13A”と第2部分13B”とで構成される。第1部分13A”は、スルーホール26を介して、基体10FBの筐体100側に渦巻状の導体パターンが設けられ、更に、スルーホール27を介して、基体10FBの回路基板30側に凹状の導体パターンが設けられている。第1部分13A’の一端部13ATa及び第2部分13B’の一端部13BTbは、端子電極35A、35Ba、35Bb及び第2の給電線22A、22Bを介して、第2の給電部32と接続される。第1部分13Aの他端部13ATbは、第1のインダクタ15と接続される。また、第2部分13Bの他端部13BTbは、第2のインダクタ16と接続される。このような構造により、第3のアンテナ導体13は、第1部分13A’が第1のインダクタ15を介して第1のアンテナ導体11と接続され、第2部分13B’が第2のインダクタ16を介して第2のアンテナ導体12と接続される。第3のアンテナ導体13’は、スパイラルアンテナになる。
【0057】
実施形態3の第3のアンテナは、実施形態1の第3のアンテナ3の特性と比べて、基体10FBの片面に渦巻状の導体パターンともう片面にループ形状の第3のアンテナ導体13”があり、それぞれの導体パターンで発生する磁界の方向が同じであるため、第3のアンテナ導体13”で発生する磁界が強くなる。その結果、第3のアンテナとリーダ/ライタ間との磁界結合が強くなり、第3のアンテナの特性が向上する。
【0058】
(評価)
図16は、評価に供したアンテナ装置の寸法及び形状を示す平面図である。実施形態1に係るアンテナ装置10(図1、図2、図16等参照)をコンピュータによるシミュレーションで評価した。シミュレーションに用いたソフトウェアは、ANSYS社のHFSS。評価に供したアンテナ装置10の寸法は、L1=23.9mm、L2=42mm、L3A=21mm、L3B=27.5mm、L4=16.6mm、L5=17.3mmである。第1のアンテナ導体11、第2のアンテナ導体12の幅は2mm、第3のアンテナ導体13、第4のアンテナ導体14の幅は1mm、厚みは0.018mm、材料は銅とした。図2に示す第1の整合回路17、第2の整合回路18、第2コンデンサ24、第3のインダクタ及び第3の整合回路19の仕様は上記実施形態1に記載した通りである。
【0059】
図17は、第1のアンテナの電気特性を示す図である。図18は、第1のアンテナのアイソレーションを示す図である。図中の直線Bは、Bluetooth帯の周波数帯域を示す指標である。また、図中のRは反射損失、Eは放射効率、Iはアイソレーションである。反射損失は、アンテナに入力される電力に対するアンテナから反射される電力の割合で、反射損失の値が小さい程、アンテナに入力される電力が大きい。放射効率は、アンテナに入力される電力に対するアンテナから放射される電力の割合で、放射効率の値が大きい程、アンテナから放射される電力が大きく、更に、各用途によって周波数帯が決められており、それに伴い、必要な放射効率の帯域幅が決められる。アイソレーションは、第1の給電部31と第3の給電部33との給電間において一方からもう一方への信号の漏れの割合で、アイソレーションの値が小さい程、アンテナに入力される電力が大きい。つまり、アンテナの反射損失の値が小さく、放射効率が高く、アイソレーションの値が小さい程、アンテナに入力される電力が大きく、そして、アンテナから放射される電力が大きいため、アンテナの特性は優れている。
【0060】
第1のアンテナは、Bluetooth用のアンテナであり、Bluetoothの周波数帯は、2400MHzから2484MHzの帯域幅が84MHzである。第1のアンテナの反射特性の最小値は−37dB、放射効率の最大値は66.2%、放射効率が50%のときの放射効率の帯域幅は115MHz、第1の給電部と第3の給電部との間のアイソレーションの最大値は−20dBである。第1のアンテナの反射損失の値が−10dB以下、放射効率の最大値が50%以上且つ帯域幅がそれ以上であり、アイソレーションの最大値が−15dB以下であることから、第1のアンテナの反射特性と放射特性とアイソレーション特性共に良好な特性となっている。
【0061】
図19は、第2のアンテナの電気特性を示す図である。図20は、第1のアンテナのアイソレーションを示す図である。図中の直線Gは、GPS帯の周波数帯域を示す指標である。図中のRは反射損失、Eは放射効率、Iはアイソレーションである。第2のアンテナは、GPS用のアンテナであり、GPSの周波数帯は、1574MHzから1576MHzの帯域幅が2MHzである。第2のアンテナの反射特性の最小値は−28dB、放射効率の最大値は64.3%、放射効率が50%のときの放射効率の帯域幅は68MHz、第1の給電部と第3の給電部との間のアイソレーションの最大値は−30dBである。第2のアンテナの反射損失の値が−10dB以下、放射効率の最大値が50%以上且つ帯域幅がそれ以上であり、アイソレーションの最大値が−15dB以下であることから、第2のアンテナの反射特性と放射特性とアイソレーション特性共に良好な特性となっている。
【0062】
図21は、第3のアンテナの伝送損失を示す図である。図中の直線RFは、RF帯の周波数帯域を示す指標である。図中のTは伝送損失である。伝送損失は、アンテナとリーダ/ライタ間とにおける信号の通過の割合で、伝送損失の値が大きい程、アンテナとリーダ/ライタ間との通信距離が長くなる。第3のアンテナは、RFID用のアンテナであり、RFIDの周波数は、13.56MHzである。第3のアンテナとリーダ/ライタ間との伝送損失の値は−28dBである。この伝送損失の値は、他の無線通信機器のアンテナ特性に影響を与えず、更に、非接触通信機能に必要な通信距離を確保できることから、第3のアンテナの特性は良好な特性となっている。
【0063】
図22は、第4のアンテナの電気特性を示す図である。図23は、第4のアンテナのアイソレーションを示す図である。図中の直線Fは、FM帯の周波数帯域を示す指標である。図中のGaはゲイン、Iはアイソレーションである。ゲインは、アンテナから放射される電力をdBで示し、dBの値が大きい程、アンテナから放射される電力が強い。第4のアンテナは、FM用のアンテナであり、FMの周波数帯は、76MHzから108MHzの帯域幅が32MHzである。第4のアンテナのゲインの最大値は−36dBであり、低雑音増幅器(LNA)を接続した場合、アンテナのゲインの最大値は−25dB前後になり、また、第1の給電部と第3の給電部との間のアイソレーションの最大値は−47dBである。第4のアンテナの全長(148.3mm)は、FMの周波数帯の4分の1波長(694mmから987mm)と比較して短いため、アンテナのゲインの最大値は低くなるが、FMの信号を受信するためのゲイン特性は十分であり、アイソレーションの最大値が−15dB以下であることから、第4のアンテナの放射特性とアイソレーション特性共に良好な特性となっている。
【符号の説明】
【0064】
1 第1アンテナ
2 第2アンテナ
3 第3アンテナ
4 第4アンテナ
10 アンテナ装置
10FB 基体
11 第1のアンテナ導体
11Ta 一端部
11Tb 他端部
12 第2のアンテナ導体
12Ta、13ATa、13BTa、14Ta 一端部
12Tb、13ATb、13BTb、14T 他端部
13 第3のアンテナ導体
13A、13A’、13A’’ 第1部分
13B、13B’、13B’’ 第2部分
14 第4のアンテナ導体
15 第1のインダクタ
16 第2のインダクタ
17 第1の整合回路
17C 第1コンデンサ
17L 整合回路用インダクタ
18 第2の整合回路
18Ca、18Cb 第2整合回路用コンデンサ
19 第3の整合回路
20 電磁波遮蔽シート
21 第1の給電線
22A、22B 第2の給電線
23 第3の給電線
24 第2コンデンサ
25 第3のインダクタ
30 回路基板
31 第1の給電部
32 第2の給電部
33 第3の給電部
34、35A、35Ba、35Bb、36 端子電極
100 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量素子を介して第1の給電部と接続される第1のアンテナ導体と、
前記第1のアンテナ導体及び前記容量素子を介して前記第1の給電部に接続される第2のアンテナ導体と、
第2の給電部と接続される第3のアンテナ導体と、
前記第3のアンテナ導体と、前記第1のアンテナ導体の、前記第1の給電部と接続される部分とは異なる部分とを接続する第1のインダクタと、
前記第3のアンテナ導体の、前記第1のインダクタと接続される部分とは異なる部分と、前記第2のアンテナ導体の、前記第1の給電部と接続される部分とは異なる部分とを接続する第2のインダクタと、
を含むことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記第3のアンテナ導体と重なり、かつ前記第1のアンテナ導体及び前記第2のアンテナ導体とは重ならない位置に電磁波遮蔽体を有する請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1のアンテナ導体は、前記第1のアンテナ導体に接続する第3の給電部と接続された第4のアンテナ導体が、容量素子及びインダクタを介して接続される請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第3のアンテナ導体と重なり、かつ前記第1のアンテナ導体、前記第2のアンテナ導体及び前記第4のアンテナ導体とは重ならない位置に電磁波遮蔽体を有する請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第3の給電部が設けられる位置は、前記第1の給電部から、前記第1のアンテナ導体を用いるアンテナの共振周波数の波長のm/4倍離れた位置以外、かつ前記第2のアンテナ導体を用いるアンテナの共振周波数の波長のn/4倍離れた位置以外である請求項1から4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
m、nは自然数。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2013−12936(P2013−12936A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144755(P2011−144755)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】