説明

アンテナ

【課題】コイルの発熱が蓄積されることなく、電力伝送効率低下を抑制可能なアンテナを提供する。
【解決手段】本発明のアンテナは、コイルケース260と、前記コイルケース260に収納されるコイル体270と、前記コイルケース260に収納されると共に、前記コイル体270の共振周波数と異なる共振周波数を有するループコイル312と、前記ループコイル312に接続されたモーターと、前記モーターの回転軸に設けられるファンと、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムに用いられ、電力の受電又は送電を行うアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源コードなどを用いることなく、ワイヤレスで電力(電気エネルギー)を伝送する技術の開発が盛んとなっている。ワイヤレスで電力を伝送する方式の中でも、特に注目されている技術として、磁気共鳴方式と呼ばれるものがある。この磁気共鳴方式は2007年にマサチューセッツ工科大学の研究グループが提案したものであり、これに関連する技術は、例えば、特許文献1(特表2009−501510号公報)に開示されている。
【0003】
磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムは、送電側アンテナの共振周波数と、受電側アンテナの共振周波数とを同一とし、高いQ値(100以上)のアンテナを用いることで、送電側アンテナから受電側アンテナに対し、効率的にエネルギー伝達を行うものであり、電力伝送距離を数十cm〜数mとすることが可能であることが大きな特徴の一つである。
【0004】
上記のような磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムに用いるアンテナの具体的な構成についてもこれまでいくつか提案がされてきた。例えば、特許文献2(特開2010−73976号公報)には、ワイヤレスで給電回路から受電回路へ電力を送信するワイヤレス電力伝送装置の、前記給電回路及び受電回路にそれぞれ設けられる通信コイルの構造において、比誘電率が1よりも大きい材質のプリント基板と、前記プリント基板の第1の層に設けられ、少なくとも1ループをなす導電パターンで形成された一次コイルと、前記プリント基板の第2の層に設けられ、渦巻き形状をなす導電パターンで形成された共鳴コイルと、を備えることを特徴とするワイヤレス電力伝送装置の通信コイル構造が開示されている。
【特許文献1】特表2009−501510号公報
【特許文献2】特開2010−73976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなワイヤレス電力伝送システムでは、比較的周波数が高い交流電力が用いられるために、送電コイル或いは受電コイルがオーム損によって発熱すると共に、さらに発熱により電力伝送の効率が低下する。そこで、ワイヤレス電力伝送システムで用いる送電コイル、受電コイルを冷却する必要があるが、従来の技術ではコイルが冷却される構造とはなっておらず、コイルの発熱が蓄積されてしまい、電力伝送効率が低下する、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、請求項1に係る発明は、ケースと、前記ケースに収納されるコイルと、前記ケースに収納されると共に、前記コイルの共振周波数と異なる共振周波数を有するループコイルと、前記ループコイルに接続されたモーターと、前記モーターの回転軸に設けられるファンと、を有することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、ケースと、前記ケースに収納されるコイルと、前記ケースに収納されると共に、前記コイルの共振周波数と異なる共振周波数を有するループコイ
ルと、前記ループコイルに接続されたペルティエ素子と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電力伝送システムによれば、ループコイルで発生する起電力で回転するファンによって、コイルが冷却されるので、コイルの発熱が蓄積されることなく、電力伝送効率低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る電力伝送システムのブロック図である。
【図2】電力伝送システムのインバーター部を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電力伝送システムで用いる受電アンテナ201の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電力伝送システムで用いる受電アンテナ201による電力伝送の様子を示す断面の模式図である。
【図5】本発明の実施形態に係る受電アンテナ201に設けられる回路基板310に設けられる回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る電力伝送システムのブロック図である。
【0011】
本発明の電力伝送システムとしては、例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両への充電のためのシステムが想定されている。電力伝送システムは、上記のような車両に対して電力を非接触で伝送するため、当該車両を停車させることが可能な停車スペースに設けられる。車両充電用のスペースである当該停車スペースには、送電アンテナ105などが地中部に埋設されるような構成となっている。車両のユーザーはこの電力伝送システムが設けられている停車スペースに車両を停車させて、車両に搭載されている受電アンテナ201と、前記送電アンテナ105とを対向させることによって電力伝送システムからの電力を受電する。車両を停車スペースに停車させる際には、車両搭載の受電アンテナ201が、送電アンテナ105に対して最も伝送効率が良い位置関係となるようにする。
【0012】
電力伝送システムでは、電力伝送システム100側の送電アンテナ105から、受電側システム200側の受電アンテナ201へ効率的に電力を伝送する際、送電アンテナ105の共振周波数と、受電アンテナ201の共振周波数とを同一とすることで、送電側アンテナから受電側アンテナに対し、効率的にエネルギー伝達を行うようにする。
【0013】
電力伝送システム100におけるAC/DC変換部101は、入力される商用電源を一定の直流に変換するコンバータである。このAC/DC変換部101からの出力は高電圧発生部102において、所定の電圧に昇圧されたりする。この高電圧発生部102で生成される電圧の設定は主制御部110から制御可能となっている。
【0014】
インバーター部103は、高電圧発生部102から供給される高電圧から所定の交流電圧を生成して、整合器104に入力する。図2は電力伝送システムのインバーター部を示す図である。インバーター部103は、例えば図2に示すように、フルブリッジ方式で接続されたQA乃至QDからなる4つの電界効果トランジスタ(FET)によって構成されている。
【0015】
本実施形態においては、直列接続されたスイッチング素子QAとスイッチング素子QBの間の接続部T1と、直列接続されたスイッチング素子QCとスイッチング素子QDとの間の
接続部T2との間に整合器104が接続される構成となっており、スイッチング素子QA
とスイッチング素子QDがオンのとき、スイッチング素子QBとスイッチング素子QCがオ
フとされ、スイッチング素子QBとスイッチング素子QCがオンのとき、スイッチング素子QAとスイッチング素子QDがオフとされることで、接続部T1と接続部T2との間に矩形波の交流電圧を発生させる。なお、本実施形態においては、各スイッチング素子のスイッチングによって生成される矩形波の周波数の範囲は数100kHz〜数1000kHz程度である。
【0016】
上記のようなインバーター部103を構成するスイッチング素子QA乃至QDに対する駆動信号は主制御部110から入力されるようになっている。また、インバーター部103を駆動させるための周波数は主制御部110から制御することができるようになっている。
【0017】
整合器104は、所定の回路定数を有する受動素子から構成され、インバーター部103からの出力が入力される。そして、整合器104からの出力は送電アンテナ105に供給される。整合器104を構成する受動素子の回路定数は、主制御部110からの指令に基づいて調整することができるようになっている。主制御部110は、送電アンテナ105と受電アンテナ201とが共振するように整合器104に対する指令を行う。
【0018】
送電アンテナ105は、インダクタンス成分を有するコイルから構成されており、対向するようにして配置される車両搭載の受電アンテナ201と共鳴することで、送電アンテナ105から出力される電気エネルギーを受電アンテナ201に送ることができるようになっている。
【0019】
電力伝送システム100の主制御部110はCPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理部である。この主制御部110は、図示されている主制御部110と接続される各構成と協働するように動作する。
【0020】
また、通信部120は車両側の通信部220と無線通信を行い、車両との間でデータの送受を可能にする構成である。通信部120によって受信したデータは主制御部110に転送され、また、主制御部110は所定情報を通信部120を介して車両側に送信することができるようになっている。
【0021】
次に、車両側に設けられている構成について説明する。車両の受電側のシステムにおいて、受電アンテナ201は、送電アンテナ105と共鳴することによって、送電アンテナ105から出力される電気エネルギーを受電するものである。このような受電アンテナ201は、車両の底面部に取り付けられるようになっている。
【0022】
受電アンテナ201で受電された交流電力は、整流部202において整流され、整流された電力は充電制御部203を通してバッテリー204に蓄電されるようになっている。充電制御部203は主制御部210からの指令に基づいてバッテリー204の蓄電を制御する。また、充電制御部203はバッテリー204の残量管理なども行い得るように構成される。
【0023】
主制御部210はCPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理部である。この主制御部210は、図示されている主制御部210と接続される各構成と協働するように動作する。
【0024】
インターフェイス部230は、車両の運転席部に設けられ、ユーザー(運転者)に対し
所定の情報などを提供したり、或いは、ユーザーからの操作・入力を受け付けたりするものであり、表示装置、ボタン類、タッチパネル、スピーカーなどで構成されるものである。ユーザーによる所定の操作が実行されると、インターフェイス部230から操作データとして主制御部210に送られ処理される。また、ユーザーに所定の情報を提供する際には、主制御部210からインターフェイス部230に対して、所定情報を表示するための表示指示データが送信される。
【0025】
また、車両側の通信部220は送電側の通信部120と無線通信を行い、送電側のシステムとの間でデータの送受を可能にする構成である。通信部220によって受信したデータは主制御部210に転送され、また、主制御部210は所定情報を通信部220を介して送電システム側に送信することができるようになっている。
【0026】
電力伝送システムで、電力を受電しようとするユーザーは、上記のような送電側のシステムが設けられている停車スペースに車両を停車させ、インターフェイス部230から充電を実行する旨の入力を行う。これを受けた主制御部210は、充電制御部203からのバッテリー204の残量を取得し、バッテリー204の充電に必要な電力量を算出する。算出された電力量と送電を依頼する旨の情報は、車両側の通信部220から送電側のシステムの通信部120に送信される。これを受信した送電側システムの主制御部110は高電圧発生部102、インバーター部103、整合器104を制御することで、車両側に電力を伝送するようになっている。
【0027】
次に、以上のように構成される電力伝送システム100で用いるアンテナの具体的な構成について説明する。以下、受電アンテナ201に本発明の構成を採用した例について説明するが、本発明のアンテナは送電アンテナ105に対しても適用し得るものである。
【0028】
図3は本発明の実施形態に係る受電アンテナ201の分解斜視図であり、図4は本発明の実施形態に係る受電アンテナ201による電力伝送の様子を示す断面の模式図であり、図4における矢印は磁力線を模式的に示している。また図5は本発明の実施形態に係る受電アンテナ201に設けられる回路基板310に設けられる回路構成を示す図である。
【0029】
なお、以下の実施形態では、コイル体270として矩形平板状のものを例に説明するが、本発明のアンテナはこのような形状のコイルに限定されるものではない。例えば、コイル体270として円形平板状のものなども利用し得る。このようなコイル体270は、受電アンテナ201における磁気共鳴アンテナ部として機能する。この「磁気共鳴アンテナ部」は、コイル体270のインダクタンス成分のみならず、その浮游容量に基づくキャパシタンス成分、或いは意図的に追加したコンデンサに基づくキャパシタンス成分をも含むものである。
【0030】
コイルケース260は、受電アンテナ201のインダクタンス成分を有するコイル体270を収容するために用いられるものである。このコイルケース260は、例えばポリカーボネートなどの樹脂により構成される開口を有する箱体の形状をなしている。コイルケース260の矩形状の底板部261の各辺からは側板部262が、前記底板部261に対して垂直方向に延在するようにして設けられている。そして、コイルケース260の上方においては、側板部262に囲まれるような上方開口部263が構成されている。コイルケース260にパッケージされた受電アンテナ201はこの上方開口部263側で車両本体部に取り付けられる。コイルケース260を車両本体部に取り付けるためには、従来周知の任意の方法を用いることができる。なお、上方開口部263の周囲には、車両本体部への取り付け性を向上するために、フランジ部材などを設けるようにしても良い。
【0031】
コイル体270は、ガラスエポキシ製の矩形平板状の基材271と、この基材271上
に形成される渦巻き状の導電部272とから構成されている。渦巻き状をなす導電部272の内周側の第1端部273、及び外周側の第2端部274には導電線路(不図示)が電気接続される。これにより、受電アンテナ201によって受電した電力を整流部202へと導けるようになっている。このようなコイル体270はコイルケース260の矩形状の底板部261上に載置され、適当な固着手段によって底板部261上に固着される。
【0032】
磁性シールド体280は、中抜き部285を有する平板状の磁性部材である。この磁性シールド体280を構成するためには、比抵抗が大きく、透磁率が大きく、磁気ヒステリシスが小さいものが望ましく、例えばフェライトなどの磁性材料を用いることができる。磁性シールド体280は、コイルケース260に対して適当な手段により固着されることで、コイル体270の上方にある程度の空間を空けて配されるようになっている。このようなレイアウトにより、送電アンテナ105側で発生する磁力線は、磁性シールド体280を透過する率が高くなり、送電アンテナ105から受電アンテナ201への電力伝送において、車両本体部を構成する金属物による磁力線への影響が軽微となる。
【0033】
回路基板310には、ワンループのループコイル312と、このループコイル312中に直列接続された整流素子313、モーター315、及びループコイル312中に並列接続されたコンデンサ314とからなる回路311が設けられている。回路基板310上の回路311は、物理的には、積層方向からみてコイル体270の中抜き部275と重なるように配置されている。
【0034】
送電アンテナ105により生成される交流磁界により、ループコイル312中には起電力が発生する。整流素子313は、ループコイル312中で発生する起電力のうち一方向のみの電流をコンデンサ314とモーター315に流すことで、コンデンサ314に電荷が蓄積されると共に、モーター315を回転させる。コンデンサ314に蓄積された電荷は、先の起電力のうち他方向に電流が流されているときにおいても、モーター315を回転させるために利用される。モーター315に取り付けられたファン316は、コイル体270に送風するように構成されている。
【0035】
ループコイル312は、コイル体270の共振周波数と異なる共振周波数となるように構成されている。これにより、コイル体270から漏洩する磁界をループコイル312で消費することができ、アンテナ周囲における車両金属部などの温度上昇を抑制することが可能となる。
【0036】
このような本発明に係る受電アンテナ201によれば、ループコイル312で発生する起電力で回転するファン316によって、コイル体270が冷却されるので、コイルの発熱が蓄積されることなく、電力伝送効率低下を抑制することができる。
【0037】
また、コイルケース260の上方開口部263においては、前記上方開口部263を覆うような矩形平板状の金属体蓋部290が、シールド体280の上方に所定距離をおいて配されるようになっている。このような金属体蓋部290に用いる金属材料として任意のものを用いることとができるが、本実施形態においては、例えばアルミニウムを用いている。
【0038】
また、上記のような受電アンテナ201の構造は、電力伝送システム100を構成する送電側のアンテナにも適用されている。この場合、図4に示すように、送電アンテナ105は、受電アンテナ201と水平面に対して面対称(鏡像対称)となるような構造とされている。
【0039】
送電アンテナ105においても、受電側同様に、コイル体170がコイルケース160
に配され、これと所定距離離されて磁性シールド体180が設けられると共に、さらにその下方部に回路基板310が配され、金属体蓋部190によってコイルケース160が封止された構造とすることができる。
【0040】
以上、本発明に係る送電アンテナ、受電アンテナによれば、ループコイルで発生する起電力で回転するファンによって、コイルが冷却されるので、コイルの発熱が蓄積されることなく、電力伝送効率低下を抑制することができる。
【0041】
なお、以上で説明した実施形態においては、ループコイルで発生する起電力でモーターを回転し、この回転軸に取り付けられたファンを回し、ファンによって発生する気流によりコイル体を冷却する構成であったが、ループコイル中にペルティエ素子を接続し、ループコイルで発生する起電力でペルティエ素子を冷却させて、コイル体を冷却する構成とすることもできる。このような構成によっても、先の実施形態と同様の効果を享受することができる。
【符号の説明】
【0042】
100・・・電力伝送システム
101・・・AC/DC変換部
102・・・高電圧発生部
103・・・インバーター部
104・・・整合器
105・・・送電アンテナ
110・・・主制御部
120・・・通信部
160・・・コイルケース
170・・・コイル体
180・・・磁性シールド体
190・・・金属体蓋部
201・・・受電アンテナ
202・・・整流部
203・・・充電制御部
204・・・バッテリー
210・・・主制御部
220・・・通信部
230・・・インターフェイス部
260・・・コイルケース
261・・・底板部
262・・・側板部
263・・・(上方)開口部
270・・・コイル体
271・・・基材
272・・・導電部
273・・・第1端部
274・・・第2端部
280・・・磁性シールド体
285・・・中抜き部
290・・・金属体蓋部
310・・・回路基板
311・・・回路
312・・・ループコイル
313・・・整流素子
314・・・コンデンサ
315・・・モーター
316・・・ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースに収納されるコイルと、
前記ケースに収納されると共に、前記コイルの共振周波数と異なる共振周波数を有するループコイルと、
前記ループコイルに接続されたモーターと、
前記モーターの回転軸に設けられるファンと、を有することを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
ケースと、
前記ケースに収納されるコイルと、
前記ケースに収納されると共に、前記コイルの共振周波数と異なる共振周波数を有するループコイルと、
前記ループコイルに接続されたペルティエ素子と、を有することを特徴とするアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−210118(P2012−210118A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75211(P2011−75211)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】