アンドロゲンレセプターの小分子阻害剤
本発明は、テトラヒドロピルビニウム(THP)、その誘導体、ベンゾオキサゾール化合物、ならびにその誘導体を提供する。本発明は、テトラヒドロピルビニウム(THP)、その誘導体、ベンゾオキサゾール化合物、ならびにその誘導体を用いる方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互関係
本出願は、2008年4月24日に提出したUSSN61/047,559の優先権主張を請求するものであり、その全てを参照して本明細書に組み込む。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発のもとで成された発明の権利の記載
適用なし
【0003】
シーケンスリスト、表、またはコンパクトディスクにて提出されたコンピュータープログラムリスト等の参照
適用なし
【背景技術】
【0004】
本発明の背景
(i)前立腺癌(PCa)は、男性における癌罹患率および死亡率の主要要因であり、該アンドロゲンレセプター(AR)は第一の治療標的である。初期のPCaでは、抗アンドロゲン治療(AAT)は、最も一般的かつ効果的である。これは、1以上のGnRHアゴニスト(下垂体のシグナル伝達経路を抑制する)、アロマターゼ阻害剤(アンドロゲン産生を低下させる)、および競合的ARアンタゴニスト(ARを直接遮断する)、例えばヒドロキシ-フルタミド(OH−F)またはビカルタミド(BiC)の組合せから構成される。この方法は、通常、数年間作用するが、時間と共にアンドロゲン枯渇条件下において、腫瘍細胞は継続成長のためのメカニズムを誘起させる。大部分の再発性またはホルモン不応性の前立腺癌(HRPC)療法はそれでもなおAR媒介性のシグナル伝達経路に依存する。これには、ARタンパク質発現レベルの上方調節、他のホルモン(アンタゴニストを包含する)への応答におけるその活性を増加させるARの突然変異の獲得、またはAR活性を増加させるコアクチベータータンパク質の上方調節を挙げることができる。即ち、AR活性を遮断するための新規アプローチにより、AATの有効性を有意に拡張または増強させることができると思われる。これは、良好な競合的アンタゴニストを構成できる可能性があり、また製薬会社は既にこのアプローチに注力している。これは、新規抗アンドロゲンが、原発性および再発性のPCa双方の処置において相当な有用性を有することを暗示するものである。かかる抗アンドロゲンは、ARに直接結合する競合的アンタゴニストではないかもしれず、またことによるとARシグナル伝達経路の下方事象を阻害することにより作用できるかもしれない。従って、新規かつ強力な抗アンドロゲンが必要である。驚くべきことに、本発明は、かかる必要性およびその他の必要性を満たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(本発明の要旨)
一実施態様において、本発明は、式Iの化合物:
【化1】
(I)
[式中、各々R1は、独立して水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、-OR4、-SR4、NR4R5、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである。R2は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキル-OH、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである。R3は、所望により1〜3つのR6基により置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである。R4およびR5は、各々独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである。あるいは、R4およびR5は、それらが結合する窒素と一緒になって、5〜7員環および1〜3個のヘテロ原子(各々独立してN、OまたはS)を有する複素環を形成する。各々R6は、独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルまたはC1-6アルコキシである。Lは、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、C2-6アルキニレンまたはC3-6シクロアルキレンであるリンカーである。Xは、-N(R7)-、6-10員環を有するアリール環、ならびに5〜6員環および1〜3個のヘテロ原子(各々独立してN、OまたはS)を有するヘテロアリール環であって、該アリールおよび該ヘテロアリール環は、所望により1〜3つのR8基により各々置換される。R7は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである。各々R8は、独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルまたはC1-6アルコキシである。]を提供する。式Iの化合物には、その塩、水和物およびプロドラッグを包含する。
【0006】
第二の実施態様において、本発明は、式IIの化合物:
【化2】
(II)
[式中、R1、R3、R4、R5、R6、R7、R8、X およびLは、上記規定したとおりである;R2’は、電子対、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキル-OH、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルであり;およびYは、OまたはSである]を提供する。式IIの化合物には、その塩、水和物およびプロドラッグが含まれる。
【0007】
第三の実施態様において、本発明は、式Iの化合物および医薬許容し得る賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0008】
第四の実施態様において、本発明は、かかる処置の必要な患者に、治療上有効量の式Iの化合物または式IIを投与することにより、アンドロゲンレセプターを阻害する方法を提供する。
【0009】
第五の実施態様において、本発明は、テトラヒドロピルビニウム(THP)およびその誘導体、ベンゾオキサゾール化合物およびその誘導体を提供する。
【0010】
第六の実施態様において、本発明は、テトラヒドロピルビニウム(THP)およびその誘導体、ベンゾオキサゾール化合物およびその誘導体を用いる方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】化合物スクリーニング方法。AR構造変化を有する新規阻害剤を、FRETにより構造変化を測定するために従前使用されてきたCFPN末端およびYFPC-末端タグ化ARベクターを安定に発現するHEK−293(ATCC CRL 1573)から得た細胞系を作出することにより見出した。C−AR−Yを、LAPC4またはHEK293細胞系にて安定に発現した;同時に、HEK293細胞を、MMTV−ルシフェラーゼと共にネイティブARにてトランスフェクトした。細胞を、10nM ジヒドロテストステロン(DHT)および1040 FDA承認薬の一つの存在または非存在下で培養した。該スクリーンを、各条件の下で2回行い、両方の試験において活性を有する上位50の化合物を選抜した。該上位化合物の各々を、用量応答試験により詳細に評価し、「有効な」化合物を全てのアッセイにわたり比較した。この有効なヒットは、各スクリーニングのために最初に同定したヒットのおおよそ40%を占める。
【図2】ヒットの分析。1040 FDA承認薬を、3つの異なるアッセイ、即ちMMTV−ルシフェラーゼを発現するHEK293細胞を用いる転写を基にしたアッセイ、HEK293/C-AR−Y安定細胞とLAPC4/C-AR−Y安定細胞とを用いる構造を基にしたアッセイにて試験した。いくつかの化合物は、ARの構造変化に対する転写生成量に影響を与えた。LAPC4細胞は、試験化合物に対して感受性が最も低かった。カットオフ値を平均(DHTのみを用いて処理した細胞の複数のリプリケートにより決定した)から5−6の間の標準偏差(SD)に設定した場合に、この転写アッセイに対して高い選択性(<50ヒット)が認められた。同様の選択性を、3−4の間のSDにてHEK293/C-AR−Y細胞に対して認めたが、LAPC4/C-AR−Y細胞では、かかる効果を平均から2−3の間のSDで観察した。このスクリーニングで使用した転写アッセイは、Z−ファクター=0.6を示し、これに対してLAPC4 FRET アッセイについては0.6、ならびにHEK 293 FRET アッセイについては0.5を示した(Zhang、J.H.、T.D. Chung、and K.R. Oldenburg、A Simple Statistical Parameter for Use in Evaluation and Validation of High Throughput Screening Assay. J Biomol Screen、1999.4(2): p.67-73)。
【図3】図3.一次スクリーンにおけるヒットの特徴。(A)一次アッセイにおいて評点したヒットを、2回の読み取り値の平均に基づいた有効性に従ってランク付けを行い、各アッセイから得た上位50個を、別の2つと比較した。各ケースにおいて、いくつかの化合物はアッセイ間で共通しており、大部分のヒットは特定の系に特有であった。(B)有効なヒットを、使用した元のアッセイにおいて詳細な用量応答により決定し、薬理効果を提示した化合物のみを計測した。次いで、これらのヒットを、用量応答を用いて別のスクリーニングアッセイと交差比較した。この二次分析では、いずれか一つのアッセイから得た大多数のヒットは、別のアッセイ系においても有効であった。
【図4】図4. ピルビニウムパモエート(PP)は、塩化ピルビニウム(PCl)に対して同じ応答性を示した。アニオン交換を使用して、該パモエート塩を塩化物イオンで置換した。得られる化合物、即ちPClは、LAPC4細胞においてPSAレポーター活性を阻害する際に、親化合物に対する同一の用量応答を示した。
【図5】図5.PPおよびHHは、競合的アンタゴニストとは異なりDHT誘発性遺伝子発現を阻害する。PSAルシフェラーゼ・レポーターにより一過的にトランスフェクトしたLNCaP細胞をOH−F、PPおよびHHに暴露した。DHTを漸増した。OH−Fは、競合的アンタゴニストと一致する改変したDHT用量応答をもたらすが、PPおよびHHは非競合的アンタゴニストと一致するパターンを示した。
【図6】PPおよびHHは、アンドロゲン誘導性の細胞増殖を阻害する。PP、HH、およびBiCを、その能力について、いくつかの培養した細胞系:LNCaP、LAPC4、LN-AR(アンドロゲン独立成長を示す系統)、およびHEK293細胞においてアンドロゲン依存型および独立型の成長を阻害することを比較した。PPおよびHHは、LNCaP細胞において増殖阻害特性を各々示したが、HHはLAPC4細胞において有効ではなかった。いずれの化合物も、HEK293細胞の非特異的成長阻害を示さなかった。重要な点は、PPが「ホルモン不応性」のLN-AR細胞の成長を阻害したことである。アスタリスク(*)=p<.005.
【図7】図7.PPはマウスの前立腺サイズを相乗的に低下させる。9匹の雄マウスのコホートを、4週間、BiC(100mg/kg)のPO経管栄養、PP(1mg/kg)のIP注射、または組合せにより処置した。ポジティブコントロールとして、9匹のマウスを、4週間去勢により処置した。前立腺を収集して湿重量を決定した。PP単独では、前立腺サイズを有意に低下しなかった。BiC処置は、前立腺を35%重量低下させ、PP:BiCの組合せは63重量%(p<.0005、t検定)低下させた。これは、PPの相乗効果を示唆している。コントロール(cntrl):非処理マウス;BiC:ビカルタミド;PP:ピルビニウムパモエート;キャスト(cast):去勢処置。エラーバーは平均値の標準偏差(S.E.M.)を示す。
【図8】図8.PPは、前立腺中のアンドロゲン依存性遺伝子発現を抑制し、BiC活性を増強する。全RNAをインビボでのPPを試験するために使用した9匹のマウスのコホートの前立腺から抽出した。qRT−PCRを行い、5匹のアンドロゲン誘導性遺伝子の遺伝子発現レベルを評価した。遺伝子発現レベルを、RPL19、アンドロゲン非応答性遺伝子との比較にて表した。PPは、全ての症例において遺伝子発現を有意に抑制し、一つの例外(TMPRSS2)を除いて、各処置単独により最大に抑制することができるBiCの効果を増強した。コントロール:非処置;BiC:ビカルタミド;PP:ピルビニウムパモエート;キャスト(cast):去勢処置。
【図9】図9.アンドロゲンレセプターの阻害剤。
【図10】図10.アンドロゲンレセプターの阻害剤。
【図11】図11.BiC、PP、THP+BiC、または去勢による処置後の前立腺湿重量の変化。
【図12】図12.THP、BiC、THP+BiC、または去勢による処置の後のマウスの背部前立腺の組織学。
【図13】図13.アンドロゲン調節遺伝子 TMPRSS2 プロバスチン、およびfkbp51の定量的PCR。
【図14】図14.LAPC4細胞におけるAR転写に対するTHPの有効性。
【図15】図15.LAPC4細胞におけるAR転写に対するTHP+BiCの相乗効果。
【図16】図16.LAPC4細胞におけるPSA-ルシフェラーゼAR−反応性プロモーターに対するTHPおよびSHPの有効性。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の詳細な説明)
II.序論
本発明は、治療上有効量の式Iの化合物:
【化3】
(I)
または、式IIの化合物:
【化4】
(II)
を、かかる処置の必要な患者に投与することを含む、アンドロゲンレセプターを阻害する方法を提供する。
【0013】
本発明の化合物は、アンドロゲンレセプターのフォールディングを阻害する、即ちレセプター活性化を阻害すると考えられる。本発明の化合物を使用して、アンドロゲンレセプターのフォールディングに関与するあらゆる疾患を処置することができる。かかる処置が必要な患者とは、多くの場合、前立腺癌、とりわけ原発性およびホルモン不応性の前立腺癌、卵巣癌、肝細胞癌、尋常性座瘡、子宮内膜症、黒色表皮症、多毛症、乳癌、性的早熟、多嚢胞性卵巣症候群、良性前立腺過形成、脱毛症(例えば、アンドロゲン依存性脱毛症)、多毛症および性異常/性的倒錯に罹患している。
【0014】
本発明の化合物を使用して、他の核性レセプターを阻害し、関連する疾患状態を処置することができる。PPARγのレセプター活性化を本発明の化合物を用いて阻害でき、これにより疾患状態、例えば、インスリン耐性、糖尿病および脂肪異栄養症、とりわけコレステロール疾患などを処置することができる。本発明の化合物は、エストロゲンレセプターαおよびβ、例えば、乳癌、大腸癌、卵巣癌および子宮内膜癌、ならびに代謝調節に関連した疾患状態を処置する際に有用である。本発明の化合物により処置することができる他の疾患状態には、甲状腺ホルモンレセプターと関連した疾患、例えば、甲状腺および心臓疾患が挙げられる。かかる化合物を使用して、グルココルチコイドレセプターの阻害を増加させることもでき、これを様々な疾患の免疫抑制に使用できる。本発明の化合物は、妊娠の中断をひきおこすプロゲステロンレセプターを阻害することもできる。
【0015】
III.定義
本明細書において使用したとおり、「投与する」とは、経口投与、座剤としての投与、局所接触投与(topical contact)、非経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、病巣内投与、経鼻投与または皮下投与、髄腔内投与、または遅延放出型装置、例えば患者へのミニ浸透圧ポンプの移植をいう。
【0016】
本明細書において使用したとおり、用語「アルキル」とは、提示した炭素原子の数を有する、直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族基をいう。例えば、C1-C6アルキルには、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソ−プロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルなどを含むが、これらに限定するものではない。
【0017】
有機基または化合物に関して上記および後記に示した用語「低級」とは、7以下の、好ましくは4以下の、および(分枝された)1または2個の炭素原子により分枝され得るか、または分枝され得ない化合物またはラジカルを規定する。
【0018】
アルキルおよびヘテロアルキル基(とりわけ、アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルといわれる基を含む)としての置換基は、次の基:0〜(2m’+1)(式中、m’は、かかる基中の炭素原子の総数である)の範囲にある数にて、R'、-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R''、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R''R'''、OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、NRC(NR'R'')=NR'''、-NH-C(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR'、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-CNおよび-NO、2から選択される様々な基であってよい。R'、R''およびR'''は、各々独立して水素、非置換(C1-C8)アルキルおよびヘテロアルキル、非置換アリール、1-3個のハロゲンにより置換されたアリール、非置換アルキル、アルコキシまたはチオアルコキシ基、またはアリール-(C1-C4)アルキル基をいう。R'およびR''が同一の窒素原子と結合した場合、それらは、窒素原子と共に5、6、または7員環を形成できる。例えば、-NR'R''には、1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルが含まれることを意味する。置換基に関する上記議論から、当業者は、置換されたアルキルとは、例えばハロアルキル(例えば、-CF3および-CH2CF3)およびアシル(例えば、-C(O)CH3、-C(O)CF3、-C(O)CH2OCH3)などの基を含むと理解される。好ましくは、置換されたアルキルおよびヘテロアルキル基は1〜4個の置換基;より好ましくは、1、2または3つの置換基を有する。本発明により好ましくかつ意図される特例は、パーハロアルキル基(例えば、ペンタフルオロエチルなど)である。
【0019】
あるいは、R'、R''、R'''およびR''''は、各々好ましくは独立して水素、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、例えば、1-3つのハロゲンにより置換されたアリール、置換または非置換のアルキル、アルコキシまたはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基である。本発明の化合物には、1以上のR基が含まれる場合、例えば、R基の各々は、1以上のR'、R''、R'''およびR''''の基が存在する場合に各々R'、R''、R'''およびR''''基から独立して選択される。R'およびR''が同一の窒素原子に結合する場合には、それらは窒素原子と一緒になり5、6、または7員環を形成できる。例えば、-NR'R''には、1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0020】
本明細書において使用したとおり、用語「アルキレン」は、少なくとも2つの他の基を連結するアルキル基、すなわち1〜6個の炭素原子による二価の炭化水素基をいう。アルキルに関して、該アルキレン基は直鎖であるか、または分枝であり得る。例えば、直鎖アルキレンは、-(CH2)n-(式中、nは、1、2、3、4、5または6である)の二価の基であり得る。アルキレン基には、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレンが挙げられるが、これらに限定するものではない。同様に、「アルケニレン」、「アルキニレン」および「シクロアルキレン」は、アルケニル、アルキニルおよびシクロアルキル(範囲内を参照されたい)の二価の基である。
【0021】
本明細書において使用したとおり、用語「アルケニル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する2〜6個の炭素原子の直鎖または分枝鎖炭化水素をいう。アルケニル基の例示には、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ブタジエニル、ペンテニルまたはヘキサジエニルを含むが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書において使用したとおり、用語「アルキニル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する2〜6個の炭素の直鎖または分枝鎖炭化水素をいう。アルキニル基の例示には、アセチレン、プロピニルまたはブチニルを含むが、これらに限定するものではない。
【0023】
本明細書において使用したとおり、用語「アルコキシ」とは、酸素原子を包含するアルキル、例えば、メトキシ、エトキシなどをいう。「ハロ置換アルコキシ」とは、アルコキシとして定義されるとおりであるが、ここでこの中の数個または全ての水素原子がハロゲン原子により置換されている。例えば、ハロ置換アルコキシには、トリフルオロメトキシなどが含まれる。
【0024】
本明細書において使用したとおり、用語「シクロアルキル」とは、飽和または一部不飽和の単環式、縮合二環式、あるいは3〜12個の環原子(即ち、環員;すなわち、原子が直接結合して、該環骨格を形成する、例えばシクロヘキシル基中の6つの炭素)または提示した原子の数を併せて含有する架橋多環式環をいう。例えば、C3-8シクロアルキルには、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロオクチルまでが挙げられる。
【0025】
本明細書において使用したとおり、用語「ヘテロシクロアルキル」とは、3員環〜約20員環および1〜約5つのヘテロ原子、例えばN、OおよびSを有する環系をいう。別のヘテロ原子もまた有用であり得て、とりわけB、Al、SiおよびPを含むが、これに限定するものではない。該ヘテロ原子はまた酸化されてもよく、例えばS(O)-およびS(O)2であるが、これに限定するものではない。例えば、ヘテロシクロアルキルには、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、モルホリノ、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、インドリニル、キヌクリジニルおよび1,4-ジオキサ-8-アザ-スピロ[4.5]デカ-8-イルが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0026】
本明細書において使用したとおり、用語「アリール」とは、単環式または縮合二環式、三環式またはそれ以上、6〜16個の環炭素原子を併せて含有する芳香環をいう。例えば、アリールは、フェニル、ベンジルまたはナフチル、好ましくはフェニルであり得る。「アリーレン」は、アリール基から得られる二価の基を意味する。アリール基は、アルキル、アルコキシ、アリール、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、アミノ-アルキル、トリフルオロメチル、アルキレンジオキシ、およびオキシ-C2-C3-アルキレン;または1-または2-ナフチル;または1-または2-フェナントレニルから選択される1、2または3つの基により1、2または3置換され得る。「アルキレンジオキシ」は、2つの隣接するフェニルの炭素原子と結合した二価の置換基であり、例えばメチレンジオキシまたはエチレンジオキシである。「オキシ-C2-C3-アルキレン」は、またフェニルの2つの隣接する炭素原子と結合した二価の置換基、例えば、オキシエチレンまたはオキシプロピレンである。オキシ-C2-C3-アルキレン-フェニルの例示は、2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-イルである。
【0027】
好ましいアリール基には、ナフチル、フェニル、あるいはアルコキシ、フェニル、ハロゲン、アルキル、またはトリフルオロメチルにより一または二置換されたフェニル;より好ましくは、フェニル、あるいはアルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルにより一または二置換されたフェニル;ならびにフェニルが挙げられる。
【0028】
Rとしての置換フェニル基の例示は、例えば、4-クロロフェン-1-イル、3,4-ジクロロフェン-1-イル、4-メトキシフェン-1-イル、4-メチルフェン-1-イル、4-アミノメチルフェン-1-イル、4-メトキシエチルアミノメチルフェン-1-イル、4-ヒドロキシエチルアミノメチルフェン-1-イル、4-ヒドロキシエチル-(メチル)-アミノメチルフェン-1-イル、3-アミノメチルフェン-1-イル、4-N-アセチルアミノメチルフェン-1-イル、4-アミノフェン-1-イル、3-アミノフェン-1-イル、2-アミノフェン-1-イル、4-フェニル-フェン-1-イル、4-(イミダゾール-1-イル)-フェン-イル、4-(イミダゾール-1-イルメチル)-フェン-1-イル、4-(ホルホリン-1-イル)-フェン-1-イル、4-(ホルホリン-1-イルメチル)-フェン-1-イル、4-(2-メトキシエチルアミノメチル)-フェン-1-イルおよび4-(ピロリジン-1-イルメチル)-フェン-1-イル、4-(チオフェニル)-フェン-1-イル、4-(3-チオフェニル)-フェン-1-イル、4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-フェン-1-イル、および4-(ピペリジニル)-フェニルおよび4-(ピリジニル)-フェニルである。
【0029】
同様に、アリールおよびへテロアリール基としての他の置換基は、変更され、また芳香環系での0〜全数の広い価数の範囲にて、−ハロゲン、-OR'、-OC(O)R'、-NR'R''、-SR'、-R'、-CN、-NO2、-CO2R'、CONR'R''、C(O)R'、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR''C(O)2R'、-NR'-C(O)NR''R'''、NHC(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR'、-S(O)R'、-S(O)2R'、S(O)2NR'R''、-N3、-CH(Ph)2、パーフルオロ(C1-C4)アルコキシ、ならびにパーフルオロ(C1-C4)アルキルから選択される;ならびに、式中R'、R''およびR'''は、水素、(C1−C8)アルキルおよびヘテロアルキル、非置換アリールおよびへテロアリール、(非置換アリール)-(C1-C4)アルキル、および(非置換アリール)オキシ-(C1-C4)アルキルから独立して選択される。
【0030】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接した原子での2つの置換基は、所望により式-T−C(O)-(CH2)q-U-(式中、TおよびUは、独立して-NH-、-O-、-CH2-または単結合、およびqは0〜2の整数である)の置換基により置換されてもよく、あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子での2つの置換基は、所望により式−A−(CH2)r-B−(式中、AおよびBは独立して-CH2-、-O-、-NH-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR'-または単結合であり、rは1〜3の整数である)の置換基により置換されてもよい。そのように形成されたこの新規環の単結合の一つは、所望により二重結合により置換されてもよい。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子上の該置換基の2つは、所望により式−(CH2)s-X-(CH2)t-の置換基(式中、sおよびtは、独立して0〜3の整数であり、Xは-O-、-NR'-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、または-S(O)2NR'-である)により置換されてもよい。-NR'-および-S(O)2NR'-における置換基R'は、水素または非置換(C1-C6)アルキルから選択される。
【0031】
本明細書において使用したとおり、用語「ヘテロアリール」は、単環式または縮合二環式または5〜16個の環原子(ここで、1〜4個の環原子は、ヘテロ原子、即ち各N、OまたはSである)を一緒に含有する三環式芳香環(即ち、環員;即ち、原子が直接連結して環の骨格を形成する、例えば、2-ピリジル基中の5個の炭素と1個の窒素)をいう。例えば、ヘテロアリールには、ピリジル、インドリル、インダゾリル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、フラニル、ピロリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チエニル、あるいはアルキル、ニトロ、またはハロゲンにより置換されたその他の基(特に、一または二置換された基)が挙げられる。ピリジルは、2-、3-または4-ピリジル、有利には2-または3-ピリジルを表す。チエニルは、2-または3-チエニルを表す。キノリニルは、好ましくは2-、3-または4-キノリニルを表す。イソキノリニルは、好ましくは1-、3-または4-イソキノリニルを表す。ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニルは、好ましくは3-ベンゾピラニルまたは3-ベンゾチオピラニルを各々表す。チアゾリルは、好ましくは2-または4-チアゾリルを表し、最も好ましくは4-チアゾリルを表す。トリアゾリルは、好ましくは1-、2-または5-(1,2,4-トリアゾリル)を表す。テトラゾリルは、好ましくは5-テトラゾリルを表す。
【0032】
好ましくは、ヘテロアリールは、ピリジル、インドリル、キノリニル、ピロリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チエニル、フラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、イソキノリニル、ベンゾチエニル、オキサゾリル、インダゾリル、あるいはアルキル、ニトロ、またはハロゲンにより置換された基(特に、一または二置換された基)のいずれかが挙げられる。
【0033】
本明細書において使用したとおり、用語「アンドロゲンレセプター」は、アンドロゲン、例えば、テストステロンおよびジヒドロテストステロンを特異的に結合する核性レセプタースーパーファミリーの細胞内ステロイドレセプターをいう。
【0034】
本明細書において使用したとおり、用語「抗アンドロゲン」は、身体における正常な反応組織に対して、アンドロゲン、即ち男性ホルモンの生物学的効果を予防または阻害することができるホルモンレセプターアンタゴニスト化合物の一群をいう。抗アンドロゲンは、通常、好適なレセプターをブロックし、細胞内レセプター上で結合部位に競合し、そしてアンドロゲンシグナル伝達経路を妨害することにより作用する。式IおよびIIの化合物に加えて、抗アンドロゲンには、クマリン、ビカルタミド、フルタミド、ヒドロキシフルタミド、ニルタミド、スピオノラクトン、酢酸シプロテロン、ケトコナゾール、フィナステリド、デュタステライド、ハルマン、ノルハルマン、ハルミン、ハルマリン、テトラヒドロハルミン、ハルモール、ハルマロール、エチルハルモール、n−ブチルハルモールおよび他のβ−カルボリン誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
抗アンドロゲンは、重度の男性性疾患、例えば、性行動異常(過剰な性的欲求)および性的逸脱、特に性的倒錯を処置するため、さらに前立腺癌において抗腫瘍剤、苦痛緩和剤、アジュバントまたはネオアジュバンドホルモン療法として使用するために適応されることが多い。抗アンドロゲンは、良性前立腺過形成(前立腺肥大)、尋常性座瘡、アンドロゲン性の脱毛症(男性型のはげ頭)、および多毛症(過剰な毛髪の成長)の処置にも使用され得る。抗アンドロゲンは、性転換治療を受けている性転換女性の場合に男性化を防止または無効とする目的で、時には男性用避妊薬(male contraceptive agent)として使用されることもあり、そしてテストステロン低下に関連する症候、例えば去勢後のホットフラッシュを防止するために使用される。抗アンドロゲンにより処理できるその他の症状は、前立腺癌、とりわけ原発性およびホルモン不応性前立腺癌、卵巣癌、肝細胞 癌、尋常性座瘡、子宮内膜症、黒色表皮症、多毛症、乳癌、性的早熟、多嚢胞性卵巣症候群、良性前立腺過形成、脱毛症(例えば、アンドロゲン依存性脱毛症)、多毛症および性行動異常/性的倒錯である。
【0036】
本明細書において使用したとおり、用語「活性薬剤の組合せ」とは、少なくとも2以上の活性薬剤の組合せをいう。
【0037】
本明細書において使用したとおり、用語「対イオン」とは、電気的な中性を維持するためにイオン種を随伴するイオンをいう。対イオンは、原子状態であってもよく、例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、または金属性対イオンであってもよい。対イオンは、分子であってもよい、例えば、酢酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩およびエンボン酸塩(パモエート)である。対イオンは、正または負に電荷を帯びていてもよい。本発明の対イオンは負に電荷を帯びている。さらに、対イオンは、1、例えば2以上の電荷を持ち得る。当業者には、その他の対イオンが本発明において有用であることは理解されよう。
【0038】
本明細書において使用したとおり、用語「ホルモン療法」とは、医療処置においてホルモンを使用することをいい、さらにホルモン産生の阻害、例えばホルモンに対する直接的な競合剤、例えば抗アンドロゲンの使用をいう。
【0039】
本明細書において使用したとおり、用語「水和物」とは、少なくとも1つの水分子と錯体を形成する化合物をいう。本発明の化合物は、1〜10の水分子と錯体化することができる。
【0040】
本明細書において使用したとおり、用語「阻害する」とは、特定の作用または機能を、部分的または全体的に防止する化合物あるいは部分的または全体的に阻害する方法をいう。
【0041】
本明細書において使用したとおり、用語「LnRHアゴニスト」とは、黄体形成放出ホルモンレセプターと結合する化合物または生物学的分子をいう。
【0042】
本明細書において使用したとおり、用語「必要のある患者」とは、前立腺癌、多嚢胞性卵巣症候群、良性前立腺過形成、脱毛症および多毛症に罹患している患者をいう。必要のある患者が罹患している他の症状には、卵巣癌、肝細胞癌、尋常性座瘡、子宮内膜症、黒色表皮症、多毛症、乳癌、性的早熟および性行動異常/性的倒錯を含むが、これらに限定するものではない。抗アンドロゲンにより処置できる他の症状に罹患している患者も、本発明の方法により処置できる。本発明の方法を用いて処置できる患者は、動物、例えば哺乳動物、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどを含むが、これに限定するものではない。特定の実施態様において、該患者はヒトである。
【0043】
本明細書において使用したとおり、用語「プロドラッグ」とは、該プロドラッグが哺乳類対象に投与された場合に、本発明の方法に関する活性薬剤を放出できる共有結合した担体をいう。活性成分の放出はインビボでおこる。プロドラッグを、当業者には既知の技術により製造することができる。これらの技術は、一般的に所定の化合物中の好適な官能基を修飾する。しかし、これらの修飾された官能基は、通常の操作によるかまたはインビボにて元々の官能基を生成する。本発明の活性薬剤のプロドラッグには、プロドラッグ中でヒドロキシ基、アミジノ基、グアニジノ基、アミノ基、カルボキシル基または類似の基が修飾されたものも含む。
【0044】
本明細書において使用したとおり、用語「塩」とは、本発明の方法において使用した化合物の酸または塩基性塩をいう。医薬上許容される塩の代表的な例は、無機酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸など)の塩、有機酸(酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸など)の塩、4級アンモニウム(ヨウ化メチル、ヨウ化エチルなど)塩である。該医薬上許容される塩とは非毒性であると理解されよう。適切な医薬上許容される塩に対するさらなる情報は、「Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985」に見出すことができ、またこれを引用して本明細書の一部に組み込む。
【0045】
本発明の塩基性化合物の医薬上許容される塩は、酸、例えば無機酸、有機カルボン酸および有機スルホン酸、とりわけ塩酸、メタンスルホン酸、マレイン酸と共に形成した塩であり、塩基性基(例えば、ピリジル)を提供して、該構造の一部を構成することもできる。
【0046】
該化合物の中性形態を、該塩を塩基または酸と接触させることにより、また従来方法において親化合物を単離することにより生成させることができる。該化合物の親形態は、特定の物理的特性、例えば極性溶媒中の溶解性において様々な塩形態とは異なるが、一方で該塩は本発明の目的のためには本化合物の親形態と等価である。
【0047】
本明細書において使用したとおり、「治療上有効な量または用量」または「治療上十分な量または用量」または「有効なまたは十分な量または用量」とは、治療効果をもたらす一回用量をいい、そのために投与される量をいう。正確な用量は、処置の目的により変化し、良く知られた技術を用いて当業者により確認できる(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3、1992); Lloyd, The Art、Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); Pickar, Dosage Calculations (1999); and Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2003, Gennaro、Ed., Lippincott, Williams & Wilkins)を参照されたい。感作細胞では、治療上有効な用量は、非感作細胞のための従来の治療上有効な用量よりも低いことがおおい。
【0048】
本明細書において使用したとおり、「処置する」、「処置すること」および「処置」とは、処置における成功に関するあらゆる兆候、あるいは損傷、病理学、症状、または症候(例えば、痛み)、とりわけあらゆる主観的または客観的パラメーターの改善、例えば軽減;緩和;症候の減退または患者に対する該兆候、損傷、病理学または症状をより許容できる状態とすること;兆候または症状の頻度または持続を低下させること;または、ある状況において、症状または兆候の発症を予防することをいう。兆候の処置または改善は、任意の主観的または客観的パラメーター、例えば健康診断の結果を基にしてもよい。
【0049】
III.アンドロゲンレセプターを阻害する方法
(i)本発明は、かかる処置の必要な患者に、治療上有効量の式I、式IIの化合物または図9および図10に示した化合物を投与することにより、アンドロゲンレセプターを阻害する方法を提供する。本発明の方法において有用な化合物は、式Iの化合物および式IIの化合物を含む:
【化5】
(I)
【化6】
(II)
[式中、各々R1は、独立して水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、-OR4、-SR4、NR4R5、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである。
R2は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキル-OH、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである。R2’は、電子対、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキル-OH、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである。R3は、所望により1〜3つのR6基により置換されていてもよいシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである。R4およびR5は、各々独立して水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである。あるいは、R4およびR5は、それらが結合する窒素と一緒になって、5〜7員環および1〜3個のヘテロ原子、即ち各々独立してN、OまたはSを有する複素環を形成する。R6は、各々独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルまたはC1-6アルコキシである。Lは、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、C2-6アルキニレンまたはC3-6シクロアルキレンのリンカーである。Xは、-N(R7)-、6-10員環を有するアリール環、ならびに5〜6員環および1〜3個のヘテロ原子、即ち各々独立してN、OまたはSを有するヘテロアリール環であり、ここで該アリールおよび該ヘテロアリール環は、所望により各々1〜3つのR8基により置換される。R7は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである。各々R8は、独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルまたはC1-6アルコキシである。Yは、OまたはSである。式IおよびIIの化合物には、その塩、水和物およびプロドラッグが含まれる。式Iの化合物を投与することで、該方法により、アンドロゲンレセプターが阻害される。
【0050】
式IおよびIIの化合物のうちのいくつかの化合物は、既に知られている。式IおよびIIのその他の化合物は、新規化合物である。式IおよびIIの化合物は、他の抗アンドロゲン化合物、例えば、クマリン、ビカルタミド、フルタミド、ヒドロキシフルタミド、ニルタミド、スピオノラクトン、酢酸シプロテロン、ケトコナゾール、フィナステリド、デュタステライド、ハルマン、ハルミン、ハルマリン、テトラヒドロハルミン、ハルモール、ハルマロール、ハルミン酸、ハルミン酸メチルエステル、ハルミリン酸(harmilinic acid)、ハルマンアミド、アセチルノルハルミン、エチルハルモール、n-ブチルハルモールおよび他のβ−カルボリン誘導体と組合せることもできる。
【0051】
本発明の化合物は、アンドロゲンレセプターのホールディングを阻害すると考えられる、即ちレセプター活性化を阻害すると考えられる。かかる処置が必要な患者は、前立腺癌、とりわけ、原発性およびホルモン不応性前立腺癌、卵巣癌、肝細胞癌、尋常性座瘡、子宮内膜症、黒色表皮症、多毛症、乳癌、性的早熟、多嚢胞性卵巣症候群、良性前立腺過形成、脱毛症(例えば、アンドロゲン依存性脱毛症)、多毛症および性行動異常/性的倒錯に罹患していることがおおい。他の疾患の症状は、本発明の方法を用いて処置することができる。
【0052】
本発明の化合物は、アンドロゲンレセプターのホールディングを阻害すると考えられる、即ち、レセプター活性化を阻害すると考えられる。かかる処置が必要な患者は、前立腺癌、とりわけ原発性およびホルモン不応性前立腺癌、卵巣癌、肝細胞 癌、尋常性座瘡、子宮内膜症、黒色表皮症、多毛症、乳癌、性的早熟、多嚢胞性卵巣症候群、良性前立腺過形成、脱毛症(例えば、アンドロゲン依存性脱毛症)、多毛症および性行動異常/性的倒錯に罹患していることがおおい。他の疾患状態は、本発明の方法を用いて処置することができる。
【0053】
別の実施態様において、本発明の方法は、本発明の化合物または組成物の局所投与により脱毛症を処置する。
【0054】
別の実施態様において、式Iおよび式IIの化合物は、ホルモン療法のための化合物が抗アンドロゲンまたはLnRHアゴニストである場合に、ホルモン療法と共に投与される。いくつかの実施態様において、該化合物は別々に投与される。別の実施態様において、該化合物は混合される。いくつかの別の実施態様において、該化合物は同時に投与される。さらに別の実施態様において、該化合物は、様々な時点で投与される。
【0055】
いくつかの別の実施態様において、式Iおよび式IIの化合物は、治療上有効量のドセタキセル(タキソール)、パクリタキセル(タキソテール)、ビカルタミド、フルタミド、ヒドロキシフルタミド、ニルタミド、スピオノラクトン、酢酸シプロテロン、ケトコナゾール、フィナステライドまたはデュタステライドと組合せて投与される。別の実施態様において、式Iおよび式IIの化合物は、治療上有効な量のクマリンと組み合わせて投与される。
【0056】
IV.アンドロゲンレセプターを阻害するための化合物
本発明において有用な化合物は、アンドロゲンレセプターを阻害するものである。有用な化合物は、下記に例示したアッセイ方法を用いて同定され得る。これらの化合物は、市販購入し得るか、または当業者には既知の方法を用いて合成され得る。
【0057】
いくつかの実施態様において、本発明の方法において有用な化合物は、式Iの化合物を含む:
【化7】
(I)
[式中、各々R1は、独立して水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、-OR4、-SR4、NR4R5、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである。R2は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキル-OH、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである。R3は、所望により1〜3つのR6基により置換された、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである。R4およびR5は、各々独立して水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである。あるいは、R4およびR5は、それらに結合する窒素と一緒になって、5〜7員環および1〜3個のヘテロ原子、即ち各々独立してN、OまたはSを有する複素環を形成する。各々R6は、独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルまたはC1-6アルコキシである。Lは、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、C2-6アルキニレンまたはC3-6シクロアルキレンのリンカーである。Xは、-N(R7)-、6-10員環を有するアリール環、ならびに5〜6員環および1〜3個のヘテロ原子、即ち各々独立してN、OまたはSを有するヘテロアリール環であり、ここで該アリールおよび該ヘテロアリール環は、各々所望により1〜3つのR8基により置換される。R7は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである。各々R8は、独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルまたはC1-6アルコキシである。式Iの化合物には、その塩、水和物およびプロドラッグが含まれる。
【0058】
いくつかの実施態様において、Lはエチレン、エテニレンまたはシクロプロピレンである。
【0059】
いくつかの別の実施態様において、本発明の化合物は、式Iaの化合物を含む:
【化8】
(Ia)。
【0060】
別の実施態様において、Xはヘテロアリールである。さらに別の実施態様において、Xはピロールである。さらに別の実施態様において、Xはアリールである。さらにまた別の実施態様において、該化合物は、下記の化合物であり得る:
【化9】
または
【化10】
【0061】
別の実施態様において、本発明の化合物は、下記式の化合物を含む:
【化11】
[式中、R1は、-NR4R5であり、R4およびR5がそれらに結合する窒素原子と一緒になって、5〜7員環および1〜3個のヘテロ原子、即ち各々独立してN、OまたはSを有する複素環を形成するようなものである。R3はアリールである。Xはヘテロアリールである。
【0062】
いくつかの実施態様において、本発明の化合物は式Ibの化合物を含む:
【化12】
【0063】
別の実施態様において、式Ibの化合物は次のものである:
【化13】
。
【0064】
いくつかの別の実施態様において、本発明の化合物は、式Icの化合物を含む:
【化14】
(Ic)。
【0065】
別の実施態様において、本発明の化合物は、式Idの化合物を含む:
【化15】
(Id)。
【0066】
別の実施態様において、式Iの化合物の塩形態は、パモエート、クロライド、ブロミド、スクシネート、マレエートまたはアセテートの対イオンを含む。
【0067】
別の実施態様において、本発明の方法において有用な化合物は、式IIの化合物を含む:
【化16】
(II)
[式中、R1、R3、R4、R5、R6、R7、R8、XおよびLは、上記に規定したとおりである;R2’は、電子対、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキル-OH、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである;ならびにYは、OまたはSである。式IIの化合物は、その塩、水和物およびプロドラッグを含む。
【0068】
いくつかの実施態様において、式IIの化合物は下記のものを含む:
【化17】
[式中、Xはアリールまたはヘテロアリールである。別の実施態様において、該化合物は、下記の式を示す:
【化18】
【0069】
いくつかの別の実施態様において、R1およびR3は双方アリールであり、R1およびR3は双方C1-6アルキルである。さらに別の実施態様において、化合物は下記のものである:
【化19】
。
【0070】
V.アンドロゲンレセプターを阻害するための製剤
本発明の化合物は、当業者には既知の多様な方法で製剤され得る。医薬上許容し得る担体は、投与される特定の組成物により、ならびに該組成物を投与するために使用した特定の方法によりある程度決定される。従って、本発明の医薬組成物の好適な広範囲の様々な製剤が存在する(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th ed., 2003, 上掲を参照されたい)。例えば、本発明の化合物を、広範で多様な経口、注射用および局所投薬形態にて製造および投与することができる。本発明の化合物を、非経口投薬形態にて製造および投与することもできる。従って、本発明の化合物は、注射により投与してもよく、即ち静脈内で、筋肉注射で、皮内に、皮下に、十二指腸内、または腹腔内に投与してもよい。また、本明細書に記載した化合物は、吸入により投与してもよく、例えば経鼻投与することができる。さらに、本発明の化合物は、経皮的にまたは局所的に、例えば、液体またはゲル形態にて、またはパッチとして投与することができる。
【0071】
従って、本発明はまた、医薬上許容し得る担体または賦形剤ならびに本発明の1以上の化合物を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施態様において、本化合物は、以下のいずれかであり得る:
【化20】
【化21】
【化22】
【0072】
別の実施態様において、化合物は下記のものであり得る:
【化23】
。
【0073】
投与のために好適な製剤は、(a)液体溶液、例えば、希釈剤、例えば、水、生理食塩水またはPEG400に懸濁された有効量の本発明の化合物;(b)所定量の活性成分を、液体、固体、顆粒またはゼラチンとして液体、固体、顆粒またはゼラチンとして各々含有するカプセル、サシュ、デポーまたは錠剤;(c)好適な液体中の懸濁液;(d)好適なエマルジョン;ならびに(e)パッチを構成できる。医薬形態には、1以上のラクトース、シュクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、微晶質セルロース、ゼラチン、コロイド状シリコンジオキシド、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、香味剤、染料、崩壊剤、ならびに医薬上相溶し得る担体を含むことができる。ロゼンジ形態には、風味剤中、例えばシュクロース中に活性成分を含むことができ、ならびに不活性基剤(例えば、ゼラチンおよびグリセリンまたはシュクロースおよびアカシアエマルジョン、ゲルなど)中に活性成分を含み、該活性成分に加えて当分野では既知の担体を含有するトローチも含むことができる。
【0074】
医薬製剤は、好ましくは単回投薬形態である。かかる形態において、該製剤は、好適な量の活性成分を含有する単回投与量に分割される。該単回投薬形態は、包装調製物、個別の量の製剤を含有する包装物、例えば、包装錠剤、カプセル、およびバイアルまたはアンプル中の粉末であってもよい。また、単回投薬形態は、カプセル剤、錠剤、カシュ、またはロゼンジ自体であってもよい、あるいは、包装形態にてこれらのいずれか一つの好適な数をふくんでもよい。該組成物はまた、必要であれば、他の混合可能な治療薬を含有してもよい。好ましい医薬製剤を徐放性処方にて本発明の化合物を送達できる。
【0075】
医薬製剤は、通常、ヒトおよび非ヒト哺乳動物をふくめた哺乳動物に送達される。本方法を用いて処置される非ヒト哺乳動物には、屋内飼育動物(すなわち、イヌ、ネコ、ネズミ、齧歯類、およびウサギ)および屋外飼育動物(ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ)が含まれる。
【0076】
癌治療のために、本発明の製剤は、治療上有効量の抗アンドロゲンまたはLnRHアゴニストと組合せて式IまたはIIの化合物を含み得る。抗アンドロゲンは、上記のとおり、クマリン、ビカルタミド、フルタミド、ヒドロキシフルタミド、ニルタミド、スピオノラクトン、酢酸シプロテロン、ケトコナゾール、フィナステリド、デュタステライド、ハルマン、ノルハルマン、ハルミン、ハルマリン、テトラヒドロハルミン、ハルモール、ハルマロール、エチルハルモール、n-ブチルハルモールおよび他のβ−カルボリン誘導体を含むが、これらに限定するものではない。
【0077】
本発明の方法を行う際に、医薬組成物を、単独または他の治療用または診断用薬と組み合わせて使用できる。本発明の併用プロトコールにて使用された別の抗癌薬を、別個に製剤するか、または1以上の併用プロトコールにて使用された抗癌薬を、例えば混合して一緒に製剤してもよい。
【0078】
本発明の製剤は、式IおよびIIの化合物の組合せをふくむことができる。また、別の治療薬または診断薬も、例えば上記に示したように、式IおよびIIの化合物の組成物と組み合わせて製剤することができる。
【0079】
VI.アンドロゲンレセプターを阻害するための投与
本発明の化合物は、必要な頻度に応じて、とりわけ時間単位、日数単位、週単位または月単位で投与され得る。本発明の医療方法に利用した化合物を、1日あたり約0.0001mg/kg〜約1000mg/kgの開始投与量にて投与される。約0.01mg/kg〜約500mg/kg、または約0.1mg/kg〜約200mg/kg、または約1mg/kg〜約100 mg/kg、または約10mg/kg〜約50mg/kgの一日の用量範囲を使用できる。しかし、投与量を、患者の要件、処置される症状の重症度、および用いる化合物により変更してもよい。例えば、投与量を、特定の患者における診断された疾患の型および段階を考慮して実験的に決定することができる。本発明の内容において患者に投与した用量は、時間中、患者における治療応答に対して効果を発揮するのに十分であるべきである。また、用量の範囲(size)も、特定の患者にける特定の化合物の投与と同時におこるあらゆる副作用の存在、性質、および程度により決定される。特定の状況について好適な用量の決定は、医師の技術範囲内にある。一般的に、処置は、この化合物の至適用量未満であるより少量の投与量にて開始される。その後、該投与量を、環境の下で至適効果が達成されるまで、少量ずつ増加させる。好都合には、一日の全投与量を分割してもよく、必要であれば一日の間に少量ずつ投与されてもよい。該用量は、医師により決定されたとおり毎日または隔日投与されてもよい。また、該用量は、より長い時間(週、月または年)にわたって、定期的または継続的基準により、例えば、皮下カプセル剤、サッシュまたはデポー、またはパッチを使用して提供される。
【0080】
医薬組成物は、多様な方法、例えば、局所的、非経口的、静脈内、皮内的、筋肉注射、経大腸(colonically)、経腸的にまたは腹腔内にて患者に投与される。好ましくは、該医薬組成物を、非経口的、局所的、静脈内、筋肉注射または経口的に投与される。
【0081】
本発明の方法を実施する際に、該医薬組成物を、単独、あるいは他の治療薬または診断薬を組み合わせて用い得る。併用プロトコールにて使用される別の抗癌薬を、別々に投与するか、または併用プロトコールにて使用される1以上の抗癌薬を、一緒に(例えば、混合して)投与することができる。1以上の抗癌剤を別々に投与する場合、各薬物の投与時期およびスケジュールを変更できる。他の治療または診断薬を、式IおよびIIの化合物と同時に、別々に、または異なる時点で投与してもよい。
【0082】
式IおよびIIの化合物はまた、任意の好適な組合せにて投与され得る。別の治療薬または診断薬を、式IおよびIIの組合せと共に組み合わせて投与できる。
【0083】
本発明の化合物をホルモン療法により投与できる。ホルモン療法のための化合物には、抗アンドロゲンおよびLnRHアゴニストを含むが、これらに限定するものではない。
【0084】
臨床試験において、多くの創傷、腫瘍サイズ、および腫瘍増殖速度を、X線撮影、断層撮影法、ならびに可能な腫瘍量の直接測定により追跡することができる。抗腫瘍効果もまた、分子生物学および生化学技術、例えば、ELISA、PCR、ウェスタンブロッティング、または免疫細胞化学を用いて測定することができる。
【0085】
単回用量として必要な組成物の医薬上有効な量は、投与経路、処置する癌のタイプ、および患者の身体的特徴に依存する。該用量は、所望の効果を達成するために改変できるが、それは医薬分野の当業者には認識されるであろう身体表面積、体重、食事、同時投薬およびその他の因子のようなかかる因子に拠る。
【0086】
前記は、例えば、疾患タイプおよび等級、患者の年齢、健康状態および性別、組合せて使用される特定の薬物、投与の経路および頻度、および複数の薬物の組合せを用いる実験的および臨床的知見に基づいて拡張または変更できる一般的なガイドラインである。
【実施例】
【0087】
VII.実施例
実施例1:化合物の製造
本発明の方法において有用な化合物を、下記方法に従って製造できる。ピルビニウムパモエートは、MP Biochemicals(Solon, Ohio)から購入できる。ハルモールHClは、Sigama(St. Louis, Missouri)から購入できる。
【0088】
{2-[2-(2,5-ジメチル-1-フェニル-1H-ピロール-3-イル)-ビニル]-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-キノリン-6-イル}-ジメチル-アミン
【化24】
【0089】
6-ジメチルアミノ-2-[2-(2,5-ジメチル-1-フェニル-1H-ピロール-3-イル)-ビニル]-1-メチル-キノリニウム, パモエート塩(ピルビニウムパモエート、500 mg、0.434 mmol)を、室温で攪拌しながらEtOH(10ml)に溶解した。水素化ホウ素ナトリウム (67.5 mg、1.74 mmol)を一部添加した。該反応の完了がLC-MS分析により判定されるまで攪拌を3.5時間継続した。該反応混合物を、水(10ml)で処理して、3回ジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン層を併合し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、濾過して、濃縮した。該残留物(394 mg)を、12のカラム容量のヘキサン中0-25% 酢酸エチルのグラジエントを用いる高性能フラッシュクロマトグラフィー(Biotage 25+M、シリカカートリッジ)により精製して、{2-[2-(2,5-ジメチル-1-フェニル-1H-ピロール-3-イル)-ビニル]-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-キノリン-6-イル}-ジメチル-アミンを黄橙色油状物として得た。収量:150 mg (45%). 1H NMR: (400MHz、CDCl3) 1.90 (m, 1H)、1.94 (s, 3H)、1.97、(s, 3H)、2.09 (m, 1H)、2.72-2.80 (m, 2H)、2.79 (s, 6H)、2.83 (s, 3H)、3.74 (m, 1H)、5.78 (dd, J=8 Hz,16 Hz,1H)、6.08 (s、1H)、6.38 (d、J = 16 Hz,1H)、6.56 (m, 2H)、6.65 (m, 1H)、7.13 (m, 2H)、7.38 (m, 3H) ESI−MS(m/z): [M+H]+ =386.
【0090】
ジメチル-1-フェニル-1H-ピロール-3-イル)-エチル]-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-キノリン-6-イル}-ジメチル-アミン
【化25】
{2-[2-(2,5-ジメチル-1-フェニル-1H-ピロール-3-イル)-ビニル]-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-キノリン-6-イル}-ジメチル-アミン(25 mg、0.065 mmol)を、メタノール(4ml)に溶解し、10% Pd/C(13mg)と併用した。該混合物を、水素ガス(バルーン)大気中で2時間攪拌するか、またはLC-MS分析による判断に従って該反応が完了するまで攪拌した。該反応混合物を、次いでセライトを通して濾過し、追加のメタノールで洗浄し、濾液を濃縮し、油状物を得た。粗製残渣(27 mg)を、分取HPLCにより精製し、トリフルオロ酢酸(TFA)塩として表題化合物{2-[2-(2,5-ジメチル-1-フェニル-1H-ピロール-3-イル)-エチル]-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-キノリン-6-イル}-ジメチル-アミンを得た。収量:23 mg (70%). 1H NMR: (400MHz、CDCl3) 1.59 (m, 1H)、1.85-2.03 (m, 3H)、1.91 (s, 3H)、1.97 (s, 3H)、2.33-2.52 (m, 2H)、2.67-2.92 (m, 2H)、2.94 (s, 3H)、3.11 (s, 6H)、3.36-3.42 (m, 1H)、5.78 (s、1H)、6.53 (d、J = 8Hz、1H)、1.83 (m, 1H)、7.08-7.39 (m, 3H)、7.32-7.46 (m, 3H) ESI−MS(m/z): [M+H]+ = 388.
【0091】
実施例2:新規ARアンタゴニストのためのスクリーニング
以下のアッセイは、アンドロゲン-レセプターアンタゴニストである化合物を同定する方法を提供するものである。
【0092】
NINDSにより作成されたライブラリーをスクリーニングした。ライブラリーは、1040 FDA承認薬および天然の生成物から構成される。各一次スクリーニングから化合物を選択および比較するための基本的なストラテジーを確立した(図1)。
【0093】
転写アッセイを、MMTV−ルシフェラーゼ、SV40-レニラ・ルシフェラーゼ、およびネイティブARをコードするプラスミドを用いて10cmプレートのHEK293細胞をトランスフェクトすることにより行った。これらの細胞が有用であるのは、前立腺から得た細胞の限られたトランスフェクション効率がこのアッセイの変動を増加させることが理由である。FRETアッセイを、CFP−AR−YFP融合タンパク質:HEK293/C-AR−YおよびLAPC4/C−AR−Yを各々安定に発現する2つの独立した細胞系を用いて行った。LAPC4細胞は、前立腺から得た細胞系統である((Klein, K.A., et al., Progression of metastatic human prostate cancer to androgen independence in immunodeficient SCID mice. Nat Med, 1997. 3(4): p.402-8)。FRETとは、ヒトアンドロゲンレセプターのアミノおよびカルボキシル末端に融合した蛍光青緑色と黄色の蛍光タンパク質誘導体(CFP、YFP)間の蛍光共鳴エネルギー移動である。リガンドが該レセプターを活性化させる場合に、CFPおよびYFPを近接近にて架橋する構造変化がおこり、FRETが生じる。この分光学的変化は蛍光プレートリーダーを用いて検出される。
【0094】
転写アッセイのために、トランスフェクトした細胞を、10μMの試験化合物と共に96ウェルディッシュに播種する前に集めた。各プレートには、「非DHT」および「非処置」コントロール、ならびに1μM OH−Fを含むポジティブコントロールが含まれる。FRETアッセイのために、細胞を10μMの試験化合物と共に96-ウェルプレートに直接播種した。細胞および化合物の移動は液体処理ロボットにより行った。細胞を、10nM DHTおよび試験化合物の存在下にて24時間培養した。24時間後に、FPR(FRETアッセイ)にて計測するために、細胞を凍結融解(転写アッセイ)により分解するか、または4%パラホルムアルデヒドに固定した。各化合物を、一次スクリーニングにおいて2回試験した。
【0095】
該化合物を、抗アンドロゲン効果に基づいて分類した。さらなる分析について選択されるためには、試験化合物は、リプリケート両方において作用すべきであり、かつ各ケースにおいて、DHT単独により処置されたサンプル平均からの少なくとも1つの標準偏差まで該シグナルを低下させなければならない。これにより、一回目の試験時に強力な応答を示し、2回目には示さないという状況が排除された。最終的に、レニラ・ルシフェラーゼ(基質特異性に基づいてホタルルシフェラーゼとは区別される)について特異的に試験された転写アッセイについては、細胞毒性の証拠は存在しなかったはずであり、また2つの標準偏差以下にこのシグナルを低下した化合物が排除された。FRETアッセイのために、毒性化合物は、元々のCFPおよびYFPシグナルに対するそれらの効果から容易に検出され、2つの標準偏差以下にこのシグナルを低下させた化合物が排除された。
【0096】
一次スクリーニングからのヒットの分析。図2は、スクリーニングの結果を示す。該データは、各アッセイ系が有効性に従って化合物を分類できたことを明確に示す。ヒットを、様々なストリンジェンシーを用いて分類して、各アッセイに対して限定したヒット数を選択するのに必要とされる平均からの偏差の程度を決定する。構造アッセイは、HEK293またはLAPC4細胞を使用した場合に、低いストリンジェンシーを用いて高い選択性を達成したが、転写を基にしたアッセイでは、同じ選択性を達成するためにはより高いストリンジェンシーが必要であった。従って、構造アッセイでは、非特異的な細胞変動(perturbation)に対する感受性は低いが、多くの化合物は転写応答を変動させることができた。
【0097】
各々一次アッセイにおいて同定した上位50の化合物を、その後別の2種のアッセイにおいて試験した。別の分析には含まれなかった各アッセイにおける上位のヒットは、ライブラリー(ヒドロキシ-フルタミド、ニルタミド、シプロテロン、および酢酸シプロテロン)から既知の全ての抗アンドロゲン、ならびにμモル濃度でARと交差反応を示す特定のステロイドホルモンであった。ベン図により、一次アッセイ間である程度重複することが示される:一つのアッセイにて評点したヒットのおおよそ20-30%を、別のアッセイで評点した(図3)。
【0098】
「有効な」ヒットを決定するために、この上位50種の化合物を、それらを検出した元々のアッセイにおける漸増試験により再度試験して、古典的な用量応答パターンを示した化合物のみを選択した。各アッセイからの有効なヒットを他のアッセイにおける活性について比較した場合、より高い割合(おおよそ55-82%)の化合物が、一次スクリーニングよりも少なくとももう1つの別のアッセイにおいてポジティブと評点された。いくつかの化合物(3)は、全ての3つのアッセイにおいてポジティブと評点された。これは、各スクリーニング方法は、交差アッセイから有効性により化合物を同定するための可能性を示すという考えと一致するが、新たな側面を創薬に加え得るかもしれない。重要なことは、この少ない有効なヒット数のうち、HEK293 FRETアッセイにて1つの化合物、LAPC4 FRETアッセイにて3つの化合物は、最初のHEK293 一次転写アッセイの選択基準を満たさなかったが、その後の精査分析によってAR媒介性の転写阻害を示したということを見出したことである。従って、FRETアッセイにより、転写アッセイ単独と比べて創薬を補強させることができる。
【0099】
新規抗アンドロゲンの同定。ストリンジェントスクリーニングプロトコールをクリアしたいくつかのリード化合物、および以前に認識されていなかった抗アンドロゲン活性を有する3つのクラス:クマリン、例えば、ワルファリン、スコポレチン、およびエスクリン;ハルモール塩酸塩、天然生成物(HH);ならびにFDA承認の抗蠕虫剤、ピルビニウムパモエート(PP)など。
【0100】
内性のAR活性に対してピルビニウムおよびハルモールの有効性を評価するために、各化合物を、内性のARを発現する2つの前立腺癌から得た細胞系統であるLAPC4(Klein, K.A., et al., Progression of metastatic human prostate cancer to androgen independence in immunodeficient SCID mice. Nat Med, 1997. 3(4): p. 402-8)およびLNCaP(Horoszewicz, J.S., et al., The LNCaP cell line- a new model for studies on human prostatic carcinoma. Prog Clin Biol Res, 1980. 37: p. 115-32))における用量応答アッセイにて試験した。LAPC4細胞は、野生型ARを発現するが、一方ホルモン不応答性のPCaから得られるLNCaP細胞は、多様なリガンド、とりわけアンタゴニストヒドロキシ-フルタミド(OH−F)に反応性となる変異(T877A)を有するARを発現する。細胞を、2種のレポータープラスミド、PSAルシフェラーゼ構築体(アンドロゲン反応性)と、内部標準としてSV40-レニラ・ルシフェラーゼ構築体とを用いて形質転換した。次の日に、細胞を分けて、薬物を3nM DHTの存在下で添加した。ルシフェラーゼ生成を次の日に測定した(Dual luciferase kit、Promega)。
【0101】
構造アッセイまたは転写レポーターアッセイのいずれかで、DHTの非存在下において10uMを超える用量でさえアンドロゲン活性を示す化合物はなかった。PPおよびHHは、レポーター転写阻害時に競合的アンタゴニストであるOH−Fおよびビカルタミド(BiC)よりも効果がさらに高かったため(表1)、これらの化合物の抗アンドロゲン特徴をさらに試験した。PPおよびHHの双方は、BiCよりも遙かに優れた効果でDHT-応答性遺伝子発現を阻害した(表1)。ピルビニウムのパモエート塩が、転写阻害を媒介する可能性を排除するために、アニオン交換(Dowex)を使用して、パモエートを塩化物イオンに置き換えた。塩化ピルビニウムは、ピルビニウムパモエートと実に同じ効果であった(図4)。
【0102】
表1. 新規抗アンドロゲンのためのスクリーニングにて同定した様々な化合物のIC50
【表1】
PP=ピルビニウムパモエート;HH=ハルモール塩酸塩;OH−F=ヒドロキシ-フルタミド;BiC=ビカルタミド。nd=データなし
【0103】
実施例3:アンドロゲンレセプターの阻害に対するアッセイ
このアッセイは、実施例2にて同定した化合物が、内性アンドロゲンレセプター遺伝子発現を阻害し、かつ競合的アンタゴニストではないことを下記に示す。
【0104】
リード化合物の効果が、内性のAR制御性遺伝子発現に対して実際に有効であることを確認するために、定量的なRT−PCR(qRT−PCR)を使用して、LAPC4およびLNCaP細胞中のアンドロゲン反応性遺伝子の厳選した数に対する効果をモニターした。LAPC4およびLNCaP細胞を、阻害剤を含むか、または含まないチャコール・ストリップド培地(charcoal-stripped media)中で3nM DHTの存在および非存在にて増殖させた。RNAを、RNAイージキット(Qiagen)を用いて収集し、逆転写した(MMLV-RT, Invitrogen)。リアル−タイムPCRを、検出染料としてSYBR緑色および参照染料としてRoxを用いて7300 リアル・タイム・PCR系(Applied BiosysteMs)にて実施した。アンドロゲン反応性遺伝子のカリクレイン3またはPSA(KLK3)[Cleutjens, K.B., et al., Two androgen response regions cooperate in steroid hormone regulated activity of the prostate-specific antigen promoter. J Biol Chem, 1996. 271(11): p. 6379-88;Nelson, P.S., et al., The program of androgen-responsive genes in neoplastic prostate epithelium. Proc Natl Acad Sci U S A, 2002. 99(18): p. 11890-5]、メタロプロテイナーゼ16(MMP16)(Nelson, P.S., et al., The program of androgen-responsive genes in neoplastic prostate epithelium. Proc Natl Acad Sci U S A, 2002. 99(18): p.11890-5)、膜貫通プロテアーゼセリン2(TMPRSS2)(Nelson, P.S., et al., The program of androgen-responsive genes in neoplastic prostate epithelium. Proc Natl Acad Sci U S A, 2002. 99(18): p. 11890-5; Aronin, N., et al., Are there multiple pathways in the pathogenesis of Huntington's disease? Philosophical Transactions of the Royal Society of London. Series B: Biological Sciences, 1999. 354(1386): p. 995-1003; Vaarala, M.H., et al., Expression of transmembrane serine protease TMPRSS2 in mouse and human tissues. J Pathol, 2001. 193(1): p. 134-40)、FK506結合イムノフィリン51(FKBP51)(Nelson, P.S., et al., The program of androgen-responsive genes in neoplastic prostate epithelium. Proc Natl Acad Sci U S A, 2002. 99(18):p.11890-5; Amler, L.C., et al., Dysregulated expression of androgen-responsive and nonresponsive genes in the androgen-independent prostate cancer xenograft model CWR22-R1., Cancer Res, 2000. 60(21): p. 6134-41; Velasco, A.M., et al., Identification and validation of novel androgen-regulated genes in prostate cancer. Endocrinology, 2004. 145(8): p. 3913-24; Magee, J.A., et al., Direct, androgen receptor-mediated regulation of the FKBP5 gene via a distal enhancer element. Endocrinology, 2006. 147(1): p. 590-8)、Gタンパク質共役受容体RDC1ホモログ、またはケモカインオーファン受容体1(RDC−1)(Nelson, P.S., et al., The program of androgen-responsive genes in neoplastic prostate epithelium. Proc Natl Acad Sci U S A, 2002. 99(18): p. 11890-5)、NKホメオボックスファミリーメンバー3(Nkx3.1)(Nelson, P.S., et al., The program of androgen-responsive genes in neoplastic prostate epithelium. Proc Natl Acad Sci U S A, 2002. 99(18): p. 11890-5; Bieberich, C.J., et al., Prostate-specific and androgen-dependent expression of a novel homeobox gene. J Biol Chem, 1996. 271(50): p. 31779-82; Aboody-Guterman, K.S., et al., Green fluorescent protein as a reporter for retrovirus and helper virus-free HSV-1 amplicon vector-mediated gene transfer into neural cells in culture and in vivo. Neuroreport, 1997. 8(17): p. 3801-8)を、ハウスキーピング・リボゾーマル遺伝子(RPL19)の転写に対して全て正規化した。全てのサンプルを3回行い、それぞれに正規化した。KLK3、Nkx3.1、TMPRSS2、およびFKBP51は、DHTによる処置により全て誘導されたが、この誘導はBiC、PPおよびHHにより種々に阻害された。同様に、MMP−16およびRDC−1は、DHTによる処置により抑制されたが、この抑制は、全てのAR阻害剤により種々の程度まで上昇された。表2は、各細胞タイプの3または4の独立したqRT−PCR実験から得た結果を要約したものである。LNCaP、Nkx3.およびTMPRSS2においてDHTにより誘導されることが知られる2つの遺伝子は、LAPC4細胞中で顕著に誘導されなかった。PPおよびHHの双方は、いくつかのアンドロゲン反応性遺伝子の発現を少なくともBiCと同等の効率で迅速に抑制することが観察された(表2)。
【0105】
表2. PPおよびHHは、内性ARにより媒介される遺伝子発現を各々阻害する。PPおよびHHの双方は、BiCに匹敵するか、またはBiCよりも優れた様式でアンドロゲン誘導性遺伝子誘導を低下させた。アンドロゲン抑制性遺伝子の評価(下部に示した)から、該阻害剤は各々発現を活性化したことが示された。
【0106】
【表2】
【0107】
PPおよびHHは、非競合的アンタゴニストである。PPおよびHHがARの競合的または非競合的アンタゴニストとして作用するかどうかを決定するための第一ステップとして、PSAルシフェラーゼ・レポーターにより一過的に形質転換されたLNCaP細胞内でDHTを漸増させ、各阻害剤の中程度の用量により処理した。DHTはOH−Fの阻害効果をこえて、最大の活性化をもたらす。これに対して、PPおよびHHの双方は、DHTの最終濃度が非常に高いにかかわらず(図5)、最大のDHT誘発性活性化を阻害した。これは非競合的アンタゴニストとしての活性と一致した。
【0108】
実施例4. PP、HHおよびBiCの相乗作用
アンドロゲンレセプター アンタゴニストとしてのPP、HHおよびBiCを使用する際の相乗効果の存在を、下記の方法を用いて確認した。
【0109】
リード化合物およびBiCとの間の相乗効果が存在することを、LAPC4およびLNCaP細胞を用いて試験した。様々な組合せでPSA-ルシフェラーゼにより形質転換したLNCaPおよびLAPC4細胞に添加した場合、PPおよびHHの双方は、各化合物と互いに、そしてBiC(表3)とも相乗効果を示した。相乗効果とは、Chou ら(Chou, T.C. and P. Talalay, Quantitative analysis of dose-effects relationships: the combined effects of multiple drugs or enzyme inhibitors. Adv Enzyme Regul, 1984. 22: p.27-55)により記述された包括的仮定を用いて、1未満の組合せインデックスとして規定できる。PP、HHおよびBiCの間の相乗効果は、それらが異なるメカニズムにより作用することを示す。
【0110】
表3. PP、HHおよびBiC間の相乗効果。用量応答曲線を、所定の細胞型(LNCaPまたはLAPC4)においてPSA-ルシフェラーゼからの転写物を活性化するように3nM DHTを用いて、所定の比率の阻害剤を用いて行った。予測IC50値を、この組合せにて示した第一の薬剤について報告する。組合せインデックスは、Chou ら(1984);1未満の数字は相乗効果を示す;に基づく「相乗効果」に関する計算した測定値である。
【表3】
【0111】
実施例5:PPおよびHHによる増殖阻害
下記に示した方法を用いて、PPおよびHHが細胞培養中のLAPC4およびLNCaP細胞のアンドロゲン依存性増殖、ならびに「アンドロゲン独立型」前立腺癌のモデルであるARを過剰発現するLN-AR細胞のアンドロゲン独立型増殖に影響するかどうかを決定した。
【0112】
LN-AR細胞を、LNCaP細胞中に高発現ARベクターをレトロウイルス感染させて作出し、この親の系統とは異なり、細胞培養中でアンドロゲンが独立して増殖する(Chen, C.D., et al., Molecular determinants of resistance to antiandrogen therapy. Nat Med, 2004.10(1):p.33-9)。HEK293細胞をコントロールとして使用した。細胞を、それらを分ける前にチャコール・ストリップ培地に2日間移し、48ウェルプレート中でおおよそ20,000細胞/ウェルの密度にて4連で培養した。翌日、3nM DHTを含むかまたは含まない培地を、PP(100nM)、HH(100nM)、またはBiC(1μM)と共に含むかまたは含まずに細胞に添加した。培地を、単一の調整物を用いて毎日交換して、一定の化合物濃度を確実にする。増殖を、各ウェル中の細胞のDNA含量を測定することにより決定した。隔日、4枚のウェル中の細胞を、100%冷メタノールに固定し、次いでPBS中の0.2ng/ml 4',6-ジアミド-2-フェニルインドール(DAPI)を用いて5分間室温で染色を行った。この細胞を、PBSで1回洗浄し、その後365/439励起/放出波長を用いて蛍光プレートリーダー上で読み取った。LAPC4およびLNCaP細胞は、DHTの存在下でより大量に増殖したが、LN-AR細胞は、DHTの存在下および非存在下にて増殖した。PPは、7日間後に全ての4つの細胞系の増殖を阻害することができる唯一の化合物であったが、HHおよびBiCは唯一LNCaP細胞の増殖を有意に阻害しただけであった。コントロールHEK293細胞は、任意の化合物による有意な影響を受けなかった、これはそれらが非特異的増殖阻害効果は持たないことを示唆している。PPおよびHHは、BiCに加えて、アンドロゲン誘導性増殖を阻止するように少なくとも作用した(図6)。
【0113】
実施例6:マウスにおける化合物の薬物動態および毒性
マウスにおいてPPおよびHHの抗アンドロゲン活性を、下記に示した方法を用いて決定した。
【0114】
野生型FVBマウスは、PPまたはHHいずれか単回の腹腔内注射を投与された。血清サンプルを所定の時間間隔にて得て、この薬物レベルを質量分析により決定した。これらの結果から、HHが迅速に排出されたことが示された。PPは、好適な治療となり得ることを示す長期の半減期を示した(表4)。PPの毒性を、0.1〜10mg/kgの様々な用量範囲を用いて試験した。10 mg/kgは毒性であったが、このマウスは5mg/kgに耐用性であった。
【0115】
表4.PPとHHの薬物動態。マウスは、5 mg/kgのPPまたはHHの単回IP注射またはPO投薬を受容した。血清サンプルを、所定の時点で採取し、血液レベルを質量分光分析により測定した。
【0116】
【表4】
【0117】
PPはインビボでBiCと相乗作用を示し、前立腺萎縮をもたらす。ポジティブコントロールとして、1つのコホートを、組織回復前に4週間去勢した。1つのコホートを非処理とし、他のコホートを、1mg/kg PP、100 mg/kgBiC、またはPP/ビカルタミド(BiC)いずれかの組合せにより処置した。動物を、5回/週間で4週間の間処理した。試験期間終了時に、動物を屠殺し、前立腺組織を秤量した。秤量後、該組織を、病理学的および遺伝子的試験のために半分に分けた。BiC処置により、前立腺組織サイズは35%(p<.003)まで低下した。PP:BiCによる処置により、BiC単独(P<.0005)の効果に対し、高度に有意であった63%までさらに低下した。PP単独は、統計学的に有意な効果を示さなかった(図7)。
【0118】
PPはインビボでBiCと共に相乗作用を示し、アンドロゲン-依存性前立腺遺伝子発現を阻害する。前立腺においてアンドロゲン依存性遺伝子発現に対するPPおよびPP:BiCの効果を評価するために、全RNAを、インビボの試験において単離した前立腺の半分から調製した。RT−PCRを行い、遺伝子発現を、完全にアンドロゲン非反応性である内因性の前立腺遺伝子であるRPL19と比べて決定した(E.Bolton, K.R.Y amamoto:非公開データ)。マウス前立腺葉の全体に発現した5つのアンドロゲン反応性遺伝子を評価した。各ケースにおいて、PPおよびBiCは遺伝子発現を有意に低下させたが、その組合せは卓越していたということを観察した。殆どの場合において、この組合せは、去勢された動物のものに近かった(図8)。先の実験をまとめると、PPは、抗アンドロゲン効果を発揮し、インビボでは抗アンドロゲンとしてBiCと共に相乗効果を示す。
【0119】
実施例7:マウス前立腺に対してのPP、THP、およびBiCの効果
10匹のFVB雄マウス(12wk)を、ビヒクル、1mg/kg ピルビニウムパモエート(PP)、100 mg/kg ビカルタミド (BiC)、2mg/kg THP、20 mg/kg、または2 mg/kg THPおよび100 mg/kg BiCの組合せにより、5週間の間、毎日、M−F投薬により処理した。マウスのコホートをポジティブコントロールとして去勢した。
【0120】
BiC、PP、THP+BiC、または去勢による処置は、前立腺湿重量の有意な(分散分析による)低下をもたらした。20 mg/kg THPは、前立腺に関して異常な乳白色の所見をもたらしたが、しかし全体の湿重量に変化はなかった(図11)。
【0121】
THPまたはBiC単独により処置したマウスは、背部前立腺(組織学的試験により)ならびに他の前立腺葉部(lobes)にて軽度の萎縮を示したが、この2つの組合せは、去勢により生じた萎縮に類似する重度の萎縮をもたらした(図12)。
【0122】
定量的PCRについて、RNAを、マウス前立腺から単離して、逆転写した。いくつかのアンドロゲン制御遺伝子の発現、そのサブセットを示すが(図13)、これを、QPCRを用い、そしてハウスキーピング遺伝子RPL19の発現に対して正規化することにより決定した。2mg/kgのTHP処置は軽度の効果を示したが、20mg/kg THPの処置は、前立腺において多くのアンドロゲン調節化遺伝子の転写を有意に低下した。
【0123】
実施例8:LAPC4細胞中のAR転写に対してTHP、THP:BiC、およびSHPの有効性
LAPC4細胞、即ち元々のアンドロゲンレセプターを発現する前立腺癌細胞系統を、PSAルシフェラーゼ・レポーターおよびCMV−レニラ・ルシフェラーゼコントロールにより形質転換した。図14に示したように、細胞を、DHTおよびテトラヒドロピルビニウム(THP)の増加量を用いて処理した。正規化したルシフェラーゼ活性を決定したが、これはテトラヒドロピルビニウムによるアンドロゲンレセプター媒介性の転写に関する強力な阻害を示すものである。
【0124】
別の実験において、細胞を、DHTまたは1:30のテトラヒドロピルビニウム/ビカルタミドの組合せの漸増により処理して、相乗効果を試験した。2つの薬剤の組合せは相加効果により予測した転写阻害を超えており、アンドロゲンレセプターの相乗的阻害を示す(図15)。
【0125】
第二の別の実験において、PSA-ルシフェラーゼAR−応答プロモーターに対するSHPおよびTHPの活性を決定した(図16)。
【0126】
前記発明は、明瞭な理解を目的とした説明および例示により、ある程度詳しく記載されるが、当業者には特定の変更および改変が添付の請求項の範囲の範囲内で実施され得るということを理解されよう。さらに、本明細書において提供された引用文献は、個々の引用文献を参照して組み込まんだ場合と同様に出典明示により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互関係
本出願は、2008年4月24日に提出したUSSN61/047,559の優先権主張を請求するものであり、その全てを参照して本明細書に組み込む。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発のもとで成された発明の権利の記載
適用なし
【0003】
シーケンスリスト、表、またはコンパクトディスクにて提出されたコンピュータープログラムリスト等の参照
適用なし
【背景技術】
【0004】
本発明の背景
(i)前立腺癌(PCa)は、男性における癌罹患率および死亡率の主要要因であり、該アンドロゲンレセプター(AR)は第一の治療標的である。初期のPCaでは、抗アンドロゲン治療(AAT)は、最も一般的かつ効果的である。これは、1以上のGnRHアゴニスト(下垂体のシグナル伝達経路を抑制する)、アロマターゼ阻害剤(アンドロゲン産生を低下させる)、および競合的ARアンタゴニスト(ARを直接遮断する)、例えばヒドロキシ-フルタミド(OH−F)またはビカルタミド(BiC)の組合せから構成される。この方法は、通常、数年間作用するが、時間と共にアンドロゲン枯渇条件下において、腫瘍細胞は継続成長のためのメカニズムを誘起させる。大部分の再発性またはホルモン不応性の前立腺癌(HRPC)療法はそれでもなおAR媒介性のシグナル伝達経路に依存する。これには、ARタンパク質発現レベルの上方調節、他のホルモン(アンタゴニストを包含する)への応答におけるその活性を増加させるARの突然変異の獲得、またはAR活性を増加させるコアクチベータータンパク質の上方調節を挙げることができる。即ち、AR活性を遮断するための新規アプローチにより、AATの有効性を有意に拡張または増強させることができると思われる。これは、良好な競合的アンタゴニストを構成できる可能性があり、また製薬会社は既にこのアプローチに注力している。これは、新規抗アンドロゲンが、原発性および再発性のPCa双方の処置において相当な有用性を有することを暗示するものである。かかる抗アンドロゲンは、ARに直接結合する競合的アンタゴニストではないかもしれず、またことによるとARシグナル伝達経路の下方事象を阻害することにより作用できるかもしれない。従って、新規かつ強力な抗アンドロゲンが必要である。驚くべきことに、本発明は、かかる必要性およびその他の必要性を満たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(本発明の要旨)
一実施態様において、本発明は、式Iの化合物:
【化1】
(I)
[式中、各々R1は、独立して水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、-OR4、-SR4、NR4R5、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである。R2は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキル-OH、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである。R3は、所望により1〜3つのR6基により置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである。R4およびR5は、各々独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである。あるいは、R4およびR5は、それらが結合する窒素と一緒になって、5〜7員環および1〜3個のヘテロ原子(各々独立してN、OまたはS)を有する複素環を形成する。各々R6は、独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルまたはC1-6アルコキシである。Lは、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、C2-6アルキニレンまたはC3-6シクロアルキレンであるリンカーである。Xは、-N(R7)-、6-10員環を有するアリール環、ならびに5〜6員環および1〜3個のヘテロ原子(各々独立してN、OまたはS)を有するヘテロアリール環であって、該アリールおよび該ヘテロアリール環は、所望により1〜3つのR8基により各々置換される。R7は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである。各々R8は、独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルまたはC1-6アルコキシである。]を提供する。式Iの化合物には、その塩、水和物およびプロドラッグを包含する。
【0006】
第二の実施態様において、本発明は、式IIの化合物:
【化2】
(II)
[式中、R1、R3、R4、R5、R6、R7、R8、X およびLは、上記規定したとおりである;R2’は、電子対、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキル-OH、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルであり;およびYは、OまたはSである]を提供する。式IIの化合物には、その塩、水和物およびプロドラッグが含まれる。
【0007】
第三の実施態様において、本発明は、式Iの化合物および医薬許容し得る賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0008】
第四の実施態様において、本発明は、かかる処置の必要な患者に、治療上有効量の式Iの化合物または式IIを投与することにより、アンドロゲンレセプターを阻害する方法を提供する。
【0009】
第五の実施態様において、本発明は、テトラヒドロピルビニウム(THP)およびその誘導体、ベンゾオキサゾール化合物およびその誘導体を提供する。
【0010】
第六の実施態様において、本発明は、テトラヒドロピルビニウム(THP)およびその誘導体、ベンゾオキサゾール化合物およびその誘導体を用いる方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】化合物スクリーニング方法。AR構造変化を有する新規阻害剤を、FRETにより構造変化を測定するために従前使用されてきたCFPN末端およびYFPC-末端タグ化ARベクターを安定に発現するHEK−293(ATCC CRL 1573)から得た細胞系を作出することにより見出した。C−AR−Yを、LAPC4またはHEK293細胞系にて安定に発現した;同時に、HEK293細胞を、MMTV−ルシフェラーゼと共にネイティブARにてトランスフェクトした。細胞を、10nM ジヒドロテストステロン(DHT)および1040 FDA承認薬の一つの存在または非存在下で培養した。該スクリーンを、各条件の下で2回行い、両方の試験において活性を有する上位50の化合物を選抜した。該上位化合物の各々を、用量応答試験により詳細に評価し、「有効な」化合物を全てのアッセイにわたり比較した。この有効なヒットは、各スクリーニングのために最初に同定したヒットのおおよそ40%を占める。
【図2】ヒットの分析。1040 FDA承認薬を、3つの異なるアッセイ、即ちMMTV−ルシフェラーゼを発現するHEK293細胞を用いる転写を基にしたアッセイ、HEK293/C-AR−Y安定細胞とLAPC4/C-AR−Y安定細胞とを用いる構造を基にしたアッセイにて試験した。いくつかの化合物は、ARの構造変化に対する転写生成量に影響を与えた。LAPC4細胞は、試験化合物に対して感受性が最も低かった。カットオフ値を平均(DHTのみを用いて処理した細胞の複数のリプリケートにより決定した)から5−6の間の標準偏差(SD)に設定した場合に、この転写アッセイに対して高い選択性(<50ヒット)が認められた。同様の選択性を、3−4の間のSDにてHEK293/C-AR−Y細胞に対して認めたが、LAPC4/C-AR−Y細胞では、かかる効果を平均から2−3の間のSDで観察した。このスクリーニングで使用した転写アッセイは、Z−ファクター=0.6を示し、これに対してLAPC4 FRET アッセイについては0.6、ならびにHEK 293 FRET アッセイについては0.5を示した(Zhang、J.H.、T.D. Chung、and K.R. Oldenburg、A Simple Statistical Parameter for Use in Evaluation and Validation of High Throughput Screening Assay. J Biomol Screen、1999.4(2): p.67-73)。
【図3】図3.一次スクリーンにおけるヒットの特徴。(A)一次アッセイにおいて評点したヒットを、2回の読み取り値の平均に基づいた有効性に従ってランク付けを行い、各アッセイから得た上位50個を、別の2つと比較した。各ケースにおいて、いくつかの化合物はアッセイ間で共通しており、大部分のヒットは特定の系に特有であった。(B)有効なヒットを、使用した元のアッセイにおいて詳細な用量応答により決定し、薬理効果を提示した化合物のみを計測した。次いで、これらのヒットを、用量応答を用いて別のスクリーニングアッセイと交差比較した。この二次分析では、いずれか一つのアッセイから得た大多数のヒットは、別のアッセイ系においても有効であった。
【図4】図4. ピルビニウムパモエート(PP)は、塩化ピルビニウム(PCl)に対して同じ応答性を示した。アニオン交換を使用して、該パモエート塩を塩化物イオンで置換した。得られる化合物、即ちPClは、LAPC4細胞においてPSAレポーター活性を阻害する際に、親化合物に対する同一の用量応答を示した。
【図5】図5.PPおよびHHは、競合的アンタゴニストとは異なりDHT誘発性遺伝子発現を阻害する。PSAルシフェラーゼ・レポーターにより一過的にトランスフェクトしたLNCaP細胞をOH−F、PPおよびHHに暴露した。DHTを漸増した。OH−Fは、競合的アンタゴニストと一致する改変したDHT用量応答をもたらすが、PPおよびHHは非競合的アンタゴニストと一致するパターンを示した。
【図6】PPおよびHHは、アンドロゲン誘導性の細胞増殖を阻害する。PP、HH、およびBiCを、その能力について、いくつかの培養した細胞系:LNCaP、LAPC4、LN-AR(アンドロゲン独立成長を示す系統)、およびHEK293細胞においてアンドロゲン依存型および独立型の成長を阻害することを比較した。PPおよびHHは、LNCaP細胞において増殖阻害特性を各々示したが、HHはLAPC4細胞において有効ではなかった。いずれの化合物も、HEK293細胞の非特異的成長阻害を示さなかった。重要な点は、PPが「ホルモン不応性」のLN-AR細胞の成長を阻害したことである。アスタリスク(*)=p<.005.
【図7】図7.PPはマウスの前立腺サイズを相乗的に低下させる。9匹の雄マウスのコホートを、4週間、BiC(100mg/kg)のPO経管栄養、PP(1mg/kg)のIP注射、または組合せにより処置した。ポジティブコントロールとして、9匹のマウスを、4週間去勢により処置した。前立腺を収集して湿重量を決定した。PP単独では、前立腺サイズを有意に低下しなかった。BiC処置は、前立腺を35%重量低下させ、PP:BiCの組合せは63重量%(p<.0005、t検定)低下させた。これは、PPの相乗効果を示唆している。コントロール(cntrl):非処理マウス;BiC:ビカルタミド;PP:ピルビニウムパモエート;キャスト(cast):去勢処置。エラーバーは平均値の標準偏差(S.E.M.)を示す。
【図8】図8.PPは、前立腺中のアンドロゲン依存性遺伝子発現を抑制し、BiC活性を増強する。全RNAをインビボでのPPを試験するために使用した9匹のマウスのコホートの前立腺から抽出した。qRT−PCRを行い、5匹のアンドロゲン誘導性遺伝子の遺伝子発現レベルを評価した。遺伝子発現レベルを、RPL19、アンドロゲン非応答性遺伝子との比較にて表した。PPは、全ての症例において遺伝子発現を有意に抑制し、一つの例外(TMPRSS2)を除いて、各処置単独により最大に抑制することができるBiCの効果を増強した。コントロール:非処置;BiC:ビカルタミド;PP:ピルビニウムパモエート;キャスト(cast):去勢処置。
【図9】図9.アンドロゲンレセプターの阻害剤。
【図10】図10.アンドロゲンレセプターの阻害剤。
【図11】図11.BiC、PP、THP+BiC、または去勢による処置後の前立腺湿重量の変化。
【図12】図12.THP、BiC、THP+BiC、または去勢による処置の後のマウスの背部前立腺の組織学。
【図13】図13.アンドロゲン調節遺伝子 TMPRSS2 プロバスチン、およびfkbp51の定量的PCR。
【図14】図14.LAPC4細胞におけるAR転写に対するTHPの有効性。
【図15】図15.LAPC4細胞におけるAR転写に対するTHP+BiCの相乗効果。
【図16】図16.LAPC4細胞におけるPSA-ルシフェラーゼAR−反応性プロモーターに対するTHPおよびSHPの有効性。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の詳細な説明)
II.序論
本発明は、治療上有効量の式Iの化合物:
【化3】
(I)
または、式IIの化合物:
【化4】
(II)
を、かかる処置の必要な患者に投与することを含む、アンドロゲンレセプターを阻害する方法を提供する。
【0013】
本発明の化合物は、アンドロゲンレセプターのフォールディングを阻害する、即ちレセプター活性化を阻害すると考えられる。本発明の化合物を使用して、アンドロゲンレセプターのフォールディングに関与するあらゆる疾患を処置することができる。かかる処置が必要な患者とは、多くの場合、前立腺癌、とりわけ原発性およびホルモン不応性の前立腺癌、卵巣癌、肝細胞癌、尋常性座瘡、子宮内膜症、黒色表皮症、多毛症、乳癌、性的早熟、多嚢胞性卵巣症候群、良性前立腺過形成、脱毛症(例えば、アンドロゲン依存性脱毛症)、多毛症および性異常/性的倒錯に罹患している。
【0014】
本発明の化合物を使用して、他の核性レセプターを阻害し、関連する疾患状態を処置することができる。PPARγのレセプター活性化を本発明の化合物を用いて阻害でき、これにより疾患状態、例えば、インスリン耐性、糖尿病および脂肪異栄養症、とりわけコレステロール疾患などを処置することができる。本発明の化合物は、エストロゲンレセプターαおよびβ、例えば、乳癌、大腸癌、卵巣癌および子宮内膜癌、ならびに代謝調節に関連した疾患状態を処置する際に有用である。本発明の化合物により処置することができる他の疾患状態には、甲状腺ホルモンレセプターと関連した疾患、例えば、甲状腺および心臓疾患が挙げられる。かかる化合物を使用して、グルココルチコイドレセプターの阻害を増加させることもでき、これを様々な疾患の免疫抑制に使用できる。本発明の化合物は、妊娠の中断をひきおこすプロゲステロンレセプターを阻害することもできる。
【0015】
III.定義
本明細書において使用したとおり、「投与する」とは、経口投与、座剤としての投与、局所接触投与(topical contact)、非経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、病巣内投与、経鼻投与または皮下投与、髄腔内投与、または遅延放出型装置、例えば患者へのミニ浸透圧ポンプの移植をいう。
【0016】
本明細書において使用したとおり、用語「アルキル」とは、提示した炭素原子の数を有する、直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族基をいう。例えば、C1-C6アルキルには、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソ−プロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルなどを含むが、これらに限定するものではない。
【0017】
有機基または化合物に関して上記および後記に示した用語「低級」とは、7以下の、好ましくは4以下の、および(分枝された)1または2個の炭素原子により分枝され得るか、または分枝され得ない化合物またはラジカルを規定する。
【0018】
アルキルおよびヘテロアルキル基(とりわけ、アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルといわれる基を含む)としての置換基は、次の基:0〜(2m’+1)(式中、m’は、かかる基中の炭素原子の総数である)の範囲にある数にて、R'、-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R''、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R''R'''、OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、NRC(NR'R'')=NR'''、-NH-C(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR'、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-CNおよび-NO、2から選択される様々な基であってよい。R'、R''およびR'''は、各々独立して水素、非置換(C1-C8)アルキルおよびヘテロアルキル、非置換アリール、1-3個のハロゲンにより置換されたアリール、非置換アルキル、アルコキシまたはチオアルコキシ基、またはアリール-(C1-C4)アルキル基をいう。R'およびR''が同一の窒素原子と結合した場合、それらは、窒素原子と共に5、6、または7員環を形成できる。例えば、-NR'R''には、1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルが含まれることを意味する。置換基に関する上記議論から、当業者は、置換されたアルキルとは、例えばハロアルキル(例えば、-CF3および-CH2CF3)およびアシル(例えば、-C(O)CH3、-C(O)CF3、-C(O)CH2OCH3)などの基を含むと理解される。好ましくは、置換されたアルキルおよびヘテロアルキル基は1〜4個の置換基;より好ましくは、1、2または3つの置換基を有する。本発明により好ましくかつ意図される特例は、パーハロアルキル基(例えば、ペンタフルオロエチルなど)である。
【0019】
あるいは、R'、R''、R'''およびR''''は、各々好ましくは独立して水素、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、例えば、1-3つのハロゲンにより置換されたアリール、置換または非置換のアルキル、アルコキシまたはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基である。本発明の化合物には、1以上のR基が含まれる場合、例えば、R基の各々は、1以上のR'、R''、R'''およびR''''の基が存在する場合に各々R'、R''、R'''およびR''''基から独立して選択される。R'およびR''が同一の窒素原子に結合する場合には、それらは窒素原子と一緒になり5、6、または7員環を形成できる。例えば、-NR'R''には、1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0020】
本明細書において使用したとおり、用語「アルキレン」は、少なくとも2つの他の基を連結するアルキル基、すなわち1〜6個の炭素原子による二価の炭化水素基をいう。アルキルに関して、該アルキレン基は直鎖であるか、または分枝であり得る。例えば、直鎖アルキレンは、-(CH2)n-(式中、nは、1、2、3、4、5または6である)の二価の基であり得る。アルキレン基には、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレンが挙げられるが、これらに限定するものではない。同様に、「アルケニレン」、「アルキニレン」および「シクロアルキレン」は、アルケニル、アルキニルおよびシクロアルキル(範囲内を参照されたい)の二価の基である。
【0021】
本明細書において使用したとおり、用語「アルケニル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する2〜6個の炭素原子の直鎖または分枝鎖炭化水素をいう。アルケニル基の例示には、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ブタジエニル、ペンテニルまたはヘキサジエニルを含むが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書において使用したとおり、用語「アルキニル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する2〜6個の炭素の直鎖または分枝鎖炭化水素をいう。アルキニル基の例示には、アセチレン、プロピニルまたはブチニルを含むが、これらに限定するものではない。
【0023】
本明細書において使用したとおり、用語「アルコキシ」とは、酸素原子を包含するアルキル、例えば、メトキシ、エトキシなどをいう。「ハロ置換アルコキシ」とは、アルコキシとして定義されるとおりであるが、ここでこの中の数個または全ての水素原子がハロゲン原子により置換されている。例えば、ハロ置換アルコキシには、トリフルオロメトキシなどが含まれる。
【0024】
本明細書において使用したとおり、用語「シクロアルキル」とは、飽和または一部不飽和の単環式、縮合二環式、あるいは3〜12個の環原子(即ち、環員;すなわち、原子が直接結合して、該環骨格を形成する、例えばシクロヘキシル基中の6つの炭素)または提示した原子の数を併せて含有する架橋多環式環をいう。例えば、C3-8シクロアルキルには、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロオクチルまでが挙げられる。
【0025】
本明細書において使用したとおり、用語「ヘテロシクロアルキル」とは、3員環〜約20員環および1〜約5つのヘテロ原子、例えばN、OおよびSを有する環系をいう。別のヘテロ原子もまた有用であり得て、とりわけB、Al、SiおよびPを含むが、これに限定するものではない。該ヘテロ原子はまた酸化されてもよく、例えばS(O)-およびS(O)2であるが、これに限定するものではない。例えば、ヘテロシクロアルキルには、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、モルホリノ、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、インドリニル、キヌクリジニルおよび1,4-ジオキサ-8-アザ-スピロ[4.5]デカ-8-イルが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0026】
本明細書において使用したとおり、用語「アリール」とは、単環式または縮合二環式、三環式またはそれ以上、6〜16個の環炭素原子を併せて含有する芳香環をいう。例えば、アリールは、フェニル、ベンジルまたはナフチル、好ましくはフェニルであり得る。「アリーレン」は、アリール基から得られる二価の基を意味する。アリール基は、アルキル、アルコキシ、アリール、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、アミノ-アルキル、トリフルオロメチル、アルキレンジオキシ、およびオキシ-C2-C3-アルキレン;または1-または2-ナフチル;または1-または2-フェナントレニルから選択される1、2または3つの基により1、2または3置換され得る。「アルキレンジオキシ」は、2つの隣接するフェニルの炭素原子と結合した二価の置換基であり、例えばメチレンジオキシまたはエチレンジオキシである。「オキシ-C2-C3-アルキレン」は、またフェニルの2つの隣接する炭素原子と結合した二価の置換基、例えば、オキシエチレンまたはオキシプロピレンである。オキシ-C2-C3-アルキレン-フェニルの例示は、2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-イルである。
【0027】
好ましいアリール基には、ナフチル、フェニル、あるいはアルコキシ、フェニル、ハロゲン、アルキル、またはトリフルオロメチルにより一または二置換されたフェニル;より好ましくは、フェニル、あるいはアルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルにより一または二置換されたフェニル;ならびにフェニルが挙げられる。
【0028】
Rとしての置換フェニル基の例示は、例えば、4-クロロフェン-1-イル、3,4-ジクロロフェン-1-イル、4-メトキシフェン-1-イル、4-メチルフェン-1-イル、4-アミノメチルフェン-1-イル、4-メトキシエチルアミノメチルフェン-1-イル、4-ヒドロキシエチルアミノメチルフェン-1-イル、4-ヒドロキシエチル-(メチル)-アミノメチルフェン-1-イル、3-アミノメチルフェン-1-イル、4-N-アセチルアミノメチルフェン-1-イル、4-アミノフェン-1-イル、3-アミノフェン-1-イル、2-アミノフェン-1-イル、4-フェニル-フェン-1-イル、4-(イミダゾール-1-イル)-フェン-イル、4-(イミダゾール-1-イルメチル)-フェン-1-イル、4-(ホルホリン-1-イル)-フェン-1-イル、4-(ホルホリン-1-イルメチル)-フェン-1-イル、4-(2-メトキシエチルアミノメチル)-フェン-1-イルおよび4-(ピロリジン-1-イルメチル)-フェン-1-イル、4-(チオフェニル)-フェン-1-イル、4-(3-チオフェニル)-フェン-1-イル、4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-フェン-1-イル、および4-(ピペリジニル)-フェニルおよび4-(ピリジニル)-フェニルである。
【0029】
同様に、アリールおよびへテロアリール基としての他の置換基は、変更され、また芳香環系での0〜全数の広い価数の範囲にて、−ハロゲン、-OR'、-OC(O)R'、-NR'R''、-SR'、-R'、-CN、-NO2、-CO2R'、CONR'R''、C(O)R'、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR''C(O)2R'、-NR'-C(O)NR''R'''、NHC(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR'、-S(O)R'、-S(O)2R'、S(O)2NR'R''、-N3、-CH(Ph)2、パーフルオロ(C1-C4)アルコキシ、ならびにパーフルオロ(C1-C4)アルキルから選択される;ならびに、式中R'、R''およびR'''は、水素、(C1−C8)アルキルおよびヘテロアルキル、非置換アリールおよびへテロアリール、(非置換アリール)-(C1-C4)アルキル、および(非置換アリール)オキシ-(C1-C4)アルキルから独立して選択される。
【0030】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接した原子での2つの置換基は、所望により式-T−C(O)-(CH2)q-U-(式中、TおよびUは、独立して-NH-、-O-、-CH2-または単結合、およびqは0〜2の整数である)の置換基により置換されてもよく、あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子での2つの置換基は、所望により式−A−(CH2)r-B−(式中、AおよびBは独立して-CH2-、-O-、-NH-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR'-または単結合であり、rは1〜3の整数である)の置換基により置換されてもよい。そのように形成されたこの新規環の単結合の一つは、所望により二重結合により置換されてもよい。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子上の該置換基の2つは、所望により式−(CH2)s-X-(CH2)t-の置換基(式中、sおよびtは、独立して0〜3の整数であり、Xは-O-、-NR'-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、または-S(O)2NR'-である)により置換されてもよい。-NR'-および-S(O)2NR'-における置換基R'は、水素または非置換(C1-C6)アルキルから選択される。
【0031】
本明細書において使用したとおり、用語「ヘテロアリール」は、単環式または縮合二環式または5〜16個の環原子(ここで、1〜4個の環原子は、ヘテロ原子、即ち各N、OまたはSである)を一緒に含有する三環式芳香環(即ち、環員;即ち、原子が直接連結して環の骨格を形成する、例えば、2-ピリジル基中の5個の炭素と1個の窒素)をいう。例えば、ヘテロアリールには、ピリジル、インドリル、インダゾリル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、フラニル、ピロリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チエニル、あるいはアルキル、ニトロ、またはハロゲンにより置換されたその他の基(特に、一または二置換された基)が挙げられる。ピリジルは、2-、3-または4-ピリジル、有利には2-または3-ピリジルを表す。チエニルは、2-または3-チエニルを表す。キノリニルは、好ましくは2-、3-または4-キノリニルを表す。イソキノリニルは、好ましくは1-、3-または4-イソキノリニルを表す。ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニルは、好ましくは3-ベンゾピラニルまたは3-ベンゾチオピラニルを各々表す。チアゾリルは、好ましくは2-または4-チアゾリルを表し、最も好ましくは4-チアゾリルを表す。トリアゾリルは、好ましくは1-、2-または5-(1,2,4-トリアゾリル)を表す。テトラゾリルは、好ましくは5-テトラゾリルを表す。
【0032】
好ましくは、ヘテロアリールは、ピリジル、インドリル、キノリニル、ピロリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チエニル、フラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、イソキノリニル、ベンゾチエニル、オキサゾリル、インダゾリル、あるいはアルキル、ニトロ、またはハロゲンにより置換された基(特に、一または二置換された基)のいずれかが挙げられる。
【0033】
本明細書において使用したとおり、用語「アンドロゲンレセプター」は、アンドロゲン、例えば、テストステロンおよびジヒドロテストステロンを特異的に結合する核性レセプタースーパーファミリーの細胞内ステロイドレセプターをいう。
【0034】
本明細書において使用したとおり、用語「抗アンドロゲン」は、身体における正常な反応組織に対して、アンドロゲン、即ち男性ホルモンの生物学的効果を予防または阻害することができるホルモンレセプターアンタゴニスト化合物の一群をいう。抗アンドロゲンは、通常、好適なレセプターをブロックし、細胞内レセプター上で結合部位に競合し、そしてアンドロゲンシグナル伝達経路を妨害することにより作用する。式IおよびIIの化合物に加えて、抗アンドロゲンには、クマリン、ビカルタミド、フルタミド、ヒドロキシフルタミド、ニルタミド、スピオノラクトン、酢酸シプロテロン、ケトコナゾール、フィナステリド、デュタステライド、ハルマン、ノルハルマン、ハルミン、ハルマリン、テトラヒドロハルミン、ハルモール、ハルマロール、エチルハルモール、n−ブチルハルモールおよび他のβ−カルボリン誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
抗アンドロゲンは、重度の男性性疾患、例えば、性行動異常(過剰な性的欲求)および性的逸脱、特に性的倒錯を処置するため、さらに前立腺癌において抗腫瘍剤、苦痛緩和剤、アジュバントまたはネオアジュバンドホルモン療法として使用するために適応されることが多い。抗アンドロゲンは、良性前立腺過形成(前立腺肥大)、尋常性座瘡、アンドロゲン性の脱毛症(男性型のはげ頭)、および多毛症(過剰な毛髪の成長)の処置にも使用され得る。抗アンドロゲンは、性転換治療を受けている性転換女性の場合に男性化を防止または無効とする目的で、時には男性用避妊薬(male contraceptive agent)として使用されることもあり、そしてテストステロン低下に関連する症候、例えば去勢後のホットフラッシュを防止するために使用される。抗アンドロゲンにより処理できるその他の症状は、前立腺癌、とりわけ原発性およびホルモン不応性前立腺癌、卵巣癌、肝細胞 癌、尋常性座瘡、子宮内膜症、黒色表皮症、多毛症、乳癌、性的早熟、多嚢胞性卵巣症候群、良性前立腺過形成、脱毛症(例えば、アンドロゲン依存性脱毛症)、多毛症および性行動異常/性的倒錯である。
【0036】
本明細書において使用したとおり、用語「活性薬剤の組合せ」とは、少なくとも2以上の活性薬剤の組合せをいう。
【0037】
本明細書において使用したとおり、用語「対イオン」とは、電気的な中性を維持するためにイオン種を随伴するイオンをいう。対イオンは、原子状態であってもよく、例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、または金属性対イオンであってもよい。対イオンは、分子であってもよい、例えば、酢酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩およびエンボン酸塩(パモエート)である。対イオンは、正または負に電荷を帯びていてもよい。本発明の対イオンは負に電荷を帯びている。さらに、対イオンは、1、例えば2以上の電荷を持ち得る。当業者には、その他の対イオンが本発明において有用であることは理解されよう。
【0038】
本明細書において使用したとおり、用語「ホルモン療法」とは、医療処置においてホルモンを使用することをいい、さらにホルモン産生の阻害、例えばホルモンに対する直接的な競合剤、例えば抗アンドロゲンの使用をいう。
【0039】
本明細書において使用したとおり、用語「水和物」とは、少なくとも1つの水分子と錯体を形成する化合物をいう。本発明の化合物は、1〜10の水分子と錯体化することができる。
【0040】
本明細書において使用したとおり、用語「阻害する」とは、特定の作用または機能を、部分的または全体的に防止する化合物あるいは部分的または全体的に阻害する方法をいう。
【0041】
本明細書において使用したとおり、用語「LnRHアゴニスト」とは、黄体形成放出ホルモンレセプターと結合する化合物または生物学的分子をいう。
【0042】
本明細書において使用したとおり、用語「必要のある患者」とは、前立腺癌、多嚢胞性卵巣症候群、良性前立腺過形成、脱毛症および多毛症に罹患している患者をいう。必要のある患者が罹患している他の症状には、卵巣癌、肝細胞癌、尋常性座瘡、子宮内膜症、黒色表皮症、多毛症、乳癌、性的早熟および性行動異常/性的倒錯を含むが、これらに限定するものではない。抗アンドロゲンにより処置できる他の症状に罹患している患者も、本発明の方法により処置できる。本発明の方法を用いて処置できる患者は、動物、例えば哺乳動物、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどを含むが、これに限定するものではない。特定の実施態様において、該患者はヒトである。
【0043】
本明細書において使用したとおり、用語「プロドラッグ」とは、該プロドラッグが哺乳類対象に投与された場合に、本発明の方法に関する活性薬剤を放出できる共有結合した担体をいう。活性成分の放出はインビボでおこる。プロドラッグを、当業者には既知の技術により製造することができる。これらの技術は、一般的に所定の化合物中の好適な官能基を修飾する。しかし、これらの修飾された官能基は、通常の操作によるかまたはインビボにて元々の官能基を生成する。本発明の活性薬剤のプロドラッグには、プロドラッグ中でヒドロキシ基、アミジノ基、グアニジノ基、アミノ基、カルボキシル基または類似の基が修飾されたものも含む。
【0044】
本明細書において使用したとおり、用語「塩」とは、本発明の方法において使用した化合物の酸または塩基性塩をいう。医薬上許容される塩の代表的な例は、無機酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸など)の塩、有機酸(酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸など)の塩、4級アンモニウム(ヨウ化メチル、ヨウ化エチルなど)塩である。該医薬上許容される塩とは非毒性であると理解されよう。適切な医薬上許容される塩に対するさらなる情報は、「Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985」に見出すことができ、またこれを引用して本明細書の一部に組み込む。
【0045】
本発明の塩基性化合物の医薬上許容される塩は、酸、例えば無機酸、有機カルボン酸および有機スルホン酸、とりわけ塩酸、メタンスルホン酸、マレイン酸と共に形成した塩であり、塩基性基(例えば、ピリジル)を提供して、該構造の一部を構成することもできる。
【0046】
該化合物の中性形態を、該塩を塩基または酸と接触させることにより、また従来方法において親化合物を単離することにより生成させることができる。該化合物の親形態は、特定の物理的特性、例えば極性溶媒中の溶解性において様々な塩形態とは異なるが、一方で該塩は本発明の目的のためには本化合物の親形態と等価である。
【0047】
本明細書において使用したとおり、「治療上有効な量または用量」または「治療上十分な量または用量」または「有効なまたは十分な量または用量」とは、治療効果をもたらす一回用量をいい、そのために投与される量をいう。正確な用量は、処置の目的により変化し、良く知られた技術を用いて当業者により確認できる(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3、1992); Lloyd, The Art、Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); Pickar, Dosage Calculations (1999); and Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2003, Gennaro、Ed., Lippincott, Williams & Wilkins)を参照されたい。感作細胞では、治療上有効な用量は、非感作細胞のための従来の治療上有効な用量よりも低いことがおおい。
【0048】
本明細書において使用したとおり、「処置する」、「処置すること」および「処置」とは、処置における成功に関するあらゆる兆候、あるいは損傷、病理学、症状、または症候(例えば、痛み)、とりわけあらゆる主観的または客観的パラメーターの改善、例えば軽減;緩和;症候の減退または患者に対する該兆候、損傷、病理学または症状をより許容できる状態とすること;兆候または症状の頻度または持続を低下させること;または、ある状況において、症状または兆候の発症を予防することをいう。兆候の処置または改善は、任意の主観的または客観的パラメーター、例えば健康診断の結果を基にしてもよい。
【0049】
III.アンドロゲンレセプターを阻害する方法
(i)本発明は、かかる処置の必要な患者に、治療上有効量の式I、式IIの化合物または図9および図10に示した化合物を投与することにより、アンドロゲンレセプターを阻害する方法を提供する。本発明の方法において有用な化合物は、式Iの化合物および式IIの化合物を含む:
【化5】
(I)
【化6】
(II)
[式中、各々R1は、独立して水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、-OR4、-SR4、NR4R5、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである。
R2は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキル-OH、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである。R2’は、電子対、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキル-OH、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである。R3は、所望により1〜3つのR6基により置換されていてもよいシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである。R4およびR5は、各々独立して水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである。あるいは、R4およびR5は、それらが結合する窒素と一緒になって、5〜7員環および1〜3個のヘテロ原子、即ち各々独立してN、OまたはSを有する複素環を形成する。R6は、各々独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルまたはC1-6アルコキシである。Lは、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、C2-6アルキニレンまたはC3-6シクロアルキレンのリンカーである。Xは、-N(R7)-、6-10員環を有するアリール環、ならびに5〜6員環および1〜3個のヘテロ原子、即ち各々独立してN、OまたはSを有するヘテロアリール環であり、ここで該アリールおよび該ヘテロアリール環は、所望により各々1〜3つのR8基により置換される。R7は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである。各々R8は、独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルまたはC1-6アルコキシである。Yは、OまたはSである。式IおよびIIの化合物には、その塩、水和物およびプロドラッグが含まれる。式Iの化合物を投与することで、該方法により、アンドロゲンレセプターが阻害される。
【0050】
式IおよびIIの化合物のうちのいくつかの化合物は、既に知られている。式IおよびIIのその他の化合物は、新規化合物である。式IおよびIIの化合物は、他の抗アンドロゲン化合物、例えば、クマリン、ビカルタミド、フルタミド、ヒドロキシフルタミド、ニルタミド、スピオノラクトン、酢酸シプロテロン、ケトコナゾール、フィナステリド、デュタステライド、ハルマン、ハルミン、ハルマリン、テトラヒドロハルミン、ハルモール、ハルマロール、ハルミン酸、ハルミン酸メチルエステル、ハルミリン酸(harmilinic acid)、ハルマンアミド、アセチルノルハルミン、エチルハルモール、n-ブチルハルモールおよび他のβ−カルボリン誘導体と組合せることもできる。
【0051】
本発明の化合物は、アンドロゲンレセプターのホールディングを阻害すると考えられる、即ちレセプター活性化を阻害すると考えられる。かかる処置が必要な患者は、前立腺癌、とりわけ、原発性およびホルモン不応性前立腺癌、卵巣癌、肝細胞癌、尋常性座瘡、子宮内膜症、黒色表皮症、多毛症、乳癌、性的早熟、多嚢胞性卵巣症候群、良性前立腺過形成、脱毛症(例えば、アンドロゲン依存性脱毛症)、多毛症および性行動異常/性的倒錯に罹患していることがおおい。他の疾患の症状は、本発明の方法を用いて処置することができる。
【0052】
本発明の化合物は、アンドロゲンレセプターのホールディングを阻害すると考えられる、即ち、レセプター活性化を阻害すると考えられる。かかる処置が必要な患者は、前立腺癌、とりわけ原発性およびホルモン不応性前立腺癌、卵巣癌、肝細胞 癌、尋常性座瘡、子宮内膜症、黒色表皮症、多毛症、乳癌、性的早熟、多嚢胞性卵巣症候群、良性前立腺過形成、脱毛症(例えば、アンドロゲン依存性脱毛症)、多毛症および性行動異常/性的倒錯に罹患していることがおおい。他の疾患状態は、本発明の方法を用いて処置することができる。
【0053】
別の実施態様において、本発明の方法は、本発明の化合物または組成物の局所投与により脱毛症を処置する。
【0054】
別の実施態様において、式Iおよび式IIの化合物は、ホルモン療法のための化合物が抗アンドロゲンまたはLnRHアゴニストである場合に、ホルモン療法と共に投与される。いくつかの実施態様において、該化合物は別々に投与される。別の実施態様において、該化合物は混合される。いくつかの別の実施態様において、該化合物は同時に投与される。さらに別の実施態様において、該化合物は、様々な時点で投与される。
【0055】
いくつかの別の実施態様において、式Iおよび式IIの化合物は、治療上有効量のドセタキセル(タキソール)、パクリタキセル(タキソテール)、ビカルタミド、フルタミド、ヒドロキシフルタミド、ニルタミド、スピオノラクトン、酢酸シプロテロン、ケトコナゾール、フィナステライドまたはデュタステライドと組合せて投与される。別の実施態様において、式Iおよび式IIの化合物は、治療上有効な量のクマリンと組み合わせて投与される。
【0056】
IV.アンドロゲンレセプターを阻害するための化合物
本発明において有用な化合物は、アンドロゲンレセプターを阻害するものである。有用な化合物は、下記に例示したアッセイ方法を用いて同定され得る。これらの化合物は、市販購入し得るか、または当業者には既知の方法を用いて合成され得る。
【0057】
いくつかの実施態様において、本発明の方法において有用な化合物は、式Iの化合物を含む:
【化7】
(I)
[式中、各々R1は、独立して水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、-OR4、-SR4、NR4R5、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである。R2は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキル-OH、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである。R3は、所望により1〜3つのR6基により置換された、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールである。R4およびR5は、各々独立して水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである。あるいは、R4およびR5は、それらに結合する窒素と一緒になって、5〜7員環および1〜3個のヘテロ原子、即ち各々独立してN、OまたはSを有する複素環を形成する。各々R6は、独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルまたはC1-6アルコキシである。Lは、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、C2-6アルキニレンまたはC3-6シクロアルキレンのリンカーである。Xは、-N(R7)-、6-10員環を有するアリール環、ならびに5〜6員環および1〜3個のヘテロ原子、即ち各々独立してN、OまたはSを有するヘテロアリール環であり、ここで該アリールおよび該ヘテロアリール環は、各々所望により1〜3つのR8基により置換される。R7は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである。各々R8は、独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルまたはC1-6アルコキシである。式Iの化合物には、その塩、水和物およびプロドラッグが含まれる。
【0058】
いくつかの実施態様において、Lはエチレン、エテニレンまたはシクロプロピレンである。
【0059】
いくつかの別の実施態様において、本発明の化合物は、式Iaの化合物を含む:
【化8】
(Ia)。
【0060】
別の実施態様において、Xはヘテロアリールである。さらに別の実施態様において、Xはピロールである。さらに別の実施態様において、Xはアリールである。さらにまた別の実施態様において、該化合物は、下記の化合物であり得る:
【化9】
または
【化10】
【0061】
別の実施態様において、本発明の化合物は、下記式の化合物を含む:
【化11】
[式中、R1は、-NR4R5であり、R4およびR5がそれらに結合する窒素原子と一緒になって、5〜7員環および1〜3個のヘテロ原子、即ち各々独立してN、OまたはSを有する複素環を形成するようなものである。R3はアリールである。Xはヘテロアリールである。
【0062】
いくつかの実施態様において、本発明の化合物は式Ibの化合物を含む:
【化12】
【0063】
別の実施態様において、式Ibの化合物は次のものである:
【化13】
。
【0064】
いくつかの別の実施態様において、本発明の化合物は、式Icの化合物を含む:
【化14】
(Ic)。
【0065】
別の実施態様において、本発明の化合物は、式Idの化合物を含む:
【化15】
(Id)。
【0066】
別の実施態様において、式Iの化合物の塩形態は、パモエート、クロライド、ブロミド、スクシネート、マレエートまたはアセテートの対イオンを含む。
【0067】
別の実施態様において、本発明の方法において有用な化合物は、式IIの化合物を含む:
【化16】
(II)
[式中、R1、R3、R4、R5、R6、R7、R8、XおよびLは、上記に規定したとおりである;R2’は、電子対、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキル-OH、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルである;ならびにYは、OまたはSである。式IIの化合物は、その塩、水和物およびプロドラッグを含む。
【0068】
いくつかの実施態様において、式IIの化合物は下記のものを含む:
【化17】
[式中、Xはアリールまたはヘテロアリールである。別の実施態様において、該化合物は、下記の式を示す:
【化18】
【0069】
いくつかの別の実施態様において、R1およびR3は双方アリールであり、R1およびR3は双方C1-6アルキルである。さらに別の実施態様において、化合物は下記のものである:
【化19】
。
【0070】
V.アンドロゲンレセプターを阻害するための製剤
本発明の化合物は、当業者には既知の多様な方法で製剤され得る。医薬上許容し得る担体は、投与される特定の組成物により、ならびに該組成物を投与するために使用した特定の方法によりある程度決定される。従って、本発明の医薬組成物の好適な広範囲の様々な製剤が存在する(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th ed., 2003, 上掲を参照されたい)。例えば、本発明の化合物を、広範で多様な経口、注射用および局所投薬形態にて製造および投与することができる。本発明の化合物を、非経口投薬形態にて製造および投与することもできる。従って、本発明の化合物は、注射により投与してもよく、即ち静脈内で、筋肉注射で、皮内に、皮下に、十二指腸内、または腹腔内に投与してもよい。また、本明細書に記載した化合物は、吸入により投与してもよく、例えば経鼻投与することができる。さらに、本発明の化合物は、経皮的にまたは局所的に、例えば、液体またはゲル形態にて、またはパッチとして投与することができる。
【0071】
従って、本発明はまた、医薬上許容し得る担体または賦形剤ならびに本発明の1以上の化合物を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施態様において、本化合物は、以下のいずれかであり得る:
【化20】
【化21】
【化22】
【0072】
別の実施態様において、化合物は下記のものであり得る:
【化23】
。
【0073】
投与のために好適な製剤は、(a)液体溶液、例えば、希釈剤、例えば、水、生理食塩水またはPEG400に懸濁された有効量の本発明の化合物;(b)所定量の活性成分を、液体、固体、顆粒またはゼラチンとして液体、固体、顆粒またはゼラチンとして各々含有するカプセル、サシュ、デポーまたは錠剤;(c)好適な液体中の懸濁液;(d)好適なエマルジョン;ならびに(e)パッチを構成できる。医薬形態には、1以上のラクトース、シュクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、微晶質セルロース、ゼラチン、コロイド状シリコンジオキシド、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、香味剤、染料、崩壊剤、ならびに医薬上相溶し得る担体を含むことができる。ロゼンジ形態には、風味剤中、例えばシュクロース中に活性成分を含むことができ、ならびに不活性基剤(例えば、ゼラチンおよびグリセリンまたはシュクロースおよびアカシアエマルジョン、ゲルなど)中に活性成分を含み、該活性成分に加えて当分野では既知の担体を含有するトローチも含むことができる。
【0074】
医薬製剤は、好ましくは単回投薬形態である。かかる形態において、該製剤は、好適な量の活性成分を含有する単回投与量に分割される。該単回投薬形態は、包装調製物、個別の量の製剤を含有する包装物、例えば、包装錠剤、カプセル、およびバイアルまたはアンプル中の粉末であってもよい。また、単回投薬形態は、カプセル剤、錠剤、カシュ、またはロゼンジ自体であってもよい、あるいは、包装形態にてこれらのいずれか一つの好適な数をふくんでもよい。該組成物はまた、必要であれば、他の混合可能な治療薬を含有してもよい。好ましい医薬製剤を徐放性処方にて本発明の化合物を送達できる。
【0075】
医薬製剤は、通常、ヒトおよび非ヒト哺乳動物をふくめた哺乳動物に送達される。本方法を用いて処置される非ヒト哺乳動物には、屋内飼育動物(すなわち、イヌ、ネコ、ネズミ、齧歯類、およびウサギ)および屋外飼育動物(ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ)が含まれる。
【0076】
癌治療のために、本発明の製剤は、治療上有効量の抗アンドロゲンまたはLnRHアゴニストと組合せて式IまたはIIの化合物を含み得る。抗アンドロゲンは、上記のとおり、クマリン、ビカルタミド、フルタミド、ヒドロキシフルタミド、ニルタミド、スピオノラクトン、酢酸シプロテロン、ケトコナゾール、フィナステリド、デュタステライド、ハルマン、ノルハルマン、ハルミン、ハルマリン、テトラヒドロハルミン、ハルモール、ハルマロール、エチルハルモール、n-ブチルハルモールおよび他のβ−カルボリン誘導体を含むが、これらに限定するものではない。
【0077】
本発明の方法を行う際に、医薬組成物を、単独または他の治療用または診断用薬と組み合わせて使用できる。本発明の併用プロトコールにて使用された別の抗癌薬を、別個に製剤するか、または1以上の併用プロトコールにて使用された抗癌薬を、例えば混合して一緒に製剤してもよい。
【0078】
本発明の製剤は、式IおよびIIの化合物の組合せをふくむことができる。また、別の治療薬または診断薬も、例えば上記に示したように、式IおよびIIの化合物の組成物と組み合わせて製剤することができる。
【0079】
VI.アンドロゲンレセプターを阻害するための投与
本発明の化合物は、必要な頻度に応じて、とりわけ時間単位、日数単位、週単位または月単位で投与され得る。本発明の医療方法に利用した化合物を、1日あたり約0.0001mg/kg〜約1000mg/kgの開始投与量にて投与される。約0.01mg/kg〜約500mg/kg、または約0.1mg/kg〜約200mg/kg、または約1mg/kg〜約100 mg/kg、または約10mg/kg〜約50mg/kgの一日の用量範囲を使用できる。しかし、投与量を、患者の要件、処置される症状の重症度、および用いる化合物により変更してもよい。例えば、投与量を、特定の患者における診断された疾患の型および段階を考慮して実験的に決定することができる。本発明の内容において患者に投与した用量は、時間中、患者における治療応答に対して効果を発揮するのに十分であるべきである。また、用量の範囲(size)も、特定の患者にける特定の化合物の投与と同時におこるあらゆる副作用の存在、性質、および程度により決定される。特定の状況について好適な用量の決定は、医師の技術範囲内にある。一般的に、処置は、この化合物の至適用量未満であるより少量の投与量にて開始される。その後、該投与量を、環境の下で至適効果が達成されるまで、少量ずつ増加させる。好都合には、一日の全投与量を分割してもよく、必要であれば一日の間に少量ずつ投与されてもよい。該用量は、医師により決定されたとおり毎日または隔日投与されてもよい。また、該用量は、より長い時間(週、月または年)にわたって、定期的または継続的基準により、例えば、皮下カプセル剤、サッシュまたはデポー、またはパッチを使用して提供される。
【0080】
医薬組成物は、多様な方法、例えば、局所的、非経口的、静脈内、皮内的、筋肉注射、経大腸(colonically)、経腸的にまたは腹腔内にて患者に投与される。好ましくは、該医薬組成物を、非経口的、局所的、静脈内、筋肉注射または経口的に投与される。
【0081】
本発明の方法を実施する際に、該医薬組成物を、単独、あるいは他の治療薬または診断薬を組み合わせて用い得る。併用プロトコールにて使用される別の抗癌薬を、別々に投与するか、または併用プロトコールにて使用される1以上の抗癌薬を、一緒に(例えば、混合して)投与することができる。1以上の抗癌剤を別々に投与する場合、各薬物の投与時期およびスケジュールを変更できる。他の治療または診断薬を、式IおよびIIの化合物と同時に、別々に、または異なる時点で投与してもよい。
【0082】
式IおよびIIの化合物はまた、任意の好適な組合せにて投与され得る。別の治療薬または診断薬を、式IおよびIIの組合せと共に組み合わせて投与できる。
【0083】
本発明の化合物をホルモン療法により投与できる。ホルモン療法のための化合物には、抗アンドロゲンおよびLnRHアゴニストを含むが、これらに限定するものではない。
【0084】
臨床試験において、多くの創傷、腫瘍サイズ、および腫瘍増殖速度を、X線撮影、断層撮影法、ならびに可能な腫瘍量の直接測定により追跡することができる。抗腫瘍効果もまた、分子生物学および生化学技術、例えば、ELISA、PCR、ウェスタンブロッティング、または免疫細胞化学を用いて測定することができる。
【0085】
単回用量として必要な組成物の医薬上有効な量は、投与経路、処置する癌のタイプ、および患者の身体的特徴に依存する。該用量は、所望の効果を達成するために改変できるが、それは医薬分野の当業者には認識されるであろう身体表面積、体重、食事、同時投薬およびその他の因子のようなかかる因子に拠る。
【0086】
前記は、例えば、疾患タイプおよび等級、患者の年齢、健康状態および性別、組合せて使用される特定の薬物、投与の経路および頻度、および複数の薬物の組合せを用いる実験的および臨床的知見に基づいて拡張または変更できる一般的なガイドラインである。
【実施例】
【0087】
VII.実施例
実施例1:化合物の製造
本発明の方法において有用な化合物を、下記方法に従って製造できる。ピルビニウムパモエートは、MP Biochemicals(Solon, Ohio)から購入できる。ハルモールHClは、Sigama(St. Louis, Missouri)から購入できる。
【0088】
{2-[2-(2,5-ジメチル-1-フェニル-1H-ピロール-3-イル)-ビニル]-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-キノリン-6-イル}-ジメチル-アミン
【化24】
【0089】
6-ジメチルアミノ-2-[2-(2,5-ジメチル-1-フェニル-1H-ピロール-3-イル)-ビニル]-1-メチル-キノリニウム, パモエート塩(ピルビニウムパモエート、500 mg、0.434 mmol)を、室温で攪拌しながらEtOH(10ml)に溶解した。水素化ホウ素ナトリウム (67.5 mg、1.74 mmol)を一部添加した。該反応の完了がLC-MS分析により判定されるまで攪拌を3.5時間継続した。該反応混合物を、水(10ml)で処理して、3回ジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン層を併合し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、濾過して、濃縮した。該残留物(394 mg)を、12のカラム容量のヘキサン中0-25% 酢酸エチルのグラジエントを用いる高性能フラッシュクロマトグラフィー(Biotage 25+M、シリカカートリッジ)により精製して、{2-[2-(2,5-ジメチル-1-フェニル-1H-ピロール-3-イル)-ビニル]-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-キノリン-6-イル}-ジメチル-アミンを黄橙色油状物として得た。収量:150 mg (45%). 1H NMR: (400MHz、CDCl3) 1.90 (m, 1H)、1.94 (s, 3H)、1.97、(s, 3H)、2.09 (m, 1H)、2.72-2.80 (m, 2H)、2.79 (s, 6H)、2.83 (s, 3H)、3.74 (m, 1H)、5.78 (dd, J=8 Hz,16 Hz,1H)、6.08 (s、1H)、6.38 (d、J = 16 Hz,1H)、6.56 (m, 2H)、6.65 (m, 1H)、7.13 (m, 2H)、7.38 (m, 3H) ESI−MS(m/z): [M+H]+ =386.
【0090】
ジメチル-1-フェニル-1H-ピロール-3-イル)-エチル]-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-キノリン-6-イル}-ジメチル-アミン
【化25】
{2-[2-(2,5-ジメチル-1-フェニル-1H-ピロール-3-イル)-ビニル]-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-キノリン-6-イル}-ジメチル-アミン(25 mg、0.065 mmol)を、メタノール(4ml)に溶解し、10% Pd/C(13mg)と併用した。該混合物を、水素ガス(バルーン)大気中で2時間攪拌するか、またはLC-MS分析による判断に従って該反応が完了するまで攪拌した。該反応混合物を、次いでセライトを通して濾過し、追加のメタノールで洗浄し、濾液を濃縮し、油状物を得た。粗製残渣(27 mg)を、分取HPLCにより精製し、トリフルオロ酢酸(TFA)塩として表題化合物{2-[2-(2,5-ジメチル-1-フェニル-1H-ピロール-3-イル)-エチル]-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-キノリン-6-イル}-ジメチル-アミンを得た。収量:23 mg (70%). 1H NMR: (400MHz、CDCl3) 1.59 (m, 1H)、1.85-2.03 (m, 3H)、1.91 (s, 3H)、1.97 (s, 3H)、2.33-2.52 (m, 2H)、2.67-2.92 (m, 2H)、2.94 (s, 3H)、3.11 (s, 6H)、3.36-3.42 (m, 1H)、5.78 (s、1H)、6.53 (d、J = 8Hz、1H)、1.83 (m, 1H)、7.08-7.39 (m, 3H)、7.32-7.46 (m, 3H) ESI−MS(m/z): [M+H]+ = 388.
【0091】
実施例2:新規ARアンタゴニストのためのスクリーニング
以下のアッセイは、アンドロゲン-レセプターアンタゴニストである化合物を同定する方法を提供するものである。
【0092】
NINDSにより作成されたライブラリーをスクリーニングした。ライブラリーは、1040 FDA承認薬および天然の生成物から構成される。各一次スクリーニングから化合物を選択および比較するための基本的なストラテジーを確立した(図1)。
【0093】
転写アッセイを、MMTV−ルシフェラーゼ、SV40-レニラ・ルシフェラーゼ、およびネイティブARをコードするプラスミドを用いて10cmプレートのHEK293細胞をトランスフェクトすることにより行った。これらの細胞が有用であるのは、前立腺から得た細胞の限られたトランスフェクション効率がこのアッセイの変動を増加させることが理由である。FRETアッセイを、CFP−AR−YFP融合タンパク質:HEK293/C-AR−YおよびLAPC4/C−AR−Yを各々安定に発現する2つの独立した細胞系を用いて行った。LAPC4細胞は、前立腺から得た細胞系統である((Klein, K.A., et al., Progression of metastatic human prostate cancer to androgen independence in immunodeficient SCID mice. Nat Med, 1997. 3(4): p.402-8)。FRETとは、ヒトアンドロゲンレセプターのアミノおよびカルボキシル末端に融合した蛍光青緑色と黄色の蛍光タンパク質誘導体(CFP、YFP)間の蛍光共鳴エネルギー移動である。リガンドが該レセプターを活性化させる場合に、CFPおよびYFPを近接近にて架橋する構造変化がおこり、FRETが生じる。この分光学的変化は蛍光プレートリーダーを用いて検出される。
【0094】
転写アッセイのために、トランスフェクトした細胞を、10μMの試験化合物と共に96ウェルディッシュに播種する前に集めた。各プレートには、「非DHT」および「非処置」コントロール、ならびに1μM OH−Fを含むポジティブコントロールが含まれる。FRETアッセイのために、細胞を10μMの試験化合物と共に96-ウェルプレートに直接播種した。細胞および化合物の移動は液体処理ロボットにより行った。細胞を、10nM DHTおよび試験化合物の存在下にて24時間培養した。24時間後に、FPR(FRETアッセイ)にて計測するために、細胞を凍結融解(転写アッセイ)により分解するか、または4%パラホルムアルデヒドに固定した。各化合物を、一次スクリーニングにおいて2回試験した。
【0095】
該化合物を、抗アンドロゲン効果に基づいて分類した。さらなる分析について選択されるためには、試験化合物は、リプリケート両方において作用すべきであり、かつ各ケースにおいて、DHT単独により処置されたサンプル平均からの少なくとも1つの標準偏差まで該シグナルを低下させなければならない。これにより、一回目の試験時に強力な応答を示し、2回目には示さないという状況が排除された。最終的に、レニラ・ルシフェラーゼ(基質特異性に基づいてホタルルシフェラーゼとは区別される)について特異的に試験された転写アッセイについては、細胞毒性の証拠は存在しなかったはずであり、また2つの標準偏差以下にこのシグナルを低下した化合物が排除された。FRETアッセイのために、毒性化合物は、元々のCFPおよびYFPシグナルに対するそれらの効果から容易に検出され、2つの標準偏差以下にこのシグナルを低下させた化合物が排除された。
【0096】
一次スクリーニングからのヒットの分析。図2は、スクリーニングの結果を示す。該データは、各アッセイ系が有効性に従って化合物を分類できたことを明確に示す。ヒットを、様々なストリンジェンシーを用いて分類して、各アッセイに対して限定したヒット数を選択するのに必要とされる平均からの偏差の程度を決定する。構造アッセイは、HEK293またはLAPC4細胞を使用した場合に、低いストリンジェンシーを用いて高い選択性を達成したが、転写を基にしたアッセイでは、同じ選択性を達成するためにはより高いストリンジェンシーが必要であった。従って、構造アッセイでは、非特異的な細胞変動(perturbation)に対する感受性は低いが、多くの化合物は転写応答を変動させることができた。
【0097】
各々一次アッセイにおいて同定した上位50の化合物を、その後別の2種のアッセイにおいて試験した。別の分析には含まれなかった各アッセイにおける上位のヒットは、ライブラリー(ヒドロキシ-フルタミド、ニルタミド、シプロテロン、および酢酸シプロテロン)から既知の全ての抗アンドロゲン、ならびにμモル濃度でARと交差反応を示す特定のステロイドホルモンであった。ベン図により、一次アッセイ間である程度重複することが示される:一つのアッセイにて評点したヒットのおおよそ20-30%を、別のアッセイで評点した(図3)。
【0098】
「有効な」ヒットを決定するために、この上位50種の化合物を、それらを検出した元々のアッセイにおける漸増試験により再度試験して、古典的な用量応答パターンを示した化合物のみを選択した。各アッセイからの有効なヒットを他のアッセイにおける活性について比較した場合、より高い割合(おおよそ55-82%)の化合物が、一次スクリーニングよりも少なくとももう1つの別のアッセイにおいてポジティブと評点された。いくつかの化合物(3)は、全ての3つのアッセイにおいてポジティブと評点された。これは、各スクリーニング方法は、交差アッセイから有効性により化合物を同定するための可能性を示すという考えと一致するが、新たな側面を創薬に加え得るかもしれない。重要なことは、この少ない有効なヒット数のうち、HEK293 FRETアッセイにて1つの化合物、LAPC4 FRETアッセイにて3つの化合物は、最初のHEK293 一次転写アッセイの選択基準を満たさなかったが、その後の精査分析によってAR媒介性の転写阻害を示したということを見出したことである。従って、FRETアッセイにより、転写アッセイ単独と比べて創薬を補強させることができる。
【0099】
新規抗アンドロゲンの同定。ストリンジェントスクリーニングプロトコールをクリアしたいくつかのリード化合物、および以前に認識されていなかった抗アンドロゲン活性を有する3つのクラス:クマリン、例えば、ワルファリン、スコポレチン、およびエスクリン;ハルモール塩酸塩、天然生成物(HH);ならびにFDA承認の抗蠕虫剤、ピルビニウムパモエート(PP)など。
【0100】
内性のAR活性に対してピルビニウムおよびハルモールの有効性を評価するために、各化合物を、内性のARを発現する2つの前立腺癌から得た細胞系統であるLAPC4(Klein, K.A., et al., Progression of metastatic human prostate cancer to androgen independence in immunodeficient SCID mice. Nat Med, 1997. 3(4): p. 402-8)およびLNCaP(Horoszewicz, J.S., et al., The LNCaP cell line- a new model for studies on human prostatic carcinoma. Prog Clin Biol Res, 1980. 37: p. 115-32))における用量応答アッセイにて試験した。LAPC4細胞は、野生型ARを発現するが、一方ホルモン不応答性のPCaから得られるLNCaP細胞は、多様なリガンド、とりわけアンタゴニストヒドロキシ-フルタミド(OH−F)に反応性となる変異(T877A)を有するARを発現する。細胞を、2種のレポータープラスミド、PSAルシフェラーゼ構築体(アンドロゲン反応性)と、内部標準としてSV40-レニラ・ルシフェラーゼ構築体とを用いて形質転換した。次の日に、細胞を分けて、薬物を3nM DHTの存在下で添加した。ルシフェラーゼ生成を次の日に測定した(Dual luciferase kit、Promega)。
【0101】
構造アッセイまたは転写レポーターアッセイのいずれかで、DHTの非存在下において10uMを超える用量でさえアンドロゲン活性を示す化合物はなかった。PPおよびHHは、レポーター転写阻害時に競合的アンタゴニストであるOH−Fおよびビカルタミド(BiC)よりも効果がさらに高かったため(表1)、これらの化合物の抗アンドロゲン特徴をさらに試験した。PPおよびHHの双方は、BiCよりも遙かに優れた効果でDHT-応答性遺伝子発現を阻害した(表1)。ピルビニウムのパモエート塩が、転写阻害を媒介する可能性を排除するために、アニオン交換(Dowex)を使用して、パモエートを塩化物イオンに置き換えた。塩化ピルビニウムは、ピルビニウムパモエートと実に同じ効果であった(図4)。
【0102】
表1. 新規抗アンドロゲンのためのスクリーニングにて同定した様々な化合物のIC50
【表1】
PP=ピルビニウムパモエート;HH=ハルモール塩酸塩;OH−F=ヒドロキシ-フルタミド;BiC=ビカルタミド。nd=データなし
【0103】
実施例3:アンドロゲンレセプターの阻害に対するアッセイ
このアッセイは、実施例2にて同定した化合物が、内性アンドロゲンレセプター遺伝子発現を阻害し、かつ競合的アンタゴニストではないことを下記に示す。
【0104】
リード化合物の効果が、内性のAR制御性遺伝子発現に対して実際に有効であることを確認するために、定量的なRT−PCR(qRT−PCR)を使用して、LAPC4およびLNCaP細胞中のアンドロゲン反応性遺伝子の厳選した数に対する効果をモニターした。LAPC4およびLNCaP細胞を、阻害剤を含むか、または含まないチャコール・ストリップド培地(charcoal-stripped media)中で3nM DHTの存在および非存在にて増殖させた。RNAを、RNAイージキット(Qiagen)を用いて収集し、逆転写した(MMLV-RT, Invitrogen)。リアル−タイムPCRを、検出染料としてSYBR緑色および参照染料としてRoxを用いて7300 リアル・タイム・PCR系(Applied BiosysteMs)にて実施した。アンドロゲン反応性遺伝子のカリクレイン3またはPSA(KLK3)[Cleutjens, K.B., et al., Two androgen response regions cooperate in steroid hormone regulated activity of the prostate-specific antigen promoter. J Biol Chem, 1996. 271(11): p. 6379-88;Nelson, P.S., et al., The program of androgen-responsive genes in neoplastic prostate epithelium. Proc Natl Acad Sci U S A, 2002. 99(18): p. 11890-5]、メタロプロテイナーゼ16(MMP16)(Nelson, P.S., et al., The program of androgen-responsive genes in neoplastic prostate epithelium. Proc Natl Acad Sci U S A, 2002. 99(18): p.11890-5)、膜貫通プロテアーゼセリン2(TMPRSS2)(Nelson, P.S., et al., The program of androgen-responsive genes in neoplastic prostate epithelium. Proc Natl Acad Sci U S A, 2002. 99(18): p. 11890-5; Aronin, N., et al., Are there multiple pathways in the pathogenesis of Huntington's disease? Philosophical Transactions of the Royal Society of London. Series B: Biological Sciences, 1999. 354(1386): p. 995-1003; Vaarala, M.H., et al., Expression of transmembrane serine protease TMPRSS2 in mouse and human tissues. J Pathol, 2001. 193(1): p. 134-40)、FK506結合イムノフィリン51(FKBP51)(Nelson, P.S., et al., The program of androgen-responsive genes in neoplastic prostate epithelium. Proc Natl Acad Sci U S A, 2002. 99(18):p.11890-5; Amler, L.C., et al., Dysregulated expression of androgen-responsive and nonresponsive genes in the androgen-independent prostate cancer xenograft model CWR22-R1., Cancer Res, 2000. 60(21): p. 6134-41; Velasco, A.M., et al., Identification and validation of novel androgen-regulated genes in prostate cancer. Endocrinology, 2004. 145(8): p. 3913-24; Magee, J.A., et al., Direct, androgen receptor-mediated regulation of the FKBP5 gene via a distal enhancer element. Endocrinology, 2006. 147(1): p. 590-8)、Gタンパク質共役受容体RDC1ホモログ、またはケモカインオーファン受容体1(RDC−1)(Nelson, P.S., et al., The program of androgen-responsive genes in neoplastic prostate epithelium. Proc Natl Acad Sci U S A, 2002. 99(18): p. 11890-5)、NKホメオボックスファミリーメンバー3(Nkx3.1)(Nelson, P.S., et al., The program of androgen-responsive genes in neoplastic prostate epithelium. Proc Natl Acad Sci U S A, 2002. 99(18): p. 11890-5; Bieberich, C.J., et al., Prostate-specific and androgen-dependent expression of a novel homeobox gene. J Biol Chem, 1996. 271(50): p. 31779-82; Aboody-Guterman, K.S., et al., Green fluorescent protein as a reporter for retrovirus and helper virus-free HSV-1 amplicon vector-mediated gene transfer into neural cells in culture and in vivo. Neuroreport, 1997. 8(17): p. 3801-8)を、ハウスキーピング・リボゾーマル遺伝子(RPL19)の転写に対して全て正規化した。全てのサンプルを3回行い、それぞれに正規化した。KLK3、Nkx3.1、TMPRSS2、およびFKBP51は、DHTによる処置により全て誘導されたが、この誘導はBiC、PPおよびHHにより種々に阻害された。同様に、MMP−16およびRDC−1は、DHTによる処置により抑制されたが、この抑制は、全てのAR阻害剤により種々の程度まで上昇された。表2は、各細胞タイプの3または4の独立したqRT−PCR実験から得た結果を要約したものである。LNCaP、Nkx3.およびTMPRSS2においてDHTにより誘導されることが知られる2つの遺伝子は、LAPC4細胞中で顕著に誘導されなかった。PPおよびHHの双方は、いくつかのアンドロゲン反応性遺伝子の発現を少なくともBiCと同等の効率で迅速に抑制することが観察された(表2)。
【0105】
表2. PPおよびHHは、内性ARにより媒介される遺伝子発現を各々阻害する。PPおよびHHの双方は、BiCに匹敵するか、またはBiCよりも優れた様式でアンドロゲン誘導性遺伝子誘導を低下させた。アンドロゲン抑制性遺伝子の評価(下部に示した)から、該阻害剤は各々発現を活性化したことが示された。
【0106】
【表2】
【0107】
PPおよびHHは、非競合的アンタゴニストである。PPおよびHHがARの競合的または非競合的アンタゴニストとして作用するかどうかを決定するための第一ステップとして、PSAルシフェラーゼ・レポーターにより一過的に形質転換されたLNCaP細胞内でDHTを漸増させ、各阻害剤の中程度の用量により処理した。DHTはOH−Fの阻害効果をこえて、最大の活性化をもたらす。これに対して、PPおよびHHの双方は、DHTの最終濃度が非常に高いにかかわらず(図5)、最大のDHT誘発性活性化を阻害した。これは非競合的アンタゴニストとしての活性と一致した。
【0108】
実施例4. PP、HHおよびBiCの相乗作用
アンドロゲンレセプター アンタゴニストとしてのPP、HHおよびBiCを使用する際の相乗効果の存在を、下記の方法を用いて確認した。
【0109】
リード化合物およびBiCとの間の相乗効果が存在することを、LAPC4およびLNCaP細胞を用いて試験した。様々な組合せでPSA-ルシフェラーゼにより形質転換したLNCaPおよびLAPC4細胞に添加した場合、PPおよびHHの双方は、各化合物と互いに、そしてBiC(表3)とも相乗効果を示した。相乗効果とは、Chou ら(Chou, T.C. and P. Talalay, Quantitative analysis of dose-effects relationships: the combined effects of multiple drugs or enzyme inhibitors. Adv Enzyme Regul, 1984. 22: p.27-55)により記述された包括的仮定を用いて、1未満の組合せインデックスとして規定できる。PP、HHおよびBiCの間の相乗効果は、それらが異なるメカニズムにより作用することを示す。
【0110】
表3. PP、HHおよびBiC間の相乗効果。用量応答曲線を、所定の細胞型(LNCaPまたはLAPC4)においてPSA-ルシフェラーゼからの転写物を活性化するように3nM DHTを用いて、所定の比率の阻害剤を用いて行った。予測IC50値を、この組合せにて示した第一の薬剤について報告する。組合せインデックスは、Chou ら(1984);1未満の数字は相乗効果を示す;に基づく「相乗効果」に関する計算した測定値である。
【表3】
【0111】
実施例5:PPおよびHHによる増殖阻害
下記に示した方法を用いて、PPおよびHHが細胞培養中のLAPC4およびLNCaP細胞のアンドロゲン依存性増殖、ならびに「アンドロゲン独立型」前立腺癌のモデルであるARを過剰発現するLN-AR細胞のアンドロゲン独立型増殖に影響するかどうかを決定した。
【0112】
LN-AR細胞を、LNCaP細胞中に高発現ARベクターをレトロウイルス感染させて作出し、この親の系統とは異なり、細胞培養中でアンドロゲンが独立して増殖する(Chen, C.D., et al., Molecular determinants of resistance to antiandrogen therapy. Nat Med, 2004.10(1):p.33-9)。HEK293細胞をコントロールとして使用した。細胞を、それらを分ける前にチャコール・ストリップ培地に2日間移し、48ウェルプレート中でおおよそ20,000細胞/ウェルの密度にて4連で培養した。翌日、3nM DHTを含むかまたは含まない培地を、PP(100nM)、HH(100nM)、またはBiC(1μM)と共に含むかまたは含まずに細胞に添加した。培地を、単一の調整物を用いて毎日交換して、一定の化合物濃度を確実にする。増殖を、各ウェル中の細胞のDNA含量を測定することにより決定した。隔日、4枚のウェル中の細胞を、100%冷メタノールに固定し、次いでPBS中の0.2ng/ml 4',6-ジアミド-2-フェニルインドール(DAPI)を用いて5分間室温で染色を行った。この細胞を、PBSで1回洗浄し、その後365/439励起/放出波長を用いて蛍光プレートリーダー上で読み取った。LAPC4およびLNCaP細胞は、DHTの存在下でより大量に増殖したが、LN-AR細胞は、DHTの存在下および非存在下にて増殖した。PPは、7日間後に全ての4つの細胞系の増殖を阻害することができる唯一の化合物であったが、HHおよびBiCは唯一LNCaP細胞の増殖を有意に阻害しただけであった。コントロールHEK293細胞は、任意の化合物による有意な影響を受けなかった、これはそれらが非特異的増殖阻害効果は持たないことを示唆している。PPおよびHHは、BiCに加えて、アンドロゲン誘導性増殖を阻止するように少なくとも作用した(図6)。
【0113】
実施例6:マウスにおける化合物の薬物動態および毒性
マウスにおいてPPおよびHHの抗アンドロゲン活性を、下記に示した方法を用いて決定した。
【0114】
野生型FVBマウスは、PPまたはHHいずれか単回の腹腔内注射を投与された。血清サンプルを所定の時間間隔にて得て、この薬物レベルを質量分析により決定した。これらの結果から、HHが迅速に排出されたことが示された。PPは、好適な治療となり得ることを示す長期の半減期を示した(表4)。PPの毒性を、0.1〜10mg/kgの様々な用量範囲を用いて試験した。10 mg/kgは毒性であったが、このマウスは5mg/kgに耐用性であった。
【0115】
表4.PPとHHの薬物動態。マウスは、5 mg/kgのPPまたはHHの単回IP注射またはPO投薬を受容した。血清サンプルを、所定の時点で採取し、血液レベルを質量分光分析により測定した。
【0116】
【表4】
【0117】
PPはインビボでBiCと相乗作用を示し、前立腺萎縮をもたらす。ポジティブコントロールとして、1つのコホートを、組織回復前に4週間去勢した。1つのコホートを非処理とし、他のコホートを、1mg/kg PP、100 mg/kgBiC、またはPP/ビカルタミド(BiC)いずれかの組合せにより処置した。動物を、5回/週間で4週間の間処理した。試験期間終了時に、動物を屠殺し、前立腺組織を秤量した。秤量後、該組織を、病理学的および遺伝子的試験のために半分に分けた。BiC処置により、前立腺組織サイズは35%(p<.003)まで低下した。PP:BiCによる処置により、BiC単独(P<.0005)の効果に対し、高度に有意であった63%までさらに低下した。PP単独は、統計学的に有意な効果を示さなかった(図7)。
【0118】
PPはインビボでBiCと共に相乗作用を示し、アンドロゲン-依存性前立腺遺伝子発現を阻害する。前立腺においてアンドロゲン依存性遺伝子発現に対するPPおよびPP:BiCの効果を評価するために、全RNAを、インビボの試験において単離した前立腺の半分から調製した。RT−PCRを行い、遺伝子発現を、完全にアンドロゲン非反応性である内因性の前立腺遺伝子であるRPL19と比べて決定した(E.Bolton, K.R.Y amamoto:非公開データ)。マウス前立腺葉の全体に発現した5つのアンドロゲン反応性遺伝子を評価した。各ケースにおいて、PPおよびBiCは遺伝子発現を有意に低下させたが、その組合せは卓越していたということを観察した。殆どの場合において、この組合せは、去勢された動物のものに近かった(図8)。先の実験をまとめると、PPは、抗アンドロゲン効果を発揮し、インビボでは抗アンドロゲンとしてBiCと共に相乗効果を示す。
【0119】
実施例7:マウス前立腺に対してのPP、THP、およびBiCの効果
10匹のFVB雄マウス(12wk)を、ビヒクル、1mg/kg ピルビニウムパモエート(PP)、100 mg/kg ビカルタミド (BiC)、2mg/kg THP、20 mg/kg、または2 mg/kg THPおよび100 mg/kg BiCの組合せにより、5週間の間、毎日、M−F投薬により処理した。マウスのコホートをポジティブコントロールとして去勢した。
【0120】
BiC、PP、THP+BiC、または去勢による処置は、前立腺湿重量の有意な(分散分析による)低下をもたらした。20 mg/kg THPは、前立腺に関して異常な乳白色の所見をもたらしたが、しかし全体の湿重量に変化はなかった(図11)。
【0121】
THPまたはBiC単独により処置したマウスは、背部前立腺(組織学的試験により)ならびに他の前立腺葉部(lobes)にて軽度の萎縮を示したが、この2つの組合せは、去勢により生じた萎縮に類似する重度の萎縮をもたらした(図12)。
【0122】
定量的PCRについて、RNAを、マウス前立腺から単離して、逆転写した。いくつかのアンドロゲン制御遺伝子の発現、そのサブセットを示すが(図13)、これを、QPCRを用い、そしてハウスキーピング遺伝子RPL19の発現に対して正規化することにより決定した。2mg/kgのTHP処置は軽度の効果を示したが、20mg/kg THPの処置は、前立腺において多くのアンドロゲン調節化遺伝子の転写を有意に低下した。
【0123】
実施例8:LAPC4細胞中のAR転写に対してTHP、THP:BiC、およびSHPの有効性
LAPC4細胞、即ち元々のアンドロゲンレセプターを発現する前立腺癌細胞系統を、PSAルシフェラーゼ・レポーターおよびCMV−レニラ・ルシフェラーゼコントロールにより形質転換した。図14に示したように、細胞を、DHTおよびテトラヒドロピルビニウム(THP)の増加量を用いて処理した。正規化したルシフェラーゼ活性を決定したが、これはテトラヒドロピルビニウムによるアンドロゲンレセプター媒介性の転写に関する強力な阻害を示すものである。
【0124】
別の実験において、細胞を、DHTまたは1:30のテトラヒドロピルビニウム/ビカルタミドの組合せの漸増により処理して、相乗効果を試験した。2つの薬剤の組合せは相加効果により予測した転写阻害を超えており、アンドロゲンレセプターの相乗的阻害を示す(図15)。
【0125】
第二の別の実験において、PSA-ルシフェラーゼAR−応答プロモーターに対するSHPおよびTHPの活性を決定した(図16)。
【0126】
前記発明は、明瞭な理解を目的とした説明および例示により、ある程度詳しく記載されるが、当業者には特定の変更および改変が添付の請求項の範囲の範囲内で実施され得るということを理解されよう。さらに、本明細書において提供された引用文献は、個々の引用文献を参照して組み込まんだ場合と同様に出典明示により本明細書に組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】
(I)
[式中
各々R1は、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、-OR4、-SR4、NR4R5、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびへテロアリールからなる群から独立して選択される;
R2は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキル-OH、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される;
R3は、所望により1〜3つのR6基により置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびへテロアリールからなる群から選択される;
R4およびR5は、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から各々独立して選択される;または
R4およびR5は、それらに結合する窒素と一緒になって、5〜7員環およびN、OおよびSからなる群から各々独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有する複素環を形成する;
各々R6は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6 アルキニルおよびC1-6アルコキシからなる群から独立して選択される;
Lは、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、C2-6アルキニレンおよびC3-6シクロアルキレンからなる群から選択されるリンカーである。;
Xは、-N(R7)-、6-10員環を有するアリール環、ならびに5〜6員環および各々独立してN、OおよびSからなる群から選択された1〜3個のヘテロ原子を有するヘテロアリール環からなる群から選択され、ここで該アリールおよび該ヘテロアリール環は、所望により1〜3つのR8基により各々置換される;
R7は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される;
各々R8は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルおよびC1-6アルコキシからなる群から独立して選択される]、
その塩、水和物ならびにプロドラッグ。
【請求項2】
Lが、エチレン、エテニレンおよびシクロプロピレンからなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式Ia:
【化2】
(Ia)
を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
Xはヘテロアリールである、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
Xは、0-2のアルキル、ハロ、またはニトロ基により置換されたピロールである、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
R3はアリールである、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
化合物が、
【化3】
【化4】
からなる群から選択される、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
式:
【化5】
[式中、
R1は、R4およびR5がそれらに結合する窒素と一緒になって、5〜7員環およびN、OおよびSからなる群から各々独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有する複素環を形成するような-NR4R5である;
R3はアリールである;および
Xはヘテロアリールである]
の請求項3記載の化合物。
【請求項9】
式Ib:
【化6】
(Ib)
を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
化合物が
【化7】
である、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
式Ic:
【化8】
(Ic)
を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
式(Id):
【化9】
(Id)
を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
塩形態が、パモエート、クロライド、ブロミド、スクシネート、マレエートおよびアセテートからなる群から選択される対イオンを含む、請求項1記載の化合物。
【請求項14】
式IIの化合物:
【化10】
(II)
[式中、
各々R1は、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、-OR4、-SR4、NR4R5、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびへテロアリールからなる群から独立して選択される;
R2’は、電子対、水素、C1-6 アルキル、C1-6 アルキル-OH、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される;
R3は、所望により1〜3つのR6基により置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびへテロアリールからなる群から選択される;
R4およびR5は、水素およびC1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から各々独立して選択される;または、
R4およびR5は、それらに結合する窒素と一緒になって、5〜7員環およびN、OおよびSからなる群から各々独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有する複素環を形成する;
各々R6は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルおよびC1-6アルコキシからなる群から独立して選択される;
Lは、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、C2-6アルキニレンおよびC3-6シクロアルキレンからなる群から選択されるリンカーである;
Xは、-N(R7)-、6-10員環を有するアリール環、ならびに5〜6員環およびN、OおよびSからなる群から各々独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有するヘテロアリール環からなる群から選択され、ここで該アリールおよび該ヘテロアリール環は、所望により各々1〜3つのR8基により置換される;
R7は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される;
各々R8は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルおよびC1-6アルコキシからなる群から独立して選択される;
Yは、OおよびSからなる群から選択される]
、その塩、水和物ならびにプロドラッグ。
【請求項15】
式:
【化11】
(式中、Xはアリールおよびへテロアリールからなる群から選択されるメンバーである)
を有する、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
式:
【化12】
を有する、請求項14記載の化合物。
【請求項17】
R1およびR3は、双方アリールである;および
R2’およびR4は、双方C1-6アルキルである、請求項16記載の化合物。
【請求項18】
請求項1記載の化合物および医薬許容し得る賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項19】
化合物が、
【化13】
【化14】
および
【化15】
からなる群から選択される、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
該組成物が局所、注射または経口投与に適切である、請求項18記載の組成物。
【請求項21】
治療上有効量の式Iの化合物;
【化16】
(I)
[式中、
各々R1は、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、-OR4、-SR4、NR4R5、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびへテロアリールからなる群から独立して選択される;
R2は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキル-OH、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される;
R3は、所望により1〜3つのR6基により置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびへテロアリールからなる群から選択される;
R4およびR5は、水素およびC1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から各々独立して選択される;または、
R4およびR5は、それらに結合する窒素と一緒になって、5〜7員環およびN、OおよびSからなる群から各々独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有する複素環をを形成する;
R6は、独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルおよびC1-6アルコキシからなる群から選択される;
Lは、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、C2-6アルキレンおよびC3-6シクロアルキレンからなる群から選択されるリンカーである。;
Xは、-N(R7)-、6-10員環を有するアリール環、ならびに5〜6員環およびN、OおよびSからなる群から各々独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有するヘテロアリール環からなる群から選択される、ここで該アリールおよび該ヘテロアリール環は、所望により1〜3つのR8基により各々置換される;
R7は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される;
各々R8は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルおよびC1-6アルコキシからなる群から独立して選択される]
、その塩、水和物ならびにプロドラッグを、その必要がある患者に投与することを含むことによりアンドロゲンレセプターを阻害する、アンドロゲンレセプターを阻害する方法。
【請求項22】
化合物が、
【化17】
【化18】
および
【化19】
からなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
塩形態が、パモエート、クロライド、ブロミド、スクシネート、マレエートおよびアセテートからなる群から選択される対イオンを含む、請求項21記載の方法。
【請求項24】
塩形態が、パモエート、クロライド、ブロミド、スクシネート、マレエートおよびアセテートからなる群から選択される対イオンを含む、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前立腺癌、卵巣癌、肝細胞癌、尋常性座瘡、子宮内膜症、黒色表皮症、多毛症、乳癌、性的早熟、多嚢胞性卵巣症候群、良性前立腺過形成、脱毛症、多毛症および性行動異常/性的倒錯からなる群から選択される疾患を処置または予防する方法である、請求項21の方法。
【請求項26】
疾患が前立腺癌である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
疾患が原発性前立腺癌である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
疾患が、ホルモン不応性前立腺癌である、請求項26記載の方法。
【請求項29】
投与が、局所、経口、静脈内、皮内、筋肉内または非経口投与による、請求項25記載の方法。
【請求項30】
疾患が脱毛症であり、投与が局所である、請求項25記載の方法。
【請求項31】
式Iの化合物が一連のホルモン療法により投与され、該ホルモン療法のための化合物が、抗アンドロゲンおよびLnRHアゴニストからなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項32】
該化合物が別々に投与される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
該化合物が混合される、請求項31記載の方法。
【請求項34】
該化合物が同時に投与される、請求項31記載の方法。
【請求項35】
該化合物が異なる時点で投与される、請求項31記載の方法。
【請求項36】
式Iの化合物が、治療上有効量のドセタキセル(タキソール)、パクリタキセル(タキソテール)、ビカルタミド、フルタミド、ヒドロキシフルタミド、ニルタミド、スピオノラクトン、酢酸シプロテロン、ケトコナゾール、フィナステライドならびにデュタステライドからなる群から選択される化合物と組合せて投与される、請求項31記載の方法。
【請求項37】
式Iの化合物が、治療上有効量のクマリンと組み合わせて投与される、請求項31記載の方法。
【請求項38】
式Iの化合物が、治療上有効量のビカルタミドと組み合わせて投与される、請求項31の方法。
【請求項39】
治療上有効量の式IIの化合物を、その必要な患者に投与することを含む、アンドロゲンレセプターを阻害する方法。
【化20】
(II)
[式中
各々R1は、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、-OR4、-SR4、NR4R5、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびへテロアリールからなる群から独立して選択される;
R2’は、電子対、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキル-OH、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される;
R3は、所望により1〜3つのR6基により置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびへテロアリールからなる群から選択される;
R4およびR5は、水素およびC1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から各々独立して選択される;または
R4およびR5は、それらが結合した窒素と一緒になって、5〜7員環およびN、OおよびSからなる群から各々独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する複素環を形成する;
各々R6は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルおよびC1-6アルコキシからなる群から独立して選択される;
Lは、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、C2-6アルキニレンおよびC3-6シクロアルキレンからなる群から選択されるリンカーであり;
Xは、-N(R7)-、6-10員環を有するアリール環、ならびに5〜6員環およびN、OおよびSからなる群から各々独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有するヘテロアリール環、ここで該アリールおよび該ヘテロアリール環は所望により1〜3つのR8基により各々置換される;
R7は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される;
各々R8は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルおよびC1-6アルコキシからなる群から独立して選択される;
Yは、OおよびSからなる群から選択される]
ならびに、その塩、水和物およびプロドラッグ。
【請求項40】
式:
【化21】
を有する、請求項39記載の方法。
【請求項41】
治療上有効量の式Iの化合物:
【化22】
(I)
[式中、
各々R1は、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、-OR4、-SR4、NR4R5、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびへテロアリールからなる群から独立して選択される;
R2は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキル-OH、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される;
R3は、所望により1〜3つのR6基により置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびへテロアリールからなる群から選択される;
R4およびR5は、各々独立して水素およびC1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される、あるいは
R4およびR5は、それらに結合する窒素と一緒になって、5〜7員環およびN、OおよびSからなる群から各々独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有する複素環を形成する;
各々R6は、独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルおよびC1-6アルコキシからなる群から選択される;
Lは、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、C2-6アルキニレンおよびC3-6シクロアルキレンからなる群から選択されるリンカーである;
Xは、-N(R7)-、6-10員環を有するアリール環、ならびに5〜6員環およびN、OおよびSからなる群から各々独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有するヘテロアリール環からなる群から選択される、式中該アリールおよび該ヘテロアリール環は、各所望により1〜3つのR8基により置換される;
R7は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される;
各々R8は、独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルおよびC1-6アルコキシからなる群から選択される]、
その塩、水和物ならびにプロドラッグを、治療上有効量の抗アンドロゲンおよびLnRHアゴニストからなる群から選択される化合物と組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】
(I)
[式中
各々R1は、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、-OR4、-SR4、NR4R5、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびへテロアリールからなる群から独立して選択される;
R2は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキル-OH、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される;
R3は、所望により1〜3つのR6基により置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびへテロアリールからなる群から選択される;
R4およびR5は、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から各々独立して選択される;または
R4およびR5は、それらに結合する窒素と一緒になって、5〜7員環およびN、OおよびSからなる群から各々独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有する複素環を形成する;
各々R6は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6 アルキニルおよびC1-6アルコキシからなる群から独立して選択される;
Lは、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、C2-6アルキニレンおよびC3-6シクロアルキレンからなる群から選択されるリンカーである。;
Xは、-N(R7)-、6-10員環を有するアリール環、ならびに5〜6員環および各々独立してN、OおよびSからなる群から選択された1〜3個のヘテロ原子を有するヘテロアリール環からなる群から選択され、ここで該アリールおよび該ヘテロアリール環は、所望により1〜3つのR8基により各々置換される;
R7は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される;
各々R8は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルおよびC1-6アルコキシからなる群から独立して選択される]、
その塩、水和物ならびにプロドラッグ。
【請求項2】
Lが、エチレン、エテニレンおよびシクロプロピレンからなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式Ia:
【化2】
(Ia)
を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
Xはヘテロアリールである、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
Xは、0-2のアルキル、ハロ、またはニトロ基により置換されたピロールである、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
R3はアリールである、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
化合物が、
【化3】
【化4】
からなる群から選択される、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
式:
【化5】
[式中、
R1は、R4およびR5がそれらに結合する窒素と一緒になって、5〜7員環およびN、OおよびSからなる群から各々独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有する複素環を形成するような-NR4R5である;
R3はアリールである;および
Xはヘテロアリールである]
の請求項3記載の化合物。
【請求項9】
式Ib:
【化6】
(Ib)
を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
化合物が
【化7】
である、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
式Ic:
【化8】
(Ic)
を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
式(Id):
【化9】
(Id)
を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
塩形態が、パモエート、クロライド、ブロミド、スクシネート、マレエートおよびアセテートからなる群から選択される対イオンを含む、請求項1記載の化合物。
【請求項14】
式IIの化合物:
【化10】
(II)
[式中、
各々R1は、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、-OR4、-SR4、NR4R5、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびへテロアリールからなる群から独立して選択される;
R2’は、電子対、水素、C1-6 アルキル、C1-6 アルキル-OH、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される;
R3は、所望により1〜3つのR6基により置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびへテロアリールからなる群から選択される;
R4およびR5は、水素およびC1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から各々独立して選択される;または、
R4およびR5は、それらに結合する窒素と一緒になって、5〜7員環およびN、OおよびSからなる群から各々独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有する複素環を形成する;
各々R6は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルおよびC1-6アルコキシからなる群から独立して選択される;
Lは、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、C2-6アルキニレンおよびC3-6シクロアルキレンからなる群から選択されるリンカーである;
Xは、-N(R7)-、6-10員環を有するアリール環、ならびに5〜6員環およびN、OおよびSからなる群から各々独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有するヘテロアリール環からなる群から選択され、ここで該アリールおよび該ヘテロアリール環は、所望により各々1〜3つのR8基により置換される;
R7は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される;
各々R8は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルおよびC1-6アルコキシからなる群から独立して選択される;
Yは、OおよびSからなる群から選択される]
、その塩、水和物ならびにプロドラッグ。
【請求項15】
式:
【化11】
(式中、Xはアリールおよびへテロアリールからなる群から選択されるメンバーである)
を有する、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
式:
【化12】
を有する、請求項14記載の化合物。
【請求項17】
R1およびR3は、双方アリールである;および
R2’およびR4は、双方C1-6アルキルである、請求項16記載の化合物。
【請求項18】
請求項1記載の化合物および医薬許容し得る賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項19】
化合物が、
【化13】
【化14】
および
【化15】
からなる群から選択される、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
該組成物が局所、注射または経口投与に適切である、請求項18記載の組成物。
【請求項21】
治療上有効量の式Iの化合物;
【化16】
(I)
[式中、
各々R1は、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、-OR4、-SR4、NR4R5、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびへテロアリールからなる群から独立して選択される;
R2は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキル-OH、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される;
R3は、所望により1〜3つのR6基により置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびへテロアリールからなる群から選択される;
R4およびR5は、水素およびC1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から各々独立して選択される;または、
R4およびR5は、それらに結合する窒素と一緒になって、5〜7員環およびN、OおよびSからなる群から各々独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有する複素環をを形成する;
R6は、独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルおよびC1-6アルコキシからなる群から選択される;
Lは、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、C2-6アルキレンおよびC3-6シクロアルキレンからなる群から選択されるリンカーである。;
Xは、-N(R7)-、6-10員環を有するアリール環、ならびに5〜6員環およびN、OおよびSからなる群から各々独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有するヘテロアリール環からなる群から選択される、ここで該アリールおよび該ヘテロアリール環は、所望により1〜3つのR8基により各々置換される;
R7は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される;
各々R8は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルおよびC1-6アルコキシからなる群から独立して選択される]
、その塩、水和物ならびにプロドラッグを、その必要がある患者に投与することを含むことによりアンドロゲンレセプターを阻害する、アンドロゲンレセプターを阻害する方法。
【請求項22】
化合物が、
【化17】
【化18】
および
【化19】
からなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
塩形態が、パモエート、クロライド、ブロミド、スクシネート、マレエートおよびアセテートからなる群から選択される対イオンを含む、請求項21記載の方法。
【請求項24】
塩形態が、パモエート、クロライド、ブロミド、スクシネート、マレエートおよびアセテートからなる群から選択される対イオンを含む、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前立腺癌、卵巣癌、肝細胞癌、尋常性座瘡、子宮内膜症、黒色表皮症、多毛症、乳癌、性的早熟、多嚢胞性卵巣症候群、良性前立腺過形成、脱毛症、多毛症および性行動異常/性的倒錯からなる群から選択される疾患を処置または予防する方法である、請求項21の方法。
【請求項26】
疾患が前立腺癌である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
疾患が原発性前立腺癌である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
疾患が、ホルモン不応性前立腺癌である、請求項26記載の方法。
【請求項29】
投与が、局所、経口、静脈内、皮内、筋肉内または非経口投与による、請求項25記載の方法。
【請求項30】
疾患が脱毛症であり、投与が局所である、請求項25記載の方法。
【請求項31】
式Iの化合物が一連のホルモン療法により投与され、該ホルモン療法のための化合物が、抗アンドロゲンおよびLnRHアゴニストからなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項32】
該化合物が別々に投与される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
該化合物が混合される、請求項31記載の方法。
【請求項34】
該化合物が同時に投与される、請求項31記載の方法。
【請求項35】
該化合物が異なる時点で投与される、請求項31記載の方法。
【請求項36】
式Iの化合物が、治療上有効量のドセタキセル(タキソール)、パクリタキセル(タキソテール)、ビカルタミド、フルタミド、ヒドロキシフルタミド、ニルタミド、スピオノラクトン、酢酸シプロテロン、ケトコナゾール、フィナステライドならびにデュタステライドからなる群から選択される化合物と組合せて投与される、請求項31記載の方法。
【請求項37】
式Iの化合物が、治療上有効量のクマリンと組み合わせて投与される、請求項31記載の方法。
【請求項38】
式Iの化合物が、治療上有効量のビカルタミドと組み合わせて投与される、請求項31の方法。
【請求項39】
治療上有効量の式IIの化合物を、その必要な患者に投与することを含む、アンドロゲンレセプターを阻害する方法。
【化20】
(II)
[式中
各々R1は、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、-OR4、-SR4、NR4R5、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびへテロアリールからなる群から独立して選択される;
R2’は、電子対、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキル-OH、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される;
R3は、所望により1〜3つのR6基により置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびへテロアリールからなる群から選択される;
R4およびR5は、水素およびC1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から各々独立して選択される;または
R4およびR5は、それらが結合した窒素と一緒になって、5〜7員環およびN、OおよびSからなる群から各々独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する複素環を形成する;
各々R6は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルおよびC1-6アルコキシからなる群から独立して選択される;
Lは、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、C2-6アルキニレンおよびC3-6シクロアルキレンからなる群から選択されるリンカーであり;
Xは、-N(R7)-、6-10員環を有するアリール環、ならびに5〜6員環およびN、OおよびSからなる群から各々独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有するヘテロアリール環、ここで該アリールおよび該ヘテロアリール環は所望により1〜3つのR8基により各々置換される;
R7は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される;
各々R8は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルおよびC1-6アルコキシからなる群から独立して選択される;
Yは、OおよびSからなる群から選択される]
ならびに、その塩、水和物およびプロドラッグ。
【請求項40】
式:
【化21】
を有する、請求項39記載の方法。
【請求項41】
治療上有効量の式Iの化合物:
【化22】
(I)
[式中、
各々R1は、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、-OR4、-SR4、NR4R5、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびへテロアリールからなる群から独立して選択される;
R2は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキル-OH、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される;
R3は、所望により1〜3つのR6基により置換されたシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびへテロアリールからなる群から選択される;
R4およびR5は、各々独立して水素およびC1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される、あるいは
R4およびR5は、それらに結合する窒素と一緒になって、5〜7員環およびN、OおよびSからなる群から各々独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有する複素環を形成する;
各々R6は、独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルおよびC1-6アルコキシからなる群から選択される;
Lは、C1-6アルキレン、C2-6アルケニレン、C2-6アルキニレンおよびC3-6シクロアルキレンからなる群から選択されるリンカーである;
Xは、-N(R7)-、6-10員環を有するアリール環、ならびに5〜6員環およびN、OおよびSからなる群から各々独立して選択された1〜3個のヘテロ原子を有するヘテロアリール環からなる群から選択される、式中該アリールおよび該ヘテロアリール環は、各所望により1〜3つのR8基により置換される;
R7は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニルおよびC2-6アルキニルからなる群から選択される;
各々R8は、独立してH、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルおよびC1-6アルコキシからなる群から選択される]、
その塩、水和物ならびにプロドラッグを、治療上有効量の抗アンドロゲンおよびLnRHアゴニストからなる群から選択される化合物と組み合わせて含む、医薬組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13−1】
【図13−2】
【図13−3】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13−1】
【図13−2】
【図13−3】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2011−518843(P2011−518843A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506486(P2011−506486)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/041715
【国際公開番号】WO2009/132307
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/041715
【国際公開番号】WO2009/132307
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]