説明

アンドロゲン受容体調節因子およびその使用

本発明は、以下の式の化合物:


、式(I)の化合物を含む医薬組成物、および性腺機能低下症、骨粗鬆症、骨減少症、サルコペニア、悪液質、筋萎縮、性機能障害または勃起障害を治療または予防するための方法であって、それを必要とする患者に有効量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療的使用のためのアンドロゲン受容体調節因子の分野である。
【背景技術】
【0002】
内因性ステロイドのアンドロゲン(例えば、テストステロンおよび5α−ジヒドロテストステロン(DHT))は、主要な循環性ホルモンであり、種々の生理学的課程の調節において役割を果たす。アンドロゲンの同化(例えば組織構築)作用には、筋肉量および筋力の増加、ならびに骨量および骨密度の増加が含まれ、一方、アンドロゲン(例えば男性化)作用には、内部生殖組織(例えば前立腺および精嚢)の発達、外部生殖器、男性の発毛パターン、および性欲が含まれる。臨床的には、アンドロゲン補充療法は、男性の性腺機能低下症、骨粗鬆症、筋肉疲労疾患、および性機能障害または勃起障害を含む、種々の病態および障害の治療に使用されている。
【0003】
しかしながら、ステロイド性アンドロゲン療法は制限を有する。例えば、ステロイド性アンドロゲンの調製物は、低い経口バイオアベイラビリティおよび非経口投与後の活性の短い持続時間の原因となる肝臓における急速な分解、血漿中濃度の変動、肝毒性、または他のステロイド性ホルモン受容体(例えば、糖質コルチコイド受容体(GR)、鉱質コルチコイド受容体(MR)、またはプロゲステロン受容体(PR))との交差反応を患うことが見出されている。さらに、好ましくない副作用は、前立腺および精嚢の成長刺激、前立腺腫瘍の刺激および前立腺特異抗原(PSA)の増加、ならびに女性における多毛症または男性化の危険性を含む、ステロイド性アンドロゲン療法に関する。
【0004】
従って、当該技術分野において、ステロイド性アンドロゲン療法の代替案に対する必要性が存在する。特に、アンドロゲンアゴニスト活性を有する非ステロイド性アンドロゲン受容体(AR)リガンドに対する必要性が存在する。より具体的には、他のステロイド性ホルモン受容体と比べてより大きな親和性でARに結合する非ステロイド性ARアゴニストに対する必要性が存在する。さらにより好ましくは、筋肉または骨のような同化組織においてアンドロゲンアゴニスト活性を示すが、前立腺または精嚢のようなアンドロゲン組織においては部分的アゴニスト、部分的アンタゴニストまたはアンタゴニスト活性しか示さない、組織選択的アンドロゲン受容体調節因子(SARM)に対する必要性が存在する。
【0005】
特許文献1および同時係属の特許文献2は各々、アンドロゲン受容体調節因子として有用な一連のシクロペンタ[b]インドール化合物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/063867号パンフレット
【特許文献2】国際特許出願PCT/US2009/043875号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
依然として、曝露またはバイオアベイラビリティなどの改良された有効性および/または薬物動態特性を有するさらなるシクロペンタ[b]インドール化合物に対する必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の式(I)によって定義されるようなシクロペンタ[b]インドール化合物に関し、その化合物は、インビトロおよびインビボ試験において特定の活性プロファイルを有し、ステロイド性アンドロゲン治療に応答する障害の治療に有用であることが示唆される。従って、本発明は、式(I)の化合物:
【化1】

を提供する。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、性腺機能低下症、骨粗鬆症、骨減少症、サルコペニア、悪液質、筋萎縮、性機能障害または勃起障害を治療または予防する方法であって、それを必要とする患者に有効量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法を提供する。特定の態様において、本発明は、骨粗鬆症、骨減少症、筋萎縮または勃起障害を治療または予防する方法であって、それを必要とする患者に有効量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法を提供する。さらなる特定の態様において、本発明は、使用停止、外傷、固定化、脊髄損傷または脳卒中に関連する筋萎縮を治療または予防する方法であって、それを必要とする患者に有効量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法を提供する。さらにより特には、本発明は、股関節または膝置換、股関節骨折、脊髄損傷または脳卒中に関連する筋萎縮を治療または予防する方法であって、それを必要とする患者に有効量の式(I)の化合物を投与することを含む、方法を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、性腺機能低下症、骨粗鬆症、骨減少症、サルコペニア、悪液質、筋萎縮、性機能障害または勃起障害の治療または予防に使用するための式(I)の化合物を提供する。より特には、本発明は、骨粗鬆症、骨減少症、筋萎縮または勃起障害の治療または予防に使用するための式(I)の化合物を提供する。さらなる特定の態様において、本発明は、使用停止、外傷、固定化、脊髄損傷または脳卒中に関連する筋萎縮の治療または予防に使用するための式(I)の化合物を提供する。さらにより特には、本発明は、股関節または膝置換、股関節骨折、脊髄損傷または脳卒中に関連する筋萎縮の治療または予防に使用するための式(I)の化合物を提供する。加えて、本発明は、治療に使用するための式(I)の化合物を提供する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、性腺機能低下症、骨粗鬆症、骨減少症、サルコペニア、悪液質、筋萎縮、性機能障害または勃起障害を治療または予防するための医薬を製造するための式(I)の化合物の使用を提供する。より特には、本発明は、骨粗鬆症、骨減少症、筋萎縮、または勃起障害を治療または予防するための医薬を製造するための式(I)の化合物の使用を提供する。さらに特定の態様において、本発明は、使用停止、外傷、固定化、脊髄損傷または脳卒中に関連する筋萎縮を治療または予防するための医薬を製造するための式(I)の化合物の使用を提供する。さらにより特には、本発明は、股関節または膝置換、股関節骨折、脊髄損傷または脳卒中に関連する筋萎縮を治療または予防するための医薬を製造するための式(I)の化合物の使用を提供する。
【0012】
本発明はまた、1種以上の医薬的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤と共に式(I)の化合物を含む医薬組成物を提供する。特に、本発明は、1種以上の医薬的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と共に式(I)の化合物を含む、性腺機能低下症、骨粗鬆症、骨減少症、サルコペニア、悪液質、筋萎縮、性機能障害または勃起障害を治療または予防するための医薬組成物を提供する。より特には、本発明は、1種以上の医薬的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と共に式(I)の化合物を含む、骨粗鬆症、骨減少症、筋萎縮、または勃起障害を治療または予防するための医薬組成物を提供する。より特には、本発明は、1種以上の医薬的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と共に式(I)の化合物を含む、使用停止、外傷、固定化、脊髄損傷または脳卒中に関連する筋萎縮を治療または予防するための医薬組成物を提供する。さらにより特には、本発明は、1種以上の医薬的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と共に式(I)の化合物を含む、股関節または膝置換、股関節骨折、脊髄損傷または脳卒中に関連する筋萎縮を治療または予防するための医薬組成物を提供する。なおさらなる実施形態において、本発明の医薬組成物はさらに、1種以上のさらなる治療剤を含む。
【0013】
本発明はまた、式(I)の化合物の合成に有用な中間体およびプロセスを包含する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
式(I)の化合物、およびそれを構成する中間体は、本明細書に開示されるようなキラル中心および特定の立体異性体配置を有する。用語「R」および「S」は、キラル中心の特定の配置を示すために有機化学において一般的に使用されるように本明細書中で使用される。用語「(±)」または「RS」は、ラセミ化合物を含むキラル中心の配置を示す。立体化学の優先度の部分的列挙および議論は、「Nomenclature of Organic Compounds:Principles and Practice」,(J.H.Fletcherら,eds.,1974)に含まれる。特定の立体異性体および鏡像異性体は、周知技術およびプロセスを利用して当業者によって調製され得る。例えば、特定の立体異性体および鏡像異性体は、鏡像異性的および幾何学的に純粋な、あるいは鏡像異性的または幾何学的に富化された出発物質を使用して立体特異的な合成によって調製されることができる。さらに、特定の立体異性体および鏡像異性体は、キラル固定相でのクロマトグラフィー、酵素的分解、付加塩の分別再結晶化、ならびに本明細書中のスキーム、調製例および実施例において提供される技術によって分解および回収されることができる。さらに、本発明の化合物は溶媒和物として存在してもよい。従って、式(I)の化合物は、その意味の範囲内において化合物の任意の溶媒和物を含む。
【0015】
記号「
【化2】

」は、頁の平面の外に前方に突出する結合を示す。
【0016】
記号「
【化3】

」は、頁の平面の外に後方に突出する結合を示す。
【0017】
記号「
【化4】

」は、頁の平面の外に、前方および後方の両方に突出する結合の混合物として存在する結合を示す。
【0018】
アンドロゲンおよび非ステロイド性アンドロゲン受容体アゴニストは、種々の治療用途において臨床的または予備臨床的に使用されているので、アンドロゲン受容体アゴニズムに応答する症状、病態または障害を治療または予防するための方法は、本発明の重要なさらなる態様である。本発明の化合物は、単独でまたは特定の症状、病態、または障害を治療するために使用される他の従来の治療剤と共に投与されてもよいか、または医薬に使用されてもよい。本発明の化合物が組み合わせの一部として使用される場合、式(I)の化合物は、別々にまたは組み合わされる治療剤を含む製剤の一部として投与されてもよい。
【0019】
本発明の化合物が有用であると考えられる特定の方法は、筋肉疲労状態または筋萎縮の治療または予防である。筋肉疲労は加齢の当然の結果(例えばサルコペニア)として発生し得る。代替として、筋萎縮は、使用停止または不動性(例えば股関節もしくは膝置換、または股関節骨折後)、外傷、固定化(例えば四肢の鋳造物または副子固定)、および脊髄損傷または脳卒中の二次結果として生じ得る(Hafer−Mackoら,J.Rehab.Res.Develop.;45(2):261−272(2008)を参照のこと)。従って、本明細書で用いる場合、用語「使用停止、外傷、固定化、脊髄損傷または脳卒中に関連する筋萎縮」とは、使用停止または不動性(例えば股関節もしくは膝置換、または股関節骨折後)、外傷、固定化(例えば四肢の鋳造物または副子固定)、脊髄損傷または脳卒中の発生に対する二次結果として発生する筋萎縮を指す。さらに、脊髄損傷または脳卒中の状況において、本発明の化合物は、標準的なリハビリテーション療法(例えば理学療法もしくは作業療法、運動、補助ウォーキングおよび/または筋力トレーニング)に対する付加物として使用されてもよい。
【0020】
本発明の化合物が有用であると考えられる別の特定の方法は、勃起障害の治療または予防である。勃起障害の治療のための従来の薬剤としては、5型ホスホジエステラーゼ(PDE5)阻害剤であるタダラフィル(Cialis(登録商標)または日常使用のためのCialis(登録商標))、クエン酸シルデナフィル(Viagra(登録商標))、および塩酸バルデナフィル(Levitra(登録商標))が挙げられる。従って、本発明はまた、必要とする患者に、有効量の式(I)の化合物を、タダラフィル、クエン酸シルデナフィル、および塩酸バルデナフィルからなる群から選択される薬剤と組み合わせて投与することを含む、勃起障害を治療または予防する方法を提供する。より具体的には、本発明は、必要とする患者に、有効量の式(I)の化合物を、Cialis(登録商標)、日常使用のためのCialis(登録商標)、Viagra(登録商標)、およびLevitra(登録商標)からなる群から選択される薬剤と組み合わせて投与することを含む、勃起障害を治療または予防する方法を提供する。さらに、本発明はまた、勃起障害の治療においてタダラフィル、クエン酸シルデナフィル、および塩酸バルデナフィルからなる群から選択される薬剤と組み合わせて使用するための式(I)の化合物を提供する。より具体的には、本発明は、勃起障害の治療においてCialis(登録商標)、日常使用のためのCialis(登録商標)、Viagra(登録商標)、およびLevitra(登録商標)からなる群から選択される薬剤と組み合わせて使用するための式(I)の化合物を提供する。
【0021】
本発明の化合物は、医薬組成物の一部として製剤化され得る。そのようなものとして、1種以上の医薬的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と共に式(I)の化合物を含む医薬組成物は本発明の重要な態様である。さらなる態様として、本発明はまた、式(I)の化合物を含む医薬組成物であって、かかる組成物が1種以上のさらなる治療剤を含む、医薬組成物を提供する。特に、本発明は、(a)式(I)の化合物;(b)タダラフィル、クエン酸シルデナフィル、および塩酸バルデナフィルからなる群から選択される治療剤;および(c)医薬的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。より具体的には、本発明は、(a)式(I)の化合物;(b)Cialis(登録商標)、日常使用のためのCialis(登録商標)、Viagra(登録商標)、およびLevitra(登録商標)からなる群から選択される治療剤;および(c)医薬的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。医薬組成物の例およびそれらを調製するための方法は当該技術分野において周知である。
【0022】
本明細書中で使用される用語「患者」とは、ヒトまたは非ヒト哺乳動物を指し、好ましくはヒトを指す。本明細書中で使用される用語「治療すること」(あるいは「治療する」または「治療」)は、既存の症状、病態または障害の進行または重篤度を、妨げること、抑えること、遅滞させること、停止させること、または逆転させることを指す。本明細書中で使用される用語「予防すること」(あるいは「予防する」または「予防」)とは、症状、病態または障害の発生または出現を、妨げること、抑えること、または阻害することを指す。症状、病態または障害は、「急性」または「慢性」事象として存在し得る。急性事象において、化合物は、症状、病態または障害の開始時に投与され、そして症状が消失するときに中止され、一方、慢性の症状、病態または障害は、事象の全経過を通じて治療される。本発明は急性および慢性治療の療法を意図する。
【0023】
本明細書で使用される用語「有効量」とは、患者への単回または複数回の投薬の際に、診断または治療下の患者に所望の効果を提供する、式(I)の化合物の量または投薬量を指す。有効量は、当業者として、哺乳動物の種;その大きさ、年齢、および一般的健康;関連する特定の疾患;疾患の度合いまたは重篤度;個々の患者の反応;投与された特定の化合物;投与の様式;投与された調製物のバイオアベイラビリティ特性;選択された投薬養生法;ならびに任意の併用薬の使用のような多くの要因を考慮することにより、担当の診断医によって容易に決定されることができる。式(I)の化合物、または式(I)の化合物を含む組成物は、経口および非経口経路(例えば皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内または経皮)を含む、生物学的に利用可能な化合物を生成する任意の経路により投与されてもよい。
【0024】
生物学的活性の決定
インビトロおよびインビボでの試験によって証明されるように、式(I)の化合物は、それらがステロイド性アンドロゲン療法に応答する症状、病態または障害の治療において有用性を有することを示唆する活性プロファイルを有する。特に、式(I)の化合物は、MR、GR、およびPRの各々と比べてARに選択的に結合する有力なARアゴニストである。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「K」とは、リガンド−受容体複合体についての平衡解離定数を指し;「K」とは、薬物−受容体複合体についての平衡解離定数を指し、かつ、平衡状態で結合部位の半数に結合する薬物の濃度の指標であり;「K」とは、アンタゴニスト−受容体複合体についての平衡解離定数を指し;「IC50」とは、薬剤について考えられうる最大阻害応答の50%を生じる薬剤の濃度、あるいは、受容体へのリガンド結合の50%変位を生じる薬剤の濃度を指し;「EC50」とは、薬剤について考えられうる最大応答の50%を生じる薬剤の濃度を指し;「ED50」とは、薬剤についての最大応答の50%を生じる、投与された治療剤の投薬量を指し;「SD」とは、標準偏差を指し;「p.o.」とは、経口を表し、かつ、経口投与を指し;「s.c.」とは、皮下投与を指し;および「HEC」とは、ヒドロキシエチルセルロースを指す。
【0026】
ステロイドホルモン核受容体結合アッセイ:
ヒトMR(鉱質コルチコイド受容体)、GR(糖質コルチコイド受容体)、AR(アンドロゲン受容体)、またはPR(プロゲステロン受容体)を過剰発現するヒト胎児腎臓HEK293細胞からの細胞溶解物を、受容体−リガンド競合結合アッセイのために使用して、K値を決定する。典型的な手順は以下に記載する。
【0027】
簡単に言うと、ステロイド受容体競合結合アッセイを、20mM HEPES緩衝液(pH=7.6)、0.2mM EDTA、75mM NaCl、1.5mM MgCl、20%グリセロール、20mMモリブデン酸ナトリウム、0.2mM DTT(ジチオスレイトール)、20μg/mLアプロチニン、および20μg/mLロイペプチンを含有する緩衝液(アッセイ緩衝液)中で行う。典型的には、ステロイド受容体結合アッセイは、1ウェル毎に、放射線標識されたリガンド(例えば、MR結合について0.25nM[H]−アルドステロン、GR結合について、0.3nM[H]−デキサメタゾン、AR結合について0.36nM[H]−メチルトリエノロン、およびPR結合について0.29nM[H]−メチルトリエノロン)、および20μg 293−MR溶解物、20μg 293−GR溶解物、22μg 293−AR溶解物、または40μg 293−PR溶解物のいずれかを含む。アッセイは、典型的には96ウェル形式で行う。競合する試験化合物を、約0.01nM〜10μMの範囲の種々の濃度で添加する。非特異的結合を、MR結合について500nMアルドステロン、GR結合について500nMデキサメタゾン、またはARおよびPR結合について500nMメチルトリエノロンの存在下で決定する。結合反応物(140μL)を、4℃で一晩インキュベートし、次いで、70μLの冷チャコールデキストラン緩衝液(50mLのアッセイ緩衝液毎に0.75gの炭と0.25gのデキストランを含有する)を、各反応物に添加する。プレートを、4℃で、オービタルシェーカー上で8分間混合する。プレートを、次いで、10分間4℃で、3,000rpmで遠心分離する。結合反応混合物の120μLのアリコートを、次いで、別の96ウェルプレートに移し、175μLのWallac Optiphase Hisafe 3(商標)シンチレーション液を各ウェルに添加する。プレートを密封し、オービタルシェーカー上で激しく撹拌する。2時間のインキュベーション後、プレートを、Wallac Microbeta計数器で読み取る。
【0028】
データを、推定IC50および10μMでの阻害率を計算するために使用する。MR結合についての[H]−アルドステロン、GR結合についての[H]−デキサメタゾン、AR結合についての[H]−メチルトリエノロン、またはPR結合についての[H]−メチルトリエノロンに対するKdを、飽和結合によって決定する。化合物に対するIC50値を、Cheng−Prushoff式を使用してKiに変換する。
【0029】
本質的に上記に記載されるようなプロトコールに従って、式(I)の化合物は、約10nMのAR結合アッセイにおけるKを表示する。さらに、その化合物は、MR、GR、およびPR結合アッセイにおいて、それぞれ、約4000nM超、約2000nM超、および約4000nM超のKiを表示する。従って、式(I)の化合物は、アンドロゲン受容体についての高親和性の選択的リガンドである。
【0030】
ステロイド核ホルモン受容体調節の機能アッセイ:
アンドロゲンは、アンドロゲン受容体との相互作用を通してその生理学的効果を発揮する。ARへのアンドロゲンの細胞質結合の後、リガンド受容体複合体は、それがDNA上のホルモン応答エレメントに結合して標的遺伝子の発現を開始する細胞核に移行する。アンドロゲンの効果は、本来は同化作用またはアンドロゲン作用として特徴づけられ得る。アンドロゲンの同化(すなわち、組織構築)作用は、筋肉量および筋力、ならびに骨量の増加を含み、一方、アンドロゲン(すなわち、男性化)作用は、内部生殖組織(すなわち、前立腺および精嚢)、外部生殖器(陰茎および陰嚢)、性欲、発毛パターンのような、男性の二次性徴の発達を含む。
【0031】
本発明の化合物がステロイドホルモン受容体の活性を調節する(すなわち、アゴナイズする、部分的にアゴナイズする、部分的にアンタゴナイズする、またはアンタゴナイズする)能力を実証するために、核受容体タンパク質およびホルモン応答エレメント−受容体遺伝子構築物で一時的にトランスフェクトされた細胞における標的遺伝子発現の機能的調節を検出するバイオアッセイを実施する。機能アッセイにおいて利用される溶媒、試薬、およびリガンドは、商業的供給源から容易に利用可能であり、または、当業者によって調製されることができる。以下は、核ホルモン受容体機能アッセイのための典型的な手順を提供する。
【0032】
A.核ホルモン受容体パネルスクリーン
ヒト胎児腎臓HEK293細胞を、Fugene(商標)のような好適なトランスフェクション試薬を使用して、ステロイドホルモン受容体および受容体遺伝子プラスミドでトランスフェクトする。簡単に言うと、ルシフェラーゼレポーターcDNAの上流のプロバシン(probasin)AREおよびTK(チミジンキナーゼ)プロモーターの2つのコピーを含有するレポータープラスミドを、ウイルス性CMV(サイトメガロウイルス)プロモーターを使用して、ヒトアンドロゲン受容体(AR)を構成的に発現するプラスミドと共にHEK293細胞中にトランスフェクトする。ルシフェラーゼレポーターcDNAの上流のGREおよびTKプロモーターの2つのコピーを含有するレポータープラスミドを、ウイルス性CMVプロモーターを使用して、ヒト糖質コルチコイド受容体(GR)、ヒト鉱質コルチコイド受容体(MR)、またはヒトプロゲステロン受容体(PR)のいずれかを構成的に発現するプラスミドと共にトランスフェクトする。細胞を、T150cmフラスコにおいて5%活性炭処理済(charcoal−stripped)ウシ胎仔血清(FBS)を有するDMEM培地中でトランスフェクトする。一晩のインキュベーション後、トランスフェクトされた細胞をトリプシン処理し、96ウェル皿において5%活性炭処理済FBSを含有するDMEM培地中に平板培養し、4時間インキュベートし、次いで、約0.01nM〜10μMの範囲の種々の濃度の試験化合物に曝露する。アッセイのためのアンタゴニスト様式において、各々の受容体に対して低濃度のアゴニストを培地に添加する(MRについて0.08nMのアルドステロン、GRについて0.25nMのデキサメタゾン、ARについて0.66nMのメチルトリエノロン、およびPRについて0.08nMのプロメゲストン)。試験化合物との24時間のインキュベーション後、細胞を溶解させ、標準的な技術を使用してルシフェラーゼ活性を決定する。
【0033】
データを、EC50値を決定するために4パラメータフィットのロジスティック曲線に当てはめる。有効性率(飽和最大応答を有する化合物)または最大刺激率(飽和していない最大応答を有する化合物)を、以下の参照アゴニストで得られた最大刺激と比較して決定する:MRアッセイについて30nMのアルドステロン、ARアッセイについて100nMのメチルトリエノロン、PRアッセイについて30nMのプロメゲストン、およびGRアッセイについて100nMのデキサメタゾン。IC50値を、アンタゴニスト様式アッセイのデータを使用して同様に決定する。アンタゴニスト様式において、阻害率を、低濃度のアゴニスト(MRについて0.08nMのアルドステロン、GRについて0.25nMのデキサメタゾン、ARについて0.66nMのメチルトリエノロン、およびPRについて0.08nMのプロメゲストン)の存在下での試験化合物の活性を、試験化合物が存在しない同じ低濃度のアゴニストによって生成される応答と比較することによって決定する。
【0034】
B.C2Cl2 AR/AREレポーターアッセイ:
筋肉組織におけるアゴニスト活性の指標として、C2Cl2 AR/AREレポーターアッセイを実施する。簡単に言うと、マウス筋芽C2Cl2細胞を、Fugene(商標)試薬を使用して同時トランスフェクトする。ルシフェラーゼレポーターcDNAの上流のGRE/ARE(糖質コルチコイド応答エレメント/アンドロゲン応答エレメント)およびTKプロモーターを含有するレポータープラスミドを、ウイルス性CMVプロモーターを使用して、ヒトアンドロゲン受容体(AR)を構成的に発現するプラスミドと共にトランスフェクトする。細胞を、T150cmフラスコにおいて4%活性炭処理済ウシ胎仔血清(FBS)を有するDMEM培地中でトランスフェクトする。5時間のインキュベーション後、トランスフェクトされた細胞をトリプシン処理し、96ウェル皿において4%活性炭処理済FBSを含有するDMEM培地中に平板培養し、2時間インキュベートし、次いで、約0.01nM〜10μMの範囲の種々の濃度の試験化合物に曝露する。化合物との24時間のインキュベーション後、細胞を溶解させ、標準的な技術によりルシフェラーゼ活性を決定する。データを、EC50値を決定するために4パラメータフィットのロジスティック曲線に当てはめる。有効性率を、10nMメチルトリエノロンで得られた最大刺激に対して決定する。
【0035】
上記に記載されるアッセイと類似のステロイドホルモン核ホルモン受容体調節の機能アッセイは、当業者によって容易に設計されることができる。本質的に上記に記載されるようなプロトコールに従って、式(I)の化合物は、約0.2nMのC2Cl2 AR/AREレポーターアッセイにおけるEC50を表示し(n=7の幾何平均;約0.08のSD)、従って、本発明の化合物はヒトARのアゴニストであることを実証する。
【0036】
有効性および選択性のインビボモデル:
8週齢の雄性Sprague Dawleyラットを、認可された手順に従って去勢し(性腺摘出、または「GDX」)、8週間消耗させる。週齢を合わせたシャム操作マウスもまた準備する。動物を、温度管理した部屋(24℃)において、逆転させた12時間の明/暗サイクルかつ水および食餌を自由に利用可能にして飼育する。
【0037】
動物を、試験枠に属させる前に体重に基づいて無作為化する。ビヒクル中の試験化合物、またはビヒクル単独を、5%DMSO/95% 大豆油などの従来のビヒクルを使用して、去勢した16週齢のラット(体重約380〜400g)に、皮下注射によって毎日投与する。ビヒクル単独で処置したシャム操作ラットを、処置陽性コントロールとして使用し、一方、ビヒクルと共にのみで処置した去勢ラットを、処置陰性コントロールとして使用する。去勢動物の別のコホートを比較としてテストステロンで処置する。
【0038】
試験動物を、例えば、0.1、0.3、または1.0mg/kg/日の本発明の化合物で、2週間または8週間の時間枠にわたって毎日、あるいは10mg/kg/週のテストステロン(ごま油ビヒクル)で、週に一度、投薬する。処置期間後に、動物を屠殺し、各動物からの肛門挙(LA)筋、前立腺および球海綿体筋の湿重量を決定する(秤量後、球海綿体筋を、以下に記載されるようにニューロン一酸化窒素合成mRNAの測定において後で使用するために液体窒素中で急速冷凍し得る)。次いで研究の終わりに各個体の湿重量を対応する動物の体重で割ることによって湿重量を正規化する。次いで処置動物からの正規化した値を、去勢した、ビヒクルのみのコントール群またはシャム群からの正規化した値と比較する。組織選択的活性の指標として、試験動物からの前立腺の湿重量を、コントロール群またはテストステロンで処置した比較群からの前立腺の湿重量と同様に比較し得る。
【0039】
2週間の処置期間を使用する、本質的に上記に記載されるプロトコールに従って、式(I)の化合物での研究は以下の結果をもたらした:シャム(ビヒクルのみ)は、約0.72の平均(n=8)正規化LA湿重量値、約1.5の平均正規化前立腺湿重量値、および約2.15の平均正規化球海綿体筋湿重量値を示し、去勢/ビヒクルのみの動物は、約0.18の平均(n=6)正規化LA湿重量値、約0.04の平均正規化前立腺湿重量値、および約0.34の平均正規化球海綿体筋湿重量値を示し、0.1mg/kg/日の研究群は、約0.44の平均(n=6)正規化LA湿重量値、約0.04の平均正規化前立腺湿重量値、および約0.77の平均正規化球海綿体筋湿重量値を示し、0.3mg/kg/日の研究群は、約0.57の平均(n=6)正規化LA湿重量値、約0.14の平均正規化前立腺湿重量値、および約1.29の平均正規化球海綿体筋湿重量値を示し、1.0mg/kg/日の研究群は、約0.68の平均(n=6)正規化LA湿重量値、約0.52の平均正規化前立腺湿重量値、および約1.41の平均正規化球海綿体筋湿重量値を示した。
【0040】
従って、式(I)の化合物での処置は、去勢したコントロール群と比較して、肛門挙筋および球海綿体筋重量において用量依存性の増加を生じ、本発明の化合物がインビボでの有効なアンドロゲンアゴニストであることを実証する。さらに、式(I)の化合物は、シャムコントロールおよびテストステロンで処置した動物と比較して、筋肉における効果を誘発するが、同時に、前立腺重量に対して低い効果を生じ、従って、本発明の化合物は組織選択性を有することを実証する。
【0041】
勃起活性のインビトロアッセイ
一酸化窒素合成/サイクリックグアノシン一リン酸(NOS/cGMP)経路は、勃起活性のために重要である。NOS発現は、一酸化窒素(NO)生成をもたらし、それは、次いで、グアニリルシクラーゼの活性化を通じてcGMP生成を促進する。cGMPは、肉体的な平滑筋の弛緩を媒介するプロテインキナーゼG(PKG)活性を促進して、陰茎の勃起を促す。証拠は、実験的動物モデルにおける陰茎海綿体においてNOSアイソフォームの発現および活性を制御することにおけるアンドロゲンの役割を支持する。Traishら,European Urology,52;54−70(2007)。従って、NOSアイソフォームの発現を増加することができるアンドロゲン受容体調節因子は、陰茎の勃起活性を制御する役割を有すると考えられる。
【0042】
本発明の化合物のNOSアイソフォームの発現を上方制御する能力を決定するために、以下のインビトロ法を利用し得る。
【0043】
RNAを、有効性および選択性のモデルについて本質的に上記に記載されるように準備して投薬した、去勢したSprague Dawleyラットから解剖時に得た凍結させた球状(bulbous)組織または海綿体組織から単離する。cDNAを、製造者の使用説明書に従って大容量cDNAキットを使用して、2μgのRNAから合成する。
【0044】
リアルタイム定量PCRを、次いで、蛍光TaqMan(登録商標)方法(Applied Biosystems)に従って実施する。Assays−on−Demand(商標)(Applied Biosystems)プローブを、ラットの上皮一酸化窒素合成転写産物(eNOS)について使用し、一方、プローブを、プローブデザイナーソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して、ラットのニューロン一酸化窒素合成の陰茎特異的アイソフォーム(pnNOS)について設計する。プローブを、pnNOSに特異的なラットのニューロン一酸化窒素合成遺伝子(pnNOS)の102bp領域におよぶように設計する(2865位〜2967位)。PPIB転写産物のためのAssays−on−Demand(商標)プローブセットを内部コントロールとして使用する。PCRを、以下のサーモサイクラー条件で、ABI Prism 7700 Sequence Detection System上で実施する:50℃で2分間、95℃で10分間、ならびに95℃で30秒間と60℃で1分間を40サイクル。全ての反応を3回行う。
【0045】
筋肉量または筋力の低減は、使用停止、外傷、または固定化の結果として生じ得る。本発明の化合物の、使用停止、外傷、または固定化に関連する筋肉量または筋力の損失を治療または予防する能力をさらに決定するために、以下の動物モデルを利用し得る。
【0046】
外傷および固定化によって誘発される筋力低下のインビボモデル
雄性12週齢のICRマウスを、イソフルオラン(1〜5%)で麻酔し、後肢の右の腓腹筋に10μMの心臓毒性(naja najaatra;Sigma Aldrich)の100μLを左右両方に注射して、局所筋肉損傷を誘発する。動物を回復させ、24時間以内に、後肢を、その肢にギプスを取り付けることによって足底屈様式で固定化する。固定化の7日後、および後肢のギプスを取り除いた後に、マウスを、種々の時間、本発明の化合物の連日投与により処置する。ギプスを有する、および有さないコントロール動物を、種々の時間、ビヒクルで同様に処置する。治療プロトコールの終わりに、マウスを屠殺し、ギプスをした腓腹筋の湿重量を決定し、個々の処置群をビヒクルコントロール群と比較する。概して、Am.J.Endocrinol.Metab.289:969−980(2005)を参照のこと。
【0047】
外傷により誘発される筋肉損傷のインビボモデル
雄性ICRマウスを8週齢で去勢し、さらに8週間の間消耗させる。マウスを個々にケージに入れ、12時間の明/暗サイクル、22℃で、食餌および水に自由にアクセスできる状態で維持する。マウスをイソフルオラン(1〜5%)で麻酔し、右の腓腹筋に10μMの心臓毒性(naja naja atra;Sigma Aldrich)の100μLを左右両方に注射して、筋肉損傷を誘発する。動物は麻酔から回復し、通常の活性を5分以内に再開する。注射後の5日目に、動物を種々の用量の本発明の化合物で処置する。注射後の14日目に、処置したマウスを安楽死させ、秤量し、腓腹筋組織を、注射していない脚(反対側コントロール)と心臓毒性注射をした脚の両方から回収する。筋肉の重量を、注射せずかつ非処置のコントロールに適合させて、外傷からの回復率を確立する。
【0048】
本発明の化合物が、骨粗鬆症または骨減少症のような骨量の減少と関連する障害を治療する能力を有することを実証するために、当該技術分野において周知の他の動物モデルを利用し得る。そのようなモデルの例は、Y.L.Maら,Japanese Journal of Bone and Mineral Metabolism 23(Suppl.):62−68(2005);Y.L.Maら,Endocrinology 144:2008−2015(2003);およびK.Hanadaら,Biol.Pharm.Bull.26(11):1563−1569(2003)に提供される。特に、卵巣摘出によって誘発されるエストロゲン欠乏骨減少症の雌性ラットモデルおよび精巣摘除によって誘発されるアンドロゲン欠乏骨減少症の雄性ラットモデルに関する。
【0049】
卵巣摘出によって誘発されるエストロゲン欠乏骨減少症のモデル:
6カ月齢の、約220g重量の未性交Sprague Dawley雌性ラットを、食餌および水に自由にアクセスできる状態で飼育する。両側の卵巣摘出(Ovx)を、(シャム操作コントロールを除く)動物に実施し、次いで1群あたり7〜8匹のラットの処置群に無作為化する。各アッセイは、シャム−卵巣摘出コントロール(Sham)およびビヒクルで処置した卵巣摘出コントロール(Ovx)を含む、少なくとも2セットのコントロールを典型的に包含する。Ovxラットを、試験化合物での処置の前に骨減少症を確立するために、1カ月間骨を減少させる。試験化合物を、8週間Ovx動物に栄養法によって経口投与する。陽性コントロールとして、組換えヒトPTH(1〜38)(約10μg/kg/日、皮下)を、Ovx動物のサブセットに与え得る。試験プロトコールの完了後に、定量的コンピュータ断層撮影(QCT)を使用して、腰椎L−5および大腿骨の容積骨塩密度(BMD、mg/cc)を分析する。大腿骨骨幹中央部の3点曲げの生体力学的分析および近位大腿骨に対する障害の負荷を、材料機械試験機を使用して実施し、TestWorks 4(登録商標)ソフトウェアを使用して分析する。
【0050】
精巣摘除によって誘発されるアンドロゲン欠乏骨減少症のモデル:
6カ月齢の、約485g重量のSprague Dawley雄性ラットを、食餌および水に自由にアクセスできる状態で飼育する。両側の精巣摘除(Orx)を、(シャム操作コントロールを除く)動物に実施し、次いで1群あたり7〜8匹のラットの処置群に無作為化する。各アッセイは、シャム−精巣摘除コントロール(Sham)およびビヒクルで処置した精巣摘除コントロール(Orx)を含む、少なくとも2セットのコントロールを典型的に包含する。Orxラットを、試験化合物での処置の前に骨減少症を確立するために、2カ月間骨を減少させる。試験化合物を、8週間Orx動物に栄養法によって経口投与する。陽性コントロールとして、組換えヒトPTH(1〜38)(約10μg/kg/日、皮下)を、Orx動物のサブセットに与え得る。試験プロトコールの完了後に、卵巣摘出雌性ラットモデルについて上記で記載されるように、椎骨および大腿骨のBMD、ならびに大腿骨の生体力学的分析を実施し得る(概して、Maら,JBMR 17:2256−2264(2002),およびTurnerら,Bone[概説]14:595−608(1993)を参照のこと)。
【0051】
血漿曝露の決定
雄性Sprague Dawleyラット(6匹の動物/群)の群に、2週間の間、1日に1回、10mg/kg p.o、1mg/kg s.c.、3mg/kg s.c.、または10mg/kg s.c.の式(I)の化合物を用いて経口(1.25ml/kgの投与量;5%DMSO/95%HECのビヒクル)または皮下(2.5ml/kgの投与量;5%DMSO/95%大豆油のビヒクル)のいずれかで投与する。投与の2日目に開始して最後の日まで血漿サンプルを、投与後0.5、2、4、または24時間に回収する(2匹の動物を各時点でサンプリングし、0.5および24時間の時点のサンプルについて同じ動物を用いる)。式(I)の化合物の血漿濃度を、LC/MS/MS(Sciex API−4000 LC/MS/MSシステム)を用いて各々の回収したサンプルについて測定する。得られた濃度を使用して、曝露の指標として各々の投与した用量について血漿中濃度時間曲線下面積(AUC)を構築する。上記のプロトコールに本質的に従って、投与した用量の式(I)の化合物により以下のAUC値を生じた:10mg/kg p.o:約295,511ng・hr./ml.;1mg/kg s.c.:約38,963ng・hr./ml.;3mg/kg s.c.:約137,056ng・hr./ml.;および10mg/kg s.c.:約218,537ng・hr./ml。従って、経口または皮下投与される場合、式(I)の化合物は有意な血漿曝露を表示する。
【0052】
以下のスキーム、調製例および実施例により本発明をさらに例示する。試薬および出発物質は容易に入手可能であるか、または当業者により容易に合成できる。スキーム、調製例および実施例は、例示の目的で記載され、限定されず、種々の変更が当業者によりなされてもよいことは理解されるべきである。調製例および実施例のRまたはS立体配置は、X線解析およびキラルHPLC保持時間との相関関係などの標準的な技術によって決定され得る。他に示さない限り、調製例および実施例の化合物名は、概して、ISIS DrawアドインについてのAutonom 2000により提供される。本明細書で使用される場合、以下の用語は示した意味を有する:「MeOH」とはメタノールを指し;「EtOH」とはエタノールを指し;「i−PrOH」または「IPA」とはイソプロパノールを指し;「EtOAc」とは酢酸エチルを指し;「DMAC」とはジメチルアセトアミドを指し;「THF」とはテトラヒドロフランを指し;「t−boc」または「boc」とはtert−ブトキシカルボニルを指す。
【0053】
【化5】

式(7)の中間体の形成はスキーム1に記載した反応に従って実施できる。
【0054】
スキーム1、工程Aにおいて、シクロペンテノンを、マイケル付加においてフタルイミドと反応させて、(R,S)−2−(3−オキソ−シクロペンチル)−イソインドール−1,3−ジオン(1)を得る。この反応は、好ましくは、O.Nowitzkiら,Tetrahedron 1996,52,11799−11810に記載されているものと同様の条件を用いて室温にて、約10/1容量の比でメタノール/2N NaCOで実施する。生成物を水の付加により単離し、白色固体として(1)を得る。
【0055】
工程Bにおいて、(R,S)−2−(3−オキソ−シクロペンチル)−イソインドール−1,3−ジオン(1)を、典型的なフィッシャーインドール合成において4−ブロモフェニルヒドラジン塩酸塩と反応させる。好ましい条件は、約50〜80℃にて2〜24時間氷酢酸を使用することである。
【0056】
スキーム1、工程Cにおいて、式(2)のテトラヒドロシクロペンタ[b]インドールのフタルイミド基をヒドラジンまたはヒドラジン水和物で開裂して、式(3)のアミノテトラヒドロシクロペンタ[b]インドールを得る。好ましい条件は、約40〜70℃の温度にて1〜12時間、約20/1容量の混合物中でテトラヒドロフラン/エタノールを使用することである。得られたフタルヒドラジドを濾過により除去し、濾液を濃縮することにより生成物を単離する。
【0057】
工程Dにおいて、式(3)のアミンをt−boc基で保護して式(4)の保護アミンを得る。好ましい条件は、NaHCOなどの無機塩基の存在下で、THFまたはジオキサンなどの不活性溶媒中でジ−tert−ブチルジカルボネートを使用することである。工程Eにおいて、式(4)のラセミ体t−boc物質を、キラルHPLCを用いて分割して、式(5)の(S)鏡像異性体を得る。
【0058】
工程Fにおいて、式(5)の(S)ブロモカルバメートを式(6)のニトリルに変換する。反応を、酢酸亜鉛またはギ酸亜鉛、シアン化亜鉛、および亜鉛粉末の混合物の存在下で、N,N’−ジメチルアセトアミドなどの不活性溶媒中で実施する。[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)などまたはジクロロメタンとの錯体としてパラジウム触媒を使用する。代替として、触媒は、パラジウム金属および適切なリガンドを用いてインサイチュで形成されてもよい。反応物を約80〜120℃にて約2〜24時間加熱する。
【0059】
工程Gにおいて、boc基を、HCl/ジオキサンまたはTFAなどの典型的な酸性条件を用いて除去して、キラルアミンを得て、次いでそれをクロロギ酸イソプロピルでアシル化して、当業者に周知の条件を用いて、式(7)のカルバメートを得る。アミンを、テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロエタンもしくはジクロロメタン、N−メチルピロリジノン、もしくはN,N−ジメチルホルムアミド、またはそれらの混合物などの不活性溶媒中でトリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンなどの過剰の有機アミン塩基と合わせる。好ましい条件は、約0〜40℃の温度にて約1〜72時間、クロロギ酸イソプロピルの存在下で、ジクロロメタン中のジイソプロピルエチルアミンを使用することである。水の付加および得られた固体の回収により生成物を単離する。
【0060】
【化6】

スキーム2において、式(7)の中間体の合成のための代替経路を記載する。
【0061】
スキーム2、工程Aにおいて、式(2)のテトラヒドロシクロペンタ[b]インドールのフタルイミド基をメチルアミンで開裂して、式(3)のアミノテトラヒドロシクロペンタ[b]インドールを得る。好ましい条件は、約0〜35℃の温度にて3〜24時間、エタノールなどの溶媒を使用することである。得られた副産物をアルカリ性のpHを生じることにより除去し、得られた沈殿物を濾過する。水および10%NaOHでの沈殿により濾液から生成物を単離する。
【0062】
工程Bにおいて、式(3)のラセミ体アミノテトラヒドロシクロペンタ[b]インドールを、(R)−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸を用いて除去して、式(8)の(S)−アミノテトラヒドロシクロペンタ[b]インドールの塩を得る。塩の形成を、好ましくは、約1〜6時間加熱しながらイソプロパノール中で行い、続いて冷却して、所望の鏡像異性体を得る。
【0063】
工程Cにおいて、式(8)の塩を遊離塩基に中和して、次いでアシル化して、式(9)のカルバメートを得る。塩を、トルエンなどの不活性溶媒中でトリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンなどの約2〜3当量の有機塩基で中和し、続いてクロロギ酸イソプロピルとアシル化する。
【0064】
スキーム2、工程Dにおいて、式(9)のブロモカルバメートを、スキーム1、工程Fについて以前に記載したように式(7)のニトリルに変換する。
【0065】
調製例1
(R,S)−2−(3−オキソ−シクロペンチル)−イソインドール−1,3−ジオン
【化7】

機械的攪拌器で激しく攪拌しながら、2MのNaCO水溶液(79mL、0.158mol)を、MeOH(886mL)中のシクロペンテノン(100g、1.22mol)およびフタルイミド(180g、1.22mol)のスラリーに加える。約2時間後、厚い白色の沈殿物が形成する。混合物を室温にて24時間攪拌する。白色の固体を真空濾過により回収し、メタノール(1L)でリンスする。固体を水(1L)に懸濁し、3時間攪拌する。固体を回収し、真空オーブン中で40℃にて一晩乾燥させて、198g(71%)の標題化合物を白色固体として得る。1H NMR(DMSO−d6)δ7.85−7.77(m,4H),4.90(m,1H),2.67(ddd,1H,J=18.5,6.2,1.3Hz),2.54(dd,1H,J=18.5,9.2Hz),2.45(m,1H),2.32−2.21(m,3H);ES/MSm/z230(M+1,弱い)。注記:塩基水溶液での処理の際に、生成物をレトロマイケル反応にすぐに供する。
【0066】
調製例2
(R,S)−2−(7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イル)−イソインドール−1,3−ジオン
【化8】

5Lのフラスコ中で、機械的に攪拌しながら、(R,S)−2−(3−オキソ−シクロペンチル)−イソインドール−1,3−ジオン(295.3g、1.29mol)、4−ブロモフェニルヒドラジン−HCl(287.9g、1.29mol)および氷酢酸(3L)を混合する。反応物を5時間還流し、次いで室温まで冷却する。急速に攪拌しながら、反応物を水(4L)に注ぐ。固体を真空濾過により回収し、水(4L)で洗浄し、30分間風乾する。固体をMeOH(700mL)でスラリーにし、真空濾過により回収し、MeOH(100mL)でリンスする。灰色の固体を2時間風乾し、次いで50℃の真空オーブン中で一晩乾燥させて、414.67g(84%)の標題化合物を暗色の固体として得る。ES/MS m/z(79Br/81Br)381/383[M+H]
【0067】
調製例3
(R,S)−7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イルアミン
【化9】

THF(1000mL)中の(R,S)−2−(7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イル)−イソインドール−1,3−ジオン(150g、393mmol)およびEtOH(150mL)の溶液に、ヒドラジン一水和物(35.0g、34.0mL、699mmol)を加える。室温にて18時間、次いで55℃にて2時間、機械的に攪拌しながら、反応混合物を攪拌し、反応物が非常に粘性になると、THF(425mL)およびEtOH(75mL)を加える。55℃での加熱をさらに2時間継続する。反応物を室温まで冷却し、珪藻土により濾過し、THFでリンスし、濃縮乾固する。残渣をトルエンおよびEtOHで混合し、再度濃縮乾固する。生成物を3時間高真空下に置き、94g(95%)の標題化合物を固体として得る。LC−ES/MS m/z(79Br/81Br)251/253[M+H],T=1.14分。
【0068】
調製例4
((R,S)−7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル
【化10】

THF(800mL)中の(R,S)−7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イルアミン(81.5g、325mmol)および飽和NaHCO水溶液(200mL)の混合物を、ジ−tert−ブチルジカルボネート(80.3g、357mmol)で少しずつ処理し、室温にて1時間攪拌する。反応物をEtOAc(300mL)およびブライン(100mL)で希釈する。層を分離し、有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、暗色の油状の固体に濃縮する。その固体をCHCl(400mL)と混合し、氷浴中で冷却し、濾過する。その固体をCHClおよびヘキサンでリンスして、28.1g(34%)の標題化合物を固体として回収する。濾液を濃縮し、クロマトグラフィー(1Lのシリカゲル、濃CHCl溶液として負荷し、30%ヘキサン/CHCl、100%CHCl、次いで3%EtOAc/CHClで溶出する)により精製することによって、さらに78.8g(60%)の標題化合物を得る。H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.98−7.91(m,1H),7.54(s,1H),7.25(s,2H),7.20−7.15(m,2H),5.05−5.02(m,2H),3.37−3.29(m,2H),2.77−2.70(m,1H),2.62−2.57(m,1H),1.46(s,9H)。
【0069】
調製例5
((S)−7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル
【化11】

最初に((R,S)−7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(635g、1810mmol)を冷EtOで粉砕し、次いでキラルHPLC(カラム:キラルセルOJ8×32cm、溶出液:100%MeOH)により精製して、310gの標題化合物(2番目に溶出する異性体)を黄褐色の固体として得る。キラルHPLC OJ−H、100%MeOH、250nm T=7.6分にてUV検出、97.8%ee。
【0070】
調製例6
((S)−7−シアノ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル
【化12】

以下の試薬を100℃にて18時間DMF(250mL)中で一緒に攪拌する:((S)−7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(50.0g、142mmol)、シアン化亜鉛(11.9g、99.7mmol)、酢酸亜鉛(5.22g、28.5mmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)クロリド(Pd(dppf)Cl)(1.74g、2.14mmol)、および亜鉛(3.72g、56.9mmol)。反応物を濃縮乾固し、水と酢酸エチルとの間に分配する。有機物を水およびブラインで洗浄し、次いで濃縮して、固体を得る。固体を以下のようにシリカゲル(1600mL)上で2つの等しい部分中でクロマトグラフする:CHCl中の溶液として負荷およびCHCl(3L)中の2%EtOAc、次いでCHCl中の5%EtOAcで溶出。2つのカラムから生成物を回収して、29g(69%)の標題化合物を白色の固体として得る。H−NMR(400MHz,CDCl)δ8.39(s,1H),7.74(s,1H),7.34(d,J=1.8Hz,2H),5.05−4.96(m,2H),3.37−3.25(m,2H),2.80−2.63(m,2H),1.46(s,9H)。
【0071】
調製例7
((S)−7−シアノ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イル)−カルバミン酸イソプロピルエステル
【化13】

((S)−7−シアノ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(10g、33.63mmol)を1,4−ジオキサン(102mL)に溶解し、室温にて4MのHCl/ジオキサン(102mL)で処理する。18時間後、固体を濾過し、EtO(50mL)で洗浄し、次いで真空中で乾燥させる。
【0072】
固体をジクロロメタン(168mL)中でスラリーにし、室温にて、ジイソプロピルエチルアミン(12.3mL、70.1mmol)およびクロロギ酸イソプロピル(トルエン中に1.0M、34.0mL、34.0mmol)で処理する。4時間後、反応物を水(50mL)で処理し、濃縮して、水性スラリーの生成物を得る。反応物を水(500mL)でさらに希釈し、超音波浴中で15分間超音波処理する。黄褐色の固体を濾過し、40℃にて真空中で乾燥させる。固体をEtO(100mL)中でスラリーにし、超音波浴中で10分間超音波処理し、濾過し、EtO(50mL)で洗浄し、次いで真空中で乾燥させて、8.20g(86%)の標題化合物を黄褐色の固体として得る。LC−ES/MS m/z 284[M+H],282[M−H],T=2.20分;H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ11.44(s,1H),7.78(s,1H),7.52(d,J=7.5Hz,1H),7.39(d,J=8.4Hz,1H),7.28(dd,J=1.8,8.4Hz,1H),4.77−4.63(m,2H),3.18−3.04(m,2H),2.70(dd,J=6.2,15.8Hz,1H),2.58(dd,J=6.2,14.5Hz,1H),1.13(d,J=6.2Hz,6H)。
【0073】
((S)−7−シアノ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イル)−カルバミン酸イソプロピルエステルの代替合成
調製例8
(R,S)−7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イルアミン
【化14】

三つ口丸底フラスコに、25℃にて窒素下で、EtOH(510mL、510.00mmol)中の(R,S)−2−(7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イル)−イソインドール−1,3−ジオン(170.00g、445.93mmol)およびメチルアミンを加える。混合物を14時間攪拌しながら20〜25℃にて保持する。出発物質を溶解して、一部の観察可能な茶色の沈殿物を含む茶色の溶液を形成させる。反応混合物をHPLCによりモニターすると、2%未満の出発物質が残存していることが示される。混合物を1時間攪拌し、pHをNaOH溶液で11に調整する。混合物を濾過し、固体(副産物)をEtOH(170mL)で洗浄する。室温にて30分にわたって、水(3400mL)および10%NaOH溶液(600mL)を濾液に加える。pHは12になり、茶色の固体が沈殿する。固体を濾過し、ケーキを真空下で60℃にて乾燥させて、103g(89%)の淡褐色の固体を得る。
【0074】
調製例9
(S)−7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イルアミン(R)−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸塩
【化15】

3つ口丸底フラスコに、(R,S)−7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イルアミン(94.00g、361.66mmol)および(R)−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸(36.00g、0.60eq、216.64mmol)を加える。次いでIPA(180mL)およびEtOH(180mL)を25℃にて混合物にゆっくりと加える。スラリーを観察する。スラリーを攪拌しながら2時間、80℃にて保持する。茶色の濁った溶液が形成する。混合物を1時間、60℃に冷却し、次いで25℃にて2時間攪拌する。次いで混合物を1時間、−10℃にて攪拌する。固体を濾過し、ケーキをIPA(10mL)およびn−ヘプタン(10mL)で洗浄する。湿った固体を4時間、真空下で60℃にて乾燥させて、66.1g(43.5%)の淡黄色の固体を得る。HPLC/MS:99.3%純度。キラルHPLC:%(キラルセルOJ−RH、0/2%ジエチルメチルアミンを含む100%MeOH、230nmにてUV検出、99.62%ee)。
【0075】
調製例10
((S)−7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イル)−カルバミン酸イソプロピルエステル
【化16】

(S)−7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イルアミン(R)−2−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸塩(60.00g、143.78mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(50mL、296.12mmol)をトルエン(165mL)中で合わせる。反応槽を窒素で3回パージする。混合物を攪拌しながら0℃まで冷却し、その温度で30分間保持する。トルエン(165mL)中のクロロギ酸イソプロピル(20.00g、163.20mmol)の溶液を10分にわたって0〜5℃にて加える。混合物を5℃にて10分間攪拌する。HPLCにより98.6%完了が示される。反応物を水(1L)および酢酸エチル(480mL)でクエンチする。混合物を濾過し、固体を酢酸エチル(2×240mL)で洗浄する。合わせた有機層をブラインで2回洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過する。有機溶媒を50mLに減少させる。混合物を25℃に冷却し、tert−ブチルメチルエーテル(50mL)および酢酸エチル(50mL)を加える。オフホワイトの固体を沈殿させる。固体を濾過し、ヘプタン(100mL)で洗浄する。固体を50℃にて4時間、真空下で乾燥させて、44.4g(90.3%)の淡褐色の固体を得る。
【0076】
調製例11
((S)−7−シアノ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イル)−カルバミン酸イソプロピルエステル
【化17】

50Lの丸底フラスコにジメチルアセトアミド(33L、10容量)を入れ、表面下窒素スパージを30分間開始する。次いでフラスコに酢酸亜鉛(363g、1.98mol)を一度に入れる。次いでPd(dppf)Cl、ジクロロメタンとの錯体(1:1)(266g、0.327mol、3.3mol%)を一度に加え、続いてシアン化亜鉛(697g、5.93mol、0.6eq.)を一度に加える。((S)−7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イル)−カルバミン酸イソプロピルエステル(3335g、9.89mol)を一度に加え、混合物を20分間、表面下窒素でスパージする。最終的に、亜鉛粉末(259g、3.96mol)を一度に加え、反応物を100℃〜110℃で6時間加熱する。HPLCにより1%未満の出発物質が存在する場合、反応が完了したとみなす。反応が完了した後、加熱を停止し、反応物を室温に冷却する。次いで反応物を濾過し、ジメチルアセトアミド(3×3L)でリンスする。次いで濾液を水(60L)の上に注ぎ、得られたスラリーを最低2時間攪拌する。次いでスラリーを濾過し、水(20L)でリンスする。次いで湿ったケーキをtert−ブチルメチルエーテル/アセトン(1:1、合計60L)中に溶解し、最低30分間攪拌する。次いで混合物を濾過して、無機塩を除去する。濾液をタンクに入れ戻す。有機層を、10%の2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン(TMT)(2×20L)水溶液で洗浄する。次いで有機層に炭(330g、10%wt)、フロリジル(登録商標)(330g、10%wt)、および硫酸マグネシウムを入れて、層を乾燥させる。混合物を最低2時間室温にて攪拌する。次いで混合物を濾過し、アセトンでリンスする。次いで濾液を圧力下で濃縮し、ヘプタンと共に共蒸発させる。次いで得られたスラリーを濾過し、ヘプタンでリンスする。固体を回収し、一定の重量まで乾燥させる(2520g、90%)。LC−ES/MS m/z 284[M+H],282[M−H]
【0077】
代替のシアノ化法
((S)−7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イル)−カルバミン酸イソプロピルエステル(50g、148.27mmol)、シアン化亜鉛(10.45g、88.99mmole)、およびパラジウム(6.31 g、2.96mmol)をジメチルアセトアミド(500mL)中で合わせる。得られたスラリーを10分間、表面下窒素でスパージする。次いで1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(3.29g、5.93mmol)を加え、反応物をさらに10分間スパージする。最終的にギ酸亜鉛(2.3g、14.80mmol)を加え、反応物を再度10分間スパージする。次いで反応物を窒素スイープ下に置き、110℃まで一晩加熱する。加熱を停止する。反応物を85℃に冷却し、3−メルカプトプロピル−修飾シリカゲル(5g、10wt%)を加える。室温まで冷却しながら混合物を2時間攪拌する。次いで反応混合物を濾過し、固体をDMAC(50mL)でリンスする。攪拌している橙色の濾液に、10分にわたって水(1000mL)中の0.3Mのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩を加える。得られたスラリーを室温にて攪拌し、濾過する。固体を、0.3Mのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩(250mL)、続いて水(250mL)でリンスする。淡褐色の固体を回収し、真空オーブン中で一晩乾燥させて、定量的収率で生成物(42.44g)を得る。
【0078】
調製例12
[(2R,3S)−3−ヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル]メチル4−メチルベンゼンスルホネート
【化18】

(2R,3S)−2−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−3−オール(1.59g、13.46mmol)(Chenault,K.H.;Mandes,R.F.Tetrahedron,1997,53(32),11033−11038に記載されるように調製した)を、乾燥ピリジン(15mL)に溶解し、その溶液を乾燥氷/アセトン浴中で30分間−40℃に冷却する。p−トルエンスルホニルクロリド(2.58g、13.51mmol)を5分にわたってゆっくりと加え、溶液を4時間にわたって室温まで加温する。溶液を濃縮して3.59g(86%)の標題化合物を得て、それをさらに精製せずに使用する。LC−ES/MS m/z 295.0[M+Na],T=1.76分。(Symyx Draw 3.1(IUPAC Name)により、調製例12の化合物名を提供する)。
【実施例】
【0079】
実施例1
[(S)−7−シアノ−4−((2R,3S)−3−ヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イルメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イル]−カルバミン酸イソプロピルエステル
【化19】

N−メチルピロリジン(25mL)中の((S)−7−シアノ−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イル)−カルバミン酸イソプロピルエステル(2.50g、8.82mmol)、[(2R,3S)−3−ヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル]メチル4−メチルベンゼンスルホネート(3.10g、11.38mmol)、および炭酸セシウム(5.00g、15.35mmol)の混合物を65℃の油浴中で一晩加熱する。室温まで冷却した後、反応物を酢酸エチル(120mL)で希釈し、水(3×100mL)およびブラインで洗浄する。有機部分を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮乾固する。得られた残渣を、酢酸エチルで溶出する、中圧液体クロマトグラフィーにより精製する。純粋な生成物を含有する画分を合わせ、濃縮して、2.46g(72%)の標題化合物を得る。LC−ES/MS m/z 384.2[M+H],T=1.90分。(Symyx Draw 3.1(IUPAC Name)により、実施例1の化合物名について以下の名称を与える:イソプロピルN−[(2S)−7−シアノ−4−[[(2R,3S)−3−ヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル]メチル−2,3−ジヒドロ−1H−シクロペンタ[b]インドール−2−イル]カルバメート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[(S)−7−シアノ−4−((2R,3S)−3−ヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イルメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イル]−カルバミン酸イソプロピルエステルである、化合物。
【請求項2】
治療に使用するための請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
性腺機能低下症、骨粗鬆症、骨減少症、サルコペニア、悪液質、筋萎縮、性機能障害または勃起障害の治療または予防に使用するための請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
使用停止、外傷、固定化、脊髄損傷または脳卒中に関連する筋萎縮の治療または予防に使用するための請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
股関節または膝置換、股関節骨折、脊髄損傷または脳卒中に関連する筋萎縮の治療または予防に使用するための請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
1種以上の医薬的に許容可能な担体、賦形剤、または希釈剤と共に[(S)−7−シアノ−4−((2R,3S)−3−ヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イルメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−シクロペンタ[b]インドール−2−イル]−カルバミン酸イソプロピルエステルを含む、医薬組成物。
【請求項7】
性腺機能低下症、骨粗鬆症、骨減少症、サルコペニア、悪液質、筋萎縮、性機能障害または勃起障害の治療または予防のための請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
1種以上の追加の治療剤をさらに含む、請求項6に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2013−510858(P2013−510858A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538928(P2012−538928)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/056156
【国際公開番号】WO2011/060019
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】