説明

アンドロゲン受容体調節物質としてのジアリールヒダントイン化合物

本発明は、アンドロゲン受容体(AR)に対して強力な拮抗活性と最小の作動活性を有する一連の化合物を提供する。これらの化合物は、ホルモン不応性前立腺癌の増殖を阻害する。本発明は、Rが、水素、シアノ、ホルミルからなる群から選択され、RとRが一緒に8個以下の炭素原子を含み、アルキル置換アルキル及び、それらが結合した炭素と一緒に、シクロアルキル又は置換シクロアルキル基からなる群から選択される、ジアリールヒダントイン化合物、それを合成する方法、及びホルモン不応性前立腺癌の治療においてそれを使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアリールチオヒダントインを含むジアリールヒダントイン化合物、ならびにそれらを合成するための方法およびホルモン抵抗性前立腺癌の処置におけるそれらの使用に関する。本願は、2007年10月26日に出願された米国仮特許出願第60/996,076号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/996,076号の明細書は、参照として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌は、最も一般的に発生する癌であり、西欧の男性における癌死の2番目の主要原因である。前立腺癌は、限局しているときには、手術又は照射によって治療することができる。しかし、前立腺癌の30%は、遠隔転移性疾患を伴って再発し、他は、診断時に進行性疾患を有する。進行性疾患は、性腺摘除及び/又は抗アンドロゲン薬投与、いわゆるアンドロゲン遮断療法によって治療される。性腺摘除は、アンドロゲン循環レベルを低下させ、アンドロゲン受容体(AR)活性を低下させる。抗アンドロゲン薬投与は、アンドロゲン結合と競合することによってAR機能を遮断し、したがって、AR活性を低下させる。これらの治療は、初期には有効であるが、急速に作用しなくなり、癌はホルモン抵抗性になる。
【0003】
ビカルタミドなどの非ステロイド系抗アンドロゲン薬は、前立腺癌用ステロイド系化合物よりも選択的であり、副作用が少ないので好ましい。このクラスの化合物は、参照によりそのすべてを本明細書に援用する特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4及び特許文献5、特許文献6などの特許に記載されている。ビカルタミド(商品名:Casodex)は最も一般的に使用される抗アンドロゲン薬である。ビカルタミドは、ホルモン感受性前立腺癌においてARに対する阻害効果を有するが、癌がホルモン不応性になるとARを抑制することができない。
【0004】
特許文献7は、極めて多数の化合物を包含する広範な特許請求の範囲を含むが、合成経路は、これらの化合物のごく一部に対してしか示されず、薬理学的データは、そのうちの2種類に対してしか示されず、当業者は、他の具体的化合物を容易に予見することができない。特許文献7を参照により本明細書に援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,097,578号明細書
【特許文献2】米国特許第5,411,981号明細書
【特許文献3】米国特許第5,705,654号明細書
【特許文献4】国際公開第97/00071号パンフレット
【特許文献5】国際公開第00/17163号パンフレット
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0009969号明細書
【特許文献7】米国特許第5,434,176号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アンドロゲン受容体(AR)に対して強力な拮抗活性と最小の作動活性を有する一連の化合物を提供する。これらの化合物は、ホルモン不応性前立腺癌の増殖を阻害する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、次式を有する化合物を含む。
【0008】
【化1】

とRは一緒に8個以下の炭素原子を含むことができ、アルキル、置換アルキル及び、それらが結合した炭素と一緒に、シクロアルキル又は置換シクロアルキル基からなる群から選択することができる。Rは水素、シアノ、ホルミル、
【0009】
【化2】

とすることができる。Rは水素、F、Cl、Br又はIとすることができる。R11とR12は、同じでも異なっていてもよく、水素又はメチルである。R13は水素又は−NR1415とすることができる。R14とR15は、同じでも異なっていてもよく、水素又はメチルである。
【0010】
例えば、RとRは独立にメチル又は、それらが結合した炭素と一緒に、シクロブチル若しくはシクロペンチルとすることができる。例えば、R11とR12はどちらも水素又はメチルとすることができる。例えば、R13は−NH(CH)又は−N(CHとすることができる。例えば、R、R11及びR12が各々水素であるとき、かつRとRがそれらが結合した炭素と一緒にシクロブチルであるときには、R13水素、−NH、−NH(CH)又は−N(CHと一緒に、Rは、シアノ及び以下以外とすることができる。
【0011】
【化3】

本発明は、治療有効量の前述の化合物のいずれかによる化合物又は薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容される担体又は希釈剤とを含む、薬剤組成物を提供する。
【0012】
本発明は、過剰増殖障害を治療する方法であって、かかる薬剤組成物をかかる治療を必要とする対象に投与し、それによって過剰増殖障害を治療することを含む、方法を包含する。過剰増殖障害は、ホルモン不応性前立腺癌であり得る。投与量は、約0.001mg/kg体重/日から約100mg/kg体重/日、約0.01mg/kg体重/日から約100mg/kg体重/日、約0.1mg/kg体重/日から約10mg/kg体重/日の範囲、又は約1mg/kg体重/日とすることができる。
【0013】
化合物は、静脈内注射によって、組織への注射によって、腹腔内に、経口的に、又は経鼻的に投与することができる。組成物は、溶液剤、分散液剤、懸濁液剤、散剤、カプセル剤、錠剤、丸剤、徐放性カプセル剤、徐放性錠剤及び徐放性丸剤からなる群から選択される剤形を有することができる。
【0014】
本発明は、次式のジアリール化合物を合成する方法を提供する。
【0015】
【化4】

この方法は、化合物I
【0016】
【化5】

と化合物II
【0017】
【化6】

を第1の極性溶媒中で混合して、混合物を形成することを含む。
【0018】
この方法は、以下、すなわち、第1の極性溶媒と同じ又は異なる第2の極性溶媒及び酸水溶液を混合物に添加すること、混合物を還流させること、混合物を冷却し、水と組み合わせること、並びにジアリール化合物を混合物から分離することを更に含む。R31はシアノ、カルボキシ、
【0019】
【化7】

である。R32は、
【0020】
【化8】

である。RとRは一緒に8個以下の炭素原子を含み、アルキル、置換アルキル又は、それらが結合した炭素と一緒に、シクロアルキル若しくは置換シクロアルキル基である。Rは水素、シアノ、ホルミル、
【0021】
【化9】

である。Rは水素、F、Cl、Br又はIである。R11とR12は、同じでも異なっていてもよく、水素又はメチルである。R13は水素又は−NR1415である。R14とR15は、同じでも異なっていてもよく、水素又はメチルである。
【0022】
示した化合物は、ホルモン不応性前立腺癌細胞に対して実質的なアンドロゲン受容体拮抗活性を有し、実質的な作動活性を持たないと予想される。
【0023】
本発明は、少なくとも1種類のかかる化合物を用意すること、化合物のアンドロゲン受容体活性阻害を測定し、阻害が第1の所定レベルを超えるかどうかを判定すること、ホルモン不応性癌細胞における化合物のアンドロゲン受容体活性刺激を測定し、刺激が第2の所定レベル未満であるかどうかを判定すること、阻害が第1の所定レベルを超え、刺激が第2の所定レベル未満である場合に、化合物を選択することを含む、方法を包含する。各所定レベルは、ビカルタミドの各所定レベルとすることができる。阻害を測定するステップは、AR応答レポーター系又は前立腺特異抗原分泌系における抑制濃度(IC50)を測定することを含むことができる。刺激を測定するステップは、AR応答レポーター系又は前立腺特異抗原分泌系において濃度を増加させることによって誘導倍率を測定することを含むことができる。阻害及び/又は刺激を測定する方法は、動物における腫よう増殖に対する化合物の効果を測定することを含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態を以下に詳細に考察する。記載する実施形態においては、理解しやすいように特定の用語を使用する。しかし、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定されるものではない。当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、他の等価な要素を使用することができ、他の方法を開発できることを認識するであろう。本明細書で引用するすべての参考文献を、各々を個々に援用したかのごとく参照により本明細書に援用する。
【0025】
最近、ARの過剰発現がホルモン不応性前立腺癌の原因として特定され、確認された。参照により本明細書に援用する、Chen,C.D.,Welsbie,D.S.,Tran,C.,Baek,S.H.,Chen,R.,Vessella,R.,Rosenfeld,M.G.,and Sawyers,C.L.,Molecular determinants of resistance to antiandrogen therapy,Nat.Med.,10:33−39,2004を参照されたい。ARの過剰発現は、ホルモン不応性前立腺癌に感受性があるホルモンに起因する進行を引き起こすのに十分であり、現行薬物よりも優れたAR阻害剤が前立腺癌の進行を遅延できることを示唆している。AR及びそのリガンド結合がホルモン不応性前立腺癌の増殖に必要であることが実証され、ARが依然としてこの疾患の標的であることが示唆された。ARの過剰発現はホルモン不応性前立腺癌において抗アンドロゲン薬を拮抗物質から作動物質に変換することも実証された(AR拮抗物質はAR活性を阻害し、AR作動物質はAR活性を刺激する。)。この研究のデータは、性腺摘除及び抗アンドロゲン薬が前立腺癌進行を防止することができない理由を説明し、ホルモン不応性前立腺癌の認識されていない諸性質を明らかにする。
【0026】
現行の抗アンドロゲン薬の二つの欠点は、ホルモン感受性段階からホルモン不応性疾患への前立腺癌進行を防止することができず、ホルモン不応性前立腺癌を有効に治療することができないことによる。一つは、その弱い拮抗活性であり、もう一つは、ARがホルモン不応性前立腺癌において過剰発現したときのその強い作動活性である。より強力な拮抗活性と最小の作動活性を有するより優れたAR阻害剤が、疾患進行を遅延させ、致命的なホルモン不応性前立腺癌を治療するのに必要である。
【0027】
ホルモン不応性前立腺癌の幾つかの新しい性質が、参照により本明細書に援用するPCT出願US04/42221及びUS05/05529に報告された。PCT国際出願US05/05529は、化合物のアンドロゲン受容体拮抗及び作動特性を確認する方法を示した。
【0028】
ジアリールヒダントイン化合物の合成
本発明は、次式を有するジアリールチオヒダントイン化合物の合成を規定する。
【0029】
【化10】

とRは一緒に8個以下の炭素原子を含むことができ、アルキル、置換アルキル又は、それらが結合した炭素と一緒に、シクロアルキル若しくは置換シクロアルキル基とすることができる。Rは水素、シアノ、ホルミル、
【0030】
【化11】

とすることができる。Rは水素、F、Cl、Br及びIとすることができる。R11とR12は、同じでも異なっていてもよく、水素又はメチルとすることができる。R13は水素又は−NR1415とすることができる。R14とR15は、同じでも異なっていてもよく、水素又はメチルとすることができる。
【0031】
定義
本明細書では「アルキル」という用語は、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、2−メチルペンチル ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチルなど、好ましくは約1から約8個の炭素を有する、分枝又は非分枝炭化水素鎖を意味する。「置換アルキル」は、トリフルオロメチル、3−ヒドロキシヘキシル、2−カルボキシプロピル、2−フルオロエチル、カルボキシメチル、シアノブチルなどのアルキル基を形成する、ヒドロキシル、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨード、メルカプト又はチオ、シアノ、アルキルチオ、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、カルボキシル、カルボアルコイル(carbalkoyl)、アルキル、アルケニル、ニトロ、アミノ、アルコキシル、アミドなどのかかる鎖に結合し得る1個以上の官能基で場合によっては置換されたアルキル基を含む。
【0032】
別段の記載がない限り、単独で又は別の基の一部として本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、単環式アルキル、二環式アルキル及び三環式アルキルを含めて1から3個の環を含み、環を形成する合計3から20個の炭素、好ましくは環を形成する3から10個の炭素を含み、アリールについて記載する1又は2個の芳香環と縮合し得る、飽和又は(1個以上の二重結合を含む)部分不飽和の環状炭化水素基を含み、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル及びシクロドデシル、シクロヘキセニルが挙げられる。「置換シクロアルキル」は、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、シクロアルキル、アルキルアミド、アルカノイルアミノ、オキソ、アシル、アリールカルボニルアミノ、アミノ、ニトロ、シアノ、チオール及び/又はアルキルチオなどの1個以上の置換基で、及び/又は「置換アルキル」の定義に含まれる置換基のいずれかで、場合によっては置換された、シクロアルキル基を含む。例えば、以下など。
【0033】
【化12】

別段の記載がない限り、単独で又は別の基の一部として本明細書では「アルケニル」という用語は、ビニル、2−プロペニル、3−ブテニル、2−ブテニル、4−ペンテニル、3−ペンテニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、2−ヘプテニル、3−ヘプテニル、4−ヘプテニル、3−オクテニル、3−ノネニル、4−デセニル、3−ウンデセニル、4−ドデセニル、4,8,12−テトラデカトリエニルなど、直鎖中1個以上の二重結合を含む、直鎖中2から20個の炭素、好ましくは2から12個の炭素、より好ましくは2から8個の炭素の直鎖又は分枝鎖基を指す。「置換アルケニル」は、上記「置換アルキル」及び「置換シクロアルキル」の定義に含まれる置換基などの1個以上の置換基で場合によっては置換されたアルケニル基を含む。
【0034】
別段の記載がない限り、単独で又は別の基の一部として本明細書では「アルキニル」という用語は、2−プロピニル、3−ブチニル、2−ブチニル、4−ペンチニル、3−ペンチニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、2−ヘプチニル、3−ヘプチニル、4−ヘプチニル、3−オクチニル、3−ノニニル、4−デシニル、3−ウンデシニル、4−ドデシニルなど、直鎖中1個以上の三重結合を含む、直鎖中2から20個の炭素、好ましくは2から12個の炭素、より好ましくは2から8個の炭素の直鎖又は分枝鎖基を指す。「置換アルキニル」は、上記「置換アルキル」及び「置換シクロアルキル」の定義に含まれる置換基などの1個以上の置換基で場合によっては置換されたアルキニル基を含む。
【0035】
単独で又は別の基の一部として使用される「アリールアルキル」、「アリールアルケニル」及び「アリールアルキニル」という用語は、アリール置換基を有する上記アルキル、アルケニル及びアルキニル基を指す。アリールアルキルの代表例としては、ベンジル、2−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、フェネチル、ベンズヒドリル、及びナフチルメチルなどが挙げられるが、それだけに限定されない。「置換アリールアルキル」は、上記「置換アルキル」及び「置換シクロアルキル」の定義に含まれる置換基などの1個以上の置換基でアリール部分が場合によっては置換されたアリールアルキル基を含む。
【0036】
単独で又は別の基の一部として使用される「アリールアルキル」、「アリールアルケニル」及び「アリールアルキニル」という用語は、アリール置換基を有する上記アルキル、アルケニル及びアルキニル基を指す。アリールアルキルの代表例としては、ベンジル、2−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、フェネチル、ベンズヒドリル、及びナフチルメチルなどが挙げられるが、それだけに限定されない。「置換アリールアルキル」は、上記「置換アルキル」及び「置換シクロアルキル」の定義に含まれる置換基などの1個以上の置換基でアリール部分が場合によっては置換されたアリールアルキル基を含む。
【0037】
単独で又は別の基の一部として本明細書では「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素を指す。
【0038】
単独で又は別の基の一部として本明細書では「ハロゲン化アルキル」、「ハロゲン化アルケニル」及び「アルキニル」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される1個以上の原子で置換された「アルキル」、「アルケニル」及び「アルキニル」を指す。
【0039】
別段の記載がない限り、単独で又は別の基の一部として本明細書で使用される「アリール」又は「Ar」という用語は、(フェニル、又は1−ナフチル及び2−ナフチルを含めたナフチルなどの)環部分に6から10個の炭素を含み、(アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、又はシクロヘテロアルキル環などの)炭素環又は複素環と縮合した1から3個の追加の環を場合によっては含むことができる、単環式及び多環式の芳香族基を指す。
【0040】
「置換アリール」は、ハロ、ハロアルキル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキニル、シクロアルキル−アルキル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、アリールアルコキシ、アルコキシカルボニル、アリールカルボニル、アリールアルケニル、アミノカルボニルアリール、アリールチオ、アリールスルフィニル、アリールアゾ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、アミノが(アルキル、アリール又は本定義に記載の任意の他のアリール化合物である)1又は2個の置換基を含む置換アミノ、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アリールチオアルキル、アルコキシアリールチオ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アリールスルフィニル、アリールスルフィニルアルキル、アリールスルホニルアミノ、又はアリールスルホンアミノカルボニルなどの1個以上の官能基で、及び/又は本明細書に記載するアルキル置換基のいずれかで、場合によっては置換された、アリール基を含む。
【0041】
別段の記載がない限り、本明細書では「複素環式」又は「複素環」という用語は、飽和でも不飽和でもよく、炭素原子及びN、O又はSから選択される1から4個のヘテロ原子からなり、窒素及び硫黄ヘテロ原子は場合によっては酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は場合によっては四級化されていてもよい、安定な5から10員の非置換又は置換単環式環構造を表す。複素環は、任意のヘテロ原子又は炭素原子において結合して、安定構造を形成することができる。かかる複素環式基の例としては、ピペリジニル、ピペラジニル、オキソピペラジニル、オキソピペリジニル、オキソピロリジニル、オキソアゼピニル、アゼピニル、ピロリル、ピロリジニル、フラニル、チエニル、ピラゾリル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、テトラヒドロピラニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン及びオキサジアゾリルが挙げられるが、それだけに限定されない。単独で又は別の基の一部として本明細書では「複素環式芳香族」という用語は、窒素、酸素、又は硫黄などの1、2、3又は4個のヘテロ原子及びアリール、シクロアルキル、ヘテロアリール又はヘテロシクロアルキル環と縮合したかかる環(例えば、ベンゾチオフェニル、インドリル)を含む5又は7員の芳香環を指し、可能なN酸化物を含む。「置換ヘテロアリール」は、上記「置換アルキル」及び「置換シクロアルキル」の定義に含まれる置換基などの1から4個の置換基で場合によっては置換されたヘテロアリール基を含む。ヘテロアリール基の例としては以下などが挙げられる。
【0042】
【化13】

材料を供給業者から入手し、更に精製せずに使用した。空気又は水分に敏感な反応は、アルゴン雰囲気下で、乾燥器で乾燥させたガラス製品及び標準シリンジ/セプタム技術を使用して、実施された。反応をシリカゲルTLCプレートを用いてUV光(254nm)下でモニターし、続いてp−アニスアルデヒド又はニンヒドリン染色溶液を用いて可視化した。カラムクロマトグラフィーをシリカゲル60上で実施した。別段の記載がない限り、H NMRスペクトルをCDCl中で400MHzで測定し、データを内部標準(TMS、0.0ppm)からのppm(δ)単位で以下のように報告した:化学シフト(多重度、積分、Hz単位の結合定数)。
【0043】
ND−1の合成
4−[4−(t−ブトキシカルボニルアミノ)フェニル]ブタン酸(100)
ジ−tert−ブチルジカルボナート(0.73g、3.35mmol)を、4−(4−アミノフェニル)酪酸(0.5g、2.79mmol)と水酸化ナトリウム(0.14g、3.35mmol)のtert−ブタノール(5mL)と水(5mL)の溶液に0℃で添加した。混合物を室温に加温し、9時間撹拌した。混合物をジエチルエーテル(20mL)と水(20mL)で分配し、次いで水層を1N KHSO溶液によってpH2〜3に酸性化した。混合物水溶液を酢酸エチル(3×20mL)で抽出し、有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮して、粗製4−[4−(t−ブトキシカルボニルアミノ)フェニル]ブタン酸(100)(0.73g、94%)を得た。それを更に精製せずに使用した。
【0044】
【化14】

4−[4−(t−ブトキシカルボニルアミノ)フェニル]ブタンアミド(99)
塩化チオニル(0.22mL、3.01mmol)を、−5℃で冷却された4−[4−(t−ブトキシカルボニルアミノ)フェニル]ブタン酸(100)(0.70g、2.51mmol)のDMF(5mL)溶液に徐々に添加した。混合物を−5℃で更に1時間撹拌した。(その水溶液から新しく蒸留された)過剰のアンモニアを反応媒体に添加した。第2の混合物を更に1時間撹拌した。酢酸エチル(50mL)を混合物に添加し、それを塩水(2×50mL)で洗浄した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトン、9:1)によって精製して、4−[4−(t−ブトキシカルボニルアミノ)フェニル]ブタンアミド(99)(0.57g、82%)を白色固体として得た。
【0045】
【化15】

4−[4−(t−ブトキシカルボニルアミノ)フェニル]ブタンニトリル(98)
DMSO(0.13mL、1.84mmol)のジクロロメタン(2mL)溶液を塩化オキサリル(0.12mL、1.38mmol)のジクロロメタン(2mL)撹拌溶液に−78℃で添加した。15分後、2(0.32g、1.15mmol)のジクロロメタン(1mL)溶液を反応混合物に添加した。撹拌を−78℃で20分間続け、次いでトリエチルアミン(0.48mL、3.45mmol)を添加した。30分後、反応混合物を室温に加温し、次いで反応をNHCl飽和水溶液でクエンチした。混合物をジエチルエーテル(30mL)と水(20mL)で分配した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル、4:1)によって精製して、4−[4−(t−ブトキシカルボニルアミノ)フェニル]ブタンニトリル(98)(0.22g、73%)を白色固体として得た。
【0046】
【化16】

4−(4−アミノフェニル)ブタンニトリル(97)
ジクロロメタン(5mL、1.25mmol)中のトリフルオロ酢酸の0.25M溶液を4−[4−(t−ブトキシカルボニルアミノ)フェニル]ブタンニトリル(98)(0.22g、0.85mmol)に添加した。30分後、反応を1N NaOH溶液でクエンチした。混合物を酢酸エチル(30mL)と水(20mL)で分配した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮して、4−(4−アミノフェニル)ブタンニトリル(97)(0.16g、99%)を得た。それを更に精製せずに使用した。
【0047】
【化17】

4−イソチオシアナト−2−トリフルオロメチルベンゾニトリル(96)
4−アミノ−2−トリフルオロメチルベンゾニトリル(2.23g、12mmol)を、水(22mL)中のチオホスゲン(1mL、13mmol)の十分撹拌された不均一混合物に室温で15分間分割添加した。撹拌を更に1時間続けた。反応媒体をクロロホルム(3×15mL)で抽出した。混合有機相をMgSOを用いて脱水し、減圧下で蒸発乾固させて、所望の生成物4−イソチオシアナト−2−トリフルオロメチルベンゾニトリル(96)(2.72g、11.9mmol、99%)を茶色がかった固体として得、更に精製せずに使用した。
【0048】
【化18】

4−[4−(1−シアノジメチルアミノ)フェニル]ブタンニトリル(95)
4−(4−アミノフェニル)ブタンニトリル(97)(50mg、0.26mmol)、アセトンシアノヒドリン(0.15mL、1.58mmol)の混合物を80℃に加熱し、12時間撹拌した。媒体に酢酸エチル(20mL)を添加し、次いで水(2×20mL)で洗浄した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル、1:1)によって精製して、4−[4−(1−シアノジメチルアミノ)フェニル]ブタンニトリル(95)(52mg、87%)を白色固体として得た。
【0049】
【化19】

4−(3−(4−(3−シアノプロピル)フェニル)−4,4−ジメチル−5−オキソ−2−チオキソ−イミダゾリジン−1−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(94)[ND−1]
4−イソチオシアナト−2−トリフルオロメチルベンゾニトリル(96)(32mg、0.14mmol)と4−[4−(1−シアノジメチルアミノ)フェニル]ブタンニトリル(95)(16mg、0.07mmol)の混合物のDMF(1mL)溶液をマイクロ波照射下で80℃で6時間加熱した。この混合物にメタノール(10mL)及び1N HCl水溶液(3mL)を添加した。第2の混合物を1.5時間還流させた。室温に冷却後、反応混合物を冷水(20mL)に注ぎ、酢酸エチル(30mL)で抽出した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル、2:1)によって精製して、4−(3−(4−(3−シアノプロピル)フェニル)−4,4−ジメチル−5−オキソ−2−チオキソ−イミダゾリジン−1−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(94)[ND−1](20mg、62%)を白色固体として得た。
【0050】
【化20】

ND−2の合成
4−[4−(1−シアノシクロペンチルアミノ)フェニル]ブタンニトリル(93)
4−(4−アミノフェニル)ブタンニトリル(97)(52mg、0.27mmol)、シクロペンタノン(0.07mL、0.55mmol)及びTMSCN(0.05mL、0.55mmol)の混合物を80℃に加熱し、13時間撹拌した。媒体に酢酸エチル(2×20mL)を添加し、次いで水(2×20mL)で洗浄した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル、1:1)によって精製して、4−[4−(1−シアノシクロペンチルアミノ)フェニル]ブタンニトリル(93)(70mg、定量)を白色固体として得た。
【0051】
【化21】

4−(1−(4−(3−シアノプロピル)フェニル)−4−オキソ−2−チオキソ−1,3−ジアザスピロ[4.4]ノン−3−イル)−2−トリフルオロメチルベンゾニトリル(92)[ND−2]
4−イソチオシアナト−2−トリフルオロメチルベンゾニトリル(96)(36mg、0.16mmol)と4−[4−(1−シアノシクロペンチルアミノ)フェニル]ブタンニトリル(93)(20mg、0.08mmol)の混合物のDMF(1mL)溶液をマイクロ波照射下で80℃で6時間加熱した。この混合物にメタノール(10mL)及び1N HCl水溶液(3mL)を添加した。第2の混合物を1.5時間還流させた。室温に冷却後、反応混合物を冷水(20mL)に注ぎ、酢酸エチル(30mL)で抽出した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル、2:1)によって精製して、4−(1−(4−(3−シアノプロピル)フェニル)−4−オキソ−2−チオキソ−1,3−ジアザスピロ[4.4]ノン−3−イル)−2−トリフルオロメチルベンゾニトリル(92)[ND−2](25mg、65%)を白色固体として得た。
【0052】
【化22】

【0053】
【化23】

ND−14の合成
4−(3−(4−(3−シアノプロピル)−3−フルオロフェニル)−4,4−ジメチル−5−オキソ−2−チオキソ−イミダゾリジン−1−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(103)
4−(3−(4−(3−シアノプロピル)−3−フルオロフェニル)−4,4−ジメチル−5−オキソ−2−チオキソ−イミダゾリジン−1−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(103)[ND−14]は、合成(92)[ND−2]と類似の様式で合成することができる。溶媒、例えばDMF中の4−イソチオシアナト−2−トリフルオロメチルベンゾニトリル(96)と4−(4−(2−シアノプロパン−2−イルアミノ)−2−フルオロフェニル)ブタンニトリル(101)の混合物をマイクロ波照射下で80℃で6時間加熱する。
【0054】
【化24】

この混合物にアルコール、例えばメタノール及び酸、例えば塩酸水溶液を添加する。第2の混合物を1.5時間還流させる。室温に冷却後、反応混合物を冷水に注ぎ、例えば酢酸エチルで抽出する。有機層を(例えば、MgSOを用いて)脱水し、濃縮し、例えばヘキサン:酢酸エチル(2:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって、残留物を精製して、4−(3−(4−(3−シアノプロピル)−3−フルオロフェニル)−4,4−ジメチル−5−オキソ−2−チオキソ−イミダゾリジン−1−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(103)[ND−14]を得る。
【0055】
【化25】

ND−3の合成
4−[4−(1−シアノシクロブチルアミノ)−フェニル]−酪酸(91)
トリメチルシリルシアニド(0.50g、5mmol)を4−(4−アミノフェニル)−酪酸(0.537g、3mmol)、シクロブタノン(0.35g、5mmol)及び硫酸ナトリウム(1g)の混合物の1,4−ジオキサン(10ml)溶液に滴下した。混合物を15時間撹拌した。硫酸ナトリウムをろ過除去後、媒体を減圧濃縮して、褐色液体を得た。それをクロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトン、50:50)に供して、4−[4−(1−シアノシクロブチルアミノ)−フェニル]−酪酸(91)(0.665g、2.58mmol、86%)を黄色がかった固体として得た。
【0056】
4−{4−[7−(4−シアノ−3−トリフルオロメチルフェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタ−5−イル]−フェニル}−酪酸メチルエステル(90)[ND−4]
4−イソチオシアナト−2−トリフルオロメチルベンゾニトリル(96)(0.547g、2.4mmol)と4−[4−(1−シアノシクロブチルアミノ)−フェニル]−酪酸(91)(0.342g、1.5mmol)の混合物の無水DMF(2ml)溶液を室温で15時間撹拌した。この混合物にメタノール(10mL)及びHCl水溶液(5ml、2M)を添加した。第2の混合物を3時間還流させた。室温に冷却後、反応混合物を冷水(10mL)に注ぎ、酢酸エチル(3×30mL)で抽出した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮し、クロマトグラフィー(ジクロロメタン)によって分離して、4−{4−[7−(4−シアノ−3−トリフルオロメチルフェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタ−5−イル]−フェニル}−酪酸メチルエステル(90)[ND−4](0.594g、1.18mmol、79%)を白色粉末として得た。
【0057】
【化26】

4−{4−[7−(4−シアノ−3−トリフルオロメチルフェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザ−スピロ[3.4]オクタ−5−イル]−フェニル}−酪酸(89)[ND−5]
4−{4−[7−(4−シアノ−3−トリフルオロメチルフェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタ−5−イル]−フェニル}−酪酸メチルエステル(90)[ND−4](0.501g、1mmol)のメタノール(10ml)溶液と水酸化ナトリウム溶液(10ml、2M)の混合物を室温で5時間撹拌した。メタノールを蒸発させた。残留物をHCl水溶液(2M)でpH=5に調節し、次いで媒体を酢酸エチル(3×50ml)で抽出した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮乾固させて、4−{4−[7−(4−シアノ−3−トリフルオロメチルフェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザ−スピロ[3.4]オクタ−5−イル]−フェニル}−酪酸(89)[ND−5](0.482g、0.99mmol、99%)を得た。その構造を式89に示す。
【0058】
【化27】

42−5) 4−{4−[7−(4−シアノ−3−トリフルオロメチルフェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザ−スピロ[3.4]オクタ−5−イル]−フェニル}−N−メチル−ブチルアミド(88)[ND−6]
THF(10ml)中の4−{4−[7−(4−シアノ−3−トリフルオロメチルフェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザ−スピロ[3.4]オクタ−5−イル]−フェニル}−酪酸(89)(0.097g、0.2mmol)懸濁液に塩化チオニル(0.019ml、0.26mmol)を−5℃で添加した。媒体を−5℃で1時間撹拌した。次いで、メチルアミンを混合物中に−5℃で30分間バブリングさせた。媒体をろ過した。ろ液を濃縮し、クロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトン、75:25)によって分離して、4−{4−[7−(4−シアノ−3−トリフルオロメチルフェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザ−スピロ[3.4]オクタ−5−イル]−フェニル}−N−メチル−ブチルアミド(88)[ND−6](0.095g、0.19mmol、95%)をオフホワイト粉末として得た。
【0059】
【化28】

4−(4−(7−(4−シアノ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタ−アン−5−イル)フェニル)−N−メチルブタンイミドアミド(87)[ND−3]
4−{4−[7−(4−シアノ−3−トリフルオロメチルフェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザ−スピロ[3.4]オクタ−5−イル]−フェニル}−N−メチル−ブチルアミド(88)[ND−6](4.0mg、0.008mmol)とピリジン(1.94μL、0.02mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液に−40℃でトリフリック酸無水物(TfO、1.75μL、0.01mmol)を徐々に添加した。混合物を0℃に3時間かけて加温した。次いで、溶液を−40℃に冷却し、アンモニアをバブリングによって導入した。次いで、反応物を室温に加温し、終夜撹拌した。水系での後処理なしに、10%メタノールの酢酸エチル溶液を用いたフラッシュクロマトグラフィーによって、4−(4−(7−(4−シアノ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタ−アン−5−イル)フェニル)−N−メチルブタンイミドアミド(87)[ND−3](2.9mg、72%)を無色オイルとして得た。
【0060】
【化29】

ND−7及びND−8の合成
ジメチル2−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)マロナート(86)
無水DMF(10mL)中の水素化ナトリウム(NaH、60%、0.40g、10.0mmol)懸濁液にマロン酸ジメチル(1.04mL、9.1mmol)を氷冷下で滴下し、続いて1−ブロモ−2−フルオロ−4−ニトロベンゼン(1.00g、4.55mmol)の無水DMF(3mL)溶液をアルゴン雰囲気下で滴下した。生成した混合物を70℃で終夜撹拌し、次いで21℃に冷却した。反応混合物を飽和NHClでクエンチし、酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル、2:1)によって精製して、ジメチル2−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)マロナート(86)(0.90g、73%)を淡黄色がかった固体として得た。
【0061】
【化30】

トリメチル1−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)プロパン−1,1,3−トリカルボキシラート(85)
ニトロジエステル、ジメチル2−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)マロナート(86)(0.44g、1.62mmol)及びアクリル酸メチル(0.22mL、2.43mmol)の無水メタノール(5mL)溶液に、触媒作用量のナトリウムメトキシドを21℃でアルゴン下で添加した。反応混合物を同じ温度で40時間撹拌し、次いでジクロロメタン(50mL)で希釈した。生成した混合物を水、塩水で洗浄し、乾燥させた。溶媒蒸発後に得られた残留物をシリカゲル(ヘキサン:酢酸エチル、8:1)上で精製して、トリメチル1−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)プロパン−1,1,3−トリカルボキシラート(85)(0.49g、85%)を得た。
【0062】
【化31】

メチル4−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)ブタノアート(84)
化合物トリメチル1−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)プロパン−1,1,3−トリカルボキシラート(85)(0.23g、0.63mmol)、塩化ナトリウム(0.11g、1.90mmol)及び水(0.15mL)の蒸留ジメチルスルホキシド(4mL)溶液を155℃に終夜加熱した。反応混合物を21℃に冷却し、次いで水を添加し酢酸エチル(2×50mL)で抽出して処理した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル、8:1)によって精製して、所望のメチル4−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)ブタノアート(84)(69mg、45%)及びジメチル2−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)ペンタンジオアート(83)(72mg、38%)を得た。
【0063】
【化32】

4−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)ブタン酸(82)
メチル4−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)ブタノアート(84)(43mg、0.18mmol)のメタノール(1mL)と水(3mL)の溶液に水酸化ナトリウム(0.18g、4.50mmol)を添加した。反応混合物を21℃で終夜撹拌した。反応混合物を1N HCl溶液でクエンチし、酢酸エチル(2×30mL)で抽出した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮して、4−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)ブタン酸(82)(40mg、98%)を得た。残留物を更に精製せずに使用した。
【0064】
4−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)−N−メチルブタンアミド(81)
塩化チオニル(0.01mL、0.11mmol)を、−5℃で冷却された4−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)ブタン酸(82)(20mg、0.09mmol)のDMF(3mL)溶液に徐々に添加した。混合物を−5℃で更に1時間撹拌した。(その40%水溶液から新しく蒸留された)過剰のメチルアミンを反応媒体に添加した。第2の混合物を更に1時間撹拌した。酢酸エチル(30mL)を混合物に添加し、それを塩水(2×30mL)で洗浄した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮して、4−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)−N−メチルブタンアミド(81)(18mg、85%)を得た。
【0065】
【化33】

4−(4−アミノ−2−フルオロフェニル)−N−メチルブタンアミド(80)
化合物4−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)−N−メチルブタンアミド(81)(18mg、0.07mmol)、Fe(30mg、0.52mmol)及びAcOH(1mL)の酢酸エチル(3mL)溶液を2時間加熱還流した。反応混合物を21℃に冷却し、次いでろ過した。有機層を濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトン、9:1)によって精製して、所望の4−(4−アミノ−2−フルオロフェニル)−N−メチルブタンアミド(80)(14mg、86%)を得た。
【0066】
【化34】

4−(4−(1−シアノシクロブチルアミノ)−2−フルオロフェニル)−N−メチルブタンアミド(79)
4−(4−アミノ−2−フルオロフェニル)−N−メチルブタンアミド(80)(8mg、0.04mmol)、シクロブタノン(5mg、0.08mmol)及びトリメチルシリルシアニド(TMSCN、8mg、0.08mmol)の混合物を80℃に加熱し、15時間撹拌した。媒体に酢酸エチル(2×20mL)を添加し、次いで水(2×20mL)で洗浄した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトン、9:1)によって精製して、4−(4−(1−シアノシクロブチルアミノ)−2−フルオロフェニル)−N−メチルブタンアミド(79)(10mg、92%)を得た。
【0067】
4−(4−(7−(4−シアノ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタ−アン−5−イル)−2−フルオロフェニル)−N−メチルブタンアミド(78)[ND−7]
4−(4−(1−シアノシクロブチルアミノ)−2−フルオロフェニル)−N−メチルブタンアミド(79)(7mg、0.02mmol)と4−イソチオシアナト−2−トリフルオロメチルベンゾニトリル(96)(12mg、0.05mmol)の混合物のDMF(1mL)溶液を80℃に16時間マイクロ波加熱した。この混合物にメタノール(3mL)及び1N HCl水溶液(3mL)を添加した。第2の混合物を1.5時間還流させた。室温に冷却後、反応混合物を冷水(30mL)に注ぎ、酢酸エチル(30mL)で抽出した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトン、95:5)によって精製して、4−(4−(7−(4−シアノ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタ−アン−5−イル)−2−フルオロフェニル)−N−メチルブタンアミド(78)[ND−7](8mg、62%)を淡黄色がかった固体として得た。
【0068】
【化35】

4−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)−N,N−ジメチルブタンアミド(77)
塩化チオニル(0.01mL、0.11mmol)を、−5℃で冷却された4−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)ブタン酸(82)(18mg、0.08mmol)のDMF(3mL)溶液に徐々に添加した。混合物を−5℃で更に1時間撹拌した。(その40%水溶液から新しく蒸留された)過剰のジメチルアミンを反応媒体に添加した。第2の混合物を更に1時間撹拌した。酢酸エチル(30mL)を混合物に添加し、それを塩水(2×30mL)で洗浄した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮して、4−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)−N,N−ジメチルブタンアミド(77)(18mg、87%)を得た。
【0069】
【化36】

4−(4−アミノ−2−フルオロフェニル)−N,N−ジメチルブタンアミド(76)
化合物4−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)−N,N−ジメチルブタンアミド(77)(15mg、0.06mmol)、Fe(20mg、0.37mmol)及び酢酸(1mL)の酢酸エチル(3mL)溶液を2時間加熱還流した。反応混合物を21℃に冷却し、次いでろ過した。有機層を濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトン、9:1)によって精製して、所望の4−(4−アミノ−2−フルオロフェニル)−N,N−ジメチルブタンアミド(76)(12mg、87%)を得た。
【0070】
【化37】

4−(4−(2−シアノプロパン−2−イルアミノ)−2−フルオロフェニル)−N,N−ジメチルブタンアミド(75)
4−(4−アミノ−2−フルオロフェニル)−N,N−ジメチルブタンアミド(76)(10mg、0.05mmol)、シクロブタノン(6mg、0.09mmol)及びトリメチルシリルシアニド(TMSCN、9mg、0.09mmol)の混合物を80℃に加熱し、15時間撹拌した。媒体に酢酸エチル(2×20mL)を添加し、次いで水(2×20mL)で洗浄した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトン、9:1)によって精製して、4−(4−(2−シアノプロパン−2−イルアミノ)−2−フルオロフェニル)−N,N−ジメチルブタンアミド(75)(12mg、89%)を得た。
【0071】
【化38】

4−(4−(7−(4−シアノ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタ−アン−5−イル)−2−フルオロフェニル)−N,N−ジメチルブタンアミド(74)[ND−8]
4−(4−(2−シアノプロパン−2−イルアミノ)−2−フルオロフェニル)−N,N−ジメチルブタンアミド(75)(7mg、0.02mmol)と4−イソチオシアナト−2−トリフルオロメチルベンゾニトリル(96)(12mg、0.05mmol)の混合物のDMF(1mL)溶液を80℃に16時間マイクロ波加熱した。この混合物にメタノール(3mL)及び1N HCl水溶液(3mL)を添加した。第2の混合物を1.5時間還流させた。室温に冷却後、反応混合物を冷水(30mL)に注ぎ、酢酸エチル(30mL)で抽出した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトン、95:5)によって精製して、4−(4−(7−(4−シアノ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタ−アン−5−イル)−2−フルオロフェニル)−N,N−ジメチルブタンアミド(74)[ND−8](8mg、65%)を淡黄色がかった固体として得た。
【0072】
【化39】

【0073】
【化40】

ND−9の合成
ジメチル2−(2−シアノエチル)−2−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)マロナート(73)
ニトロジエステル、ジメチル2−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)マロナート(86)(0.4g、1.47mmol)及びアクリロニトリル(0.11mL、1.62mmol)の無水メタノール(5mL)溶液に、触媒作用量のナトリウムメトキシドを21℃でアルゴン下で添加した。反応混合物を同じ温度で40時間撹拌し、次いでジクロロメタン(50mL)で希釈した。生成した混合物を水、塩水で洗浄し、乾燥させた。溶媒蒸発後に得られた残留物をシリカゲル(ヘキサン:酢酸エチル、8:1)上で精製して、ジメチル2−(2−シアノエチル)−2−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)マロナート(73)(0.25g、52%)を得た。
【0074】
【化41】

4−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)ブタンニトリル(72)
化合物ジメチル2−(2−シアノエチル)−2−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)マロナート(73)(0.19g、0.59mmol)、塩化ナトリウム(0.10g、1.76mmol)及び水(0.15mL)の蒸留ジメチルスルホキシド(DMSO、4mL)溶液を155℃に終夜加熱した。反応混合物を21℃に冷却し、次いで水を添加し酢酸エチル(2×50mL)で抽出して処理した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル、8:1)によって精製して、所望の4−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)ブタンニトリル(72)(79mg、65%)を得た。
【0075】
【化42】

4−(4−アミノ−2−フルオロフェニル)ブタンニトリル(71)
化合物4−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)ブタンニトリル(72)(47mg、0.23mmol)、Fe(78mg、1.40mmol)及び酢酸(1mL)の酢酸エチル(3mL)溶液を2時間加熱還流した。反応混合物を21℃に冷却し、次いでろ過した。有機層を濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトン、9:1)によって精製して、所望の4−(4−アミノ−2−フルオロフェニル)ブタンニトリル(71)(33mg、83%)を得た。
【0076】
【化43】

1−(4−(3−シアノプロピル)−3−フルオロベンジル)シクロブタンカルボニトリル(70)
4−(4−アミノ−2−フルオロフェニル)ブタンニトリル(71)(30mg、0.17mmol)、シクロブタノン(24mg、0.34mmol)及びトリメチルシリルシアニド(TMSCN、33mg、0.34mmol)の混合物を80℃に加熱し、15時間撹拌した。媒体に酢酸エチル(2×20mL)を添加し、次いで水(2×20mL)で洗浄した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトン、9:1)によって精製して、1−(4−(3−シアノプロピル)−3−フルオロベンジル)シクロブタンカルボニトリル(70)(40mg、92%)を得た。
【0077】
【化44】

4−(5−(4−(3−シアノプロピル)−3−フルオロフェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(69)[ND−9]
1−(4−(3−シアノプロピル)−3−フルオロベンジル)シクロブタンカルボニトリル(70)(32mg、0.12mmol)と4−イソチオシアナト−2−トリフルオロメチルベンゾニトリル(96)(62mg、0.27mmol)の混合物のDMF(1mL)溶液を80℃に16時間マイクロ波加熱した。この混合物にメタノール(3mL)及び1N HCl水溶液(3mL)を添加した。第2の混合物を1.5時間還流させた。室温に冷却後、反応混合物を冷水(30mL)に注ぎ、酢酸エチル(30mL)で抽出した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトン、95:5)によって精製して、4−(5−(4−(3−シアノプロピル)−3−フルオロフェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(69)[ND−9](48mg、80%)を淡黄色がかった固体として得た。
【0078】
【化45】

【0079】
【化46】

ND−11及びND−10の合成
4−(8−オキソ−5−(4−(4−オキソブチル)フェニル)−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(68)[ND−10]
4−{4−[7−(4−シアノ−3−トリフルオロメチルフェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタ−5−イル]−フェニル}−酪酸メチルエステル(67)[ND−4](61mg、0.12mmol)のジクロロメタン(5mL)撹拌溶液に、1M水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)のヘキサン溶液(0.16mL、0.16mmol)を−78℃で添加した。30分後、反応混合物を飽和ロッシェル塩溶液でクエンチした。生成した混合物を、両方の相が明瞭に分離し、有機層が透明になるまで、21℃で撹拌した。抽出後、分離した有機層をMgSOを用いて脱水し、ろ過し、減圧濃縮した。(66)と(68)の粗製混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル、4:1)によって精製して、4−(8−ヒドロキシ−5−(4−(4−オキソブチル)フェニル)−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)(66)(20mg、35%)及び4−(8−オキソ−5−(4−(4−オキソブチル)フェニル)−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(68)[ND−10](23mg、40%)を得た。
【0080】
【化47】

4−(5−(4−(3−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)プロピル)フェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザ−スピロ[3.4]オクタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(65)[ND−11]
4−(8−オキソ−5−(4−(4−オキソブチル)フェニル)−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(68)[ND−10](15mg、0.03mmol)とエチレンジアミン(2μL、0.04mmol)の混合物の無水ジクロロメタン(3mL)溶液を0℃でアルゴン下で30分間撹拌した。N−ブロモスクシンイミド(NBS、6mg、0.04mmol)を混合物に添加し、生成した溶液を21℃で終夜撹拌した。飽和NaHCO溶液を添加して反応をクエンチした。混合物をジクロロメタンで抽出した。有機層をMgSOを用いて脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(エタノール:酢酸エチル、1:4)によって精製して、4−(5−(4−(3−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)プロピル)フェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザ−スピロ[3.4]オクタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(65)[ND−11](6mg、35%)を得た。
【0081】
【化48】

【0082】
【化49】

ND−12の合成
4−(4−ニトロフェニル)ブタナール(64)
メチル4−(4−ニトロフェニル)ブタノアート(63)(0.45g、2.02mmol)のジクロロメタン(30mL)撹拌溶液に、1M水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)のヘキサン溶液(2.62mL、2.62mmol)を−78℃で添加した。30分後、反応混合物を飽和ロッシェル塩溶液でクエンチした。生成した混合物を、両方の相が明瞭に分離し、有機層が透明になるまで、21℃で撹拌した。抽出後、分離した有機層をMgSOを用いて脱水し、ろ過し、減圧濃縮した。粗製4−(4−ニトロフェニル)ブタナール(64)をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル、8:1)によって精製して、4−(4−ニトロフェニル)ブタナール(64)(0.28g、72%)を得た。
【0083】
【化50】

2−(3−(4−ニトロフェニル)プロピル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール(62)
4−(4−ニトロフェニル)ブタナール(64)(0.28g、1.45mmol)とエチレンジアミン(0.1mL、1.59mmol)の混合物の無水ジクロロメタン(10mL)溶液を0℃でアルゴン下で30分間撹拌した。NBS(0.26g、1.59mmol)を混合物に添加し、生成した溶液を21℃で終夜撹拌した。飽和NaHCO溶液を添加して反応をクエンチした。混合物をジクロロメタンで抽出した。有機層をMgSOを用いて脱水し、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(エタノール:酢酸エチル:トリエチルアミン、1:1:0.2)によって精製して、2−(3−(4−ニトロフェニル)プロピル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール(62)(0.26g、76%)を得た。
【0084】
【化51】

2−(3−(4−ニトロフェニル)プロピル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール(62)をメチル4−(4−ニトロフェニル)ブタノアート(63)から合成する代替経路も使用した。それは以下のとおりである。エチレンジアミン(0.1mL、1.59mmol)をトリメチルアルミニウム(1.59mmol)のトルエン2mL撹拌溶液に温度が10℃を超えないように滴下した。メタン発生の最後にエステル(63)(0.22g、1.00mmol)を室温で徐々に添加した。反応混合物を3時間還流させた。冷却後、溶液を水1mLで滴下処理し、メタノール3mL及び塩化メチレン3mLで希釈し、水蒸気浴上で15分間還流させた。MgSO上でろ過し、溶媒蒸発後、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(エタノール:酢酸エチル:トリエチルアミン、1:1:0.2)によって精製して、2−(3−(4−ニトロフェニル)プロピル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール(62)(0.10g、45%)を得た。
【0085】
【化52】

tert−ブチル2−(3−(4−ニトロフェニル)プロピル)−1H−イミダゾール−1−カルボキシラート(61)
ジクロロメタン(5mL)とジメチルスルホキシド(0.06mL、0.79mmol)の溶液に塩化オキサリル(0.07mL、0.79mmol)を−78℃でアルゴン雰囲気下で添加した。20分間撹拌後、2−(3−(4−ニトロフェニル)プロピル)−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール(62)(74mg、0.32mmol)のジクロロメタン溶液を反応混合物に添加した。50分間撹拌後、トリエチルアミン(0.22mL、1.59mmol)を添加し、次いで反応混合物を室温に加温した。50分間撹拌後、アンモニア水溶液(10mL)を添加し、生成した混合物をクロロホルム(20mL)で抽出した。混合有機層を塩水で洗浄し、脱水し、ろ過し、減圧濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール、10:1)によって精製して、対応するイミダゾール(61mg、83%)を得た。イミダゾール(50mg、0.22mmol)のジクロロメタン(5mL)溶液にトリエチルアミン(0.04mL、0.26mmol)及びtert−ブトキシカルボニル無水物(BocO、57mg、0.26mmol)を添加した。反応混合物を21℃で終夜撹拌した。反応混合物をジクロロメタン(20mL)で抽出した。有機層を塩水で洗浄し、脱水し、ろ過し、減圧濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール、20:1)によって精製して、tert−ブチル2−(3−(4−ニトロフェニル)プロピル)−1H−イミダゾール−1−カルボキシラート(61)(72mg、定量)を得た。
【0086】
【化53】

tert−ブチル2−(3−(4−(1−シアノシクロブチルアミノ)フェニル)プロピル)−1H−イミダゾール−1−カルボキシラート(60)
tert−ブチル2−(3−(4−ニトロフェニル)プロピル)−1H−イミダゾール−1−カルボキシラート(61)(72mg、0.22mmol)の酢酸エチル(5mL)溶液に触媒作用量のPd/Cの存在下で水素ガスを導入した。反応終了後、反応混合物をろ過し、濃縮し、次いでフラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール、10:1)によって精製して、対応するアミン(59mg、90%)を得た。
【0087】
【化54】

アミン(55mg、0.18mmol)、シクロブタノン(26mg、0.36mmol)及びトリメチルシリルシアニド(TMSCN、36mg、0.36mmol)の混合物を80℃に加熱し、15時間撹拌した。媒体に酢酸エチル(2×20mL)を添加し、次いで水(2×20mL)で洗浄した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトン、9:1)によって精製して、tert−ブチル2−(3−(4−(1−シアノシクロブチルアミノ)フェニル)プロピル)−1H−イミダゾール−1−カルボキシラート(60)(57mg、82%)を得た。
【0088】
【化55】

4−(5−(4−(3−(1H−イミダゾール−2−イル)プロピル)フェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(59)[ND−12]
tert−ブチル2−(3−(4−(1−シアノシクロブチルアミノ)フェニル)プロピル)−1H−イミダゾール−1−カルボキシラート(60)(22mg、0.06mmol)と4−イソチオシアナト−2−トリフルオロメチルベンゾニトリル(96)(26mg、0.12mmol)の混合物のDMF(1mL)溶液を80℃に16時間マイクロ波加熱した。この混合物にメタノール(3mL)及び1N HCl水溶液(3mL)を添加した。第2の混合物を1.5時間還流させた。室温に冷却後、反応混合物を冷水(30mL)に注ぎ、飽和NaHCO溶液で処理し、酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機層をMgSOを用いて脱水し、濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:アセトン、9:1)によって精製して、4−(5−(4−(3−(1H−イミダゾール−2−イル)プロピル)フェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタン−7−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(59)[ND−12](29mg、52%)を淡黄色がかった固体として得た。
【0089】
【化56】

【0090】
【化57】

当業者は、本明細書に記載の合成を改変し、及び/又は組み合わせて、別のジアリールヒダントイン化合物を製造することができる。
【0091】
ND−13の合成
4−(4−(7−(4−シアノ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタ−アン−5−イル)−2−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−N−メチルブタンアミド(113)
予見される別の化合物は、4−(4−(7−(4−シアノ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタ−アン−5−イル)−2−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−N−メチルブタンアミド(113)[ND−13]である。
【0092】
【化58】

4−(4−(7−(4−シアノ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタ−アン−5−イル)−2−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−N−メチルブタンアミド(113)[ND−13]を製造する合成経路の一例は、以下である。
【0093】
【化59】

あるいは、4−(4−(7−(4−シアノ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタ−アン−5−イル)−2−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−N−メチルブタンアミド(113)[ND−13]は、合成(92)[ND−2]と類似の様式で合成することができる。溶媒、例えばDMF中の4−イソチオシアナト−2−トリフルオロメチルベンゾニトリル(96)と4−(4−(1−シアノシクロブチルアミノ)フェニル)−N,2,2−トリメチルブタンアミド(111)の混合物をマイクロ波照射下で80℃で6時間加熱する。
【0094】
【化60】

この混合物にアルコール、例えばメタノール及び酸、例えば塩酸水溶液を添加する。第2の混合物を1.5時間還流させる。室温に冷却後、反応混合物を冷水に注ぎ、例えば酢酸エチルで抽出する。有機層を、例えばMgSOを用いて、脱水し、濃縮し、残留物を、例えばヘキサン:酢酸エチル(2:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって、精製して、4−(4−(7−(4−シアノ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−8−オキソ−6−チオキソ−5,7−ジアザスピロ[3.4]オクタ−アン−5−イル)−2−フルオロフェニル)−2,2−ジメチル−N−メチルブタンアミド(113)[ND−13]を得る。
【0095】
【化61】

発明化合物は、以下の式の化合物も含む。
【0096】
【化62】

とRは一緒に8個以下の炭素原子を含むことができ、アルキル、置換アルキル又は、それらが結合した炭素と一緒に、シクロアルキル若しくは置換シクロアルキル基とすることができる。Rは水素、シアノ、ホルミル、
【0097】
【化63】

とすることができる。Rは水素、F、Cl、Br及びIとすることができる。R11とR12は、同じでも異なっていてもよく、水素又はメチルとすることができる。R13は水素又は−NR1415とすることができる。R14とR15は、同じでも異なっていてもよく、水素又はメチルとすることができる。
【0098】
化合物の薬理学的検討
合成経路について上で述べた化合物を、参照により本明細書に援用するPCT出願番号US04/42221、US05/05529及びUS06/11417並びに米国特許出願第11/433,829号に類似したスクリーニング手順を利用して、ホルモン不応性前立腺癌細胞についてARに対する拮抗及び作動活性をスクリーニングすることによって評価することができる。
【0099】
in vitroバイオアッセイ
レポーターアッセイによるARに対する化合物の効果
例えば、化合物は、ホルモン不応性前立腺癌細胞系における人工アンドロゲン受容体(AR)応答レポーター系を使用した試験に供することができる。前立腺癌LNCaP細胞は、内因性レベルの約5倍のARを安定に発現するように操作されている。外因性ARは、どちらも合成アンドロゲンR1881によって安定化される点で、内因性ARに類似した諸性質を有する。ARが過剰発現された細胞は、AR応答レポーターを安定に取り込むようにも操作されており、この細胞のレポーター活性は、ホルモン不応性前立腺癌の特徴を示す。この細胞は、低濃度の合成アンドロゲンR1881に応答し、高濃度のビカルタミドによってのみ阻害され、ビカルタミドによって作動活性を示す。ビカルタミドは、AR応答レポーターを阻害し、ホルモン感受性前立腺癌細胞において作動活性を持たない。
【0100】
合成について上で述べた化合物の拮抗活性は、100pMのR1881の存在下で調べることができる。操作されたLNCaP細胞(LNCaP−AR、LN−ARとも略記する。)を、10%ウシ胎仔血清(FBS)を含むイスコフ培地中で維持する。薬物療法の2日前に、10%チャコール処理FBS(CS−FBS)を含むイスコフ培地中で細胞を増殖させて、アンドロゲンを取り除く。細胞を分割し、10%CS−FBSを含むイスコフ培地中で100pM R1881及び漸増濃度の試験化合物と一緒に増殖させる。2日間インキュベーション後、レポーター活性を評価する。ビカルタミドを対照物質として使用する。
【0101】
ホルモン不応性前立腺癌におけるAR過剰発現のこれまで認識されていない一性質は、拮抗物質を作動物質に切り換えるその能力である。したがって、作動活性が最小の化合物又は作動活性のない化合物のみが、この疾患に対する抗アンドロゲン薬に適格である。種々の化合物の作動活性を求めるために、LN−AR系における尺度としてAR応答レポーターを使用して、R1881の非存在下で、アンドロゲン受容体(AR)に対する刺激活性を調べることができる。ビカルタミドは、ホルモン不応性前立腺癌においてARを活性化し得る。RU59063及び米国特許第5,705,654号に例として列挙された他の抗アンドロゲン化合物は、ホルモン不応性前立腺癌においてARを活性化し得る。
【0102】
AR阻害剤の特異性を調べるために、核内受容体ファミリーにおけるARの最も近いメンバーであるグルココルチコイド受容体(GR)を過剰発現するLNCaP細胞において化合物を試験することができる。この細胞は、GR応答レポーターを保有することもでき、レポーター活性は、GR作動物質であるデキサメタゾンによって誘導することができ、誘導は、GR阻害剤であるRU486によって遮断することができる。
【0103】
前立腺特異抗原(PSA)の分泌レベルを測定することによるARに対する化合物の効果
PSAレベルは、前立腺癌におけるアンドロゲン受容体(AR)活性の指標である。化合物が生理学的環境においてAR機能に影響を及ぼすかどうかを調べるために、ARが過剰発現されたLNCaP細胞(LNCaP−AR、LN−ARとも略記する。)においてR1881によって誘導される内因性PSAの分泌レベルを測定することができる。LNCaP−AR細胞は、アンドロゲン受容体を発現させるプラスミドを導入した前立腺細胞のリンパ節癌腫の一系統である。LNCaP−AR細胞は、10%FBSを含むイスコフ培地中で維持される。薬物療法の2日前に、10%CS−FBSを含むイスコフ培地中で細胞を増殖させて、アンドロゲンを取り除く。細胞を分割し、10%CS−FBSを含むイスコフ培地中で適切な濃度のR1881及び試験化合物と一緒に増殖させる。4日間のインキュベーション後、分泌PSAレベルをPSA ELISAキット(American Qualex、San Clemente、CA)を用いて分析する。
【0104】
LNCaP−AR細胞の分泌PSAレベルは、25pM R1881によって強力に誘導される。対照的に、PSAは、親LNCaP細胞ではR1881濃度が100pMに達するまで誘導されない。したがって、ホルモン不応性前立腺癌におけるARは、アンドロゲンに対して高感受性である。AR活性に対する用量依存的阻害を実施して、PSA発現の阻害における種々の化合物のIC50を測定する。
【0105】
ホルモン不応性前立腺癌におけるARに対する選択化合物の作動活性は、分泌PSAを代用マーカーとして使用して調べることができる。そのために、アンドロゲンを欠乏させたARが過剰発現されたLNCaP細胞を、合成について上で述べた漸増濃度の化合物と一緒にR1881の非存在下でインキュベートし、培地中の分泌PSAを4日後に測定する。
【0106】
RU59063及び米国特許第5,705,654号に例として列挙された他の抗アンドロゲン化合物は、ホルモン不応性前立腺癌においてPSA発現を刺激し得る。
【0107】
MTSアッセイによるARミトコンドリア活性に対する化合物の効果
LNCaP−AR細胞は、10%FBSを含むイスコフ培地中で維持することができる。ホルモン不応性前立腺癌細胞の増殖に対するその効果について化合物を調べる。過剰発現されたLNCaP細胞を使用する。というのは、この細胞は、in vitro及びin vivoでホルモン不応性前立腺癌細胞として挙動するからである。MTSアッセイによるミトコンドリア活性を増殖の代わりに測定する。過剰発現されたARを有するLNCaP細胞(LN−AR)を10%FBSを含むイスコフ培地中で維持する。薬物療法の2日前に、10%CS−FBSを含むイスコフ培地中で細胞を増殖させて、アンドロゲンを取り除く。次いで、細胞を分割し、10%CS−FBSを含むイスコフ培地中で適切な濃度のR1881及び漸増濃度の試験化合物と一緒に増殖させる。4日間インキュベーション後、細胞増殖をMTS(Promega、Madison、WI)によってモニターする。
【0108】
レポーターアッセイ及びPSAアッセイと一致して、ARが過剰発現されたLNCaPの増殖は、25μMのR1881によって刺激されるが、親細胞はR1881濃度が100μMに達するまで刺激されない。100pM R1881の存在下でホルモン不応性前立腺癌の増殖に対する化合物の阻害効果を測定する。ビカルタミドは、ホルモン不応性前立腺癌を阻害しない。
【0109】
MTSアッセイにおける増殖阻害がARを標的にすることによって起こるかどうかを調べるために、AR発現のない前立腺癌細胞系であるDU−145細胞において化合物を試験することができる。2種類の一般に使用される乳癌細胞であるMCF7及びSkBr3、又は正常なマウス線維芽細胞系である3T3など、ARが発現された前立腺癌細胞以外の細胞を阻害するその能力について化合物を試験することができる。
【0110】
種々のアッセイによる観測結果に基づいて、化合物をその活性順に位置づけることができる。
【0111】
ホルモン不応性前立腺癌異種移植腫ように対する阻害効果
ホルモン不応性前立腺癌に対する化合物のin vivo効果を調べることができる。ARが過剰発現されたLNCaP細胞から樹立された異種移植腫ように対する化合物の効果を調べることができる。Matrigel(Collaborative Biomedical)中の操作された細胞を、去勢された雄性SCIDマウスの側腹部に皮下注射する。腫ようサイズをノギスを用いて3次元的に毎週測定する。異種移植腫ようが樹立された(例えば、少なくとも40mmの腫ようサイズ)後、腫ようを有するマウスを無作為化し、異なる用量の化合物で経口的に1日1回処置する。ビカルタミドは、ホルモン不応性前立腺癌の増殖を阻害せず、ビヒクルと同じである。
【0112】
ホルモン不応性前立腺癌の別の異種移植モデルであるホルモン不応性LAPC4において化合物を試験することもできる。このモデルは、去勢マウスにおけるホルモン感受性前立腺癌の継代培養から樹立され、前立腺癌の臨床的進行を模倣する。ビカルタミドは、ホルモン不応性LAPC4異種移植モデルにおける増殖及びPSA発現を阻害せず、ビヒクルと同じである。
【0113】
ホルモン感受性前立腺癌細胞の増殖に対する阻害効果
化合物がホルモン感受性前立腺癌細胞を阻害するかどうかを判定するために、ミトコンドリア活性のMTSを測定することによって、LNCaP細胞の増殖に対する化合物の効果を調べることができる。ビカルタミドは、ホルモン感受性LNCaP細胞を用量依存的に軽度に阻害する。
【0114】
in vivoバイオアッセイ
the Animal Research Committee of the University of California at Los Angelesの指針に従って動物実験を実施する。動物をTaconicから購入し、層流塔中の明確な細菌叢コロニー中で維持する。LNCaP−AR及びLNCaP−ベクター細胞を10%FBSを補充したRPMI培地中で維持する。MatrigelとRPMIの1:1培地100μl中の10個の細胞を、無処置の又は去勢された雄性SCIDマウスの側腹部に皮下注射する。腫ようサイズをノギスを用いて3次元的(長さ×幅×深さ)に毎週測定する。腫ようサイズが約100mmに達した後、マウスを投与群に無作為化する。薬物を10mg/kg及び50mg/kgで毎日経口投与する。薬力学的読み出し(pharmacodynamic readout)を得るために、最後の処理から3時間後に動物を光学CCDカメラによって画像化する。光子/秒単位のルシフェラーゼ活性測定のために、ROIを腫よう全面にわたって抜き出す。
【0115】
ビカルタミド及び試験化合物の薬物動態学を、Charles River Laboratoriesから購入した8週齢FVBマウスを使用してin vivoで評価する。マウスを各時点で3グループに分割する。2匹のマウスを薬物処理せず、2匹の別のマウスをビヒクル溶液で処理する。各グループを10mg/キログラム体重で処理する。
【0116】
薬物をDMSO:PEG400:HOの1:5:14混合物(ビヒクル溶液)に溶解させ、マウスの尾静脈から投与する。マウスを処理前に加熱ランプ下で約20分間加温して、その尾静脈を拡張させる。各マウスをマウス拘束装置(Fisher Sci.Cat#01−288−32A)に配置し、薬物のビヒクル溶液200μlを拡張された尾静脈に注射する。薬物投与後、動物を異なる時点、すなわち5mn、30mn、2時間、6時間、16時間でCO吸入によって安楽死させる。心臓穿刺(1ml BDシリンジ+27G 5/8針)によってCOに曝露後、動物からすぐに採血する。経口投与の場合には、給餌シリンジを介した経口投与後に薬物をDMSO:カルボキシメチルセルロース:Tween80:HOの50:10:1:989混合物に溶解させる。
【0117】
血清試料をHPLCによって分析して薬物濃度を測定する。HPLC(Waters600ポンプ、Waters600制御器及びWaters2487検出器)はAlltima C18カラム(3μ、150mm×4.6mm)を備える。例えば、試験化合物は波長254nmで検出することができ、ビカルタミドは波長270nmで検出することができる。
【0118】
HPLC分析用試料を以下の手順に従って調製する。
【0119】
− 血球を血清から遠心分離によって分離する。
【0120】
− 血清400μlに10μM内部標準溶液80μl及びアセトニトリル520μlを添加する。沈殿を注視する。
【0121】
− 混合物を3分間ボルテックス撹拌し、次いで超音波下に30分間置く。
【0122】
− 固体粒子をろ別し、又は遠心分離によって分離する。
【0123】
− ろ液をアルゴン気流下で乾燥させる。HPLC分析して薬物濃度を測定する前にアセトニトリルで80μlに試料を戻す。
【0124】
− 薬物検量線を使用して、精度を向上させる。
【0125】
化合物の定常状態濃度(Css)を測定し、ビカルタミドのそれと比較することができる。
【0126】
化合物の順位
化合物を順位づけるために、以下のデータを考慮することができる:in vitroアッセイ(LNCaP細胞系におけるAR応答レポーター系、PSAレベル測定、MTSミトコンドリアアッセイ)及びin vivo実験(直接測定される、又はルシフェラーゼレポーター遺伝子によって誘発される発光によって測定される腫ようサイズ、血しょうレベルに基づく薬物動態学的アッセイ)。順位を確定するのに考慮される諸特性としては、アンドロゲン受容体(AR)拮抗作用活性、ホルモン不応性細胞におけるARアゴニズムの欠如、腫よう増殖の防止、腫ようの縮小、及び薬物動態学的挙動を挙げることができ、血中の滞留時間が長いほど有利である。
【0127】
高い順位がつけられた化合物は、AR拮抗物質として、さらにホルモン不応性前立腺癌治療薬としての使用に有利であり得る。この化合物は、良性前立腺肥大、脱毛、アクネなどの他のAR関連疾患又は症状を治療するのに有用であり得る。高い順位がつけられた化合物は、グルココルチコイド受容体、エストロゲン受容体、及びペルオキシソーム増殖因子活性化受容体などの他の核内受容体の調節物質として、さらに、乳癌、卵巣癌、糖尿病、心疾患、及び代謝関連疾患などの核内受容体がある役割を果たす疾患の治療薬としても、有用であり得る。この化合物はアッセイにおいて、例えば、標準として、又は中間体若しくはプロドラッグとして、有用であり得る。
【0128】
本願の化合物は、前立腺癌治療においてビカルタミドよりも優れる可能性がある。
【0129】
薬剤組成物及び投与
本発明の化合物は、治療有効量の本明細書に定義された本発明の化合物と薬学的に許容される担体又は希釈剤とを用いて調製された、薬剤組成物として有用である。
【0130】
本発明のジアリールヒダントイン化合物は、薬剤組成物として処方することができ、治療を必要とする対象、例えばヒト患者などのほ乳動物に、選択された投与経路に適合した種々の形態で、例えば、経口、経鼻、腹腔内若しくは非経口的に、静脈内、筋肉内、局所若しくは皮下経路によって、又は組織への注射によって、投与することができる。
【0131】
したがって、本発明のジアリールヒダントイン化合物は、例えば、経口的に、不活性希釈剤、若しくは同化可能な食用担体などの薬学的に許容されるビヒクルと組み合わせて、又は吸入若しくは通気によって、全身投与することができる。本発明のジアリールヒダントイン化合物は、硬ゼラチンカプセル剤若しくは軟ゼラチンカプセル剤に封入することができ、圧縮して錠剤にすることができ、又は患者の食事の食品に直接組み入れることができる。経口治療投与の場合、ジアリールヒダントイン化合物は、1種類以上の賦形剤と組み合わせることができ、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁液剤、シロップ剤、ウェーハ剤などの剤形で使用することができる。ジアリールヒダントイン化合物は、fme不活性粉末担体と組み合わせることができ、対象が吸入することができ、又は吹き込むことができる。かかる組成物及び調製物は、少なくとも0.1%のジアリールヒダントイン化合物を含むべきである。組成物及び調製物の割合は、所与の単位剤形重量の約2%から約60%の間で変わり得ることは言うまでもなく、都合よくこの間であり得る。治療上有用であるかかる組成物中のジアリールヒダントイン化合物量は、有効投与量が得られるような量である。
【0132】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などは以下を含むこともできる:トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ、若しくはゼラチンなどの結合剤、リン酸二カルシウムなどの賦形剤、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及びスクロース、フルクトース、ラクトース、若しくはアスパルテームなどの甘味剤、又はペパーミント、冬緑油、若しくはサクランボ香味剤などの香味剤。単位剤形がカプセル剤であるときには、単位剤形は、上記タイプの材料に加えて、植物油、又はポリエチレングリコールなどの液状担体を含むことができる。種々の他の材料が、剤皮として、又は固体単位剤形の物理的形態を改変するために、存在することができる。例えば、錠剤、丸剤又はカプセル剤は、ゼラチン、ワックス、シェラック、又は糖などで被覆することができる。シロップ剤又はエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてスクロース又はフルクトース、防腐剤としてメチル及びプロピルパラベン、色素、並びにサクランボ、又はオレンジ風味などの香味剤を含むことができる。任意の単位剤形を調製するのに使用される任意の材料が、薬学的に許容され、使用量で実質的に無毒であるべきことは言うまでもない。さらに、ジアリールヒダントイン化合物は、徐放性調製物及び装置に組み入れることができる。例えば、ジアリールヒダントイン化合物を徐放性カプセル剤、徐放性錠剤及び徐放性丸剤に組み入れることができる。
【0133】
ジアリールヒダントイン化合物は、注入又は注射によって静脈内又は腹腔内投与することもできる。ジアリールヒダントイン化合物溶液は、場合によっては無毒界面活性剤と混合して、水中で調製することができる。分散液剤は、グリセロール、液状ポリエチレングリコール、トリアセチン及びその混合物中、並びにオイル中で調製することもできる。通常の貯蔵及び使用条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するために防腐剤を含むことができる。
【0134】
注射又は注入に適切な医薬剤形としては、場合によってはリポソーム中に封入された、無菌注射又は注入用の液剤又は分散液剤を即座に調製できるようになされた、ジアリールヒダントイン化合物を含む無菌水溶液剤若しくは分散液剤又は無菌散剤を挙げることができる。いずれの場合においても、最終剤形は、製造及び貯蔵条件下で無菌で、流動性で、安定であるべきである。液状担体又はビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液状ポリエチレングリコールなど)、植物油、無毒グリセリルエステル及びその適切な混合物を含む、溶媒又は液状分散媒とすることができる。適切な流動性は、例えば、リポソームの形成によって、分散液剤の場合には必要な粒径を維持することによって、又は界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって防止することができる。多くの場合において、等張化剤、例えば、糖、緩衝剤又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを、組成物中に使用することによって延長することができる。
【0135】
無菌注射液は、必要量のジアリールヒダントイン化合物を、必要に応じて上で列挙した種々の別の成分と一緒に、適切な溶媒に組み入れ、続いてフィルター滅菌することによって調製される。無菌注射液を調製するための無菌散剤の場合、好ましい調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、あらかじめ無菌ろ過された溶液中に存在する活性成分と任意の追加の所望の成分との粉末を生成する。
【0136】
局所投与の場合には、ジアリールヒダントイン化合物を純粋な形態で適用することができる。しかし、一般に、固体でも液体でもよい皮膚科学的に許容される担体と組み合わせて、ジアリールヒダントイン化合物を組成物又は製剤として皮膚に投与することが望ましい。
【0137】
有用な固体担体としては、タルク、クレイ、微結晶セルロース、シリカ、アルミナなどの微粉固体が挙げられる。別の固体担体としては、無毒の重合体のナノ粒子又は微粒子が挙げられる。有用な液状担体としては、水、アルコール若しくはグリコール又は水/アルコール/グリコールのブレンドが挙げられ、ジアリールヒダントイン化合物を、場合によっては無毒界面活性剤を用いて、有効なレベルで溶解又は分散させることができる。芳香剤及び追加の抗菌剤などのアジュバントを、所与の用途に対して諸特性を最適化するために添加することができる。得られる液体組成物は、吸収剤パッドから適用することができ、包帯及び他の手当用品に含浸させるのに使用することができ、又はポンプ型若しくはエアロゾル噴霧器を用いて患部に噴霧することができる。
【0138】
合成高分子、脂肪酸、脂肪酸塩及びエステル、脂肪アルコール、変性セルロース、又は改質無機材料などの増粘剤も液状担体と一緒に使用して、使用者の皮膚に直接塗布するための展性のあるペースト剤、ゲル剤、軟膏剤、石鹸などを形成することができる。
【0139】
ジアリールヒダントイン化合物を皮膚に送達するのに使用することができる有用な皮膚用組成物の例は、当分野で公知であり、例えば、そのすべてを参照により本明細書に援用する、Jacquet他(米国特許第4,608,392号)、Geria(米国特許第4,992,478号)、Smith他(米国特許第4,559,157号)及びWortzman(米国特許第4,820,508号)を参照されたい。
【0140】
式Iの化合物の有用な投与量は、そのin vitro活性と動物モデルにおけるin vivo活性を比較することによって決定することができる。マウス及び他の動物における有効投与量をヒトに外挿する方法は、当分野で公知であり、例えば、参照により本明細書に援用する米国特許第4,938,949号を参照されたい。
【0141】
例えば、ローション剤などの液体組成物中のジアリールヒダントイン化合物の濃度は、約0.1〜25重量%又は約0.5〜10重量%とすることができる。ゲル又は粉体などの半固体又は固体組成物中の濃度は、約0.1〜5重量%又は約0.5〜2.5重量%とすることができる。
【0142】
治療に使用するのに必要なジアリールヒダントイン化合物の量は、選択された特定の塩だけでなく、投与経路、治療する症状の性質、並びに患者の年齢及び症状に応じても変動し、最終的には主治医又は臨床医の判断である。
【0143】
本発明の薬剤の有効な投与量及び投与経路は慣例的なものである。薬剤の正確な量(有効量)は、例えば、対象の種、年齢、体重及び全身又は臨床症状、治療する任意の障害の重症度又は機序、使用する特定の薬剤又はビヒクル、投与方法及び計画などに応じて、対象ごとに異なる。治療有効量は、当業者に公知の従来手順によって、経験的に決定することができる。例えば、The Pharmacological Basis of Therapeutics,Goodman and Gilman,eds.,Macmillan Publishing Co.,New Yorkを参照されたい。例えば、有効量は、細胞培養アッセイ又は適切な動物モデルにおいて最初に推定することができる。動物モデルを使用して、適切な濃度範囲及び投与経路を決定することもできる。次いで、かかる情報を使用して、ヒトにおける投与の有用な用量及び経路を決定することができる。治療量は、類似の治療薬の投与量との類似性によって選択することもできる。
【0144】
特定の投与方法及び投与計画は、症例の詳細(例えば、関係する対象、疾患、病態、及び治療が予防的かどうか)を考慮して、担当臨床医によって選択される。治療は、数日から数か月、さらには数年の期間にわたる化合物(単数又は複数)の1日1回投与又は1日複数回投与を含むことができる。
【0145】
しかしながら、一般に、適切な用量は、約0.001から約100mg/kgの範囲、例えば、約0.1mg/キログラムを超える用量などの約0.01から約100mg/kg体重/日、又は約1から約10mg/キログラムレシピエント体重/日の範囲である。例えば、適切な用量は、約0.1mg/kg、1mg/kg、10mg/kg又は50mg/kg体重/日とすることができる。
【0146】
ジアリールヒダントイン化合物は、例えば、活性成分0.05から10000mg、0.5から10000mg、5から1000mg、又は約100mg/単位剤形を含む、単位剤形で好都合には投与される。
【0147】
ジアリールヒダントイン化合物は、例えば、約0.5から約75μM、約1から50μM、約2から約30μM、又は約5から約25μMのピーク血しょう中濃度が得られるように投与することができる。例示的な望ましい血しょう中濃度としては、少なくとも又はせいぜい0.01、0.025、0.05、0.1、0.25、0.5、1、5、10、25、50、75、100又は200μMが挙げられる。例えば、血しょう中濃度は、約1から100マイクロモル又は約10から約25マイクロモルとすることができる。これは、例えば、場合によっては食塩水中の、0.05から5%ジアリールヒダントイン化合物溶液の静脈内注射によって達成することができ、又はジアリールヒダントイン化合物約1〜100mgを含むボーラスとして経口投与することができる。望ましい血中濃度は、約0.00005〜5mg/kg体重/時間、例えば、少なくとも又はせいぜい0.00005、0.0005、0.005、0.05、0.5又は5mg/kg/時間を与える持続注入によって維持することができる。あるいは、かかるレベルは、約0.0002〜20mg/kg体重、例えば、ジアリールヒダントイン化合物少なくとも又はせいぜい0.0002、0.002、0.02、0.2、2、20又は50mg/kg体重を含む、断続的注入によって得ることができる。
【0148】
ジアリールヒダントイン化合物は、好都合には、単一用量で、又は適切な間隔で投与される分割用量として、例えば2、3、4回/日以上の分割用量として、提供することができる。分割用量自体を、例えば、吸入器からの複数回吸入など、幾つかの別個の大ざっぱに間隔をおいた投与に更に分割することができる。
【0149】
幾つかの上記化合物は、ホルモン不応性前立腺癌細胞に対してほとんど又は全く作動活性を示さない。これらの化合物は、強力なアンドロゲン受容体(AR)阻害剤であるので、前立腺癌の治療だけでなく、良性前立腺肥大、脱毛、アクネなどの他のAR関連疾患又は症状の治療にも使用することができる。ARは核内受容体ファミリーに属するので、これらの化合物は、エストロゲン受容体、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体などの他の核内受容体を標的にした薬物合成の足場として役立ち得る。したがって、これらの化合物は、さらに、乳癌、卵巣癌、糖尿病、心疾患、代謝関連疾患などの核内受容体がある役割を果たす他の疾患用に開発することもできる。
【0150】
本明細書で説明及び考察した実施形態は、本発明を構成し、使用する、本発明者らに既知の最良の方法を当業者に教示することのみを意図するものである。本明細書における何ものも本発明の範囲を限定するとみなすべきでない。示した実施例はすべて代表的なものであり、非限定的なものである。上記教示に照らして当業者に理解されるように、本発明の上記実施形態は、本発明から逸脱することなく改変又は変更することができる。したがって、特許請求の範囲及びその等価物の範囲内で、具体的記述とは別な方法で本発明を実施できることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式を有する化合物。
【化64】

(式中、RとRは一緒に8個以下の炭素原子を含み、アルキル、置換アルキル及び、それらが結合した炭素と一緒に、シクロアルキル又は置換シクロアルキル基からなる群から選択され、
は、水素、シアノ、ホルミル、
【化65】

からなる群から選択され、
は、水素、F、Cl、Br及びIからなる群から選択され、
11及びR12は、水素及びメチルからなる群から独立に選択され、
13は、水素及び−NR1415からなる群から選択され、
14及びR15は、水素及びメチルからなる群から独立に選択される。)
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、
及びRが独立にメチル又は、それらが結合した炭素と一緒に、シクロブチル若しくはシクロペンチルであり、
が、シアノ、ホルミル、
【化66】

からなる群から選択され、
が、水素及びフッ素からなる群から選択され、
11及びR12が両方とも水素又は両方ともメチルであり、
13が、−NH(CH)及び−N(CHからなる群から選択される、
化合物。
【請求項3】
請求項2に記載の化合物であって、
11及びR12が両方とも水素であり、
が水素であるとき、かつR及びRがそれらが結合した炭素と一緒にシクロブチルであるときには、Rはシアノでも
【化67】

でもない、化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物であって、
、R11及びR12がすべて水素であるとき、かつR及びRがそれらが結合した炭素と一緒にシクロブチルであるときには、Rはシアノでも
【化68】

でもない、化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物であって、RとRが一緒に4個以下の炭素原子を含み、アルキル及び、それらが結合した炭素と一緒に、シクロアルキルからなる群から選択される、化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物であって、R及びRが、水素及びメチルからなる群から独立に選択される、化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物であって、R及びRが、それらが結合した炭素と一緒に、シクロブチル及びシクロプロピルからなる群から選択される、化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物であって、Rが、シアノ及びホルミルからなる群から選択される、化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物であって、Rが、
【化69】

からなる群から選択される、化合物。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物であって、Rが、
【化70】

からなる群から選択される、化合物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物であって、Rが水素である、化合物。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物であって、Rがフッ素である、化合物。
【請求項13】
請求項1に記載の化合物であって、Rが塩素である、化合物。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物であって、次式
【化71】

を有する、化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物であって、次式
【化72】

を有する、化合物。
【請求項16】
請求項1に記載の化合物であって、次式を有する、化合物。
【化73】

(式中、R21は、
【化74】

からなる群から選択される。)
【請求項17】
請求項1に記載の化合物であって、次式を有する、化合物。
【化75】

(式中、R21は、
【化76】

からなる群から選択される。)
【請求項18】
請求項1に記載の化合物であって、次式
【化77】

を有する、化合物。
【請求項19】
請求項1に記載の化合物であって、次式を有する、化合物。
【化78】

(式中、R22は水素[ND−7]又はメチル[ND−8]である。)
【請求項20】
請求項1に記載の化合物であって、次式
【化79】

を有する、化合物。
【請求項21】
請求項1に記載の化合物であって、次式
【化80】

を有する、化合物。
【請求項22】
治療有効量の請求項1に記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容される担体又は希釈剤とを含む、薬剤組成物。
【請求項23】
過剰増殖障害を治療する方法であって、請求項22に記載の薬剤組成物をかかる治療を必要とする対象に投与し、それによって前記過剰増殖障害を治療することを含む、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、前記組成物が、約0.001mg/kg体重/日から約100mg/kg体重/日の範囲の前記化合物の投与量で投与される、方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法であって、前記組成物が、約0.01mg/kg体重/日から約100mg/kg体重/日の範囲の前記化合物の投与量で投与される、方法。
【請求項26】
請求項23に記載の方法であって、前記組成物が、約0.1mg/kg体重/日から約10mg/kg体重/日の範囲の前記化合物の投与量で投与される、方法。
【請求項27】
請求項23に記載の方法であって、前記組成物が約1mg/kg体重/日の前記化合物の投与量で投与される、方法。
【請求項28】
請求項23に記載の方法であって、前記過剰増殖障害がホルモン不応性前立腺癌である、方法。
【請求項29】
請求項23に記載の方法であって、前記組成物が静脈内注射によって、組織への注射によって、腹腔内に、経口的に、又は経鼻的に投与される、方法。
【請求項30】
請求項23に記載の方法であって、前記組成物が経口投与される、方法。
【請求項31】
請求項22に記載の方法であって、前記組成物が、溶液剤、分散液剤、懸濁液剤、散剤、カプセル剤、錠剤、丸剤、徐放性カプセル剤、徐放性錠剤及び徐放性丸剤からなる群から選択される剤形を有する、方法。
【請求項32】
請求項22に記載の方法であって、前記組成物が、カプセル剤、錠剤及び丸剤からなる群から選択される剤形を有する、方法。
【請求項33】
次式のジアリール化合物を合成する方法であって、
【化81】

化合物I
【化82】

と化合物II
【化83】

を第1の極性溶媒中で混合して、混合物を形成すること、
前記第1の極性溶媒と同じ又は異なる第2の極性溶媒及び酸水溶液を前記混合物に添加すること、
前記混合物を還流させること、
前記混合物を冷却し、水と組み合わせること、並びに
前記ジアリール化合物を前記混合物から分離すること
を含み、
式中、R31が、シアノ、カルボキシ、
【化84】

からなる群から選択され、
Bocは、t−ブトキシカルボニルであり、
32が、
【化85】

からなる群から選択され、
とRが一緒に8個以下の炭素原子を含み、アルキル、置換アルキル及び、それらが結合した炭素と一緒に、シクロアルキル又は置換シクロアルキル基からなる群から選択され、
が、水素、シアノ、ホルミル、
【化86】

からなる群から選択され、
が、水素、F、Cl、Br及びIからなる群から選択され、
11及びR12が、水素及びメチルからなる群から独立に選択され、
13が、水素及び−NR1415からなる群から選択され、
14及びR15が、水素及びメチルからなる群から独立に選択される、
方法。
【請求項34】
請求項1に記載の化合物であって、前記化合物が、ホルモン不応性前立腺癌細胞に対して実質的なアンドロゲン受容体拮抗活性を有し、実質的な作動活性を持たない、化合物。
【請求項35】
請求項1に記載の少なくとも1種類の化合物を用意すること、
前記化合物のアンドロゲン受容体活性阻害を測定し、前記阻害が第1の所定レベルを超えるかどうかを判定すること、
ホルモン不応性癌細胞における前記化合物のアンドロゲン受容体活性刺激を測定し、前記刺激が第2の所定レベル未満であるかどうかを判定すること、
前記阻害が前記第1の所定レベルを超え、前記刺激が前記第2の所定レベル未満である場合に、前記化合物を選択すること
を含む、方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法であって、前記各所定レベルがビカルタミドの各所定レベルである、方法。
【請求項37】
請求項35に記載の方法であって、阻害を測定するステップが、AR応答レポーター系又は前立腺特異抗原分泌系における抑制濃度(IC50)を測定することを含む、方法。
【請求項38】
請求項35に記載の方法であって、刺激を測定するステップが、AR応答レポーター系又は前立腺特異抗原分泌系において濃度を増加させることによって誘導倍率を測定することを含む、方法。
【請求項39】
請求項35に記載の方法であって、阻害及び/又は刺激を測定するステップが、動物における腫瘍増殖に対する前記化合物の効果を測定することを含む、方法。

【公表番号】特表2011−500813(P2011−500813A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531057(P2010−531057)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/012149
【国際公開番号】WO2009/055053
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】