説明

アンプルブレーカ

【課題】既にセメント粉末とモノマー液体とが予め充填されていて、プレパック真空セメント固化システムとして医療ユーザに供与され得る、ポリメチルメタクリレート骨セメント用の真空セメント固化システムのモノマーアンプルを貯蔵し且つ開けるための、できるだけ簡単で丈夫な装置を開発する。
【解決手段】アンプルヘッドが少なくとも部分的に、中空室のアンプルに対する接続部に配置されており、アウタ容器の壁が、少なくとも変形可能な領域を有しているか、又は完全に変形可能な材料から成っており、これにより、接続部に対するアンプルの傾動が可能となり、接続部に対するアンプルの傾動時に、アンプルヘッドが破壊可能であるか、又はアンプル体から破断可能であるように、接続部の直径が、アンプルヘッドの寸法に適合されているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンプルを開けるための装置であって、該装置がアウタ容器を有しており、該アウタ容器内に、アンプル体とアンプルヘッドとを備えた閉じられたアンプルが配置されており、更に当該装置がアンプルヘッドの領域に中空室を有しており、該中空室が、少なくとも1つの開口と、アンプルに対する接続部とを有している形式のものに関する。
【0002】
これにより本発明は、セメント粉末及びモノマー液体が予め充填されており且つフルプレパック真空セメント固化システムとして医療ユーザに供与される、ポリメチルメタクリレート骨セメント(PMMA骨セメント)のための真空セメント固化システムのモノマーアンプルを貯蔵し且つ開けるための丈夫な装置を提供する。
【背景技術】
【0003】
PMMA骨セメントは数十年来公知であり且つSir Charnleyによる基礎研究にさかのぼる(Charnley, J.: Anchorage of the femoral head prosthesis of the shaft of the femur. J. Bone Joint Surg. 42 (1960) 28-30.)。それ以来、PMMA骨セメントの基本構造は原則として同一のままである。PMMA骨セメントは、液状のモノマー成分と粉末成分とから成っている。モノマー成分は一般に、メチルメタクリレートモノマーと、その中に溶解している活性化剤(N,N−ジメチル−p−トルイジン)とを含有する。粉末成分は、スチレン、メチルアクリレート又は類似のモノマー等の、メチルメタクリレートとコモノマーとをベースとして重合、有利には懸濁重合により製造された1つ又は複数のポリマーと、X線不透過剤と、開始剤であるジベンゾイルペルオキシドとから成る。粉末成分をモノマー成分と混合する際に、メチルメタクリレート中で粉末成分のポリマーが膨潤することにより、塑性変形可能な生地が生じる。粉末成分をモノマー成分と混合する際に、活性化剤であるN,N−ジメチル−p−トルイジンはジベンゾイルペルオキシドと、ラジカルの形成下で反応する。形成されたラジカルは、メチルメタクリレートのラジカル重合を開始させる。メチルメタクリレートの重合が進むにつれて、セメント生地の粘度は、このセメント生地が凝固するまでに高まる。
【0004】
ポリメチルメタクリレート骨セメントは、適当な混合容器内でへらによってセメント粉末をモノマー液体と混合することにより、混合され得る。この方法における欠点は、形成されたセメント生地中に含有空気が存在している恐れがあるという点にあり、これらの含有空気は、後で骨セメントの不安定化を惹起する恐れがある。この理由から、真空混合システム内での骨セメント粉末とモノマー液体との混合が有利になる。なぜならば、真空中で混合することにより、含有空気がセメント生地から概ね除去され、延いては最適なセメントクオリティが得られるからである(Breusch SJ et al.: Der Stand der Zementiertechnik in Deutschland. Z Orthop. 1999, 137: 101-07)。真空中で混合された骨セメントは、著しく減少された有孔率を有しており、従って改善された機械的特性を示す。公開された多数の真空セメント固化システムの実例を以下に挙げる:
US5624184,US4671263,US4973168,US5100241,WO99/67015A1,EP1020167A2,US5586821,EP1016452A2,DE3640279A1,WO94/26403A1,EP0692229A1,EP1005901A2,US5344232
【0005】
引き続き開発されたセメント固化システムでは、セメント粉末とモノマー液体の両方が、既に混合システムの別個の室内にパッキングされていて、セメント使用の直前に初めてセメント固化システム内で互いに混合される(US5997544,EP0692229A1,US6709149B1)。これらのシステムにおける問題点は、セメント粉末中へのモノマー液体の案内及び均質なセメント生地を得るための、前記両成分の完全な混合にあり、前記セメント生地は特に、モノマー液体によって濡らされていないセメント粉末群を含んでいてはならない。現在ヨーロッパにおいて市場に出ているフルプレパック混合システム「オプティパック」(登録商標:Biomet Switzerland)の場合は、薬筒の下側部分の側方に取り付けられていて、薬筒壁を貫通する複数の簡単な管を介して、モノマー液体がセメント粉末のほぼ中心に、真空作用に基づきアルミニウム複合バッグからセメント粉末内へと吸い込まれる。
【0006】
アルミニウム複合バッグは、モノマー液体のパッケージ及び貯蔵用としては、数年前からようやく公知となっている。ガラスアンプルによって、モノマー液体の貯蔵性能に関する極めて良好な経験が積まれている。ガラスアンプルは数十年来、コンベンショナルなポリメチルメタクリレート骨セメント用に成功裏に用いられている。ガラスアンプルは完全な密閉性の他に、低価格で大量に生産され得る、という利点を有している。従って、モノマー液体をパッケージングし且つ貯蔵するためのガラスアンプルをプレパック真空セメント固化システムにおいて使用することが有効である。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19532015号明細書には、多成分製品を混合し且つ供給するための装置が記載されている。この場合はアンプルを開けるための装置が提案されており、この装置は、セメント筒の外側に軸受けブシュが形成されていることに基づいており、この軸受けブシュを巡ってアンプルホルダが回転可能に運動することができる。アンプルのヘッドは軸受けブシュの内側に位置している。アンプルホルダが軸受けブシュを巡って回転すると、アンプルヘッドがアンプル体から剪断される。次いで、液体はアンプルから薬筒内へ、薬筒壁に設けられた開口を介して案内され得る。
【0008】
国際公開第97/18031A1号パンフレットにおいて提案された装置の場合は、アンプルが底部を貫通しており、モノマー液体は、中空の混合棒を通ってセメント筒に流入することができる。
【0009】
セメント固化システムにおけるアンプルの開放システムが、ヨーロッパ特許第1031333A1号明細書に記載されている。このシステムの場合、薬筒ヘッドに設けられた楔形の装置に対して混合棒を運動させることにより、アンプルヘッドがアンプル軸線に対して斜めに運動され、この場合、アンプルヘッドはアンプル体から剪断される。この場合の問題点は、開放装置の比較的複雑な構成と、楔形の装置が引っかかってしまう危険とにある。
【0010】
国際公開第2010/012114A1号パンフレットには、アンプルを開けるための装置が記載されている。この場合は前掲のドイツ連邦共和国特許出願公開第19532015号明細書と同様に、アンプルヘッドを剪断するための回転機構である。ドイツ連邦共和国特許出願公開第19532015号明細書との唯一の相違点は、回転ブシュがアンプルホルダに対して回転されるのであって、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19532015号明細書の場合のように、アンプルホルダが回転ブシュに対して運動されるのではない、という点である。
【0011】
引用した前記公開文献に記載された開放装置の重大な欠点は、運動される機械部品が不可欠であるという点にあり、これらの機械部品は、引っかかる恐れがあり且つ機能性を保証するためには、その製作が製作誤差に関して比較的高度な要求を満たさねばならない。
【0012】
ヨーロッパ特許第0079983A1号明細書から公知の、冒頭で述べた形式の開放装置の場合は、ガラスアンプルが耐圧性のアウタ容器内に支承されており、ガラスアンプルのヘッドが、アウタ容器に係合する安全弁の運動によって剪断され得る。このためには、前記安全弁が弾性的なシールパッキンと、アンプルのヘッドに係合する鉢状の下側部分とを有しており、これにより、アンプルを確実に剪断することができる。前記安全弁は付加的に、その流出通路に例えば圧縮コイルばね等の操作部を、当該安全弁の操作のために有している。
【0013】
この構成によってアンプルの開放が極めて簡単になったにもかかわらず、多数の個別コンポーネントを備えた安全弁の複雑な構成は不都合である。このことは、一方ではこのような開放装置の製作におけるコストの増大をもたらし、他方では開放装置の製作時にアンプルが誤って開けられてしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】US5624184
【特許文献2】US4671263
【特許文献3】US4973168
【特許文献4】US5100241
【特許文献5】WO99/67015A1
【特許文献6】EP1020167A2
【特許文献7】US5586821
【特許文献8】EP1016452A2
【特許文献9】DE3640279A1
【特許文献10】WO94/26403A1
【特許文献11】EP0692229A1
【特許文献12】EP1005901A2
【特許文献13】US5344232
【特許文献14】US5997544
【特許文献15】US6709149B1
【特許文献16】ドイツ連邦共和国特許出願公開第19532015号明細書
【特許文献17】国際公開第97/18031A1号パンフレット
【特許文献18】ヨーロッパ特許第1031333A1号明細書
【特許文献19】国際公開第2010/012114A1号パンフレット
【特許文献20】ヨーロッパ特許第0079983A1号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Charnley, J.: Anchorage of the femoral head prosthesis of the shaft of the femur. J. Bone Joint Surg. 42 (1960) 28-30
【非特許文献2】Breusch SJ et al.: Der Stand der Zementiertechnik in Deutschland. Z Orthop. 1999, 137: 101-07
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、既にセメント粉末とモノマー液体とが予め充填されていて、プレパック真空セメント固化システムとして医療ユーザに供与され得る、ポリメチルメタクリレート骨セメント用の真空セメント固化システムのモノマーアンプルを貯蔵し且つ開けるための、できるだけ簡単で丈夫な装置を開発することにある。この装置は最小限数の構成部材から成っており且つ廉価に製作され得ることが望ましい。更に製作は、アンプルの破壊の危険無しで確実に可能であることが望ましい。当該装置は、特別な予備知識無しの使用者が、モノマーアンプルを開けるために迅速且つ安全に使用することができなくてはならない。当該装置において、アンプルを開ける間に引っかかりが生じてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題を解決するために本発明では、アンプルヘッドが少なくとも部分的に、中空室のアンプルに対する接続部に配置されており、アウタ容器の壁が、少なくとも1つの変形可能な領域を有しているか、又は完全に変形可能な材料から成っており、これにより、前記接続部に対するアンプルの傾動が可能となり、前記接続部に対するアンプルの傾動時に、アンプルヘッドが破壊可能であるか、又はアンプル体から破断可能であるように、前記接続部の直径が、アンプルヘッドの寸法に適合されているようにした。
【発明の効果】
【0018】
この場合、前記変形可能な領域が、アウタ容器の全周を取り囲んでいるということが規定されていてよい。
【0019】
また、前記接続部の内径が、アンプルヘッドの外径と同じ大きさであるか、又はアンプルヘッドの外径よりも大きく、有利には0.5〜1.5mm大きく、特に1mm大きいということが規定されていてもよい。
【0020】
本発明の別の有利な構成は、中空室の高さ及び横断面が少なくとも、アンプルの破断縁部に至るまでのアンプルヘッドの高さと同じ場合に得られる。
【0021】
中空室の底部に開口を覆うフィルタ及び/又はふるいが配置されている場合も有利である。
【0022】
更に、当該装置は真空の印加により、90mbarの負圧までは視覚的に認識可能に変形可能ではないということが規定されていてよい。
【0023】
本発明の特に有利な構成は、アウタ容器が、中空室を形成する中空体に固定されており、しかも、この中空体は、開口を有しており且つ手によっては変形することのできない固い材料から成っているということを規定している。
【0024】
この場合、特に円筒形の中空体の上側がアンプル支持部によって制限されており、このアンプル支持部に接続部が配置されているということが規定されていてよい。
【0025】
更に、アウタ容器が摩擦接続式及び/又は形状接続式に、特にねじ山及び/又はスナップ係合部によって中空体に固定されているということが規定されていてよい。
【0026】
本発明による装置のためには、アンプルが、アンプルヘッドに対するアンプル体の接続部に、目標破断箇所を有しているということも提案される。
【0027】
アウタ容器がゴム弾性的なプラスチックから形成されており且つ/又はアウタ容器が少なくとも1つの領域においてベローズ状に加工成形されているということも有利である。
【0028】
製作を更に簡略化できるようにするためには、アウタ容器、アンプル及び/又は接続部が回転対称的、特に円筒状であるということが更に提案されている。
【0029】
本発明の特に簡単な別の構成は、アウタ容器が、アンプルと中空体とを互いに気密に接続する、両側の開いた円筒カバー、特に収縮チューブであるということを規定している。
【0030】
本発明により更に、請求項1から13までのいずれか1項記載の装置と、導管を介して開口に接続されたセメント筒とを有する薬筒システムが提案される。
【0031】
この場合、前記装置とセメント筒とがベース部分に配置されており、液体が重力に基づいて且つ/又は差圧に基づいて、開けられたアンプルから中空室と開口とを通り、ベース部分に設けられた導管に流入するように、前記装置がベース部分に固定されているということが規定されていてよい。
【0032】
要するに本発明は、アンプルヘッドがアウタ容器の運動に抗して位置固定されている場合に、可動のアウタ容器を、内部に支承されたアンプルを開けるために使用することができるという、驚くべき認識に基づいている。これにより、アンプル体がアンプルヘッドに対して運動され得るので、アンプルヘッドが壊れる、又はアンプル体から破断するということが簡単に達成される。
【0033】
最も簡単な構成では、アンプルヘッドを備えたアンプルは、円筒形の孔を備えた保持部に緩く挿入されており、この保持部の下位には、孔を備えた比較的大きな中空室が位置している。フレキシブルなアウタ容器は、アンプルと保持部とに被せられて、少なくとも保持部において気密に位置固定される。保持部におけるこの密な位置固定は、フレキシブルなアウタ容器が片側の閉じられた中空円筒である場合は十分間に合っている。アウタ容器が、例えば収縮チューブ等の両側の開いた円筒である場合は、アウタ容器の密な位置固定部がアンプルにも設けられている必要がある。
【0034】
これにより、この構成は特に簡単且つ廉価に実現され得る。同時に操作は簡単且つ安全である。外科手術等の難しい状況においても使用することは簡単であり、未熟な助手でも容易に使用可能である。
【0035】
アンプルの不都合な屈曲延いては望ましくない開放を防ぐためには、剛性のスリーブがアウタ容器のフレキシブルな領域を覆って配置されているということが規定されていてよい。
【0036】
このスリーブは、アンプルの傾動を防止し且つ使用前に取り外さなければならない。
【0037】
アンプルヘッドの位置固定部は、薬筒システムに固着結合されていてよいので、この薬筒システムを片方の手で保持する薬筒システムのユーザは、他方の手でアウタ容器若しくはアンプルを傾動させることにより、アンプルを容易に開けることができる。これにより、薬筒システム全体がスタンバイ状態となる。
【0038】
本発明の意味における中空室とは、破断されたアンプルヘッドを収容するために必ずしも十分な大きさでなくともよい、簡単な導管でもあると理解され得る。この場合、中空室から開口への移行部は、最早区別されなくてよい。接続部から中空室への移行部も、無段階式であってよい。単に、破断したアンプルヘッドがアンプルの内容物の流出を完全には妨げないということを考慮するだけで済む。但し、アンプルヘッドを収容するために十分に寸法決めされた中空室、又は更に、破断したアンプルヘッドの中空室内での回転を可能にするために適した中空室は特に有利である。それというのも、この場合は破断したアンプルヘッドの液状の内容物も流出可能なので、引き続き使用するために利用可能だからである。
【0039】
接続部は主に、アンプルの傾動に対してアンプルヘッドを位置固定するために役立つ。このためには、中空室若しくは開口及び場合によっては接続された導管に対する流体接続部が形成されることが望ましい。
【0040】
開口を介して、負圧も中空室内及びアウタ容器の内部に形成され得る。これにより、アンプルの内容物は開口を通じて吸い込まれる、若しくはより正確にはアンプル内又は外部の比較的高い圧力によって吐き出されることが可能である。このためには、装置の適切な位置において重力を利用することもでき、これにより、アンプルの内容物を接続部と中空室と開口とを介して流出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による装置を閉じられたアンプルと一緒に長手方向で断面して概略的に示した横断面図である。
【図2】本発明による択一的な装置を開けられたアンプルと一緒に長手方向で断面して概略的に示した横断面図である。
【図3】図2に示した本発明による装置の概略的な横断面図を、落下したアンプルヘッドと一緒に示した図である。
【図4】本発明による薬筒システムにおける、本発明による装置の概略的な横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0043】
図1には、接続部1を備えた本発明による装置の概略的な横断面図が示されており、前記接続部1にはアンプルヘッド2が配置されており、この場合、接続部1は中空室3を、アンプル4の配置されている領域に接続している。アンプル4は、例えばガラス、セラミック、又は別の材料から成っていてよい。中空室3の、接続部1に対向位置する側には、開口5が設けられている。接続部1は、例えばアンプル支持部6に設けられた円筒形の穴である。アンプル支持部6は、円筒形の中空体の部分であり、この円筒形の中空体の底面に開口5が位置している。アンプル4と円筒形の中空体とを取り囲んでアウタ容器7が配置されている。このアウタ容器7は、ねじ山8を介して円筒形の中空体若しくはアンプル支持部6に結合されている。このためには、円筒形の中空体に雄ねじ山8が設けられており且つアウタ容器7に雌ねじ山が設けられている。
【0044】
アウタ容器7は、片側が閉鎖された円筒形の中空体として形成されており、この円筒形の中空体は、例えばゴム等のフレキシブルな材料から成っている。これに対してアンプル支持部6を備えた円筒形の中空体は、例えばプラスチック等の剛性の固い材料から成っている。アンプル4は、逆さまに装置内に配置されているので、アンプルヘッド2が破断されると、アンプル4の液状の内容物はアンプルから流出する。
【0045】
このような装置の使用者は、アウタ容器7の上部域をアンプル支持部6に対して傾けるか、若しくは曲げることにより、アンプル4を開けることができる。アンプルヘッド2は、接続部1から外側には傾けられないので、当該アンプルヘッド2は接続部1に差し込まれたまま、最終的に破断するか、又は完全に壊れる。このためには、アンプルヘッド2からアンプル体への接続部に目標破断箇所が設けられていてよく、この目標破断箇所では、例えばアンプル4の製作された材料が特に肉薄であるか、又は刻み目を付けられている。破断したアンプルヘッド2は、中空室3に落下する。理想的には、アンプルヘッド2は落下時に回転するように成形され且つ重みづけされているので、アンプルヘッド2の内容物は、アンプルヘッド2から流出することができる。
【0046】
同時にアンプル4の内容物も中空室3に流入する。それというのも、中空室3がアンプル4の下位に配置されているからである。次いで液体は中空室3から開口5を通って流れ、使用者に供与される。
【0047】
この場合、前記装置は、アンプル4に含まれる液体が、次いでセメント筒(図示せず)内のセメントと混合可能であることのために役立つ。このためには、当該装置が薬筒システム(図示せず)と固着結合されていてよい。
【0048】
図2には、本発明による装置の択一的な実施形態が概略的に示されている。この装置の場合、アウタ容器17の領域19はフレキシブルなのに対して、アウタ容器17の残りの領域は非フレキシブルである。アウタ容器17の上部には、アンプル14が挿入されている。図示の装置は既に、図面左側からアウタ容器17の上端部に作用する力作用によって変形された。この変形によって、アンプル14のアンプルヘッド12が破断されている。このアンプルヘッド12はアンプル14の運動に追従することができなかった。それというのも、アンプルヘッド12は中空室13からアウタ容器17の上部への接続部11に挿入されているからである。
【0049】
この接続部11は、アンプル14の下位に配置された、やはり中空体の部分であるアンプル支持部16に設けられた切欠きである。前記中空体は別の開口15を有している。アウタ容器17は前記中空体に、スナップ係合部18を介して結合されている。
【0050】
アンプルヘッド12が既に製作時又は搬送時に破断しないようにするためには、剛性のスリーブ(図示せず)が設けられていてよく、このスリーブは、アウタ容器17を取り囲んで配置されている。この場合、前記スリーブは、アンプル14の開放前に取り外されねばならない。フレキシブルな領域19は、アウタ領域17の残りの領域とは別の材料から成っていてよい。択一的に、前記のフレキシブルな領域19も、アウタ領域17の残りの領域も、同じ材料から成っていてよい、ということが規定されていてもよく、この場合、フレキシブルな領域19の材料の厚さは、アウタ容器17の壁厚さよりも小であり、これにより、フレキシブルな領域19により良い変形性が与えられている。
【0051】
図3には、アンプルヘッド12が下方に向かって中空室13に落下した後の、図2に示した装置が概略的に示されている。落下に際してアンプルヘッド12は、その形状及び性質に基づき回転したので、アンプルヘッド12の内容物は、このアンプルヘッド12から中空室13に流入し、最終的には開口15を通って装置から流出する。アンプル14の内容物も、上側の矢印によって示したように、アンプル14から中空室13に流入する。次いでこの液体も、下側の矢印によって示したように、開けられたアンプル14から開口15を通って中空室13から流出する。
【0052】
装置の上部(アンプル体を備えたアウタ容器17)は、未だ傾斜状態にある。つまり、フレキシブルな領域19は塑性変形された。但し、弾性変形可能なフレキシブルな領域19において、前記上部が短時間しか力作用を受けていない場合は、再び(図1の実施例に示したような)その出発位置に復帰することも可能であり、しかも、それにもかかわらずアンプル14の内容物は流出することができる。アンプルヘッド12がアンプル支持部16の接続部11に差し込まれたままにならないようにするためには、接続部11の内径が、アンプルヘッド12の外径よりもやや大きくなっていてよい。
【0053】
接続部の適合された形状は、破断したアンプルヘッド12が中空室13内で、このアンプルヘッド12の内容物が流出するように回転することを支援することができる。アンプルヘッド12が中空室13内で回転可能であるためには、中空室13が、アンプルヘッド12に関して十分な大きさを有している必要がある。このためにはアンプルヘッド12は、図示のアンプルヘッド12とは異なり、先を尖らせて細長く成形されていてよい。同様に、アンプルヘッド12は1箇所のみならず、複数箇所で破断するということが規定されていてよいので、内容物はアンプルヘッド12の破片を越えて中空室13に流入する。
【0054】
これらの破片が開口15を通って流出しないようにするためには、開口15の上位の中空室13内に、ふるい又はフィルタ(図示せず)が配置されていてよい。
【0055】
図4には、開けられていないアンプル24を備えた本発明による装置の概略図が示されており、前記アンプル24は、本発明による薬筒システム内に配置されている。閉じられたアンプル24は、アウタ容器27の上部に支承されており、アウタ容器27は、ねじ山28を介して中空体に結合されており、この中空体は、薬筒システムのベース部分50に固定的に配置されている。このベース部分50と、前記装置の中空体とは、1つの共通の成形部材として、例えばプラスチックから形成されていてもよい。
【0056】
前記中空体内には、中空室23が配置されている。装置内で逆さまに支承されているアンプル24のアンプルヘッド22は、中空室23からアンプル24への接続部21内に配置されている。この接続部21は、中空室23を上方のアンプル24に対して制限するアンプル支持部26を通って延びている。中空室23の底部には、フィルタ60が開口25を覆って配置されており、このフィルタ60は、例えば破片等の固形部品を、アンプル24の液状の内容物から分離することが望ましい。アウタ容器27は、全周を取り囲むフレキシブルな領域29を有しており、このフレキシブルな領域29において、アウタ容器27は変形可能である。これにより、アウタ容器27の上部域がアンプル24のボデーと一緒に傾けられる、若しくはアンプル24の対称軸線に対して垂直方向に回動されることによって、アンプルヘッド22を破断することが可能である。
【0057】
開口25は、ベース部分50に設けられた導管53に接続されており、この導管53は、本発明による装置をセメント筒51に接続している。液体は、アンプル24から負圧により導管53を通ってセメント筒51に送られる。そこで、液体はセメント粉末と混合され、この混合物は、圧送ピストン52によってセメント筒51から放出され、このようにしてセメントが使用され得る。圧送ピストン52の運動は、圧縮空気の供給によって強制することも可能である。
【0058】
フレキシブルな領域29は、ベローズによっても実現され得る。
【0059】
要するに、真空セメント固化システムのモノマーアンプルを貯蔵し且つ開放するための本発明による装置は、中空円筒形のアンプル支持部6,16,26が、接続部1,11,21を有しており、該接続部の内径が、アンプルヘッド2,12,22の大きさと同じであるか、又はアンプルヘッド2,12,22よりも大きく、アンプル支持部6,16,26若しくは接続部1,11,21の下位に中空室3,13,23が設けられており、該中空室の高さが少なくとも、アンプル4,14,24の破断縁部までのアンプルヘッド2,12,22の長さに等しく、前記中空室の横断面が、アンプル4,14,24から破断されたアンプルヘッド2,12,22が中空室3,13,23の下面に水平方向で位置することができる程度の大きさを有しており、中空室3,13,23の下面に開口5,15,25が配置されており、これらの開口が、中空室3,13,23をセメント筒51に接続しており、長手方向で弾性変形可能な、片側を閉じられた中空円筒として形成されたアウタ容器7,17,27が、アンプル支持部6,16,26に結合されており、これにより、アンプルヘッド2,12,22はアンプル支持部6,16,26に設けられた、中空室3,13,23の上位の接続部1,11,21に位置している、ということを特徴としていてよい。この場合、当該装置は真空印加により、90mbarの負圧までは、視覚的に認識可能には変形されないということが規定されていてよい。
【0060】
アウタ容器7,17,27は、長手方向で弾性的に、機械的な力作用によって変形可能である。このことは、アウタ容器7,17,27の、アンプル支持部6,16,26とは反対側の閉鎖された端部が、簡単な運動によりその軸線に対して垂直方向に数度だけ運動可能である、ということを意味している。これにより、アウタ容器7,17,27内に位置するアンプル4,14,24は強制的に連動される。アンプルヘッド2,12,22は、アンプル支持部6,16,26の中空円筒形の接続部1,11,21内に位置している。アンプル支持部6,16,26はゴム弾性的ではない。このことは、アンプル体がアウタ容器7,17,27の運動によって、連動しないアンプルヘッド2,12,22に対して剪断されるということを意味している。中空円筒形のアンプル支持部6,16,26の内径は、アンプルヘッド2,12,22よりも大である。剪断されたアンプルヘッド2,12,22はアンプル支持部6,16,26を介して中空室3,13,23に落下して、後流するモノマー液体のためにアンプル支持部6,16,26の接続部1,11,21を解放する。前記中空室3,13,23は、分離されたアンプルヘッド2,12,22の全長よりも大きな高さを有している。中空室3,13,23の横断面は、剪断されたアンプルヘッド2,12,22が水平方向で中空室3,13,23の底部に位置可能である程度の大きさを有している。分離されたアンプルヘッド2,12,22がその落下時に接続部1,11,21を通ってアンプル支持部6,16,26内で回転し、これにより当該アンプルヘッドが水平方向で中空室3,13,23の底部に位置可能であるためには、中空室3,13,23の高さが重要である。これにより、アンプルヘッド2,12,22内に位置するモノマー液体が流出可能である。但し、注意しなければならないのは、その時々のモノマー液体の表面張力に関連して、アンプルヘッド2,12,22とアンプル体との間の破断箇所の横断面が、モノマー液体に重力が作用した場合にアンプル4,14,24からの問題のない流出が保証されるように寸法決めされる点である。アンプル4,14,24の幾何学形状は、モノマー液体の表面張力に適合されていなければならない。モノマーの流出は、中空室3,13,23の底部に配置された開口5,15,25を介して可能になる。
【0061】
アンプル4,14,24を開けるためには、使用者がアウタ容器7,17,27の端部を数度だけ、円筒軸線に対して垂直方向に運動させるだけで済む。アンプル4,14,24の破断は破損ノイズに基づき問題無く感知可能であるが、抵抗が突然克服されることによっても感じられる。アウタ容器7,17,27が円筒軸線に対して垂直に、どの方向で運動されるかは重要ではない。重要なのは、アンプル軸線に対して垂直方向にアウタ容器7,17,27の上端部の相対運動が行われることだけである。
【0062】
本発明による装置の重要な利点は、回転可能又は移動可能な機械部品は不要であり、装置の引っかかり又は傾斜が起こり得ず、しかも、製作のために製作誤差に関する高度な要求を遵守せずに済む、という点にある。最小限の部品しか必要としない。操作は極端に簡略化されており、未熟な使用者でも問題なく行うことができる。
【0063】
アウタ容器7,17,27は内側にリブを、円筒軸線に対して平行に有していてよい。これにより、搬送中のアンプル4,14,24の付加的な衝撃緩和が可能である。
【0064】
アンプル支持部6,16,26が、ゴム弾性的には変形可能でないことも有利である。
【0065】
更に有利には、アウタ容器7,17,27は、摩擦接続式及び/又は形状接続式に、アンプル支持部6,16,26と結合されている。アウタ容器7,17,27は、簡単なねじ山8,28を介してアンプル支持部6,16,26に結合されていてよい。同様に、スナップ係合部18をアウタ容器7,17,27に形成することも可能であり、このアウタ容器7,17,27は、アンプル支持部6,16,26に設けられた周方向のウェブにスナップ係合可能である。アウタ容器7,17,27をアンプル支持部6,16,26に被せることも可能であり、これにより、ゴム弾性的なアウタ容器7,17,27の戻り力に基づく位置固定が生ぜしめられる。
【0066】
アウタ容器7,17,27は、有利にはゴム弾性的なプラスチックから形成されている。アウタ容器7,17,27は、場合によってはベローズ状に加工成形されていてよい。アウタ容器7,17,27は、アンプル4,14,24の破断箇所の高さにのみ、肉薄の壁19,29が設けられており、この壁19,29がゴム弾性的であり且つ残りのアウタ容器7,17,27が最早弾性変形不能な、より厚い壁を有しているように、ゴム弾性的な材料から形成されていてよい。この場合、変形可能な領域19,29は、アウタ容器7,17,27の壁よりも肉薄である。
【0067】
また、本発明に基づくアンプルを開けるための方法の特徴は、閉じられたアンプル4,14,24を備えたアウタ容器7,17,27の、このアウタ容器7,17,27のアンプル支持部6,16,26に対向位置する端部を運動させることにより、その円筒軸線から運動させ、これによりアンプル体を、アンプル支持部6,16,26の内側に位置固定されたアンプルヘッド2,12,22に対して運動させることにより、アンプルヘッド2,12,22をアンプル体から破断させる、という点にある。
【0068】
上記説明、並びに請求項、図面及び実施形態で開示した本発明の特徴は、個別でも、あらゆる任意の組み合わせにおいても、本発明を種々様々な実施形態で実現するためには重要であってよい。
【符号の説明】
【0069】
1,11,21 接続部、 2,12,22 アンプルヘッド、 3,13,23 中空室、 4,14,24 アンプル、 5,15,25 開口、 6,16,26 アンプル支持部、 7,17,27 アウタ容器、 8,28 ねじ山、 18 スナップ係合部、 19,29 変形可能な領域、 50 ベース部分、 51 セメント筒、 52 圧送ピストン、 53 導管、 60 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンプルを開けるための装置であって、該装置がアウタ容器(7,17,27)を有しており、該アウタ容器内に、アンプル体とアンプルヘッド(2,12,22)とを備えた閉じられたアンプル(4,14,24)が配置されており、更に当該装置がアンプルヘッド(2,12,22)の領域に中空室(3,13,23)を有しており、該中空室(3,13,23)が、少なくとも1つの開口(5,15,25)と、アンプル(4,14,24)に対する接続部(1,11,21)とを有している形式のものにおいて、
アンプルヘッド(2,12,22)が少なくとも部分的に、中空室(3,13,23)のアンプル(4,14,24)に対する接続部(1,11,21)に配置されており、アウタ容器(7,17,27)の壁が、少なくとも1つの変形可能な領域(19,29)を有しているか、又は完全に変形可能な材料から成っており、これにより、前記接続部(1,11,21)に対するアンプル(4,14,24)の傾動が可能となり、前記接続部(1,11,21)に対するアンプル(4,14,24)の傾動時に、アンプルヘッド(2,12,22)が破壊可能であるか、又はアンプル体から破断可能であるように、前記接続部(1,11,21)の直径が、アンプルヘッド(2,12,22)の寸法に適合されていることを特徴とする、アンプルを開けるための装置。
【請求項2】
前記変形可能な領域(19,29)が、アウタ容器(7,17,27)の全周を取り囲んでいる、請求項1記載の装置。
【請求項3】
接続部(1,11,21)の内径が、アンプルヘッド(2,12,22)の外径と同じ大きさであるか、又はアンプルヘッド(2,12,22)の外径よりも大きく、特に1mm大きい、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
中空室(3,13,23)の高さ及び横断面が少なくとも、アンプル(4,14,24)の破断縁部に至るまでのアンプルヘッド(2,12,22)の高さと同じである、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
中空室(3,13,23)の底部に、開口(5,15,25)を覆うフィルタ(60)及び/又はふるいが配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
当該装置は真空印加により、90mbarの負圧までは視覚的に認識可能には変形可能でない、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
アウタ容器(7,17,27)が、中空室(3,13,23)を形成する中空体に固定されており、該中空体が、開口(5,15,25)を有しており且つ手で変形することのできない固い材料から成っている、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
特に円筒形の中空体の上側が、アンプル支持部(6,16,26)によって制限されており、該アンプル支持部に前記接続部(1,11,21)が配置されている、請求項7記載の装置。
【請求項9】
アウタ容器(7,17,27)が、摩擦接続式且つ/又は形状接続式に、特にねじ山(8,28)及び/又はスナップ係合部(18)を介して中空体に固定されている、請求項7又は8記載の装置。
【請求項10】
アンプル(4,14,24)が、アンプルヘッド(2,12,22)に対するアンプル体の接続部に目標破断箇所を有している、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
アウタ容器(7,17,27)が、ゴム弾性的なプラスチックから形成されており且つ/又はアウタ容器(7,17,27)が、少なくとも前記領域(19,29)においてベローズ状に加工成形されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
アウタ容器(7,17,27)、アンプル(4,14,24)及び/又は接続部(1,11,21)が回転対称的、特に円筒形である、請求項1から11までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
アウタ容器(7,17,27)が、アンプル(4,14,24)と中空体とを互いに気密に接続する、両側の開いた円筒カバー、特に収縮チューブである、請求項7から12までのいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の装置と、導管(53)を介して前記開口(5,15,25)に接続されたセメント筒(51)とを有することを特徴とする、薬筒システム。
【請求項15】
前記装置とセメント筒(51)とがベース部分(50)に配置されており、液体が重力に基づき且つ/又は差圧に基づき、開けられたアンプル(4,14,24)から中空室(3,13,23)と開口(5,15,25)とを通ってベース部分(50)に設けられた導管(53)に流入するように、前記装置がベース部分(50)に固定されている、請求項14記載の薬筒システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−17147(P2012−17147A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150979(P2011−150979)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(508316210)ヘレーウス メディカル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (21)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Medical GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp−Reis−Str. 8/13, D−61273 Wehrheim, Germany
【Fターム(参考)】