説明

アンモニアの精製方法およびアンモニア精製システム

【課題】 粗アンモニアに不純物として含まれる水分および炭化水素を、吸着剤の吸着能を最大限に利用して効率よく吸着除去することができるとともに、簡単化された方法でアンモニアを精製することができるアンモニアの精製方法およびアンモニア精製システムを提供する。
【解決手段】 アンモニア精製システム100において、第1吸着塔21および第2吸着塔22は、気体状の粗アンモニアに含まれる不純物を、水分および炭化水素に対する吸着能を単独で有する吸着剤により吸着除去する。第1コンデンサ31は、不純物が吸着除去された気体状のアンモニアを分縮することで揮発性の高い不純物を気相成分として分離除去する。第2コンデンサ32は、回収タンク4内の気体状のアンモニアを再度分縮することで揮発性の高い不純物を気相成分として分離除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗アンモニアを精製する精製方法およびアンモニア精製システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程および液晶製造工程においては、窒化物被膜の作製などに用いる処理剤として、高純度のアンモニアが利用されている。このような高純度のアンモニアは、粗アンモニアを精製して不純物を除去することにより得られる。
【0003】
粗アンモニア中には、水素、窒素、酸素、アルゴン、一酸化窒素、二酸化炭素などの低沸点ガス、炭化水素、水分などが不純物として含まれており、一般的に入手可能な粗アンモニアの純度は98〜99重量%程度である。
【0004】
粗アンモニア中に含まれる炭化水素としては、一般的には炭素数1〜4のものが主であるが、アンモニアの合成原料として用いる水素ガスの製造時に、クラッキングガス中の油分の分離が不十分であったり、あるいは、製造時にポンプ類からのポンプ油による油汚染を受けたりと、沸点の高い分子量の大きな炭化水素が混入することもある。また、アンモニア中に水分が多く含まれると、このアンモニアを用いて製造される半導体等の機能を大きく低下させる場合があり、アンモニア中の水分は極力減らす必要がある。
【0005】
半導体製造工程および液晶製造工程におけるアンモニアが用いられる工程の種類によって、アンモニア中の不純物の影響の仕方は異なるが、アンモニアの純度としては、99.9999重量%以上(各不純物濃度100ppb以下)、より好ましくは99.99999重量%程度であることが求められる。近年窒化ガリウムのような発光体製造用には水分濃度が30ppb未満であることが求められている。
【0006】
粗アンモニア中に含まれる不純物を除去する方法としては、シリカゲル、合成ゼオライト、活性炭等の吸着剤を用いて不純物を吸着除去する方法、不純物を蒸留除去する方法が知られている。
【0007】
たとえば、特許文献1には、液体状の粗アンモニアから揮発性の低い不純物を除去する第1蒸留塔と、第1蒸留塔から導出された気体状のアンモニアに含まれる不純物(主に水分)を吸着剤により吸着除去する吸着塔と、吸着塔から導出された気体状のアンモニアから揮発性の高い不純物を除去する第2蒸留塔とを備えるアンモニア精製システムが開示されている。また、特許文献2には、気体状の粗アンモニアに含まれる水分を酸化バリウムからなる吸着剤で吸着除去した後、蒸留することによってアンモニアを精製する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−206410号公報
【特許文献2】特開2003−183021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
粗アンモニアに含まれる不純物を吸着除去する吸着剤としては、水分に対して高い吸着能を有する吸着剤と、炭化水素に対して高い吸着能を有する吸着剤とを、区別して用いるのが一般的であり、特許文献1に開示されるアンモニアを精製する技術では、合成ゼオライト3Aからなる吸着剤により水分を吸着除去し、特許文献2に開示されるアンモニアを精製する技術では、酸化バリウムからなる吸着剤により水分を吸着除去している。
【0010】
粗アンモニアに含まれる水分および炭化水素の不純物を吸着除去するためには、水分に対して高い吸着能を有する吸着剤が充填された吸着塔と、炭化水素に対して高い吸着能を有する吸着剤が充填された吸着塔との、複数の吸着塔を備える構成とするか、または、1つの吸着塔に複数の吸着剤を積層して充填する構成とする必要がある。
【0011】
1つの吸着塔に複数の吸着剤を積層した場合、粗アンモニアに不純物として含まれる水分と炭化水素との量比が変動したときには、一方の吸着剤が吸着飽和に達していないときであっても、他方の吸着剤が吸着飽和に達して破過する現象が生じる。そのため、吸着剤の吸着能を最大限に利用して、粗アンモニアに含まれる水分および炭化水素を効率的に吸着除去することができず、さらには、吸着剤の破過の管理も複雑になってしまう。
【0012】
また、特許文献1,2に開示されるアンモニアを精製する技術では、粗アンモニアに含まれる不純物を吸着塔で吸着除去し、さらに、蒸留塔で蒸留除去してアンモニアを精製するが、蒸留塔から導出された精製後の気体状のアンモニアは、冷却されて液体アンモニアとして回収される。すなわち、特許文献1,2に開示されるアンモニアを精製する技術では、粗アンモニアに含まれる不純物を吸着・蒸留除去し、さらに冷却して精製された液体アンモニアを得るので、アンモニアを精製する方法として簡単化されたものであるとは言えない。
【0013】
したがって本発明の目的は、粗アンモニアに不純物として含まれる水分および炭化水素を、吸着剤の吸着能を最大限に利用して効率よく吸着除去することができるとともに、簡単化された方法でアンモニアを精製することができるアンモニアの精製方法、およびアンモニア精製システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、不純物が含まれる粗アンモニアを精製する方法であって、
粗アンモニアに含まれる不純物を、水分および炭化水素に対する吸着能を単独で有する吸着剤により吸着除去する吸着除去工程と、
前記吸着除去工程で不純物が吸着除去されたアンモニアを分縮して気相成分と液相成分とに分離することで、水素、窒素、酸素、アルゴン、一酸化炭素、二酸化炭素、および炭素数1〜8の炭化水素を気相成分として分離除去し、液相成分として液体アンモニアを得る分縮工程と、を含むことを特徴とするアンモニアの精製方法である。
【0015】
また本発明のアンモニアの精製方法は、前記分縮工程で得られた液体アンモニアを気化し、その気化されたアンモニアを分縮して気相成分と液相成分とに分離することで、不純物を気相成分として分離除去し、液相成分として液体アンモニアを得る再分縮工程をさらに含むことを特徴とする。
【0016】
また本発明のアンモニアの精製方法では、前記吸着除去工程で用いる前記吸着剤が、多孔質の合成ゼオライトであることを特徴とする。
【0017】
また本発明のアンモニアの精製方法では、前記合成ゼオライトが、5〜9Åの細孔径を有する合成ゼオライトであることを特徴とする。
【0018】
また本発明のアンモニアの精製方法において、前記分縮工程では、前記吸着除去工程で不純物が吸着除去されたアンモニアの70〜99体積%を凝縮して気相成分と液相成分とに分離することを特徴とする。
【0019】
また本発明のアンモニアの精製方法において、前記分縮工程では、前記吸着除去工程で不純物が吸着除去されたアンモニアを、−77〜50℃の温度下で凝縮して気相成分と液相成分とに分離することを特徴とする。
【0020】
また本発明は、不純物が含まれる粗アンモニアを精製するアンモニア精製システムであって、
粗アンモニアに含まれる不純物を、水分および炭化水素に対する吸着能を単独で有する吸着剤により吸着除去する吸着手段と、
前記吸着手段により不純物が吸着除去されたアンモニアを分縮して気相成分と液相成分とに分離することで、水素、窒素、酸素、アルゴン、一酸化炭素、二酸化炭素、および炭素数1〜8の炭化水素を気相成分として分離除去し、液相成分として液体アンモニアを得る分縮手段と、を含むことを特徴とするアンモニア精製システムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、アンモニアの精製方法は、不純物が含まれる粗アンモニアを精製する方法であって、吸着除去工程と分縮工程とを含む。吸着除去工程では、気体状の粗アンモニアに含まれる不純物を、水分および炭化水素に対する吸着能を単独で有する吸着剤により吸着除去する。分縮工程では、吸着除去工程で不純物が吸着除去された気体状のアンモニアを分縮して気相成分と液相成分とに分離することで、水素、窒素、酸素、アルゴン、一酸化炭素、二酸化炭素、および炭素数1〜8の炭化水素を気相成分として分離除去し、液相成分として精製された液体アンモニアを得る。
【0022】
本発明のアンモニアの精製方法では、吸着除去工程において、水分および炭化水素に対する吸着能を単独で有する吸着剤を用いるので、従来技術のように、水分に対する吸着能を有する吸着剤と、炭化水素に対する吸着能を有する吸着剤との、複数の吸着剤を用いる必要がない。そのため、気体状の粗アンモニアに不純物として含まれる水分および炭化水素を、吸着剤の吸着能を最大限に利用して効率よく吸着除去することができるとともに、吸着剤の破過の管理も簡単化することができる。また、本発明のアンモニアの精製方法では、分縮工程において、吸着除去後の気体状のアンモニアの一部を凝縮して気相成分と液相成分とに分離するので、炭素数1〜8の炭化水素、水素、窒素、酸素、アルゴン、一酸化炭素および二酸化炭素等の溶存低沸点ガスを気相成分として分離除去し、液相成分として精製された液体アンモニアを得ることができる。そのため、従来技術のように蒸留工程を経ることなく、簡単化された方法でアンモニアを精製することができる。
【0023】
また本発明によれば、アンモニアの精製方法は、再分縮工程をさらに含む。この再分縮工程では、分縮工程で得られた液体アンモニアを気化し、その気化されたアンモニアを分縮して気相成分と液相成分とに分離することで、不純物を気相成分として分離除去し、液相成分として液体アンモニアを得る。再分縮工程において、分縮工程で得られた液体アンモニアから気化されたアンモニアの一部を凝縮して気相成分と液相成分とに分離することで、揮発性の高い不純物を気相成分として分離除去するので、より精製された液体アンモニアを得ることができる。
【0024】
また本発明によれば、吸着除去工程で用いる吸着剤が、多孔質の合成ゼオライトである。これによって、粗アンモニアに不純物として含まれる水分および炭化水素を、効率よく吸着除去することができる。
【0025】
また本発明によれば、吸着剤として用いる合成ゼオライトが、5〜9Åの細孔径を有するものである。これによって、粗アンモニアに不純物として含まれる水分および炭化水素(特にブタン、ペンタン、ヘキサン等の高次炭化水素)を、効率よく吸着除去することができる。
【0026】
また本発明によれば、分縮工程では、吸着除去工程で不純物が吸着除去された気体状のアンモニアの70〜99体積%を凝縮して気相成分と液相成分とに分離する。これによって、吸着除去後の気体状のアンモニアに含まれる揮発性の高い不純物を気相成分として分離除去し、液相成分として精製された液体アンモニアを収率よく得ることができる。
【0027】
また本発明によれば、分縮工程では、吸着除去工程で不純物が吸着除去された気体状のアンモニアを、−77〜50℃の温度下で凝縮して気相成分と液相成分とに分離する。これによって、吸着除去後の気体状のアンモニアを効率よく凝縮して液体アンモニアを得ることができるとともに、その液体アンモニアの純度を高めることができる。
【0028】
また本発明によれば、アンモニア精製システムは、不純物が含まれる粗アンモニアを精製するシステムであり、吸着手段と分縮手段とを含む。吸着手段は、気体状の粗アンモニアに含まれる不純物を、水分および炭化水素に対する吸着能を単独で有する吸着剤により吸着除去する。分縮手段は、吸着手段により不純物が吸着除去された気体状のアンモニアを分縮して気相成分と液相成分とに分離することで、水素、窒素、酸素、アルゴン、一酸化炭素、二酸化炭素、および炭素数1〜8の炭化水素を気相成分として分離除去し、液相成分として精製された液体アンモニアを得る。
【0029】
本発明のアンモニア精製システムにおいて、吸着手段は、水分および炭化水素に対する吸着能を単独で有する吸着剤により、気体状の粗アンモニアに含まれる不純物を吸着除去するので、吸着剤の吸着能を最大限に利用して効率よく吸着除去することができる。また、本発明のアンモニア精製システムにおいて、分縮手段は、吸着除去後の気体状のアンモニアの一部を凝縮して気相成分と液相成分とに分離するので、炭素数1〜8の炭化水素、水素、窒素、酸素、アルゴン、一酸化炭素および二酸化炭素等の溶存低沸点ガスを気相成分として分離除去し、液相成分として精製された液体アンモニアを得ることができる。そのため、従来技術のように蒸留手段を設けなくても、簡単化されたシステムでアンモニアを精製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係るアンモニア精製システム100の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るアンモニア精製システム200の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の第1実施形態に係るアンモニア精製システム100の構成を示す図である。本実施形態のアンモニア精製システム100は、不純物が含まれる粗アンモニアを精製するシステムである。
【0032】
アンモニア精製システム100は、原料貯留容器1と、吸着手段2として複数の吸着塔である第1吸着塔21および第2吸着塔22と、分縮手段3として第1コンデンサ31および第2コンデンサ32と、回収タンク4と、製品タンク7とを含んで構成される。また、アンモニア精製システム100は、本発明に係るアンモニアの精製方法を実現し、第1吸着塔21および第2吸着塔22が吸着除去工程を実行し、第1コンデンサ31および第2コンデンサ32が分縮工程を実行する。
【0033】
原料貯留容器1は、粗アンモニアを貯留するものである。本実施形態において、原料貯留容器1に貯留される粗アンモニアは、純度99重量%以上、好ましくは純度99.9〜99.99重量%である。このような粗アンモニアとしては、たとえば、純度99.9重量%の工業用グレードのアンモニア(宇部興産株式会社製)、純度99.9重量%の工業用グレードのアンモニア(三井化学株式会社製)などが挙げられる。
【0034】
原料貯留容器1は、耐圧性および耐腐食性を有する保温容器であれば特に制限されるものではない。この原料貯留容器1は、粗アンモニアを液体アンモニアとして貯留し、温度および圧力が一定条件となるように制御されている。原料貯留容器1の上部には、液体アンモニアを貯留した状態で気相が形成されている。原料貯留容器1から第1吸着塔21または第2吸着塔22に粗アンモニアを導出する際には、液体アンモニアとして導出するようにしてもよいが、本実施形態では、粗アンモニアを前記気相から気体状のアンモニアとして導出する。原料貯留容器1と、第1吸着塔21および第2吸着塔22との間には、第1配管71が接続されており、原料貯留容器1から導出された粗アンモニアは、第1配管71を通って第1吸着塔21または第2吸着塔22に供給される。
【0035】
第1配管71には、原料貯留容器1から第1吸着塔21または第2吸着塔22に流れる気体状の粗アンモニアの流量を調整する流量調整器5が設けられている。また、第1配管71には、第1配管71における流路を開放または閉鎖する第1バルブ81および第2バルブ82が設けられている。第1配管71において、第1バルブ81は、流量調整器5よりも粗アンモニアの流過方向上流側(すなわち、原料貯留容器1側)に配置され、第2バルブ82は、流量調整器5よりも粗アンモニアの流過方向下流側(すなわち、第1吸着塔21および第2吸着塔22側)に配置される。粗アンモニアの第1吸着塔21または第2吸着塔22への供給時には、第1バルブ81および第2バルブ82が開放され、流量調整器5により流量が調整されて、原料貯留容器1から第1吸着塔21または第2吸着塔22に向けて第1配管71内を気体状の粗アンモニアが流れる。
【0036】
第1吸着塔21および第2吸着塔22は、原料貯留容器1から導出された気体状の粗アンモニアに含まれる不純物を吸着剤により吸着除去する。本実施形態では、第1吸着塔21および第2吸着塔22の2つの吸着塔を並列に接続する構成であるので、たとえば、粗アンモニアに含まれる不純物を、一方の吸着塔である第1吸着塔21で吸着除去している間に、使用済みの他の吸着塔である第2吸着塔22で再度吸着除去動作が可能なように、使用済みの他の吸着塔である第2吸着塔22を再生処理することができる。この場合、第2吸着塔22の開閉バルブ82aおよび開閉バルブ83aを開放し、第2吸着塔22の第2バルブ82および第3バルブ83は閉鎖しておく。
【0037】
第1吸着塔21および第2吸着塔22のそれぞれに充填される吸着剤は、水分および炭化水素に対する吸着能を単独で有する。このような吸着剤としては、多孔質の合成ゼオライトを挙げることができる。合成ゼオライトの中でも、5〜9Åの細孔径を有する合成ゼオライトが好ましく、細孔径が5Åの合成ゼオライトとしてMS−5Aが挙げられ、細孔径が9Åの合成ゼオライトとしてMS−13Xが挙げられる。これらの中でも、細孔径が9Åの合成ゼオライトであるMS−13Xを吸着剤として用いるのが、特に好ましい。本実施形態で用いる吸着剤は、加熱、減圧、加熱および減圧のいずれかの処理によって、吸着した不純物(水分および炭化水素)を脱離させて再生することができる。たとえば、加熱処理によって吸着剤に吸着した不純物を脱離させる場合には、200〜350℃の温度下で加熱するようにすればよい。
【0038】
本実施形態のアンモニア精製システム100において、第1吸着塔21および第2吸着塔22は、水分および炭化水素に対する吸着能を単独で有する吸着剤により、気体状の粗アンモニアに含まれる不純物を吸着除去するので、従来技術のように、水分に対する吸着能を有する吸着剤と、炭化水素に対する吸着能を有する吸着剤との、複数の吸着剤を用いる必要がない。そのため、気体状の粗アンモニアに不純物として含まれる水分および炭化水素を、吸着剤の吸着能を最大限に利用して効率よく吸着除去することができる。さらに、水分および炭化水素に対する吸着能を単独で有する吸着剤により、気体状の粗アンモニアに含まれる不純物を吸着除去することによって、第1吸着塔21または第2吸着塔22に供給される粗アンモニアに含まれる水分と炭化水素との量比が変動する場合であっても、第1吸着塔21または第2吸着塔22から導出されるアンモニアの不純物量の分析結果に基づいて、第1吸着塔21および第2吸着塔22の破過の管理を簡単に実施することができる。
【0039】
また、吸着剤として用いる合成ゼオライトが5〜9Åの細孔径を有するもの、特に細孔径が9ÅのMS−13Xであることによって、粗アンモニアに不純物として含まれる水分および炭化水素(特に高次炭化水素)を、効率よく吸着除去することができる。
【0040】
なお、第1吸着塔21および第2吸着塔22において、水分および炭化水素に対する吸着能を単独で有する吸着剤と、その他の吸着剤とを組合わせて用いることができるが、水分および炭化水素に対する吸着能を単独で有する吸着剤のみを用いるのが好ましい。その他の吸着剤としては、水分に対する吸着能に優れる合成ゼオライトである、MS−3A(細孔径3Å)、MS−4A(細孔径4Å)などを挙げることができる。
【0041】
本実施形態のアンモニア精製システム100において、第1吸着塔21および第2吸着塔22は、温度が0〜60℃に制御され、絶対圧力(以下、単に「圧力」と記載する場合がある)が0.1〜1.0MPaに制御される。第1吸着塔21および第2吸着塔22の温度が0℃未満の場合には、不純物の吸着除去時に発生する吸着熱を除去する冷却が必要となってエネルギ効率が低下するおそれがある。第1吸着塔21および第2吸着塔22の温度が60℃を超える場合には、吸着剤による不純物の吸着能が低下するおそれがある。また、第1吸着塔21および第2吸着塔22の圧力が0.1MPa未満の場合には、吸着剤による不純物の吸着能が低下するおそれがある。第1吸着塔21および第2吸着塔22の圧力が1.0MPaを超える場合には、一定圧力に維持するために多くのエネルギが必要となり、エネルギ効率が低下するおそれがある。
【0042】
また、第1吸着塔21および第2吸着塔22における線速度(リニアベロシティ)は、単位時間あたりに粗アンモニアを第1吸着塔21および第2吸着塔22に供給する量をNTPでのガス体積に換算し、第1吸着塔21および第2吸着塔22の空塔断面積で除算して求めた値の範囲が、0.1〜5.0m/秒であることが好ましい。線速度が0.1m/秒未満の場合には、不純物の吸着除去に長時間を要するので好ましくなく、線速度が5.0m/秒を超える場合には、不純物の吸着帯長さが長くなり、第1吸着塔21および第2吸着塔22における不純物の吸着能が低下するおそれがある。
【0043】
水分および炭化水素に対する吸着能を単独で有する吸着剤(特に細孔径が9Åの合成ゼオライトであるMS−13X)が充填された第1吸着塔21または第2吸着塔22から導出される気体状のアンモニアは、第1吸着塔21および第2吸着塔22と、第1コンデンサ31との間に接続される第2配管72から分岐する第9配管79を流過し、第9バルブ89を介して分析手段61に導入される。この分析手段61は、ガスクロマトグラフ分析装置(GC−4000、ジーエルサイエンス株式会社製)と、キャビティリングダウン分光分析装置(MTO−LP−HO、Tiger Optics社製)とを含む。
【0044】
第1吸着塔21または第2吸着塔22から導出される気体状のアンモニアについて、ガスクロマトグラフ分析装置(GC−4000、ジーエルサイエンス株式会社製)で炭化水素濃度、水素、窒素、酸素、および一酸化炭素濃度を分析し、キャビティリングダウン分光分析装置(MTO−LP−HO、Tiger Optics社製)で水分濃度を分析したところ、以下の表1に示す結果が得られた。
【0045】
表1は、宇部興産株式会社製の純度99.9重量%の工業用グレードのアンモニアを粗アンモニアとして用い、水分および炭化水素に対する吸着能を有する合成ゼオライトMS−13Xを充填した円筒管状(長さ50cm、内径2cm)の第1吸着塔21または第2吸着塔22に、気体状の粗アンモニアを、温度25℃、圧力0.4MPaの条件下で通過させたときの分析結果を示す。
【0046】
【表1】

【0047】
また、第1吸着塔21または第2吸着塔22の破過開始時点では炭化水素の中で最も分子サイズの小さいメタンが検出され、次いでエタンが検出される。以上のことより、第1吸着塔21および第2吸着塔22から導出される気体状のアンモニアに含まれる不純物は、水素、窒素、酸素、一酸化炭素等の低沸点ガス、および、第1吸着塔21および第2吸着塔22の稼動条件によってはメタン、エタン等の低次炭化水素などの、揮発性の高い不純物であることがわかる。第1吸着塔21または第2吸着塔22から導出された気体状のアンモニアは、第1コンデンサ31に供給される。
【0048】
本実施形態のアンモニア精製システム100では、第1吸着塔21および第2吸着塔22と、第1コンデンサ31との間には第2配管72が接続されており、第1吸着塔21または第2吸着塔22から導出された気体状のアンモニアは、第2配管72を流過して第1コンデンサ31に供給される。第2配管72には、第1吸着塔21または第2吸着塔22から第1コンデンサ31に流れる気体状のアンモニアの圧力を計測する圧力計6が設けられている。また、第2配管72には、第2配管72における流路を開放または閉鎖する第3バルブ83および第4バルブ84が設けられている。第2配管72において、第3バルブ83は、圧力計6よりもアンモニアの流過方向上流側(すなわち、第1吸着塔21および第2吸着塔22側)に配置され、第4バルブ84は、圧力計6よりもアンモニアの流過方向下流側(すなわち、第1コンデンサ31側)に配置される。気体状のアンモニアの第1コンデンサ31への供給時には、第3バルブ83および第4バルブ84が開放され、圧力計6により圧力が計測されて、第1吸着塔21または第2吸着塔22から第1コンデンサ31に向けて第2配管72内を気体状のアンモニアが流れる。
【0049】
ここで、本実施形態のアンモニア精製システム100における分縮手段3としての第1コンデンサ31による気体状のアンモニアの分縮について説明する。第1コンデンサ31は、気体状のアンモニアを分縮して気相成分と液相成分とに分離することで、アンモニア中に含有される揮発性の高い不純物を気相成分として分離除去する。
【0050】
工業的に製造されるアンモニア(粗アンモニア)中に含有される不純物は、その種類を大きく分類すると、一般的に、水素、窒素、酸素、アルゴン、一酸化炭素および二酸化炭素などの溶存低沸点ガス、炭化水素類、水分などである。粗アンモニア中に含有される炭化水素としては、最も多く含有されているのはメタンであるが、その他にエタン、プロパン、エチレンおよびプロピレンなどがそれに次いで多く含有されている。炭素数でいうと炭素数1〜3の炭化水素が炭化水素類の主成分を構成することになる。
【0051】
しかしながら、粗アンモニア中には、その含有量は少ないものの、炭素数4以上の炭化水素、多くの場合は炭素数4〜6の炭化水素が、含有されている。また、工業的に製造されたアンモニアガスを液化する時には、その圧縮のためにオイルポンプなどが使用されている。このような場合には、オイルポンプなどから混入してくるポンプ油に由来する油分などの、大きな分子量を有する炭化水素が、粗アンモニア中に含有される。
【0052】
これらの不純物を構成する、炭素数が広範囲にわたる炭化水素類を除去できるアンモニアの精製システムとすることが、電子産業向けのアンモニアを製造するためには必須となってくる。
【0053】
本発明者らは、精留に代わる粗アンモニア中の不純物の除去方法として、分縮による方法が優れていることを見出した。
【0054】
例えば、精留により炭化水素を分離する場合、一般的に5〜20段の精留塔を設け、還流比10〜20で蒸留する必要がある。この蒸留(精留)において、アンモニア中に含まれる、主に炭素数1〜8の炭化水素類は、揮発性の高い成分として蒸留塔の塔頂部より除去される。この精留操作により高純度のアンモニアを得る場合には、蒸留塔の塔頂部から廃棄する揮発性の高い不純物を含んだアンモニアをどの程度の割合とすれば、目的とする高純度のアンモニアが得られるかが問題となってくる。不純物の含有量が比較的低い粗アンモニアを原料として用いた場合であっても、蒸留塔の塔頂部から廃棄する割合は、蒸留塔に供給した粗アンモニアの約10%と大きな割合とする必要がある。
【0055】
表2にはアンモニア、および炭素数1〜8の飽和n−炭化水素の沸点を示したが、炭素数4〜8の炭化水素は、その炭化水素が純物質として存在する場合にはアンモニアより沸点が高いにもかかわらず、精留操作では揮発性の高い化合物として蒸留塔の塔頂部より排出されてくる。
【0056】
【表2】

【0057】
この理由は定かではないが、本発明者らはこの理由として次のように推測している。すなわち、炭素数1〜8の炭化水素の沸点は、例えば炭素数3のプロパンの沸点を例にとると、プロパンを容器に入れて温度を変化させていったときに、その容器中の圧力が1気圧(0.1013MPa)となるときの温度である。このときのプロパンの状態は、隣り合うプロパン分子同士が、ファンデルワールス力などにより互いに引っ張りあっている状態であり、その引っ張り合う力が強いと沸点が高く現れることになる。しかしながら、今問題にしているような、アンモニア中に存在するプロパンの濃度が非常に低い状況においては、プロパン分子の隣には引っ張り合うことができるプロパン分子や、あるいは他の炭化水素分子が存在せず、ちょうど液体アンモニアの海の中にプロパン分子がただ一つ漂っている状態となっている。
【0058】
一般的に、炭化水素分子同士やアンモニア分子同士のように、似た性質を持つ者同士の間には大きな分子間力が生まれる。しかしながら、プロパン分子とアンモニア分子のように性質の大きく異なる分子同士の間に生まれるこの分子間力は小さなものである。この様に、アンモニア中に炭化水素不純物が極微量に存在する状況下においては、従来の蒸留の概念はもはや無意味となる。液体アンモニアでは、アンモニア分子同士は互いに引っ張り合いの力を及ぼし合っているが、一方、純物質としてはアンモニアより沸点の高い炭素数4〜8の炭化水素であろうとも、それらはアンモニア分子との相互作用が小さい。このために、液体アンモニア中では、アンモニアよりも沸点の高い炭素数4〜8の炭化水素は、アンモニアよりも沸点の低い化合物として振舞ったとしてもなんら不思議ではない。事実、精留の結果からは、炭素数1〜8の炭化水素が、アンモニアよりも低い沸点を持った揮発性の高い化合物として振舞っていることが分かる。
【0059】
アンモニア中に微量に含まれる炭素数1〜8の炭化水素が、液化アンモニアの気相と液相でどのような濃度分布を示しているかを、温度を種々変化させてそれらの炭化水素のアンモニア中での濃度が気液平衡状態になったところで測定した結果が表3である。なお、分配比は、それぞれの飽和n−炭化水素濃度の液体アンモニア中の初期濃度を5000ppmに調整し、その後、所定の温度で2昼夜放置後に測定した。
【0060】
【表3】

【0061】
なお、この表3中で示した、気液分配係数は、分縮により不純物がどの程度分離できるかの指標となるものであり、次のように定義される。
分配係数(Kd)=A/A …(1)
[式中、Aは気液平衡後の気体アンモニア中の不純物濃度を示し、Aは気液平衡後の液体アンモニア中の不純物濃度を示す。]
【0062】
ただし、上記式(1)中における不純物濃度A,Aは、mol−ppmをその単位とし、定義は、下記式(2)とする。
不純物濃度(A,A)=
不純物(mol)/(アンモニア(mol)+不純物(mol))×10
…(2)
【0063】
この定義に従えば、気液分配係数が大きい不純物ほど、分縮により凝縮されなかった未凝縮の気体アンモニア中に多く含まれてくることになる。炭素数の小さな炭化水素ほど、液相中よりも気相中に存在する割合が高くなり、炭素数8までの炭化水素であれば気相中により高い濃度で存在することになる。さらに、温度が低いほど、より高い濃度でアンモニア気相中に炭化水素が存在することになる。
【0064】
さらに、この表3に示した平衡に達するまでの時間は、アンモニア中に含まれる炭化水素濃度が低くなるにしたがって長くなり、ここに示したppmオーダーの濃度においては、その平衡に達するまでに数日間を要することがわかった。このことは、精留によりアンモニア中の不純物を除去する操作において、精留塔の各蒸留段において起こる短い気液接触時間では、不純物である炭化水素の物質移動が十分に行われていないことを示している。この結果からは、アンモニアの高純度化に精留を用いる方法は、工業的には効果が低いものと考えられる。なお、表3は飽和直鎖状炭化水素についてのデータであるが、炭素数4以上においては相当する種々の異性体や、炭素数2以上の炭化水素においては分子内に不飽和結合を含む場合にも、表3に示した傾向がある。
【0065】
以上で示してきたように、本発明者らは、粗アンモニア中における希薄不純物である炭素数1〜8の炭化水素の挙動が、従来考えられていた状態と大きく異なることを確認した。さらに一歩進めて、この炭素数1〜8の炭化水素のアンモニア中での性質の違いをアンモニアの精製に利用できないかと考えた。そこで、メタン、エタンおよびプロパンをそれぞれ約5000ppm、約500ppmおよび約500ppmで含む気体状の粗アンモニアの95%を、アンモニアガス温度を−20℃に保ち、第1コンデンサ31における器壁温度を−30℃として凝縮により液化してみたところ、得られた液体アンモニア中にはそれらの炭化水素は検出されず、不純物の大部分は凝縮されなかった気体アンモニア中に残存することが分かった。表3の分配比に従うと、分縮操作により−20℃で凝縮してくる液体アンモニア中には、メタン、エタンおよびプロパンがそれぞれ54ppm、24ppmおよび56ppmで存在する計算となるが、意外にも、第1コンデンサ31における分縮では、その値ははるかに小さなものとなり、粗アンモニアを短時間のうちに非常に高純度にまで精製できることが分かった。
【0066】
粗アンモニア中に含有される不純物を精留により分離除去する場合、還流を掛けながらの蒸留であるので、蒸留塔で液体アンモニアを加熱蒸発させて気体アンモニアとし、一方、蒸留塔の塔頂部のコンデンサで精留塔からの気体アンモニアを凝縮させて液体アンモニアとする操作を繰り返すことになる。そのため、精留操作においては大きなエネルギーをその操作に投入することになる。
【0067】
これに対して、第1コンデンサ31における分縮により粗アンモニア中に含有される不純物を分離除去する場合には、気体アンモニアを1回凝縮させるだけであるので、それに必要なエネルギーが少なくて済む。このように、精留によるアンモニアの精製方法と比較して、第1コンデンサ31における分縮による精製方法は、短時間に高純度のアンモニアが得られるばかりではなく、エネルギー的にも大きなメリットがあることがわかる。
【0068】
さらに、本発明者らは、粗アンモニアに含有される不純物が炭素数1〜8の炭化水素である場合、第1コンデンサ31により、気体状の粗アンモニアの90〜99.5%程度までの液化を伴う分縮操作を行うと、液相成分として得られる液体アンモニア中に含まれてくる不純物の濃度は、最初の気体状の粗アンモニア中に含有される不純物濃度と比べて大きく低下しているという事実を見出した。
【0069】
第1コンデンサ31における分縮により粗アンモニア中に含有される不純物を分離除去する精製方法では、分縮により液相成分として得られる液体アンモニアは、前述のように、気液分配比から予想される値を超えて、不純物炭化水素の濃度がはるかに低くなっている。その理由は定かではないが、分縮では平衡関係が崩れて動的な不純物分離が起こり、不純物炭化水素のほとんどが、凝縮されなかった気相成分に残存するものと推察している。この推察の正しさは、第1コンデンサ31における分縮により液相成分として得られた液体アンモニアを、第1コンデンサ31から速やかに取り出さずに、液体アンモニアの状態で第1コンデンサ31の内部に滞留させておくと、時間の経過とともに液体アンモニア中の不純物炭化水素濃度が次第に上昇してくることからも裏付けられる。
【0070】
この推察と結果は、第1コンデンサ31における分縮により液相成分として得られた液体アンモニアは、速やかに第1コンデンサ31から導出し、第1コンデンサ31の内部には未凝縮の気相成分のみが存在するように、第1コンデンサ31の運転を行うのが、高純度アンモニアを得るために必要であることを示している。
【0071】
なお、アンモニアの精製効率を高めるためには、あくまでも目安であるが、気液分配係数が大きいほど好ましいと考えられる。前述したように、この気液分配係数は温度により影響を受け、分縮温度が低いほど大きな気液分配係数を得ることができる。このことは、第1コンデンサ31における分縮操作の設定温度が高い場合、例えばアンモニアの分縮の起こる温度を50℃とした場合には、第1コンデンサ31に供給するアンモニアの圧力を1.81MPa以上とするとアンモニアの分縮は可能となるが、分縮操作の設定温度が低い場合と比較し、その炭化水素不純物の分離効率が低下する可能性があることを意味している。
【0072】
第1コンデンサ31は、第1吸着塔21または第2吸着塔22により不純物が吸着除去された気体状のアンモニアを凝縮して気相成分と液相成分とに分離することで、水素、窒素、酸素、アルゴン、一酸化炭素、二酸化炭素、および炭素数1〜8の炭化水素を気相成分として分離除去し、液相成分として精製された液体アンモニアを得る。具体的には、第1コンデンサ31は、第1吸着塔21または第2吸着塔22から導出された気体状のアンモニアに対して、冷却処理によって、アンモニアを、その一部が気相成分となるように凝縮して、気相成分と液相成分とに分離する。第1コンデンサ31としては、多管式コンデンサ、プレート式熱交換器などが挙げられる。
【0073】
本実施形態では、第1コンデンサ31は、第1吸着塔21または第2吸着塔22から導出された気体状のアンモニアの70〜99体積%を凝縮して気相成分と液相成分とに分離する。この場合には、第1吸着塔21または第2吸着塔22から導出された気体状のアンモニアの一部である1〜30体積%が気相成分となるように凝縮して、気相成分と液相成分とに分離することになる。これによって、吸着除去後の気体状のアンモニアに含まれる揮発性の高い不純物を気相成分として分離除去し、液相成分として精製された液体アンモニアを収率よく得ることができる。
【0074】
また、第1コンデンサ31における凝縮条件としては、第1吸着塔21または第2吸着塔22から導出された気体状のアンモニアの一部が液体となるような条件であれば限定されるものではなく、温度、圧力および時間を適宜設定すればよい。本実施形態では、第1コンデンサ31は、第1吸着塔21または第2吸着塔22から導出された気体状のアンモニアを、−77〜50℃の温度下で凝縮して気相成分と液相成分とに分離するように構成されるのが好ましい。これによって、第1吸着塔21または第2吸着塔22から導出された気体状のアンモニアを効率よく凝縮して精製された液体アンモニアを得ることができるとともに、その液体アンモニアの純度を高めることができる。第1コンデンサ31における気体状のアンモニアに対する凝縮時の温度が、−77℃未満である場合には、冷却するのに多くのエネルギを要するので好ましくなく、50℃を超える場合には、アンモニアの一部が凝縮されて得られる液体アンモニアに含まれてくる不純物濃度が高くなってくるので好ましくない。
【0075】
また、第1コンデンサ31は、第1吸着塔21または第2吸着塔22から導出された気体状のアンモニアを、0.007〜2.0MPaの圧力下で凝縮して気相成分と液相成分とに分離するように構成されるのが好ましい。第1コンデンサ31における気体状のアンモニアに対する凝縮時の圧力が、0.007MPa未満である場合には、アンモニアを凝縮させる温度が低くなるので、冷却するのに多くのエネルギが必要となって好ましくなく、2.0MPaを超える場合には、アンモニアを凝縮させる温度が高くなるので、アンモニアの一部が凝縮されて得られる液体アンモニアに含まれてくる不純物濃度が高くなって好ましくない。
【0076】
本実施形態のアンモニア精製システム100において、第1コンデンサ31は、第1吸着塔21または第2吸着塔22による吸着除去後の気体状のアンモニアの一部を凝縮して気相成分と液相成分とに分離するので、揮発性の高い不純物を気相成分として分離除去し、液相成分として精製された液体アンモニアを得ることができる。そのため、従来技術のように蒸留手段を設けなくても、簡単化されたシステムでアンモニアを精製することができる。
【0077】
第1コンデンサ31には、第3配管73と、第5バルブ85が設けられた第4配管74とが接続されている。なお、第3配管73は、第1コンデンサ31と回収タンク4との間に接続される。
【0078】
第1コンデンサ31において、気相成分としてアンモニアから分離除去された揮発性の高い不純物は、第5バルブ85が開放された状態で、第4配管74を通ってシステム外部に排出される。また、第1コンデンサ31において、液相成分として得られた液体アンモニアは、第3配管73を通って回収タンク4に供給される。
【0079】
回収タンク4は、第1コンデンサ31で液相成分として得られた、凝縮後の液体アンモニアを貯留する。この回収タンク4は、凝縮後のアンモニアを液体アンモニアとして貯留できるように、温度および圧力が一定条件で制御されるのが好ましい。
【0080】
回収タンク4の上部には、液体アンモニアを貯留した状態で気相が形成され、この気相部分に対応して、第6バルブ86が設けられた第5配管75が接続されている。この第5配管75は、第2コンデンサ32にも接続されている。すなわち、第5配管75は、回収タンク4と第2コンデンサ32との間に接続される。第1コンデンサ31から導出されて、回収タンク4に貯留された液体アンモニアには、極微量の揮発性の高い不純物が含まれている場合がある。回収タンク4において液体アンモニアを所定時間(5〜10時間)静置することによって、液体アンモニア中に含まれる極微量の揮発性の高い不純物を、回収タンク4の上部の気相に濃縮させることができ、液体アンモニアの純度をさらに高めることができる。
【0081】
回収タンク4の上部の気相に濃縮された揮発性の高い不純物を含む気体状のアンモニアは、第6バルブ86が開放された状態で、第5配管75を通って第2コンデンサ32に供給される。
【0082】
第2コンデンサ32は、回収タンク4の上部の気相から導出された気体状のアンモニアを分縮して気相成分と液相成分とに分離することで、揮発性の高い不純物を気相成分として分離除去し、液相成分として精製された液体アンモニアを得る。具体的には、第2コンデンサ32は、回収タンク4の上部の気相から導出された気体状のアンモニアに対して、冷却処理によって、アンモニアを、その一部が気相成分となるように凝縮して、気相成分と液相成分とに分離する。
【0083】
本実施形態では、第2コンデンサ32は、回収タンク4の上部の気相から導出された気体状のアンモニアの70〜99体積%を凝縮して気相成分と液相成分とに分離する。この場合には、回収タンク4の上部の気相から導出された気体状のアンモニアの一部である1〜30体積%が気相成分となるように凝縮して、気相成分と液相成分とに分離することになる。第2コンデンサ32における温度、圧力および時間などの凝縮条件は、第1コンデンサ31と同様にすればよい。
【0084】
第2コンデンサ32には、第6配管76と、第7バルブ87が設けられた第7配管77とが接続されている。なお、第6配管76は、第2コンデンサ32と回収タンク4との間に接続される。
【0085】
第2コンデンサ32において、気相成分としてアンモニアから分離除去された揮発性の高い不純物は、第7バルブ87が開放された状態で、第7配管77を通ってシステム外部に排出される。また、第2コンデンサ32において、液相成分として得られた液体アンモニアは、第6配管76を通って回収タンク4に供給される。
【0086】
回収タンク4の下部には、液体アンモニアを貯留した状態で液相が形成され、この液相部分に対応して、第8バルブ88が設けられた第8配管78が接続されている。この第8配管78は、製品タンク7にも接続されている。すなわち、第8配管78は、回収タンク4と製品タンク7との間に接続される。回収タンク4に貯留された液体アンモニアは、第8バルブ88が開放された状態で、第8配管78を通って製品タンク7に供給される。
【0087】
製品タンク7は、回収タンク4から供給された液体アンモニアを製品アンモニアとして貯留する。この製品タンク7は、アンモニアを液体状の液体アンモニアとして貯留できるように、温度および圧力が一定条件で制御される。
【0088】
以上のように構成されたアンモニア精製システム100では、第1吸着塔21または第2吸着塔22から導出された気体状のアンモニアに含まれる揮発性の高い不純物を、第1コンデンサ31で気相成分として分離除去し、さらに、回収タンク4の気相から導出された気体状のアンモニアに含まれる揮発性の高い不純物を、第2コンデンサ32で気相成分として分離除去する。このように、本実施形態のアンモニア精製システム100では、還流を伴う蒸留を行うことなく、揮発性の高い不純物を除去することができるので、エネルギの消費を抑制してアンモニアを効率的に精製することができる。
【0089】
また、本実施形態のアンモニア精製システム100は、第1コンデンサ31および第2コンデンサ32により分縮して気相成分と液相成分とに分離することで、液相成分として得た液体アンモニアであって、回収タンク4に貯留される液体アンモニアを気化し、その気化されたアンモニアを再分縮処理する再分縮工程を実行するように構成してもよい。
【0090】
具体的には、回収タンク4の気相部分と第2配管72とを接続する循環配管を設け、この循環配管に、回収タンク4内において気化されたアンモニアを流過させ、さらに循環配管から第2配管72に流過させて、第1コンデンサ31および第2コンデンサ32に供給するようにすればよい。なお、回収タンク4内において気化されたアンモニアの再分縮処理は、複数回にわたって繰り返し実行されるようにしてもよい。
【0091】
このように構成されたアンモニア精製システム100では、回収タンク4内において気化されたアンモニアを、第1コンデンサ31および第2コンデンサ32により分縮して気相成分と液相成分とに分離することで、揮発性の高い不純物を気相成分として分離除去し、液相成分として液体アンモニアを得る。これによって、より精製された液体アンモニアを得ることができる。
【0092】
図2は、本発明の第2実施形態に係るアンモニア精製システム200の構成を示す図である。本実施形態のアンモニア精製システム200は、前述のアンモニア精製システム100に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。アンモニア精製システム200では、分縮手段207の構成が、前述のアンモニア精製システム100の分縮手段3と異なる。前述の分縮手段3が第1コンデンサ31および第2コンデンサ32から構成されているのに対して、分縮手段207は、第1コンデンサ31のみから構成されている。
【0093】
また、アンモニア精製システム200は、原料貯留容器1から第1吸着塔21または第2吸着塔22に粗アンモニアを導出する際に、液体アンモニアとして導出するように構成されている。本実施形態では、原料貯留容器1と流量調整器5との間に気化器203が設けられており、原料貯留容器1から気化器203に粗アンモニアを導出する際には、原料貯留容器1の液相から液体状の粗アンモニアとして導出する。
【0094】
原料貯留容器1と気化器203との間には第10配管201が接続されており、原料貯留容器1から導出された液体状の粗アンモニアは、第10配管201を通って気化器203に供給される。
【0095】
第10配管201には、第10配管201における流路を開放または閉鎖する第10バルブ202が設けられている。液体状の粗アンモニアの気化器203への供給時には、第10バルブ202が開放されて、原料貯留容器1から気化器203に向けて第10配管201内を液体状の粗アンモニアが流れる。
【0096】
気化器203は、原料貯留容器1から導出された液体状の粗アンモニアの一部を気化する、すなわち、液体状の粗アンモニアを加熱して所定の気化率で気化して気相成分と液相成分とに分離し、気体状のアンモニアを導出する。気化器203は、液体状の粗アンモニアの一部を気化するので、粗アンモニア中に含有される揮発性の低い不純物(例えば、水分、炭素数9以上の炭化水素等)が液相に残り、揮発性の低い不純物が低減された気体状のアンモニアを導出することができる。
【0097】
本実施形態では、気化器203は、原料貯留容器1から導出された液体状のアンモニアを、90〜95体積%の気化率で気化して気相成分と液相成分とに分離する。この場合には、原料貯留容器1から導出された液体状のアンモニアの90〜95体積%が気相成分となり、5〜10体積%が液相成分となる。
【0098】
気化器203には、第11バルブ205が設けられた第11配管204と、第12配管206とが接続されている。なお、第12配管206は、気化器203と流量調整器5との間に接続される。
【0099】
気化器203において、液相成分としてアンモニアから分離除去された揮発性の低い不純物は、第11バルブ205が開放された状態で、第11配管204を通ってシステム外部に排出される。また、気化器203において、気相成分として得られた気体状のアンモニアは、第12配管206を流過し、流量調整器5を介して第1吸着塔21または第2吸着塔22に供給される。
【0100】
このようにして第1吸着塔21または第2吸着塔22に供給された気体状のアンモニアに含まれる不純物は、第1吸着塔21または第2吸着塔22に充填される、水分および炭化水素に対する吸着能を単独で有する吸着剤によって吸着除去される。第1吸着塔21または第2吸着塔22から導出された、吸着除去後の気体状のアンモニアは、第1コンデンサ31に供給される。そして、第1コンデンサ31は、吸着除去後の気体状のアンモニアの一部を凝縮して気相成分と液相成分とに分離し、揮発性の高い不純物を気相成分として分離除去する。ここで、アンモニア精製システム200における第1コンデンサ31の分縮条件は、前述したアンモニア精製システム100における第1コンデンサ31と同様である。本実施形態のアンモニア精製システム200は、上記のようにして、精製された液体アンモニアを得ることができる。
【実施例】
【0101】
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0102】
<粗アンモニア>
宇部興産株式会社製の純度99.9重量%の工業用グレードのアンモニアを粗アンモニアAとして用いた。また、粗アンモニアAとは純度の異なる粗アンモニアBを準備した。粗アンモニアAおよび粗アンモニアBに含まれる不純物の濃度を、表4に示す。
【0103】
なお、不純物濃度は、炭化水素濃度、水素、窒素、酸素、および一酸化炭素濃度については、ガスクロマトグラフ分析装置(GC−4000、ジーエルサイエンス株式会社製)で分析し、水分濃度については、キャビティリングダウン分光分析装置(MTO−LP−HO、Tiger Optics社製)で分析した。
【0104】
【表4】

【0105】
(実施例1)
吸着剤として、水分および炭化水素に対する吸着能を単独で有する合成ゼオライトMS−13X(F−9、東ソー社製)を充填した円筒管状の吸着塔(長さ50cm、内径2cm)に、気体状の粗アンモニアAを、温度25℃、圧力0.4MPaの条件下で通過させた。
【0106】
吸着塔から導出された気体状のアンモニアを、温度−10℃、圧力0.4MPaの条件下で、SUS製多管式コンデンサ(第1コンデンサ)に供給し、供給されたアンモニアの95体積%を凝縮して気相成分と液相成分とに分離した。多管式コンデンサ(第1コンデンサ)に供給されたアンモニアの5体積%に相当する気相成分(揮発性の高い不純物が濃縮されている)を、多管式コンデンサ(第1コンデンサ)の上部から排出して除去した。
【0107】
次に、多管式コンデンサ(第1コンデンサ)において液相成分として得られた液体アンモニアを、回収タンクに供給した。そして、回収タンクにおいて貯留される液体アンモニアを5時間以上静置し、回収タンク内の気相成分(液体アンモニアの2体積%)を、多管式コンデンサ(第2コンデンサ)に供給し、供給されたアンモニアの95体積%を凝縮して気相成分と液相成分とに分離した。多管式コンデンサ(第2コンデンサ)に供給されたアンモニアの5体積%に相当する気相成分(揮発性の高い不純物が濃縮されている)を、多管式コンデンサ(第2コンデンサ)の上部から排出して除去した。
【0108】
(実施例2)
吸着剤として、水分および炭化水素に対する吸着能を単独で有する合成ゼオライトMS−5Aを充填した円筒管状の吸着塔(長さ50cm、内径2cm)に、気体状の粗アンモニアAを、温度40℃、圧力0.6MPaの条件下で通過させた。
【0109】
吸着塔から導出された気体状のアンモニアを、温度−5℃、圧力0.4MPaの条件下で、SUS製多管式コンデンサ(第1コンデンサ)に供給し、供給された気体状のアンモニアの90体積%を凝縮して気相成分と液相成分とに分離した。多管式コンデンサ(第1コンデンサ)に供給されたアンモニアの10体積%に相当する気相成分(揮発性の高い不純物が濃縮されている)を、多管式コンデンサ(第1コンデンサ)の上部から排出して除去した。
【0110】
次に、多管式コンデンサ(第1コンデンサ)において液相成分として得られた液体アンモニアを、回収タンクに供給した。そして、回収タンクにおいて貯留される液体アンモニアを5時間以上静置し、回収タンク内の気相成分(液体アンモニアの2体積%)を、多管式コンデンサ(第2コンデンサ)に供給し、供給されたアンモニアの90体積%を凝縮して気相成分と液相成分とに分離した。多管式コンデンサ(第2コンデンサ)に供給されたアンモニアの10体積%に相当する気相成分(揮発性の高い不純物が濃縮されている)を、多管式コンデンサ(第2コンデンサ)の上部から排出して除去した。
【0111】
(実施例3)
吸着剤として、水分および炭化水素に対する吸着能を単独で有する合成ゼオライトMS−13Xを充填した円筒管状の吸着塔(長さ50cm、内径2cm)に、気体状の粗アンモニアBを、温度25℃、圧力0.4MPaの条件下で通過させた。
【0112】
吸着塔から導出された気体状のアンモニアを、温度−10℃、圧力0.4MPaの条件下で、SUS製多管式コンデンサ(第1コンデンサ)に供給し、供給されたアンモニアの95体積%を凝縮して気相成分と液相成分とに分離した。多管式コンデンサ(第1コンデンサ)に供給されたアンモニアの5体積%に相当する気相成分(揮発性の高い不純物が濃縮されている)を、多管式コンデンサ(第1コンデンサ)の上部から排出して除去した。
【0113】
次に、多管式コンデンサ(第1コンデンサ)において液相成分として得られた液体アンモニアを、回収タンクに供給した。さらに、回収タンク内において貯留される液体アンモニアを再分縮処理した。具体的には、回収タンクにおいて貯留される液体アンモニアを5時間以上静置し、回収タンク内の気相成分(液体アンモニアの2体積%)を、多管式コンデンサ(第2コンデンサ)に供給し、供給されたアンモニアの95体積%を凝縮して気相成分と液相成分とに分離した。多管式コンデンサ(第2コンデンサ)に供給されたアンモニアの5体積%に相当する気相成分(揮発性の高い不純物が濃縮されている)を、多管式コンデンサ(第2コンデンサ)の上部から排出して除去した。
【0114】
(比較例1)
水分に対する吸着能を有する合成ゼオライトMS−3A(A−3、東ソー社製)と、炭化水素に対する吸着能を有する活性炭(クラレGG、クラレケミカル株式会社製)とを、同容積充填した円筒管状の吸着塔(長さ50cm、内径2cm)に、気体状の粗アンモニアAを、温度25℃、圧力0.4MPaの条件下で通過させた。
【0115】
吸着塔から導出された気体状のアンモニアを、圧力0.4MPaの条件下で、SUS製ジャケット式蒸留塔に供給した。蒸留塔は、温度−10℃の冷媒により温度制御し、還流比を20とした。蒸留塔の塔頂から、供給されたアンモニアに対して7体積%のアンモニアを排出させ、蒸留塔の塔底から、供給されたアンモニアに対して93体積%の液体アンモニアを導出させた。そして、蒸留塔の塔底から導出させた液体アンモニアを、回収タンクに貯留した。
【0116】
(比較例2)
吸着剤として、炭化水素に対する吸着能を有する活性炭(クラレGG、クラレケミカル株式会社製)を充填した円筒管状の吸着塔(長さ50cm、内径2cm)に、気体状の粗アンモニアAを、温度25℃、圧力0.4MPaの条件下で通過させた。
【0117】
吸着塔から導出された気体状のアンモニアを、温度−10℃、圧力0.4MPaの条件下で、SUS製多管式コンデンサに供給し、供給されたアンモニアの95体積%を凝縮して気相成分と液相成分とに分離した。多管式コンデンサに供給されたアンモニアの5体積%に相当する気相成分を、多管式コンデンサの上部から排出して除去した。
【0118】
次に、多管式コンデンサにおいて液相成分として得られた液体アンモニアを、回収タンクに供給した。そして、回収タンクにおいて貯留される液体アンモニアを5時間以上静置し、回収タンク内の気相成分(液体アンモニアの2体積%)を、回収タンクの上部から排出して除去した。
【0119】
<アンモニア中に含まれる不純物濃度の分析結果>
実施例1〜3および比較例1,2において、回収タンクに貯留される液体アンモニアについて、不純物濃度を分析した。分析結果を表5に示す。
【0120】
【表5】

【0121】
表5の結果から明らかなように、実施例1,2のアンモニアの精製方法で得られた液体アンモニアは、蒸留塔による蒸留除去工程を含む比較例1のアンモニアの精製方法で得られた液体アンモニアと同等の純度である。
【0122】
また、比較例2のアンモニアの精製方法で得られた液体アンモニアには、水分が多く含まれる。これは、吸着塔に充填する吸着剤として、水分に対する吸着能を有さず、炭化水素に対する吸着能のみを有する活性炭を用いたからであり、吸着塔で吸着除去されなかった水分が、凝縮時に液相成分として分離された液体アンモニア中に濃縮されたためである。
【0123】
以上の結果より、実施例1,2のアンモニアの精製方法は、蒸留塔による蒸留除去工程を含まないにもかかわらず、高純度の液体アンモニアを得ることができるので、還流を伴う蒸留を行うことなくエネルギの消費を抑制して、アンモニアを効率的に精製することができる、ということがわかる。
【0124】
また、実施例3では、純度の低い(不純物の濃度が高い)粗アンモニアBを用いたにもかかわらず、最終的には(再分縮処理後:凝縮2回目)、実施例1,2および比較例1と同等以上の高純度の液体アンモニアを得ることができる。この結果より、実施例3のアンモニアの精製方法は、回収タンク内において気化されたアンモニアの再分縮処理を行うので、より精製された液体アンモニアを得ることができる、ということがわかる。
【符号の説明】
【0125】
1 原料貯留容器
2 吸着手段
3,207 分縮手段
4 回収タンク
5 流量調整器
6 圧力計
7 製品タンク
21 第1吸着塔
22 第2吸着塔
31 第1コンデンサ
32 第2コンデンサ
61 分析手段
71 第1配管
72 第2配管
73 第3配管
74 第4配管
75 第5配管
76 第6配管
77 第7配管
78 第8配管
79 第9配管
81 第1バルブ
82 第2バルブ
83 第3バルブ
84 第4バルブ
85 第5バルブ
86 第6バルブ
87 第7バルブ
88 第8バルブ
89 第9バルブ
100,200 アンモニア精製システム
201 第10配管
202 第10バルブ
203 気化器
204 第11配管
205 第11バルブ
206 第12配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物が含まれる粗アンモニアを精製する方法であって、
粗アンモニアに含まれる不純物を、水分および炭化水素に対する吸着能を単独で有する吸着剤により吸着除去する吸着除去工程と、
前記吸着除去工程で不純物が吸着除去されたアンモニアを分縮して気相成分と液相成分とに分離することで、水素、窒素、酸素、アルゴン、一酸化炭素、二酸化炭素、および炭素数1〜8の炭化水素を気相成分として分離除去し、液相成分として液体アンモニアを得る分縮工程と、を含むことを特徴とするアンモニアの精製方法。
【請求項2】
前記分縮工程で得られた液体アンモニアを気化し、その気化されたアンモニアを分縮して気相成分と液相成分とに分離することで、不純物を気相成分として分離除去し、液相成分として液体アンモニアを得る再分縮工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のアンモニアの精製方法。
【請求項3】
前記吸着除去工程で用いる前記吸着剤が、多孔質の合成ゼオライトであることを特徴とする請求項1または2に記載のアンモニアの精製方法。
【請求項4】
前記合成ゼオライトが、5〜9Åの細孔径を有する合成ゼオライトであることを特徴とする請求項3に記載のアンモニアの精製方法。
【請求項5】
前記分縮工程では、前記吸着除去工程で不純物が吸着除去されたアンモニアの70〜99体積%を凝縮して気相成分と液相成分とに分離することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のアンモニアの精製方法。
【請求項6】
前記分縮工程では、前記吸着除去工程で不純物が吸着除去されたアンモニアを、−77〜50℃の温度下で凝縮して気相成分と液相成分とに分離することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のアンモニアの精製方法。
【請求項7】
不純物が含まれる粗アンモニアを精製するアンモニア精製システムであって、
粗アンモニアに含まれる不純物を、水分および炭化水素に対する吸着能を単独で有する吸着剤により吸着除去する吸着手段と、
前記吸着手段により不純物が吸着除去されたアンモニアを分縮して気相成分と液相成分とに分離することで、水素、窒素、酸素、アルゴン、一酸化炭素、二酸化炭素、および炭素数1〜8の炭化水素を気相成分として分離除去し、液相成分として液体アンモニアを得る分縮手段と、を含むことを特徴とするアンモニア精製システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−47169(P2013−47169A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−3602(P2012−3602)
【出願日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】