説明

イオントフォレシスにより悪心および片頭痛を治療するための方法

イオントフォレシスによりトリプタン化合物を投与することにより悪心および片頭痛を治療する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオントフォレシスによりトリプタン化合物を投与することにより、悪心および頭痛を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願
本出願は、米国仮出願第61/232,617号(2009年8月10日出願)、米国仮出願第61/256,796号(2009年10月30日出願)、および米国仮出願第61/358,300号(2010年6月24日出願)の利益およびそれらに対する優先権を主張する。これらの仮出願のそれぞれは、この参照によりその全体が本明細書中に組み入れられる。
【0003】
背景
片頭痛は、米国国内で約2千800万人が罹患している症状であり、男性よりも女性がより高頻度で罹患する(Silberstein, Neurology, 2000 55:754-63)。片頭痛は、痛みを伴う頭蓋血管拡張に関連し、典型的には、中等度または重度の片側性拍動性疼痛として現れ、身体活動により悪化し、通常は4〜72時間続く。頭痛に加えて、片頭痛は、悪心、嘔吐、音声恐怖症および羞明をはじめとする様々な他の症状を伴う場合がある(Lawrence, Southern Medical Journal, 2004, 97(11):1069-77)。片頭痛患者の約20%が片頭痛前兆(aura)を経験し、これは典型的には、光点、ジグザグの線または視覚のグレイアウトなどの視覚症状を含む。片頭痛は、ストレス、食餌/食品、日程のシフト、身体リズム、睡眠パターン、気候/大気圧の変化、高度の変化およびホルモン変化をはじめとする様々な要因により引き起こされる場合がある。
【0004】
軽度の片頭痛は、ときには、アスピリン、アセトアミノフェン、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)およびカフェイン含有併用製品などの市販薬で処置されている。トリプタンは、片頭痛の80%までを2時間以内に軽減することができる(Scholpp et al, Cephalalgia, 2004, 24:925-33)。7種類の異なるトリプタンが承認されており、現在は販売され、経口剤、可溶剤、鼻内スプレー剤および注射剤などの様々な製剤として米国で入手可能である。
【0005】
スマトリプタンは、成人での前兆を伴うか伴わない片頭痛発作の急性治療に適応である。スマトリプタンは、血管型5-ヒドロキシトリプタミン1D(5-HT1D)受容体サブタイプ(5-HT1ファミリーのメンバー)に対するセロトニンアゴニストであり、片頭痛でのその治療活性は、一般的には、このアゴニスト活性によるものである。現在では、スマトリプタンは、経口剤、注射剤および鼻内用製剤の3種類の製剤として入手可能である。スマトリプタン錠剤の経口投与は、典型的には忍容性が高いが、経口投与は、部分的には変化しやすい前全身性肝代謝による、一貫性のないバイオアベイラビリティおよび有効性を示す。注射用スマトリプタンは迅速に作用する場合があるが、寿命も短い。スマトリプタン鼻内スプレー剤は注射用剤形よりも変化が大きく、一部の患者は耐えられない副作用(例えば、苦味)を伴う。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、少なくとも部分的には、心血管系症状(例えば、トリプタンの注射による送達に通常伴う症状)なしに、また片頭痛に伴う吸収低下(例えば、片頭痛の最中のトリプタンの経口送達に通常伴う)もなしに、トリプタン化合物のイオントフォレシスによる送達により、片頭痛を有する被験者において、悪心および頭痛を治療することができるという知見に基づく。
【0007】
一部の態様では、本発明は、被験体に有効量のトリプタン化合物をイオントフォレシスにより投与することにより、心血管系副作用なしに悪心が治療されるように、片頭痛に見舞われた被験体の悪心を治療する方法を提供する。
【0008】
一部の実施形態では、悪心は、被験体で、少なくとも約50%、例えば少なくとも約75%軽減される。一部の実施形態では、悪心は、片頭痛に伴う吸収低下なしに治療される。一部の実施形態では、被験体で、片頭痛が停止する。一部の実施形態では、トリプタンの副作用なしに悪心が治療される。一部の実施形態では、悪心が少なくとも2時間治療される。一部の実施形態では、片頭痛が少なくとも2時間治療される。
【0009】
一部の実施形態では、被験体は、疼痛重症度スコア2または3の片頭痛に見舞われている。一部の実施形態では、被験体の頭痛スコアは、約3のスコアから約2、約1、または約0のスコアに低下する。一部の実施形態では、被験体の頭痛スコアは、約2のスコアから約1、または約0のスコアに低下する。
【0010】
一部の実施形態では、被験体はヒトである。一部の実施形態では、被験体は、片頭痛により引き起こされた悪心または嘔吐に見舞われている。一部の実施形態では、被験体は、前駆片頭痛症状に見舞われており、その前駆片頭痛症状が治療される。一部の実施形態では、被験体は片頭痛前兆に見舞われており、その片頭痛前兆が治療される。
【0011】
一部の実施形態では、トリプタン化合物は、スマトリプタンまたは製薬上許容されるその塩である。
一部の実施形態では、トリプタン化合物をイオントフォレシスにより投与するステップは、中等度もしくは最小限の紅斑を生じさせるか、または紅斑を生じさせない電流を含む。
【0012】
一部の実施形態では、トリプタン化合物は、以下の相を含む二相様式で、イオントフォレシスにより投与される:
第一相:約4mAの電流を用いて約1時間、トリプタン化合物が投与される;および
第二相:約2mAの電流を用いて約3時間、トリプタン化合物が投与される。
【0013】
一部の実施形態では、電流は、被験体の皮膚を実質的に刺激しない。一部の実施形態では、電流は、パッチ除去直後に、2.5を超える、2.0を超える、1.5を超える、または1.0を超える皮膚紅斑スコアをもたらさない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】t=0から片頭痛の最中および無片頭痛期に投与されたスマトリプタン(50mg)または研究用イオントフォレシスパッチ投与12時間後での、すべての被験者の平均スマトリプタンレベル(ng/mL)を表すグラフである。
【図2】t=0から片頭痛の最中および無片頭痛期に投与されたスマトリプタン(50mg)または研究用イオントフォレシスパッチ投与12時間後での、片頭痛効果を示す被験体の平均スマトリプタンレベル(ng/mL)を表すグラフである。
【図3】直線スケールで治療および期間についてPK評価可能被験者(N=18)の平均スマトリプタン(95%CI)血漿濃度-時間プロフィールを表すグラフである。
【図4】片対数スケールで治療および期間についてPK評価可能被験者(N=18)の平均スマトリプタン(95%CI)血漿濃度-時間プロフィールを表すグラフである。
【図5】直線スケールで治療および期間について経口スマトリプタン治療後に片頭痛効果を有したPK評価可能被験者(N=7)の平均スマトリプタン(95%CI)血漿濃度-時間プロフィールを表すグラフである。
【図6】直線スケールで治療および期間について経口スマトリプタン治療後に片頭痛効果を有しなかったPK評価可能被験者(N=11)の平均スマトリプタン(95%CI)血漿濃度-時間プロフィールを表すグラフである。
【図7】図7A〜Dは、パッチ活性化後1時間または2時間で、頭痛軽減(A)、悪心の消失(B)、羞明の消失(C)、および音声恐怖症の消失(D)を経験した、ベースラインでは悪心を有した被験者の割合(%)を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
全米頭痛財団(National Headache Foundation)によると、片頭痛罹患者の55%が、片頭痛発作の一部として悪心を経験する場合がある。これにより、多くの場合、被験体は治療を遅延させるか、変更するか、または中断する。治療の副作用についての不安も、片頭痛発作の3分の1超で患者が治療を遅延、変更、または中断することにつながる。さらに、特に被験体が片頭痛に見舞われている際に、多くの患者が一貫しない症状の軽減を経験し、これは、部分的には、経口薬物吸収の大幅な変動に起因し得る。本発明は、少なくとも部分的には、トリプタン化合物のイオントフォレシスによる送達が、トリプタンの注射による送達に通常伴う心血管系症状なしに、また片頭痛の最中のトリプタンの経口送達に通常伴う片頭痛に伴う吸収低下もなしに、例えば、悪心、頭痛等に見舞われた被験体などの被験体を治療することができるという知見に基づく。いかなる特定の理論にも拘泥することを望まないが、本明細書中に記載されるイオントフォレシスによる投与は、片頭痛を治療できるだけでなく、片頭痛に見舞われた被験体での悪心の開始もしくは進行を阻害することもでき(例えば、丸薬を飲み下す必要性を排除することにより)、片頭痛罹患者での悪心を肯定的に軽減させ、かつ/または治療することさえできると考えられる。
【0016】
定義
特許請求の範囲の対象をより明確かつ正確に記述するために、本明細書中で参照される定義は、本明細書中で用いられる用語の意味についてのガイダンスを提供するものと意図される。
【0017】
本明細書中で用いる場合、「a」および「an」との冠詞は、特に記載しない限り、「1以上」または「少なくとも1」を意味する。つまり、不定冠詞「a」または「an」による本発明のいずれかの要素に対する参照は、2以上の要素が存在する可能性を排除しない。
【0018】
本明細書中で用いる場合、「イオントフォレシスによる」または「イオントフォレシスの」との用語は、イオントフォレシスデバイス(例えば、パッチ)から被験体の皮膚を通したトリプタン化合物(例えば、スマトリプタン)の吸収を、電流を用いて促進させる投与の方法を含む。
【0019】
イオントフォレシスは、非侵襲的薬物送達法であり、電流を用いて、溶解した薬物を、皮膚を通して下層の組織に移動させる。この技術は、典型的には、2つの電極と、各電極の上部に配置され、一方が薬物化合物を含み(例えば、アノード)、他方が塩溶液を含む(例えば、カソード)パッドまたは容器を使用する。電極間の低電圧の印加により、電極から離れて皮膚を通り、組織に入るイオン化した薬物の移動がもたらされる。皮膚に輸送される薬物の量は、送達される総電流に比例し、薬物イオンの分子量、薬物濃度および緩衝剤濃度をはじめとする多数の基準に依存する。総電流は、典型的には、ミリアンペア分(mA分)の単位で表わされる。
【0020】
イオントフォレシスは非侵襲的なプロセスであるので、皮膚の機械的貫通または破壊は生じない。イオントフォレシスを用いれば、治療薬レベルを、注射を行なわずに非経口的に送達することができる。薬物送達の速度および量は正確に制御することができ、それにより、例えば予めプログラミングされた様式で、用量を自動的に送達することができる。つまり、治療薬レベルを、特定の期間にわたって分断して送達することができる。イオントフォレシス法による有害事象としては、局所的紅斑、刺激および掻痒が挙げられる。これらの事象が生じる程度は、総電流ならびに送達される薬剤の具体的な性質に依存する。
【0021】
「イオントフォレシスパッチ」または「イオントフォレシス経皮パッチ」との用語は、被験体の皮膚を通したトリプタン化合物のイオントフォレシス投与を可能にするデバイスを含む。一実施形態において、パッチは、電気的要素、トリプタン化合物および接着性裏当て層を含むものである。さらなる実施形態において、イオントフォレシスパッチは別の制御装置または電源を必要としない集積デバイス、例えば、装着可能な自己充足型デバイスであり得る。別のさらなる実施形態において、本発明のイオントフォレシスパッチは、集積されておらず、例えば、別の制御装置、電源などを必要とし、必ずしも装着可能でなくてもよい。イオントフォレシスパッチの例は、米国特許出願公開第2009/00318847号、同第2009/0031745号および同第2008/0287497号、ならびに米国特許第6,745,071号に見出すことができる。上記のそれぞれの内容が、参照により本明細書中に組み入れられる。
【0022】
「治療する」または「治療」との用語は、一般的に、被験体への治療剤(例えば、トリプタン化合物)のイオントフォレシスによる投与を意味する。被験体は、一般的に、疾患もしくは障害(例えば、片頭痛)、疾患もしくは障害の症状または疾患もしくは障害の素因を有する。治療の目的は、一般的に、そのような疾患、障害、症状または素因を、癒す、治す、緩和する、軽減する、救済する、向上させる、または改善することである。本明細書中で用いる場合、「治療される」とは、疾患または障害が、癒される、治される、緩和される、軽減される、救済される、向上させられる、または改善されることを意味する。「治療する」、「治療される」、「治療すること」または「治療」との用語は、片頭痛の1以上の症状の軽減もしくは改善および/または悪心の軽減もしくは改善を含む。片頭痛および/または悪心の発症または再発の予防も含まれる。
【0023】
本明細書中で用いる場合、「片頭痛」との用語は、前兆を伴うか伴わない片頭痛、脳底型片頭痛、片麻痺性片頭痛、発作性片頭痛(例えば、1ヵ月当たり約15回未満生じるもの)および慢性片頭痛(例えば、1ヵ月当たり約15回超生じるもの)を含む。本明細書中で用いる場合、「片頭痛」との用語は、以下のうち1以上の誘発因子により引き起こされる片頭痛を含む:ホルモン変化、食品、ストレス、感覚刺激、起床/睡眠パターンの変化、気候および大気圧変化、物理的要因または薬物治療。
【0024】
本明細書中で用いる場合、「片頭痛を停止させること」との用語は、被験体が片頭痛に侵され始めた後に、片頭痛の1以上の症状を抑えるかまたは実質的に消失させることを含む。
【0025】
本明細書中で用いる場合、「前駆片頭痛症状」との用語は、通常は片頭痛に数時間または数日先立ち、片頭痛患者の約40〜60%で生じる症状を含む。前駆片頭痛症状としては、限定するものではないが、例えば、気分の変化、易刺激性、抑うつまたは多幸感、倦怠感、欠伸、過剰睡眠、一部の食品に対する欲求、肩凝り、腸管不調(例えば、便秘または下痢)および排尿増加が挙げられる。
【0026】
本明細書中で用いる場合、「片頭痛前兆」との用語は、片頭痛に先立つかまたは伴う、限局性神経学的現象を含む。「片頭痛前兆」との用語は、視覚的前兆(例えば、光視症、閃輝暗点、視界のぼけ、視野狭窄および半盲)、体性感覚的前兆(例えば、舌感覚異常または手掌口感覚障害(digiolingual or cheiroral paresthesia))、聴覚性または嗅覚性幻覚、一過性不全失語症、めまい、顔および四肢の刺痛またはしびれならびに接触に対する過敏性を含む。
【0027】
本明細書中で用いる場合、「被験体」との用語は、片頭痛(片頭痛誘発性嘔吐または悪心を伴うか伴わない)、片頭痛前兆または前駆片頭痛症状を有することが可能な生存生物(例えば、哺乳動物)を含む。被験体の例としては、ヒト、ブタ、霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ラットおよびマウスが挙げられる。
【0028】
本明細書中で用いる場合、「トリプタン化合物」とは、片頭痛および群発頭痛の治療での予防的薬物治療として用いられるトリプタミン系薬物のファミリーのメンバーを意味する。一部の実施形態では、トリプタン化合物としては、例えば、以下の式(1)の化合物が挙げられる:
【化1】

【0029】
[式中、
R1はC1〜2アルキルであり、
R2の各出現はHであり、
R3はHであり、
任意によりR1とR2とはC2〜4アルキレン基により連結されて、コアに窒素を含む複素環を形成してもよく;
任意によりR2とR3とはC2〜4アルキレン基により連結されて環状基を形成してもよく;
R4は、アミド置換C1〜4アルキル、N-メチルアミド、N,N-ジメチルアミド、スルホンアミド、N-メチルスルホンアミド、N,N-ジメチルスルホンアミド、ピロリジニルスルホニル、ベンジルスルホニル、C1〜4アルキルスルホニル、トリアゾリル、ピラゾリル、ピロリル、オキサゾリジノニル、オキサゾリルまたはオキサゾリジニルから選択される]。
【0030】
本明細書中で用いる場合、「トリプタン化合物」との用語は、例えば、スマトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、アルモトリプタンおよびフロバトリプタンを含む。
【化2】

【0031】
トリプタン化合物との用語は、上記化合物の誘導体、アナログ、プロドラッグおよび製薬上許容される塩も含む。一実施形態では、トリプタン化合物は、スマトリプタンまたはその製薬上許容されるその塩である。
【0032】
本明細書中で用いる場合、「有効量」との用語は、所望の効果を達成するために必要なトリプタン化合物の量を意味する。「所望の効果」との用語は、一般的に、本明細書中に記載される化合物を被験体に投与した場合に、当業者が予測するいずれかの結果を意味する。「有効量」との用語は、片頭痛に見舞われた被験体での悪心を治療するのに有効なトリプタン化合物の量を含む。「有効量」との用語は、例えば、片頭痛に見舞われた被験体での、片頭痛を治療するために、悪心を治療するために、かつ/または片頭痛を停止させるために有効なトリプタン化合物の量も含むことができる。「有効量」との用語はさらに、前駆片頭痛症状または片頭痛前兆に見舞われた被験体を治療するために有効なトリプタン化合物の量も含むことができる。
【0033】
一部の態様では、本発明は、有効量のトリプタン化合物を被験体にイオントフォレシスにより投与することによる、片頭痛に見舞われた被験体の悪心を治療する方法を提供する。
【0034】
他の態様では、本発明は、被験体に有効量のトリプタン化合物をイオントフォレシスにより投与することによる、片頭痛に見舞われた被験体の悪心および頭痛を治療する方法を提供する。
【0035】
一部の実施形態では、本発明の方法は、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約12時間、少なくとも約14時間、少なくとも約16時間、少なくとも約18時間、少なくとも約20時間、少なくとも約22時間、または少なくとも約24時間、片頭痛または悪心の治療(例えば、頭痛軽減または悪心軽減)を提供する。一部の実施形態では、本発明の方法は、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約12時間、少なくとも約14時間、少なくとも約16時間、少なくとも約18時間、少なくとも約20時間、少なくとも約22時間、または少なくとも約24時間、片頭痛および悪心の治療(例えば、頭痛軽減および悪心軽減)を提供する。一部の実施形態では、本発明の方法は、少なくとも約2時間、片頭痛および悪心の治療(例えば、頭痛軽減および悪心軽減)を提供する。
【0036】
一部の実施形態では、悪心は、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%または約100%さえも低減する。一部の実施形態では、悪心は、約50%低減する。一部の実施形態では、悪心は、約75%低減する。一部の実施形態では、悪心は、約100%低減する。悪心の低減は、例えば、トリプタン化合物の投与前に経験された悪心と比較することができる。
【0037】
一部の実施形態では、被験体に投与されるトリプタン化合物は、スマトリプタンまたは製薬上許容されるその塩(例えば、コハク酸スマトリプタン)である。
【0038】
トリプタンの投与(例えば、スマトリプタンの静脈内投与)は、多数の望ましくない副作用を引き起こす場合がある。そのような副作用としては、限定するものではないが、動悸、血圧変化、副鼻腔炎、耳鳴り、アレルギー性鼻炎、上気道炎症、耳・鼻・喉出血、外耳炎、聴力低下、鼻炎、雑音過敏症、強膜炎(sclera)、散瞳、失明および視力低下、視覚障害、眼の浮腫および眼球腫脹、眼の炎症およびかゆみ、調節障害、外眼筋障害、眼の出血、眼痛、角膜炎、結膜炎、下痢、胃症状、貧血、筋肉痛、音声恐怖症、羞明、消化不良(dyspepnea)、過敏症、冠動脈攣縮、心筋梗塞、心室頻脈および心室細動が挙げられる。いかなる特定の理論にも拘泥することを望まないが、本発明は、トリプタンの副作用を最小限に抑えながら悪心および/または片頭痛の有効な治療を可能にする、トリプタン化合物の投与手段を提供すると考えられる。一部の実施形態では、本発明は、トリプタンの副作用なしに、悪心および/または片頭痛を治療するための方法を提供する。本明細書中で用いる場合、「トリプタンの副作用」との用語は、トリプタン化合物を投与された被験体が経験する副作用を意味し、直前で述べたものが挙げられる。一部の実施形態では、被験体は、スマトリプタンの静脈内投与を受けた被験体が見舞われる副作用と同程度の副作用に見舞われない。
【0039】
トリプタンの投与(例えば、スマトリプタンの静脈内投与)は、心血管系副作用を引き起こす場合がある。そのような副作用としては、例えば、動悸、失神、血圧変化、不整脈、ECGの変化、高血圧、低血圧、蒼白、拍動感覚、頻脈が挙げられ、より稀なケースでは、狭心症、アテローム性動脈硬化、徐脈、脳虚血、脳血管病変、心ブロック、末梢性チアノーゼ、血栓症、一過性心筋虚血、および血管拡張が挙げられる。いかなる特定の理論にも拘泥することを望まないが、本発明は、心血管系副作用を最小限に抑えながら悪心および/または片頭痛の有効な治療を可能にする、トリプタン化合物の投与手段を提供すると考えられる。一部の実施形態では、本明細書中で提供される方法を利用するトリプタン化合物の投与は、心血管系副作用を引き起こさない。本明細書中で用いる場合、「心血管系副作用」との用語は、静脈内スマトリプタンを投与された被験体が経験する心血管系副作用を意味し、直前で述べたものが挙げられる。一部の実施形態では、本発明は、心血管系副作用なしに、悪心および/または片頭痛の軽減をもたらす。
【0040】
一部の実施形態では、本発明は、心血管系副作用に感受性の被験体での悪心および/または片頭痛を治療する方法を提供する。いかなる特定の理論にも拘泥することを望まないが、片頭痛罹患者の一部の部分集団は、心血管系副作用に感受性であると考えられる(例えば、トリプタン化合物を静脈内投与した場合)。本明細書中に記載されるイオントフォレシスによる方法は、悪心および/または他の片頭痛症状が心血管系副作用なしに治療されるように、心血管系副作用に感受性の被験体での悪心および/または他の片頭痛症状を治療することができる。
【0041】
本発明の方法は、AUC0-infが全身投与、経口投与または鼻内投与などの他の投与剤形のものと同等であり、Cmaxがかなり低下するか失われるように、トリプタン化合物を投与することを可能にする。このようにすることにより、全身送達されるトリプタン化合物の量は他の方法と同等であり得るが、濃度スパイクは著明に減少する。つまり、一部の実施形態では、本発明の方法は、スマトリプタンの有効量を提供し、それにより濃度スパイクまたはバーストを最小限に抑えるかまたは防止しながら片頭痛および/または悪心が治療され、副作用(例えば、本明細書中に記載されたもの)も、最小限に抑えられるかまたは防止される。本発明の方法の別の利点は、一般的に、被験者体内のトリプタン化合物の濃度が、投与開始後1時間未満で治療的レベルに到達することである。さらに、トリプタン化合物の治療的レベルは、所望の長さの時間(例えば、4〜5時間)、維持することができる。
【0042】
他の実施形態では、本発明は、片頭痛を有する被験体の片頭痛を停止させる方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、被験体に有効量のトリプタン化合物をイオントフォレシスにより投与することにより、前駆片頭痛症状に見舞われた被験体を治療する方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、被験体に有効量のトリプタン化合物をイオントフォレシスにより投与するステップを含む、片頭痛前兆に見舞われた被験体を治療する方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、片頭痛を有する被験体での頭痛を軽減する方法を提供する。
【0043】
被験体は、本明細書中に記載されたもののうちいずれかであり得る。一実施形態では、被験体はヒトである。さらなる実施形態では、被験体は、片頭痛(片頭痛誘発性嘔吐または悪心を伴うか伴わない)、片頭痛前兆または前駆片頭痛症状に見舞われている場合がある。他の実施形態では、被験体は、片頭痛誘発性であってもそうでなくてもよい悪心または嘔吐に見舞われている。また別の実施形態では、片頭痛に見舞われた被験体は、疼痛重症度スコア2または3を有する(下記表1を参照されたい)。さらに他の実施形態では、被験体の疼痛重症度スコアは、本明細書中に記載されるイオントフォレシスによる投与後に、約3から約2に、約1に、または約0のスコアに低下する。他の実施形態では、被験体の疼痛重症度スコアは、本明細書中に記載されるイオントフォレシスによる投与後に、約2から約1に、または約0のスコアに低下する。さらなる実施形態では、被験体は、片頭痛(嘔吐または悪心を伴うか伴わない)、前駆片頭痛症状または片頭痛前兆に罹患した既往歴を有する。一部の実施形態では、被験体は、心血管系副作用または片頭痛効果に感受性である。
【0044】
本発明の方法は、経口送達または鼻内送達と比較して、本発明では薬物動態学的パラメータの変動が少ないので、トリプタン化合物の経口投与および/または鼻内投与よりも有利であり得る。例えば、スマトリプタンの経口送達と比較して、スマトリプタンをイオントフォレシスにより投与した後の被験体間の分散の量は、スマトリプタンを経口投与した後の被験体間の分散の量のほんの一部である。さらに、これもまたスマトリプタンの経口送達と比較して、単独の被験体でのスマトリプタンのイオントフォレシスによる個別の投与間の分散の量は、単独の被験体へのスマトリプタンの個別の経口投与間の分散の量のほんの一部である。
【0045】
一部の実施形態では、本発明の方法は、片頭痛に伴う吸収低下のない、悪心および/または片頭痛の治療を提供する。本明細書中で用いる場合、「片頭痛に伴う吸収低下」との用語(本明細書中で「片頭痛効果」とも称される場合がある)は、無片頭痛期の被験体の血漿中への薬物の吸収量と比較した、片頭痛(片頭痛誘発性嘔吐または悪心を伴うか伴わない)に見舞われた被験体の血漿中への薬物(例えば、トリプタン化合物)の吸収量の低下を意味する。一実施形態では、片頭痛に伴う吸収低下は、スマトリプタンの吸収量の低下である。一実施形態では、片頭痛に伴う吸収低下は、経口投与されたスマトリプタンの吸収量の低下である。いかなる特定の理論にも拘泥することを望まないが、片頭痛に伴う吸収低下は、少なくとも部分的には、消化管が薬物(例えば、スマトリプタン)を吸収する能力に対する片頭痛の影響に起因し得ると考えられる。
【0046】
一部の実施形態では、本発明は、片頭痛に伴う吸収低下に感受性の被験体での悪心および/または片頭痛を治療する方法を提供する。いかなる特定の理論にも拘泥することを望まないが、片頭痛罹患者の一部の部分集団は、片頭痛に伴う吸収低下に感受性であると考えられる(例えば、トリプタン化合物を経口投与した場合)。本明細書中に記載されるイオントフォレシスによる方法は、悪心および/または他の片頭痛症状が片頭痛に伴う吸収低下なしに治療されるように、片頭痛に伴う吸収低下に感受性の被験体での悪心および/または他の片頭痛症状を治療することができる。
【0047】
一部の実施形態では、イオントフォレシスにより投与されたトリプタン化合物は、治療上有効量のトリプタン化合物の経口投与(例えば、50mg経口用量のスマトリプタン)に際する被験体でのトリプタン血漿レベルと比較して、投与後の被験体で、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%または約40%高いトリプタン血漿レベル(例えば、Cmax)をもたらす。一部の実施形態では、イオントフォレシスにより投与された6mgのスマトリプタンは、50mgのスマトリプタンの経口投与に際する被験体でのスマトリプタン血漿レベルと比較して、投与後の被験体で約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%または約40%高いスマトリプタン血漿レベルをもたらす。
【0048】
一部の実施形態では、有効量のトリプタン化合物を、イオントフォレシスにより投与する。一実施形態では、有効量は、約6mgのトリプタン化合物(例えば、スマトリプタン)である。つまり、一部の実施形態では、トリプタン化合物のイオントフォレシスによる投与のための方法は、被験体に約6mgのトリプタン化合物を供給する。別の実施形態では、スマトリプタンの有効量は、約5mg超、約10mg超、または約15mg超である。例えば、一部の実施形態では、有効量は、イオントフォレシスパッチ当たり約6mgのトリプタン化合物である。一実施形態では、有効量のトリプタン化合物は、片頭痛を治療するのに有効である。一実施形態では、有効量のトリプタン化合物は、悪心を治療するのに有効である。一部の実施形態では、有効量のスマトリプタンは、被験体の血液または血漿中で、約10ng/mL以上、約11ng/mL以上、約12ng/mL以上、約13ng/mL以上、約14ng/mL以上、約15ng/mL以上、約16ng/mL以上、約17ng/mL以上、約18ng/mL以上、約19ng/mL以上、約20ng/mL以上、約21ng/mL以上、約22ng/mL以上、または約22.5ng/mL以上の濃度をもたらす。さらなる実施形態では、有効量のスマトリプタンは、被験体の血漿中で約10〜約25ng/mLをもたらす。
【0049】
一部の実施形態では、有効量のトリプタン化合物のイオントフォレシスによる投与は、約20ng/mLのCmaxおよび約2時間のTmaxをもたらす。「Cmax」および「Tmax」との用語は、それぞれ、最大観測薬物濃度およびT0から最大薬物濃度までの時間として定義される薬物動態学的パラメータである。他の実施形態では、有効量のトリプタン化合物のイオントフォレシスによる投与は、約98〜約103hr*ng/mLのAUC0-12をもたらす。「AUC0-12」との用語は、直線台形公式を用いて算出される、0時点から12時間までの濃度-時間曲線下面積として定義される薬物動態学的パラメータである。
【0050】
また他の実施形態では、有効量のトリプタン化合物のイオントフォレシスによる投与は、投与後1時間の前から開始し、投与後約4.5〜約5時間(例えば、約4.7時間)続く、10ng/mL超または約10ng/mLの定常状態トリプタン血漿レベルをもたらす。本明細書中で用いる場合、「定常状態」との用語は、トリプタン化合物の投与速度が、被験体体内からのトリプタン化合物の排除速度と実質的にほぼ同等である速度として定義される。「トリプタン血漿レベル」または「トリプタン血漿濃度」との用語は、被験体の血漿中のトリプタン化合物の濃度を含む。一実施形態では、「トリプタン血漿レベル」および「トリプタン血漿濃度」との用語は、スマトリプタン血漿レベルおよびスマトリプタン血漿濃度を含む。
【0051】
一部の実施形態では、イオントフォレシスにより投与されたトリプタン化合物のAUC0-4(例えば、直線台形公式を用いて算出された、0時点から4時間の濃度-時間曲線下面積)またはCmaxは、有効量で経口投与されたトリプタン化合物(例えば、50mgまたは100mg経口スマトリプタン)のAUC0-4またはCmaxと実質的にほぼ同じである。
【0052】
一部の実施形態では、被験体のトリプタン血漿濃度は、トリプタン化合物のイオントフォレシスによる投与後1時間以内に約10〜約20ng/mLに達し、トリプタン化合物のイオントフォレシスによる投与後少なくとも3時間、約10〜約20ng/mLで維持される。他の実施形態では、被験体のトリプタン血漿濃度は、トリプタン化合物のイオントフォレシスによる投与約1時間後に約15〜約20ng/mL(例えば、約17ng/mL)である。また他の実施形態では、被験体のトリプタン血漿濃度は、トリプタン化合物のイオントフォレシスによる投与約2時間後に約10〜約15ng/mL(例えば、約14ng/mLまたは約15ng/mL)である。さらに他の実施形態では、被験体のトリプタン血漿濃度は、トリプタン化合物のイオントフォレシスによる投与約3時間後に約15〜約20ng/mL(例えば、約15ng/mLまたは約16ng/mL)である。また他の実施形態では、被験体のトリプタン血漿濃度は、トリプタン化合物のイオントフォレシスによる投与約4時間後に約15〜約20ng/mL(例えば、約16ng/mLまたは約19ng/mL)である。
【0053】
一部の実施形態では、トリプタン化合物は、二相様式でイオントフォレシスにより投与される。一部の実施形態では、二相様式は、約30分〜約2時間、約30分〜約90分、または約1時間続く第一相を含む。一部の実施形態では、第一相は、約3.5mA〜約4.5mA、約3.75mA〜約4.25mA、約4.0mAの電流を用いる。一部の実施形態では、二相様式は、約2時間〜約6時間、約2時間〜約5時間、約2時間〜約4時間、または約3時間続く第二相を含む。一部の実施形態では、第二相は、約1.5〜約2.5mA(例えば、約2mA)の電流を用いる。別の実施形態では、トリプタン化合物は、第一相(約4mAの電流を用いて約1時間、トリプタン化合物が投与される);および第二相(約2mAの電流を用いて約3時間、トリプタン化合物が投与される)においてイオントフォレシスにより投与される。
【0054】
他の実施形態では、提供される方法で選択した電流は、被験体の皮膚を実質的に刺激しない。本明細書中で用いる場合、「被験体の皮膚を実質的に刺激しない」との用語は、パッチ除去の際に、約2.5以下、約2.0以下、約1.5以下または約1.0以下の皮膚紅斑スコアをもたらすことを含む。一実施形態では、パッチ除去の2時間以内に、皮膚紅斑スコアが約2.5以下、約2.0以下、約1.5以下、または約1.0以下である場合、電流は「被験体の皮膚を実質的に刺激しない」。別の実施形態では、パッチ除去の直後に、皮膚紅斑スコアが約2.5以下、約2.0以下、約1.5以下、または1.0以下である場合、電流は「被験体の皮膚を実質的に刺激しない」。皮膚紅斑スコアは、下記の表2に見出すことができる。つまり、一部の実施形態では、本発明の方法は、中等度もしくは最小限の紅斑を生じさせるか、または紅斑を生じさせない電流を用いる。一部の実施形態では、本発明の方法は、紅斑を生じさせないか、または最小限の紅斑を生じさせる電流を用いる。一部の実施形態では、本発明の方法は、患者集団の85%超(例えば、86%超、87%超、88%超、89%超、90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、95%超、96%超、97%超、98%超、99%超)で紅斑を生じさせないか、または最小限の紅斑を生じさせる電流を用いる。
【0055】
他の実施形態では、電流は、パッチ除去の直後に、約2.5超、約2.0超、約1.5超または約1.0超の皮膚紅斑スコアをもたらさない。一部の実施形態では、電流は、中等度もしくは最小限の紅斑を生じさせるか、または紅斑を生じさせない。一部の実施形態では、電流は、最小限の紅斑を生じさせるか、または紅斑を生じさせない。
【実施例】
【0056】
本発明の例示
本発明の方法は、以下の実施例によってさらに理解することができる。しかしながら、これらの実施例が本発明を限定しないことが理解されるであろう。現在既知またはさらに開発された本発明の変形が、本明細書中に記載され、本明細書中以下で特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内に入るとみなされる。
【0057】
実施例1:急性片頭痛発作中および非片頭痛期中の片頭痛被験者でのスマトリプタンイオントフォレシス経皮パッチとイミトレックス(登録商標)(50mg)の経口用製剤の薬物動態を比較するフェーズI非盲検単一用量4方向交差試験
目的:
本フェーズI試験の主目的は、急性片頭痛発作および非片頭痛期の両方の片頭痛被験者でのスマトリプタンイオントフォレシス経皮パッチと現在承認されているイミトレックス(登録商標)の製剤の薬物動態(PK)を比較することであった。
【0058】
方法/研究設計:
これは、フェーズI非盲検単一用量4方向交差試験であった。スクリーニング評価は、スクリーニング通院(第1期前)および再スクリーニング通院(第5期前)で行なった。
【0059】
第1期では、被験者は、片頭痛を経験したときに病院に来院した。第1期に適格であるには、表1に見出される被験者の頭痛重症度スコアを用いて、疼痛強度が中等度(スコア2)または重度(スコア3)であった。さらに、被験者は、片頭痛の発症の約4時間以内に病院に来院し、4時間前から食物またはアルコールを摂取しなかった。トリプタン、オピオイド、エルゴタミン、胃腸運動性に影響する薬物(すなわち、メトクロプラミド、制吐剤)は、来院の72時間以内は禁止された。
【表1】

【0060】
被験者が適格性基準を満たした場合、治療Aの投与(コハク酸スマトリプタン、RT TechnologyTM、イミトレックス(登録商標)錠剤:50mg経口摂取)およびそれに続くPKサンプル採取を受けた。最後のPKサンプルを取得した後、救済薬物治療が許された。
【0061】
第2期には、非片頭痛期の間に、被験者は病院に戻った。第2期に適格であるには、被験者は、頭痛または前兆を有してはならず、被験者の最後の片頭痛が、少なくとも来院72時間前に解消していなければならない。さらに、被験者は、臨床試験の前の少なくとも24時間、前駆症状を有さず、先行する4時間に食物またはアルコールを摂取しなかった。トリプタン、オピオイド、エルゴタミン、胃腸運動性に影響する薬物(すなわち、メトクロプラミド、制吐剤)は、来院の72時間以内は禁止された。
【0062】
被験者が追加の基準を満たした場合、治療Aの投与とそれに続くPKサンプル採取を受けた。
【0063】
第1期および第2期が完了し、経口スマトリプタン療法に関するデータを回収したら、第3期、第4期、第5期および第6期を開始した。これらの期間は、イオントフォレシススマトリプタン療法に関するデータを提供するために設計された。第3期および第4期では、研究用スマトリプタンイオントフォレシス経皮パッチは輸送中に凍結条件に曝露されていてもよい。第5期および第6期がプロトコールに追加され、第3期および第4期に参加したすべての被験者が、第3期および第4期の反復である第5期および第6期に参加することを要請された。
【0064】
第3期および第6期では、被験者は、片頭痛を経験したときに来院した。頭痛発症のタイミング、頭痛重症度、食物およびアルコール摂取ならびに投薬制限に関する追加の適格性基準(第1期を参照されたい)を満たした場合、被験者は、治療Bの投与(研究用スマトリプタンイオントフォレシス経皮パッチを腕に貼付し、4時間留置する)とそれに続くPKサンプル採取を受けた。パッチは、1時間の4mAとそれに続く3時間の2mA(合計600mA分)を用いて、約6mgのスマトリプタンを送達するように設計された。最後のPKサンプルを取得した後、救済薬物治療が許された。
【0065】
第4期および第5期では、非片頭痛期の間に、片頭痛症状の不在、食物およびアルコール摂取ならびに投薬制限に関する追加の適格性(第2期を参照されたい)を満たした場合、被験者は、治療Bの投与とそれに続くPKサンプル採取を受けた。
【0066】
第1期〜第4期に、PK解析のために規定の時点で15本の血液サンプルを取得した。第5期および第6期に、PK解析のために規定の時点で14本の血液サンプルを取得した。第3期、第4期、第5期および第6期で研究用パッチを装着しながら、研究スタッフによりパッチ接着性評価を行なった。
【0067】
第2期、第4期および第5期(非片頭痛期)に、24時間尿サンプルを回収した。
【0068】
第3期および第4期には、投与前、パッチ貼付4時間後(パッチ除去直後)、6、12、24、48および72時間後に、研究用パッチを用いた治療に続いて皮膚刺激検査を行なった。第5期および第6期には、投与前、パッチ貼付4時間後(パッチ除去直後)、6、12、48および72時間後に、研究用パッチを用いた治療に続いて皮膚刺激検査を行なった。72時間で紅斑が存在した場合、被験者は、追加の皮膚刺激検査のために7日(±1日)で病院に戻った。第10日の通院で紅斑が存在した場合、被験者は、皮膚刺激スコアが0になるまで、週1回通院した。
【0069】
皮膚刺激検査は、薬物貯留パッドの直下および塩貯留パッドの直下の皮膚の評価であった。皮膚刺激検査スケールを、表2に示す。
【表2】

【0070】
薬物動態血清サンプル:
血漿中スマトリプタン濃度の測定(MS/MS検出を用いた有効なHPLCにより分析した)のために、すべての治療について、PK解析のための血液サンプル(4mL/サンプル、第1〜4期それぞれについて合計60mL、第5期および第6期について28mL)を回収した。第1〜4期には、投与前(投与前15分以内)ならびに投与0.25、0.50、1、1.25、1.5、1.75、2、3、4、6、8、10、12および24時間後にサンプルを採取した。第5期および第6期には、投与24時間後のサンプルを除いた以外は、サンプルは同様であった。治療Aの投与タイミングは、経口用錠剤を飲み下したときに開始し、治療Bは、研究用パッチを貼付し、赤色LED灯が連続点灯したときに開始した。
【0071】
被験集団の選択:
試験対象基準
被験者は、以下の基準のすべてを満たしていなければならなかった:
1. スクリーニング時点で18〜65歳の成人男性および女性被験者。
2. 頭痛障害国際分類(第2版)1.1節および1.2.1節に定義されている片頭痛(前兆を有するか有しない)の診断を有する被験者であって、診断が50歳前になされた。
3. 被験者宣誓書に基づいて、被験者が、典型的には、片頭痛発作中に中等度(スコア2)または重度(スコア3)(表1を参照されたい)の頭痛を経験した(未治療の場合);これらの発作の大部分が悪心および嘔吐を伴った。
4. 被験者宣誓書に基づいて、被験者が、少なくとも1年の片頭痛の病歴を有した。
5. 医療履歴、身体検査、バイタルサイン、ECGおよび検査プロファイルの結果に基づいて、被験者が、良好な健康状態にあると判断された。登録適格であるために、被験者が、臨床的に意義がある異常な検査パラメータ、バイタルサインまたはECGパラメータを有しなかった。
6. 被験者は、英語またはスペイン語を読むことおよび理解することができ、すべての試験手順を実施することができ、かつ施設内治験審査委員会により承認されたインフォームドコンセント同意書に自発的に署名し、日付を書き込むことができた。
【0072】
7. 被験者が、薬物スクリーニング陰性であった。
8. 出産可能な女性被験者が、スクリーニング時に妊娠検査陰性であった。
9. 被験者が、比較的毛髪がなくかつ傷痕、入れ墨、擦過傷または打撲傷を有しない2箇所の許容できるパッチ貼付部位(左および/または右腕)を有した。
【0073】
試験製品、用量および投与様式:
試験製品(治療B)は、アノード貯留パッドおよびカソード貯留パッドを有する経皮パッチであり、合計600mA分を用いて4mAで1時間、続いて2mAで3時間の波形をつくり出す低電流を用いて、約6mgのスマトリプタンを送達した。
【0074】
薬物貯留パッド(アノード)製剤は3.0グラムのスマトリプタンゲル溶液(10%ポリアミンおよび4%コハク酸スマトリプタン)を含有し、これは120mgのコハク酸スマトリプタンを含有した。
【0075】
塩貯留パッド(カソード)製剤は、0.9%NaClを含む3.0グラムの2%ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)であった。
【0076】
本試験の6期すべてに参加することを要請された被験者は、4回の研究用パッチ貼付を受け、2回は急性片頭痛発作中、2回は非片頭痛期中であった。
【0077】
参照療法、用量および投与:
参照療法は治療Aであった(RT TechnologyTMイミトレックス(登録商標) 50mg経口用スマトリプタン錠剤の製剤1種類)であった。各被験者が参照療法の錠剤2個を投与された:1個は急性片頭痛中、1個は非片頭痛期に投与された。
【0078】
パッチ接着性評価:
パッチ接着性評価は、パッチ貼付1、2、3および4時間後に、各パッチ治療について行なった。4時間の評価は、パッチを除去する直前に行なった。表3は、本評価に使用されるパッチ接着性スコア付けコードをしめす。
【表3】

【0079】
評価のための薬物動態パラメータ:
以下のPKパラメータを、WinNonlinを用いた非コンパートメント法を用いて、実血漿濃度-時間データから算出した:AUC0-last、AUC0-inf、Cmax、Tmax、λZおよびt1/2。追加の予備的PKパラメータを推定し、これは、AUC0-2、AUC0-4、10ng/mLスマトリプタン血漿濃度を達成するための時間ならびにCmaxの70%、80%および90%を達成するための時間を含んでいた。24時間にわたって、変化せずに、または尿中スマトリプタン代謝物として尿中に排出された薬物の量および割合(%)は、非片頭痛期中の24時間尿回収データから算出した。
【0080】
薬物動態:
薬物動態(PK)解析のために2集団を準備した。第1のPK集団は、少なくとも1用量の試験薬物を投与され、必要なPKパラメータを誘導するための十分な血漿濃度-時間データを有したすべての被験者を含む全PK集団であった。第2のPK解析集団は、試験の全6期を完了した全PK集団中のすべての被験者を含むPK評価可能集団であった。PK評価可能集団は、研究用パッチ評価に対する一次集団であった。
【0081】
結果:
合計23名の被験者が、経口投与およびパッチ投与を完了した。23名の被験者が少なくとも1用量の経口スマトリプタン(治療A)を投与され、19名の被験者が少なくとも1回のイオントフォレシスパッチ貼付を受けた。試験治療を受けた23名の被験者全員が、安全性および薬物動態の解析に含められた。18名の被験者が第1期、第2期、第5期および第6期を完了し、したがって、治療および/または期間についての薬物動態学的パラメータを比較する解析に含められた。
【0082】
投与後12時間にわたる全被験者の平均スマトリプタン血漿レベル(ng/mL)を、図1に示す。
【0083】
PK評価可能被験者(すなわち、第1期、第2期、第5期および第6期に参加した被験者)についての平均血漿濃度-時間プロフィールおよび各時点での対応する95%信頼区間(CI)を、図3(直線スケール)および図4(片対数スケール)に示す。表4および表5は、第1期、第2期、第5期および第6期に対するこれらの被験者での薬物動態学的パラメータであるCmax、AUC0-4、AUC0-12、AUC0-inf、Tmax、t1/2、10ng/mLを超えた時間、ならびに10ng/mLを超えたAUCのまとめを提供する。
【表4】

【0084】
【表5】

【0085】
図1、3および4のデータは、研究用パッチによるスマトリプタンの投与についての被験者全員に対する平均スマトリプタン血漿レベルが、片頭痛中(第6期)ならびに無片頭痛期(第5期)での投与と同等であったことを示している。対照的に、無片頭痛期中(第2期)でのスマトリプタンの経口投与と比較した場合に、片頭痛発作中(第1期)でのスマトリプタンの経口投与後の最初の4時間での平均スマトリプタン血漿レベルには、約20%の減少が見られた。無片頭痛期と比較して、片頭痛発作中には、AUC0-4およびCmaxが約20%以上減少した。経口投与スマトリプタンでの平均スマトリプタン血漿レベルの差異は、「片頭痛効果」(例えば、吸収低下)の証拠であり得る。理論に拘泥するものではなく、一部の片頭痛患者は、おそらく部分的には片頭痛誘発性悪心または嘔吐によって、片頭痛発作中の(被験者が無頭痛または無片頭痛である場合と比較して)経口投与スマトリプタンの吸収低下を経験する場合がある。
【0086】
これらの被験者についての平均スマトリプタン血漿レベルを、図2および以下の表6に示す。
【表6】

【0087】
「片頭痛効果」を有した被験者についての薬物動態学的データは、以下の表7に見出される。さらに、経口スマトリプタン治療後に片頭痛効果を有しなかった被験者および経口スマトリプタン治療後に片頭痛効果を有した被験者についての平均血漿濃度-時間プロフィールを、それぞれ図5および図6に、期間について示す。
【表7】

【0088】
平均Tmax、t1/2、および10ng/mLを超えた血漿スマトリプタン濃度の時間は、経口スマトリプタン後またはパッチ後のいずれにおいても、片頭痛により影響を受けたようには見えなかった。経口投与後、10ng/mLを超えた平均AUCは、片頭痛期(37.7hr.ng/mL)と比較して、無片頭痛期中でいくぶんか高かった(53.1hr.ng/mL)。
【0089】
CmaxおよびAUC0-4に基づいて曝露比を比較することにより、曝露低下現象(例えば、吸収低下または片頭痛効果)をさらに定量化した。つまり、曝露比がCmax(Cmax(片頭痛)/Cmax(無片頭痛)<0.80)およびAUC0-4(AUC0-4(片頭痛)/AUC0-4(無片頭痛)<0.80)の両方について80%未満であった場合に、被験者は顕著な片頭痛効果を有するとみなされた。18名のPK評価可能被験者のうち、7名の被験者(39%)がこの定義を満たし、経口スマトリプタン治療後に顕著な片頭痛効果を有すると分類され、残る11名の被験者は経口スマトリプタン治療後に顕著な片頭痛効果を有しなかったと分類された。
【0090】
経口治療後の吸収に対する片頭痛効果が実証された7名の被験者では、非片頭痛期と比較して、片頭痛の間に平均Cmaxで48%の減少、平均AUC0-4で45%の減少、平均AUC0-12で39%の減少、および平均AUC0-infで38%の減少が見られた。10ng/mLを超えた平均時間もまた、無片頭痛期(5.1時間)と比較して片頭痛期(3.0時間)で減少していた。しかしながら、パッチ治療後(第5期および第6期)には、これらの被験者で、無片頭痛期と比較して片頭痛期について吸収における差異はなかった。10ng/mLを超えた平均時間は、第5期および第6期の間で、それぞれ4.6時間および4.3時間であった。
【0091】
経口スマトリプタン治療後の片頭痛効果が実証されなかった11名の被験者について、経口投与後またはNP101パッチ治療後のいずれにおいても、片頭痛期と無片頭痛期との間でCmaxおよびAUC値での明らかな差異はなかった。
【0092】
2名の被験者が、本発明の例示的パッチの投与後に片頭痛効果の定義を満たす曝露比を有していた。これらの被験者のいずれも、経口スマトリプタン投与に伴う片頭痛効果の基準を満たさなかった。残りの16名のPK評価可能被験者については、NP101治療後の無片頭痛期と比較して片頭痛期についての平均CmaxまたはAUC0-4での明らかな差異はなかった。
【0093】
本研究では、両方の試験治療が十分に忍容性であった。重度の有害事象はなかった。パッチ治療後に報告された唯一の有害事象は、8名(42.1%)の被験者での貼付部位状態であった。中等度の重症度であった貼付部位掻痒の2つの事象を除いて、これらの事象のすべてが、重症度は軽度であった。すべての事象は、パッチ除去後に消失した。表8に示した皮膚刺激評価は、パッチ貼付後12時間以内に、大多数の被験者で完全に解消された。
【表8】

【0094】
実施例2:急性片頭痛の治療でのスマトリプタンイオントフォレシス経皮パッチの有効性および忍容性:無作為化二重盲検プラセボ対照試験
目的:
本研究の主目的は、パッチ活性化2時間後に頭痛を有しない被験者の割合を評価することであった。しかしながら、重要な二次的目的は、パッチ活性化2時間後に悪心を有しない被験者の割合、パッチ活性化2時間後に羞明を有しない被験者の割合ならびにパッチ活性化2時間後に音声恐怖症を有しない被験者の割合を評価することである。
【0095】
他の二次的目的は、パッチ除去後の各時点で、頭痛を有しない被験者、頭痛の軽減を経験している被験者、悪心を有しない被験者、羞明を有しない被験者および音声恐怖症を有しない被験者の割合を評価することである。追加の二次的目的は、パッチ活性化2時間後に片頭痛を有しない(頭痛なし、悪心なし、音声恐怖症なし、かつ羞明なし)被験者の割合、救済薬物治療の使用なしにパッチ活性化後に持続的無頭痛応答(2〜24時間と定義される)を有する被験者の割合、ならびにパッチ活性化後24時間以内に救済薬物治療を使用しない被験者の割合を評価することである。
【0096】
方法/研究設計:
これは、無作為化並行群間二重盲検プラセボ対照試験であった。被験者は、以下の3回の試験通院を完了するであろう:スクリーニング通院、無作為化通院、および最終通院。登録基準を満たす成人被験者を、以下の2つの治療群のうち一方に1:1の割合で無作為化した:スマトリプタンイオントフォレシス経皮パッチ、またはプラセボイオントフォレシス経皮パッチ。両方の群についての投与タイミング(t=0)は、パッチを貼付し、活性化したときに開始した。スクリーニング評価は、スクリーニング中に行なった。
【0097】
被験片頭痛に適格であるための基準は、以下の通りであった:頭痛は中等度(スコア2)または重度(スコア3)でなければならず、かつ被験者は先行する8時間に鎮痛剤または制吐剤を摂取してはならない。
【0098】
被験者が試験パッチを用いる適格片頭痛中およびその後に、被験者が以下のステップを行なう:
・被験者は、試験パッチを用いる前8時間に鎮痛剤(疼痛)または制吐剤(抗悪心)薬物治療を受けていないことを確認した。
・被験者は、パッチ貼付の直前に以下の評価に記入した:頭痛が片側性(片側)または両側性(両側)のいずれであるか、動作に伴い増大するか否か、頭痛の重症度、前兆、悪心、羞明(光に対する過敏性)および音声恐怖症(音声に対する過敏性)の非存在または存在。
・被験者はパッチを右または左上腕に貼付し、日誌にパッチ貼付位置を記録した。
・被験者は、パッチ活性化0.5、1、2、3、4、6、12および24時間後での、表9に概要を示した疼痛の存在または非存在についての評価(存在する場合、重症度の評価)、ならびに悪心、羞明(光に対する過敏性)および音声恐怖症(音声に対する過敏性)の非存在または存在についての評価に記入した。被験者は、パッチ活性化後の最初の4時間、疼痛および症状評価を記録するために、起床したままでいることが要求され、6、12および24時間評価に記入するために断続的に起床することを指導された。被験者は、特定された時点で日誌に評価を記入し、記録することを確実にするために、提供されたタイマーを用いることが奨励された。
・被験者は、パッチ活性化後の最初の2時間、疼痛薬物治療または悪心を治療するための薬物治療を用いない。
・各評価時点で、被験者は、パッチ活性化後24時間を通して摂取した疼痛を治療するための薬物治療および/または悪心を治療するための薬物治療の使用を記録した。パッチ投与前8時間以内の疼痛薬物治療または悪心を治療するための薬物治療を摂取することは禁止されているが、この情報も記録された。
・トリプタンは、最終通院後まで許可されず、疼痛薬物治療は、頭痛が中等度または重度であった場合のみ、パッチ活性化2時間後に許可された。
・悪心を治療するための薬物治療は、症状が対症療法に影響されず、薬物治療を用いた治療を必要とするのに十分に重度であった場合、パッチ活性化2時間後に許可された。
・被験者は、パッチ活性化後2〜24時間以内に頭痛が戻ったか否かを記録した(頭痛が2時間で消失した場合)。
・パッチ活性化4時間後(LED灯が消灯したとき)にパッチを丁寧に除去した。
・被験者は、パッチ活性化4時間後(パッチ除去の10分以内)、6、12、24時間後、および自己皮膚検査スコアが0になるまでその後1日1回、自己皮膚検査を完了させた。自己検査刺激スコアは、表10に見出される。
・皮膚刺激スコアが3もしくは4と記録されるか、または回復期後に悪化した場合、被験者は、できる限り早く(24時間以内に)診察を受けるために、試験医師または研究員に電話した。
・被験者は、パッチ活性化の12時間以内に電話し、試験パッチ貼付の直前に悪心が存在しなかったか存在したかを記録した。
【表9】

【0099】
【表10】

【0100】
試験パッチを用いて1回の片頭痛が治療されるかまたは無作為化2ヵ月後まで(どちらが先に起こっても)、被験者は本試験に留まった。最終通院時に、試験担当医が被験者のパッチ留置部位を検査し、表2(上記の実施例1)のスコアを用いて皮膚刺激をスコア付けした。最終通院時に1以上の皮膚刺激スコアを有した被験者については、試験担当医が10日以内(±2日)に追跡通院の予定を決めて別の皮膚刺激検査を行ない、皮膚刺激スコアが0になるまで、その後週1回、被験者を追跡し続けた。
【0101】
試験集団の選択:
試験対象基準:
被験者は、実施例1に関して上記に概略を示した基準のすべてを満たした。
【0102】
結果:
合計530名の被験者を無作為化し(各治療群に265名)、そのうち469名に試験パッチを貼付した(234名スマトリプタン、235名プラセボ)。454名の被験者が試験パッチを貼付および活性化し(いずれかの時間の長さにわたってライトが連続点灯)、疼痛についての少なくとも1回のベースライン後評価を行なった。
【0103】
454名の被験者のうち、スマトリプタンパッチを投与された被験者は、プラセボと比較して高い割合で、パッチ活性化2時間後に頭痛を有しなかった(それぞれ18% 対 9%、P=0.0092)。プラセボとの有意な差異は1時間でも観察され、パッチ活性化12時間後までの引き続くすべての時点について続いた(P≦0.0357)。
【0104】
スマトリプタンパッチは、プラセボと比較してパッチ活性化1時間後という早期での頭痛軽減を報告した有意に高い割合の被験者も伴った(それぞれ29% 対 19%;P=0.0135)。プラセボとのこの差異は、2時間(53% 対 29%;P<0.0001)および12時間までの引き続くすべての時点(P<0.01)について維持された。
【0105】
パッチ活性化2時間後、スマトリプタンパッチを投与された被験者はまた、プラセボを投与された被験者と比較して高い割合で、悪心を有さず(それぞれ84% 対 63%;P<0.0001)、羞明を有さず(それぞれ51% 対 36%;P=0.0028)、音声恐怖症を有しなかった(それぞれ55% 対 39%;P=0.0002)。
【0106】
ベースラインで悪心を報告した被験者のうち、スマトリプタンパッチを用いて治療された被験者は、プラセボと比較して高い割合で、パッチ活性化1時間後(それぞれ22% 対 13%)および2時間後(それぞれ54% 対 22%)に疼痛軽減を経験した(図7A)。ベースラインで悪心を報告した被験者のうち、スマトリプタンパッチを用いて治療された被験者は、プラセボと比較して高い割合で、パッチ活性化1時間後(それぞれ44% 対 32%)および2時間後(それぞれ68% 対 43%)に悪心を有しなかった(図7B)。ベースラインで悪心を報告した被験者のうち、スマトリプタンパッチを用いて治療された被験者は、プラセボと比較して高い割合で、パッチ活性化1時間後(それぞれ31% 対 26%)および2時間後(それぞれ55% 対 34%)に羞明を有しなかった(図7C)。ベースラインで悪心を報告した被験者のうち、スマトリプタンパッチを用いて治療された被験者は、プラセボと比較して高い割合で、パッチ活性化1時間後(それぞれ42% 対 37%)および2時間後(それぞれ64% 対 37%)に音声恐怖症を有しなかった(図7D)。
【0107】
パッチを活性化した被験者(n=469)のうち、治療中に発生した有害事象は、スマトリプタンパッチを投与された被験者の50%およびプラセボを投与された被験者の44%により報告された。最も一般的な有害事象(≧5%の被験者)は貼付部位に関連するものであり、典型的には2日以内に消失した。これらには、貼付部位痛(スマトリプタンパッチ23%;プラセボ15%)、感覚異常(スマトリプタンパッチ12%;プラセボ19%)、掻痒(スマトリプタンパッチ8%;プラセボ7%)、および反応(reaction)(スマトリプタンパッチ7%;プラセボ6%)が含まれる。典型的にはスマトリプタン血漿レベル>50ng/mLに伴うトリプタン特異的有害事象の発生率は、スマトリプタンパッチ群では非常に低かった(3%)。スマトリプタンパッチ群の患者の2%およびプラセボ群の患者の1%が、有害事象により中断した。皮膚刺激データを、以下の表11および表12に提供する。
【表11】

【0108】
【表12】

【0109】
等価物
当業者であれば、日常的な試行錯誤を超えるものを用いずに、本明細書中に記載された本発明の具体的な実施形態の多数の等価物を理解するであろうし、または究明することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【0110】
参照による組み込み
本出願を通して参照されたすべての引用文献、特許および特許出願の内容は、参照により本明細書中に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片頭痛に見舞われた被験体での悪心を治療する方法であって、心血管系副作用なしに悪心が治療されるように、片頭痛に見舞われた被験体に有効量のトリプタン化合物をイオントフォレシスにより投与するステップを含む、上記方法。
【請求項2】
前記被験体において悪心が少なくとも約50%減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
片頭痛に伴う吸収低下なしに悪心が治療される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記被験体において悪心が停止する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
トリプタンの副作用なしに悪心が治療される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも2時間、悪心が治療される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも2時間、片頭痛が治療される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記被験体が、疼痛重症度スコア2または3を有する片頭痛に見舞われている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記被験体が、片頭痛誘発性悪心または嘔吐に見舞われている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
トリプタン化合物が、スマトリプタンまたは製薬上許容されるその塩である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記被験体の頭痛スコアが、約3のスコアから約2、約1、または約0のスコアに低下する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記被験体の頭痛スコアが、約2のスコアから約1、または約0のスコアに減少する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
トリプタン化合物をイオントフォレシスにより投与するステップが、最小限の紅斑を生じさせるかまたは紅斑を生じさせない電流を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
トリプタン化合物が、以下の相を含む二相様式でイオントフォレシスにより投与される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法:
第一相:約4mAの電流を用いて約1時間、トリプタン化合物が投与される;および
第二相:約2mAの電流を用いて約3時間、トリプタン化合物が投与される。
【請求項15】
電流が、被験体の皮膚を実質的に刺激しない、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
電流が、パッチ除去直後に、2.5を超える、2.0を超える、1.5を超える、または1.0を超える皮膚紅斑スコアをもたらさない、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記被験体がヒトである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記被験体が前駆片頭痛症状に見舞われており、かつ該前駆片頭痛症状が治療される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記被験体が片頭痛前兆に見舞われており、かつ該片頭痛前兆が治療される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2013−501796(P2013−501796A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524789(P2012−524789)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/045045
【国際公開番号】WO2011/019732
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(510331652)ニューパス インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】