説明

イオンビーム加工・観察装置及び方法

【課題】 試料表面の穴にデポジション膜を正確に形成することができる技術を提供することにある。
【解決手段】
本発明は、試料表面に穴をあけ又は試料表面の穴にデポジション膜を形成するイオンビーム加工・観察装置に関する。イオンビーム加工・観察装置には、試料表面の穴の深さ又は穴に形成されたデポジション膜の高さを計測する計測器が設けられている。試料表面の穴あけ加工中又は試料表面の穴埋め加工中、穴を含む領域の像と穴の深さ又はデポジション膜の高さが表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体デバイスの検査工程にて用いられるイオンビーム加工・観察装置に関し、特に、観察用の穴とその穴を埋めるデポジション膜を形成するイオンビーム加工・観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロプロセッサやメモリ等の半導体デバイスの製造においては、不良デバイスが少なく高歩留りであることが求められている。そのため、歩留りの低下の原因となる導通不良や短絡などの欠陥や異物の早期発見、及び、早期対策が大きな課題となる。
【0003】
不良デバイスを検出するために、従来、デバイスの機能が完成した段階で、プローブを用いたLSIテスタなどで電気的な検査が行われていた。しかしながら、近年では、早期検出や早期対策を目指してプロセスの途中での検査が行われるようになっている。この場合、検査が終了後、半導体デバイスは製造プロセスに戻される。
【0004】
不良原因を解析するために、検査で不良と判断された部分の断面を観察する。断面を観察するためには、ウェーハ等の試料にイオンビームを照射し、スパッタ現象を利用して試料の表面を削り、断面を生成する。この断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し不良原因を解析する。
【0005】
しかしながら、半導体デバイスの集積度が上がるにつれプロセスの微細化が進み、試料の断面を走査電子顕微鏡で観察するには、分解能が不十分となっている。
【0006】
そこで、イオンビームを用いた加工により、試料の一部を切り取り、切り取った試料片を、高分解能な走査電子顕微鏡や透過電子顕微鏡を用いて観察・解析する手法がある。
【0007】
このように試料表面に断面を形成し、又は、試料の一部を切り取る方法では、試料に穴が形成される。試料を、穴が残ったまま、半導体製造プロセスに戻すと、不良デバイスとなる可能性がある。そこで、穴をデポジション膜によって埋めてから半導体製造プロセスに戻す方法が行われる。その例として特開2003−311435号「イオンビームによる穴埋め方法、イオンビーム加工・観察装置、及び電子部品の製造方法」がある。
【0008】
【特許文献1】特開2003−311435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術では、穴を埋めるデポジション膜の厚さ又は高さを正確に制御することができなかったため、穴の周囲と穴を埋めたデポジション膜の高さが同一とはならず、半導体デバイスの表面に凹凸ができることがある。例えば、デポジション膜の厚さが小さい場合には、穴は完全に埋められず凹部となり、デポジション膜の厚さが大きい場合には、穴を埋めたデポジション膜は凸部となる。
【0010】
一般的な半導体プロセスおいては、半導体デバイスの表面に50nm以上の凹凸があると、CMP(Chemical Mechanical Polishing)にて、凸部分が削られる。削り取られた試料片によりスクラッチが発生したり、フォトレジストプロセスにおけるスピン・コーターでのレジスト剤塗布が一様にならない問題があった。
【0011】
本発明の目的は、試料表面の穴にデポジション膜を正確に形成することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、試料表面に穴をあけ又は試料表面の穴にデポジション膜を形成するイオンビーム加工・観察装置に関する。イオンビーム加工・観察装置には、試料表面の穴の深さ又は穴に形成されたデポジション膜の高さを計測する計測器が設けられている。
【0013】
試料表面の穴あけ加工中又は試料表面の穴埋め加工中、穴を含む領域の像と穴の深さ又はデポジション膜の高さが表示される。
【0014】
計測器は、レーザビームを穴又はデポジション膜に照射するレーザビーム発生器と照射領域からのレーザビームを受光するレーザビーム受光器を含む。計測器は、走査電子顕微鏡であってよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、試料表面の穴にデポジション膜を正確に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明のイオンビーム加工・観察装置の第1の実施例を示す。本例のイオンビーム加工・観察装置は、試料室3に設けられたFIBカラム1を有し、FIBカラム1は、イオン源11、引出し電極13、収束レンズ14、絞り15、偏向器16、及び、対物レンズ17を有し、内部は高真空に保持されている。試料室3には、ステージ31、二次電子検出器41、デポガス源51、高さ測定器(発光側)61、及び、高さ測定器(受光側)62が設けられている。
【0018】
イオンビーム加工・観察装置は、更に、FIBカラム制御部18、全体制御部19、ステージ制御部34、デポガス制御部53、高さ測定制御部63、信号処理器42、及び、表示部4を有する。
【0019】
FIBカラム制御部18は、イオン源11、引出し電極13、収束レンズ14、絞り15、偏向器16、及び、対物レンズ17に印加する電圧を制御する。
【0020】
ステージ制御部34は、ウェーハ等の試料32を保持するステージ31を制御し、ステージ31を3次元方向及び回転方向に移動させる。
【0021】
デポガス制御部53は、デポガス源51に格納されたデポガス52の供給開始、供給停止を制御する。デポガス52は、例えば、W(CO)である。高さ測定制御部63は、高さ測定器(発光側)61、及び、高さ測定器(受光側)62を制御する。高さ測定器61は、レーザ光源を有し、試料32上の測定位置にレーザ光を照射する。高さ測定器62は、レーザ光を受光し、それを電気的信号に変換する素子、例えば、フォトダイオードを有する。高さ測定器61と高さ測定器62の動作は、後に説明する。
【0022】
イオン源11はGa等の液体金属である。イオン源11に高電圧を印加し、引出し電極13にイオン源11に加えた高電圧よりも低い電圧を印加すると、イオン源11からイオンビーム12が放出される。イオンビーム12は収束レンズ14によって収束され、絞り15を通過するイオンビーム量が調整される。絞り15を通過したイオンビーム12は、偏向器16によって偏向され、対物レンズ17によって集光される。試料32上には、フォーカスされたイオンビーム12が走査される。
【0023】
試料32上にイオンビーム12を照射するとスパッタリング現象により試料32の表面の構成原子が放出される。それによって試料32の表面が削られ、穴が形成される。穴は、試料32の断面が観察できるように、即ち、穴の内壁に、試料32の断面が露出するように、形成される。穴が形成されたら、ステージ31を傾斜させることにより、試料32の断面を観察することができる。
【0024】
デポガス52を供給しながらイオンビーム12を照射するとデポガスの成分が変化してW(タングステン)のデポジション膜33が試料32上に形成される。通常、このデポジション膜は、断面観察用の穴の周囲の試料表面を保護するために用いたり、配線を修正したりする場合に使用するが、以下に説明するように、断面観察用の穴を埋めるために使用される。
【0025】
二次電子検出器41は、イオンビーム12が照射された試料32から発生する二次電子を検出する。信号処理器42は、二次電子検出器41からの二次電子検出信号をビーム偏向の走査信号と同期して処理し、全体制御部19に出力する。全体制御部19は、表示部4の画面に、SIM(Scanning Ion Beam Microscope)像を表示する。
【0026】
図2を参照して、試料に形成された穴及びデポジション膜の高さの測定方法を説明する。図2Aは、穴の周囲の高さと穴埋めしたデポジション膜33の高さが一致している場合を示す。高さ検出器(発光側)61は試料32上のデポジション膜33が形成された領域に、レーザビーム64を照射する。高さ検出器(発光側)61が照射するレーザビーム64のビーム径は、穴を包含する大きさである。高さ検出器(受光側)62は、レーザ照射領域からのレーザ光65を検出する。本例では、レーザ照射領域は、平坦である。従って、高さ検出器(受光側)62はレーザ照射領域から最大のレーザ光65を検出する。
【0027】
図2Bは、穴の周囲の高さより穴埋めしたデポジション膜33の高さが低い場合を示す。本例では、デポジション膜33によって凹部が形成されている。即ち、レーザ照射領域は、平坦でない。高さ検出器(発光側)61は試料32上のデポジション膜33が形成された領域に、レーザビーム64を照射する。レーザビーム64の一部は、穴の周囲に照射されるが、大部分は、デポジション膜33によって生成された凹部に照射される。凹部に照射されたレーザビーム64は、図示のように、散乱ビーム66となり、高さ検出器(受光側)62の方向に向かわない。散乱ビーム66の一部は、高さ検出器(発光側)61方向に向かう。従って、高さ検出器(受光側)62が受光するレーザ光は、図2に示した場合より少ない。
【0028】
図2Cは、穴の周囲の高さより穴埋めしたデポジション膜33の高さが高い場合を示す。本例では、デポジション膜33によって凸部が形成されている。即ち、レーザ照射領域は、平坦でない。高さ検出器(発光側)61は試料32上のデポジション膜33が形成された領域に、レーザビーム64を照射する。レーザビーム64の一部は、穴の周囲に照射されるが、大部分は、デポジション膜33によって生成された凸部に照射される。凸部に照射されたレーザビーム64は、図示のように、散乱ビーム66となり、高さ検出器(受光側)62の方向に向かわない。散乱ビーム66の一部は、高さ検出器(発光側)61方向に向かう。従って、高さ検出器(受光側)62が受光するレーザ光は、図2に示した場合より少ない。
【0029】
図3は、表示部4に表示された穴あけ加工時の操作画面700を示す。この操作画面700は、画像表示エリア73、条件表示エリア75、穴あけボタン77、デポジション膜形成ボタン78、穴埋めボタン79、開始ボタン80、停止ボタン81を含む。穴あけボタン77をクリックすることによって、画像表示エリア73には、穴あけエリア周辺の試料32のSIM像と穴あけエリアを指定するラバーバンド74が表示される。試料表面には既に円形のコンタクトホールが形成されている。コンタクトホールの断面を形成するように、ラバーバンド74を設定する。開始ボタン80をクリックすると、イオンビーム12が試料32表面のラバーバンド74の領域に照射され、穴あけ加工が開始される。条件表示エリア75には、加工サイズ、試料の材質、及び、経過時間が表示される。加工サイズは、穴の寸法である。
【0030】
図4は、表示部4に表示された穴埋め加工時の操作画面701を示す図である。穴埋めボタン79をクリックすることによって、画像表示エリア73には、穴の周囲のSIM像と穴埋めエリアを指定するラバーバンド74が表示される。試料表面には既にコンタクトホールの断面を露出させるための矩形の穴が形成されている。穴埋めボタン79をクリックした場合、ラバーバンド74は、標準では、穴の位置に表示される。マウスのドラッグ操作等によりラバーバンド74の位置を変更することができる。開始ボタン80をクリックすると、デポガス源51からデポガスが供給され、ラバーバンド74の領域にデポジション膜が形成される。こうしてデポジション膜によって穴が埋められる。穴埋めボタン79の代わりに、デポジション膜形成ボタン78をクリックしてもよい。この場合には、マウスのドラッグ操作等によりラバーバンド74の領域を設定する。
【0031】
図5を参照して、穴埋め加工の処理を説明する。ステップS101にて、デポガス52の供給を開始する。ステップS102にて、イオンビーム12の照射を開始する。ステップS103にて、高さ測定器(発光側)61はレーザビームを穴埋めエリアに照射し、高さ測定器(受光側)62は照射領域からのビームを受光し、受光量を測定する。ステップS104にて、ビーム受光量が最大となったか否かを判定する。受光量が最大となったとき、ステップS105にて、イオンビーム12の照射を停止する。ステップS106にて、デポガスの供給を停止し、穴埋め加工を終了する。
【0032】
本例では、デポジション膜の高さを測定しながら穴埋めする。即ち、デポジション膜の高さを測定し、それに基づいてデポジション膜の形成を停止する。例えば、デポジション膜の高さが穴の周囲の高さと略同一となったときに、デポジション膜の形成を停止する。又は、試料表面の凹凸が50nm以下となったときに、デポジション膜の形成を停止する。こうして、穴埋めしたデポジション膜の高さを穴の周囲の高さと略等しくすることができる。試料表面の凹凸を50nm以下にすることができる。従って、デポジション膜で穴埋めしたウェーハをプロセスラインに戻しても、不良デバイスが発生する問題を回避できる。また、ウェーハを廃棄することがなく経済的な効果がある。
【実施例2】
【0033】
図6は、本発明のイオンビーム加工・観察装置の第2の実施例を示す。本例のイオンビーム加工・観察装置は、図1の第1の実施例と比較して、高さ検出器(発光側)と高さ検出器(受光側)が異なり、それ以外は、第1の例と同様である。従って、図6には、本例の高さ検出器(発光側)67と高さ検出器(受光側)68のみが図示されている。
【0034】
本例では、高さ検出器(発光側)67は、穴の径より小さいビーム径のレーザビームを発生する。高さ検出器(受光側)68は、CCD(Charge Coupled Device)等を用いて、レーザビーム65の受光位置を検出する。高さ検出器(発光側)67からのレーザビームの出射位置が一定であるとき、高さ検出器(受光側)68のレーザビームの入射位置、即ち受光位置は、レーザビーム照射領域の高さによって変化する。従って、高さ検出器(受光側)68のレーザビームの受光位置に基づいて、デポジション膜の高さを計測する。
【0035】
図6Aは、穴の周囲の高さと穴埋めしたデポジション膜33の高さが一致している場合を示す。高さ検出器(発光側)67は試料32上のデポジション膜33上に、穴の径より小さいビーム径のレーザビーム64を照射する。高さ検出器(受光側)68は、レーザ照射領域からのレーザ光65を検出し、入射位置を記憶する。本例では、レーザ照射領域の高さは、穴の周囲の高さと同一である。従って、高さ検出器(受光側)68が検出した受光位置を基準位置とする。
【0036】
図6Bは、穴の周囲の高さより穴埋めしたデポジション膜33の高さが低い場合を示す。本例では、デポジション膜33によって凹部が形成されている。高さ検出器(発光側)67は試料32上のデポジション膜33上に、レーザビーム64を照射する。高さ検出器(受光側)68は、レーザ照射領域からのレーザ光65を検出し、受光位置を記憶する。本例では、レーザ照射領域の高さは、穴の周囲の高さより低い。従って、高さ検出器(受光側)68が検出した受光位置は、基準位置より偏奇している。この偏奇量によって、デポジション膜33による凹部の深さを計測する。
【0037】
図6Cは、穴の周囲の高さより穴埋めしたデポジション膜33の高さが高い場合を示す。本例では、デポジション膜33によって凸部が形成されている。高さ検出器(発光側)67は試料32上のデポジション膜33上に、レーザビーム64を照射する。高さ検出器(受光側)68は、レーザ照射領域からのレーザ光65を検出し、受光位置を記憶する。本例では、レーザ照射領域の高さは、穴の周囲の高さより高い。従って、高さ検出器(受光側)68が検出した受光位置は、基準位置より偏奇している。この偏奇量によって、デポジション膜33による凸部の高さを計測する。
【0038】
本例では、レーザビーム64のビーム径を小さくすることによって、局所的な凹部の深さ又は凸部の高さを測定することができる。従って、穴の周囲より高いデポジション膜33内に形成された凹部を埋めることも、穴の周囲より低いデポジション膜内に形成された凸部を除去することも可能である。
【0039】
図7は、表示部4に表示された穴埋め加工時の操作画面702を示す図である。本例の操作画面702は図4の操作画面701と略同一であるが、本例の操作画面702では、条件表示エリア75には、加工サイズ、試料の材質、及び、高さが表示される点が異なる。加工サイズは、デポジション膜の寸法であり、高さは、デポジション膜の現在の高さである。デポジション膜の高さが穴の周囲の高さと同じになったとき、穴埋め加工を終了する。
【0040】
図8を参照して、穴埋め加工の処理を説明する。ステップS201にて、デポガス52の供給を開始する。ステップS202にて、イオンビーム12の照射を開始する。ステップS203にて、高さ測定器(発光側)67はレーザビームを穴埋めエリアに照射し、高さ測定器(受光側)68は照射領域からのビームを受光し、受光位置から、穴の深さ、即ち、デポジション膜の高さを計測し、それを表示する。ステップS204にて、デポジション膜の高さが穴の周囲位置の高さと略同一になったか否かを判定する。デポジション膜の高さが穴の周囲位置の高さと略同一になったとき、ステップS205にて、イオンビーム12の照射を停止する。ステップS206にて、デポガスの供給を停止し、穴埋め加工を終了する。
【0041】
本例では、デポジション膜の高さを測定しながら穴埋めする。即ち、デポジション膜の高さを測定し、それに基づいてデポジション膜の形成を停止する。デポジション膜の高さが穴の周囲の高さと略同一となったときに、デポジション膜の形成を停止する。又は、試料表面の凹凸が50nm以下となったときに、デポジション膜の形成を停止する。こうして、穴埋めしたデポジション膜の高さを穴の周囲の高さと略等しくすることができる。試料表面の凹凸を50nm以下にすることができる。従って、デポジション膜で穴埋めしたウェーハをプロセスラインに戻しても、不良デバイスが発生する問題を回避できる。また、ウェーハを廃棄することがなく経済的な効果がある。
【実施例3】
【0042】
図9は、本発明のイオンビーム加工・観察装置の第3の実施例を示す。本例のイオンビーム加工・観察装置は、図1の第1の実施例と比較して、高さ検出器(発光側)と高さ検出器(受光側)が異なり、それ以外は、第1の例と同様である。従って、図9には、本例の高さ検出器(発光側)90と高さ検出器(受光側)91のみが図示されている。
【0043】
本例では、高さ検出器(発光側)90は、半導体レーザ等の光源92、レンズ93、レンズ94を含む。高さ測定器(受光側)91は、CCD等の光の強度を二次元的に検出する受光素子95と信号処理手段96とを含む。高さ検出器(発光側)90は、2つのレンズ93、94間の距離Lを変化させることによって、レーザビーム64のビーム径を変化させることができる。高さ測定器(受光側)91はレーザビームの受光量と受光位置の両者を測定する。
【0044】
図9Aは、レンズ93、94間の距離LがL1であり、高さ検出器(発光側)90は比較的ビーム径が大きいレーザビーム64を出射した場合を示す。これは図2に示した場合に相当する。信号処理手段96は、受光素子95が受光したレーザ光の受光量に基づいて、デポジション膜33の高さが周囲の高さより高いか、低いか、又は、同一かを判定し、更に、デポジション膜33の高さを計測する。本例では、信号処理手段96は、受光信号の重心位置を求めることにより、ビームが照射された領域の平均的な高さを測定することもできる。
【0045】
図9Bは、レンズ93、94間の距離LがL2であり、高さ検出器(発光側)90は比較的ビーム径が小さいレーザビーム64を出射した場合を示す。これは図6に示した場合に相当する。信号処理手段96は、受光素子95が受光したレーザ光の受光位置に基づいて、デポジション膜33の高さが周囲の高さより高いか、低いか、又は、同一かを判定し、更に、デポジション膜33の高さを計測する。本例では、信号処理手段96は、受光位置と受光信号の重心位置を求めることにより、ビームが照射された領域のデポジション膜33の高さを計測することができる。
【実施例4】
【0046】
図10は本発明のイオンビーム加工・観察装置の第4の実施例を示す。本例のイオンビーム加工・観察装置は、図1の第1の実施例と比較して、SEMカラム2が付加的に設けられている点が異なる。SEMカラム2の光軸は試料の法線に対して傾斜している。図10では、FIBカラム制御部18、全体制御部19、ステージ制御部34、デポガス制御部53、高さ測定制御部63、信号処理器42、及び、表示部4の図示は省略されている。
【0047】
SEMカラム2は、電子源21、引出し電極23、収束レンズ24、絞り25、偏向器26、対物レンズ27、及び、反射電子検出器28を有し、内部は高真空に保持されている。FIBカラム制御部18と同様に、電子源21、引出し電極23、収束レンズ24、絞り25、偏向器26、及び、対物レンズ27を制御するSEMカラム制御部が設けられているが、その図示は省略されている。
【0048】
本例によると、イオンビーム12の照射によるSIM像と電子ビーム22の照射によるSEM(Scanning Electron Microscope)像の両者を得ることができるが、SIM像を得る方法は、図1を参照して説明したのでここでは省略し、以下に電子ビーム22によるSEM像を得る方法を説明する。
【0049】
電子源21に高電圧を印加し、引出し電極23に電子源21に加えた高電圧よりも低い電圧を印加すると、電子源21から電子ビーム22が放出される。電子ビーム22は収束レンズ24によって収束され、絞り25を通過する電子ビーム量が調整される。絞り25を通過した電子ビーム22は、偏向器26によって偏向され、対物レンズ27によって集光される。試料32上には、フォーカスされた電子ビーム22が走査される。
【0050】
反射電子検出器28は、電子ビーム22が照射された試料32から発生する反射電子を検出する。信号処理器42は、反射電子検出器28からの反射電子検出信号を電子ビーム偏向の走査信号と同期して処理し、全体制御部19に出力する。全体制御部19は、表示部4の画面に、SEM像を表示する。
【0051】
本例のイオンビーム加工・観察装置では、イオンビーム12によって試料32の表面に穴あけ加工又はデポジション膜形成を行っている間に、そのSEM像をリアルタイムに観察することができる。
【0052】
対物レンズ27を変化させることにより、電子ビーム22の焦点位置が変化し、焦点が異なったSEM像が得られる。電子ビーム22の走査範囲をイオンビーム12で穴あけする位置に設定し、SEM像の焦点が穴底に合うように対物レンズ27を制御することにより、その焦点距離から穴の深さを求めることができる。また、穴あけ後の穴埋めの際にも穴埋めの高さ情報をモニタすることができる。
【0053】
図11は表示部4に表示された穴あけ加工時の操作画面703を示す。この操作画面703は、画像表示エリア73、条件表示エリア75、選択ボタン76、穴あけボタン77、デポジション膜形成ボタン78、開始ボタン80、停止ボタン81を含む。本例の操作画面703は図3の操作画面700と比較して、選択ボタン76が設けられている点が異なる。
【0054】
選択ボタン76は、FIBかSEMかを選択するために設けられる。選択ボタン76をクリックし、FIBを選択し、穴あけボタン77をクリックすることによって、画像表示エリア73には、穴あけエリア周辺の試料32のSIM像と穴あけエリアを指定するラバーバンド74が表示される。試料表面には既に円形のコンタクトホールが形成されている。コンタクトホールの断面を形成するように、ラバーバンド74を設定する。開始ボタン80をクリックすると、イオンビーム12が試料32表面のラバーバンド74の領域に照射され、穴あけ加工が開始される。条件表示エリア75には、加工サイズ、試料の材質、及び、深さが表示される。加工サイズは穴の寸法である。深さは、現在の穴の深さである。
【0055】
穴あけ加工中、電子ビーム22が穴に照射され、反射電子検出器28は、穴からの反射電子ビーム22を検出する。穴のSEM像の焦点が合うように対物レンズ27の位置が制御される。対物レンズ27の制御位置によって、穴の深さ、即ち、デポジション膜の高さを計測する。尚、SEM像は操作画面703上に表示されない。デポジション膜の高さが穴の周囲の高さと同じになったとき、穴埋め加工を終了する。
【0056】
図12は、選択ボタン76をクリックし、SEMを選択したとき、表示部4に表示される操作画面704の例を示す。画像表示エリア74には、SEM像が表示される。操作画面704には、走査速度設定ボタン84が設けられている。走査速度設定ボタン84によって適切な走査速度を選択し、穴あけした断面のSEM画像を表示する。
【0057】
図13は、選択ボタン76をクリックし、FIBを選択したとき、表示部4に表示される操作画面705の例を示す。穴埋めボタン79をクリックすることによって、画像表示エリア73には、穴の周囲のSIM像と穴埋めエリアを指定するラバーバンド74が表示される。試料表面には既にコンタクトホールの断面を露出させるための矩形の穴が形成されている。ラバーバンド74は、標準では、穴の位置に表示される。マウスのドラッグ操作等によりラバーバンド74の位置を変更することができる。開始ボタン80をクリックすると、デポガス源51からデポガスが供給され、ラバーバンド74の領域にデポジション膜が形成される。こうしてデポジション膜によって穴が埋められる。
【0058】
条件表示エリア75には、加工サイズ、試料の材質、及び、深さが表示される。加工サイズは、デポジション膜の寸法であり、深さは、穴の現在の深さである。穴の深さが穴の周囲の高さと同じになったとき、穴埋め加工を終了する。
【実施例5】
【0059】
図14は本発明のイオンビーム加工・観察装置の第5の実施例を示す。本例のイオンビーム加工・観察装置は、図10の第4の実施例と比較して、FIBカラム1の光軸とSEMカラム2の光軸は共に、試料の法線に対して傾斜している。本例では、図示のように、試料表面に、深さ方向に傾斜した穴をあけることができ、また、深さ方向に傾斜した穴にデポジション膜で穴埋めすることができる。
【0060】
高さ測定器69は試料32の上方に設けられている。高さ測定器69は、発光部と受光部を有する。従って、本例の高さ測定器69は、上述の高さ測定器(発光側)と高さ測定器(受光側)を一体化したものであり、試料室の接続ポートは1つでよい。高さ測定器69を試料32の上方に設けることにより、深さ方向に傾斜した穴の深さを計測することができ、深さ方向に傾斜した穴を埋めるデポジション膜の高さを計測することができる。
【0061】
図14では、FIBカラム制御部18、全体制御部19、ステージ制御部34、デポガス制御部53、高さ測定制御部63、信号処理器42、及び、表示部4の図示は省略されている。
【0062】
本発明によれば、デポジション膜の高さを測定しながら正確なデポジションができるために、穴埋めだけでなく、半導体デバイス内の回路を導電性デポジション膜で接続する配線修正を行うことができる。即ち、半導体デバイス内の回路の配線修正をおいて、正確な抵抗値で配線する用途にも適用できる。
【0063】
以上、本発明の例を説明したが、本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明のイオンビーム加工・観察装置の第1の実施例を示す図である。
【図2】本発明によるデポジション膜の高さの測定方法を示す図である。
【図3】穴あけ時の操作画面を示す図である。
【図4】穴埋め時の操作画面を示す図である。
【図5】穴埋めの処理を示す図である。
【図6】本発明のイオンビーム加工・観察装置の第2の実施例を示す図である。
【図7】穴埋め時の操作画面を示す図である。
【図8】穴埋めの処理を示す図である。
【図9】本発明のイオンビーム加工・観察装置の第3の実施例を示す図である。
【図10】本発明のイオンビーム加工・観察装置の第4の実施例を示す図である。
【図11】穴あけ時の操作画面を示す図である。
【図12】SEM像観察時の操作画面を示す図である。
【図13】穴埋め時の操作画面を示す図である。
【図14】本発明のイオンビーム加工・観察装置の第5の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1:FIBカラム、2:SEMカラム、3:試料室、4:表示部、11:イオン源、12:イオンビーム、13:引出し電極、14:集束レンズ、15:ビーム絞り、16:偏向器、17:対物レンズ、18:FIBカラム制御部、19:全体制御部、21:電子源、22:電子ビーム、23:引出し電極、24:収束レンズ、25:ビーム絞り、26:偏向器、27:対物レンズ、28:反射電子検出器、31:ステージ、32:試料、33:デポジション膜、34:ステージ制御部、41:二次電子検出器、42:信号処理器、51:デポガス源、52:デポガス、53:デポガス制御部、61:高さ測定器(発光側)、62:高さ測定器(受光側)、63:高さ測定制御部、64:発光ビーム、65:受光ビーム、66:散乱ビーム、67:高さ測定器(発光側)、68:高さ測定器(受光側)、69:高さ測定器、73:画像表示エリア、74:穴あけエリア、75:条件表示エリア、76:選択ボタン、77:穴あけボタン、78:デポ加工ボタン、79:穴埋めボタン、80:穴あけ開始ボタン、81:穴あけ停止ボタン、90:高さ測定器(発光側)、91:高さ測定器(受光側)、92:発光源、93:レンズ、94:レンズ、95:受光素子、96:信号処理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査イオンビームを試料上に照射するイオンビーム照射系と、デポガスを供給するデポガス源と、試料表面の穴の深さ又は該穴に形成されたデポジション膜の高さを計測する計測器と、を有し、上記試料表面の穴にデポジション膜を形成するとき、試料表面の穴の深さ又は該穴に形成されたデポジション膜の高さを計測し、上記デポジション膜の形成を停止することを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項2】
請求項1記載のイオンビーム加工・観察装置において、デポジション膜の高さが穴の周囲の高さと略同じになったと判定されたとき、上記デポジション膜の形成を停止することを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項3】
請求項1記載のイオンビーム加工・観察装置において、試料表面の凹凸が50nm以下となるようにデポジション膜を形成することを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項4】
請求項1記載のイオンビーム加工・観察装置において、上記計測器は、デポジション膜にレーザビームを照射するレーザビーム発生器とレーザビーム照射領域からのレーザビームを受光するレーザビーム受光器とを有することを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項5】
請求項4記載のイオンビーム加工・観察装置において、上記レーザビーム発生器は試料表面の穴より大きいビーム径のレーザビームを照射し、上記レーザビーム受光器が受光する受光量から穴の深さ又はデポジション膜の高さを計測することを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項6】
請求項4記載のイオンビーム加工・観察装置において、上記レーザビーム発生器は試料表面の穴より小さいビーム径のレーザビームを照射し、上記レーザビーム受光器が受光する受光位置から穴の深さ又はデポジション膜の高さを計測することを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項7】
請求項1記載のイオンビーム加工・観察装置において、上記レーザビーム発生器はビーム径が大きいレーザビーム又はビーム径が小さいレーザビームを照射し、上記レーザビーム発生器がビーム径が大きいレーザビームを照射したときは、上記レーザビーム受光器が受光する受光量から穴の深さ又はデポジション膜の高さを計測し、上記レーザビーム発生器がビーム径が小さいレーザビームを照射したときは、上記レーザビーム受光器が受光する受光位置から穴の深さ又はデポジション膜の高さを計測することを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項8】
請求項1記載のイオンビーム加工・観察装置において、上記計測器は、走査電子ビームを試料上に照射するための電子ビーム照射系と、電子ビーム照射領域からの反射電子ビームを検出する反射電子検出器と、該反射電子検出器からの信号に基づいてSEM像を生成する走査電子顕微鏡を含むことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項9】
請求項1記載のイオンビーム加工・観察装置において、上記試料表面に穴あけするとき、上記計測器による計測によって穴の深さが所定の深さになったと判定されたとき、上記穴あけを停止することを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項10】
走査イオンビームを試料上に照射するイオンビーム照射系と、イオンビーム照射領域からの二次電子線を検出する二次電子検出器と、該二次電子検出器からの信号に基づいて生成されたSEM像を表示する表示装置と、デポガスを供給するデポガス源と、試料表面の穴の深さ又は該穴に形成されたデポジション膜の高さを計測する計測器と、を有し、試料表面の穴にデポジション膜を形成中に、上記表示装置は、上記試料表面の穴を含む領域のSIM像と上記計測器によって計測された上記試料表面の穴のデポジション膜の高さを表示することを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項11】
請求項10記載のイオンビーム加工・観察装置において、上記計測器は、デポジション膜にレーザビームを照射するレーザビーム発生器とレーザビーム照射領域からのレーザビームを受光するレーザビーム受光器とを有し、該レーザビーム受光器の受光量又は受光位置に基づいて上記試料表面の穴の深さ又は該穴に形成されたデポジション膜の高さを計測することを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項12】
請求項10記載のイオンビーム加工・観察装置において、試料表面に穴を形成中に、上記表示装置は、上記試料表面の穴を含む領域のSIM像と上記計測器によって計測された上記試料表面の穴の深さを表示することを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項13】
請求項10記載のイオンビーム加工・観察装置において、上記計測器は、走査電子ビームを試料上に照射するための電子ビーム照射系と、電子ビーム照射領域からの反射電子ビームを検出する反射電子検出器と、該反射電子検出器からの信号に基づいてSEM像を生成する走査電子顕微鏡を含み、上記表示装置は上記走査電子顕微鏡によるSEM像を表示することを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項14】
請求項13記載のイオンビーム加工・観察装置において、上記表示装置は、デポジション膜を含む領域のSIM像又はSEM像を切り替えて表示することを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項15】
請求項10記載のイオンビーム加工・観察装置において、上記表示装置は、穴あけ加工又は穴埋め加工するための操作画面を表示し、該操作画面は、画像表示エリア、条件表示エリア、穴あけボタン、穴埋めボタン、を含み、上記画像表示エリアには、試料表面のSIM像と加工エリアを指定するラバーバンドが表示されることを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項16】
請求項15記載のイオンビーム加工・観察装置において、上記条件表示エリアには加工サイズ、材質、穴の深さ又はデポジション膜の高さが表示されることを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項17】
真空中にてデポガスを供給しながらイオンビームを試料表面の穴に照射することによりデポジション膜を形成することと、
上記穴に形成されたデポジション膜の高さを計測することと、
上記デポジション膜の高さが上記穴の周囲の高さに等しくなったとき上記デポガスの供給と上記イオンビームの照射を停止することと、
を含むイオンビーム加工・観察方法。
【請求項18】
請求項17記載のイオンビーム加工・観察方法において、上記デポジション膜の形成中に表示装置に上記穴を含む領域のSIM像と上記デポジション膜の高さを表示することと、
を含むイオンビーム加工・観察方法。
【請求項19】
請求項17記載のイオンビーム加工・観察方法において、上記デポジション膜の形成中に表示装置に上記穴を含む領域のSIM像又はSEM像を切り替えて表示することと、
を含むイオンビーム加工・観察方法。
【請求項20】
請求項17記載のイオンビーム加工・観察方法において、上記デポジション膜の計測は、
上記デポジション膜にレーザビームを照射することと、
レーザビーム照射領域からのレーザビームを受光することと、
上記レーザビームの受光量又は受光位置から上記デポジション膜の高さを求めることと、
を含むことを特徴とするイオンビーム加工・観察装置。
【請求項21】
真空中にてイオンビームを試料表面に照射することにより穴を形成することと、
上記穴の深さを計測することと、
上記穴の深さが所定の値になったとき上記イオンビームの照射を停止することと、
を含むイオンビーム加工・観察方法。
【請求項22】
請求項21記載のイオンビーム加工・観察方法において、上記デポジション膜の形成中に表示装置に上記穴を含む領域のSIM像と上記デポジション膜の高さを表示することと、
を含むイオンビーム加工・観察方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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