説明

イオンビーム測定装置および方法

本発明は、複合静電抑制ファラデー・エネルギー汚染モニタ、および、その使用のための関連方法を提供する。本発明の装置は、例えば、減速されるイオンビームにおける電流およびエネルギー汚染を含む、イオンビームの2つの特性を選択的に測定することができる。本発明の第1の態様は、イオンビームを受ける一の開口と、該開口に隣接して配置される一の負にバイアスされる電極と、該負にバイアスされる電極に隣接して配置される一の正にバイアスされる電極と、該正にバイアスされる電極に隣接して配置される一の選択的にバイアスされる電極と、一のコレクタとを含むイオンビーム測定装置を提供し、選択的にバイアスされる電極は、負または正に選択的にバイアスされてよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ねイオンビームの特性を測定するのに役立つ装置および方法に関し、特に、ファラデーおよびエネルギー汚染モニタの両方の機能を果たす装置および方法に関する。本出願は、同時係属中の2005年2月16日出願の米国仮出願第60/653,394の出願日の利益を主張し、その開示全体を参照によってここに組み込む。
【背景技術】
【0002】
ファラデーカップまたはファラデーは、それに入るそれぞれの正イオンに対し接地点から電子を引き込むことによりイオンビーム電流を測定する。ファラデーの磁界は、外部の二次電子が入ってくるのを防ぎ、生成された二次電子が出て行くのを防ぐので、外部からの荷電粒子の影響を受けずにイオンビームそれ自体の電流を測定することができる。
【0003】
エネルギー汚染モニタは、ニュートラルになった減速されるイオンビームにおけるイオンを検出する。このようにニュートラルなイオンビームの検出に応じてイオン注入機を調整することにより、それらがウェーハに注入される前に減少させるかまたは除去することができる。エネルギー汚染モニタは、参照によって本願明細書に組み込まれる同時係属中のアメリカ仮出願第60/544、029にさらに詳細に説明されている。
【0004】
イオン注入機のエンドステーションにおける測定器は、ウェーハに適用される線量、イオンビーム内のイオンの角分布、イオンビーム内の全体としてのイオンの密度分布、および、減速されたイオンビームにおけるエネルギー汚染のレベルを含む様々な測定を実行するのに必要である。これらの測定を実行すべく、通常エンドステーションは、ファラデーとエネルギー汚染モニタを両方含むので、その物理的ハードウエアおよび経費がかさむ。したがって、技術的にイオン注入機のエンドステーションのハードウェアおよび経費両方を削減するような、ファラデーおよびエネルギー汚染モニタそれぞれの機能を実行する装置および方法が必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、複合静電抑制ファラデー・エネルギー汚染モニタ、および、その使用のための関連方法を提供する。本発明の装置は、例えば、減速されるイオンビームにおける電流およびエネルギー汚染レベルを含む、イオンビームの2つの特性を選択的に測定することができる。本発明の第1の態様は、イオンビームを受ける一の開口と、該開口に隣接して配置される一の負にバイアスされる電極と、該負にバイアスされる電極に隣接して配置される一の正にバイアスされる電極と、該正にバイアスされる電極に隣接して配置される一の選択的にバイアスされる電極と、一のコレクタとを含むイオンビーム測定装置を提供し、選択的にバイアスされる電極は、負または正に選択的にバイアスされてよい。
【0006】
本発明の第2の態様は、イオンビーム内の電流およびエネルギー汚染のレベルの1つを選択的に測定する方法を提供し、方法は、イオンビームを受ける一の開口と、該開口に隣接して配置される一の負にバイアスされる電極と、該負にバイアスされる電極に隣接して配置される一の正にバイアスされる電極と、該正にバイアスされる電極に隣接して配置され、負および正に選択的にバイアスされ得る一の選択的にバイアスされる電極と、一のコレクタとを含む装置を提供する工程と、イオンビーム内の電流を測定するよう選択的にバイアスされる電極に対し負のバイアスを選択し、また、イオンビーム内のエネルギー汚染のレベルを測定するよう選択的にバイアスされる電極に対し正のバイアスを選択する工程とを含む。
【0007】
本発明の第3の態様は、イオンビーム測定装置を提供し、装置は、イオンビームを受ける開口と、イオンビーム内の電流およびエネルギー汚染のレベルの1つを選択的に測定するための複数の電極を含む測定デバイスと、コレクタとを含む。
【0008】
本発明の前述および他の特徴は、本発明の実施形態のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1を参照すると、装置8は、ファラデーモード内に形成される。正にバイアスされる電極30は、2つの負にバイアスされる電極20および22の間に配置される。同時に、電極20、22および30は、イオンビームの電流を測定する測定デバイスを形成する。低エネルギー電子60は、第1の負にバイアスされる電極20により装置8から締め出され、低エネルギーイオン52は、正にバイアスされる電極30により装置8から締め出され、その一方で、高エネルギーイオン50は、開口10を通過し、各電極20、30、22を通り過ぎ、コレクタ40にぶつかる。コレクタ40から発せられた低エネルギー電子62は、第2の負にバイアスされる電極22により抑制され、コレクタ40内に保持される。ファラデーモードでは、装置8は、イオンビーム70の電流を測定することができる。
【0010】
第2の負にバイアスされる電極22のバイアスを変えることにより、図2の装置100は、エネルギー汚染モニタモードで動作するようになる。このモードでは、減速された正のイオン150は、正にバイアスされる電極130および132に印加される陽電位により提供される電界によってコレクタ140に到達するのを阻まれ、中性粒子によりコレクタ140から開放された電子160は、第1および第2の正にバイアスされる電極130および132により収集される。したがって、エネルギー汚染モニタモードでは、装置100は、減速されるイオンビーム170内のエネルギー汚染レベルを測定することができる。
【0011】
このように、1つの電極のバイアスを選択的に逆にすることにより、本発明の装置は、図1のファラデーモードと、および、図2のエネルギー汚染モニタモードにおいて選択的に動作することができる。このように、本発明の電極は、イオンビームにおける電流およびエネルギー汚染レベルの1つを選択的に測定する測定デバイスを含む。このような動作の装置および方法は、現時点で技術的に知られている2つまたはそれ以上の装置の代わりに用いることもできる。例えば、本発明の装置および方法は、バリアンセミコンダクターイクイップメントアソシエイツ社より入手できるVIIStaHCプロセスチャンバを含むプロセスチャンバの裏側の角度測定カップの代わりとして用いることもできる。また、本発明の装置および方法は、このようなチャンバにおける線量モニタカップおよびエネルギー汚染モニタとして用いることもできる。したがって、本発明の装置および方法は、高電流機械の線量および品質制御機能における、現時点では別々の装置により果たされる3つの役割を遂行する。
【0012】
以上、本発明を特定の実施形態を用いて説明したが、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることができることは当業者にとって明らかであろう。したがって、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。様々な変更は、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の以下の実施形態を以下の図面を参照して詳細に説明する。同様の参照符号は同様の構成要素を表わす。
【0014】
【図1】ファラデーモードにおける本発明の装置を示す。
【図2】エネルギー汚染モニタモードにおける本発明の装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビーム測定装置であって、
前記イオンビームを受ける一の開口と、
前記開口に隣接して配置された一の負にバイアスされる電極と、
前記負にバイアスされる電極に隣接して配置された一の正にバイアスされる電極と、
前記正にバイアスされる電極に隣接して配置された一の選択的にバイアスされる電極と、
一のコレクタと、
を備え、
前記選択的にバイアスされる電極は、負または正に選択的にバイアスされ得る、イオンビーム測定装置。
【請求項2】
前記装置は、前記選択的にバイアスされる電極が負にバイアスされる場合、一のイオンビームの一の電流を測定する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記負にバイアスされる電極により、複数の低エネルギー電子が前記装置から実質的に排除される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記正にバイアスされる電極により、複数の低エネルギーイオンが前記装置から実質的に排除される、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
複数の高エネルギーイオンが前記コレクタにぶつかる、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記コレクタから発せられた複数の低エネルギー電子は、前記選択的にバイアスされる電極により実質的に抑制され、前記コレクタ内に保持される、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、前記選択的にバイアスされる電極が正にバイアスされる場合、前記イオンビーム内の一のレベルのエネルギー汚染を測定する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
複数の減速された正イオンは、前記正に付勢される電極および前記選択的に付勢される電極の少なくとも1つにより、前記コレクタに到達するのを実質的に阻まれる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
複数の高エネルギー中性粒子が前記コレクタにぶつかる、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記コレクタから解放された複数の電子は、前記正に付勢される電極および前記選択的に付勢される電極の少なくとも1つにより収集される、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、前記選択的にバイアスされる電極が負にバイアスされる場合、前記イオンビームの一の電流を測定し、前記選択的にバイアスされる電極が正にバイアスされる場合、前記イオンビームにおける一のレベルのエネルギー汚染を測定する、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
一のオンビーム内の一の電流、および、一のレベルのエネルギー汚染の1つを選択的に測定する方法であって、
一の装置を提供する工程であって、前記装置は、
前記イオンビームを受ける一の開口と、
前記開口に隣接して配置された一の負にバイアスされる電極と、
前記負にバイアスされる電極に隣接して配置される一の正にバイアスされる電極と、
前記負にバイアスされる電極に隣接して配置され、負または正に選択的にバイアスされ得る一の選択的にバイアスされる電極と、
一のコレクタと、
を備える工程と、
前記イオンビーム内の一の電流を測定すべく、前記選択的にバイアスされる電極に対し一の負のバイアスを選択し、前記イオンビーム内の一のレベルのエネルギー汚染を測定すべく、前記選択的にバイアスされる電極に対し一の正のバイアスを選択する工程と、
を含む方法。
【請求項13】
前記選択的にバイアスされる電極が負にバイアスされる場合、複数の低エネルギー電子は、前記負にバイアスされる電極により前記装置から実質的に排除される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記選択的にバイアスされる電極が負にバイアスされる場合、複数の低エネルギーイオンは、前記正にバイアスされる電極により前記装置から実質的に排除される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記選択的にバイアスされる電極が負にバイアスされる場合、複数の高エネルギーイオンが前記コレクタにぶつかる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記選択的にバイアスされる電極が負にバイアスされる場合、前記コレクタから発せられる複数の低エネルギー電子は、前記選択的にバイアスされる電極により実質的に抑制され、前記コレクタ内に保持される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記選択的にバイアスされる電極が正にバイアスされる場合、複数の減速される正イオンは、前記正にバイアスされる電極および前記選択的にバイアスされる電極の少なくとも1つにより、前記コレクタに到達することを実質的に阻まれる、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記選択的にバイアスされる電極が正にバイアスされる場合、複数の高エネルギー中性粒子が前記コレクタにぶつかる、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記選択的にバイアスされる電極が正にバイアスされる場合、前記コレクタから解放された複数の電子は、前記正にバイアスされる電極および前記選択的にバイアスされる電極の少なくとも1つにより収集される、請求項12に記載の装置。
【請求項20】
イオンビーム測定装置であって、
前記イオンビームを受ける一の開口と、
前記イオンビーム内の一の電流、および、一のレベルのエネルギー汚染の1つを選択的に測定する複数の電極を含む一の測定デバイスと、
一のコレクタと、
を含むイオンビーム測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−530759(P2008−530759A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555376(P2007−555376)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/005469
【国際公開番号】WO2006/089021
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(500324750)バリアン・セミコンダクター・エクイップメント・アソシエイツ・インコーポレイテッド (88)
【Fターム(参考)】