説明

イオン交換樹脂または限外ろ過膜の検査方法

【課題】 洗浄工場において出荷の直前に、イオン交換樹脂または限外ろ過膜の品質の良否を簡易且つ迅速に判定することができるイオン交換樹脂または限外ろ過膜の検査方法を提供する。
【解決手段】 被検体としてのイオン交換樹脂を充填したカラムまたは被検体としての限外ろ過膜を装填した限外膜ろ過装置に、溶存酸素を除去した超純水を供給して通水し、該カラムから流出したカラム流出水をウエハを装填したウエハホルダに供給してウエハと接触させ、接触後のウエハの表面状態を測定することにより、当該被検体としてのイオン交換樹脂または限外ろ過膜の良否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造用の超純水のサブシステムに使用するイオン交換樹脂または限外ろ過膜の検査方法に係り、特に樹脂洗浄工場において出荷の直前に製品の品質の検査を実施することができるイオン交換樹脂または限外ろ過膜の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造向け超純水製造用サブシステムで使用するイオン交換樹脂は、次のように品質検査が行われている。すなわち、上記のイオン交換樹脂は、樹脂洗浄工場で洗浄後、その一部を取り出してイオン交換樹脂の充填容器に充填した状態で超純水を通水する。そして、該通水時の超純水についてTOC値と抵抗率を測定し、溶出TOC値としてグレード別に1〜10μg/lの範囲内であることと、抵抗率として15〜18MΩ・cm以上であることを確認した後、そのような合格基準を満たしたイオン交換樹脂が製品として出荷されていた。しかし、出荷時における上記の検査方法がTOC値と抵抗率のみであったため、イオン交換樹脂が半導体製品に対し、どの程度影響するかを評価できなかった。
【0003】
そのため、従来の出荷時の検査方法では、合格基準を満たすことを確認した上でイオン交換樹脂を出荷した場合であっても、最近の半導体製品の急速な性能向上には、品質基準が合わなくなってきた。また、このような原因の一つとして、最近の半導体製品は酸化膜厚さが薄く、数nm〜数10nm程度の厚さになってきていることが挙げられる。この傾向は、システムLSI、特にフラッシュメモリーを製造している工場で顕著であり、具体的には、交換した新品のイオン交換樹脂から超微量有機物が溶出し、該超微量有機物によってウエハ面が荒らされ、該ウエハ面上に形成される酸化膜(層間絶縁膜)が平坦さを失い、I−V特性や耐圧不良が発生し、1ヶ月〜6ヶ月もの間、製品の製造を行えないというトラブルが近年頻発するようになってきた。
【0004】
特開平5−264524号公報には、イオン交換樹脂の評価方法として、被検体としてのイオン交換樹脂を充填したカラムに純水を通水して、その流出水をウエハと接触させ、ウエハに吸着した不純物原子を分析する方法が開示されている。また、特開2003−334550号公報には、イオン交換樹脂から溶出するウエハ汚染物質としてポリトリメチルベンジルアンモニウム塩やポリトリメチルスチリルアルキルアンモニウム塩等のアンモニウムポリマ(以下「PSQ」という。)およびPSQとポリスチレンスルホン酸(以下「PSA」という。)との錯体が挙げられている。
【特許文献1】特開平5−264524号公報
【特許文献2】特開2003−334550号公報 しかしながら、半導体製品への影響についてウエハに吸着した不純物の分析や、イオン交換樹脂の処理水または限外ろ過膜の処理水の水質分析から評価すべき対象物質が完全に判明しない場合が多い。そして、半導体製品の品質に影響する可能性の高い有機物の種類は極めて多く、特定するのが困難であるだけでなく、超純水に含有される量もng/lオーダーと極微量である。このように、仮に主たる汚染源がPSQやPSAであるとした場合であっても、分析下限値レベルの含有量であるため、PSQやPSAを測定する評価方法では、樹脂洗浄工場においてイオン交換樹脂を製品として出荷する直前に、当該イオン交換樹脂の品質の良否を簡易且つ迅速に判定することは極めて困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
新品イオン交換樹脂からの超微量有機物により、半導体製品の不具合が多発するようになったことは上記した通りである。このような半導体製品の不具合の原因として、イオン交換樹脂の洗浄が大きく影響することが考えられる。そして、上記の不具合を生じさせる原因物質が、イオン交換樹脂から溶出する物質(PSQやPSA)である可能性が高い。発明者らも、そのような不具合原因の物質として、ベンゼン環骨格にアミノ基を有し、分子量としては150〜600程度の化合物を想定した。具体的には、アニオン交換樹脂から溶出する主な化合物であるモノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミンなどの低分子アミンだけでなく、高分子の疎水性アミンが、上記の不具合原因の物質であると考えられる。同様に限外ろ過膜からも微量の不具合原因物質が溶出していると考えられる。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、上記従来の問題点を解決し、樹脂洗浄工場において出荷の直前に、イオン交換樹脂の品質の良否を簡易且つ迅速に判定することができるイオン交換樹脂または限外ろ過膜の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らは、製品に近い段階における出荷前の検査法として、シリコンウエハを用いて、この表面荒れを生じさせる物質の有無を間接的に評価する手法を確立した。すなわち、上記の目的は、本願の特許請求の範囲の各請求項に記載した発明により達成される。
【0008】
本願請求項1に記載した、半導体製造用の超純水のサブシステムに使用するイオン交換樹脂または限外ろ過膜の検査方法の発明は、被検体としてのイオン交換樹脂を充填したカラムまたは被検体としての限外ろ過膜を装填した装置に、溶存酸素を除去した超純水を供給して通水し、該カラムから流出したカラム流出水を、ウエハと接触させ、接触後のウエハの表面状態を測定することにより、当該被検体としてのイオン交換樹脂または被検体としての限外ろ過膜の良否を判定することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ウエハの表面状態の測定が、ウエハ表面粗度の平均粗さRa値(nm)および最大高低差Rmax(nm)の測定手段によって行われ、
次式(1):Ra値≦許容基準値A
および、次式(2):Rmax値≦許容基準値B
によって示される判定式に基づき、判定値であるRa値およびRmax値と良品を以て予め設定してある許容基準値とを比較し、当該判定値がそれぞれ許容基準値AおよびB以下であるか否かを以て、被検体としてのイオン交換樹脂または被検体としての限外ろ過膜の良否を判定することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記ののウエハとして、n型、p型、及びシリコン単結晶インゴットより該インゴットの(100)面に対して傾斜角度を持たせて切り出されたベアシリコンウエハのいずれかを使用したことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明ににおいて、上記のイオン交換樹脂を充填したカラムまたは被検体としての限外ろ過膜を装填した装置に通水される超純水として、溶存酸素濃度が100μg/l以下の超純水を用いることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記カラムまたは前記限外ろ過膜を装填した装置からの流出水を、ウエハホルダに充填されたウエハと接触させることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明において、前記カラムまたは前記限外ろ過膜を装填した装置からの流出水を、ウエハ洗浄槽内のウエハホルダ上に載置されたウエハと接触させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の検査方法によれば、合格とされたイオン交換樹脂または限外ろ過膜を用いてサブシステムのイオン交換樹脂または限外ろ過膜を交換することにより、当該交換後1日経過した後にLSI製品等の製造を開始した場合であっても、不良品が製造される割合を極めて低減することができる。
【0015】
また、本発明の検査方法は、イオン交換樹脂または限外ろ過膜の品質の良否を簡易且つ迅速に判定することができる。したがって、本発明によれば、樹脂・膜の洗浄工場において出荷の直前に製品の品質の検査を実施することができるだけでなく、製品の出荷先の客先半導体工場における品質の検査を好適に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の検査方法を実施するために構成されたイオン交換樹脂の検査装置の構成概要の一例を示す。本装置は、脱気膜装置1、樹脂カラム2、ウエハホルダ3を備えている。
【0017】
この図において、脱気膜装置1は、カラム2を経てウエハホルダ3内に超純水を導入する際に、溶存酸素(DO)を100μg/l以下にし、ウエハ表面に自然酸化膜の成長を抑制するために設けられる。上記の脱気膜装置1は管路11及び管路12に連結されており、管路11から該脱気膜装置1に流入する超純水は脱気処理され、12を通じ、カラム2に導入される。カラム2には、被検体であるイオン交換樹脂4が充填されている。カラム2でイオン交換樹脂と接触した超純水は管路21から、ウエハホルダ3に導入され、該ウエハホルダ3内に装着されたウエハ5と接触し、管路31から外部に取り出される。
【0018】
尚、超純水を脱気処理する必要があるのは、通水する超純水中に溶存酸素があると、ウエハホルダ3内に装着されたシリコンウエハに酸化膜が形成されて、被検体としてのイオン交換樹脂を正確に検査できないおそれがあるためである。従って、本発明の検査方法に使用する超純水としては、溶存酸素を除去した超純水を使用する。或いは、図1の検査装置に示されるように、超純水がカラム2に供給される以前に、上記の脱気膜装置1等の脱気処理手段により該超純水を脱気処理する。該脱気処理手段としては、既知の手段を採用でき、小型の脱気膜装置を用いるのが好ましい。尚、超純水製造装置から供給される超純水が、溶存酸素濃度100μg/l以下の水質であれば、本発明の構成から、脱気膜装置1を省略することができる。
【0019】
次に、図1に示すイオン交換樹脂の検査装置による、イオン交換樹脂の検査方法を説明する。まず、予め超純水(UPW)洗浄したイオン交換樹脂を被検体としてカラム2に充填する。カラム2へのイオン交換樹脂の充填量は、500ml〜2000mlとする。
【0020】
また、直径6インチ〜12インチのシリコンウエハを用意し、該シリコンウエハをクリーンな環境下で希フッ酸処理し、表面の自然酸化膜を除去する前処理を行う。次いで、クリーンな環境下で、前処理後のシリコンウエハをウエハホルダ3に装着する。尚、使用するシリコンウエハとして、n型、p型、或いはそれらのシリコン単結晶インゴットより該インゴットの(100)面に対して傾斜角度を持たせて切り出されたベアシリコンウエハのいずれでも良い。但し、切り出されるシリコンウエハの該傾斜角度は、前記(100)面に対して[011]方向に角度3°<θ<5°の範囲であることが好ましい。例えば、本発明の検査方法において、4°off型シリコンウエハを使用すれば、シリコン結晶を全体的に曝露した状態で評価することができるので、より厳格な検査をすることができる。
【0021】
次に、上記したように構成されたイオン交換樹脂の検査装置において、超純水が脱気膜装置1内に導入されて脱気処理された後、カラム2に通水される。通水時は、ウエハホルダ3内に空気溜まりが生じないように、脱気処理の状態を十分確認する。超純水を脱気処理する必要があるのは、上記したように、ウエハホルダ3に装着されたシリコンウエハに酸化膜が形成されるのを防止するためである。なお、カラム2に通水するための超純水の溶存酸素濃度は、DO100μg/l以下とする。また、超純水の通水速度は250〜2000ml/minとし、通水時間は、通水時間は15min〜120minとする。
【0022】
上記の脱気膜装置1により脱気処理された超純水は、カラム2に導入され、次いでウエハホルダ3に導入される。ウエハホルダ3に導入された超純水は、ウエハホルダ3内でウエハ5と接触し、管路31から外部に流出させる。
【0023】
一方、樹脂カラム2に導入された超純水は、被検体としてのイオン交換樹脂23と接触した後に、樹脂カラム2から流出し、当該流出した超純水の一部は、第1ウエハホルダ54に導入され、その内部で第1のウエハ55と接触し、第1ウエハ接触水移送管57から外部に取り出される。
【0024】
ウエハ5に、15min〜120minの所定時間の範囲内で、上記したように超純水を接触させた後、ウエハホルダ3からウエハ5を取り出し、スピンドライヤー等の使用により、クリーンな状態で室温〜150℃の範囲内で乾燥する。
【0025】
ところで、シリコンウエハ表面は、露出したウエハのシリコン原子に水素原子が結合することにより、ウエハ外表面のシリコンの全てが水素終端処理されることになり、これによって洗浄処理後のシリコンウエハ表面は、化学的に安定であるといわれる。しかし、水素終端処理されたシリコンウエハがエッチングされると、シリコン原子と水素原子の結合度合いが低くなり、該シリコンウエハ表面の水素原子が部分的に除去される。
【0026】
そこで、イオン交換樹脂方法として、ウエハ表面粗度の平均粗さRa値(nm)および最大高低差Rmax値(nm)の測定を行い、上記の(1)式及び(2)式に基づき合否の判定を行うことができる。
【0027】
すなわち、当該判定値であるRa値およびRmax値をそれぞれ許容基準値AおよびBと比較し、当該判定値が許容基準値以下であるか否かを以て、被検体としてのイオン交換樹脂の良否を判定することもできる。
【0028】
上記(1)式の許容基準値Aとしては、イオン交換樹脂の使用目的によって異なるが、最近の半導体製品の急速な性能向上に対応した品質を確保するには、0.22nm以下、好ましくは0.20nm以下に設定するのが好適である。すなわち、本発明において、上記(1)式に基づき、判定値であるRa値が0.22nm以下であることを確認して、カラム2内のイオン交換樹脂4を品質上の合格製品として出荷及び/又は使用することが好ましい。また上記(2)の許容基準値Bとしては、(1)式の場合と同様の理由により、3.0nm以下、好ましくは2.3nm以下に設定するのが好適である。すなわち、本発明において、上記(1)式及び(2)式に基づき、判定値であるRa値およびRmax値がそれぞれ許容基準値AおよびB以下であることを確認して、カラム2内のイオン交換樹脂4を品質上の合格製品として出荷及び/又は使用することが好ましい。尚、Ra値及びRmaxは、AMF(Atomic Force Microscope 原子間顕微鏡)、タッピングモード原子間力顕微鏡等の測定手段を用いることにより、測定することができる。
【0029】
図1のイオン交換樹脂の検査装置において、使用されるウエハホルダ3の一実施形態を図2(A)及び(B)に示す。図2(A)及び(B)に示すウエハホルダは、上蓋110と、上面に有する円形の窪み121を上記上蓋によって塞がれる底盤120とからなる。上蓋110と底盤120の外形は例えば円形で、上蓋の中心には給水口111、底盤120の中心は排水口122が開設されている。底盤120の上面の周縁部には円周方向に等間隔に位置決め突起123が設けてあり、これに対応して上蓋の下面の周縁部には上記位置決め突起を受入れる凹部が設けてある。従って、底盤の上面上に上蓋を載せ、上蓋の凹部を前記位置決め突起123に嵌めると、上蓋は正しく底盤の上に重なり、底盤の円形の窪み121の上面を塞ぐ。
【0030】
底盤の円形の窪み121の内径は保持すべきウエハWの直径よりも充分に大であり、その窪みの底の中心に前記排水口122の上端が開口している。窪み121の底面上には円周方向に等間隔に複数の、図では3つの放射状畝124が隆設してある。この放射状畝124の内端は排水口122の回りに位置し、外端は窪み121の内周面から内側に間隔を保って離れている。そして、ウエハWは上記複数の放射状畝124の上に水平に保持する。そのため、各畝の外端部上にはウエハの周縁部を載せる段126を有する階段形の支持台125が設けてある。段126の段差はウエハの厚さ(約0.6mm)に対応している。又、必要に応じ、各畝124の中間部上にウエハの半径方向の途中の下面を支持する支持部127を突設する。
【0031】
上蓋110の下面には、給水口111の下端に連なった富士山形の通水用凹部112が設けてある。この通水用凹部112の内径は、底盤の円形の窪み121の内径に等しい。通水用凹部112を富士山形と称したのは、断面形状において、凹部112の下面が半径方向外向きに、前記階段形の支持台125に水平に支持されたウエハWの上面に次第に近付くようにしてある。上記窪みの底の周縁部121′に達した水は、窪み121の底と放射状の畝によって持ち上げられたウエハの下面との間の隙間を通って中心の排水口122に向かって流れ、該排出口122から外に流出する。
【0032】
上蓋の給水口111と、底盤の排水口122には外気と容器の内部を遮断するために弁をねじ込んで設け、クリーンルーム以外への容器持ち運び時は、前記弁を閉とし、水との接触を実施する際にのみ開にする。給水口111に設ける弁は3方弁(原水→容器内、原水→排出を切り換える)113を用いることが好ましい。本容器を水に接触させる前に、該弁113を「原水→排出」を切り換えておいて容器内に水を入れないで水を流すことができるようにしておけば、サンプリング用の流路の洗浄ができるという効果がある。又、排水口122に設ける弁128は開閉用の2方弁でよい。
【0033】
上蓋110、底盤120の材質としては、加工が比較的容易で耐久性のある合成樹脂を使用する。そのような合成樹脂として、ポリプロピレン樹脂、フッ素系樹脂、及びアクリル樹脂等を挙げることができる。又、容器の表面に付着している不純物を除去するために、容器使用前に加温超純水による洗浄や、超音波を使った洗浄を行う。
【0034】
ところで、通水時にウエハホルダ5の内部に空気が残留していると、装着されたシリコンウエハに酸化膜が形成される恐れがある。そこで、ウエハホルダ内部の空気を除去するため、エア抜き用の2方弁114を設けることが好ましい。該エア抜き用の2方弁114は上蓋110の上側に設けられ、通水用凹部112とウエハホルダ外部とを連通している。そして、超純水が上記ウエハホルダ内部に通水されるように、3方弁113を「原水→容器内」に切り換えるとともに、弁128を閉じ、超純水をウエハホルダ内部に導入すれば、ウエハホルダ内部の空気は2方弁114を介して押し出される。
【0035】
尚、図2(A)の例では、エア抜き用の2方弁を備えたエア抜き管は、上蓋110を貫通するように設けられたものであるが、底盤120を貫通するように構成することもでき、この場合には、ウエハホルダを逆さにしてエア抜きを行う。
【0036】
上述のウエハホルダ5のほかに、超純水とシリコンウエハを接触させる容器としては、カラム型の接触容器を使用しても良い。カラム内の集水板上にシリコン物質を所定量充填し、充填物上方から試料水を供給すると共に充填物下方から接触済みの試料水を排出する。また、洗浄槽型の接触容器を使用してもよい。シリコンウエハを載置したウエハホルダを洗浄槽内に配置し、洗浄槽下部から超純水を導入して上向流でシリコンウエハに接触させた後、洗浄槽上部からオーバーフローで試料水を排出する。構成材料としては水と接触しても溶出物が極めて少ない材料であれば良く、アクリル樹脂が好ましい。
【0037】
また、本例においては、カラム2に流出した超純水を管路21から図示しないイオンクロマト分析装置に送水し、金属類の不純物やSO4イオン濃度等を測定することができる。ウエハホルダ5内に装填されたウエハ5と接触した超純水についても、管路31から図示しないイオンクロマト分析装置に送水し、金属類の不純物やSO4イオン濃度等を測定することにより、超純水の水質評価も同時に行うことができる。
【0038】
また、上述のイオン交換樹脂は、カチオン交換樹脂単独、アニオン交換樹脂単独またはカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を混合した場合のいずれにおいても本発明の検査方法を実施することができる。また、本発明の検査方法は、再生洗浄工場で再生洗浄処理されたイオン交換樹脂、或いは新品のイオン交換樹脂のいずれに対しても実施することができる。
【0039】
以上カラム2に充填したイオン交換樹脂の検査方法について述べたが、カラム2に代えて、限外ろ過膜を装填した装置を配置して、同様に限外ろ過膜の検査を
行うことができる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0041】
(従来例の検査方法)
洗浄済みのカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを交換容量比1:1で混合し、混合したイオン交換樹脂(以下、「混合樹脂A」という。)を調製した。該混合樹脂Aの一部をイオン交換樹脂の検査装置の樹脂カラムに充填した。次いで、超純水を該樹脂カラムに通水し、該樹脂カラムから流出する超純水の水質を測定した。上記の混合樹脂Aに接触した超純水の水質を測定した結果、TOCは1ppb以下、比抵抗率は18.2MΩ・cmであった。
【0042】
次に、超純水製造装置のサブシステムに設けられた非再生型のイオン交換塔に充填されていた混合樹脂を全て除去し、上記の混合樹脂Aを該イオン交換塔に新たに充填した。このように、混合樹脂Aに交換した非再生型のイオン交換塔を使用して超純水を製造し、得られた超純水を使用してシリコンウエハを洗浄した。
【0043】
その結果、混合樹脂の交換前は、正常なシリコンウエハを生産できたにも関わらず、上記のように、非再生型のイオン交換塔に充填される混合樹脂を混合樹脂Aに交換した後は、交換後1日目で、洗浄されたシリコンウエハの酸化膜が耐圧不良となる不具合が生じた。
【0044】
[実施例1]
(本発明の検査方法)
直径6インチのn型シリコンウエハをテフロン(登録商標)製の槽を用いて、希フッ酸洗浄を行い、ウエハの表面を洗浄化した。洗浄後のn型シリコンウエハを図2に図示される構造のウエハホルダ5に装着した。次いで、図1に示した装置に、ウエハホルダ5装着し、イオン交換樹脂の検査装置を構成した。
【0045】
一方、上記の混合樹脂Aを一次合格品として、更に、混合樹脂Aの洗浄を継続した。そして、上記の図1の検査装置を用いた検査を行い、上記(1)および(2)式によって示される判定値がそれぞれ許容基準値AおよびBを下回るまで混合樹脂Aの洗浄を行い、合格混合樹脂を調製した。尚、該合格混合樹脂の検査項目及び検査結果は、表1に示す通りであった。
【0046】
【表1】

次に、超純水製造装置のサブシステムに設けられた非再生型のイオン交換塔に充填されていた混合樹脂を全て除去し、上記の合格混合樹脂を該イオン交換塔に新たに充填した。このように、合格混合樹脂に交換した非再生型のイオン交換塔を使用して超純水を製造し、得られた超純水を使用してシリコンウエハを洗浄した。
【0047】
その結果、上記のように、非再生型のイオン交換塔に充填される混合樹脂を合格混合樹脂に交換した後、交換後1日目から3ヶ月間の運転期間中、良品率は90%以上であり、洗浄されたシリコンウエハの酸化膜が耐圧不良となる不具合は発生しなかった。
【0048】
このように、本発明の検査方法によれば、樹脂洗浄工場において、出荷の直前に製品の品質の検査を実施することができ、本発明の検査方法により良品とされた製品は、サブシステムのイオン交換樹脂を交換して1日経過後に半導体製品の製造を開始した場合であっても、品質不良は生じ難くなることが確認された。
【0049】
[実施例2]
実施例1において、図1における被検体である混合樹脂Aを充填したカラム2に代えて、被検体である限外ろ過膜モジュール(栗田工業株式会社製UF膜、KU−1510HS、中空糸系ポリサルホン、分画分子量80000)を装填した装置を配置し、超純水を通水し、実施例1と同様に、許容基準値AおよびBの測定を行い、両基準値を下回るまで超純水で洗浄を行い、限外ろ過膜モジュールの合格品を得た。次にこの合格品を超純水製造装置のサブシステムに設けられている限外ろ過膜装置の膜モジュールと交換し、超純水を製造し、得られた超純水を使用してシリコンウエハを洗浄したところ、実施例1と同様に、交換後1日目から通常操業が可能であった。
【0050】
(段落38へ移動)
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の検査方法を実施するために構成されたイオン交換樹脂の検査装置の構成概要の一実施態様である。
【0052】
【図2】(A)図1に示すイオン交換樹脂の検査装置において使用される、該検査装置を構成するシリコン接触容器の一実施形態の断面図である。(B)図2(A)のシリコン接触容器の底盤120の斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
1 脱気膜装置
2 カラム
3 ウエハホルダ
4 被検体としてのイオン交換樹脂
5 ウエハ
11、12、21、31 管路
110 上蓋
111 上蓋の給水口
112 上蓋の通水用凹部
114 エア抜き用の2方弁
120 底盤
121 底盤の円形の窪み
122 底盤の排水口
124 底盤の放射状畝
125 放射状畝の階段形支持台
W ウエハ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造用の超純水のサブシステムに使用するイオン交換樹脂または限外ろ過膜の検査方法において、
被検体としてのイオン交換樹脂を充填したカラムまたは被検体としての限外ろ過膜を装填した装置に、溶存酸素を除去した超純水を供給して通水し、該カラムから流出したカラム流出水を、ウエハと接触させ、接触後のウエハの表面状態を測定することにより、当該被検体としてのイオン交換樹脂または限外ろ過膜の良否を判定することを特徴とする、イオン交換樹脂または限外ろ過膜の検査方法。
【請求項2】
ウエハの表面状態の測定が、ウエハ表面粗度の平均粗さRa値(nm)および最大高低差Rmax(nm)の測定手段によって行われ、
次式(1):Ra値≦許容基準値A
および、次式(2):Rmax値≦許容基準値B
によって示される判定式に基づき、判定値であるRa値およびRmax値と良品を以て予め設定してある許容基準値とを比較し、当該判定値がそれぞれ許容基準値AおよびB以下であるか否かを以て、被検体としてのイオン交換樹脂または限外ろ過膜の良否を判定することを特徴とする、請求項1に記載のイオン交換樹脂または限外ろ過膜の検査方法。
【請求項3】
上記ののウエハとして、n型、p型、及びシリコン単結晶インゴットより該インゴットの(100)面に対して傾斜角度を持たせて切り出されたベアシリコンウエハのいずれかを使用したことを特徴とする、請求項1または2に記載のイオン交換樹脂または限外ろ過膜の検査方法。
【請求項4】
上記のイオン交換樹脂を充填したカラムまたは限外ろ過膜を装填した装置に通水される超純水として、溶存酸素濃度が100μg/l以下の超純水を用いることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のイオン交換樹脂または限外ろ過膜の検査方法。
【請求項5】
前記カラム流出水を、ウエハホルダに充填されたウエハと接触させることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のイオン交換樹脂または限外ろ過膜の検査方法。
【請求項6】
前記カラム流出水を、ウエハ洗浄槽内のウエハホルダ上に載置されたウエハと接触させることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のイオン交換樹脂または限外ろ過膜の検査方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−256011(P2007−256011A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79387(P2006−79387)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】