説明

イオン化式煙感知器

【課題】周囲温度が変化したときにおいても正確に所定の煙濃度に達したとき火災信号を発するイオン化式煙感知器を提供する。
【解決手段】イオン化式煙感知器は、煙の流入によるイオン電流の変化に伴って変化するセンサ出力電圧を出力する煙センサと、上記煙センサの周囲温度を計測する温度計測部と、複数の温度において予め計測された電圧差分対煙濃度データが格納され、上記センサ出力電圧と煙の流入のないときのセンサ出力電圧とから電圧差分を算出し、上記周囲温度に最も近い温度の電圧差分対煙濃度データから上記電圧差分に対応する煙濃度を求め、上記煙濃度が予め定められた閾値より大きくなったとき、火災信号を発する信号処理部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火災に伴って発生する煙により変化するイオン電流を検出するイオン化式煙感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の煙感知器は、煙センサの周囲温度検出部の製造時と監視時とにおけるセンサ出力電圧の電圧差を演算し、電圧差と温度差との関係からこの電圧差を周囲温度差に変換する。次に、この周囲温度差を製造時の周囲温度に加えて求められた現在の温度を、温度対センサ出力補償係数テーブルに基づいて、センサ出力電圧補償係数に変換する。そして、監視時における煙センサのセンサ出力電圧に、求められたセンサ出力電圧補償係数を掛けることにより、煙センサのセンサ出力電圧を温度補償する(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−220184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、イオン化式煙感知器のセンサ出力電圧に求められたセンサ出力電圧補償係数を掛けて温度補償することでは、正確に温度補償ができないという問題がある。すなわち、周囲温度が異なると、煙濃度とイオン電流の変化との関係が違ってくるので、周囲温度に基づくセンサ出力電圧補償係数を一義的には求めることができないという問題がある。
【0005】
この発明の目的は、周囲温度が変化しても正確に所定の煙濃度に達したとき火災信号を発するイオン化式煙感知器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わるイオン化式煙感知器は、煙の流入によるイオン電流の変化に伴って変化するセンサ出力電圧を出力する煙センサと、上記煙センサの周囲温度を計測する温度計測部と、複数の温度において予め計測された電圧差分対煙濃度データが格納され、上記センサ出力電圧と煙の流入のないときのセンサ出力電圧とから電圧差分を算出し、上記周囲温度に最も近い温度の電圧差分対煙濃度データから上記電圧差分に対応する煙濃度を求め、上記煙濃度が予め定められた閾値より大きくなったとき、火災信号を発する信号処理部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係わるイオン化式煙感知器は、イオン電流の煙濃度依存性が所定の周囲温度の間隔で予め計測した値を用いることができるので、周囲温度が変化しても正確に所定の煙濃度に達したとき火災信号を発することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1のイオン化式煙感知器のブロック図である。図2は、電圧差分対煙濃度データがプロットされた図である。
イオン化式煙感知器1は、周囲の空気が一定濃度以上の煙を含むに至ったときに作動するもので、1局所の煙によるイオン電流の変化により作動する。
イオン化式煙感知器1は、図1に示すように、煙センサ2、周囲温度計測部3、信号処理部4から構成されている。
【0009】
煙センサ2は、イオンチャンバ5とイオンチャンバ5内のイオン電流をセンサ出力電圧Vとして出力するFET6とから構成されている。
イオンチャンバ5は、内部電極7、中間電極8および外部電極9が備えられている。そして、中間電極8により所定の空間が囲まれて内部イオン室10が形成され、外部電極9により内部イオン室10の外側の所定の空間が囲まれて外部イオン室11が形成される。内部電極7は、アメリシウムなどの放射性物質からなるイオン線源12が備えられている。内部電極7は、イオン化式煙感知器1の図示しない定電圧回路から電源電力が供給されている。一方、外部電極9は、接地されている。中間電極8は、FET6のゲートに接続されている。
【0010】
外部イオン室11に煙の流入がないとき、所定の量の空気がイオン線源12からの放射線によりイオン化され、内部電極7と中間電極8、中間電極8と外部電極9との間にイオン電流が流されている。そして、内部電極7と中間電極8との間、中間電極8と外部電極9との間にそれぞれ内部電位差EINと外部電位差EOUTが発生している。
煙が外部イオン室11に流入したとき、煙粒子にイオンが吸着され、中間電極8と外部電極9との間に流れるイオン電流が減少するので、外部電位差EOUTが大きくなる。一方、内部イオン室10のイオン電流は変化しない。
【0011】
FET6は、外部電位差EOUTの変化に伴ってゲート電圧が変化すると、ソース電圧Vが変化する。そして、このソース電圧Vが信号処理部4に入力される。
【0012】
周囲温度計測部3は、煙センサ2の周囲温度を計測するものであり、ダイオード13、14とこれらダイオード13、14と直列に接続された抵抗15とから構成されている。
つまり、電源に抵抗15の一端が接続され、抵抗15の他端がダイオード13のアノード端子に接続され、ダイオード13のカソード端子にダイオード14のアノード端子が接続され、ダイオード14のカソード端子がアースされる。抵抗15の他端とダイオード13のアノード端子との接続端子が周囲温度計測部3の出力端子16となる。この出力端子16から温度アナログ電圧Vが出力される。
例えば、PN接合シリコンダイオードに一定の順方向電流を流した場合、その電圧降下は常温で約0.6Vとなり、−2.0〜−2.5mV/℃の温度特性を示す。この順方向電圧を測定することにより、周囲温度の変化を検出することができる。
【0013】
信号処理部4は、出力電圧処理手段21、温度データ処理手段22、基準データ格納手段23、煙濃度算出手段24、火災判定手段25、送信手段26から構成されている。信号処理部4は、CPU、RAM、ROM、インタフェース回路を有するコンピュータから構成されている。インタフェース回路は、2つのアナログ・デジタル変換回路(A/D変換回路)を有している。一方のA/D変換回路は、FET6のソースに接続され、ソース電圧Vが入力される。また、他方のA/D変換回路は、周囲温度計測部3の出力端子16が接続され、温度アナログ電圧Vが入力される。
なお、以下の説明ではA/D変換の分解能を256ステップとする例をあげているが、これに限るものではなく、適切な分解能を採用してもよい。
【0014】
出力電圧処理手段21は、センサ出力電圧として、FET6から入力されるアナログのソース電圧Vを、256ステップのデジタルセンサ出力電圧VSDに変換する。さらに、基準データ格納手段23から基準電圧値VMINを読み出す。そして、デジタルセンサ出力電圧VSDを基準電圧値VMINと比較し、デジタルセンサ出力電圧VSDが基準電圧値VMIN未満のとき、そのデジタルセンサ出力電圧VSDにより基準電圧値VMINを更新し、基準データ格納手段23に記憶する。
さらに、出力電圧処理手段21は、デジタルセンサ出力電圧VSDと基準電圧値VMINとの電圧差分ΔVを求める。
なお、基準電圧値VMINを測定の度に測定値と比較し、更新する例をあげたが、製造時に計測された煙センサ2のセンサ出力電圧を基準電圧値VMINとして固定してもよい。
【0015】
温度データ処理手段22は、周囲温度計測部3から入力される温度アナログ電圧Vを256ステップの温度デジタル電圧VFDに変換する。そして、背景技術に示したような手順で基準データ格納手段23に保管されている基準温度、基準電圧および電圧差対温度差データ(変換テーブルまたは関係式)を利用して温度デジタル電圧VFDに相当する周囲温度Tを求める。
【0016】
基準データ格納手段23は、製造時に計測された煙の流入がないときの煙センサ2のデジタルセンサ出力電圧VSDにより初期化された基準電圧値VMIN、製造時の周囲温度である基準温度、製造時の周囲温度における温度デジタル電圧Vfである基準電圧、予め計測された周囲温度計測部3の温度差と温度デジタル電圧VFDの出力差との関係を示す電圧差対温度差データ、予め計測された設定温度毎の煙濃度と電圧差分との関係を示す電圧差分対煙濃度データが格納されている。
【0017】
ここで、煙濃度と電圧差分の関係について図2を参照して説明する。図2は、複数の設定温度における電圧差分対煙濃度データをプロットした図である。
イオン電流は、煙が含まれていない空気の場合、イオン線源が一定であれば温度依存性がわずかであるので、周囲温度が変わることによるイオン電流の変化は無視してよい。また、煙センサ2のセンサ出力電圧Vの電圧差分ΔVは、煙が含まれていない場合、零であるので、周囲温度が変化しても一定である。このときのセンサ出力電圧Vを初期値と称す。
一方、空気に煙が含まれる濃度(以下、煙濃度と称す。)が大きくなるに従い、イオンの煙に吸着される量が増えて、イオン電流が減少する。そして、煙センサ2のセンサ出力電圧Vは、煙濃度が増えるに従い、大きくなる。このセンサ出力電圧Vが大きくなる割合は、周囲温度の変化の影響を受ける。煙濃度が同じ場合、周囲温度が低いほどセンサ出力電圧は大きくなる。すなわち、周囲温度が低いほど、イオンがより多く吸着される現象を示す。
電圧差分対煙濃度データは、−25℃から+65℃に亘る1℃毎の設定温度において、煙濃度を変化し、それに対応するセンサ出力電圧を計測し、そのセンサ出力電圧と初期値との差から電圧差分を算出することにより求められたものである。電圧差分対煙濃度データは、設定温度毎にテーブル化されて基準データ格納手段23に格納されている。なお、テーブル以外に近似式(区画してもよい)を用いてもよい。
【0018】
煙濃度算出手段24は、温度データ処理手段22において求められた周囲温度Tから一番近い設定温度Tを求める。
次に、その設定温度Tの電圧差分対煙濃度データから電圧差分ΔVに相当する煙濃度Mを求める。
火災判定手段25は、煙濃度算出手段24において求められた煙濃度Mが予め定められた火災濃度に達したとき、火災発生と判断し、火災信号を発する。
送信手段26は、図示しないスイッチング回路による信号線間の低インピーダンス状態を維持することによって火災信号を図示しない火災受信機などに送信する。
【0019】
このようなイオン化式煙感知器は、予め複数の周囲温度における煙濃度と電圧差分との関係が計測されて格納されており、計測された周囲温度に従って煙濃度と電圧差分との関係から煙濃度を求めるので、周囲温度に大きく依存するイオン電流から正確に煙濃度を検出することができる。
【0020】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2に係わるイオン化式煙感知器のブロック図である。図4は、実施の形態2のイオン化式煙感知器における煙濃度の算出を説明するための図である。
実施の形態2のイオン化式煙感知器30は、図3に示すように、実施の形態1のイオン化式煙感知器1と信号処理部31の基準データ格納手段32および煙濃度算出手段33が異なっており、その他は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明を省略する。
【0021】
基準データ格納手段32は、6つの設定温度+65、+55、+25、−5、−15、−25℃における電圧差分対煙濃度データが格納されている。また、それに関連して基準データ格納手段32は、6つの設定温度+65、+55、+25、−5、−15、−25℃からなる設定温度表がさらに格納されている。
【0022】
次に、煙濃度算出手段33による煙濃度の算出について図4を参照して説明する。
煙濃度算出手段33は、温度データ処理手段22において求められた周囲温度Tから上下にそれぞれ一番近い高設定温度Tと低設定温度Tを設定温度表から求める。例えば、周囲温度Tが+15℃であるとき、高設定温度Tは+25℃、低設定温度Tは−5℃である。
次に、高設定温度Tと低設定温度Tとにおける電圧差分対煙濃度データから電圧差分ΔVにそれぞれ対応する高温度煙濃度Mと低温度煙濃度Mを求める。
次に、周囲温度Tにおける煙濃度Mを高温度煙濃度Mと低温度煙濃度Mから内挿式(1)に従って求める。
【0023】
M=M+(M−M)×(T−T)÷(T−T) (1)
【0024】
なお、式(1)において高温度煙濃度Mと低温度煙濃度Mから直線内挿して煙濃度Mを求めたが、これは低設定温度Tから高設定温度Tの間で電圧差分が一定のとき、煙濃度がほぼ直線的に減少していると想定できるからである。
もし、電圧差分が一定のとき、煙濃度が2次曲線に沿って変化するときには、2次関数からなる内挿式に従って煙濃度を求めても良いし、さらに高次の関数を用いて内挿してもよい。
【0025】
このようなイオン化式煙感知器は、計測された周囲温度の上下にそれぞれ一番近い2つの設定温度の電圧差分対煙濃度データから煙濃度をそれぞれ求め、その2つの煙濃度と2つの設定温度とから計測された周囲温度の煙濃度を内挿して求めるので、電圧差分対煙濃度データが少なくて済む。
【0026】
実施の形態3.
図5は、この発明の実施の形態3に係わるイオン化式煙感知器のブロック図である。図6は、状態情報収得システムの全体の動作のフローチャートである。図7は、火災判定サブルーチンのフローチャートである。図8は、状態情報算出サブルーチンのフローチャートである。図9は、ブリンキングサブルーチンのフローチャートである。
【0027】
この実施の形態3に係わるイオン化式煙感知器は、状態情報取得システムに組み込まれている。
この状態情報取得システムは、天井に取り付けられて火災を検知するイオン化式煙感知器、イオン化式煙感知器に電源兼用信号線で接続され、イオン化式煙感知器に電力を供給するとともに、イオン化式煙感知器からの火災信号を受信する図示しない火災受信機、点検者がイオン化式煙感知器の状態を確認する際に、イオン化式煙感知器からの状態情報を受信・表示する受信装置としての図示しない感度テスターから構成されている。
【0028】
また、実施の形態3に係わる信号処理部41は、図5に示すように、実施の形態1に係わる信号処理部4と基準データ格納手段42が異なり、信号処理部4に、タイマー計数手段43、状態情報算出手段44、状態情報送信手段45、断線判別手段46が追加されている。さらに、図示しない感度テスターに状態情報を送信する状態情報送信用発光素子47が接続されている。その他は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明を省略する。
【0029】
基準データ格納手段42は、実施の形態1の基準データ格納手段23に基準レベル上限値X、基準レベル下限値Xおよび断線判別レベルVがさらに格納されている。
また、基準レベル上限値Xと基準レベル下限値Xとの間が、0.1%/fの間隔のように、例えばトータル30段に分割された煙零レベル段V0S01〜V0S30とそれらに対応して予め定められたパルス間隔TW01〜TW30とからなる状態情報送信対応表が格納されている。
また、状態情報送信対応表は、基準レベル上限値Xを越える感度異常状態に対応するパルス間隔TWと基準レベル下限値Xを下回る感度異常状態に対応するパルス間隔TWとが含まれる。
【0030】
タイマー計数手段43は、所定の周期で、例えば3秒毎にタイムアップし、信号処理部41をスリープ状態からラン状態に切り換える。そして、ラン状態に切り換える度に計数C1を1インクリメントする。そして、計数C1が3であるか否かを判定する。C1≠3であれば、出力電圧処理手段21から火災判定を開始する。また、C1=3であれば、計数C1を零に戻して、状態情報算出手段44の処理を開始する。
【0031】
状態情報算出手段44は、入力されたデジタルセンサ出力電圧VSDと温度データ処理手段22から得られる周囲温度Tとを用いて、煙濃度算出手段24と同様に、現在の出力を煙濃度として算出し、初期の感度、例えば1.5%/fとの差分を演算して現在の感度データを求める。そして、状態情報送信対応表を参照して現在の感度データに対応するパルス間隔TW(TW、TW01〜TW30、TW)を求める。
【0032】
状態情報送信手段45は、求められたパルス間隔TW(TW、TW01〜TW30、TW)に基づき状態情報送信用発光素子47を発光させる。
状態情報送信用発光素子47は、状態情報を送信する赤外LEDであり、状態情報送信手段45からの信号により、所定の間隔の2つのパルス発光する。
【0033】
断線判別手段46は、入力されたデジタルセンサ出力電圧VSDを基準データ格納手段42に格納されている断線判別レベルVと比較して、断線の有無を判別する。デジタルセンサ出力電圧VSDが断線判別レベルV以下のとき断線と判別する。
【0034】
次に、このように構成された状態情報取得システムの動作について図6、図7、図8、図9を参照して説明する。
まず、状態情報取得システム全体の動作について、図6を参照して説明する。
ステップ101で、電源がイオン化式煙感知器40に投入され、動作をスタートする。
ステップ102で、信号処理部41のイニシャル処理が行われる。
ステップ103で、タイマー計数手段43は3秒毎にタイムアップする動作を開始し、タイムアップしていないときステップ103を繰り返し、タイムアップしたとき信号処理部41をスリーブ状態からラン状態に切り換えてステップ104に進む。
ステップ104で、タイマー計数手段43は計数C1を1インクリメントしてステップ105に進む。
ステップ105で、タイマー計数手段43は、計数C1が3であるか否かを判定する。計数C1が3のときステップ107へ、計数C1が3でないときステップ106へ進む。 ステップ106は火災判定サブルーチンであり、火災判定サブルーチンが完了したらステップ109に進む。
ステップ107で、タイマー計数手段43は、計数C1を0に変更してステップ108に進む。
ステップ108は、状態情報算出サブルーチンであり、状態情報算出サブルーチンが完了したらステップ109に進む。
ステップ109はブリンキングサブルーチンであり、ブリンキングサブルーチンが完了したらステップ103に戻り、信号処理部41をスリープ状態にする。
【0035】
次に、火災判定サブルーチンの処理について図7を参照しつつ説明する。
ステップ201で、出力電圧処理手段21は、デジタルセンサ出力電圧VSDを取り込み、さらに、温度データ処理手段22は、温度デジタル電圧VFDを取り込み、ステップ202へ進む。
ステップ202で、断線判別手段46は、デジタルセンサ出力電圧VSDが基準データ格納手段42に格納されている断線判別レベルVより大きいか否かを判別する。デジタルセンサ出力電圧VSDが断線判別レベルV以下のとき断線と判断し、ステップ203へ進む。デジタルセンサ出力電圧VSDが断線判別レベルVを越えているとき断線なしと判断し、ステップ204へ進む。
ステップ203で、断線判別手段46は、断線フラグF1をオンし、ステップ205へ進む。
ステップ204で、断線判別手段46は、断線フラグF1をオフし、ステップ205へ進む。
ステップ205で、火災判定手段25は、煙濃度算出手段24において求められた煙濃度から火災判定し、火災と判定されたときステップ206へ進み、火災と判定されないとき火災判定サブルーチンから抜け出る。
ステップ206で、送信手段26が図示しない火災受信機にいわゆるスイッチング動作によるインピーダンス変化などにより火災信号を送信し、火災判定サブルーチンを中止する。この詳しい動作は実施の形態1に記載しているのと同様である。
【0036】
次に、状態情報算出ルーチンの処理について図8を参照しつつ説明する。
ステップ301で、出力電圧処理手段21は、デジタルセンサ出力電圧VSDを取り込み、さらに、温度データ処理手段22は、温度デジタル電圧VFDを取り込み、ステップ202へ進む。
ステップ302で、状態情報算出手段44は、レジスタに記憶されているデジタルセンサ出力電圧群VSD(1)〜VSD(6)を取り込んだデジタルセンサ出力電圧VSDで先入れ先出し法により更新する。なお、個数は任意の複数でよい。
ステップ303で、状態情報算出手段44は、レジスタに記憶されているデジタルセンサ出力電圧群VSD(1)〜VSD(6)を平均化して出力電圧平均値VAVRを算出する。
ステップ304で、状態情報算出手段44は、煙濃度算出手段24によって煙濃度Mを求めて煙濃度Mを初期の感度から増減し、現在の感度データとして算出し、この算出された現在の感度データをレジスタに記憶する。ここで、煙濃度Mへの換算は、電圧差分対煙濃度データがセンサ出力電圧のプラス側への変化のみでなく、センサ出力電圧が下がる場合を考慮して設定しておく必要がある。なお、通常の煙濃度はプラス側のみであることから、マイナス側については、その絶対値をとってプラス側として算出し、算出した煙濃度Mにマイナスをつけるようにしてもよい。
ステップ305で、状態情報算出手段44は、現在の感度データを基準レベル上限値Xおよび基準レベル下限値Xと比較し、現在の感度データが基準レベル上限値Xより大きいとき、また現在の感度データが基準レベル下限値Xより小さいときステップ306へ進み、それ以外のときステップ307へ進む。
ステップ306で、異常フラグF2をオンし、状態情報算出サブルーチンから抜け出す。
ステップ307で、異常フラグF2をオフし、状態情報算出サブルーチンから抜け出す。
【0037】
次に、ブリンキングルーチンの処理について図9を参照しつつ説明する。
ステップ401で、タイマー計数手段43は、係数C1が0であるかを判別する。C1≠0であると判別されると、ブリンキングルーチンから抜け出す。
ステップ402で、断線フラグF1がオンしているかを判別する。断線フラグF1がオンしていると判別されると、ブリンキングルーチンから抜け出し、図示しない火災表示灯をパルス点灯させず、異常を表す。一方、C1=0であると判別されると、ステップ402に進む。一方、断線フラグF1がオフしていると判別されると、ステップ403に進む。
ステップ403で、異常フラグF2がオンしているかを判別する。異常フラグF2がオフしていると判別されると、ステップ404に進む。一方、異常フラグF2がオンしていると判別されると、ステップ405に進む。
ステップ404で、図示しないブリンキング用トランジスタに通常のパルス点灯出力を行い、ステップ406へ進む。このパルス点灯出力により、ブリンキング用トランジスタがパルス的にオンし、図示しない火災表示灯はパルス点灯し、イオン化式煙感知器が正常に動作していることを視覚的に報知する。この火災表示灯のパルス点灯は、係数C1が0のときのみ行われることにより、所定の周期でパルス点灯する。いわゆるブリンキングの動作である。
ステップ405で、ブリンキング用トランジスタにパルス点灯出力を2回出力した後、ステップ406へ進む。パルス点灯出力がブリンキング用トランジスタに2回出力されると、火災表示灯が、例えば100msの間隔で2回続けてパルス点灯するダブルブリンキングを行い、通常のブリンキングと明確に区別でき、イオン化式煙感知器の異常を視覚的に報知される。
ステップ406で、状態情報送信手段45は、状態情報送信対応表を参照してレジスタに記憶されている現在の感度データに対応するパルス間隔TWを求めてステップ407へ進む。
ステップ407で、状態情報送信手段45は、求めたパルス間隔TWの発光を状態情報送信用発光素子47で行い、ブリンキングサブルーチンから抜け出す。この状態情報送信用発光素子47の発光は2つのパルスにより形成され、これらを図示しない感度テスターによって受光することにより、感度テスターが感度データを認識して、現在の感度として表示することができる。
【0038】
このようなイオン化式煙感知器は、実施の形態1と同様に正確な煙濃度を検出して火災判定を行うことができるとともに、煙濃度に基づいて現在の感度を正確に検出して感度テスターに表示させることができる。
また、現在の感度が許容範囲を逸脱している場合、ブリンキング動作としてダブルブリンキングを行うことにより感度異常の状態を表示させることができる。この感度に関する判別も、周囲温度に影響されずに正確に行うことができる。
【0039】
なお、実施の形態3のイオン化式煙感知器における煙濃度の検出を実施の形態1と同様にして行ったが、実施の形態2のイオン化式煙感知器における煙濃度の検出を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の実施の形態1に係わるイオン化式煙感知器のブロック図である。
【図2】設定温度毎の電圧差分対煙濃度データがプロットされた図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係わるイオン化式煙感知器のブロック図である。
【図4】実施の形態2のイオン化式煙感知器における煙濃度の算出を説明する図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係わるイオン化式煙感知器のブロック図である。
【図6】状態情報収得システムの全体の動作のフローチャートである。
【図7】火災判定サブルーチンのフローチャートである。
【図8】状態情報算出サブルーチンのフローチャートである。
【図9】ブリンキングサブルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
1、30、40 イオン化式煙感知器、2 煙センサ、3 周囲温度計測部、4、31、41 信号処理部、5 イオンチャンバ、6 FET、7 内部電極、8 中間電極、9 外部電極、10 内部イオン室、11 外部イオン室、12 イオン線源、13、14 ダイオード、15 抵抗、16 出力端子、21 出力電圧処理手段、22 温度データ処理手段、23、32、42 基準データ格納手段、24、33 煙濃度算出手段、25 火災判定手段、26 送信手段、43 タイマー計数手段、44 状態情報算出手段、45 状態情報送信手段、46 断線判別手段、47 状態情報送信用発光素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙の流入によるイオン電流の変化に伴って変化するセンサ出力電圧を出力する煙センサと、
上記煙センサの周囲温度を計測する温度計測部と、
複数の温度において予め計測された電圧差分対煙濃度データが格納され、上記センサ出力電圧と煙の流入のないときのセンサ出力電圧とから電圧差分を算出し、上記周囲温度に最も近い上記温度の電圧差分対煙濃度データから上記電圧差分に対応する煙濃度を求め、上記煙濃度が予め定められた閾値より大きくなったとき、火災信号を発する信号処理部と、
を有することを特徴とするイオン化式煙感知器。
【請求項2】
上記信号処理部は、
上記周囲温度に上下にそれぞれ最も近い2つの温度の電圧差分対煙濃度データから上記電圧差分に対応する2つの煙濃度を求め、2つの上記煙濃度を用いて内挿し、上記周囲温度における煙濃度を求めることを特徴とする請求項1に記載するイオン化式煙感知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−11869(P2006−11869A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188635(P2004−188635)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】